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ASCO2021 レポート 肺がん

レポーター紹介2021年のASCOは、昨年に引き続き完全Webでの開催であり、肺がん領域については周術期での重要な発表がいくつかあったものの、進行期については真新しい話題は乏しい印象であった。本稿では、その中からIMpower010試験、IMPACT(WJOG6410L)試験、CheckMate9LA試験、amivantamab+lazertinib併用療法Phase I試験、patritumab deruxtecan(HER3-DXd)Phase I試験、JCOG1210/TORG1528試験について解説したい。IMpower010試験完全切除後の非小細胞肺がんを対象として、標準治療としてシスプラチン+ペメトレキセド/ゲムシタビン/ドセタキセル/ビノレルビンを最大4サイクル実施した後に、経過観察群と、アテゾリズマブ1,200mg/body 16サイクルを比較する第III相試験の結果が、Heather A. Wakelee先生から報告された。本試験では、完全切除後の非小細胞肺がん、病理病期StageIB~IIIA、1,280例が1:1にランダム化され、無病生存期間を主要評価項目として実施された。本試験はヒエラルキカルに3つの主要評価項目、順にPD-L1 TC≧1%のII~IIIA期における無病生存期間、II~IIIA期全体での無病生存期間、IB~IIIA期、最後に全生存期間の解析が実施されるプロトコールとなっている。今回報告されたのは、無病生存期間の第1回中間解析の結果である。最初の解析対象となるPD-L1 TC≧1%のII~IIIA期においては、ハザード比が0.66、95%信頼区間0.50~0.88、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群で未到達、経過観察群で35.3ヵ月という結果であり、統計学的にも有意に優越性が示されている。次の対象となるII~IIIA期全体での無病生存期間においても、ハザード比が0.79、95%信頼区間0.64~0.96、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群42.3ヵ月、経過観察群35.3ヵ月という結果であり、統計学的にも有意に優越性が示された。一方、IB~IIIA期においては、ハザード比が0.81、95%信頼区間0.67~0.99、無病生存期間中央値がアテゾリズマブ群未到達、経過観察群37.2ヵ月という結果であり、今回の中間解析では統計学的な優越性は示されなかった。この結果に基づき、全生存期間の解析は現時点では公式なものではないが、両群で明らかな差はないという結果が報告されている。有害事象に関しては、アテゾリズマブで従来報告されていた内容と大きな違いは認められなかった。周術期治療においては、免疫チェックポイント阻害剤を用いた術前、術後、さらには術前+術後の臨床試験が実施されている。その中でも、今回のIMpower010試験が、術後療法についてはいち早く報告された。PD-L1 TC≧1%のII~IIIA期の集団において、無病生存期間で明確な利益が示されているだけでなく、今後観察期間が延長された段階での無病生存期間の中間解析、さらには、全生存期間の結果を期待したい。IMPACT(WJOG6410L)試験WJOGで実施された、完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんを対象として、標準治療としてのシスプラチン+ビノレルビン療法と試験治療としてのゲフィチニブを比較する第III相試験の結果を多田先生が報告された。本試験では、完全切除後に病理病期でII期もしくはIII期と診断されたEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん、230例が1:1にランダム化され、無病生存期間を主要評価項目として実施された。完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんにおける、EGFR-TKIを用いたPhase III試験としては、アストラゼネカ社が主導したADAURA試験、中国で実施されたADJUVANT(CTONG1104)試験がすでに報告されている。ADAURA試験では第3世代EGFR-TKIのオシメルチニブが、ADJUVANT試験ではIMPACT試験同様にゲフィチニブが、EGFR-TKIとして用いられている。とくにADAURA試験では、無病生存期間においてオシメルチニブの明らかな優越性が示されたものの、進行肺がんでのEGFR-TKIの治療成績を踏まえて、全生存期間ではその差が解消されてしまうのではないか等の見解が示され議論を呼んでいる。一方、ゲフィチニブを用いたAJUVANT試験においては、ゲフィチニブのシスプラチン+ビノレルビンに対する、無病生存期間での優越性がハザード比0.60、95%信頼区間0.42~0.87で示されている。中国で行われたADJUVANT試験に比べても、いち早く立案されたIMPACT試験の結果は、日本国内だけでなく、世界的にも注目を集めていた。今回、残念ながら主要評価項目である無病生存期間、今後追跡される予定である副次評価項目の全生存期間いずれにおいても、試験治療であるゲフィチニブの優越性は示されないという結果であり、驚きをもって迎えられている。無病生存期間については、ハザード比0.92(p値0.63)、期間中央値はゲフィチニブで35.9ヵ月、シスプラチン+ビノレルビン療法で25.0ヵ月であり、全生存期間については、ハザード比1.03(p値0.89)、期間中央値は両群とも未到達という結果であった。同様のデザインで実施されたADJUVANT試験では、4年時点で両群ともに無病生存がほぼゼロとなっていたのに比べ、IMPACT試験の無病生存曲線は、5年目以降、約30%のところで平坦になり3人に1人で根治が得られていることが示唆されている。さらに、ADJUVANT試験においては、標準治療群のシスプラチン+ビノレルビンの無病生存期間中央値が18.0ヵ月、ゲフィチニブ群で28.7ヵ月であったのに対し、IMPACT試験では標準治療群でも25.0ヵ月、試験治療群では35.9ヵ月と明らかに異なる結果であった。ADAURA試験においては、プラチナ併用療法による術後療法を実施していない患者も含む解析での標準治療群の無病生存期間中央値は20.4ヵ月(II~IIIA期)であり、プラチナ併用療法による術後療法を実施された患者集団での無病生存期間中央値は22.1ヵ月(ただしこちらはIB期含む)という結果であった。これらの試験結果より、IMPACT試験において、標準治療群のシスプラチン+ビノレルビンによる無病生存期間が最も良好であることが、主要評価項目を達成できなかった1つの要因となっていると考えられる。さらに、試験治療群についても、ゲフィチニブに比べオシメルチニブの有効性が高いことが示唆される。IMPACT試験は、残念ながら主要評価項目を達成できなかったものの、今後もフォローアップの結果が得られ、また、実臨床にも応用される可能性のあるEGFR-TKIによる術後療法について、考察を深めるために必須の情報をもたらした重要な試験と評価でき、追加解析の結果含め期待したい。CheckMate9LA試験CheckMate9LA試験は、未治療進行非小細胞肺がん患者を対象として、標準治療としてのプラチナ併用療法(腺がんプラチナ+ペメトレキセド、扁平上皮がんカルボプラチン+パクリタキセル、いずれも3週おき4サイクル、ペメトレキセドは維持療法あり)、試験治療としてのプラチナ併用療法(3週おき2サイクル)にニボルマブ(Nivo、360mg/body、3週おき)、イピリムマブ(Ipi、1mg/kg、6週おき)を追加し、Nivo+Ipiについては増悪もしくは2年までの維持療法実施を比較する第III相試験であり、Martin Reck先生が報告された。本試験では、EGFR陰性、ALK陰性、PS 0~1のIV期もしくは再発の非小細胞肺がん、719例が1:1にランダム化され、全生存期間を主要評価項目として実施された。2020年のASCOでの初回報告から、追跡期間を延長し最短でも2年の追跡がされたデータセットでのアップデート報告である。進行非小細胞肺がんにおいては、プラチナ併用療法に対するNivo+Ipiの優越性を示したCheckMate227試験の結果も併せて、日本においてもNivo+Ipi、Nivo+Ipi+プラチナ併用療法が承認され、実臨床で実施可能な状態となっている。今回、CheckMate227試験は、4年のフォローアップ結果がポスター発表されており、PD-L1 TPS≧1%、<1%のそれぞれの群における4年の全生存割合が29%、24%であり、長期生存につながることが示されている。CheckMate9LA試験の2年フォローアップ結果では、全生存期間については、ハザード比0.72、95%信頼区間が0.61~0.86、全生存期間中央値はNivo+Ipi+プラチナ併用療法群で15.8ヵ月、プラチナ併用療法群で11.0ヵ月であり、無増悪生存期間については、ハザード比0.67、95%信頼区間が0.56~0.79、無増悪生存期間中央値は試験治療群で6.7ヵ月、標準治療群で5.3ヵ月であった。2年の全生存割合については、全体集団、PD-L1 TPS≧1%、≦1%においてそれぞれ、38%、41%、37%、2年の無増悪生存割合についても同様の順番で、20%、20%、20%であった。この結果は、PD-L1の発現状況によらず維持されており、従来指摘されているPD-1とCTLA-4の双方を阻害する併用療法の特徴が再現されている。有害事象に関しては、すべてのGrade3/4について試験治療群48%、標準治療群で38%、いずれかの治療の中止に関連したすべての有害事象が試験治療群で22%、標準治療群で8%、治療関連死が両群ともそれぞれ2例であった。昨年の報告時と比べ、有害事象の頻度はほとんど変動しておらず、Nivo+Ipi併用療法に懸念されている有害事象も、多くは1年以内に発生していることが示唆された。フォローアップ期間が延長されるたびに、いわゆるTail plateauと呼ばれる生存曲線後半がフラットになっているかが注目され、今回のCheckMate9LA試験では従来に比べ曲線がフラットになっていない印象があることが話題になっている。ただ、生存曲線の後半の部分は、打ち切り症例の影響を受けやすく、最も信頼できない部分でもあり、他の免疫チェックポイント阻害剤の試験と同様に、5年などの長期の結果を待たなければならない。CheckMate9LAについては、プラチナ併用療法が含まれていないものの、同様の併用療法であるCheckMate227試験の4年のデータが、ある程度長期の成績を占うものとして参考になると考えられる。amivantamab+lazertinib近年、オシメルチニブ耐性後のEGFR遺伝子変異陽性肺がん患者を対象とした、次世代の治療について期待の持てる結果が報告されている。オシメルチニブ耐性後の患者に対して、amivantamabとlazertinibの併用療法を検討するCHRYSALIS Phase I試験について有効性に関するアップデートと、バイオマーカー解析の結果が報告された。amivantamabはEGFRとMETを標的としたBispecific抗体であり、EGFRやMETそのものに対する効果だけでなく、免疫細胞を介在した効果(immune cell-directing activity)も期待されている薬剤である。lazertinibはオシメルチニブ同様第3世代EGFR-TKIに位置付けられる薬剤である。今回の報告では、EGFR経路の耐性機序、METに関連する耐性機序を有することがバイオマーカー解析の結果判明した集団と、それらの耐性機序が明らかではない集団での有効性が示された。EGFRやMETに何らかのオシメルチニブ耐性機序が出現していた集団での奏効割合は47%、他の耐性機序が報告されている患者集団での奏効割合が29%であった。全体集団での奏効割合は36%、無増悪生存期間中央値が4.9ヵ月であった。今回有害事象に関する追加データは乏しかったものの、amivantamabには従来EGFR抗体として特徴的な皮疹等の有害事象に加え、比較的高い割合の患者で注入に伴う反応が報告されており、適切な支持療法の併用が求められる。今回の結果から、従来示されているように多様な耐性機序が混在するオシメルチニブ治療後の患者集団においても一定の効果が期待されるものの、可能な限り耐性機序を明らかにすることにより、より高い有効性を追求することができることも明らかになった。patritumab deruxtecan(HER3-DXd)オシメルチニブを中心としたEGFR-TKI耐性化後の治療薬として注目されているもうひとつのカテゴリーが、抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)である。複数のADCが開発中であるが、その中でも注目を集めている薬剤がpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)である。HER3に対する完全ヒト化モノクローナル抗体であるpatritumabに、トラスツズマブ デルクステカンでも用いられているトポイソメラーゼ阻害剤をペイロードとして付加したADCである。今回は、Phase I試験のうち、用量漸増パートと、拡大コホートの結果が報告された。オシメルチニブだけでなくさまざまなEGFR-TKI耐性化後の患者が登録され、有効性については前治療によらず39%の奏効割合が報告され、無増悪生存期間中央値も8.2ヵ月と、オシメルチニブ後の治療薬として期待される結果であった。耐性機序別にみても、オシメルチニブ等EGFR-TKIに対する多様な耐性に対応できることが示されている。また、今回は、脳転移を有する患者に関するサブグループ解析も報告されたが、脳転移を有する集団においても同様の有効性が示されていた。HER3を標的としたADCであることから、HER3の発現状況によって有効性に違いがあるのではと従来指摘されていたが、今回の報告では、H-scoreで評価したHER3の発現の強度によらず効果が示されていることが示された。Grade3以上の有害事象としては、血小板減少、好中球減少、倦怠感、貧血等が報告されており、有害事象による治療中止は10%前後であった。トラスツズマブ デルクステカンで注目されている肺障害についても、今回、全体集団で出現割合が5%とされており、注意は要するものの大きな懸念は示されなかった。今後単剤での開発だけでなく、オシメルチニブとの併用療法等の開発も検討されており、期待したい。JCOG1210/TORG1528試験JCOG肺がん内科グループ、TORGのインターグループ試験として実施された、71歳以上の高齢、進展型小細胞肺がん患者を対象として、標準治療としてのカルボプラチン+エトポシド(CE療法、カルボプラチンAUC5、エトポシド80mg/m2)、試験治療としてのカルボプラチン+イリノテカン(CI療法、カルボプラチンAUC4、イリノテカン50mg/m2)を比較する第II/III相試験の結果を、研究事務局の下川先生が報告された。本試験では、71歳以上の進展型小細胞肺がん、258例が1:1にランダム化され、全生存期間を主要評価項目として実施された。高齢者進展型小細胞肺がんにおいては、JCOG9702試験の結果に基づき、日常診療で幅広くCE療法が実施されている。本試験は、JCOG9511試験において、シスプラチンの併用療法薬としてエトポシドに対する優越性を示したイリノテカンを、高齢者においても検討することを目的に実施されている。残念ながら主要評価項目である全生存期間、副次評価項目である無増悪生存期間いずれにおいても、試験治療であるCI療法の優越性は示されず、CE療法が変わらず標準治療とされるという結論であった。全生存期間については、ハザード比0.848、95%信頼区間が0.650~1.105、全生存期間中央値はCE療法で12.0ヵ月、CI療法で13.2ヵ月であり、無増悪生存期間については、ハザード比0.851、95%信頼区間が0.664~1.090、無増悪生存期間中央値はCE療法で4.4ヵ月、CI療法で4.9ヵ月であった。有害事象(Grade3以上)に関しては、CE療法、CI療法それぞれについて、白血球減少59.2%、16.1%、好中球減少87.2%、46.0%、貧血28.0%、12.9%、血小板減少27.2%、12.9%、発熱性好中球減少症11.2%、9.7%であった。残念ながら高齢者進展型小細胞肺がんにおいて、新たなプラチナ併用療法の有効性が示されることはなかったものの、アテゾリズマブ、デュルバルマブ等免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の登場で使用頻度の増えたCE療法について、高齢者も含め国内多施設臨床試験での有効性、安全性のデータが得られ、今後の追加解析の結果が待たれる。さいごに昨年に続くVirtual meetingであり、発表者、司会者、聴講者ともに、Webでの学会運営への習熟が明らかなASCOであった。おそらく今後も、Webでのライブ配信は継続されるのではないかと思われるが、来年こそはシカゴで開催したいという参加者の熱意が感じられた。昨今の状況が一刻も早く解決され、会場に集えない方がVirtualで、また、会場に集える場合は現地で、同じように最新のエビデンスを体感できる時代が来ることを祈念している。

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ASCO2021 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介これまでは高齢がん患者を対象とした臨床試験が乏しいといわれてきたが、徐々に高齢者を対象とした第III相試験のデータが発表されつつある。ASCO2021では、高齢者進展型小細胞肺がんに対するカルボプラチン+エトポシド併用療法(CE療法)とカルボプラチン+イリノテカン併用療法(CI療法)のランダム化比較第II/III相試験(JCOG1201/TORG1528:#8571)、高齢者化学療法未施行IIIB/IV期扁平上皮肺がんに対するnab-パクリタキセル・カルボプラチン併用療法とドセタキセル単剤療法のランダム化第III相試験(#9031)、76歳以上の切除不能膵がんに対する非手術療法の前向き観察研究(#4123)など、高齢者を対象とした臨床研究の結果が複数、発表されている。これら治療開発に関する第III相試験の情報はさまざまな場所で得られると思われるため詳述はせず、ここでは老年腫瘍学に特徴的な研究を紹介する。高齢者の多様性を示すかのように、今回の発表内容も多様であった。高齢がん患者に対する高齢者総合的機能評価および介入に関するランダム化比較試験(THE 5C STUDY)高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)は、患者が有する身体的・精神的・社会的な機能を多角的に評価し、脆弱な点が見つかれば、それに対するサポートを行う診療手法である。NCCNガイドライン1)をはじめ、高齢がん患者に対してCGAを実施することが推奨されている。これまで、がん領域では高齢者の機能の「評価」だけが注目されることが多かったが、最近では、「脆弱性に対するサポート」まで含めた診療の有用性を評価すべきという風潮になっている。昨年のASCOでは、「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するランダム化比較試験が4つ発表され、その有用性が検証されつつある。今回、世界的にも注目されていた第5のランダム化比較試験、THE 5C STUDY2)がシンポジウムで発表された。画像を拡大する主な適格規準は、70歳以上、がん薬物治療が予定されている患者(術前補助化学療法、術後補助化学療法は問わず、また分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬も対象)、PS:0~2など。標準診療群は「通常の診療」、試験診療群は「高齢者総合的機能評価および介入(CGAに加え、通常の腫瘍治療に加えて老年医学の訓練を受けたチームによるフォローアップ)を行う診療」である。primary endpointはEORTC QLQ-C30のGlobal health status(項目29および30)で評価した健康関連の生活の質(HR-QOL)であり、key secondary endpointは手段的日常生活動作(Instrumental Activities of Daily Living:IADL)。primary endpointについてはパターン混合モデルを使用した(0、3、6ヵ月目)。カナダの8つの病院から351例の参加者が登録され、治療開始翌日以降に介入が行われた(患者の要望に合わせた研究であるため)。HR-QOLスコアの変化は両群で差がなく(p=0.90)、またIADLも両群間で差はなかった(p=0.54)。筆者はlimitationとして、CGAを実施したタイミングが悪かったことを挙げている。本研究では、患者の利便性を考えて、「治療開始時」または「治療開始後」にCGAを実施していたが、一般的には、治療方針を決定する前にCGAを実施すれば、患者の脆弱性を考慮して適切な治療を選択できると考えられている。しかし、今回は治療開始時または治療開始後にCGAを実施された患者が多かったため、CGAの意義が乏しかった可能性があるという理屈である。その他、COVID-19により、十分な介入ができなかったこと、またHR-QOLが影響を受けた可能性があること、そもそも「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するためのアウトカムとしてEORTC QLQ-C30のGlobal health statusが適切でなかった可能性などをlimitationに挙げている。昨年のASCOで発表された研究では「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性が示されたが、残念ながら、本試験ではその有用性は検証できなかった。しかし、研究デザインに問題があること、またひと言で「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」といっても、その内容はさまざまであることなどから、本試験がnegative studyであるからといって、その有用性が否定されたわけではないだろう。個人的には、筆者がlimitationで挙げているとおり、治療開始「前」にCGAを実施できていれば、より適切な治療が選択され、その結果、介入もより効果的になって、本試験の結果も変わっていたのではないかと想像してしまう。高齢者総合的機能評価と局所進行頭頸部扁平上皮がんの治療方針単施設の後ろ向き研究ではあるが、THE 5C STUDYのlimitationと関係するため、ここで紹介する。要は、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することで、適切な治療を選択できる可能性があるという発表である3)。局所進行頭頸部扁平上皮がん(LA-HNSCC)を伴う高齢者を対象として、2016~18年の間に通常の診療を受けた集団(通常診療コホート)と、2018~20年の間にCGAを実施された集団(CGAコホート)を比較し、実際に受けた治療(標準治療、毒性を弱めた治療、緩和目的の治療、ベストサポーティブケア)、治療完遂割合、奏効割合などを評価した。通常診療コホート96例、CGAコホート81例の計197例の患者が対象となった。CGAコホートでは、通常診療コホートと比較して、標準治療を受ける患者が多かったが(36% vs.21%、p=0.048)、治療完遂割合(84% vs.86%、p=0.805)や奏効割合(73.9% vs.66.7%、p=0.082)に有意な差は認めなかった。これまでは、CGAを実施することで過剰な治療を防ぐことができるという、いわば脆弱な患者を守る方向で議論されることが多いと感じていた。しかし、本研究では、CGAを実施することで標準的な治療を受けることができた患者が増え、またベストサポーティブケアを受ける患者が少なくなるということが示されたことで、CGAにより、過小な治療を受けていた患者が適切な治療を受けられることが示唆されたといえる。つまり、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することは大事という話。Choosing Unwisely(賢くない選択):高齢者における骨髄異形成症候群の確定診断Choosing Wiselyとは科学的な裏付けのない診療を受けないように賢い選択をしましょうという国際的なキャンペーンだが、本研究ではChoosing Unwiselyとして、高齢者に対して骨髄異形成症候群(MDS)の正確な診断をすること、を挙げている4)。MDSに正確な診断(Complete Diagnostic Evaluation:CDE)をするためには、骨髄生検、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション、染色体分析が必要だが、この意義があるか否かを2011~14年のメディケアデータベースを用いて検討した。対象は、2011~14年の間に66歳以上でメディケアを受けている患者のうち、MDSの診断を受けており、1種類以上の骨髄細胞減少を有し、MDS診断前後16週間に輸血を受けていない集団(1万6,779例)。CDEが臨床的に正当化されない患者の要因の組み合わせを特定するために、機械学習の手法であるCART(Classification and Regression Tree)分析を行い、CDEの有無による生存率の比較を行うためにCox比例ハザード回帰分析を行った。結果、1種類の血球減少(例:貧血のみ)を有する集団のうち、66~79歳の57.7%(1,156例)、80歳以上の46.0%(860例)がCDEを受けていた。また、血球減少がない患者3,890例のうち、866例がCDEを受けていた。背景因子を調整後の解析では、CDEを受けたことによる生存率の向上は認められなかった(p=0.24)。筆者は、高齢者のMDSに対して不要なCDEを減らすことを提案している。COVID-19患者の全米データベースの「がんコホート」高齢者に限定した研究ではないが、知っておくべきデータだと思うので簡単に紹介する。米国国立衛生研究所(NIH)が運営している全米COVIDコホート共同研究(National COVID Cohort Collaborative:N3C)のデータベースのうち、がん患者のみのコホートが公表された5,6)。N3Cコホートから合計37万2,883例の成人がん患者が同定され、5万4,642例(14.7%)がCOVID-19陽性。入院中のCOVID-19陽性患者の平均在院日数は6日(SD 23.1日)で、COVID-19の初回入院中に死亡した患者は7.0%、侵襲的人工呼吸が必要な患者は4.5%、体外式膜型人工肺(ECMO)が必要な患者は0.1%であった。生存割合は、10日目で86.4%、30日目で63.6%であった。65歳以上の高齢者(HR:6.1、95%CI:4.3~8.7)、併存症スコア2以上(HR:1.15、95%CI:1.1~1.2)などが全死因死亡のリスク増加と関連していた。18~29歳を基準とした場合、30~49歳のHRは1.09(0.67~1.76)、50~64歳では1.13(0.72~1.77)に対して、65歳以上ではHR:6.1と異常に高いことから、これまで以上に、高齢がん患者ではCOVID-19に注意を払う必要があると感じた。もちろん、併存症スコアが上昇するにつれ死亡割合が上昇していることから、暦年齢は併存症スコアに関連している可能性があり、暦年齢だけの問題ではない可能性はある。参考1)NCCN GUIDELINES FOR SPECIFIC POPULATIONS: Older Adult Oncology2)Comprehensive geriatric assessment and management for Canadian elders with Cancer: The 5C study.3)Impact of comprehensive geriatric assesment (CGA) in the treatment decision and outcome of older patients with locally advanced head and neck squamous cell carcinoma (LA-HNSCC).4)Choosing unwisely: Low-value care in older adults with a diagnosis of myelodysplastic syndrome.5)Outcomes of COVID-19 in cancer patients: Report from the National COVID Cohort Collaborative (N3C).6)Sharafeldin N, et al. J Clin Oncol. 2021:Jun 4. [Epub ahead of print]

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術前化療後に残存病変を有するTN乳がん、術後カペシタビンvs.プラチナ(ECOG-ACRIN EA1131)/ASCO2021

 術前療法施行後にも残存腫瘍を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する、術後の追加療法としてのプラチナ製剤とカペシタビンとの比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・ECOG-ACRINグループのIngrid A. Mayer氏から発表された。 術前療法後に残存腫瘍を有するTNBC患者に対するカペシタビン追加投与の有用性は、すでに日韓共同のCREATE-X試験によって示唆されている。本試験は対象患者層が異なるプラチナ製剤とカペシタビンとの第III相の無作為化比較試験である。・対象:初診時にStage II/IIIのTNBCで、タキサン±アントラサイクリンの術前治療を受け、手術後の評価で1cm以上の残存腫瘍がある症例(リンパ節転移は問わず)遺伝子検査キットPAM50にてBasalタイプとNon-Basalタイプを判定・試験群:カルボプラチン(AUC 6)またはシスプラチン(75mg/m2)を3週ごとに4サイクル投与(Pt群)・対照群:カペシタビン(1,000mg/m2)を2週投与1週休薬を1サイクルとして6サイクル投与(Cape群)・評価項目:[主要評価項目]Basalタイプにおける無浸潤疾患生存期間(iDFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、無再発生存期間(RFS)、Basalタイプの割合、Non-BasalタイプのiDFS 主な結果は以下のとおり。・試験の統計学的設計は、初めに非劣性を検証し、それがクリアされれば優越性も検証するデザインであった。・2021年1月に5回目の中間解析が実施され、Pt群のCape群に対するハザード比[HR]は1.09(95%信頼区間[CI]:0.62~1.90)であり、Pt群の非劣性または優越性がクリアされる可能性は低く、有害事象も多かったことから、2021年3月に安全性データモニタリング委員会が試験中止を勧告した。・Basalタイプの症例は308例(78%)、Non-Basalタイプが86例登録された。・患者背景は、タキサン+アントラサイクリンの投与が約85%、放射線治療ありが約75%、リンパ節転移なしがほぼ半数であった。・Basalタイプの3年時のiDFS率は、Pt群42%、Cape群49%、HRは1.06(95%CI:0.62~1.90)であった。・同様にBasalタイプの3年時のOS率は、Pt群58%、Cape群66%、HR 1.13(95%CI:0.71~1.79)であり、3年時のRFS率は、Pt群46%、Cape群49%、HRは0.99(95%CI:0.67~1.45)であった。・主な有害事象は貧血、白血球減少がPt群で多く、下痢や手足症候群がCape群で多かった。・Pt群では、プロトコール治療を完遂できたのは82.2%、Cape群78.7%であり、用量変更があったのはPt群52.4%、Cape群73.2%であった。 最後に演者は「今回の結果から、術前療法後に残存腫瘍を有する症例に、プラチナ製剤の術後投与の出番はないが、引き続きカペシタビンの役割は重要であることが確認された」と述べた。

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ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法のNCSLS1次治療、2年フォローアップ(CheckMate 9LA)/ASCO2021

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法の無作為化第III相CheckMate9LA試験の2年間のフォローアップデータが米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表された。結果、同併用による生存ベネフィットが引き続き観察されている。・対象:未治療のStage IVまたは再発NSCLC患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS)、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 主な結果は以下のとおり。・追跡期間は最低 24.4ヵ月であった。・NIVO+IPI+Chemo群は40%、Chemo群では47%が全身療法の後治療を受けていた。・OS中央値はNIVO+IPI+Chemo群の15.8ヵ月に対して、Chemo群11.0ヵ月と、NIVO+IPI+Chemo群で良好なOSを維持した (ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.61~0.86)、2年OS率はそれぞれ、38%と26%であった。・PFS中央値はNIVO+IPI+Chemo群6.7ヵ月に対し、Chemo群では 5.3ヵ月であった (HR:0.67、95%CI:0.56~0.79)。2年PFS率はそれぞれ、20%と8%であった。・ORRは、NIVO+IPI+Chemo群38.0%、Chemo群では25.4%であった。・奏効期間(DoR)中央値はNIVO+IPI+Chemo群13.0ヵ月、Chemo群5.6ヵ月、2年DoR率はそれぞれ、34%と12%であった。・PD-L1発現別にみると、PD-L<1%のOS HRは0.67、PFS HRは0.68、≧1%のOS HRは0.70、PFS HRは0.67、≧50%のOS HRは0.67、PFS HRは0.59と、いずれもNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。・有効性はまた、組織形を問わずNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)発現率は、NIVO+IPI+Chemo群92%、Chemo群88%。Grade3/4のTRAE発現率はそれぞれ、48%と38%であった。新たな安全性シグナルは確認されていない。・Post Hoc解析の結果、TRAEによって治療中止となったNIVO+IPI+Chemo群のNIVO+IPI+Chemo群の2年OS率は54%(全集団の2年OS率は38%)と、治療中止による生存への悪影響はみられなかった。 発表者のドイツ・Martin Reck氏は、この2年間のフォローアップ結果は、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法が、進行NSCLCに対する有効な1次治療であることを支持するものだと述べた。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、悪性胸膜中皮腫に適応拡大/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2021年5月27日、ニボルマブ(商品名:オプジーボとイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法について、切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する効能又は効果に対する製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 今回の承認は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法を標準治療の化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-743試験)であらかじめ計画されていた中間解析の結果に基づいたもの。 同解析において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、主要評価項目である全生存期間の有意な延長を達成した。また、本試験で認められたニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。 悪性胸膜中皮腫に対する標準治療としては、ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法が行われているが、今回の承認により、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が悪性胸膜中皮腫患者にとって新たな治療選択肢になるものと期待されている。

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HER2+乳がんの術前薬物療法、アントラサイクリンの有無別の生存率/TRAIN-2試験2次解析

 Stage II/IIIのHER2陽性乳がんの術前薬物療法において、アンスラサイクリンを含む化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブと、アンスラサイクリンを含まない化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブを比較したTRAIN-2試験では、すでに病理学的完全奏効率に差がない(67% vs. 68%)ことが示されている。今回、オランダ・the Netherlands Cancer InstituteのAnna van der Voort氏らのフォローアップ解析により、3年無イベント生存率(EFS)および3年全生存率(OS)も差がないことが示された。また、アントラサイクリンの使用は、発熱性好中球減少症、心毒性、2次がん発症リスクの増加と関連していた。JAMA Oncology誌オンライン版2021年5月20日号に掲載。 TRAIN-2試験は非盲検無作為化第III相試験で、2013年12月9日~2016年1月14日にオランダの37病院で登録されたStage II/IIIのHER2陽性乳がん438例が対象。参加者は、年齢、Stage、リンパ節転移状況、エストロゲン受容体の有無で層別化され、FEC 3サイクル後パクリタキセル+カルボプラチン6サイクル(アントラサイクリン群)とパクリタキセル+カルボプラチン9サイクル(非アントラサイクリン群)に1:1で無作為に割り付けられた(両群ともトラスツズマブとペルツズマブを3週ごとに投与)。 主な結果は以下のとおり。・計438例が各群219例ずつに割り付けられ、年齢中央値はアントラサイクリン群が49歳(四分位範囲:43~55歳)、非アントラサイクリン群が48歳(同:43~56歳)だった。観察期間中央値は48.8ヵ月(四分位範囲:44.1〜55.2ヵ月)。・EFSイベントは、アントラサイクリン群で23(10.5%)、非アントラサイクリン群で21(9.6%)発生した(ハザード比:0.90、95%CI:0.50~1.63)。・3年EFSはアントラサイクリン群92.7%(95%CI:89.3~96.2%)、非アントラサイクリン群93.6%(同:90.4~96.9%)、3年OSはアントラサイクリン群97.7%(同:95.7~99.7%)、非アントラサイクリン群98.2%(同:96.4~100%)だった。・ホルモン受容体やリンパ節転移状況にかかわらず、EFSおよびOSの結果に差はなかった。・左室駆出率がベースラインから10%以上低下し50%未満になった患者の割合は、アントラサイクリン群が7.7%(220例中17例)で、非アントラサイクリン群の3.2%(218例中7例)より高かった(p=0.04)。・アントラサイクリン群の2例で急性白血病を発症した。

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StageIII非小細胞肺がんCRT、化学療法で予後は変わるか。10年間の追跡結果(WJTOG0105)/JAMA Oncol

 StageIIIの非小細胞肺がんの化学放射線療法(CRT)10年後の累積毒性発現と長期転帰を評価する多施設第III相無作為化試験WJTOG0105が行われ、その結果が国立がん研究センター東病院の善家 義貴氏らによりJAMA Oncology誌に発表された。・対象:切除不能なStageIII非小細胞肺がん患者・試験群: 毎週イリノテカン+カルボプラチン 6サイクル+胸部放射線療法(TRT)60Gy→イリノテカン+カルボプラチン 2サイクル(B群) 毎週パクリタキセル+カルボプラチン 6サイクル+TRT 60Gy→パクリタキセル+カルボプラチン 2サイクル(C群)・対照群:マイトマイシン+ビンデシン+シスプラチン 4サイクル+TRT 60Gy(A群)・評価項目:[主要評価項目]CRT後10年の生存率[副次評価項目]CRT開始90日以降の毒性 主な結果は以下のとおり。・2001年9月〜2005年9月に、440例の患者がA群(146例)、B群(147例)、C群(147例)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は11.9年であった。・全生存期間中央値はA群20.5ヵ月、B群19.8ヵ月、C群22.0ヵ月、10年生存率はそれぞれ13.6%、7.5%、15.2%で、治療群間に有意差はなかった。・10年無増悪生存率はA群8.5%、B群6.5%、C群11.1%であった。・Garde3/4の後期毒性はA群で3.4%(心臓0.7%、肺2.7%)に発現。肺にのみ発現したGarde3/4の毒性はB群3.4%、C群4.1%であった。 この治療開始から10年間の追跡において、C群はA群と同様の有効性と安全性プロファイルを示した。

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非扁平上皮NSCLC、KEYNOTE-189のOSおよび日本人試験のアップデート/日本臨床腫瘍学会

 転移を有する非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、ペムブロリズマブ+化学療法の第III相KEYNOTE-189試験。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)では、関西医科大学の倉田 宝保氏が全集団の全生存期間(OS)と日本人サブセットのアップデートを発表した。・対象:再発・転移のある無治療のStageIV非扁平上皮NSCLC患者・試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド)3週ごと4サイクル後、ペメトレキセド3週ごと最大35サイクル)(ペムブロリズマブ+Chemo群)・対照群:プラセボ+化学療法(ペムブロリズマブ併用群と同一用法・用量)(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]OS、無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性[探索的評価項目]PD-L1発現(TPS)別OS、PFS、ORR、2次治療後までを含めたPFS(PFS2)など 主な結果は以下のとおり。・全集団のOS追跡期間中央値は46.3ヵ月、日本人サブセットの追跡期間中央値は33.8ヵ月であった。・全集団のOSはペムブロリズマブ+Chemo群22.0ヵ月、Chemo群10.6ヵ月、3年OS率はペムブロリズマブ+Chemo群31.3%、Chemo群17.4%であった(HR:0.60、95%CI:0.50~0.72)。・全集団のPFSはペムブロリズマブ+Chemo群9.0ヵ月、Chemo群4.9ヵ月、3年PFS率はペムブロリズマブ+Chemo群11.8%、Chemo群1.3%であった(HR:0.50、95%CI:0.41~0.59)。・40例の日本人患者はペムブロリズマブ+Chemo群25例、Chemo群15例に無作為に割り付けられた。・日本人のOS中央値はペムブロリズマブ+Chemo群は未達、Chemo群25.9ヵ月であった(HR:0.44、95%CI:0.19〜1.04)。・日本人のPFS中央値はペムブロリズマブ+Chemo群17.4ヵ月、Chemo群は7.1ヵ月であった(HR:0.76、95%CI:0.37〜1.55)。・日本人のORRはペムブロリズマブ+Chemo群56.0%、Chemo群は33.3%であった。・全集団のGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)発現率はペンブロリズマブ+Chemo群52.1%、Chemo群42.1%、日本人集団のGrade3以上のTRAE発現率はペンブロリズマブ+Chemo群60.0%、Chemo群46.7%であった。

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非扁平上皮NSCLC、化学療法+ニボルマブ+ベバシズマブの1次治療、日本人集団の成績(ONO-4538-52/TASUKI-52)/日本臨床腫瘍学会

 非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、ニボルマブとプラチナ含有化学療法およびベバシズマブの併用とプラチナ含有化学療法およびベ バシズマブの併用を比較検討する第III相ONO-4538-52/TASUKI-52試験。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)では、愛知県がんセンターの樋田 豊明氏が日本人のサブ解析結果を発表した。・対象:未治療のStage IIIB/IVの非扁平上皮NSCLC患者(PD-L1発現問わず)・試験群:ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間ごと6サイクル)→ニボルマブ+ベバシズマブ(ニボルマブ群)・対象群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ→プラセボ+ベバシズマブ(プラセボ群) ニボルマブ/プラセボ+ベバシズマブは、疾患進行または許容できない毒性発現まで継続・評価項目:[主要評価項目]独立放射線審査委員会(IRRC)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目 ]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・全体集団550例中日本人は371例で、ニボルマブ群188例、プラセボ群183例に無作為に割り付けられた。・日本人集団の患者背景は全集団と同様であった。・日本人集団のPFS中央値はニボルマブ群13.4ヵ月、プラセボ群8.2ヵ月、1年PFS率はニボルマブ群52.9%、プラセボ群33.2%と、ニボルマブ群で良好であった(HR:0.56、95%CI:0.42~0.74)。・PD-L1発現レベル別のPFS HRは、PD-L1<1%では0.53、PD-L1 1~49%では0.75、PD-L1≧50 0.46と、PD-L1発現レベルを問わず、ニボルマブ群で良好であった。・日本人集団のIRRC評価のORRは、ニボルマブ群65.4%、プラセボ群53.0%であった(OR:1.68、95%CI:1.11~25.8)。・日本人集団の奏効期間は、ニボルマブ群12.2ヵ月、プラセボ群7.0ヵ月であった。・日本人集団のOS中央値は未達成であった。・日本人集団の治療関連有害事象はニボルマブ群99.5%(Grade3~4 83.9%)、プラセボ群100%(Grade3~4 84.2%)であった。

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悪性胸膜中皮腫の1次治療、ニボルマブ+イピリムマブがOS改善/Lancet

 未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の治療において、ニボルマブ+イピリムマブ療法は標準的化学療法と比較して、全生存(OS)期間を4ヵ月延長し、安全性プロファイルは同程度であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのPaul Baas氏らが行った「CheckMate 743試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年1月30日号で報告された。MPMの承認済みの全身化学療法レジメンは、生存に関する有益性は中等度であり、転帰は不良だという。ニボルマブ+イピリムマブ療法は、非小細胞肺がんの1次治療を含む他の腫瘍で臨床的有益性が示されている。日本を含む21ヵ国103施設が参加する無作為化第III相試験 本研究は、ニボルマブ+イピリムマブ療法はMPMのOSを改善するとの仮説の検証を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2016年11月~2018年4月の期間に、日本を含む21ヵ国103施設で患者登録が実施された(Bristol Myers Squibbの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、未治療の組織学的に確定された切除不能MPMで、全身状態(ECOG PS)が0/1の患者であった。 被験者は、ニボルマブ(3mg/kg、2週ごと、静脈内投与)+イピリムマブ(1mg/kg、6週ごと、静脈内投与)を投与する群(最長2年間)、またはプラチナ製剤(シスプラチン[75mg/m2、静脈内投与]またはカルボプラチン[AUC=5mg/mL/分、静脈内投与])+ペメトレキセド(500mg/m2、静脈内投与)を3週ごとに投与する群(最大6サイクル)(化学療法群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目はOS期間(無作為化から全死因死亡の日まで)とした。副次評価項目は、無増悪生存(PFS)期間、客観的奏効率、奏効期間などであった。安全性の評価は、少なくとも1回の投与を受けた全患者で行った。PFS期間、客観的奏効率は同程度 605例が登録され、ニボルマブ+イピリムマブ群に303例、化学療法群には302例が割り付けられた。全体の年齢中央値は69歳(IQR:64~75)、467例(77%)が男性であった。また、456例(75%)が上皮型MPMだった。 事前に規定された中間解析(データベースロック日:2020年4月3日、フォローアップ期間中央値:29.7ヵ月[IQR:26.7~32.9])では、OS期間中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群が18.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.8~21.4)と、化学療法群の14.1ヵ月(12.4~16.2)と比較して有意に延長した(ハザード比[HR]:0.74、96.6%CI:0.60~0.91、p=0.0020)。また、1年OS率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が68%(95%CI:62.3~72.8)、化学療法群は58%(51.7~63.2)であり、2年OS率はそれぞれ41%(35.1~46.5)および27%(21.9~32.4)だった。 シスプラチン(13.7ヵ月)とカルボプラチン(15.0ヵ月)で、OS期間中央値に差はみられなかった。また、OS期間のHR(化学療法群との比較)は、非上皮型(0.46、95%CI:0.31~0.68)が上皮型(0.86、0.69~1.08)よりも良好であったが、OS期間中央値(非上皮型18.1ヵ月vs.上皮型18.7ヵ月)には組織型の違いによる差はなかった。 PFS期間中央値は両群でほぼ同等であった(ニボルマブ+イピリムマブ群6.8ヵ月、化学療法群7.2ヵ月、HR:1.00、95%CI:0.82~1.21)が、2年PFS率はニボルマブ+イピリムマブ群で高かった(16% vs.7%)。 客観的奏効率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が40%、化学療法群は43%であり、ニボルマブ+イピリムマブ群で完全奏効(CR)が5例(2%)に認められた。病勢コントロール率(CR+部分奏効[PR]+安定[SD])は、ニボルマブ+イピリムマブ群が77%、化学療法群は85%で、奏効までの期間中央値はそれぞれ2.7ヵ月および2.5ヵ月であった。また、奏効期間中央値は、それぞれ11.0ヵ月および6.7ヵ月だった。 Grade3/4の有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群が30%(91/300例)、化学療法群は32%(91/284例)で報告された。治療関連死は、ニボルマブ+イピリムマブ群が3例(1%、肺臓炎、脳炎、心不全)、化学療法群は1例(<1%、骨髄抑制)で発現した。 著者は、「これらの知見は、未治療の切除不能MPMの治療における、画期的医薬品(first-in-class)とされるニボルマブ+イピリムマブ療法の使用を支持するものである」としている。これらの結果に基づき、このレジメンは2020年10月、米国食品医薬品局(FDA)により承認された。

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)レポート

レポーター紹介2020年12月8日から12月11日まで4日間にわたり、SABCS 2020がVirtual Meetingとして行われた。最近のSABCSは非常に重要な演題が多く、今回もプラクティスを変えるものもあれば、議論が深まるものも多かった。リバーウォークでステーキを食べながら議論はできなかったが、その分オンデマンド配信を繰り返し見て、何度も発表の内容を確認することが出来た。また、例年よりも多くのSpotlight Poster Discussionが設定されていたように思う。今回は、それらの演題の中から3演題を紹介する。RxPONDER試験2018年にTAILORx試験の結果が発表されて以降、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんでリンパ節転移陰性の場合はOncotypeDXの再発スコア(recurrence score:RS)が25以下であれば原則として化学療法となった。一方、リンパ節転移陽性の場合のRSが低〜中間リスク(25以下)の場合の化学療法の上乗せ効果については閉経後女性に対する限られたデータのみしかなかった。RxPONDER試験は、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんでリンパ節転移が1〜3個の症例を対象として、RSが25以下の場合に化学療法を実施する群と内分泌療法単独群とで化学療法の上乗せ効果を検証した試験である。統計学的にはやや複雑な手法が取られており、まずRSと化学療法の間に無浸潤疾患生存率(invasive disease free survival:IDFS)において連続的な相関関係があるかどうかを検証している。RSと化学療法の間に相関関係が示された場合は、RS 0~25の症例においてRSが化学療法の有効性を示す指標として結論付けられるとされた。相関関係が示されなかった場合はRSと化学療法がそれぞれ独立したIDFSの予後予測因子となるかを検証している。2011年2月から2017年9月の間に9,383例がスクリーニングされ、最終的に内分泌療法単独群に2,536例、化学療法群に2,547例が割り付けられた。両群の患者背景はほぼ均等であり、RS 0~13が40%強、RS 14~25が60%弱であった。リンパ節転移は1個が65%前後、2個が25%前後、3個は10%弱であった。化学療法とRSの相関関係については証明されなかった。続いて化学療法とRSはそれぞれがIDFSの予測因子であること(化学療法を実施したほうがハザード比[HR]が低く、RSが高いほうがHRが高い)ことが示された。全体集団の解析での5年IDFSは化学療法群で92.4%、内分泌療法群で91.0%(HR:0.81、95%CI:0.67~0.98、p=0.026)であり、化学療法群で有意に良好であった。引き続いて閉経状態での解析が実施された。閉経後では5年IDFSは化学療法群で91.6%、内分泌療法群で91.9%(HR:0.97、95%CI:0.78~1.22、p=0.82)と両群間に差を認めなかったが、閉経前では化学療法群で94.2%、内分泌療法群で89.0%(HR:0.54、95%CI :0.38~0.76、p=0.0004)であり、化学療法群で有意に良好であった。RS 13までと14以上に更にサブグループに分けた解析も実施され、閉経後ではRSにかかわらず化学療法のメリットはなく、一方閉経前ではRSにかかわらず(RS 13までのほうが絶対リスク減少は減るものの)化学療法のメリットが認められた。リンパ節転移の個数による解析も同様であった。全生存(OS)においても閉経後は両群間に差を認めなかったが、閉経前では5年OSは化学療法群で98.6%、内分泌療法群で97.3%(HR:0.47、95%CI:0.24~0.94、p=0.032)であった。閉経前ではリンパ節転移陽性の場合は化学療法がOSに寄与することが示されたと言えよう。RxPONDER試験は今回のSABCSの演題の中で日常臨床に最もインパクトを与える試験であったと言える。PENELOPE-B試験前回の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会では2つのCDK4/6阻害剤の術後治療への上乗せに関する試験が発表された。アベマシクリブを上乗せするMonarchE試験と、パルボシクリブを上乗せするPALAS試験である。MonarchE試験はpositive、PALAS試験はnegativeとなり、明暗を分けた。そんなわけで、パルボシクリブをレスポンスガイドで用いるPENELOPE-B試験も非常に注目された。PENELOPE-B試験はホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんに対し術前化学療法を実施した後に病理学的完全奏効(pCR)が得られなかった症例(non-pCR)を対象として、CPS-EGスコアというnon-pCRの予後を予測するスコア(J Clin Oncol.2011 May 20;29:1956-1962, Eur J Cancer. 2016 Jan;53:65-74.)が3以上のハイリスク、もしくは2で術後にリンパ節転移が陽性であるという、本試験でのハイリスク症例を対象として、術後に標準的内分泌療法に加えパルボシクリブ(125mg/日、day1~21内服、28日間隔)もしくはプラセボを同スケジュールで13コース内服し、IDFSにおいてパルボシクリブ群で良好であることを検証する優越性試験である。両群間の患者背景に大きな差はなかった。追跡期間の中央値が42.8ヵ月のデータが発表され、2年IDFSではパルボシクリブ群で88.3%に対してプラセボ群で84.0%とパルボシクリブ群で良好な傾向を認めたものの、3年IDFSでは81.2% vs. 77.7%、4年IDFSでは73% vs. 72.4%と両群間の差は認められなかった(HR:0.93、95%CI:0.74~1.17、p=0.525)。様々なサブグループ解析も実施されたが、パルボシクリブの上乗せ効果が認められた群はなかった。OSの中間解析結果も発表され、4年IDFSで90.4% vs. 87.3% (HR:0.87、95%CI:0.61~1.22、p=0.420)と両群間の差は認めなかった。PALAS試験では内服に関する規定が非常に厳しく、完遂率が32%と非常に低かったことがnegativeとなった理由ではないかと考察されていたが、PENELOPE-Bでは完遂率は80%であり必ずしも内服のアドヒアランスで結果が左右されたとは言えなさそうである。non-pCRに対して術後に化学療法を追加したり、治療薬を変更するというアプローチはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)やHER2陽性乳がんでは確立しているが、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんに対してはPENELOPE-Bが初の結果である。ひとつはnon-pCRの予後を推定する際にCPS-EGスコアが適切なリスク評価方法であったかということが重要である。CPS-EGスコアは術前と術後の病期と核異型度で予後を予測したものであり、病期の高いがん(あるいはダウンステージできなかったがん)では予後不良というある意味単純な事実を見ているだけかも知れない。また、ここには薬剤感受性の概念はなく、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんにおけるpCR率は低いことから、正確にリスク層別ができていなかった可能性は高いであろう。加えて、術後にCDK4/6阻害剤を内服する際の至適投与期間は不明である。MonarchEとPALASは24ヵ月、PENELOPE-Bでは12ヵ月であり、その投与期間は(同じ薬であっても)試験によって異なる。PENELOPE-Bは2年IDFSではパルボシクリブ群で良好な傾向を認めており、もしかするとパルボシクリブの内服は再発を遅らせる働きを持っているのかも知れない(がわからない)。KEYNOTE-355試験乳がんでは他領域に遅れながらもTNBCを中心に免疫チェックポイント阻害薬の開発が進んでいる。とくに先行しているのが抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブと、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブである。KEYNOTE-355試験は前治療歴のないTNBCを対象として化学療法(アルブミン結合パクリタキセル[nab-PTX]、パクリタキセル[PTX]、またはゲムシタビン+カルボプラチン[GEM+CBDCA])+ペムブロリズマブもしくは化学療法+プラセボを比較する第III相試験である。主要評価項目はPD-L1陽性集団(CPS≧10およびCPS≧1)とITT集団における無増悪生存期間(PFS)、PD-L1集団とITT集団におけるOSとされた。前回のESMO年次集会では主たるPFSの解析が発表され、SABCSではレジメンごとのサブグループ解析を含めて566例がペムブロリズマブ群に、281例がプラセボ群に2:1に割り付けられた。CPS≧1のPD-L1陽性が約75%、CPS≧10のPD-L1陽性が40%弱であった。化学療法としてはnab-PTXが30〜34%、PTXが11〜15%、GEM+CBDCAが55%であった。同クラスの化学療法を受けたことのある症例は22%程度であった。主要評価項目のPFSはCPS≧10ではペムブロリズマブ群で9.7ヵ月、プラセボ群で5.7ヵ月 (HR:0.65、95%CI:0.49~0.86、p=0.012)であり、ペムブロリズマブ群で有意に長かった。一方、CPS≧1では7.6ヵ月 vs. 5.6ヵ月 (HR:0.74、95%CI:0.61~0.90、p=0.0014 ※注:有意水準は0.00111)、ITTでは7.5ヵ月 vs. 5.6ヵ月 (HR:0.82、95%CI:0.69~0.97)であり、いずれも両群間の差は認められなかった。レジメンごとのサブグループ解析では、nab-PTX、PTXでは有意差を認めているものの、GEM+CBDCAでは有意差を認めなかった。このサブグループ解析はTNBCにおける免疫チェックポイント阻害薬の位置付けにおいて重要な結果となっている。ESMOではTNBC初回治療におけるアテゾリズマブの試験であるIMpassion131試験の結果が発表された。IMpassion130試験はnab-PTXに対するアテゾリズマブの上乗せ効果を証明した試験であったが、IMpassion131試験ではパクリタキセルに対するアテゾリズマブの上乗せが検証され、両群間の差は(傾向としても)認められなかった。対して、KN-355試験ではパクリタキセルに対するペムブロリズマブの上乗せ効果が示され、薬剤ごとに明暗を分けた。アテゾリズマブとペムブロリズマブは同じセッティングの薬剤であるものの、コンパニオン診断薬が異なり(SP-142と22C3)、また併用化学療法も異なっている。今後はこれら2剤の使い分けについての議論も必要であろう。

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高齢者扁平上皮NSCLCの新スタンダードとなるか(CAPITAL)/名古屋医療センター

 高齢者のStage IIIB/IV扁平上皮非小細胞肺がん(SQ NSCLC)1次治療の標準治療が世代交代か。nab-パクリタキセルとカルボプラチンの併用(nab-PTX+CBDCA)とドセタキセル(DTX)単剤を比較した無作為化第III相試験CAPITAL試験の結果を名古屋医療センターが発表した。 肺がんには高齢患者が多い。高齢患者の標準化学療法は長期にわたりドセタキセル単剤である。非扁平非小細胞肺がん(NSQ NSCLC)おいては、JCOG1210/WJOG7813L試験でカルボプラチン+ペメトレキセドのDTX単剤に対する非劣性が示され、2019年の肺癌診療ガイドラインでCBDCA併用レジメンの使用が推奨された。しかし、SQ NSCLCについては依然としてドセタキセル単剤が標準である。 そのような中、CA031試験で良好な成績を示したnab-PTX+CBDCAが高齢者SQ NSCLCの新たな治療薬として浮上した。そこで、高齢者SQ NSCLCの1次治療におけるnab-PTX+CBDCA療法の第III相CAPITAL試験が行われた。CAPITAL試験は、山本小班インターグループ試験として6つの臨床試験グループ(NEJSG、TCOG、NHO、CJLSG、WJOG、LOGiK)から92施設が参加して行われた。 対象は70歳以上の化学療法未施行の根治照射不能進行・再発SQ NSCLC(ECOG PS 0〜1)250例を目標症例とした。登録患者は、DTX(60mg/m2 day1 3週ごと)とCBDCA(AUC6 day1 3週ごと)+nab-PTX(100mg/m2 day1,8,15 3週ごと)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は奏効割合、無増悪生存期間、安全性である。 事前から予定されていたイベント数92例時点での中間解析の結果、nab-PTX+CBDCAはドセタキセル単剤に比べOSを改善。有意水準0.0158を下回り、早期有効中止を達成した。 研究事務局である名古屋医療センターの小暮啓人氏は、この中間解析の結果から、nab-PTX+CBDCAは高齢者SQ NSCLCの標準療法になると述べている。この試験結果は2021年に投稿すると共に米国臨床腫瘍学会(ASCO)での発表を目標としているとのこと。

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肺癌診療ガイドライン2020薬物療法の改訂ポイント/日本肺癌学会2020

 肺癌診療ガイドラインが改訂され、2020年版が発刊された。第61回日本肺癌学会学術集会の教育講演では、薬物療法領域の変更点について岡山大学の堀田勝幸氏が発表した。肺癌診療ガイドライン2020の主な変更点EGFR変異陽性 一次治療におけるゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセドの追加(CQ52 2A)、エルロチニブと血管新生阻害薬の併用がアップデート(CQ52 2A)されるなど改訂された。ALK融合遺伝子陽性 二次治療において、アレクチニブの使用のアップデート(CQ59 1C)、新たなALK-TKIブリガチニブが追加(CQ59 2C)されるなど改訂された。MET遺伝子変異陽性 MET遺伝子変異陽性が新設され、MET-TKI(テポチニブ、カプマチニブ)の推奨が追加された(CQ62 1C)。ROS1融合遺伝子陽性 エヌトレクチニブ使用の推奨が追加された(CQ60 1C)ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明 一次治療におけるニボルマブ+イピリムマブ併用がPD-L1 TPS50%以上(CQ64 2C)、1~49%(CQ70 2C)に追加された。小細胞肺癌  進展型小細胞肺癌においてのプラチナ製剤併用療法へのPD-L1阻害薬の上乗せについて、プラチナ製剤併用療法+PD-L1阻害薬の使用が推奨された(CQ11 1A)。

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TN乳がん1次治療へのペムブロリズマブ上乗せ、化療レジメンによらず有効(KEYNOTE-355)/SABCS2020

 手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性(CPS≧10)のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療において、併用する化学療法の種類によらず、ペムブロリズマブの追加で無増悪生存期間(PFS)を改善することが明らかになった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)包括的がんセンターのHope S. Rugo氏が、第III相KEYNOTE-355試験の新たな解析結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。 同試験については、CPS≧10のPD-L1陽性患者におけるPFS中央値が、ペムブロリズマブ+化学療法群9.7ヵ月 vs.化学療法単独群5.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.49~0.86、片側p=0.0012)と有意に改善したことが報告されている。今回は、探索的評価項目(併用化学療法別のPFS中央値)ならびに副次評価項目(ORR、DOR、DCR)の解析結果が発表された。・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例・対照群:プラセボ+化学療法 281例・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるPFSと全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性[探索的評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団における併用化学療法の種類による治療効果の一貫性 主な結果は以下のとおり。・併用化学療法別のPFS中央値[CPS≧10の患者]全体(323例):ペムブロリズマブ群9.7ヵ月 vs.化学療法単独群5.6ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86)ナブパクリタキセル(99例): 9.9ヵ月 vs. 5.5ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.34~0.95)パクリタキセル(44例):9.6ヵ月 vs.3.6ヵ月(HR:0.33、95%CI:0.14~0.76)ゲムシタビン/カルボプラチン(180例):8.0ヵ月 vs.7.2ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.53~1.11)[CPS≧1の患者]全体(636例):7.6ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.61~0.90)ナブパクリタキセル(204例):6.3ヵ月 vs. 5.3ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.47~0.92)パクリタキセル(84例):9.4ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.46、95%CI:0.26~0.82)ゲムシタビン/カルボプラチン(348例): 7.5ヵ月 vs.7.5ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.66~1.11)[ITT集団]全体(847例):7.5ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.69~0.97)ナブパクリタキセル(268例):7.5ヵ月 vs.5.4ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.51~0.93)パクリタキセル(114例):8.0ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.35~0.93)ゲムシタビン/カルボプラチン(465例):7.4ヵ月 vs.7.4ヵ月(HR:0.93、95%CI:0.74~1.16)・ORRはCPS≧10の患者で53.2% vs.39.8%、CPS≧1の患者で45.2% vs.37.9%、ITT集団で41.0% vs.35.9%であった。・ORRを併用化学療法別にみると、ITT集団のゲムシタビン/カルボプラチン併用を除いて(40.2% vs. 42.2%)、ペムブロリズマブ群で高かった。・DCRはCPS≧10の患者で65.0% vs.54.4%、CPS≧1の患者で58.6% vs.53.6%、ITT集団で56.0% vs.51.6%であった。・DOR中央値はCPS≧10の患者で19.3ヵ月 vs.7.3ヵ月、CPS≧1の患者で10.1ヵ月 vs.6.5ヵ月、ITT集団で10.1ヵ月 vs.6.4ヵ月であった。 Rugo氏は、サブグループ解析の結果、化学療法レジメンの種類によらずペムブロリズマブの上乗せによりPFSは改善し、またその治療効果はPD-L1発現状況に応じて高まる傾向がみられると結論付けた。ディスカッサントを務めた米国・NYU Langone Medical CenterのSylvia Adams氏は、併用する化学療法レジメンの比較については、本サブ解析結果のみで判断するのはエビデンスとして十分ではないと述べている。

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PD-L1陽性TN乳がん1次治療、ペムブロリズマブの上乗せ効果は?(KEYNOTE-355)/Lancet

 未治療の局所再発手術不適応または転移のあるPD-L1 CPS 10以上のトリプルネガティブ乳がん患者において、ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比べて、無増悪生存(PFS)期間が有意かつ臨床的意義のある改善を示した。スペイン・Quiron GroupのJavier Cortes氏らによる第III相の国際多施設共同プラセボ対照二重盲検試験「KEYNOTE-355試験」の結果で、Lancet誌2020年12月5日号で発表された。著者は、「今回示された結果は、転移のあるトリプルネガティブ乳がんの1次治療について、標準治療へのペムブロリズマブ上乗せの意義を示すものである」と述べている。先行研究で同患者へのペムブロリズマブ単剤療法が、持続的な抗腫瘍活性と管理可能な安全性を示しており、研究グループは、同患者へのペムブロリズマブの上乗せが、化学療法の抗腫瘍活性を増強するかを検討した。29ヵ国209ヵ所の医療機関で試験 KEYNOTE-355試験は、29ヵ国209ヵ所の医療機関を通じ、未治療の局所再発手術不適応または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者を無作為に2対1の2群に割り付け、一方にはペムブロリズマブ(200mg、3週間ごと)+化学療法(nabパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン+カルボプラチンのいずれか)、もう一方にはプラセボ+化学療法を行った。無作為化は、ブロック法(ブロックサイズは6つ)および統合Web応答機能付き対話型音声応答システムを用い、化学療法のタイプ(タキサン系またはゲムシタビン+カルボプラチン)、ベースラインでのPD-L1発現(CPS 1以上または1未満)、同クラス薬剤による化学療法歴(術前・術後)で層別化も行った。 適格基準は、18歳以上、トリプルネガティブ乳がんを中央施設で確認、測定可能病変が1つ以上、中央検査施設でトリプルネガティブ乳がんの状態およびPD-L1の状態を免疫組織学的に検査するための新たな腫瘍病変が提供可能、ECOG PSが0または1、十分な臓器機能であった。試験のスポンサー、研究者、そのほか各地の試験スタッフ(マスクされなかった薬剤師は除く)および患者は、ペムブロリズマブまたはプラセボ投与について知らされず、患者ごとのPD-L1バイオマーカーの結果も知らされなかった。 主要評価項目は2つで、PD-L1 CPSが10以上の患者、CPSが1以上の患者、ITT集団のそれぞれにおけるPFSと全生存(OS)だった。PFSは今回の中間解析で評価し、OSの評価は追跡を継続している。PFSの評価には階層テスト戦略が用いられ、最初にPD-L1 CPSが10以上の患者で行われ(今回の中間解析の事前規定の統計学的基準はα=0.00411)、その後にCPSが1以上の患者(今回の中間解析のα=0.00111、CPSが10以上の患者のPFSからの部分的α値を含む)、最後にITT集団(今回の中間解析のα=0.00111)で評価した。CPS 10以上の無増悪生存、ペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月 2017年1月9日~2018年6月12日に1,372例がスクリーニングを受け、847例が無作為に割り付けられた(ペムブロリズマブ群566例、プラセボ群281例)。2次中間解析(データカットオフは2019年12月11日)での追跡期間中央値は、ペムブロリズマブ群25.9ヵ月(IQR:22.8~29.9)、プラセボ群26.3ヵ月(22.7~29.7)だった。 CPS 10以上の患者群では、PFS期間中央値はペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月だった(病勢進行または死亡に関するハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.49~0.86、片側p=0.0012)。 CPS 1以上の患者群では、PFS期間中央値はそれぞれ7.6ヵ月、5.6ヵ月で有意差は示されなかった(HR:0.74、95%CI:0.61~0.90、片側p=0.0014)。ITT集団では、それぞれ7.5ヵ月、5.6ヵ月だった(0.82、0.69~0.97、有意性の検定は未実施)。 ペムブロリズマブの治療効果として、PD-L1誘発の増大が確認された。 Grade3~5の治療関連有害イベントの発生率は、ペムブロリズマブ群68%、プラセボ群67%だった。そのうち、死亡はペムブロリズマブ群1%未満、プラセボ群0%だった。

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オシメルチニブ、T790M変異陽性NSCLCの2次治療のOS結果(AURA3最終)/Ann Oncol

 第3世代EGFR-TKIオシメルチニブについて検討した、AURA3試験の最終解析結果が報告された。同試験においてオシメルチニブは、既治療のEGFR T790M変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、プラチナ併用化学療法と比較し、無増悪生存(PFS)期間および奏効率を有意に改善することが示されていた。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのV A Papadimitrakopoulou氏らは、最終的な全生存(OS)期間について解析を行い、オシメルチニブ群とプラチナ+ペメトレキセド群に統計学的な有意差は認められなかったと発表した。ただし、示された結果について著者は、プラチナ+ペメトレキセド群からオシメルチニブ群へのクロスオーバーが高率であったことを反映している可能性があると指摘している。Annals Oncology誌2020年11月号掲載の報告。 AURA3試験の対象は、EGFR-TKIによる1次治療中に病勢進行したEGFR T790M変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLC成人患者。被験者は、オシメルチニブ群またはプラチナ+ペメトレキセド群(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド、3週ごと最大6サイクル)に、2対1の割合で無作為に割り付けられ追跡を受けた。 プラチナ+ペメトレキセド群では、盲検化独立中央評価によって病勢進行が確認された場合は、オシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。OSおよび安全性が副次評価項目であった。 主な結果は以下のとおり。・279例がオシメルチニブ群、140例がプラチナ+ペメトレキセド群(治療を受けたのは136例)に割り付けられた。・データカットオフ(2019年3月15日)時点での死亡は、オシメルチニブ群188例(67%)、プラチナ+ペメトレキセド群93例(66%)であった。・OS中央値は、オシメルチニブ群26.8ヵ月、プラチナ+ペメトレキセド群22.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.67~1.12、p=0.277)。・24ヵ月および36ヵ月の推定生存率(オシメルチニブ群 vs.プラチナ+ペメトレキセド群)は、それぞれ55% vs.43%、37% vs.30%であった。・クロスオーバー調整後のOSのHRは0.54(95%CI:0.18~1.6)であった。・最初の後治療または死亡までの期間は、オシメルチニブ群で有意に延長し、臨床的に意義のある利点が示された(HR:0.21、95%CI:0.16~0.28、p<0.001)。・データカットオフ時点では、プラチナ+ペメトレキセド群の73%(99/136例)がオシメルチニブ群にクロスオーバーしており、そのうち67%(66/99例)が死亡した。・主な治療関連有害事象は、オシメルチニブ群では下痢(32%、Grade3以上は1%)および発疹(32%、Grade3以上は<1%)、プラチナ+ペメトレキセド群では悪心(47%、Grade3以上は3%)であった。

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ニボルマブ+イピリムマブ+2週間化学療法の肺がん1次治療、アジア人の成績は?(CheckMate9LA)/日本肺癌学会2020

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、ニボルマブ+イピリムマブへの2週間の限定化学療法の追加治療を評価する第III相非盲検無作為化試験CheckMate9LA試験。そのアジア人サググループの解析が、第61回日本肺癌学会学術集会において埼玉県がんセンターの酒井 洋氏より発表された。・対象:未治療のStage IVまたは再発NSCLC患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価のPFS、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 主な結果は以下のとおり。・アジア人のOS中央値はNIVO+IPI+Chemo群未達に対しChemo群13.3ヵ月であった(HR:0.33)。・BICR評価のPFSはNIVO+IPI+Chemo群8.4ヵ月に対しChemo群5.4ヵ月であった(HR:0.47、1年PFSは35%対12%)。・BICR評価のORRはNIVO+IPI+Chemo群57%に対しChemo群23%であった。・奏効期間はNIVO+IPI+Chemo群7.0ヵ月に対しChemo群4.4ヵ月であった。・アジア人集団の全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)はNIVO+IPI+Chemo群100%、Chemo群97%、Grade3〜4のTRAEはそれぞれ57%と60%であった。・免疫関連有害事象は全集団に比べアジア人で多くみられたが、その大半はGrade1〜2であった。

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乳がんでの免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発はかなり複雑/日本癌治療学会

 2020年の乳がん診療におけるトピックスの1つとして、トリプルネガティブ(TN)乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の第III相試験の結果が多く発表されたことが挙げられる。しかし、これらの結果にはまだまだ未知の要因が関係しており、その理解はかなり複雑である。福島県立医科大学の佐治 重衡氏は、乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の試験結果によるディスカッションポイントについて、第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)の会長企画シンポジウムにおける「乳癌診療の新たな構築 2020」で解説した。 乳がんでは腫瘍遺伝子変異量(TMB)が少ないとされ、免疫チェックポイント阻害薬への期待は高くはなかった。しかし、2019年にPD-L1陽性進行/再発TN乳がんに対するアテゾリズマブ+nabパクリタキセルが承認され、今後、ペムブロリズマブもKEYNOTE-355試験の結果を基にPD-L1陽性進行/再発TN乳がんに承認される可能性が高い。今回、佐治氏は、乳がんにおける免疫チェックポイント阻害薬治療でのディスカッションポイントとして、早期乳がんと進行/再発乳がんで免疫チェックポイント阻害薬の効果が異なる点、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせる化学療法によって異なる点を挙げ、それぞれ解説した。早期乳がんと進行/再発乳がんで免疫チェックポイント阻害薬の効果が異なるのは? 早期(Stage II~III)TN乳がんの術前治療としての免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブを検討した第III相試験であるIMpassion031試験がESMO2020で発表された。本試験では、術前治療としてnabパクリタキセルを12週投与後、ドキソルビシン+シクロホスファミド8週投与する群とアテゾリズマブ追加群を比較した結果、術後の病理学的完全奏効(pCR)がアテゾリズマブ追加群で57.6%とプラセボ群(41.1%)より16.5%上乗せされたことが示された。また、この上乗せはPD-L1発現状況にかかわらずみられた。 ESMO2019で発表されたKEYNOTE-522試験においても、IMpassion031試験とは化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)は異なるが、早期TN乳がんの術前治療に免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブを追加することによりpCRの上乗せが示された。また、IMpassion031試験と同様に、PD-L1発現状況にかかわらず15%前後の上乗せが示された。どちらもリンパ節転移陽性例のほうが陰性例より上乗せ効果が高かった。 佐治氏は、この2つの試験結果から、なぜ早期乳がんではPD-L1陰性でも効果があるのか、また、なぜリンパ節転移陽性だとpCRの上乗せが顕著なのか、疑問を呈した。 まず前者について、佐治氏はESMO2020で発表されたNeoTRIP試験(早期TN乳がんに術前治療としてカルボプラチン+nabパクリタキセルにアテゾリズマブを追加)の結果を提示した。本試験では、術前治療前と途中のペア組織生検からPD-L1の発現変化を調べた結果、アテゾリズマブ併用群では、治療前にPD-L1陰性だった患者のうち64.3%が治療の途中で陽性となったのに対して、プラセボ群では17.7%しか陽性にならなかった。この結果から、佐治氏は、抗PD-L1抗体の併用により原発腫瘍のPD-L1の発現が誘導される可能性を言及した。リンパ節転移がある乳がんへの免疫チェックポイント阻害薬の効果の影響は? 後者については、治療する時点でリンパ節転移がある場合に免疫チェックポイント阻害薬の効果が顕著であるとするなら、リンパ節転移陽性の患者さんが乳房切除+リンパ節郭清といった手術後に免疫チェックポイント阻害薬を受けるときの効果はどうなるのか、という疑問が生じる。 これまで乳がんの術前治療と術後治療は効果が同じという前提で治療を行ってきているが、治療時にリンパ節転移があるほうが免疫チェックポイント阻害薬の効果が高いという仮説が正しいのであれば、術前治療と術後治療において免疫チェックポイント阻害薬の利益には差があることになってしまう。佐治氏は「もしそうであれば、免疫チェックポイント阻害薬を使用する時代になったときに手術を含めた治療戦略そのものを変えなければいけない」と述べ、「今後、術後治療での免疫チェックポイント阻害薬の結果が出てきたとき、リンパ節転移の有無が本当に大事なのかどうかは重要なポイントとなる」と指摘した。免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせる化学療法の違いで異なる結果 免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせる化学療法については、これまで、何を選んでもある程度の上乗せを期待できると考えられてきた。しかし、ESMO2020で発表されたIMpassion131試験は、対象が同じ未治療のPD-L1陽性進行/再発TN乳がんであるにもかかわらず、IMpassion130試験と異なる結果であった。すなわち、アテゾリズマブにnabパクリタキセルを組み合わせたIMpassion130試験では、無増悪生存期間(PFS)の上乗せ効果があったのに対し、パクリタキセルを組み合わせたIMpassion131試験では上乗せ効果がなかった。 この理由として、パクリタキセルの場合はステロイドを投与するためという意見もあるが、KEYNOTE-355試験など、ステロイドを必要とする化学療法との組み合わせがある他の試験では効果がみられているため、よくわかっていないという。佐治氏は、「今後、サブセット解析や細かいデータを見直した結果が発表されたときに、化学療法のペアの問題がどれくらい重要なのかがわかるだろう」と述べた。 最後に佐治氏は、「進行/再発乳がんではPD-L1陽性例にしか効果がないのに、なぜ早期乳がんではPD-L1の発現によらず効果があるのか。また、早期乳がんにおいてリンパ節転移が治療効果に影響している結果をどう解釈すればよいのか。さらに、どの化学療法を組み合わせて開発していくのか。乳がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発は簡単ではなく、やるべきことが多いことがわかった」と課題を述べ、講演を締めくくった。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、悪性胸膜中皮腫に国内申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年10月27日、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法について、切除不能な進 行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する効能又は効果に対する製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表した。 今回の承認申請は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法をプラチナ製剤を含む標準治療の化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-743試験)の中間解析の結果に基づいている。 本解析において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、化学療法と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を達成した。また、本試験で認められたニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれ までに認められているものと一貫していた。

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進行TN乳がん1次治療へのペムブロリズマブ+化療、日本人解析結果(KEYNOTE-355)/日本乳癌学会

 手術不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療として、化学療法とペムブロリズマブ併用の有効性を評価するKEYNOTE-355試験の全体集団における中間解析結果が2020年のASCOで発表され、PD-L1陽性(CPS≧10)患者でPFSの有意な改善が示されている。今回その日本人集団解析の結果を、国立病院機構大阪医療センターの八十島 宏行氏が第28回日本乳癌学会学術総会で発表した。・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例(日本人87例)・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例(61例)・対照群:プラセボ+化学療法 281例(26例)・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるPFSとOS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性 日本人サブグループ解析の主な結果は以下のとおり。・2019年12月11日データカットオフ時点で、国内26施設から日本人87例が組み入れられ、ペムブロリズマブ群に61例、化学療法単独群に26例が無作為に割り付けられた。・使用された化学療法のレジメンはタキサン(23%)、ゲムシタビン/カルボプラチン(77%)、であった。・カットオフ値CPS≧10のPD-L1陽性患者における28例のPFS中央値は、化学療法単独群5.6ヵ月に対してペムブロリズマブ併用群11.7ヵ月、ハザード比(HR)が0.52(95%CI:0.20~1.34)で、1年後無増悪生存率も44%とペムブロリズマブ群で有意な延長を認めた全体集団と大きな乖離のない結果であった。・カットオフ値CPS≧1のPD-L1陽性患者における66例のPFS中央値は、化学療法単独群5.6ヵ月に対してペムブロリズマブ併用群7.6ヵ月、ハザード比(HR)が0.62(95%CI:0.35~1.09)であった。・ITT集団における87例のPFS中央値は、化学療法単独群5.6ヵ月に対してペムブロリズマブ併用群7.7ヵ月、ハザード比(HR)が0.64(95%CI:0.38~1.07)と全体集団と大きな乖離は認めなかった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、ペムブロリズマブ併用群では85.2%、化学療法単独群では84.6%に発現。これは全体集団(68.1% vs. 66.9%)と比較すると高い傾向であったが、化学療法単独群でも同頻度で発現していることから、日本人集団では化学療法による影響が強くでているのではないかと推察された。・Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)は、ペムブロリズマブ併用群の4.9%に発現し、化学療法単独群では発現していなかった。有害事象・頻度ともに全体集団と同様であり、日本人特有のirAEは発現していない。 なお、米国・FDAでは現在審査中であり、本邦においても、2020年10月12日に承認申請が行われている。

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