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ネット購入可とした薬剤の安全性懸念にどう対処するか?(後藤 信哉 氏:解説)-633

 英国の医療システムは、米国よりも日本に近い。日本では、健康保険システムの支払いを受けるために医療機関は医療経済データベースの構築に寄与せざるを得ない。レセプト電算化により医療経済データベースはさらに充実すると想定される。しかし、「厚生労働省英文発表課」などがないので、蓄積された情報が広く英文論文として発表される仕組みがない。日本の医療は均質、かつ自動的に質が高いデータベースが構築されるのに世界の診療ガイドラインに影響を及ぼすことがない。 英国でも、電子カルテの情報は本邦の支払基金のように各地域ごとに集積される。経済情報のみならず、リスク因子、薬剤服用、臨床アウトカム情報も集積される。筆者も完全には理解していないが、University College of London, Oxford大学、Birmingham大学などは、これらの診療情報を英文論文として定期的に発表している。日本以外の各国では静脈血栓塞栓症はまれな疾病ではない。入院して動かなくなるだけで静脈血栓ができる体質の人も多い。膨大なデータベースが集積されている英国では、1万9 ,215例の静脈血栓塞栓症と年齢を調整した90万9, 530例もの大規模なコントロールの比較研究が可能となる。日本でも全国のレセプト情報を使えば、人口規模から考えれば英国よりも大規模な観察研究、ケースコントロール研究は容易にできると想定される。「英文での論文発表」が世界の「標準治療」を決めるEBMの世界は、大規模なデータベースを発信できる国が主導する。日本には世界を主導するチャンスがあった。 エストロゲン使用時の静脈血栓リスク増加は広く知られた問題である。性ホルモンの分泌は加齢とともに低下するので、血栓イベントが高齢者に多い状況にてテストステロンが静脈血栓リスクとなるとの仮説を思いつくのは難しい。実際、本邦ではテストステロン製剤はインターネット販売も可能な第1類医薬品とされている。処方薬であれば薬剤の安全性情報は医師を通じて患者に届く。今回は観察研究とはいえ、英国の大規模臨床研究の結果である。使用開始後6ヵ月にて血栓リスクが高いというのは英国において事実と理解される。第1類医薬品の安全性情報をどのように薬剤使用者に届けるのか? 日本には早速課題が生まれた。第1類医薬品をネット購入した場合でも薬剤師の確認が入る。広告規制よりは専門家を通じた情報共有が好ましいとも思われる。静脈血栓塞栓症が時に致死的な疾病だけに、リスクの社会との共有法を考えるよい機会である。 グローバル化は経済にとどまらない。国家の規制があっても、海外の情報は容赦なく入ってくる。第1類医薬品としてのテストステロンが静脈血栓塞栓症リスクを増加させることが事実であった場合、英国から発信された情報は企業を通じて市場に公表するか? 日本人と英国人は異なるとして無視するか? 日本でも同様の調査を早急に行って情報の類似性を確認するか? 選択肢は多いが決めるのは難しい。 他国から影響を受けるよりも他国に影響を与えるほうが好ましいと私は考えるので、日本の医療データベースを自動的に英文論文化して公表するシステムを作るのが得と私は考える。

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スーさんの急変エコー 裏ワザ小ワザ

第1回 ショック検索の心エコー 第2回 肺エコー 第3回 気道エコー 第4回 胃のエコー 第5回 下肢深部静脈のエコー 第6回 眼のエコー あなたは、エコーを有効に使いこなせていますか?疾患の鑑別と病態評価だけの使い途ではありませんか?患者の急変時に手軽で役立つ“裏ワザ小ワザ”を発明し、提案し続けているのがスーさんこと鈴木昭広氏。救急の現場においてエコーを使えば、目の前の患者が「ヤバいかどうか」を反射的に判断できます。ショックの原因を探るために心臓、肺のどこをどう見ればいいのか。また、見ておくと安心な気道、腹部、下肢深部静脈、脳圧を測る眼のエコー術も伝授します! 気管挿管や穿刺を勘に頼らず、エコー画像で確認しながら行えば、より正確に、安心して処置できます。 スーさんのワザをマスターして、エコーをあなたの頼れるパートナーにしましょう!第1回 ショック検索の心エコーショック患者を前にしたときに必要なのは、煩雑な計測や確定的な診断ではなく「ヤバいかどうか」の判断です。この番組では、直感的に短時間で出血を確認するためのFASTや、心臓の形や動きからおおまかに病態を判断するFATEを解説します。救急の現場で活躍してきたスーさんこと鈴木昭広先生が、簡単で“知って得する”新しいエコーの使い方をレクチャーします!第2回 肺エコー第2回は「肺エコー」編。肺をエコーで見るなんてクレイジーと言われた時代もありましたが、気胸の確定診断もできるんです。体幹への穿刺には必ず気胸のリスクが伴いますが、施術の前後にエコーで確認すれば異常を見逃しません!超音波で正常な肺はどう見えるのか?胸膜の動きからわかる異常とは?肺描出のコツとテクニックを習得すれば、さまざまな肺疾患を見つけられます。第3回 気道エコー第3回では救急に携わる医師にぜひ知っておいてほしい「気道エコー」を紹介します。気道エコーが必要になるのは救急時の気管挿管の場面。エコー画像で位置を確認しながら行えば、食道への誤挿管を防ぐことができます。やむなく気管切開しなければならない場合にも、エコーで穿刺部位を見ながら施行すれば確実です。勘だけを頼りに行えば誤挿管はいつでも起こりうるミスです!ぜひ気道エコーによる確認をこの番組で学んでください。エコーは急変患者のみならず、あなたをも守ってくれる心強いパートナーです!第4回 胃のエコー第4回では「胃のエコー」を紹介します。胃のエコーでは急変患者を診る際に把握しておきたい“フルストマックかどうか”を知ることができます。患者の胃にあるものは液体か固体か、嘔吐のリスクはどれだけかを判断すればより安全に挿管を施行できます。また、胃のエコーは大量服薬患者への応用も可能です。患者が飲んだ錠剤がどれだけ胃に残っているのかが画像を通して確認できるため、胃洗浄を行うかどうかの判定に役立ちます。番組内では胃のエコーで錠剤がどのように見えるかも紹介しています。第5回 下肢深部静脈のエコー第5回では深部静脈血栓症(DVT)を発見できる「下肢エコー」を紹介します。ロングフライトなど、長時間同じ体勢でいると起こりやすい深部静脈血栓症。手術後の安静解除の際などはとくに肺血栓塞栓症を引き起こすリスクが高く、予防ガイドラインにも記載されています。下肢エコーではそんな下肢深部静脈の血栓を「大腿部」「膝窩部」「ひらめ筋」で確認することができるんです。DVTは被災地の避難所でも問題になりますので、簡便なエコーでのスクリーニング方法を、ぜひ習得してください!第6回 眼のエコーこれぞ裏ワザ!最終回は「眼のエコー」を紹介します。眼のエコーとは患者の眼球にエコーを当て、そこで見える視神経の太さから脳圧亢進を評価できるというもの。脳出血が疑われ、CT検査や脳外科医を待っている間に、この方法で脳圧上昇が確認できれば、先行して上半身挙上などの処置を行うことができます。実技編では顔面損傷の場合の小ワザも紹介、事故現場の傷病者にも使える“目ウロコ”ワザは必見です!

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PCI vs.CABG―左主冠動脈狭窄に対する効果と安全性

 左主冠動脈狭窄に対する望ましい再灌流療法の戦略は、いまだに結論が出ていない。現在のガイドラインにおいて、プロテクトされていない左主冠動脈の狭窄に対しては、冠動脈バイパス術(CABG)が望ましいとされている。Monash Cardiovascular Research Centre(MCRC)のNerlekar氏らオーストラリアと英国の研究グループが、最近のランダム化比較試験を踏まえて、プロテクトされていない左主冠動脈に対し、経皮的冠動脈形成術(PCI)がCABGと同様の安全性と効果を得られるかをメタ解析を用いて評価した。Circulation:Cardiovascular Intervention誌2016年11月29日号の掲載。5研究の4,594例で全死亡、心筋梗塞、脳梗塞と再灌流療法を評価 本研究では、プロテクトされていない左主冠動脈狭窄に対するPCIとCABGのランダム化比較試験について、デジタルおよび手動でのデータベース検索を実施した。検索には、MEDLINEおよびEMBASE、PubMedのデータベースを用い、期間は2000年1月1日~16年10月31日とした。その結果、本研究に関連する可能性がある3,887試験のうち、Syntaxなど5つの研究が本研究の基準と合致した。安全性の主要評価項目は、全死亡、心筋梗塞、脳梗塞および再灌流療法とした。メタ解析にはランダム効果モデルが用いられ、患者4,594例を対象とした。主要評価項目に両群に有意差なし、再灌流療法の有効性ではPCI群が劣勢 主要評価項目においては、PCI群とCABG群とでは有意差が認められなかった(オッズ比[OR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.79~1.17、p=0.73)。しかし、CABGと比較してPCIでは再灌流療法が行われる頻度が有意に高く(OR:1.85、95%CI:1.53~2.23、p<0.001)、有効性において劣勢であった(OR:1.36、95%CI:1.18~1.58、p<0.001)。 全死亡率(OR:1.03、95%CI:0.78~1.35、p=0.61)および心筋梗塞(OR:1.46、95%CI:0.88~2.45、p=0.08)、脳梗塞(OR:0.88、95%CI:0.39~1.97、p=0.53)に関しては、両群で有意差は認められなかった。プロテクトされていない左主冠動脈に対する薬剤溶出性ステントを用いたPCIは、開心術によるリスクが低い患者においてはCABGと同様に安全な方法である。しかしながら、CABG群ではPCI群と比べて再灌流療法の施行が有意に少なかった。本研究における限界として筆者らは、フォローアップ期間が12ヵ月、36ヵ月、60ヵ月とばらつきがあること、また、再灌流療法の定義が試験によって異なることなどを挙げている。

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過剰飲酒者への治療、カウンセリング併用で改善/Lancet

 飲酒問題を抱える過剰飲酒者に対して、1次医療施設の医師による強化ケア(enhanced usual care:EUC)と、非専門カウンセラーによる飲酒問題カウンセリング(Counselling for Alcohol Problems:CAP)の併用は、EUC単独よりも有効であり、費用対効果も良好であることが示された。インド・Sangath CentreのAbhijit Nadkarni氏らが、ゴアにある1次医療機関10施設で治療を受けている過剰飲酒者を対象とした無作為化比較試験の結果を報告した。過剰飲酒(アルコールの有害な使用)に対する治療では構造化精神療法が第1選択として推奨されているが、プライマリケアでこのような専門治療をルーチンに受けることは難しく、飲酒問題に対する大きな治療格差が問題となっている。今回の結果を踏まえて著者は、「CAPが、男性の世界的な疾病負担の主要原因の1つであるアルコール使用障害の治療格差を減らす重要戦略となりうることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年12月14日号掲載の報告。医師による強化ケアのみ群と、カウンセリング併用群に無作為化 研究グループは、2013年10月28日~2015年7月29日に、アルコール使用障害特定テスト(AUDIT)スコアが12~19点、年齢が18~65歳の男性過剰飲酒者378例(入院等を要する者、意思疎通困難者、スクリーニング時点で酩酊者は対象から除外)を、通常の医師による診療に加え、医師へのスクリーニング結果提供および過剰摂取に対するWHOのMental Health Gap Action Programmeガイドラインの要約提供を行う強化ケア(enhanced usual care:EUC)群と、CAPを併用したEUCを行うCAP併用群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。ECU群の1例はプロトコル違反で除外となり、intention-to-treat集団はEUC群189例、CAP併用群188例、計377例であった。 主要評価項目は、3ヵ月後における飲酒問題改善(AUDITスコアが8未満)および過去14日間の1日平均アルコール消費量とした。EUCを行う医師および評価者は盲検化された。カウンセリング併用で飲酒問題改善率と過去14日間の禁酒率が有意に増加 377例中336例(89%)が3ヵ月後の主要評価を完遂した(CAP併用群164例[87%]、EUC群172例[91%])。 飲酒問題改善率は、CAP併用群36%(59/164例)、EUC群26%(44/172例)で、補正後寛解達成率比は1.50(95%信頼区間[CI]:1.09~2.07、p=0.01)、過去14日間の禁酒率はそれぞれ42%および18%で、CAP併用群のほうがECU群より有意に優れていた(補正オッズ比:3.00[95%CI:1.76~5.13]、p<0.0001)。 ただし、試験期間中に飲酒した患者においては、過去14日間の1日平均アルコール消費量に差はなかった(37.0±44.2g vs.31.0±27.8g、カウント比:1.08[0.79~1.49]、p=0.62)。 副次評価項目では、過去14日間の禁酒率への効果は認められたが(補正後平均差[AMD]16.0%[8.1~24.1]、p<0.0001)、暴飲への効果は認められず(暴飲発生日率のAMD:-0.4%[-5.7~4.9]、p=0.88)、同様に飲酒(簡易版飲酒問題リスト[Short Inventory of Problems]スコアのAMD:-0.03[-1.93~1.86]、p=0.97)、障害スコア(WHO障害評価尺度[WHO-DAS]スコアのAMD:0.62[-0.62~1.87]、p=0.32)、就労不能日数(オッズ比:1.02[0.61~1.69]、p=0.95)、自殺企図(補正後企図率比:1.8[-2.4~6.0]、p=0.25)、親しいパートナーへの暴力(補正後実施率比:3.0[-10.4~4.4]、p=0.57)への効果は示されなかった。 本研究での設定で、飲酒問題改善1例追加当たりの増分費用は217ドル(95%CI:50~1073)であり、費用対効果受容曲線での受容確率は85%であった。 重篤な有害事象は、CAP併用群6例(4%)、EUC群13例(8%)で有意差は認めれなかった(p=0.11)。

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抗PD-L1抗体atezolizumab、非小細胞肺がんのOSを延長/Lancet

 扁平上皮・非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体atezolizumabは、PD-L1蛋白質の発現状況にかかわらず、ドセタキセルに比べ全生存期間を有意に延長することが示された。安全性プロファイルも良好だった。ドイツLungenfachklinik Immenhausen病院のAchim Rittmeyer氏らが行った、第III相国際多施設共同無作為化非盲検試験「OAK」の結果で、Lancet誌オンライン版2016年12月12日号で発表した。OAKは、PD-L1をターゲットとした治療の初となる第III相無作為化試験だという。プラチナ製剤ベース化学療法実施後のStageIIIB・IVのNSCLCを対象に試験  研究グループは2014年3月11日~2015年4月29日にかけて、31ヵ国、194の大学または地域のがん治療センターを通じ、扁平上皮・非扁平上皮NSCLCの18歳以上の患者で、固形がんの治療効果判定のためのガイドラインにより測定可能で、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)による全身状態の評価尺度が0~1の1,225例を対象に試験を行った。被験者は、プラチナ製剤ベースの化学療法を1~2回受けており、StageIIIBまたはIVのNSCLCだった。自己免疫性疾患やドセタキセル、CD137作動薬、抗CTLA4、PD-L1・PD-1パスウェイを標的とした治療をすでに受けていた人については、被験者から除外した。 同グループは被験者を無作為に2群に分け、atezolizumab 1,200mgまたはドセタキセル75mg/m2を3週ごとに静脈投与した。 主要評価項目は2つで、intent-to-treat解析による全生存期間と、PD-L1発現で分類したサブグループ(TC1/2/3またはIC1/2/3)の全生存期間だった。主要有効性解析は、1,225例中、最初の850例(atezolizumab群、ドセタキセル群ともに425例)を対象に行った。生存期間中央値、atezolizumab群で約4ヵ月延長 その結果、ITTおよびサブグループによる解析ともに、全生存期間(OS)はatezolizumab群でドセタキセル群に比べ有意に延長した。ITT解析では、atezolizumab群のOS中央値は13.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.8~15.7)に対し、ドセタキセル群は9.6ヵ月(8.6~11.2)だった(ハザード比[HR]:0.73、95%CI:0.62~0.87、p=0.0003)。 PD-L1発現が1%以上の腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞に認められたサブグループ(TC1/2/3またはIC1/2/3)でもOS中央値は、atezolizumab群(241例)15.7ヵ月(95%CI:12.6~18.0)、ドセタキセル群(222例)10.3ヵ月(8.8~12.0)と有意差が認められた(HR:0.74、95%CI:0.58~0.93、p=0.0102)。また、PD-L1発現が1%未満のサブグループ(TC0またはIC0)でも、OS中央値はそれぞれ12.6ヵ月、8.9ヵ月と、atezolizumab群で有意に延長した(HR:0.75、95%CI:0.59~0.96)。 生存期間の延長効果については、扁平上皮または非扁平上皮のNSCLCで同等だった。 なお、Grade3または4の治療に関連した有害事象の発生率は、ドセタキセル群43%に対してatezolizumab群は15%と少なかった。

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高安動脈炎〔TAK : Takayasu Arteritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義高安動脈炎(Takayasu Arteritis:TAK)は、血管炎に属し、若年女性に好発し、大動脈および大動脈1次分枝に炎症性、狭窄性、または拡張性の病変を来し、全身性および局所性の炎症病態または虚血病態により諸症状を来す希少疾病である。1908年に金沢医学専門学校(現・金沢大学医学部)眼科教授の高安 右人氏(図1)により初めて報告された。画像を拡大する呼称には、大動脈炎症候群、高安病、脈なし病などがあるが、各学会において「高安動脈炎」に統一されている。2012年に改訂された血管炎のChapel Hill分類(図2)1)により、英文病名は“Takayasu arteritis”に、略語は“TAK”に改訂された。画像を拡大する■ 疫学希少疾病であり厚生労働省により特定疾患に指定されている。2012年の特定疾患医療受給者証所持者数は、5,881人(人口比0.0046%)だった。男女比は約1:9である。発症年齢は10~40代が多く、20代にピークがある。アジア・中南米に多い。TAK発症と関連するHLA-B*52も、日本、インドなどのアジアに多い。TAK患者の98%は家族歴を持たない。■ 病因TAKは、(1)病理学的に大型動脈の肉芽腫性血管炎が特徴であること、(2)特定のHLAアレル保有が発症と関連すること、(3)種々の炎症性サイトカインの発現亢進が報告されていること、(4)ステロイドを中心とする免疫抑制治療が有効であることから、自己免疫疾患と考えられている。1)病理組織像TAKの標的である大型動脈は中膜が発達しており、中膜を栄養する栄養血管(vasa vasorum)を有する。病変の主座は中膜の外膜寄りにあると考えられ、(1)外膜から中膜にかけて分布する栄養血管周囲への炎症細胞浸潤、(2)中膜の破壊(梗塞性病変、中膜外側を主とした弾性線維の虫食い像、弾性線維を貪食した多核巨細胞の出現)、これに続発する(3)内膜の細胞線維性肥厚および(4)外膜の著明な線維性肥厚を特徴とする。進行期には、(5)内膜の線維性肥厚による内腔の狭窄・閉塞、または(6)中膜破壊による動脈径の拡大(=瘤化)を来す。2)HLA沼野 藤夫氏らの功績により、HLA-B*52保有とTAK発症の関連が確立されている。B*52は日本人の約2割が保有する、ありふれたHLA型である。しかし、TAK患者の約5割がB*52を保有するため、発症オッズ比は2~3倍となる。B*52保有患者は非保有患者に比べ、赤沈とCRPが高値で、大動脈弁閉鎖不全の合併が多い。HLA-B分子はHLAクラスI分子に属するため、TAKの病態に細胞傷害性T細胞を介した免疫異常が関わると考えられる。3)サイトカイン異常TAKで血漿IL-12や血清IL-6、TNF-αが高値との報告がある。2013年、京都大学、東京医科歯科大学などの施設と患者会の協力によるゲノムワイド関連研究により、TAK発症感受性因子としてIL12BおよびMLX遺伝子領域の遺伝子多型(SNP)が同定された2)。トルコと米国の共同研究グループも同一手法によりIL12B遺伝子領域のSNPを報告している。IL12B遺伝子はIL-12/IL-23の共通サブユニットであるp40蛋白をコードし、IL-12はNK細胞の成熟とTh1細胞の分化に、IL-23はTh17細胞の維持に、それぞれ必要であるため、これらのサイトカインおよびNK細胞、ヘルパーT細胞のTAK病態への関与が示唆される。4)自然免疫系の関与TAKでは感冒症状が、前駆症状となることがある。病原体成分の感作後に大動脈炎を発症する例として、B型肝炎ウイルスワクチン接種後に大型血管炎を発症した2例の報告がある。また、TAK患者の大動脈組織では、自然免疫を担当するMICA(MHC class I chain-related gene A)分子の発現が亢進している。前述のゲノムワイド関連研究で同定されたMLX遺伝子は転写因子をコードし、報告されたSNPはインフラマソーム活性化への関与が示唆されている。以上をまとめると、HLAなどの発症感受性を有する個体が存在し、感染症が引き金となり、自然免疫関連分子やサイトカインの発現亢進が病態を進展させ、最終的に大型動脈のおそらく中膜成分を標的とする獲得免疫が成立し、慢性炎症性疾患として確立すると考えられる。■ 症状1)臨床症状TAKの症状は、(1)全身性の炎症病態により起こる症状と(2)各血管の炎症あるいは虚血病態により起こる症状の2つに分け、後者はさらに血管別に系統的に分類すると理解しやすい(表1)。画像を拡大する2)合併疾患TAKの約6%に潰瘍性大腸炎(UC)を合併する。HLA-B*52およびIL12B遺伝子領域SNPはUCの発症感受性因子としても報告されており、TAKとUCは複数の発症因子を共有する。■ 分類1)上位分類血管炎の分類には前述のChapel Hill分類(図2)が用いられる。「大型血管炎」にTAKと巨細胞性動脈炎(GCA)の2つが属する。2)下位分類畑・沼野氏らによる病型分類(1996年)がある(図3)3)。画像を拡大する■ 予後1年間の死亡率3.2%、再発率8.1%、10年生存率84%という報告がある。予後因子として、(1)失明、脳梗塞、心筋梗塞などの各血管の虚血による後遺症、(2)大動脈弁閉鎖不全、(3)大動脈瘤、(4)ステロイド治療による合併症(感染症、病的骨折、骨壊死など)が挙げられる。診断および治療の進歩により、予後は改善してきている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査1)各画像検査による血管撮影TAKは、生検が困難であるため、画像所見が診断の決め手となる。(1)画像検査の種類胸部X線、CT、MRI、超音波、血管造影、18F-FDG PET/PET-CTなどがある。若年発症で長期観察を要するため、放射線被曝を可能な限り抑える。(2)早期および活動期の画像所見大型動脈における全周性の壁肥厚は発症早期の主病態であり、超音波検査でみられる総頸動脈のマカロニサイン(全周性のIMT肥厚)や、造影後期相のCT/MRIでみられるdouble ring-like pattern(肥厚した動脈壁の外側が優位に造影されるため、外側の造影される輪と内側の造影されない輪が出現すること)が特徴的である。下行大動脈の波状化(胸部X線で下行大動脈の輪郭が直線的でなく波を描くこと)も早期の病変に分類され、若年者で本所見を認めたらTAKを疑う。動脈壁への18F-FDG集積は、病変の活動性を反映する(PET/PET-CT)。ただし動脈硬化性病変でもhotになることがある。PET-CTはTAKの早期診断(感度91~92%、特異度89~100%)と活動性評価の両方に有用である(2016年11月時点で保険適用なし)。(3)進行期の画像所見大型動脈の狭窄・閉塞・拡張は、臨床症状や予後と関連するため、CTアンギオグラフィ(造影早期相の3次元再構成)またはMRアンギオグラフィ(造影法と非造影法がある)で全身の大型動脈の開存度をスクリーニングかつフォローする。上行大動脈は拡張し、大動脈弁閉鎖不全を伴いやすい。従来のgold standardであった血管造影は、血管内治療や左室造影などを目的として行い、診断のみの目的では行われなくなった。(4)慢性期の画像所見全周性の壁石灰化、大型動脈の念珠状拡張(拡張の中に狭窄を伴う)、側副血行路の発達などが特徴である。2)心臓超音波検査大動脈弁閉鎖不全の診断と重症度評価に必須である。3)血液検査(1)炎症データ:白血球増加、症候性貧血、赤沈亢進、血中CRP上昇など(2)腎動脈狭窄例:血中レニン活性・アルドステロンの上昇■ 診断基準下記のいずれかを用いて診断する。1)米国リウマチ学会分類基準(1990年、表2)4)6項目中3項目を満たす場合にTAKと分類する(感度90.5%、特異度97.8%)。この分類基準にはCT、MRI、超音波検査、PET/PET-CTなどが含まれていないので、アレンジして適用する。2)2006-2007年度合同研究班(班長:尾崎 承一)診断基準後述するリンクまたは参考文献5を参照いただきたい。なお、2016年11月時点で改訂作業中である。画像を拡大する■ 鑑別診断GCA、動脈硬化症、血管型ベーチェット病、感染性大動脈瘤(サルモネラ、ブドウ球菌、結核など)、心血管梅毒、炎症性腹部大動脈瘤、IgG4関連動脈周囲炎、先天性血管異常(線維筋性異形成など)との鑑別を要する。中高年発症例ではTAKとGCAの鑑別が問題となる(表3)。GCAは外頸動脈分枝の虚血症状(側頭部の局所的頭痛、顎跛行など)とリウマチ性多発筋痛症の合併が多いが、TAKではそれらはまれである。画像を拡大する3 治療■ 免疫抑制治療の適応と管理1)初期治療疾患活動性を認める場合に、免疫抑制治療を開始する。初期治療の目的は、可及的に疾患活動性が低い状態にすること(寛解導入)である。Kerrの基準(1994年)では、(1)全身炎症症状、(2)赤沈亢進、(3)血管虚血症状、(4)血管画像所見のうち、2つ以上が新出または増悪した場合に活動性と判定する。2)慢性期治療慢性期治療の目的は、可及的に疾患活動性が低い状態を維持し、血管病変進展を阻止することである。TAKは緩徐進行性の経過を示すため、定期通院のたびに診察や画像検査でわかるような変化を捉えられるわけではない。実臨床では、鋭敏に動く血中CRP値をみながら服薬量を調整することが多い。ただし、血中CRPの制御が血管病変の進展阻止に真に有用であるかどうかのエビデンスはない。血管病変のフォローアップは、通院ごとの診察と、1~2年ごとの画像検査による大型動脈開存度のフォローが妥当と考えられる。■ ステロイドステロイドはTAKに対し、最も確実な治療効果を示す標準治療薬である。一方、TAKは再燃しやすいので慎重な漸減を要する。1)初期量過去の報告ではプレドニゾロン(PSL)0.5~1mg/kg/日が使われている。病変の広がりと疾患活動性を考慮して初期量を設定する。2006-2007年度合同研究班のガイドラインでは、中等量(PSL 20~30mg/日)×2週とされているが、症例に応じて大量(PSL 60 mg/日)まで引き上げると付記されている。2)減量速度クリーブランド・クリニックのプロトコル(2007年)では、毎週5mgずつPSL 20mgまで、以降は毎週2.5mgずつPSL 10mgまで、さらに毎週1mgずつ中止まで減量とされているが、やや速いため再燃が多かったともいえる。わが国の106例のコホートでは、再燃時PSL量は13.3±7.5mg/日であり、重回帰分析によると、再燃に寄与する最重要因子はPSL減量速度であり、減量速度が1ヵ月当たり1.2mgより速いか遅いかで再燃率が有意に異なった。この結果に従えば、PSL 20mg/日以下では、月当たり1.2mgを超えない速度で減量するのが望ましい。以下に慎重な減量速度の目安を示す。(1)初期量:PSL 0.5~1mg/kg/日×2~4週(2)毎週5mg減量(30mg/日まで)(3)毎週2.5mg減量(20mg/日まで)(4)月当たり1.2mgを超えない減量(5)維持量:5~10mg/日3)維持量維持量とは、疾患の再燃を抑制する必要最小限の用量である。約3分の2の例でステロイド維持量を要し、PSL 5~10mg/日とするプロトコルが多い。約3分の1の例では、慎重な漸減の後にステロイドを中止できる。4)副作用対策治療開始前にステロイドの必要性と易感染性・骨粗鬆症・骨壊死などの副作用について十分に説明し、副作用対策と慎重な観察を行う。■ 免疫抑制薬TAKは、初期治療のステロイドに反応しても、経過中に半数以上が再燃する。免疫抑制薬は、ステロイドとの相乗効果、またはステロイドの減量効果を期待して、ステロイドと併用する。1)メトトレキサート(MTX/商品名:リウマトレックス)(2016年11月時点で保険適用なし)文献上、TAKに対する免疫抑制薬の中で最も使われている。18例のシングルアーム試験では、ステロイド大量とMTX(0.3mg/kg/週→最大25mg/週まで漸増)の併用によるもので、寛解率は81%、寛解後の再燃率は54%、7~18ヵ月後の寛解維持率は50%だった。2)アザチオプリン(AZP/同:イムラン、アザニン)AZPの位置付けは各国のプロトコルにおいて高い。15例のシングルアーム試験では、ステロイド大量とAZP(2mg/kg/日)の併用は良好な経過を示したが、12ヵ月後に一部の症例で再燃や血管病変の進展が認められた。3)シクロホスファミド(CPA/同:エンドキサン)CPA(2mg/kg/日、WBC>3,000/μLとなるように用量を調節)は、重症例への適応と位置付けられることが多い。副作用を懸念し、3ヵ月でMTXまたはAZPに切り替えるプロトコルが多い。4)カルシニューリン阻害薬(2016年11月時点で保険適用なし)タクロリムス(同:プログラフ/報告ではトラフ値5ng/mLなど)、シクロスポリン(同:ネオーラル/トラフ値70~100ng/mLなど)のエビデンスは症例報告レベルである。■ 生物学的製剤関節リウマチに使われる生物学的製剤を、TAKに応用する試みがなされている。1)TNF-α阻害薬(2016年11月時点で保険適用なし)TNF-α阻害薬による長期のステロイドフリー寛解率は60%、寛解例の再燃率33%と報告されている。2)抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(同:アクテムラ/2016年11月時点で保険適用なし)3つのシングルアーム試験で症状改善とステロイド減量効果を示し、再燃はみられなかった。■ 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)免疫抑制治療により疾患活動性が落ち着いた後も、虚血病態による疼痛が残りうるため、病初期から慢性期に至るまでNSAIDsが必要となることが多い。腎障害・胃粘膜障害などに十分な注意と対策を要する。■ 抗血小板薬、抗凝固薬血小板薬は、(1)TAKでは進行性の血管狭窄を来すため脳血管障害や虚血性心疾患などの予防目的で、あるいは、(2)血管ステント術などの血管内治療後の血栓予防目的で用いられる。抗凝固薬は、心臓血管外科手術後の血栓予防目的で用いられる。■ 降圧薬血圧は、鎖骨下動脈狭窄を伴わない上肢で評価する。両側に狭窄がある場合は、下肢血圧(正常では上肢より10~30mmHg高い)で評価する。高血圧や心病変に対し、各降圧薬が用いられる。腎血管性高血圧症にはACE阻害薬が用いられる。■ 観血的治療1)術前の免疫抑制治療の重要性疾患活動性のコントロール不十分例では、再狭窄、血管縫合不全、吻合部動脈瘤などの術後合併症のリスクが高くなる。観血的治療は、緊急時を除き、原則として疾患活動性をコントロールしたうえで行う。外科・内科・インターベンショナリストを含む学際的チームによる対応が望ましい。術前のステロイド投与量は、可能であれば少ないほうがよいが、TAKの場合、ステロイドを用いて血管の炎症を鎮静化することが優先される。2)血管狭窄・閉塞に対する治療重度の虚血症状を来す場合に血管バイパス術または血管内治療(EVT)である血管ステント術の適応となる。EVTは低侵襲性というメリットがある一方、血管バイパス術と比較して再狭窄率が高いため、慎重に判断する。3)大動脈瘤/その他の動脈瘤に対する治療破裂の可能性が大きいときに、人工血管置換術の適応となる。4)大動脈弁閉鎖不全(AR)に対する治療TAKに合併するARは、他の原因によるARよりも進行が早い傾向にあり、積極的な対策が必要である。原病に対する免疫抑制治療を十分に行い、内科的に心不全コントロールを行っても、有症状または心機能が低い例で、心臓外科手術の適応となる。TAKに合併するARは、上行大動脈の拡大を伴うことが多いので、大動脈基部置換術(Bentall手術)が行われることが多い。TAKでは耐久性に優れた機械弁が望ましいが、若年女性が多いため、患者背景を熟慮し、自己弁温存を含む大動脈弁の処理法を選択する。4 今後の展望最新の分子生物学的、遺伝学的研究の成果により、TAKの発症に自然免疫系や種々のサイトカインが関わることがわかってきた。TAKはステロイドが有効だが、易再燃性が課題である。近年、研究成果を応用し、各サイトカインを阻害する生物学的製剤による治療が試みられている。治療法の進歩による予後の改善が期待される。1)特殊状況での生物学的製剤の利用周術期管理ではステロイド投与量を可能であれば少なく、かつ、疾患活動性を十分に抑えたいので、生物学的製剤の有用性が期待される。今後の検証を要する。2)抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)2016年11月時点で国内治験の解析中である。3)CTLA-4-Ig(アバタセプト)米国でGCAおよびTAKに対するランダム化比較試験(AGATA試験)が行われている。4)抗IL-12/23 p40抗体(ウステキヌマブ)TAK3例に投与するパイロット研究が行われ、症状と血液炎症反応の改善を認めた。5 主たる診療科患者の多くは、免疫内科(リウマチ内科、膠原病科など標榜はさまざま)と循環器内科のいずれか、または両方を定期的に受診している。各科の連携が重要である。1)免疫内科:主に免疫抑制治療による疾患活動性のコントロールと副作用対策を行う2)循環器内科:主に血管病変・心病変のフォローアップと薬物コントロールを行う3)心臓血管外科:心臓血管外科手術を行う4)脳外科:頭頸部の血管外科手術を行う6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究に関する情報1)2006-2007年度合同研究班による血管炎症候群の診療ガイドライン(ダイジェスト版)(日本循環器学会が公開しているガイドライン。TAKについては1260-1275ページ参照)2)米国AGATA試験(TAKとGCAに対するアバタセプトのランダム化比較試験)公的助成情報難病情報センター 高安動脈炎(大動脈炎症候群)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報大動脈炎症候群友の会 ~あけぼの会~同講演会の講演録(患者とその家族へのまとまった情報)1)Jennette JC, et al. Arthritis Rheum. 2013;65:1-11.2)Terao C, et al. Am J Hum Genet. 2013;93:289-297.3)Hata A, et al. Int J Cardiol. 1996;54:s155-163.4)Arend WP, et al. Arthritis Rheum. 1990;33:1129-1134.5)JCS Joint Working Group. Circ J. 2011;75:474-503.主要な研究グループ〔国内〕東京医科歯科大学大学院 循環制御内科学(研究者: 磯部光章)京都大学大学院医学研究科 内科学講座臨床免疫学(研究者: 吉藤 元)国立循環器病研究センター研究所 血管生理学部(研究者: 中岡良和)鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 小児診療センター 小児科(研究者: 武井修治)東北大学大学院医学系研究科 血液・免疫病学分野(研究者: 石井智徳)〔海外〕Division of Rheumatology, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA 19104, USA. (研究者: Peter A. Merkel)Department of Rheumatology, Faculty of Medicine, Marmara University, Istanbul 34890, Turkey.(研究者: Haner Direskeneli)Department of Rheumatologic and Immunologic Disease, Cleveland Clinic, Cleveland, OH 44195, USA.(研究者: Carol A. Langford)公開履歴初回2014年12月25日更新2016年12月20日

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尿路結石治療でのα1遮断薬の効果を検証/BMJ

 α1遮断薬は尿管結石の保存的治療に有効であることを、米国・ミシガン大学のJohn M Hollingsworth氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。α1遮断薬は無作為化試験により結石の自然排出を促すことが示唆され、現行のガイドラインでは、同薬を用いた治療を推奨している。しかし最近、厳格な方法論を用いた大規模試験の結果、その治療効果について疑問が呈されていた。なお今回の検討では、α1遮断薬による保存療法のベネフィットは、結石が大きい患者で最大であることも示唆された。研究グループは、「結果は現行ガイドラインを支持するものであった」とまとめている。BMJ誌2016年12月1日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析で自然排出効果を評価 検討は、2016年7月時点のCochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Science、Embase、LILACS、Medlineの各データベースおよび学会抄録を検索して行われた。尿管結石の治療としてα1遮断薬とプラセボまたは対照を比較した無作為化試験を適格とし、2人の研究チームメンバーがそれぞれ各包含試験からデータを抽出した。 主要アウトカムは結石が排出された患者の割合。副次アウトカムは排出にかかった期間、疼痛エピソード数、手術を受けた患者の割合、入院を要した患者の割合、有害事象を経験した患者の割合とした。 主要アウトカムは、プロファイル尤度ランダム効果モデルを用いて、プールリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出。エビデンスの質と結果の要約の質について、Cochrane Collaboration'sツールを用いてバイアスリスクとGRADEアプローチを評価した。中程度のエビデンス、結石が大きいほど排出効果が高い 検索により55の無作為化試験(被験者総数5,990例)が包含された。 解析の結果、α1遮断薬の尿管結石排出に関するエビデンスは中程度であることが示された(RR:1.49、95%CI:1.39~1.61)。 演繹的サブグループ解析の結果、尿管結石が小さい患者ではα1遮断薬治療のベネフィットは観察されなかった(1.19、1.00~1.48)。しかし大きな患者では、対照との比較で57%排出リスクが高かった(1.57、1.17~2.27)。 α1遮断薬の効果は、結石の位置で異なっていた。上部尿管と中部尿管のRRは1.48(1.05~2.10)、より下部尿管は1.49(1.38~1.63)だった。 対照との比較で、α1遮断薬治療を受けた患者は、結石排出までの期間が有意に短かった(平均差:-3.79日、95%CI:-4.45~-3.14、エビデンスの質は中程度)、また疼痛エピソードも少なく(-0.74例、-1.28~-0.21、エビデンスの質は低い)、手術介入リスクも低く(RR:0.44、0.37~0.52、エビデンスの質は中程度)、入院リスクも低かった(0.37、0.22~0.64、エビデンスの質は中程度)。 重篤な有害事象のリスクは、治療群と対照群で同程度であった(1.49、0.24~9.35、エビデンスの質は低い)。

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第57回日本肺癌学会、福岡で開催

 第57回日本肺癌学会学術集会が、2016年12月19日~21日まで福岡市の福岡国際会議場、福岡サンパレス、福岡国際センターを会場として開催される。 学術集会の会長である九州大学大学院付属胸部疾患研究施設 教授 中西洋一氏は、第13回肺がん医療向上委員会にて当学術集会のハイライトを紹介。今回のテーマは「Innovation for the Next Stage- 肺癌にかかわるすべての人のために-」とし、学術の振興と国際化、チーム医療プログラムの充実、患者・家族向けプログラムの3点をポイントとした。演題数も1,500以上と過去最多で、シンポジウム18セッション、ワークショップ3セッション、教育演題18講演が予定され、Patient Advocate Programも用意されている。 12月20日のプレナリーセッションでは、プラチナ既治療非小細胞肺がんへのS-1とドセタキセルの比較第III相試験(EAST-LC)、T790M陽性の非小細胞肺がんでのオシメルチニブと化学療法の比較試験(AURA3)が発表され、同日のアンコールセッションでは、IB-IIIA期非小細胞肺がんの術後補助化学療法比較第III相試験(SLCG0401)、ALK陽性肺がんに対するアレクチニブとクリゾチニブの比較第III相試験(J-ALEX)、PD-L1高発現未治療非小細胞肺がんにおけるペムブロリズマブの第III相試験(KEYNOTE-024)の結果がレビューされる。 国際化の流れを受け、世界の肺癌診療をリードする海外演者26名を招聘。12月19日のシンポジウム2 「ALK戦線異常あり」ではAlice T. Shaw氏が、12月21日のシンポジウム17「トランスレーショナルリサーチ」では、Chung-Ming Tsai氏と現世界肺癌学会会長のDavid Carbone氏が、同日の招請講演では前世界肺癌学会会長のTony S. K. Mok氏が登壇する。 また、ニボルマブの薬価問題を受け、12月20日の特別企画「医療費とガイドライン」、同日の学術委員会シンポジウム「医療経済から観た適切な肺がん治療」が開催される。第57回日本肺癌学会学術集会のホームページはこちら

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START研究が喘息診療の過去の幻想を拭い去った(解説:倉原 優 氏)-625

 過去のガイドラインにおいて、吸入ステロイド薬(ICS)治療は1週間に2日を超えて症状がある喘息患者、すなわちpersistent asthmaに推奨されてきた歴史がある。それ以下の症状の喘息をintermittent asthmaと呼び、吸入短時間型β2刺激薬などでその都度発作を解除してきた。 この2日というカットオフ値がエビデンス不足のまま現行GINAガイドライン1)へ至ることとなったため、軽症の喘息患者に対するICSの適否をはっきりさせるべきだという意見が多かった。そのため、START研究の事後解析が行われた。なお、現在のGINAガイドライン1)では、頻繁ではないが喘息症状を有し発作のリスクが高い患者に対しては低用量ICSでの治療開始(step 2)を推奨している1)。日本のガイドライン2)では治療ステップ1および2のカットオフ値は、週1回と月1~2回という問診が用いられている。 START研究について解説しておくが、これは今から13年前、発症2年以内の軽症持続型喘息患者を対象に長期追跡した有名な大規模試験である。この研究は、軽症持続型喘息患者においては発症早期から低用量ICSを使うべしという道筋を立てた、喘息診療のマイルストーンともいうべき存在である。 事後解析では、喘息症状の頻度を0~1日/週(0~1日群)、1~2日/週(1~2日群)、2日超/週(2日超群)で層別化し、複合プライマリアウトカムに初回の喘息関連イベント(SARE:入院、救急受診治療、死亡)およびベースラインからの肺機能の変化(気管支拡張後)が設定された。ICSは低用量ブデソニドが用いられ、これがプラセボと比較されている。 層別化はおおむねバランスのとれた頻度で、0~1日群が31%、1~2日群が27%、2日超群が43%だった。解析の結果、どの症状頻度サブグループにおいても初回のSAREまでの期間を有意に延長させることがわかった(0~1日群:ハザード比0.54 [95%信頼区間0.34~0.86]、1~2日群:ハザード比0.60 [95%信頼区間0.39~0.93] 、2日超群:ハザード比:0.57 [95%信頼区間0.41~0.79], p=0.94)。さらに、プラセボ群と比較すると、ブデソニド群は経口あるいは全身性ステロイドを要する重症発作のリスクを減らした(0~1日群:率比0.48 [95%信頼区間0.38~0.61]、1~2日群:率比0.56 [95%信頼区間0.44~0.71]、2日超群:率比0.66 [95%信頼区間0.55~0.80]、p=0.11)。 つまり、1週間あたりの症状が少なかろうと多かろうと、この軽症喘息というくくりでみた患者のすべてが低用量ICSの恩恵を受けることは間違いないということである。「1週間に2日」という幻想に縛られていた過去を、見事に拭い去る結果となった。 喘息であれば早期からICSを導入する、という考え方は正しい。しかし、咳喘息やアトピー咳嗽などの喘息以外の好酸球性気道疾患が増えてきたうえ、喘息とCOPDがオーバーラップしているという疾患概念まで登場している。疾患診断が昔より複雑になったことは否めない。その中で、経験的にICSをホイホイと処方するようになってしまうと、医学的効果がほとんど得られないにもかかわらず、将来の肺炎リスクのみを上昇させてしまうような事態にもなりかねない。 何よりも、喘息という疾患を正しく診断することが重要なのはいうまでもない。参考1)Global Strategy for Asthma Management and Prevention. Updated 20162)喘息予防・管理ガイドライン2015. 日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会編. 協和企画.

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HR陽性乳がんへのフルベストラント、PFSを有意に延長/Lancet

 ホルモン受容体(HR)陽性局所進行または転移乳がんに対し、フルベストラント(商品名:フェソロデックス)500mg投与はアナストロゾール1mg投与に対し、無増悪生存(PFS)を有意に延長し、有効性について優越性を示したことが、英国・ノッティンガム大学のJohn F R Robertson氏らによる第III相の国際多施設共同無作為化二重盲検試験FALCONの結果、報告された。HR陽性局所進行または転移乳がんは、アロマターゼ阻害薬が標準治療とされている。研究グループは、ホルモン療法既往のない閉経後患者を対象に、選択的エストロゲン受容体抑制薬のフルベストラントが、標準治療のアロマターゼ阻害薬と比べてPFSを改善するかを検討した。Lancet誌オンライン版2016年11月28日号掲載の報告。20ヵ国113の大学病院から患者を集めて試験 試験は、20ヵ国113の大学病院で患者を集めて行われた。適格とされたのは、組織学的所見でエストロゲン受容体陽性またはプロゲステロン受容体陽性が確認された、局所進行もしくは転移乳がん患者で、ホルモン療法既往なし、WHO分類で0~2、測定可能または測定不能病変が1つ以上あるとした。 患者を無作為に1対1の割合で、フルベストラント投与群(500mg筋注を0、14、28日に、その後は28日ごとに投与)またはアナストロゾール投与群(1mgを1日1回経口投与)に、コンピュータ無作為化法で割り付けた。 主要エンドポイントはPFSで、RECISTガイドラインver1.1で判定した増悪(disease deterioration)による手術もしくは放射線治療の介入、または全死因死亡をintention-to-treat集団で評価した。 安全性アウトカムは、少なくとも1回以上割付治療(プラセボを含む)を受けた全患者を対象に評価した。フルベストラント群のPFSがアナストロゾール群に比し有意に延長 2012年10月17日~2014年7月11日に、524例の患者が試験に登録された。このうち462例が無作為化を受けた(フルベストラント群230例、アナストロゾール群232例)。 結果、PFSはフルベストラント群がアナストロゾール群に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.797、95%信頼区間[CI]:0.637~0.999、p=0.0486)。PFS中央値は、フルベストラント群16.6ヵ月(95%CI:13.83~20.99)に対し、アナストロゾール群は13.8ヵ月(同:11.99~16.59)であった。 頻度の高かった有害事象は、関節痛(フルベストラント群17% vs.アナストロゾール群10%)、ホットフラッシュ(同11% vs.10%)であった。なお、有害事象のため投与中断となった患者は、フルベストラント群16/228例(7%)、アナストロゾール群11/232例(5%)であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「フルベストラントは、ホルモン治療歴のないHR陽性局所進行または転移乳がんについて、これら患者の1次治療の標準療法とされる第3世代のアロマターゼ阻害薬と比較して、有効性に優れており、優先すべき治療選択肢である」とまとめている。

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高齢者のインフルエンザ・肺炎予防

今日から家でできるインフルエンザや肺炎の予防高齢者にとってインフルエンザや肺炎などにかかりやすくなる冬季は、とくに注意が必要です●家では次の3つのことを実践し、予防しましょう1) 口の中、手指を清潔に(うがい、歯磨き、手洗いの励行)2) 栄養のあるものを食べる(肉や魚も積極的に食べる)3) 部屋を適温・適湿に保つ(暖房器具、加湿器を活用)インフルエンザと肺炎球菌ワクチンの予防接種も忘れずに!日本呼吸器学会「成人市中肺炎診療ガイドライン作成委員会」. 成人市中肺炎診療ガイドライン;2007.Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

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前糖尿病状態は心血管疾患リスクと関連/BMJ

 前糖尿病状態(耐糖能異常、空腹時血糖異常、HbA1c高値)は心血管疾患のリスク増加と関連しており、空腹時血糖値5.6mmol/L(=100.8mg/dL)以上またはHbA1c 39mmol/mol(NGSP 5.7%)以上で健康リスクが高まる可能性があることを、中国・第一人民病院のYuli Huang氏らが、前向きコホート研究のシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。前糖尿病状態の患者は世界的に増えているが、前糖尿病状態を定義する空腹時血糖異常やHbA1cのカットオフ値はガイドラインで異なっている。また、全死因死亡および心血管イベントとの関連性に関する報告も一貫していなかった。BMJ誌2016年11月23日号掲載の報告。前向きコホート研究53件、計約160万人のメタ解析を実施 研究グループは、電子データベース(PubMed、Embase、Google Schoar)を用い、複合心血管イベント(冠動脈疾患、脳卒中、その他の心血管疾患)、冠動脈疾患、脳卒中および全死因死亡と、前糖尿病状態との関連について、補正後相対リスクおよび95%信頼区間(CI)が報告されている、一般集団での前向きコホート研究を特定し、メタ解析を行った。 適格研究の選択と評価は、研究者2人が独立して実施。前向きコホート研究53件、合計161万1,339例が解析に組み込まれた。 前糖尿病状態は、空腹時血糖異常(空腹時血糖値が米国糖尿病学会基準[IFG-ADA]で5.6~6.9mmol/L、WHO基準[IFG-WHO]で6.1~6.9mmol/L)、耐糖能異常(経口ブドウ糖負荷試験2時間値が7.8~11.0mmol/L)、またはHbA1c高値(ADA基準で39~47mmol/mol[5.7~6.4%]、英国立臨床評価研究所[NICE]ガイドラインで42~47mmol/mol[6.0~6.4%])と定義した。 主要評価項目は、全死因死亡および心血管イベントの相対リスク(95%CI)を算出して評価した。耐糖能異常、空腹時血糖異常で心血管イベントおよび全死因死亡のリスクが増加 追跡期間中央値は9.5年であった。正常血糖と比較すると、前糖尿病状態は複合心血管イベント(相対リスクはIFG-ADA基準の場合1.13、IFG-WHO基準の場合1.26、耐糖能異常1.30)、冠動脈疾患(同様にそれぞれ1.10、1.18、1.20)、脳卒中(1.06、1.17、1.20)、全死因死亡(1.13、1.13、1.32)のリスク増加と関連していた。 HbA1c高値(ADAの39~47mmol/mol、またはNICEの42~47mmol/mol)は、どちらの基準も複合心血管イベント(相対リスクはそれぞれ1.21、1.25)および冠動脈疾患(同様に1.15、1.28)のリスク増加と関連していたが、脳卒中や全死因死亡のリスクとの関連は認められなかった。 なお、著者は研究の限界として、研究のほとんどが糖尿病の発症について調整しておらず、約半数は空腹時血糖値のみを測定したものであったことなどを挙げている。

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治療効果の男女差、慎重な精査が必要/BMJ

 性別と治療効果との統計学的に有意な相互作用というのは、思っていた予想よりもわずかに多く認められるだけで、また臨床的なエビデンスはほとんどないことを、米国・Meta-Research Innovation Center at Stanford(METRICS)のJoshua D Wallach氏らが、コクランメタ解析のシステマティックレビューを行い報告した。著者は、「執筆者、読者、ならびに学術誌のレビュワーと編集者は、サブグループ解析の信頼性を慎重に精査しなければならない。これまでに報告されている統計学的に有意な治療効果の男女差は、概して生物学的信頼性や臨床的重要性が乏しい」とまとめている。BMJ誌2016年11月24日号掲載の報告。コクランメタ解析41報で示されたサブグループ解析を評価 臨床試験では、サブグループ解析がしばしば実施され、そのサブグループ間での治療効果の違いが主張されることがある。とくに、男性と女性では生理学的、薬物動態学的および薬力学的に差がみられる可能性があるため、治療効果の男女差への関心は高い。しかし、サブグループ解析は、個別化治療を最適化する可能性がある一方で、不適切な方法を提供する可能性もあることが指摘されてもいる。 研究グループは、Cochrane Database of Systematic Reviews(CDSR)とPubMedを用い、無作為化比較試験(RCT)のみを組み込んだメタ解析で、かつフォレストプロットにて少なくとも1つの性別のサブグループ解析を行っているレビュー論文41報を特定し、性別と治療効果に関する統計学的に有意(p<0.05)な相互作用の頻度・妥当性・関連性を評価した。 41報には、計311のRCT(対象が男女両方162試験、男性のみ46試験、女性のみ103試験)が含まれた。性別で治療効果に統計学的に有意差が認められる頻度は少ない 全体で、治療効果のサブグループ解析結果は109件あり、このうち8件(7%)で治療効果に性別で統計学的な有意差が認められていた。個別にみると、男女両方を対象としたRCT162試験のうち、15試験(9%)で統計学的に有意な性別と治療効果の相互作用が示された。また、4件は、最初に発表されたRCTでは統計学的に有意な性別と治療効果の相互作用が示されていたが、他のRCTを含めたメタ解析ではその有意性が認められず、最初に発表されたRCTのデータを除いた時に統計学的有意差を示したメタ解析はなかった。 全体で性別と治療効果との統計学的に有意な相互作用が確認された8件のうち、3件のみが女性と比較し男性において治療の違いの影響について、CDSRのレビュワーによって検討されていた。 これらの結果のうち、最近のガイドラインに反映されているものはなく、1件について “UpToDate”(オンライン臨床意思決定支援システム)で、性別の違いに基づいた管理が提案されていた(狭窄率が50~69%の症候性頸動脈狭窄症患者は、男性に対しては手術を行う)。

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軽症喘息への低用量吸入ステロイドは?/Lancet

 症状発現頻度が週に0~2日の軽症喘息患者に対する低用量吸入コルチコステロイド(ICS)の投与は、症状増悪リスクを減らし、肺機能低下の予防効果もあることが示された。オーストラリア・シドニー大学のHelen K. Reddel氏らが、7,000例超の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験「START」の、事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2016年11月29日号で発表した。ICSは、喘息増悪と死亡率の低下に非常に有効であるが、症状発現頻度の低い喘息患者は、投与の対象に含まれていない。一方で、週に2日超の患者への投与は推奨されているが、そこを基準とするエビデンスは乏しかった。初回重度喘息関連イベント発生までの期間を比較 START(Steroid Treatment As Regular Therapy)試験は、32ヵ国の医療機関を通じて、2年以内に軽症の喘息診断を受け、コルチコステロイドの定期服用歴のない、4~66歳の患者7,138例を対象に行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方には吸入ブデソニド400μg(11歳未満は200μg)/日を、もう一方の群にはプラセボが投与された。被験者は3ヵ月ごとにクリニックを受診、試験は3年間にわたって行われた。 主要評価項目は、初回重度喘息関連イベント(SARE:入院・救急外来診察・死亡)発生までの期間と、気管支拡張薬投与後の肺機能のベースラインからの変化だった。 ベースラインでの症状発現頻度により被験者をグループ化し、同評価項目との関連について分析した。重度増悪リスクもおよそ半減 ベースラインの被験者は、平均年齢24(SD15)歳、症状発現頻度は、週に0~1日が31%、1超~2日が27%、2日超が43%だった。 SARE発生までの期間は、ベースラインの症状発現頻度別の全グループで、ICS群がプラセボ群より長かった。ICS群 vs.プラセボ群のハザード比は、0~1日/週グループが0.54(95%信頼区間[CI]:0.34~0.86)、1超~2日/週グループが0.60(0.39~0.93)、2日超/週グループが0.57(0.41~0.79)だった(相互作用に関するp=0.94)。 ベースラインから3年時点の、気管支拡張剤投与後の肺機能低下もいずれもプラセボ群よりも少なかった(相互作用に関するp=0.32)。 さらに、経口・全身性コルチコステロイド投与を必要とする重度増悪の発生頻度も、すべての頻度グループで減少した(各グループの率比、0.48、0.56、0.66、相互作用に関するp=0.11)。 ICS群はプラセボ群に比べ、ベースラインの症状発現頻度にかかわらず肺機能が高く(相互作用のp=0.43)、無症状日数も有意に多かった(全3グループのp<0.0001、相互作用のp=0.53)。 これらの結果は、被験者をあらゆるガイドラインに則っていわゆる軽症持続型 vs.間欠型で層別化しても、類似していた。 著者は、「結果は、ICS投与について、週に2日超の患者という設定は支持しないものだった。軽症喘息患者に対する治療推奨は、リスク低下と症状の両方を考慮すべきであることを示唆する結果だった」とまとめている。

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科学的検証の重要性(解説:岡 慎一氏)-622

 妊婦、とくに母子感染予防に関するランダム化比較試験(RCT)は、なかなかやりにくいというのが定説であった。事実、HIV母子感染予防に関しても、AZT単剤の時代およびAZT+3TC+LPV/rが広く使われてきた時代においても、RCTのエビデンスに基づく結果からは少なく、主としてアフリカでの使用経験からの推奨であった。 WHOは、2015年改訂の治療ガイドラインで、妊婦も含めTDF/FTC/EFVの合剤を使用するよう推奨した。WHOガイドラインの途上国に対するインパクトは絶大なものがあり、おそらく感染妊婦の多いアフリカやアジアの国々では、今後この組み合わせによる母子感染予防が行われると考えられる。これに対し、今回の研究では、AZT単剤、AZTをベースとする併用療法(もっともよく使用されてきたもの)、TDFをベースとする併用療法(今後増える可能性がある)の3群でRCTを行った結果の報告である。 今回のRCTによる科学的な研究の結果は、TDFベースの予防は、感染予防には効果が高いが、乳児死亡率は高く、トータルでの有効性・安全性はAZT単剤群と同等であった。この研究が、今後どのように位置付けられるのか非常に興味深い。

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腹部大動脈瘤、手術の閾値の差が死亡率の差に関連するのか/NEJM

 イングランドでは、未破裂腹部大動脈瘤の手術施行率が米国の約半分で、大動脈瘤径が米国より5mm以上大きくなってから手術が行われ、瘤破裂率は2倍以上、瘤関連死亡率は3倍以上であることが、英国・ロンドン大学セントジョージ校のAlan Karthikesalingam氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2016年11月24日号に掲載された。欧州血管外科学会議(ESVS)のガイドラインは、動脈瘤径が男性で55mm、女性では50mmを超えたら介入を考慮すべきとしているが、介入の至適な閾値が不確実であるため、実臨床ではかなりのばらつきがみられ、55mm未満での手術施行率は国によって6.4~29.0%の幅があるという。手術閾値の差が、死亡率の乖離をもたらすかを検証 研究グループは、イングランドと米国で、未破裂腹部動脈瘤への手術の施行状況や手術時の大動脈瘤径を比較し、両国の手術の閾値の差が大動脈瘤関連死亡率の乖離と関連するかを検討した(英国Circulation Foundationなどの助成による)。 イングランドの病院エピソード統計(Hospital Episode Statistics)のデータベースおよび米国の全国入院患者情報(Nationwide Inpatient Sample)から、2005~12年の未破裂腹部大動脈瘤への手術の頻度、手術を受けた患者の院内死亡率、動脈瘤破裂率のデータを抽出した。 また、英国の全国血管登録(National Vascular Registry)(2014年のデータ)および米国の全国外科手術質改善プログラム(National Surgical Quality Improvement Program)(2013年のデータ)から、手術時の動脈瘤径のデータを抽出した。 米国の疾病管理予防センター(CDC)および英国の国家統計局(Office of National Statistics)から得たデータを用いて、2005~12年の動脈瘤関連死亡率を決定した。データは、直接標準化法または条件付きロジスティック回帰を用いて、両国間の年齢および性別の差を補正した。 2005~12年に、イングランドで2万9,300例が、米国では27万8,921例が、未破裂腹部大動脈瘤の手術を受けた。米国の手術閾値を適用すればイングランドのアウトカムが改善する? 10万人当たりの年間動脈瘤手術施行率は、イングランドでは2005年の27.11件から2012年には31.85件に、米国では57.85件から64.17件に増加した。補正後の動脈瘤手術施行率は、イングランドが米国よりも低かった(オッズ比[OR]:0.49、95%信頼区間[CI]0.48~0.49、p<0.001)。 全体のステントグラフト内挿術の施行率は、イングランドのほうが低かった(45.5 vs.67.0%、p<0.001)。イングランドのステントグラフト内挿術の施行率は経時的に上昇したが、2012年時の施行率は米国に比べ低かった(67.2 vs.75.4%、p<0.001)。 手術施行例の全体の補正後院内死亡率は、両国間に差はなかった(OR:1.04、95%CI:0.96~1.12、p=0.40)。動脈瘤関連死亡率は、イングランドが米国よりも高かった(OR:3.60、95%CI:3.55~3.64、p<0.001)。 3年生存率はイングランドが78.5%、米国は79.5%で、このうちステントグラフト内挿術はそれぞれ76.6%、79.8%、外科的人工血管置換術は78.1%、79.1%だった。補正後の3年生存率は、両群間に差はなかった(死亡のハザード比[HR]:0.97、95%CI:0.92~1.02、p=0.17)。 10万人当たりの動脈瘤破裂による入院率は、イングランドでは2005年の21.34件から2012年には16.30件に、米国では10.10件から7.29件に減少した。補正後の動脈瘤破裂による入院率は、イングランドが米国よりも高かった(OR:2.23、95%CI:2.19~2.27、p<0.001)。 年齢と性別で重み付けした手術時の加重平均動脈瘤径は、イングランドのほうが大きかった(63.7 vs.58.3mm、p<0.001)。年齢、性別、手術法(ステントグラフト内挿術、外科的人工血管置換術)で補正しても、この有意な乖離は保持されており、手術時の瘤径はイングランドのほうが5.3±0.3mm大きかった(p<0.001)。 著者は、「手術施行率と動脈瘤関連死亡率は、両国とも別個のデータセットに基づいており、これらの因果関係は示せないが、時期は同じであるためその可能性が示唆され、米国の手術閾値をイングランドに適用すればイングランドのアウトカムが改善するかという疑問が浮上する」としている。

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アルツハイマーやうつ病の予防、コーヒーに期待してよいのか

 観察研究によると、コーヒーは2型糖尿病、うつ病、アルツハイマー病と逆相関するが、虚血性心疾患とは逆相関しないとされている。米国2015年食事ガイドラインにおいて、コーヒーは保護効果がある可能性が記載されている。短期的試験では、コーヒーは、多くの血糖特性に対し中和的な影響を及ぼすが、脂質やアディポネクチンを上昇させるといわれている。中国・香港大学のMan Ki Kwok氏らは、大規模かつ広範な遺伝子型の症例対照研究および横断研究に適応された2つのサンプルのメンデル無作為群間比較を用いて、遺伝的に予測されるコーヒー消費による2型糖尿病、うつ病、アルツハイマー病、虚血性心疾患とその危険因子を比較した。Scientific reports誌2016年11月15日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・遺伝的に予測されたコーヒーの消費は、2型糖尿病(OR:1.02、95%CI:0.76~1.36)、うつ病(OR:0.89、95%CI:0.66~1.21)、アルツハイマー病(OR:1.17、95%CI:0.96~1.43)、虚血性心疾患(OR:0.96、95%CI:0.80~1.14)、脂質、血糖特性、肥満、アディポネクチンと関連していなかった。・コーヒーは小児期の認知とは関係がなかった。 著者らは「観察研究と一致し、コーヒーは、虚血性心疾患とも、予想通り小児期の認知とも関連がなかった。しかし観察研究とは対照的に、コーヒーは2型糖尿病、うつ病、アルツハイマー病に対し、有益な効果を示さない可能性が示された」とし、「この結果は食事ガイドラインで示唆されたコーヒーの役割を明確化し、これらの複雑な慢性疾患の予防介入は、他の手段を用いるべきではないか」とまとめている。関連医療ニュース 無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与 毎日5杯の緑茶で認知症予防:東北大 1日1杯のワインがうつ病を予防

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近年の乳がん死亡率低下におけるマンモグラフィ検診の寄与は、これまで考えられてきたよりも限定的であるかもしれない(解説:下井 辰徳 氏)-618

 米国では、乳がん死亡率は経年的に減少していることが知られている。ただし、この理由が乳がん検診の普及によるものと、治療の発達のいずれが大きいのかはわかっていない。乳がん検診の利益について検討するため、Welch氏らは、1975年から2012年までのSEERデータベースの乳がん診断数について検討した。期間は、米国におけるマンモグラフィ検診の出現前の期間、検診プログラムが普及していった期間、および普及後の期間が含まれている。 年代別の診断時腫瘍径については、Figure 2Aで1975年には、2cm未満の小さい乳がんが37%、2cm以上は64%程度となっていた。その後、1980年代のマンモグラフィ検診率が50%を超える時期には、とくに2cm未満の小さい乳がんの診断割合が上昇し、2000年代にはプラトーになってきたものの、2010年には2cm未満の小さい乳がんが67%、2cm以上の大きな乳がんは33%程度と、1975年と逆比率なっていた。さらに、Figure 2Bで女性10万人当たりの腫瘍径ごとの年次罹患数をみてみると、2cm未満の小さな乳がんは総じて増加傾向にあるにもかかわらず、2cm以上の大きな乳がんの年次罹患数は横ばいから若干減少ということになる。筆者らは、Table 1で1975~79年と2008~12年の女性10万人当たりの腫瘍径ごとの年次罹患数を比較している。これによると、2cm以上の大きな腫瘍は10万人当たり145例から115例と(30例分)減少しているものの、2cm未満の小さな腫瘍は10万人当たり82例から244例と(162例分)増加していることを示している。 早期乳がんのうちに発見して大きな乳がんになる症例が減る場合には、小さな乳がん診断数の増加と大きな乳がんの診断数低下がミラーイメージのようにならねばならぬが、そうはなっていない。2012年に同じ著者らは、早期乳がんの診断数の増加が著しく、進行乳がんの診断数の低下がほとんどない点から、乳がん罹患率の増加を現実的な範囲と想定しても説明がつかない早期乳がんの増加があるため、過剰診断が含まれているという報告をしている1)。今回は、検診後の乳がん発症割合は一定であるという仮定のもとで、腫瘍径の大きな乳がんの減少数に対して、腫瘍径の小さな乳がんの増加が著しいことから、マンモグラフィ検診には過剰診断が多く含まれているという考えを示している。 Table 2では、2cmを超える大きな腫瘍について、治療とマンモグラフィ検診の死亡率に与える影響を示している。治療の進歩については、治療による死亡数の減少は10万人当たり17例とされている。また、マンモグラフィ検診による死亡数の減少は10万人当たりベースラインでは12例、近年では8例と算出されている。Figure 3では、各腫瘍径の死亡リスクについて、1975~79年と2008~12年で比較している。これによると、相対リスクは大きな腫瘍に比べて小さな腫瘍でのリスク低減がより大きいとしている。 以上より、筆者らは乳がんのマンモグラフィ検診では、小さな乳がんの過剰診断に寄与しており、大きな乳がんの診断や死亡率低減には、治療の進歩の方が大きく影響しているのではないかと結論している。 今回の解析については、私としてはいくつかの問題点が挙げられる。たとえば、2012年の同著者らの論文でも同様であるが、リンパ節転移、遠隔転移については言及がなく、十分な乳がんのリスク評価がなされているとはいえない。また、死亡率の低減についての解析は、2cmを超える乳がんのみでなされており、それ以下の小さな乳がんについてはされていない。さらに、近年のマンモグラフィ精度の上昇や機器の進歩については、過剰診断を増やす可能性と正診率が上がる可能性のいずれもがあるが、評価には加えられていない。腫瘤径による乳がん死亡率の調整については、年齢や乳がんの病理学的予後因子が考慮されていない。 これまで、マンモグラフィ検診導入前後の乳がん死亡率の比較については、数多く報告がなされているが、研究期間中の治療成績の向上については考慮に入れておらず、10万人当たり数100例程度の死亡数減少が見込まれてきた2)3)4)。上記のように、いくつかのlimitationは存在するが、これらを踏まえたうえでも、私としては、大きな意義のある報告と思う。具体的には、治療成績の向上を考慮に入れて、かつ診断された腫瘍径の分類と予後の解析により、過剰診断の可能性と、マンモグラフィ検診の利益が以前考えられていたよりも少ない可能性が示唆された点は重要であると考える。 今後はマンモグラフィ検診の意義の社会的な再検討が進むとともに、検診に伴う過剰診断についても、対応を検討すべきと考えられる。ただし、Elmore氏は本稿のEditorialで、マンモグラフィ検診における過剰診断の原因は多岐にわたるため、過剰診断を減らすためには、多面的なシステムの発展が必要であると述べている5)。具体的には、過剰診断がなくならない理由として、検診のターゲット層、行政、医療従事者、患者それぞれの領域に原因があることを述べている。そのうえで、検診ターゲットについては、乳がん低リスクの全市民に行う現状を是正して高リスクに限ること、行政側は過剰診断や無治療でも予後にかかわらない腫瘤が存在するという真理を認識すること、さらに、医療提供者や患者にかかわる点では、より高い正確性と精度を有する新規の診断ツールの開発が必要であると述べている。 本邦でも、最近、新たな乳がんスクリーニングのガイドラインが報告されている6)。乳がん検診(日本では視触診とマンモグラフィ併用)受診率が、欧米と比較して日本では低い現状がある。とはいえ、視触診については「がん検診のあり方に関する検討会」の報告や上記ガイドラインでも、乳がんの死亡率減少効果としては根拠に乏しいことが述べられている。さらに、40代の若年者においては、本邦のJ-START試験7)の結果から、マンモグラフィ検診に超音波検診を組み合わせることがとくに小さな乳がん発見に役立つとされ、今後は超音波併用も検討されていくと思われる。 私としては、今後はマンモグラフィ検診による不利益だけではなく、日本における乳がん検診として、その利益と不利益の相対バランスを検討する必要があると考える。具体的には、「がん検診のあり方に関する検討会」など科学的解析に基づき、厚生労働省などが主導して検診体制を整備・再検討する必要があると考える。参考文献1)Bleyer A, et al. N Engl J Med. 2012;367:1998-2005.2)Kalager M, et al. N Engl J Med. 2010;363:1203-1210.3)Weedon-Fekjar H, et al. BMJ. 2014;348:g3701.4)Otto SJ, et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2012;21:66-73.5)Elmore JG. N Engl J Med. 2016;375:1483-1486.6)Hamashima C, et al. Jpn J Clin Oncol. 2016;46:482-492.7)Ohuchi N, et al. Lancet. 2016;387:341-348.

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冠動脈石灰化、低リスク女性の心血管疾患リスク予測精度を向上/JAMA

 アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクが低い女性の約3分の1に冠動脈石灰化(CAC)が認められ、CACはASCVDのリスクを高め、従来のリスク因子に加えると予後予測の精度をわずかに改善することが、オランダ・エラスムス大学医療センターのMaryam Kavousi氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年11月22日(オンライン版2016年11月15日)号に掲載された。米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)の予防ガイドラインに基づく、心血管疾患(CVD)の低リスク女性の予防戦略の導出におけるCAC検査の役割は、明らかにされていないという。欧米の5つの大規模コホート研究のメタ解析 研究グループは、ASCVDのリスクが低い女性のCVDリスクの予測および層別化におけるCAC検査の効用性を評価するために、5つの大規模な地域住民ベースのコホート研究のデータを用いてメタ解析を行った。 ダラス心臓研究(DHS、米国)、フラミンガム心臓研究(FHS、米国)、ハインツ・ニクスドルフ・リコール研究(HNR、ドイツ)、アテローム動脈硬化症多民族研究(MESA、米国)、ロッテルダム研究(RS、オランダ)の参加者のうち、ASCVDの10年リスクが7.5%未満の女性を選出した。 これら5つの研究は、一般人口からの多くの低リスク女性のCACデータが、詳細な長期フォローアップデータとともに入手可能と考えられるコホートとして選ばれた。固定効果モデルを用いたメタ解析で、これらの試験の結果を統合した。 主要評価項目はASCVDの発生とし、非致死的心筋梗塞、冠動脈心疾患(CHD)、脳卒中が含まれた。CACとASCVDの関連の評価には、Cox比例ハザードモデルを用いた。CACが、ASCVDリスクの従来のリスク因子よりも優れた予測因子であるかを評価するために、C統計量および連続的純再分類改善度(continuous net reclassification improvement:cNRI)を算出した。CAC発生率は36.1%、CAC>0のASCVDリスクのHRは2.04 ASCVDの低リスク女性6,739例が解析の対象となった。5研究のベースラインの平均年齢の幅は44~63歳であり、糖尿病の有病率は2.3~6.6%、早期CHDの家族歴ありは14.0~42.4%の範囲であった。 5研究のCACあり(CAC>0)の範囲は25.2~66.5%で、全体では36.1%(2,435例)であった。全体として、CACありの群は、より高齢で、心血管リスクのプロファイルがより不良であり、糖尿病有病率や早期CHD家族歴も高かった。フォローアップ期間中央値の幅は7.0~11.6年だった。 165件のASCVDイベントが発生し(非致死的心筋梗塞:64件、CHD死:29件、脳卒中:72件)、5研究のASCVD発生率の幅は1,000人年当たり1.5~6.0件であった。 CACあり(CAC>0)は、CACなし(CAC=0)と比較してASCVDのリスクが有意に高かった(1,000人年当たりの発生率:1.41 vs.4.33件、発生率差:2.92、95%信頼区間[CI]:2.02~3.83、多変量補正ハザード比[HR]:2.04、95%CI:1.44~2.90)。 従来のリスク因子にCACを加えると、C統計量が0.73(95%CI:0.69~0.77)から0.77(95%CI:0.74~0.81)へ改善し、ASCVD予測のcNRIが0.20(95%CI:0.09~0.31)となった。 著者は、「この予測精度の向上の臨床的な効用性と費用対効果を評価するには、さらなる検討を要する」としている。

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