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複雑病変への高リスクPCI、IVUSガイドvs.血管造影ガイド/NEJM

 複雑病変に対する高リスク経皮的冠動脈インターベンション(PCI)において、血管内超音波(IVUS)ガイド下PCI(事前に規定されたステント最適化基準に基づく)は血管造影ガイド下PCIと比較し、標的血管不全リスクを低下させなかった。オランダ・Erasmus University Medical CenterのRoberto Diletti氏らIVUS-CHIP Investigatorsが、欧州7ヵ国の37施設で実施した無作為化非盲検比較試験「Intravascular Ultrasound Guidance for Complex High-Risk Indicated Procedures trial:IVUS-CHIP試験」の結果を報告した。IVUSガイド下PCIは、複雑な冠動脈病変を有する患者においてステント最適化の向上および有害事象の減少と関連しているが、欧米諸国における導入率は依然として低い。診療ガイドラインでは、解剖学的な複雑病変に対して冠動脈内イメージングを推奨しているが、現在の欧州における実臨床でのエビデンスは限られていた。NEJM誌オンライン版2026年3月30日号掲載の報告。IVUSガイド下PCI群と血管造影ガイド下PCI群で標的血管不全を評価 IVUS-CHIP試験の対象は、非ST上昇型急性冠症候群または安定虚血性心疾患(安定狭心症または無症候性虚血)を呈し、かつ1ヵ所以上の複雑な冠動脈病変に対するPCIが予定されている18歳以上の患者であった。複雑病変は、血管造影上の重度石灰化、入口部病変、側枝径が2.5mm以上の分岐部病変、左主幹部病変、慢性完全閉塞、ステント内再狭窄、またはlong lesion(推定ステント長28mm超)と定義された。 研究グループは、適格患者をIVUSガイド下PCI群または血管造影ガイド下PCI群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。すべての標的病変に対しプラチナクロム合金製エベロリムス溶出ステントによる治療を行うことが規定され、IVUSガイド下PCI群では事前に規定されたステント最適化基準に基づいて実施された。PCI後は、アスピリンとP2Y12阻害薬による抗血小板薬2剤併用療法を、安定虚血性心疾患患者では6ヵ月以上、急性冠症候群患者では12ヵ月以上実施することが推奨された。 主要エンドポイントは、標的血管不全(心臓死、標的血管心筋梗塞、または臨床的に必要と判断された標的血管再血行再建術の複合と定義)とした。標的血管不全の発生に有意差なし 2021年11月~2023年8月に2,020例が無作為化され、重複して無作為化された1例を除くIVUSガイド下PCI群1,010例および血管造影ガイド下PCI群1,009例が主要解析に組み込まれた。患者背景は、平均年齢69歳、79.4%が男性、27.4%が急性冠症候群であった。 総手技時間の平均値は、IVUSガイド下PCI群88.8分、血管造影ガイド下PCI群66.2分、ステント留置後のバルーン血管形成術による拡張はそれぞれ91.3%および84.5%で実施された。 追跡期間中央値19.0ヵ月(四分位範囲:15.2~23.4)において、標的血管不全はIVUSガイド下PCI群で140例(13.9%)、血管造影ガイド下PCI群で112例(11.1%)に認められ、ハザード比は1.25(95%信頼区間:0.97~1.60、p=0.08)であった。 処置合併症はIVUSガイド下PCI群で11.3%(113/999例)、血管造影ガイド下PCI群で10.2%(102/1,002例)に発生した。有害事象の発現割合は両群で同程度であった。

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猫さん糖尿病の顛末記 ― 主治医は獣医、コンサル先は教授【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第95回

帰宅しても返事がない家「ただいま」玄関のドアを開けた瞬間、空気の密度が違うことに気付きます。これまでは決まって「ニャオー」と勇ましい出迎えがあったはずの気配が、ない。2025年10月、愛猫レオは猫の星へと旅立ちました。こうしてわが家には、静かすぎる帰宅が日常となりました。猫の糖尿病は、予想以上に「フルスペック」だった以前の本エッセイでも触れましたが、2024年春、レオに持病が見つかりました。主訴は多飲多尿。獣医さんを受診すると、血糖値は500mg/dLを超えています。文句なしのDM(糖尿病)診断です。治療はもちろんインスリン。持続型製剤を朝夕2回投与する生活が始まりましたが、問題は用量調節です。人間と違い、猫の体はあまりにコンパクト。1.8単位、2.2単位……この「0.2単位を刻む世界」は、老眼が進み始めた眼球にはきわめて非友好的です。さらに、猫用SGLT2阻害薬も併用。ナトリウム・グルコース共輸送体をブロックし、尿糖排泄を促進する――。学生時代、まさか人間と同じ最新の医学ロジックを、ヒゲの生えた四足歩行の患者に適応する日が来るとは夢にも思いませんでした。教授への「アポなし猫コンサルト」ここで白状します。血糖コントロールが難航し、低血糖リスクに怯えていたある日、私は禁じ手を使いました。勤務先の糖尿病内分泌・腎臓内科の教授の部屋をノックしたのです。もちろん、患者は猫。しかもアポなし。完全なる「猫糖尿病コンサルト」です。にもかかわらず、教授は嫌な顔ひとつせず、インスリンの薬物動態から投与量調整のロジックまで、実に真顔でレクチャーしてくださいました。「猫ですか……なるほど、興味深い」この一言に、医師としての、そして人としての底知れぬ懐の深さ(あるいは重度の動物好きの片鱗)を見ました。この場を借りて、改めて深謝申し上げます。予後は一進一退、そして「終末期」の選択多くの方のサポートもあり、レオは一時、QOLを取り戻しました。「このまま維持できるかも」という淡い期待を抱いた時期もありましたが、2024年秋に再入院。点滴で持ち直しはしたものの、それ以降は緩やかな下り坂でした。それでも、レオは1年以上も病魔と付き合い、立派に生き抜きました。2025年夏の終わり、食欲不振が顕著になります。9月下旬にはADLが著しく低下。再入院の際、獣医さんは静かに言いました。「……そろそろ、お家で過ごさせてあげませんか」医師としての私、飼い主としての妻、そしてプロフェッショナルである獣医さん。三者の目に映る「予後」の景色が、完全に一致した瞬間でした。「これ以上、何ができるのか」その問いへの答えは、ガイドラインには載っていないシンプルなものでした。「ただ、最後までそばにいること」です。プロ顔負けのラスト・メッセージレオは最期まで見事でした。バスタオルの上で静かに横たわり、撫でるとしっぽの先を数ミリだけ動かす。それが彼なりの「インフォームド・コンセント」だったのかもしれません。午前3時頃。妻がおでこを撫でていると、彼は残った力を振り絞るように前脚を伸ばし、おでこで指をぐっと押し返します。「もっと撫でろ」そう命じられた直後、彼は静かに呼吸を止めました。不思議なことに、押し寄せたのは悲しみよりも安堵でした。「もう、打たなくていいんだ。苦しくないんだ」という想いだけが、深夜のリビングに満ちていました。ちなみに、毛並みは最期まで最高の手触りでした。いつまでも撫でていたかった。瞳も綺麗なままです。美しい姿です。猫のいない家と、尊敬の過去形声を上げて泣きたい時、一緒に泣いてくれる妻がいます。レオのいたずら、表情、賢さを語り合いながら、私たちは「欠員」の出た家で、生活を続けました。「ほんと、すごい猫だったよね」これは単なる過去形ではありません。最大の敬意を込めた、完了形に近い過去形です。「新患」ルナの来訪「次の猫は迎えない」それが当初の夫婦のコンセンサスでした。しかし半年が過ぎ、悲しみが穏やかな思い出へと昇華された頃、自然とこう思えたのです。「また、猫と暮らしたい」それはきっと、レオが遺していった最高のギフトでした。そんな折、運命の出会いがありました。里親を探していたメスの子猫――ルナです。初対面で直感しました。「……ビビッときた」医学的根拠はありません。しかし、臨床医としての長年の勘によれば、この「ビビッ」は、エビデンスを凌駕する正解なのです。オチ:主治医交代のお知らせ ルナと運動療法中 現在、わが家には再び猫がいます。ただし、以前とは立ち位置が異なります。今度は、私が「診察」される側です。深夜の運動療法(強制運動)、早朝の覚醒チェック、そして厳格な生活指導(主に激しい叱責)。レオは「人生」を教えてくれましたが、ルナは「生活習慣の矯正」を徹底してくれます。 私は今日も帰宅し、「ただいま」と言います。 今度は、耳をつんざくような、やたら元気なレスポンスが返ってきます。

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薬剤別の落とし穴、高齢者大腸がん治療では…【高齢者がん治療 虎の巻】第8回

講師紹介<今回のPoint>高齢者大腸がんは“例外”ではなく“主戦場”標準用量OX/IRI上乗せは一貫せず、毒性増のリスクがあるため、GAで強度を最適化BEVは高齢者でも上乗せが期待できる一方、血栓・高血圧・出血などに注意<症例>78歳、女性。上行結腸がんに対して根治的外科切除を受けられ、pT4aN2aM0、pStageIIICの診断。既往に高血圧症を認めるも、全身状態は良好(Performance Status:PS 0)で、腎機能含め臓器機能障害なし。バイオマーカー評価も実施され、ミスマッチ修復正常(pMMR)/KRAS G12D変異/BRAF野生型と報告。術後経過も良好で、患者は術後補助化学療法に対して意欲的であった。1)“高齢者”大腸がんが“標準”の時代地域がん登録全国推計値(2023年)では、大腸がん罹患の65歳以上が77.4%、70歳以上が66.6%、75歳以上が48.9%を占めています。すなわち大腸がん診療の主戦場は高齢者と言えます。高齢者は臓器機能・併存症・認知機能・栄養・社会背景などの個体差が大きく、過剰治療(重篤毒性・入院)と過小治療(暦年齢のみで有効治療を回避)の双方を生みやすく、その鍵になるのがGeriatric Assessment(GA)です。(GAの詳細は第1回「高齢者がん診療で悩ましいこと」、第2回「高齢者がん診療のキホン」を参照)2)薬剤別にみた“高齢者における落とし穴”オキサリプラチン(OX):上乗せ効果は一貫せず、毒性は増える傾向術後補助療法に関して、本邦ガイドライン(2024年版)で「PS良好、基礎疾患・併存症がなく主要臓器機能が保たれれば80歳以上でも補助化学療法を弱く推奨」としつつも、「フッ化ピリミジン(FP)に対するOX上乗せ効果は明確でなく、行わないことを弱く推奨」と記載されています1)。高齢者薬物療法ガイドラインでも、「ステージIII結腸がんの70歳以上では補助療法自体は提案される一方、OX併用は提案しない」という立場です2)。背景として、FP補助療法のOS延長効果は80歳以上でも期待できる一方、高齢者では骨髄毒性が強く出る傾向が示されています。また、切除不能進行・再発においても、標準用量OXの上乗せは限定的です。JCOG1018(75歳以上 PS0~2、または70~74歳PS2)では、FP+ベバシズマブ(BEV)に対するOX上乗せで奏効率は上昇したものの、無増悪生存期間(PFS)/全生存期間(OS)の有意な改善は示されず、Grade≧3の毒性が増加しました3)。改訂ガイドライン(2026年版)4)でも、「高齢者一次治療としてFP+BEVに標準用量OXの併用は一律に行わないことを弱く推奨」が追加されました。一方で、frail高齢者に減量OXを組み合わせる戦略を示唆する試験(例:NORDIC 9)5)もあり、「高齢者=一律にOX否定」ではなく、柔軟な減量併用が現実的です。イリノテカン(IRI):奏効率は上がるが、毒性増を念頭に75歳以上の初回治療を対象としたFFCD 2001-2002試験では、FPへのIRI上乗せで奏効率は高かったのですがPFS/OSの明確な改善は示されず、Grade≧3の毒性は増加しました6)。高齢者では“腫瘍縮小”と“治療継続性”のバランスがより重要であり、IRI併用に際してはUGT1A1遺伝子の評価も含め、慎重な見極めが重要です。ベバシズマブ(BEV):上乗せ効果は示されるが、血栓・高血圧などに要注意AVEX試験(70歳以上、OX/IRI不適)によると、カペシタビン(Cape)+BEVはCape単剤に比べPFSを有意に延長し、高齢者でも効果は期待できる一方、動脈・静脈血栓症、高血圧などの合併症リスクを踏まえた管理が必須と報告されています7)。(表)高齢者を対象/含む臨床試験結果画像を拡大する3)GA活用によるレジメン決定・用量調節・実施割合GAは「やるべきこと」ではなく、治療の成功確率を上げるツールです。前述のFFCD 2001-2002試験では登録患者の44%でGAデータが収集され、認知機能および手段的日常生活動作(IADL)の不良や抑うつ状態とGrade≧3の毒性増強、予定外入院が関連しました6)。つまりGAは、レジメンの強度(併用・減量)を決めるだけでなく、入院リスクを予見して先回りの介入(支持療法・家族調整・通院設計)につなげられる可能性があります。PRODIGE 20(75歳以上初回治療、化学療法±BEV)でも、IADLが良好なほど有効性と安全性のバランスが保たれることが示され8)、GAの情報が「どこまで攻めるか」を決める指標になり得ます。当科では初診患者全例に対して、G8およびCARGスコア、MMSE評価(75歳以上を目安)を医師の診察前にメディカルスタッフに実施してもらい、図に示す対応を念頭に、レジメン強度や支持療法、方針決定の参考にしています。(CARGの詳細は第5回「副作用対策、用量調節で悩ましいこと」を参照)(図)当院における治療前介入画像を拡大する大腸がんには有効な薬剤・レジメンが比較的豊富で、今後はバイオマーカーに基づく分子標的治療を含め、個別化治療がさらに進展していきます。一方で、術後補助療法から進行再発まで、OXやIRIを用いた殺細胞性薬剤は今後も重要なキードラッグです。高齢化が進む大腸がん診療では、暦年齢のみならず、GAによる事前の状態把握に加え、通院や支援体制など生活環境(サポート)を治療設計に組み込むことが「真の個別化治療」につながると考えます。高齢者がん治療のカギ、「毒性が出る前に整える」高齢者治療で大切なのは、強度を一律に下げることではありません。毒性が出る前に整える(栄養状態・併存症・臓器機能・認知機能の評価)ことで、結果として標準に近い治療を安全に届けられる患者さんもいます。加えて、先生方の日常診療でも「高齢・独居・老老介護」の患者さんは増えているのではないでしょうか? GAを“治療を成立させるため”の道具として活用することに加え、患者さんの“治療を受ける環境”の整備・把握も今後ますます重要になると考えます。1)大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2024年版. 2024. 金原出版.2)日本臨床腫瘍学会/日本癌治療学会編. 高齢者のがん薬物療法ガイドライン. 2019. 南江堂.3)Takashima A, et al. J Clin Oncol. 2024;42:3967-3976.4)日本臨床腫瘍学会/日本癌治療学会編. 高齢者のがん薬物療法ガイドライン改訂第2版. 2026. 南江堂.

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高齢者のがん薬物療法GLの改訂ポイント【乳腺】/日本臨床腫瘍学会

 『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』が2026年3月25日に発刊され、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のシンポジウムで全17項目のクリニカルクエスチョン(CQ)が解説された。乳腺領域からは、HER2陽性(CQ12)、トリプルネガティブ(CQ13)、ホルモン受容体陽性HER2陰性(CQ14)の高齢者の周術期乳がんの薬物療法に関する計3つのCQが設定された。CQ12 高齢者HER2陽性乳がん周術期治療には、どのような治療が推奨されるか? HER2陽性乳がん術後の標準治療は、化学療法と抗HER2モノクローナル抗体トラスツズマブの併用療法である。しかし、高齢者では治療利益と化学療法やトラスツズマブの忍容性のバランスが問題となるため、化学療法とトラスツズマブの併用、化学療法のみ、トラスツズマブのみ、経過観察など治療選択が割れやすい。本CQでは、高齢者HER2陽性乳がん患者の周術期治療の実臨床における個別化治療と意思決定を支えるため、(1)トラスツズマブ+化学療法、(2)トラスツズマブ単剤、(3)トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法の3つに分けて評価を行った。(1)トラスツズマブ+化学療法推奨:高齢者HER2陽性乳がん周術期治療には、トラスツズマブ+化学療法を強く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の強い推奨エビデンスの強さ:A 4件のランダム化比較試験(RCT)(HERA、BCIRG006、NSABP B-31/N9831統合解析)で、トラスツズマブ+化学療法群は化学療法単独群に比べ、全生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)が改善した。これらは高齢者のみを対象とした試験ではないが、60歳以上のサブグループにおいても良好であり、高齢者でも治療利益は大きいと考えられた。トラスツズマブの併用により心不全や心機能低下が有意に増加したが、その多くは可逆的であった。OS・DFSの延長について、トラスツズマブ+化学療法の益は大きく一貫していることから、化学療法単独よりも優れていると評価された。(2)トラスツズマブ単剤推奨:化学療法の忍容性がない場合には、トラスツズマブ単剤が選択肢となりうる。推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨エビデンスの強さ:B わが国で行われた70歳以上の高齢者HER2陽性乳がん患者を対象としたRCT(RESPECT)において、トラスツズマブ単剤群は化学療法併用群と比べ、OS・DFSの非劣性は統計学的に示されなかった。トラスツズマブ単剤群では治療開始12ヵ月においてQOL低下が少なかった。Grade3以上の有害事象は化学療法併用群において有意に多く生じていた。1件のRCTに限られるが日本人高齢者を対象として直接性が高く、結果に対する不確実性は少ないと評価された。(3)トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法推奨:再発リスクが高く、全身状態良好で化学療法に十分耐えうる状況に限り、トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法が選択肢となりうる。推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 1件のRCT(APHINITY)において、トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法群はトラスツズマブ+化学療法群と比べてOSの有意差は認められなかった一方、ペルツズマブ追加により無浸潤疾患生存期間(iDFS)は有意に改善し、とくにリンパ節転移陽性例ではハザード比0.72と良好な上乗せ効果が示された。Grade3以上の有害事象はペルツズマブ追加により6%増加した。下痢によるQOL低下もみられたが、永続的な有害事象ではなかった。1件のRCTに限られ、高齢者に特化した試験ではないが、ペルツズマブによる予後改善が期待でき、かつ十分な忍容性があると判断される患者では検討しうると評価された。CQ13 高齢者の周術期トリプルネガティブ乳がんに対して、免疫チェックポイント阻害薬の使用は推奨されるか?推奨:周術期トリプルネガティブ高齢者乳がんに対して、免疫チェックポイント阻害薬の併用を弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C トリプルネガティブ乳がんの周術期標準治療は化学療法であるが、近年では再発高リスク症例に対して免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を併用したレジメンも推奨されている。高齢者では、治療効果と有害事象のバランスが重視されるため、ICIの使用推奨を検討することは臨床的に重要である。そこで本CQでは、高齢者トリプルネガティブ乳がんで、ICIを含む薬物治療を実施した群(介入群)とICIを含まない薬物治療または経過観察の群(対照群)のアウトカムを評価した。OS・DFSを指標とした2件のRCT(KEYNOTE-522、IMpassion031)および関連サブ解析において、OSには有意差を認めなかったが(文献検索期間終了後にOS改善の報告あり)、DFSはKEYNOTE-522では介入群で有意な延長を認め、IMpassion031でも延長傾向が示された。Grade3以上の有害事象の頻度に差はなかった。免疫関連有害事象(irAE)は介入群で増加したが、AE of special interestの定義が異なったため、評価には限界があった。ICI併用による持続的なQOL低下は認めなかった。根拠となる試験には全身状態が良好な高齢者が一部含まれるのみで、高齢者におけるエビデンスは十分ではないと評価された。CQ14 ホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法にアベマシクリブやS-1の併用は推奨されるか? ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん術後の標準治療は内分泌療法であるが、再発リスクが高い場合は追加治療が検討される。近年では内分泌療法にアベマシクリブやS-1を併用する新たな治療戦略が登場している。これらの薬剤は作用機序ならびに治療効果、有害事象のプロファイルが異なることから、本CQでは(1)内分泌療法+アベマシクリブ、(2)内分泌療法+S-1に分けて、それぞれを内分泌療法単独と比較した。(1)アベマシクリブ推奨:ホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法として、再発リスクが高く治療に耐えうる状況に限り、アベマシクリブが選択肢となりうる。推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 1件のRCT(monarchE)において、内分泌療法+アベマシクリブ群は内分泌療法のみの群と比べてOSの有意差は認められなかった(文献検索期間終了後にOS改善の報告あり)が、iDFSはアベマシクリブ追加により有意に改善した。Grade3以上の有害事象は併用群で増加した。下痢などは高齢者で問題となりやすく、休薬・減量を含めた管理を要した。本試験は高齢者に特化したものではないが、アベマシクリブ併用による再発抑制効果は示される一方、有害事象増加にも留意が必要であり、高齢者への適用は個別に判断すべきと評価された。(2)S-1推奨:再発高リスクホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法へのS-1併用は、患者の全身状態やリスク・ベネフィットを総合的に考慮したうえで行うことが望ましい。推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 1件のRCT(POTENT)において、内分泌療法+S-1群は内分泌療法のみの群と比べてOSの有意差は認められなかったが、iDFSはS-1追加により有意に改善した。Grade3以上の有害事象は併用群で好中球減少(8%)、下痢(2%)などが報告された。1件のRCTに限られ、かつ高齢者に特化した試験ではないという限界を有するもののS-1併用による再発抑制効果は示唆されている一方、毒性増加のリスクもあることから高齢者に対する適用は個別に判断すべきと考えられた。

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心血管疾患2次予防、目標LDL-C値55mg/dL未満でリスク低下/NEJM

 動脈硬化性心血管疾患患者において、目標LDL-C値は55mg/dL未満が70mg/dL未満よりも、3年時点の心血管イベントリスクの低下に結び付いたことを、韓国・延世大学校医科大学のYong-Joon Lee氏らEz-PAVE Investigatorsが行った非盲検無作為化優越性試験の結果で報告した。ガイドラインでは動脈硬化性心血管疾患患者におけるLDL-C値低下を推奨しているが、これらの患者の2次予防のための適切な目標LDL-C値について評価した無作為化試験からのエビデンスは限定的なままであった。NEJM誌2026年4月9日号掲載の報告。主要エンドポイントは、3年時点の心血管死等の複合 研究グループは、19~80歳の動脈硬化性心血管疾患患者(次のいずれか1つ以上の既往または現有で定義:急性冠症候群[心筋梗塞または不安定狭心症]既往、画像検査または機能検査で確認された安定狭心症、冠動脈血行再建術またはその他の動脈血行再建術、脳卒中または一過性脳虚血発作、末梢動脈疾患あり)を、目標LDL-C値を55mg/dL(1.4mmol/L)未満とする群(強化群)または70mg/dL(1.8mmol/L)未満とする群(従来群)に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要エンドポイントは、3年時点の心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、あらゆる血行再建術、または不安定狭心症による入院の複合であった。安全性も評価した。イベントの累積発生率は強化群6.6%、従来群9.7%で有意な差 2021年1月~2022年7月に韓国17施設で3,048例が無作為化された(強化群1,526例、従来群1,522例)。両群の患者特性はバランスが取れており、平均年齢は64.4±9.0歳、女性が638例(20.9%)で、LDL-C中央値は76mg/dL(四分位範囲[IQR]:61~96)であった。1,694例(55.6%)が急性冠症候群既往で、1,474例(48.4%)が画像検査または機能検査で確認された安定狭心症を、2,049例(67.2%)が冠動脈血行再建術またはその他の動脈血行再建術を有していた。 追跡期間中央値は3.0年(IQR:3.0~3.0)。試験期間中のLDL-C中央値は、強化群56mg/dL(1.4mmol/L)、従来群66mg/dL(1.7mmol/L)であった。 主要エンドポイントのイベント発生は、強化群100例(推定Kaplan-Meier累積発生率6.6%)、従来群147例(9.7%)であった(ハザード比:0.67、95%信頼区間[CI]:0.52~0.86、p=0.002)。 事前に規定した安全性エンドポイントの発生は、強化群でクレアチニン値上昇の発現割合が有意に低かったこと(1.2%vs.2.7%、群間差:-1.5%ポイント、95%CI:-2.5~-0.5、p=0.004)を除き、両群で同程度であった。

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初発精神疾患の女性に推奨される抗精神病薬に関する初の臨床診療ガイドライン

 抗精神病薬は、初回エピソード精神疾患の早期介入において主要な治療選択肢の1つであり、長期予後の重要なポイントとなる。女性患者における抗精神病薬治療は、副作用に対して特有の脆弱性を示すにもかかわらず、既存の臨床診療ガイドラインでは性別に応じた推奨事項が提供されていなかった。とくに高プロラクチン血症や心血管代謝系の副作用は、生殖年齢女性において著しい主観的な苦痛や長期の身体的健康リスクに影響を及ぼす可能性がある。アイルランド・St John of God University HospitalのCaroline Hynes-Ryan氏らは、初回エピソード精神疾患の女性患者に推奨される抗精神病薬に関する臨床診療ガイドラインの作成を目的に本検討を実施した。Schizophrenia Bulletin誌2026年3月7日号の報告。 経験豊富な専門家を含む国際的な多職種パネルにより、GRADE-ADOLOPMENTプロセスとAGREE IIフレームワークを用いて、成人および青年向けの既存の初回エピソード精神疾患ガイドラインを改訂した。主な健康上の疑問点については、関係者との協議および文献レビューを通じて策定した。なお、きわめて重要な患者アウトカムを優先し、副作用プロファイルに関するエビデンスを統合し、合意に基づく推奨事項を策定した。ガイドラインのアルゴリズムについては、現場での検証と専門家による外部レビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・女性における抗精神病薬の選択においては、プロラクチン上昇と心血管代謝系の副作用が優先的に考慮された。・高リスクの薬剤である第1世代抗精神病薬、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、パリペリドン、amisulprideは、第1選択薬としては推奨されない。・アリピプラゾールは、プロラクチン上昇および心血管代謝系プロファイルが一貫して良好である。そのため、第1選択薬として推奨される。・成人および青年に対しては、低または低~中程度リスクの代替薬が、共同意思決定ツールにより推奨された。 著者らは「本ガイドラインは、初回エピソード精神疾患を発症した女性に対する抗精神病薬の選択について取り上げた初の臨床診療ガイドラインである。本ガイドラインにより、きわめて重要な患者アウトカムと患者体験を優先することで、女性に対するより安全で性別に配慮した処方を支援し、精神病治療における治療受容性、アドヒアランス、公平性の向上につながる可能性がある」と結論付けている。

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高齢者のがん薬物療法GLの改訂ポイント【総論・造血器】/日本臨床腫瘍学会

 『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』が2026年3月25日に発刊され、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のシンポジウムで全17項目のクリニカルクエスチョン(CQ)が解説された。 本ガイドラインは、2019年の初版以降に蓄積されたエビデンスを踏まえ改訂された。「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」に準拠し、新規CQの追加や対象領域の拡張を行った。今回の改訂では新たに「Evidence to Decision(EtD)フレームワーク」が導入された点が大きな特徴である。これにより、エビデンスの確実性だけでなく、益と害のバランス、患者の価値観、実行可能性など多面的な要素を考慮した推奨決定のプロセスが可視化された。 総論からは「がん薬物療法を考慮している高齢がん患者に対して、高齢者機能評価とそれに基づくマネジメントの実施は推奨されるか?」「がん薬物療法を考慮している高齢がん患者のがん薬物療法の選択に、高齢者機能評価は推奨されるか?」、造血器からは「初発高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か?」「80歳以上の初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対してドキソルビシンを含む薬物療法は推奨されるか?」が設定された。総論 Geriatric Assessment(GA:高齢者機能評価)により患者の脆弱性を多面的に評価し、その結果に基づく介入により重篤な毒性の軽減やQOLの改善の可能性が示されている。しかし、初版の総論では以下の2つのCQが並立しており、患者アウトカムを目的としたGAは提案される一方、治療方針を判断する目的のGAは過少治療による不利益の可能性から推奨されていなかった。 (旧)CQ1 高齢がん患者において、がん薬物療法の適応を判断する方法として、高齢者機能評価を実施することを提案する。 (旧)CQ2 高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して、治療方針の判断には高齢者機能評価を使わないことを提案する。 今回の改訂では、QOLや機能に関わるアウトカムと腫瘍関連アウトカムという視点別に、CQ1-1とCQ1-2に分けて包括的なメッセージを示す構成へと再編した。CQ1-1 がん薬物療法を考慮している高齢がん患者に対して、高齢者機能評価とそれに基づくマネジメントの実施は推奨されるか?推奨:高齢がん患者に対して、がん薬物療法を考慮する際には、高齢者機能評価およびその結果に基づくマネジメントを実施することを弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 本CQでは、がん薬物療法の適応が考慮されている高齢者に対し、GAとその結果に基づくマネジメントを受けた群(介入群)と受けなかった群(対照群)の患者中心アウトカムを評価した。8件のランダム化比較試験(RCT)を主なエビデンスとして評価を行った。GAとその結果に基づくマネジメントにより、QOLの維持・改善、医師とのコミュニケーション、患者満足度について有意な改善が報告された。介入群では対照群と比較して、一貫してGrade3以上の有害事象の有意な減少傾向を認め、統合解析でも有意な結果であった。重篤な毒性の有意な低下は臨床的に意味が大きく、QOLや満足度など患者中心アウトカムも良好な一方、有害な影響を示す根拠は乏しいと評価された。CQ1-2 がん薬物療法を考慮している高齢がん患者のがん薬物療法の選択に、高齢者機能評価は推奨されるか?推奨:がん薬物療法を考慮している高齢がん患者のがん薬物療法の選択に、高齢者機能評価を実施することを弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 本CQでは、がん薬物療法の適応が考慮されている高齢者に対し、GAに基づく治療決定を受けた群(介入群)と受けなかった群(対照群)の腫瘍関連アウトカムを評価した。7件のRCTおよび4件の前向き観察研究をもとに評価した。全生存期間(OS)・無増悪生存期間(PFS)・奏効率のいずれも介入群と対照群で有意差を認めなかったものの、介入群では一貫してGrade3以上の有害事象の減少傾向を認め、統合解析でも有意な結果だった。腫瘍関連アウトカムの改善は認めなかったもののOSの明らかな増悪は認めず、毒性低減という臨床的意義を示したと評価された。造血器CQ2 初発高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か?推奨:初発高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療方針の判断に高齢者機能評価を行うことを弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C DLBCLは発症年齢中央値が約70歳であり、高齢患者が多数を占めている。R-CHOP療法などの標準化学療法により治癒が期待できるが、高齢者には毒性が高く、暦年齢やパフォーマンスステータス(PS)のみでは個体差を正確に評価することが困難である。個人の予備能をより正確に見極めるためにGAの重要性が認識されている。本CQでは、初発高齢者DLBCLを対象に、GAが良好な群(介入群)と不良な群(対照群)のアウトカムについて、GAの有無による直接比較ではなく、EtDフレームワークを用いてGAによって層別化された群で比較して総合的な評価が行われた。文献検索の結果、RCTは該当しなかったが、前向きおよび後ろ向きの観察研究21件が抽出された。GAが良好な群ではOSが優れており、標準治療の適用によって若年者と同程度の治療アウトカムが期待できることが示された。標準治療による有害事象は一定頻度で生じるが適切な対策で完遂可能である一方、GAが不良な群では毒性が重篤化する懸念がある。観察研究のみのためエビデンスの強さは「C(弱い)」に留まると評価されたが、得られる臨床的利益の大きさから、総合的な効果のバランスはGA実施を強く支持している。CQ3 80歳以上の初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対してドキソルビシンを含む薬物療法は推奨されるか?推奨:80歳以上の初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対してドキソルビシンを含む薬物療法を行うことを弱く推奨する。ただし、ドキソルビシンのdose intensityを考慮する必要がある。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C DLBCLは標準治療であるR-CHOP療法により、半数程度の治癒が見込まれる。しかし、ドキソルビシンは心毒性が問題となり、心疾患の併存が多い高齢者では、血液毒性や粘膜障害のリスクも相まって使用が躊躇されることがある。そこで本CQでは、80歳以上の未治療DLBCL(日本人含む)を対象に、ドキソルビシンを含むレジメン(R-CHOP、R-miniCHOP、R-THP-COPなど[介入群])とドキソルビシンを含まないレジメン(R-CVP、R-benda、ステロイド単剤、支持療法など[対照群])のアウトカムを評価した。文献検索の結果、ドキソルビシンの有無を直接比較したRCTは該当せず、12件の前向き・後ろ向き観察研究などが採用された。介入群の2年OS率は60〜70%、2年PFS率は50〜60%と良好で、対照群と比較して一貫して優れた治療効果が示された。ドキソルビシンを50%程度に減量した介入研究では、心毒性が2〜5%、治療関連死亡が0〜5%と許容範囲に収まっていた。しかし、通常量を投与した観察研究では、治療関連死亡が20%に達するという報告もあり、投与量に配慮が必要と評価された。

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筋力が高齢女性の死亡リスクと関連

 筋力が寿命に好ましい影響を与える可能性が報告された。高齢女性において、握力などで評価した筋力と8年間の追跡期間中の死亡リスクとの間に、有意な関連が見られたという。米ニューヨーク州立大学バッファロー校のMichael LaMonte氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に2月13日掲載された。 この研究では、高齢者の筋力の評価によく用いられている、握力および椅子から立ち上がる速度(5回立ち上がりテスト:椅子からの立ち上がり動作を5回行った所要時間)という2項目が測定された。その結果、高齢女性では握力が15ポンド(7kg弱)高いごとに死亡率が12%低下し、椅子から立ち上がる所要時間が6秒短いごとに死亡率が4%低下するという関連が示された。 LaMonte氏は、「椅子から立ち上がるための筋力が低下していると、ウォーキングなどの有酸素運動を行うことも難しくなる。ウォーキングは米国の65歳以上の高齢者において、最も一般的な運動だ」と解説。また、「健康的な老化のためにはおそらく、適度な有酸素運動と筋力強化のための運動の双方を行うことが最善の方法ではないか」と語っている。 この研究には、63~99歳の女性5,472人(平均年齢78.7±6.7歳)が参加。平均8.4±2.4年の追跡期間中に1,964人が死亡した。死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、社会人口統計学的因子、生活習慣、臨床因子)を調整後、握力が高いほど、また椅子から立ち上がる速度が速いほど、死亡リスクが低いという有意な関連が示された。具体的には、握力の第1四分位群(握力が最も弱い下位25%)を基準として、第4四分位群(握力が最も強い上位25%)はハザード比(HR)0.67(95%信頼区間0.58~0.78)で、第3四分位群もHR0.85(同0.75~0.97)だった(傾向性P<0.001)。椅子から立ち上がる速度については第4四分位群がHR0.63(0.54~0.73)、第3四分位群はHR0.76(0.67~0.87)で、第2四分位群もHR0.79(0.69~0.88)だった(傾向性P<0.001)。 これらの関連は、加速度計で測定した身体活動量や座位時間、歩行速度、全身性の炎症反応で調整しても有意性が維持されていた。また、筋力が強い高齢女性はガイドラインで推奨される身体活動量を満たしていなくても、死亡リスクが低かった。 重要なこととして、筋力が強いことによるメリットを得るために、ボディビルダーのようなたくましい体格である必要性がないことも示された。LaMonte氏は、「体重や除脂肪体重を考慮に入れて解析しても、筋力の強い高齢女性の死亡率は有意に低く、筋力と死亡率の関係は体格の違いでは説明できなかった」と述べている。 これらの結果に基づき研究者らは、高齢者が筋力を増強するために、必ずしもジムに通う必要はないと強調する。ただし注意点として、高齢者が筋力トレーニングを始める場合、事前に医師に相談することを強く推奨している。LaMonte氏も、高齢者が目標とする筋力トレーニングを安全に進めるために、理学療法士や運動専門家の助言を受けると良いと提案している。

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HOST-EXAM 10年フォローアップの再考―長期抗血小板療法におけるクロピドグレルの位置付け(解説:野間重孝氏)

 PCI後抗血小板療法の基本は、長い間、2剤併用療法(DAPT)の後にアスピリン単剤を継続するというものであった。とくにベアメタルステントから初期の薬剤溶出性ステントの時代においては、ステント血栓症への警戒が強く、アスピリンは事実上「長期継続が前提」の薬剤として扱われていた。このため、DAPT終了後にどの薬剤を残すかという問題自体が臨床上の大きな議論となることは少なく、アスピリン継続は半ば慣習的に受け入れられていた側面もあった。 しかし2010年代後半に入り、新世代薬剤溶出性ステントの普及によりステント血栓症のリスクが低下すると、抗血小板療法における出血リスクが改めて問題となるようになった。この流れの中で、DAPT期間の短縮、さらにはアスピリンを中止しP2Y12阻害薬単剤へ移行する戦略が検討されるようになった。2018年前後から複数のランダム化試験により、P2Y12阻害薬単剤戦略の安全性と有効性が示され、従来の「アスピリン長期継続」という考え方は徐々に見直されるようになった。 このような流れの中で、DAPT終了後にアスピリンとクロピドグレルのいずれを単剤として選択すべきかを直接比較したHOST-EXAM試験は、臨床的に重要な位置を占める研究となった。本試験はクロピドグレル単剤の優位性を示し、長期維持療法における抗血小板薬選択に新たな視点を提示したものである。もっとも、この試験は2年間のランダム化比較の後、治療選択が担当医に委ねられるという設計であり、長期フォローアップ結果の解釈には一定の注意を要する側面もある。今回の10年フォローアップは、このような試験デザインの特徴を踏まえつつ、PCI後慢性期における抗血小板療法の在り方を再考するうえで重要な知見と位置付けられる。それは、本研究では10年間の追跡が行われているものの、無作為化された抗血小板療法は最初の24ヵ月に限定され、その後の治療は担当医の判断に委ねられている。それにもかかわらず、解析はintention-to-treat原則に基づいて行われており、長期フォローにおける実際の抗血小板療法の影響を必ずしも反映していない可能性もありうるからである。 また、intention-to-treat解析は、無作為化によって得られた患者背景の均衡を維持し、治療選択に伴うバイアスを回避する目的で広く用いられる方法である。しかし本研究のように、無作為化治療が2年間に限られ、その後長期にわたり治療内容が変更されうる状況では、実際の治療効果をどこまで反映しているかは慎重に検討される必要がある。 さらに、本研究ではper-protocol解析においてイベント抑制効果がより顕著となり、NNTはITT解析の33から17へと変化している。この差は、長期フォローにおけるアドヒアランスや治療変更の影響が結果に関与している可能性を示唆しており、本研究結果の解釈において重要な点と考えられている。 したがって、本研究の結果は「クロピドグレル単剤治療を10年間継続した場合の効果」を直接示すものというよりも、「初期にクロピドグレルまたはアスピリンに割り付けられた患者群の長期予後の差」を示したものとして解釈するのが適切と考えられる。 また、本試験はopen-label設計であり、盲検化が行われていない点にも留意が必要である。とくにACSによる再入院や再血行再建などのエンドポイントは担当医の判断に依存する要素を含むため、治療内容の認識がイベント判定に影響を与える可能性がある。 さらに、本研究は韓国における単一民族コホートで行われており、東アジア人特有の薬物代謝特性の影響も考慮する必要がある。CYP2C19 loss-of-function alleleは東アジア人において高頻度に認められ、クロピドグレルの薬効に影響を与えることが知られている。このため、本研究の結果を日本人を含む他集団へそのまま外挿できるかについては慎重な検討が必要であると考えられる。 もっとも、本研究は抗血小板薬単剤療法を比較した無作為化試験の長期追跡としては、現時点で最長の10年フォローを報告した点で大きな価値を有する。抗血小板療法はPCI後に生涯にわたり継続されることが多いにもかかわらず、従来のランダム化試験の多くは2〜5年程度の追跡にとどまっていた。本研究は長期抗血小板療法の臨床経過に関する貴重な知見を提供するものであり、イベント曲線が長期間にわたり乖離していく傾向が示された点は注目に値する。 一方で、本研究ではクロピドグレル群において主要複合エンドポイントの有意な減少が認められたものの、全死亡には差が認められなかった点は重要である。抗血小板療法の長期的意義を評価するうえで、最も客観的なエンドポイントである全死亡に差が認められなかったことは、本研究の臨床的意義を解釈する際に慎重な姿勢を求めるものと考えられる。 また、クロピドグレル群では出血イベントの減少が認められているが、抗血小板薬単剤による重篤な出血は臨床的には必ずしも頻繁に経験されるものではない。さらに本研究における出血イベントの絶対差は比較的小さく、その臨床的意義については慎重に解釈する必要があると考えられる。 なお、近年のガイドラインの動向として、2024年ESCガイドラインではクロピドグレル単剤に対してClass I, Level Aの推奨が与えられており、抗血小板薬単剤戦略に対する評価は大きく変化しつつある。このようにガイドライン自体もクロピドグレル単剤の有効性を支持する方向へ進んでいるが、本研究の結果を踏まえても、無作為化期間が限定されている点や長期フォローの解釈上の問題を考慮すると、クロピドグレル単剤を広く第1選択として推奨するには、なお慎重な解釈が必要と考えられる。 本研究はPCI後慢性期における抗血小板療法の選択について重要な長期データを提示した点で価値の高い研究である。しかしながら、本研究は前半は無作為化比較試験として、後半は観察研究的性格を帯びた延長試験として理解すべきものであり、その結果は臨床実践に直ちに適用すべき決定的証拠というよりも、今後の抗血小板療法の在り方を再考するための重要な長期資料と位置付けられるべきであると考えられる。 評者の結論としては、実臨床においては、クロピドグレル単剤を有力な選択肢の1つとして考慮しつつも、患者背景、出血リスク、薬剤反応性などを踏まえた個別化治療の重要性は依然として変わらないと考えるものである。

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非保護左冠動脈主幹部病変のPCI、超音波ガイドvs.造影ガイド/NEJM

 非保護の左冠動脈主幹部病変を有する患者に対する冠動脈血行再建術では、近年、解剖学的な複雑性が軽度~中等度の場合は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が、冠動脈バイパス術(CABG)の許容可能な代替法として確立しているが、ステントの適切な拡張、血管壁への圧着、病変の被覆など長期的な転帰に影響を及ぼす可能性のある技術的な課題が残されているという。イタリア・IRCCS Policlinico San DonatoのLuca Testa氏らは「OPTIMAL試験」において、血管内超音波(IVUS)ガイド下PCIは従来の血管造影ガイド下PCIと比較して、良好な臨床アウトカムをもたらすかについて評価した。NEJM誌オンライン版2026年3月30日号掲載の報告。欧州3ヵ国の研究者主導型無作為化優越性試験 OPTIMAL試験は、イタリア、スペイン、英国の28施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化優越性試験(Philips Image Guided Therapy DevicesとBoston Scientificの助成を受けた)。 2020年7月~2023年6月に、年齢18歳以上、50%以上の狭窄を伴う非保護の左冠動脈主幹部病変を有し、PCIの適応とされ、中等度~重度の虚血とともに、ガイドラインに基づく内科的治療を行っても症状を認める患者を登録した。 被験者を、診断目的の冠動脈血管造影で適格性を確認した後、ガイドワイヤー挿入前に、IVUSガイド下PCIまたは血管造影ガイド下PCIを受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、最長の追跡期間における脳卒中、心筋梗塞、血行再建術、全死因死亡から成る患者指向型の複合エンドポイントとした。患者指向型の主要複合エンドポイント、33.7%vs.30.9%で有意差なし 806例(平均[±SD]年齢71.4[±10.7]歳、男性78.4%、糖尿病34.7%)を登録し、IVUSガイド下PCI群に401例、血管造影ガイド下PCI群に405例を割り付けた。原疾患の発生率の内訳は、非ST上昇型心筋梗塞が39.1%、不安定狭心症が10.1%、慢性冠症候群が50.8%であり、平均SYNTAXスコアは29.7(±12.6)点(中等度~高度の解剖学的複雑性)だった。 追跡期間中央値2.9年の時点において、患者指向型複合エンドポイントのイベントは、IVUSガイド下PCI群で135例(33.7%)、血管造影ガイド下PCI群で125例(30.9%)に発生し、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.11、95%信頼区間[CI]:0.87~1.42、p=0.40)。 また、デバイス関連複合エンドポイント(心血管死、標的血管心筋梗塞、臨床的に必要と判断された標的病変の再血行再建術)(IVUSガイド下PCI群22.4%vs.血管造影ガイド下PCI群20.5%、HR:1.10、95%CI:0.82~1.49)、血管関連複合エンドポイント(心血管死、標的血管心筋梗塞、標的血管再血行再建術)(24.2%vs.21.5%、1.14、0.85~1.52)、全死因死亡(15.7%vs.15.1%、1.06、0.74~1.50)は、いずれも両群間に有意差がみられなかった。手技関連・安全性イベントにも差はない 心筋梗塞(IVUSガイド下PCI群11.2%vs.血管造影ガイド下PCI群10.9%、HR:1.04、95%CI:0.68~1.57)、再血行再建術(12.0%vs.11.1%、1.10、0.73~1.65)の発生率も両群で同程度であり、ステント血栓症(definite:0.7%vs.0.2%、3.07、0.32~29.53/probable/definite:2.0%vs.0.7%、2.73、0.72~10.27)の頻度にも有意な差はなかった。 手技関連イベントや全般的な安全性イベント、重篤な有害事象の発生についても、両群間に有意差を認めなかった。熟練施術者に血管内画像は不要の可能性 著者は、「1件の先行試験では、IVUSは施術者の経験が少ないほうが有益性は高いことが示されているが、本試験の参加施設の施術者は豊富な専門知識を持ち、左冠動脈主幹部PCI施行中は、もとよりIVUSに基づいて確立された血管造影アルゴリズムを順守するとともに、厳格な手技基準と最新のステントプラットホームを用いたことが、両群間のアウトカムの潜在的な差異を縮小した可能性がある」としている。 また、「本試験の結果は、左冠動脈主幹部の狭窄にPCIを行う際は、常に冠動脈内の画像によるガイドを使用すべきとの要件に異議を唱えるものであり、症例数の多い施設で熟練のIVUS施術者が処置を行う場合は、血管造影単独でも十分に適切である可能性を示唆する」と指摘している。

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中等度慢性腎臓病(CKD)の腎機能の経過の評価にはクレアチニンとシスタチンCの両者が必要(解説:浦信行氏)

 糸球体濾過率(GFR)の正確な評価にはイヌリンクリアランスや125I-イオサラメートクリアランスが必要であるが、日常臨床では方法の煩雑さや放射性同位元素の取り扱いなどで現実的にはほぼ困難である。したがって、クレアチニンやシスタチンCを用いた推算値(eGFR)が算出されるが、結果の即時性からクレアチニンによるeGFRが一般的に用いられている。 英国のバーミンガム大学を中心とした多施設共同研究で、正確な腎機能変化の評価にはクレアチニンとシスタチンCの両者を用いた方法が優れることを3年間の前向き研究で明らかにした。詳細な報告はCareNet.comの2026年4月2日掲載の解説を参照されたい。中等度CKDのクレアチニンとシスタチンCを半年ごとに測定し、Log変換した値を用いてeGFRの3年間のスロープを評価した結果、クレアチニンとシスタチンC各々で評価した値よりは両者を併用した値が、基準値であるイオヘキソールを用いたGFRにより近似していたとの報告である。両者を同時評価することの重要性を示唆している。日本腎臓学会でも、評価方法は異なるが両者を用いたeGFRの同時評価を先行して行ってイヌリンクリアランスと対比し、2012年のCKD診療ガイドラインに両者の平均eGFRの正確度が高いと報告している。しかし、両者の平均値で評価するのも症例によっては限界がある。この研究の対象は58.1~73.6歳で平均67.1歳である。日常臨床で75歳以上の高齢者では自力で元気に外来通院する症例もいるが、一部に自力歩行に難渋するか不可能な症例も少なからずいる。サルコペニアなどによりクレアチニンでのeGFR計算値が極端に高値の場合も珍しくない。両者の併用の意義は理解できるが、症例の病態やADLを考慮した評価も念頭に置く必要があると考える。

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胃がん周術期、デュルバルマブ+FLOTは日本人でも有効性を再現(MATTERHORN)/日本臨床腫瘍学会

 MATTERHORN試験は、切除可能な胃がん/胃食道接合部がん患者を対象に、周術期のデュルバルマブ+FLOT(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル)療法の有用性を検討した試験である。昨年の米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で、デュルバルマブ+FLOT群がプラセボ+FLOT群と比較して無イベント生存期間(EFS)、病理学的完全奏効(pCR)、全生存期間(OS)を有意に改善したことが報告され、欧米の多くの国ではすでに標準治療となっている。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のPresidential Sessionで愛知県がんセンターの室 圭氏が本試験の日本人集団の結果を報告した。・国際共同二重盲検ランダム化第III相試験・対象:切除可能なStageII~IVA期局所進行胃がん/食道胃接合部がん 948例・試験群:術前FLOT(2サイクル)+デュルバルマブ1500mgを併用、術後FLOT(2サイクル)+デュルバルマブ、その後デュルバルマブ単剤を最大10サイクル(D+FLOT群)474例・対照群:デュルバルマブに代えてプラセボ投与(FLOT群)474例・評価項目:[主要評価項目]EFS[副次評価項目]OS、pCR、安全性など・データカットオフ:2024年12月20日 既報の主要な結果は以下のとおり。・D+FLOT群はFLOT群と比較して、統計学的に有意なEFSの改善を示した(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.86)。・EFS中央値はD+FLOT群は未到達(95%CI:40.7~未到達)、FLOT群で32.8ヵ月(95%CI:27.9~未到達)だった。2年EFS率は、D+FLOTでFLOT群よりも高かった(67%対59%)。・OS中央値は、両群とも未到達であった(HR:0.78、95%CI:0.63~0.96、p=0.025)。・pCR率はD+FLOT群で19.2%、FLOT群で7.2%だった。・Grade3/4の有害事象の発現率は両群で類似していた。 日本人集団の解析結果は以下のとおり。・全体集団の20%がアジア人で、うち日本人は86例(D+FLOT群:40例、FLOT群:46例)だった。それぞれ38例対42例が手術を完了し、35例対39例がD+FLOT群およびFLOT群で補助療法を開始した。・全体集団同様に、D+FLOT群はFLOT群と比較してEFSを改善(HR:0.32、95%CI:0.13~0.72)し、24ヵ月EFS率はD+FLOT群で84.1%、FLOT群で54.5%であった。EFS改善は年齢、PD-L1発現率などいずれのサブグループでも共通していた。・pCRは、D+FLOT群で17.5%、FLOT群で6.5%であった(オッズ比:2.98、95%CI:0.71~12.43)。・OSも、D+FLOT群がFLOT群に比べて改善した(ハザード比:0.25、95%CI:0.08~0.63)。・Grade3/4の有害事象はD+FLOT群の85%、FLOTの84.8%で報告された。最も頻度の高いのは好中球減少症(好中球数減少含む)であり、両群で発現率は同程度であった(75.0%対73.9%)。 室氏は「日本人患者における有効性および安全性の結果は全体集団と一致していた。D+FLOT群はFLOT群と比較してEFS、pCR、OSを改善し、安全性のプロファイルは各薬剤と一致していた」とまとめた。 本発表のディスカッサントを務めた国立がん研究センター東病院の坂東 英明氏は「現在の日本の『胃癌治療ガイドライン2025年版』では、“切除可能な進行胃がん・食道胃接合部がんに対する術前補助化学療法については明確な推奨ができない”とされており、本レジメンを臨床導入するにあたってはガイドライン改訂の議論が必要になるだろう。日本国内の多くの施設ではFLOT療法に関する経験が限られているが、日本人サブグループ解析の結果はこのレジメンが十分に管理可能であり、有効性もきわめて高いことを示唆している」とした。 これを受けて室氏は「FLOTの毒性について懸念の声が多いが、予防的にG-CSF製剤を使うことで十分に管理可能だと考える。すでに食道がんで使われているDCF療法のほうが毒性の強いレジメンであり、がん診療連携拠点病院であればFLOTは問題なく投与・管理できるはずだ。胃がん術前療法は各国で異なるレジメンが使われているのが問題だったが、今回の結果を基にD-FLOTに統一されていくことが望ましいと考える。私見になるが、日本人集団のEFSの成績が全体集団より良好だったのは、日本の優れた手術と適切な周術期管理が一因だと考える。日本においても胃がん周術期療法が早期に普及することを期待している」とした。

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『大型血管炎診療ガイドライン』改訂、治療のCQ推奨が新設/日本循環器学会

 大血管炎の高安動脈炎(TAK)や巨細胞性動脈炎(GCA)、そしてバージャー病に関する治療エビデンスや診断基準などをまとめた『2026年改訂版 大型血管炎診療ガイドライン』1,2)が8年ぶりに改訂された。第90回日本循環器学会学術集会(3月20~23日)会期中の3月20日に発刊され、本ガイドラインの研究班長を務めた中岡 良和氏(国立循環器病研究センター研究所副所長/血管生理学部長)が本学術集会プログラム「ガイドラインに学ぶ2」において、改訂点などを解説した。CHCC 2012における疾患分類と本ガイドラインで扱う疾患 血管炎は血管壁に炎症を認める疾患の総称で、多臓器を障害するため診療科横断的に多くの専門医の関与が必要とされる領域である。疾患分類は「CHCC 2012 血管炎の分類基準」に基づき、大型血管炎(TAKとGCA)、中型血管炎(結節性多発動脈炎[PAN]、川崎病)、小型血管炎(免疫複合体型小型血管炎、IGA血管炎ほか)3)とされる。一方で、バージャー病はこの分類には記載されていないが、「難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究」4)の大型血管炎臨床分科会の調査対象であること、循環器医が関与する疾患であること、そして前版(2017年版)でも対象範囲としていたことから、本書でも大型血管炎の2疾患とともにバージャー病を対象疾患とした。ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨を設定 今回、本書で取り扱う大血管炎(TAK、GCA)の2疾患は、希少疾患であるもののエビデンス収集という難しい局面を乗り越え、治療レジメンに対する全9項目のクリニカルクエスチョン(CQ)とそれに対する推奨がPart1(診療ガイドライン)の項で取り扱われている。TAKとGCAはいずれもステロイド(グルココルチコイド:GC)により一時的な寛解に至るものの、減量過程で半数以上に再燃がみられるため、GC治療抵抗性症例の治療選択肢を明らかにするため、ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨が設定された。中岡氏は、「システマティック・レビュー(SR)チームがTAKとGCAのRCT論文をMindsのGRADEシステムに準拠した最新研究などのSR結果をガイドライン発刊に先駆けて論文報告した5)。そして、近年ではステロイド治療に加えて、IL-6阻害薬トシリズマブなどが汎用されるようになったため、エビデンスの確実性や益と害について各CQと推奨で言及している」と説明した。 なお、中型血管炎であるPANも循環器医が臨床現場で遭遇する可能性があること、『ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023』での記載がないことを踏まえ、本書第6章で取り上げている。また、バージャー病はPart2(各疾患の基礎と臨床)でのみの取り扱いであることには注意したい。 次に、本書を手に取るうえで理解しておきたい各疾患の特徴を以下のように示す。―――――――――――――――――――【高安動脈炎(TAK)】・病名:高安動脈炎に統一(大動脈炎症候群、高安病、脈なし病などと呼ばれているため)・患者数:4,642例(2022年度難病受給者証所持者数)・男女比:1対8~9と女性が圧倒的に多い・発症年齢:女性は20歳前後にピーク、男性ははっきりしたピークがない・年齢分布:50代が多い・患者背景:HLA-B52陽性患者が多く、陽性者はグルココルチコイド治療抵抗性症例が多い・合併症:潰瘍性大腸炎罹患者が8%前後存在・地域差:アジアに多く、欧米に少ない【巨細胞性動脈炎(GCA)】・病名:以前は側頭動脈炎、Horton病などが使用されていた・患者数:2,850例(2023年度医療費受給者証所持者数)・男女比:1対2~3で女性がやや多い・年齢分布:50歳以上にみられ、70~80代でピーク・合併症:リウマチ性多発筋痛症が約30~40%にみられる・地域差:欧米に多く、アジアに少ない【バージャー病】・病名:閉塞性血栓血管炎とも呼ばれる・患者数:2,259例(2019年度特定医療費[難病]受給者証所持者数)で、近年減少傾向・男女比:若年発症でヘビースモーカーの男性に好発する・原因:作用機序などは不明だが、喫煙との関連が推察される―――――――――――――――――――TAKでのトシリズマブ併用、GCAの大動脈瘤リスク 上記を踏まえ、TAKの治療について、「治療アルゴリズムでは、まず疾患活動性を評価したうえでステロイド治療を開始する。欧米のガイドラインでは初期から免疫抑制薬を併用することが推奨されているが、本書CQ1(TAKの治療ではどのようなレジメンが有用か?)では、GCの早期減量が必要な症例に対し、トシリズマブ併用を選択肢とする推奨を示した」と強調した。 続いてGCAについて、「全身症状に加え、血管分布に応じて症状が出現する。外頸動脈の領域では血管狭窄に伴い、側頭部の痛み(顎跛行、舌跛行など)がみられる。内頚動脈の領域では失明や脳梗塞の原因になるほか、近年では大動脈瘤などを来すため、循環器領域でも注目されている」と指摘。診断基準は、現状、国内では1990年ACR分類基準が利用されているが、2022年ACR/EULARベースに日本語版の策定を進めているため、従来の1990年ACR分類基準と欧米で用いられている2022年ACR/EULAR分類基準が併記されている。さらに、トシリズマブの適応について「(確定診断ならびに疾患活動性の評価後に)トシリズマブを併用することでステロイドが減量できる点は50歳以上の患者でステロイドによる副作用を回避できるメリットがあるため、治療アルゴリズムにおいて、矢印を太字で示した。なお、昨年のNEJM誌において有用性が示されたJAK阻害薬ウパダシチニブは今回のアルゴリズムには反映されておらず、改めて検討される予定となっている」と説明した。 バージャー病については、「早期診断のため、診断基準の改訂を望む意見が多くあったため、2024年に一度改訂を行っている。本疾患として相違ない症状を呈し、血管画像検査所見が本疾患の特徴と合致し、ほかの疾患と鑑別できれば、診断可能」と解説した。「妊娠・出産」に関するコラムを新設 本書はわが国の大型血管炎の診療レベルを標準化し、日本全国どこにおいても患者が同じような治療を受けられるようにすること、患者の生活の質(QOL)と予後を改善させることを目的とし、大型血管炎の診療に関わる医師、医療専門職および大型血管炎の患者を利用者と想定して作成された。 最後に、今回新たに盛り込まれたコラムのうちTAK患者の妊娠・出産の項目を例に挙げ、「TAKの発症は10~20代の若年女性に多く見られるため、患者に妊娠をすること自体がリスクを伴う現実を伝えることも必要と判断されたため、コラムで妊娠・出産にも触れている。TAKを有する患者では妊娠が禁忌とされていたが、妊娠前に炎症をコントロールすることで妊娠・出産が可能であることや管理の軸について記した」と締めくくった。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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尿路結石の再発予防、水分摂取への介入は無効/Lancet

 尿路結石再発予防のための水分摂取を促す行動介入プログラムは、ガイドラインベースのケアと比較して、2年間の追跡期間中、症候性の結石再発を減少させず、尿量増加もわずかだった。米国・セントルイス・ワシントン大学のAlana C. Desai氏らUrinary Stone Disease Network Investigatorsが、アドヒアランス介入に関する無作為化試験の結果を報告した。尿路結石の再発リスク減少のために水分摂取量を増やすことが広く推奨されているが、アドヒアランスが課題となっている。水分摂取量を維持するための介入効果について、これまで十分に試験されていなかった。Lancet誌2026年3月21日号掲載の報告。多要素行動介入群vs.ガイドライン準拠ケア群で症候性結石再発を評価 研究グループは、水分摂取量を増やすことを促す多面的な行動介入プログラムが、対照と比較して尿路結石の再発を減らすかどうかを明らかにする検討を行った。米国の6つの大学医療センターで、12歳以上、尿路結石の既往があり、現行ガイドラインに基づく24時間尿量が少ない被験者を登録した。 被験者は、水分摂取量を増やすことを促すようデザインされた多要素行動介入群、またはガイドラインに準拠したケアを受ける対照群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入は、目標水分摂取量の設定、目標水分摂取量を順守するための金銭的インセンティブ、水分摂取量を増やすことに対する障壁を克服するための健康指導、そして患者の選択に基づくアプローチ(水分摂取量増加を維持するためのテキストメッセージなど)で構成された。 無作為化割り付けは、遠隔的にコンピュータで生成され、治験担当医師、治療担当医師、アウトカム評価者、および判定者はグループ割り付けを知らされなかった。 主要アウトカムは、症候性の結石再発(2年間の追跡期間中の結石排出または結石に対する処置介入として定義)で、ITT集団を対象として解析した。副次アウトカムは、24時間尿量の変化、尿路症状、画像上の新規結石形成または既存結石の増大、および症候性の結石再発・新規結石形成・既存結石の増大の複合などであった。安全性エンドポイントとして、入院を要した低ナトリウム血症を評価した。追跡期間中央値738日時点で症候性の結石再発、介入群19%、対照群20% 2017年10月26日~2022年2月18日に、1,658例が介入群(826例)または対照群(832例)に無作為化された。被験者は、年齢中央値44歳(四分位範囲[IQR]:29~59)、女性が946例(57%)であった。 追跡期間中央値738日(IQR:711~778)時点で、症候性の結石再発は、介入群154例(19%)、対照群165例(20%)で発生した(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.77~1.20)。1,658例のうち1,104例(66.6%)が結石再発患者であった。 24時間尿量は、両群ともベースラインから増加したが、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月時点でいずれも、対照群と比較して介入群で尿量が多かった。 頻尿、尿意切迫および夜間頻尿の尿貯留症状は、介入群では対照群と比較して6ヵ月および12ヵ月時点では多かったが、その後の時点では差はなかった。 ベースラインから試験終了時の画像検査までに、既存結石の2mm以上の増大または新規結石形成について両群間で差は認められず、症候性の結石再発・新規結石形成・既存結石の2mm以上の増大の複合アウトカムについても両群間で統計学的有意差は認められなかった。 入院を要した低ナトリウム血症エピソードは報告されなかったが、無症候性の低ナトリウム血症が介入群12例(1%)、対照群2例(<1%)で報告された。

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AFアブレーション後のDOAC、Apple Watchで服用日数を95%削減/日本循環器学会

 心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション術後において、ガイドラインでは脳梗塞・全身塞栓症リスク(CHA2DS2-VAScスコア)に基づいて長期的な抗凝固療法の継続が推奨されている1)。しかし、術後にAFが抑制されている患者においても一律に直接経口抗凝固薬(DOAC)を継続することは、出血リスクの増加や医療コストの増大を招く懸念がある。そこで、アブレーション術後の患者において、Apple Watchを用いてAFをリアルタイムで検出することで、必要な時だけDOACを服用する「イベント駆動型」戦略について、安全性と有効性を検証する多施設共同研究「Up to AF Trial」が実施された。その結果、DOACの服用日数を約95%削減しつつ、追跡期間中に脳梗塞や重大な出血イベントは発生しなかったことが示された。3月20〜22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 1にて、大阪大学の須永 晃弘氏が発表した。なお、本結果はCirculation Journal誌オンライン版2026年3月20日号に同時掲載された2)。 本研究は、2023年8月~2024年4月の期間に、関西9施設における前向き単群介入試験として実施された。アブレーション術後3ヵ月以上経過し、洞調律を維持しているCHA2DS2-VAScスコア3以下の患者50例(平均年齢63歳、女性10%)を対象とした。Apple Watchによる30日間の先行モニタリングでAFがないことを確認してDOACを休薬、その後はApple Watchの通知(高心拍または不規則な心拍)や患者自身による心電図(ECG)記録でAFが疑われた場合のみ服用を再開し、7日以内に医師を受診するという「イベント駆動型」プロトコルを採用した。受診の結果、AFが否定されれば再び休薬し、確認されれば試験終了まで服用を継続した。主要評価項目は、追跡期間31~360日目における、従来の継続服用と比較した「DOAC服用日数の削減率」とした。副次評価項目は、全死亡、脳梗塞、全身塞栓症、重大な出血イベント、およびデバイスの不具合とした。 主な結果は以下のとおり。・Apple Watchを用いた心調律モニタリングにより、合計1万5,865人日の観察において、DOAC服用日数は856人日分にとどまり、従来の継続服用群と比較して94.6%(95%信頼区間[CI]:89.8~98.4)削減された。・Apple Watch装着(wear-days)の順守率の中央値は100%(95%CI:99.7~100)に達した。・追跡期間中、死亡、脳梗塞、全身塞栓症、重大な出血イベントは、いずれも発生しなかった。デバイスの不具合によるECG記録不可が1件認められた。・医師の診断を基準としたApple Watch ECGの性能は、感度100%、特異度93.3%、正確度95.8%ときわめて高い値を示した。 本研究の結果、アブレーション術後の低〜中等度リスク患者において、Apple Watchを活用した個別化戦略は、DOACを安全に大幅に削減できる可能性が示された。須永氏は、今回の知見がリスクスコアに基づく静的な管理から、心調律に基づいた「動的な管理」へのパラダイムシフトを促進するものであると指摘した。本研究の限界として、サンプルサイズの少なさや、塞栓症リスクの比較的低い集団を対象としている点に触れ、今後より大規模な無作為化比較試験による検証が必要であると結論付けた。 日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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乳がんオリゴ転移、今わかっていること・いないこと/日本臨床腫瘍学会

 乳がんオリゴ転移については、手術や放射線療法などの局所療法が検討されるが、その有効性についての報告は多くが後方視的検討であり、どのような患者にどの治療を選択すべきかについて明確なコンセンサスは得られていない。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、東京科学大学病院の石場 俊之氏が「乳癌オリゴ転移の今とJCOG2110(OLIGAMI試験)の可能性」と題した講演を行い、近年の研究結果と現在患者登録中のOLIGAMI試験の概要について解説した。オリゴ転移に局所療法を行うべきか? オリゴ転移とは、「転移巣の数が少なく腫瘍径が小さく(5個以下で同一臓器に必ずしも限定しない)、局所療法により完全奏効(CR:Complete Response)となる可能性がある状態」と定義され1)、新規に診断される転移乳がんの1~10%程度と考えられている2)。 オリゴ転移に対する局所療法としては、手術、ラジオ波焼灼療法(RFA)、放射線療法(寡分割照射、体幹部定位放射線治療[SBRT])などが考えられるが、「乳癌診療ガイドライン2022年版」3)では外科的切除は推奨されておらず、SBRTについては「症例を選択したうえで考慮してもよい」という記述となっている。 一方で、2025年のSt. Gallen国際乳がんコンセンサス会議では乳がんオリゴ転移への局所療法介入に対して87.1%の専門家が「同意する」と回答し、日本のJCOG乳がんグループへのアンケートでも81%が「転移が限局していて初期薬物療法に感受性が高い場合に検討する」と答えるなど、実地臨床では局所療法の併用が広く模索されている。 2つの臨床試験結果からみえてきたこと 近年、乳がんオリゴ転移を対象とした前向き無作為化試験が世界中で実施されている。石場氏は2つの試験に着目し、その結果について解説した。4個以下の乳がんオリゴ転移を対象としたNRG-BR002試験では、標準的な全身薬物療法に局所療法(定位照射または手術)を追加しても、無増悪生存期間(PFS)の改善は認められなかった。この理由として、同氏は、無作為化前の薬剤の規定がなく全身薬物療法の強度に群間差があった可能性、患者選定について「登録時の60日以内のオリゴ転移」との規定のみでPETが必須でなく、もともと多発転移であったinducedオリゴ転移や全身療法中に一部の病変のみが増悪したoligoprogressionの症例が含まれていた可能性を指摘した。 乳がんおよび肺がんのoligoprogressionを対象としたCURB試験では、肺がん患者においてはSBRTによりPFS改善が認められたが、乳がん患者では差がみられなかった。石場氏は、PDとなった症例の約6割で新規の病変が出現している点が、乳がん患者でベネフィットが得られない要因ではないかと述べた。OLIGAMI試験のデザインとその意義 上記のような乳がんオリゴ転移の特徴を踏まえ、現在進行中のJCOG2110(OLIGAMI試験)では、以下の基準が設けられている4)。・対象:3個以下のオリゴ転移、各オリゴ転移の大きさ≦5cm(脳転移≦2cm)※de novoオリゴ転移に限定し、PETを必須とする・12週間の全身薬物療法で、薬物への反応性のある症例のみを無作為化・割付調整因子:施設、オリゴ転移個数、サブタイプ分類、転移時期・試験群:全身薬物療法継続群、根治的局所療法(放射線療法または手術後に全身薬物療法を再開)群・主要評価項目:全生存期間 石場氏は、同試験を実施する意義として、ポジティブな結果が出た場合は、乳がんオリゴ転移に対する局所療法を積極的に推奨することができ、現在統一されていない患者選択基準、局所療法の選択に関するコンセンサスが得られることを挙げた。また、もしネガティブな結果となったとしても、無用な局所療法を避けることができ、特定の集団でのみ有効性が認められた場合はさらなる研究につなげることができるとした。 さらに本試験の大きな特徴として、ctDNA(血中循環腫瘍DNA)を用いた微小残存病変(MRD)解析の附随研究が組み込まれている。局所療法介入前後のctDNA動態をモニタリングすることで、分子レベルでの微小転移の有無と局所療法の効果判定、さらには再発の早期検知に関する有用性が明らかになることが期待される。 同試験は現在も患者登録中で、最後に石場氏は「対象の患者さんがいらっしゃれば、ぜひJCOG参加施設にご連絡いただきたい」として、講演を締めくくった。

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虚血の急性期治療が瘢痕関連VTアブレーション成績に及ぼす影響~TITAN-VT/日本循環器学会

 虚血性心筋症(ICM)に伴う瘢痕組織関連心室頻拍(VT)に対するカテーテルアブレーションは、急性心筋梗塞(AMI)発症から5時間以内の早期再灌流により良好な結果をもたらすことが、「TITAN-VT研究」より示唆された。西村 卓郎氏(東京科学大学 循環器内科)が3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて報告した。 AMIに対する早期再灌流は、梗塞サイズを縮小し、左室機能の保存や生存率の向上に寄与するため、最新の『急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)』ではST上昇型心筋梗塞(STEMI)の発症から90分以内に搬送し、primary PCIを実施することが推奨されている1)。しかし昨今、心筋梗塞から数年後に発症する致死性不整脈である“ICMに伴う瘢痕関連VT”が問題視されている。この瘢痕組織の特徴は急性期虚血治療の影響を受けるが、早期再灌流がVTに対するカテーテルアブレーションの結果に及ぼす影響は依然として不明であった。 そこで同氏らは、虚血の急性期管理と虚血性VTアブレーションの長期転帰との関連を評価するため、多施設共同観察コホート研究を実施。2020~24年に45施設で施行されたICMに伴う瘢痕関連VTアブレーション例を後ろ向きに解析し、多電極カテーテルによる左室心内膜のマッピングにて評価された不整脈基質(瘢痕、遅延電位、伝導ブロックなど)およびVTアブレーションの結果と、虚血の背景(AMI vs.慢性完全閉塞[CTO])、再灌流の有無、実施タイミング(Door-to-Balloon time:DTB、Onset-to-Balloon time:OTB)との関連を検証した。なお、VT再発は持続する単形性心室頻拍、抗頻拍ペーシングやショックなどに対する植込み型除細動器による治療実施と定義付けた。 主な結果は以下のとおり。・対象はICM520例(AMI:392例、CTO:116例)ならびにVTアブレーション術581件*で、平均年齢72歳(範囲:64~77)、男性485例(93%)、平均BMI 23(同:21~26)、平均左室駆出率(LVEF)34%(同:26~42)であった。*複数回の手術経験者は最終手術結果が評価された・VTアブレーションは、AMIもしくはCTOの診断後中央値16年(8~25年)で実施されていた。・使用した3DマッピングシステムはCARTO(60%)、EnSite(35%)、Rhythmia(5%)であった。・追跡期間中、全体の76%にVT再発は認められなかった。・AMI群の392例(75%)では、OTBが5時間未満(p=0.021)およびDTBが90分未満(p=0.031)の早期再灌流は、遅延または再灌流なしと比較し、より良好な結果と関連していた。・不整脈基質としての伝導ブロックはOTBが長い症例ほど高頻度に観察される傾向にあり、再灌流時間が複雑な不整脈基質の形成と関連していることが示唆された。一方で、心表面に対する瘢痕の割合はOTBと強い相関はみられなかった。・心筋虚血診断時の側副血管の有無は、VTアブレーションの結果と関連していなかった(p=0.87)。・CTO群の116例(23%)では、アブレーション前(ベースライン)の12誘導心電図でQ波を有する患者のほうが、より予後良好な結果と関連していた(p=0.014)。 本研究の限界として、日本人のみを対象としていること、マッピングや手術経験などが標準化されていない、冠動脈の解剖学的構造などは評価していない点を挙げるも、同氏は本研究を振り返り「急性心筋梗塞に対する再灌流遅延例では伝導ブロックが増加することで複雑な不整脈基質が形成されていた。よって、VTアブレーション成績は瘢痕量よりも基質構造(とくに伝導ブロック)に依存する。CTOはAMIと異なる基質を持つ可能性がある」とし、「ベースラインのQ波特性はCTOの既往を有する患者のVTアブレーション結果の簡便な予測マーカーとなる可能性がある」と結んだ。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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StageIIIのdMMR大腸がん、術後アテゾリズマブ上乗せでDFS改善(ATOMIC)/NEJM

 DNAミスマッチ修復機能欠損(dMMR)のあるStageIII結腸がんの術後補助療法において、アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)+mFOLFOX6はmFOLFOX6単独と比較して、無病生存(DFS)率が有意に高く、有害事象は試験薬の既知の安全性プロファイルと一致したことを、米国・Mayo ClinicのFrank A. Sinicrope氏らが「ATOMIC試験」の結果で報告した。StageIII結腸がんは、欧米では標準治療(切除+術後補助療法[フッ化ピリミジン系薬+オキサリプラチン])を行っても約30%が再発するという。研究の成果は、NEJM誌2026年3月26日号に掲載された。米独の無作為化第III相試験 ATOMIC試験は、米国の303施設とドイツの9施設で実施した無作為化第III相試験(米国国立がん研究所[NCI]およびGenentechの助成を受けた)。2017年9月~2023年1月に、年齢18歳以上、完全切除(R0)が成されたStageIII結腸腺がん(N1/2、M0)で、dMMRが確認された患者712例(年齢中央値64歳[四分位範囲:49~72]、女性392例[55.1%])を登録した。 これら患者を、術後10週以内に補助療法として、アテゾリズマブ(840mg、2週ごと、静脈内投与、12サイクル)+mFOLFOXを6ヵ月間投与した後アテゾリズマブ(13サイクル)単剤を6ヵ月間投与する群(アテゾリズマブ群:355例)、またはmFOLFOXを6ヵ月間投与する群(mFOLFOX単独群:357例)に無作為に割り付けた。 mFOLFOXは両群とも、フルオロウラシル(400mg/m2をボーラス投与後、2,400mg/m2を46時間で持続静注投与)+オキサリプラチン(85mg/m2)+ロイコボリン(400mg/m2)を投与した。 主要評価項目はDFS率(無作為化から再発または全死因死亡までの期間)、副次評価項目は全生存(OS)および有害事象プロファイルとした。5年OS率には差がない 684例(96.1%)が米国施設登録患者であった。328例(46.1%)が臨床的に低リスク(Tx~3、N1/1c)、384例(53.9%)が高リスク(T4またはN2、あるいはこれら両方)で、150例(21.1%)がLynch症候群であった。 追跡期間中央値40.9ヵ月の時点で、3年DFS率は、mFOLFOX単独群が76.2%(95%信頼区間[CI]:70.9~80.6)であったのに対し、アテゾリズマブ群は86.3%(81.8~89.8)と有意に高かった(ハザード比[HR]:0.50、95%CI:0.35~0.73、層別log-rank検定のp<0.001)。 5年OS率は、アテゾリズマブ群が89.7%(95%CI:85.2~92.9)、mFOLFOX単独群は87.9%(83.1~91.4)であり、両群間に有意な差を認めなかった(層別HR:0.90、95%CI:0.55~1.47)。Grade3/4の有害事象、アテゾリズマブ群84.1%vs.mFOLFOX単独群71.9% Grade3または4の有害事象は、アテゾリズマブ群で頻度が高かった(84.1%vs.71.9%)。とくに非血液毒性(69.4%vs.54.5%)の差が大きく、なかでも疲労(10.1%vs.3.3%)が高頻度にみられた。Grade3または4の血液毒性もアテゾリズマブ群で多く(46.8%vs.38.6%)、なかでも好中球数の減少(43.6%vs.35.9%)の頻度が高かった。 各施設の担当医判定によるGrade3または4の治療関連有害事象は、アテゾリズマブ群で72.5%、mFOLFOX単独群で61.7%に発現した。Grade5(死亡)の有害事象は、それぞれ6例および2例にみられ、このうち治療関連と判定されたのはアテゾリズマブ群の2例(突然死、敗血症)のみだった。 著者らは、「アテゾリズマブの追加により、化学療法の曝露量が減少することはなく、Grade3/4の免疫関連有害事象の発生率が上昇することもなかった」とし、「本試験の参加施設のほとんどが地域密着型の診療施設であり、患者の年齢にも上限を設けなかったため、得られた知見は一般化が可能と考えられる」と指摘している。 なお、本試験の結果は最新のNCCNガイドラインに組み込まれ、StageIIがんT4bN0にもこれらの知見が適用されているという。

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急性前立腺炎、尿道カテーテル留置はしたほうがいい?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第24回

Q24 急性前立腺炎、尿道カテーテル留置はしたほうがいい?泌尿器科医です。急性前立腺炎における尿道カテーテル留置の適否について、ガイドラインなどの記載はありますか? 他科から相談を受けるものの文献的な裏付けがなくcase-by-case basisで回答しているので。

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