サイト内検索|page:37

検索結果 合計:2884件 表示位置:721 - 740

721.

CKDを抑制、植物油よりも魚油/BMJ

 魚介由来の3種のオメガ3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)の総量の値が高いほど、慢性腎臓病(CKD)発症のリスクが低いのに対し、植物由来のn-3 PUFAにはこのような作用はなく、魚介由来n-3 PUFA値が最も高い集団は最も低い集団に比べ、推算糸球体濾過量(eGFR)の≧40%の低下のリスクが低いことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のKwok Leung Ong氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2023年1月18日号に掲載された。ALA、EPA、DPA、DHAとCKDの関連を評価 研究グループは、循環血中のn-3 PUFA値とCKD発症との関連を評価する目的で、2020年5月までに特定された12ヵ国の19のコホート研究(日本の久山町研究[2,713例、2002~03年]を含む)の統合解析を行った。 解析には、n-3 PUFA(植物由来のαリノレン酸[ALA]、魚介由来のエイコサペンタエン酸[EPA]・ドコサペンタエン酸[DPA]・ドコサヘキサエン酸[DHA])と、eGFRに基づくCKDの発症との関連を前向きに評価した研究が含まれた。 主要アウトカムは初発CKDであり、eGFR<60mL/分/1.73m2の新規発症と定義された。逆分散加重メタ解析で19研究の結果が統合された。 2万5,570例が主解析に含まれた。19のコホートの平均年齢は49~77歳、平均BMIは23.2~28.3、ベースラインの平均eGFRは76.1~99.8mL/分/1.73m2の範囲であった。追跡期間の加重中央値は11.3年で、この間に4,944例(19.3%)がCKDを発症した。ガイドラインの推奨と一致する知見 多変量モデルを用いた解析では、魚介由来の総n-3 PUFA値(EPA+DPA+DHA)が高いほど、CKDのリスクが低かった(四分位範囲ごとの相対リスク[RR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.86~0.98、p=0.009、I2=9.9%)。 カテゴリー解析では、魚介由来の総n-3 PUFA値が最も高い五分位集団は、最も低い五分位集団と比較して、初発CKDのリスクが13%低かった(RR:0.87、95%CI:0.80~0.96、p=0.005、I2=0.0%)。 植物由来のALA値は、CKDの発症と関連しなかった(RR:1.00、95%CI:0.94~1.06、p=0.94、I2=5.8%)。これらの結果は、感度分析でも同様であった。 また、これらの関連は、すべてのサブグループ(ベースラインの年齢[≧60 vs.<60歳]、eGFR[60~89 vs.≧90mL/分/1.73m2]、高血圧・糖尿病・冠動脈疾患の有無)で一致して認められた。 一方、魚介由来の総n-3 PUFA値は、eGFRの≧40%の低下との関連はなかったが、最上位の五分位集団は最下位の五分位集団に比べ、このリスクが低かった(RR:0.85、95%CI:0.74~0.98、p=0.03、I2=44.1%)。 著者は、「これらの知見は、健康的な食事パターンの一環として魚介類や脂肪の多い魚の摂取を推奨するガイドラインと一致しており、CKD予防における魚介由来のn-3 PUFAについて検討する研究を新たに行う際に、その強力な根拠となる」としている。

722.

心血管疾患リスク予測式は、がん生存者に有用か/Lancet

 がん患者は心血管疾患のリスクが高いという。ニュージーランド・オークランド大学のEssa Tawfiq氏らは、がん生存者を対象に、同国で開発された心血管疾患リスク予測式の性能の評価を行った。その結果、この予測式は、リスクの予測が臨床的に適切と考えられるがん生存者において、5年心血管疾患リスクを高い精度で予測した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年1月23日号で報告された。ニュージーランドの妥当性検証研究 研究グループは、がん生存者における心血管疾患リスクの予測式の性能を、プライマリケアで評価する目的で、妥当性の検証研究を行った(オークランド医学研究財団などの助成を受けた)。 「ニュージーランド心血管疾患リスク予測式」の開発に使用されたPREDICTコホート研究の参加者のうち、年齢が30~74歳で、心血管疾患リスクの初回評価日の2年以上前に浸潤がんの初回診断を受けた患者が解析に含まれた。 リスク予測式は、性別で分けられ、予測因子として年齢、民族、社会経済的剥奪指標、心血管疾患の家族歴、喫煙状況、心房細動と糖尿病の既往、収縮期血圧、総コレステロール/HDLコレステロール比、予防的薬物療法(降圧薬、脂質低下薬、抗血栓薬)が含まれた。 較正(calibration)では、男女別に、リスク予測式で推定された5年心血管疾患リスクの平均予測値と実測値とを十分位群別に比較し、さらにニュージーランドのガイドラインの3つの臨床的5年心血管疾患リスクグループ(<5%、5~15%未満、≧15%)に分けて比較することで評価した。判別(discrimination)は、HarrellのC統計量で評価した。がん生存者で妥当な臨床的手段 1万4,263例(男性6,133例[43.0%]、女性8,130例[57.0%])が解析に含まれた。リスク評価時の平均年齢は男性が61(SD 9)歳、女性は60(SD 8)歳で、追跡期間中央値はそれぞれ5.8年、5.7年だった。 追跡期間中に、男性は658例(10.7%)、女性は480例(5.9%)で心血管疾患イベントが発生し、それぞれ110例(1.8%)、90例(1.1%)が致死的な心血管疾患イベントであった。また、心血管疾患の粗発生率は、年間1,000人当たり男性が18.1例、女性は10.2例だった。 リスク予測値の十分位群(高いほど高リスク)における実測値との差は、男性ではほとんどが2%以内であったが、2つの群(第4十分位群:-2.49%、第9十分位群:-2.41%)では約2.5%の過小評価が認められた。同様に、女性では、リスクの予測値と実測値の差は多くが1%以内であったが、1つの群(第10十分位群:-3.19%)では約3.2%過小評価されていた。 臨床的なリスクグループで分類した解析では、心血管疾患リスクの実測値と比較して予測値は、低リスク群では男女とも2%以内で過小に予測していた(<5%群[男性:-1.11%、女性:-0.17%]、5~15%未満群[-1.15%、-1.62%])。これに対し、高リスク群(≧15%)の男性では2.2%(実測値17.22%、予測値19.42%)、女性では約3.3%(16.28%、19.60%)過大に予測していた。HarrellのC統計量は、男性が0.67(SE 0.01)、女性は0.73(0.01)だった。 著者は、「予測式にがん特異的な変量を追加したり、競合リスクを考慮したりすることで、予測値は改善する可能性がある。今回の結果は、この予測式がニュージーランドのがん生存者において妥当な臨床的手段であることを示唆する」としている。

723.

シスタチンCに基づくeGFRcys式の精度、eGFRcr式と同等/NEJM

 糸球体濾過量(GFR)の推算方法として、欧州腎機能コンソーシアム(European Kidney Function Consortium:EKFC)が開発した、血清クレアチニンを用いる「EKFC eGFRcr式」がある。これは、年齢、性別、人種の差異に関連したばらつきをコントロールするため、健康な人の血清クレアチニン値の中央値で割った「調整血清クレアチニン値」を用いるものだが、血清クレアチニン値の正確な調整には課題があることから、ベルギー・KU Leuven Campus Kulak KortrijkのHans Pottel氏らは、調整血清クレアチニン値を、性別や人種による変動が少ないシスタチンC値に置き換えることができるかどうかを検証した。結果、調整シスタチンC値に置き換えた「EKFC eGFRcys式」は、欧州、米国、アフリカのコホートにおいて一般的に用いられている推算式より、GFRの評価精度を向上させたことが示されたという。NEJM誌2023年1月26日号掲載の報告。調整血清クレアチニン値を調整シスタチンC値に置き換えて検証 研究グループは、スウェーデンの患者のデータを用いて成人のシスタチンC値の調整係数を推定した後、EKFC eGFRcr式の調整血清クレアチニン値を調整シスタチンC値に置き換えて得られたEKFC eGFRcys式の性能を検証した。欧州、米国、アフリカの白人患者および黒人患者のコホートにおいて、実測したGFR、血清クレアチニン値、血清シスタチンC値、年齢、性別に基づく式と比較検証した。EKFC eGFRcys式の精度はEKFCeGFRcr式と同等、CKD-EPI eGFRcys式より高い シスタチンC値の調整係数は、スウェーデン・ウプサラ大学病院の白人患者22万7,643例のデータに基づき、50歳未満の男女で0.83、50歳以上の男女で0.83+0.005×(年齢-50)と推定された。 この数値を基にしたEKFC eGFRcys式は偏りがなく、白人患者および黒人患者のいずれにおいても(欧州1万1,231例、米国1,093例、アフリカ508例)、EKFC eGFRcr式と精度は同等で、国際腎臓病ガイドライン機構(KDIGO)が推奨するCKD-EPI eGFRcys式より精度が高かった。EKFC eGFRcrとEKFC eGFRcysの算術平均値は、いずれかのバイオマーカーに基づく推算値よりも、推算GFRの精度をさらに向上させた。 なお、著者は、今回の結果はアジアや米国の白人患者と黒人患者で構成されたコホートや小児コホートでの検証をしておらず、限定的であるとしている。

724.

新型コロナウイルス感染症に対する経口治療薬の比較試験(ニルマトレルビル/リトナビルとVV116)(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化リスクの高い軽症~中等症患者を対象とした、標準治療薬ニルマトレルビル/リトナビルと新規薬剤VV116との比較試験である。 ニルマトレルビル/リトナビルは、オミクロン株流行下におけるワクチン接種者やCOVID-19罹患歴のある患者を含んだ研究でも、重症化リスクの軽減が報告され(オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化転帰)、本邦の薬物治療の考え方(COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版[2022年11月22日])やNIHのCOVID-19治療ガイドライン(Prioritization of Anti-SARS-CoV-2 Therapies for the Treatment and Prevention of COVID-19 When There Are Logistical or Supply Constraints Last Updated: December 1, 2022)でも重症化リスクのある軽症~中等症患者に対して推奨される薬剤である。しかし、リトナビルは相互作用が多く、重症化リスクがある高齢者や高血圧患者で併用注意や併用禁忌の薬剤を内服していることがあり、本邦では十分に活用されていないことも指摘されている。 新規薬剤のVV116はレムデシビルの経口類似体で、主要な薬物代謝酵素や薬物トランスポーターを阻害せず、他剤との相互作用は起こしづらいと考えられている薬剤である。 本研究では、重症化リスクの高い軽症~中等症のCOVID-19成人患者でVV116投与群は、ニルマトレルビル/リトナビル投与群と比較して、持続的な臨床的回復までの期間について非劣性、かつ副作用が少なかった。 VV116は、今後COVID-19の治療に用いられる可能性のある薬剤ではあるが、本研究結果のみでは、COVID-19治療に用いる根拠は乏しいと私は考えている。理由としては、本研究の主要評価項目が、持続的な臨床回復までの期間となっていることである。本文中では、ニルマトレルビル/リトナビルはWHOガイドラインで重症化リスクの高い軽症~中等症患者に推奨されているために比較群としたが、同薬剤が各国のガイドラインで推奨されている根拠は、ニルマトレルビル/リトナビルの投与により、入院・死亡などの重症化リスクが有意に軽減したことにある。limitationにも記載があるが、本研究では重症化・死亡率低下の点で有効性を評価することができておらず、VV116がニルマトレルビル/リトナビルと比較して副作用が少なかったとしても、投薬により得られるメリットがなければ推奨する根拠は乏しいだろう。ニルマトレルビル/リトナビルは、COVID-19に対して有効な抗ウイルス薬なので、投薬により持続的な臨床的回復が速やかになる可能性はあるが、私の知る限りは、ニルマトレルビル/リトナビルの投与により持続的な臨床回復までの期間が早期になったことを示す大規模研究はない。本研究ではプラセボ群もないため、重症化リスクの高い軽症~中等症のCOVID-19成人患者に対して、VV116を投与すると、COVID-19の自然経過と比較して有意に持続的な臨床的回復までの期間を短縮するとは言えないと考える。 重症化予防効果の確認はlimitationで別の試験で評価を行う予定であることが記載されている。レムデシビルは、重症化リスクのある患者の入院・死亡リスクを軽減したことが証明されており(Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2022;386:305-315.)、VV116はこの経口類似体であるため、同様に重症化予防は期待されうるが、本薬剤の評価はこの結果を待ちたいと考える。 その他に、本研究を本邦の臨床現場に当てはめる場合に気になったこととしては、ワクチン接種がある。本研究では、ワクチン接種者も参加していることを特徴としている。ただし、本研究のワクチン接種者は、どのワクチンを、いつ、何回接種したかが不明である。ワクチンの種類や、接種時期、接種回数は、持続的な臨床的回復までの期間や重症化リスクに寄与する可能性があり、重症化予防効果の試験では同内容も確認できることを期待したい。 最後に、2023年1月時点、本邦で使用されている経口抗ウイルス薬の目的を整理する。ニルマトレルビル/リトナビル、モルヌピラビル、エンシトレルビルの薬剤の中で、ニルマトレルビル/リトナビル、モルヌピラビルは、重症化リスクのある患者に対して重症化予防目的に投薬が行われている。対して、エンシトレルビルの重症化予防効果は証明されておらず、重症化リスクのない患者の早期症状改善目的に投薬されるが、重症化リスクのある患者には前者の2剤を使用することが推奨されている。 しかし、今後のCOVID-19の流行株の特徴や社会情勢によっては、抗ウイルス薬に求められる役割は、重症化予防効果や症状の早期改善のみではなく、後遺症リスクの軽減、場合によっては濃厚接触後の発症予防になる可能性もあるだろう。 VV116は、相互作用のある薬剤が少なく、比較的副作用も少ない薬剤と考えられ、臨床現場で使用しやすい可能性がある。本研究からは、同薬剤を用いることで患者が得られる効果ははっきりしなかったと考えるが、今後発表される研究結果によっては、有望な抗COVID-19薬となりうるだろう。また、VV116以外にもレムデシビルの経口類似体薬が開発されており、今後の研究成果を期待したい。

725.

高齢者への前立線がんスクリーニング、推奨なしでも行われる背景

 米国では、2021年に24万8,530例の男性が前立腺がんと診断され、3万4,000例以上が死亡したと推定されている。一方、前立腺がんは進行が遅く、70 歳以上の場合、スクリーニングは寿命を延ばすことなく、過剰診断や過剰診療の不必要なリスクをもたらす可能性があるとして、米国ガイドラインにおいて推奨されていない。 それにもかかわらず行われる「価値の低い」スクリーニングは主にプライマリケア・クリニック(家庭医)で行われており、医師の指示/依頼が多いほど低価値のスクリーニングが行われる傾向にあることが、米国・ノースカロライナ州のウェイクフォレスト医科大学の Chris Gillette氏らによる研究で示された。本結果は、Journal of the American Board of Family Medicine誌オンライン版2023年1月2日号に掲載された。 研究者らは 2013~16年および2018年のNational Ambulatory Medicare Care Surveyのデータセットの二次分析を行った。Andersenの医療サービス利用の行動モデルにより、独立変数の選択を行い、多変量解析を行った。データから、(1) 患者が男性、(2) 70歳以上、(3) プライマリケア・クリニック受診を選択し、さらに診断検査である可能性がある特定のコードを除外し、スクリーニング検査を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・70歳以上への「価値が低い」と判断された血清PSA(前立腺特異抗原)スクリーニングは100回中6.71回(95%信頼区間[CI]: 5.19~8.23)、直腸指診は100回中1.65回(95% CI: 0.91~2.38)の割合で行われていた。・低価値のスクリーニングは、プライマリ医や医療機関によって提供/指示されたサービスの数に関連していることが判明した。具体的には、1つのサービスを依頼するごとに、低価値のPSAが実施される確率が49%、低価値の直腸指診が実施される確率が37%増加した。・過去の受診した回数の多い受診では、低価値の直腸指診を受ける確率は減少した。 研究者らは「医療者が診察時に可能な検査をすべて指示してしまう『ショットガン』アプローチはよく知られた現象であり、医療資源の浪費を引き起こし、ひどい場合は患者がその後有害な検査や処置にさらされる可能性がある。前立腺がんスクリーニングは患者の嗜好性が高く、リスクがあるにもかかわらず検査を希望している可能性がある。低価値のスクリーニングを減らしたい組織は、多くの検査をオーダーしているクリニックに介入(監査やフィードバック)すべきである。また、本研究はプライマリケア・クリニックにおけるスクリーニングの調査であり、泌尿器科専門医のものは含まれていないことに注意が必要だ」としている。

726.

人工呼吸器装着患者に高用量タンパク質は有効か/Lancet

 人工呼吸器を装着している重症患者にタンパク質を高用量投与しても、通常用量投与と比較して入院から生存退院までの期間は改善されず、急性腎障害や臓器不全スコアの高い患者に関してはアウトカムを悪化させる可能性があることが明らかとなった。カナダ・クイーンズ大学のDaren K. Heyland氏らが、日本を含む16ヵ国85施設の集中治療室(ICU)で実施した医師主導によるプラグマティックな単盲検無作為化試験「EFFORT Protein試験」の結果を報告した。国際的な重症患者の栄養ガイドラインでは、質の低いエビデンスに基づき広範なタンパク質投与量が推奨されているが、重症患者に高用量のタンパク質を投与したときの有効性は不明であった。著者は、「1日1.2g/kg(米国静脈経腸栄養学会2022年版ガイドラインの下限、もしくは、欧州静脈経腸栄養学会2019年版ガイドライン準拠の1日1.3g/kg)を処方し、処方量の80%達成に努めることがすべての重症患者にとって合理的かつ安全な方法と思われる。タンパク質の高用量投与のベネフィットが得られる重症患者のサブグループ(たとえば、熱傷、外傷、肥満、術後回復期の患者)を明らかにするためには、投与の最適な量とタイミングを定義するためのさらなる研究が必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年1月25日号掲載の報告。栄養的に高リスクの重症患者にタンパク質投与、1日2.2g/kg以上と1.2g/kg以下を比較 研究グループは、重症患者に高用量のタンパク質を投与することにより臨床アウトカムが改善されるという仮説を検証する目的で、ICU入室から96時間以内かつスクリーニングから48時間以上人工呼吸器の装着が継続されると予想され、栄養的に高リスクの成人患者(18歳以上)を登録し、タンパク質の高用量投与群(1日2.2g/kg以上)と通常用量投与群(1日1.2g/kg以下)に、施設で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた(患者のみ盲検化)。タンパク質の投与は、ICU入室または人工呼吸器装着後96時間以内に、無作為化後できるだけ早く開始することとした。 有効性の主要アウトカムは、ICU入室後60日間における生存退院までの期間、副次アウトカムは60日死亡率であった。累積生存退院率は46.1% vs.50.2%、60日死亡率は34.6% vs.32.1% 2018年1月17日~2021年12月3日の期間に、計1,329例が無作為に割り付けられ、介入前の早期死亡、退院、同意撤回を除く1,301例(高用量群645例、通常用量群656例)が解析対象となった。 60日までの累積生存退院率は、高用量群46.1%(95%信頼区間[CI]:42.0~50.1%)、通常用量群50.2%(46.0~54.3%)であった(ハザード比[HR]:0.91、95%CI:0.77~1.07、p=0.27)。施設や共変量に関して調整しても、生存退院までの期間に両群で差は認められなかった。 60日死亡率は、高用量群34.6%(222/642例)、通常用量群32.1%(208/648例)であった(相対リスク:1.08、95%CI:0.92~1.26)。 サブグループ解析の結果、生存退院までの期間および60日死亡率の両方に関して、入院時の急性腎障害(ステージ1~3)および臓器不全スコア高値(SOFAスコア9以上)の患者においては、タンパク質投与量との間に相互作用がみられ、タンパク質の高用量投与は害を及ぼす可能性があることが示唆された。

727.

イバブラジン・ベルイシグアト【心不全診療Up to Date】第5回

第5回 イバブラジン・ベルイシグアトKey Points4人の戦士“Fantastic Four”を投入したその後の戦略はいかに?過去の臨床試験を紐解き、イバブラジン・ベルイシグアトが必要な患者群をしっかり理解しよう!はじめに第4回までで、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF:Heart Failure with reduced Ejection Fraction)に対する“Fantastic Four”(RAS阻害薬/ARNi、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬)の役割をまとめてきた。そして今回は、「その4剤併用療法(First-Line Quadruple Therapy)を開始、用量最適化後の次のステップ(Add-on Therapies)は?」という観点から、かかりつけの先生方の日常診療に役立つ内容を最新のエビデンスも添えてまとめていきたい。4人の戦士“Fantastic Four”を投入したその後の戦略はいかに?まず、第4回までで説明してきたとおり、大原則として、医療従事者(ハートチーム)が、目の前のHFrEF患者に対して、相加的な予後改善効果が証明されているガイドラインClass 1推奨薬4剤“Fantastic Four”をできる限り速やかにすべて投与する最大限の努力をし、最大許容用量まで漸増することが極めて重要である。なお、もしその中のどれか1つでも追加投与を見送る場合は、その薬剤を『試さないリスク』についても患者側としっかり共有しておくことも忘れてはならない。では、それらをしっかり行ったとして、次のステップ(追加治療)はどのような治療がガイドライン上推奨されているか。その答えは、米国心不全ガイドラインがわかりやすく、図1をご覧いただきたい1)。まず、β遮断薬投与にもかかわらず、心拍数≧70拍/分の洞調律HFrEF患者には、イバブラジンの追加投与がClass 2aで推奨されている。また、最近心不全増悪を認めた高リスクHFrEF患者では、ベルイシグアトの追加投与がClass 2bで推奨されている。その他RAAS阻害薬投与中の高カリウム血症に対するカリウム吸着薬(sodium zirconium cyclosilicate[商品名:ロケルマ]など)がClass 2bで推奨されているなどあるが、今回はイバブラジン(商品名:コララン)、ベルイシグアト(商品名:ベリキューボ)2つの薬剤について少しDeep-diveしていこう。画像を拡大する1.イバブラジン(ivabradine)イバブラジンとは、洞結節にある過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネルを阻害する、新たな慢性心不全治療薬である。と言われても何のことかわかりにくいが、この薬剤の特徴を一言でいうと、「陰性変力作用なく心拍数だけを減らす」というものであり、適応を一言で言うと、「心拍数の速い洞調律のHFrEF患者」である。では、このHCNチャネルとは何者か。HCNチャネルは主に洞結節に存在する6回膜貫通型膜タンパク質であり、正電荷アミノ酸(アルギニンやリジン)が多く配置されている第4膜貫通ドメイン(HCN4)が電位センサーの中心となっている。洞結節において電気刺激が自発的に発生する自発興奮機能(自動能)形成に寄与する電流は、”funny” current(If)と呼ばれ、HCNチャネル(主にHCN4)を介して生成される2,3)。イバブラジンは、このHCN4チャネルを高い選択性をもって阻害することで、Ifを抑制し、拡張期脱分極相におけるペースメーカー活動電位の立ち上がり時間を遅延させ、心拍数を減少させる。イバブラジンは用量依存的に心拍数を低下させるが、この特異的な作用機序の結果として、心臓の変力作用や全身血管抵抗に影響を与えずに心拍数だけを低下させることができる4,5)。そして、心拍数を減らすことによって、心筋酸素消費量を抑え、左室充満と冠動脈灌流を改善させ、その結果左室のリバースリモデリングを促し、心不全イベントを抑制するというわけである6)。本剤は、2005年欧州においてまず安定狭心症の適応で承認され、その後慢性心不全の適応で2012年に欧州、2015年に米国で承認された(図2)7)。その流れを簡単に説明すると、冠動脈疾患を有する左室収縮機能障害患者へのイバブラジンの心予後改善効果を検証したBEAUTIFUL試験の結果は中立的なものであったが、心拍数≧70拍/分の患者におけるイバブラジンの潜在的な有用性(冠動脈疾患発生抑制効果)について重要な洞察をもたらした8)。この結果は、次に紹介するSHIFT試験の基礎となった。画像を拡大するSHIFT試験は、NYHA II-IV、LVEF≦35%、洞調律かつ70拍/分以上の心不全患者6,505例(日本人含まず)を対象に、イバブラジンの効果を検証した第III相試験である(図2)9)。この試験の結果、主要評価項目である心血管死または心不全入院は、イバブラジン群で18%減少していた(HR:0.82、95%信頼区間[CI]:0.75~0.90、p<0.001)。ただ、これは主に心不全入院の26%減少によってもたらされたものであった。また、サブグループ解析の結果、ベースラインの安静時心拍数が中央値77拍/分より高いサブグループにおいてのみ、イバブラジンによる有意な治療効果が認められ(交互作用に対するp値=0.029)、その後の事後解析において、安静時心拍数≧75拍/分の部分集団では心不全入院だけではなく、心血管死も有意に抑制していた(HR:0.83、95%CI:0.71~0.97、p=0.017)10)。ただし、これらの知見を解釈する際には、SHIFT試験に参加した患者の大多数(約70%)が虚血性心不全をベースに持ち、植込み型除細動器の使用が少なく(不整脈イベント抑制効果は期待できない可能性あり)、β遮断薬ガイドライン推奨用量の50%以上を投与するという要件を満たした症例は56%に過ぎなかったことを念頭に置くことが重要である。以上のような経緯から、その後日本人慢性HFrEF患者を対象に実施されたJ-SHIFT試験においては、「安静時心拍数が75拍/分以上」というのが組み入れ基準の1つとして採用された11) 。その結果、SHIFT試験との結果の類似性が確認されたため、添付文書上、心拍数≧75拍/分の患者が適応となっている。なお、イバブラジンはCYP3A4による広範な肝初回代謝を受け、詳細は省くが、この点がいくつかの薬剤(ベラパミル、ジルチアゼム、その他のCYP3A4阻害薬)において薬物相互作用と関連すること、また光視症(視細胞のHCN1チャネルを阻害するためであり、可逆的)には注意が必要である。個人的には、β遮断薬の増量や導入が困難なHFrEF患者には早期からイバブラジンを投与することで、リバースリモデリングが得られ、その結果β遮断薬のさらなる増量や導入が可能となることをよく経験するため、ぜひβ遮断薬の用量をより最適化する橋渡し的な道具としても実臨床で活用いただきたい。2.ベルイシグアト(vericiguat)ベルイシグアトは、心不全を引き起こす原因の1つである内皮機能障害を調節する新しい心不全治療薬である。血管内皮は通常、一酸化窒素(NO)を生成し、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を介した環状グアノシン一リン酸(cGMP)産生を促進する。同様に、心内膜内皮もNOに感受性があり、細胞内のcGMPを上昇させることにより収縮性や拡張能を調節している。心不全ではこの過程がうまく制御できず、NO-sGC-cGMPの不足を招き、拡張期弛緩障害と微小血管機能障害を引き起こすとされている。ベルイシグアトは、メルク社とバイエル社が共同開発したsGC刺激薬で、sGCをNO非依存的に直接刺激するとともに、内因性NOに対する感受性を増強させ、NOの効果を増強してcGMP活性を増加させるというわけである(図3)12,13)。画像を拡大するこのようなコンセプトのもと、臨床的に安定した慢性心不全患者に対するベルイシグアトの有効性を検証すべく、第II相SOCRATES-REDUCED試験が実施された(表1)14)。本試験の主要評価項目であるNT-proBNP値のベースラインから12週までの変化において、ベルイシグアトの有意な効果は認められなかったが、探索的二次解析により、高用量のベルイシグアトがNT-proBNP値のより大きな低下と関連するという用量反応関係が示唆された。画像を拡大するこのデータをもとに、その後第III相VICTORIA試験が最近入院または利尿薬静脈内投与を受けたナトリウム利尿ペプチド上昇を認める慢性心不全(EF<45%)患者5,050例を対象に実施された(無作為化30日以内のBNP≧300pg/mLもしくはNT-proBNP≧1,000pg/mL[心房細動の場合BNP≧500pg/mLもしくはNT-proBNP≧1,600pg/mL])(表1)15)。本試験のデザイン上の重要なポイントは、これまでの心不全臨床試験よりもNT-proBNP値が高く(中央値2,816pg/mL)、より重症の心不全患者を組み入れたことであり、これにより高いイベント発生率がもたらされた。また、患者はこれまでの大規模な心不全臨床試験よりも高齢であることも特徴的であった。なお、目標用量については、上記で述べたSOCRATES-REDUCED試験で得られた知見に基づき、1日1回10mgで設定された。結果については、主要評価項目である心血管死または心不全による初回入院の複合エンドポイント発生率が、プラセボ投与群と比較してベルイシグアト投与群の方が有意に低かった(ハザード比:0.90、95%CI:0.82~0.98、p=0.02)。ただし、この結果はベルイシグアト投与群の心不全入院率の低さに起因しており、全死亡には群間差は認められなかった。なお、ベルイシグアトによる副作用については両群間で有意差を認めるものはなかったが(重篤な有害事象:ベルイシグアト群32.8% vs.プラセボ群34.8%)、プラセボ投与群と比較してベルイシグアト投与群において症候性低血圧や失神がより多い傾向を認めた(表1)。以上より、ベルイシグアトは、最新の米国心不全ガイドラインにて最近心不全増悪を認めた高リスクHFrEF患者においてClass 2bで推奨されており1)、わが国のガイドラインにおいても今後期待される治療として紹介されている16)。今回は、“Fantastic Four”の次の手について説明した。繰り返しとなるが、まずは“Fantastic Four”を可能な限りしっかり投与いただき、そのうえで上記で述べた条件を満たす患者に対しては、イバブラジン、ベルイシグアトの追加投与を積極的にご検討いただければ幸いである。1)Heidenreich PA, et al. Circulation. 2022;145:e895-e1032.2)DiFrancesco D. Circ Res. 2010;106:434-446.3)Postea O, et al. Nat Rev Drug Discov. 2011;10:903-914.4)Simon L, et al. J Pharmacol Exp Ther. 1995;275:659-666.5)Vilaine JP, et al. J Cardiovasc Pharmacol. 2003;42:688-696.6)Seo Y, et al. Circ J. 2019;83:1991-1993.7)Koruth JS, et al. J Am Coll Cardiol. 2017;70:1777-1784.8)Fox K, et al. Lancet. 2008;372:807-816.9)Swedberg K, et al. Lancet. 2010;376:875-885.10)Böhm M, et al. Clin Res Cardiol. 2013;102:11-22.11)Tsutsui H, et al. Circ J. 2019;83:2049-2060.12)Evgenov OV, et al. Nat Rev Drug Discov. 2006;5:755-768.13)Armstrong PW, et al. JACC: Heart Failure. 2018;6:96-104.14)Gheorghiade M, et al. JAMA. 2015;314:2251-2262.15)Armstrong PW, et al. N Engl J Med. 2020;382:1883-1893.16)Tsutsui H, et al. Circ J. 2021;85:2252-2291.

728.

統合失調症・うつ病の頓服を含む退院時処方~EGUIDEプロジェクト

 さまざまなガイドラインにおいて、統合失調症やうつ病の薬物治療では、単剤療法が推奨されている。定期処方による治療はいくつかの研究で報告されているが、頓服使用を含む薬物療法に関する報告は十分ではない。北里大学の姜 善貴氏らは、頓服使用を含む薬物療法の内容を評価し、定期処方との関連を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、向精神薬の頓服使用を考慮すると、統合失調症およびうつ病に対する退院時の薬物治療において単剤療法率および他の向精神薬未使用率は減少することが報告された。著者らは、高い単剤療法率および定期処方での他の向精神薬の未使用は、向精神薬の頓服使用の減少につながる可能性があるとしている。Annals of General Psychiatry誌2022年12月26日号の報告。 「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」のデータを用いて、退院時における薬物カテゴリごとの向精神薬の頓服使用の有無を調査し、その割合を診断疾患別に評価した。統合失調症患者における退院時の抗精神病薬単剤療法率および他の向精神薬未使用率、うつ病患者における退院時の抗うつ薬単剤療法率および他の向精神薬未使用率を、向精神薬の頓服使用を含む定期処方ごとに医療の質指標(QI)として算出した。各診断疾患における定期処方のQI値、定期処方と頓服使用を含む処方のQI比を算出するため、スピアマン順位相関係数を用いた。 主な結果は以下のとおり。・退院時の向精神薬の頓服使用率は、統合失調症で28.7%、うつ病で30.4%であり、診断疾患による有意な差は認められなかった。・薬物カテゴリごとの頓服使用率は、統合失調症では抗精神病薬と抗パーキンソン薬が有意に高く、うつ病では抗不安薬と催眠鎮静薬が有意に高かった。・QIは、両疾患ともに、定期処方よりも頓服使用を含む退院時処方で低かった。・定期処方のQI値と、定期処方と頓服使用を含む処方のQI比との間に、正の相関が認められた。

730.

骨折後の血栓予防、アスピリンvs.低分子ヘパリン/NEJM

 手術を受けた四肢骨折患者、または手術有無を問わない骨盤・寛骨臼骨折患者の血栓予防において、アスピリンは致死的イベント抑制に関して低分子ヘパリンに非劣性を示すことが示された。アスピリンによる深部静脈血栓症・肺塞栓症・90日での全死亡の発現頻度は低かった。米国・メリーランド大学のRobert V. O'Toole氏らMajor Extremity Trauma Research Consortium(METRC)が、米国およびカナダの外傷センター21施設で実施した医師主導の実用的多施設共同無作為化非劣性試験「Prevention of Clot in Orthopaedic Trauma trial:PREVENT CLOT試験」の結果を報告した。臨床ガイドラインでは、骨折患者に対する血栓予防に低分子ヘパリンが推奨されている。しかし、低分子ヘパリンの有効性をアスピリンと比較した試験はこれまでなかった。NEJM誌2023年1月19日号掲載の報告。手術治療の四肢骨折患者、または骨盤・寛骨臼骨折患者約1万2千例を無作為化 研究グループは、受傷後48時間以内に来院し、手術による治療を受けた四肢骨折患者(股関節から中足部までの下肢、または肩から手首までの上肢)、または手術/非手術による治療を受けた骨盤・寛骨臼骨折患者(いずれも18歳以上)を登録し、入院中に低分子ヘパリン(エノキサパリン、30mg用量1日2回)を投与する群、またはアスピリン(81mg用量1日2回)を投与する群に1対1の割合に無作為に割り付けた。投与期間は各病院の臨床プロトコールに基づき、退院時に終了または退院後も継続可とした。 主要アウトカムは、無作為化後90日時点での全死亡、副次アウトカムは非致死的肺塞栓症、深部静脈血栓症、出血性合併症などであった。 2017年4月~2021年8月の期間に、計1万2,211例がアスピリン群(6,101例)または低分子ヘパリン群(6,110例)に無作為に割り付けられた。患者の平均(±SD)年齢は44.6±17.8歳、62.3%が男性で、0.7%に静脈血栓塞栓症、2.5%にがんの既往があった。90日全死亡に関して、アスピリンは低分子ヘパリンに対し非劣性 平均入院日数は5.3±5.7日、入院中の試験薬の平均投与回数は8.8±10.6回であり、退院時に処方された血栓予防薬の期間中央値は21日間であった。 intention-to-treat解析の結果、90日全死亡率はアスピリン群0.78%(47例)、低分子ヘパリン群0.73%(45例)であり、アスピリン群の低分子ヘパリン群に対する非劣性が示された(群間差:0.05ポイント、96.2%信頼区間[CI]:-0.27~0.38、非劣性のp<0.001[非劣性マージン0.75ポイント])。 90日間の深部静脈血栓症の発現率はアスピリン群で2.51%、低分子ヘパリン群で1.71%(群間差:0.80ポイント、95%CI:0.28~1.31)、非致死的肺塞栓症は両群とも1.49%であり、出血性合併症、その他の重篤な有害事象の発現率は両群で同程度であった。

732.

眼疾患のガイドラインと診療指針 解説とアップデート

眼科関連の主要な診療ガイドライン・診療指針等を1冊で解説!「眼科」64巻13号(2022年12月臨時増刊号)眼科に関連した診療ガイドラインは既に多数あり、眼科医療の標準化に大いに貢献してきた。しかし、それらのすべてを熟読し、理解することは容易ではない。そこで、本書では眼科関連の主要な診療ガイドラインおよび診療指針等について、それぞれの作成にかかわった各領域の専門家が、「トピックス」「診療のコツ」「症例報告」のどこから読んでもすぐ診療に役立つように解説した。本書は忙しい日々の診療現場で必要に応じて内容をすぐに確認し、目の前の患者の診断と治療に役立てることができるよう作成した。診療施設の傍らに置いていただき、明日からの眼科診療にお役立ていただきたい。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    眼疾患のガイドラインと診療指針 解説とアップデート定価9,350円(税込)判型B5判頁数192頁発行2022年12月編集後藤 浩/飯田 知弘/雑賀 司珠也/門之園 一明/石川 均/根岸 一乃/福地 健郎電子版でご購入の場合はこちら

733.

COPDガイドライン改訂―未診断者の早期発見と適切な管理を目指して

 COPDは、日本全体で約500万人を超える患者がいると見積もられており、多くの非専門医が診療している疾患である。そこで、疾患概念や病態、診断、治療について非専門医にもわかりやすく解説する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版」が2022年6月24日に刊行された。本ガイドラインは、2018年版からの4年ぶりの改訂で、大きな変更点としてMindsに準拠した形で安定期COPD治療に関する15のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定したことが挙げられる。本ガイドライン作成委員会の委員長を務めた柴田 陽光氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座 教授)に改訂点や日常診療におけるCOPD診断・治療のポイントについて、話を聞いた。未診断のCOPD患者を発見するために COPD患者は、なかなか症状を訴えないことが多いという。柴田氏は、「高齢の方は『歳だから、あるいはタバコを吸っているから仕方がない』と考えていたり、無意識のうちに身体活動レベルを落としていて、息切れを感じなくなっていたりすることもある」と話す。そのような背景から、未診断のままの患者が存在し、診断がつく時点ではかなり進行していることも多い。そこで第6版では、「風邪が治りにくい」「風邪の症状が強い」などの増悪期の症状や、気道感染時の症状で医療機関を受診したときが診断の契機となることなどを強調した。 COPDの確定診断には呼吸機能検査が必要であるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や設備の問題で実施が難しい場合も多い。その場合は「長期の喫煙歴と息切れがあり、咳や痰などの慢性的な症状が併存し、他疾患を否定できればCOPDの可能性がかなり高い。病診連携などを活用して画像診断を実施し、肺気腫を発見してほしい」と述べた。また、呼吸機能検査が難しい場合の診断について、日本呼吸器学会では「COVID-19流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」を公表しており、本ガイドラインにも掲載されているので参照されたい。管理目標と安定期の治療 第6版では、COPDの管理目標に「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が追加された。その背景として、「疾患進行抑制の最大の要素である禁煙の重要性を強調したい」、「何らかの症状を抱えていたり、生活に不自由を感じていたりする患者の多いCOPDでは、健康寿命に影響を及ぼすフレイルに陥らないようにして、健康寿命を延ばすことの重要性を強調したい」という意図があると、柴田氏は述べた。 安定期の治療について、第6版では「安定期COPD管理のアルゴリズム」が喘息病態の合併例と非合併例に分けて記載された。柴田氏は「COPD患者の約4分の1が喘息を合併し、喘息合併例では吸入ステロイド薬(ICS)が治療の基本となるため、治療の入り口を分けた」と解説する。具体的には、日頃からの息切れと慢性的な咳・痰がある場合、喘息非合併例では「長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)」、喘息合併例では「ICS+LABAあるいはICS+LAMA」から治療を開始し、症状の悪化あるいは増悪がみられる場合、喘息非合併例では「LAMA+LABA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」、喘息合併例では「ICS+LABA+LAMA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」にステップアップする。 喘息非合併例では、頻回の増悪かつ末梢好酸球数増多がみられる患者には「LAMA+LABA+ICS」の使用を考慮する。なお、喘息非合併の安定期COPD治療は、LAMAまたはLABAの単剤で始めなければならないというわけではなく、「CAT(COPDアセスメントテスト)が20点以上やmMRC(modified British Medical Research Council)グレード2以上といった症状の強い患者は、LAMA+LABAで治療を開始しても問題ない。詳細はCQ5を参照してほしい」と述べた。 安定期の治療について、第6版では15個のCQが設定された。その中で「強く推奨する」となったのは、「LAMAによる治療(CQ2)」「禁煙(CQ10)」「肺炎球菌ワクチン(CQ11)」「呼吸リハビリテーション(CQ12)」の4つである。とくに「呼吸リハビリテーション」について、柴田氏は「エビデンスレベルが高く、強く推奨するという結果になったことは、まだまだ普及が進んでいない呼吸リハビリテーションを普及させるという観点から、非常に意義のあることだと考えている」と話した。 COVID-19流行期における注意点として、「COPD患者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、感染対策が重要となるが、身体活動性を落とさないよう定期的な運動は続けてほしい。薬物療法については、ICSを使用していてもCOVID-19の重症化リスクは上昇しないため、現在の治療を継続することが重要」とした。診断・治療共に積極的な病診連携の活用を 第6版では、病診連携の項でプライマリケア医と呼吸器専門医の役割を詳細に解説している。柴田氏は、非専門医に期待する役割について「COPD治療の基本である禁煙の徹底、併存症の管理、インフルエンザや新型コロナのワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン接種を行ってほしい」と述べた。加えて、「COPD患者の肺がんの年間発生率は2%ともいわれるため、願わくは年1回など定期的な低線量CTを実施してほしい」とも述べた。一方、呼吸器専門医については、「呼吸機能検査を実施して診断の入口となることや、治療をしていても増悪を繰り返すような管理の難しい患者の治療、呼吸リハビリテーションの実施といった役割を期待する」と話し、病診連携を活用して呼吸器専門医に紹介してほしいと強調した。 また、COPDの薬物治療は吸入療法が中心となるため、適切な吸入指導が欠かせない。しかし、吸入薬の取り扱いや指導に不慣れな医師もいるだろう。そこで活用してほしいのが、病薬連携だという。柴田氏は「薬剤服用歴管理指導料吸入薬指導加算が算定できるため、吸入薬の取り扱いに慣れている薬局の薬剤師に、吸入指導を依頼することも可能だ。デバイスについては、患者によって向き・不向きがあり、処方変更が必要になることもあるため、病薬連携が重要となる」と述べた。COPD患者の発見と積極的な介入を 柴田氏は、非専門医の先生方へ「皆さんの思っている以上にCOPD患者は多い。70歳以上の高齢男性では4人に1人が何らかの気流閉塞があることが知られており、高血圧や循環器疾患の3人に1人はCOPDというデータもある。高齢で糖尿病を有し喫煙歴のある患者にもCOPDが多い。このような患者をどんどん発見して、治療介入してほしい。その際、本ガイドラインを活用してほしい」とメッセージを送った。COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版定価:4,950円(税込)判型:A4変型判頁数:312頁発行:2022年6月編集:日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会発行:メディカルレビュー社

734.

米国・HIV感染者へのART、人種・民族差は?/JAMA

 米国のHIV感染者が抗レトロウイルス療法(ART)を受ける可能性について、人種・民族間で差異があるかを調べる検討が、同国・ノースカロライナ大学のLauren C. Zalla氏らにより行われた。HIVケア開始1ヵ月以内にARTが開始される確率について有意差はなかったが、インテグレーゼ阻害薬(INSTI)を含むARTを受ける可能性は、調査対象期間(2007~19年)の早期においては、白人と比べて黒人とヒスパニック系の患者で有意に低く、ガイドラインの見直しに伴いINSTIが大半のHIV感染者の初回治療として推奨されるようになって以降、有意差が見られなくなったという。著者は、「さらなる研究で、根底にある人種・民族間の差異を明らかにすること、また処方の差異が臨床アウトカムと関連するかどうかを調べる必要がある」とまとめている。JAMA誌2023年1月3日号掲載の報告。2007~19年の初期治療での処方確率を白人、黒人、ヒスパニック系で比較 研究グループは後ろ向き観察研究にて、米国でHIVケアを導入した新規成人感染者における、INSTIを含むARTの処方の人種および民族間の差異を推定し、それらの差異の変化を治療ガイドラインの変遷と関連付けて調べた。 米国内200超のクリニックが参加する最大規模のHIVケアコンソーシアムであるNorth American AIDS Cohort Collaboration on Research and Designの登録患者データから、INSTIが米国食品医薬品局(FDA)によって最初に承認された2007年10月12日以降、2019年4月30日までにHIVケアを受けた成人4万2,841例のデータを調査した。 人種および民族の情報は、患者の医療記録から集め、「ヒスパニック系」「非ヒスパニック系黒人」「非ヒスパニック系白人」に集約して検討した。 主要アウトカムは、HIVケア開始1ヵ月以内にARTが最初に開始される確率と、INSTIを含むARTが処方される確率。ヒスパニック系・非ヒスパニック系黒人患者と非ヒスパニック系白人患者との差異を、治療開始時期と推奨初回治療レジメンに関する国のガイドラインが変更された暦年および期間ごとに推定し評価した。ARTの開始確率に差はないが、INSTI処方率に当初は有意差あり 4万1,263例が人種および民族の情報を有していた。1万9,378例(47%)が非ヒスパニック系黒人、6,798例(16%)がヒスパニック系で、1万3,539例(33%)が非ヒスパニック系白人。男性3万6,394例(85%)、年齢中央値42歳(IQR:30~51)であった。 2007~15年(CD4+細胞数ベースでの治療開始がガイドラインで推奨)では、ケア開始1ヵ月以内のART開始の確率は、白人患者45%、黒人患者45%(白人患者との差:0%、95%信頼区間[CI]:-1~1)、ヒスパニック系患者51%(5%、4~7)であった。 2016~19年(CD4+細胞数に関係なくすべての患者への治療を強くガイドラインで推奨)では、白人患者66%、黒人患者68%(白人患者との差:2%、95%CI:-1~5)、ヒスパニック系患者71%(5%、1~9)であった。 INSTIの処方率は、2009~14年(初回治療として承認されたが、ガイドラインでの推奨はなし)に、白人患者で22%であったのに対し、黒人患者で17%(白人患者との差:-5%、95%CI:-7~-4)、ヒスパニック系患者で17%(-5%、-7~-3)にとどまっていた。2014~17年(INSTIを含むARTを初回治療の選択肢としてガイドラインで推奨)では、白人患者と比較して黒人患者では有意な差があったが(-6%、-8~-4)、ヒスパニック系患者では有意な差はなかった(-1%、-4~2)。 2017~19年(INSTIを含むARTがほとんどのHIV感染者の唯一の初回治療として推奨)では、人種および民族による差異は統計学的に有意ではなくなっていた。

735.

敗血症-感染症と臓器障害への対応

敗血症のさまざまな病態に対応できる実践力をつける1冊!敗血症の原因となるさまざまな細菌やウイルスなどによる感染症の管理と、敗血症性ショックや急性腎障害などの臓器障害の管理について解説。抗菌薬のTDM、血液浄化法などの敗血症を管理するための工夫を取り上げ、「日本版敗血症診療ガイドライン」やCOVID-19についても盛り込んだ。本書の特長として(1)集中治療の現場で対応が求められる急性期の病態を中心に取り上げ、実際の診療をサポート。(2)写真・イラスト・フローチャート・表を多用し、視覚的にも理解しやすく構成。(3)ポイントを簡潔かつ具体的に提示。(4)関連する診療ガイドラインの動向を踏まえた内容。(5)最近の傾向、最新のエビデンスに関する情報もわかりやすく解説。(6)専門医からのアドバイスや注意点などを適宜コラムで紹介。(7)サイドノートや補足情報も充実。が挙げられる。敗血症をより深く理解して、敗血症による臓器障害を早期発見し重症化させない、これからの敗血症診療を見据える1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する敗血症-感染症と臓器障害への対応シリーズ名 救急・集中治療アドバンス定価13,200円(税込)判型B5判頁数512頁発行2023年1月専門編集松田 直之(名古屋大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

736.

2月5日開催、ドライアイ研究会主催講習会2023【ご案内】

 2023年2月5日(日)、グランフロント大阪にてドライアイ研究会主催講習会2023が開催される。本講習会の現地対面開催は3年ぶり、そして大阪開催は4年ぶりとなる。年に一回開催される本講習会では、ドライアイという疾患の正しい理解と治療の普及、臨床に役立つ情報の発信に力を注いでいる。 今回、参加者の多くが開業医であることに鑑みて、第1部の「繰り返し聞きたい!」では、基本のおさらい、第2部の「これが聞きたい!」では臨床における実際の対応をカバーする。そして、第3部の「もっと聞きたい!」では、今、最もホットな話題について講演が行われる予定である。“あめちゃん”ならぬ、「参加して良かった」「得した!」と思われること間違いなしの明日から使える知識をお持ち帰りいただけるよう準備しているという。 ドライアイ研究会は、臨床の現場で近年増加しているドライアイに対する研究の推進と診療の向上を目的として1990年に発足。1995年には「ドライアイの定義と診断基準」を作成し、その後2回の改定を経て、「ドライアイの定義と診断基準(2016年版)」を発表し、現在に至る。また、2019年には「ドライアイ診療ガイドライン」を日本眼科学会誌(第123巻第5号)に発表するなど、大きく活動の範囲を広げ、世界のドライアイを専門とする眼科医との国際会議を通じて、臨床に即した世界のドライアイの定義の作成にも取り組んでいる。 開催概要は以下のとおり。【日時】現地開催日:2023年2月5日(日)13:00~16:55オンデマンド配信:2023年2月17日(金)~2月23日(木)【開催形式】現地および事後オンデマンド配信※会場:グランフロント大阪北館タワーC8階内ナレッジキャピタルカンファレンスルームタワーC RoomC01+C02【主なプログラム】・本当に、ドライアイ?SPKの鑑別・ドライアイの登竜門 ブレイクアップパターン秘伝公開・併用点眼(緑内障点眼など)があるとき・眼表面・眼瞼異常があるとき(結膜弛緩や瞬目不全)・ヒトiPS細胞を用いた涙腺オルガノイドの作製・MGD診療・ガイドライン活用法【主催】ドライアイ研究会担当世話人・オーガナイザー高 静花(大阪大学大学院医学系研究科 視覚先端医学寄附講座 准教授)詳細はこちら:http://dryeye.ne.jp/for-member/seminars/

737.

意識していますか「毎月17日は減塩の日」

 ノバルティスファーマと大塚製薬は、「減塩の日」の啓発にちなみ高血圧症をテーマとしたメディアセミナーを共催した。 高血圧症は、血圧値が正常より高い状態が慢性的に継続している病態であり、わが国には約4,300万人の患者が推定されている。とくに高齢者の有病率が高く、今後も患者数は増加することが予測されている。また、高血圧状態が続くことで、脳心血管疾患や慢性腎臓病などの罹患および死亡リスクが高まることが知られており、血圧を適切なレベルにコントロールすることが重要となる。高血圧治療を阻む3要因は「肥満、食塩の過剰摂取、治療薬の服薬回数」 はじめに下澤 達雄氏(国際医療福祉大学 医学部 臨床検査医学 主任教授)が「高血圧、これからも 減塩宣言 解除なし」をテーマに講演を行った。 高血圧症は、わが国の脳心血管病死亡の危険因子寄与の1位であるが、現状、高血圧治療が大きく進歩したにも関わらず、約3,000万人がコントロール不良という。また、「診断方法が進歩したにも関わらず、医療機関で治療を受けていない方の存在」と「治療方法が進歩したにも関わらず、降圧目標未達成の患者の存在がある」と同氏は現在の課題を説明した。 高血圧の治療は、年々進歩し、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、ARBなどの降圧薬が登場するとともに、心血管系の疾患への機序のさらなる解明や新たなバイオマーカーの開発などが研究されている。 大規模な臨床試験のSPRINT試験(主要アウトカムは心筋梗塞、急性冠症候群、脳卒中、心不全、心血管死)では、積極治療群(≦120mmHg)と標準治療群(≦140mmHg)の比較で積極治療群の方がハザード比で0.73(95%CI、0.63~0.86)と差異がでたものの1)、「治療必要数や有害必要数をみると、まだきちんと治療できていない」と同氏は指摘した。 現在、わが国の高血圧治療ガイドライン(JSH)は、降圧目標値について75歳を目安にわけ、75歳未満ではきちんと血圧を下げるように設定し(例:診察室130/80mmHg未満)、75歳以上では無理せず降圧する方向で行われている(例:診察室140/90mmHg未満)。それでも「全体の1/5しか治療できていないという現実がある」2、3)と同氏は説明する。 その要因分析として挙げられるが、「肥満、食塩の過剰摂取、治療薬の服薬回数」であり、とくに食塩の過剰摂取への対応ができていないことに警鐘を鳴らす。 高血圧学会では、毎月17日を「減塩の日」と定め、食塩の適正摂取の啓発活動を行っている。同学会では、減塩料理の健康レシピなどを“YouTube”で公開しているので、参考にして欲しいと紹介するともに、「20歳時に肥満だと高血圧になるリスクがあり、若いうちから減塩することが重要だ」と同氏は述べ講演を終えた。簡単にできる運動習慣で血圧を下げる 後半では、谷本 道哉氏(順天堂大学 スポーツ健康科学部 先任准教授)が、「高血圧予防のための『時短かんたんエクササイズ』について」をテーマに運動の重要性のレクチャーと簡単にできる運動の実演を行った。 運動による降圧効果は知られており、ウォーキングや水泳などの有酸素運動、筋肉トレーニングともに降圧効果がある(ただし高負荷の筋トレは血管に負担がかかるので注意が必要)。また、心疾患死亡リスクについて、運動習慣がある人と運動習慣がない人を比べた場合、運動習慣がある人の方がリスクが減少しているという4)。 降圧のための運動では、1)まず快適に動ける体作り(例:背骨周りをフレキシブルに動かせること、ラジオ体操はお勧めの体操)2)高齢化により筋力が足元から落ちるので「しっかり歩く」などして維持3)筋肉は適応能力が高く、何歳からでも大きく発達するので筋トレ励行4)生活活動向上に腕を強く振るなど意識して歩行などを行うことで、「体力をつけ、高血圧のリスクを下げていって欲しい」と思いを述べた。同氏の運動の詳細は、下記の“YouTube”で公開されている。

738.

第130回 コロナ病床確保の補助金で医療機関の黒字が拡大/会計検査院

<先週の動き>1.コロナ病床確保の補助金で医療機関の黒字が拡大/会計検査院2.新型コロナウイルス「5類」移行について段階的移行を検討/厚労省3.搬送困難事例が急増、過去最高の7,558件に/総務省4.医療広告のネットパトロールで監視指導体制の強化を/厚労省5.患者の同意なく電話診察の音声をツイキャスで生配信/埼玉県6.処方箋を捏造して向精神薬を不正入手の開業医を逮捕/千葉県警1.コロナ病床確保の補助金で医療機関の黒字が拡大/会計検査院会計検査院は、新型コロナウイルス対策に国が実施した新型コロナウイルス感染症対策の補助金事業について、検査を行ったところ、病床確保基金によって、医療機関の黒字幅が大幅に拡大していることを明らかにした。検査対象となった独立行政法人が運営する病院などで、感染拡大前の平均収支は2019年度は約4億円の赤字が、感染拡大後の2021年度に約7億円の黒字と経営状態が改善していた。一方、検査によって、医療機関が病床確保基金を受け取っていながら、患者受け入れの要請を断っていた事例もあり、検査員は事業の見直しや検証を求めた。(参考)新型コロナウイルス感染症患者受入れのための病床確保事業等の実施状況等について(会計検査院)コロナ補助金で赤字4億→黒字7億 病院平均、患者拒否で受給も(毎日新聞)コロナ病床確保、制度不備で補助金膨張3兆円 検査院(日経新聞)2.新型コロナウイルス「5類」移行について段階的移行を検討/厚労省厚生労働省は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策アドバイザリーボードを1月11日に開き、感染症法で2類相当とされている新型コロナウイルスについて、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への移行について検討を開始した。国内で新型コロナウイルスが確認されてから3年、現在も第8波の感染拡大が続いているが、感染対策費の財政負担も大きくなっており、経済活性化の視点から、今後、類型変更について慎重に検討を重ねていく模様。なお5類への見直しに伴って、予防接種体制や病床確保の維持や患者の費用負担などについても合わせて検討を行うため、慎重な対応を求めている医師会などとの調整が必要となるとみられる。(参考)第113回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(厚労省)屋内もマスク不要案浮上 コロナ「5類」移行で政府 屋内でのマスク着用の判断基準(共同通信)専門家組織、5類引き下げで見解公表 「段階的移行」指摘(産経新聞)“コロナの位置づけ変更は必要な準備を進めながら”専門家会合(NHK)尾身会長インタビュー 新型コロナ第8波 状況は? 今後は?(同)3.搬送困難事例が急増、過去最高の7,558件に/総務省総務省消防庁は1月11日、救急車が到着しても、「医療機関への受入れ照会回数4回以上」かつ「現場滞在時間30分以上」のため、搬送先がみつからず搬送困難とされた事例について発表した。これによると、1月2日~8日の1週間に、全国の主要な消防本部からの報告が7,558件寄せられていた。3週連続で過去最高となっており、消防庁は救急車の適時適切な利用を呼びかけたいとしている。(参考)各消防本部からの救急搬送困難事案に係る状況調査(抽出)の結果(消防庁)救急搬送困難7,558件、3週連続で最多更新 コロナ疑い増加(産経新聞)救急患者「搬送が困難な事例」1週間に7,558件 過去最多を更新(NHK)急患受け入れ3回以上断られる「搬送困難事案」、1週間で7,558件…3週連続で最多(読売新聞)4.医療広告のネットパトロールで監視指導体制の強化を/厚労省厚生労働省は、医療広告の規制について検討する「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」を1月12日に開催した。この中で、2021年度のネットパトロール事業について報告を行った。ここ数年、美容医療を提供する医療機関のウェブサイトを中心として消費者トラブルが発生しており、2017年より厚生労働省はウェブサイトの医療広告について実施している。2021年度は1,123サイト(1,521施設)が医療広告規制の審査対象となり、うち847サイトで違反が認められた。このため、広告ガイドラインに違反するウェブサイトを運営する医療機関に厚生労働省が通知したところ、742サイトは改善か掲載中止が認められたが、2021年3月末時点では、71サイトは改善が十分でなかったりした。今後も、厚生労働省は医療機関のウェブサイトの監視指導体制の強化するため、引き続きネットパトロール事業を進めるとともに、医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書を作成し、医療機関の情報提供について指導を行なっていくこととした。(参考)ネットパトロール事業について(厚労省)医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(案)(同)医療広告違反サイト「改善に半年以上」が1割「行政の怠慢」との指摘も、厚労省検討会(CB news)5.患者の同意なく電話診察の音声をツイキャスで生配信/埼玉県2023年1月7日、埼玉県の「こうのす共生病院」の発熱外来の診察の音声が、常勤医の携帯電話を介して、動画のライブ配信サイト「ツイキャス」から配信されていることが明らかになった。原因について同院の発表によると、医師がプライベートで使用しているスマートフォンにインストールされたアプリを介して、外来診療の音声が配信されたことが判明した。病院側は詳細な事実関係が確認され次第、改めてホームページ上にて報告することを明らかにした。(参考)病院内の音声が生配信されていた件に関するご報告(こうのす共生病院)電話診察の音声を生配信、埼玉 患者の情報流れる(共同通信)発熱外来の電話診療、ツイキャスで無断ネット配信…常勤医の動機は「調査中」(読売新聞)6.処方箋を捏造して向精神薬を不正入手の開業医を逮捕/千葉県警千葉県警は、向精神薬を入手するために処方箋を捏造して2万錠以上を不正に入手したとして千葉県の開業医を有印私文書偽造などの疑いで逮捕した。警察によると、逮捕されたのは大網白里市の53歳の開業医。2020年までの2年間に渡り、市内の医療機関で同僚の名前などを使って、偽の処方箋を発行し、薬局から不正に向精神薬を2万錠手に入れたとして、有印私文書偽造などの疑いがもたれている。他にも、自身と他の医師の名義で、架空の処方箋を作成して、4万5千錠余りも不正に入手しているとみられている。調べに対して、医師は「処方箋の偽造はしていません」と容疑を否認している。(参考)向精神薬2万錠余不正入手か 処方箋偽造疑い 千葉の医師逮捕(NHK)処方箋を偽造、不正に薬を入手 容疑で開業医を逮捕 千葉県警(産経新聞)

739.

うつ病治療ガイドラインの実践状況を把握する客観的指標IFS

 日本うつ病学会の治療ガイドラインでは、うつ病の重症度別に推奨される治療法が定められている。治療ガイドラインは、実臨床で治療決定を促すためのツールとして用いられ、患者や医療従事者を支援するよう設計されている。精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)のメンバーである岩手医科大学の福本 健太郎氏らは、各患者がうつ病ガイドラインの推奨に従って治療を実践しているかを評価するための客観的指標として、個別フィットネススコア(IFS)を開発した。IFSは、個々の患者におけるガイドラインに基づく治療の実践状況を客観的に評価できることから、ガイドラインに準じた治療行動に影響を及ぼし、薬物療法を含めた日本におけるうつ病治療の標準化につながる可能性が期待できるとしている。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2022年11月16日号の報告。 EGUIDEプロジェクトメンバーは、修正Delphi法を用いて、IFSを決定した。本IFSは、EGUIDEプロジェクトメンバーが所属する施設において2016~20年に治療を受け、退院したうつ病患者の治療に基づき開発された。また、入院時と退院時のIFSスコアの比較も行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、うつ病患者428例(57施設)。・その内訳は、軽度うつ病患者22例、中等度/重度うつ病患者331例、精神病性うつ病患者75例であった。・重症度別の平均IFSスコアは、中等度/重度うつ病患者において入院時よりも退院時のほうが統計学的に有意に高かった。 【軽度うつ病】入院時:36.1±34.2 vs.退院時:41.6±36.9(p=0.49) 【中等度/重度うつ病】入院時:50.2±33.6 vs.退院時:55.7±32.6(p=0.0021) 【精神病性うつ病】入院時:47.4±32.9 vs.退院時:52.9±36.0(p=0.23)

740.

非専門医向け喘息ガイドライン改訂-喘息死ゼロへ

 日本全体で約1,000万人の潜在患者がいるとされる喘息。その約70%が何らかの症状を有し、喘息をコントロールできていないという。吸入ステロイド薬(ICS)の普及により、喘息による死亡(喘息死)は年々減少しているものの、2020年においても年間1,158人報告されているのが現状である。そこで、2020年に日本喘息学会が設立され、2021年には非専門医向けの喘息診療実践ガイドラインが発刊、2022年に改訂された。喘息診療実践ガイドライン発刊の経緯やポイントについて、日本喘息学会理事長の東田 有智氏(近畿大学病院 病院長)に話を聞いた。喘息診療実践ガイドラインで2028年までに喘息死を0に 東田氏は、「均質な医療を提供することで、2028年までに喘息死を半減させる。できれば0にしたい」と語った。そのために「喘息の科学的知見に基づく情報提供をしたい」「非専門医の日常診療に役に立つガイドラインを作りたい」との思いから、喘息診療実践ガイドラインを作成したという。喘息診療実践ガイドラインは、新薬の登場などに合わせて、可能な限り毎年改訂を行う予定とのことである。喘息診療実践ガイドライン2022の問診チェックリスト活用を 従来のガイドラインでは、「喘息診断の目安」が記載されているものの、「診断基準」は明記されていない。また、喘息の診断には呼吸機能検査が必要とされているが、日常診療の場では難しい。そこで、喘息診療実践ガイドライン2022では、臨床現場で実際に活用できる診断アルゴリズムを作成している。ここで、重要となるのが「問診」である。東田氏らは、4千人超の喘息患者のデータをレトロスペクティブに解析した結果を基に、喘息患者の特徴を抽出した「問診チェックリスト」を作成し、喘息診療実践ガイドライン2022上に掲載している(p4、表2-1)。チェックリストは、大項目(喘鳴、咳嗽、喀痰などの喘息を疑う症状)と小項目(症状8項目、背景7項目の計15項目)からなり、「大項目+小項目(いずれか1つ)があれば喘息を疑う」とされている。 問診の結果、喘息を疑った場合には、「まず中用量のICSと長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤(中用量ICS/LABA)を最低3日以上使ってほしい」という。「中用量ICS/LABAによる治療に反応し、治療開始前から喘鳴がある場合は喘息と診断して良い」とのことである。反応しない場合は、「他疾患も疑う必要があるため、迷わず専門医に紹介してほしい」と語った。喘息診療実践ガイドライン2022には喘息治療のフローを掲載 喘息診療実践ガイドライン2022の喘息治療のフローに基づくと、日常診療では診断もかねて基本的には中用量ICS/LABAで治療を開始し、それでも症状が残ってしまう場合には、症状に応じて次のステップを考える。咳・痰が続く、呼吸困難が残る、喫煙歴がある場合などは、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を、鼻汁・鼻閉(鼻づまり)がある場合は、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)を追加する。LAMAを追加する場合は、「1デバイスで3成分を吸入できるICS/LABA/LAMAの3成分配合剤が登場しているため、こちらを使用してほしい」とのことだ。 また、治療効果が不十分の場合には、吸入薬をきちんと吸えていない可能性があるという。そのため、「まず、うまく吸えているかを確認してほしい。吸入指導の動画も用意しているので活用してほしい」と述べた。各種吸入デバイスの吸入指導用動画や「ホー吸入」という薬の通り道を広く保つ吸入法が、日本喘息学会HPに掲載されているので活用されたい。喘息診療実践ガイドライン2022に医療連携の可能な病院リスト 喘息治療においては、専門医との病診連携を積極的に活用してほしいという。たとえば、「中用量ICS/LABAにLAMAまたはLTRAを追加しても効果が得られない場合」「重症喘息に該当する喘息患者に遭遇した場合」「治療のステップダウンを検討しているが、呼吸機能検査ができない場合」などは検査を行う必要があるため、「専門医で治療導入や呼吸機能検査を実施し、その後はかかりつけ医の先生に診療いただくという病診連携も可能だ」と専門医との病診連携の重要性を強調した。専門医への紹介を考慮すべきタイミングについての詳細や専門医紹介時のひな型、医療連携の可能な病院のリストが喘息診療実践ガイドライン2022上に記載されているので活用されたい(p68~p71)。COVID-19流行期こそ喘息コントロールが重要 注目を集める喘息と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関係については、「喘息をきちんとコントロールできていれば、COVID-19感染リスクが高いわけではないので、必要以上に怖がることはない。ただし、喘息のコントロールが悪いと、気道に炎症が起こり感染しやすくなってしまうので、喘息をコントロールすることが最も重要である」と喘息コントロールの重要性を強調した。『喘息診療実践ガイドライン2022』定価:2,420円(税込)判型:B5判頁数:本文72頁発行:2022年7月作成:一般社団法人日本喘息学会発行:協和企画

検索結果 合計:2884件 表示位置:721 - 740