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特発性血小板減少性紫斑病〔ITP : idiopathic thrombocytopenic purpura〕

1 疾患概要■ 概念・定義特発性血小板減少性紫斑病(ITP:idiopathic thrombocytopenic purpura)は、以前より特定疾患として認定されていたが、2015年から新たに施行された厚生労働省の指定難病に認定されている疾患であり、他の基礎疾患や薬剤などの原因がなく、血小板の破壊が亢進し減少する後天性の自己免疫疾患と考えられている。わが国では、いまだ特発性(idiopathic)という名称が一般的であるが、欧米では本疾患に対し免疫性(immune)あるいは自己免疫性(autoimmune)という表現が用いられ、最近ではprimary ITP(primary immune thrombocytopenia)との名称が提唱されている。血小板が減少していても、必ずしも出血症状を伴うわけではないことがpurpuraを削除した理由であり、この考え方は本疾患の治療戦略とも密接に関連する。■ 疫学わが国におけるITPの有病者数は約2万人で、年間発症率は人口10万人あたり約2.16人と推計される。つまり年間約3,000人が新規に発症している計算になる。最近の調査では、慢性ITPの好発年齢として20~40代の若年女性に加え、60~80代でのピークが認められるようになってきている。高齢者の発症に男女比の差はない。急性ITPは5歳以下の発症が圧倒的である。■ 病因ITPの病因はいまだ不明な点が多いが、その主たる病態は血小板の破壊亢進である。ITPでは血小板膜GPIIb-IIIaやGPIb-IXなどに対する自己抗体が産生され、それらに感作された血小板は早期に脾臓を中心とした網内系においてマクロファージのFc受容体を介して捕捉され、破壊されて血小板減少を来す。これらの自己抗体は主として脾臓で産生されており、脾臓は主要な血小板抗体の産生部位であるとともに、血小板の破壊部位でもある。さらに最近では、ITPにおける抗血小板自己抗体は巨核球の分化・成熟にも障害を与え、血小板産生も正常コントロールと比べ減少していることが示されている。■ 症状症状は皮下出血、歯肉出血、鼻出血、性器出血など皮膚粘膜出血が主症状である。血小板数が1万/μL未満になると血尿、消化管出血、吐血、網膜出血を認めることもある。口腔内に高度の粘膜出血を認める場合は、消化管出血や頭蓋内出血を来す危険があり、早急な対応が必要である。血友病など凝固因子欠損症では関節内出血や筋肉内出血を生じるが、ITPでは通常、これらの深部出血は認めない。■ 分類ITPはその発症様式と経過より、急性型と慢性型に分類され、6ヵ月以内に自然寛解する病型は急性型、それ以後も血小板減少が持続する病型は慢性型と分類される。急性型は小児に多くみられ、ウイルス感染を主とする先行感染を伴うことが多い。一方、慢性型は成人に多い。しかしながら、発症時に急性型か慢性型かを区別することはきわめて困難である。最近では、12ヵ月経過したものを慢性型とする意見もある。■ 予後ITPでは、血小板数が3万/μL以上の場合、死亡率は正常コントロールと同じであり、予後は比較的良好と考えられている。しかし、3万/μL以下だと出血や感染症が多くなり、死亡率が約4倍に増加すると報告されている。この成績より、血小板数3万/μL以上を維持することが治療目標となっている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ITPの診断に関しては、いまだに他の疾患の除外診断が主体であり、薬剤性やC型肝炎など血小板減少を来す他の疾患を鑑別しなければならない。とくに血小板数が3~5万/μL以下の症例で無症状の場合や検査コメントに血小板凝集(+)と記載されている場合は、末血用スピッツ内のEDTAにより誘導される「見かけ上」の血小板減少(EDTA依存性偽性血小板減少症)を除外すべきである(治療の必要なし)。ITPと同様に免疫学的機序で血小板が減少する二次的ITPとして、全身性エリテマトーデスなどの膠原病やリンパ系腫瘍、ウイルス肝炎、HIV感染などが挙げられる。詳しい病歴の聴取や身体所見、時には骨髄穿刺により先天性血小板減少症や薬剤性血小板減少症、さらには血小板産生障害に起因する骨髄異形成症候群や再生不良性貧血などの鑑別を行う。骨髄検査において典型的ITPでは、幼若な巨核球が目立つが巨核球数は正常あるいは増加しており、その他はとくに異常を認めない。PAIgG(Platelet-associated IgG、血小板関連IgG)は2006年に保険収載されたが、PAIgGは血小板に結合した(あるいは付着した)非特異的なIgGも測定するため、再生不良性貧血などの血小板減少時にも高値になることがあり、その診断的意義は少ない。ITPの病態に即した新たな診断法として網状血小板比率測定、血漿トロンボポエチン(TPO)濃度測定、GPIIb-IIIaもしくはGPIb-IXに対する自己抗体検出があるが、これらの検査は2015年現在保険未収載である。ITPでは網状血小板比率は増加し、血漿TPO濃度は正常ないしは軽度増加しているのみである。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ ITPにおける治療目標ITPの治療目標は血小板数を正常化させることではなく、危険な出血を予防することである。具体的には血小板3万/μL以上かつ出血症状が無い状態にすることが当面の治療目標となる。「成人ITP治療の参照ガイド2012年版」では、初診時血小板が3万/μL以上あり出血傾向を認めない場合は、無治療での経過観察としている。血小板数を正常に維持するために高用量の副腎皮質ステロイドを長期に使用すべきではないとの立場である。図に「成人ITP治療の参照ガイド2012年版」の概要を示す。なお、本ガイドは、https://www.jstage.jst.go.jp/article/rinketsu/53/4/53_433/_article/-char/ja/にて公開されている。画像を拡大する1)第1選択治療(1)ピロリ菌除菌療法(2010年6月より保険適用)わが国においては、ITPに関してH.pylori(ピロリ菌)除菌療法の有効性が示されている。ピロリ菌感染患者には、第1選択として試みる価値がある。出血症状を伴う例に対しては、ステロイド療法をまず選択し、血小板数が比較的安定した時点で除菌療法を試みる。(2)副腎皮質ステロイド療法ピロリ菌陰性患者や除菌無効例には、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)が第1選択となる。副腎皮質ステロイドは網内系における血小板の貪食および血小板自己抗体の産生を抑制する。血小板数3万/μL以下の症例で出血症状を伴う症例が対象である。とくに口腔内や鼻腔内の出血を認める場合は積極的に治療を行う。50~75%において血小板が増加するが、多くは副腎皮質ステロイド減量に伴い血小板が減少する。初期投与量としては0.5~1mg/kg/日を2~4週間投与後、血小板数の増加がなくても徐々に減量する。血小板数および出血症状をみながら5mgの割合でゆっくり減量し10mg/日で維持する。経過が良ければさらに減量する。2)第2選択治療脾臓摘出(脾摘)発症後6ヵ月以上経過し、ステロイドの維持量にて血小板数3万/μL以上を維持できない症例、ステロイドの副作用が顕著な症例は積極的に脾摘を行う。寛解率は約60%である。摘脾の1週間前より免疫グロブリン大量療法(後述)にて血小板を増加させる。3)難治ITP症例への治療法(第3選択治療)本項で述べる薬剤は、ステロイド療法無効例あるいはそれに対する忍容性が低く、摘脾が無効あるいは困難な症例に限定すべきである。(1)トロンボポエチン(TPO)受容体アゴニストITPでは血小板造血が障害されているものの、血清TPO濃度は正常~軽度上昇にとどまる。この成績より、血小板造血を促進する治療薬としてTPO受容体作動薬が開発され、2011年より保険適用となっている。薬剤としては、ロミプロスチム(商品名:ロミプレート/皮下注)やエルトロンボパグ オラミン(同:レボレード/経口薬)があり、優れた有効性が示されている。しかしながら、両薬剤とも血小板造血刺激剤であるため、骨髄異常などの誘導の可能性に関しての長期的な安全性はまだ確立しておらず、今後注意深い検討が必要である。妊婦には使用できない。(2)ダナゾール、アザチオプリン、シクロスポリンなど(前掲図参照)これらの薬剤のITPに対する保険適用はない。一定の有効性は報告されているが、その有効率は高くはない。ダナゾールでは肝障害に留意すべきであり、ダナゾール、アザチオプリンは妊婦には禁忌である。4)緊急時の治療診断時、消化管出血や頭蓋内出血などの重篤な出血を認める症例や、脾摘など外科的処置が必要な症例には、免疫グロブリン大量療法やメチルプレドニンパルス療法にて血小板を速やかに増加させ、出血をコントロールする必要がある。血小板輸血は一般には行わないが、活動性出血を伴う重症例では血小板輸血も積極的に考慮する。4 今後の展望リツキシマブ(抗CD20抗体)は、B細胞性リンパ腫に対して開発されたが、自己抗体産生B細胞に対しても細胞傷害作用を有することより、現在までに種々の自己免疫疾患に対してその有効性が示されている。欧米における後方視的解析では、ITPの約60%に部分寛解以上(5万/μL以上)の効果を誘導しうるとされている。しかしながら、肝炎ウイルス再活性化などに留意する必要がある。2013年医師主導型臨床試験にて、血小板3万/μL未満の難治性ITPを対象に、リツキシマブ375mg/m2を1週間ごとに4回投与し、6ヵ月後の有効性(血小板数>5万/μL)が検討された。その結果、有効率は30.8%であった。保険収載を申請中であるが、2015年9月現在いまだ保険収載には至っていない。5 主たる診療科血液内科、あるいは血液・腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2012年版(医療従事者向けのまとまった情報)妊娠合併特発性血小板減少性紫斑病診療の参照ガイド(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報つばさのひろば(血液疾患患者とその家族の会)1)Cines DB, et al. N Engl J Med.2002;346:995-1008.2)冨山佳昭. 臨床血液. 2011;52:627-632.3)George JN, et al. Blood.1996;88:3-40.4)藤村欣吾ほか. 臨床血液.2012;53:433-442.5)Neunert C, et al. Blood.2011;117:4190-4207.6)藤村欣吾ほか. 臨床血液2012;53:433-442.7)宮川 義隆ほか. 臨床血液.2014;55:934-947.公開履歴初回2013年03月28日更新2015年11月02日

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第23回

第23回:消化性潰瘍とH. pylori感染症の診断とH. pylori除菌治療について監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 消化器病領域で遭遇する頻度が多い疾患の1つに消化性潰瘍が挙げられますが、その原因のほとんどが、ヘリコバクター・ピロリ菌感染とNSAIDsの使用によるものと言われています。ヘリコバクター・ピロリ菌には日本人の約50%弱が感染していると言われ、がんの発生にも関与しているため、どのような人にどのような検査・治療を行うべきかを理解しておくことが重要です。 除菌治療に関連して、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)などの新しい治療薬も販売されていますが、日本での除菌適応は「H. pylori 陽性の胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」で、胃炎の場合には上部消化管内視鏡での確認が必須となっていることに注意が必要です。いま一度、既存の診断と除菌治療戦略について知識の整理をしていただければ幸いです。 タイトル:消化性潰瘍とH. pylori感染症の診断とH. pylori除菌治療について以下、 American Family Physician 2015年2月15日号1)より一部改変H. pyloriはグラム陰性菌でおよそ全世界の50%以上の人の胃粘膜に潜んでいると言われ、年代によって感染率は異なる。十二指腸潰瘍の患者の95%に、胃潰瘍の患者の70%の患者に感染が見られる。典型的には幼少期に糞口感染し、数十年間持続する。菌は胃十二指腸潰瘍やMALTリンパ腫、腺がんの発生のリスクとなる。病歴と身体所見は潰瘍、穿孔、出血や悪性腫瘍のリスクを見出すためには重要であるが、リスクファクターと病歴、症状を用いたモデルのシステマティックレビューでは機能性dyspepsiaと器質的疾患を、明確に区別できないとしている。そのため、H. pyloriの検査と治療を行う戦略が、警告症状のないdyspepsia(胸やけ、上腹部不快感)の患者に推奨される。米国消化器病学会では、活動性の消化性潰瘍や消化性潰瘍の既往のある患者、dyspepsia症状のある患者、胃MALTリンパ腫の患者に検査を行うべきとしている。現在無症状である消化性潰瘍の既往のある患者へ検査を行う根拠は、H. pyloriを検出し、治療を行うことで再発のリスクを減らすことができるからである。H. pyloriを検出するための検査と治療の戦略は、dyspepsiaの患者のほか、胃がんのLow Risk群(55歳以下、説明のつかない体重減少や進行する嚥下障害、嚥下痛、嘔吐を繰り返す、消化管がんの家族歴、明らかな消化管出血、腹部腫瘤、鉄欠乏性貧血、黄疸などの警告症状がない)の患者に適当である。内視鏡検査は55歳以上の患者や警告症状のある患者には推奨される。H. pyloriの検査の精度は以下のとおりである。<尿素呼気試験>感度と特異度は100%に達する。尿素呼気試験は除菌判定で選択される検査の1つであり、除菌治療終了から4~6週間空けて検査を行うべきである。プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、検査の少なくとも2週間前からは使用を控えなければならず、幽門側胃切除を行った患者では精度は下がる。<便中抗原検査>モノクローナル抗体を用いた便中抗原検査は、尿素呼気試験と同等の精度を持ち、より安くて簡便にできる検査である。尿素呼気試験のように便中抗原検査は活動性のある感染を検出し、除菌判定に用いることができる。PPIは検査の2週間前より使用を控えるべきだが、尿素呼気試験よりもPPIの使用による影響は少ない。<血清抗原>血清抗原検査は血清中のH. pyloriに特異的なIgGを検出するが、活動性のある感染か、既感染かは区別することができない。そのため除菌判定に用いることはできない。検査の感度は高いが、特異的な検査ではない(筆者注:感度 91~100% 特異度 50~91%)2)。PPIの使用や、抗菌薬の使用歴に影響されないため、PPIを中止できない患者(消化管出血を認める患者、NSAIDsの使用を続けている人)に最も有用である。<内視鏡を用いた生検>内視鏡検査による生検は、55歳以上の患者と1つ以上の警告症状のある患者には、がんやその他の重篤な原因の除外のために推奨される。内視鏡検査を行う前の1~2週間以内のPPIの使用がない患者、または4週間以内のビスマス(止瀉薬)や抗菌薬の使用がない患者において、内視鏡で施行される迅速ウレアーゼテストはH. pylori感染症診断において精度が高く、かつ安価で行える。培養とPCR検査は鋭敏な検査ではあるが、診療所で用いるには容易に利用できる検査ではない。除菌治療すべての消化性潰瘍の患者にH. pyloriの除菌が推奨される。1次除菌療法の除菌率は80%以上である。抗菌薬は地域の耐性菌の状況を踏まえて選択されなければならない。クラリスロマイシン耐性率が低い場所であれば、標準的な3剤併用療法は理にかなった初期治療である。除菌はほとんどの十二指腸潰瘍と、出血の再発リスクをかなり減らしてくれる。消化性潰瘍が原因の出血の再発防止においてはH. pyloriの除菌治療は胃酸分泌抑制薬よりも効果的である。<標準的3剤併用療法>7~10日間の3剤併用療法のレジメン(アモキシシリン1g、PPI、クラリスロマイシン500mgを1日2回)は除菌のFirst Lineとされている。しかし、クラリスロマイシン耐性が増えていることが、除菌率の低下に関連している。そのため、クラリスロマイシン耐性のH. pyloriが15%~20%を超える地域であれば推奨されない。代替療法としては、アモキシシリンの代わりにメトロニダゾール500mg1日2回を代用する。<Sequential Therapy(連続治療)>Sequential TherapyはPPIとアモキシシリン1g1日2回を5日間投与し、次いで5日間PPI、クラリスロマイシン500mg1日2回、メトロニダゾール500mg1日2回を投与する方法である。全体の除菌率は84%、クラリスマイシン耐性株に対して除菌率は74%である。最近の世界規模のメタアナリシスでは、sequential therapyは7日間の3剤併用療法よりも治療効果は優れているが、14日間の3剤併用療法よりも除菌率は劣るという結果が出ている。<ビスマスを含まない4剤併用療法>メトロニダゾール500mg1日2回またはチニダゾール500mg1日2回を標準的な3剤併用療法に加える治療である。Sequential Therapyよりも複雑ではなく、同様の除菌率を示し、クラリスロマイシンとメトロニダゾール耐性株を有する患者でも効果がある。クラリスロマイシンとメトロニダゾールの耐性率が高い地域でも90%にも及ぶ高い除菌率であるが、クラリスロマイシンを10日間服用する分、sequential therapyよりも費用が掛かってしまう。除菌判定H. pyloriの除菌判定のための尿素呼気試験や便中抗原の試験の適応は、潰瘍に関連したH. pylori感染、持続しているdyspepsia症状、MALTリンパ腫に関連したH. pylori感染、胃がんに対しての胃切除が含まれる。判定は除菌治療が終了して4週間後以降に行わなければならない。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Fashner J , et al. Am Fam Physician. 2015;91:236-242. 2) 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会.H. pylori 感染の診断と治療のガイドライン 2009 改訂版

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aHUS診断基準公表による、早期診断・早期治療に期待

 非典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome:aHUS)は、志賀毒素産生性大腸菌由来尿毒症症候群(Shiga toxin-producing E. coli hemolytic uremic syndrome:STEC-HUS)とADAMTS13 (a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs:member13)活性著減による血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP) 以外の血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy:TMA)と定義される。 aHUSの主徴は、「微小血管症性溶血性貧血」、「血小板減少」、「急性腎障害(acute kidney injury:AKI)」の3つである。 近年、このaHUSの病因として補体制御機構の異常が注目されている。50-60%の症例でH因子をはじめとするさまざまな補体制御因子の遺伝子異常が報告され、目下aHUSにおける病態解析は急速に進んでいる。 aHUSは、発症早期にはSTEC-HUSやTTPとの鑑別が必ずしも容易ではなく、積極的な治療が遅れると腎不全に進行するリスクが高い症候群であることから、早期に診断し、機を逃すことなく適切な治療を実施することが重要である。 これらを背景に、日本腎臓学会・日本小児科学会は非典型溶血性尿毒症症候群診断基準作成委員会を発足し、徳島大学大学院 発生発達医学講座(小児医学)香美 祥二 委員長、東京女子医科大学 腎臓小児科 服部 元史 氏、東京大学大学院 腎臓内科学、内分泌病態学 南学 正臣 氏らによってわが国で初めてとなる「非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診断基準」を公表した。 この診断基準の公表により、今後、日本におけるaHUS患者の早期診断・早期治療への道が開かれ、ひとりでも多くの患者さんの予後改善につながることが期待される。さらに、aHUS に対する治療のエビデンスを構築することにより、将来的に新しい治療ガイドラインの作成にも結び付くことが望まれる。「非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診断基準」の詳細は下記のいずれかのURLより閲覧いただけます。日本腎臓学会日本小児科学会

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薬剤投与後の肝機能障害を見逃し、過誤と判断されたケース

消化器最終判決判例時報 1645号82-90頁概要回転性の眩暈を主訴として神経内科外来を受診し、脳血管障害と診断された69歳男性。トラピジル(商品名:ロコルナール)、チクロピジン(同:パナルジン)を処方されたところ、約1ヵ月後に感冒気味となり、発熱、食欲低下、胃部不快感などが出現、血液検査でGOT 660、GPT 1,058と高値を示し、急性肝炎と診断され入院となった。入院後速やかに肝機能は回復したが、急性肝炎の原因が薬剤によるものかどうかをめぐって訴訟に発展した。詳細な経過患者情報69歳男性経過1995年4月16日朝歯磨きの最中に回転性眩暈を自覚し、A総合病院神経内科を受診した。明らかな神経学的異常所見や自覚症状はなかったが、頭部MRI、頸部MRAにてラクナ型梗塞が発見されたことから、脳血管障害と診断された(4月17日に行われた血液検査ではGOT 21、GPT 14と正常範囲内であり、肝臓に関する既往症はないが、かなりの大酒家であった)。6月7日トラピジル、チクロピジンを4週間分処方した。7月5日再診時に神経症状・自覚症状はなく、トラピジル、チクロピジンを4週間分再度処方した。7月7日頃~感冒気味で発熱し、食欲低下、胃部不快感、上腹部痛などを認めた。7月12日内科外来受診。念のために行った血液検査で、GOT 660、GPT 1,058と異常高値であることがわかり、急性肝炎と診断された。7月15日~9月1日入院、肝機能は正常化した。なお、入院中に施行した血液検査で、B型肝炎・C型肝炎ウイルスは陰性、IgE高値。薬剤リンパ球刺激検査(LST)では、トラピジルで陽性反応を示した。当事者の主張患者側(原告)の主張1.急性肝炎の原因本件薬剤以外に肝機能に異常をもたらすような薬は服用しておらず、そのような病歴もない。また、薬剤中止後速やかに肝機能は改善し、薬剤リンパ球刺激検査でトラピジルが陽性を示し、担当医らも薬剤が原因と考えざるを得ないとしている。したがって、急性肝炎の原因は、担当医師が処方したトラピジル、チクロピジン、またはそれらの複合によるものである2.投薬過誤ついて原告の症状は脳梗塞や脳血栓症ではなく、小さな脳血栓症の痕跡があったといっても、これは高齢者のほとんどにみられる現象で各別問題はなかったので、薬剤を処方する必要性はなかった3.経過観察義務違反について本件薬剤の医薬品取扱説明書には、副作用として「ときにGOT、GPTなどの上昇があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常が認められる場合には投与を中止すること」と明記されているにもかかわらず、漫然と4週間分を処方し、その間の肝機能検査、血液検査などの経過観察を怠った病院側(被告)の主張1.急性肝炎の原因GOT、GPTの経時的変動をみてみると、本件薬剤の服用を続けていた時点ですでに回復期に入っていたこと、薬剤服用中に解熱していたこと、本件の肝炎は原因不明のウイルス性肝炎である可能性は否定できず、また、1日焼酎を1/2瓶飲むほどであったのでアルコール性肝障害の素質があったことも影響を与えている。以上から、本件急性肝炎が本件薬剤に起因するとはいえない2.投薬過誤ついて初診時の症状である回転性眩暈は、小梗塞によるものと考えられ、その治療としては再発の防止が最優先されるのだから、厚生省告示によって1回30日分処方可能な本件薬剤を処方したことは当然である。また、初診時の肝機能は正常であったので、その後の急性肝炎を予見することは不可能であった3.経過観察義務違反について処方した薬剤に副作用が起こるという危険があるからといって、何らの具体的な異常所見もないのに血液検査や肝機能検査を行うことはない裁判所の判断1. 急性肝炎の原因原告には本件薬剤以外に肝機能障害をもたらすような服薬や罹病はなく、そのような既往症もなかったこと、本件薬剤中止後まもなく肝機能が正常に戻ったこと、薬剤リンパ球刺激試験(LST)の結果トラピジルで陽性反応が出たこと、アレルギー性疾患で増加するIgEが高値であったことなどの理由から、トラピジルが単独で、またはトラピジルとチクロピジンが複合的に作用して急性肝炎を惹起したと推認するのが自然かつ合理的である。病院側は原因不明のウイルス性肝炎の可能性を主張するが、そもそもウイルス性肝炎自体を疑うに足る的確な証拠がまったくない。アルコール性肝障害についても、飲酒歴が急性肝炎の発症に何らかの影響を与えた可能性は必ずしも否定できないが、そのことのみをもって薬剤性肝炎を覆すことはできない。2. 投薬過誤ついて原告の症状は比較的軽症であったので、本件薬剤の投与が必要かつもっとも適切であったかどうかは若干の疑問が残るが、本件薬剤の投与が禁止されるべき特段の事情は認められなかったので、投薬上の過失はない。3. 経過観察義務違反について医師は少なくとも医薬品の能書に記載された使用上の注意事項を遵守するべき義務がある。本件薬剤の投与によって肝炎に罹患したこと自体はやむを得ないが、7月5日の2回目の投薬時に簡単な血液検査をしていれば、急性肝炎に罹患したこと、またはそのおそれのあることを早期(少なくとも1週間程度早期)に認識予見することができ、薬剤の投与が停止され、適切な治療によって急性肝炎をより軽い症状にとどめ、48日にも及ぶ入院を免れさせることができた。原告側合計102万円の請求に対し、20万円の判決考察この裁判では、判決の金額自体は20万円と低額でしたが、訴訟にまで至った経過がやや特殊でした。判決文には、「病院側は入院当時、「急性肝炎は薬剤が原因である」と認めていたにもかかわらず、裁判提起の少し前から「急性肝炎の発症原因としてはあらゆる可能性が想定でき、とくにウイルス性肝炎であることを否定できないから結局発症原因は不明だ」と強調し始めたものであり、そのような対応にもっとも強い不満を抱いて裁判を提起したものである」と記載されました。この病院側の主張は、けっして間違いとはいえませんが、本件の経過(薬剤を中止したら肝機能が正常化したこと、トラピジルのLSTが陽性でIgEが高値であったこと)などをみれば、ほとんどの先生方は薬剤性肝障害と診断されるのではないかと思います。にもかかわらず、「発症原因は不明」と強調されたのは不可解であるばかりか、患者さんが怒るのも無理はないという気がします。結局のところ、最初から「薬剤性でした」として変更しなければ、もしかすると裁判にまで発展しなかったのかも知れません。もう1点、この裁判では重要なポイントがあります。それは、新規の薬剤を投与した場合には、定期的に副作用のチェック(血液検査)を行わないと、医療過誤を問われるリスクがあるという、医学的というよりもむしろ社会的な問題です。本件では、トラピジル、チクロピジンを投与した1ヵ月後の時点で血液検査を行わなかったことが、医療過誤とされました。病院側の主張のように、「何らの具体的な異常所見もないのに(薬剤開始後定期的に)血液検査や肝機能検査を行うことはない」というのはむしろ常識的な考え方であり、これまでの外来では、「この薬を飲んだ後に何か症状が出現した場合にはすぐに受診しなさい」という説明で十分であったと思います。しかも、頻回に血液検査を行うと医療費の高騰につながるばかりか、保険審査で査定されてしまうことすら考えられますが、今回の判決によって、薬剤投与後何も症状がなくても定期的に血液検査を行う義務のあることが示されました。なお、抗血小板剤の中でもチクロピジンには、以前から重篤な副作用による死亡例が報告されていて、薬剤添付文書には、「投与開始後2ヵ月は原則として2週間に1回の血液検査をしなさい」となっていますので、とくに注意が必要です。以下に概要を提示します。チクロピジン(パナルジン®)の副作用Kupfer Y, et al. New Engl J Med.1997; 337: 1245.3週間前に冠動脈にステントを入れ、チクロピジンとアスピリンを服用していた47歳女性。48時間前からの意識障害、黄疸、嘔気を主訴に入院、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と診断された。入院後48時間で血小板数が87,000から2,000に激減し、輸血・血漿交換にもかかわらず死亡した。吉田道明、ほか.内科.1996; 77: 776.静脈血栓症と肺塞栓症のため、42日前からチクロピジンを服用していた83歳男性。42日目の血算で好中球が30/mm3と激減したため、ただちにチクロピジンを中止し、G-CSFなどを投与したが血小板も減少し、投与中止6日目に死亡した。チクロピジンの薬剤添付文書には、警告として「血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害などの重大な副作用が主に投与開始後2ヵ月以内に発現し、死亡に至る例も報告されている。投与開始後2ヵ月間は、とくに前記副作用の初期症状の発現に十分に留意し、原則として2週に1回、血球算定、肝機能検査を行い、副作用の発現が認められた場合にはただちに中止し、適切な処置を行う。投与中は定期的に血液検査を行い、副作用の発現に注意する」と明記されています。消化器

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こどものみかた<下巻> ~シミュレーションで学ぶ見逃せない病気~

第4回「もう大丈夫!子どもの喘鳴」第5回「これですっきり!嘔吐のみかた」第6回「子どもの腹痛 便秘と重症疾患の見極め!」 小児科医でなくても、日常診療や夜間救急・輪番で「こどもを診る」機会のある一般内科医や看護師も多いのではないでしょうか。そんな時、慌てずに対応できていますか?本DVDは、診療所に緊急度の高い小児救急患者が訪れた場面のシミュレーションをふまえ、適切なトリアージ、処置、診断、家族への病状説明、小児専門医への搬送などを身に付ける、小児救急の実践的プログラムです。第4回「もう大丈夫!子どもの喘鳴」小児の小急性疾患のひとつ喘鳴を取り上げます。レクチャーにおける到達目標は3つです。1)小児の喘鳴の鑑別疾患を5つ挙げることができる 2)緊急性を判断し小児科に相談ができる 3)喘鳴の鑑別診断と初期治療を行うことができる番組では、症例動画を参考に喘鳴患者の見た目と呼吸音を理解し、ロールプレイをとおして病歴聴取法やバイタルサインの確認法など学習していきます。本シリーズ恒例のおさらいクイズで喘鳴診療の学習度をチェックしましょう。第5回「これですっきり!嘔吐のみかた」子どもの救急外来で「発熱」に次いで多いのが「嘔吐」です。高熱でお腹が張り嘔吐、咳が出てむせこみ嘔吐、泣きすぎて嘔吐…などコモンな症状に関わらずその原因は様々で、緊急度の高い疾患も潜むため、嘔吐の診断は的確さが求められます。とはいえ焦る必要はありません。ABC(見た目)の確認、バイタルサインの数値化、的確な問診・診察を行い、胃腸炎、腸重積、虫垂炎、髄膜炎、代謝性など嘔吐をきたす疾患を見極める術を学びます。そしておさらいクイズで学習度をチェック!第6回「子どもの腹痛 便秘と重症疾患の見極め!」小児救急の3大主訴のひとつ「腹痛」です。乳幼児は大人のように腹痛を訴えることができません。不機嫌、哺乳力低下、啼泣など子どもの様子から迅速かつ的確にトリアージしなくてはなりません。小児になると便秘による腹痛が大半です。便が出ていても便秘!?激痛が浣腸だけで収まる!といったことも珍しくありません。このように小児の腹痛は便秘や胃腸炎などが多いのですが、虫垂炎、腸重積、鼠径ヘルニア、精巣捻転、紫斑病などを念頭に鑑別する必要があります。ABCで見た目の異常を確認し、虫垂炎や腸重積などの特徴を念頭に便秘と重症疾患を見極める術を学びます。最後のおさらいクイズで学習度をチェックしましょう。

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「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」保険適用の意義

 2012年3月18日(月)、マスコミセミナー「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」保険適用の意義 が開催された。国立国際医療研究センター国府台病院 院長 上村直実氏と東海大学医学部総合内科 教授 高木敬司氏が、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎保険適用のメリット、プロバイオティクス併用除菌の可能性などについて最近の知見を紹介した。 ヘリコバクター・ピロリ菌感染症の保険適用は、2000年の消化性潰瘍に対するプロトンポンプ阻害薬、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用療法(PAC療法)に始まる。その後、2007年の同疾患に対する2次除菌療法プロトンポンプ阻害薬、アモキシシリン、メトロニダゾール(PAM療法)の公知承認、2009年には全身疾患としての位置づけから、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡治療後胃の3疾患への適応拡大が行われた。そして、本年(2013年)2月21日、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が保険適用に加わった。 上村氏は、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が保険病名として登録されたことで、慢性胃炎の診療および胃がん死の予防戦略が大きく変わるであろうと述べる。ピロリ感染胃炎の定義は内視鏡で慢性胃炎が証明され、種々の検査でピロリ菌の感染が証明される事である。一方、日本で多く用いられる保険病名「慢性胃炎」は日本特有のものであり、その概念は曖昧である。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の保険適用により、機能的疾患としての機能性ディスプシア、器質的疾患としてのピロリ感染胃炎といった、病態に応じた疾患のとらえ方へと変化してくであろうという。また、ほとんどの胃がんはピロリ菌の関与により発症していることは明らかであるが、早期がん摘出後に除菌治療で、異時性胃がんの発現リスクが33%低下するというデータも発表されている。今回の保険適用により、胃がん死予防の戦略も大きく変わっていくのではないかという。 東海大学の高木敬司氏は除菌療法の実際と問題点について述べた。現在、1次除菌と2次除菌の薬剤の組み合わせは限定されている。ところが、1次除菌で用いられるクラリスロマイシンの耐性化が進んでいる。くわえて、2次治療で用いられるメトロニダゾールはさまざまな疾患の特効薬であり、乱用は避けたい。そのような中、プロバイオティクス乳酸菌LG-21がピロリ菌定着を抑制するとして注目されている。3剤除菌療法(前述PAC療法)群と除菌療法+LG-21乳酸菌含有ヨーグルト3週間(1日2回)事前摂取群を比較した臨床試験では、同ヨーグルト摂取群で有意に除菌率が良好であった。また、この効果はクラリスロマイシン感受性菌と耐性菌の混合感染例でも認められている。さらなる研究が必要であるものの、除菌療法の補助療法として期待されそうだ。

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クラリスロマイシン製剤、ヘリコバクター・ピロリ感染症に係る適応症追加を申請

大正製薬株式会社とアボット ジャパン株式会社は8月31日、両社がそれぞれ日本において製造・販売している「クラリス錠200」と「クラリシッド錠200mg」(クラリスロマイシン製剤)について、プロトンポンプ阻害薬(4成分・5ブランド)及びアモキシシリン水和物(一般名、3ブランド)を用いた3剤併用によるヘリコバクター・ピロリ感染症に係る、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の適応症を追加する申請を、9社共同で厚生労働省に行ったと発表した。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、ヘリコバクター・ピロリ感染によりひき起こされる慢性活動性胃炎であり、胃・十二指腸潰瘍をはじめとした様々なヘリコバクター・ピロリ関連疾患の発症に大きく関与していると考えられている。しかし、日本におけるヘリコバクター・ピロリ除菌療法の保険適用上の対象疾患は、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌の内視鏡的治療後胃に限られている。そこで、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本ヘリコバクター学会の3学会は、連名で2011年12月にヘリコバクター・ピロリ感染胃炎における除菌療法の早期承認を求める要望書が厚生労働大臣に提出した。これを受け、今般、関連9社は、平成11年(1999年)2月1日付研第4号、医薬審第104号「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」に基づき、公知の文献等を科学的根拠とし、各薬剤について医薬品製造販売承認事項一部変更の申請を行った。今回、承認事項の一部変更申請を行った製品名等は下記の通り。 ※( )内は一般名、< >内は製造販売会社●プロトンポンプ阻害薬・タケプロンカプセル15、30、同OD錠15、30(ランソプラゾール)<武田薬品工業株式会社>・オメプラール錠10、20(オメプラゾール)<アストラゼネカ株式会社>・オメプラゾン錠10mg、20mg(オメプラゾール)<田辺三菱製薬株式会社>・パリエット錠10mg(ラベプラゾールナトリウム)<エーザイ株式会社>・ネキシウムカプセル10mg、20mg(エソメプラゾールマグネシウム水和物)<アストラゼネカ株式会社、第一三共株式会社>●アモキシシリン水和物製剤・パセトシンカプセル125、250、同錠250<協和発酵キリン株式会社>・サワシリンカプセル125、250、同錠250<アステラス製薬株式会社>・アモリンカプセル125、250、同細粒10%<武田薬品工業株式会社>●クラリスロマイシン製剤・クラリス錠200<大正製薬株式会社(発売:大正富山医薬品株式会社)>・クラリシッド錠200mg<アボット ジャパン株式会社>●メトロニダゾール製剤・フラジール内服錠250mg<塩野義製薬株式会社>●組合せ製剤・ランサップ400、同800<武田薬品工業株式会社>・ランピオンパック<武田薬品工業株式会社>詳細はプレスリリースへhttp://www.abbott.co.jp/press/2012/120831.asp

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自己免疫疾患が、肺塞栓症のリスクを増強

自己免疫疾患によって肺塞栓症のリスクが有意に増大し、特に入院1年目のリスクが高いことが、スウェーデン・ルンド大学のBengt Zoller氏らの調査で示された。肺塞栓症は静脈血栓塞栓症の致死的な合併症で、自己免疫疾患は入院患者における静脈血栓塞栓症のリスク因子であることが示唆されている。これまでに静脈血栓塞栓症と自己免疫疾患の関連を検討した試験の多くは小規模で、ほとんどが特定の自己免疫疾患に限定した研究だという。Lancet誌2012年1月21日号(オンライン版2011年11月26日号)掲載の報告。スウェーデンにおける40年以上の全国規模の追跡調査研究グループは、スウェーデンにおける自己免疫疾患と肺塞栓症の関連を検証する全国規模の追跡調査を実施した。1964年1月1日~2008年12月31日の間に、自己免疫疾患と診断され、過去に静脈血栓塞栓症による入院歴のない患者を対象とし、肺塞栓症の発症状況について追跡調査した。スウェーデンの全居住者の情報が登録されたMigMed2データベースから個々の住民のデータを取得した。一般住民を参照集団(reference population)とし、年齢、性別などの変数で調整した肺塞栓症の標準化罹患比(SIR)を算出した。入院1年目のSIRは6.38、その後は経時的にリスクが低下1964~2008年に、53万5,538人(女性:33万5,686人、男性:19万9,852人)が33種の自己免疫疾患で入院した。自己免疫疾患による入院の1年目に肺塞栓症を発症する全体のリスクは、SIRで6.38(95%信頼区間[CI]:6.19~6.57)であった。33種の自己免疫疾患のすべてで、入院1年目の肺塞栓症の発症リスクが有意に増大しており、なかでも免疫性血小板減少性紫斑病(SIR:10.79、95%CI:7.98~14.28)、結節性多発動脈炎(同:13.26、9.33~18.29)、多発性筋炎/皮膚筋炎(同:16.44、11.57~22.69)、全身性エリテマトーデス(同:10.23、8.31~12.45)が高リスクであった。全体のリスクは経時的に低下し、SIRは1~5年後に1.53(95%CI:1.48~1.57)、5~10年後には1.15(同:1.11~1.20)、10年以降は1.04(同:1.00~1.07)となった。リスクの増大は性別や年齢層の区別なく認められた。著者は、「自己免疫疾患は入院1年目の肺塞栓症の発症リスクを増大させた」と結論し、「自己免疫疾患は凝固性亢進性(hypercoagulable)の病態ととらえるべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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トロンボポエチン受容体作動薬eltrombopag、特発性血小板減少性紫斑病に有用

eltrombopagは、慢性免疫性血小板減少(特発性血小板減少性紫斑病:ITP)の管理に有用であり、特に脾臓摘出などの治療に反応しなかった患者にベネフィットをもたらす可能性があることが、中国・香港中文大学のGregory Cheng氏らによる検討で明らかとなった。ITPでは、抗血小板抗体によって血小板の破壊が増進されるとともに巨核球からの血小板の放出が抑制されるため、軽度~重度の出血をきたす。eltrombopagは経口投与が可能な小分子の非ペプチド性トロンボポエチン受容体作動薬で、ITPのほかC型肝炎やがんの化学療法に伴う血小板減少の治療に使用されている。Lancet誌2011年1月29日号(オンライン版2010年8月24日号)掲載の報告。6ヵ月治療のプラセボ対照無作為化第III相試験研究グループは、ITPに対するeltrombopagとプラセボの効果、安全性を評価する二重盲検無作為化第III相試験を実施した。対象は、6ヵ月間以上の治療を受け、ベースラインの血小板数が<30,000/μLの成人ITP患者。これらの患者が、各国の標準治療+eltrombopag 50mg/日を投与する群あるいは標準治療+プラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、6ヵ月間の治療が行われた。患者、医師、データの評価者には治療割り付け情報は知らされなかった。用量は治療への反応としての血小板数の変動に基づいて調節した。治療への反応(血小板数:5万~40万/μLと定義)は、最初の6週間は毎週1回、その後は少なくとも4週に1回評価した。主要評価項目は、上記の定義による治療への反応とし、intention-to-treat解析を行った。血小板数が増加、レスキュー治療や重度出血は減少2006年11月22日~2007年7月31日までに23ヵ国75施設から197例が登録され、eltrombopag群に135例が、プラセボ群には62例が割り付けられた。治療期間中に1回以上の治療への反応が確認された患者は、eltrombopag群が79%(106例)、プラセボ群は28%(17例)であり、オッズ比は8.2(95%信頼区間:3.59~18.73)と有意な差が認められた(p<0.0001)。併用された標準治療の減量が可能となったのは、eltrombopag群の59%(37例)に対しプラセボ群は32%(10例)であり、有意差がみられた(p=0.016)。治療期間中にレスキュー治療(用量の増量、新たな治療の追加、血小板輸血、脾臓摘出)を要した患者は、eltrombopag群が18%(24例)と、プラセボ群の40%(25例)に比べ有意に良好であった(p=0.001)。血栓塞栓イベントは、eltrombopag群の2%(3例)にみられたが、プラセボ群では認められなかった。ALT値の軽度上昇がeltrombopag群の7%(9例)、プラセボ群の3%(2例)に、総ビリルビン値の上昇がeltrombopag群の4%(5例)に認められた(プラセボ群は0%)。重度出血イベントは、eltrombopag群が<1%(1例)であったのに対し、プラセボ群は7%(4例)で発生した。著者は、「eltrombopagはITPの管理に有用であり、特に脾臓摘出などの治療に反応しなかった患者にベネフィットをもたらす可能性がある」と結論した上で、「これらのベネフィットを選択する場合は、eltrombopag治療に伴う潜在的なリスクとのバランスを十分に考慮して決めるべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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プロトンポンプ阻害薬の3剤併用によるヘリコバクター・ピロリ除菌療法に係る追加適応を、製薬9社が共同申請

武田薬品工業、アストラゼネカ、田辺三菱製薬、エーザイの4社が、1日、各社が日本において製造・販売しているプロトンポンプ阻害薬(3成分・4ブランド)について、アモキシシリン水和物(一般名)、及びクラリスロマイシン(一般名)またはメトロニダゾール(一般名)を用いた3剤併用による胃MALTリンパ腫、早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃、および特発性血小板減少性紫斑病におけるヘリコバクター・ピロリの除菌療法に係る効能・効果追加を、協和発酵キリン、アステラス製薬、大正製薬、アボット ジャパン、塩野義製薬を含む3剤併用療法に係る9社が共同で申請したことを発表した。日本では、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法の保険適用上の対象疾患は胃潰瘍または十二指腸潰瘍に限定されている。2008年12月に、日本ヘリコバクター学会は、「胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、早期胃癌の内視鏡的治療後の異時性胃癌発生抑制に対して、3剤併用療法が有効であることは、多くの臨床研究等によって確認されている」として、これら3疾患におけるヘリコバクター・ピロリ除菌療法の早期承認を求める要望書を厚生労働大臣に提出していた。これを受けて、関連する各社は、平成11年(1999年)2月1日付研第4号、医薬審第104号「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」に基づき、公知の文献等を科学的根拠として、医薬品製造販売承認事項一部変更の申請に至ったという。詳細はプレスリリースへhttp://www.takeda.co.jp/press/article_35226.html

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慢性特発性血小板減少性紫斑病に対する新しい経口治療薬eltrombopag:第Ⅲ相試験

米国FDAにおいて昨年末に承認された、慢性特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura:ITP)に対する新しい経口治療薬eltrombopag(商品名:Promacta)の第Ⅲ相試験の結果が、Lancet誌2009年2月21日号で公表された。eltrombopagは、血小板新生を促す非ペプチド性トロンボポエチン受容体刺激薬で、第Ⅲ相試験では、安全性、有効性、1日1回50mg投与の忍容性、および服用量を75mgまで増加した場合の有効性について検討された。無作為化二重盲検プラセボ対照試験にて検討23ヵ国63施設からITP患者が参加し、無作為化二重盲検プラセボ対照試験にて行われた第Ⅲ相試験は、血小板数30,000/μL未満で、1つ以上の標準治療を受けたことがある患者を最大6週間、標準治療+eltrombopagを1日1回50mg服用群(n=76)と、+プラセボ服用群(n=38)に、検証済無作為化システムを用いて2対1の割合になるよう割り付け実行された。投与量の増加(75mg)は血小板数50,000/μL未満の患者に対して、試験開始3週時点で行われた。主要評価項目は、43日時点までに血小板数50,000/μL以上に改善した患者の割合とされた。eltrombopag治療群の血小板数50,000/μL以上達成割合はプラセボ群の9.61倍43日間の解析が析可能だったのは、eltrombopag群は73例、プラセボ群は37例で、このうちeltrombopag群では43例(59%)が、血小板数50,000/μL以上となった。プラセボ群では6例(16%)で、オッズ比は9.61(95%信頼区間:3.31~27.86、p

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Promactaが米国FDAより承認を取得

グラクソ・スミスクライン株式会社は5日、英国本社が、Promacta(一般名:エルトロンボパグ)の、コルチコステロイド、免疫グロブリンあるいは脾臓摘出術に対する反応が不十分な慢性特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura:ITP)患者さんにおける血小板減少症治療薬として米国FDAより迅速承認を取得したと発表した。エルトロンボパグは、成人の慢性ITP患者に対して初めて承認された経口トロンボポエチン(TPO)受容体作動薬であり、今回の承認はエルトロンボパグおよびITP関係者にとって重要な節目となる。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2008_07/P1000513.html

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多発性硬化症へのalemtuzumabの有効性

リンパ球と単球上のCD52を標的とするヒト型モノクローナル抗体alemtuzumabは、B細胞性慢性リンパ性白血病の治療薬として海外で承認されている。同薬剤の早期多発性硬化症に対する治療効果について、インターフェロンβ-1aとの比較で検討していたイギリス・ケンブリッジ大学医学部のAlasdair J. Coles氏らは、「alemtuzumabは症状進行や再発を抑える上で有効だったが、深刻な自己免疫疾患との関連もみられた」と報告した。NEJM誌2008年10月23日号より。欧米で治療歴のない早期患者334例を追跡調査試験は、ヨーロッパと米国の計49の医療センターで、治療歴のない早期再発寛解型の多発性硬化症患者を対象とし行われた第2相無作為盲検試験。総合障害度評価尺度(EDSS、スコアは10点制で高いほど重症)が3点以下、罹患期間3年以下の患者334例が2002年12月~2004年7月の間に登録され、インターフェロンβ-1aの週3回皮下投与(44μg/回)群、もしくはalemtuzumabの1年1回静脈投与(12mg/日か24mg/日)群に割り付けられ、36ヵ月にわたる投与を受けた。なお最後の患者が治験をスタートしたのは2004年9月だったが、2005年9月にalemtuzumab治療群で免疫性血小板減少性紫斑病が3例発症、うち1例が死亡したため試験は中断されている。インターフェロンβ-1aによる治療は継続された。障害蓄積や再発率は低下するが自己免疫疾患もalemtuzumab群はインターフェロンβ-1a群と比較して、障害の持続的蓄積の割合(9.0%対26.2%、ハザード比:0.29、95%信頼区間:0.16~0.54、P

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