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年齢・体温別の呼吸数の新基準で、発熱小児の下気道感染症を検出

新たに開発された年齢と体温別の呼吸数パーセンタイル図に基づく呼吸数の新基準を用いれば、既存の呼吸数閾値よりも高い検出能で発熱小児における下気道感染症(LRTI)の診断が可能なことが、オランダErasmus MC-Sophia小児病院のR G Nijman氏らの検討で示された。呼吸数は、LRTIの重要な予測因子であり、呼吸器系の基礎疾患や発熱の影響を受ける。既存の頻呼吸の閾値は発熱との関連はほとんど考慮されていないという。BMJ誌2012年7月28日号(オンライン版2012年7月3日号)掲載の報告。パーセンタイル図を開発し、診断能を前向きに検証研究グループは、発熱のみられる小児におけるLRTIの予測法として、年齢と体温別の呼吸数の基準値とパーセンタイル図を開発し、その検出能を評価するプロスペクティブな観察試験を実施した。2006~2008年に、Erasmus MC-Sophia小児病院(ロッテルダム)小児救急診療部を受診した生後1ヵ月から16歳未満の発熱のみられる小児1,555例を導出集団(derivation population)とした。第1検証集団(validation population)は、2005~2006年にコベントリー大学病院(英国、コベントリー)を受診した発熱小児360例、第2検証集団は2003~2005年にErasmus MC-Sophia小児病院を受診した発熱小児311例であった。導出集団で呼吸数のパーセンタイル図を作成し、体温ごとの呼吸数の50、75、90、97パーセンタイル値を算出した。多変量回帰分析を行って呼吸数、年齢、体温の関連を調べた。得られた結果の妥当性を確認するために、検証集団で呼吸数パーセンタイル図の診断能の評価を行った。肺炎性LRTI(胸部X線検査で確定)、非肺炎性LRTI、非LRTIと診断された小児の呼吸数パーセンタイルを算出した。年齢、呼吸数(回/分)、体温とLRTIの関連を解析した。肺炎性と非肺炎性LRTIの鑑別はできない全体として、年齢と体温で補正すると、体温が1℃上昇するごとに呼吸数が2.2回/分増加した。年齢、体温、呼吸数の間に交互作用は認めなかった。呼吸数の97パーセンタイルをカットオフ値とした場合の年齢と体温に基づくLRTIの診断能(特異度:0.94、95%信頼区間[CI]:0.92~0.96、陽性尤度比:3.66、95%CI:2.34~5.73)は、既存のAPLS(Advanced Pediatrics Life Support)ガイドラインの呼吸数閾値の診断能(特異度:0.53、95%CI:0.48~0.57、陽性尤度比:1.59、95%CI:1.41~1.80)よりも優れていた。一方、呼吸数パーセンタイルのカットオフ値では、肺炎性LRTIと非肺炎性LRTIの鑑別はできなかった。著者は、「年齢と体温別の呼吸数パーセンタイル図により、発熱小児における呼吸数の新たな基準値が示された。97パーセンタイルをカットオフ値とすると、LRTIの検出能が既存の呼吸数閾値よりも良好だった」と結論している。

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「痛み」の種類に応じた治療の重要性~全国47都道府県9,400人を対象とした実態調査~

 痛みとは本来、危険な外的刺激から身を守ったり、身体の異常を感知したりするなど、生命活動に必要なシグナルである。しかし、必要以上の痛みや原因のない痛みは防御機能として作用しないばかりか、健康や身体機能を損なう要因となるため、原因となる疾患の治療に加えて痛みのコントロールが必要となる。 ところが、日本では痛みに対する認識や治療の必要性が十分に知られていない。そのような実態を踏まえ、47都道府県9,400人を対象とした「長く続く痛みに関する実態調査」が実施され、その結果が2012年7月10日、近畿大学医学部奈良病院 整形外科・リウマチ科の宗圓 聰氏によって発表された。(プレスセミナー主催:ファイザー株式会社、エーザイ株式会社)●「痛み」とは 痛み(疼痛)はその病態メカニズムにより、怪我や火傷などの刺激により侵害受容器が持続的に刺激されて生じる「侵害受容性疼痛」、神経の損傷やそれに伴う機能異常によって生じる「神経障害性疼痛」、器質的病変はないものの、心理的な要因により生じる「心因性疼痛」の3つに大別される1)。 これらは疼痛の発生機序や性質が違うため治療法は異なるが、実際にはそれぞれの要因が複雑に絡み合っており、明確に分類することは困難である。とくに神経障害性疼痛は炎症が関与しないため、消炎鎮痛剤が効きにくく難治性であることが知られている。●神経障害性疼痛の特徴と診断 神経障害性疼痛は「知覚異常」、「痛みの質」、「痛みの強弱」、「痛みの発現する時間的パターン」という4つの臨床的な特徴がみられる1)。1.知覚異常: 自発痛と刺激で誘発される痛みの閾値低下(痛覚過敏など)2.痛みの質: 電撃痛、刺すような痛み、灼熱痛、鈍痛、うずく痛み、拍動痛など3.痛みの強弱: 弱いものから強いものまでさまざまである4.痛みの発現する時間的パターン: 自発性の持続痛、電撃痛など 神経障害性疼痛の診断アルゴリズムによると、疼痛の範囲が神経解剖学的に妥当、かつ体性感覚系の損傷あるいは神経疾患を示唆する場合に神経障害性疼痛を考慮する。そのうえで、神経解剖学的に妥当な疼痛範囲かどうか、検査により神経障害・疾患が存在するかどうかで診断を進める2)。●神経障害性疼痛の薬物治療 神経障害性疼痛の治療は薬物療法が中心となるが、痛みの軽減、身体機能とQOLの維持・改善を目的として神経ブロック療法、外科的療法、理学療法も用いられる。日本ペインクリニック学会の「神経障害性疼痛薬物治療ガイドライン」によると、以下の薬剤が選択されている2)。第1選択薬(複数の病態に対して有効性が確認されている薬物)・三環系抗うつ薬(TCA)  ノルトリプチン、アミトリプチン、イミプラミン・Caチャネルα2δリガンド  プレガバリン、ガバペンチン下記の病態に限り、TCA、Caチャネルα2δリガンドとともに第一選択として考慮する・帯状疱疹後神経痛―ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(ノイロトピン)・有痛性糖尿病性ニューロパチー―SNRI(デュロキセチン)、抗不整脈薬(メキシレチン)、アルドース還元酵素阻害薬(エパルレスタット)第2選択薬(1つの病態に対して有効性が確認されている薬物)・ノイロトピン・デュロキセチン・メキシレチン第3選択薬・麻薬性鎮痛薬  フェンタニル、モルヒネ、オキシコドン、トラマドール、ブプレノルフィン なお、三叉神経痛は特殊な薬物療法が必要となり、第1選択薬としてカルバマゼピン、第2選択薬としてラモトリギン、バクロフェンが選択されている。●47都道府県比較 長く続く痛みに対する意識実態調査 調査結果 各都道府県の慢性疼痛を抱える人の考えや行動を明らかにするために、「47都道府県比較 長く続く痛みに対する意識実態調査」が実施された。 対象は慢性疼痛の条件を満たした20歳以上の男女9,400人(各都道府県200人)で、インターネットを用いて調査が行われた。主な結果は以下のとおり。・「痛みがあってもある程度、自分も我慢するべき」と考える人は74.3%(6,981人)、「痛いということを簡単に他人に言うべきではない」と考える人は55.7%(5,240人)であった。・長く続く痛みへの対処で、病医院へ通院していない人は50.1%(4,707人)であり、そのうち31.2%(1,470人)が「病院へ行くほどでもないと思った」と回答した。・痛みがあってもある程度、自分も我慢するべきと考える割合や、過去5年以内に1回でも通院先を変更した経験があったり、3回以上通院先を変更したりしている人の割合については地域差がみられた。・神経障害性疼痛を判定するスクリーニングテストの結果、20.1%(1,888人)に神経障害性疼痛の疑いがあった。・72.9%(6,849人)が「長く続く痛みの種類」を知らず、76.6%(7,203人)が「長く続く痛みの治療法を知らない」と回答した。 これらの結果より、宗圓氏は、日本では痛みを我慢することが美徳とされてきたが、痛みを我慢するとさまざまな要因が加わって慢性化することがあるため、早めに医療機関を受診することが重要であると述べた。 そして、痛みが長期間続くと不眠、身体機能の低下やうつ症状を併発することもあるため、治療目標を設定し、痛みの種類や症状に合わせて薬物療法、理学療法や心理療法も取り入れ、適切に治療を行う必要があるとまとめた。●プレガバリン(商品名:リリカ)について プレガバリンは痛みを伝える神経伝達物質の過剰放出を抑えることで鎮痛作用を発揮する薬剤であり、従来の疼痛治療薬とは異なる新しい作用機序として期待されている薬剤である。また、現在120の国と地域で承認され、神経障害性疼痛の第一選択薬に推奨されている。 さらに、2012年6月にプレガバリンは「線維筋痛症に伴う疼痛」の効能を取得した。線維筋痛症は全身の広い範囲に慢性的な疼痛や圧痛が生じ、さらに疲労、倦怠感、睡眠障害や不安感などさまざまな症状を合併し、QOLに悪影響を与える疾患である。国内に約200万人の患者がいると推計されるが3)、日本において線維筋痛症の適応で承認を受けている薬剤はほかになく、国内唯一の薬剤となる。国内用量反応試験、国内長期投与試験、外国後期第Ⅱ相試験、外国第Ⅲ相試験および外国長期投与試験において、副作用は1,680例中1,084例(64.5%)に認められた。主な副作用は浮動性めまい393例(23.4%)、傾眠267例(15.9%)、浮腫179例(10.7%)であった。なお、めまい、傾眠、意識消失等の副作用が現れることがあるため、服薬中は自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように、また、高齢者では転倒から骨折に至る恐れがあるため注意が必要である。●疼痛治療の今後の期待 慢性疼痛は侵害刺激、神経障害に加え、心理的な要因が複雑に絡み合っている。さらに「長く続く痛みに関する実態調査」によって、疼痛を我慢して治療を受けていない患者の実態が明らかとなり、さまざまな要因が加わって疼痛が慢性化し、治療が難渋することが懸念される。 抗炎症鎮痛薬が効きにくいとされている神経障害性疼痛において、プレガバリンのような新しい作用機序の薬剤の登場により、痛みの種類に応じた薬剤選択が可能となった。患者と治療目標を設定し、適切な治療方法を選択することにより、今後の患者QOLの向上が期待される。

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学会総会まるわかり! 第44回 日本動脈硬化学会総会レビュー ガイドライン作成委員が語る今年の総会

執筆:塚本和久先生(福島県立医科大学 会津医療センター準備室 糖尿病・代謝・腎臓内科 教授)7月19日と20日の二日間、「動脈硬化性疾患の包括医療 ―ガイドライン2012―」をメインテーマとして、佐々木淳会長(国際医療福祉大学)のもと、第44回日本動脈硬化学会総会・学術集会が福岡にて開催された。本学会でも、近年他学会でも採用され始めたiPhone・iPad・スマートフォンでのプログラムの検索や予定表の作成が可能な専用のアプリが採用され、さらには抄録集もPDF化されたことにより、従来の重たい抄録集を持ち歩く必要がなくなったのも目新しい試みであった。両日を通じて総数1200名弱の参加があった。1. 新ガイドライン関連セッション今回の学会は、本年6月20日に発表された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012年版」をめぐるセッションがいくつか設けられた。初日午前には、各脂質測定に関する精度に関するワークショップが企画された。日常臨床で、各々の測定値がどのように標準化されているのか、その測定精度がどの程度のものであるのか、を考えることがないのが、ほとんどの臨床家の現状であろう。このセッションにおいて、総コレステロールはその精度管理が優れておりばらつきはほとんどないこと、現在のHDL-C測定法も精度の高い測定法であること、それに対して中性脂肪測定は標準化が十分でなく今後強力な標準化の努力が必要であること、また欧米での中性脂肪測定法と日本のそれとは遊離グリセロールを含めて測定するかどうかの相違が存在しており、値として同等のものと考えることはできないこと、などの解説が行われた。またLDL-C直接法に関しては、現在12メーカー(試薬は8試薬)がキットを出しているが、その測定法の詳細は示されておらず、同じ検体を測定してもキットにより値が異なることがしばしばあり、特に中性脂肪値の高い検体ではBQ法(比重1.006g/mL以上の画分を除いた検体でコレステロールを測定する方法)での測定値よりもかなり高値となるキットがあることが指摘された。それゆえ、今回のガイドラインでは、中性脂肪値が400 mg/dL以上の場合にはnon HDL-Cを指標とすること、中性脂肪値高値例ではLDL-C目標値達成後にnon HDL-C値を二次目標として用いること、が推奨されることとなったとの解説があった。non HDL-Cに関しては、近年の報告からLDL-Cよりも強い冠動脈疾患のマーカーとなる可能性が示されていること、高TG血症・低HDL-C血症ではLDL-Cにnon HDL-Cを加えて用いることによりそのリスク予測能が高まること、ただしnon HDLを指標とした大規模研究や疫学研究はないため、とりあえずLDL-C + 30 mg/dLで基準を定めてはいるものの、今後その閾値の設定が必要になってくることが提言された。二日目の午後には、今回のガイドライン作成の中心的存在として活躍された先生方による、「改訂動脈硬化性疾患予防ガイドライン」のセッションが開かれた。寺本民生先生(帝京大学)からは新ガイドラインの概要と二次予防・高リスク病態における層別化について、枇榔貞利先生(Tsukasa Health Care Hospital)からは脂質異常症の診断基準の元となった日本人でのデータと境界域を設定した根拠、そしてLDL-C直接法の欠点とnon HDL-Cの導入理由が示された。また、岡村智教先生(慶應義塾大学)より、今回のガイドラインで設定された絶対リスクに基づいたカテゴリー分類の基準を設定する際に参考とされた諸外国でのガイドラインの解説と最終的なカテゴリー分類基準の解説が行われ、最後に横出正之先生(京都大学)からは今回の学会のメインテーマである「動脈硬化性疾患の包括的管理」について、詳細な説明がなされた。2. 今回の学会でのセッションの傾向最近の動脈硬化学会の演題内容は、どちらかというと細胞内シグナル伝達やサイトカインのセッションが多い印象があったが、今回はどちらかというとリポ蛋白関連・脂質代謝異常、という概念でのセッションが多かった印象がある。二日目の午前には、「脂質異常症と遺伝子の変異」というセッションで、CETP欠損症、家族性高コレステロール血症、アポEについての講演とともに、今後の脂質異常症の発展につながるであろう「遺伝子変異の網羅的解析とTG異常」、「脂質異常症遺伝子変異データベースの構築」の演題が発表された。また、HDLについては、HDL研究に造詣の深い M John Chapman博士の特別講演が一日目に組まれ、二日目の午後には「How do we deal HDL?」との表題でのワークシップが行われた。そして、一日目の午後には、3年前の学会から継続して開催されている「動脈硬化性疾患の臨床と病理」のセッションが催された。ハーバード大学の相川先生から、近年の動脈硬化イメージングの進歩状況として、FDG PET/CT イメージング、MRI T2シグナルを用いての動脈硬化巣マクロファージのイメージング、特殊な薬物(NIRF OFDI)を用いての分子イメージングについての解説があった。座長の坂田則行先生(福岡大学)からは、現在の画像診断技術の進歩はめざましいが、どうしても臨床医は画像診断のみに頼りがちになっており、今後は画像診断での病変がどのような病理組織像を呈するのか、ということに関して、臨床家と病理家が共同して検討していく必要性が提起された。3. 特別企画、および若手奨励賞一日目の午後、特別企画として、Featured Session「時代を変えた科学者たち」が開催され、松澤佑次博士(内臓脂肪研究)、泰江弘文博士(冠攣縮性狭心症)、遠藤章博士(スタチンの発見)、荒川規矩男博士(アンジオテンシン研究)といった、日本を代表する研究者たちの講演をまとめて拝聴する機会が得られた。各博士の講演内容の詳細はスペースの関係上省略させていただくが、どの先生の話も内容が濃く感慨深いものであり、現在および将来基礎・臨床研究にいそしむ若い先生方の非常によい指南となったと考える。このような中、次世代を担う若手の先生の発表もポスター発表も含め多数行われた。中でも、一日目の午前には、若手研究者奨励賞候補者の発表、そして選考が行われた。スタチンがARH(autosomal recessive hypercholesterolemia)患者に有効に働く機序を安定同位体を用いた代謝回転モデルにて解析した論文(Dr. Tada)、急性冠症候群の血栓成分の相違がどのような臨床像、あるいは心機能回復能と相関するかを調べた臨床研究(Dr. Yuuki)、マクロファージからのコレステロール逆転送に関与するABCA1とABCG1が、ポリユビキチン化されて代謝されること、そしてプロテアゾーム阻害薬でコレステロール逆転送が活性化されることを示した論文(Dr. Ogura)、カルシウム感受性細胞内プロテアーゼであるカルパインは内皮細胞の細胞間接着に関与するVEカドヘリンの崩壊を惹起し、内皮細胞のバリア機能を低下させ、動脈硬化を促進すること、そしてカルパイン阻害薬は動脈硬化を抑制することを示した論文(Dr. Miyazaki)の発表があった。最優秀賞は、Dr. Miyazakiの演題が選出された。4. 特別講演、懇親会さて、このような実りの多い学会をさらに充実させたイベントとして、一日目の夜に開催された懇親会、そして東北楽天ゴールデンイーグルス名誉監督である野村克也氏の講演が挙げられるであろう。懇親会は、いつもの学会懇親会よりも多数の参加者があった。会長および運営事務局・プログラム委員会の諸先生の趣向・ご尽力、そして開催ホテルがヤフードームの隣であったこともあり、福岡ソフトバンクホークスのチアガールによる余興なども行われ、非常に和気藹藹とした雰囲気の中で会員同士の親交が深まったと思われる。また、二日目の野村克也監督の特別講演は、「弱者の戦略」という題名で行われた。南海、ヤクルト、阪神、楽天と、長い選手人生そして監督人生にて経験し、培ってきた考え方・姿勢を拝聴できた。とても内容の濃い講演であったが、中でも、弱者がいかに強者に対応していけばよいのか、組織・あるいはグループの長である監督とはどうあるべきか、部下のものに対する対応はどのようにすべきなのか、など、我々医師の世界にも相通じる内容の話を、ユーモアを交えながら語っていただいた。様々な苦労を乗り越え、その場その場でよく考えて人生を歩まれた監督ならではの講演であったと考えている。5. まとめ来年は、及川眞一会長の下、7月18日・19日に東京・京王プラザホテルにて第45回日本動脈硬化学会が開催される予定である。今年の充実した学会を更に発展させ、基礎および臨床の動脈硬化研究の進歩がくまなく体得できる学会になることを期待する。

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今後も評価の価値あり…転移性乳がんのマルチチロシンキナーゼ阻害薬TSU-68

TSU-68はVEGFR-2、血小板由来増殖因子受容体と線維芽細胞成長因子受容体を阻害する新たなマルチキナーゼ阻害薬である。東海大学のSuzuki氏らは、アントラサイクリンレジメン+タキサンによる術前治療にも関わらず進行した転移性乳がん患者におけるTSU-68単剤療法の有効性と安全性を評価する臨床第II相試験を実施し、その結果をInternational Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2012年5月15日号に報告した。TSU-68は、20名の患者に400mgを1日2回投与された。一次エンドポイントは、RECISTガイドラインver.1.0による奏効率。二次エンドポイントは、TSU-68の臨床的利益率(24週以上持続するCR、PR、SD)、1サイクル終了時における腫瘍細胞の血管新生に関連するバイオマーカーのmRNAレベルの変化の探索、安全性評価であった。その結果、包括的奏効はみられなかったものの、TSU-68単独療法の臨床的利益は5%の患者に認められた。また、バイオマーカーであるCD-31、Fit-1、Flk/KDRのmRNAレベルは、腫瘍組織を採取した4例すべてで減少傾向を示した。しかしながら、サンプルサイズが小さかったため、有意差は認められなかった。一方、最も多い有害事象は腫瘍痛(60%)であった。血液系の有害事象はまれであり、軽度であった。Grade2の発疹が1例みられたが、VEGFR阻害薬でみられる高血圧は発現しなかった。Grade4の有害事象、試験関連死とも認められなかった。本試験では、臨床的ベネフィットが得られたのは患者の5%だったものの、TSU-68単剤療法の忍容性は良好であった。また、CD31のmRNAレベル、Flk-1/KDRの減少が4例でみられており、TSU-68の有効性については、今後もさらに評価する価値があると考えられる。(ケアネット 細田 雅之)

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5大医学専門誌の情報提供の質は改善したか?

論文アブストラクトのミスリードを解消することを目的に、2008年1月にCONSORT(consolidated standards of reporting trials)ステートメントによって発表されたガイドラインの影響について、英国・オックスフォード大学のSally Hopewell氏らが5大医学専門誌(AIM、BMJ、Lancet、JAMA、NEJM)を対象に検討した。結果、媒体によって異なる傾向がみられたという。BMJ誌2012年7月2日号(オンライン版2012年6月22日号)掲載報告より。ガイドライン発表後の、5大誌のアブストラクトに含まれる推奨項目の変化を比較CONSORTガイドラインでは、アブストラクトで無作為化試験の主要な結果を報告する際に示すべき項目を定めている。Sally Hopewell氏らは、影響力の大きい医学専門誌5誌を対象に、ガイドラインに対する各媒体の編集方針、ガイドラインの推奨項目がアブストラクトでどれだけ採用されているかなどを分割時系列分析にて調査した。2006~2009年に発表された無作為化試験に関する主要な報告60題(アブストラクト電子版がPubMedに登録されたもの)を対象とし、電子版のアブストラクトのないもの、2次試験の報告論文や経済分析がなされていない報告は除外した。対象学術誌は、ガイドラインに関する編集方針に即して、「著者に対する指示でガイドラインについて言及していない」(JAMA、NEJM)、「著者に対する指示でガイドラインがあることを紹介はしているが、実行ポリシーは特段に示していない」(BMJ)、「著者に対する指示でガイドラインがあることを紹介し、実行するための積極的なポリシーもある」(AIM、Lancet)の3つに分類され、2人の本分析担当者が各々、CONSORTのアブストラクトチェックリストに基づいてデータを抽出した。主要アウトカムは、CONSORT推奨の9項目(2006年に刊行された医学専門誌5誌に発表されたアブストラクトにおいていずれも50%未満しか報告されていなかった項目)の、選択アブストラクトに含まれる平均項目数とした。BMJ、JAMA、NEJMは、推奨項目採用の増加みられず無作為化試験に関する955件のアブストラクトが選択され評価された。結果、ガイドライン準拠の積極的ポリシーを有する学術誌では、報告された平均項目数の即座の増加がみられた(1.50項目の増加、P=0.0037)。ガイドライン発表後23ヵ月時点で、アブストラクトにみられたガイドライン推奨平均項目数は5.41/9項目で、介入前の傾向を基に推定した期待値より53%増加した。一方、ガイドライン準拠のポリシーが示されていない学術誌(BMJ、JAMA、NEJM)では、項目や傾向の増加がみられなかった。結果を踏まえて研究グループは、「学術誌のCONSORTアブストラクトガイドラインの積極的ポリシーは、無作為化試験に関するアブストラクトの情報提供の改善につながる可能性がある」と結論している。

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新たな分子標的薬の登場で腎細胞がん治療はどう変わるのか?

腎細胞がん治療において、現在わが国で発売されている分子標的薬は4剤あり、日本泌尿器科学会の腎癌診療ガイドライン2011年版では、1次治療ではMSKCCリスク分類別、2次治療では前治療別に薬剤が推奨されている。そのなかで、新たな分子標的薬であるアキシチニブ(商品名:インライタ)が、2012年6月29日、根治切除不能または転移性の腎細胞がんの治療薬として承認された。今回、ファイザー株式会社によるプレスセミナーが7月11日に開催され、慶應義塾大学泌尿器科教授 大家基嗣氏と近畿大学泌尿器科教授 植村天受氏が、腎細胞がん治療における現状・課題、アキシチニブの特性や臨床成績、今後の展望などについて講演した。その内容をレポートする。■標的部位が選択的かつ阻害活性が高いチロシンキナーゼ阻害薬まず、腎細胞がん治療における現状と課題、アキシチニブの特性や臨床試験成績、使用時の注意について、大家基嗣氏が講演した。腎細胞がんの罹患数は増加傾向にあり、わが国の年間罹患者数は約14,000人である。近年、健康診断における腹部超音波検査やほかの疾患での定期的CT検査によって、偶然発見されるケースも増えている。現在、腎細胞がんに適応を持つ分子標的薬は、チロシンキナーゼ阻害薬のスニチニブ(商品名:スーテント)とソラフェニブ(同:ネクサバール)、mTOR阻害薬のテムシロリムス(同:トーリセル)とエベロリムス(同:アフィニトール)の4剤がある。これらの薬剤によって腎細胞がん患者の予後は改善されたとはいえ、長期生存率は依然として低く、また副作用の問題で長期継続投与ができないという課題が残っている。よって、臨床現場からは、より有効性が高く、より副作用の少ない薬剤が待ち望まれている。今回承認されたアキシチニブは、チロシンキナーゼ阻害薬であり、標的部位がVEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3に選択的で、その阻害活性はほかの2剤に比べて非常に強いという特徴を持つ。国際共同第III相臨床試験(AXIS)では、1次治療に治療抵抗性を示した転移性腎細胞がん(淡明細胞がん)患者715例を対象に、アキシチニブ群とソラフェニブ群に無作為に割り付け、有効性および安全性を比較検討した。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はアキシチニブ群が6.8ヵ月と、ソラフェニブ群4.7ヵ月に比べて有意に延長した(ハザード比0.664、p

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糖尿病を有するNSTE-ACSに、侵襲的治療は有効

非ST上昇型急性冠症候群(NSTE‐ACS)患者への早期の侵襲的治療は、ACC/AHAガイドラインで推奨されている。しかし、糖尿病を有するNSTE-ACS患者に対する侵襲的治療が、ベネフィットをもたらすかどうかを主目的に解析した臨床試験は、これまでなかった。今回、この検討結果がO'Donoghue ML氏らにより発表された。この結果、糖尿病患者への早期の侵襲的治療は、非糖尿病患者と比べ、全心血管イベントの相対リスクは同等ではあったが、再発性の非致死的心筋梗塞(MI)リスクを有意に低下させることが明らかになった。著者は、これらの結果は、最新のガイドラインが推奨している糖尿病を有するような高リスクのNSTE-ACS患者に対する、侵襲的治療を支持するものだ、と述べている。本試験は9件の無作為化臨床試験のメタアナリシスの結果。対象はNSTE-ACS患者9,904例。フォローアップ期間は12ヵ月。心血管イベントリスクは、糖尿病の有無と無作為化された治療戦略(侵襲的治療または保守的治療)で層別化され、解析された。相対リスク(RR)比と絶対リスクの減少については変量効果モデルを用いてデータ統合がなされた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象者9,904例のうち、1,789例(18.1%)が糖尿病であった。・侵襲的治療の保守的治療に対する、死亡、非致死的心筋梗塞(MI)、または急性冠症候群による再入院のRRは、糖尿病患者(RR:0.87、95%CI:0.73‐1.03)と、非糖尿病患者(RR:0.86、95%CI:0.70‐1.06、交互作用p=0.83)で同等であった。・侵襲的治療は、糖尿病患者に対しては非致死的MIを減少させた(RR:0.71、95%CI:0.55~0.92)が、非糖尿病患者では減少させなかった(RR:0.98、95%CI:0.74~1.29、交互作用p= 0.09)。・侵襲的治療によるMIの絶対リスク減少率は、糖尿病患者の方が非糖尿病患者よりも大きかった(絶対リスク減少率:3.7% vs 0.1%、交互作用p= 0.02)。死亡または脳卒中において、両群間に有意差は認められなかった(交互作用p=0.68、p=0.20) (ケアネット 佐藤 寿美)  〔関連情報〕  ・動画による糖尿病セミナー (インスリンなど)

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ワルファリン服用の急性虚血性脳卒中へのt-PA、症候性頭蓋内出血リスク増大みられず

組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)静注療法を行った急性虚血性脳卒中患者の症候性頭蓋内出血リスクについて、ワルファリン服用中の患者のリスクは非服用患者と比べて増大しないことが示された。その他のt-PA合併症や院内死亡率についても、ワルファリン服用による増加は認められなかった。米国・デューク臨床研究所のYing Xian氏らが、約2万4,000人の急性虚血性脳卒中患者について行った観察試験の結果で、JAMA誌2012年6月27日号で発表した。t-PA静注療法患者について、ワルファリン服用有無で出血リスク増大との関連を分析最近のガイドラインでは、ワルファリン治療中の患者へのt-PA静注は、国際標準比(INR)1.7以下の患者への投与が推奨されているが、ワルファリン服用中の患者に関するt-PA静注療法の安全性に関するデータはほとんどない。そこで研究グループは、ワルファリン服用中患者と非服用患者とを比較する目的で、2009年4月~2011年6月の間に1,203病院で登録されたAHA Get With The Guidelines–Stroke(GWTG-Stroke)レジストリの患者データから、急性虚血性脳卒中を発症した国際標準比(INR)が1.7以下の人で、組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)を静注した2万3,437人について観察試験を行った。被験者のワルファリンの服用歴の有無と、症候性頭蓋内出血の発症リスクとの関連を分析した。被験者のうちワルファリン服用中だったのは1,802人(7.7%)で、INR中央値は1.20(四分位範囲:1.07~1.40)だった。ワルファリンを服用していた人は、そうでない人に比べ、高齢で、共存症が多く、脳卒中の程度も重度だった。症候性頭蓋内出血、重度全身性出血、t-PA合併症などいずれも発症率は同等症候性頭蓋内出血の補正前発症率は、ワルファリン服用群が5.7%と、ワルファリン非服用群の4.6%に比べ有意に高率だった(p<0.001)。しかし、試験開始時点における臨床的因子で補正後は、両群の同発症率に有意差は認められなかった(補正後オッズ比:1.01、95%信頼区間:0.82~1.25)。 ワルファリン服用群と非服用群では、重度全身性出血率(補正後オッズ比:0.78、同:0.49~1.24)、t-PA合併症率(同:1.09、同:0.93~1.29)、院内死亡率(同:0.94、同:0.79~1.13)のいずれも有意な差は認められなかった。INR 1.7以下のワルファリン服用患者への血栓溶解療法は、症候性頭蓋内出血リスクと統計的に有意な関連は認められなかった(補正後オッズ比:INR 0.1増大につき1.10、95%信頼区間:1.00~1.20、P=0.06)。 (當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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新たな冠動脈疾患の予測モデル、有病率が低い集団でも優れた予測能

オランダ・エラスムス大学医療センターのTessa S S Genders氏らが新たに開発した冠動脈疾患の予測モデルは、有病率が低い集団においても優れた予測能を示すことが、同氏らが実施した検証試験で確認された。検査前確率は、患者にとって最も有益な検査法を決めるのに有用とされる。ACC/AHAやESCの現行ガイドラインでは、安定胸痛がみられる患者における冠動脈疾患の検査前確率の評価には、Diamond and ForresterモデルやDuke臨床スコアが推奨されているが、いずれの方法にもいくつか欠点があるという。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年6月12日号)掲載の報告。新規予測モデルの予測能を後ろ向き統合解析で検証研究グループは、有病率の低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の評価に有用な予測モデルを開発するために、個々の患者データのレトロスペクティブな統合解析を行った。ヨーロッパおよび米国の18施設から、冠動脈疾患の既往歴のない安定胸痛患者が登録された。CTあるいはカテーテルベースの冠動脈造影所見に基づき、低有病率または高有病率の集団に分類した。主要評価項目は閉塞性冠動脈疾患(カテーテル冠動脈造影で1つ以上の血管に≧50%の狭窄)とした。予測モデルは、基本モデル(年齢、性別、症状、有病率の高低)、臨床モデル(基本モデルの因子、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙)および拡張モデル(臨床モデルの因子、CT冠動脈造影によるカルシウムスコア)で構成された。低有病率の集団のデータセットを用いて、交差検証法(cross validation)による解析を行い、識別能(C統計量)、キャリブレーション、純再分類改善度(net reclassification improvement; NRI)ついて評価した。冠動脈カルシウムスコアを加えると予測能がさらに改善解析の対象となった5,677例(男性3,283例[平均年齢58歳]、女性2,394例[同:60歳])のうち、5,190例(91%)でCT冠動脈造影が施行され、1,634例(31%)が閉塞性冠動脈疾患と診断された。このうち1,083例(66%)にカテーテル冠動脈造影が施行され、886例(82%)に閉塞性冠動脈疾患が確認された。CT冠動脈造影で閉塞性冠動脈疾患がみられなかった3,556例のうち、526例にカテーテル冠動脈造影が施行され、閉塞性冠動脈疾患が否定されたのは498例(95%)だった。全体として、カテーテル冠動脈血管造影が施行されたのは2,062例(36%)で、そのうち閉塞性冠動脈疾患と診断されたのは1,176例(57%)であった。単変量および多変量解析では、すべての予測因子が疾患の発現と有意に関連した。臨床モデルの予測能は、基本モデルに比べ優れていた(交差検証されたc統計量が0.77から0.79に改善、NRI:35%)。拡張モデルの冠動脈カルシウムスコアは主要な予測因子であった(同:0.79から0.88に改善、102%)。著者は、「年齢、性別、症状、心血管リスクなどから成る新たな予測モデルにより、有病率が低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の正確な予測が可能となった。この予測モデルに冠動脈カルシウムスコアを加えると、予測能がさらに改善された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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抗てんかん剤「Zonegran」の単剤療法、EMAより承認取得

エーザイ株式会社は3日、英国子会社であるエーザイ・ヨーロッパ・リミテッドが抗てんかん剤「Zonegran」(一般名:ゾニサミド)について、新規に診断されたてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤療法の追加適応の承認を欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)より受領したと発表した。Zonegranは、大日本製薬(現、大日本住友製薬)が創製した抗てんかん剤。欧州では同社が開発を行い、2005年3月に成人てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法として承認を取得した。また、2012年6月22日に欧州において、6歳以上の小児てんかんにおける併用療法の追加適応の申請が受理された。今回の承認は、新規に診断された部分てんかん患者様583人を対象に、1日1回投与のZonegranと、1日2回投与のカルバマゼピン徐放製剤を比較する目的で実施された多施設共同、無作為化、二重盲検試験の結果に基づいて行われたという。同試験の主要評価項目には「6ヵ月間の発作未発生率」を用い、Zonegranは高い忍容性をもって、てんかん発作の抑制効果を示したとのこと。主要評価項目の両投与群間の統計比較では、国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy: ILAE)の治療ガイドラインで推奨されている非劣性基準を満たした。また、同試験で報告された主な有害事象は、頭痛、食欲減退、眠気、めまい、体重減少、けん怠感、発疹、発熱であった。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news201241.html

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新たな脂質マーカーによる心血管疾患リスクの予測能改善はわずか

心血管疾患発症の予測因子として、総コレステロール、HDLコレステロール、年齢や性別、喫煙の有無など従来リスク因子に、アポリポ蛋白B/A-Iといった脂質マーカーの情報を加味しても、同発症リスクの予測能はごくわずかな改善であったことが示された。英国・ケンブリッジ大学のJohn Danesh氏らが、約17万人を対象にした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年6月20日号で発表した。初回心血管疾患イベント発生予測に、様々な脂質マーカーの測定がどれほど役立つかという点については議論が分かれていた。中央値10年追跡、その間の心血管疾患イベントは約1万5,000件研究グループは、1968~2007年に行われた37の前向きコホート試験のデータを用い、試験開始時点で心血管疾患のない16万5,544人について、従来のリスク因子に脂質マーカーを加えることによる、心血管疾患リスク予測の改善について分析した。追跡期間の中央値は10.4年(四分位範囲:7.6~14)、その間に発生した心血管疾患イベントは1万5,126件(冠動脈性心疾患1万132件、脳卒中4,994件)だった。主要アウトカムは、心血管疾患イベント発生の判定と、10年発生リスクについて低リスク群(10%未満)、中間リスク群(10~20%)、高リスク群(20%以上)の3群への再分類改善率だった。新たな脂質マーカー追加、ネット再分類改善率は1%未満結果、新たな各脂質マーカーの追加による判別モデルの改善はわずかで、アポリポ蛋白B/A-Iの追加によるC統計量の変化は0.0006(95%信頼区間:0.0002~0.0009)、リポ蛋白(a)は0.0016(同:0.0009~0.0023)、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2は0.0018(同:0.0010~0.0026)だった。新たな各脂質マーカーの追加による、心血管疾患発生リスクのネット再分類改善率についても、いずれも1%未満に留まった。従来リスク因子のみで分類した結果、40歳以上成人10万につき1万5,436人が、10%未満および10~20%のリスク階層群に分類されると推定された。そのうち、米国高脂血症治療ガイドライン(Adult Treatment Panel III)に基づきスタチン治療が推奨される人を除外して残った1万3,622人について、アポリポ蛋白B/A-Iの検査値を加えた場合に20%以上の高リスク群へと再分類された割合は1.1%だった。リポ蛋白(a)を加えた場合は4.1%、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2を加えた場合は2.7%だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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データバンクでアルツハイマー病の治療実態が明らかに―仏BNA調査―

急速に超高齢社会に突入したわが国において、認知症診療のスキルは専門医だけでなく、かかりつけ医にも求められるようになってきた。2011年に新規抗認知症薬が次々と承認され、今後の薬物療法に関して議論が行われている。Tifratene氏らはデータバンクを活用し、フランス国内のアルツハイマー病(AD)の薬物療法の現状とその治療がフランスのADガイドラインに準じているかを検討した。その結果、ADのデータバンクがADの診療や関連疾患診療に有益な情報をもたらすことを、Pharmacoepidemiol Drug Saf誌オンライン版2012年6月20日付にて報告した。2010年にフランスのアルツハイマーデータバンク(BNA)に登録された191,919例を横断的に分析し、ADと診断された患者(29.9%)と対象期間で少なくとも1つ以上の認知機能検査(MMSE)スコアを示した患者26,809例を検討した。主な結果は以下のとおり。 ・76.9%の症例において、抗AD治療薬が投与されていた。・アセチルコリンエステラーゼ阻害剤単独投与が48.3%、メマンチン単独投与が14.2%、併用投与が14.4%であった。・20.7%の症例はガイドラインに準じた治療が行われておらず、低いMMSE平均スコア(13.6 vs 18.0、p

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「症状出現」からの時間 と 「来院」からの時間。 臨床転帰に与える影響は?: CREDO-Kyoto

直接的経皮的冠動脈インターベンション(Primary PCI)は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の治療において中心的な役割を果たし、「症状出現」や「来院」からバルーン拡張までを短時間で行うことが米国や欧州のガイドラインで推奨されている。しかし、これまで、「来院」からの時間の短縮化に関しては、否定的な結果も報告されてきた。今回、わが国の大規模コホート研究CREDO-Kyoto AMI investigatorsから、PCIを施行したST上昇型心筋梗塞(STEMI)例において、「症状出現」から初回バルーン拡張までの短時間化は、3年臨床転帰を良くするが、「来院」から初回バルーン拡張までの短時間化による利益は、「症状出現」からの時間が短い患者に限られることが、報告された。研究グループは、臨床転帰を改善するためには、「症状出現」からバルーン拡張までの短時間化が推奨されると結論した。BMJ誌オンライン版2012年5月23日掲載の報告。対象は、わが国の3次救急病院26施設で治療された症状発現24時間以内にPrimary PCIを施行したSTEMI 3,391例とした。主要エンドポイントは、死亡、慢性心不全の複合エンドポイントに設定された。主な結果は以下のとおり。 ・「症状出現」から初回バルーン拡張までの時間で比較すると、バルーン拡張までの時間が3時間未満の患者は、3時間以上の患者と比較して、死亡とうっ血性心不全の複合エンドポイントが有意に低かった〔相対リスク減少29.7%、13.5%(123/964) vs 19.2%(429/2,427)、P

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閉塞性睡眠時無呼吸症候群、持続気道陽圧療法で高血圧リスク低下

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は高血圧発症リスクを増大するが、持続気道陽圧療法(CPAP)によりそのリスクが低下することが、明らかにされた。スペイン・Miguel Servet大学病院のJose M. Marin氏らが約12年間追跡した前向きコホート研究の結果による。OSA患者では高血圧を呈する人が大勢を占める。これまで短期試験では、CPAPが同患者の高血圧リスクを低下することは示されていた。JAMA誌2012年5月23・30日合併号掲載報告より。高血圧を伴わない1,889例のOSAまたは非OSA患者を中央値12.2年追跡研究グループは、1994年1月1日~2000年12月31日に終夜睡眠ポリグラフィ検査のために受診した高血圧を伴わない1,889例について、2011年1月1日まで追跡し、高血圧発症について調べた。追跡期間は中央値12.2年、総計2万1,003人・年だった。基線から高血圧発症が認められた時点までのBMI変化値などの交絡因子で補正した多変量モデルで、非OSA患者(対照)群、未治療OSA患者群、国のガイドラインに基づくCPAP治療を受けた非OSA・OSA患者群の高血圧発症ハザード比(HR)を算出した。主要評価項目は、新規高血圧発症とした。CPAP治療群のみ、補正後ハザード比0.71と低下を示す高血圧発症例は705例(37.3%)だった。100人・年当たりの高血圧発症率は、対照群2.19(95%信頼区間:1.71~2.67)、OSA患者・CPAP治療非適用群3.34(同:2.85~3.82)、OSA患者・CPAP治療辞退群5.84(同:4.82~6.86)、OSA患者・アドヒアランス不良群5.12(同:3.76~6.47)、OSA患者CPAP治療群3.06(同:2.70~3.41)だった。補正後、対照群と比較して高血圧発症は、OSA患者・CPAP治療非適用群(オッズ比:1.33、95%信頼区間1.01~1.75)、OSA患者・CPAP治療辞退群(同:1.96、1.44~2.66)、OSA患者・アドヒアランス不良群(同:1.78、1.23~2.58)で高かったが、OSA患者CPAP治療群では低下した(同:0.71、0.53~0.94)。

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神経内科医の注目が集まる「てんかん診療」高齢者のてんかん患者が増加!

第53回日本神経学会学術大会(5月22日~25日、東京国際フォーラム)における共催セミナー(グラクソ・スミスクライン株式会社)にて、産業医科大学 辻 貞俊氏が「高齢者てんかんについて」と題して講演した。高齢者てんかん患者は50万人以上てんかんは小児および若年者での発症が多い疾患である。一方、加齢に伴う中枢神経疾患は、高齢者におけるてんかんの新規発症の原因となる。高齢者のてんかんは若年者のものとは病態が異なり、若年者とは異なった治療が必要となる。わが国では急速な高齢化に伴って、このような高齢発症のてんかん患者が増えており、若年発症てんかん患者のキャリーオーバーともあいまって、高齢世代のてんかん患者が増加している。高齢者てんかん(65歳以上で発症)は対人口比2~7%と言われており、患者数は50万人程度と推定される。診断が難しい、高齢者てんかん高齢者てんかんは脳血管障害や脳腫瘍、認知症などを原因とする症候性てんかんである。約1/3は脳波が正常であり、鑑別診断が難しい。そのため、高齢者てんかんの特徴を理解し、診断・治療を行うことが求められる。中でも最も重要なのが「失神」である。失神は70歳以上の約23%が経験するともいわれている。また、神経疾患(TIA、TGAなど)、循環器疾患、代謝・内分泌疾患、睡眠時行動異常、心因性非てんかん性発作などとの鑑別を行う必要がある。高齢者てんかんの特徴は、・複雑部分発作、過運動発作が多い・約1/4は鑑別が難しく、診断できない(約1/3は脳波正常)・部分てんかん(側頭葉てんかん、前頭葉てんかんが大部分)が最も多い・二次性全般発作が少ないため見逃されている可能性が高い・発作後のもうろう状態が数時間~数日続くことがある・非特異的な症状(ボーとした状態、不注意、無反応など)が多い  などである。高齢者てんかんは抗てんかん薬単剤で奏功率約80%高齢者てんかんは診断が難しい側面はあるものの、薬物療法による奏効率は高く、比較的予後は良好である。ただし、再発率は高く、再発による患者の心理的負担を考慮し、初回発作時から薬物療法を開始することが推奨される。高齢者てんかんの薬物療法のポイントは以下のとおりである。・初回発作時から薬物療法を開始する・相互作用に注意し、少量から投与を開始する・米国ガイドラインでは部分発作の場合、合併症がなければカルバマゼピン、ラモトリギンの順、合併症があればレベチラセタム、ラモトリギンの順、全般発作の場合はラモトリギン、バルプロ酸の順で推奨されている・約80%は単剤にて効果が認められている(成人の投与量より少量)・海外データによると新規抗てんかん薬は発作軽減に有効である・長期にわたり治療を継続することが重要であるまとめ 高齢者てんかんが増加している現状を踏まえ、神経内科医によるさらなるてんかん診療の推進が求められる。また、発症後6年以上経過した認知症患者ではてんかん発作の発現率が一般の5~10倍に増加するともいわれており、注意が必要である。辻氏は「まずは、正確な診断、そして積極的な治療を行ってほしい」と締めくくった。(ケアネット 鷹野 敦夫)

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高齢者介護施設での身体拘束、ガイドラインや行動理論による介入で減少

高齢者介護施設(nursing home)に対し、ガイドラインや行動理論による介入を行うことで、身体拘束を受ける入所者の割合が減少することが示された。ドイツLubeck大学のSascha Kopke氏らが、36ヵ所の高齢者介護施設について行った集団無作為化試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年5月23・30日合併号で発表した。ドイツでは、身体拘束は法的に規制されており、また身体拘束の有効性と安全性についてエビデンスがないにもかかわらず、多くの高齢者介護施設でいまなお行われている現状だという。また米国の高齢者介護施設では20%で身体拘束が行われているとの報告もあるという。入所者の2割以上が身体拘束を受ける、36施設について無作為化試験研究グループは、2009年2月~2010年4月にかけて、高齢者介護施設36ヵ所を無作為に2群に分け試験を行った。試験適格とされた施設では、入所者の2割以上が身体拘束を受けていた。対象施設の一方の群(18施設、入所者数2,283人)にはエビデンスに基づき作成されたガイドラインおよび計画的行動理論に基づく介入を行い、もう一方の群(18施設、同2,166人)は対照群として特別の介入は行わなかった。介入を行った施設に対しては、看護職員に対するグループセッション、一部の看護師に対する追加的訓練、看護師や入所者、親戚などに対する教育的資料の配布などを行った。対照群には、一般的な情報を提供した。身体拘束を受ける割合、介入群は対照群より6.5%ポイント低率主要アウトカムは、試験開始から6ヵ月時点の、ベッド両側柵、ベルト、固定テーブルの設置、その他自由な行動を規制する仕掛けを用いた身体拘束を受けている入所者の割合とした。評価は、覆面調査員による1日3回の直接的評価で行われた。調査を開始したすべての施設で調査は完遂し、被験者全員について追跡を完了することができた。調査開始時点で、身体拘束を受けていた入所者の割合は対照群が30.6%、介入群では31.5%と同等だった。6ヵ月時点の同割合は、対照群が29.1%に対し、介入群では22.6%と有意に低率で、絶対格差は6.5%だった(95%信頼区間:0.6~12.4、クラスター補正後オッズ比:0.71、同:0.52~0.97、p=0.03)。同割合は、3ヵ月時点から6ヵ月時点に安定的に推移していた。転倒や転倒による骨折、向精神薬の処方率について、両群で有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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「双極性障害に対する薬物療法レビュー」世界精神医学会(WPA)での報告

Fountoulakis氏らは2012年3月10までに更新された双極性障害に対する薬物療法に関するランダム化比較試験のシステマティックレビューをおこなった。Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci誌オンライン版2012年5月24日掲載の報告より。主な結果は以下のとおり。 ・急性躁症状に対しリチウム、第1世代抗精神病薬、第2世代抗精神病薬、バルプロ酸、カルバマゼピンが有効であることが示唆された。・クエチアピンとオランザピン/フルオキセチンの併用は双極性障害のうつ症状に対し有効である。・抗躁薬の単剤投与を目指し、抗うつ薬は併用のみで使用した方が良い。・リチウム、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールは維持治療期に有効である。・ラモトリギンはうつ症状の予防に有効である。また、躁症状への有効性は明らかになっていない。・薬物療法の補助療法として心理社会的介入が有効であるとも報告されている。・電気ショック療法は難治例でのオプションとなりうる。・リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンに対し部分奏効した急性躁病患者では抗精神病薬の併用が効果的である。・急性双極性うつ病に対しリチウム+ラモトリギンは最良の選択肢である。・単剤治療移行中の悪化時にみられる急性症状に対しオランザピン、バルプロ酸、抗うつ薬、ラモトリギンの併用は有効である。著者は最後に、「双極性障害に対する治療選択肢は増えてきたが、まだ十分ニーズを満たしているとはいえない。併用療法をおこなうことで転帰の改善が期待できるようになったが、一方で副作用も問題となっている。今後、段階的かつ合理的な治療をおこなうためにガイドラインやアルゴリズムが整備されることを願う」としている。(ケアネット 鷹野 敦夫)

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CKD診療ガイド改訂 -慢性腎臓病(CKD)は原疾患、腎機能と尿所見でリスク評価を-

日本慢性腎臓病対策協議会(東京都文京区、理事長:槇野博史、J-CKDI)は、1日、CKD診療に関して、かかりつけ医の標準化と腎臓専門医の連携を目的とした「CKD診療ガイド2012」を発行した。「CKD診療ガイド」は、2009年以来3年ぶりの改訂となる。本ガイド改訂委員長の今井圓裕氏は、今回の最も大きな改訂点として、CKDの重症度分類が腎機能だけでなく、原疾患、尿所見を評価した分類に変更されたことを挙げ、その他、血圧管理、貧血管理が臨床上に影響を及ぼす点として掲げた。最大の改訂点となった重症度分類の変更は、わが国でなく、国際腎臓病ガイドライン(KDIGO)も同様の見直しを行なっていると今井氏は言う。従来は糸球体濾過量(G = GFR)を基にした腎機能のみで評価してきたが、尿蛋白・尿アルブミン値(A = Albumin)、原疾患(C = Cause)を加えたいわゆるCGA分類で評価する。これはアルブミン尿や蛋白尿が、腎機能とは独立して末期腎不全、心血管死の発症リスクであることを示すエビデンスが確立してきたため。病期は4つに区分され、リスクに応じて腎臓専門医への相談・紹介基準や、腎臓専門医への通院間隔が推奨されている。次に注目すべき改訂点は、血圧管理。CKDにおける血圧管理については国際的に基準が変わってきており、現在の降圧目標レベルが過剰であると捉えられつつあると今井氏は述べた。これまでの蛋白尿が1g/日以上を認めるCKD患者の降圧目標値は「125/75mmHg未満」が推奨されてきたが、今回の改訂により撤廃され、「130/80mmHg以下」に統一された。高齢者においては、「140/90mmHg未満を目標に降圧し、腎機能悪化や臓器の虚血症状がみられないことを確認し、130/80mmHg以下に降圧する、収縮期血圧110mmHg未満への降圧は避ける」とさらに慎重な構え。特に夏期、RA系阻害薬投与例において、過降圧を来たし、急性腎障害で搬送される例も少なくないことも例に挙げ、高齢者における過降圧に注意を喚起した。また、推奨する降圧薬については、糖尿病and/or蛋白尿が認められる場合は、従来どおりRAS阻害薬を第一選択薬とすることは変わりないが、糖尿病も蛋白尿もみられないCKD例においては、降圧薬の種類を問わないことが記述された。貧血管理の改訂も注目すべき改訂点と言える。前回の改訂があった2009年以降、貧血の改善が臨床転帰につながらなかった試験が発表された。遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤の投与については、「投与開始Hb値=10g/dL、治療目標Hb値=10~12g/dL、13g/dLを超えないよう配慮する」と基準を明記している。今回の改訂において、「重症度分類の変更」が意味するところは、蛋白尿、アルブミン尿が末期腎不全、心血管死の独立した危険因子であるものとして捉え、尿検査を定期的に実施していくことの重要性を促すものと捉えている。(ケアネット 藤原 健次)

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「今後の透析医療を考える」プレスセミナーレポート

2012年5月31日、「今後の透析医療を考える」と題したプレスセミナー(バイエル薬品株式会社主催)が開催された。第1部として、秋澤忠男氏(昭和大学医学部 腎臓内科教授)が、「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドラインによって変わる透析医療」を、第2部として、宮本高宏氏(全国腎臓病協議会 会長)が、「透析患者の治療における実態とガイドライン改訂への期待」を講演した。その内容をレポートする。「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドラインによって変わる透析医療」 わが国の透析患者に対する治療は、世界でトップレベルにあり、日本の透析患者の死亡リスクは、米国の1/4、欧州の1/2.5である。しかし、一般人と比較すると透析患者の余命は半分で、とくに心不全などの脳・心血管系疾患による死亡リスクが高くなっている。この原因として、血中リン(P)濃度による血管の石灰化が考えられる。 日本透析医学会は、この度、慢性腎臓病に伴う『骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン(CKD-MBD)』を発表した。CKD-MBDは、2006年に発表されたガイドラインの改訂版で、主な変更点は、以下の通りである。○対象を透析患者だけでなく、保存期や移植期のCKDや小児CKDに拡大する○血管石灰化や透析アミロイドーシスなどの病態を加える○新規治療薬の評価・使用法を加える○エビデンスレベル評価とガイドライン推奨度を明示する また、CKD-MBDでは、P、カルシウム(Ca)、副甲状腺ホルモン(PTH)の管理目標値も示されるとともに(P:3.5-6.0 mg/dL、Ca:8.4-10.0 mg/dL、PTH:60-240 pg/mL)、P、Caの管理を優先することが推奨されている。そして、管理方法としては、炭酸Ca、Ca非含有P吸着薬、活性型ビタミンD、副甲状腺作動薬を組み合わせて管理目標を達成する『9分割図』といわれる方法が提唱されている。 演者の秋澤氏は、「CKD-MBDを活用したPの適切な管理が、透析患者の予後向上につながることを期待したい」として、講演を終えた。「透析患者の治療における実態とガイドライン改訂への期待」 透析患者を対象とした治療に関する調査結果が発表された。調査は、2012年4月に、インターネットで実施され、人工透析を受けている患者200名から回答を得た。主な調査結果は以下の通りである。○透析患者の不安項目としては、合併症への不安(73%)が最も多く、とくに、循環器疾患への不安を覚えている人が多かった。○透析の治療に関するガイドラインは、約40%の人が認知していた。○ガイドラインに沿った治療を希望する人は、60%であった(わからない:34%)。○自分の服用している薬に対する意識調査では、薬について十分理解している人が91%おり、自分で調べたり勉強している人の割合も73%であった。 演者の宮本氏は、自らも30年来の透析患者であることを明かしたうえで、透析患者の医療費負担に触れた。「透析にかかる医療費は年間約1兆5千万円で、国の医療財政を圧迫しているが、患者の自己負担額はほぼゼロに近い。この事実を鑑み、患者は、自分達が提供してもらっている医療に感謝し、自ら食事療法などの自己管理をしっかりと行うことが必要である」と強調した。

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血管疾患の低リスク例に対するスタチンによるLDLコレステロール低下の効果:17万超患者データのメタ解析

27の無作為化試験の個々データをメタ解析した結果、スタチンによる治療は、血管疾患の低リスク例でも、ベネフィットが大きいことが、Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboratorsにより発表された。5年主要血管イベント発症リスクが10%未満の患者において、LDLコレステロール1 mmol / Lの低下は、5年間で1,000人あたり約11人の主要血管イベントの絶対的減少を招き、この利益は、スタチン療法の危険性を超えているとされた。現在のガイドラインは、概して、血管イベントリスクの低い患者は、LDL低下療法に適しているとはされていないが、研究グループは「今回の報告は、これらのガイドラインに再考の必要性があることを示唆している」と主張した。対象は、スタチン治療をコントロールと比較した22試験(134,537例)およびスタチン間で比較した5試験(39,612例)を対象とし、それを、基線における5年主要冠動脈イベント発症リスクで5つのカテゴリに分けた(~5%, 5~10%、10~20%, 20~30%, 30%~)。主要血管イベントは、主要冠動脈イベント、脳卒中、冠動脈血行再建術の施行とした。主な結果は以下のとおり。 ・スタチンによるLDL低下は、年齢、性別、ベースラインLDLコレステロール値に関係なく、主要血管イベントを低下させた[1.0mmol/LあたりRR 0.79 (95%信頼区間 0.77-0.81)]。また、血管死、全死亡も低下した。・イベントリスクの低い2つのカテゴリにおける主要血管イベントの減少は、イベントリスクのより高いカテゴリにおけるイベント減少と同程度に大きかった。1mmol/LあたりRRは、低リスクカテゴリから高リスクに向け順に、0.62(95%信頼区間:0.47-0.81)、0.69 (0.60-0.79)、0.79 (0.74-0.85)、 0.81 (0.77-0.86)、0.79 (0.74-0.84)。傾向性p=0.04。・イベントリスクの低い2つのカテゴリにおいて、主要冠動脈イベント[同 0.57(0.36-0.89)、0.61(0.50-0.74)]および冠動脈再建術[(同0.52(0.35-0.75)、0.63(0.51-0.79)]が有意に減少していた。・脳卒中は、5年主要血管イベント発症リスクが10%未満の対象者でも、リスクの高いカテゴリのリスクリダクションに類似していた[同0.76(0.61-0.95)](傾向性p=0.3) 。・スタチンによるLDLコレステロール低下において、がんの発症[同1.00(0.96-1.04)]がん死亡[(同0.99(0.93-1.06)]、血管以外の死亡に増加は認められなかった。(ケアネット 鈴木 渉)

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