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日本人高齢者のてんかん有病率は中年の約3倍、その原因は~久山町研究

 てんかんは小児期から老年期まで、すべての年齢層でみられる一般的な慢性神経疾患である。運転中にドライバーが発作を起こせば重大事故につながるリスクがあり、たびたび社会問題としても報じられている。米国・ロチェスターにおける研究では、てんかんの発生率が乳児と高齢者で高く、有病率が加齢と共に増加することが報告されているが、国内における人口ベースの研究はほとんどない。今回、京都府立医科大学の田中 章浩氏らが久山町研究で調べたところ、高齢者におけるてんかん有病率は中年の約3倍であり、症例の半数以上が高齢で最初の発作を経験していることがわかった。研究結果は、Epilepsia誌に掲載され、現在、神戸市で開催されている第53回日本てんかん学会でも報告された。 本研究は、久山町研究のサブスタディとして実施。2012年6月~13年11月の期間に、地域居住の40歳以上(4,679例)を対象に、心血管リスク因子とてんかん発作の経験の有無についての調査を実施し、このうち3,333例(居住者の71.2%)が登録された。 調査は対面のインタビュー形式で、てんかんの既往歴の有無および現在抗てんかん薬を服用しているか否かについて聞き取りが行われた。既往歴の定義は、過去5年以内に少なくとも1回の発作を起こし、神経科医の医師などによって診断された活動性てんかんのエピソードを有するか、抗てんかん薬を使用し、治療を受けていることとした。 調査の結果、23例がてんかんと診断され、有病率は1,000人あたり6.9症例(95%信頼区間[CI]:4.1~9.7)であった。この結果に有意な性差は認められなかった(p=0.23)。年齢層でみると、40~64歳の中年層(1,000人あたり3.6症例、95%CI:0.7~6.4)よりも、65歳以上の高齢層(1,000人あたり10.3症例、95%CI:5.4~15.1)で有意に高く、その差は約3倍の開きがあった(p=0.02)。てんかんの主な原因は脳血管疾患であった(n=11、てんかん症例の48%)。また、症例の半数以上が、65歳以上で初回エピソードを経験していることもわかった(n=13、同57%)。 著者らは、「今回の研究結果は、高齢者の脳血管疾患と関連して、てんかんの有病率が増加することを示唆している。将来的なてんかんリスクを軽減するためにも、脳血管疾患の予防が非常に重要である」と述べている。

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低リスク妊娠、第3期のルーチン超音波は有益か?/BMJ

 低リスク単胎妊娠において、妊娠第3期に超音波検査をルーチンに行うことは通常ケアと比較して、出産前の在胎不当過小(SGA)胎児の検出率を高めるが、重度有害周産期アウトカムの発生減少には結びつかないことが明らかにされた。オランダ・アムステルダム大学医療センターのJens Henrichs氏らが、1万3,046例の妊婦を対象に行った無作為化比較試験の結果で、著者は「妊娠第3期に超音波検査をルーチンに行うことを支持しない結果であった」とまとめている。BMJ誌2019年10月15日号掲載の報告。妊娠28~30週、34~36週に超音波検査を提供し通常ケアと比較 研究グループは2015年2月1日~2016年2月29日にかけて、オランダ国内の助産施設60ヵ所を通じて登録した、16歳以上の低リスク単胎妊娠の妊婦を対象に無作為化比較試験を行った。 施設では通常のケアとして、定期的な子宮底長測定と、臨床的に必要な超音波検査を行った。試験開始3、7、10ヵ月の各時点で、被験者の3分の1をコントロール群から介入群に割り付け、介入群に対しては、通常ケアに加え、妊娠28~30週、34~36週に2回のルーチン超音波検査を提供した。両群に対して同様の多専門的アプローチを行い、胎児発育の特定とケアを行った。 主要アウトカムは、複合重度有害周産期アウトカム(周産期死亡、Apgarスコア4未満、意識障害、仮死、てんかん発作、補助呼吸、敗血症、髄膜炎、気管支肺異形成症、脳室内出血、脳室周囲白質軟化症、壊死性腸炎と規定)だった。副次アウトカムは、母体の重篤な病的状態、自然分娩・出生だった。重度有害周産期アウトカム発生、介入群32%、コントロール群19% 試験には1万3,520例(平均妊娠22.8週)が登録され、解析には、オランダ全国周産期レジストリまたは病院記録のデータがある1万3,046例(介入群7,067例、コントロール群5,979例)が包含された。 SGA胎児の検出率は、コントロール群19%(78/407例)に対し、介入群は32%(179/556例)と有意に高率だった(p<0.001)。 一方で、主要アウトカム発生率は、介入群1.7%(118例)、コントロール群1.8%(106例)だった。交絡因子を補正後、両群には有意差は認められなかった(オッズ比[OR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.70~1.20)。 なお、介入群ではコントロール群に比べ、誘発分娩の発生率が高く(OR:1.16、95%CI:1.04~1.30)、陣痛促進の発生率は低かった(0.78、0.71~0.85)。母体のアウトカムとその他の産科学的介入について有意な差はなかった。

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スティーブンス・ジョンソン症候群〔SJS : Stevens-Johnson Syndrome〕、中毒性表皮壊死症〔TEN : Toxic Epidermal Necrolysis〕

1 疾患概要■ 概念・定義薬疹(薬剤性皮膚障害)は軽度の紅斑から重症型までさまざまであるが、とくにスティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome:SJS)型薬疹と中毒性表皮壊死症(Toxic epidermal necrolysis:TEN)型薬疹は重篤な経過をたどり、死に至ることもある。両疾患はウイルス感染症や細菌感染症に続発して生じることもあるが、原因の大半は薬剤であるため、本稿では両疾患をもっぱら重症型薬疹の病型として取り扱う。■ 疫学近年、薬剤による副作用がしばしばマスコミを賑わせているが、薬疹は目にみえる副作用であり、とくに重症型薬疹においては訴訟に及ぶこともまれではない。重症型薬疹の発生頻度は、人口100万人当たり、SJSが年間1~6人、TENが0.4~1.2人と推測されている。2009年8月~2012年1月までの2年半の間に製薬会社から厚生労働省に報告されたSJSおよびTENの副作用報告数は1,505例(全副作用報告数の1.8%)で、このうち一般用医薬品が被疑薬として報告されたのは95例であった。原因薬剤は多岐にわたり、上記期間にSJSやTENの被疑薬として報告があった医薬品は265成分にも及んでいる。カルバマゼピンなどの抗てんかん薬、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛消炎薬、セフェム系やニューキノロン系抗菌薬、アロプリノールなどの痛風治療薬、総合感冒薬、フェノバルビタールなどの抗不安薬による報告が多いが、それ以外の薬剤によることも多く、最近では一般用医薬品による報告が増加している。■ 病因薬疹は薬剤に対するアレルギー反応によって生じることが多く、I型(即時型)アレルギーとIV型(遅延型)アレルギーとに大別できる。I型アレルギーによる場合は、原因薬剤の投与後数分から2~3時間で蕁麻疹やアナフィラキシーを生じる。一方、大部分を占めるIV型アレルギーによる場合は、薬剤投与後半日から2~3日後に、湿疹様の皮疹が左右対側に生じることが多い。薬剤を初めて使用してから感作されるまでの期間は4日~2週間のことが多いが、場合によっては10年以上安全に使用していた薬剤でも、ある日突然薬疹を生じることがある。患者の多くは薬剤アレルギーの既往がなく突然発症するが、重症型薬疹の場合はウイルスなど感染症などが引き金になって発症することも多い。男女差はなく中高年に多いが、20~30代もまれではない。近年、免疫反応の異常が薬疹の重症化に関与していると考えられるようになった。すなわち、免疫やアレルギー反応は制御性T細胞とヘルパーT細胞とのバランスによって成り立っており、正常な場合は、1型ヘルパーT細胞による免疫反応を制御性T細胞が抑制している。通常の薬疹では(図1)、1型ヘルパーT細胞が薬剤によって感作されて薬剤特異的T細胞になり、同じ薬剤の再投与により活性化されると薬疹が発症する。画像を拡大するしばらく経つと制御性T細胞も増加・活性化するため、過剰な免疫反応が抑制され、薬疹は軽快・治癒する。ところが、重症型薬疹の場合(図2)は、ウイルス感染などにより制御性T細胞が抑制され続けているため、薬疹発症後も免疫活性化状態が続く。薬剤特異的T細胞がさらに増加・活性化しても、制御性T細胞が活性化しないため、薬剤を中止しても重症化し続ける。画像を拡大する細胞やサイトカインレベルからみた発症機序を示す(図3)。画像を拡大する医薬品と感染症によって過剰な免疫・アレルギー反応を生じ、活性化された細胞傷害性Tリンパ球(CD8 陽性T細胞)や単球、マクロファージが表皮細胞を傷害してネクロプトーシス(ネクローシスの形態をとる細胞死)を誘導し、表皮細胞のネクロプトーシスが拡大することによりSJSやTENに至る、と考えられている。■ 症状重症型薬疹に移行しやすい病型として、とくに注意が必要なのは多形滲出性紅斑で、蕁麻疹に似た標的(ターゲット)型の紅斑が全身に生じ、短時間では消退せず、重症例では皮膚粘膜移行部にびらんを生じ、SJSに移行する。SJSは、全身の皮膚に多形滲出性紅斑が多発し、口唇、眼結膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部や口腔内の粘膜にびらんを生じる。しばしば水疱や表皮剥離などの表皮の壊死性障害を来すが、一般に体表面積の10%を超えることはない。38℃以上の発熱や全身症状を伴うことが多く、死亡もまれではない。TENは最重症型の薬疹で、全身の皮膚に広範な紅斑と、体表面積の30%を超える水疱、表皮剥離、びらんなど表皮の重篤な壊死性障害を生じる。眼瞼結膜や角膜、口腔内、外陰部に粘膜疹を生じ、38℃以上の高熱や激しい全身症状を伴い、死亡率は30%以上に及ぶ。救命ができても全身の皮膚に色素沈着や視力障害を残し、失明に至ることもある。また、皮膚症状が軽快した後も、肝機能や呼吸器などに障害を残すことがある。なお、表皮剥離が体表面積の10%以上30%未満の場合、SJSからTENへの移行型としている。■ 予後SJS、TENともに、薬剤を中止しても適切な治療が行われなければ非可逆的に増悪し、ステロイド薬の全身投与にも反応し難いことがある。皮疹の経過は多形滲出性紅斑 → SJS → TENと増悪していく場合と、最初からSJSやTENを生じる場合とがある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)薬疹は皮疹の分布や性状によってさまざまな病型に分類されるが、重症型薬疹は一般に、(1)急激に発症し、急速に増悪、(2)全身の皮膚に新鮮な発疹や発赤が多発する、(3)結膜、口腔、外陰などの粘膜面や皮膚粘膜移行部に発赤やびらんを生じる、(4)高熱を来す、(5)全身倦怠や食欲不振を訴える、などの徴候がみられることが多い。皮膚のみならず、肝腎機能障害、汎血球・顆粒球減少、呼吸器障害などを併発することも多いため、血算、白血球分画、生化学、非特異的IgE、CRP、血沈、尿検査、胸部X線撮影を行う。また、ステロイド薬の全身投与前に糖尿病の有無を調べる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療の実際長年安全に使用していた薬剤でも、ある日突然重症型薬疹を生じることもあるため、基本的に全薬剤を中止する。どうしても中止できない場合は、治療上不可欠な薬剤以外はすべて中止するか、系統(化学構造式)のまったく異なる、患者が使用した経験のない薬剤に変更する。急速に増悪することが多いため、入院させて全身管理のもとで治療を行う。最強クラスの副腎皮質ステロイド薬(クロベタゾールプロピオン酸など)を外用し、副腎皮質ステロイド薬の全身投与(プレドニゾロン 30~60mg/日)を行う。治療効果が乏しければ、ステロイドパルス(メチルプレドニゾロン 1,000mg/日×3日)およびγグロブリン(献血グロベニン 5g/日×3日)の投与を早急に開始する。反応が得られなければ、さらに血漿交換や免疫抑制薬(シクロスポリン 5mg/kg/日)の投与も検討する。■ 原因薬剤の検索治癒した場合でも再発予防が非常に重要である。原因薬剤の検索は、皮疹の軽快後に再投与試験を行うのが最も確実であるが、非常にリスクが大きい。入院させて通常処方量の1/100程度のごく少量から投与し、漸増しながら経過をみるが、薬疹に対する十分な知識や経験がないと、施行は困難である。再投与試験に対する患者の了解が得られない場合や、安全面で不安が残る場合は、皮疹消退後にパッチテストを行う。パッチテストは非常に安全な検査で、しかも陽性的中率が高いが、感度は低く60%程度しか陽性反応が得られない。また、ステロイド薬の内服中は陽性反応が出にくくなる。In vitroの検査では「薬剤によるリンパ球刺激試験」(drug induced lymphocyte stimulation test:DLST)が有用である。患者血清中のリンパ球と原因薬剤を反応させ、リンパ球の幼若化反応を測定するが、感度・陽性的中率ともにパッチテストよりも低い。DLSTは薬疹の最盛期にも行えるが、発症から1ヵ月以上経つと陽性率が低下する。したがって、再投与試験を行えない場合はパッチテストとDLSTの両方を行い、両者の結果を照合することにより原因薬剤を検討する。現在、健康保険では3薬剤まで算定できる。4 今後の展望近年、重症型薬疹の発症を予測するバイオマーカーとして、ヒト白血球抗原(Human leukocyte antigen:HLA)(主要組織適合遺伝子複合体〔MHC〕)の遺伝子多型が注目されている。すなわち、HLAは全身のほとんどの細胞の表面にあり免疫を制御しているが、特定の薬剤による重症型薬疹(SJS、TEN)の発症にHLAが関与しており、とくに抗痙攣薬(カルバマゼピンなど)、高尿酸血症治療薬(アロプリノール)による重症型薬疹と関連したHLAが相次いで発見されている。さらに、同じ薬剤でも人種・民族により関与するHLAが異なることが明らかになってきた(表)。画像を拡大するたとえば、日本人のHLA-A*3101保有者がカルバマゼピンを使用すると、8人に1人が薬疹を発症するが、もしこれらのHLA保有者にカルバマゼピン以外の薬剤を使用すると、薬疹の発症頻度が1/3になると推測されている。また、台湾では、カルバマゼピンによる重症型薬疹患者のほぼ全員がHLA-B*1502を保有しており、保有者の発症率は非保有者の2,500倍も高いといわれている。そのため台湾では、カルバマゼピンとアロプリノールの初回投与前には、健康保険によるHLA検査が義務付けられている。このようにあらかじめ遺伝子多型が判明していれば、使用が予定されている薬剤で重症型薬疹を起こしやすいか否かが予測できることになる。5 主たる診療科複数の常勤医のいる基幹病院の皮膚科、救命救急センター※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報医薬品・医療機器等安全性情報 No.290(医療従事者向けのまとまった情報)医薬品・医療機器等安全性情報 No.293(医療従事者向けのまとまった情報)医薬品・医療機器等安全性情報 No.285(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報SJS患者会(SJSの患者とその家族の会)1)藤本和久. 日医大医会誌. 2006; 2:103-107.2)藤本和久. 第5節 粘膜症状を伴う重症型薬疹(スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症). In:安保公介ほか編.希少疾患/難病の診断・治療と製品開発.技術情報協会;2012:1176-1181.3)重症多形滲出性紅斑ガイドライン作成委員会. 日皮会誌. 2016;126:1637-1685.公開履歴初回2014年01月23日更新2019年10月21日

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日本人てんかん患者に対するレベチラセタムの有効性と安全性

 レベチラセタムは、焦点性てんかんおよびてんかん重積状態の急性期治療に使用される忍容性の高い抗てんかん薬であり、随伴症状を伴う患者において第1選択薬として使用される。しかし、日本人てんかん患者におけるレベチラセタムの有効性および安全性に、血中レベチラセタム濃度がどのような影響を及ぼすかはよくわかっていない。神戸医療センターの関本 裕美氏らは、日本人てんかん患者におけるレベチラセタムの有効性と安全性に対する血中濃度の影響について分析を行った。Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics誌オンライン版2019年8月10日号の報告。 本研究は、レベチラセタムで治療されたてんかん患者255例を対象に、レベチラセタム単独群と他の抗てんかん薬併用群における有効性および安全性を比較したレトロスペクティブコホート研究である。レベチラセタムと併用した抗てんかん薬の血中濃度、臨床検査値、副作用などの臨床パラメータを電子カルテより抽出し、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・レベチラセタムと他の抗てんかん薬併用は、シトクロムP450活性に影響を及ぼす薬剤であったとしても、血中レベチラセタム濃度に影響を及ぼさなかった。・レベチラセタムは、併用された抗てんかん薬の血中濃度に有意な影響を及ぼすことはなかった。・血中レベチラセタム濃度は、高齢および腎機能障害患者において有意な増加が認められたが、副作用の発現率は上昇しなかった。 著者らは「日本人てんかん患者に対し、レベチラセタムは、他の抗てんかん薬と併用して使用する場合でも、血中濃度モニタリングを用いた用量調整を行うことなく、効果的かつ安全に使用できる」としている。

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転移性前立腺がん患者に対してのエンザルタミドは、ファーストラインとしても有効(解説:宮嶋哲氏)-1088

 本研究は、アンドロゲン依存性転移性前立腺がん患者を対象にアンドロゲン除去療法(ADT)とともに、エンザルタミド追加群と標準治療群(通常の抗アンドロゲン薬追加)の2群において3年全生存率(OS)、無増悪生存期間(PFS)ならびに有害事象を評価項目としたオープンラベルランダム化比較第3相試験(ENZAMET trial)である。 対象となった1,125症例の平均観察期間は34ヵ月、患者年齢中央値は両群ともに69歳であった。症例の約60%がGleason score 8~10であり、平均臓器転移数は3ヵ所で、15~17%の患者でドセタキセル早期導入がなされていた。3年OSはエンザルタミド追加群80%に対し、標準治療群72%でエンザルタミドは有意に死亡リスクを低下させ、3年PFSでもエンザルタミド追加群67%に対し標準治療群37%で、エンザルタミドは有意に再発を低下させた。有害事象により治療困難となった症例はエンザルタミド追加群で多く(33症例)、とくに倦怠感とてんかん発作が著明であった。 去勢抵抗性前立腺がん患者においてアンドロゲン受容体阻害薬であるエンザルタミドはOSを延長することが知られ、エンザルタミドはセカンドラインという位置付けだが、内分泌未治療転移性前立腺がん患者においてもADTにエンザルタミドを併用することでOSとPFSに寄与することが示された。以上より、内分泌未治療転移性前立腺がんに対するファーストラインとしてエンザルタミドの有効性が示唆された。

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てんかん患者の日中の眠気と交通事故リスク

 愛知医科大学の松岡 絵美氏らは、てんかん患者における日中の過度な眠気や睡眠障害について、とくに抗てんかん薬に焦点を当て検討を行い、てんかん患者における睡眠関連問題が交通事故リスクと相関するかについて調査を行った。Seizure誌2019年7月号の報告。 てんかん患者325例でエプワース眠気尺度(ESS)を、322例でピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて評価した。運転免許証を有するてんかん患者239例が、交通事故に関連する質問に回答した。てんかん患者の交通事故と日中の眠気や睡眠障害は関連が認められなかった てんかん患者の眠気と交通事故に関する調査の主な結果は以下のとおり。・焦点性てんかんにおいて、意識障害、年齢、ラコサミドの投与は、それぞれESSスコアに有意な影響を及ぼすことが示唆された。・バルプロ酸およびラコサミドの投与は、抗てんかん薬以外の睡眠改善薬と同様に、PSQIによる睡眠障害に有意な影響を及ぼすことが示唆された。・全体の交通事故に対し、年齢とLEVは交通事故発生に影響を及ぼした。・てんかん発作に関連する交通事故に対し、有意な影響を及ぼす唯一の因子は、睡眠改善薬であった。・てんかん発作と関連しない交通事故に対し、有意な影響を及ぼす因子は見当たらなかった。・これら3つの交通事故とESSスコアまたはPSQIスコアとの間に相関は認められなかった。 著者らは「てんかん患者の交通事故と日中の眠気や睡眠障害は関連が認められなかった。さらに、抗てんかん薬は、日中の眠気や交通事故リスクの増加に影響を及ぼしていなかった」としている。

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高齢者のてんかん治療とADLとの関連

 高齢者におけるてんかん発作の抑制は、比較的容易であると広く考えられている。これは、高齢者の生活様式がてんかんの治療結果に影響を及ぼしている可能性があるとも考えられる。聖隷浜松病院てんかんセンターの藤本 礼尚氏らは、高齢てんかん患者のADLを調査し、てんかんの治療結果との比較を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2019年5月6日号の報告。 てんかんセンターに紹介された65歳以上の患者177例中、84例がてんかんと診断された。その後ADLレベルに応じて3群(ADL 1群:ADLに支障なし、ADL 2群:一部の手段的日常生活動作のみ支障あり、ADL 3群:一部の基本的なADLに支障あり)に分類し、ADLと治療アウトカムについて検討を行った。てんかん症候群および抗てんかん薬の使用も評価した。 主な結果は以下のとおり。・発作から完全に解放された患者45例(53.6%)、発作が80%以上減少した患者23例(27.4%)、発作が50%以上減少した患者5例(6%)、発作の減少が50%未満であった患者11例(13.1%)であった。・発作から完全に解放された患者の割合は、ADL 1群で81.4%(35例)、ADL 2群で28.0%(7例)、ADL 3群で19.0%(3例)であった。・3群間に明らかな有意差が認められた(F=6.145、p=0.003)。 著者らは「本結果を踏まえ、てんかん治療を行う際には、ADLを考慮するべきである」としている。

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てんかん薬、皮膚がんリスクと関連?

 抗てんかん薬と皮膚がんリスクとの関連を検討した、デンマーク・南デンマーク大学のKasper Bruun Kristensen氏らの報告によると、大半の抗てんかん薬では、皮膚がんとの関連は認められなかったが、カルバマゼピンとラモトリギンで有棘細胞がん(SCC)との関連が認められたという。抗てんかん薬には光感作性のものがあるが、これまで、それらが皮膚がんリスクを増大するかは不明であった。なお、本検討では皮膚がんの重要なリスク因子に関するデータ(日光曝露など)が入手できず、結果は限定的であった。著者は、「所見が再現性のあるものか、また、さらにほかの設定で特性付けられるかを調べる必要があり、直接的な臨床的意味のあるものではない」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2019年5月28日号掲載の報告。 研究グループは、一般的な抗てんかん薬と基底細胞がん(BCC)、SCC、および悪性黒色腫(MM)との関連を調べる目的で、デンマークにおいて、2004~15年に皮膚がんと診断された患者と非疾患対照群を1対10に割り付けたコホート内症例対照研究を行った。 皮膚がん発症について、抗てんかん薬累積使用が多い群(1日量500以上と定義)と非使用群を比較し、オッズ比(OR)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・大半の抗てんかん薬は、皮膚がんと関連していなかった。・SCCとの関連は、カルバマゼピン使用(OR:1.88、95%信頼区間[CI]:1.42~2.49)、およびラモトリギン使用(OR:1.57、95%CI:1.12~2.22)で認められた。カルバマゼピンについては、用量依存のエビデンスが認められた。・ただし、推定される絶対リスクは低く、たとえばSCCを1人が発症するには、カルバマゼピンで6,335人年の高累積曝露が必要であった。

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てんかんや統合失調症患者の早期死亡率~コホート研究

 デンマーク・オーフス大学のKatrine M. Andersen氏らは、てんかんおよび統合失調症患者の死亡率を、絶対的および相対的な尺度によって決定するための検討を行った。Epilepsia誌オンライン版2019年5月11日号の報告。 本研究は、1960~87年にデンマークで生まれ、25歳の誕生日時点でデンマークに居住していた住民を対象とした集団ベース全国規模コホート研究である。25歳以前にてんかんおよび統合失調症と診断された患者を特定し、死亡または移住について2012年までフォローアップを行った。主要アウトカムは、全死亡率とした。分析には、Cox回帰を用いた。てんかんと統合失調症の合併患者の死亡率は12.8倍 てんかんおよび統合失調症患者の死亡率について主な結果は以下のとおり。・2,416万7,573人年(中央値:15年)フォローアップを行った。・死亡率は、てんかんおよび統合失調症でなかった住民と比較し、てんかん患者で4.4倍(95%信頼区間[CI]:4.1~4.7)、統合失調症患者で6.6倍(95%CI:6.1~7.1)、てんかんと統合失調症の合併の患者で12.8倍(95%CI:9.1~18.1)であった。・50歳時点での推定累積死亡率は、てんかんおよび統合失調症でなかった住民で3.1%(95%CI:3.0~3.1)、てんかん患者で10.7%(95%CI:9.7~11.8)、統合失調症患者で17.4%(95%CI:16.0~18.8)、てんかんと統合失調症合併の患者で27.2%(95%CI:15.7~40.1)であった。 著者らは「てんかんおよび統合失調症の患者は、死亡率が非常に高い。とくに、両疾患を合併している患者では、25~50歳の間に4人に1人が死亡しており、臨床的に注意が必要である」としている。

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焦点性てんかん重積状態に対する薬理学的治療のレビュー

 てんかん重積状態(SE)は、罹患率や死亡率が高く、神経学的に急を要する。SEのタイプは、予後因子の1つであるといわれている。スペイン・Hospital Universitario Severo OchoaのN. Huertas Gonzalez氏らは、SE治療に関連するさまざまな学会や専門家グループの最新レコメンデーションおよび最新研究を分析し、焦点性SEのマネジメントに関する文献を評価した。Neurologia誌オンライン版2019年5月7日号の報告。 2008年8月~2018年8月に公表された成人の焦点性SEおよび他のタイプの薬理学的治療に関する研究をPubMedより検索した。 主な結果は以下のとおり。・SEの治療に関連するレビュー、治療ガイドライン、メタ解析、臨床試験、ケースレポートより、29件の出版物を特定した。・焦点性SEと全般性SEについて説明した報告は、3件だけであった。4件は焦点性SEのみに焦点が当てられており、7件はけいれん性と非けいれん性を分類し、焦点発作の有無を記録していた。・焦点性SEに対する推奨治療は、ステージI、IIの全般性SEに対する治療と変わらなかった。【静脈内投与可能な場合】ロラゼパムまたはジアゼパムの静脈内投与【静脈内投与不可能な場合】ミダゾラム筋肉内投与【発作が継続する場合】フェニトイン、バルプロ酸、レベチラセタム、ラコサミドの静脈内投与・難治性焦点性SE患者では、麻酔薬の使用をできるだけ遅らせるべきである。 著者らは「入手可能なエビデンスでは、焦点性SEに対する薬理学的治療は、全般性SEと異なるべきであることを示唆するには不十分である。より多くの患者を対象とした、さらなる研究が求められる」としている。

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抗精神病薬治療患者における脳波の変化~システマティックレビュー

 オーストラリア・モナッシュメディカルセンターのAnvesh Jackson氏らは、さまざまな抗精神病薬に関連した脳波(EEG)の変化を特徴付けるため、システマティックレビューを行った。Epilepsy & Behavior誌オンライン版2019年4月15日号の報告。 Medline、PsycINFO、PubMedを用いてシステマティックに検索を行い、PRISMAガイドラインを順守した。抗精神病薬治療の有無による比較を含む記述的なEEG結果を報告した主な研究論文(てんかん患者を除く)について分析を行った。アウトカムは、てんかん性放電の有無またはEEG低下とした。可能な限り、同様の介入および方法を用いた研究からプールしたデータの分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・14論文、665例の患者についてレビューを行った。・プールされたデータを分析したところ、クロザピンにおいて、EEG低下(オッズ比:16.9、95%信頼区間[CI]:5.4~53.2)およびてんかん性放電(オッズ比:6.2、95%CI:3.4~11.3)が最も一般的に認められた。・1つの研究において、フェノチアジン系抗精神病薬によるてんかん性放電の有意な増加が報告されたが、各薬剤の影響については分析されていなかった。 著者らは「本レビューでは、抗精神病薬の中でクロザピンが、最も頻繁にEEG低下およびてんかん性放電を誘発することが示唆された。他の抗精神病薬および脳波の変化に影響を及ぼす投与量、血中濃度、用量調整、治療期間を含む共変量に関するデータは限られていた」としている。

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BZP系薬剤抵抗性の小児けいれんてんかん重積、2次治療は?/Lancet

 ベンゾジアゼピン系薬剤抵抗性のけいれん性てんかん重積状態の小児における第2選択薬について、レベチラセタムはフェニトインに対し優越性は示されなかった。ニュージーランド・Starship Children's HospitalのStuart R. Dalziel氏らによる233例を対象とした非盲検多施設共同無作為化比較試験「ConSEPT」の結果で、Lancet誌オンライン版2019年4月17日号で発表した。本症の小児における第2選択薬は、フェニトインが現行では標準薬とされているが、効果があるのは60%に過ぎず、副作用が多く認められるという。レベチラセタムは新しい抗けいれん薬で、急速投与が可能であり、潜在的により有効であること、副作用プロファイルへの許容もより大きいことが示唆されている。レベチラセタムvs.フェニトイン、てんかん発作臨床的消失率を比較 ConSEPTは、レベチラセタムまたはフェニトインのいずれが、ベンゾジアゼピン系薬剤抵抗性のけいれん性てんかん重積状態の小児における第2選択薬として優れているかを明らかにすることを目的とした試験。2015年3月19日~2017年11月29日にかけて、オーストラリアとニュージーランドの13ヵ所の救急救命部門(ER)を通じて、けいれん性てんかん重積状態で、ベンゾジアゼピン系薬による1次治療で効果が得られなかった、生後3ヵ月~16歳の患者を対象に行われた。 研究グループは被験者を5歳以下と5歳超に層別化し、無作為に2群に分け、一方にはフェニトイン(20mg/kg、20分で静脈または骨髄内輸液)を、もう一方にはレベチラセタム(40mg/kg、5分で静脈または骨髄内輸液)を投与した。 主要アウトカムは、試験薬投与終了5分後のてんかん発作の臨床的消失で、intention-to-treat解析で評価した。投与終了5分後のてんかん発作の臨床的消失率、50~60%で同等 試験期間中に639例のけいれん性てんかん重積状態の小児がERを受診していた。そのうち127例は見逃され、278例は適格基準を満たしていなかった。また、1例は保護者の同意を得られず、ITT集団には残る233例(フェニトイン群114例、レベチラセタム群119例)が含まれた。 試験薬投与終了5分後にてんかん発作の臨床的消失が認められたのは、フェニトイン群60%(68例)、レベチラセタム群50%(60例)であった(リスク差:-9.2%、95%信頼区間[CI]:-21.9~3.5、p=0.16)。 フェニトイン群の1例が27日時点で出血性脳炎のため死亡したが、試験薬との関連はないと判断された。そのほかの重篤な有害事象は認められなかった。

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添付文書改訂:スーグラ、フォシーガ/ゾフルーザ、タミフル/セロクエル、ビプレッソ、タケキャブほか【下平博士のDIノート】第24回

スーグラ錠25mg/50mg、フォシーガ錠5mg/10mg画像を拡大する<用法・用量>【イプラグリフロジン錠】1型糖尿病:インスリン製剤との併用において、通常、成人にはイプラグリフロジンとして50mgを1日1回朝食前または朝食後に経口投与します。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら100mgを1日1回まで増量可能です。【ダパグリフロジン錠】1型糖尿病:インスリン製剤との併用において、通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与します。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mgを1日1回まで増量可能です。<使用上の注意>1.本剤はインスリン製剤の代替薬ではありません。インスリン製剤の投与を中止すると急激な高血糖やケトアシドーシスが起こる恐れがあるので、本剤の投与にあたってはインスリン製剤を中止しないでください。2.本剤とインスリン製剤の併用にあたっては、低血糖リスクを軽減するためにインスリン製剤の減量を検討します。ただし、過度な減量はケトアシドーシスのリスクを高めるので注意してください。なお、臨床試験では、インスリン製剤の1日投与量の減量は、イプラグリフロジン錠では15%、ダパグリフロジン錠では20%以内とすることが推奨されました。<Shimo's eyes>選択的SGLT2阻害薬であるイプラグリフロジン錠(商品名:スーグラ)とダパグリフロジン錠(同:フォシーガ)の効能・効果に、1型糖尿病が追加されました。これまで、成人1型糖尿病患者で、インスリン療法を行っても血糖コントロールが不十分な場合に使用できる経口薬はα-グルコシダーゼ阻害薬のみでしたが、今回の適応追加で、イプラグリフロジン錠またはダパグリフロジン錠による良好な血糖コントロールの維持や合併症の予防ができると期待されています。SGLT2阻害薬は、インスリン非依存的な血糖降下作用を示しますが、併用にあたっては低血糖やケトアシドーシスの発現に注意しましょう。ゾフルーザ錠10mg/20mg、タミフルカプセル75/タミフルドライシロップ3%画像を拡大する<重要な基本的注意>出血が現れることがあるので、患者およびその家族に以下を説明してください。1.血便、鼻出血、血尿、吐血、不正子宮出血などが現れた場合には医師に連絡すること。2.投与数日後にも現れることがあること。<併用注意(併用に注意すること)>ワルファリン:併用後にプロトロンビン時間が延長した報告があります。併用する場合には、患者の状態を十分に観察するなど注意しましょう。<Shimo's eyes>抗インフルエンザ治療薬のオセルタミビル(商品名:タミフル)とバロキサビル(同:ゾフルーザ)において、これらとの因果関係が否定できない出血に関する副作用が複数報告されたことを受け、厚生労働省医薬・生活衛生局が「使用上の注意」改訂の指示を出しました。また、「併用注意」としてワルファリンが追記されたため、抗凝固療法を行っている患者さんでは、慎重な観察が必要となります。セロクエル錠25mg/100mg/200mg、細粒50%、ビプレッソ徐放錠50mg/150mg、タケキャブ錠10mg/20mgほか画像を拡大する<重大な副作用>中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)、多形紅斑が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行ってください。<Shimo's eyes>薬疹の中では最も重症であるTENの死亡率は20~30%と考えられています。TENとSJSは重症多形滲出性紅斑と呼ばれる1つの疾患群に含まれ、水疱、びらんなどで皮膚がむけた部分が体表面積の10%未満の場合はSJS、10%以上の場合はTENと称されています。原因となる薬剤は多種多様で、ラモトリギン、ゾニサミド、カルバマゼピン、フェノバルビタールなどの抗てんかん薬やアロプリノール、各種解熱鎮痛薬などが挙げられます。発熱(38℃以上)を伴う皮膚や口唇、眼球結膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部における発疹やただれ、破れやすい水ぶくれのような症状が現れた場合、ただちに医師または薬剤師に相談するように指導しましょう。

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小児けいれん重積2次治療、レベチラセタムvs.フェニトイン/Lancet

 小児のけいれん性てんかん重積状態の2次治療において、レベチラセタムの静脈内投与はフェニトインに比べ、てんかん重積状態の抑制に要する時間が短いものの、有意な差はなかったとの研究結果が、英国Bristol Royal Hospital for ChildrenのMark D. Lyttle氏らが実施したEcLiPSE試験で示された。研究の詳細はLancet誌オンライン版2019年4月17日号に掲載された。英国では、小児における本症の2次治療では、抗けいれん薬フェニトインの静脈内投与が推奨されている。一方、レベチラセタムは、本症に有効であり、より安全性が高い選択肢となる可能性を示唆するエビデンスがあるという。2剤を直接比較する英国30施設の無作為化試験 本研究は、英国の30ヵ所の2次または3次医療施設の救急診療部で行われた非盲検無作為化臨床試験である(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 対象は、年齢6ヵ月~18歳で、2次治療を要するけいれん性てんかん重積状態(全般性強直間代性、全般性間代性、焦点性間代性)の患児であった。 被験者は、レベチラセタム(40mg/kg、5分で静脈内投与)またはフェニトイン(20mg/kg、最短で20分をかけて静脈内投与)の投与を受ける群に無作為に割り付けられた。引き続き、Advanced Paediatric Life Support(APLS)アルゴリズムに基づき、けいれん性てんかん重積状態の治療が行われた。 主要アウトカムは、無作為化からけいれん性てんかん重積状態の抑制までの時間とした。無作為化後に2次治療が不要となった患児や、同意が得られなかった患児を除く、修正intention-to-treat集団について解析が行われた。抑制までの時間:35分vs.45分、適切な選択肢となる可能性も 2015年7月~2018年4月の期間に実際に治療を受けた286例が解析に含まれた。レベチラセタム群が152例(年齢中央値2.7歳[範囲:0.6~16.1]、女児51%)、フェニトイン群は134例(2.7歳[0.6~17.9]、46%)であった。レベチラセタム群の3例がフェニトインの投与を受けた。 けいれん性てんかん重積状態は、レベチラセタム群が106例(70%)、フェニトイン群は86例(64%)で終息した。無作為化からけいれん性てんかん重積状態の抑制までの時間は、それぞれ35分(IQR:20~評価不能)および45分(24~評価不能)であり、両群に有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:1.20、95%信頼区間[CI]:0.91~1.60、p=0.20)。 追加的な抗けいれん薬の必要性(レベチラセタム群37.5% vs.フェニトイン群37.3%)、継続する発作を終息させるための迅速導入気管挿管(30.0% vs.35.1%)、高度治療室や小児集中治療室への入室(63.8% vs.53.7%)にも、両群に有意差はなかった。 有害事象は、レベチラセタム群では16例に20件、フェニトイン群では18例に23件認められた。レベチラセタム投与後にフェニトインの投与を受けた1例が、いずれの薬剤とも関連のない劇症脳浮腫の結果として死亡した。また、フェニトイン群の1例で、試験薬関連の2件の重篤な有害反応がみられた。 著者は、「レベチラセタムは、フェニトインに対して有意な優越性はなかったが、これまでに報告された安全性プロファイルや相対的に簡便な投与法を考慮すると、小児における本症の2次治療では、第1選択の抗けいれん薬として適切な選択肢となる可能性がある」としている。

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出産前後の日本人女性に対する抗てんかん薬処方~健康管理データベースからの検討

 東北大学の石川 智史氏らは、出産前および産後の日本人女性に対する抗てんかん薬(AED)の処方率および処方パターンについて、大規模データベースを用いて評価を行った。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌オンライン版2019年3月10日号の報告。 公表されているアルゴリズムまたは乳児の生年月日を用いて、妊娠開始日および出産日を推定した。AEDの処方率、最大用量、併用療法の頻度について、妊娠開始前180日、妊娠中、産後180日で評価した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、妊婦3万3,941人。・AEDが1剤以上処方されていた妊婦は、妊娠前180日~産後180日の期間で225人(66/1万分娩)、妊娠中では135人(40/1万分娩)であった。・AEDの処方率は、妊娠第1期、2期で減少し、妊娠第3期および産後に増加した。・最も頻繁に処方された薬剤はバルプロ酸であり、次いでクロナゼパム、ラモトリギン、カルバマゼピンであった。・妊娠第1期にバルプロ酸を1回以上処方された妊婦49人のうち9人(18.4%)は、バルプロ酸600mg/日超で処方されていた。・併用療法の可能性について、2剤以上のAED処方は、妊娠前180日~産後180日の期間で40人(12/1万分娩)、妊娠中で31人(9/1万分娩)であった。 著者らは「日本人妊婦に対しては、さまざまなAEDが処方されていた。妊娠可能年齢の女性では、リスクとベネフィットのプロファイルに応じて、妊娠前に適切なAEDを選択する必要がある」としている。■関連記事妊娠可能年齢のてんかん女性に対するレベチラセタム単独療法スペインにおける妊娠中の抗てんかん薬使用に関する比較研究妊娠中の抗うつ薬使用パターンに関するコホート研究

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父親の年齢と統合失調症や双極性障害との関連

 これまでの研究では、出産時の父親の高齢化と統合失調症や双極性障害のリスク増加との関連が報告されていた。この関連は、父親の精子におけるデノボ突然変異によって引き起こされるとする仮説や、高齢時に子供持つ父親の心理社会的特徴に関連するともいわれている。イスラエル・Chaim Sheba Medical CenterのMark Weiser氏らは、これらの仮説について検証を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2019年3月4日号の報告。 イスラエルのドラフトボードレジストリ、精神科入院レジストリよりプロスペクティブ集団ベースコホート研究を行った。対象者数は、統合失調症患者4,488例、双極性障害患者883例を含む91万6,439例。オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)は、ロジスティック回帰モデルを用いて算出し、予測因子として父親の年齢、アウトカム尺度として統合失調症または双極性障害による入院リスクを使用した。分析モデルは、最初は未調整で行い、次に長子誕生時の父親の年齢で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・未調整モデルでは、出産時の父親の年齢が45歳以上だと、子供の統合失調症(OR:1.71、95%CI:1.49~1.99)および双極性障害(OR:1.63、95%CI:1.16~2.24)のリスクが高かった。・しかし、長子誕生時の父親の年齢を考慮すると、父親の高齢化は、統合失調症(OR:0.60、95%CI:0.48~0.79)または双極性障害(OR:1.03、95%CI:0.56~1.90)のリスク増加と関連が認められなかった。 著者らは「父親の高齢化と子供の統合失調症および双極性障害リスクとの関連は、父親となる年齢の遅れによる心理社会的要因または一般的な遺伝変異によることが示唆された」としている。■関連記事統合失調症と双極性障害、脳の違いはどこか親の年齢とてんかんリスクに関するレジストリベース調査統合失調症、双極性障害の家族特性を検証

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1990~2016年の世界のてんかん負荷調査の分析結果

 てんかんによる発作やその影響は、早期死亡や残存症状などの健康被害の原因となりうる。てんかんの負荷に関するデータは、健康管理計画やリソース配分において必要とされている。世界の疾病負荷(Global Burden of Disease:GBD)2016のてんかん共同研究者らは、てんかんによる健康被害を年齢、性別、年、場所別に定量化することを目的に、GBDのデータを用いて分析を行った。The Lancet. Neurology誌2019年4月号の報告。 1990~2016年の195の国と地域におけるてんかん負荷の評価を行った。年齢、性別、年、場所、社会人口統計学的指標(1人当たりの所得、教育、出生率の複合尺度)による、死亡、罹患率、障害調整生命年(disability-adjusted life-years:DALY、定義は損失生存年数[years of life lost:YLL]と障害生存年数[years lived with disability:YLD]の合計)として負荷を測定した。死亡に関する情報は人口動態登録と口頭剖検(verbal autopsy)より入手し、てんかんの有病率や重症度に関するデータは住民代表調査より得た。すべての推定値は、95%不確実性区間(UI)で算出した。 主な結果は以下のとおり。・2016年の活動性てんかん(特発性および2次性てんかん)の患者数は4,590万人(95%UI:3,990~5,460万)であった(年齢標準化有病率:621.5人/10万人、95%UI:540.1~737.0)。・このうち、活動性特発性てんかん患者は2,400万人(95%UI:2,040~2,770万)であった(有病率:326.7人/10万人、95%UI:278.4~378.1)。・活動性てんかんの有病率は年齢とともに増加し、5~9歳(374.8人/10万人、95%UI:280.1~490.0)および80歳以上(545.1人/10万人、95%UI:444.2~652.0)でピークに達していた。・活動性特発性てんかんの年齢標準化有病率は、男性で329.3人/10万人(95%UI:280.3~381.2)、女性で318.9人/10万人(95%UI:271.1~369.4)であり、SDIの五分位において類似していた。・特発性てんかんの世界的な年齢標準化死亡率は、1.74人/10万人(95%UI:1.64~1.87)であり、男性では2.09人/10万人(95%UI:1.96~2.25)、女性では1.40人/10万人(95%UI:1.23~1.54)であった。・年齢標準化DALYは、182.6人/10万人(95%UI:149.0~223.5)であり、男性では201.2人/10万人(95%UI:166.9~241.4)、女性では163.6人/10万人(95%UI:130.6~204.3)であった。・男性のDALY率が高値であったのは、女性と比較し、YLL率が高値のためであった。・特発性てんかんの年齢標準化有病率の変化は、6.0%(95%UI:-4.0~16.7)と有意ではなかったが、年齢標準化死亡率(24.5%、95%UI:10.8~31.8)および年齢標準化DALY率(19.4%、95%UI:9.0~27.6)では有意な減少が認められた。・SDIの五分位が低い国と高い国との年齢標準化DALY率の違いは、低所得環境におけるてんかん重症度の高さによるものが1/3を占め、SDIが低い国におけるYLL率の上昇が2/3を占めていた。 著者らは「1990~2016年にかけて疾病負荷が減少しているにもかかわらず、てんかんはいまだに障害や死亡に関連する重大な問題である。てんかんに関するデータが不十分な国では、標準化されたデータ収集を強化すべきである。低所得国における既存治療へのアクセス改善や世界的な新規薬剤の開発は、てんかんの負荷を減少させる可能性がある」としている。■関連記事てんかん患者の突然死、腹臥位がリスク因子か世界のてんかん研究を解析、有病率に影響を与える要因は医学の進歩はてんかん発症を予防できるようになったのか

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第19回 スタチンに片頭痛の予防効果はあるか【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 スタチン系薬はコレステロールを降下させるための薬であることは言うまでもありませんが、片頭痛の予防にも有効なのではないかという説があります。脂質異常症も片頭痛も有病率が高いため、意図して、もしくは意図せずコレステロール値の高い片頭痛患者さんにスタチンが処方されていることもあるのではないかと思います。慢性頭痛の診療ガイドライン2013には、片頭痛発作が月に2回以上あるいは6日以上ある場合は片頭痛の予防療法を検討するという記載があり、第1選択薬としてバルプロ酸やトピラマートなどの抗てんかん薬、プロプラノロールやメトプロロールなどのβ遮断薬、アミトリプチリンなどの抗うつ薬が推奨されています(保険適用外含む)。予防療法の効果判定には少なくとも2ヵ月を要し、有害事象がなければ3〜6ヵ月継続し、コントロールが良好になれば薬を漸減・中止するというのがガイドラインの推奨です。私が調査した限りにおいては、現時点で日米英のガイドラインにスタチンについて特段の言及はありません。実際のところ、スタチンは片頭痛に有用なのでしょうか? 片頭痛が月6回以上生じる女性を対象に、プロプラノロール60mg群またはシンバスタチン20mg群に割り付け、比較したオープンラベルの試験では、いずれの群においても有効性が示されています。プラセボ効果が寄与した可能性も考慮しなければなりませんが、50%の頭痛発作減少のアウトカムを達成したのはプロプラノロール群で88%、シンバスタチン群で83%といずれも高率でした1)。またアトルバスタチンとプロプラノロールのランダム化比較試験でも、反復性片頭痛の予防効果は同等でした2)。二重盲検ランダム化比較試験もありますので紹介します。月に4日以上、反復性片頭痛がある成人患者57例をシンバスタチン20mg1日2回+ビタミンD3(コレカルシフェロール)1000IU群(実薬群)またはプラセボ群に割り付け、24週間フォローアップした研究です3)。なお、ビタミンDが併用されているのは、血漿中ビタミンD濃度が高いほうが、重度頭痛または片頭痛発作の発生が少ないという報告があるためです4)。この試験では、プライマリアウトカムとして、1ヵ月間に片頭痛を認めた日数のベースラインからの変化を観察しています。実薬群では、服用12週時点では8例(25%)で50%の頭痛発作減少のアウトカムが達成され、24週時点では9例(29%)で同様の結果が得られています。対して、プラセボ群ではそれぞれ1名(3%)のみでした。なお、以前から用いている片頭痛予防薬の使用は制限しておらず、有意差はなかったものの実薬群で予防薬の使用が多い傾向にあるので解釈に注意が必要です。また、24週以降は検討外であることから、長期的効果については判断できません。当初予定したサンプルサイズを下回る症例数で試験されていますが、実際の試験どおり介入群28例、プラセボ群29例の事後分析で85%の検出力(α=5%)ですので、症例数が増えればより確かなことが言えそうです。スタチンの抗酸化作用や抗炎症作用が片頭痛に影響かスタチンで頭痛が改善しうる理由の仮説として、スタチンのプレイオトロピック効果が挙げられています。スタチンには本来の脂質低下作用とは別に、抗酸化作用、血管内皮機能改善、血小板凝集抑制、血管の緊張や炎症の抑制など多面的な作用があるのではないかと考えられており、それがなんらかの形で片頭痛発作の減少に寄与したのかもしれないというものです。私が調査した限りにおいては、スタチンの種類によって効果が異なるのか、十分な根拠は見つけることができませんでした。いずれにしても、ビタミンD欠乏症だと片頭痛頻度が多いという説もありますから5)、まず十分な血清ビタミンD濃度が確保されているか確認することも大切です。あくまでもスタチンは片頭痛への効果を期待して処方されるものではありませんが、片頭痛の頻度に影響があるかもしれないということを知っていると、服薬指導で役に立つかもしれません。1)Medeiros FL, et al. Headache. 2007;47:855-856.2)Marfil-Rivera A, et al. Neurology. 2016;86:P2.2163)Buettner C, et al. Ann Neurol. 2015;78:970-981.4)Buettner C, et al. Cephalalgia. 2015;35:757-766.5)Song TJ, et al. J Clin Neurol. 2018;14:366-373.

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スコットランドにおける双極性障害に対する処方変化

 双極性障害患者は、一般的にうつや躁状態を予防するために、長期の薬理学的治療が必要とされる。しかし、エビデンスに基づくガイドラインは、しばしば従われておらず、一部の国では、リチウムの処方量は減少している。また、多剤併用も双極性障害の治療において一般的に認められる。英国・グラスゴー大学のLaura M. Lyall氏らは、2009~16年のスコットランドにおける双極性障害治療のための処方パターンについて、データリンケージアプローチを用いて評価した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年2月28日号の報告。 Scottish Morbidity Recordの処方データより、2009~16年に向精神薬を処方された双極性障害患者2万3,135例を特定し、6つの薬物カテゴリについて、処方された患者割合の傾向を調査した。何年にもわたる処方の変化は、ランダム効果ロジスティックモデルを用いて調べた。 主な結果は以下のとおり。・最も一般的な治療法は、抗うつ薬単独療法で24.96%であった。一方、リチウム単独療法は、5.90%であった。・2009~16年で、抗精神病薬(オッズ比[OR]:1.16、95%CI:1.15~1.18)および抗てんかん薬(OR:1.34、95%CI:1.32~1.36)の処方は増加していた。一方、リチウム(OR:0.83、95%CI:0.82~0.85)の処方は減少していた。・2009~16年で、バルプロ酸の処方は、女性(OR:0.93、95%CI:0.90~0.97)で減少したが、男性(OR:1.11、95%CI:1.04~1.18)で増加していた。 著者らは「スコットランドでは、抗うつ薬単独療法が双極性障害の最も一般的な治療法であり、リチウムの処方は、2009~16年にかけて減少していた。本調査結果より、治療ガイドラインと臨床診療におけるギャップが明らかとなった」としている。■関連記事双極性障害治療における新規非定型抗精神病薬の薬理学的および臨床的プロファイル双極性障害、リチウムは最良の選択か双極性障害治療、10年間の変遷は

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