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教授 富田剛司 先生「全身の疾患が眼に現れることは明確 眼を診るのは診断の第一歩である」

1955年2月4日生まれ。80年岐阜大学医学部卒業。専門分野は眼科で主に緑内障。86年緑内障学研究のため米国留学。92年客員研究員としてフィンランド留学。93年岐阜大学医学部眼科講師。99年東京大学医学部眼科助教授。07年東邦大学医療センター大橋病院眼科診療部教授就任。日本緑内障学会理事、データ解析委員会委員、ガイドライン作成委員会委員。眼科医の魅力眼科医というのは自分で所見を取って、そのまま自分で治療ができます。外科疾患ですと最初は内科で診断を受けても、腫瘍が発見された場合、薬物治療以外は外科医の担当となります。ですが、眼科は診断から治療まで一貫して担当することができるのです。眼科というと全身を診る医師のイメージから離れているので魅力を感じないという医学生もいますが、実は私もそう考えていました。眼底にはいろいろな変化が現れてきますので、それを診て今までわからなかった身体の状態、もしくは病気が発見されることが多々あります。眼底の変化から高血圧や糖尿病などが発見されることも多いのです。これらの病気を眼科医に指摘されて、あらためて内科を受診することは少なくありません。循環器内科の先生や生活習慣病などを専門にしている先生からは「眼科医が常駐していない病院は不安だ」という意見を聞いたこともあるほど、内科医の先生方からは頼りにされていると自負しています。医師にとって眼を診るのは診断の第一歩であり大切な所見過程の一つです。しかし、私見ではこのような診断方法が多少なりとも軽視されているのではないかと危惧していますし、眼の所見を取らない医師がいることについては嘆かわしいことと思っています。人は眼をつぶると80%の情報量がさえぎられるそうです。哲学的にいうと、眼を診ているというのは存在すべてをみている。このような意味でも、眼科医は誇りを持ってよいと思います。眼の診断からわかることたとえば眼底出血の場合、網膜の浅い部分からの出血であれば、視神経の疾患を疑うか、高血圧症や動脈硬化症などの疾患も考えられます。また、深い層からの出血であれば糖尿病や貧血、白血病などが疑われます。このように全身疾患が眼に現れることは明確です。さらに、がんの転移が眼に現れてわかる場合もあります。「眼が見え難くなった」という症状を訴えて来診した患者さんの場合、明らかに眼が原発の腫瘍ではない腫瘍が認められました。これは身体のどこかに悪性腫瘍があるに違いない、となって内科系の検査をしたところ、がんが発見された例がありました。また、自覚症状はなく、健康診断ということで視野検査をしたところ異常がみつかりましたが、それは眼の異常でないことは明白で、結果、脳腫瘍が発見された例もありました。視野の欠損にはパターンがあって、眼病からなるものとそうでないものは明確にわかります。このようなケースがままあるので、眼科学会としては40歳を過ぎたら年に一度は眼の検診を受けてほしい旨を推奨しています。「眼は心の窓」といいますが、極端にいえば病態を知るための身体の窓でもあるのです。40歳以上は20人に1人が罹患する緑内障緑内障は眼圧の影響を強く受けて視神経が障害される疾患で、なかなか完治させることが難しい病気です。放置すれば、重篤な視覚障害をもたらします。ですから、早期に発見し眼圧を下げて軽度のうちに進行を止めることが重要です。近年40代以上の20人に1人は緑内障があるともいわれるほど身近な病気ですので、何らかの理由で眼科を受診した患者さんの中に緑内障を疑われる人は意外と多いのです。また、急性緑内障の場合は激烈な症状として、強い頭痛、嘔吐など内科的発作が現れます。これらの症状を訴えて救急に行った場合、たいていは脳出血などを疑ってCTやMRIの検査をします。その後症状が落ち着いたら、脳神経外科の受診を勧められるでしょう。しかし、まったく眼の診断がなされず、緑内障も疑われなかったために、治療が遅れて残念な結果になってしまった例も少なからずあります。どの科の専門であっても医師ならば必ず眼科の講義は受けているはずですが、眼の疾患がおざなりになっている現状を危惧せずにはいられません。緑内障診断の正確性を高めたい緑内障は眼球の内圧により、視神経が圧迫または障害されて、視野狭窄や視力が低下する病気です。検査は眼圧測定、視野検査、眼底検査が行われますが、日本人の場合、眼圧は正常なのに視神経が障害される「正常眼圧緑内障」が多いので、早期発見のためには視神経乳頭の状態をみる眼底検査が重要です。しかし、従来の眼底検査は平面写真で診断するため、視神経乳頭の凹み具合の判定は、眼科医の技量・経験によって判断が異なるという問題がありました。私が研究の主体としているのは、誤診が多いとされている緑内障の診断について、これをより正確にするための標準化――スタンダリゼーションを目指しています。そこで、客観的かつ的確に眼底を診断する手段として生まれたのが、眼底三次元画像解析装置です。これはまだ完成には至っていませんが、緑内障の診断が得意ではないような方、または緑内障との判断が難しい場合や自信がない場合、装置の結果をみることによって判断材料が増えると考えています。補助的な診断材料としては有効であると思います。もちろん、機械ですべて判断できればそれに越したことはありませんが、それはこれからの課題です。適切に診断し、適切に治療することが難しい病気であることは認識しておりますので、経験を積んだ指導医のもとで学ぶことが必要だと考えております。また、これは緑内障学会としてきちんとした指導システムを構築しなければいけないのではないかとも考えております。医学生の皆さんへ白内障の手術であれば自らの執刀が20件以上、助手であれば100件以上の実績が前提になりますが、ほとんどの人が後期研修医から5~6年で専門医になれます。眼科医は視覚が何らかの理由によって衰えた患者さんが、自分の診断、治療によって治癒していくのをつぶさに確認できる。私自身もそうでしたが、医師となって比較的早い時期に達成感を得られる可能性が高いと思います。研修を始めてから10年ほどで患者さんを満足させる十分な医療技術を身につけることができるのは、眼科医ならではの特徴です。さらに、マイクロサージェリーは実体顕微鏡(マイクロスコープ)を使うため老眼の影響を受けないので、現役でいられる時間が長いのです。医師にはなりたいけど手術には向いていないという人ならば、網膜の病気であってもレーザー治療などメスを持たない眼科の診療もあります。逆に、自分は手術が好きだという人であったら、それを主に選択することもできるのです。医学生の皆さんは、とかく近い未来しか考えていない面があり、20年後、30年後の自分のビジョンを持っている人は少ないようです。長い目でみた場合、眼科ほど息が長く医師としての活動が行える分野はないように思えます。また、家庭の事情があって出産などによる数年のブランクがあっても復帰しやすいのも眼科医です。当大学の眼科で行っている最新治療としては、網膜黄斑症などの疾患に対して、硝子体の手術を行うのですが、その後、眼の中に空気を入れて穴を塞ぎます。その場合、術後1週間はうつ伏せ状態でいなくてはなりませんでした。これは患者さんにとって大変な負担です。そこで、うつぶせ状態でなくてもよい状態の研究を始めています。また、学術活動にも力を入れており、国内学会での研究発表はもとより、海外での国際学会にも積極的に参加し、高い診療レベルを維持するよう努めています。質問と回答を公開中!

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院外心肺蘇生におけるリアルタイム音声画像フィードバックシステムの有効性

院外心配蘇生(CPR)中のリアルタイム音声画像フィードバックシステムは、その手技をガイドラインにより即したものへと変化させることは認められたが、自己心拍再開やその他臨床転帰の改善には結びつかなかったという。米国・ピッツバーグ大学救急医学部のDavid Hostler氏らが、前向き集団無作為化試験を行った結果から報告した。BMJ誌2011年2月12日号(オンライン版2011年2月4日号)より。CPRの手技は改善されたが試験は、院外CPR中のリアルタイム音声画像フィードバックシステムを実行することによって、病院到着前に自己心拍再開する患者の比率が高まるかが検討された。Hostler氏らは、米国とカナダの蘇生転帰協会(Resuscitation Outcomes Consortium)に加入する3地域の救急医療サービスを対象に、モニター付き除細動器に取り付けられたリアルタイム音声画像フィードバックシステムを使ったCPRによる介入を行った。被験者は、救急隊員によって院外CPRが試みられた心停止患者1,586例で、フィードバックありが815例、なしは771例だった。ベースラインにおける患者および救急医療サービスの特徴に群間差はなかった。主要評価項目は、CPR後の病院到着前の自己心拍再開率とした。試験の結果、フィードバック中に救急隊員の14%がフィードバック音を消していることが示された。また、フィードバックなし群と比較して、フィードバックあり群の方が、心臓マッサージ継続時間が増加(64%対66%、群間補正後差:1.9、95%信頼区間:0.4~3.4)、圧迫の深さが増加(38mm対40mm、補正後差:1.6、95%信頼区間:0.5~2.7)、圧迫後の不完全リリースの減少(15%対10%、補正後差:-3.4、95%信頼区間:-5.2~-1.5)との関連が認められた。自己心拍再開率、生存退院率とも改善に結びつかずしかし、到着前自己心拍再開率は、フィードバックの有無における有意な差は認められなかった(45%対44%、補正後差:0.1%、95%信頼区間:-4.4%~4.6%)。同様に、病院到着時に脈拍あり(32%対32%、補正後差:-0.8、95%信頼区間:-4.9~3.4)、生存退院率(12%対11%、補正後差:-1.5、95%信頼区間:-3.9~0.9)退院時覚醒率(10%対10%、補正後差:-0.2、95%信頼区間:-2.5~2.1)においても有意差は認められなかった。

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心房細動患者のリスク層別化にはCHA2DS2-VAScスコアの方が優れる

心房細動患者のリスク層別化に、CHA2DS2-VAScスコアがCHADS2スコアよりも優れることが報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院循環器部門のJonas Bjerring Olesen氏らが、デンマーク国内登録心房細動患者データをベースにコホート研究を行った結果による。CHADS2スコアは脳卒中リスクの層別化に最もよく用いられてきたが、その限界も指摘され、2006年以降のACC・AHA・ESC各ガイドラインでは、その他リスク因子を加味することが示され、その後エビデンスが蓄積しCHA2DS2-VAScスコアとして示されるようになっていたという。BMJ誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月31日号)掲載の報告より。7万3,538例を対象に、CHADS2とCHA2DS2-VAScの血栓塞栓症の予測能を評価研究グループは、CHADS2スコアのリスク因子(うっ血性心不全、高血圧、≧75歳、糖尿病、脳卒中既往)と、CHA2DS2-VAScスコアのリスク因子(CHADS2因子に加えて、血管系疾患、65~74歳、性別、また75歳以上で脳卒中既往の場合はリスクの重みづけを倍加する)を評価し、いずれが血栓塞栓症の予測能に優れるシェーマかを検証することを目的とした。対象とした被験者は、1997~2006年にデンマーク国内データベースに登録された、ビタミンK拮抗薬を服用していなかった心房細動患者で、非弁膜症性心房細動患者12万1,280例のうち、適格であった7万3,538例(60.6%)を対象に検証を行った。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓症であった。10年追跡時点のC統計量、CHADS2スコア0.812、CHA2DS2-VAScスコア0.888低リスク群(スコア0)における1年追跡時点での血栓塞栓症発生率は100人・年当たり、CHADS2では1.67(95%信頼区間:1.47~1.89)であったのに対し、CHA2DS2-VAScでは0.78(同:0.58~1.04)であった。中等度リスク群(スコア1)においては、同CHADS2スコアでは4.75(95%信頼区間:4.45~5.07)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアでは2.01(同:1.70~2.36)だった。これら発生率について示されたパターンは5年、10年追跡時点でも同様の結果が示された。また高リスク群はいずれのスコアも同じように、低・中等度リスク群よりも著しく高率な血栓塞栓症の発生を示した。血栓塞栓症の発生率は、スコアを構成しているリスク因子に依り、また両スコアとも血栓塞栓症イベントの既往に関連するリスクは過小に評価することが認められたという。低・中・高の各リスク群に層別化された患者の10年追跡時点でのC統計量は、CHADS2スコアが0.812(95%信頼区間:0.796~0.827)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアは0.888(同:0.875~0.900)であった。

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脂質モニタリングによる服薬不履行の検出

コレステロール値のモニタリングは、プラバスタチン(商品名:メバロチンなど)治療における完全服薬不履行(complete non-adherence)の検出にある程度は有効だが、部分的服薬不履行(partial non-adherence)の検出能は劣ることが、オーストラリア・シドニー大学のKaty J L Bell氏らの検討で示された。脂質低下薬の服薬遵守(adherence)には患者間にばらつきがみられる。ガイドラインでは、コレステロール値をモニターすることで服薬不履行を評価するよう勧告しているが、脂質モニタリングによる服薬不履行の検出能は不明だという。BMJ誌2011年1月29日号(オンライン版2011年1月21日号)掲載の報告。LIPID試験のデータを用いた解析研究グループは、脂質低下薬治療の服薬不履行の検出におけるコレステロール値モニタリングの正確度(accuracy)を評価するために、服薬不履行に関する三つの評価項目(治療中止、プラセボ群への割り付け、処方薬の服薬率80%未満)を用いて、LIPID(long term intervention with pravastatin in ischaemic disease)試験のコレステロール値に関する2回目の解析を行った。オーストラリアとニュージーランドで実施されたLIPID試験は、冠動脈心疾患の既往歴を有し、総コレステロール値が4.0~7.0mmol/L(≒154.8~270.9mg/dL)の9,014人を対象にプラバスタチン40mg/日とプラセボの有用性を比較する無作為化試験。今回の解析の主要評価項目は、コレステロール値のモニタリングによる服薬不履行検出の感度、特異度、受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)、検査後確率であった。あくまで補助データとして考慮すべきコレステロール値のモニタリングにより、完全服薬不履行がある程度は検出可能であった。治療開始1年の時点で、完全服薬不履行者の50%(1,957/3,937人)、服薬遵守者の6%(253/3,944人)においてLDLコレステロール値が上昇しており、中等度の正確度が得られた(AUC:0.89)。一方、部分的服薬不履行の検出能は低かった。治療1年後にLDLコレステロール値の上昇がみられたのは、部分的服薬不履行者の16%(34/213人)、服薬遵守者では4%(155/3,585人)にすぎず、正確度は劣っていた(AUC:0.65)。服薬不履行の典型的な検査前確率が低(25%)~高(75%)の範囲であったのに対し、脂質測定後の検査後確率については不確定性が持続することが示された。すなわち、LDLコレステロール値に変化がみられない場合、完全服薬不履行者の検査後確率は67~95%で、部分的服薬不履行者では48~89%であった。LDLコレステロール値が1.0mmol/L(≒38.7mg/dL)低下した場合は、完全服薬不履行者の検査後確率は7~40%、部分的服薬不履行者では21~71%であった。著者は、「LDLコレステロール値(あるいは総コレステロール値)のモニタリングは、プラバスタチン治療における完全服薬不履行あるいは服薬中止の検出に中等度の有効性を示したが、部分的服薬不履行の検出能は劣っていた」と結論し、「モニタリングの結果は、患者の服薬遵守状況を慎重に検討する際の補助データとしてのみ考慮すべきであろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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院外心停止に対するACD-CPR、標準的CPRよりも有効

院外心停止例に対する能動的圧迫-減圧心肺蘇生法(ACD-CPR)は、標準的CPRよりも神経機能温存退院率および1年生存率が優れることが、アメリカ・ウィスコンシン医科大学救急医療部のTom P Aufderheide氏らが行った無作為化試験で示された。ACD-CPRは、1)胸部に吸着させる吸引カップ、2)胸部の押し下げ/引き上げ用のハンドル、3)80拍/分にセットされた可聴式メトロノーム、4)操作中に圧迫、減圧の程度を表示するゲージからなる携帯式医療機器で、インピーダンス閾値弁装置(より効果的に心臓に陰圧をかけるための装置)を併用するとより高い効果が得られるとされる。胸骨圧迫が解除された拡張期圧に胸腔内圧の陰圧が増強された状態でACD-CPRを施行すると、標準的なCPRに比べ良好な血行動態が得られる可能性があるという。Lancet誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月19日号)掲載の報告。退院時の良好な神経機能温存率を評価する無作為化試験研究グループは、院外心停止に対するACD-CPRが、良好な神経機能を温存した生存に及ぼす効果および安全性を評価する多施設共同無作為化試験を実施した。アメリカの都市部、都市周辺部、地方部の46の救急医療施設(地域住人:230万人)において、院外心停止患者のアウトカムをUtsteinガイドラインに準拠して評価した。対象患者は、標準的CPRあるいはインピーダンス閾値弁装置で胸腔内圧の陰圧を増強させた状態でACD-CPRを施行する群に無作為に、暫定的に割り付けられた。心臓が原因と推定される非外傷性の心停止で、初期的および最終的な選択基準を満たした成人患者(18歳以上、確認できない場合は推定年齢)が、割り付けられたCPRを受け、最終解析の対象とされた。主要評価項目は、退院時の良好な神経機能温存率(modified Rankin scaleスコア≦3)とし、初期救助者以外の全研究者には治療割り付け情報は知らされなかった。神経機能温存退院率:6% vs. 9%、1年生存率:6% vs. 9%仮登録された2,470例が無作為に各CPRに割り付けられ、標準的CPR群(対照群)1,201例のうち813例(68%)が、ACD-CPR群1,269例のうち840例(66%)が実際に治療を受け、最終解析の対象となった。対照群では6%(47/813例)が良好な神経機能を温存した状態で退院したのに対し、ACD-CPR群は9%(75/840例)であり、有意な差が認められた(オッズ比:1.58、95%信頼区間:1.07~2.36、p=0.019)。1年生存率も対照群が6%(48/813例)、ACD-CPR群は9%(74/840例)と有意差を認め(p=0.03)、この間の認知能力、身体障害度、情緒的/心理的状態は両群で同等に保持されていた。全般に重篤な有害事象の発現率は両群間に差はなかったが、肺水腫は対照群[7%(62/813例)]よりもACD-CPR群[11%(94/840例)]で多くみられた(p=0.015)。著者は、「ACD-CPRは標準的CPRに比べ高い有効性と一般化可能性(generalizability)を有することが示された」と結論し、「この知見に基づくと、心停止後の長期生存を改善するには、標準的CPRの代替治療として胸腔内圧の陰圧増強下におけるACD-CPRの施行を考慮すべきと考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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低用量アスピリンの常用、がん死リスクを長期に抑制

低用量アスピリンの毎日服用により、食道がん、膵がん、肺がん、胃がん、結腸・直腸がん、前立腺がんなどの主要ながんによる死亡が有意に抑制されることが、イギリス・オックスフォード大学脳卒中予防研究部門のPeter M Rothwell氏らが実施した血管イベント予防に関する無作為化試験のメタ解析で示された。すでに、アスピリンを5年以上毎日服用すると結腸・直腸がんのリスクが低減することが無作為化試験などで示されている。加えて、アスピリンは他臓器のがん、特に消化管のがんのリスクを抑制する可能性を示唆するエビデンスがあるが、ヒトでは確証されていないという。Lancet誌2011年1月1日号(オンライン版2010年12月7日号)掲載の報告。アスピリン治療が平均4年以上の無作為化試験が対象研究グループは、血管イベントの予防効果に関してアスピリンと対照を比較した無作為化試験の、試験期間中および試験後のがん死について調査を行った。平均治療期間が4年以上にわたるアスピリン常用(毎日服用)例とアスピリン非服用例を比較した無作為化試験の個々の患者データを用い、予定治療期間との関連において消化器がんまたは非消化器がんによる死亡のリスクに及ぼすアスピリンの効果を評価した。イギリスの3つの大規模試験では、死亡診断書およびがんレジストリーから、個々の患者の試験終了後の長期フォローアップ・データが得られ、これを用いて20年がん死リスクの評価を行った。日本のJPAD試験を含む8試験、約2万5,500例の解析で、がん死リスクが21%低下適格基準を満たした8つの試験(BDAT、UK-TIA、ETDRS、SAPAT、TPT、JPAD、POPADAD、AAA試験に参加した2万5,570例、がん死674例)では、アスピリン群でがん死が有意に低下していた[オッズ比:0.79(95%信頼区間:0.68~0.92)、p=0.003]。SAPAT試験を除く7試験(2万3,535例、がん死657例)から得られた個々の患者データの解析では、明確なアスピリンのベネフィットはフォローアップ期間が5年を経過した後に認められた[全がんのハザード比:0.66(95%信頼区間:0.50~0.87)、p=0.003、消化器がんのハザード比:0.46(95%信頼区間:0.27~0.77)、p=0.003]。20年間にがんで死亡するリスク(3試験の1万2,659例、死亡1,634例)はアスピリン群が対照群に比べて有意に低く[全固形がんのハザード比:0.80(95%信頼区間:0.72~0.88)、p<0.0001、消化器がんのハザード比:0.65(同:0.54~0.78)、p<0.0001]、ベネフィットは治療期間が長くなるに従って増大した[治療期間≧7.5年における全固形がんのハザード比:0.69(95%信頼区間:0.54~0.88)、p=0.003、消化器がんのハザード比:0.41(同:0.26~0.66)、p=0.0001]。死亡リスクの抑制効果が現れるまでの治療期間は、食道がん、膵がん、脳腫瘍、肺がんが約5年であったが、胃がん、結腸・直腸がん、前立腺がんではさらに長期間を要した。肺がんと食道がんではベネフィットは腺がんに限られ、全体の20年がん死リスクの抑制効果は腺がんで最も大きかった[ハザード比:0.66(95%信頼区間:0.56~0.77)、p<0.0001]。ベネフィットはアスピリンの用量(75mg超)、性別、喫煙状況とは関連しなかったが、無作為割り付け時の年齢が高いほど改善され、20年がん死の絶対リスクの低下率は55歳未満が1.41%、55~64歳が4.53%、65歳以上は7.08%に達しており、全体では3.49%であった。著者は、「低用量アスピリンの毎日服用により、試験期間中および終了後において、いくつかの主要ながんによる死亡が抑制された。ベネフィットは治療期間が長くなるほど増大し、個々の試験を通じて一貫していた」と結論し、「これらの知見は、アスピリンの使用ガイドラインや、発がんおよび薬剤に対するがんの感受性のメカニズムの解明において重要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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患者中心の協同介入がうつ病と慢性疾患のコントロールをともに改善

うつ病は、糖尿病や冠動脈心疾患患者で多くみられ、セルフケア力を弱めるため、合併症や死亡のリスク因子になっているという。また、これら複数の慢性疾患を有する患者は多くの医療コストも必要とする。そこで米国ワシントン大学精神・行動学部門のWayne J. Katon氏らは、プライマリ・ケアベースで複数疾患の疾病管理を、患者中心で協同介入することが、これら患者の疾病管理を改善するかどうかを検討する単盲検無作為化対照試験を行った。結果、内科的疾患、うつ病ともにコントロールの改善が認められたという。NEJM誌2010年12月30日号掲載より。ともに働く看護師とガイドラインに即し、リスク因子のコントロール達成を目指す試験は、ワシントン州の統合医療システムに参画する14の診療所で行われた。被験者は2007年5月~2009年10月の間に募集された214例で、糖尿病のコントロール不良、冠動脈心疾患のいずれかもしくは両方を有し、かつうつ病を有しており、通常ケアを受ける群か介入群かに無作為に割り付けられ、追跡された。介入群には、各患者のかかりつけ医とともに働き医学的指導を受けた看護師が、疾病ガイドラインに即して、複数疾患のリスク因子のコントロールを目標に協同的なケアマネジメントを提供した。主要転帰は、12ヵ月時点での患者のリスク因子の目標達成の割合で、糖化ヘモグロビン、LDL-C、収縮期血圧、SCL-20尺度によるうつ病転帰を同時モデル化し、単一全般的な治療効果の評価が行われた。介入群の方が改善度は大きく、患者QOL・満足度も高い結果、通常ケア群との比較で介入群は、12ヵ月時点の全般的改善度が大きかった。糖化ヘモグロビン値の通常ケア群とのコントロールの差は0.58%、LDL-Cは同6.9mg/dL、収縮期血圧は5.1mmHg、SCL-20スコア差は0.40ポイントであった(いずれもP<0.001)。また、介入群の患者は、インスリン(P=0.006)、降圧薬(P<0.001)、抗うつ薬(P<0.001)の調整を1回以上行われることが多く、良好なQOL(P<0.001)、糖尿病と冠動脈心疾患のいずれかもしくは両方のケアに対する満足度が高く(P<0.001)、うつ病のケアに対する満足度も高かった(P<0.001)。(武藤まき:医療ライター)

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液状経口の米国小児用OTCの付属計量器、約99%が説明書の単位と不一致など不適切表示

米国で、液状経口の小児用市販薬(OTC)について調べたところ、調査対象で付属計量器が付いていた製品のうち約99%で、付属の計量器と説明書で示されている投与量単位とが一致しておらず、また投与量単位が製品によって異なり、複数の単位が使われていることが認められたという。米国ニューヨーク医科大学/ベルビュー・ホスピタルセンター小児科のH. Shonna Yin氏らが、2009年時点で最も売れている200製品について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年12月15日号(オンライン版2010年11月30日号)で発表した。付属計量器が付いていたのは74%米国食品医薬品局(FDA)では液状経口小児用OTCを過剰服薬するケースが頻発している事態を受け、2009年11月、業界に対し、計量器を付属することや計量器の単位と説明書の単位を一致するなどを盛り込んだ自主規制ガイドラインを発表した。本調査は、このガイドライン発表に合わせて行われたもので、Yin氏らは、2009年10月30日までの52週間にわたり、米国で最も売れている液状経口小児用OTCについて、付属計量器の有無や説明書に書かれた投与量単位との整合性、使用されている計量単位、省略形の定義の有無などについて調査を行った。調査対象となったのは200製品で、12歳未満への投与量に関する説明があり市場の99%を占める、鎮痛薬、咳・かぜ薬、アレルギー薬、胃腸薬であった。結果、調査対象200製品のうち、付属計量器が付いていたのは、74.0%にあたる148製品であった。81%の付属計量器に余計な印付属計量器の付いていた148製品のうち、説明書の投与量と計量器の印が一致していないものが、98.6%にあたる146製品あった。具体的には、計量器の印が欠けているものが36製品(24.3%)、余計な印がついているものが120製品(81.1%)だった。投与量の単位としては、ミリリッター単位を使っていたのは調査対象の71.5%にあたる143製品、ティースプーンが77.5%の155製品、テーブルスプーンが18.5%の37製品だった。その一方で、通常は使われない「ドラム」(drams)や「cc」といった単位を使っていたのが、5.5%にあたる11製品あった。また、「mL」以外の通常は使用しないミリリッター単位の省略形を使っていたのは、97製品あった。投与量単位の省略形を使っていた165製品のうち、省略形の定義を一つ以上示していなかったものは163製品に上った。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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今後の心房細動治療はシンプルになる

 2010年12月7日、「変わる!!心房細動治療」をタイトルとしたプレスセミナーが開催された。演者は、財団法人心臓血管研究所常務理事(研究本部長)の山下武志氏。 このプレスセミナーにおいて、山下氏は、心房細動治療における「CHANGE」と「SIMPLE」を強調した。その内容をレポートする。患者と治療ツールの変化 今後の心房細動治療を考える中で、まず、患者側の変化を考えなければならない。ここ30年の間に患者数は増加し、背景因子も多様化した。その結果、心房細動を原因とする心原性脳塞栓症の発症が増加した。久山町研究では、第一集団(1961-1973年)に比べ、第三集団(1988-2000年)では、ラクナ梗塞は約0.8倍、アテローム血栓性脳梗塞では約1.3倍、心原性脳塞栓症では約2.3倍と報告されており、いかに心原性脳塞栓症が増加してしまったかがわかる。 次に、治療ツールにも変化が起こった。新しい抗不整脈薬が次々に開発されたのである。それは、新たな分類としてSicilian Gambit分類が生まれるほどであった。また、これまでの単純な電気生理学から、より広範な理論構築が行われるようになった。 その結果、21世紀の心房細動治療では、患者ごとに最適の治療を行う「個別化診療」という複雑な診療が模索され始めた。しかし、その裏で、誰がその複雑な診療を担うのか、それほど複雑化する必要があるのか、どういう形で患者の役に立ちたいのか、といった疑問も生じてきた。エビデンスが変えた治療戦略 「疾患を病態生理から理解する」ことと、「疾患を病態整理から治療する」ことは違う。現在の知識レベルは、疾患の病態整理をすべて網羅しているわけではないため、妥当だと思われる治療を行っても、それが必ずしも臨床的メリットにつながるとは限らない。臨床的メリットにつながっているかを検証するのが臨床試験である。 例えば、有名なCAST試験では、心筋梗塞後の心室性不整脈を有する患者に心室性不整脈薬を投与すると、死亡率が増加することが示された。 AFFIRM試験では、心房細動症例に対してリズムコントールを行った群とレートコントロールを行った群での死亡率に変化はなかった。これは日本人のみを対象としたJ-RHYTHM試験でも同様の結果が示されている。 ACTIVE-W試験では、脳卒中の危険因子を有する心房細動患者にクロピドグレル+アスピリンを投与した群は、ワルファリン投与群に比べ、脳心血管疾患の発症抑制という点で劣ることが示された。日本人を対象としたJAST試験でも、抗血小板薬による治療が無投薬群と有意な差がないことが示された。 さらに、心房細動の再発抑制を一次エンドポイントとしたGISSI-AF試験では、心房細動既往例において通常治療にARBを追加投与しても、心房細動の再発を抑制できなかったと報告された。同様に、CCB群とARB群で心房細動の発症抑制を比較検討したJ-RHYTHM IIでも、ARBがCCBに比べて心房細動の発症を抑制することは認められなかった。 これらの心房細動に関連したエビデンスを受け、ある二つの概念が重要視されてきた。それは、「“心房細動”から、心房細動を有する“患者さん”へ」「“複雑”から“シンプル”へ」という二つの概念である。今後の心房細動治療は3ステップで考える 今後の心房細動は、3つのステップで考えるべきである。その3つとは「命を護る」「脳を護る」「生活を護る」の3つで、むしろ、他のステップや考えは必要ない。実際、2010年のESCから発表された心房細動ガイドラインは、従来に比べ、驚くほどシンプルな内容になっている。(1)命を護る 心房細動患者の生命予後は、心房細動の背景因子により規定されており、これはすべての試験で共通した結果である。つまり、患者の生命予後を是正するには、一度心房細動の存在を頭から解き放ち、患者の背景因子を再確認して、それを改善すれば良い。(2)脳を護る 心房細動患者において、脳を守るツールは現在のところワルファリンのみである。ワルファリンの投与対象患者は、CHADS2スコアを用いればすぐに割り出すことができる。(3)生活を護る 患者のQOLを向上させる必要があれば、洞調率維持を目指す。唯一残された「複雑」も「シンプル」に 唯一残された「複雑」はワルファリンである。ワルファリンは説明事項、注意事項といった制約が多く、医師からみても、患者から見ても複雑である。しかし、新しい抗凝固薬の登場により大きく緩和されると予想されている。 新しい抗凝固薬は、ワルファリンと異なり、薬物相互作用、食事制限の必要性、血中濃度の測定の必要がなく、誰もがわかりやすい薬剤である。また、脳卒中の発症予防効果は、ワルファリンに対する非劣性を示した。 最後に山下氏は、「心房細動の治療は、今後、“心房細動”から、心房細動を有する“患者さん”へ、さらに、“複雑”から“シンプル”へと変化し、誰でも同じ治療が行えるようになる。心房細動治療が激変する時は、もうすぐそこまで来ている」と結んだ。

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減量達成後は、タンパク質多め、GI指数低めの食事が体重減少を維持

減量達成後の体重減少維持には、タンパク質が多め、グリセミック指数(GI)は低めの食事が、長続きする食事療法であり体重減少維持に結びつくことが、ヨーロッパ8ヵ国で行われた無作為化試験「Diogenes(Diet, Obesity, and Genes)」の結果、明らかになった。スクリーニングを受けた平均年齢41歳、平均BMI値34の1,209例のうち、938例に対しまず8週間の低エネルギー食(800kcal/日)介入が行われ、基線体重より8%以上の体重減少に達した773例を、5つの食事療法群に無作為化し26週間にわたり比較検討した結果による。NEJM誌2010年11月25日号掲載より。5つの食事療法群に無作為化し、いずれが長続きし体重減少を維持するかを検討本試験は、体重減少後のリバウンドおよび肥満関連リスクを抑制するために有効な食事療法を、タンパク質量およびGI値に着目して評価することを目的とした。評価された5つの食事療法群は、(1)低タンパク(総エネルギーの13%)・低GI食群、(2)低タンパク・高GI食群、(3)高タンパク(総エネルギーの25%)・低GI食群、(4)高タンパク・高GI食群、(5)対照群(各国食事療法ガイドラインに準じ中タンパクで、GI値は不問)であった。群間の摂取タンパク質量の高低差は12%を、GI値の高低差は15単位を目標とされた。食欲と体重管理能力を調べるため、総エネルギー量に制限は設けられなかったが、5群とも脂肪摂取は中等度(総エネルギーの25~30%)となるよう調整された。目標摂取量が達成できるよう、家族に対するレシピ提供、調理法や行動のアドバイスが行われ、参加国のうち2ヵ国では栄養量が調整済みの食品が無料で配布された。被験者は、体重減少維持試験当初6週間は隔週で、その後は1ヵ月に1回、食事カウンセリングを受けた。また維持試験介入前3日間、4週後、26週後に食事量を量り記録することが求められた。低タンパク・高GI食群のみリバウンドが有意に維持試験を完了したのは548例(71%)だった。試験脱落者が少なかったのは、高タンパク食群26.4%、低GI食群25.6%だった(低タンパク・高GI食群37.4%との比較で、それぞれP=0.02、P=0.01)。最初に行われた8週間の低エネルギー食(800kcal/日)介入時の体重減少は、平均11.0kgだった。その後の維持試験完了者548例について解析した結果、低タンパク・高GI食群のみ有意なリバウンドが認められた(1.67kg、95%信頼区間:0.48~2.87)。維持試験被験者(773例)のintention-to-treat解析の結果、体重再増加は、高タンパク食群の方が低タンパク食群よりも0.93kg(95%信頼区間:0.31~1.55)少なく、また、低GI食群の方が高GI食群よりも0.95kg(同:0.33~1.57)少なかった(いずれもP=0.003)。試験完了者の解析結果も同様だった。食事療法に関する有害事象は群間に有意な違いは認められなかった。なお栄養摂取量について、高タンパク食群の方が低タンパク食群と比べて、タンパク質量が5.4%多く、炭水化物量は7.1%低かった(両群間比較のP

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2型糖尿病患者、有酸素運動とレジスタンストレーニングの併用でHbA1c値が低下

2型糖尿病患者が、有酸素運動とウエイトトレーニングのようなレジスタンストレーニングの両方の運動を行うことで、HbA1c値が有意に低下することが無作為化対照試験で明らかになった。どちらか一方のみの運動では、HbA1c値の有意な低下は認められなかったという。米国ルイジアナ州立大学ペニントン・バイオメディカルリサーチセンターのTimothy S. Church氏らが、2型糖尿病患者262人を追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月24日号で発表した。2型糖尿病患者に対する運動ガイドラインでは、有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方を勧めているが、両運動を行うことによる効果を目的とする研究はこれまでほとんど行われていなかった。被験者を4群に分け、9ヵ月の運動プログラム実施研究グループは、2007年4月~2009年8月にかけて、2型糖尿病の患者262人について、9ヵ月の運動プログラムを行った。被験者を無作為に4群に分け、一群(73人)はレジスタンストレーニングのみを週3回、別の群(72人)は有酸素運動(12kcal/kg/週)のみを、また別の群(76人)は有酸素運動(10kcal/kg/週)とレジスタンストレーニングを週2回、さらに残りの一群(41人)は対照群としていずれの運動プログラムも行わなかった。レジスタンストレーニングの内容は、上体運動(ベンチプレス、シーテッド・ロウイング、ショルダープレス、ラットプルダウン)2セット、足部運動(レッグプレス、レッグエクステンション、スクワット)3セット、腹筋・背筋運動2セットで構成されていた。被験者の63.0%は女性で、平均年齢は55.8歳、HbA1c値は6.5%以上で平均値は7.7%だった。併用運動群、対照群に比べHbA1c値が0.34%ポイント低下、最大酸素消費量も改善その結果、対照群に比べ、併用運動群のみがHbA1c値の絶対平均値が有意に低下していた。対照群との差は-0.34ポイント(95%信頼区間:-0.64~-0.03、p=0.03)だった。レジスタンストレーニング群(-0.16ポイント、p=0.32)、有酸素運動群(-0.24ポイント、p=0.14)ではいずれも、HbA1c値の絶対平均値の有意な低下はみられなかった。対照群に比べ、最大酸素消費量の有意な改善が認められたのも併用運動群のみで、平均改善幅は1.0mL/kg/分(95%信頼区間:0.5~1.5、p<0.05)だった。腹囲はすべての運動群で対照群に比べ減少していた(レジスタンストレーニング群:-1.9cm、有酸素運動群:-1.5cm、併用運動群:-2.8cm)。また体脂肪量は、レジスタンストレーニング群で平均1.4kg、併用運動群で平均1.7kg、それぞれ対照群に比べ有意に減少した(ともにp

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腱症に対する注射療法のエビデンス

腱症に対するコルチコステロイド注射は、短期的には有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性があることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のBrooke K Coombes氏らが行った系統的なレビューで示された。現在、エビデンスに基づく腱症の治療ガイドラインはほとんどないという。腱症は、angiofibroblastic hyperplasia(細胞過形成、血管新生、蛋白合成増進、基質破壊などがみられる)を特徴とし、炎症性疾患ではないためコルチコステロイド注射には疑問の声もあり、ラウロマクロゴール(一般名:ポリドカノール)、多血小板血漿、ボツリヌス毒素、プロテイナーゼなどの注射療法の施行機会が増えているという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。腱周囲注射とプラセボ、非手術的介入の無作為化試験を解析研究グループは、腱症に対する注射療法の臨床効果および有害事象リスクの評価を目的に系統的なレビューを行った。8つのデータベースを、言語、発表の形態や時期を制限せずに検索し、腱症に対する腱周囲注射とプラセボあるいは非手術的介入の効果を比較した無作為化対照比較試験を抽出した。メタ解析にはランダム効果モデルを用い、相対リスクおよび標準化平均値差(standardised mean difference:SMD)を推算した。臨床効果に関する主要評価項目は、プロトコルで規定した疼痛スコアとし、短期(4週、範囲:0~12週)、中期(26週、同:13~26週)、長期(52週、同:52週以上)に分けて解析した。コルチコステロイド注射は短期的には有効同定された3,824試験のうち、適格基準を満たした41試験に登録された2,672例のデータが解析の対象となった。多くの質の高い無作為化試験では、コルチコステロイド注射の短期的な疼痛改善効果が他の介入法に比べ優れるとの一致した知見が示されたが、この効果は中期、長期には逆転した。たとえば、外側上顆痛の治療に関するプール解析では、コルチコステロイド注射は短期的には非介入群に比べ疼痛の抑制において大きな効果(SMD>0.8と定義)が認められた(SMD:1.44、95%信頼区間:1.17~1.71、p<0.0001)が、中期(同:-0.40、-0.67~-0.14、p<0.003)、長期(同:-0.31、-0.61~-0.01、p=0.05)には非介入群の方が効果は有意に大きかった。回旋腱板障害に対するコルチコステロイド注射の短期的な効果は、明確ではなかった。有害事象の報告のある試験においてコルチコステロイド注射を受けた991例のうち、重篤な有害事象(腱断裂)がみられたのは1例(0.1%)のみであった。外側上顆痛の治療のプラセボ対照比較試験では、ヒアルロン酸ナトリウム注入が短期(SMD:3.91、95%信頼区間:3.54~4.28、p<0.0001)、中期(同:2.89、2.58~3.20、p<0.0001)、長期(同:3.91、3.55~4.28、p<0.0001)に有効で、ボツリヌス毒素注入は短期(同:1.23、同:0.67~1.78、p<0.0001)に有効、prolotherapyは中期(同:2.62、1.36~3.88、p<0.0001)に有効であった。アキレス腱症の治療では、ラウロマクロゴール、アプロチニン、多血小板血漿はプラセボに比べ有効ではなかったのに対し、prolotherapyは伸張性運動よりも有効ではなかった。著者は、「外側上顆痛の治療では、短期的にはコルチコステロイド注射は有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性がある」と結論し、「しかし、腱症は部位によって効果にばらつきがみられるため、注射療法の効果を一般化すべきではない」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

1951年東京都生まれ。76年北里大学医学部卒業。81年同大皮膚科助手、84年同大皮膚科講師兼医局長。91年横浜労災病院皮膚科部長。2007年より現職。日本皮膚科学会専門医・代議員、日本アレルギー学会専門医・指導医・代議員、日本皮膚悪性腫瘍学会評議員他。皮膚科医に求められるもの人と話すことが好きな私は、本当は神経内科医になりたかったのですが、師匠である教授との出会いがきっかけで皮膚科医を選択しました。教授が「向井君、この患者さんはγ-GTP100だよ」と、手や皮膚の状態を見ただけで内臓のことまで言い当てたのです。皮膚科医としての知識を元に視診で内臓までを診てしまう。私はそこに魅力を感じたのです。皮膚疾患は目に見える症状がほとんどのため、そこから発生する患者さんの精神的ストレスは深刻な問題となっています。したがって、皮膚科医には患者さんのメンタルをケアすることも重要な治療の一つなのです。その点からみても、話好きな私にはとてもよい選択だったと考えています。「皮膚科は死なないからいいよね」と言われることがありますが、決してそうではありません。病としての生き死にではなく、病状による精神的苦痛で自殺してしまうケースもあります。だからこそ、精神面でのサポートも考慮しつつケアしてあげるという心構えで、皮膚疾患を治していくことが常に求められているのです。たかが皮膚病ではなく、それに伴う精神的苦痛は個々によりレベルが違うもので測り知れません。今後も私はそこを踏まえた上での最善の治療を、皮膚科医として追求していきたいと考えています。患者さんと医師の信頼関係を構築する間違った情報を鵜呑みにしてステロイドへの偏見を持ち、薬を処方通りに使わなかったり、誤った民間療法に頼ったり、医師との信頼関係を築けないまま治療にも専念できない患者さんもいます。その結果、かえって症状を悪化させているケースも少なくありません。東邦大学ではアトピー性皮膚炎の思い切った治療として、入院をすすめています。これは、仕事などで忙しくて毎日のスキンケアがままならず、症状が悪化して不眠状態になっている状態をクールダウンさせる意味もあります。皮膚炎が起こる原因の中には生活習慣や住環境も関わりますから、その点でも改善指導できますし、日常のストレスからの解放も期待できます。その上で、すべての治療をこちらに任せてもらい、ディスカッションしながら薬の塗り方、包帯の巻き方等まで、こまごまと指導できる利点があります。そうすれば患者さんは退院した後も、症状が悪化した場合には自分で処置することができるようになる。つまり、治療をしながら生活全般の教育指導もできるのが入院の利点です。将来的には、栄養士による食事指導も加えたいと考えています。ステロイドへの偏見をなくしたいステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。では、実際にアトピー性皮膚炎の入院患者さんに多量のステロイドを使用した場合、安全塗布量を超えると副腎機能に影響を与えるのかどうか、私は入院時と退院時の血液や尿を採取して調べました。驚いたことに、入院時のコルチゾール値は平均3.7μg/dLと正常値より明らかに低く、0.1μg/dL以下と極めて強く副腎機能が抑制されている患者さんは半数以上でした。つまり、入院を要するほどの患者さんは、ステロイド治療をする前に皮膚状態の悪化で、すでに副腎機能が強く抑制されていたのです。入院を要しない軽症例では抑制がかかっていないことから、副腎機能の抑制は重症度に起因するという新事実をみつけました。さらに、入院中大量のステロイドを使用したにもかかわらず、退院時のコルチゾール値は11.5μg/dLと正常化していました。入院中に皮膚状態を改善するために使用したステロイドの量は、臨床効果とともに漸減し薬効ランクも落としています。この治療法によって副腎機能に及ぼす副作用は認められず、安全性の高いものといえる結果となりました。同時に測定したACTH値も同様で、退院時には正常値に回復していました。入院での治療は皮膚症状を劇的に改善させるだけでなく、抑制されていた副腎・下垂体機能を大幅に正常化するという画期的なデータでした。しかし、なぜ副腎機能が抑制されてしまうのかはまだ不明で、これからの研究課題です。ホルモンが分泌されない原因のファクターとしては、ストレスや睡眠障害などが挙げられています。確かに来院した患者さんから「眠れなくて、体がだるくて、成績が落ちたり、仕事上でのミスが多くなったりして上司から怒られる。でも、睡眠薬を使うと寝坊してしまう」との意見が大半でした。ところが、入院することによってまず不眠が解消され、リラックスした精神状態になり、熟睡できた喜びを口にした患者さんが7割から8割を占めたのです。これによってインペアード・パフォーマンスも大きく改善されました。尋常性乾癬における最新治療乾癬に関しては劇的な治療薬ができました。これまで患者さんは、お風呂から出て、時間をかけて全身に薬を塗って、包帯を巻いて……という作業を毎日繰り返していました。患者さんの負担はかなり重いものでした。それが、TNF-α阻害薬が出てきたお陰で、今では注射1本で済んでしまう。患者さんのQOLは飛躍的に向上しました。これは大変画期的なことだと思います。私が東邦大学に来る前の病院で、5、6回入退院を繰り返している、30代の関節症性乾癬の男性がいました。それまで、できうる限りの治療を行ったのにもかかわらず、結局車椅子の生活を余儀なくされた患者さんです。TNF-α阻害薬が治験できるとなった時に、真っ先にその彼に声をかけました。しかし、彼には「これまで先生の言うことはすべて聞いてきたが、結局治らなかった。訳のわからない治療法で、もっと悪くなるかもしれない」と断られてしまいました。それでも私は1時間以上かけて説得しました。やっと彼を治せるかもしれない治療薬が出てきたからです。今、彼は杖で歩けるまで回復しています。少し前までは治せなかった難病も、今では治せてしまう。医学の進歩にはいつも驚かされます。ただし、このTNF-α阻害薬ですが、高い臨床効果の一方、免疫を抑えることにより副作用として細菌性肺炎や肺結核など重篤な感染症の発現が危惧されています。日本皮膚科学会では"TNF-α阻害薬の使用指針および安全対策マニュアル"を作成し、本薬の使用に際して、(1)乾癬の診断・治療や合併症対策に精通した皮膚科専門医が行うこと (2)副作用発現に留意して、定期的な検査および重篤な合併症に対して迅速な対応すなわち呼吸器内科や放射線医と密接な連携で対処すること、の2点を挙げていますので注意が必要です。私ども東邦大学大橋病院皮膚科はTNF-α阻害薬使用施設として正式に認定され、すでに2例の患者さんに治療を開始しております。病気の原因究明こそ臨床の醍醐味外来で若手医師に指導する時は「なぜこういう現象が起きたのか?」を自分の頭でよく考えさせるようにしています。単に病状や治療についての説明をするのではなく、なぜこの患者さんはこうなったのか、その"なぜ"を考えさせるようにしています。ありふれた皮膚病は、生活習慣に起因していることが多いのです。だからこそ患者さんのライフスタイルを知り、なぜそうなったのか? 原因となっているものは何か? を見極めないことには治療もできません。たとえば、道を歩いているだけなのに、急にアナフィラキシーショックを起こして倒れた人がいました。朝食にパンを食べて、その後に運動をする。満員電車の中でどっと汗をかいたらアナフィラキシーショックを起こして倒れた。ご飯ならば発作は起こらないのに、パンだとなぜだかショックを起こす。また、就寝時にアナフィラキシーショックを起こす例がありました。なぜか納豆を食べた日に限り、発作を起こしていました。いずれの方も発作を2、3回繰り返し、そのつど救急搬送されるのですが、病名どころか何が原因かさえわからない。前者は小麦アレルギーでした。小麦を食べて運動をする、抗炎症薬のアスピリンを服用する、飲酒、疲労、ストレスといったファクターが加わるとアナフィラキシーショックを起こす。また後者は、まだ10例ほどしか発見されていませんが、納豆アレルギーでした。納豆を食べて30分や1時間で症状が出れば誰でも納豆アレルギーとわかりますが、食べてから10何時間か経って就寝時に出てくるので、何が原因なのかわからなかった。実は納豆のネバネバ成分がアレルゲンをコーティングしているため、腸管からの吸収が遅れ、すぐには症状が出なかったのです。このような患者さんが今まで原因がわからず病院を転々としてきて、それを自分が究明できた時の喜びは大きいですね。臨床の面白さや醍醐味はそこにあると思います。また、最近の技術的進歩も著しいものがあります。これまで皮膚科領域で治療に難渋していた疾患が、上述した生物学的製剤のような画期的な薬剤の登場で治療できてしまう。虚血性壊死を起こした状態でも、皮膚や筋肉に注射して血管を新生する遺伝子治療もそろそろ世に出てくる。たとえば、糖尿病で足先がすでに壊死を起こしている場合、まず内科で糖尿病のコントロールを行い、皮膚科で外用療法をし、最終的には整形外科や形成外科で切断するのが主流となっていたのが、この遺伝子治療により血管を再生することによって指先を切断しなくても済むようなるというものです。これまで、難病といわれてきたものが、最新の治療によって難病ではなくなる時代に変わってきています。これからの皮膚科学は、ますます面白くなってくると思います。質問と回答を公開中!

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教授 向井秀樹先生の答え

アトピー性皮膚炎30年間悩まされています。昨年近医にてネオーラル処方され、症状改善し漸減中止しました。が、症状悪化しネオーラル再開(一回50mg一日2回)しました。この量でないと有効でないようで…飲み続けてもいいのでしょうか?皮膚の良い状態がこんなに楽なのもかと思い知り、ステロイドだろうが免疫抑制剤だろうが(副作用が多少あっても)なんでも使いたい!という思いです。 シクロスポリンは使用ガイドラインが出来ており、体重当たり3mg換算とされています。効果があれば12週間を1クールにして、最低2週間以上の休薬とあります。スタンダードな治療法として有用だと思います。但し、極めて重症度の高い方には中止が出来ない、再度内服するという方も少なくありません。さらに高価なお薬のため経済的にも再燃時のショックは大きいのは理解できます。文章からは十分に理解しているとは言えないかも知れませんが、ダラダラと服用しているより、2クール目&3クール目と繰り返すうちに症状が安定する場合も経験します。焦らず頑張って下さい。そして併用している外用剤ですが、内服していると痒くないからといって使用していない、使用量が大幅に減っていないことはありませんか? こんな高級品を使っているのです、今こそ徹底的に改善して寛解状態を得て元を取るぞ!という覚悟で頑張って下さい。そして、悪化時の原因を考え悪化要因の対処法などの工夫、アドバイスを貰うなどの積極性を出すこと!綺麗な肌を取り戻して下さい!発汗異常について手汗がひどく悩んでいる方がいます。来年4月から社会人になりますが事務関係で書類を触るのに用紙がくしゃくしゃになってしまい、仕事に支障がでてしまうのではないかと・・手術以外になにか方法がありませんか?漢方 刑芥蓮ぎょう湯を服用して様子を見ています。程度は個人差がありますが、お悩みのことと推察いたします。大学時代の友人がひどい汗かきで、いつもタオル持参で授業内容を記載していました。現在会って話をすると昔より良くなっているそうですが完治はしていないとのことです。一般的に自律神経を安定させる内服薬を飲み続け、汗を抑える塩化アルミニウム溶液を外用します。漢方薬を試されているようですが、防己黄耆湯や補中益気湯はお飲みになりましたでしょうか?漢方薬は一般的にすぐに効果がでる訳ではありません、最低1~2ヶ月間は内服してみて下さい。手術に関しては現在しない方向です。脇の下の交感神経を切断するは一時流行りました。確かに手の効果はありますが、背中や胸などが代償性に発汗するようになり患者さんの生活の質が低下するので行わない方が良いようと思います。専門に手術する施設が増えましたが、医療問題にまで発展し陰が薄くなりました。発汗を専門とする施設は少ないですが、東京医科歯科大学皮膚科には専門外来があります。塩化アルミニウム溶液を器械で皮膚に導入するイオントフォレーシス法を行っており、それなりの有用性を報告しています。機会があれば受診してみて下さい。まずは、一般初診を受診して専門外来にまわしてくれるそうです。研究分野について東邦大学大橋病院での研究分野について教えてください。どのような研究をされているのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、「研究について」のページを見ても、「爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討」しかなかったので、もう少し情報を頂きたく思います。(後期研修先を探している研修医です)大橋皮膚科はアトピー性皮膚炎の治療を専門にしております。1~2週間の入院療法は、短期間で急速&確実に改善する方法を言えます。しかし、入院期間に多量に使用する極めて強いステロイド外用剤の副腎機能に関する影響に関して、明らかな文献は見当たりません。そこで、入院前後の血中コルチゾール値を測定してみました。その結果は予想に反して、重症例では入院前のステロイド外用量と関係がなく血中コルチゾール値は大幅に低下。この変化は不可逆性で退院時には上昇して正常値に戻るという結果が得られました。そこで次に、血中ACTHや1日尿中コルチゾール値を測定しました。両者とも同様の推移を呈することより、皮疹の重症度に相関して不可逆性の副腎機能抑制状態が生じていることを昨年11月の日本皮膚科学会誌に報告いたしました。これから入院する患者さんにもその結果をお話して、入院で使用するステロイドの安全性を強調する共に検査し確認を取る旨を了承して頂いております。なお、このデータは昨年の第26回日本臨床皮膚科学会で金賞そして学内の柴田奨学助成金をめでたく選考授賞&授与することが出来ました。次に、この入院期間の前後で治療効果を判定できる"短期的な治療マーカー検査"を検討し、昨年日本アレルギー学会で発表しました。皮膚の改善やかゆみの程度で患者さんは退院を希望されます。明らかな検査データを示し改善度を示すことは疾患の理解を更に深めると思います。大橋皮膚科で行っている入院療法の有用性を評価するために、患者さんを対象にしたアンケート調査を行いこの2月に行なわれる東京支部学術大会で発表します。今年度からは重症例に多くみられる睡眠障害に関して研究を始めます。激しい痒みに伴うものと基礎にある心因反応に伴うものに大別できます。そこで、入院前後の睡眠障害を詳細に分析しその違いを見つけ、後者の人に関しては早期に入眠剤や心療内科的アプローチを検討します。さらに、外来患者にも行い重症度の違い、罹患率など調査していく予定です。ホームページにある"爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討"は、日本真菌学会および国際学会で報告したので掲載したものです。動物モデルを使って、爪に感染後の経過を臨床面と爪の病理組織像を同時に立体的に観察した興味あるデータです。近く真菌専門の英文誌に掲載されますので、機会があればご一読下さい。この他に、帯状疱疹後の神経痛に関する薬剤間の比較、各種皮膚良性腫瘍におけるダーモスコープ所見の検討、炭酸ガスレーザーを用いた難治性皮膚疾患の治療の試みなどいろいろと考えて行っています。化粧品会社や製薬会社の研究所とも連携して研究し、その成果を順次発表しております。大橋皮膚科では目の前にいる患者さんの疾患をみて、その病態を考えどのようなアプローチをすべきか、解明のための臨床研究を積極的に行っています。珍しい疾患の解明ばかりでなく、ありふれた疾患の新しい考え方や治療法なども発信できればと思っています。やる気のある方は大歓迎です、是非とも来て下さい。アトピー性皮膚炎、診断のコツ研修中なので基本的な質問ですみません。アトピー性皮膚炎の診断について、治療ガイドラインの診断基準を見ながら勉強しているのですが、確信を持って診断を下すことができません。診断間違ってステロイドを処方すると悪化する症例もあるので、少し怖くなっています。今は当然ながら自分一人で診察をして診断を下すわけではないのですが、皮膚科を目指しているので、どうにかしたいです。診断のコツや、先生がどのように勉強されてきたか?などアドバイスいただけると幸いです。難しい問題だと思います。でも専門とする私でも治療&診断ガイドラインは講演のときに使う程度で診療の際に見ることはありません。患者さんを見れば検査をしなくとも100%診断が付きます。皮膚科の醍醐味とはそういうもので、見たことがある、本で読んだ、学会で聞いたなどで診断が出来るのです。要するに、長年たくさんの患者さんを見ることで感じ覚えていくのだと思います。とくにアトピーの難しさは年齢によって皮膚症状の好発部位や臨床像も変化します。時期ごとに出やすい部位、臨床像を整理して覚え、鑑別疾患を挙げその違いを頭の中で除外していく必要性があります。アトピー素因の有無は必要です、そして皮膚所見が有用で湿疹病変と分かってもかぶれもありますし,自家感作性皮膚炎や皮脂減少性皮膚炎もあります。年齢や部位などが役立ちます。血清IgEや各種アレルゲン特異抗体価も診断に有用です。症例をたくさん見て、いろいろな鑑別疾患を整理して頭の中に入れることが重要です。疑問があれば上級医を呼んで,診断の決め手や考え方を教えてもらうのも良いと思います。重症のアトピーとして治療していたら皮膚リンフォーマという事例もあります、皮膚生検も時として有用です。よく見てよく考え疾患の特性を理解して下さい。患者さんを診て、患者さんから教えられる、学ぶものです。民間療法との戦いについて皮膚の疾患、特にアトピーなどは民間療法が多くて困っています。全てを否定するわけではないですが、処方した薬を使わなくなったり、通院しなくなったりするので(大体症状が悪化して戻ってきますが…)かなり厄介です。先生も当然同じような状況かと思います。先生のこれまでのご経験から「このように民間療法と戦っている!」「こんな説明をすると有効だ!」というものがあれば是非ご伝授いただきたく思っております。宜しくお願いします。日本皮膚科学会の努力もあり民間療法は20年前に比べるとかなり淘汰された感はあります。随分日常診療でその対策と説明に苦労させられて来ましたし、重症で入院を要する患者さんの半数以上が民間療法経験者でした。皮膚科医以外の医師や医療関係者が行っている場合が多いようです。患者自身が現在の治療法に不満を抱いているのは事実だと思います。頭ごなしに否定することなく、ゆっくり時間を掛けて話をする・聞くことを心掛けています。どうしてもしたいと言ってくるものに関しては、現在の治療を中止せず併用することや部分使用を認めています。専門家の私が冷静に判断してその効果を認めるなら、継続すべきだし、効果が見えない場合にこだわって皮膚が悪化することは避けたいと話します。ただ、使用しているステロイド剤の副作用を強調して中止を強要し高額な治療費を請求するものは絶対的に反対します。ステロイド治療に不満や不安が強い人が多いので、ステロイドの使用法や安全性を十分説明する必要はあると思います。いずれにせよ、本人は悩んでの事ですから、頭ごなしに叱らない、救済方法を残すやり方で指導しております。 電子付加治療は効きますか?患者より、アトピー性疾患治療として電子付加治療というものがあると聞きました。私も調べてみたのですが、日本アトピー治療学会という聞きなれない学会が推奨しているようです。一見理にかなっているようには見えるのですが、実際のところ如何なものでしょうか?もし電子付加治療について何かご存知でしたらご教示お願いします。残念ながら実態は良く分かりません。私の外来では慢性かつ難治性の重症例が多く受診されますが、受診前の治療法としても電子付加治療は初耳です。アトピー性皮膚炎の治療&診断ガイドラインにも電子付加治療などは記載されていません。日本アトピー治療学会と実にもっともそうなネーミングですが、所属会員がどれほどいるのか?我々のような皮膚科専門医、アレルギー専門医や指導医がいるのか疑問です。これでは質問のお返事とはなりません。丁度インフルエンザAに罹患して自宅待機の身ですので、ホームページをしっかりと拝見しました。基本的におかしいのがアトピーの原因を酸化アレルゲンとして一つに括っていることだと思います。この論理はアトピー性皮膚炎診療&治療ガイドラインをご一読されればすぐ分かります。どこにも記載されている言葉ではありません。アトピーの発生機序は、最近北大皮膚科が皮膚の角層に日本特有のフィラグリン遺伝子多型を30%の症例に発見以来、バリア機能の破綻が発症の第一要因とされました。これに伴い、環境にいるダニやハウスダストが経皮的に侵入してアレルギー炎症が生じるのです。但し乳児は卵など食事の関与が強い時期ですし、年齢的&季節的にアレルゲンや増悪因子は変化します。また最近ではフィラグリン遺伝子多型がなく血清IgE値が正常&主に金属アレルギー関与が示唆される内因性という概念も出ていますし、現代人が抱える心理的なストレスも大きな要因の一つです。またいくつかの要因が複雑に絡み合い病態を複雑にしています。酸化が皮膚の老化以外に種々の炎症を起こすことは知られています。同じ論理で四国の方では活性酸素の除去を目的とした外用剤や内服を行っています。理論は同じで酸素の毒を取り除くというもので、当初大した効果はありませんでした。そこでステロイドを外用剤に混ぜるようになりました。アトピーの機序はすでにお話したように実に複雑で、単に酸素の毒を抑えられても寛解できるか疑問です。理論とシェーマと治療前後の臨床写真だけで基礎的な実験データがありません。ところで、以前中国で何にもよく効く漢方薬がネット上で評判になり日本のアトピー患者も購入者が続発しました。とにかくステロイド張りのすごい臨床効果なのです。そこで成分を調査したところ、何と最強のステロイドが入っていたのです。われわれ専門家でも滅多に使用しない最強のステロイド入りとは驚きです。本当に良い薬は正式に承認され薬価が付きます、新薬の欲しい薬品会社がほっとくわけはありません。入院療法の期間アトピー性皮膚炎に対する治療として「入院療法」が紹介されていましたが、入院期間はどの程度必要なのでしょうか?全国で少数ですが入院療法を当科のように展開しているところはあります。ばらばらで決まり残念ながらありません。治療ガイドラインをみても、マニュアル通りの治療で効果のない場合は入院とありますが期間に関する記載はありません。以前私のいた横浜労災病院では徹底的に良くなるまで入院させました。全国から多数の患者さんが来られたので皮膚症状や検査所見の改善、試験外泊で悪化症状のなしを目安にしたところ平均26.5日という入院期間でした。入院後のアンケート結果をみると、退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は93.3%で極めて高く、不変や悪化例はいません。また、調査時の皮膚症状に関しても88.1%と高率に症状が改善維持できていることが判明しました。一方で10%の患者さんが入院期間の長さを指摘、33.3%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。確かに仕事を持つ社会人が1ヶ月近く休むということは問題ですし、家庭を任された主婦そして通学、受験や試験などの問題を抱えた学生にとって長すぎます。そこで、東邦大学に来てからは2週間を原則に致しました。1週間で徹底的に皮膚症状を抑え、残りの1週間で安定化を図る。退院後しばらく頑張ればコントロールできると考えたからです。その結果は2月の東京支部学術大会で発表します。退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は92%で極めて高く、調査時の皮膚症状に関しても76%の方が改善維持できていました。一方で9%の患者さんが入院期間の長さを指摘、43%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。重症度や対象患者の遠距離度が異なるかも知れませんが、平均年齢は30歳代と同様でした。やはり2週間でも患者さんにとって長すぎるのかもしれません。そこで次の裏付けデータをもとに1週間に減らしています。そのデータとは、質問3でお答えした入院前後で血中のコルチゾール値を測定した結果を参考にしました。重症度と血中コルチゾール値が相関するなら、入院時に正常値以下まで低下したものが何日入院すると正常値に戻るのか?入院期間と血中のコルチゾール値の推移で計算すると4.8日という値が出ました。そこで、約1週間の入院期間で一過性の副腎機能低下状態は改善できると判断しました。現在、極めて治しにくい重症度の極めて高い皮膚症状を有する例を除き、1週間の入院を基本として初診患者に説明しております。TNF-α阻害薬について乾癬の患者さんがTNF-α阻害薬での治療に興味をもっております。乾癬であれば全て有効なのでしょうか?また、感染症の発現が危惧されると聞きましたが、大橋病院さんではどのような体制で望んでいるのでしょうか?差し支えなければ、これまでの成績も含めて教えていただけると大変参考になります。この治療はどこの施設でも自由に行える訳ではありません。副作用として重要な感染症に対して、診療体制のとれる呼吸器内科医や放射線医の常勤が必要で、皮膚科学会に正式に申請してTNF-α阻害薬使用施設として認定される必要があります。TNF-α阻害薬は2種類あり、多少適応疾患が異なります。詳細は大橋病院皮膚科のホームページを参考にして頂くと役立ちます。本剤の副作用の最も多いのが感染症です。潜在的に持っている、感染しやすいものを発症させます。日本は結核が多く、治験段階で最も危惧されたところです。ところが、しっかりとした体制が奏功したのか肺結核はおらず、細菌性肺炎が見られています。致死的な副作用は今のところありません。勿論、私どもの症例も毎回診察していますが副作用はありません。対象は、重症、難治性&治療抵抗性の乾癬および関節症性乾癬の患者さんです。罹患部位が全身で外用剤のみでコントロール不良な症例、ネオーラルやチガソンの内服でも不安定ないしその薬剤の副作用で中止した例、関節症状のコントロール不良例、さらにステロイド外用剤による局所の副作用が生じている例などです。今後あちこちの施設から有用性のデータが報告されると思いますが、有用率90%は全国の諸施設で行った治験結果の驚異的な数字です。私の経験でとくに驚いたのが、関節症性乾癬の患者さん達です。その効果は患者さんのQOL向上に素晴らしいものです。但し、最大の難点が支払い額の高さです。高額療養費制度を用いて医療費が還付されますが、それでも負担金は極めて高く、投与前に概算を示し了解を得ないと継続した治療が受けられなくなります。また、今後判明してくると思いますが予後が問題です。投与中は良いのですが、中止できるのか再燃しやすいのか、検討課題だと思います。また新薬も開発中で楽しみです。ステロイドの安全塗布量、参考文献先生の記事を拝見して「ステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。」ということを初めて知りました。大変びっくりしています。ステロイドの安全塗布量について他に参考になる文献等がありましたらご教示お願いします。本においてステロイド(ス)外用剤は1953年から登場し、現在までに30種類以上の外用剤が開発。薬効の強さから上位からI~V群の5つに分類され使用されています。幅広い皮膚疾患に有効で、従来まで治療法のなかった疾病の治療薬として大いに役立ったことは事実です。全身皮膚が障害し多量の外用を必要とする症例の中で、Cushing様症状、骨粗しょう症や小児の発育遅延など極めて少ない確率ですが起こることが判明。多量にス外用剤を使用例が突然中止すると、皮疹悪化以外に発熱、悪寒、悪心、嘔吐などの全身症状を呈するものを離脱反応、これは一種の副腎クリーゼの状態です。質問5でお答えした民間療法が横行した時期に、ス外用剤を中止してこの反応を起こしQOLが大幅に悪化、私どもの病院に入院した症例を数多く経験しました。外用を再開し症状を改善させました。全身的な副作用を知るには、主に視床下部-下垂体-副腎皮質機能がどの程度抑制されるのかをチェックします。日常で処方される外用量、成人で10~30g/週程度では抑制は起こりません。この全身的な副作用に関しては1960~1970年代に精力的に研究されたのですが、それ以降はほとんど行われていません。薬効ランクⅢ群(リンデロン)を成人入院に1日30g、幼小児に1日13gと大量塗布した結果。1.副腎皮疹機能は一過性に生じるが、中止後1~2日で回復。2.症例によっては継続中でも抑制が回復。その理由は、皮膚が改善して経皮吸収率が低下する。3.密封療法を行うと経皮吸収率が高まり、臨床効果も上がるが抑制は顕著となる。4.小児では成人より抑制は起こりやすいので強い薬効ランクのものは控える。また、外用方法として1日5~10gで開始し、症状に合わせて漸減し3ヶ月間使用しても、一過性&可逆性の抑制は生じても不可逆性の抑制は生じないとされています。私どもの入院を要する重症例では1日12gも投与しましたが、抑制例は2例と少なくしかも正常範囲内で何ら身体的にも問題は起きませんでした。それどころが、正常値以下に抑制された症例の多くが逆に正常に復したという事実は大きな驚きでした。十分な診察もせず漫然と使い続けるのではなく、メリとハリの要領で使用量や部位別に上手に使うことが大切です。最近外来で勧めているのがプロアクティブ治療です。適切な薬剤で十分量の使用で寛解状態を作り、その後すぐに休薬するのではなく、週2回は外用することで再燃効果を大幅に減少することが出来ます。何も全身同時に開始することはありません。顔からでも、腕からでも良くなった場所はスタートO.K !眼に見えない副作用に怯えることなく、上手に使うことが重要なのです。尋常性ざ瘡(にきび)の食事療法について最近、20~30代の女性の患者様から肌に関するちょっとした質問を受けます。医者なので、ある程度はアドバイスしてあげたいのですが、尋常性ざ瘡の方の食事に気をつけることや最近の新しい治療の動向を、他科医師として知っておくべき事はありますでしょうか?御教示よろしくお願いします。一般的によく言われていることですが、甘いものや脂っこいものは避けるべきです。スナック菓子も同様です。ただ、肌に良くないからといって全部やめようと話しても難しいと思います。食べる回数や量を減らすことが大切です。また女性には生理があります。ホルモンバランスの変化する生理前に悪化する例が多く、イライラする精神的なストレス以外にヤケ食いや飲酒など食生活が悪化要因の場合があります。ディフェリンと言う新しいにきび用の外用薬が発売されています。効果は従来品のアクアチムクリームやダラシンゲルより期待出来ます。但し、皮膚のカサツキがでる場合がありますので注意して下さい。基本的なこととして、入浴時の洗顔が大切です。オイリー肌用の石鹸で十分に洗うこと、とくにベタツク&症状の強い部位は2度洗いを勧めます。入浴後、ご自身の肌にあった化粧水を塗るとかさつきは予防できますが、べたつくクリームやローションは毛穴をつぶしてしまうので禁止です。難治性の症例には、このほかピーリングが行なわれています。毛穴が詰まって角質の溜まった白ニキビや炎症の強い赤ニキビに有効です。自費診療になりますが、皮膚科専門医で行なっている施設は少なくありません。総括いろいろとご質問を頂き感謝しております。話すのは自信が多少あるのですが、文章では相手の理解度が伝わりません。また質問があれば聞いて下さい。実は私が大橋病院ホームページ委員会の責任者なのですが、機械音痴と雑用が多く皮膚科ホームページの更新が遅れ気味なのです。時間があるときに更新いたしますので、時々見て下さい。研修希望者に:どんどん大橋皮膚科を見学に来て下さい。大橋病院は歴史的な作りで驚くかもしれませんが、アットホームな環境で仲良く頑張っています。教える体制はしっかりしています。何をしたいのかをはっきり明示してそれが努力に値する仕事なら全面的にサポートします。ただ、まず皮膚科医としての基本を覚えなければいけません。皮膚科は奥が深く、自己完結型の科と言えます。ある程度オールラウンドの皮膚科医を目指し、その上で疑問、難問の解決を同時進行で行うと臨床が100倍楽しくなります。教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

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高血圧2010 第1回 減塩 2010 (1)患者さんの食塩摂取量を知る

第33回日本高血圧学会総会が10月15~17日に開催された。前回の開催以降、高血圧の領域では、レニン阻害薬、 ARBとCa拮抗薬の配合剤が発売され、これら薬剤の処方のあり方が話題になりがちではあり、本総会でもそれらを主眼としたセッションが開かれた。それらは他の情報ソースに任せるとして、ケアネットでは前回の総会が開催された 2009年10月からこの1年の間に影響力が大きい研究結果が発表された「減塩」「微量アルブミン尿」「降圧目標」の3つにテーマを絞り、学会での発表内容とこの1年間のトピックスをシリーズで採り上げたいと思う。第1回、第2回は「減塩」を採り上げる。現状:「1日6g以下」の減塩を指示している医師は3割未満 ―第33回日本高血圧学会総会より―久留米大学心臓・血管内科の甲斐久史氏らは「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」が実地医家における有用度および診療実態に関するアンケート調査結果を発表した。対象は福岡県内科医会と佐賀県医師会内科医部会の会員2,415 名に郵送し、896名から回答を得た(回答率37.1%)。1日の食塩摂取量をどのくらいに指導しているかという質問に対して、 JSH2009で推奨している「6g以下」と回答したのは30%未満であったの対し、「7g以下」が約17% 、「10g以下」が約16% 、「指示していない」が約23%にのぼった。+5g/日の食塩摂取により脳卒中が23%増える ―BMJ誌2009年12月5日号より―減塩の重要性を支持する新しい知見が昨年12月に得られた。この報告によると、塩分摂取量が多い群は、少ない群よりも脳卒中のリスクが有意に高く(相対リスク:1.23、95% 信頼区間:1.06-1.43 、p=0.007)、心血管疾患のリスクは有意差がないものの高い傾向がみられた(相対リスク:1.14 、95% 信頼区間:0.99-1.32 、p=0.07)。これは過去 40年に実施されたプロスペクティブ試験13件、19コホートをメタ解析し、17万7,025人(正常血圧者も含む、87,809 名は日本人)のデータから得られた結果で、1日の塩分摂取量が 5g多いと脳卒中のリスクが23%、心血管疾患のリスクが17%高まることを示した。弊社が実施したアンケートにおいても高血圧診療における減塩に関する重要度は他の生活習慣修正に比べて群を抜いて高い。高血圧診療において減塩が重要であると認識されているにもかかわらず、減塩指導が難しいのはなぜか。減塩指導の第一歩である食塩摂取量の評価にその一因がある。実際に患者さんの食塩摂取量を把握するのに難渋している先生方も多いと思われる。本総会でも、より簡便に、それであって正確に食塩摂取量を評価する方法について発表された。起床後第2尿は、24時間蓄尿に近い信頼性で食塩摂取量を評価できる ―第33回日本高血圧学会総会ポスター発表より―岩手県立中央病院の大本晃弘氏は、起床から臥位にならずに採取した「起床後第2尿」が簡便かつ「24時間蓄尿」に近い信頼性が得られることはすでに報告されているが、「随時尿」では食塩摂取量を過少評価することを発表した。減塩下における男性(n=53)の食塩摂取量を「24時間蓄尿」「起床後第2尿」「随時尿」によって評価したところ、それぞれ6.6±1.5g、6.2±1.7g、5.6±1.5gであり、随時尿による評価は24時間蓄尿に比べ、有意に低く評価された。女性では有意差が認められなかった。次に男性高血圧患者(n=22)において高食塩食を摂取した期間の「24時間蓄尿」「起床後第2尿」「随時尿」によって食塩摂取量を評価したところ、15.7±2.1g、16.2±2.3g、11.3±1.3gであった。これらの結果から、随時尿は24時間蓄尿に比べ、有意に低く評価し、特に高食塩摂取下では過小評価の程度が著しいことを示した。高血圧患者では正常血圧者より減塩モニタによる食塩排泄量が高値 ―第33回日本高血圧学会総会ポスター発表より―減塩モニタは、夜間尿(約8時間相当)の食塩量を電動法を用いて測定し、そこから24時間食塩排泄量を推定する。すでに減塩モニタを用いた自己測定が簡便かつ信頼性が高いことが報告されている。国立病院機構の今泉悠希氏は、減塩モニタを用いた自己測定によって高血圧患者、正常血圧者の食塩排泄量を家庭での自己測定により、30日間の平均値を比較検討した。その結果、高血圧患者の30日間平均食塩排泄量は9.1g/日と、正常血圧者の8.3g/日より高かった。特に肥満高血圧では9.6g/日と高く、非肥満群では8.1g/日と正常血圧者と同程度であり、肥満高血圧患者における減塩指導戦略の構築の必要性を訴えた。日本高血圧学会 減塩ワーキンググループの報告では、食塩摂取量の各評価法について信頼性と簡便性を比較しているが、「起床後第2尿」は、簡便性がやや劣るものの、信頼性はやや優れると評価し、「減塩モニタ」は、信頼性がやや劣るものの、簡便性が優れると評価している。診療現場で食塩摂取量を評価する目的は、正確性よりむしろ患者に減塩を継続しようという意識をもってもらうことであり、種々の評価法の特徴を把握し、診療現場に合わせて選択することが薦められている。では、減塩指導の方法についてどのような試みがみられているのだろうか。 次回は、減塩に対する試みの成果をレポートする。(ケアネット 藤原 健次)

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乳幼児の喘鳴は、細菌感染、ウイルス感染とそれぞれ独立して関連

乳幼児における急性の喘鳴と細菌感染には、有意な関連があることが明らかにされた。デンマーク・コペンハーゲン大学のHans Bisgaard氏らが、前向き出生コホート研究を行い報告したもので、関連はウイルス感染と同様だが独自のものだという。ガイドラインでは、乳幼児の喘鳴には抗菌薬投与をルーチンに行わないよう勧告している。無作為化試験による喘鳴への抗菌薬投与の有効性も報告されていないが、欧米での最近の就学前児童を対象とした調査で、ウイルス感染による急性喘鳴例では抗菌薬が最も多く処方されていることが明らかになっている。こうした背景を受けBisgaard氏らは、これまで研究報告がされていない喘鳴と気道への細菌感染との関連、およびその関連がウイルス感染のものとは別のものなのか調査を行った。BMJ誌2010年10月9日号(オンライン版2010年10月4日号)掲載より。生後4週~3歳児を対象に、喘鳴と細菌感染との関連を調査本研究は、コペンハーゲンで喘息の母親から生まれた411例を追跡調査している「コペンハーゲン前向き小児喘息研究」の被験児を対象に行われた。母子は生後4週から3歳になるまで、研究拠点のクリニックに定期通院または緊急入院した記録があった。主要評価項目は、喘鳴発作時の気道に認められた細菌あるいはウイルスの頻度と、定期通院時に呼吸器症状が伴わなかった頻度とした。喘鳴との関連オッズ比、細菌感染2.9、ウイルス感染2.8細菌感染に関する解析対象は984検体(幼児361人)だった。ウイルスに関する解析対象は844検体(幼児299人)、両方一緒に解析されたのは696検体(幼児277人)だった。喘鳴発作は、細菌感染、ウイルス感染いずれとも関連が認められた。細菌感染のオッズ比は2.9(95%信頼区間:1.9~4.3、P

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講師 斎藤充先生「骨粗鬆症治療「50%の壁」を打破する「骨質マーカー」」

日本整形外科学会認定専門医、日本骨粗鬆症学会評議員など多数の学会所属、役員・評議員を務める。骨質研究会世話人。日本における骨粗鬆症関連研究では多くの研究奨励賞受賞、主にコラーゲンと骨質関連の基礎研究および臨床研究を得意とする関節外科医。高齢化の波で患者は増加、治療は「50%の壁」に阻まれている骨粗鬆症の患者さんは現在約1,100万人いるといわれています。60歳以上では約半数の方に症状が見受けられます。私は外来で400人くらいの患者さんを診ていますが、その他、郊外型の病院でも約400人の患者さんを受け持っています。しかし、約1,100万人のうち15%ほどの患者さんしか治療されておらず、残りの約85%は骨折しやすい状況にあるのにもかかわらず治療されていません。医師の骨粗鬆症に対する認識不足と、高齢者の急増も相まって、治療が追いついていないのが現状です。高齢者は骨粗鬆症がきっかけで寝たきりになる確率が高く、同時に死亡の危険性が高まるため治療すべき疾患であり、高齢者医療の大きな問題の一つになっています。骨粗鬆症による骨折を起こされた方は、骨折のない方に比べて、死亡のリスクは8倍も上昇します。これまで、骨粗鬆症の治療にあたっては、骨密度を高める薬剤の処方のみで、他にこれといった治療が施されていませんでした。しかし、骨密度が改善したにもかかわらず新たに骨折を起こしてしまう方が少なくありません。これが「治療効果の50%の壁」です。人間にいろいろなタイプの人がいるように、骨粗鬆症にもいろいろなタイプがあり、その人に合う治療を考えなくてはいけません。そのような理解を踏まえて、私たちの研究により骨の強さは、骨密度すなわちカルシウムの量の問題だけで説明できないことがわかってきたのです。私たちはここから骨の量や密度だけではなく、「骨の質」が重要ということを発見しました。私は、整形外科の長年の診療経験の中で、手術で骨を触りすべての患者さんは個々に違う骨を持っていることを実感しました。人間の体の中で、骨だけを治療しても何の解決にもつながらないのです。臨床医は、現場で患者さんを直接診察し、治療して疑問点を基礎研究に展開し、その原因を突き止めることができます。骨粗鬆症は3つのタイプに区別される骨の強さは骨密度だけではないということは、整形外科医には一般的に知られていましたが、今まで骨の質、またその質を具体的に評価するものさしがありませんでした。私は、整形外科医として、骨や血管・軟骨・腱といった組織を支えるコラーゲンの研究をしていました。コラーゲンに分子レベルで過剰な老化産物が蓄積している患者さんは、骨にカルシウムが蓄積されていても、骨や血管がもろく、骨折や動脈硬化を同時に発症することを見出しました。そこで、遺伝子の研究と並び蛋白質の老化について世界初となる分析装置を独自に開発・研究し、骨の質を評価するマーカー「骨質マーカー」を作り上げました。骨質マーカーはコラーゲンの老化産物そのものを測定、患者さんの全身のコラーゲンの老化状態を判別します。コラーゲンは、鉄筋コンクリートの鉄筋、骨密度はコンクリートに相当するため、錆びの程度を骨質マーカーで評価することで患者さんの体質に合ったテーラーメイド治療ができます。骨質マーカーで判別できる骨粗鬆症の患者さんの3つのタイプI、「骨質劣化型」……骨密度が高く骨質が悪いII、「低骨密度型」……骨密度が低く骨質が良いIII、「低骨密度+骨質劣化型」……骨密度・骨質ともに低い「骨密度が高く骨質の良い人」に比べて、Iのタイプでは1.5倍、IIでは3.6倍、IIIのタイプは7.2倍も骨折の危険性が高くなることが判明しています。糖尿病、高血圧、動脈硬化、腎機能障害、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの患者さんは、全身性のコラーゲンに過剰老化が生じるため、骨のコラーゲンの錆びにより、骨密度が高くても骨質劣化型骨粗鬆症と診断できます。骨密度を高める薬剤以外に、骨質を改善するエストロゲン受容体モジュレーター(SERMs)や、各種ビタミン類(ビタミンB群、葉酸、ビタミンK・D)の併用も、骨密度と骨質を同時に改善できます。SERMsとの併用は一般的には行われないため、保険適応のあるビタミン剤を併用するのがよいでしょう。骨質の良悪は、血液・尿検査で、血中のホモシステインという悪玉アミノ酸の測定、コラーゲンの老化産物(ペントシジン)の測定による2つの評価が有効です。「骨質マーカー」は、誰も研究していなかった分野から生まれた私には中学・高校とサッカーのインターハイ・国体の選手として活躍した経験があります。そのため、自然とスポーツ医学を勉強したいと考えるようになりました。当時、慈恵医大はスポーツ医学に関して他大学より一歩リードしていたという理由から入学を決断しました。しかし、スポーツ医学を学ぶ前に運動器疾患の基礎となる整形外科を学ばなくてはいけませんでした。整形外科医として学んでいる間に、世間は高齢化と共ともに骨粗鬆症患者が急増、手術執刀で様々なタイプの骨を観察することにより、骨の強さは量や密度ではなく、質が重要であると実感しました。同時に、何が原因で骨質が悪くなり骨折するのかと疑問が湧いてきたのです。そこで、手術治療で患者さんの骨を触り、元々骨がもろい人、堅い人もいる骨の体質に注目しました。病態の解明のため患者さんの骨にどんな違いがあるのかと漠然と考えていました。そんな時、コラーゲンの研究を多く手がけた教授から、昔行っていたコラーゲンの研究を引き継ぐようにいわれましたが、ゲノム・遺伝子研究が全盛の時代、コラーゲンと蛋白質の研究にはまったく興味を持てませんでした。師に従い研究を始めましたが、コラーゲンの研究は楽ではなかったので、独自に分析装置を開発しました。この分析装置の開発がきっかけとなり今日の骨質低下の機序の解明からバイオマーカーの発見に至ったわけです。世界中の研究者は、手間のかかるコラーゲンの研究には手を出さずキットさえあればできる遺伝子解析に没頭していた当時からすると、私としては、まさか15年後にこんな発見に繋がるとは夢にも思いませんでした。私は、臨床医として患者さんの治療、日々実験を続けるうちに、コラーゲンの老化が進行しやすい患者さんは、骨密度が高くても骨折や動脈硬化を同時に発症することに気づきました。そして,コラーゲンの過剰老化こそ、骨質低下の本体であることを突き止めました。長年の無駄に思える実験や臨床経験は、今思えば何一つ無駄ではありませんでした。「無駄こそ大事な引き出し」で、今では世界のライバル達から、どのような質問をされても誰にも負けない豊富な引き出しのおかげで返答し戦うことができます。私は、この臨床を行いながら行う基礎研究という日本独自のスタイルは、世界と戦うためにも良いシステムだと思っています。臨床研究の発表、研究が世界で認知されるためには誰も注目していなかった骨質とコラーゲンの密接な関係と体全体の老化が、世間で話題になり始めたころ、この臨床研究の分野で分子レベルから患者さんの臨床データまで持っていたのは私だけでした。その圧倒的な引き出しの数は世界のどのチームにも負けませんでした。そして、世界中の研究者たちが、ポストゲノムの時代に突入し、ようやく蛋白質の研究に目を向け出したころ、我々のデータの正当性が次々と世界から追認され、妥当性が証明されました。せっかくのデータを埋もれさせないために、私はその成果を世界の研究者に知ってもらう手立てとして、必死に英文の研究論文を執筆していきました。ある欧米の教授に「世界と戦うためには、同じサッカー場に入らなくてはいけない。そのために日々、スパイクを磨き、技術を磨け。今、君はそのすべてを備えた。自信を持ってフィールドに入ってきなさい。Trust your Brain !!」と。海外留学の経験のない私でも、英語論文を発表することで、世界はよい仕事には正しい評価をしてくれるのだと思いました。今では、骨研究の名だたる英文雑誌から総説執筆の依頼を受けるなど、オピニオンリーダーになることができました。十数年、地道に頑張ってきたことが報われた、と感じています。最先端のことも大切ですが、地道に継続することが大事でしょう。現在、研究で発見した基礎的、臨床的事実は、診療ガイドラインに盛り込まれるようになり、臨床に役立つ基礎研究ができたと自負しています。今後の骨粗鬆症の治療において、骨質マーカーの測定が一般的になり、適切な治療をされてない患者さんがいなくなることを祈ります。臨床研究は目の前にあるもの、標準は世界へ地道で長い研究生活でしたが、数年前まで研究はあまり楽しいとは思えませんでした。世間に認知されるために様々な臨床的事実を把握し、基礎研究で解明できないかを自分で考えてきました。私の研究はすべてを自分たちで行っています。町工場ともいえるような時間と手間が他の研究チームと比べて数倍かかり、決して楽ではありません。データを取り、積み重ねていくことで、知られていた理論を提唱づけることができ、社会的にも認知されるわけです。しかし、これは臨床医だからできることですね。海外留学をして論文を書き、華々しくこれから活躍したいという方もおられると思います。しかし、長くは続かず消えていく方も多く見てきました。また、先端医療など新しいことに飛びつきたくなる時が必ずありますが、そうではない研究課題でも、どこかに宝は隠れているものです。私の場合、研究が進むにつれ、知識という引き出しが多くなり、いつの間にか、どんな質問、疑問にも答えられるようになっている自分に気が付くことができました。どんな研究でも地道に頑張っていれば、必ず花が開き患者さんのためになるでしょう。いくら有名な先生のもとで研究室の一つの歯車の一つとして動いて立派な論文を作成したとしても、その後の自分自身のアイデアで研究が立案できるか、それを世界というフィールドにもっていけるかが大切なのです。良いアイデアを持ち研究を続けていくことができるのかにかかっています。情熱を注げるもの、テーマに出会えた時、患者さんの治療に生かすことができるのなら医師として研究者として幸せだと思います。そして、世間で認知され、国内からそれは世界へと道が続いていきます。あなたの目の前には研究すべきテーマ、やらなければいけないことがあるかもしれません。それが面白いと思えば、人に伝えることも容易になり、プレゼンもきっとうまくなります。自分の分野が明確化し、その分野での自分の地位を築くことにつながるでしょう。質問と回答を公開中!

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前立腺がんのルーチンスクリーニングは支持できない:メタ解析から

前立腺がんスクリーニングは、診療ガイドラインで推奨されているが、スクリーニングが全体としての死亡率や、患者にとって最も重要なアウトカムである疾患特異的な死亡率を改善するかどうか、さらにスクリーニングの有益性ががんの過剰検出や過剰診療が招く有害およびコストを上回るかどうかについては明らかにされていない。米国フロリダ大学泌尿器・前立腺センターのMia Djulbegovic氏らの研究グループは、前立腺がんスクリーニングの有益性と有害さのエビデンスを検討するため、これまでに発表されている前立腺がんスクリーニングに関する無作為化試験のシステマティックレビューとメタ解析を試みた。BMJ誌2010年9月18日号(オンライン版2010年9月14日号)より。6件の無作為化試験データを解析Djulbegovic氏らは、Medline、Embase、CENTRALなどの電子データベースで2010年7月までにリストアップされた中から、前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング(直腸診の有無にかかわらず)群と非スクリーニング群との比較した無作為化試験を選び検討した。データ抽象化と方法論的な質の評価はGRADEアプローチ法を用い、2人の独立したレビュアーによって評価し、主たる研究者によって検証が行われた。マンテル‐ヘンツェル検定法とランダム効果モデル下での相対リスクと95%信頼区間検定が行われた。計6件の無作為化試験の、基準を満たした38万7,286例が解析対象となった。スクリーニングの有意な効果認められずスクリーニングは、前立腺がんと診断される可能性の増大(相対リスク:1.46、95%信頼区間:1.21~1.77、 P

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鳥谷部俊一先生の答え

ラップ療法の患者家族への説明方法患者さんを自宅で介護している家族の方へ、ラップがガーゼよりも有効である旨を説明するときに上手く伝える方法はあるのでしょうか?また先生のご経験で、このように伝えると上手くいく。というノウハウがございましたら是非教えて頂きたいと考えております。宜しくお願いします。このような場合は、モイスキンパッドをお勧めします。「ガーゼの替わりにバンドエイド、キズパワーパッドを貼るのが時代の先端。治りも早く、痛くない。モイスキンパッドをよく見てください、巨大なバンドエイドですよ」。こんなふうに説明してください。モイスキンパッドで良くなってきたら、床ずれパッドを見せて、「そっくりでしょ。しかも安いんです」とお話しましょう。アトピー性皮膚炎のラップ療法アトピー性皮膚炎でもラップ療法が有効であるとか有効でないとか、賛否両論のようですが、先生はどのようにお考えでしょうか?また、有効である場合に、どのような点に気をつければ宜しいでしょうか?ご教示宜しくお願いします。ラップ療法は、床ずれの治療法です。「アトピー性皮膚炎にドレッシング療法が有効か」という質問にお答えできる立場ではありません。アトピー性皮膚炎に対するドレッシング療法の可能性の問題は興味深く、論議が深まることを期待します。モイスキンパッドはじめまして。日々、「皮膚・排泄ケア認定看護師」とともに床ずれの診療をさせていただいている一皮膚科医です。以前、形成外科の先生が手作りで、「モイスキンパッド」と同様なものを使用されていました。「皮膚・排泄ケア認定看護師」は、あまりいい顔をしていませんでした。実際、ある程度褥瘡は改善するものの、その周囲にかぶれを起こしたり、体部白癬に罹患する患者さんが後を立ちませんでした。結局、ラップ療法を中止することとなりました。これについて、先生はどのようにお考えになりますか?どのようにすれば、こうした皮膚トラブルを避けられますか?改善点はありますでしょうか?ご教示いただけるとありがたいと思います。ご質問ありがとうございます。いろいろ工夫してラップ療法を試みたことに敬服します。ラップ療法や、モイスキンパッド処置では、抗真菌剤を塗布して真菌症を簡単に治療することができます。2000年の医師会雑誌に書いたラップ療法の論文では、合併した「カンジダ症2例を抗真菌剤で治療した」と明記しております。夏など暑い季節には、予防的に抗真菌剤を塗ります。クリーム類がお勧めです。ラップ療法や、モイスキンパッド処置ではドレッシングを絆創膏で固定しないで毎日交換するので、外用薬を毎日塗るのが容易です。真菌は湿潤環境で増殖しますので、吸水力の高いモイスキンパッドを使って皮膚を乾燥させることをお勧めします。手作り「モイスキンパッド」の吸水力についてはデータがありませんのでコメントできません。既成のドレッシングや軟膏ガーゼの治療の場合も真菌感染を生ずるのですが、なぜか話題になることが少ないようです。高齢者の足をみると、ほとんどの方の爪が白く濁って変形しております。白癬症です。爪白癬がある人をよく観察すると、全身に角化した皮疹が見られます。掻痒感があれば、爪で引っかいた痕跡や、体を捩って背中を擦り付ける動作があるでしょう。足ユビ、足底、足背、下腿、膝、臀部、背部、後頭部、手、上肢などをよく調べれば、白癬菌が検出されます。皮膚を湿潤環境にすると、真菌類(カンジダ、白癬)が増殖しやすくなります。抗真菌外用薬(クリーム)を積極的に使用して治療します。基礎疾患が重篤な場合は?現場の知恵を洗練していく先生に敬意を持っております。通常の免疫能がある患者さんにおいては、水道水による洗浄と湿潤環境で軽快するというのはわかりますが、がん治療に伴い免疫不全状態にある患者さん、糖尿病のコントロールがうまくなくこれも免疫不全のある患者さん等、表在の細菌、真菌に弱いと考えられる患者さんにも同様に適応し、効果を期待できるのでしょうか。こうした患者さんにはある程度の消毒なり軟膏治療が必要になるのではないでしょうか。困難な症例に取り組むご様子に敬服します。基礎疾患が重篤な症例に対するラップ療法の有効性は確立しておりません。よって、このような症例には、「ガイドライン」に従った治療をするのが安全であると考えます。ただし、「こうした患者さんに消毒・軟膏治療が有効である」というエビデンスが無いのが現状です。また、「基礎疾患が重篤な患者にこそ、消毒や軟膏による有害事象が生じ易いのではないか」という観点からの検討も必要です。床ずれに対するラップ療法の治癒の機序床ずれはもともと血流障害ですが、これがラップ療法で治癒する機序は何でしょうか。創傷治療の本質に迫るご質問、ありがとうございます。既存の軟膏ガーゼ処置は、「厚い小さなドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を床ずれに加えるため、血流障害をおこして治癒を遷延させます。ラップ療法は、「薄い大きななドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を打ち消すことにより、血流を改善して治癒を促進する湿潤療法です。床ずれの原因は、「外力による血流障害」です。一方、下腿潰瘍などの末梢動脈疾患(PAD)は、「外力によらない血流障害」です。床ずれは、外力(圧力/ずれ力)を取り去ることにより血流が改善して治癒に向かいます。例えば、仙骨部の床ずれは、「腹臥位」で圧迫を防ぐことにより治癒した、という報告があります。要するに、「圧迫さえ無ければ床ずれは普通の切り傷と同じような治り方をする」ということです。圧迫を減らすための工夫が、体圧分散マットレス、体位変換、ポジショニングなどです。ラップ療法は、外力を分散するドレッシング療法・湿潤療法です。感染がある 虚血がある感染症があれば、抗菌作用のパスタ剤や、感受性のある抗菌軟膏やソフラチュールなどは一定期間必要じゃないでしょうか。血流を高めるPG剤も必要では。また、化学的デブリードメントにあたるプロメラインなども必要ではないでしょうか。ラップ療法を実践している医療者の多くは、感染症は抗生剤全身投与で、血流改善は(必要に応じて)PG剤全身投与で治療しております。デブリードメントは、外科的デブリードメントと湿潤療法による自己融解を行なっており、化学的デブリードメント剤は使っておりません。「学会ガイドライン」を参照したところ、ご指摘の外用剤はガーゼとの組み合わせでエビデンスが証明されているようですが、ラップ療法やモイスキンパッドとの組み合わせによるエビデンスはございません。今後、エビデンスが集積されてから併用されることをお勧めします。ラップで治療困難な症例の判別皮膚所見をみた当初から、外科治療、皮弁手術が必要かどうかは、判別可能でしょうか。ある程度ラップしたあとで、考慮するのでしょうか。もちろん他の疾患の管理をし栄養、感染など評価をした場合として。ラップ療法は床ずれの保存療法です。外科治療、皮弁手術を考慮される場合は、「学会ガイドライン」に従った治療をお勧めします。2010年の日本褥瘡学会での議論を拝見した限りでは、外科治療、皮弁手術の適応症例は減っているようでした。感染症に対して抗生剤と抗真菌薬の外用と全身投与について感染症には抗生剤の全身投与は理解できるのですが、表在真菌感染症に抗真菌薬の外用が効くのはどうしてでしょうか?抗生剤の外用はなぜ不適切なのでしょうか?ご教授よろしくお願いします。一部の領域(皮膚科、耳鼻科、歯科など)を除き、細菌感染症の治療は抗生剤全身投与が標準治療です。創感染に対する抗生剤外用は、耐性菌誘発リスクなどの理由から、CDCガイドラインなどは推奨しておりません、「学会ガイドライン」にも推奨の記載が見当たりません。表在真菌感染症は、表皮が感染の舞台なので、抗真菌外用剤がよく効きます。抗生剤の外用は無効です。細菌感染の舞台は真皮や皮下組織、あるいはさらに深部の組織です。閉鎖療法の場合は、創を閉鎖して組織間液が深部組織に逆流する結果抗菌薬が感染部位に到達すると想像されますが、ラップ療法・開放性湿潤療法では、創を開放するので組織間液の逆流は起きず、抗菌剤は感染部位に到達しないと考えます。全身投与された抗生物質は、血流を通じて感染部位に到達します。糖尿病性神経症、ASO合併の下肢壊疽80歳、女性、糖尿病で血液透析の患者です。3年前 右足趾を壊疽で切断。今回は左下足に足趾を中心に踵まで、壊疽、深い、汚染の褥瘡様潰瘍があります、悪臭がします。切断は拒否しています。ラップ療法は有効でしょうか?ラップ療法は、床ずれの治療法です。よって、この症例はラップ療法の適応外です。PADのガイドラインに従った治療をお勧めします。血管治療、デブリドマン後のドレッシング材としてモイスキンパッドが有効であったとの報告があります。このような処置は、ラップ療法とではなく、ドレッシング療法、湿潤療法と呼称すべきです。病院皮膚科形成外科との調整病院内科勤務医です。当院では褥瘡ケアは皮膚科の褥瘡ケアチームが回診しています。形成外科は陰圧吸引療法の高価な機械を使いますが患者の一部費用負担はあるものの病院としては赤字になるようです。どのようにして病院全体の褥瘡ケアを統一改善していったらよいでしょうか。アドバイスをお願い申し上げます。かつて同様の立場にあった内科医として、同情申し上げます。1999年に日本褥瘡学会でラップ療法の発表をして12年になりますが、2009年の学会シンポジウムで「ラップ療法と学会ガイドラインは並立する」と(私が)宣言したことが、「在宅のラップ療法を条件付で容認する」という2010年の学会理事会見解につながったようです。「褥瘡ケアの統一」は、学会ガイドラインで統一するか、ラップ療法で統一するかの選択問題ですが、未だ結論が出ておりません。より多くの方がラップ療法を支持するようになれば、学会がラップ療法を受容する日がいずれ来るでしょう。皆様のお働きを期待申し上げます。総括医学の歴史を紐解くと、新しい考え方が「専門領域の侵害」と受け止められ、いろいろな形で抵抗を受けてきたことが分かります。ゼンメルヴァイスの「消毒法」が医学界で受け入れられたのは、ゼンメルワイスの死後のことです。ラップ療法はインターネットの時代に遭遇して、学会よりも一般社会で先に普及しました。情報化社会では、権威者よりも一般社会が先に一次情報を入手することができます。そうした中にあって、情報の真贋を見抜く力(情報リテラシー)が必要であり、そうした能力が専門家と呼ばれる人々に求められております。MediTalkingという場でラップ療法の議論が深められたのはこうした時代の反映であり、有意義なものと考えます。顧問 鳥谷部俊一先生「床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!」

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鳥谷部俊一先生 [追加記事] 床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!

1979年東北大学医学部卒業。東北大学医学部第二内科、鹿島台町国民健康保険病院内科、慈泉会相澤病院 統括医長、至高会たかせクリニック 顧問を経て、現職に至る。床ずれ治療「ラップ療法」の創案者。追加記事掲載について形成外科専門医の方から「ラップ療法」の危険性について指摘いただきました。<指摘内容>閉鎖療法は簡便なので、医療従事者が取り掛かりやすい。しかし創傷に精通したものでないと症状を悪化させる場合がある。傷の中には感染を伴っている状態のものがあり、これにラップ療法を行ったため、細菌が中で繁殖し、敗血症に陥った例がある。この点に関して、鳥谷部先生からのコメントを追加記事として掲載いたします。鳥谷部先生からのコメント「2010年に、『いわゆる「ラップ療法」に関する日本褥瘡学会理事会見解』が発表されました。http://www.jspu.org/jpn/info/pdf/20100303.pdf『褥瘡の治療にあたっては医療用として認可された創傷被覆材の使用が望ましい。非医療用材料を用いた、いわゆる「ラップ療法」は、医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な在宅などの療養環境において使用することを考慮してもよい。ただし、褥瘡の治療について十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである。』2011年、ラップ療法(食品用ラップまたは穴あきプラスチックフィルムを貼付する処置と標準治療(学会ガイドラインに準拠した処置)を比較したランダム化比較研究が行われ、両群の治療成績が同等であるとの結果が学会誌に発表されました*1。この結果をうけ、近く改訂される日本褥瘡学会ガイドラインでは、「"いわゆる"ラップ療法(食品用ラップや穴あきプラスチックフィルムを貼付する処置)」が推奨度C1の処置法として掲載される見通しです。学会ガイドライン検討委員会は、ラップ療法のリスクが高いことを考慮して「十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである」との文言を付け加えたようですが、それならばむしろ「医師の目の届きにくい在宅などではなく、病院に入院している患者に限定して行い、入院患者の治療に習熟した医師が在宅患者を治療すべきである」とするべきでしょう。そもそもラップ療法のランダム化試験は大部分が入院患者を対象にした臨床研究です。そのエビデンスを入院患者ではなくあえて在宅患者に限定適用しガイドラインに書き込んだのは、諸般の事情があったのでしょうか。筆者が日本医師会雑誌(2000年)に発表したラップ療法を追試した方々の多くは、それまでの外用剤とガーゼによる処置法で苦労を重ね、創感染治療に習熟した医師たちでした。最初の何例かは慎重を期して入院管理下で行い、医師自ら毎日処置を行いました。創感染など合併症の管理は当然のことでしたが、それでも従来の治療法よりは比較的容易に対処できたと伝え聞いています。ラップ療法が普及するに従い、従来の治療経験なくして最初からラップ療法を行う医師あるいは非医師があらわれたのでしょうか。ラップ療法(ラップや穴あきポリエチレンを貼付)は、素人目には「簡単な治療」に見えるため、ややもすると安易に行われ、医師の目の届かないところで行われているうちに重症感染を併発し、対応が遅れて敗血症のため亡くなった事例があったのではないかと危惧しております。ラップ療法の臨床研究によると、ラップ療法が他の治療法に比べて特別に創感染を起こしやすいという傾向は認められなかったそうです*1。創感染については筆者は以下のように対応していますので参考にしてください。『褥瘡周囲の熱感,浮腫,滲出液増加,疼痛,発熱,白血球増多,CRP上昇を認めた場合は,感染あるいは持続感染と考え,第一,第二世代のセフェム系あるいは合成ペニシリン系抗生剤,マクロライド,アミノグリコシドなどを全身投与する.創面を細菌培養すると,創感染の有無にかかわらず,大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌が検出される.創面より培養された菌の多くは耐性菌で前述の抗生剤は無効と思われるのだが,実際のところ感染兆候は消失し創所見は改善する.感染終息後に細菌培養をすると,これらの耐性菌が検出される.すなわち,創の表面にいる菌は創感染とは無関係であり,起炎菌は創の深部に存在し,その多くは耐性菌ではないのだろう.褥瘡を有する患者が肺炎や尿路感染を起こすと,創感染がなくても創の状態が悪化(浮腫,滲出液の増加,肉芽壊死)することが多い.発熱時は全身状態を評価し,感染を疑った場合は積極的に抗生剤を全身投与して治療してほしい.』褥瘡の治療は、ラップ療法であれ、学会標準治療であれ、いずれの場合でも創傷治療に経験のある医師が十分な注意を払って行うべきものです。褥瘡治療の経験に乏しい医師は、入院患者を対象に、感染のない浅い褥瘡を医療用ドレッシング(モイスキンパッド・白十字)で治療し、経験を積んでください。3度の褥瘡に対しては早期のデブリードマンを行って創感染を未然に防いでください。感染の兆候(発熱、熱感、腫脹、疼痛、膿性浸出液)を認めたら、早期に抗生物質を全身投与して感染の進展を防ぎましょう。感染が深部に及ぶ症例、骨壊死を伴う症例、閉塞性動脈症を伴う足病変は、しかるべき専門医のいる病院に入院させて治療してください。以上の事例に習熟してから、ラップや穴あきポリエチレンを貼付する「"いわゆる"ラップ療法」に挑戦したり、在宅患者の治療をしていただきたい。褥瘡を発症するような患者はもともと重篤な基礎疾患を合併しており、一旦感染が重症化すると敗血症のため亡くなる可能性が高いのはご承知のことと存じます。患者・家族には、褥瘡がしばしば致死的な疾患であることを十分に説明し、同意を得たうえで治療してください。筆者は2002年以来同意書書式例を公開しておりますので、ぜひ活用してください。*1 文献:水原章浩,尾藤誠司,大西山大 ほか:ラップ療法の治療効果~ガイドラインによる標準法との比較検討.褥瘡会誌, 13:134-141,2011. 褥瘡の予防・治療に関する説明書(例)褥瘡(じょくそう)・床ずれとは、ふとんに接触している皮膚が、すれや圧迫によって血のめぐりが悪くなってできる傷です。自力で寝返りを打てない状態になると、一定の部位に力が加わり続け、皮膚には血液が流れなくなり壊死が生じます。これが褥瘡です。○○○病院では褥瘡対策委員会をつくり、病院内のみならず地域での褥瘡の予防と治療および研究に取り組んでいます。最近褥瘡の研究が進み、次のようなことがわかってきました。圧力を分散させるエアマットレスや体位変換などによって褥瘡の発生を減らすことができるが、最大限の努力をしても患者の全身状態が悪ければ発生を免れない。病院を受診する前にできかかっていた褥瘡が受診または入院後に完成して、あたかも受診後(入院後)にできたように見える経過をたどる例がある。褥瘡の治療法はこの数年間で大きく進歩したが、患者の全身状態が悪ければ必ずしも治らない。褥瘡の治療法はいまだ発展途上である。○○○病院では褥瘡の患者さまにラップ療法を実施しております。(鳥谷部俊一,末丸修三:食品包装用フィルムを用いるⅢ-Ⅳ度褥瘡治療の試み,日本医師会雑誌2000;123(10):1605-1611.水原章浩,尾藤誠司,大西山大 ほか:ラップ療法の治療効果~ガイドラインによる標準法との比較検討.褥瘡会誌, 13:134-141,2011.)ラップ療法は、日本褥瘡学会ガイドライン(次回改訂)に掲載が予定されており、すでに多くの施設で実施されておりますが、非医療材料(食品用ラップや穴あきプラスチックフィルム)を用いますので患者さま(ご家族)の同意が必要です。同意をいただけない場合は厚生労働省の承認をうけた医療材料を用いた方法で治療します。また安全性と有効性を確認するための検査、記録をしております。許可いただければ結果を外部に発表させていただきます。発表に際して、個人のプライバシーは十分に保護されるよう配慮されます。どのようなかたちで発表されるかについては、担当医または院長にお尋ねください。発表にご協力いただけるかどうかは全く自由です。同意いただいた後の撤回もいつでも可能です。また、ご協力いただけなくてもあなたの診療に不利益を生ずることはありません。日付   年   月   日○○○病院 院長私は、褥瘡の予防治療に関し口頭及び文書を用いて説明を受け、その内容を十分理解いたしました。本人  氏  名生年月日代理人 氏名 続柄説明者 職名 氏名ラップ療法を実施することについての同意書検査結果、記録などの学術発表についての同意書私は、褥瘡の治療にラップ療法を実施することについて、および○○○病院における診療で得られた検査結果、記録(写真を含む)の学術発表への利用について、口頭及び文書を用いて説明を受け、その内容を十分理解いたしました。私は、次のように判断いたします。私の褥瘡の治療においてラップ療法をおこなうことに、1 同意します。2 同意しません。診療後、検査結果、記録(写真を含む)の学術発表への利用について、1 同意します。2 同意しません。日付   年   月   日○○○病院 院長-------------------------------------※本記事は、追加記事です。ページ下部にある[質問と回答を見る]をクリックすると、前回と同じ「質問と回答ページ」が表示されます。予めご了承ください。質問と回答を公開中!

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