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亜鉛欠乏症のあなどれない影響

 2017年4月26日、都内においてノーベルファーマ株式会社は、「見落とされがちな『亜鉛不足』の最新治療~日本初となる低亜鉛血症治療薬の登場~」と題してプレスセミナーを開催した。セミナーでは、2008年に承認された同社の酢酸亜鉛水和物(商品名:ノベルジン)が2017年3月に低亜鉛血症にも追加承認されたことから、小児に多い亜鉛欠乏症の概要を小児科専門医の視点から、そして、亜鉛が肝疾患に与える影響について消化器専門医の視点から講演が行われた。亜鉛欠乏症はサプリメントでは補えない はじめに「けっして稀ではない亜鉛欠乏」と題し児玉浩子氏(帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科 学科長・教授/帝京大学医学部小児科)が、亜鉛欠乏症の概要を説明した。 亜鉛は、人にとり必須微量ミネラルであり、成人男性なら約2gが体内に存在、各種酵素の形成や造血機能、皮膚代謝、味覚維持などの働きを担っている。亜鉛が欠乏すると、皮膚炎や脱毛、貧血、味覚障害、下痢、食欲低下、骨粗鬆症などの症状がみられ、性腺機能低下やとくに小児であれば発育障害を引き起こす。 「こうした身近にあるはずの亜鉛欠乏について、一般臨床ではあまり知られておらず、主な教科書や論文でも本症の症状が鑑別診断の対象とされていない。そのため、多くの場合、医療現場で見逃されている可能性がある」と児玉氏は指摘する。 「亜鉛欠乏症の診断指針」では、一定の症状(たとえば皮膚炎、口内炎、食欲低下、発育障害、易感染性、味覚障害など)があり、血清アルカリホスファターゼ(ALP)が低値で、症状の原因となる他の疾患が否定され、血清亜鉛値が60μg/dL未満で、亜鉛補充により症状が改善する場合を本症と確定診断する。 そして、亜鉛欠乏症と診断された場合、食事療法やサプリメントの摂取では改善しないことが多く、亜鉛製剤による治療が必要となる。亜鉛欠乏症の治療薬であるノベルジンを使用する際は、患者の病状や血清亜鉛値を参考としながら、成人および体重30kg以上の小児ならば1回25~50mgを開始用量としつつ、1日2回食後に経口投与する(最大150mg/日)。体重30kg未満の小児(なお、新生児は、現在臨床試験中)であれば1回25mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与する(最大75mg/日)。また、投与時に気を付けたい有害事象としては、嘔気、腹痛などの消化器症状、銅欠乏による貧血、白血球減少がある。いずれも重篤なものではないが、投与中は定期的血清亜鉛値の測定とこれによる減量と中止、必要な銅や鉄の補充を行う必要がある。 最後に児玉氏は「小児で食欲不振、低身長があれば亜鉛不足が推定される。また、成人であれば味覚異常、脱毛、貧血、長期の薬剤使用などがあれば亜鉛欠乏症を疑うサインとなる。日常診療でも本症を思い浮かべてもらい、疑ったら血清亜鉛値を検査するなど診療に生かしてもらいたい」と思いを語った。亜鉛欠乏が肝疾患に与える影響 次に片山和宏氏(大阪国際がんセンター 副院長/臨床研究センター長 肝胆膵内科)が、「亜鉛と肝疾患」をテーマに亜鉛欠乏が肝疾患に与える影響について解説した。 亜鉛には、タンパク合成を行う重要な働きがあり、欠乏すると肝臓の代謝不良から慢性肝疾患へ至るとされている。実際、亜鉛が不足し、肝臓でタンパク質の代謝が鈍るとアンモニアの処理ができず、肝性脳症になることが知られている。 そこで、片山氏が肝硬変患者の亜鉛欠乏の度合いを調べた研究では、血中アルブミン濃度が3.5g/dLまで下がると亜鉛欠乏(<70μg/dL)率は約90%になったという。また、肝硬変のタンパク代謝(アルブミン)と生命予後の関係の調査では、タンパク質合成がうまく働かず血中アルブミン濃度が下がると3.5g/dLを境に5年生存率にも大きく影響する。 そのほか、C型肝炎患者に亜鉛製剤投与の長期間経過観察(2,500日超)では、亜鉛濃度が80μg/dL以上維持できた場合、有意に発がん率が少なかったこと、動物モデルではあるが亜鉛投与で肝臓の線維化が抑制されたことなどが報告された。 臨床現場で使用されている「肝硬変診療ガイドライン2015(栄養編)」の中では、亜鉛補充は「中等度のエビデンス」とされ、亜鉛の必要性は認識されているもののエビデンスレベルが低く、今後エビデンスの集積が待たれるという。 最後に片山氏は「次回の改訂では、ガイドラインの栄養療法の項目で、エネルギー低栄養を認めたら低亜鉛血症への診療へと移る項目ができることを期待したい」と抱負を述べ、レクチャーを終えた。

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長門流 認定内科医試験BINGO!総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.1

第1回 膠原病/アレルギー 第2回 感染症 第3回 呼吸器 第4回 腎臓 認定内科医試験に向けた全3巻の実践講座の第1巻です。重要ワードは「頻出」。長年試験問題を分析し続けている長門先生が、実際の試験問題に近い予想問題を作成し、頻出ポイントをテンポよく解説します。もちろん最新のガイドラインのアップデートにも対応。各科目で試験に問われやすいポイントを押さえていますので、認定内科医試験はもちろん、総合内科専門医試験を受ける先生方も確実に得点アップにつながります。年々難しくなっているといわれる内科系試験。このDVDでぜひ合格を勝ち取ってください。第1回 膠原病/アレルギー 膠原病/アレルギーは、アップデートが頻繁な分野ですが、それを一つひとつキャッチアップするのは大変です。基本的なところを逃さないように得点していきましょう。頻出の問題やガイドラインのアップデートなど、しっかりと確認してください。第2回 感染症 感染症領域は、時事的な問題や感染対策、感染予防に関する問題がよく出題される傾向があります。代表的な感染症に加え、新興再興感染症、感染対策についても、しっかり押さえておいてください。第3回 呼吸器 呼吸器の領域では、X線やCTなどの画像から、診断・解答させる問題が増えています。そのほか、日本呼吸器学会の市中肺炎重症度分類(A-DROP)についてや、結核病巣の病理組織像など、頻出問題をよく確認しておきましょう。第4回 腎臓 腎臓の領域は、ネフローゼ症候群に関しての問題が多いので、細かいところまできちんと確認しておきましょう。また、「薬剤性腎障害診療ガイドライン2016」や「急性腎障害のためのKDIGO診療ガイドライン」は要チェックです。

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確定診断までの平均期間は13.8年

 2017年5月9日、シャイアー・ジャパン株式会社は都内において、5月16日の「遺伝性血管性浮腫 啓発の日」を前に、「腫れやむくみ、腹痛を繰り返す難病の実態」と題したプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、本症の概要解説のほか、同社が開設した情報サイト(医療従事者向け、患者・家族・一般向け)の紹介などが行われた。なお、遺伝性血管性浮腫は指定難病(原発性免疫不全症候群に含まれる)に指定されており、患者は公的補助を受けることができる。遺伝性血管性浮腫の概要 セミナーでは秀 道広氏(広島大学 医歯薬保健学研究科 皮膚科学 教授)が、「遺伝性血管性浮腫(HAE)の具体的症例と治療の現状」と題して概要を解説した。 HAEは、第11染色体長腕のヘテロ欠損または変異によりC1エステラーゼ阻害因子(C1-INH)が低下し、ブラジキニンが亢進することで起きる血管浮腫とされている。患者は、欧米の統計では約5万人に1人とされ(人種差はない)、わが国では約450例が確認されている希少疾病である。 症状として、浮腫が発作的に皮膚、気道、腸管などに生じる(歯科診療や手術が原因のことも多い)。これらに痒みはなく、数日で自然に消退する。顔面、とくに口唇、眼瞼に好発し、咽頭や声帯に生じた場合、呼吸困難を呈することがあり、挿管などの処置が必要となる。また、腸管などに生じた場合は、重度の腹痛や下痢を伴い、急性腹症との鑑別が必要となる。 診断では、「遺伝性血管性浮腫(HAE)ガイドライン 2010(改訂2014年版)」(日本補体学会作成)があり、HAEを疑う症候やC4補体のスクリーニング検査、家族歴の問診などで診断する。実際、アレルギー発作の治療で使用するアドレナリンやステロイドなどが無効のため、鑑別は重要だという。 治療では、急性の発作時や予防治療に乾燥濃縮人C1インアクチベーター製剤(商品名:ベリナートP静注)が使用される。また、このほかにも現在icatibant(国内申請中)やC1エステラーゼ阻害薬などの臨床治験が進められている。発作から気道閉塞まで平均8.3時間 診断もでき、治療法もある本症の問題は、医療従事者の間でもなかなか覚知されていない点にあるという。 疾患についての医師の認知度アンケートによれば、皮膚科(約9割)、血液内科(約6割)、小児科(約5割)、歯科口腔外科、呼吸器内科、救命救急科(いずれも約4割)と、皮膚科を除いてあまり知られていない。そのため、初発症状出現から確定診断までの平均期間は13.8年という報告もある1)。また、患者が咽頭浮腫を起こした場合、浮腫が最大に達するまでの平均時間は8.3時間(最短では20分)という報告もある2)ことから、万が一の気道閉塞も考えて、臨床現場では見逃してはいけない疾患であると秀氏は訴える。 最後に秀氏は、「本症は希少疾病ではあるが、医学的に確立しつつある疾患であり、今後、新しい治療薬の開発・臨床試験が行われようとしている。問題は、いかに広く本症が認知され、使うことができる治療法が患者へとつながるかにある」と述べ、レクチャーを終えた。(ケアネット 稲川 進)関連サイト「腫れ・腹痛ナビPRO」(医療従事者向け)「腫れ・腹痛ナビ」(患者、家族、一般向け)参考サイトNPO法人 血管性浮腫情報センター(CREATE)一般社団法人 日本補体学会HAEサイト

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1型糖尿病における強化インスリン療法:頻回注射法と持続皮下インスリン注入法の比較(解説:小川 大輔 氏)-677

強化インスリン療法 インスリン分泌には、1日を通して分泌される「基礎分泌」と、食べ物を食べた時に分泌される「追加分泌」がある。1型糖尿病のインスリン治療は、基礎分泌と追加分泌をインスリン製剤で補う「強化インスリン療法」が基本となる。 強化インスリン療法には主に2つの方法、ペン型の注入器でインスリン製剤を皮下に注射する「頻回注射法」と、インスリンポンプという機械でインスリンを注入する「持続皮下インスリン注入法」がある。頻回注射法と持続皮下インスリン注入法 頻回注射法は2種類のインスリン製剤を用いて、通常は基礎分泌を補うために持効型インスリンを1日1~2回注射し、追加分泌を補うために超速効型インスリンを1日3回各食事の直前に注射する。 持続皮下インスリン注入法は超速効型インスリン製剤をインスリンポンプにセットし、あらかじめ設定した速度でインスリンを皮下へ持続的に注入することによって基礎分泌を補う。また、ポンプのボタン操作で食事の前にインスリンを追加で注入し追加分泌を補う。 頻回注射法は手技が簡便であるが、1日4~5回皮下注射を行う必要がある。一方、持続皮下インスリン注入法は機械の操作がやや難しいが、皮膚に留置するカニューレの交換は2~3日に1回のため穿刺の回数は少なくて済む。1型糖尿病の治療:頻回注射法と持続皮下インスリン注入法の比較 1型糖尿病の治療では、低血糖をできるだけ回避しながら血糖コントロールを良好に保つことが求められる。強化インスリン療法には上述の2種類の方法があり、それぞれ長所と短所がある。これまでに持続皮下インスリン注入法は頻回注射法と比較し、血糖コントロールをより改善する、あるいは重症低血糖の頻度が低下するという報告が散見されるが、いずれも症例数が少なく、期間も短いため明確な結論は得られていない。 今回のREPOSE試験では、成人の1型糖尿病267症例を対象に、持続皮下インスリン注入法群と頻回注射法群の2群に割り付けてHbA1cの低下や重症低血糖の頻度を2年間にわたり観察した。また両群とも割り付ける前にインスリン治療に関する教育が行われた。結果であるが、HbA1cレベルは持続皮下インスリン注入法群でより低下する傾向がみられたが両群間で有意差はなかった。重症低血糖の頻度は両群とも低下したが、両群間で有意差は認めなかった。また心理社会的指標は治療に対する満足感やQOLに関する一部の項目で持続皮下インスリン注入法のほうが有意に改善したが、両群間で有意差はなかった。 持続皮下インスリン注入法群が頻回注射法群よりも、血糖コントロールが有意に改善しなかった理由は不明である。1つの可能性として、持続皮下インスリン注入法および頻回注射法への好みがない患者を2群に振り分けており、持続皮下インスリン注入法群でインスリンポンプを使用するモチベーションがあまりなかったのかもしれない。今回の研究では、両群とも血糖コントロールは改善したもののガイドラインで推奨されているレベルには到達しておらず、コントロール不良の成人1型糖尿病に対して持続皮下インスリン注入法を積極的に推奨することを支持する結果は得られなかった。

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腎疾患治療に格差、130ヵ国調査で明らかに/JAMA

 カナダ・アルバータ大学のAminu K. Bello氏らが、世界130ヵ国を対象に腎疾患への対応能力などについて調べた結果、地域間および地域内で、サービスや人的資源について顕著なばらつきが認められることが判明した。本研究は、「腎疾患は世界中で医療・公衆衛生上の重大な課題になっているが、ケアに関して入手できる情報は限定的である」として行われたが、結果を踏まえて著者は、「今回の調査の結果が、現在の各国の腎疾患治療の現状を正確に反映しているものならば、その質的改善に努めるよう知らしめるのに有用なものとなるだろう」と述べている。JAMA誌オンライン版2017年4月21日号掲載の報告。ISN加盟130ヵ国にアンケート調査 研究グループは、現在の腎疾患治療提供に関する準備(readiness)、キャパシティ、能力(competence)について、各国および各地域の情報を集めるアンケート調査を行った。国際腎臓学会(ISN)を通じて、国および地域の腎臓病学のリーダーと特定された、ISN加盟130ヵ国の主要ステークホルダー(国の腎臓学会リーダー、方針の策定者、患者団体代表)に対し2016年5月~9月に実施した。 主要評価項目は、腎疾患治療についての国のキャパシティおよびレスポンスの中心エリアとした。透析・移植設備や、ガイドライン整備などで顕著な格差 回答があったのは、130ヵ国のうち125ヵ国(96%)、個人の回答率は289/337人(85.8%、回答者中央値は2[四分位範囲:1~3])で、これは世界人口73億人のうち推定で93%(68億人)の回答率を示すものであった。 結果、世界各国のサービス供給に関する準備、キャパシティ、レスポンスや、資金、従事者、情報提供システム、およびリーダーシップやガバナンスは大きなばらつきがあることが認められた。 全体で、血液透析設備があるのは119ヵ国(95%)、腹膜透析設備は95ヵ国(76%)、腎移植設備は94ヵ国(75%)であった。対照的にアフリカ各国では、血液透析設備があるのは33ヵ国(94%)、腹膜透析設備は16ヵ国(45%)、腎移植設備は12ヵ国(34%)にあるという状況であった。 慢性腎臓病(CKD)のプライマリケアにおけるモニタリングで、血清クレアチニンとともに推定糸球体濾過量(eGFR)および尿蛋白測定報告が入手できたのは、それぞれわずか21ヵ国(18%)、9ヵ国(8%)であった。 血液透析、腹膜透析、移植医療について、公的資金が投じられ制限なく治療が受けられるのは、それぞれ50ヵ国(42%)、48ヵ国(51%)、46ヵ国(49%)であった。腎臓専門医の数にもばらつきがみられ、アフリカ、中東、南アジア、オセアニア、東南アジア(OSEA)地域で少なかった(100万当たり10人未満)。 健康情報システム(腎登録)の利用は限定的で、とくに急性腎障害(8ヵ国[7%])、非透析CKD(9ヵ国[8%])で顕著だった。また各国の急性腎障害およびCKDのガイドラインについて、利用可能と報告したのは、それぞれ52ヵ国(45%)、62ヵ国(52%)であった。 とりわけ開発途上国では、臨床研究に取り組む能力が相対的に低いことが認められた。

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週末入院による死亡率への影響は限定的?

 埼玉医科大学の星島 宏氏らは、平日に比べ週末の入院で死亡リスクが高まる、いわゆる“週末効果”について、地域差や診断、研究のサブタイプによる影響を調べるため、5千万人以上を組み入れたメタアナリシスを実施した。その結果、5つの地域(北米、南米、ヨーロッパ、アジア、オセアニア大陸)で国や社会文化的背景の違いとは関係なく、週末に入院した患者の死亡リスクが高いことが示された。一方で、“週末効果”は入院時の診断などによって異なる限定的なもので、救急患者で週末入院の死亡リスクが高いことが示唆された。Medicine誌2017年4月号掲載の報告。 電子データベースを用いた文献検索が行われ、疫学分野における観察研究のメタアナリシス報告のためのガイドライン(MOOSE)に基づいてシステマティックレビューが実施された。患者は、サブグループ解析のために7地域(北米、南米、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、アフリカ、南極大陸)に分けられ、各研究における診断基準を基に、虚血性脳卒中、心筋梗塞、肺塞栓症などの24の主要な診断カテゴリに分類された。 主要アウトカムは短期死亡率(≦30日)で、プール解析のオッズ比(OR)はDerSimonian and Laird変量効果モデルを用いて算出された。 主な結果は以下のとおり。・5,693万4,649人の患者を含む5地域88(北米43、南米2、ヨーロッパ26、アジア15、オセアニア2)のコホート研究が包含基準を満たし、試験に組み入れられた。・全体のプール解析では、短期死亡率について、平日入院の患者と比較した週末入院の患者の調整済みオッズ比(OR)は1.12(95%信頼区間[CI]:1.07~1.18、I = 97%)、粗ORは1.16(95%CI:1.14~1.19、I = 97%)であった。・サブグループ解析では、5地域すべての患者で週末入院における死亡リスクが高いことが確認された。ただし、その影響は特定の診断と入院のサブタイプに限られていた。・週末入院による短期死亡率への有意な影響は、24のうち15の診断カテゴリでのみ確認された。15の診断カテゴリには、心筋梗塞や大動脈破裂のような緊急の診断や治療の必要性が高い致命的な疾患が含まれ、ほかの診断カテゴリには、より緊急治療の必要性が低い疾患が含まれていた。・救急患者では、平日入院に比べ週末入院による死亡リスクが高かった(粗OR = 1.17、95%CI:1.12~1.22)。

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循環器内科 米国臨床留学記 第20回

第20回 米国の電子カルテ事情日本でも電子カルテが一般的になっていますが、米国では電子カルテのことをElectrical Medical Record (EMR)と言います。今回は、米国におけるEMR事情について書いてみたいと思います。米国のEMRの特徴の1つとして、どこからでもアクセスできるというのが挙げられます。「今日は疲れたから、残りのカルテは家で書きます」といった感じで、インターネットで世界中のどこからでも電子カルテにアクセスできます。実際、私も帰国時に日本から米国の患者に処方したり、カルテをフォローしたりすることがあります。日本でも電子カルテが登場して久しいですが、インターネットを介して患者のカルテにアクセスするのはまだ一般的でないかもしれません。Medscapeのリポートによると、2016年の段階で91%の医師が電子カルテを使用しており、これは2012年の74%から比べても大幅な増加です。その中でも、41%と圧倒的なシェアを誇るのがEPICというシステムです。ほかのEMRと比べても、EPICはuser friendlyで使いやすく、日常臨床を強力にサポートしてくれます。私のいるカリフォルニア大学アーバイン校では、現在はEPICと異なるシステムを使っていますが、評判が悪いため、来年EPICに移行します。乱立していたEMRの会社も徐々に淘汰され、数社に絞られてきているようです。また、同じEMRシステムを使うと、異なる病院間でも情報が共有できるといったサービスもあります。以前いたオハイオ州のシンシナティーという町にはEPIC everywhereというシステムがあり、EPICを使っているシンシナティー市内すべての病院の情報が共有されていました。ほかの病院の情報に簡単にアクセスできると、無駄な検査を減らすことができます。EMRは、入院時に必要なオーダーを入れないとオーダーを完了できないシステムになっています。例えば、深部静脈血栓症(DVT)予防は、入院時に必須のオーダーセットに入っているため、オーダーせずに患者を入院させようとすると、ブロックサインが現れ、入院させることが難しくなっています。このようなシステムは日本の電子カルテにもあると思います。また、代表的なEMRのシステムには、ガイドラインに準じたクリニカルパスが組み込まれています。 主なものとしては、敗血症ショックセット、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)セット、急性冠動脈症候群(ACS)セットなどが挙げられます。例えばACSで入院すると、ヘパリン、アスピリン、クロピドグレル、スタチン、β遮断薬をクリック1つで選択するだけですから、確かに処方し忘れなどは減ります。オーダーセットは非常に楽ですし、DKAなどは勝手に治療が進んでいき、うまくいけば入院時のワンオーダーで、ほぼ退院まで辿り着けるかもしれません。しかしながら、一方で医者が状況に応じて考えなければいけないことが減り、時には危険なことも起こります。患者の状態は、1人ずつ異なりますから、tailor madeな治療が必要になります。実際、DKAで入院した患者がDKAオーダーセットによる多量の生理食塩水で心不全を起こすというようなことは、何度も見てきました。このほか、EMRで問題となっているのは、いわゆる“copy and paste”です。デフォルトのカルテでは、正常の身体所見が自動的に表示されます。注意を怠ると、重度の弁膜症患者にもかかわらず「雑音がない」とか、心房細動なのに脈拍が“regular”などといった不適切な記載となります。実際に、このようなことはしょっちゅう見受けられます。他人のカルテをコピーすることも日常茶飯事なので、4日前に投与が終わったはずの抗生剤が、カルテの記載でいつまでも続いているということもあります。Medscapeの調査でも66%の医者が“copy and paste”を日常的に(時々から常に)使用しているとのことでした。外来でのEMRは、Review of System、服薬の情報、予防接種(インフルエンザ、肺炎球菌)、スクリーニング(大腸ファイバーなど)などをすべて入力しなければ、カルテを終了(診察を終了)できなくなっています。こうした項目を入力しないと医療点数(診療費)に関わってくるからです。その結果、EMRに追われてしまい、患者を見ないでひたすらコンピューターの画面を見て診療しているような状況に陥りがちです。こうなると、自分がEMRを操作しているのか、EMRに操作されているのかわからなくなります。いろいろな問題がありますが、EMRは日々進歩している印象があります。使い勝手は良いのですが、最終的には医者自身が頭を使わければ患者に不利益が被ることもあるため、注意が必要です。

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術前デキサメタゾン追加で術後24時間の嘔吐が低減/BMJ

 大腸および小腸の手術では、麻酔導入時にデキサメタゾン8mgの静脈内投与を追加すると、標準治療単独に比べ術後24間以内の悪心・嘔吐が抑制され、72時間までの制吐薬レスキュー投与の必要性が低減することが、英国・オックスフォード大学のReena Ravikumar氏らが実施したDREAMS試験で示された。デキサメタゾン追加による有害事象の増加は認めなかったという。研究の成果は、BMJ誌2017年4月18日号に掲載された。術後の悪心・嘔吐(PONV)は、最も頻度の高い術後合併症で、患者の30%以上にみられる。腸管の手術を受けた患者では、PONVは回復を遅らせることが多く、術後の栄養障害を引き起こす可能性もあるため、とくに重要とされる。デキサメタゾンは、低~中リスクの手術を受ける患者でPONVの予防に有効であることが示されているが、腸管手術を受ける患者での効果は知られていなかった。デキサメタゾンの術後制吐効果を1,350例で検討 本研究は、英国の45施設が参加したプラグマティックな二重盲検無作為化対照比較であり、2011年7月~2014年1月に1,350例が登録された(英国国立健康研究所・患者ベネフィット研究[NIHR RfPB]などの助成による)。 対象は、年齢≧18歳、病理学的に悪性または良性の病変に対し、開腹または腹腔鏡による待機的腸管手術を施行される患者であった。 すべての患者が全身麻酔を受け、麻酔科医が決定した標準治療として術前に制吐薬(デキサメタゾンを除く)が投与された。デキサメタゾン群は術前にデキサメタゾン8mgの静脈内投与を受け、対照群には標準治療以外の治療は行われなかった。 主要評価項目は、24時間以内に患者または医師によって報告された嘔吐とした。副次評価項目は、術後24時間以内、25~72時間、73~120時間の嘔吐および制吐薬の使用、有害事象などであった。デキサメタゾン群が標準治療群に比べ有意に低かった デキサメタゾン追加群に674例、標準治療単独群には676例が割り付けられた。全体の平均年齢は63.5(SD 13.4)歳、女性が42.0%であった。腹腔鏡手術は63.4%で行われた。直腸切除術が42.4%、右結腸切除術が22.4%、左/S状結腸切除術が16.4%であった。 24時間以内の嘔吐の発現率は、デキサメタゾン群が25.5%(172例)と、標準治療群の33.0%(223例)に比べ有意に低かった(リスク比[RR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.65~0.92、p=0.003)。1例で24時間以内の嘔吐を回避するのに要する術前デキサメタゾン投与による治療必要数(NNT)は13例(95%CI:5~22)だった。 24時間以内に制吐薬の必要時(on demand)投与を受けた患者は、デキサメタゾン群が39.3%(265例)であり、標準治療群の51.9%(351例)よりも有意に少なかった(RR:0.76、95%CI:0.67~0.85、p<0.001)。また、術前デキサメタゾン投与のNNTは8例(95%CI:5~11)だった。デキサメタゾン群は制吐薬の必要時投与が少なかった 25~72時間の嘔吐の発現に有意な差はなかった(33.7 vs.37.6%、p=0.14)が、制吐薬の必要時投与はデキサメタゾン群が有意に少なかった(52.4 vs.62.9%、p<0.001)。73~120時間については、嘔吐、制吐薬の必要時投与はいずれも両群間に有意差を認めなかった。 死亡率は、デキサメタゾン群1.9%(13例)、標準治療群は2.5%(17例)と有意な差はなく、両群8例ずつが術後30日以内に死亡した。有害事象の発現にも有意差はなかった。30日以内の感染症エピソードが、それぞれ10.2%(69例)、9.9%(67例)に認められた。 著者は、「PONVの現行ガイドラインは、おそらく過度に複雑であるため広範には用いられていない。今回の結果は、腸管手術を受ける患者におけるPONVの抑制に簡便な解決策をもたらす」としている。

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新肺炎診療ガイドラインは高齢者に重点

 2017年4月21~23日に都内で開催された第57回日本呼吸器学会学術講演会(会長:中西洋一、九州大学大学院附属胸部疾患研究施設 教授)において、新しい「成人肺炎診療ガイドライン」が発表された。 特別講演として「新しい肺炎診療ガイドラインとは」をテーマに、迎 寛氏(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野 教授)が今回の改訂の背景、ガイドラインの概要について講演を行った。患者の意思を尊重した終末期の治療を 今までのガイドラインは、市中肺炎(CAP)、院内肺炎(HAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP)と3冊に分かれ、各疾患への細かい対応ができた反面、非専門医や医療従事者にはわかりにくかった。これに鑑み、新しいガイドラインは1冊に統合・改訂されたものである。 今回の改訂は、『Minds 診療ガイドライン作成の手引き』に準拠して行われ、第1部では“SCOPE”として肺炎の基本的特徴を解説、第2部では“Clinical Question”として25項目のCQが掲載されている。 CQ推奨の強さは、アウトカムへのエビデンスの強さ、リスクとプロフィットのバランス、患者の価値観や好み、コストパフォーマンスの視点から総合的に評価できることにある。とくに今回の改訂では、肺炎死亡の96.8%が65歳以上の高齢者が占めることから、高齢者の肺炎への対応も述べられている。 予後不良や誤嚥性肺炎といった肺炎における高齢者特有の問題は、終末期とも密接に関わっており、このような場合は治療を本人や家族とよく検討して対処することを推奨している。肺炎治療に抗菌薬を使うと死亡率は減少するが、QOLは低下することも多い。そのため、患者が不幸な終末期を迎えないためにも、厚生労働省や老年医学会のガイドラインなどが参照され、患者や患者家族の意思の尊重が考慮されている。大きく2つのグループに分けて肺炎診療を考える 新しいガイドラインは、わが国の現状を見据え、CAPとHAP+NHCAPの大きく2つのグループに分けた概念で構成されている。 CAP診断の際には従来のA-DROPによる重症度分類に加えて、新たに敗血症の有無を判定することも推奨され、敗血症の有無や重症度に応じて治療の場や治療薬を決定する。 また、HAPとNHCAPは高齢者に多いことから、最初に重要なのは患者のアセスメントだという。疾患終末期や老衰、誤嚥性肺炎を繰り返す患者では、患者の意思を尊重しQOLに配慮した緩和ケアを中心とした治療を行う。上記に該当しない場合は、敗血症の有無、重症度、耐性菌リスクを考慮して、治療を行うこととしている。このほかに、予防の項目ではインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種や、口腔ケアの実施を推奨している。 今回の新肺炎診療ガイドラインの特徴としては、 ・CAP、HAP、NHCAPの診療の流れを1つのフローチャートにまとめたこと ・終末期や老衰状態の患者には個人の意思を尊重した治療を推奨すること ・重要度の高い医療行為は、CQを設定し、システマティックレビューを行い、  リスクとベネフィット、患者の意思、コストを考慮しながら委員投票で推奨を  決定したことが挙げられる。 最後に迎氏は「今後、新ガイドラインの検証が必要である。ガイドラインを精読していただき、診療される先生方のさまざまな提案や意見を取り入れてより良くしていきたい。次版の改訂に向け、動き出す予定である」と語り、講演を終えた。 なお、本ガイドラインの入手は日本呼吸器学会直販のみで、書店などでの販売はない。詳しくは日本呼吸器学会 事務局まで。(ケアネット 稲川 進)関連リンク 日本呼吸器学会 事務局 第57回日本呼吸器学会学術講演会

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1次予防のスタチン対象、ガイドラインによる差を比較/JAMA

 スタチンによる動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の1次予防が推奨される患者は、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)ガイドライン2013年版よりも、米国予防医療サービス対策委員会(USPSTF)の2016年版勧告を順守するほうが少なくなることが、米国・デューク大学のNeha J. Pagidipati氏らの検討で示された。ACC/AHAガイドラインで対象だが、USPSTF勧告では対象外となる集団の約半数は、比較的若年で高度の心血管疾患(CVD)リスクが長期に及ぶ者であることもわかった。研究の成果は、JAMA誌2017年4月18日号に掲載された。1次予防におけるスタチンの使用は、ガイドラインによって大きな差があることが知られている。USPSTFによる2016年の新勧告は、1つ以上のCVDリスク因子を有し、10年間CVDリスク≧10%の患者へのスタチンの使用を重視している。年齢40~75歳の3,416例で2つの適格基準を比較 研究グループは、米国の成人におけるASCVDの1次予防でのスタチン治療の適格基準に関して、USPSTFの2016年勧告とACC/AHAの2013年ガイドラインの比較を行った(デューク臨床研究所の助成による)。 2009~14年の米国国民健康栄養調査(NHANES)から、年齢40~75歳、総コレステロール(TC)値、LDL-C値、HDL-C値、収縮期血圧値のデータが入手可能で、トリグリセライド値≦400mg/dL、CVD(症候性の冠動脈疾患または虚血性脳卒中)の既往歴のない3,416例のデータを収集し、解析を行った。USPSTF勧告で15.8%、ACC/AHAガイドラインで24.3%増加 対象の年齢中央値は53歳(IQR:46~61)、53%が女性であった。21.5%(747例)が脂質低下薬の投与を受けていた。 USPSTF勧告を完全に当てはめると、スタチン治療を受ける集団が15.8%(95%信頼区間[CI]:14.0~17.5)増加した。これに対し、ACC/AHAガイドラインを完全に適用すると、スタチン治療の対象者は24.3%(22.3~26.3)増加した。 8.9%(95%CI:7.7~10.2)が、ACC/AHAガイドラインではスタチン治療が推奨されるが、USPSTF勧告では推奨されなかった。このうち55%が年齢40~59歳であった。この集団は、CVDの10年リスクの平均値は7.0%(6.5~7.5)と相対的に低かったが、30年リスクの平均値は34.6%(32.7~36.5)と高く、28%が糖尿病であった。

1972.

カテーテルによる三尖弁形成術の初期段階の実用性は?

 機能的な三尖弁逆流(TR)は有病率が高いうえ進行することが多く、予後にも影響を与える。AHA/ACC(American Heart Association/American College of Cardiology guidelines)のガイドラインによると、三尖弁の修復術は、左室の開心術と同時に行う場合のみ、NYHA分類Iの適応となっている。三尖弁の修復術は患者にとって有益であるが、患者の多くは左心の開心術の際に、三尖弁の修復術を受けていない。一方で、経カテーテルによる治療は増えており、重症TRはこれらの患者の予後にも影響を与えている。このような背景から、経カテーテルによるTR治療が注目されている。 こうした中、Percutaneous Tricuspid Valve Annuloplasty System for Symptomatic Chronic Functional Tricuspid Regurgitation(症候性の慢性機能性三尖弁逆流症に対する経皮的三尖弁輪形成術システム)における初期の実用性を評価するSCOUT試験の結果を、米国コロンビア大学のRebecca T. Hahn氏らが報告した。Journal of American College of Cardiology誌4月号に掲載。NYHA分類 II以上の機能性TR15例を前向きに評価 本研究は、多施設共同で行われた前向きのシングルアーム試験である。 2015年11月~16年6月、NYHA分類II以上で、中等度以上の機能性TRを有する患者15例が登録され、手技が成功し、30日目までの段階で再手術が行われないことをプライマリエンドポイントとして評価した。心エコーによる三尖弁径、有効逆流口面積(EROA)、左室の拍出量(LVSV)の計測と、QOLの評価(NYHA分類、ミネソタ心不全QOL質問票、6分間歩行テスト)が、ベースライン時と30日後に行われた。 85歳以上、ペースメーカー患者、肺動脈圧>60mmHg、LVEF<35%、心エコーでTAPSE(tricuspid annular plane systolic excursion)<3mm、三尖弁のEROA>1.2 cm2の患者は除外された。1ヵ月後におけるデバイス植込み成功率は80% すべての患者(平均年齢73.2±6.9歳、87%が女性)において、デバイスの植込みが成功し、死亡、脳卒中、心タンポナーデおよび弁に対する再手術は認められなかった。30日後における手技の成功率は80%で、3例でプレジェットが弁輪から外れていた。残りの12例では、三尖弁輪とEROAは共に有意に縮小し(三尖弁輪:12.3±3.1cm2から11.3±2.7cm2、p=0.019、EROA:0.51±0.18cm2 vs.0.32±0.18cm2、p=0.020)、左室の拍出量は有意に増加していた(63.6±17.9mL vs.71.5±25.7mL、p=0.021)。Intention-to-treatコホートの解析でも、NYHA分類(NYHA≧I、p=0.001)、MLHFQ(47.4±17.6から20.9±14.8、p<0.001)、6分間歩行(245.2±110.1mから298.0±107.6m、p=0.008)で有意な改善がみられた。 30日後におけるSCOUT試験の結果により、新しい経カテーテルデバイスの安全性を確認した。経カテーテル三尖弁形成デバイスは、三尖弁輪およびEROAを縮小させるとともに左室拍出量を増加させ、QOLを改善することが示された。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

1973.

腎保護効果は見せかけだった~RA系阻害薬は『万能の妙薬』ではない~(解説:石上 友章 氏)-669

 CKD診療のゴールは、腎保護と心血管保護の両立にある。CKD合併高血圧は、降圧による心血管イベントの抑制と、腎機能の低下の抑制を、同時に満たすことで、最善・最良の医療を提供したことになる。RA系阻害薬は、CKD合併高血圧の治療においても、ファーストラインの選択肢として位置付けられている。RA系阻害薬には、特異的な腎保護作用があると信じられていたことから、糖尿病性腎症の発症や進展にはより好ましい選択肢であるとされてきた。一方で、CKD合併高血圧症にRA系阻害薬を使用すると、血清クレアチニンが一過性に上昇することが知られており、本邦のガイドラインでは、以下のような一文が付け足してある。 『RA系阻害薬は全身血圧を降下させるとともに、輸出細動脈を拡張させて糸球体高血圧/糸球体過剰ろ過を是正するため、GFRが低下する場合がある。しかし、この低下は腎組織障害の進展を示すものではなく、投与を中止すればGFRが元の値に戻ることからも機能的変化である。』(JSH2014, p71) 図は、この考えの根拠となるアンジオテンシンIIと、尿細管・平滑筋細胞・輸入輸出細動脈との間の、量-反応関係を示している。アンジオテンシンIIは、選択的に輸出細動脈を収縮させる。いわば、糸球体の蛇口の栓の開け閉めを制御しており、クレアチニンが上昇しGFRが低下する現象は、薬剤効果であり、軽度であれば無害であるとされてきた。糖尿病合併高血圧では、Hyperfiltration説(Brenner, 1996)に基づいた解釈により、RA系阻害薬は糸球体高血圧を解消することから、腎保護効果を期待され、第一選択薬として排他的な地位を築いている。 しかしながら、こうした考えはエキスパート(専門家)の"期待"にとどまっているのが実情で、十分なエビデンスによる支持があるわけではなかった。 RA系阻害薬の腎保護効果について、その限界を示唆した臨床試験として、ONTARGET試験・TRANSCEND試験があげられる[1, 2]。本試験は、ARB臨床試験史上、最大規模のランダム化比較試験であり、エビデンスレベルはきわめて高い。その結果は、或る意味衝撃的であった。ONTARGET試験では、ACE阻害薬とARBとの併用で、有意に33%の腎機能障害を増加させていた。TRANSCEND試験に至っては、腎機能正常群を対象にしたサブ解析で、実薬使用群での、腎機能障害の相対リスクが2.70~3.06であったことが判明した。他にも、RA系阻害薬の腎保護効果に疑問を投げかける臨床試験は、複数認められる。  eGFRの変化は、アルブミン尿・タンパク尿の変化よりも、心血管イベント予測が鋭敏である[3]。Schmidtらの解析による報告[4]は、RA系阻害薬による”軽微”とされていた腎障害が、腎保護効果はおろか、心血管イベントの抑制にも効果がなかったことを証明した。ガイドラインは、過去の研究成果を積み上げた仮説にすぎない。クリニカル・クェスチョンは有限とはいえ、無数にある。あらゆる選択肢の結果を保証するものではない。専門家の推論や、学術的COIに抵触するような期待に溢れた、あいまいな推奨を断言するような記述は、どこまで許容されるのか。この10年あまりの間、糖尿病合併高血圧や、CKD合併高血圧にRA系阻害薬がどれだけ使用されたのか。そのアウトカムの現実を明らかにした本論文の意義は、学術的な価値だけにとどまらず、診療ガイドラインの限界を示しているともいえる。 1)ONTARGET Investigators, et al. N Engl J Med. 2008;358:1547-1559.2)Mann JF, et al. Ann Intern Med. 2009; 151: 1-10.3)Coresh J, et al. JAMA. 2014; 311: 2518-2531.4)Schmidt M. BMJ. 2017;356:j791.

1974.

研修と組み合わせた2つの強化インスリン療法を比較/BMJ

 1型糖尿病患者の治療において、インスリンポンプ療法に、フレキシブル強化インスリン治療に関する体系的な研修を加えても、頻回注射法(MDI)と比較して血糖コントロール、低血糖、心理社会的転帰に、教育によるベネフィットの増強は得られないことが、英国・シェフィールド大学のSimon Heller氏らが行ったREPOSE試験で示された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2017年3月30日号に掲載された。英国では、1型糖尿病のインスリンポンプ療法は、これ以外の方法では日常生活に支障を来す低血糖を起こさずに良好な血糖コントロールが達成できない患者には価値があるとされる。より広範なインスリンポンプ療法の使用については不確実な点が多く、これまでに行われたMDIとの比較試験は症例数が少なく、試験期間が短いものしかなかったという。研修と組み合わせた2つの強化インスリン療法を比較 REPOSEは、フレキシブルなインスリン治療の研修を受けた1型糖尿病患者において、インスリンポンプ療法とMDIの有効性を比較するプラグマティックな非盲検クラスター無作為化試験(英国医療技術評価プログラムなどの助成による)。 対象は、強化インスリン療法を受ける意思があり、インスリンポンプ療法およびMDIへの好みがない成人1型糖尿病患者であった。イングランドの5施設とスコットランドの3施設で、各施設最大40例の登録を行い、5~8例を1組とする研修コースに患者を割り当てた。 被験者には、フレキシブルな強化インスリン療法(正常な摂食に対する用量調整[dose adjustment for normal eating:DAFNE])に関する体系的な研修が行われた。研修コース(クラスター)が、ポンプ群またはMDI群にランダムに割り付けられ、2年間の治療が行われた。 主要評価項目は、ベースラインのHbA1c値≧7.5%の患者における2年後のHbA1c値の変化およびHbA1c値≦7.5%(2004 NICE推奨値)の達成率とした。副次評価項目には、体重、インスリン用量、中等度~重度低血糖のエピソードが含まれ、QOL、治療満足度の評価も行った。 317例(46コース)がランダム化の対象となった(ポンプ群156例、MDI群161例)。267例が研修コースに参加し、ITT解析には260例(それぞれ132例、128例)が含まれた。2年間の追跡データが得られたのは248例(128例、120例)だった。両群とも全般に転帰が改善、推奨値の達成は少ない ベースラインの全体の平均年齢は40.7歳、男性が60%であった。HbA1c値はポンプ群がわずかに高かった(9.3 vs.9.0%)。9%がHbA1c値<7.5%だった。 ベースラインのHbA1c値≧7.5%の235例(ポンプ群119例、MDI群116例)は、2年後のHbA1c値がそれぞれ0.85%、0.42%低下した。補正後のベースラインからの変化の平均差は-0.24%(95%信頼区間[CI]:-0.53~0.05)であり、ポンプ群で良好な傾向がみられたものの有意な差はなかった(p=0.10)。 ベースラインのHbA1c値にかかわらず、2年後のHbA1c値≦7.5%達成率は、ポンプ群が25.0%、MDI群は23.3%であり、両群に有意な差を認めなかった(オッズ比:1.22、95%CI:0.62~2.39、p=0.57)。 重度低血糖の発現は少なく、全体で25例に49件みられた。2年後の補正発生率は、両群に差はなかった(罹患率比:1.13、95%CI:0.51~2.51、p=0.77)。全体の年間発生件数は、ベースライン前の0.17から追跡期間中に0.10へと低下した。ベースライン前と比較した2年後の罹患率比は0.46(0.24~0.89、p=0.02)と有意な差が認められた。 体重は試験期間を通じてほぼ一定で、両群に有意な差はなかった。総インスリン投与量は両群とも減少し、12ヵ月時にはポンプ群の減少量が有意に多かった(補正差:-0.07、95%CI:-0.13~-0.01、p=0.02)が、2年後にはこの差は消失した(-0.05、-0.11~0.02、p=0.15)。 ほとんどの心理社会的指標は両群に差はなかったが、ポンプ群は治療満足度が大幅に改善され(p<0.001)、糖尿病特異的QOLのうち身体機能に関する日常のいら立ち事(daily hassle of functions)および食事制限が12ヵ月時(それぞれ、p=0.02、p=0.01)、2年時(p=0.01、p=0.004)にポンプ群で有意に優れた。 著者は、「両群とも、HbA1c値、低血糖の発現が低下し、社会心理的指標が改善したが、血糖値がガイドラインの推奨値を達成した患者はほとんどいなかった」とまとめ、「これらの結果は、血糖コントロールが不良な患者では、強力な自己管理に向けた研修の効果が確立されるまでは、インスリンポンプ療法の使用は支持されないことを意味する」と指摘している。

1975.

ワルファリンはなぜ負け続けるのか?(解説:香坂 俊 氏)-668

心房細動に対するカテーテルアブレーションはわが国でも広く行われているが、まれに脳梗塞などの合併症を起こすことがある(1%以下だが、主治医としては絶対に避けたい合併症の1つ)。そうした塞栓系のリスクを減らすためにはアブレーション前後の抗凝固薬管理が重要となるわけだが、、、、<これまでの大前提>これまでの研究から、ワルファリンを中止してヘパリンブリッジを行うよりも、ワルファリンをずっとそのまま中止せずに継続したほうが合併症のリスクを減らせることがわかっている(ただ、ヘパリンブリッジも現場ではまだ広く行われている)。<この試験の仮説>このRE-CIRCUIT試験では、継続的に周術期に投与する抗凝固薬をワルファリンからダビガトラン(NOACと呼ばれる新規抗凝固薬の1つ)にしたら、もっと結果が良くなるのではないか? ということを検証している。そのため104の施設(日本の施設も12施設含まれている)から704人のAFアブレーション患者を登録し、術前投薬をワルファリンかダビガトランでランダム化した(ブラインドはしていない)。手技の4~8週前から抗凝固を開始し、両薬剤とも手技の日の朝まで服用することが決められていた。この結果、アブレーション後に大量出血を起こした患者はダビガトランで5人 (1.6%)、 ワルファリンでは22 人(6.9%)であった。統計的に補正しハザード比を計算すると、80%近くのリスク減ということになる(ハザード比:0.22、95%信頼区間:0.08~0.59)。さて、この稿のテーマは、なぜワルファリンはNOACに負け続けるのか、ということである。当初(2008年~13年くらいまで)心房細動や深部静脈血栓のRCTでワルファリンとNOACはまったくの互角であった。さらに、人工弁など抗凝固が「決定的に必要」な症例ではNOAC(ダビガトラン)のほうで成績が悪く、この分野での適応はまだNOACでは通っていない。しかし、冠動脈疾患を合併した心房細動の症例を対象とした試験(PIONNEER AF-PCI試験:昨秋発表)や今回のRE-CIRCUIT試験などでワルファリンはNOACに負け続けている(大出血などsafety endpointにおいて)。これは自分が思うに、ワルファリンはPIONNEER AF-PCI やRE-CIRCUITなど「抗凝固の適応そのものを問う」ような分野では、強く力を発揮し過ぎるのではないか? 臨床試験では●NOACは安全性に重点をおいた用量設定を行っている(しかも変動しない)●これに対し、ワルファリンは INR 2~3 をターゲットにTTR(percent time in therapeutic INR range)70%以上を要求されるこれが人工弁のようなスーパーハイリスク患者群であれば適切な威力を(塞栓などefficacy endpointに)発揮するものの、PIONEER の冠動脈疾患(抗血小板薬をすでに使用)+心房細動 や 今回 RE-CIRCUITの塞栓リスクはあるものの1%以下であるというアブレーション症例では強く効き過ぎるのではないかと考えられる(リアルな臨床の場であれば、INRを1.5に落としたりする症例が出るのであろうが、臨床試験ではそれが許されない)。このようにちょっとsafety endpointで考えるといつもワルファリンにかわいそうな結果になってしまうのだが、これもリアルといえばリアルなので(ガイドラインどおり厳密にやるとすればこういう結果になる)、NOACはコストの問題さえクリアできれば、引き続きこうした抗凝固に迷うような分野で力を発揮していくのではないだろうか。

1976.

IgG4関連疾患〔IgG4-related disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義IgG4関連疾患とは、リンパ球とIgG4 陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化により、同時性あるいは異時性に全身諸臓器の腫大や結節・肥厚性病変などを認める原因不明の疾患である。罹患臓器としては膵臓、胆管、涙腺・唾液腺、中枢神経系、甲状腺、肺、肝臓、消化管、腎臓、前立腺、後腹膜、動脈、リンパ節、皮膚、乳腺などが知られている。病変が複数臓器に及び、全身疾患としての特徴を有することが多いが、単一臓器病変の場合もある。臨床的には各臓器病変により異なった症状を呈し、臓器腫大、肥厚による閉塞、圧迫症状や細胞浸潤、線維化に伴う臓器機能不全など、時に重篤な合併症を伴うことがある。治療にはステロイドが有効なことが多い。ステロイド抵抗性・依存性や臓器障害を生じたIgG4関連疾患症例は、2015年7月から難病に指定された。■ 疫学IgG4関連疾患の診療は、種々の診療科にまたがるので、その患者数の推定は困難である。石川県で行われた調査では、年間336~1,300人のIgG4関連疾患の新規発症があり、わが国では2万6,000人の患者がいると推定される。わが国で2016年に行われた自己免疫性膵炎の全国調査では、自己免疫性膵炎の年間推計受療者数は1万3,436人、年間罹患患者数は3,984人、有病率10.1人/10万人と推定され、2011年の調査時の罹患患者数より倍増した。臓器によって異なるが、高齢の男性に多く発症する傾向がある。■ 病因IgG4関連疾患の病因は解明されていないが、免疫遺伝学的背景に自然免疫系、Th2にシフトした獲得免疫系、制御性T細胞などの異常が病態形成に関与する可能性が報告されている。■ 症状臨床症状・徴候は、罹患した臓器によって異なるが、臓器腫大や肥厚による閉塞・圧迫症状が主体となる。自己免疫性膵炎やIgG4関連硬化性胆管炎では膵腫大や胆管閉塞による閉塞性黄疸、IgG4関連涙腺・唾液腺炎では涙腺・唾液腺腫大、後腹膜線維症では尿管圧迫による水腎症や腎機能障害などがみられる。また、病態が持続進行すると、涙腺・唾液腺機能障害による乾燥症状や、膵内外分泌機能低下などが生じうる。■ 分類自己免疫性膵炎以外は、罹患した臓器の前に「IgG4関連」をつけて呼ぶ。IgG4関連疾患はほぼ全身の諸臓器に認められるが、現在IgG4関連疾患として明らかに認知されている疾患・病態を表1に示す。表1 IgG4関連疾患に包括される疾患・病態■ 予後IgG4関連疾患はステロイドが奏効するので、短期的予後は良好であるが、再燃する例が少なからず存在し、長期的予後は不明である。自己免疫性膵炎では、再燃を繰り返す例で、膵石が形成されることがある。また、IgG4関連疾患では、悪性腫瘍を合併しやすいとの報告もあり、注意を要する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ IgG4関連疾患包括診断基準いくつかのIgG4関連疾患には、その診断基準があるが、IgG4関連疾患を包括する診断基準が2011年に作られ、2020年に改訂された。この基準は、各臓器病変の専門医以外の臨床医の使用、各臓器の診断基準との併用、簡潔化、病理組織診断の重要視、ステロイドの診断的治療は推奨しないなどを基本的なコンセプトとして作成された。臨床的所見、血液所見、病理所見の組み合わせにより診断する(表2)。表2 2020改訂IgG4関連疾患包括診断基準できる限り組織診断を加えて、各臓器の悪性腫瘍(がんや悪性リンパ腫など)や類似疾患(原発性硬化性胆管炎、シェーグレン症候群、キャッスルマン病、2次性後腹膜線維症、ウェゲナー肉芽腫、サルコイドーシス、チャーグ・ストラウス症候群など)と鑑別することが大事である。また、この基準で確定診断ができなくても、各臓器の診断基準により診断が可能である。■ 自己免疫性膵炎1型自己免疫性膵炎は、IgG4が関連する1型と、IgG4とは無関係で好中球の膵管上皮内浸潤を特徴とする2型に分かれる。自己免疫性膵炎1型は、自己免疫性膵炎臨床診断基準2018(表3)を用いて診断する。表3-1 自己免疫性膵炎臨床診断基準2018表3-2 自己免疫性膵炎臨床診断基準2018本症の診断においては、膵がんや胆管がんなどの腫瘍性の病変を否定することがきわめて重要である。診断基準では、膵腫大、主膵管の不整狭細像、高IgG4血症、病理所見、膵外病変とオプションとしてのステロイド治療の効果の組み合わせにより診断する。びまん性の膵腫大を呈する典型例では、高IgG4血症、病理所見か膵外病変のどれか1つを満たせば自己免疫性膵炎と診断できる。限局性膵腫大例では、膵がんとの鑑別がしばしば困難であり、ERP(内視鏡的逆行性膵管造影)による主膵管の膵管狭細像が必要であったが、改訂基準ではMRCP、EUS-FNAとステロイド治療の効果で確定診断できるようになった。膵のびまん性腫大は、本症に特異性の高い所見である。腹部ダイナミックCTでは遅延性増強パターンと被膜様構造(capsule-like rim)が特徴的である(図1)。画像を拡大するERPによる主膵管のびまん性不整狭細像も本症に特異的である。狭細像とは閉塞像や狭窄像と異なり、ある程度広い範囲に及んで、膵管径が通常より細くかつ不整を伴っている像を意味する(図2)。画像を拡大する限局性の病変では膵がんとの鑑別がとくに困難であるが、狭細部より上流側の主膵管には著しい拡張を認めない、狭細部からの分枝の派生や非連続性の複数の主膵管狭細像(skip lesions)は、膵がんとの鑑別に有用である。血中IgG4値の上昇は高率に認められるので、その診断的価値は高い。しかし、IgG4値の上昇は他疾患(アトピー性皮膚炎、天疱瘡、喘息など)や一部の膵臓がんや胆管がんでも認められるので注意を要する。病理組織像は、lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)と呼ばれる特徴的な所見で、高度のリンパ球とIgG4陽性の形質細胞の浸潤と、紡錘形細胞が錯綜配列を示す花筵状線維化(storiform fibrosis)と閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis)を呈する(図3、4)。画像を拡大する画像を拡大する合併する他のIgG4関連疾患として、膵外胆管の硬化性胆管炎、涙腺・唾液腺炎と後腹膜線維症が取り上げられている。ステロイド治療の効果判定は、画像で評価可能な病変が対象であり、臨床症状や血液所見は対象としない。ステロイド開始2週間後に効果不十分の場合には、再精査が必要である。できる限り病理組織を採取する努力をすべきであり、ステロイドによる安易な診断的治療は厳に慎むべきである。■ IgG4関連硬化性胆管炎IgG4関連硬化性胆管炎の診断は、IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2020(表4)に基づいて、胆道画像検査、高IgG4血症、他のIgG4関連疾患(自己免疫性膵炎、IgG4関連涙腺・唾液腺炎、IgG4関連後腹膜線維症)の合併、胆管壁の病理組織所見、オプションとしてのステロイド治療の効果の組み合わせによって診断する。表4-1 IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2020表4-2 IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2020IgG4関連硬化性胆管炎の胆管像では、下部胆管狭窄を呈することが多いが、上部~肝門部胆管狭窄や肝内胆管狭窄を呈する例では、肝門部胆管がんや原発性硬化性胆管炎(PSC)との鑑別が問題となる。自己免疫性膵炎を合併しないIgG4関連硬化性胆管炎では、診断がとくに困難である。PSCでよくみられる全周性の輪状狭窄(annular stricture)、数珠状変化(beaded appearance)や肝内胆管の減少(pruned-tree appearance)などはIgG4関連硬化性胆管炎ではほとんど認められない(図5)。画像を拡大するIgG4関連硬化性胆管炎では、CTやUSなどにおいて、胆管狭窄部だけでなく狭窄のない部位の胆管にも壁肥厚が高頻度に認められ、この所見は胆管がんとの鑑別に有用である。経乳頭的胆管生検では採取検体が小さいため、IgG4関連硬化性胆管炎と診断できるだけの材料を採取できる例が少ない。肝内胆管に病変が及ぶIgG4関連硬化性胆管炎では、肝生検がPSCとの鑑別に有効なこともある。ステロイドへの良好な反応性は、IgG4関連硬化性胆管炎の診断をより確実なものとするので、ステロイドトライアルも診断の一手段となる。しかし、診断目的の安易なステロイド投与は慎むべきである。■ IgG4関連涙腺・唾液腺炎従来ミクリッツ病やキュットナー腫瘍と呼ばれていた疾患で、診断にはIgG4関連ミクリッツ病の診断基準が用いられる。涙腺、耳下腺、顎下腺の持続性(3ヵ月)、対称性の2対以上の腫脹を基本として、高IgG4血症か、涙腺・唾液腺組織に著明なIgG4陽性形質細胞浸潤(強拡大5視野でIgG4陽性/IgG4陽性細胞が50%以上)のいずれかを満たした場合に診断される。多くは対称性に涙腺、耳下腺、顎下腺、舌下腺、小唾液腺のいずれかが腫脹する。シェーグレン症候群との鑑別が問題となるが、シェーグレン症候群に比べて、抗SS-A/SS-B抗体が陰性であり、乾燥性角結膜炎や唾液腺分泌障害が軽度である。■ IgG4関連腎臓病IgG4関連腎臓病診断基準(表5)により診断される。表5 IgG4関連腎臓病診断基準IgG4関連腎臓病では、びまん性腎腫大、腎実質の多発性造影不良域、腎腫瘤、腎盂壁肥厚などの特徴的な画像所見を呈することが多い。腎組織は間質性腎炎が主体であるが、膜性腎症などの糸球体病変を伴う場合もある。■ IgG4関連後腹膜線維症腹部大動脈周囲や尿管周囲の軟部組織の肥厚が特徴で、腫瘤を形成したり水腎症を起こしたりする。生検困難例も多く、悪性疾患や感染症などによる2次性後腹膜線維症との鑑別が問題となる。■ IgG4関連呼吸器病変画像上、肺門縦隔リンパ節腫大、気管支壁/気管支血管束の肥厚、小葉間隔壁の肥厚、結節影、浸潤影、胸膜病変などの胸郭内病変を呈する。また、病理組織学的には、気管支血管束周囲、小葉間隔壁、胸膜などの間質に、著明なリンパ球とIgG4陽性細胞の浸潤と線維化を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)経口ステロイド治療が、IgG4関連疾患の標準治療法である。経口プレドニゾロン0.6mg/kg/日の初期投与量を2~4週間投与し、その後画像検査や血液検査所見などを参考に約2週間の間隔で5mgずつ漸減し、3~6ヵ月ぐらいで維持量まで減らす。治療への反応が悪い例では悪性腫瘍などを疑診して、再検査を行う必要がある。IgG4関連疾患では、ステロイド中止後にしばしば再燃が起こるので、再燃予防に少量のプレドニゾロン(5mg/日程度)の維持療法を1年前後行うことが多い。ただし、IgG4関連疾患は基本的に予後良好な疾患であることに加え、高齢者発症が多いので、ステロイド長期投与の副作用(腰椎圧迫骨折、大腿骨頭壊死、耐糖能異常など)を考慮して、画像診断および血液検査で十分な改善が得られた症例では、ステロイド投与の早期中止が望まれる。ステロイドを中止する際には、個々の症例における活動性を見極め、できるだけ少量投与に切り替えて中止するほうが安全である。また、ステロイド治療中止後も慎重な経過観察が必要である。ステロイド治療後に再燃を来しやすい因子として、治療後の画像上の改善が不十分、治療後も血中IgG4高値が続く、治療前の血中IgG4値が著しく高値である、などが挙げられる。再燃例では、ステロイドの再投与や増量により寛解が得られることが多い。欧米では、再燃例に対して、免疫抑制薬やリツキシマブを投与して、良好な成績が報告されている。2017年に作成された自己免疫性膵炎の治療に関する国際コンセンサスでは、ステロイドに抵抗性または副作用でステロイドが投与できない症例では、リツキシマブを第1選択とすると記載された。4 今後の展望IgG4の病因の解明と確実性のより高い血清学的マーカーの開発が望まれる。治療に関しては、Bリンパ球の表面免疫グロブリンのCD20抗原に対する抗体であるリツキシマブ(キメラ型抗CD20抗体、商品名:リツキサン)が、ステロイドや免疫抑制薬使用後に再燃したIgG4関連疾患に有効であったと海外で報告されている。しかし、リツキシマブは高価な薬剤であり、また、わが国ではIgG4関連疾患に対する投与は保険適用になっていない。5 主たる診療科消化器内科、リウマチ科、内分泌科、耳鼻咽喉科、腎臓内科、呼吸器内科、泌尿器科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報がん・感染症センター 都立駒込病院 IgG4関連疾患センター(世界で初めての専門外来センター)日本膵臓学会ホームページ さまざまなガイドライン(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター IgG4関連疾患(一般利用者向け、医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働省難治性疾患等政策研究事業 IgG4関連疾患の診断基準ならびに診療指針の確立を目指す研究班. 日内誌. 2021;110:962-969.2)日本膵臓学会 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業) IgG4関連疾患の診断基準ならびに診療指針の確立を目指す研究班. 膵臓. 2018;33:902-913.3)中沢貴宏ほか. 胆道. 2021;35:593-601.4)IgG4関連腎臓病ワーキンググループ.日腎会誌.2011;53:1062-1073.公開履歴初回2015年10月20日更新2017年04月18日更新2022年07月28日

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急性脳梗塞の血管内治療、2年後も効果が持続/NEJM

 血管内治療は、急性虚血性脳卒中患者の施行後90日時の機能的転帰を改善することが、MR CLEAN試験で確認されているが、この良好な効果は2年時も保持されていることが、本試験の延長追跡評価で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2017年4月6日号に掲載された。報告を行ったオランダ・Academic Medical CenterのLucie A van den Berg氏らは、「90日時の良好な効果はいくつかの試験やメタ解析で示されているが、長期的な転帰の情報はなく、これらの結果は実地臨床に有益と考えられる」としている。391例で血管内治療追加の2年時の効果を評価 MR CLEAN試験は、オランダの16施設が参加する無作為化試験であり、2010年12月~2014年3月に患者登録が行われた(オランダ保健研究開発機構などの助成による)。今回は、延長追跡試験の2年時の結果が報告された。 対象は、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS、0~42点、点が高いほど神経学的重症度が高度)が2点以上、脳前方循環の頭蓋内動脈近位部閉塞による急性虚血性脳卒中で、発症後6時間以内の患者であった。 被験者は、従来治療+血管内治療(介入群)と従来治療単独(対照群)に無作為に割り付けられた。従来治療は、ガイドラインに準拠した最適な治療法とし、アルテプラーゼの静脈内投与などが含まれた。血管内治療は、主にステント型血栓回収デバイスを用いた機械的血栓除去術が行われた。 主要評価項目は、2年時の修正Rankinスケール(mRS)のスコアとし、機能的転帰を0(症状なし)~6(死亡)で評価した。副次評価項目は、2年時の全死因死亡、QOLなどであった。QOLは、EQ-5D-L3質問票(-0.329~1点、点数が高いほど健康状態が良好)に基づく健康効用指標を用いて評価した。 元の試験に含まれた500例のうち、391例(78.2%)から2年間の追跡データが得られた(介入群:194例、対照群:197例)。死亡に関する情報は459例(91.8%)で得られた。2年時も、mRS、QOLが有意に良好 ベースラインの全体の年齢中央値は66歳、58.6%が男性であり、NIHSS中央値は18点(IQR:14~22)であった。約9割がアルテプラーゼ静脈内投与を受け、発症から投与までの期間中央値は85分であった。介入群の発症から鼠径部穿刺までの期間中央値は263分だった。 2年時のmRSスコア中央値は、介入群が3点(IQR:2~6)と、対照群の4点(同:3~6)よりも良好であった(補正共通オッズ比[OR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.15~2.45、p=0.007)。 極めて良好な転帰(mRSスコア:0または1点)の患者の割合は、介入群が7.2%、対照群は6.1%であり、両群に有意な差は認めなかった(補正OR:1.22、95%CI:0.53~2.84、p=0.64)。一方、良好な転帰(mRSスコア:0~2点)の患者の割合は、それぞれ37.1%、23.9%(2.21、1.30~3.73、p=0.003)、好ましい転帰(mRSスコア:0~3点)は55.2%、40.6%(2.13、1.30~3.43、p=0.003)と、いずれも介入群が有意に優れた。 2年累積死亡率は、介入群が26.0%、対照群は31.0%であり、両群に差はみられなかった(補正ハザード比:0.9、95%CI:0.6~1.2、p=0.46)。QOLスコアの平均値は、介入群が0.48と、対照群の0.38に比べ有意に良好だった(平均差:0.10、95%CI:0.03~0.16、p=0.006)。 90日~2年の間に、主要血管イベントが8例に発現した。介入群は239人年に5例(0.02/年)、対照群は235人年に3例(0.01/年)の割合であり、両群に有意な差はなかった。 著者は、「90日と2年時の結果は類似していたが、異なる点として、(1)延長追跡期間中に、介入群の死亡率が対照群よりも低くなった(有意差はない)のに対し、90日時の死亡リスクは2群でほぼ同様だった、(2)2年時のmRSスコア0~1の患者の割合が、両群とも90日時よりも低下したことが挙げられる」とし、後者の説明として「脳卒中が日常の活動性に及ぼす影響が十分に明らかでない時点で早期にリハビリを開始し、その後、支援の少ない自宅での生活を続けたため、機能的能力のわずかな変化だけで、mRSスコア0の患者が1~2に進行した可能性がある」と推察している。

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半数は目標値に達していなかったACS患者のLDL-C:EXPLORE-J試験

 2017年4月4日、サノフィ株式会社主催のメディアラウンドテーブルにて東邦大学 医療センター大橋病院 中村正人氏が、急性冠症候群(ACS)患者における脂質リスクとコントロールに関する前向き観察研究「EXPLORE-J試験」のベースラインデータについて紹介した。ACS患者の3割がスタチンを使用 EXPLORE-J試験は、2015年4月~2016年8月まで59施設から2,016例の登録が終了した。患者の平均年齢は66.0歳、男性が80.4%、BMIは24.2であった。ACSの病型はST上昇型心筋梗塞(STEMI)が61.8%、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)が16.1%、不安定狭心症が22.0%であった。危険因子は脂質異常症77.6%、高血圧72.9%、糖尿病34.7%、虚血性心疾患18.0%、現喫煙者37.8%、過去喫煙27.8%であった。26.9%がスタチンを服用(高力価スタチン服用は2.3%)していた。2次予防例の半数がLDL-C目標値100未満を達成できず ACS患者の入院時のLDL-C値(n=1,859)の分布をみると、対象者の平均値は121.7mg/dLであった。そのうち100未満は29.6%、FH診断の基準である180以上は7.9%であった。一方、虚血性心疾患の既往患者(n=333)のLDL-Cは103mg/dLであった。動脈硬化予防疾患ガイドラインの2次予防の管理目標値100未満の患者は52.0%であり、半数は目標値に達していなかった。 アキレス腱肥厚の測定結果(n=1,787)をみると、中央検定の中央値は6.7mm、基準値の9mm以上は6.4%であった。 家族歴を収集できた患者(n=1,412)から早発性冠動脈疾患の家族歴を調べた結果、家族歴はありは10%という結果だった。家族性高コレステロール血症(FH)の基準を満たす患者は3%、実臨床ではそれ以上か 本邦では、ヘテロ型FH が200~500人に1人、ホモ型FHは100万人に1人といわれているが、ASCを対象としたEXPLORE-Jでの結果はどうか、アキレス腱肥厚を利用した1,391例からの中間解析を行った。結果、成人FHの診断基準(1.未治療のLDL-C180以上、2.腱黄色腫、アキレス腱肥厚あるいは皮膚結節性黄色腫、3.FHまたは若年性冠動脈疾患の二親等以内の家族歴、のうち2項目以上該当)を満たす患者は全体で3.0%、55歳未満では5.9%であった。実際には、スタチンの服用で調査時すでにLDL-Cが低下している患者もあり、実臨床ではこれ以上のFH患者がいると推定される。ASC患者のLDL-C管理状況、病態は10年前と変わらず EXPLORE-Jでは、2008~09年に本邦で行ったPACIFIC試験と比較し、ASC患者のLDL-C管理状況、病態の変化を評価した。結果、LDL-C平均値120、6割というSTEMIの割合は、共にPACIFIC試験とほぼ同等で、10年前からほぼ変化していなかった。今後は絶対リスクの高い患者を明確にし、個別のLDL-C管理に LDL-C70でもイベントを起こす人がいる一方、110でもイベントを起こさない人がいる。年齢、喫煙、糖尿病など複合的な要因が関連してリスクは変わる。一律のLDL-C基準値を決めるにとどまらず、今後は絶対リスクが高い患者を明確にしていき、患者に個別化されていくべきだと、中村氏は述べた。

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ポケット呼吸器診療2017

臨床で使える小さなマニュアル―これをポケットに入れておけば大丈夫!定番の『ポケット呼吸器診療』最新版の登場です。今回は、「2017年版になってどこが変わったの?」がわかります→改訂部分を色付け各種ガイドラインの改訂に対応など、最新情報にアップデート内容量もさらに充実。前年版の30%増! (150→200ページ)の3つを主に改訂しました。また、本書の特徴としては、臨床で使える小さなマニュアル(新書版)である呼吸器疾患の診療手順/処方例/診療指針・ガイドラインを掲載患者さんへの病状説明のポイント、よくある質問の解答例も掲載 の3点が挙げられます。小さいながらも、診療現場で役に立つ1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    ポケット呼吸器診療2017定価1,800円 + 税判型17.2 × 10.5 × 0.9 cm頁数212頁発行2017年3月監修林 清二著者倉原 優Amazonでご購入の場合はこちら

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第36回

第36回:急性副鼻腔炎に対する抗菌薬投与は、発症7~10日以内で症状改善しない場合に考慮する監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 急性副鼻腔炎とは「急性に発症し、罹病期間が1カ月以内と短く、鼻閉、鼻漏、後鼻漏、咳嗽を認め、頭痛、頬部痛、顔面圧迫感などを伴う疾患」と定義されている1)。原因としてはウイルス性、細菌性が挙げられるが、最近はアレルギー性鼻副鼻腔炎も増加している2)。このため抗菌薬投与が効果を示す細菌性副鼻腔炎か否かを鑑別する必要があるが、実臨床で正確に判断することは難しい。日本鼻科学会からは、重症度スコアと、小児および成人の重症度別治療アルゴリズムが提唱されている3)。 これによると、軽症の場合は小児、成人いずれの場合においても抗菌薬は使用せず、5日間の経過観察を行い、症状が改善しない場合にはAMPCなどの抗菌薬を考慮することになっている。したがって、急性副鼻腔炎に対しては、ルーチンで抗菌薬を処方せず、適正な使用が求められる。 以下、American Family Physician 2016年7月15日号より4)急性副鼻腔炎は、外来診療におけるcommon diseaseの一つである。多くの場合は、ウイルス性上気道炎が原因である。臨床所見だけでは、抗菌薬が効く細菌性副鼻腔炎かどうかの判断は難しい。次の4項目の所見がある場合は、細菌性副鼻腔炎の可能性が高まる。症状の再燃膿性鼻汁血沈1時間値>10mm鼻腔内の膿汁貯留ガイドラインによって違いはあるものの、7~10日間以内に副鼻腔炎症状が改善しない場合や、症状が増悪する場合は抗菌薬療法を考慮する。抗菌薬療法の第1選択は、AMPC(商品名:サワシリン)500mg 8時間毎、またはAMPC/CVA(同:オーグメンチン)500mg/125mg 8時間毎の5~10日間投与である。レスピラトリーキノロン(LVFX、MFLX)は、βラクタム系抗菌薬と比較して有益性は示されておらず、さまざまな副作用リスクを伴っているため、第1選択として推奨されていない。マクロライド系、ST合剤、第2世代および第3世代セファロスポリン系は、S.pneumoniaeやH. influenzaeに効かないことが多いため、初期治療として推奨されていない。最近のガイドラインでは、上気道症状を認めてから7~10日間の経過観察を推奨している。鎮痛薬、鼻腔内ステロイド投与、生食による鼻腔内洗浄による治療効果のエビデンスは乏しい。また、合併症のない急性副鼻腔炎の診断に対する放射線画像検査は推奨されない。治療反応性が乏しい症例では、合併症や解剖学的異常の有無について単純CTが有用である。十分に内科的治療を行っているにもかかわらず、症状が遷延する場合や、まれな合併症が疑われる場合は、耳鼻科への紹介が必要。専門医にコンサルトすべき一覧閉塞を引き起こすような解剖学的異常眼窩蜂窩織炎や骨膜下膿瘍、眼窩膿瘍、意識障害、髄膜炎、静脈洞血栓症、頭蓋内膿瘍、Pottʼs puffy tumorなどの合併症状を呈している(Pottʼs puffy tumorは1768年にSir Percival Pottが提唱した疾患概念で、前頭骨骨髄炎が原因で骨外に1つ以上の膿瘍を形成した状態をいう)アレルギー性鼻炎に対する免疫療法の評価頻回再発例(年3~4回の再発)真菌性副鼻腔炎、肉芽腫性疾患、悪性新生物の疑い免疫不全患者院内感染39度以上の発熱が続く重症感染症抗菌薬療法を延長投与したにもかかわらず治療効果がみられない場合非典型的な起炎菌、抗菌薬抵抗性起炎菌が検出された場合※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 日本鼻科学会編:急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年版 2) Suzuki K, Baba S: Local use of antibiotics for paranasal sinusitis. In: Proceedings of the XII international symposium of infection and allergy of the nose. Am J Rhinol 1994; 8: 306-307 3) 日本鼻科学会編:急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年版(追補版). 4) Aring AM,et al. Am Fam Physician. 2016;94:97-105

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