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双極性障害の薬理学的マネジメント~日本の専門医のコンセンサス

 慶應義塾大学の櫻井 準氏らは、双極I型障害および双極II型障害の精神薬理学的治療に関する日本臨床精神神経薬理学会が認定する専門医によるコンセンサスガイドラインを作成することを目的に本研究を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年6月17日号の報告。 日本臨床精神神経薬理学会が認定する専門医を対象に、双極性障害治療における19の臨床状況について、9段階のリッカート尺度(同意しない「1」~同意する「9」)を用いて、治療オプションの評価を依頼した。119件の回答が得られた。治療オプションを、1次、2次、3次治療に分類した。 主な結果は以下のとおり。・双極I型障害の治療では、以下の第1選択として、リチウム単剤療法が推奨された。 ●躁病エピソード(平均±標準偏差:7.0±2.2)●うつ病エピソード(7.1±2.0)●維持期(7.8±1.8)・リチウムと非定型抗精神病薬の併用療法は、以下の場合に推奨された。●躁病エピソード(7.7±1.7)●うつ病エピソード(7.1±2.0)●混合性の特徴を伴わない(6.9±2.2)●維持期(6.9±2.1)・双極II型障害の治療では、以下の第1選択として、リチウム単剤療法が推奨された。 ●躁病エピソード(平均±標準偏差:7.3±2.2)●うつ病エピソード(7.0±2.2)●維持期(7.3±2.3)・リチウムと非定型抗精神病薬の併用療法は、躁病エピソード(6.9±2.4)に推奨された。・抗精神病薬単独療法または抗うつ薬治療は、いずれの場合においても第1選択として推奨されなかった。 著者らは「本知見は、現在のエビデンスを反映しており、双極性障害に対するリチウム治療のエキスパートコンセンサスが得られた。また、双極性障害に対する抗精神病薬および抗うつ薬の使用では、有効性と忍容性を考慮する必要がある」としている。

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大学の昇進人事で出産や病気による休業期間の考慮には驚いた(解説:折笠秀樹氏)-1258

 アカデミア、つまり大学における昇進基準に関する調査報告です。生物医学の教師陣が昇進あるいはテニュア(終身雇用)の基準ですが、指針を持つ大学は92/146(63%)でした。ランキングの高い大学ほど持っていました。 従来型と非従来型の昇進基準について調査しています。従来型としては、1)論文、2)著者の順序、3)インパクトファクター(IF)、4)研究費獲得、5)名声です。私たちの基準もほぼ同じだと思います。教授の基準で見ると、論文(95%)、研究費(67%)、名声(47%)、著者順(34%)、IF(28%)の順でした。まあ納得できる結果かと思います。 非従来型の基準としては、1)引用索引DBの使用割合、2)データ共有の割合、3)オープンアクセス論文の割合、4)研究登録の割合、5)報告ガイドラインの遵守割合、6)研究結果共有の割合、7)休業期間の考慮割合です。こちらはあまり聞いたことがありません。研究者としての姿勢を問うた基準のようです。同じように教授の基準で見ると、休業考慮(35%)、引用索引(28%)、研究共有(2%)、データ共有(1%)、残りは0%でした。出産や病気などによる休業期間を考慮しているのが35%というのは驚きでした。 教授昇進に関して、従来型の基準は3個(中央値)、非従来型の基準は1個(中央値)でした。従来型は論文、研究費、名声が上位3位です。非従来型は1個のようですが、休業か引用索引かどちらかなのでしょう。 休業期間を昇進の際に考慮しているのは、教授選考だけでなく、助教・准教授・テニュアすべてで35~50%と高いです。女性には出産の負担が多いため、女性ならではの実情を配慮した基準になっています。日本では決まり文句、「男女共同参画を推進しています。女性研究者の積極的な応募を期待します」を目にします。これはマイノリティ配慮の方針だと思われますが、女性だからといった配慮より、研究に携われなかった期間を考慮するほうが公平に感じます。日本でも、応募書類に休業期間とその理由を含めるべきかもしれません。

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第16回 乳腺外科医の有罪判決、日本医師会・東京保健医協会などが強く抗議

<先週の動き>1.乳腺外科医の有罪判決、日本医師会・東京保健医協会などが強く抗議2.健康保険証のオンライン資格確認が来年から可能に3.循環器病対策推進基本計画の骨子案、2040年までに健康寿命の3年延伸など4.生活保護受給者の医療扶助、頻回受診対策などの検討が開始5.コロナ感染拡大が続き、今後の社会経済活動はどうなる?1.乳腺外科医の有罪判決、日本医師会・東京保健医協会などが強く抗議足立区・柳原病院の乳腺外科医が準強制わいせつ罪に問われ、13日の控訴審で言い渡された懲役2年の実刑判決をめぐって、日本医師会の今村 聡副会長は見解を示した。裁判では、独自の基準でせん妄や幻覚の可能性を否定した原告側の医師の見解を採用したこと、全身麻酔からの回復過程で生じるせん妄や幻覚は通常の医療現場でも生じていること、検察側が根拠としたDNA鑑定などの証拠がずさんな検査に基づくことなどを指摘し、控訴審の有罪判決に強く抗議した。同様に、東京保健医協会からも、「医師団体としても一般市民としても絶対に許容できない」として、抗議の見解を声明として発表している。(参考)乳腺外科医控訴審判決に関する日医の見解について(日本医師会)東京高裁 第10刑事部の乳腺外科医裁判逆転有罪判決に対する声明(東京都保険医協会)2.健康保険証のオンライン資格確認が来年から可能に厚生労働省は、オンラインで健康保険証の確認ができるように、健康保険法施行規則の改正に乗り出すことを決定し、省令案を公表した。本年10月に施行予定であり、医療機関などで療養の給付を受ける際、被保険者はマイナンバーカードをカードリーダーにかざすことで、資格確認することが可能となる見込み。なお、オンライン資格確認や特定健診情報の閲覧は2021年3月から、薬剤情報の閲覧は2021年10月から開始される予定。医療機関向けのカードリーダーは、「医療機関等向けポータルサイト」で申し込むことができる。医療情報化支援基金により補助されるため、原則医療機関の負担は生じない。(参考)医療情報化支援基金に関するポータルサイト開設のお知らせについて(厚労省)オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)(同)オンライン資格確認で健康保険法施行規則改正へ 厚労省が省令案公表、10月に施行予定(CBnews)3.循環器病対策推進基本計画の骨子案、2040年までに健康寿命の3年延伸など厚労省は、16日に第5回循環器病対策推進協議会を開催し、第1期循環器病対策推進基本計画案をとりまとめた。2019年12月に施行された「脳卒中・循環器病対策基本法」に基づいて策定され、国の循環器病対策の基本的な方向について明らかにするものである。主に「循環器病の予防や正しい知識の普及啓発」、「保健、医療及び福祉に係るサービスの提供体制の充実」、「循環器病の研究推進」の3つの施策を実施することにより、「2040年までに3年以上の健康寿命の延伸及び循環器病の年齢調整死亡率の減少」を目指す。(参考)循環器病対策推進基本計画(案)(厚労省)循環器病対策の現状等について(同)4.生活保護受給者の医療扶助、頻回受診対策などの検討が開始厚労省は「医療扶助に関する検討会」の第1回会合を15日に開催した。これは、2019年12月に閣議決定された「新デジタル・ガバメント実行計画」において、個人番号カードを利用したオンライン資格確認について、2023年度の導入を目指し検討を進めることとなっている。このため、生活保護受給者の医療扶助資格について、オンライン資格確認導入に向けた議論が開始される。今年中に取りまとめ、年度内を目処に頻回受診対策などの議論が行なわれる見込み。(参考)第1回 医療扶助に関する検討会(厚労省)5.コロナ感染拡大が続き、今後の社会経済活動はどうなる?東京都では連日多くの新型コロナウイルス感染者が確認されており、経路不明者も多い。一方、政府は22日から開始されるGo Toキャンペーンの内容や条件について、直前に変更を発表したが、再度の緊急事態宣言については否定するコメントを出すなど、難しい状況が続いている。感染拡大の防止対策として、PCR検査の積極的な実施、保健所の体制強化、感染防止のガイドライン徹底などを事業者に求め、利用者にはガイドラインを守った店の利用を求めている。海外のように再度の規制強化には動いてはいないが、屋内のイベント開催における人数制限の撤廃などを見直す可能性もある。さらに、夜の繁華街などに立ち入り検査を行うことや、新型コロナ対策特別措置法の再改正などにより、今後新しい動きが出てくる可能性は高い。(参考)接待伴う飲食店対応 経済再生相 1都3県知事に協力要請 コロナ(NHK)コロナ感染防止図り 社会経済活動の段階的な引き上げ目指す(同)

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第43回 心電図中級への道:右心系を“チラ見”するテクニック(後編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第43回:心電図中級への道:右心系を“チラ見”するテクニック(後編)前回は「心室肥大」、なかでも右室に関して肥大の病態について考えました。心電図は肥大の診断精度の面では心エコーに及びませんが、実臨床で右室肥大(RVH)を思わせる所見に出くわした時、どう考え対処すれば良いのかを考えていきましょう。実際の心電図を用いてDr.ヒロなりの実用的な診断手順を丁寧にレクチャーします!【問題1】歩行時の息切れを主訴に紹介受診した80歳、女性。膠原病の加療中。来院時心電図(図1)に関して、以下の文章を埋めよ。基本調律は、心拍数約80/分の(A:異所性心房調律、洞調律、心房細動)である。QRS電気軸は(B:  )°と(C:正常軸、左軸偏位、右軸偏位)を示し、V1誘導に「高いR波」を(D:認めない、認める)。また、同誘導には“ストレイン型”を思わせるST-T変化を(E:認めない、認める)。また、V5、V6誘導で(F:R≒S、R>S、R<S)の所見も認められる。右房拡大の所見は(G:認めない、認める)。以上から総合するに、本心電図は「右室肥大」と診断(H:できない、できる)。(図1)来院時の心電図画像を拡大する解答はこちらA:洞調律、B:120(130)、C:右軸偏位、D:認める、E:認める、F:R<S、G:認めない、H: できる解説はこちら今回は実際の心電図を用いて前回から引き続き「右室肥大」(RVH)について考えてみたいと思います。Dr.ヒロ流の心電図の系統的判読(第1回)に触れつつ解説していきましょう。Aこれは“イチニエフの法則”そのものですね(第2回)。B出た!電気軸の数値を求める問題。これは“トントン法”でしょう。aVRが“トントン・ポイント”(TP)で良ければ「+120°」、もう少し欲張ってaVL、Iに続いて「-aVR」はまだ下向き、TPは続くIIよりも「-aVR」サイドと読んで「+130°」と答えてくれたら熱心な“ドキ心”受講生ですかね(トントン法Neo、第9回、第11回)。CQRS波がIは下向き、II(aVF)は上向きです(第8回)。D「右軸偏位」とともに「RVH」診断の根幹をなす所見です。絶対値では「7mm」ですが、本来「rS型」(第17回)が標準的なV1誘導にあって、陽性(上向き)成分がこれだけ目立つのは異常です(波形はやや非典型の「qRS型」です)。E「ストレイン型」という言い方はあまり推奨されませんが、説明や理解には好都合です。“寝そべった2の字”を思い出してください(第39回)。FV5やV6では本来左室収縮をモロに反映した“ご立派”なR波がテッパンですが、これが逆転(R<S)してしまうのが「RVH」の特徴の1つです。G左室肥大(LVH)でも「左房拡大」は参考所見でした(第39回)。心臓そのものを直接画像化して診断する心エコーとは異なる、心電図なりの“苦肉の策”は、周囲(心房)の状況から推察するというものです。う~ん、なんか“探偵”チックですね(笑)H以上から心電図(図1)は「RVH」に該当します。精査の結果、膠原病に起因する肺高血圧症を認める症例でした。“とにかくニガテなんです”問題1はどうでしたか? 日々の臨床現場で皆さんが遭遇する心電図には、“(ごく)たまに”このようなモノが混じります。ここでは問題を“穴埋め”としましたが、実際ノーヒントでこうした考察が自然にできますか? そうです。実臨床にはヒント付きの問題文も“選択肢”もないのです。う~ん…それが冒頭で『RVH心電図の克服は“中級”へのパスポート』と述べた理由です。意外に難しいんですよ、実際。かつてのボクもそうでしたが、“時たま”しか出会わない異常な所見にアンテナを作動させ、拾い集めた所見を総合して「RVH」と診断するのは難しい、というかニガテだという方は少なくないと推察します。しかし、人間だけではなく、心電図自体も「RVH」の診断が得意ではないんです。一部に特異度はまずまずとする報告がありますが1)、とにかく感度が低いんです。心エコーに比べて心電図による「左室肥大」の診断力は見劣りしますが、「RVH」となるとそれに輪をかけて差が開くわけです。この理由はいくつかありますが、一番大きいのは左室と右室の重量の差からくる“筋力”(より正確には筋量)の違いです。医学部生の時、心臓のサイズはたしか“握りこぶし”(手拳大)くらい、重さは約300gと習いました(ボクは今でも患者さんにそう説明しています)。では、心室つまり右室や左室の重さってどうなんでしょう? もちろん、性別や体格(骨格筋量)にもよるでしょうね。海外データでは心室中隔を除いた「自由壁」(free wall)と呼ばれる部分の場合、右室は約45g、左室はその2.5倍くらいと報告されています2)。現実的には心室中隔も左室の“所有物”ですから、左室の重量は右室の3倍超であることがわかります。心電図の世界では、波高が心筋重量を反映するので、この比を信じるのなら私たちが普段目にするQRS波形は、“8割方”ほぼ左室成分で構成されていると考えられるわけです。「肥大」の心電図は極論したら “目立つ”(QRS)波形になるということなので、RVHが成立するには、ちょっとやそっとの筋量アップではダメで、正常な左室でも3倍超、左室に肥大があればさらに高いハードルを乗り越える必要があるわけです。もともとの頻度の差に加えて、左室の影響で“薄まって”しまい、程度が弱いものは心電図に表出しにくいというRVHの背景を知っておきましょう。■「RVH」心電図が難しいワケ■1)もともと疾患(病態)頻度が低く見慣れない2)左室の影響で所見が薄まりがち3)「右脚ブロック」とややこしい最後の「右脚ブロック」とややこしいという点は、同じことを意識されている方も多いかもしれません。かつてのボクも似ている所見にかなり困惑した記憶があります。この点について次回に詳しく述べたいと思います。“2大所見から押さえよう”悲観的な話ばかりするのはボクの本意ではありません。稀にでも出くわした時、ビシッと見逃さずに「RVH」と指摘するための基本からお話します。拙著から抜粋した図をご覧ください(図2)。(図2)代表的なRVHの心電図基準画像を拡大する左室の場合もそうでしたが、単一の心電図所見で「RVH」の診断を下すことはできず、複数の所見の“合わせ技”が基本となります。左室肥大では、あの“浪費エステ”として有名なRomhilt-Estesポイントでも注目点が5つくらいありましたよね(笑)。基本はそれの“左⇔右チェンジ”を行えばいいのです。まずは必須の2所見から。■1:右軸偏位-これはほぼマスト(MUST)1つ目は「右軸偏位」です。定性的には、QRS波の「向き」がI誘導で下向きとなります。基本的には“右軸偏位なくしてRVHなし”と考えてもらってOKなくらい重要な所見です。「左室肥大」では「左軸偏位」は補助基準の一つであったのと対照的です。これは、しばしば右室と左室の“綱引き”で例えられますが、普通なら「1人 vs. 3人」で試合している圧倒的不利な状況なはずが、自分のゾーン(右方)に引っ張り込んでいるという状況は、「RVH」があるなら相当のもんだということ。実は「+110°以上」という条件もついているのですが、“トントン法Neo”を知らない場合は、自動計測結果に頼らざるを得ないでしょう(第11回)。「左軸偏位」で「-30~0°」なら“軽度の”と呼んだように、正常者(とくに若年者)でも時に認める「+90°+α」くらいの軽い変化ではなく、ガッツリ右軸に向いていることが重要だというわけです。「右軸偏位」では、普通はII(とaVF)のQRS波は上向きですが、「RVH」がキツイ例ではここも下向きになることがあります。“ドキ心”では「高度の軸偏位」ゾーンに該当しますが、その場合は右側から“振り切れて”この領域に達したという「強い右軸偏位」ととらえるようです。代表的には「S1S2S3パターン」というI、II、IIIすべてで陰性成分が優勢となる所見も右心系負荷を示唆する所見の一つですが、軸偏位と関連付けて覚えておけば良いと思います。■2:V1はキーとなる誘導2つ目は波高に関してです。これも「肥大」では大切な所見です。ボクは人間の選り好みは基本しませんが、こと誘導に関しては「V1誘導」がかなり好きです。不整脈から波形診断まで随所で活躍してくれるブイワン君は「RVH」でもキーとなる誘導です。もちろんそれは、位置的に右室のド真ん前に電極を貼るからです。左室肥大では「(左室)高電位」が特徴でしたが、“左方面”の代表であるV5(またはV6)の反対側に視点を移しましょう。それが“右方面の雄”V1で見られます。V1誘導では、正常ですと「rS型」(右室パターン)が見られるのですが(第17回)、「RVH」では普段小さい「r波」が高い「R波」に“変身”します。絶対値では「7mm以上」ですが、定性的な「RV1>SV1」*1も相対的なR波増高ととらえてください3)。*1:「R>S in (lead) V1」や「R:S ratio in V1>1」などの表現もすべて同義。この所見は、Dr.ヒロ流の判読語呂合わせでは、“クルッと”の“ル”でスパイク・チェックをする時に行うと良いでしょう。側胸部誘導(V4~V6)の波高や全体的な振幅に加えて胸部誘導は「R波の増高過程」(R-wave progression)を確認しますよね? V1から下方に行くに連れ徐々にR波は大きくなり、逆にS波はすぼんでいくというヤツです。はじめは小さい「r波」であるはずが、スタート(V1)からいきなりドンッと7mmもあると、目にギョッときます。これで気づいてください。そのほか、何かと足し算が好きで“そこのライオン”でも登場したSokolow & Lyonペアの「RV1+SV5(V6)>10.5mV」という基準4)まで知っている人は少々マニアックかな。現実的には11mm以上ですが…。昔に比べて格段に記憶力の衰えたDr.ヒロはこうした細かな数字を逐一覚えられません。先ほどの心筋重量が右室は左室の3~4分の1だと知っておいて、「左室肥大」の基準Sokolow-Lyon index「SV1+RV5(V6)≧35mV」や単体の「RV5(V6)≧25~30mm」(諸家で多少の差あり)の数値を同じくらいの“縮尺”にして考えるというイメージ作戦で「10.5」も「7」も何とかなっております(笑)。これらの所見を1つでも満たす場合、個人的には“右室高電位(差)”とでも呼びたいところなんですが、正式には「高いR波(V1)」という所見になります。■3:「高いR波」インスピレーションこれはおまけです。V1誘導で「高いR波」を見た時に考える病態を5つ言えますか? ボクがレジデントか大学院生になりたての頃、ある先生に質問されました。解答は以下通り。■高いR波(V1誘導)を見たら何を考える?■右室肥大(RVH)(陳旧性)後壁梗塞WPW症候群(A型)完全右脚ブロック反時計回転(小児・若年成人≒正常亜型)実はコレ、見逃しやすい疾患の“備忘録”的にも使えるんです。当時とても感動したように思います。後年、BMJ誌でほぼ同様のリストが列挙されていた5)ことに“身震い”し、それ以来、決して忘れることはありません。それぐらいインパクトのある内容だと思います。“補助所見も知っておくと強い”「RVH」に関しては上の2つはほぼ“must”と言える所見です。そのほか以下の所見も参考にしてください。■「RVH」の参考所見■(a)2次性ST-T変化(V1ほか:右前胸部誘導)(b)V5、V6で“目立つ”S波(c)右房拡大(d)R peak time(V1)≧0.04秒(40ms)(a)いわゆる“ストレイン型”ですね。右室への圧負荷で求心性肥大を呈する場合が典型的で、「高いR波」が出るV1誘導でこれも確認すれば良いでしょう。心電図所見としては、“お隣”(V2)以下、V3くらいまで(右前胸部誘導)見られることもあります。(b)上記1の「高いR波」所見を反対側から見るイメージですか。V1・V2の「R波」は反対側(V5・V6)で言う「S波」で、そこが出張ってきます。まぁ結局同じことととらえても悪くないですが、「RVH」では胸部誘導が上から下までS波が目立ち、V5(またはV6)でも「R<S」(反時計回転)というケースをまとめ(図2)の3つ目の条件として挙げています。心電図(図1)の胸部誘導も全部「rS型」になっていますでしょ。これがポイントなんです。「deep S(-wave)」と呼べる絶対値基準の「10mm」(V5)、3mm(V6)はメチャクチャ余裕がある方だけでOKです。ボクはV5で勝負することにしているので、前者は“1cm”として頭に記憶させています。(c)これも「左室肥大」の時の「左房拡大」を“左⇔右チェンジ”するだけです。負荷が心室から心房へ波及することを想定しています。II、III、aVF(下壁誘導)やV1(V2)誘導でP波高が高くなるのでした。(d)「左室肥大」でQRS幅がややワイドになる、という話をしましたが、その時に“(delayed onset of) intrinsicoid defletion”や“R peak time”と呼んだQRS波の「はじまり」~「頂点」までの時間です。これが1mm(0.04秒[40ms])以上*2でやや右室興奮が“もたつく”様子を反映していると考えて下さい。ただしQRS幅全体としては幅広(wide)の基準(0.12秒[120ms]:横幅3mm)には至らないことも大事です(右脚ブロックとの大きな違いがココ)。*2:正確には>0.035秒[35ms]。“本日のまとめ”今回の原稿を書くにあたり、愛用している教科書や論文・ガイドライン4)、6)、7)を見直してみました。ただ、「RVH」の心電図については、明快に統一された診断基準を見つけることはできませんでした。「右軸偏位」と「高いR波(V1誘導)」の2つを中核に、「+α的な補助所見が何個あったら」みたいなのもありません。国内の心電計メーカーの自動診断法も参照しましたが、人間にはおよそわかりにくい数値基準であることを除いては類似の要素を組み合わせたスコアリングシステムが採用されているようでした。という訳で、Dr.ヒロは普段どのように「RVH」の心電図と向き合っているのかを図式化してみました。LVHの解説に際して作成したような実践的なフローチャート(図3)を提示してレクチャーを終わろうと思います。もちろん論文レベルのエビデンスはないですし、そういう意味で「信じるか否かはアナタ次第」(笑)という面がぬぐえませんが…。一人の若き“心電図職人”のアタマの中がどんなものか興味本位で見てもらったら幸いです。(図3)Dr.ヒロオリジナル右室肥大[RVH]の診断フローチャート画像を拡大するはじめに「wide QRS」、とくに「右脚ブロック」はひとまず除いて議論する点と、やはり「RVH」と診断するには中核2所見を中心に全体的に3つ以上は基準を満たして欲しいと思っています。ここでも得意の「あり」(definite)と「疑い」(probable)で自分なりの“重みづけ”もしています。「右軸偏位」と「高いR波(V1)」のどちらを先に見るかですが、Dr.ヒロ流ではQRS波のスパイク・チェックを「向き」「高さ」「幅」の順で捉えていきます。まず「右軸偏位」に気づいて右心系負荷を疑い、次に「高さ」で胸部誘導のR波増高過程を確認してください。その段階で「高いR波(V1)」もあったら、いよいよ「右室肥大(RVH)」が怪しいという風に考えましょう。補助所見の中では、(図2)で取り上げたV1(またはV2)“ストレイン所見”(2次性ST-T変化)とV5・V6での「深いS波」が特に重要ですが、もともと感度が低いわけですから、病歴・背景疾患や心エコー・MRI・CTなど、ほかの画像所見などもしながら考える姿勢を身に付けることで臨床的に深い洞察が可能になると信じています。では、また次回。次回は「右脚ブロック」での状況などを話したいと思います!Take-home Message心電図による「右室肥大」(RVH)の診断感度は低く、過剰な期待は禁物!「右脚ブロック」と混同せず、「右軸偏位」と「高いR波(V1)」に補助所見、自動診断結果や他の画像検査も合わせて総合的に判断するのが大事。1:Lehtonen J, et al. Chest. 1988;93:839-842. 2:Doherty NE 3rd, et al. Am J Cardiol. 1992;69:1223-1228. 3:Myers GB, et al. Am Heart J. 1948;35:1-40. 4:Sokolow M, et al. Am Heart J 1949;38:273-294.5:Harrigan RA, et al. BMJ. 2002:324:1201-1204. 6:Hancock EW, et al. Circulation 2009;119:e251-61.7:Buxton AE, et al. J Am Coll Cardiol 2006;48:2360-2396.【古都のこと~今宮神社】新型コロナウイルスが猛威を振るう中、アマビエという疫病退散の妖怪が話題になりましたね。長い歴史において多くの疫病に悩まされるたびに人々は祈りを捧げてきましたが、今宮神社(北区)も鎮疫の神として有名です。ボクが京都に移住してまだ間もない頃、市内(紫野付近)を運転中、道路沿いに一際目立つ楼門の存在感に圧倒された記憶があります。今まさに行きたい―そう思ったある日に早起きして訪れました。この地には平安遷都よりも前から摂社・疫神社*1があったとされます。994年(正暦5年)、一条天皇は二基の神輿(みこし)とともにその疫神を船岡山に奉安し、神慮を慰め悪疫退散を祈る御霊会(ごりょうえ)*2を斎行しました。その後、再び疫病の流行った1001年(長保3年)、現社地に新たに三柱*3を祀る神殿(本社)を建造し、「今宮社」と名付け御霊会を営まれました。これが今宮神社の創祀なのですが、1000年以上経っても“新しい宮”の名称が残っていることに感動しつつも、今なお疫病に苦しめられる我々の現状に複雑な気持ちも介在します。本社と摂社それぞれにお参りし、平成29年10月の台風被害により解体となった今宮の大鳥居の再建もお祈りし、休日の職務に向かいました。*1:祭神は素戔嗚尊(すさのおのみこと)。*2:古くは疫病などの災いは、不慮の死を遂げた人の御霊(怨霊)に由来すると考えられており、これを鎮め災厄を祓うための儀礼。この紫野御霊会が今宮祭の起源とされる。*3:御祭神である大己貴命(おおなむちのみこと)、事代主命(ことしろぬしのみこと)、奇稲田姫命(くしなだひめのみこと)。

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ASCO2020レポート 老年腫瘍

レポーター紹介高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療の有用性を評価した臨床試験1)高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療社会の高齢化に伴い、がんを罹患している高齢者(以下、高齢がん患者)は増加し続けている。これまで、がん治療については腫瘍科医が、高齢者の一般診療については老年科医が別々に行ってきたが、この連携は必ずしも十分でなかった可能性がある。高齢者総合的機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)は、老年医学領域では日常的に行われている、患者が有する身体的・精神的・社会的な機能を多角的に評価し、脆弱な点が見つかれば、それに対するサポートを行う診療手法である2)。具体的な評価項目(ドメイン)としては、生活機能、併存症、薬剤、栄養、認知機能、気分、社会支援、老年症候群(転倒、せん妄、失禁、骨粗鬆症など)である(表1)。画像を拡大するがん領域ではCGAに慣れている医療者が少ないため、まずは評価だけでも実施してみる、というのが世界的な流れであった(注:がん領域では、CGAから「総合的」が抜け、高齢者機能評価[geriatric assessment:GA]と表記されることが多い)。さまざまな研究の結果、GAは、1)重篤な有害事象を予測する因子になりうる、2)生命予後を予測する因子になりうる、3)通常の診療では気付かない障害を明らかにする、4)治療方針を決定する際の参考情報となる、ことが示された。この結果、国内外のガイドラインでは、高齢がん患者に対してGAを実施することが推奨されている3,4)。しかし、がん領域ではGAによる「評価」ばかりが注目されており、「脆弱性に対するサポート」は注目されてこなかった。今回いよいよ、がん領域でもGAによる評価だけでなく、脆弱性に対するサポートも含めた診療の有用性を評価すべくランダム化比較試験が施行され、その結果がASCO2020で発表された。「GAの結果とサポート方法を患者と医療者に伝える診療」の有用性を評価した多施設共同クラスター・ランダム化比較試験米国のMohileらは、「通常のがん診療」と比較して、「GAの結果とサポート方法を患者と医療者に伝える診療」が、重篤な有害事象発生割合を減らすか否かを検討するために、多施設共同クラスター・ランダム化比較試験を実施した。主な適格規準は、70歳以上、根治不能III期またはIV期の全がん種、治療前に行われたGAで少なくとも1つに障害がある、がん薬物治療が予定されている、などであった。standard armは通常診療(治療前に行われたGAの結果すら伝えない通常の診療)であり、test armは介入ケア(GAを実施し、その結果とサポート方法の提案を患者と医療者に伝える診療)であった。なお、国内外のガイドラインでGAが推奨されているにもかかわらず、standard armがGAを実施しない通常診療とされている理由は、現時点では、米国でも日常診療でGAを実施していないためである。介入ケア群での提案内容については、現時点では公表されておらず、また介入ケア群では、あくまで提案を伝えるのみであり、提案によって治療法を変更するよう強制したものではなかった。試験デザインとして、「施設」をランダム化するクラスター・ランダム化デザインを採用した。これは、通常の試験のように「患者」を両群に割り付けると、同じ医療者または同じ施設にもかかわらず、患者によって異なるアプローチを取ることになり、患者によっては不満を募らせる可能性があること、医療者がどちらか良い印象を持った診療を行ってしまうことで診療の効果が薄まることが予想されたためである。primary endpointは3ヵ月以内にGrade3~5の有害事象を経験した患者の割合、secondary endpointは6ヵ月時点での生存期間などであった。2013年から2019年にかけて、41施設が登録された(患者数:718例)。通常診療群と比較して介入ケア群では、消化器がんが多く(30.9% vs.38.1%)、肺がんが少なく(31.4% vs.18.1%)、黒人が多く(3.3% vs.11.5%)、既治療例が多かった(22.7% vs.30.8%)。Grade3~5の有害事象は、通常診療群で71.0%、介入ケア群で50.1%であり、介入ケア群で有意に低かった。相対リスク比(RR)は0.74(95%CI:0.63~0.87、p=0.0002)であり、この差はほとんどが非血液毒性によるものであった(RR:0.73、95%CI:0.53~1.0、p<0.05)。secondary endpointの1つである6ヵ月時点での生存期間は、通常診療群で74.3%、試験診療群で71.3%であった。介入ケア群では、1コース目でより多くの患者が強度を下げた治療を受けた(35.0% vs.48.7%)。治療開始3ヵ月以内の投与量変更は介入ケア群のほうが少なかった(57.5% vs.42.1%)。Mohileらは、GAの結果とサポート方法を患者と医療者に伝えることで、生存期間を大きく損なうことなく、Grade3~5の有害事象を減らした、1コース目での治療強度の低下でこれらの結果を説明できる可能性がある、と結論付けている。感想「GAの結果とサポート方法を患者と医療者に伝える診療」が、重篤な有害事象発生割合を減らすことが示された。現時点では、具体的なサポート方法が公表されていないため、最も重要な部分がわからないが、丁寧に高齢者を評価してサポートすれば、重篤な有害事象が減少するのは理解しやすいと思われる。一方、Mohileらは、「生存期間を大きく損なうことなく、Grade3~5の有害事象を減らした」と結論付けているが、これは全面的に受け入れられないと考える。今回公表されたのは「6ヵ月」時点での生存期間であり、余命が短い高齢者とはいえ、「6ヵ月」時点の生存期間だけを比較して、生存期間は同じくらいであったというのは無理があるように思う。追跡期間は1年とのことなので、今後1年時点の生存期間に大きな差がないかは確認する必要はあるだろう。また、本試験の特性上、施設をクラスター・ランダム化するしかなかったので仕方ないとはいえ、がん種や治療レジメンなどの背景因子が両群でそろっていない状態での群間比較であるため、有害事象や生存期間などの結果を全面的に信じることはできないと考える。しかし、「通常のがん診療」と「GAの結果とサポート方法を患者と医療者に伝える診療」を比較する場合はクラスター・ランダム化比較試験を選択するのは間違いではなく、それが故に背景因子がそろわないことはやむを得ないともいえる。つまり、今後もこれ以上、質の高い臨床試験は現れない可能性があることになる。したがって、今回の結果をうのみにしないまでも、Mohileらの結論に臨床的な違和感を覚えないのであれば、「高齢がん患者にとってつらいGrade3~5の非血液毒性が減り、そこまで生存期間が短くならない可能性がある」ということくらいは言ってもよいかもしれない。参考1)Gupta Mohile S, et al. ASCO 2020.2)健康長寿診療ハンドブック―実地医家のための老年医学のエッセンス―3)NCCN GUIDELINES FOR SPECIFIC POPULATIONS: Older Adult Oncology4)Wildiers H, et al. J Clin Oncol. 2014;32:2595-2603.

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単極性と双極性うつ病における自殺念慮の比較

 青年期の単極性うつ病(UD)と双極性うつ病(BD)における自殺念慮や自殺企図のリスクについて、米国・Griffin Memorial HospitalのRikinkumar S. Patel氏らが検討を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2020年6月15日号の報告。 対象は、米国入院患者サンプルより抽出した12~17歳の青年患者13万1,740例(UD:92.6%、BD:7.4%)。自殺行動のオッズ比(OR)を算出するため、人口統計学的交絡因子および併存疾患で調整したロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・入院患者全体で、自殺念慮が14.5%、自殺企図が38.6%に認められた。いずれもUD患者で高かった。・女性は、男性と比較し、自殺企図の割合が高かった(OR:1.13、95%CI:1.09~1.16)。・交絡因子で調整した後、UD患者はBD患者と比較し、自殺企図のORがわずかに高く(OR:1.06、95%CI:1.02~1.11)、自殺念慮のORは1.2倍高かった(95%CI:1.11~1.26)。・自殺企図が認められた患者では、93.2%がBD、6.8%がUDであった。・自殺企図の大部分は、BDの入院女性患者(74.6%)で認められた(UD:67.3%)。 著者らは「自殺行動を最小限に食い止める適切な治療を行うには、UDとBDの早期鑑別診断が重要であり、治療ガイドラインに基づいたマネジメントやさらなる研究が求められる」としている。

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75歳以上のCVD1次予防にスタチン導入は有効か/JAMA

 アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のない75歳以上の米国退役軍人(多くが白人男性の集団)では、新規スタチンの導入により、全死因死亡と心血管死のリスクが低下し、ASCVD発生のリスクも改善することが、米国・退役軍人局ボストン保健システムのAriela R. Orkaby氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年7月7日号に掲載された。ASCVDの発生率と有病率は加齢とともに上昇し、死亡、QOL低下、医療費増加の主な原因となっている。世界的なASCVD負担の大部分を高齢者が占めるにもかかわらず、予防や治療のガイドラインのエビデンスとなる臨床試験への高齢者の参加はほとんどない。また、米国では、スタチンはASCVDの1次予防の支柱となっているが、ガイドラインでは75歳以上の患者におけるスタチンの役割は、主にデータが少ないことを理由に、曖昧なままだという。75歳以上で、スタチンの役割を評価する後ろ向きコホート研究 研究グループは、75歳以上の退役軍人を対象に、死亡およびASCVDの1次予防におけるスタチンの役割を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(筆頭著者は米国国立老化研究所などの助成を受けた)。 解析には、2002~12年の期間に、ASCVDを有していなかった年齢75歳以上の患者の受診に関する退役軍人保健局(VHA)のデータを用いた。フォローアップは2016年12月31日まで継続された。 これらのデータを、メディケアやメディケイドの保険請求および薬剤データと関連付けた。対象はスタチンの新規使用患者に限定され、使用歴のある患者はすべて除外された。 Cox比例ハザードモデルを用いてスタチンの使用とアウトカムの関連を評価した。解析では、ベースラインの背景因子のバランスを取るために、傾向スコアによる重み付けを用いた。 主要アウトカムは、全死因および心血管疾患による死亡とした。副次アウトカムは、ASCVDイベント(心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈バイパス術[CABG]/経皮的冠動脈インターベンション[PCI]による血行再建)の複合であった。心筋梗塞・虚血性脳卒中には差がない 32万6,981例(平均年齢81.1[SD 4.1]歳、97%が男性、91%が白人)が解析に含まれ、このうち試験期間中に5万7,178例(17.5%)が新たにスタチン治療を開始した。平均フォローアップ期間6.8(SD 3.9)年の時点で、全体で20万6,902例が死亡し、このうち5万3,296例が心血管疾患で死亡した。 全死因死亡の発生は、スタチン使用群が1,000人年当たり78.7件と、非使用群の98.2件に比べ有意に低かった(重み付け発生率差[IRD]/1,000人年:-19.5、95%信頼区間[CI]:-20.4~-18.5、ハザード比[HR]:0.75、95%CI:0.74~0.76、p<0.001)。 また、心血管疾患による死亡も、スタチン使用群が1,000人年当たり22.6件、非使用群は25.7件であり、使用群で有意に低下した(重み付けIRD/1,000人年:-3.1、95%CI:-3.6~-2.6、HR:0.80、95%CI:0.78~0.81、p<0.001)。 複合ASCVDアウトカムのイベント発生は12万3,379例で、スタチン使用群は1,000人年当たり66.3件、非使用群では70.4件と、使用群で有意に少なかった(重み付けIRD/1,000人年:-4.1、95%CI:-5.1~-3.0、HR:0.92、95%CI:0.91~0.94、p<0.001)。 複合ASCVDアウトカムのうち、心筋梗塞(2万4,951例、スタチン使用群13.2% vs.非使用群12.6%、p=0.94)および虚血性脳卒中(3万5,630例、18.4% vs.18.2%、p=0.20)の発生には両群間に差はみられなかったが、CABG/PCIによる血行再建(7万4,362例、35.2% vs.39.2%、p<0.001)の発生は、スタチン使用群で有意に少なかった。 著者は、「高齢患者のASCVDの1次予防におけるスタチン治療の役割を、より信頼性の高いものにするには、無作為化臨床試験を含め、さらなる研究を要する」としている。

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第15回 コロナ禍での面談で自己啓発本に溺れるMRの多さが浮き彫りに?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる受診患者減少が医療機関の経営を直撃していることは繰り返し伝えられている。従来、医療は景気の波や社会情勢などに左右されにくい安定職種と考えられてきたものの、今回は院内・院外での感染回避のため、社会全体で外出自粛のような非常に原始的な戦略がとられた結果、慢性疾患患者を中心とする受診抑制という予想もしなかった事態にさらされた。同時に、この事態は医療機関周辺の患者以外のステークホルダーにも影響を及ぼしている。代表例が製薬企業、とりわけ医療機関を訪問し、医師に直接自社製品の情報提供を行う医薬情報担当者(MR)だ。彼らが感染源となって医療機関で感染者が発生した場合、業界全体の信用低下となってしまうこともあり、2~4月にかけて各社とも訪問を自粛するようになった。この訪問自粛を契機に各社とも盛んに行っているのがMicrosoft Teams、Zoom、Cisco WebexなどのWeb会議システムを通じた医師とのリモート面談である。企業によっては、チャットボットを利用したリモート面談予約機能を備えたり、AIを利用した音声での情報提供などを行ったりしている。医師にとっては自分が聞きたい時間に聞きたいことが聞ける、MRにとっては移動の手間暇がないメリットが挙げられる。もっとも、新型コロナパンデミック以降、知り合いの医師やMRに接触するたびにリモート面談の“使い心地”を尋ねているのだが、双方ともになかなかの“鬼門”だという。結局、こうしたシステムを利用して話すことは日時を設定したアポイントメント面談と同じで、互いに身構えて向き合わなければならない。全体の傾向を代表していそうな個別感想を紹介すると次のようになる。「結局、病院内でMRさんが出待ちして声をかけられるのは自分たちもある種、気が楽だったんですよ。とくに聞くべき情報がない時は歩きながら形式的な会話をして『ごめん、今日は忙しいんで』とほどほどに切り上げればいいし、ちょうど聞きたいことがあったら『ねえねえ…』と聞けばいいし。Webシステムを使って1週間先の日時のアポイントメントを入れたいと提案されると、『なんか聞きたいことあったっけ? まあ、今は思い当たらないし、別にいいや』となっちゃうんですよね」(30代:循環器内科医)「難なくリモート面談ができる医師というのは、ほとんどが普段から対面でそこそこ以上に話せる関係ができている医師です。結局、人間関係ができているので、その時々に応じてコンタクト手段を変えることができるということ。だから、今春に転勤で担当医療機関が変わった他社のMRなんかを見ていると苦労してますよね」(30代:外資系製薬企業MR)昨今では厚生労働省がMRによる不適正な情報提供を是正するため「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」を策定し、一部ではMR不要論もささやかれている。では、本当にMRは不要なのだろうか? このコロナ禍の最中に私が接触した医師たち(ざっと30人程度)に尋ねた結果を総合すると、「いなくてもめちゃくちゃ困ることはないが、いたほうがいい」という何とも曖昧な結果となった。ある基幹病院勤務の産婦人科医が絶妙な言い方をしてくれた。「簡単に言うと、風呂の蓋なんですよね。『要る(風呂に入る)時に要らなくて、要らない(風呂を出る)時に要る』みたいな。何か聞きたいことがある時ほど院内にいなくて、忙しくて話をしている時間もない時に限って『先生、先生』って追いかけてくるみたいな。でも聞きたいことがあると言ってもその内容は千差万別で、わざわざMR本人にメールや電話をしたり、製薬企業のDI部門に電話して聞きたいことも多かったり。だから結局、アポを取ってもらってまで訪問してもらうほどではないんです。なんかうまくかみ合わず難しいんですよね」では、MRから聞けるならばぜひ聞きたい情報は何かと尋ねると、意外にも共通していたのは“ほかの医師がどのような処方を行っているか”。「医学部の同級生や研修医時代の同期などに聞いても同じような悩みを抱え、彼らから答えは得られない。しかも、いわゆるKOL医師が講演会などで語る処方の考え方は建前であることも多く、必ずしも参考にはならない」(40代精神科医)からだという。要は、医師は必ずしも自分の処方に自信満々というわけではないということだ。もっともこうしたほかの医師の処方に関する情報をどの程度提供できるかは、製薬業界の自主基準(プロモーションコード)や各社のコンプライアンスに照らすと微妙な側面もある。ただ、いずれにせよ医師側は「今までのような訪問頻度は必要ない」という点でほぼ一致する。そして直接面談の一部がリモート面談に置き換わるだけでなく、医療機関によっては今回の訪問自粛を契機にMR訪問の意義を再検討し、今まで以上に訪問規制をする動きも容易に想像できる。最終的にはMRと医師のコンタクト総量そのものが減少することは必至だろう。もっともMRから聞きたい情報とて、どんなMRからでもいいというわけではない。大学病院の消化器内科で長らく勤務し、現在は開業する50代の医師は次のようにもらした。「基本的にMRの皆さんは一様に賢くて真面目なんですよね。でも、それだけなんですよ。話を聞くと、いろいろとセミナーに行って勉強している人も少なくないのに深みを感じない。非常に酷な言い方をすれば、頭は良いはずなのに教養は高くない。たとえば、私たち医師は多様な患者さんに接して単純にエビデンスで割り切れないことを数多く経験している。在宅医療をやっている開業医は亡くなる患者の看取りもするので生や死のことも考える。そんなことはMRの皆さんは百も承知なはずなのに、なぜか話していて、彼らに共感することも、彼らに共感されたと感じることもないんです。うるさいこと言っていると思われるかもしれないけど、どうせ直接面談するならそうした感性が共有できるMRさんと面談したいですよね」知り合いの製薬企業関係者には不快に思われてしまうかもしれないが、実は私はこの言葉に大きくうなずいてしまった。しかもこのコロナ禍の最中にそれを顕著に感じた瞬間があった。外出自粛で在宅勤務の人が増え、Web上ではこの退屈な雰囲気の中で楽しみながら人とつながるという動きが顕在化した。それがZoomなどを利用したオンライン飲み会であり、SNS上であるテーマについて人をつないで投稿する“バトン”である。このバトンの一つに自分が感銘を受けた本の表紙を1週間にわたって紹介する「ブックカバーチャレンジ」というものがあった。私自身も私の周囲もFacebookでブックカバーチャレンジの投稿をしていたが、私がFacebookでつながっている製薬企業関係者(私のつながっている友達の2割弱)の取り上げる本にはある種の共通した特徴があった。それは老いも若きも紹介する本は、事実上、ビジネスハウツーや自己啓発系に著しく偏るのである。少なくとも私のFacebook上では他の業界の人と比べ、あまりにも顕著過ぎた。これをn=1の事例と言ってしまえばそれまでだが、実は似たような経験は過去にもある。私は製薬産業や医療業界に関わるある研究会の裏方を務めているが、そこで開催する講演会では、まさにハウツー的なテーマではすぐ満席になるが、倫理などやや概念的なテーマになるとあっという間に閑古鳥が鳴く。さらに言えば、私の見立てでは製薬業界の人はかなりの比率でMBA(経営学修士)の取得を目指す人が目立つ。要は“人に勝つため”のテクニックに異常なまでに興味を示す。あまりに“現金”過ぎて思わず笑ってしまうほどだ。だが、医療はいま大きな変革期にある。これまではどちらかというとエビデンスという名の正義に押しやられていた患者個人の価値観が台頭し、国内の医療制度では「地域包括ケア」という概念が登場している。端的に言えば、医療の中に多様化の波が押し寄せ、“解”は一つではなくなっている。しかし、製薬企業関係者はその波に逆行するかのように、やたらと唯一絶対の“解”を求めているかのようだ。しかも、その求める“解”とは患者や医療をより高めるものというよりは、あまりにも自分を高みに置くことにより過ぎているように映る。そんなこんなでふと思い出した言葉がある。それはイギリスの経済学者アルフレッド・マーシャルがケンブリッジ大学教授となった際に唱えた「Cool head but warm heart(冷静な頭脳と温かい心)」。経済学とはお金の動きも含め、世の経済現象を探求する学問。ロンドンの貧民街を目にしたマーシャルは、冷静に経済を分析することで苦難にあえぐ人々を助けるのが経済学者の矜持だと指摘したのである。ちなみに経済学の世界では有名なケインズ経済学で有名な経済学者ジョン・メイナード・ケインズはこのマーシャルの直弟子である。この“warm heart”は共感と読み解くことができる。泥臭いと言われるかもしれないが、私はAI時代、直接面談減少時代に生き残れるMRに必要な資質の一つはこの“warm heart”なのではないかとの意を強くしている。

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身体活動ガイドライン順守で、全死因・原因別死亡リスク減/BMJ

 米国では、「米国人の身体活動ガイドライン2018年版(2018 Physical Activity Guidelines for Americans)」で推奨されている水準で、余暇に有酸素運動や筋力強化運動を行っている成人は、これを順守していない集団に比べ、全死因および原因別の死亡リスクが大幅に低いことが、中国・山東大学のMin Zhao氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2020年7月1日号に掲載された。本研究の開始前に、身体活動ガイドラインの推奨を達成することと、全死因死亡や心血管疾患、がんとの関連を評価した研究は4件のみで、その結果は一致していなかった。また、身体活動ガイドラインと他の原因別の死亡(アルツハイマー病や糖尿病などによる死亡)との関連を検討した研究は、それまでなかったという。推奨順守で4群に分け、全死因と原因別の死亡を評価 研究グループは、米国の成人を代表するサンプルを用いて、米国人の身体活動ガイドラインの2018年版で推奨されている身体活動と、全死因死亡および原因別死亡の関連を評価する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(責任著者は山東大学から研究支援を受けた)。 国民健康聞き取り調査(National Health Interview Survey)の1997~2014年のデータと、国民死亡記録(National Death Index)の2015年12月31日までのデータを関連付けた。成人(年齢18歳以上)47万9,856人が解析に含まれた。 調査参加者の自己申告に基づき、1週間の余暇時間のうち有酸素運動および筋力強化運動に費やした時間を集計し、身体活動ガイドラインに従って、4つの群(運動不足、有酸素運動のみ、筋力強化運動のみ、有酸素運動+筋力強化運動)に分類した。 主要アウトカムは、国民死亡記録から得た全死因死亡と原因別死亡とした。原因別死亡には、8つの疾患(心血管疾患、がん、慢性下気道疾患、事故/負傷、アルツハイマー病、糖尿病、インフルエンザ/肺炎、腎炎/ネフローゼ症候群/ネフローゼ)が含まれた。有酸素+筋力強化運動で、死亡リスク40%減 47万9,856人中7万6,384人(15.9%)が有酸素運動+筋力強化運動群、11万3,851人(23.7%)が有酸素運動群、2万1,428人(4.5%)が筋力強化運動群、26万8,193人(55.9%)は運動不足群に分類された。 ガイドライン2018年版の推奨を完全に満たした成人の割合は、男女とも年齢が上がるに従って低下した。ベースラインの背景因子のすべてで、4つの群に有意な差が認められた。ガイドラインの推奨を満たさなかった運動不足群に比べ、これを満たした3群の参加者は、年齢が若く、男性や白人、未婚者、非喫煙者、少量~中等量の飲酒者が多く、学歴が高く、正常体重者が多く、慢性疾患を有する者が少なかった。 追跡期間中央値8.75年の期間中に、5万9,819人が死亡した。このうち、1万3,509人が心血管疾患、1万4,375人ががん、3,188人が慢性下気道疾患、2,477人が事故/負傷、1,470人がアルツハイマー病、1,803人が糖尿病、1,135人がインフルエンザ/肺炎、1,129人が腎炎/ネフローゼ症候群/ネフローゼで死亡した。 全死因死亡のリスクは、ガイドラインの推奨を満たさなかった運動不足群と比較して、筋力強化運動群が11%(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.85~0.94)、有酸素運動群が29%(0.71、0.69~0.72)低く、有酸素運動+筋力強化運動群(0.60、0.57~0.62)では、さらに大きな生存に関する利益が認められ、リスクは40%減少していた。 また、同様の関連が、心血管疾患死(筋力強化運動群のHR:0.82[95%CI:0.74~0.92]、有酸素運動群:0.65[0.62~0.69]、有酸素運動+筋力強化運動群:0.50[0.46~0.56])、がん死(0.85[0.77~0.95]、0.76[0.73~0.80]、0.60[0.56~0.65])、慢性下気道疾患死(0.76[0.62~0.93]、0.42[0.37~0.47]、0.29[0.23~0.37])で観察された。 著者は、「これらのデータは、ガイドラインで推奨されている身体活動の水準が、重要な生存上の利益と関連していることを示唆する」としている。

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レジ袋有料化は薬局でも義務?薬袋代わりのポリ袋は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第50回

2020年7月1日より、プラスチック製買い物袋(いわゆるレジ袋)の有料化が義務付けられました。薬局では薬を交付する際に、領収証やその他の商品などもまとめてレジ袋に入れてお渡しすることが多いのではないかと思いますが、このレジ袋の有料化はスーパーやコンビニ同様に薬局でも義務なのでしょうか。まず、レジ袋が有料化の対象となる事業者ですが、経済産業省のサイトにある制度概要を確認してみると、「プラスチック製買物袋を扱う小売業を営むすべての事業者」とあり、その例として医薬品・化粧品小売業も明記されているため、薬局やドラッグストアも対象であることがわかります。「え、もしかして薬袋も有料!?」と思ったのは私だけではないはずです。どういった袋が対象になるのでしょうか。薬局によっては、紙の薬袋に薬を入れている薬局や、チャック付きのポリ袋に用法用量などを記載した紙を薬と一緒に入れている薬局など、さまざまな対応があります。紙の薬袋はそもそも対象外ですが、薬袋として使用しているチャック付きのポリ袋は、「薬剤師法・獣医師法に基づき、調剤された薬剤の被包(薬袋)」に該当することがガイドラインに明記されており、今回の有料化の対象からは除外されています。おおむね有料化は避けられないが例外ありその薬袋やその他の医療材料などを入れるレジ袋についての規制を見ていきましょう。今回の有料化の対象となるレジ袋は、「購入した商品を持ち運ぶために用いる、持ち手のついたプラスチック製買物袋」です。ただし、この規制は環境へ配慮することが目的であるため、以下3点のように環境性能が認められ、その旨の表示があるレジ袋は対象外となっています。(1)プラスチックのフィルムの厚さが50μm以上のもの(繰り返し使用が可能であるため)(2)海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの(海洋環境下で自然界へ循環するため)(3)バイオマス素材の配合率が25%以上のもの(CO2総量を変えない素材の割合が多いため)薬局で使用するレジ袋は、おおむね有料化が義務付けられることになりそうですが、普段何げなくもらっているものなので、「薬局も!?」「薬をそのまま持って帰るの?」と思われる患者さんもいるかと思います。上記の有料化対象外の素材のレジ袋は、従来の素材のレジ袋よりも高価ですので薬局の負担は大きくなりますし、在庫の問題からもすぐに切り替えは難しいかもしれませんが、大きい・重い製剤の場合だけでも有料化対象外のレジ袋にしたり、紙袋に変更したりするという選択肢もアリかもしれません。また、薬局などへ向けて、2020年6月30日付で厚生労働省保険局医療課から疑義解釈が出されています。「療養の給付とは直接関係のないサービスなどについて患者から実費を徴収することは、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(いわゆる薬担)に抵触しないのか?」という疑問に対して、レジ袋代は、「療養の給付と直接関係ないサービスなどの費用に該当するため抵触しない」とされています。コロナ禍のどさくさに紛れてスタートした感が否めないレジ袋有料化ですが、現時点で薬局でのトラブルは耳にしておらず、ホッとしています。せっかくの機会ですので、目の前のことだけでなく、先のことを考えて患者さんに寄り添うサービスを少し広い視野で見直してみてはいかがでしょうか。参考1)プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン(経済産業省、環境省)2)事務連絡 疑義解釈資料の送付について(その20)(厚生労働省保険局医療課)

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緑茶は乳がんの予防になる?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第166回

緑茶は乳がんの予防になる?ぱくたそより使用最近緑茶にハマッてまして、個人的にもいろいろ調べているんです。緑茶って万物の長かっていうくらいたくさんの臨床試験が実施されています。PubMedで「Green Tea」で検索してみてください。恐ろしい数の文献がヒットしますから。もちろん、論文の質自体は玉石混交なのですが、乳がんに対するメタアナリシスを報告したのがこちら。Yu S, et al.Green tea consumption and risk of breast cancer: A systematic review and updated meta-analysis of case-control studies. Medicine (Baltimore). 2019 Jul;98(27):e16147. doi: 10.1097/MD.0000000000016147. なんでもかんでも論文を登録するとワケがわからなくなるので、オッズ比やリスク比を報告している中国語か英語の症例対照研究で、緑茶と乳がんリスクの低減効果を調べたものを対象としました。14研究がメタアナリシスの選択基準を満たし、計1万4,058人の乳がん患者と1万5,043人の対照被験者が登録されました。結果、緑茶を飲む習慣のある個人は、将来の乳がんリスクと負の関連があることが判明しました(オッズ比:0.83、95%信頼区間:0.72~0.96)。ただ、異質性がかなり高いことが、本メタアナリシスのリミテーションです(P<0 .00001、I2=84%)。Newcastle-Ottawa Scale(NOS)、研究実施地域、登録患者数などで層別化したサブグループ解析でも、同様の結果が得られました。なお、日本の乳癌診療ガイドライン1)においては、「これまでの研究結果にばらつきがあり、近年の信頼性の高い論文はその関連を否定するものが多く、日本人の研究に限ってもそれは同様である。以上より、緑茶の摂取が乳癌発症リスクを減少させるかどうかは、結論付けられないと判断した。」と記載されており、今回のメタアナリシスが、今後のガイドラインに影響を与えるのかどうかは不明です。いずれにしても、保護的な効果は臨床で実感するほどのものではないと確信しています。1)日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン.

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大学での人事評価、教授への昇進で重視されるのは?/BMJ

 大学における研究者の評価は従来型の基準を重視していることが、世界各国より抽出された大学の横断研究の結果、明らかになった。カナダ・マギル大学のDanielle B. Rice氏らが報告した。教授の評価や在職期間の付与に用いる基準については変更することが推奨されているが、世界で適用されている昇進や在職期間の基準について、これまで系統的な評価は行われていなかった。結果を踏まえて著者は「大学は、非従来型の基準を奨励することを考慮すべきである」とまとめている。BMJ誌2020年6月25日号掲載の報告。論文数などの従来型基準と、被引用数等の非従来型基準について調査 研究グループは、世界大学ランキングのライデン・ランキングから無作為に選んだ170大学を対象に、助教(assistant professor)、准教授(associate professor)および教授(professor)の評価と終身在職権付与に用いるガイドラインについて調査した。 従来型基準5項目(査読論文数、論文における著者名の記載順位、論文掲載誌のインパクトファクター、助成金獲得、国内外での研究の認知)、および非従来型基準7項目(論文被引用数、データ共有、オープンアクセスの論文掲載、研究登録、論文発表ガイドラインの順守、研究の影響に関するオルトメトリクス、研究休暇制度)についてガイドラインへの記述状況などを調べた。従来型基準の中でも論文数を重視する大学がほとんど 170大学中、生命医科系学部のある大学は146校で、92校に適格なガイドラインが存在した。 ガイドラインに従来型基準5項目が記載されていた割合は、査読論文数95%(87校)、論文における著者名の記載順位37%(34校)、論文掲載誌のインパクトファクター28%(26校)、助成金獲得67%(62校)、国内外での研究の認知48%(44校)であった。 一方、非従来型基準については、論文被引用数(26%、24校)および休暇制度(37%、34校)については記載されている大学が多かったが、研究の影響に関するオルトメトリクス(3%、3校)とデータ共有(1%、1校)についてはまれで、他の3項目(オープンアクセスの論文掲載、研究登録、論文発表ガイドラインの順守)のガイドラインへの記載は確認できなかった。 教授への昇進評価に関するガイドラインでは、従来型基準が非従来型基準より多かった(従来型基準54.2% vs.非従来型基準9.5%、平均群間差:44.8%、95%信頼区間[CI]:39.6%~50.0%、p=0.001)。ガイドラインが利用可能かどうかについては、地域によるばらつきが観察された(オーストラリア100%[6/6校]、北米97%[28/29校]、欧州50%[27/54校]、アジア58%[29/50校]、南米17%[1/6校])。

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Dr.増井の心電図ハンティング

第1回 心電図のグレーゾーン第2回 心電図を3次元化する裏技第3回 ミラーイメージ使えていますか?第4回 STEMIとSTEmimic第5回 脚ブロックの虚血判断 解説編第6回 左脚ブロックの虚血判断 実践編第7回 右脚ブロックの虚血判断第8回 陰性T波の鑑別とアクション 心電図の判読に迷って「もっと早く呼べよ! 」「これは緊急じゃないよ! 」と上級医や循環器医から言われたことのある人は多いのではないでしょうか。当シリーズでは、非循環器医が即座に判断できないビミョーな症例を取り上げ、その心電図判読のコツを解説します。2次元の心電図を紙コップで3次元化させるなど、視覚的に楽しく学べる工夫も満載。この番組を見ると、すぐに心電図を読みたくなること間違いなし!そして、自信をもって、心電図を判読し、次のアクションがとれるスキルが身に付きます。さあ、心電図ハンティングに出かけましょう。この番組は中外医学社から刊行されている「心電図ハンター 胸痛/虚血編」を映像化したものです。書籍を読んで当番組を見ていただいたり、当番組を見て書籍を読んでいただければ、理解が深まります。ぜひ書籍「心電図ハンター 胸痛/虚血編」を片手に番組をご覧ください。書籍はこちら ↓ ↓【心電図ハンター 胸痛/虚血編】第1回 心電図のグレーゾーン胸痛患者の心電図を手にしたとき、30秒以内に次のアクションを決めましょう!白黒はっきりしている心電図、すなわちST上昇のある、なしがすぐさまわかる心電図であれば、すぐ決めることができます。しかし、臨床では、ST上昇ありかなしかを判読できず困る心電図があふれています。その「迷う」心電図で、どうやって異常をハンティングするのか。今回は、Case0からCase2までの3症例を判読していきます。STEMIなのか、そうでないのか?そして次へつなげるアクションは?第2回 心電図を3次元化する裏技「連続した誘導でSTの上昇」が見られたらSTEMI!と誰もが反射的に判読できます。そう、心電図でも解剖学的でも連続していれば、そんなに悩むことはありません。もともと立体である心臓を平面の心電図に落とし込んでいることが、電図を判読しにくくしている原因の1つです。それではどうすればいいのでしょうか?そうです。心電図を立体的にもどしてやることです。そのために必要なものは「紙コップ」と「ペン」だけ。この2つを用意してこの番組ご覧ください!平面的な心電図がだんだん立体的にイメージングされて、心電図を読むのが楽しくなってきますよ。第3回 ミラーイメージ使えていますか?対側誘導でのST低下、すなわちミラーイメージをどこまでハンティングできていますか。ミラーイメージは心筋梗塞を示唆する重要な所見。今回は下壁梗塞、後壁梗塞のミラーイメージを確認していきましょう。後壁梗塞のミラーイメージを見つけたら、後壁誘導のV7~V9誘導を確認!そのやり方についても解説します。第4回 STEMIとSTEmimic一見ST上昇に見えて実はSTEMIではない“擬態”ST上昇心電図。これを擬態(mimic)STEMIを略して、STEmimicと命名。このSTEmimicをハンティングできるようになれば、オーバートリアージも減り、コールされる循環器医も、コールする非専門医も、みんなハッピーになります。今回は、STEmimicの中で早期再分極やStrain Patternについて解説します。でも、STEmimicに見えて、実はSTEMIということもあるので、しっかりと確認してください。第5回 脚ブロックの虚血判断 解説編今回は脚ブロックにについて解説します。心電図のST変化、実は脚ブロックの影響かもしれません。脚ブロックの心電図では、右脚か左脚かによって、評価の方法が異なります。右脚と左脚の違いは、細かい病態生理は抜きにして、パターン認識で判断できるようになりましょう。そして、右脚か左脚かがわかれば、虚血判断です。とくに難しい、左脚ブロックの判断に方法について、フローチャートにて解説します。これで、左脚ブロックの心電図での判断に迷うことは少なくなるはず!脚ブロックの虚血判断は臨床の場では必須項目なので、正しくマスターしましょう!第6回 左脚ブロックの虚血判断 実践編今回は左脚ブロック心電図特集です!実際の臨床で、左脚ブロックだということがわかったところで、その先どう判読すればいいのか、なかなか学ぶ機会がありません。そこで千本ノックのごとく、左脚ブロック心電図を次々と出していきます。それを受けてどんどん読んでいきましょう!そうすれば、左脚ブロックの心電図が来ても、慌てることなく読影できるようになりますよ。第7回 右脚ブロックの虚血判断今回は右脚ブロック心電図特集!前回の左脚ブロック千本ノック!と同様に、右脚ブロックの心電図をどんどん読んでいきましょう!右脚ブロックの心電図を読むコツをしっかりとお教えします。脚ブロックに惑わされることなく、通常通りSTEMIをハンティングしていくことが重要です。そして右脚ブロックならではのポイントをしっかりと確認しましょう。第8回 陰性T波の鑑別とアクション陰性T波で考えられる鑑別診断は大きく3つ!それらをどのように鑑別し、次につなげるアクションは?見分けるポイントとコツをしっかりとお教えします。そして、最後に、虚血判断できない場合の対応について、今一度考えてみましょう。まずは、本当に判断できないのか?まずは、このシリーズで学んだことをしっかりと確認してみましょう!そこれまでできなかった判断ができるようになっているはずです。さらには日米欧のガイドラインも参考にし、現場でできるアクションをしっかりと身に付けてください。

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第14回 新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?

<先週の動き>1.新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?2.新型コロナウイルス感染症対策分科会、専門家会議副座長の尾身茂氏が分科会長に3.相次ぐオンライン診療の初診での恒久化を求める声4.医療機関のインターネット広告違反、美容・歯科で数多く5.医師少数区域経験認定医師の広告が許可へ1.新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?6月26日、厚生労働省より2020年4月までの人口動態統計が発表された。これによると、今年4月の死亡者数は11万3,362人で前年度4月の11万2,939人と比べると423人・0.4%の増加だった。今年1~4月の累積死亡者数を前年同時期と比較すると、1万444人・2.1%の減少となり、コロナウイルス感染拡大に伴う超過死亡は、欧米と比較してほぼなかったと考えられる。海外、とくに欧米においてはコロナウイルス感染拡大による超過死亡が報告されているが、我が国ではPCRの実施体制の不備が懸念されていたものの、幸いにも超過死亡が記録されることはなく、第1波の感染拡大が収束した。今後、第2波の襲来や冬場のインフルエンザウイルスの流行期での感染拡大が懸念されるだけに早期の感染防御やPCRの検査体制拡充が求められる。(参考)人口動態統計速報Excess Deaths Associated with COVID-19(CDC)2.新型コロナウイルス感染症対策分科会、専門家会議副座長の尾身茂氏が分科会長に政府は、7月3日の新型コロナウイルス感染症対策本部(持ち回り形式で開催)において、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の廃止を決定し、新たに特別措置法に基づいて「新型コロナウイルス感染症対策分科会」を設置することを正式決定した。この初会合は7月6日に開かれることとなっており、構成員は18人、医師や保健所の代表、全国知事会、メディアの代表などが含まれ、専門家会議で副座長を努めた尾身 茂・地域医療機能推進機構理事長がトップを務める。初回は、東京都を中心とした感染状況や PCR検査の拡充、感染者データの取り扱いなどが取り上げられる予定。(参考)政府のコロナ対策分科会メンバー一覧 経済学者や知事、マスコミも産経新聞3.相次ぐオンライン診療の初診での恒久化を求める声7月2日に開催された第8回規制改革推進会議にて、「規制改革推進に関する答申」が取りまとめられ、デジタル分野の規制改革の提言を提出された。答申案では、新型コロナウイルスの感染拡大の中、新しい生活様式への転換が求められるため、デジタル技術を徹底的に活用できるよう規制改革を行う必要があるとしたうえでデジタル時代の規制・制度のあり方や書面・押印・対面規制の見直しを求めている。医療・介護分野では、初診も含めたオンライン診療の全面解禁やスイッチOTC化の促進に向けた推進体制の充実、介護アウトカムを活用した科学的介護の推進を求めており、今後、議論を重ねていく見込み。また、同日、自民党の行政改革推進本部(塩崎 恭久本部長)が首相官邸を訪れ、菅 義偉官房長官にデジタル分野の規制改革の提言を提出した。デジタル規制改革を求める中で、オンライン診療及び遠隔教育についての効果検証を行い、恒久化していくことが求められる。(参考)第8回規制改革推進会議 規制改革推進に関する答申自民党 行政改革推進本部 デジタル規制改革ワーキンググループ4.医療機関のインターネット広告違反、美容・歯科で数多く7月2日に開かれた「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、厚生労働省は医療機関のホームページに起因する美容医療サービスに関する消費者トラブルが発生し続けているのに対して2017年から行っているネットパトロールの結果を報告した。この中で、1万300サイトについて通報受付を受け、1,253施設の974サイトが審査対象となり、919サイトを運営する医療機関に対して、通知を行い、717サイトが改善したことを報告された。さらに、2018年6月の改正医療法施行後の医療法における広告規制の改正施行後の現状を踏まえ、全国一律の基準で運用できるよう監視指導体制の強化が必要としている。(参考)医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会5.医師少数区域経験認定医師の広告が許可へ7月2日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、医師偏在対策の一環として「医師少数区域等で一定期間勤務した医師」を厚生労働大臣が認定し、認定された医師である旨を広告することを可能とする、医療広告ガイドライン指針の追記について合意した。これは今年の4月1日から施行された改正医療法・医師法に伴う関係政令等の整備の一環で、地域の医師偏在の解消を目指して、医師少数区域(人口10万対医師数に地域住民や医師の年齢構成などを加味した新たな指標を用いて、医師配置が下位3分の1となる地域)等での勤務にインセンティブを付与し、医師偏在の解消を狙うもの。若手医師の場合、4月1日以降に初期臨床研修を開始した医師が対象となり、総合的な診療能力の獲得のために地域医療への参画が求められるなど、即効性は期待できない。一方、医師免許を取得から9年以上経過した医師については、断続する勤務合計が180日に達すれば条件を満たすため、医師偏在解消のきっかけとなることが期待される。(参考)医療法及び医師法の一部を改正する法律の施行について(通知)

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COVID-19重症化リスクのガイドラインを更新/CDC

 6月25日、米国疾病予防管理センター(CDC)はCOVID-19感染時の重症化リスクに関するガイドラインを更新し、サイトで公開した。 CDCは、重症化リスクの高い属性として「高齢者」「基礎疾患を持つ人」の2つを挙げ、それぞれのリスクに関する詳細や感染予防対策を提示している。また、今回からリスクを高める可能性がある要因として、妊娠が追加された。高齢者のリスクと推奨される対策 米国で報告されたCOVID-19に関連する死亡者の8割は65歳以上となっている。・他人との接触を避け、やむを得ない場合は手洗い、消毒、マスク着用などの感染予防策をとる。・疑い症状が出た場合は、2週間自宅に待機する。・イベントは屋外開催を推奨、参加者同士で物品を共有しない。・他疾患が進行することを防ぎ、COVID-19を理由に緊急を要する受診を遅らせない。・インフルエンザ、肺炎球菌ワクチンを接種する。・健康状態、服薬状況、終末期ケアの希望などをまとめた「ケアプラン」を作成する。基礎疾患を持つ人のリスクと推奨される対策【年齢にかかわらず、重症化リスクが高くなる基礎疾患】・慢性腎疾患・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・臓器移植による免疫不全状態(免疫システム減弱)・肥満(BMI:30以上)・心不全、冠動脈疾患、心筋症などの深刻な心臓疾患・鎌状赤血球症・2型糖尿病【重症化リスクが高くなる可能性がある基礎疾患】・喘息(中等度~重度)・脳血管疾患(血管と脳への血液供給に影響を与える)・嚢胞性線維症・高血圧または高血圧症・造血幹細胞移植、免疫不全、HIV、副腎皮質ステロイド使用、他の免疫抑制薬の使用による免疫不全状態・認知症などの神経学的状態・肝疾患・妊娠・肺線維症(肺組織に損傷または瘢痕がある)・喫煙・サラセミア(血液疾患の一種)・1型糖尿病 上記の基礎疾患を持つ人は高齢者同様の感染予防対策をとるほか、疾患治療を中断せず、1ヵ月分の処方薬を常備することが推奨されている。

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長期の生物学的製剤使用、メラノーマのリスクを増大?

 炎症性疾患に対する長期にわたる生物学的製剤の使用は、メラノーマのリスクを増大するのか。英国・マンチェスター大学のShamarke Esse氏らは、システマティック・レビューとメタ解析の結果、「その可能性を否定できない」とする所見が得られたことを報告した。生物学的製剤は、炎症性疾患の治療薬として幅広く処方されるようになっている一方で、免疫が介在した炎症性疾患である炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、乾癬の患者において、長期にわたる生物学的製剤治療は従来の全身治療と比べてメラノーマのリスクを増大するのではないか、との懸念が出ている。今回の結果を踏まえ、著者は「生物学的製剤による治療の長期安全性の問題を解決するためにも、主要なリスク因子を調整した大規模な研究が必要だ」と提言している。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年5月20日号掲載の報告。 検討では、Embase、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)をデータソースとして、1995年1月1日~2019年2月7日に公開された論文を検索した。適格条件は、無作為化臨床試験、コホート試験、IBD・RA・乾癬患者におけるメラノーマリスクについて生物学的製剤治療群と従来の全身治療群を比較し定量化したネステッド・ケースコントロール試験とした。 2人のレビュアーがそれぞれ主要な試験特性とアウトカムデータを抽出。試験に特異的な推定リスクをプールし、ランダム・固定効果モデルを用いてメタ解析を行った。不均一性はI2統計法で評価した。レビューは、疫学分野における観察研究のメタアナリシス報告のためのガイドライン(MOOSE)に準じて作成された。 主要評価項目は、IBD・RA・乾癬患者における、従来全身治療群と比較した生物学的製剤治療群のメラノーマ発生のプール相対リスク(pRR)であった。 主な結果は以下のとおり。・7コホート試験が適格基準を満たし、生物学的製剤治療群3万4,029例と、同未治療の従来全身治療群13万5,370例が包含された。・生物学的製剤治療は、各疾患患者のメラノーマ発生と正の相関がみられた。ただし、統計的有意差は認められなかった。・pRRは、IBD患者群1.20(95%信頼区間[CI]:0.60~2.40)、RA患者群1.20(同:0.83~1.74)、ハザード比は乾癬患者群で1.57(95%CI:0.61~4.09)だった。・ほかのリスク因子の調整は、ほとんどの研究で行われていなかった。

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日本における抗精神病薬の使用調査~JMDC Claimsデータベース

 日本における臨床ガイドラインとヘルスケアの実践とのギャップを明らかにするため、大阪医科大学附属病院のHata Takeo氏らは、抗精神病薬の使用状況について調査を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2020年5月13日号の報告。 2005~16年のJMDC Claimsデータベースよりデータを使用した。ATC分類でN05Aと分類された薬剤を抗精神病薬として定義した。抗精神病薬を処方された患者数に基づき、年間変化率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・408万1,102人のデータベースより、除外基準(抗精神病薬未使用、処方日または用量のデータなし、入院患者、抗精神病薬の頓服処方、長時間作用型[LAI]を除く抗精神病薬注射剤のみの処方、主疾患が統合失調症以外、クロルプロマジン換算75mg/日未満、18歳未満)に該当した患者を除く1万2,382人のデータを抽出した。・第2世代抗精神病薬の使用が増加しており、第1世代抗精神病薬の使用は減少していた。・2016年の時点で、最も処方された抗精神病薬はアリピプラゾール(31.9%)であった。・クロザピンの処方率は、0.2%であった。・LAIが処方された割合は、5%未満であった。 著者らは「日本の統合失調症に対する抗精神病薬の使用は、さまざまな臨床ガイドラインに対応しているが、クロザピンおよびLAIの使用は限定的であった。活用が不十分なこれらの抗精神病薬の処方に影響する要因に焦点を当てた研究が、統合失調症に対する薬理学的治療の進歩に役立つであろう」としている。

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ダイエット目的の不適切な糖尿病薬使用は「医の倫理に反する」/日本医師会

 6月17日、日本医師会の記者会見で、今村 聡副会長は自由診療における糖尿病治療薬の不適切使用について言及した。「GLP-1ダイエット」などと称した自由診療が横行 近年、糖尿病治療薬の一部が、個人輸入や美容クリニックにおいて、“痩せ薬”として不適切使用されている実態がある。今村氏は、具体的な事例として、近年承認されたGLP-1受容体作動薬を用いた自由診療が、「GLP-1ダイエット」などと称されている例を挙げた。これに対し、「健康な方が医薬品を使用することのリスクおよび医薬品適正使用の観点からも、このような行為を禁止すべきである」と強い懸念を示した。 同薬には重大な副作用リスクや禁忌があることについても説明し、医薬品を投与する前提として、「リスクがあるとしてもなお、治療が必要で効果が期待される方に対して投与されるべきであり、国民の健康を守るべき医師が、治療の目的を外れた使い方をすることは“医の倫理”にも反する」と厳しく指摘した。医薬品流通業界や医療広告の取り締まり強化を GLP-1受容体作動薬のほかにも、経口服用できるメトホルミンやSGLT-2阻害薬が、ダイエット目的に不適切使用される事例もある。今村氏は、医薬品の卸売業者や製薬企業など、流通業界における対応にも課題があるとの見方を示し、厚生労働省による医薬品の適正な流通確保を要望する姿勢を示した。医療広告のあり方に関しても、とくにインターネット上でガイドラインの規定を外れた表記が散見されることから、日医として取り締まりの強化を関係部局へ申し入れていく方針だという。

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