サイト内検索|page:4

検索結果 合計:83件 表示位置:61 - 80

61.

救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに

教育への情熱で磨かれたキーフレーズ+解説身体診察の祭典、JPC2015で参加者の心をわしづかみにした救急医の坂本氏の最新刊が登場。「簡単なようで難しい、身に着ければ強い―それが『あたりまえのこと』」というコンセプトのもと、著者の臨床知見をあますことなく掲載。研修医向けの教育講習を重ね、ベストチューターを受賞した著者だからこそわかる、救急現場で知っておかなくてはいけない内容満載です。具体的には、消化管出血、敗血症、肺炎、尿路感染症など全21章に分け、101項目(病歴聴取、病状説明、救急診療で遭遇する頻度が高い疾患や症候)の解説を加えています。研修医だけでなく、普段救急から遠ざかっている医療従事者も知識の確認に使える1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに定価4,200円 + 税判型A5判(21×14.8×1.3cm)頁数327頁発行2017年11月著者坂本 壮Amazonでご購入の場合はこちら

62.

ADHDドライバー、トレーニングで危機感知能を改善できるか

 ADHDを有する若者のドライバーは、同世代の人よりも交通事故傷害リスクが高い。このリスク増加は、危機感知能が低いことと相関する。これまで、ADHDを有する若者のドライバーを対象に、コンピュータ技術を用いた危険感知訓練について調査した研究はほとんどなかった。オーストラリア・School of Allied HealthのC.R. Bruce氏らは、ドライブスマートトレーニングを受けたADHDを有する若者のドライバーの、危機感知能における群間および対象者内の変化の有無や重要性を確認し、訓練により改善した危機感知能の変化が、時間が経過しても維持されるかを調査した。Accident; analysis and prevention誌オンライン版2017年10月14日号の報告。 本研究は、実行可能性調査として実施されたオーストラリアの無作為化比較試験である。コントロール群として、遅延治療群が含まれた。ADHDと診断されたドライバー25例を対象に、即時介入群またはコントロール群に無作為化した。即時介入群は、ドライブスマートというコンピュータアプリケーションを用いて、トレーニングを行った。コントロール群は、ドキュメンタリービデオを視聴し(コントロール状態)、その後ドライブスマートトレーニングを実施した。対象者の危機感知能は、Hazard Perception Test(HPT)を用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインスコアを調整したのち、介入後のHPT変化スコアは、群間で有意な差が認められ、即時介入群が支持された。・効果の重要性は、大きかった。・コントロール群内の介入効果は有意ではなかった。・即時介入群における6週間のフォローアップにおいて、有意な維持効果が認められた。 著者らは「ADHDドライバーに対するドライブスマートトレーニングは、危機感知能を大幅に改善し、一定期間持続する。トレーニングに対する多様的なアプローチは、維持を容易にすることが示された。本研究より、本格的な試験が実施可能である」としている。■関連記事ADHD発症しやすい家庭の傾向認知症ドライバーの運転停止を促すためにはてんかんドライバーの事故率は本当に高いのか

63.

原発性胆汁性胆管炎に対するオベチコール酸治療に関するプラセボ群を対照とした治験(解説:中村 郁夫 氏)-595

 本論文は、原発性胆汁性胆管炎(従来の病名:原発性胆汁性肝硬変)に対するオベチコール酸の効果を、二重盲検でプラセボを対照群とした12ヵ月間の第III相試験で検討した結果の報告である。 オベチコール酸は、Farnesoid X核内受容体の作動薬である。ウルソデオキシコール酸(UDCA)が十分な効果を示さなかった、あるいは、UDCAの副作用のために内服できなかった217例をランダムに3群に割り付けた。(1)オベチコール酸の容量10mg(10mg群)、(2) オベチコール酸を5mgで開始し可能であれば10mgまで増量する群(5~10mg群)、(3) プラセボ群の3群である。 Primary endpoiont(主要評価項目)は、ALP(アルカリホスファターゼ)値が基準値上限の1.67倍未満で、基礎値の少なくとも15%以上の低下、総ビリルビン値の正常化とした。 オベチコール酸またはプラセボを内服した216例のうち、93%が背景の治療としてUDCAを内服していた。結果としてのPrimary endpointは、5~10mg群で46%、10mg群で47%で達成され、プラセボ群(10%)と比較して有意に高かった(p<0.001)。5~10mg群と10mg群において、プラセボ群と比較して、ALP値の大きな低下(最小二乗平均:-113U/L、-130U/L vs.-14U/L;p<0.001)、および、総ビリルビン値の大きな低下(-0.02 mg/dL、-0.05 mg/dL vs.0.12mg/dL;p<0.001)が認められた。一方、瘙痒感は、オベチコール酸群においてプラセボ群と比べて出現の頻度が高かった(5~10mg群で56%、10mg群で68% vs.プラセボ群で38%)。重篤な有害事象の頻度は、5~10mg群で16%、10mg群で11%、プラセボ群で4%であった。 結論として、原発性胆汁性胆管炎における12ヵ月間のオベチコール酸のUDCAとの併用、あるいは、単独投与により、ALP値および総ビリルビン値の低下がプラセボ群と比べて有意に大きかった。一方で、有害事象の頻度は、オベチコール酸群において多かった。 わが国における原発性胆汁性胆管炎の治療は、UDCAを中心として、さらに、ベザフィブラートや茵陳蒿湯などが用いられている。将来、オベチコール酸も治療薬の1つとなる可能性があると考える。

64.

コントロール不良の重症喘息にbenralizumabは有用/Lancet

 好酸球増多を伴うコントロール不良な重症喘息の治療において、benralizumabは患者アウトカムを改善する可能性があることが、米国・ウェイクフォレスト大学のEugene R Bleecker氏らが実施したSIROCCO試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年9月2日号に掲載された。重症喘息の増悪は生命を脅かし、QOLを低下させる。好酸球増多は、喘息の重症度の悪化や肺機能の低下をもたらし、喘息増悪の頻度を上昇させる。benralizumabは、インターロイキン(IL)-5受容体αに対するモノクローナル抗体であり、抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用(ADCC)によって好酸球を抑制するという。増悪を繰り返す重症例が対象のプラセボ対照無作為化試験 SIROCCO試験は、好酸球増多を伴うコントロール不良な重症喘息の治療におけるbenralizumabの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験(AstraZeneca社、Kyowa Hakko Kirin社の助成による)。 対象は、年齢12~75歳、体重40kg以上で、登録の1年以上前に、医師によって中/高用量の吸入コルチコステロイド(ICS)+長時間作用型β2刺激薬(LABA)を要する喘息と診断され、登録前の1年以内に、コルチコステロイドの全身療法または維持量の経口コルチコステロイドの一時的な増量を要する増悪を2回以上発症した患者であった。 被験者は、標準治療に加え、benralizumab 30mgを4週ごとに投与する群、同8週ごとに投与する群(最初の3回は4週ごとに投与)、プラセボを4週ごとに投与する群に無作為に割り付けられ、48週の治療が行われた。 主要評価項目は、血中好酸球数が300個/μL以上の患者における、プラセボ群と比較した増悪の年間発症率の率比とし、主な副次評価項目は、48週時の気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)および喘息症状スコアとした。 2013年9月19日~2015年3月16日までに、17ヵ国374施設に1,204例が登録され、benralizumab 4週ごと投与群に399例、同8週ごと投与群に398例、プラセボ群には407例が割り付けられた。2つの投与法とも年間喘息増悪率が改善 ベースラインの平均年齢は、benralizumab 4週ごと投与群が50.1歳、同8週ごと投与群が47.6歳、プラセボ群は48.7歳で、女性がそれぞれ69%、63%、66%を占めた。血中好酸球数が300個/μL以上の患者は、275例、267例、267例であり、これらの患者が主要評価項目の解析の対象となった。 48週時の年間喘息増悪率は、プラセボ群に比べ4週ごと投与群(率比[RR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.42~0.71、p<0.0001)および8週ごと投与群(RR:0.49、0.37~0.64、p<0.0001)とも有意に低下した。 benralizumabの2つの投与レジメンは、いずれもプラセボ群に比し、48週時の気管支拡張薬投与前FEV1が有意に改善された(ベースラインからの最小二乗平均の差=4週ごと投与群:0.106L、95%CI:0.016~0.196、8週ごと投与群:0.159L、0.068~0.249)。 喘息症状は、プラセボ群に比べ8週ごと投与群(ベースラインからの最小二乗平均の差:-0.25、95%CI:-0.45~-0.06)は有意に改善したが、4週ごと投与群(同:-0.08、-0.27~0.12)では有意な差を認めなかった。 最も頻度の高い有害事象は、喘息増悪(benralizumab治療群:13%[105/797例] vs. プラセボ群:19%[78/407例])および鼻咽頭炎(12%[93/797例] vs. 12%[47/407例])であった。 著者は、「これらの知見は、benralizumabが、好酸球増多を伴うコントロール不良な重症喘息の新たな治療選択肢となることを支持するもの」と指摘している。

65.

原発性胆汁性胆管炎にオベチコール酸が有効/NEJM

 ファルネソイドX受容体作動薬のオベチコール酸(obeticholic acid)は、原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis:PBC、原発性胆汁性肝硬変[primary biliary cirrhosis]から病名変更)に対し12ヵ月間の単独療法またはウルソデオキシコール酸(商品名:ウルソほか)との併用療法により、プラセボに比べアルカリホスタファーゼ(ALP)値と総ビリルビン値を有意に低下させることが認められた。ただし、重篤な有害事象はオベチコール酸投与群において高頻度であった。ベルギーのルーヴェン・カトリック大学病院のF. Nevens氏らが、オベチコール酸の第III相臨床試験であるPOISE(PBC OCA International Study of Efficacy)試験の結果、報告した。PBCではALP値やビリルビン値が、肝移植や死亡のリスクと相関することが知られている。これまではウルソデオキシコール酸(UDCA)で治療を行っても、肝硬変や死亡へ進行する可能性があった。NEJM誌2016年8月18日号掲載の報告。UDCA既治療PBC患者でオベチコール酸投与とプラセボ投与を比較 POISE試験は、PBCに対するオベチコール酸5mgまたは10mgの有効性および安全性を検討する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験で、13ヵ国59施設において実施された。 対象は、UDCAの効果不十分または副作用が許容できない18歳以上のPBC患者217例で、オベチコール酸10mg群、5~10mg群またはプラセボ群に、1対1対1の割合で割り付けられた。5~10mg群では、オベチコール酸5mgを6ヵ月間投与した後、効果が認められた場合に10mgへ増量した。 主要エンドポイントは、12ヵ月時にALP値がベースラインから15%以上低下し、かつ正常範囲上限の1.67倍未満、および総ビリルビン値が正常であることとした。主要エンドポイント達成率、オベチコール酸群46~47%、プラセボ群10% 解析対象(試験薬を1回以上投与された患者)は216例(女性91%、平均年齢56歳)で、このうち93%がベースライン時および試験期間中にUDCAの投与を受けていた。 主要エンドポイントの達成率は、5~10mg群46%、10mg群47%で、プラセボ群の10%より有意に高いことが認められた(両群ともp<0.001)。12ヵ月時におけるALP値のベースラインからの変化量(最小二乗平均値)は、5~10mg群-113U/L、10mg群-130U/L、プラセボ群-14U/Lで、ALP値の低下は両オベチコール酸群がプラセボ群より有意に大きかった(両群ともp<0.001)。 総ビリルビン値の低下も同様の結果であった(5~10mg群-0.02mg/dL、10mg群-0.05mg/dL vs.プラセボ群0.12mg/dL:両群ともp<0.001) ALP値がベースラインから15%以上低下した患者の割合は、オベチコール酸群がプラセボ群より有意に高値であった(5~10mg投与群77%、10mg投与群77% vs.プラセボ群29%:両群ともp<0.001)。 肝線維化の変化(非侵襲的評価)は、12ヵ月時で両オベチコール酸群ともプラセボ群と有意差はなかった。そう痒症は、オベチコール酸群で最も発現率が高い有害事象であった(5~10mg群56%、10mg群68% vs.プラセボ群38%)。重篤な有害事象の発現率は、5~10mg群16%、10mg群11%、プラセボ群4%であった。

66.

アミオダロンは効く?効かない?よくわからない?(解説:香坂 俊 氏)-550

アミオダロンの登場10年以上前にさかのぼるが、アミオダロンが心肺蘇生の現場に登場したときは画期的であった。何しろエビデンスのエの字もなかった心肺蘇生の領域で、自分が知る限りでは初めての本格的ランダム化試験が行われたのだ。その試験の名前はALIVEといった(NEJM誌2002年掲載)。当時、心室細動(VF)や無脈性心室頻拍(pulseless VT)といった致死性不整脈には、種々様々な薬剤が使用されていた。主要なものとしては、昔からあったリドカイン、I群抗不整脈薬の雄ブレチリウム(現在米国では製造中止)、さらに抗狭心症薬からくら替えしてきたアミオダロンなどが選択肢として存在したが、ALIVE試験ではこのうちリドカインとアミオダロンが比較された。その結果はといえば、アミオダロンのほうが、蘇生されて病院に到達する率が抜群によく出たため(22.8% vs.12.0%)、これ以降ACLSのプロトコルにも採用され、アミオ(アミオダロンの米国での通称)は、救急医や循環器内科医にとってなじみ深い抗不整脈薬となった。ただ、ALIVEは300例程度の試験であったため、退院時の生死に関しては明確な結論が得られないままとなっていた(どちらの群でも80%以上の患者さんが最終的には死亡された)。アミオダロンの退場(?)前置きが長くなったが、今回のRCTはその「生存退院」というところにターゲットを合わせ、ALIVEのおおよそ10倍の規模で行われた臨床試験である(n=3,026)。さらに、アミオダロン、リドカインに加えて、ご丁寧に生理食塩水を使うコントロール群まで設定されるという徹底ぶりである。結果についての詳細は他稿(院外心停止に対するアミオダロン vs.リドカイン vs.プラセボ/NEJM)に譲るが、驚くべきことにアミオダロン群とリドカイン群の間に生存退院率の差は認められず(絶対値の差が0.7%、p=0.70)、さらに2つの薬剤投与群とコントロール群との差もわずかなものであった[アミオダロン群との差が3.2%(p=0.08)、リドカイン群との差が2.6%(p=0.16)]。この結果は衝撃的なものであり、今後アミオダロンのガイドライン上での扱いがどうなるか注目される(おそらく、今ほど絶対的な地位にとどまることはなかろうかと思われる)。よくわからないところよくわからないのが、アミオダロンとリドカインの2剤共「目撃されていた(witnessed)」心肺停止例に限れば、優れた効果を発揮できていた、というところだ。目撃者のいなかった心肺停止例は、いくらVFやVTといった波形を呈していたとしても、薬剤を使用するタイミングを逸してしまっていたということなのか? あるいは、きちんとバイスタンダーによる蘇生行為が行われていなければ、こうした薬剤は効果を発揮できないのか?自分はしばらくはアミオダロンを使い続けるつもりでいる。ただ、アミオダロンは有害事象(血圧の低下や徐脈)もある程度想定しなくてはならない薬剤なので(注)、もしもこちらをリドカインに切り替えて支障がないというのであれば、それは助かる。さらに、「目撃された」心肺停止例という群を別枠で考えなくてはならないかということについては、現場視点から考えると難しいのではないかと思う。このあたり、今後議論が深まっていくのではないだろうか?注)今回の試験でも、アミオダロン群では5%程度の症例で一時的なペーシングが必要となっている。

67.

原発性胆汁性胆管炎〔PBC : Primary Biliary Cholangitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、病因・病態に自己免疫学的機序が想定される慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患である。中高年女性に好発し、皮膚掻痒感で初発することが多い。しかし、多くの症例では無症候性の時期にたまたま発見され、長く無症候性のまま経過する。黄疸はいったん出現すると、消退することなく漸増することが多い。一部の症例では門脈圧亢進症状が高頻度に出現する(表1)。画像を拡大する従来、病名は「原発性胆汁性肝硬変」となっていたが、現在は早期に診断することができるようになり、またウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid;UDCA)の効果もみられることから、現在診断されている多くの患者は肝硬変には至っていない。実際は肝硬変ではないにもかかわらず「肝硬変」が病名に入っていることで、患者の精神的負担が大きい、との患者団体の要請に応じ、2016年より世界的に、英文字略語のPBCはそのまま残し、「Primary Biliary Cholangitis(PBC)」と改名された。日本語では、「原発性胆汁性胆管炎」と改名されることになった。■ 疫学男女比は約1:7、診断時平均年齢は50~60歳で、幼小児期での発症はみられない1)。発生数は1980年の調査開始以来増加傾向にあったが、1990年代以降は横ばいで推移している。新たに診断される症例のうち約70~80%は無症候性PBCである。無症候性PBCを含めた総患者数は全国で約5万~6万人と推計される1)。■ 病因本症は種々の免疫異常とともに、自己抗体の1つである抗ミトコンドリア抗体(Anti-mitochondrial antibody:AMA)が特異的(90%)かつ高率(90%)に陽性化し、また、慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群などの自己免疫性疾患や膠原病を合併しやすい。さらに、組織学的には障害胆管周囲にT細胞優位の高度の単核球浸潤がみられることなどから、病態形成には自己免疫学機序が強く関与していると考えられる。多くの疾患同様、本疾患も多因子疾患であり、遺伝学的要因を基盤に環境要因が作用することよって発症し、病態形成がなされることが想定されている。家族集積性のあることや一卵性双生児における一致率がきわめて高いことなどから、発症には遺伝的素因の関与が示唆される。HLA-DR8 (DRB1*08)が人種を超えて疾患感受性遺伝子として働いている可能性が想定され、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により、HLA-DR以外の新たな疾患関連遺伝子多型の情報が集積されつつある2)。環境因子としては、大腸菌などの細菌からの感染が想定されている。また、工業地帯や汚染廃棄物処理施設の近郊で発症が多いとの疫学研究などより、大気汚染や化学物質、化粧品などによる抗原の修飾がPBC発症のきっかけとなっている可能性が想定されている。■ 症状本疾患にみられる症状は、(1)胆汁うっ滞に基づく症状(2)肝障害・肝硬変および随伴する病態に伴う症状(3)合併した他の自己免疫疾患に伴う症状に分けて考えることができる。病初期は無症状であるが(無症候性PBC)、黄疸を呈する以前から胆汁うっ滞に基づく搔痒感が出現する。身体所見としては、症候性PBCでは黄疸のほか、掻痒のために生じた掻き傷、高脂血症に伴う眼瞼黄色腫が観察され、肝臓は腫大していることが多い。本疾患は他の自己免疫性疾患・膠原病を合併しやすく、なかでもシェーグレン症候群、慢性甲状腺炎、関節リウマチの頻度が高い。門脈圧亢進症状を早期から呈しやすく、高齢者や進行例では肝細胞がんの併発も考慮する必要がある。■ 分類1)臨床病期分類皮膚搔痒感、黄疸、食道静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく症候を伴う症候性PBC(sPBC)とこれらの症候を欠く無症候性PBC(aPBC)に分類される。症候性PBCはさらに、皮膚掻痒感のみ認め血清総ビリルビン値が2.0mg/dL未満のs1PBCと、血清総ビリルビン値が2.0mg/dL以上の黄疸を認めるs2PBCに細分される1)。2)組織学的病期分類わが国の診療ガイドラインでは、サンプリングエラーを最小限にするように工夫された中沼らによる新しい分類の使用が推奨されている。1期(no progression)、2期(mild progression)、3期(moderate progression)、4期(advanced progression)の4期に分類される。3)特殊型特殊なタイプとして、以下の病態がある。(1)PBC-AIHオーバーラップ症候群(PBC-AIH overlap syndrome)PBCの特殊な病態として、肝炎の病態を併せ持ちALTが高値を呈する本病態がある。副腎皮質ステロイドの投与によりALTの改善が期待できるため、PBCの亜型ではあるが、PBCの典型例とは区別して診断する必要がある。(2)AMA陰性PBC、自己免疫性胆管炎(AIC)AMAは陰性であるが、PBCに特徴的な臨床像と肝組織像を呈し、PBC症例の約10%を占める。これらのうち抗核抗体陽性を呈する病態に対しautoimmune cholangiopathyあるいはautoimmune cholangitis(AIC)などの名称が提唱された。副腎皮質ステロイドの投与が奏効する症例もあり、UDCAの効果がみられない症例に対して試みられる。■ 予後PBCの進展形式は、緩徐進行型、門脈圧亢進症先行型、黄疸肝不全型の大きく3型に分類される(図)。多くは長期間の無症候期を経て徐々に進行するが(緩徐進行型)、黄疸を呈することなく食道静脈瘤が比較的早期に出現する症例(門脈圧亢進症型)と早期に黄疸を呈し、肝不全に至る症例(黄疸肝不全型)がみられる。肝不全型は比較的若年の症例にみられる傾向がある。黄疸期(s2PBC)になると進行性で予後不良である。5年生存率は、血清総ビリルビン値が5.0mg/dLで55%、8.0mg/dLを超えると35%となる。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、厚労省研究班の診断基準(表1)に則って行うが、(1)血液所見で慢性の胆汁うっ滞所見(ALP、γ-GTPの上昇)(2)AMA陽性所見(間接蛍光抗体法またはELISA法)(3)肝組織学像で特徴的所見(CNSDC、肉芽腫、胆管消失)の3項目が重要である1)。〔肝組織像が得られる場合〕(1)組織学的にCNSDCを認め、検査所見がPBCとして矛盾しないもの。(2)AMAが陽性で、組織学的にはCNSDCの所見を認めないが、PBCに矛盾しない(compatible)組織像を示すもの。〔肝組織像が得られない場合〕AMAが陽性で、しかも臨床像および経過からPBCと考えられるもの。■ 臨床検査成績慢性の胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇、血清IgMの高値、AMAの出現が特徴的である。■ 抗ミトコンドリア抗体(AMA)と抗核抗体AMAの対応抗原として、ピルビン酸脱水素酵素E2コンポーネント(PDC-E2)をはじめとするミトコンドリア内膜に存在するオキソ酸脱水素酵素複合体を構成する蛋白が明らかになっている。PDC-E2反応性CD4陽性T細胞がPBC患者の肝臓、所属リンパ節および末梢血で有意に増加していることが示され、本疾患の成立・維持に重要な役割を果たしていることが想定される。PBCではAMAのほか、抗セントロメア抗体、抗核膜孔抗体(抗gp210抗体)、抗multiple nuclear dot抗体(抗sp100抗体)など数種の抗核抗体も陽性化する。核膜孔の構成成分に対する抗gp210抗体は特異度ほぼ100%と疾患特異性が高く、PBC患者の約20~30%で陽性化する。本抗体は予後不良なPBC症例で陽性になる率が高く、PBCの臨床経過の予測因子として有用であることが示されている1)。■ 肝組織像自己免疫機序を反映する肝内胆管病変(CNSDC)がPBC肝の基本病理所見であり、肉芽腫の形成も特徴的である。肝内小型胆管が選択的に進行性に破壊される。その結果、慢性に持続する肝内胆汁うっ滞が出現し、肝細胞障害、線維化、線維性隔壁が2次的に形成され肝硬変に進行する。■ 鑑別診断・除外診断画像診断(超音波、CT)で閉塞性黄疸を完全に否定したうえで、慢性の胆汁うっ滞性肝疾患および自己抗体を含む免疫異常を伴った疾患という観点から鑑別診断が挙げられる(表2)。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根治的治療法は確立されていないが、ウルソデオキシコール酸はPBC進展抑制効果を有し、現在第1選択薬である。予後の改善も期待でき、実際UDCAが投与される以前の時期と比較するとPBCの予後はかなり改善している。進行したPBCではUDCAで進展を止めることは難しく、肝硬変・肝不全に進行すれば肝移植が唯一の治療手段となる。血清総ビリルビン値が5.0mg/dL以上になると肝移植を考慮し、肝移植専門医へ紹介することが望まれる。■ 薬物療法1)ウルソデオキシコール酸(UDCA)(商品名:ウルソなど)胆道系酵素の低下作用のみでなく、組織の改善、肝移植・死亡までの期間の延長効果が確認されている1)。通常1日600mgが投与されるが、効果が不十分の場合は900mgに増量される。2)ベザフィブラート(同:ベザトールSR、ベザリップなど)UDCAの効果が乏しい症例でベザフィブラート(400mg/日)が有効な症例もみられる1)。UDCAとは作用機序が異なることから併用投与が望ましいとされる。3)副腎皮質ステロイド通常のPBCに対する投与は病態の改善には至らず、とくに閉経後の中年女性においては骨粗鬆症を増強する副作用が表面に出てくるので、むしろ禁忌とされている。PBC-AIHオーバーラップ症候群で肝炎所見が明瞭である場合は、本剤の投与が推奨される1)。■ 肝移植胆汁うっ滞性肝硬変へと進展した場合は、もはや内科的治療で病気の進展を抑えることができなくなるため、肝移植が唯一の救命法となる1)。肝移植適応時期の決定は、Mayo(updated)モデルや日本肝移植適応研究会のモデルが用いられている。移植後は免疫抑制薬を投与し、術後合併症、拒絶反応、再発、感染に留意し経過を追う。4 今後の展望本疾患を含め、自己免疫疾患の病因および発症原因の早期解明は期待しがたい。したがって、根本治療の開発にはまだ長い期間がかかるものと思われる。しかし、UDCAについては確実に長期効果もみられており、また、ベザフィブラートについては長期効果のレベルの高いデータは得られていないものの、作用機序に関する基礎データを含め、臨床データも集積しつつあり、UDCAとの併用効果が確立するものと思われる。一方、細胞レベルでの解析や、疾患感受性および進行に関与する遺伝子の解析データも出つつあり、病因の解明とともに、個別化医療が可能となる日もそう遠いものではないと思われる。5 主たる診療科内科、肝臓内科、消化器内科、肝臓移植外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)診療ガイドライン厚生労働科掌研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班:原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン2012(医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省難病情報センターホームページ 原発性胆汁性胆管炎(PBC)ガイドブック(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公的助成情報難病情報センター 各相談窓口紹介(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会東京肝臓友の会(患者向けの情報)大阪肝臓友の会(患者向けの情報)1)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班.原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン(2012年). 肝臓. 2012; 53: 633-686.2)厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイド. 文光堂. 2010.3)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 患者さん・ご家族のための原発性胆汁性胆管炎(PBC)ガイドブック. 研究班2013事務局. 2013.4)The Intractable Hepatobiliary Disease Study Group supported by the Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan Guidelines for the management of primary biliary cirrhosis. Hepatol Res. 2014; 44: 71-90.公開履歴初回2014年01月09日更新2016年03月29日

68.

社会を支える力【Dr. 中島の 新・徒然草】(098)

九十八の段 社会を支える力読者の皆さんの中にも、以前は他の業界で働いていたけれども、医学部に入り直して卒業し、医師になった人も沢山おられることと思います。たまたま、他科のレジデントとそのような話になりました。中島「先生は以前、サラリーマンをやってたとか聞いたんやけど」レジ「以前、〇〇株式会社にいました」中島「えらい畑違いやな。向こうの業界と医療界とはまた違うところもあるわけ?」レジ「『同業者の悪口を言ってはならない』というルールが医療界にあるというのが驚きでした」中島「悪口なんか言ったらアカンがな。ルール以前の問題やろ」レジ「僕がいた会社だけかもしれないんですけどね。まず他社の製品の悪口を言うところから営業が始まるんですよ」中島「おいおい」レジ「『お客さん、ようこんなひどい製品使ってはりまんなあ!』とまず一発かましてから自分とこの製品の宣伝をするんです」中島「仰天した!」レジ「そやから、この仕事を始めてから、他所の悪口を言わないのでびっくりしたんですよ」中島「こっちの方が驚いてもたで」正確には「患者さんの前で同業者の診療行為にケチをつけてはならない」というのが業界ルールですね。「後医は前医をそしるべからず」として知られているのは読者の皆さんご存じのところ。そもそも、患者さんの転送を頼み込むこともあるし、ひょっとしたら自分が事故で担ぎ込まれるかもしれないのに、他の医療機関の悪口なんか言えるわけもありません。そんなある日のこと。脳外科外来に通院中の患者さんから私の書いた診断書のコピーを見せられました。患者「先生に書いてもらった診断書のことで」中島「かなり以前に書いたものですね」患者「お蔭で申請が通ったのはいいんですけど、〇〇診療所の先生が『ちょっと見せてみい』というからお見せしたら」中島「ええ」患者「『ひどい診断書やなあ。ようこんなんで申請が通ったなあ』って言われたんですよ」中島「あらまあ」患者「〇〇診療所の先生には『今度、更新の診断書を役所に提出する時に、顔役に頼んだろ』と言われました」中島「口利きしてもらうとうまくいくんですか?」患者「いや私にはよくわからないんです」中島「私にもよくわかりませんが、〇〇先生には世の中がそのように見えているのかなあ」患者「中島先生に言うと気を悪くするかな、とも思ったんですけど。すみません」医療界にも色々な先生がおられるようです。患者「やっぱりコネとかそういうこともあるんでしょうか?」中島「役所でコネが通ったとかいうのは一度も見たことがありませんよ、少なくとも私は」患者「ホントですか!」あくまでも医学的判断の話ですから、情実がからむようではいけません。中島「そもそも顔役がどうとか、コネがどうとか。そんなモンがまかり通ったら、嫌じゃないですか?」患者「そうですね。そんなことあってほしくないです」中島「やっぱり日本という国にはキチンとしていてほしいと思いますよね」患者「ええ」中島「だったらコネが必要だと思う必要はありません。今回もちゃんとした理由で申請が通ったんですよ」患者「はい!」こころなしか患者さんの表情が明るくなりました。患者「実は私の入っている△△同好会がコンテストに出場しましてね」中島「ええ」患者「私の後輩が個人優勝したんです」中島「凄いですね」患者「そのコンテストの審査委員長をやっていたのが私達の師匠でして、メチャクチャ厳しい人なんです」中島「へえーっ」患者「でもね、後輩の優勝が決まったときに師匠が言ったんです。『お前は俺の弟子やからな、ちょっと採点が辛めになったかもしれん。それでもお前がダントツやった。優勝おめでとう!』って」中島「いい師匠ですねえ」患者「そうなんですよ。すごい人です」中島「とにかく明るく前向きに、そして堂々と、これからも頑張りましょう!」患者「ぜひお願いします」なんだか予想外の展開になってしまいましたが、それにしても他人様の悪口は言わないほうが無難ですね。最後に1句フェアプレー 日本を支える 底力

69.

朝食を抜きがちで運動不足の一人暮らしの男子大学生は太る【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第52回

朝食を抜きがちで運動不足の一人暮らしの男子大学生は太る FREEIMAGESより使用 この後ろ向きコホート研究は、男子大学生が肥満にならないようにするためにはどうしたらいいか、ヒントを与えてくれます。 これは京都大学で2000~07年に行われた研究です。被験者は、健康診断を毎年受けている法学部3回生です。私は関西出身なので、大学生のことを「年生」ではなく「回生」と呼んでいました。京都大学もおそらく「回生」と呼んでいる学生が多いのでは? Goto M, et al. Lifestyle risk factors for overweight in Japanese male college students. Public Health Nutr. 2010 Oct;13(10):1575-80. 余談はさておき、この研究に登録されたのはBMIが22.0以上の4,634人の男性学生でした。平均年齢は21.5歳。「あっ! この研究にオレも入ってるかも!」と思った読者がいるかな、とふと思ったのですが、法学部出身の人はこの連載を読んでないですよね。1年間のフォローアップで、BMIが5%以上増加したのは598人(12.9%)の生徒でした。BMI増加の独立リスク因子とされたのは、運動不足(オッズ比[OR]1.33、95%信頼区間:1.11~1.60)、アルコール摂取量が少ないこと(OR 1.30、95%信頼区間:1.08~1.57)、朝食をよく抜くこと(OR 1.34、95%信頼区間:1.12~1.61)、高脂肪食を好むこと(OR 1.36、95%信頼区間:1.04~1.78)、一人暮らし(OR 1.23、95%信頼区間:0.99~1.52)でした。該当するリスク因子数に応じて層別化を行うと、健康的な生徒と比較した場合、リスク因子最多の生徒ではBMI増加のオッズ比が6.22(95%信頼区間:2.58~15.0)でした。アルコールを飲まないほうが太るというのが「ハテナ?」と思いましたが、アルコール摂取で肥満のリスクが上昇するというコンセンサスはないのですね。知りませんでした。むしろ、アルコール摂取をしない大学生は、他のカロリー摂取源として食事を多く取るという可能性があるとかないとか。他の研究だと、早食いする大学生は体重が増えやすいという報告もあります1)。私も大学の頃はかなり早食いでしたが、子どもができてからゆっくり食べるようになりました。ところで、京都の大学に通っていると、ラーメン屋に行く頻度が多いと思います(それが統計学的に有意かどうかは神のみぞ知る)。私は研修医時代を京都で過ごしたのですが、週1回くらいの頻度でラーメン屋に通っていました。「いいちょ」という店が大好きで、ラーメンとチャーハンを毎回セットで頼んでいました。そのせいもあってか、当時は現在より体重が5kgも多かったのです。ちなみに、昼食に頻繁にラーメンを食べると日本人はトランスアミナーゼが増えるという報告があります2)。参考文献1)Yamane M, et al. Obesity (Silver Spring). 2014;22:2262-2266.2) Iwata T, et al. Tohoku J Exp Med. 2013;231:257-263.インデックスページへ戻る

70.

アトピー乳児、喘息発症リスクが高いのは?

  アトピー性皮膚炎(AD)は喘息や他のアトピー性疾患に先行して発症することが知られる。“アレルギーマーチ”と呼ばれるこれらの発症順序は必ずしも決まっておらず、乳幼児が喘息を発症するリスクについて取り組んだ研究は少ない。フランス・パリ公立アルマン・トゥルソー小児病院のFlore Amat氏らは、生後12ヵ月未満のAD患者を6歳まで追跡したObservatory of Respiratory risks linked with Cutaneous Atopy(ORCA)研究データを解析し、早期発症AD乳児において複数感作あるいは喘息家族歴を認める場合は、幼児期に喘息の発症リスクが高いことを明らかにした。PLoS One誌オンライン版2015年6月24日号の掲載報告。 研究グループは、喘息に発展する恐れのある早期発症ADの表現型を特定することを目的に、ORCA研究に登録された乳児214例についてクラスター分析を行った。  ORCA研究は、皮膚科医によりADと確定診断され、喘鳴の既往がない生後12ヵ月未満の乳児を6歳まで追跡し、AD、アレルギーおよび喘息について毎年調査した研究である。 主な結果は以下のとおり。・次の3つのクラスターが同定された。・クラスター1は「低感作AD群」(94例)。食物または空気アレルゲンへの感作なし~低度(それぞれ27.7%および10.6%)、AD重症度は中等度(SCORAD 25.29±14.6)。・クラスター2は「複数感作AD群」(84例)。AD重症度が高く(SCORAD 32.66±16.6)、食物または空気アレルゲンへの感作も高く(それぞれ98.6%および26.2%)、複数の食物アレルゲンに感作されている(96.4%)。・クラスター3は「喘息家族歴があるAD群」(36例)。親が喘息の既往歴を有し、AD重症度は中等度(SCORAD 24.46±15.7)、食物アレルゲン(1つ)への感作は中等度(38.9%)、空気アレルゲンへの感作はない。・6歳時点で喘息に罹患していた小児の割合は、クラスター1(14.9%)に比べてクラスター2および3で高かった(それぞれ36.1%および33.3%、p<0.01)。

71.

降圧は「The faster the better(速やかなほど、よし)」へ(解説:桑島 巌 氏)-331

 これまで降圧速度に関しては、急激な降圧が臓器虚血を誘発する可能性があるとの考え方から、概念的に「The slower the better(ゆっくりなほど、よし)」というコンセプトを持つ専門家が多かった。しかし、この考え方を支持する科学的根拠はほとんどなかったのである。 近年の心血管疾患のコンセプトは、血管病という概念により、酸素や栄養成分の補給路、ライフラインである“血管”の破綻が心筋梗塞や脳梗塞をもたらし、治療においては、血管保護こそが心血管疾患発症予防に重要であるとの考え方が主流になりつつある。 たとえていえば、傷んだ道路に対しては速やかな対策、すなわち通行制限が急務ということになり、高血圧治療では、速やかな降圧こそが心血管合併症予防に有効なのである。このことを証明したトライアルが、ARBバルサルタンの心血管疾患合併症予防効果をアムロジピンと比較したVALUE試験である。 value試験では、6ヵ月間の血圧調整期間において、アムロジピン群の降圧効果がバルサルタン群よりも大きかったために、心筋梗塞や脳卒中の発生が少なかったことから、速やかな降圧こそが重要であることを示唆した。 本研究は英国のプライマリケア受診症例の長期追跡による結果であるが、まさに、降圧は「The faster the better(速やかな降圧ほど、よし)」を科学的に証明したという点で意義がある。速やかとはいってもアダラートカプセルのように服用後1、2時間で降圧させることは危険であることは言うまでもなく、本論文の主旨は、数週間単位での降圧速度のことであり、まずは、少なくとも1.4ヵ月以内に収縮期血圧を150mmHg以下に下げることが、脳心血管合併症予防に重要であることを示唆している。

72.

事例46 ウルソデオキシコール酸(商品名: ウルソ)錠 100mgの査定【斬らレセプト】

解説事例では、ウルソデオキシコール酸(ウルソ®)錠100mg 6錠をアルコール性肝硬変であって、慢性肝不全の患者に投与したところ、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)として100mg 3錠に査定となった。査定事由の検討のために同剤の添付文書を確認してみた。1日量600mgの摘要は、「原発性胆汁性肝硬変(PBC)又はC型慢性肝疾患における肝機能の改善」と記載されている。他には慢性肝疾患における肝機能の改善などが認められており、1日量150mgを標準に年齢、症状により増減すると設定されている。したがって、傷病名欄にPBCとC型慢性肝炎の記載がないことを理由に査定となったと考えられる。また、事例のアルコール性肝硬変は、PBCまたはC型慢性肝疾患に相当せずに添付文書上の慢性肝疾患の区分に分類される。必要とした場合に適宜の増減が定められているものの、1日量600mgの投与は通常量の4倍であり、PBCまたはC型慢性肝疾患に対する投与量と同じ量となるため過剰であると判断されたものであろう。通常量の倍量投与が認められたのは、肝不全があるためと考えられる。投与量によって適用傷病名が異なる場合は、傷病名との整合性をご確認いただきたい。

73.

抗炎症薬の抗うつ効果を検証

 これまでいくつかの試験で、抗炎症薬の抗うつ効果が報告されている。しかしながら、結果には一貫性がなく、使用を禁忌とする有害事象がある可能性もあった。デンマーク・オーフス大学のOle Kohler氏らは、抗炎症薬による治療の抗うつ効果と有害事象の系統的レビューを行った。その結果、抗炎症薬による治療(とくに選択的COX-2阻害薬セレコキシブ)は、有害事象を増大することなく抑うつ症状を低減することが示された。JAMA Psychiatry誌オンライン版2014年10月15日号の掲載報告。 検討は、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PubMed、EMBASEなどで2013年12月31日以前に発表された試験を検索。無作為化プラセボ対照試験で、抑うつ症状を有する成人(うつ病基準を満たした人など)について抗炎症薬治療の薬理学的な有効性および有害事象を評価した試験を対象とした。2名の独立レビュワーがデータを抽出してプールし、標準平均差(SMD)、オッズ比(OR)を算出。主要評価項目は、治療後のうつ病スコアと有害事象であった。 主な結果は以下のとおり。・14試験に関する10件の報告(参加者6,262例)を解析に組み込んだ。・10試験(4,258例)は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用の評価を、4試験(2,004例)はサイトカイン阻害薬を調べたものであった。・プール推定効果は、プラセボと比較して抗炎症薬治療は抑うつ症状を低減することを示すものであった(SMD:-0.34、95%信頼区間[CI]:-0.57~-0.11、I2=90%)。・その効果は、うつ病患者を含む試験(SMD:-0.54、95%CI:-1.08~-0.01、I2=68%)、抑うつ症状患者を含む試験(同:-0.27、-0.53~-0.01、I2=68%)で観察された。・試験間の不均一性は、臨床的うつ病vs.抑うつ症状の包含や、NSAIDs使用vs. サイトカイン阻害薬使用といった違いによるものではなかった。・サブ解析により、セレコキシブの抗うつ特性が際立っていた(SMD:-0.29、95%CI:-0.49~-0.08、I2=73%)。寛解に関するORは7.89(95%CI:2.94~21.17、I2=0%)、奏効に関するORは6.59(同:2.24~19.42、0%)であった。・有害事象について報告していた6試験において、抗炎症薬治療6週後または12週後に、プラセボと比較して、胃腸または心血管イベントが増大したとのエビデンスはみつからなかった。・なおすべての試験が、潜在的な内的妥当性の減弱によるバイアスリスクとの関連性があった。 これらの結果より著者は「うつ病治療に抗炎症薬を使用するというコンセプトの根拠の裏づけとなる」と述べ、「ベネフィットが得られたサブグループの特定が根拠となるだろう」とまとめている。関連医療ニュース ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか 効果不十分なうつ病患者、次の一手のタイミングは うつ病患者、SSRI治療開始1年以内に約半数がセカンド治療に  担当者へのご意見箱はこちら

74.

膝OA治療にウコンの黄色成分が有望

 国立病院機構 京都医療センター 整形外科診療部長の中川 泰彰氏らは、変形性膝関節症患者に対し、高吸収型クルクミンを投与したところ、8週間でプラセボと比較して膝痛スコアが有意に低下し、鎮痛薬への依存が有意に低下したことを報告した。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2014年10月13日号の掲載報告。 クルクミンは天然生薬ウコンの主成分で、中川氏らは表面制御処理を施し吸収性を高めたクルクミン製剤「セラクルミン」を開発し本検討を行った。セラクルミンの血中濃度はクルクミン細粒の27倍に達するという。 同製剤を、変形性膝関節症患者に180mg/日、8週間連日投与し、臨床効果を調べた。被験者は、40歳以上のKellgren-Lawrence分類IIまたはIIIの患者50例で、無作為化二重盲検プラセボ対照にて前向きに検討した。また、各介入の8週間前および後に血液生化学検査を行い有害事象を調べた。 被験者の膝の症状については、0、2、4、6、8週にJKOM(Japanese Knee Osteoarthritis Measure)、視覚アナログスケール(VAS)による膝痛度、日本整形外科学会の膝スコアを用いて評価した。また、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の必要性についても評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療開始後8週時点で、膝痛VASスコアは、プラセボと比較してセラクルミン群(介入開始時のスコアが0.15未満であった患者は除外)で有意に低下した。・セラクルミンは、プラセボと比較してセレコキシブへの依存を有意に低下した。・セラクルミン投与による重大有害事象はみられなかった。 以上より、セラクルミンは、ヒトの変形性膝関節症の治療に適用できる可能性が示された。

75.

結婚できない男【空気を読まない】[改訂版]

今回のキーワードこだわり(想像力の障害)発達障害(自閉症スペクトラム障害)共感性職人気質パターン認識構造化「なんで空気を読まないの?」みなさんがかかわる患者さんやいっしょに仕事をするスタッフたちの中で、「なんで空気を読まないの?」と思わず驚きの声を上げそうになったことはありませんか? 世の中にはいろんな人がいます。できることなら誰とでもうまくやっていきたいですよね。でも、うまくいかなくなった時、どう考えたらいいのでしょうか? どうしたらいいのでしょうか?今回、2006年に放映されたドラマ「結婚できない男」を取り上げます。これは、今までにない異色の恋愛ドラマで、みなさんの中にも覚えている人が多いかと思います。婚活が社会現象となって久しく、結婚したくてもなかなかできない男女が増えた今の世の中を絶妙に映し出しています。主人公はなぜ結婚できないのでしょうか? 世の中はなぜ結婚しづらくなったのでしょうか? これらの疑問も踏まえて、これからストーリーを追って見ていきましょう。空気を読まない主人公の信介は、ルックス良く、建築家として成功し、経済的にも恵まれている39歳の独身男性です。高身長、高学歴、高収入で一時もてはやされた3高も満たしています。一見して女性を引き付けるものを持ってはいます。しかし、出会った女性はことごとく彼にうんざりし、すぐに彼の元を去っていきます。なぜでしょうか?いくつか分かりやすいシーンがあります。信介がパーティ会場で初対面の女性に接するシーンが印象的です。雨でずぶ濡れの地味な上着で登場します。部下の英治に営業をするよう頼まれていたのにもかかわらず、「(営業の相手は)キッチンの重要性を理解していない。議論にならん」と言い放ちます。女性から建築家になった理由を聞かれると、「神のお告げがありまして」と分かりにくい冗談を言います。すかさず「今のギャグです」と英治にフォローされて、何とか場が保たれています。自分の好きな映画の話を一方的に始める信介に対して、女性は苦し紛れに「そのうち見ます」と言うと、信介は「そのうちなんて言って、見たやつはいませんよ」と返します。女性は、何とか場を和ませようとして「このスパゲティおいしいですよ」と差し出すと、信介は「ちょっと冷めてる」「これちょっと細いから、厳密にはスパゲッティーニ、つまりあなたはほんとは『スパゲッティーニおいしいよ』と僕に言うべきなんです」と答えるのです。最終的に、女性はうんざりして逃げてしまいますが、信介は英治に「構わん」と言い放ちます。このように、信介は、相手の話も聞かず、一方的に話し、思ったことをそのまま口走り、うんちくをこね、そしてこりないのです。別のシーンでは、マンションの隣人であるみちるがお金に困り、水商売をやり始めた姿を見て、何とか助けたい思いからお金を貸そうとします。信介は「困ってんの見たくないから」と言いつつ、受け取るのにとまどっている彼女を見て「客も我慢している」「もっと若くて女子大生みたいなのがいいのに」ともっともらしく言い放ってしまいます。また、バスツアー参加では、バスガイドの話に割り込み、より詳しいうんちくを得意がって披露し、バスガイドを泣かせてしまいます。年下の女性とのデートの時に相手が水族館で「魚、大好き」と言うと、信介は「魚より肉が好きだな」と答えます。長年の仕事パートナー沢崎がヘッドハントされるシーンでは、引き留めようとして出た信介の言葉は「便利で都合のいいやつはお前しかいない」との本音でした。急に近付いたり、顔を近づけて話すなどの特徴もあります。どうやら、彼には「空気が読めない」「空気を読まない」という言葉が当てはまりそうです。こだわりでは、なぜ信介は「空気を読まない」のでしょうか?さらに、別のシーンをいくつか見てみましょう。人生ゲームに凝っていて1人で復刻版の人生ゲームをやります。お好み焼きはマニュアル通りに作らないと気が済みません。模型のプラモデルの部品が1つ足りないだけでもう1セット購入します。そして、花は大嫌いで、視界に入るだけでも体調を悪くしてしまいます。猫背でぎこちない歩き方も相変わらずです。これらは、全て彼の「こだわり」と言えます。さらに、「空気を読まない」のも彼のこだわりの裏返しであり、延長であると言えそうです。つまり、彼はこだわりがとても強いのです。そして、メンタルヘルスの現場では、このような「こだわり」があまりにも強過ぎて、日常生活や社会生活がうまくいかない場合、ある障害が浮かび上がってきます。それは、発達障害(自閉症スペクトラム障害)です。ただ、信介にこの診断が下り、治療が必要というほどでは全くありません。そのわけは、メンタルヘルスにおける診断や治療は、あくまで本人や周りがひどく困ってしまうことが大前提だからです。ただ、その人を取り巻く環境や周りとの相性によって困り具合が変わるので、線引きが難しいことがよくあります。ここで言えることは、信介には発達障害の傾向があり、困ってしまいやすいということです。そして、信介や周りの人が、この傾向と上手に付き合っていくためのヒントをみなさんといっしょに考えることができるのではないかということです。想像力―「硬さ」「狭さ」「独特さ」強いこだわりは、発達障害の要素の1つである想像力の「硬さ」「狭さ」「独特さ」です(想像力の障害)。つまり、想像力に柔軟性がなく、しかも想像力の広がりが狭いために、相手が何を思っているか、何を感じているかを想像すること(心の理論)にとても鈍感なのです。だからこそ、自分のことばかり考えてしまい、結果的に、対人関係においては、「空気を読まない」「不器用」な人になってしまいます。しかし、こだわりは、裏を返せば、自分にとって何が特別か悟っている「ひたむきさ」「一途さ」「才能」でもあります。実際に、信介は、自分の興味のある建築という仕事においては、とことん追求し、良い仕事をしており、「一芸」に秀でています。つまり、こだわりには二面性があるのです。その人の良さでもあり、その人らしさ、個性とも言えます。表:こだわりの二面性マイナス面プラス面こだわり融通が利かない空気を読まない(読めない)頑固、偏屈、無愛想ひたむき、一途ブレない、流されない正直、真面目、勤勉、律儀図太い、一芸に秀でるなぜ信介のような人は今の世の中で目立つのか?それでは、なぜ信介のような人は、今の世の中で目立つようになったのでしょうか? その答えは、コミュニケーション能力、つまりは気回しが求められる社会構造に変化してしまったからです。かつての士農工商の封建社会では、身分制度により仕事も結婚相手も生まれる前からほぼ決められていました。農業や工業などの製造業が主流で、この社会において求められる価値観は、「正直」「真面目」「勤勉」「律儀」です。分かりやすいイメージとしては、頑固で人付き合いは悪いけど腕は良い職人です。この職人気質は、まさに建築家の信介に当てはまります。この価値観はこだわりの特性と相性が良いのです。多少の「偏屈」は問題にされず目立たなかったのです。この特性を持った人々がその能力を発揮し、その時代に活躍しました。しかし、その後、時代は大きく変わりました。産業革命、情報革命を経て、サービス業中心の世の中になってきました。情報化し複雑化したコミュニケーション重視の新しい社会の仕組みの中、かつてなくコミュニケーション能力、「空気を読む」という気回しの能力が求められる時代に変わってきたのです。信介のような人たちは本来の居場所、行き場である製造業の仕事からあぶれてしまい、サービス業に流れていきました。しかし、こだわりは受け入れられず、ただその「偏屈さ」が目立つ結果となったのでした。実際に、建築の営業をするパートナーの沢崎が不在の時に、信介は彼女に代わって営業を全うすることはできませんでした。逆に言えば、その特性を見抜いて、向いている職種を見出すこともできます。対人的な職種は、対象が人の心そのもので「生もの」であるため、常に空気を読んで、臨機応変に動かなければならないので、信介には負担が大きいです。一方、対物的な職種は、空気を読むことそのものを対象にしないため、決められた手順通りに取り組むことができるので、才能や技術のある信介のような人には合っています。表:こだわりタイプと気回しタイプがそれぞれ向いている職種 こだわりタイプ(職人気質)気回しタイプ(商人器質)モデル信介部下の英治ライバル建築家の金田職種対物的な職種対人的な職種例一般職製造業、職人専門職(研究者、学者)、事務職サービス業(営業、接客、窓口)管理職医療職急性疾患、救命救急、手術室慢性疾患、精神疾患、リハビリテーション今の世の中の結婚に求められるものは?ヒロインとして登場する女医の夏美は、ある種の強さを持った現代的な女性で、ドラマの中で彼女が見合い結婚に嫌気が差し、恋愛結婚に憧れるのも納得がいきます。そんな夏美の診察室に、信介は、「胃がシクシクと・・・」と言い、しょっちゅう訪れます。彼は、夏美の感情の変化を読み取ることができず、たびたび怒らせてしまいます。と同時に、実は、彼はストレス性の胃炎になるくらい自分自身の感情の変化にも気付きにくいのです。端的に言うと、相手の心だけでなく、自分の心を察するのも鈍いのです。そして、自分がストレスを抱え込んでいることに気付かず、無理をしてしまいやすいです。やがて、彼は夏美に好意を寄せていきますが、その自分自身の気持ちに気付かず、噛み合わないもどかしさが私たちにも伝わってきます。実は、今の社会の仕組みは結婚にも影響を与えています。情報化され自由化された新しい恋愛結婚のシステムでは、選択肢、判断基準が増え個々人の違いが重視されるようになりました。そこで特に求められるのは相手の気持ちを推し量ること、つまりは気回しや思いやりです(共感性)。部下の英治やホスト風のライバル建築家の金田は、信介とは対照的に人当たりのいいキャラとして描かれており、信介の特性を際立たせています。逆に、ドラマでみちるを狙うストーカーが登場しましたが、相手の気持ちを全く考えない一方的な恋愛であるストーカー行為は、まさにこだわりの負の産物と言えます。信介のような人はどうすればいいのか?信介のような人たちはどうすればいいのでしょうか? それは、本人がパターン認識をして学習することです。信介は、何が悪いか分からないけれどパターン認識をして彼なりに周りとうまくやって行こうとする姿勢が見受けられます。例えば、信介に皮肉を言われたと思った夏美は激怒し立ち去るシーンがありますが、わけが分からず追いかけた信介は悪気なく尋ねます。「悪いんでしょ?」と。しかし、夏美が許してくれないので「すみません」ととりあえず謝っています。何が悪かったのかのフィードバックがなければ、同じ過ちを繰り返していきますが、ストーリーが進むにつれて、信介は夏美に「また、説教ですか?」と言いながらも、夏美の「説教」に耳を傾けていくようになっていき、いつの間にか惹かれていきます。周りの人たちはどうすればいいのか?周りの人たちはどうすればいいのでしょうか? 実は、その答えはドラマの中に散りばめられています。ドラマの回を重ねて見るうちに私たちは気付かされます。それは、、本人に悪気がないことを周りが理解することです。これは、信介のような人たちを理解する上でとても大切なことです。ドラマで夏美が言います。「言い方とかムカつくけど、悪い人ではないと思う」「心で思っていることと表に出すことが違っている場合が多い」と。彼の個性ゆえに独特の言い回しをしてしまい本心がうまく相手に伝わらないことが多いのです。時には、信介の一生懸命さやもどかしさが私たちにも伝わってきます。現に、頼まれれば、命懸けでベランダをつたい、慣れない犬の世話をし、迷子の犬探しに必死に協力します。出会って間もない女性の新しい恋人のフリをすることを承諾します。みちるのボディガードを務め、ストーカーを撃退します。もともとお金の貸し借りをしたことがなかったのに、困っているみちるに自らお金を貸そうともしました。秘密を漏らすなと言われたら絶対に漏らしません。これは信介の良さであり、さきほどの「正直」「真面目」「勤勉」「律儀」などの二面性を併せ持っていることが理解できます。「俺は自分の気持ちに正直でいたいから」という信介の言葉がそれを裏付けています。信介の良き理解者である沢崎は、その特性を見抜きうまく手なずけ仕事をやらせていました。実直であるがゆえに乗せられやすい面も見えてきます。時には、「今の(信介の発言)を翻訳すると」などと沢崎はフォローも入れます。周りが汲み取るその人らしさまた、夏美は沢崎のアドバイスを受けながら、ちょっとずつ信介を理解していきます。ある時、結婚相手に理想ばかり追い求めるみちるに「男性に求めるものは?」と聞かれて、夏美は答えます。「その人が何を考えているかちゃんと理解できること」と。発想の転換です。求めるのは、相手にではなく自分であることを悟るのです。夏美の成長ぶりが伺えます。その後、夏美はあえて信介のテレビ出演でカットされた発言の話を引き出し聞いてあげるなどして、「説教」だけではない支持的なかかわりを通して信介に歩み寄ります。そして、最後には信介に告白します。「(今までの)私たちの会話ってキャッチボールじゃなくてドッジボールばっかりだった気がします」「(これから)私はキャッチボールがしてみたいです、あなたと」と。その告白を受けて、後日、信介は夏美の診察室に訪れます。「キャッチボールしようと思って」と。関わる相手がキャッチボールできるうまい球をまず投げてあげることが大事であることも描かれています。また、信介が通うコンビニの女性店員でさえ、対応を変えてきます。いつもレジで「スプーン要りますか?」「ポイントカードありますか?」と聞くと、信介は間髪入れずに無愛想に「要りません」「ありません」と言うので、やがて「スプーン要りませんし、ポイントカードもありませんよね。」と聞くようになります。コミュニケーションのコツラストシーンで、夏美を家に誘いたい信介は、誘いの言葉を素直に言い出せず、逆に夏美に「もしかしてうちに来いって言ってますか」と言い当てられてしまい、いつもの口癖で「あなたがどうしてもとおっしゃるなら」と言ってしまいます。うわての夏美は、「あなたがどうしてもって言うなら」と切り返します。すると、最後についに、いつもはあまのじゃくな信介が素直に答えます。「じゃあ来てください。どうしても」と。このシーンは、夏美のかかわりにより信介が少しずつ変わってきていることを窺わせます。と同時に、夏美の信介へのかかわりが大きく変わったことも描かれています。とてもほのぼのとするエンディングです。もちろん、トレンディドラマにありがちなハッピーエンドではなく、これからの2人の関係も波乱に満ちたものを予感させます。実際に、主人公に共感し、自分と重ね合わせてハッとした未婚男性の視聴者はいるのではないでしょうか? 反面教師としても主人公の視点を通して、自分のあり方、生き方を客観的に見つめ直すことができます。もちろん、周りの人たちにとっても、信介のような人たちへの理解が深まり、コミュニケーションのコツが分かってきます。そのコツとは、細かく具体的で丁寧な指示を出して(視覚化)、レールを敷いて枠組みを作り(構造化)、一つ一つのパターン認識やパターン学習を手助けしてあげることなのです。また、こだわりが強ければ、急な予定の変更(新奇場面)にストレスを感じやすくなります。その対策として、予定の変更をあらかじめ伝えることも肝心です(予定告知)。ドラマはセラピーの効果このドラマは、信介のような人たちが信介を自分と重ね合わせ、同時に彼らの周りの人たちが信介をその人に重ね合わせ、どうしたらいいかを気付かせてくれるセラピーの役割を果たしています。社会が信介のような人たちの特性をもっと知り、その個性的で良い面を高く買ってあげて、口下手でコミュニケーションが苦手な面は大目に見て微笑ましく見守ってあげることができたら、世の中はきっと彼らにとっても私たちにとっても、もっと居心地の良い場所になるのではないでしょうか。今、世の中に求められているのは、彼らを理解し、彼らと「キャッチボール」をして、お互いに少しずつ成長していけるような、より心の広いコミュニケーション社会なのではないでしょうか?1)尾崎将也:結婚できない男、扶桑社、20062)吉田友子:高機能自閉症・アスペルガー症候群、「その子らしさ」を生かす子育て、中央法規出版、2009

76.

大腸がん手術後の患者さんへの説明

手術のあと大腸がんの手術を受けられた方へ編著:東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学 助教 石黒 めぐみ氏監修:東京医科歯科大学大学院 腫瘍外科学 教授 杉原 健一氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.あなたの受けた手術手術を行った日手術で切除した範囲年月日術式名(受けた手術の名称)きずお腹の創Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.2病理検査の結果深達度□□□□□□大腸癌取扱い規約【第8版】←粘膜大腸(断面)←粘膜下層Tis(粘膜まで)T1(粘膜下層まで)T2(固有筋層まで)T3(漿膜下層まで)T4a(漿膜に露出)T4b(ほかの臓器に浸潤)←固有筋層←漿膜下層←漿膜リンパ節リンパ節転移□ なし□ あり ➡個(□N1 □N2 □N3)以上の結果を総合するとあなたの大腸がんの病理学的進行度(ステージ)はほかの臓器への転移0□ 術前の検査では認めていません□ ほかの臓器への転移が疑われます➡(臓器)ⅠⅡⅢaⅢbⅣと診断されます。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.3【参考】大腸がんの進行度(ステージ)ステージ0粘膜・がんが粘膜の中にとどまっているステージⅠ・がんが粘膜下層あるいは固有筋層までにとどまっている・リンパ節転移がないステージⅡ粘膜下層固有筋層・がんが固有筋層を超えている・リンパ節転移がない漿膜下層漿膜・リンパ節転移があるステージⅢステージⅣⅢa:リンパ節転移が1~3個Ⅲb:リンパ節転移が4個以上・ほかの臓器への転移や腹膜播種がある肝転移Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.リンパ節転移肺転移早期がん進行がん腹膜播種4今後の治療について☑:あなたに当てはまるもの① 大腸がんの「再発」とは?② 大腸がん手術後の定期検査③ 術後補助化学療法④ 一時的人工肛門の閉鎖⑤その他のがんの検診についてCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.5①大腸がんの「再発」とは?a)大腸がんの「再発」とは?・手術でがんをすべて取りきったと思っても一定の割合で再発が起こります。大腸から離れた場所に❝飛び火❞した目に見えない大きさのがん徐々に増えてきて画像に写る大きさのしこりになったもの1cmくらい手術前手術後Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.再発6①大腸がんの「再発」とは?b)大腸がんの再発率・手術のときのステージが進んでいるほど再発する確率(再発率)は高くなります。(%)5030.8%43.240再発率302010013.3%3.7%2.712.124.3結腸がん直腸がん16.75.7ステージⅠステージⅡステージⅢ大腸癌研究会・プロジェクト研究 1991~1996年症例大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版. 大腸癌研究会編(金原出版)より改変Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.7【参考】大腸がんの5年生存率(%)10094.091.68084.877.760.0604018.8200ステージ0ステージⅠステージⅡ ステージⅢa ステージⅢb ステージⅣ大腸癌研究会・大腸癌全国登録 2000~2004年症例大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版. 大腸癌研究会編(金原出版)より改変Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.8①大腸がんの「再発」とは?c)大腸がんの主な再発形式・大腸がんの再発には、以下のようなものがあります。遠隔再発ほかの臓器に再発・肝再発腹膜再発吻合部再発(腹膜播種)お腹の中(腹腔内)に種をまいたように散らばって再発腸をつなぎ合わせた部分に再発局所再発・肺再発もともとがんがあった周囲に再発・その他:脳や骨などCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.9②大腸がん手術後の定期検査a)定期検査はなぜ必要?・大腸がんの再発は、手術で取りきれれば治る可能性があります。・再発が起こっていないかどうかをチェックするために手術後には定期的な検査が大切です。・手術のあと、5年間は定期検査を行います。大腸がんの再発のうち、96%が手術後5年以内に起こります。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.10②大腸がん手術後の定期検査b)定期検査のスケジュール(例)・以下のようなスケジュールに従って定期検査を行います。※ステージや患者さんのからだの状態によって多少異なります。1年2年問診・診察3ヵ月ごと直腸指診【直腸がん】3ヵ月ごと4年5年6ヵ月ごと腫瘍マーカー3年胸部・腹部CT6ヵ月ごと6ヵ月ごと骨盤CT【直腸がん】6ヵ月ごと6ヵ月ごと大腸内視鏡検査1~2年ごと大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版. 大腸癌研究会編(金原出版)より改変Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.11③術後補助化学療法a)術後補助化学療法とは?・からだの中に残っているかもしれない見えないがん細胞を攻撃し、再発を防ぐ あるいは 再発を遅らせることを目的として、手術のあとに行う抗がん剤治療のことを「術後補助化学療法」といいます。【術後補助化学療法の対象となる患者さん】・ステージⅢの患者さん・ステージⅡのうち再発する危険性が高いと思われる患者さん・原則として術後1~2ヵ月を目安に開始し、6ヵ月行います。・通常は2~3週おきの外来通院で治療します。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.12③術後補助化学療法b)術後補助化学療法で使用されるレジメン・大腸がんの術後補助化学療法で使用されるレジメンには、以下のようなものがあります。※レジメンとは、使用する薬剤とその組み合わせ、投与する量やスケジュールなど治療の「レシピ」のようなものです。レジメン剤型投与方法投与スケジュール・5-FU+LV療法注射薬2時間かけて点滴週1回×6回その後2週間休む・UFT+LV療法飲み薬内服(1日3回)4週間内服その後1週間休む・カペシタビン療法飲み薬内服(1日2回)2週間内服その後1週間休む・FOLFOX療法注射薬48時間かけて点滴2週間おき・CapeOX療法飲み薬+注射薬点滴は約2時間カペシタビンは内服(1日2回)点滴+2週間内服その後1週間休むCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.13④一時的人工肛門の閉鎖・今回の手術では、以下のような目的で、一時的な人工肛門を造設しました。□腸のつなぎ目を安静に保ち、縫合不全*を予防するため。□ 術後、縫合不全*が起こったため。*縫合不全:腸のつなぎ目がほころびること・腸のつなぎ目が落ち着いたころを見計らって人工肛門を閉鎖する(もとに戻す)手術を行います。・1~2時間程度の手術です。・今回の手術と同様、全身麻酔で行います。・おおよその入院期間:日程度・手術を行う時期の目安:年お腹の壁(腹壁)月ころCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.口側の腸管皮膚筋層腹膜肛門側の腸管14⑤その他のがんの検診についてa)ほかの臓器のがんの検診について・大腸がんにかかったあとも、ほかの臓器のがんにかかる可能性があります。※大腸がん手術後の患者さんがほかの臓器のがんにかかる頻度は1~5%と報告されています。・大腸がんの手術後には、再発のチェックを目的とした定期検査を行いますが、ほかの臓器のがんの検査としては必ずしも十分ではありません。・自治体などで実施されるがん検診は、積極的に受けましょう。大腸がん手術後の定期検査では見つかりにくいがん・胃がん・食道がん・乳がん・子宮がん・前立腺がん大腸がん手術後の定期検査で見つかりやすいがん・肺がんCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.・肝臓がん15⑤その他のがんの検診についてb)別の大腸がんができる可能性があります・大腸がんの手術を受けたあとも、大腸の別の部分に別の大腸がん/大腸ポリープができる可能性があります。※大腸がん手術後の患者さんで、大腸の別の部分に別の大腸がんができる頻度は1~3%と報告されています。これは一般集団に比べておよそ1.5倍高い頻度です。・5年間の「手術後の定期検査」が終了したあとも、2~3年に1回の大腸内視鏡検査を受けることが勧められます。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.16退院後の生活について① 退院後の食生活② 退院後の日常生活③ 退院後の仕事復帰④ 退院後のスポーツやレジャーCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.17①退院後の食生活・原則として食事の内容に制限はありません。・「ゆっくり、よく噛んで、腹八分目」を心がけましょう。【食事のとり方の基本】➊ 規則正しく食事をとりましょう。➋ ゆっくり、よくかんで食べましょう。➌ 一度にたくさん食べすぎないようにしましょう。➍ バランスよく、消化の良いものを中心にとりましょう。➎ 水分をしっかりとりましょう。➏ アルコールはほどほどに。➐ 腸閉塞のサインを知っておきましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.詳しくは24ページ18【参考】一度にたくさん食べ過ぎるとよくない食品・原則として食事の内容に制限はありません。・ただし、以下のような消化されにくい食べ物を一度にたくさん食べると、つまったり流れにくくなったりして、腸閉塞を起こすことがあります。詳しくは24ページ食べ方や調理法を工夫して適量を食べるようにしましょうこんぶ・わかめなどの海藻類ごぼう・れんこんなど繊維質の根菜類きのこ類こんにゃく・よく噛む・こまかく刻む(繊維と垂直に切る)・やわらかく煮込む などまめ類Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.19②退院後の日常生活・退院後2ヵ月ほどはあまり無理をしないほうがよいですが自分の体力の回復に合わせて、徐々に行動範囲を広げていきましょう。・適度に体を動かしましょう。きずおとなしくして創を大事にしていたからといって、きず創の治りやがんの治りがよいわけではありません。適度な運動は体力や筋力を回復させ、胃腸の活動を活発にします。血行をよくし、手術の傷跡の治りもよくします。・まずは散歩や、軽い家事などがよいでしょう。疲れ具合に応じて、出かける時間や距離、作業の量や程度を増やしたりしてみましょう。病院への通院もよいリハビリになります。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.20③退院後の仕事復帰・デスクワーク中心の仕事であれば、手術後1ヵ月程度・からだを動かす仕事であれば、手術後2~3ヵ月程度が復帰の目安です。・軽めの仕事から徐々に始めていくのがよいでしょう。いきなりもとの仕事の内容・量を目指すのではなく、時短勤務や、一時的に仕事の内容を変更すること(外回り→内勤)なども考慮しましょう。・ご家族や職場の人たちのサポートが心身ともに大切です。ひとりで悩まずに、周りの人たちと協力して、手術後の回復期を乗り切りましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.21④退院後のスポーツやレジャー・体を鍛え上げるような激しい運動をする必要はありません。自分の体力に合わせて、好きな運動を生活に取り入れて楽しみましょう。・お腹に力が入るような運動は、手術後2~3ヵ月は控えましょう。腹筋運動、重いものを持ち上げる、ゴルフ、相撲、柔道など。腹壁瘢痕ヘルニアの原因になることがあります。詳しくは25ページ2~3ヵ月は…・もちろん旅行だって楽しめます。とくに制限はありません。はじめのうちはあまり無理のない範囲で楽しみましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.22今後起こりうる手術の影響☑:あなたに当てはまるもの① 腸閉塞(イレウス)② 腹壁瘢痕ヘルニア③ 排便習慣の変化□【結腸がん】□【直腸がん】□【人工肛門】④ 排尿機能障害【直腸がん】⑤ 性機能障害【直腸がん】Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.23①腸閉塞(イレウス)・お腹の手術を受けた後は、癒着などにより、何らかのきっかけで便の通りが突然悪くなることがあります。これを「腸閉塞(イレウス)」といいます。便やガス(おなら)の出が悪くなり、お腹が張ったり、お腹が痛くなったり、嘔吐したりします。・軽い場合は食事をしばらくお休みすれば改善します。それで改善しない場合は、鼻から管を入れて腸の内容物を吸い出したり、手術が必要になる場合もあります。軽いお腹の張りを感じても、便やガス(おなら)が出ている場合は、食事の量を減らして様子を見てください。強い腹痛、嘔吐、排便・排ガスがない などがある場合は、飲食はせずに、ただちに病院に連絡してください。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.24②腹壁瘢痕ヘルニア・お腹の壁(腹筋)を縫い合わせた部分のうち、筋肉に弱いところがあると、そこから腸がお腹の外に脱出することがあります。これを「腹壁瘢痕ヘルニア」といいます。皮膚筋層腹膜小腸・大腸きずお腹に力を入れたり長時間立っていたりすると、お腹の創の付近がポコッと盛り上がり、押すとペコペコします。あおむけに寝たり、お腹の力を抜くことによって、簡単に腸がお腹の中に戻る場合は、日常生活に支障がなければ、治療を急ぐ必要はありません。脱出した腸がねじれて血行が悪くなったりした場合には、強い痛みが起こります。この場合はただちに手術が必要ですので、すぐに病院に連絡してください。・腹壁瘢痕ヘルニアを予防するため、✔ 手術後2~3ヵ月は、腹圧のかかる作業は避けてください。腹筋運動、重いものを持ち上げる、ゴルフ、相撲、柔道など。✔ 太りすぎないように気を付けてください。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.25③排便習慣の変化【結腸がん】・結腸がんの手術では、日常生活に支障が出るような変化はほとんどありません。手術後2~3ヵ月は、やや便通が落ち着かないと感じることもあると思います。時間の経過とともに、少しずつ落ち着いてくるのが一般的です。規則正しい食生活が大切です。とくに朝食はきちんととりましょう。散歩などの適度な運動も効果的です。・便秘・下痢が続くなど、便通にお悩みのときは主治医に相談してください。便を柔らかくする薬や下痢止めなど、いろいろなお薬で改善する場合があります。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.26③排便習慣の変化【直腸がん】・直腸がんの手術では、肛門が残っても、直腸の大部分が切り取られているので、十分に便をためられないために、以下のような排便習慣の変化が見られます。・便の回数が増える・残便感がある・便意をがまんできない・寝ている間やお腹に力を入れたときに便やガスが漏れてしまう※程度には個人差があります。・半年~1年くらいの経過で、徐々に改善してきます。・排便のパターンをつかんで、上手に付き合っていきましょう。対策・夜間や外出時の漏れが心配な場合は、生理用品や尿取りパットを使う。(トイレットペーパーはお尻が荒れてしまうので避ける!)・外出直前の食事は避ける。・駅や外出先では、あらかじめトイレの場所を確認しておく。・シャワートイレがおすすめ(携帯用のものもあります)。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.27③排便習慣の変化【人工肛門】・人工肛門に関する悩みやトラブルがあるときは、「ストーマ外来」で専門の医師・看護師に相談してみましょう。【ストーマ外来のリスト】「日本創傷・オストミー・失禁管理学会」ホームページhttp://www.etwoc.org/stoma.html・人工肛門・人工膀胱をもつ患者さんの会もあります。「日本オストミー協会」ホームページ http://www.joa-net.org/日常生活に役立つさまざまな情報が得られます。・永久人工肛門になった患者さんでは、「直腸膀胱機能障害」(通常は4級)として身体障害者手帳を取得できます。・装具の給付、税の控除などのサービスを受けることができます。・患者さん自身(またはご家族)による申請が必要です。・申請以降に助成が開始されるので、早めに申請の手続きを。・詳しくは、市区町村の福祉担当窓口や、病院の社会福祉士(ソーシャルワーカー)に問い合わせてみましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.28④排尿機能障害【直腸がん】・手術操作による一時的な自律神経のダメージや、がんを取りきるために一部の自律神経を切除したことにより排尿機能に障害が出ることがあります。尿道括約筋対策膀胱● 膀胱のセンサーの障害・尿意がよくわからない・膀胱に尿がたまりすぎてあふれる● 膀胱が収縮する機能の障害・膀胱の壁が固くなって伸びが悪い→あまり尿をためられずにあふれてしまう・押し出す力が弱く、“残尿”が増える・尿意がなくても、一定の時間ごとにトイレに行く。・男性の小用も座ってゆっくりと。・排尿時に下腹部を圧迫する(手で押す+前かがみ)。・症状に応じたお薬で症状が改善する場合があります。・自己導尿(自分で尿道に管を入れて尿を出す)Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.泌尿器科の医師に相談29⑤性機能障害【直腸がん】・手術操作による一時的な自律神経のダメージや、がんを取りきるために一部の自律神経を切除したことにより性機能に障害が出ることがあります。下大静脈腹部大動脈上下腹神経叢下腹神経骨盤神経叢(下下腹神経叢)骨盤内臓神経(勃起神経)直腸への神経枝膀胱への神経枝【男性の場合】・勃起障害・射精障害※女性の場合の性機能への影響はよくわかっていません。・手術の影響による症状です。恥ずかしがらずに主治医に相談しましょう。対策・お薬で改善する場合があります。・専門の医師への相談もできます。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.泌尿器科の医師に相談30

77.

エキスパートに聞く!「睡眠障害」Q&A Part1

レストレスレッグス症候群におけるドパミンアゴニストの使い方のコツは?本邦でレストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)治療薬として承認されているドパミンアゴニストには、プラミペキソール(商品名:ビ・シフロール)とロチゴチン(同:ニュープロパッチ)がある。プラミペキソールが錠剤(内服)で、ロチゴチンが経皮吸収剤(貼付)と投与方法が異なる点が使い分けの大きなポイントとなる。どちらの薬剤も、RLSならびにRLSに高頻度に伴う周期性四肢運動の両者に有効性が高い点は共通であるが、夜間の症状を主体とする場合には、プラミペキソールを夜に1回内服することで十分効果が得られる。日中症状を有する場合は、プラミペキソールを日中にも追加して服用する、あるいは血中濃度が一日を通じて一定となる貼付剤(ロチゴチン)が良い適応となる。副作用の観点からは、消化器症状は共通してみられる。ただし、ロチゴチンでは、初回の貼付時に消化器症状が出現しても、血中濃度が安定すると以後は消化器症状がみられなくなる場合もある。貼付剤に特有の問題としては、貼付部位の適応部位反応があり、貼付部位を毎日変える、適度な保湿をするなどの対策が必要である。両薬剤は代謝・排泄経路が異なっており、プラミペキソールが腎排泄性の薬剤であるのに対し、ロチゴチンは肝臓で代謝される。腎不全患者ではRLSは高頻度にみられ、日中症状もしばしば伴うが、肝臓で代謝されるロチゴチンは、腎不全患者においても血中濃度が健常者とほぼ同様に推移することから、安全に使用できると考えられる。レストレスレッグス症候群の原因として、鉄不足以外にどういったものがありますか?レストレスレッグス症候群(RLS)は、特発性と二次性に大別される。RLSはあらゆる年齢層でみられるが、中年期以降のRLSでは二次性RLSの可能性が高まる。二次性RLSの原因疾患としては、鉄欠乏性貧血、胃切除後のほかに、慢性腎不全、妊娠、神経疾患(パーキンソン病、末梢神経障害、脊髄疾患等)、リウマチ性疾患などがあげられる。薬剤性RLSの原因としては、ドパミンに拮抗する薬剤(抗精神病薬、メトクロプラミド)、抗うつ薬(選択的セロトニン再取込み阻害薬)などがあり、アルコール、カフェイン、ニコチンもRLSの増悪因子である。慢性腎不全、とくに透析患者においてはRLSは高頻度で、国内外の報告では約2~4割にRLSがみられ、周期性四肢運動障害の合併も多い。妊娠中のRLSは、妊娠後期に増悪する傾向があり、出産前後に消失もしくは改善することが多い。妊娠を繰り返すごとに症状が増悪するケースもある。神経疾患に伴うRLSでは、下肢の異常感覚が神経疾患に伴うものか、神経疾患による二次性RLSによるものかの判断が時に困難であり、両者が併存する場合もある。こうした症例では、RLS治療薬の効果が必ずしも十分得られない。不眠症は薬物療法で改善する症例が少ないように感じるのですが、いかがでしょうか?プライマリ・ケアにおける不眠症治療は、(非)ベンゾジアゼピン系薬剤を中心とする薬物療法に偏りがちであるが、不眠の背景にある睡眠習慣や睡眠衛生の問題、不眠を呈する睡眠障害が見過ごされているケースも多い。不眠≠不眠症であり、不眠の背景要因の把握がまず不可欠といえる。たとえば、不眠があり夜眠れないからと日中に2時間以上も昼寝をしていれば、日中の長時間の昼寝が夜の入眠を妨げ、不眠の解消を阻害してしまう。高齢者では夜間の睡眠時間は減少する傾向となるが、9時間以上も寝床で過ごすことで、夜中に何度も目が覚める、熟眠感が得られないといった訴えにつながっている場合もあり、睡眠習慣の見直しが先決である。また、睡眠時無呼吸症候群では夜間の覚醒や熟眠障害を生じうるが、本人は多くの場合いびきや無呼吸を自覚しておらず、原因をそのままに睡眠薬を処方されても不眠は解消しない。薬物治療で改善がみられない多くの症例では、このような背景が見過ごされており、うつ病等の精神疾患による不眠の可能性も含めて、睡眠障害、睡眠衛生の問題にも留意する必要がある。不眠症治療薬についても、現状では薬剤の使い分けが必ずしも十分なされていない。たとえば、体内時計の乱れが不眠の背景にある場合には、睡眠・覚醒リズムの調整を図りつつ、体内時計機構に作用する薬剤を選択することが有用である。脳の覚醒システムであるオレキシンをターゲットとした新たな不眠症治療薬も現在承認申請中であり、治療の選択肢も増えつつある。高血圧や糖尿病などでは薬剤のタイプによる使い分けが一般的に行われており、不眠症治療においても病状に応じた薬剤の選択が行われるようになることが期待される。外来で睡眠時無呼吸症候群を疑うチェックポイントなどありますか?睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome : SAS)は、睡眠中の無呼吸・低呼吸といった呼吸イベントにより、睡眠の質的低下、低酸素状態を生じる疾患である。心疾患および循環疾患リスクを高めることが知られており、生活習慣病のマネジメントのうえでも注目すべき疾患といえる。しかし、患者の多くはいびきや無呼吸を症状として自覚しておらず、多くは周囲がこれらの症状に気づくことで受診につながっている。SASが注目されるようになったきっかけの一つは、新幹線運転手の居眠り事故である。これにより、SASと眠気の関連がクローズアップされたが、眠気を自覚していないSAS患者も少なくないことから、眠気の有無は必ずしもSASを疑う(あるいは否定する)ポイントとはなりえない。SASを疑ううえでは、いびきや無呼吸に気づいている可能性が高いベッドパートナーへの問診は非常に有用である。本人のみが受診している場合には、周囲からそのような指摘があるかどうかを尋ねるとよい。いびきによる覚醒、窒息感を伴う覚醒を本人が自覚している場合もある。無呼吸を指摘されたことがなくても、習慣的な大きないびきの指摘があれば、SASを疑い精査することが望ましい。本人が自覚しうるその他の症状としては、夜間頻回の(トイレ)覚醒、熟眠感の欠如、起床困難、起床時の頭痛、日中の眠気、集中力の低下などがあげられる。いびきの指摘に加えてこうした自覚症状を伴っていれば、SASを疑うポイントとなりうる。理学的所見も重要である。SASのリスクとして肥満はよく知られているが、扁桃腺肥大、顎顔面形態(小顎や下顎後退)も必ず確認する。とくにアジア人において非肥満のSASも多いことに留意する。逆に、不眠や夜間の異常行動といった何らかの睡眠の訴えがある場合には、その背景にSASが存在する可能性を常に考慮する必要があるともいえる。必ずしも自覚症状が明らかではない患者も多いこと、終夜パルスオキシメトリ等のスクリーニング検査が比較的安価に施行できることを考慮すれば、SASが多少なりとも疑わしい場合には積極的にスクリーニングすることが望ましい。※エキスパートに聞く!「睡眠障害」Q&A Part2はこちら

78.

抗精神病薬による高プロラクチン血症に関するレビュー

 フランス・Etablissement Public De Sante Mentale(EPSM)のI. Besnard氏らは、抗精神病薬の有害事象である高プロラクチン血症に着目し、文献から得られた知見を基にレビューを行った。プロラクチンを増加させる抗精神病薬とプロラクチン増加を起こしにくい抗精神病薬があること、高プロラクチン血症は男性に比べ女性でより高頻度にみられ、性腺機能不全による症状がみられること、必要に応じて抗精神病薬の減量または変更を行う必要性などを報告した。Encephale誌オンライン版2013年8月5日号の掲載報告。 高プロラクチン血症は、抗精神病薬による治療を受けた患者にしばしば認められるが、なおざりにされている有害事象である。Besnard氏らは本レビューにおいて、抗精神病薬による高プロラクチン血症の病因メカニズム、男女の臨床的徴候、および管理方法について概説した。高プロラクチン血症の原因にいずれの抗精神病薬もなりうる 文献から得られた高プロラクチン血症の主な知見として、以下を報告している。・プロラクチンは、下垂体前葉のプロラクチン産生細胞から分泌されるホルモンで、その産生・分泌はペプチド、ステロイドおよび神経伝達物質により制御されている。・プロラクチン産生・分泌の阻害に関与する主な物質はドパミンで、プロラクチン産生細胞膜上のドパミンD2受容体に結合して作用を発揮する。・抗精神病薬はドパミンD2受容体をブロックし、ドパミンのプロラクチン分泌阻害活性を消失させる。すべての抗精神病薬がD2受容体をブロックするため、いずれの抗精神病薬も高プロラクチン血症を惹起しうる。ただし、D2受容体からの解離速度が速い抗精神病薬は、血漿中プロラクチンレベルの増加が少ない。・また、高プロラクチン血症が起こるもう一つの説明として、抗精神病薬は血液脳関門を通過できることも挙げられる。抗精神病薬の代謝物の役割もまた考慮されるべきである。・これらの理由により、プロラクチンを増加させる抗精神病薬(従来の神経遮断薬であるアミスルプリド、リスペリドン)とプロラクチン増加を起こしにくい抗精神病薬(クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン)がある。・英国の研究では、重篤な精神疾患に対し抗精神病薬が投与された男性の18%および女性の47%でプロラクチンレベルが正常範囲を超えていることが示された。・高プロラクチン血症は男性に比べ女性でより高頻度にみられる。高プロラクチン血症は時に無症候性であるが、プロラクチンレベルが高いほど臨床的徴候がより多く認められる。いくつかの症状は、プロラクチンによる性腺機能不全に起因するもので、視床下部下垂体機能を障害する。その他は、標的組織に対する直接的な影響による。・結果として、患者は性機能障害、 不妊、無月経、女性化乳房、乳汁漏出などに悩まされる。・これら症状は一般的であるものの、患者が自発的に述べることはなく、臨床医はそれらの発現状況を把握できていないことがデータで示唆されている。・長期的に、性腺機能不全症は男女において早期からの骨量減少を引き起こす。・Klibanski 氏らは、この骨減少は無月経と関連する高プロラクチン血症を呈する女性においてのみ有意であることを示した。これは、プロラクチンがこうした臨床的特徴に直接的に寄与していないことを示唆している。それでもやはり、プロラクチンは乳がんの発症に関連しているようである。しかし、前立腺がんにおける役割は不明である。高プロラクチン血症の原因が抗精神病薬なら減量または変更 また、高プロラクチン血症について得られた知見を受け、次のように考察している。 本レビューから、抗精神病薬による治療開始前にはcheck-up(検査)が重要といえる。第一に、ベースラインのプロラクチンレベルを測定すべきである。また、抗精神病薬投与歴、高プロラクチン血症を示唆する有害事象も評価すべきである。そして問診により抗精神病薬に対する禁忌の有無を最終的に確認すべきである。 高プロラクチン血症の臨床ガイダンスの批評レビューを行った精神医学、内科学、毒性学、薬学の国際的な専門グループにより、抗精神病薬による治療中のモニタリングについて研究が行われた。専門家らは、性欲減退、月経不順、乳汁漏出などの性機能障害の有無を確認することが重要だとしている。用量が安定してから3ヵ月後、または高プロラクチン血症の何らかの徴候が現れた場合、プロラクチンレベルをコントロールすべきである。抗精神病薬を処方された患者においてプロラクチンレベルが正常範囲を超えていることが確認された場合、高プロラクチン血症を惹起しうるその他の原因を除外する必要がある。抗精神病薬がその真の原因である場合には、プロラクチンレベルおよび患者の状況に応じて、抗精神病薬の減量または変更などを行うべきである。妊娠を避ける、あるいは骨量減少および骨粗鬆症を防ぐため、経口避妊薬の追加も可能である。最終的に専門家らは、精神疾患を悪化させうるという理由から、きわめて例外的な状況における抗精神病薬による高プロラクチン血症に対し、ドパミンアゴニストの使用は控えることを勧告した。

79.

「脳卒中再発予防のためには収縮期血圧130mmHg未満」を支持する結果(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(105)より-

脳卒中既往歴のある症例の降圧目標値に関して、欧州のガイドラインは130/80mmHgとしている。これは、脳卒中再発予防におけるACE阻害薬ペリンドプリルの有用性を検討したPROGRESS試験の結果を参考にしている。一方、わが国のガイドライン2009年版では140/90mmHgとしているが、これに関しては反論も多い。脳卒中初発および再発の、最大のリスク因子は高血圧であることに議論の余地はなく、これまでの介入試験でも”The lower the better”を証明してきた。 本試験SPS3(Secondary Prevention of Small Subcortical Stroke)trialは、NIHの公的支援によっておこなわれた臨床試験である。約3,000人のラクナ梗塞患者を収縮期血圧130~149mmHg目標群と130mmHg未満を目標とする群にランダマイズして、平均3.7年間追跡された。全脳卒中、致死的脳卒中、心筋梗塞複合などにおいていずれも有意は差はみられなかったものの、厳格目標群の方が発症率が低い傾向が認められた。頭蓋内出血は厳格降圧群の方が有意に発症率が低いという結果だった。この結果は、従来の「脳卒中再発抑制のためには収縮期血圧130mmHg未満のより厳格な降圧が望ましい」というコンセンサスを支持する結果といえる。 本試験では、試験開始直後から両群間の血圧値に大きな差がみられ、その差が継続していることが大きな特徴である。3,000人規模の参加者にもかかわらず有意差がつかなかった最大の理由はやはり、イベント発症数が少なかったことによる。 医療現場では、再発予防のために抗血小板薬は必須となっており、また高脂血症があればスタチン薬を処方する時代になったため、脳卒中再発が発生しにくい状況にあることを反映しているともいえよう。

80.

新しい血糖コントロール目標値を発表! 第56回日本糖尿病学会年次集会を開催

5月16日より3日間、熊本市で開催された第56回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:荒木栄一氏/熊本大学大学院 生命科学研究部代謝内科学分野 教授)において、新しい血糖コントロールの目標値(以下「新目標値」と略す)が発表された。新目標値は、HbA1cに集約され、次の3段階とされる。HbA1c 8%未満→治療強化が困難な際の目標HbA1c 7%未満→合併症予防のための目標HbA1c 6%未満→血糖正常化を目指す際の目標図1 「血糖コントロール目標値」改訂図画像を拡大する図2 2型糖尿病治療の目標と指針画像を拡大する新しい評価分類の策定にあたっては、従来の5段階分類が複雑な目標設定であること、EBMの理念にそぐわない「不可」などの否定的な言葉が使われていること、「優」という呼称にはリスクを考慮せずにHbA1cを下げるべきとの誤解を生む恐れがあることなどを鑑み、学会内で検討が行われた。さらに、近年発表されたACCORD、ADVANCEなどの大規模臨床試験に基づき「低血糖を起こさない血糖管理」を考慮した内容も加味され、策定されたものである。その中には、新目標値を患者と医療者が共に目指す糖尿病治療の目標とすること、HbA1cの国際標準化との整合性、非専門医にも理解・活用しやすいようにできる限り簡素化することというコンセプトが込められている。新目標値は6月1日より運用開始となる。会長の荒木氏は「早期から治療を開始し、HbA1c値7%未満を目指してほしい」と期待を語った。DPP-4阻害薬投与時は、体重増加に注意「低血糖を起こさない血糖管理」といえば、DPP-4阻害薬がすでに欠かせない存在だ。本学会でも多くの使用経験が発表され、効果的な併用薬や症例像が明らかになった。「相性の良い併用薬」への関心も高い。シンポジウム14「インクレチン関連薬の長期展望」では、BG、α-GIとの併用がSU薬と比較して血糖改善効果が高いことなどが報告された。「レスポンダー/ノンレスポンダー」という観点では、シタグリプチンの2年間の追跡調査から血糖コントロール不良群で体重が増加していたことが明らかになった。DPP-4阻害薬の治療効果を得るには、体重増加を来さないことが重要であり、体重増加が認められた際には、速やかな食事指導が有効といえそうだ。DPP-4阻害薬+インスリンで、一定の治療効果同様に、DPP-4阻害薬とインスリンの併用に関する検討結果も発表され、一定の治療効果が報告された。強化インスリン療法、混合製剤2回注射、BOT(Basal Oral Therapy)のいずれのインスリンレジメンにおいても、DPP-4阻害薬であるシタグリプチンの上乗せによりHbA1c値低下効果やCPI改善効果が高まるとの報告も挙がった。ただし、DPP-4 阻害薬がどのインスリンレジメンと相性が良いかに関してはさらなる検討が必要とされた。インスリンからの切り替えカットオフ値は?また、インスリンからGLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)への切り替え試験の結果から、効果不十分な場合の主な原因として内因性インスリン分泌能低下が推測されることが明らかになった。同試験においてデルタC-ペプチド値 1.34ng/mLがカットオフ値として算出されており、今後も継続した検討が期待される。なお、会期中にGLP-1受容体作動薬のエキセナチド(同:バイエッタ)の週1回製剤「ビデュリオン」が発売となった。代表的な副作用である「嘔気・嘔吐」の発現率はバイエッタと比べて少ないとの報告も挙がっており、週1回投与によるアドヒアランス改善とともに臨床での活用が期待される。新薬も期待!SGLT2阻害薬、GPR40作動薬、GK活性化薬このほか、新規作用機序をもった薬剤も次々と登場予定だ。シンポジウム2「今後期待される新規糖尿病治療薬」においても複数の新薬が取り上げられた。原尿からのブドウ糖再吸収を減らし、ブドウ糖を尿から排泄させる、「SGLT2選択的阻害薬」は、国内申請中のイプラグリフロジン(アステラス製薬/寿製薬)、ルセオグリフロジン(大正富山)を筆頭に6品目が後期開発段階にある。その後に続く薬剤としてGPR40作動薬にも注目が集まる。G蛋白質共役型受容体(GPCR)の一つであるGPR40に作用し、グルコース濃度に依存してインスリン分泌を促す特性をもつ薬剤である。GPR40作動薬は低血糖の誘発リスクが低いインスリン分泌促進薬として期待されており、現在開発中の薬剤にTAK-875(武田)がある。そのほか、膵β細胞でのインスリン分泌能増強作用と肝での糖利用亢進作用を有するGK(グルコキナーゼ)活性化薬も研究が進んでいる。編集後記インクレチン関連薬の発売、ACCORDの結果などを経て、「低血糖を来さない糖尿病治療」の重要性は臨床現場でも一般化した。今回発表されたHbA1cの新目標値も、この考えに基づいている。すでに、血糖値はひたすら下げるものではなくなった。今後は、患者さん一人ひとりに合った治療目標を設定し、薬剤を効果的に使いながら血糖をコントロールしていく必要がある。会長の荒木氏は、「あなたとあなたの大切な人のために~Keep your A1c below 7%~」を合言葉に糖尿病の予防と治療の向上に取り組む、とする「熊本宣言2013」を発表した。われわれも、医療情報メディアの一端を担う者として、最新かつ適切な情報伝達を通じ、糖尿病治療の発展に貢献していくことをあらためて宣言したい。(ケアネット 佐藤 寿美/稲川 進)

検索結果 合計:83件 表示位置:61 - 80