サイト内検索|page:35

検索結果 合計:2884件 表示位置:681 - 700

681.

ドキュメンタリー「WHOLE」(後編)【自分の足を切り落とすことが健全!?(健康の定義)】

今回のキーワード身体完全性違和(身体完全同一性障害)性別違和(性同一性障害)満たされた状態治療ガイドライン社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)診断ガイドラインの表記変更前編では、身体完全性違和(身体完全同一性障害)の特徴や原因などを掘り下げました。それを踏まえて、どうしたら良いでしょうか? 健康な足を切り落としてあげるのが良いのでしょうか? さらには、健康であるとはどういうことなのでしょうか? 今回は、引き続き、ドキュメンタリー「WHOLE」を取り上げ、健康の定義を再確認し、健康の概念を捉え直します。そして、身体完全性違和の治療ガイドラインを、世界に先駆けて(!)、この記事で発表します。治療としての四肢切断を私たちは受け入れられる?身体完全性違和は、その原因を踏まえると、その特徴は先天的、限定的、そして固定的であることがわかります。これは、ちょうど性別違和(性同一性障害)と似ています。性別違和は、もはや多くの国で受け入れられており、日本でも性別適合手術は可能です。なぜなら、それがその人にとっての幸せであると理解できるからです。WHOでも健康の定義は「身体的、精神的、そして社会的に満たされた状態(a state of well-being)」とされています。それでは、身体完全性違和はどうでしょうか? 私たちは四肢切断することをすんなり受け入れられるでしょうか? 性別違和と同じという理屈で考えれば、確かに本人が望むのであれば止めることはできないことになります。しかし、「健康な足をわざわざなくして身体障害者になるなんて考えられない」と感情的になってしまい、なかなか受け止められないのではないでしょうか? 身体完全性違和を知ってしまったことによって、私たちの健康の概念が揺さぶられます。健康とは?身体完全性違和と診断された人が、心理学者から「もしその足の違和感が消える薬があったら、飲みますか?」と質問されたところ、「若い時だったらそうしたかもしれないけど、今は飲まないと思う」「身体完全性違和は、私が誰でどんな人間かという核心になっているから」と答えています。そして、彼らは、四肢切断をやり遂げてはじめて「まっとうになった(I’ve become whole)」と言っています。まさにこのドキュメンタリーのタイトルの「WHOLE」(健全)です。実際に、彼らの中で四肢切断をして後悔をした人は1人もいないと報告されています2)。つまり、身体完全性違和は、性別違和と同じアイデンティティの問題が根っこにあるわけです。性別違和の人が性別の違和感が消える薬を飲まないと言っているのと同じです。もっと言えば、身体完全性違和の人は、違和感のある足をなくしたいだけです。それが結果的に身体障害になってしまっているのです。最初から身体障害になりたいとは思っていないです。もっと言えば、彼らにとって足がないことが「健康」であるため、足があることは「不健康」であり、違和感がある足を持っている状態は逆に「身体障害」であると言えます。極端な話、もしも身体完全性違和の人が世の中の多数派ならば、足を切断しない人が「身体障害」になってしまうという理屈も成り立ちます。 そして、「健康である」とは、多数決で決まっており、相対的な概念であることに気付かされ、「障害」の概念の根底が覆されます。どうすればいいの?健康の概念を捉え直すと、身体完全性違和の治療はやはり四肢切断をすることであるように思えてきます。しかし、現時点で身体完全性違和の治療は、世界的にも確立されていません。ただ、この診断名がICD-11に新設された流れから、今後は治療ガイドラインが求められます。そこで、この記事では、治療ガイドラインを世界に先駆けて(!)、作ってみましょう。まず、身体完全性違和の評価についてです。原因の視点に立てば神経疾患、鑑別の視点に立てば精神疾患、治療の視点に立てば外科疾患です。よって、神経内科医、精神科医、外科医の連携(リエゾン)が必要になります。検査としては、脳画像検査や皮膚コンダクタンス反応(SCR)が必要です。次に、実際の治療の計画についてです。これは、性別違和に準じます。ちなみに、性別違和の治療の流れは、実生活体験、薬物(ホルモン療法)、外科手術の3つのステップを踏みます。(1)実生活体験1つ目のステップは、実生活体験です。ドキュメンタリーに登場した人のように、片足を膝で折り曲げて固定し、松葉杖を使う生活を少なくとも半年送るのです。(2)薬物による疑似体験2つ目のステップは、薬物による疑似体験です。これは、脊髄硬膜外麻酔によって、下肢の運動麻痺と感覚麻痺を人工的につくり、擬似的な四肢切断の状態にします。この状態で違和感がなくなるかを厳正に判定するのです。(3)外科手術3つ目のステップは、外科手術です。このように、最初から手術をするのではなく、ステップを踏む必要があります。なぜなら、当然ながら、手術をするまでは元の状態に戻れますが、手術をした後は元に戻れないからです。「WHOLE」な社会とは?治療ガイドラインの確立によって、ICD-11の診断ガイドラインは表記の変更が必要になってきます。たとえば、「その身体障害によって、重大な社会機能の障害を認める、または健康の危機にさらす」という項目は、適切な外科手術がなされ、社会的なサポートを得ることが可能になれば不要です。また、「特定の身体障害を求める」という抽象的な表記は、健常者の視点です。身体完全性違和の人たちの視点にも立つならば、「機能的に問題のない体の一部分の切除を求める」と中立的で具体的な表記にすることが適切です。そして、その代わりに、性別違和の「生物学的性と性自認(ジェンダー)の不一致」という項目と同じように、「生物学的な身体と身体認識の不一致」という項目を新しく設けることが適切です。身体完全性違和という状態は、個人として「WHOLE」(健全)になるだけでなく、社会としても「WHOLE」(健全)になることを私たちに問いかけています。これは、社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)の考え方につながります。それは、この多様化した現代で、何が健全か、つまり何が望ましいか、そして何が幸せかはますます人によって違うという現実をよく理解して受け入れていくことではないでしょうか?1)精神医学(3)「ICD-11のチェックポイント」P285「身体苦痛または体験症群」:山田和男、医学書院、20192)私はすでに死んでいる ゆがんだを生み出す脳P100、P104、P142:アニル・アナンサスワーミー、紀伊國屋書店、2018「足を切り落としたい…」自ら障害者になることを望む人々の実態:美馬達哉、現代ビジネス、2018

682.

免疫チェックポイント阻害薬などを横断的に概説、『がん免疫療法ガイドライン』改訂/日本臨床腫瘍学会

 がんに対する免疫を介在した治療方法(がん免疫療法)は、新しい薬剤の開発および臨床試験の蓄積により近年急速に発展している。CTLA-4やPD-1/PD-L1といった免疫チェックポイントを標的とした免疫チェックポイント阻害薬(ICI)ががん種横断的に承認されているほか、エフェクターT細胞療法や、複数のICIを組み合わせて使う併用療法、ICIと従来の抗がん剤、分子標的薬、血管新生阻害薬、放射線治療等とを組み合わせた治療法も続々と登場している。 これら免疫チェックポイント阻害薬などのがん免疫療法の基本と指針をまとめた『がん免疫療法ガイドライン』(日本臨床腫瘍学会編)が2023年3月に刊行された。2016年12月の初版、2019年3月の第2版に続く第3版となる。2023年3月16~18日に行われた第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)上では、二宮 貴一朗氏(岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センター)が「第3版改訂のポイント/がん種横断的評価とステートメント」と題した講演で改訂ポイントを解説した。 「ガイドライン委員会で2021年4月から改訂の議論をはじめ、30名を超える専門医のご協力により2年かけて刊行に至った。本版の特徴としては、新たな治療レジメンを踏まえ、有害事象及びその対処法の改訂を行ったこと、がん種別システマティックレビューを行い、がん種・臓器横断的な臨床疑問を設定し、ステートメントを提示したことだ。第2版にあったがん種別のエビデンスに対する推奨の提示は止め、『エビデンスの強さ』のみを提示することにした。これはがん種ごとに推奨される治療法やレジメンが多岐にわたり、かつ頻繁に改訂されており、臓器別ガイドラインと異なる推奨になることは臨床上望ましくないと判断したためだ」(二宮氏)。 個別項目における主な改訂点は以下のとおり。I がん免疫療法の分類と作用機序・免疫チェックポイント阻害薬→新規薬剤である抗LAG-3抗体薬の解説をガイドラインに追加。・エフェクターT細胞療法→造血器腫瘍分野で新たに承認されたCAR-T細胞療法に関する解説を改訂。・複合免疫療法→項目を追加。免疫療法と従来の抗がん薬との組み合わせによる効果などを記載。II 免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理 医師以外の医療者も読者対象に想定し、新たなエビデンスに基づいた解説に更新。最近注目されており、より重症化する傾向のあるサイトカイン放出症候群の項目をガイドラインに追加。III がん免疫療法のがん種別エビデンス 「がんワクチン」など否定的な見解が多い療法についてもシステマティックレビューによるエビデンスの確実性に基づいて解説。各療法の歴史などもあわせて解説。IV がん免疫療法における背景疑問(Background Question:BQ) BQごとに、がん種によって異なる治療ラインやレジメンをガイドラインで解説。具体的なBQは下記のとおり。BQ1:進行期悪性腫瘍に対して、免疫チェックポイント阻害薬単剤療法は有効か?BQ2:進行期悪性腫瘍に対して、免疫チェックポイント阻害薬併用療法は有効か?BQ3:進行期悪性腫瘍に対して、免疫チェックポイント阻害薬と他剤を併用した複合免疫療法は有効か?BQ4:悪性腫瘍の根治術後の治療において、免疫チェックポイント阻害薬は有効か?BQ5:免疫チェックポイント阻害薬の効果予測バイオマーカーとして、PD-L1検査は有用か? 二宮氏は「他のガイドラインとは異なり、がん種横断的なアプローチを深く知ることのできる1冊となっている。治療や薬剤の増加に伴って多様化してきた有害事象にも紙幅を多く割いた。この分野は現在進行中の臨床試験も数多く、読者と共に情報をアップデートしていきたい」とした。『がん免疫療法ガイドライン』第3版(金原出版)編集:日本臨床腫瘍学会定価:3,300円発行日:2023年3月20日B5判・264頁・図数:29枚・カラー図数:5枚

683.

息切れの原因、TKIとの関連は?【見落とさない!がんの心毒性】第19回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別60代・女性主訴労作時息切れ現病歴5年前に発熱を契機に慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia: CML)と診断された。BCR::ABLチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor: TKI)としてイマチニブの投与が行われたが、血球減少のため不耐と判断され、3年前にニロチニブに変更された。その後BCR::ABLコピー数が上昇傾向にあったため、2年前よりダサチニブに変更された。1ヵ月前より労作時息切れを自覚し、精査が行われた。現症血圧 124/72mmHg、脈拍数 96bpm 整、SpO2 98%(酸素投与なし)、結膜貧血なし、頚静脈怒張あり、心音I音正常範囲、II音亢進、III/IV音なし、収縮期心雑音(胸骨左縁第3肋間で最強)、呼吸音清、下腿浮腫軽度採血白血球数 3520/μL、ヘモグロビン量 10.2g/dL、血小板数 13.8万/μL、尿素窒素 12mg/dL、クレアチニン 0.60mg/dL、総ビリルビン 0.4mg/dL、AST 31U/L、ALT 30U/L、LDH 222U/L、ALP 250IU/L、CRP 0.08mg/dL、BNP 30.5pg/mL、Major BCR::ABL IS 0.0053%胸部X線心胸郭比 52%、両側肺門部陰影拡大、肺うっ血/浸潤影なし、胸水なし、心電図:洞調律、II誘導P波先鋭増高、II・III・aVF誘導で軽度ST低下、QTc=409ms(図1)画像を拡大する息切れ出現後の心電図(上段)では、1年前(下段)と比較しII誘導でP波の先鋭増高を認め、右房負荷が疑われる。心エコー心室壁運動異常なし、左室拡張末期径/収縮末期径 45/27mm、心室中隔/後壁厚 8/8mm、左室駆出率 71%、心嚢液貯留なし、軽度僧帽弁閉鎖不全症、中等度三尖弁閉鎖不全症、三尖弁逆流最大血流速 (圧較差)3.2m/s(40mmHg)、下大静脈径 22mm、呼吸性変動低下【問題】本患者の診療に関する下記の選択肢について、間違っているものはどれでしょうか? 2つ選んでください。a.第2世代BCR::ABL TKIの投薬前後には定期的な心電図検査が必要である。b.ダサチニブの投薬前後には心エコー評価が必要である。c.診断のため右心カテーテル検査を行う。d.心エコー所見を基に肺血管拡張薬を開始する。e.CMLの病勢コントロールが良好であることからダサチニブを同量で継続する。CMLの治療成績はBCR::ABL TKIの登場により大きく向上し、多くの症例で分子遺伝学的奏効が得られるようになりました。第2世代以降のBCR::ABL TKIでは第1世代のイマチニブと比較し高い治療効果が期待できますが、長期毒性はイマチニブより重篤なものが多く、副作用管理が重要になります。第2世代のダサチニブはとくに胸水貯留や肺高血圧症の発症頻度が高く、多数のキナーゼをoff-targetとして阻害することが有害事象の頻度が高い原因と推測されています1,5,6)。ダサチニブは、Tリンパ球、単球 / マクロファージによる血管周囲の炎症や、活性酸素によるアポトーシス、内皮障害などにより肺血管抵抗上昇を来すと考えられています4)。心エコーにより肺高血圧症が疑われる頻度はイマチニブでは0.5~2.7%であるのに対しダサチニブでは5~13.2%と大きな差があり7,8)、イマチニブには肺血管抵抗低下効果も観察されています9)。両薬剤による肺高血圧症の発症頻度の違いの理由として、ダサチニブではイマチニブと異なり、非受容体チロシンキナーゼファミリーの一つであるSrcの阻害作用が強いことが可能性として挙げられますが、ダサチニブはSrc阻害とは無関係に内皮細胞機能障害を引き起こすことも報告されており4)、同じBCR::ABL TKIであるダサチニブとイマチニブが肺血管に対して異なる反応を示すことに対する明確な機序は解明されていません。(図2)肺血管におけるダサチニブとイマチニブの対照的効果 10)画像を拡大するダサチニブによる肺高血圧症のリスク因子として、年齢、心肺合併症、TKI投薬期間、3次治療以降のダサチニブの使用などが挙げられます8,11)。とくにこれらに該当する患者に対しては遅滞なく心エコーを行い、肺高血圧症の早期発見に努める必要があります。(謝辞)本文の作成に際し、九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科 森 康雄先生に監修いただきました。1)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;43:4229-4361.2)Humbert M, et al. Eur Heart J. 2022;43:3618-3731.3)日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)4)Guignabert C, et al. J Clin Invest 2016;126:3207-3218.5)Jacobs JA, et al. Pulm Circ. 2022;12:e12075.6)Weatherald J, et al. Eur Respir J. 2020;56:2000279.7)Cortes JE, et al. J Clin Oncol. 2016;34:2333-2340.8)Minami M, et al. Br J Haematol. 2017;177:578-587.9)Hoeper MM, et al. Circulation. 2013;127:1128-1138.10)Ryan JJ. JACC Basic Transl Sci. 2016;1:684-686. 11)Jin W, et al. Front Cardiovasc Med. 2022;9:960531.講師紹介

684.

二次性僧帽弁逆流へのTEER、5年間の評価/NEJM

 ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法後も心不全と中等度~重度の二次性僧帽弁逆流症が認められる患者において、僧帽弁の経カテーテル的edge-to-edge修復術(TEER)は薬物療法単独と比較し、フォローアップ5年間での心不全による入院リスクを半減し、全死因死亡リスクも約30%低減した。米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のGregg W. Stone氏らが、614例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2023年3月5日号掲載の報告。米国とカナダ78ヵ所でTEER vs.薬物療法単独の無作為化比較試験 研究グループは、2012年12月27日~2017年6月23日に米国とカナダにある78ヵ所の医療機関を通じて、ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法を実施後、心不全と中等度~重度の二次性僧帽弁逆流症が認められる患者614例を登録した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはTEERを(デバイス群302例)、もう一方には薬物療法のみ(対照群312例)を行い追跡調査した。 主要有効性エンドポイントは、フォローアップ2年間の、心不全によるすべての入院だった。また、すべての心不全入院の年間発生率、全死因死亡年間発生率、死亡または心不全入院のリスク、および安全性、その他のアウトカムについて5年間評価した。心不全入院年間発生率のハザード比0.53 5年間の評価に基づく心不全入院年間発生率は、デバイス群33.1%、対照群57.2%だった(ハザード比[HR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.41~0.68)。5年間の全死因死亡率は、デバイス群57.3%、対照群67.2%だった(0.72、0.58~0.89)。 死亡または心不全入院の発生率は、デバイス群73.6%、対照群91.5%だった(HR:0.53、95%CI:0.44~0.64)。 デバイス特有の安全性イベント発生率は、5年間で1.4%(4/293例)報告され、全イベントが術後30日以内の発生だった。

685.

教育実習で発生したデータ改ざん事件【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第58回

第58回 教育実習で発生したデータ改ざん事件「教育実習中止、いますぐに君は教室を出ていきなさい!」自分が高校生時代に、化学の授業中に大声で響きわたった言葉です。今でも鮮烈に記憶に残る瞬間です。教職志望の学生が、在学中に教育の現場において学習指導法の実地練習のために教育活動を実際に経験することが教育実習です。教育職員免許状の授与を受けるためには、この教育実習が必須です。この教育実習生を「教生」と呼びます。国立大学の教員養成系では、国立大学附属学校で実習を行うことが通常です。自分は金沢大学教育学部附属高等学校の出身なので、教生による授業を多く受けてきました。教生による授業を教室の最後列で聴いていた、本来の高校教員が授業停止を宣言し、その教生は教室から退場させられました。実際には、叩き出されたという表現が適切でした。教生は茫然とした表情でした。彼は何をしでかしたのでしょうか。この化学の講義では、教生が化学実験を教室内で実際に行い、そのデータをもとに考えるという内容でした。中和滴定であったように記憶します。中和滴定とは、濃度が不明な酸(もしくは塩基)でも、中和反応を利用することで、その濃度を求めることができる方法です。濃度がわかっている水酸化ナトリウムとの中和点を測定することで、濃度がわからない硫酸の正しい濃度を求めるというのが中和滴定の具体例です。教生は生徒の前で行った実験で得られた生データを黒板に記していました。この生データをもとに計算をしてみるのですが、想定した通りの結果にはなりませんでした。「このデータを変えてみましょう」こう言って黒板に書かれた生データの数字を、想定される答えが算出されるであろう数値に書き換えたのです。その直後に彼の退場が宣告されました。退場した後に、化学教師は私たち生徒に、以下のように語りました。「実験で得られた生データを自分勝手に改ざんすることは絶対に許されない。データを書き換える者に化学を教える資格はない。附属高校の生徒は教生の犠牲になってはいけない、俺は君たちを守る」、正確な文言までは記憶しておりませんが、このような趣旨の内容であったことは間違いありません。この教生が、教育実習の単位を認定されたのか、不合格となったのか知る由もありません。しかし、この授業で実験に臨む研究者としてのあるべき姿を、私たち生徒が学んだことは事実です。もちろん、この教生に悪気はなかったと思います。張り切って実験の準備をして教育実習に臨み、生徒に中和滴定を教えようと一生懸命であったでしょう。しかし、実験で得られた生データを消して書き換えることは絶対に許されないのです。自分が学んだ高校の、化学の中原 吉晴先生の思い出です。厳しい先生でしたが多くを教えていただきました。中原先生は一流の研究者を創り出すことを自分の仕事と考え、生徒に接していたように思います。すでに鬼籍に入られた中原先生のご冥福をお祈りいたします。文部科学省のガイドラインで不正行為等の定義では、捏造(Fabrication)・改ざん(Falsification)・盗用(Plagiarism)の3つを特定不正行為として位置付けています。捏造は、存在しないデータや研究結果などの作成です。改ざんは、データや研究結果などの加工です。盗用は、他の研究者のアイデアや論文などの流用です。こういった不正行為を行うことは、自身のキャリアや学位を失うだけでは済みません。周囲の関係者に多大な負担をかけることはもちろん、大学や学術に対する社会の信頼を損ないます。自分が所属する滋賀医科大学においても、研究不正防止のために、教育で指導が繰り返し行われています。定期的に研究不正防止の講義受講が義務付けられています。自分にとっては、高校生の時に体験した教生退場から学んだことが大きなインパクトを持っています。研究不正防止という矮小化した問題を超えて、この事案から実験というものの意義を学ばせていただきました。近ごろ、高校生の頃の体験がフラッシュバックしてくることがよくあります。これが正常なのか加齢現象なのか不明です。過去の経験を思い出すというよりも、最近の経験のような新鮮さを伴って脳内に再現されるのです。不思議な現象です。

686.

高齢者へのDOAC、本当に減量・中止すべき患者とは/日本循環器学会

 高齢者の心房細動治療において、つい抗凝固薬を減量してしまいがちだが、それは本当に正しいのだろうか。今回、小田倉 弘典氏(土橋内科医院)が『心房細動抗凝固薬(アブレーションを望まない高齢のPAFなど)』と題し、第87回日本循環器学会学術集会のセッション「クリニックで選択されるべき循環器治療薬~Beyond guideline~」にて、高齢者心房細動の薬物療法における注意点を発表した。 小田倉氏はまず、以下の高齢者の症例を提示し、実際に直接経口抗凝固薬(DOAC)を処方するかどうか、またその際に減量するか否かについて問題提起した。高齢者へのDOAC減量と出血リスクの管理<症例>●年齢・性別:82歳・男性、体重:64kg、クレアチニンクリアランス(CCr):52 mL/min(血清クレアチニン[Cr]:1.0mg/dL)●主訴:ある日、脈をとったら不整で、心電図で心房細動と診断された。●服用歴:降圧薬、認知症治療薬、前立腺肥大症治療薬など6種類●患者背景:要介護2。トイレ歩行は可能だが受診時は車いす。転倒歴あり。長男夫婦と3人暮らしだが、日中は1人のことが多い。●CHADS2スコア:3点、HAS-BLEDスコア:1点 上記の高齢者の症例について、「DOAC各薬剤の添付文書にある減量基準、たとえば、アピキサバンは(1)80歳以上、(2)60kg以下、(3)Cr 1.5mg/dL以上のうち2つ以上が、エドキサバンは(1)60kg以下、(2)CCr 15~50、(3)P糖蛋白阻害薬服用のうち1つ以上が該当する場合にそれに当たるが、いずれにも該当していないので、この患者の場合、該当項目を見る限りでは処方可能であり、減量する必要もない」とコメント。 しかし、実際には高齢というだけでDOACの減量基準を満たさずとも減量する例が散見される。クリニックの患者が主体となった日本の高齢者心房細動に対する抗凝固薬療法に関する2つの試験からもその状況が見て取れる。・ANAFIEレジストリ1):3万2,275例(平均年齢81.5歳[85歳以上が26.1%]、経口抗凝固薬の服用:92.4%、ワルファリンTTR :75.5%、発作性心房細動:42%、認知症:7.8%[通院・在宅患者])ではunder-doseが16.8%、未承認低用量が3.7%。 ・GENERAL研究2):5,717例(平均年齢73.9歳、経口抗凝固薬の服用:100%、フレイル[要介護]:12.1%、認知症治療薬の併用:5.9%)ではunder-doseが27.3%。 では、実臨床で高齢者(75歳以上)に対しDOACをunder-doseする理由とは何か。35.8%でunder-doseを認め、脳卒中/全身性塞栓症が有意に多かったXAPASS study3)の結果によると「処方医は通常用量による出血リスクを最も懸念し、続いて高齢、腎機能低下を意識していた。一方、低体重や併用薬剤を選んだ者は少なかった」とコメント。 ところが、75歳以上の日本人で非弁膜症性心房細動患者を対象としたJ-ELD AF試験4)によれば、アピキサバン5mg/日(低用量)群と同薬10mg/日(通常用量)群に割り付け、脳卒中または全身性塞栓症、入院を要する出血について評価したところ、いずれの発生率も有意差が得られなかった。ただし、サブ解析で出血イベントの発生とアピキサバンの血中濃度の関係性を調べたところ、低用量群では血中濃度が高い(トラフ中央値:86ng/dL)群で出血性イベントが有意に多かった。その原因は明らかではないが、「減量基準以外のunknown factorsの存在が示唆される」と同氏は指摘した。DOAC減量基準を満たした患者の出血リスクに注力を これらの報告を踏まえ、同氏は「DOACの減量基準に該当しなければ用量を守り、減量基準を満たす患者は減量したうえで、いかに出血の関連リスクを減らせるかを考えることが重要」と述べ、「その関連リスクはDOAC減量基準やHAS-BLEDスコアに記載がないものにも注意を払う必要があり、改善可能なソフトプロブレム(上記unknown factorsにおおむね相当)と改善困難なハードプロブレムに分類できる。前者にはポリファーマシー(抗凝固薬と併用注意の薬剤を確認)、フレイル(転倒頻度や低体重を考慮)、認知症(服薬アドヒアランスを確認)、高血圧(外来での血圧130/80mmHg目標)が該当し、後者には腎機能低下や出血の既往があるだろう。後者では低用量投与を前提とし、2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン5)に従い、腎機能チェックの採血をCCr<60mL/minの患者では少なくともXヵ月(X=CCr/10)に1回実施すれば、リスク回避につながる」と対策を講じた。DOACの中止を考えるタイミング また、とくに高齢者ではDOAC中止を考える場面は多いが、具体的には以下が挙げられた。・出血したとき →出血の制御ができないような大腸憩室炎、蜂窩織炎などの既往歴がある場合 →生活面に支障を来すような重い後遺症が残る可能性のある場合・出血以外の副作用が出たとき・腎機能が低下してきたとき・アドヒアランス不良のとき・フレイル(要介護度)が進行した(寝たきりになった)とき 最後に同氏は「併存疾患の有無や身体機能レベルが個々で大きく異なるにもかかわらず、そもそも高齢者を1つのカテゴリーとして捉えることは不可能であり、多様な視点からのカテゴライズが必要となる。言うならば、“科学”と“生活”の両面からのアプローチが必要なのであり、それにはゴールはないため、考え続けることが重要である」と締めくくった。

687.

新薬追加のWeb版「GIST診療ガイドライン」、診療経験少ない非専門医にも

 日本癌治療学会は稀少腫瘍研究会の協力のもと、「GIST診療ガイドライン2022年4月改訂 第4版」を発刊し、2023年3月4日、本学会ホームページにWeb版を公開した。GIST(Gastrointestinal stromal tumor、消化管間質腫瘍)は、全消化管に発生する間葉系腫瘍で、疫学的には10万人に1~2人と消化器系の稀少がんであるため、患者の診療経験が少ない臨床医も多い。そのため、本ガイドライン(GL)に目を通し、いざという時のために備えていただきたい。そこで、今回、本GL改訂ワーキンググループ委員長の廣田 誠一氏(兵庫医科大学病院 主任教授/診療部長)に、本書の目的やおさえておく内容について話を聞いた。 なお、昨年発売された書籍では紹介できなかったHSP90阻害薬ピミテスピブ(商品名:ジェセリ錠40mg)について、Web版ではCQ(Clinical Question)の追加や関連箇所のアップデートがなされているので本編の後半に紹介する。診断・治療の迷いを払ってくれるアルゴリズム・参考図表 本GLはGIST診療にかかわる非専門医、医療者、患者・家族のために作成された。そのため、診療方針をわかりやすく示し、適切な医療の実践を通して患者の予後を改善することを目的に、MindsのGL作成マニュアル2014と2017に準拠し作成された。たとえば、今回改訂されたアルゴリズムを見ると、参考にすべきCQ/BQ(Background Question)が色付きタブで示されているので、推奨の強さやエビデンスの強さをすぐに確認することができる。また、診断や治療を8つのアルゴリズムで示しているので、診療の全体像をつかみやすいのも特徴である。<アルゴリズム> -本ガイドラインの概要より1)消化管粘膜下腫瘍の診断・治療の概略2)紡錘形細胞型GISTの鑑別病理診断3)類上皮細胞型GISTの鑑別病理診断4)切除可能な限局性消化管粘膜下腫瘍の治療方針5)限局性GISTの外科治療6)限局性GISTの術後治療7)GISTの薬物治療(一次治療)8)イマチニブ耐性GISTの治療 廣田氏は、今回大きく改訂された項目として、アルゴリズム2、3、5を挙げた。病理の『アルゴリズム2:紡錘形細胞型GISTの鑑別病理診断』『アルゴリズム3:類上皮細胞型GISTの鑑別病理診断』はもともと1つのアルゴリズムであったが、KIT陰性GISTについて現場での勘違いが多いことを踏まえて2つに分け、後者には診断時に重要となるDOG1抗体の判定を追加した。同氏は「GISTには腫瘍の原因となる遺伝子異常が解明されているものが多く、どんな遺伝子型なのか(p.15参考図表1)を見極めて診断・治療できるような工夫が本書にはなされている」と説明した。さらに、「“本当の多発なのか播腫性転移なのか”も重要になるため、多発GISTの鑑別を示す参考図表2(p.15)もぜひチェックいただきたい」とコメントした。GLは診療領域ごとに区分も、実臨床では連携強化を求む GISTを診断するためには、画像診断によるスクリーニングと病理診断による確定が非常に重要で、GIST治療では内科医・外科医を中心に病理医や放射線科医も連携を取って集約的な治療が必要になるが、多くの病院ではこれらの連携がネックにもなっている。「内科医が粘膜下腫瘍を疑い、放射線科医・病理医がそれをしっかり診断する。その後、外科的切除が必要かどうか、内科医と外科医の連携が患者の将来を左右するため、切除前にまずはしっかり立ち止まることが重要」と強調した。大型GISTなどの場合でとくに確認すべきは『アルゴリズム5:限局性GISTの外科治療』だと同氏は話す。これは黒川 幸典氏(大阪大学大学院医学系研究科外科系臨床医学専攻 准教授)の発表論文1)によるエビデンスなどが、外科CQ5に対する推奨文である「イマチニブによる術前補助療法を行うことを弱く推奨する(推奨の弱さ:弱い、エビデンスの強さ:弱)」に対し大きな影響を与えた、とも述べた。GIST治療薬ピミテスピブ、Web版に追補 2023年2月に改訂、3月に公開されたWeb版は書籍版から改良が加えられ、英語版も公開の準備がされている。Web版では、「内科CQ13:レゴラフェニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、ピミテスピブは有用か―レゴラフェニブ不耐・不応の転移・再発GISTに対して、ピミテスピブの使用を強く推奨する(推奨の強さ:強い、エビデンスの強さ:中」が追加されたほか、『アルゴリズム8:イマチニブ耐性GISTの治療』や内科治療領域の総論内の転移・再発GISTの項目にピミテスピブの四次治療としての位置付けを追加。「内科CQ8:レゴラフェニブ耐性・不応の転移・再発GISTに対して、イマチニブまたはスニチニブの再投与は有用か」の解説に、イマチニブやスニチニブの再投与は推奨されるも再投与の前にピミテスピブの投与が推奨される旨、などが変更されている。 最後に同氏は「GISTはエビデンスの少ない疾患であることから、システマティックレビューのみならず、専門家間でコンセンサスが得られている事象が加味されていること、本書が成人GIST症例に重きを置いているため、病態が異なる若年・小児例では内容を十分に確認する必要があることに注意して欲しい」とコメントした。

688.

DELIVER試験を踏まえた慢性心不全治療の今後の展望/AZ

 アストラゼネカは「フォシーガ錠5mg、10mg(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、以下フォシーガ)」の添付文書が改訂されたことを機に、「慢性心不全治療に残された課題と選択的SGLT2阻害剤フォシーガが果たす役割」と題して、2023年3月2日にメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、はじめに阪和病院・阪和記念病院 統括院長・総長 北風 政史氏より、「慢性心不全治療の現状とDELIVER試験を踏まえた今後の展望」について語られた。DELIVER試験でフォシーガがLVEFにかかわらず予後を改善 日本では、主な死因別死亡において心疾患による死亡率が年々増加しており1)、2021年では14.9%と、がん(26.5%)に次いで多かった。心疾患の中でも心不全は5年生存率が50%と予後が不良な疾患であることが知られている。 心不全は左室駆出率(LVEF)の値によって、3つの病態(HFrEF:LVEF40%未満、HFmrEF:LVEF40%以上50%未満、HFpEF:LVEF50%以上)に分類されるが、これまで治療法が確立されていたのはHFrEFのみであった。しかし、このたびDELIVER試験により、フォシーガがLVEFにかかわらず予後を改善するという結果が示され、添付文書が改訂された。DELIVER試験のポイント・幅広い層を対象にしている2,3)組み入れ時にLVEF40%を超える患者(組み入れ前にLVEF40%以下であった患者も含む)を対象とした。・投与開始後早い時点で有効性が示された2,4)主要評価項目である主要複合エンドポイント(心血管死、心不全による入院、心不全による緊急受診)のうち、いずれかの初回発現までの期間は、フォシーガ10mg群でプラセボ群と比較して有意に低下し、この有意なリスク低下は投与13日目から認められた。・LVEFの値によらず有効性が認められた2,4)全体集団とLVEF60%未満群で、主要複合エンドポイントのうちいずれかの初回発現までの期間を比較したところ、フォシーガ群におけるリスク低下効果が同等であった。この結果から、LVEF60%以上の心不全患者にもフォシーガが有効であることが示唆された。DELIVER試験でHFpEF治療におけるSGLT2阻害薬の知見が蓄積 現在、HFpEFの薬物療法におけるSGLT2阻害薬の位置付けは、海外のガイドラインではIIa5)、国内ではガイドラインへの記載はない。しかし、DELIVER試験などでHFpEF治療におけるSGLT2阻害薬の知見が蓄積された今、ガイドラインによる位置付けが変更される可能性がある。 続いて矢島 利高氏(アストラゼネカ メディカル本部 循環器・腎・代謝疾患領域統括部 部門長)より「慢性心不全領域におけるダパグリフロジンの臨床試験プログラム」について語られた。 矢島氏はDAPA-HF試験とDAPA-HF/DELIVER試験の統合解析結果について解説し、DAPA-HF/DELIVER試験の統合解析によれば、LVEFの値によってフォシーガの有効性に差はないことが示されている6)と述べた。 今回、フォシーガの効能または効果に関する注意が、LVEFによらない慢性心不全に変更されたことで、今後、慢性心不全治療がどのように変化していくか注視したい。■参考文献1)厚生労働省/平成29年(2017)人口動態統計2)アストラゼネカ社内資料:国際共同第III相試験-DELIVER試験-(承認時評価資料)、Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2022;387:1089-1098.3)Solomon SD, et al. Eur J Heart Fail. 2021;23:1217-1225.本試験はAstraZenecaの資金提供を受けた4)Vaduganathan M, et al. JAMA Cardiol. 2022;7:1259-1263.本試験はAstraZenecaの資金提供を受けた5)Heidenreich PA, et al. Circulation. 2022;145:e876-e894.6)Jhund PS, et al. Nat Med. 2022;28:1956-1964.本論文作成に当たっては、AstraZenecaの資金提供を受けた

689.

治療抵抗性うつ病に対するガイドラインの推奨事項

 うつ病は、重篤かつ広範に及ぶメンタルヘルス関連疾患である。うつ病は、2つ以上の抗うつ薬による治療でも寛解が得られず、治療抵抗性うつ病に至ることも少なくない。ブラジル・サンパウロ大学のFranciele Cordeiro Gabriel氏らは、診断および治療の改善を目的に作成された臨床診療ガイドライン(CPG)における治療抵抗性うつ病に対する推奨事項について、それらの品質および比較をシステマティックに評価した。その結果、うつ病治療のための高品質なCPGにおいて、治療抵抗性うつ病の定義および使用が統一されておらず、治療抵抗性うつ病に対する共通したアプローチも見当たらなかった。PLOS ONE誌2023年2月6日号の報告。 CPGを作成している専門データベースおよび組織を検索した。CPGの品質および推奨事項は、独立した研究者によりAGREE IIおよびAGREE-REXを用いて評価した。治療抵抗性うつ病の定義および推奨事項を含む高品質なCPGのみを対象に、divergenciesとconvergenciesおよび長所と短所を調査した。 主な結果は以下のとおり。・高品質の推奨事項を含む高品質のCPG7件のうち、特定の治療抵抗性うつ病の定義を含む2つのCPG(ドイツの国民診療ガイドライン[NVL]、米国の退役軍人省および国防総省の臨床診療ガイドライン[VA/DoD])を選択した。・これら2つのCPG間で収束する治療戦略は、見当たらなかった。・電気けいれん療法は、NVLで推奨されているもののVA/DoDでは推奨されておらず、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法は、VA/DoDで推奨されているもののNVLでは推奨されていなかった。・NVLでは、リチウム、甲状腺または他のホルモン治療、精神刺激薬、ドパミン作動薬の使用を推奨していたが、VA/DoDでは、これらの薬剤による増強治療を記載していなかった。・VA/DoDでは、ケタミンまたはesketamineの使用を推奨していたが、NVLでは、これらの薬剤について言及されていなかった。・その他の違いでは、抗うつ薬の併用、心理療法による増強治療、入院の必要性の評価などは、NVLのみで推奨されていた。

690.

DOAC時代のVTE診療の国内大規模研究、再発リスクの層別化評価と出血リスク評価の重要性が明らかに/日本循環器学会

 日本では過去に静脈血栓塞栓症 (肺塞栓症および深部静脈血栓症、以下VTE)の患者を対象とした多施設共同の大規模観察研究:COMMAND VTE Registry(期間:2010年1月~2014年8月、対象:3,024例)が報告されていた。しかしながら、同研究はワルファリン時代のデータベースであり、抗凝固薬の88%がワルファリンであった。現在はVTE患者の治療には直接経口抗凝固薬(DOAC)が広く普及しており、そこでDOAC時代における日本のVTE診療の実態を明らかにすることを目的としたCOMMAND VTE Registry-2が実施され、3月10~12日に開催された第87回日本循環器学会学術集会の「Late Breaking Cohort Studies Session」にて、同研究班の金田 和久氏(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)が、その主解析の結果を報告した。DOAC時代のVTE患者を対象とした大規模な観察研究 COMMAND VTE Registry-2は、日本の31施設において2015年1月~2020年8月の期間に、急性の症候性の肺塞栓症および深部静脈血栓症と診断された患者5,197例を登録した多施設共同の観察研究である。本研究の特徴は、1)DOAC時代に特化したデータベースであること、2)世界的にみてもDOAC時代を対象とした最大規模のリアルワールドデータであること、3)詳細な情報収集かつ長期的なフォローアップが実施されたレジストリであることだ。 日本循環器学会が発行するガイドライン最新版1)では、VTE再発リスクを3つのグループに分類し検討されていたが、近年は国際血栓止血学(ISTH)よりさらなる詳細なリスク層別化が推奨され、世界中の多くの最新のVTEガイドラインでは、VTE再発リスクに応じて5つのグループに分類している(メジャーな一過性リスク群[大手術や長期臥床、帝王切開など]、マイナーな一過性リスク群[旅などで長時間姿勢保持、小手術、ホルモン療法、妊娠など]、VTE発症の誘因のない群、がん以外の持続的なリスク因子を有する群[自己免疫性疾患など]、活動性のがんを有する群)。 今回の主解析では、ISTHで推奨されている詳細な5つのグループに分類し、患者背景、治療の詳細、および予後が評価された。 DOAC時代における日本のVTE診療の実態を明らかにすることを目的としたCOMMAND VTE Registry-2の主な結果は以下のとおり。・全対象者は5,197例で、平均年齢は67.7歳、女性は3,063例(59.0%)、平均体重は58.9kgだった。・PE(肺塞栓症)の症例は、2,787例(54.0%)で、DVTのみの症例は2,420例(46.0%)であった。・初期治療において経口抗凝固薬が使用されたのは4,790例(92.0%)で、そのうちDOACが処方されたのは4,128例(79%)だった。DOACの処方状況は、エドキサバン2,004例(49%)、リバーロキサバン1,206例(29%)、アピキサバン912例(22%)、ダビガトラン6例(0.2%)であった。・治療開始1年間の投与中止率は、グループ間で大きく異なっていた(メジャーな一過性リスク群:57.2%、マイナーな一過性リスク群:46.3%、VTE発症の誘因のない群:29.1%、がん以外の持続的なリスク因子を有する群:32.0%、活動性のがんを有する群:45.6%、p<0.001)。・メジャーな一過性リスク群(n=475[9%])はVTE再発リスクの5年間の累積発生率が最も低かった(2.6%、p<0.001)。・マイナーな一過性リスク群(n=788[15%])では、メジャーな一過性リスク群と比較するとVTE再発リスクの5年間の累積発生率が比較的高かった(6.4%、p<0.001)。・VTE発症の誘因のない群(n=1,913[37%])では長期にわたり再発リスクがかなり高かった(5年時点にて11.0%、p<0.001)。・活動性のがんを有する群(n=1,507、29%)では再発リスクが高く(5年時点にて10.1%、p<0.001)、また、大出血の5年間の累積発生率は最も高く(20.4%、p<0.001)、抗凝固療法の中止率も高かった。 発表者の金田氏は「欧米の最新のVTEガイドラインでもマイナーな一過性リスク群に対する抗凝固療法の投与期間は、短期vs.長期で相反する推奨の記載があるが、今回の結果を見る限り、日本人でも出血リスクの低い患者においては長期的な抗凝固療法を継続するベネフィットがあるのかもしれない。欧米のVTEガイドラインでは、VTE発症の誘因のない群では、半永久的な抗凝固療法の継続を推奨しているが、日本人でも同患者群での長期的な高い再発リスクを考えると、出血リスクがない限りは長期的な抗凝固療法の継続が妥当なのかもしれない。活動性がんを有する患者では、日本循環器学会のガイドラインでもより長期の抗凝固療法の継続が推奨されているが、DOAC時代となっても出血イベントなどのためにやむなく中止されている事が多く、DOAC時代となっても今後解決すべきアンメットニーズであると考えられる」と述べた。 最後に同氏は「今回、日本全国の多くの共同研究者のご尽力により実施されたDOAC時代のVTE患者の大規模な観察研究により、日本においても最新のISTHの推奨に基づいた詳細な再発リスクの層別化が抗凝固療法の管理戦略に役立つ可能性があり、一方で、より長期の抗凝固療法の継続が推奨されるようになったDOAC時代においては、その出血リスクの評価が益々重要になっていることが明らかになった」と話し、「本レジストリは非常に詳細な情報収集を行っており、今後、さまざまなテーマでのサブ解析の検討を行い共同研究者の先生方とともに情報発信を行っていきたい」と結論付けた。 なお、本学術集会ではCOMMAND VTE Registry-2からサブ解析を含めて総数20演題の結果が報告された。(下記、一部を列記)―――Actual Management of Venous Thromboembolism Complicated by Antiphospholipid AntibodySyndrome in Japan. From the COMMAND VTE Registry-2久野 貴弘氏(群馬大学医学部附属病院 循環器内科)Risk Factors of Bleeding during Anticoagulation Therapy for Cancer-associated Venous Thromboembolism in the DOAC Era: From the COMMAND VTE Registry-2平森 誠一氏(長野県厚生連篠ノ井総合病院 循環器科)Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension after Acute Pulmonary Embolism in the Era of Direct Oral Anticoagulants: From the COMMAND VTE Registry-2池田 長生氏(東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科)Clinical Characteristics and Outcome of Critical Acute Pulmonary Embolism Requiring Extracorporeal Membrane Oxygenation: From the COMMAND VTE Registry-2高林 健介氏(枚方公済病院 循環器内科)Clinical Characteristics, Anticoagulation Strategies and Outcomes Comparing Patients with and without History of Venous Thromboembolism: From the COMMAND VTE Registry-2土井 康佑氏(京都医療センター 循環器内科)Risk Factor for Major Bleeding during Direct Oral Anticoagulant Therapy in Patients with Venous Thromboembolism: From the COMMAND VTE Registry-2上野 裕貴氏(長崎大学循環病態制御内科学)Utility and Application of Simplified PESI Score for Identification of Low-risk Patients withPulmonary Embolism in the Era of DOAC西川 隆介氏(京都大学医学研究科 循環器内科学)Management Strategies and Outcomes of Cancer-Associated Venous Thromboembolism in the Era of Direct Oral Anticoagulants: From the COMMAND VTE Registry-2茶谷 龍己氏(倉敷中央病院 循環器内科)Clinical Characteristics and Outcomes in Patients with Cancer-Associated Venous Thromboembolism According to Cancer Sites: From the COMMAND VTE Registry-2坂本 二郎氏(天理よろづ相談所病院 循環器内科)Direct Oral Anticoagulants-Associated Bleeding Complications in Patients with Gastrointestinal Cancer and Venous Thromboembolism: From the COMMAND VTE Registry-2西本 裕二氏(大阪急性期・総合医療センター 心臓内科)Influence of Fragility on Clinical Outcomes in Patients with Venous Thromboembolism and Direct Oral Anticoagulant: From the COMMAND VTE Registry-2荻原 義人氏(三重大学 循環器内科学)Comparison of Clinical Characteristics and Outcomes of Venous Thromboembolism(VTE)between Young and Elder Patients: From the COMMAND VTE Registry-2森 健太氏(神戸大学医学部附属病院 総合内科)Off-Label Under- and Overdosing of Direct Oral Anticoagulants in Patients with VenousThromboembolism: From the COMMAND VTE Registry-2辻 修平氏(日本赤十字社和歌山医療センター 循環器内科)The Association between Statin Use and Recurrent Venous Thromboembolism: From theCOMMAND VTE Registry-2馬渕 博氏(湖東記念病院 循環器科)Clinical Characteristics and Outcomes of Venous Thromboembolism Comparing Patients with and without Initial Intensive High-dose Anticoagulation by Rivaroxaban and Apixaban大井 磨紀氏(大津赤十字病院 循環器内科)Initial Anticoagulation Strategy in Pulmonary Embolism Patients with Right Ventricular Dysfunction and Elevated Troponin Levels: From the COMMAND VTE Registry-2滋野 稜氏(神戸市立医療センター中央市民病院 循環器内科)Current Use of Inferior Vena Cava Filters in Japan in the Era of DOACs from the COMMAND VTE Registry-2高瀬 徹氏(近畿大学 循環器内科学)Patient Characteristics and Clinical Outcomes among Direct Oral Anticoagulants for Cancer Associated Venous Thromboembolism: From the COMMAND VTE Registry-2末田 大輔氏(熊本大学大学院生命科学研究部 循環器内科)―――

691.

患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版

19年ぶりの改訂!検査から治療まで、患者さんが知りたい胃がんのことを丁寧に解説胃がんの専門家である日本胃癌学会の医師が、患者さんやご家族のために胃がんの検査から手術、内視鏡治療、薬物療法などの治療まで、科学的な根拠を基に丁寧に解説した、安心できる1冊です。19年ぶりの改訂で、Q&Aが大幅に増え、手術後の生活や薬物療法で使う薬の種類など、患者さんの疑問により多くお応えできるようになりました。医療者の方にも、患者さんとのコミュニケーションツールとしておすすめです。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版定価1,540円(税込)判型B5判頁数112頁(カラー図数:42枚)発行2023年2月編集日本胃癌学会

692.

EGFR陽性NSCLCの術後補助療法、オシメルチニブがOS延長(ADAURA試験)/AZ

 アストラゼネカは、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の第III相試験(ADAURA試験)において、EGFR遺伝子変異陽性の病理病期IB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する完全切除後の補助療法としてのオシメルチニブの投与により、全生存期間(OS)が有意に改善したことを2023年3月10日のプレスリリースで発表した。 ADAURA試験でオシメルチニブがEGFR陽性NSCLC術後補助療法でOS改善 国際共同第III相比較試験ADAURA試験は、EGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)の病理病期IB~IIIAのNSCLC患者のうち、腫瘍が完全切除された患者を対象とした試験。術後補助療法として、オシメルチニブ80mg/日を投与する群(オシメルチニブ群)とプラセボを投与する群(プラセボ群)に1:1の割合で無作為に割り付け、最大3年間投与した(両群とも術後化学療法の使用は許容された)。なお、再発したプラセボ群の患者は非盲検下でオシメルチニブの投与を可能とした。主要評価項目は、病理病期II/IIIA患者の無病生存期間(DFS)であり、副次評価項目は、全集団(病理病期IB~IIIA)におけるDFS、OSなどであった。 本発表では、ADAURA試験の主要な副次評価項目であるOSがオシメルチニブ群においてプラセボ群と比べて有意な改善を示し、かつ臨床的意義のある改善であったことが示されたとしている。なお、主解析においてDFSが統計学的有意かつ臨床的意義のある改善を示したことが報告されており、追跡調査ではDFSの中央値が約5.5年であったことが報告されている。ADAURA試験の結果詳細は、今後学会で発表される予定とのことである。 肺癌診療ガイドライン2022年版では、「CQ30. EGFR遺伝子変異陽性の術後病理病期II~IIIA期(第8版)完全切除例に対して、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬は勧められるか?」について、EGFRチロシンキナーゼ(EGFR-TKI)による術後化学療法がOSの延長を示した試験結果は報告されていないことなどを理由として、推奨度決定不能としていた。■関連記事高リスク早期乳がんでの術後内分泌療法+アベマシクリブ、高齢患者でも有用(monarchE)/ASCO2023

693.

冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン、11年ぶりに改訂/日本循環器学会

 『2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン』が第87回日本循環器学会年次集会の開催に合わせ発刊され、委員会セッション(ガイドライン部会)において、藤吉 朗氏(和歌山県立医科大学医学部衛生学講座 教授)が各章の改訂点や課題について発表した。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは全5章構成 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会をはじめとする全11学会の協力のもと、これまでの『虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)』を引き継ぐ形で作成された。今回の改訂では、一次予防の特徴を踏まえ「冠動脈疾患とその危険因子(高血圧、脂質、糖尿病など)の診療に関わるすべての医療者をはじめ、産業分野や地域保健の担当者も使用することを想定して作成された。また、2019年以降に策定された各参加学会のガイドライン内容も冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインと整合性のある形で盛り込み、「一般的知識の記述は最小限に、具体的な推奨事項をコンパクトに提供することを目指した」と藤吉氏は解説した。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは全5章で構成され、とくに第2章の高血圧や脂質異常などに関する内容、第3章の高齢者、女性、CKD(慢性腎臓病)などを中心に改訂している。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン全5章のなかで変更点をピックアップしたものを以下に示す。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン第2章の改訂点<高血圧>・『高血圧治療ガイドライン2019』(日本高血圧学会)に準拠。・血圧の診断については、SBP/DBP(拡張期/収縮期血圧)130~139/80~89mmHg群から循環器疾患リスクが上昇してくるため、その名称を従来の「正常高値血圧」から「高値血圧」とした。また、診察室血圧と家庭血圧の間に差がある場合、家庭血圧による診断を優先する。・降圧目標について、75歳以上の高齢者は原則140/90mmHg未満とするが、高齢者でも厳格降圧(130/80mmHg未満)の適応となる併存疾患を有しており、かつ厳格降圧の忍容性ありと判断されれば過降圧に注意しながら130/80mmHg未満を目指すことが記されている。・降圧薬の脳心血管病抑制効果の大部分は、薬剤の特異性よりも降圧の度合いによって規定されている。その点を前提に、降圧薬治療の進め方に関する図を掲載した(p.22 図4)。<脂質異常>・脂質異常は『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』(日本動脈硬化学会)に準拠し、危険因子の包括的評価(p.26 図5)にて、治療方針を決定する(p.23 表8)。・治療すべき脂質の優先順位を明確化した(1:LDL-C、2:non-HDL-C、3:TG/HDL-C)。<糖尿病・肥満>・糖尿病の診断早期から適切な血糖管理・治療が重要で、その理由は、糖尿病診断前のHbA1cが上昇していない耐糖能異常の段階から冠動脈疾患(CAD)リスクが上昇するため。・2型糖尿病の血糖降下薬の特徴が表で明記されている(p.31 表13)。・糖尿病患者においてCADの一次予防を目的としてアスピリンなどの抗血小板薬をルーチンで使用することを推奨しない、とした。これは近年のエビデンスを踏まえた判断であり、以前のガイドラインとは若干異なっている。<運動・身体活動>・運動強度・量を説明するため、身体活動の単位である「METs(メッツ)」や、主観的運動強度の指標である「Borg指数」に関する図表(p.42 表16、図6)を掲載し、日常診療での具体的指標を示した。<喫煙・環境要因、CAD発症時対処に関する患者教育・市民啓発、高尿酸血症とCAD>・禁煙に関する新たなエビデンスを記載し、新型タバコについても触れている。・寒冷や暑熱などの急激な温度変化がCAD誘発リスクを高めること、大気汚染からの防御などに触れている。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン第3章の改訂点・本章はポリファーマシー、フレイル、認知症、エンドオブライフに注目して作成されている。<高齢者>・75歳までは活発な高齢者が増加傾向である。また年齢で一括りにすると個人差が大きいため、個別評価の方法について冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインに記載した。<女性>・CADリスクの危険因子は男性と同じだが、女性の喫煙者は男性喫煙者に比してその相対リスクが高くなる傾向がある。また、脂質異常症と更年期障害を同時に有する女性に対しては、禁忌・慎重投与に該当しないことを確認したうえでホルモン補充療法を考慮する、とした。<慢性腎臓病(CKD)>・高中性脂肪(高TG)血症を有するCKDに対する注意喚起として、フィブラート系薬剤は、高度腎機能障害を伴う場合には、ペマフィブラート(肝臓代謝)は慎重投与、それ以外のフィブラート系は禁忌であることが記載された。 このほか、冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインで推奨した危険因子の包括的管理に関連し、第2章では包括的管理や予測モデルについて、また第4章にはリスク予測からみた潜在性動脈硬化指標に関する記載を加えた。第5章「市民・患者への情報提供」では市民への急性心筋梗塞発症時の対応や、心肺蘇生法・AEDなどについて触れている。 最後に同氏は「将来的には患者プロファイルを入力することで、必要な情報がすぐに算出・表示できるようなアプリを多忙な臨床医のために作成していけたら」と今後の展望を述べた。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインの全文は日本循環器学会のホームページでPDFとして公開している。詳細はそちらを参照いただきたい。

694.

ドキュメンタリー「WHOLE」(前編)【なんで自分の足を切り落としたいの!?(身体完全性違和)】Part 1

今回のキーワード幻肢身体認識ネットワークラバーハンド錯覚気付き亢進身体失認自己認識みなさんは、健康な自分の足を切り落としたいという人がいたら、どう思いますか? 「きっと重い精神障害に違いない」と思いませんか? ところが、実際に足を切断したあとは何の精神的な問題もなく満足して暮らしているとしたらどうでしょうか? そんな彼らは、身体完全性違和と診断されます。簡単に言うと、体が健全(完全)であることに違和感があるという状態です。今回は、ドキュメンタリー「WHOLE」を取り上げ、この謎に迫ります。なお、このドキュメンタリーは、海外のサイトでレンタルまたは購入して、オンラインでみることができます。どんな特徴があるの?このドキュメンタリーには、切断を希望する人や実際に切断した人が紹介されています。彼らの発言から、身体完全性違和の特徴を主に3つ挙げてみましょう。(1)体の一部分に違和感がある彼らは口を揃えて、「片足が自分の体につながっていない」「自分のものではない」「異物だ」と言っています。しかも、「その境目が膝から何cm上まで」とはっきり言います。切断したある男性は、子供の頃から片足に違和感を持っており、当時から彼の日記にはその悩みが書かれ、描いた自画像も片足がありませんでした。別の男性は、切断してはいませんが、片足を膝で折り曲げて固定し、松葉杖を使って生活しています。そして、「この方が自然だよ」と言っていました。1つ目の特徴は、体の一部分(ほとんど左足)に違和感があることです。(2)命の危険を冒してでもその体の一部分をなくしたいと思う病院に行っても健康な足を切断してくれる外科医がいないため、彼らは切断してもらうためにあらゆる方法を考えます。ある男性は、大量のドライアイスで違和感のある足を半日凍らせて、凍傷になったことでやっと外科医に切断してもらえました。しかも、なんとかして温存を試みようとする救急医に「切断手術をしてくれなければ同じことを繰り返す」と宣言して、温存を断念するよう説得したのでした。【当時の新聞記事】また、別の男性は、自分の足をショットガンで打ち抜いたあと、暴発事故を装い、切断手術をしてもらったのでした。2つ目の特徴は、命の危険を冒してでもその体の一部分をなくしたいと思っていることです。(3)その体の一部分がなくなったら満足する彼らは全員、その片足を切断してもらったあとは「本来の自分になった」と言い、義肢や松葉杖の生活を穏やかに送ります。「異物」と思う自分の足を切断して、実際に異物である義肢を取り付けるのは奇妙にも思えます。しかし、その片足が「異物」であったというだけで、そのほかに精神的な問題はありません。たとえば、「片足が異物である」という訴えが妄想や強迫観念である場合、たとえ切断したとしても別の妄想や強迫観念が出てきて、訴えは続くでしょう。また、同情を病的に求めるミュンヒハウゼン症候群の場合、切断したら片足であることで同情を得ようとアピールし続けるでしょう。なお、この詳細については、関連記事1をご覧ください。3つ目の特徴は、その体の一部分がなくなったら満足していることです。なお、身体完全性違和は、もともと身体完全同一性障害と呼ばれていましたが、これまでICD(WHOによる国際疾病分類)やDSM(米国精神医学会による精神疾患の分類と診断の手引)には掲載されていませんでした。しかし、ICD-11(第11版)への改訂に伴い、この診断名として新しく新設されたため、今後さらに注目されていくことが予測されます。その診断ガイドライン1)を以下に示します。次のページへ >>

695.

軽症から中等症のCOVID-19外来患者において、フルボキサミンはプラセボと比較して症状改善までの期間を短縮せず(解説:寺田教彦氏)

 本研究では、軽症から中等症のCOVID-19外来患者で、フルボキサミンが症状改善までの期間を短縮するか評価が行われたが、プラセボと比較して症状改善までの期間を短縮しなかったことが示された1)。 フルボキサミンは、うつ病や強迫性障害などの精神疾患に使用される選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり、比較的安価な薬剤である。COVID-19流行初期において、このフルボキサミンは、サイトカインの産生を制御するσ-1受容体のアゴニストとして機能することから、臨床転帰の改善効果を期待して臨床試験が行われた。初期の臨床試験では有効性を示した報告2)もあり、ブラジルで行われたプラセボ対照無作為化適応プラットフォーム試験(TOGETHER試験)でも有効性が示されていた3)。そして、これらの研究に基づいたsystematic review4)やCochrane COVID-19 Study Register5)では、フルボキサミンは28日の全死因死亡率をわずかに低下させる可能性や、軽症COVID-19の外来および入院患者の死亡リスクを低下させる可能性があると評されていた。 しかし、フルボキサミンの有効性を否定する報告6)や、新型コロナウイルスワクチンの開発に伴いワクチン接種の有無で治療薬の有効性が変化する可能性も考えられ、現時点でフルボキサミンの有効性がない可能性も考えられた。そのため、新型コロナウイルスワクチンの接種率が7割程度あり、流行株がデルタ株からオミクロン株の時期の米国において、フルボキサミンの有効性が再度検証され、結果は前述の通りであった1)。 これまでの経緯や今回の研究結果を踏まえ、私は、日本ではフルボキサミンを臨床的に使用する必要性はないと考える。 過去の研究と今回の研究を比較すると、初期に有効性を示した臨床研究2)では、試験の参加者が少なかったことや、経過観察期間が短かったために正確な結論が得られなかった可能性が懸念される。また、ブラジルで実施されたTOGETHER試験は重症の定義に「6時間以上の救急医療を要する患者」を含めており、フルボキサミンが真に重症化予防効果があったかの疑問が残る。 今回、検証された理由の1つである、新型コロナの流行株や国民の新型コロナウイルスワクチン接種率の観点からも、本邦では今回の研究参加者の背景が近いと考えられる。フルボキサミンの有用性を示せなかった理由に、薬剤の投与量が指摘されることもあるが7)、現在はCOVID-19の病態の解明も進み、ワクチンの効果や新型コロナウイルスの変異により、かつてよりも死亡率や重症化率はかなり低下している状況である。そのうえ、重症化リスクのある患者に対する有効な抗ウイルス薬も開発され、使用方法も確立している。これだけCOVID-19治療法が確立した現在の日本においては、いくら安価であるとはいえ、COVID-19に対する効果が不確定なフルボキサミンを使用するメリットはないだろう。 さて、欧米や本邦では、COVID-19の治療ガイドライン8)や薬剤使用方法の手引き9)が整備されており、われわれ医療従事者はこれらのエビデンスに容易にアクセスできるようになった。しかし、インターネットのホームページをみると、本原稿執筆時でも、フルボキサミンが有効だったことを報告した当初の論文のみを載せてフルボキサミンの販売をしている通販サイトが散見される。COVID-19診療を振り返ってみると、イベルメクチンなどのようにCOVID-19への治療が期待されたがために、本来投与が必要な患者さんの手に薬剤が回らないことが懸念された薬剤もあった。新興感染症の病態や有効な治療薬が不明確なときには、有効と考えられる薬剤の投与を通して、エビデンスを生み出す必要があるが、病態や治療方法が確立すれば、適切な治療を行うように努めるべきであろう。 また、治療の有効性が否定された薬剤はその結果を受け止め、本来医学的に必要とされる患者さんに同薬剤が行き渡るようにするべきであろう。医薬品が一般人でも入手しやすくなった現代では、非医療従事者にも適切な情報が届くように、インターネットを含めてFact-Checkを行ってゆく必要があると考える。【引用文献】1)フルボキサミン、軽~中等症コロナの症状回復期間を短縮せず/JAMA2)Lenze EJ, et al. JAMA. 2020;324:2292-2300.3)Reis G, et al. Lancet Glob Health. 2022;10:e42-e51.4)Lee TC, et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e226269.5)Nyirenda JL, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2022;9:CD015391.6)Bramante CT, et al. N Engl J Med. 2022;387:599-610.7)Boulware DR, et al. Lancet Glob Health. 2022;10:e329.8)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)Treatment Guidelines9)COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 15.1 版(2023年2月14日)

696.

尿路感染症疑い高齢者への抗菌薬、医師への適正使用支援で6割減/BMJ

 尿路感染症が疑われる70歳以上のフレイル高齢者について、医療者に対して適切な抗菌薬使用決定ツールの提供や教育セッションなどの多面的抗菌薬管理介入を行うことで、合併症や入院の発生率などを上げずに、安全に抗菌薬投与を低減できることが示された。オランダ・アムステルダム自由大学のEsther A. R. Hartman氏らが、ポーランドやオランダなど4ヵ国の診療所などで行ったプラグマティックなクラスター無作為化試験の結果を報告した。ガイドラインでは限定的な抗菌薬使用が推奨されているが、高齢患者においては、処方決定の複雑さや異質性のため推奨使用の実施には困難を伴うとされていた。BMJ誌2023年2月22日号掲載の報告。38クラスターを対象に7ヵ月追跡 研究グループは2019年9月~2021年6月にかけて、ポーランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの一般診療所(43ヵ所)と高齢者ケア組織(43ヵ所)のうち、1ヵ所以上を含む38クラスターを対象に、ベースライン期間5ヵ月、追跡期間7ヵ月のプラグマティックなクラスター無作為化試験を行った。 被験者は70歳以上のフレイル高齢者1,041例(ポーランド325例、オランダ233例、ノルウェー276例、スウェーデン207例)で、追跡期間は411人年だった。 介入群の医療者には、多面的抗菌薬管理介入として、適切な抗菌薬使用の決定ツールや教材の入ったツールボックスを提供。参加型アクションリサーチ・アプローチのほか、教育・評価セッションや、介入の地域に即した変更を行った。対照群では、医療者が通常の治療を行った。 主要アウトカムは、尿路感染症疑いのある患者への抗菌薬処方数/人年だった。副次アウトカムは、合併症率、全原因による紹介入院、全原因による入院、尿路感染症疑い後21日以内の全死因死亡、全死因死亡などだった。尿路感染症疑いへの抗菌薬投与、介入で0.42倍に 尿路感染症が疑われた患者への抗菌薬処方数は、介入群54件/202人年(0.27/人年)、対照群121件/209人年(0.58/人年)だった。介入群の被験者は、対照群の被験者と比べて尿路感染症疑いで抗菌薬の処方を受ける割合が低く、率比は0.42(95%信頼区間[CI]:0.26~0.68)だった。 合併症率(介入群0.01未満/人年vs.対照群0.05/人年)、紹介入院率(0.01未満/人年vs.0.05/人年)、入院率(0.01/人年vs.0.05/人年)、尿路感染症疑い後21日以内の死亡(0/人年vs.0.01/人年)、全死因死亡(両群とも0.26/人年)は、両群で差はみられなかった。

697.

生活習慣の改善(8)食事療法5【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q56

生活習慣の改善(8)食事療法5Q56本邦の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版で推奨されている日本食パターン「The Japan Diet」のほかにも、動脈硬化性疾患予防に期待されている食形態がある。一般でも有名なその食形態、2つの名称は?

698.

生活習慣の改善(7)食事療法4【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q55

生活習慣の改善(7)食事療法4Q55本邦の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版では言及されていないが、食事療法の際の肉の種類についても、注目され始めている。赤身肉・白身肉それぞれの具体例と、心血管リスク削減のための摂取の考え方は?

699.

事例018 心筋バイオマーカーの査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では心筋梗塞疑いにて実施した検査の「D007_17 CKアイソザイム」と「D007_29心筋トロポニンI」が医学的に保険診療上適当でないものを表すC事由で査定となりました。本件は複数件のレセプトに査定がありました。両検査の査定理由には、「急性心筋梗塞に対して、12誘導心電図を行っていない場合、CK-MB、心筋トロポニンIおよび心筋トロポニンT(TnT)定性・定量検査の請求は認められません。止むを得ず心電図検査を行わずにレセプト請求する場合には、妥当性を示すコメントを必ず記載してください」と付記がありました。診療報酬点数表と関連通知には、心電図検査を必須とする明確な記述は見当たりません。レセプトにはコメントも記載されています。再審査請求を考えて査定理由を調べました。調べた資料のうち、心筋梗塞の診断に関連する複数のガイドラインには、「12誘導心電図(以下「心電図」)により初期診断、その後に心筋バイオマーカー(CKアイソザイム、CK-MBなど)で確定・最終診断」、「心筋バイオマーカーは、特に心電図だけでは判断しかねる場合に有用」とありました。優先して心電図を行うことが奨励されており、ここを根拠に査定となったものと推測ができます。医師のコメントはありましたが、複数件が同一の記述であり、心電図を行わなかった医学的、合理的な理由が薄いと判定されたようです。再審査請求を行いましたが原審通りでした。レセプトチェックシステムでは、コメントの内容チェックまではできません。ガイドラインに沿えなかった場合には、支払い側に状況が伝わるよう、詳しい身体所見などを簡潔明瞭に記載いただくことを医師にお願いしました。

700.

心アミロイドーシス患者に、医療者と社会ができることは?

 ファイザーは、2023年2月28日の世界希少・難治性疾患の日に先立ち、「希少・難治性疾患の患者さんのEquity(公平)実現のために社会ができることとは?~心アミロイドーシス患者さんとご家族の歩み、専門医のお話からともに考える~」をテーマに2023年2月16日、メディアセミナーを開催した。 希少疾患は約7,000種類、世界中で約4億人の患者さんが存在し、そのうち80%は遺伝性とされている。現状の課題として、希少疾患に対する専門家や情報、治療の選択肢や患者さん向けのサポート等が不足しており、患者さんとその家族の生活の質に重大な影響が生じている。心アミロイドーシスも国の指定難病の1つであり、患者さんのEquity(公平)の実現が求められている。 セミナーの前半では、心アミロイドーシス当事者である酒井 勝利氏とご家族の酒井 秀子氏が心アミロイドーシスのこれまでの歩みについて、診断から治療、日常生活の心境を語った。後半では、遠藤 仁氏(慶應義塾大学医学部 循環器内科 専任講師)から「心アミロイドーシスの診断・治療」をテーマに希少疾患の治療や課題、今後の展望について語られた。心アミロイドーシスとは 心アミロイドーシスは心臓の筋肉細胞の隙間にアミロイド線維が溜まり、心臓が肥大し硬くなることで心不全や不整脈を起こす疾患である。心アミロイドーシスはアミロイド線維の原因物質によってALアミロイドーシスとATTRアミロイドーシスの2種類に分類される。さらにATTRアミロイドーシスは遺伝子変異のない野生型(老人性)と変異のある変異型(遺伝性)の2種類が存在し、変異型では熊本県や長野県に地域的な集積地があり、アミロイド線維が溜まりやすい臓器が複数あることで知られている。アミロイドーシスの診断は遅れやすい アミロイドーシスは診断がされにくい疾患であり、初発症状から確定診断までの期間が6ヵ月以内で37.3%、3年以上で10.5%といった報告も存在する1)。この要因について遠藤氏は、「疾患の認知度が低いことや診断のために組織生検が必要であること、診断しても有効な治療手段が存在しなかった背景があることが考えられる」と述べた。心アミロイドーシスにおけるepoch making 近年、心アミロイドーシスの診断で画像診断が有用であること、新たな治療方法が創出されたことでepoch makingな変化があった。診断において、従来は侵襲性の高い心筋生検が必要だったが、99mTcピロリン酸シンチグラフィが登場しATTR心アミロイドーシスの診断が可能となった2)。また、臨床検査として使用することで、拡張不全で左室肥大のある60歳以上の患者さんのうち13%がATTRアミロイドーシスだった報告もあり3)、さまざまな心疾患に紛れている可能性もわかってきた。一方、治療では心不全治療だけでなく、アミロイド線維に対する疾患修飾療法として治療薬が開発・使用されるようになった。心アミロイドーシスの患者さん発掘のための取り組み ATTR心アミロイドーシスの認知度は循環器領域を中心に高まっているが、いまだ潜在的な患者さんは多く存在しているかもしれない。こういった患者さん発掘のために、疾患啓発や地域・他科との連携が重要である。その取り組みとして、疾患啓発では診療ガイドライン・診断アルゴリズム2),4)の作成や早期診断のための日本版Red-flagの提唱5)、地域間の格差に対しては診断や検査を受けやすくするための環境整備が進んでいる。心アミロイドーシスになって食事管理が大変だった 心アミロイドーシスの診断を受けて酒井 勝利氏は、「当時は疾患そのものの情報が不足していた。とくに治療に関する情報は少なく、海外の文献も診断に関する内容が大半であった。また、患者さん向けの小冊子も海外版しかなく情報収集には苦労した」と語った。ご家族の酒井 秀子氏からは「生活を送るうえで塩分制限などの食事管理が大変であった。減塩生活が続くことで気が緩むこともあり、二人三脚で病気と向き合うことが大切である」と述べた。心アミロイドーシスほか希少疾患が認知される環境整備 心アミロイドーシスは情報が日々アップデートされており、これからも新しい情報発信を続けることが患者さんとご家族の不安解消のためにきわめて重要なことである。また、一般の方々にも関心を持っていただけるよう、心アミロイドーシスをはじめとした希少疾患が認知される環境整備を医療従事者だけでなく、メディアも一緒になって取り組むことが潜在患者さんの新たな発掘につながると期待されている。

検索結果 合計:2884件 表示位置:681 - 700