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医療者ほか最前線労働者、デルタ・オミクロン株へのワクチン効果は/JAMA

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタおよびオミクロン変異株に感染した米国の必須(essential)/最前線(frontline)労働者では、感染前149日以内のmRNAワクチン(BNT162b2[ファイザー製]、mRNA-1273[モデルナ製])の2回または3回接種は未接種と比較して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状は軽度で、ウイルスRNA量は少なかったことが、米疾病対策センター(CDC)のMark G. Thompson氏らHEROES-RECOVERネットワークの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年10月18日号に掲載された。米国6州の前向きコホート研究 本研究は、COVID-19に対するmRNAワクチンの2回または3回接種と、その症状およびSARS-CoV-2のウイルスRNA量との関連の評価を目的とする前向きコホート研究であり、2020年12月14日~2022年4月19日の期間に、米国の6州(アリゾナ、フロリダ、ミネソタ、オレゴン、テキサス、ユタ)でSARS-CoV-2に感染した患者が登録されたHEROES-RECOVERネットワークのデータが使用された(米国国立予防接種・呼吸器疾患センターなどの助成を受けた)。 HEROES-RECOVERネットワークには、医療従事者や早期対応業務従事者、その他の必須/最前線労働者から成る大規模なコホートが含まれる。このコホートは、教育、農業、食品加工、輸送、固形廃棄物収集、公共事業、政府サービス、保育、環境サービス、接客業などの分野の労働者が含まれ、他者と3フィート(約91cm)以内の距離で定期的に接触する職業であり、この環境で週に20時間以上働く人々と定義された。 主要アウトカムには、症状の発現、特異的な症状(発熱、悪寒など)、症状発現期間、医療探索行動(受診)などの臨床アウトカムと、ウイルス量(定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応[RT-qPCR]法で評価)などのウイルス学的転帰が含まれた。オミクロン変異株では、3回接種者で症候性感染症のリスクが高い COVID-19感染患者1,199例(年齢中央値41歳、女性59.5%)が解析に含まれた。14.0%が始原ウイルス株、24.0%がデルタ変異株、62.0%がオミクロン変異株に感染していた。 デルタ変異株では、感染症出現の14~149日前に2回目のワクチン接種を受けた患者は未接種患者に比べ、症状発現の確率が有意に低かった(77.8%[21/27例]vs.96.1%[74/77例]、オッズ比[OR]:0.13[95%信頼区間[CI]:0.0~0.6])。症状が発現した場合は、感染前7~149日に3回目の接種を受けた患者は未接種患者に比べ、発熱または悪寒の報告が有意に少なく(38.5%[5/13例]vs.84.9%[62/73例]、OR:0.07[95%CI:0.0~0.3])、症状発現の平均日数が短かった(10.2日vs.16.4日、群間差:-6.1日[95%CI:-11.8~-0.4])。 一方、オミクロン変異株では、症候性感染症のリスクは2回接種患者と未接種患者で差はなかったが、3回接種患者は未接種患者よりもリスクが有意に高かった(88.4%[327/370例]vs.79.4%[85/107例]、OR:2.0[95%CI:1.1~3.5])。 また、症候性オミクロン変異株感染患者では、感染前7~149日に3回目の接種を受けた患者は、未接種患者と比較して発熱または悪寒の訴えが有意に少なく(51.5%[160/311例]vs.79.0%[64/81例]、OR:0.25[95%CI:0.1~0.5])、医療を求めて受診した患者も有意に少数だった(14.6%[45/308例]vs.24.7%[20/81例]、OR:0.45[95%CI:0.2~0.9])。 感染前14~149日に2回目の接種を受けたデルタおよびオミクロン変異株感染患者は未接種患者に比べて、平均ウイルス量が有意に低値を示した(デルタ変異株:3 vs.4.1 log 10コピー/μL、群間差:-1.0 log 10コピー/μL[95%CI:-1.7~-0.2]、オミクロン変異株:2.8 vs.3.5、-1.0[-1.7~-0.3])。 著者は、「オミクロン変異株によるCOVID-19の症状は、デルタ変異株に比べ軽度で、症状発現期間も短いようであり、これはウイルスRNAの排出量が少ないことと関連した」としている。

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喫煙妊婦、金銭的報奨で禁煙率が2倍以上に/BMJ

 英国の妊娠中の喫煙者では、現行の禁煙サービスに加え、妊婦の禁煙のための最大400ポンドの金銭的報奨を提供すると、禁煙率が2倍以上に向上し、重篤な有害事象は増加しなかったことが、英国・グラスゴー大学のDavid Tappin氏らが実施した無作為化試験「CPIT III試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年10月19日号で報告された。英国の無作為化第III相試験 CPIT III試験は、妊婦向けの禁煙支援としての金銭的な報奨の有効性の評価を目的とする実践的な単盲検無作為化第III相試験であり、2018年1月9日~2020年4月4日の期間に、スコットランド、北アイルランド、イングランドの7つの産科病院で参加者の登録が行われた(Cancer Research UKなどの助成を受けた)。 対象は、年齢16歳以上、自己申告による喫煙者(過去7日間にタバコ1本以上の喫煙)で、初回受診時に在胎期間24週未満の妊婦であった。被験者は、標準的な禁煙サービスに加え、最大で400ポンド(440ドル、455ユーロ)に相当する引換券(多くの小売店で使用できるLoveToShop買い物券)による報奨を受け取る群、または標準的な禁煙サービスのみを受ける群(対照群)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、妊娠後期(在胎期間34~38週)における自己申告による禁煙で、唾液中のコニチン(ニコチン代替製品を使用している場合はアナバシン)の検出によって確定された。出産後に、多くは再喫煙 941人の妊婦が登録され、介入群に471人、対照群に470人が割り付けられた。ベースラインの全体の平均年齢は27.9(SD 5.8)歳、平均在胎期間は11.3(SD 3.3)週であった。 生化学的に確定された禁煙者の割合は、介入群が26.8%(126/471人)と、対照群の12.3%(58/470人)に比べ有意に高かった(補正後オッズ比[OR]:2.78、95%信頼区間[CI]:1.94~3.97、p<0.001)。 重篤な有害事象は58人(介入群39人、対照群19人)で61件発現した。このうち流産が17人(12人、5人)、死産が4人(2人、2人)、人工中絶が5人(4人[2人は先天性疾患]、1人)、新生児死亡が3人(2人、1人)で認められた。これらの重篤な有害事象は、いずれも介入とは関連がなかった。 その他の入院を要するイベントが24人で発現し、このうち胎動減少が17人(介入群11人、対照群6人)、妊娠悪阻が1人(介入群)、深部静脈血栓症が1人(介入群)、歯の膿瘍が1人(対照群)、腹痛が1人(介入群)などであった。 両群とも、禁煙を達成した妊婦の多くが、出産後に再び喫煙するようになった。 著者は、「妊婦に対する現行の禁煙支援に、金銭的な報奨を加えることで、長期的に国民保健サービス(NHS)の費用負担の削減が可能と考えられる」としている。

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小児滲出性中耳炎診療ガイドライン 2022年版 第2版

滲出性中耳炎の臨床を強力にサポートする充実のアップデート!小児の滲出性中耳炎は、難聴を引き起こして言語発達の遅れや学習の妨げを生じさせるなど重大な結果に繋がりかねない疾患で、正確な診断と適切な治療が求められます。治療では薬物療法、鼓膜換気チューブ留置術やアデノイド切除術の適応の見極めなどで難しい判断を求められます。本書では、解説項目と前版以降に集積したエビデンスも加えたCQを用いて、治療の選択や実際について詳しく解説することで、実地臨床を強くサポートします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    小児滲出性中耳炎診療ガイドライン 2022年版 第2版定価2,860円(税込)判型B5判頁数120頁・図数:8枚・カラー図数:29枚発行2022年9月編集日本耳科学会/日本小児耳鼻咽喉科学会電子版でご購入の場合はこちら

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食道癌取扱い規約 第12版

術前治療の重要性を反映。実臨床に即した新Stage分類を策定7年ぶりの改訂。重要性が高まっている術前治療を勘案し、術前診断に関する記載、特にT4 診断およびリンパ節転移診断について大幅に追加・修正した。今版より転移個数によるN分類を採用。TNM分類との整合性を図るとともに、術前治療が標準となった時代における新たなStage分類を策定した。その他、治療効果判定規準、食道胃接合部癌に関する記述など詳細な改訂を加え、より実臨床に即した規約となった。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    食道癌取扱い規約 第12版定価4,400円(税込)判型B5判頁数160頁・図数:20枚・カラー図数:142枚発行2022年9月編集日本食道学会電子版でご購入の場合はこちら

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超加工食品の利便性と有害性はもろ刃の剣であり、摂取過剰は男性の遠位大腸がん発生の危険性を高めるため超加工食品の摂取には注意!―(解説:島田俊夫氏)

 大腸がんの発生は国により多少の差はあるが世界中で日増しに大きな問題となっており、その原因として超加工食品を大きく取り上げている。 超加工食品の分類には、ブラジル・サンパウロ大学の公衆衛生メンバーが提唱したNOVA分類(1~4)が通常用いられている。食品加工に伴う加熱処理、保存性の向上のための塩、砂糖やその他食品添加物、加工処理に伴う有害生成物、自然食品に含まれる抗酸化物質等の喪失等が発がん機序に深く関与していると推測されているが、十分に解明されているとはいえない。 それでも、加工食品の普及につれてその利便性とは逆に有害性の側面がクローズアップされている。2018年にフランス国立衛生医学研究所(INSERM)の研究者が、加工食品の摂取過剰が閉経後女性の乳がん発生増加につながったと報告した1)。その後、超加工食品による発がんへの関心が急速に高まっている。 大腸がんの発生に密接に関係する超加工食品に対する前向き大規模コホート研究が、タイムリーに米国の医療従事者を対象とした3つのコホート研究の成果として、2022年8月31日号のBMJ誌にタフト大学のWang氏らによって報告された。 男女別の3つの医療従事者コホート(男性コホート:Health Professionals Follow-up Study、女性コホート:Nurses’ Health Study I and II)を対象とした5年間にわたる前向きコホート追跡研究から、食事摂取量の記録があり、ベースライン時点でがんフリーの参加者を対象として、超加工食品摂取と大腸がんリスクとの関連を調査した研究成果を発表した。参加者数も多く、観察期間も長く、信頼性の高いデータに基づく論文として紹介する。 男性では超加工食品の摂取量と大腸がんリスクの間に正相関を見いだしたが、この関連は遠位大腸がんに限られていた。サブグループの男性では超加工食品(レトルト肉、家禽、海産物/砂糖添加飲料)と正の関連が観察された。一方で、女性では明らかな関連はなかったが、ヨーグルト、乳製品ベースのデザートが遠位大腸がんを抑制することが観察された。 本研究は、男性で超加工食品摂取と遠位大腸がんリスクの間に正の関連を初めて見いだした研究であった。確立された大腸がんの危険因子である肥満が、超加工食品と遠位大腸がんのがん化に関連性がなかったことから、超加工食品の追加属性が遠位大腸がんのがん化に深く関与する可能性を示すと理解された。 大腸がんの発生が性差で異なる理由は目下不明であるが、事実をまず受け止め、超加工食品の利便性と有害性を理解することで、現代社会を健康的かつ安全に生き抜くために食の在り方を見直す必要がある。本論文は、超加工食品の利便性優先に警鐘を鳴らす意味からも大きな意義がある。 超加工食品の利便性の魅力に惑わされることなく、超加工食品の問題点を正しく認識のうえで賢く利用することを考えるべきではないか。

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事実上義務化のマイナ保険証、患者・医療者のメリットは? 【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第99回

政府は、現在の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えると発表しました。さまざまなデジタル化が薬局業務にも押し寄せつつありますが、オンライン資格確認システムの導入や情報の管理・活用など大きな変化になりそうです。河野太郎デジタル相は13日午前に記者会見を開き、2024年秋に現在の健康保険証の廃止をめざすと発表した。すでに保険証利用が始まっているマイナンバーカードに一本化する。ただ、カードの交付率は9月末時点で49%にとどまり、普及には課題が残っている。(中略)また、現在は25年3月末までに予定している運転免許証との一体化も「前倒しできないか検討を進める」ことを明らかにした。(2022年10月13日付 朝日新聞デジタル)マイナンバーカードは2015年に通知カードの交付が開始され、2016年に運用が開始となりました。普及率は10月18日までに50%に達しましたが、普及促進のためマイナポイントをばらまいていたのにようやく50%とはちょっとびっくりです。私の周りでは、自身や子供のマイナンバーカードを取得し、きっちりマイナポイントをもらったという話をよく耳にしますので、高齢者の普及率が著しく低いのでは?と思いましたが、意外や意外、60~74歳でも50.1%が交付済みでした。マイナポイントも一定の成果を上げているのかもしれません。健康保険証とマイナンバーカードが一本化されると、保険医療を受けるためにはマイナンバーカードを作るしかなく、普及率が上がることは明確です。ただ、マイナ保険証の普及に賛成したくなるようなデータヘルス改革の具体的な姿が見えないため、ただ手間が増えるだけのような印象を持っている医療関係者は私だけではないはずです。患者の同意があれば診療・投薬情報が共有可能マイナ保険証の患者さん側のメリットとしては、従来の保険証は会社員が転職をしたり自営業者が引っ越しをしたりすると改めて発行してもらう必要がありましたが、マイナ保険証になるとその手間はなくなります。また、マイナポータルというポータルサイトで診療・薬剤・医療費・検診情報が確認でき、医療費控除の手続きでマイナポータルを通じて医療費通知情報の自動入力ができます。個人的には、そろそろ病名を教えてもらえないかと思っていますが、それは明らかになっていません。医療機関・薬局側のメリットとしては、これまで手入力していた保険情報が自動で入力され、患者さんの同意があれば他の医療機関での診療情報や薬剤情報がリアルタイムで確認できるようになります。より広い患者情報を入手して医療に生かし、重複投薬も防ぐことができるようになります。また、2022年度の報酬改定により、オンライン資格確認システムを通じて患者さんの情報を取得した場合に、月1回に限り3点が加算できるようになりました。なお、マイナンバーカードを読み取るためのカードリーダーは無償提供され、それ以外の費用には補助が出る場合もあります。2023年4月以降は全国の保険医療機関や薬局にオンライン資格確認システムへの対応を原則として義務付ける方針ですが、現在導入している医療機関はまだ30%程度にとどまっています。現在の健康保険証が廃止になる2024年秋まであと2年。廃止の期限が延期になるんじゃないかなぁと思ってしまう自分がいますが、今後問題になりそうな高齢者支援についてのフォローも期待したいと思います。

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サル痘ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第14回

新型コロナに次いで緊急事態が宣言されたサル痘周知の通り、サル痘感染が世界的に拡大している。アフリカ熱帯地方に限局した風土病であったサル痘が、ナイジェリアからの輸入例として英国から世界保健機関(以下、WHO)に報告されたのは2022年5月7日であった(発端症例はナイジェリア滞在中の同年4月29日に発症、5月4日に英国に到着)1)。以後、非常在国への輸入例およびそれらを発端とした国内感染例が続々と発見・報告されてきた。急激な世界的拡大を踏まえ、WHO事務局長は2022年7月23日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern:PHEIC[フェイク]と発音)」を宣言した2)。PHEICとは、「緊急かつ世界的な健康問題に対して、WHO加盟各国が集中的に資源投下して早期の封じ込めまたは安定化を目指すよう」にとWHO事務局長が発する宣言である。2020年の新型コロナウイルスパンデミックへの宣言に続いて、史上7件目のPHEICとなった。PHEIC宣言後も加盟各国での発見が相次ぎ、2022年9月21現在では105ヵ国から累計6万1,753例の確定患者と23例の死亡がWHOに報告されている3)。わが国でも同9月21日までに、計5例の確定患者が厚生労働省に報告されている4)。うち3例は直近の海外渡航歴があったが、残る2例に渡航歴はない。渡航歴のない2例とも発症直前に海外渡航者との接触があり、輸入例を発端とした国内感染と推定される。ただし、諸外国のように輸入発端例を追跡できないような国内感染拡大には現時点で至っていない。サル痘とはサル痘は人獣共通感染症である。1958年にデンマークの研究所が実験用にアジアから輸入したサルが発疹性疾患を発症し、病変からサル痘ウイルスが分離発見された。これがサル痘 monkeypox の命名由来であるが、後の研究により本来の自然宿主はアフリカ熱帯地域のリス、その他の齧歯類と推定された。実験的感染も含めると、サル痘ウイルスはヒトをはじめとする40種以上の動物種に感染することがわかっている5)。アフリカ熱帯地域の野生動物間で循環しているサル痘ウイルスが、感染動物と接触したヒトにも感染する例が、1970年以降コンゴ盆地(アフリカ中央部)および西アフリカの諸国で散発的に報告されてきた。ヒト発端例から数100例に拡大したアウトブレイクも同地域で何度か発生している。サル痘ウイルスは天然痘(痘瘡)ウイルスと同じオルソポックスウイルス属に属し、クレードI(旧称:コンゴ盆地型)とクレードII(旧称:西アフリカ型)の2系統に分類される6)。クレードIによる致死率は10%前後だが、クレードIIのそれは1~数%と比較的軽症である。現在世界で拡大しているサル痘ウイルスは主としてクレードIIとされており7)、確定症例中の死亡数が少ないのはそのためと考えられる。サル痘ウイルスは主として接触感染する。ごく近距離かつ長時間の対面による飛沫感染もありうるが、大半は皮膚と皮膚、またはウイルスの付着した衣類などと皮膚の濃厚接触による感染とされる。性的接触後の感染も多く報告されているが、性的接触に伴う皮膚同士の濃厚接触が感染経路と考えられ、一般的な性行為感染とは異なる。現時点では圧倒的に男性の報告が多く、女性や小児の報告は一部である。サル痘の症状は、根絶された天然痘(痘瘡)のそれにかなり似通っている。ウイルス感染後1~2週間(最大21日間)の潜伏期を経て、発熱、リンパ節腫脹等の非特異的な前駆症状で発症する。前駆症状の1~3日後に全身に発疹が出現するが、天然痘と同じくすべての発疹が同期して丘疹→水疱→膿胞→痂皮へと進行する。類似の水疱性疾患である水痘の発疹が互いに同期せずバラバラに進行するのとは異なるが、多数のサル痘報告の中には発疹が同期しないケースも散見されるため、鑑別に注意を要する。発疹は痂皮が脱落するまでの2~4週間は感染性を保ち、その間の濃厚接触によって感染が拡がる。ほとんどが自然治癒するが、まれに発疹部への細菌2次感染、肺炎、脳炎、角膜炎などの合併症を生ずる。妊婦や小児が特に合併症を生じやすいとされる。診断は発疹病変検体からのウイルス遺伝子検出(PCR法)が有用であり、厚生労働省による届出基準でも採用されている8)。特異的治療薬として、欧州では tecovirimat が承認されている。わが国には承認済みの特異的治療薬はないが、「tecovirimat のサル痘への効果と安全性を検証する特定臨床研究」が国立国際医療研究センターにて進行中である。サル痘のより詳しい臨床情報については、他の総説記事などをご参照いただきたい。 日本の法令上の扱いサル痘はわが国では感染症法で4類感染症に指定されており、全数届出疾患である。1・2類感染症とは異なりまん延防止のための公費入院制度がないため、入院および治療の費用は患者負担となる(前述の tecovirimat の特定臨床研究の対象となれば研究費が適用される)。検疫法にはサル痘の指定がないため、海外から到着した疑い症例を検疫所が発見しても検疫法に基づく行政検査ができない。近隣自治体に知らせて感染症法に基づく検査につなげる(自治体が指定する医療機関へ移送を検討する)必要があり、患者自身のためにもまん延防止のためにも検疫所と自治体との連携が重要である。オルソポックスウイルス属と天然痘ワクチン(種痘)本稿の本題はサル痘に対するワクチンであるが、サル痘ワクチンを知るにはまず天然痘とそのワクチンを知らねばならない。1)天然痘ワクチンサル痘ウイルスは天然痘ウイルスと同じオルソポックスウイルス属に属する。天然痘は数千年にわたり人類を脅かしてきたウイルス性発疹性疾患である。WHO主導の世界的な天然痘ワクチン接種(種痘)キャンペーンにより、1980年についに世界からの根絶が宣言された。有効なワクチンがあった以外に、動物宿主がなくヒトにしか感染しない、持続感染例がないなどの好条件が重なり、人類初の根絶病原体となった。サル痘の臨床症状は天然痘と似通っている。天然痘という病名は英語で smallpox だが、病原体である天然痘ウイルスは variola virus と呼ばれる。天然痘ウイルスには variola major および variola minor の2種があった。Variola major は19世紀末まで猛威を奮い、致死率は30%前後に及んだ。Variola minor は19世紀末に登場し、majorに取って代わって世界に拡大した。Variola minor の致死率は1%前後とmajorよりは軽症であったが、それでも1%の致死率は重大であり根絶の努力がなされた。死亡は感染の1~2週後に生じたが、死に至る詳細な病態生理はわかっていない。重度のウイルス血症やそれに伴うサイトカインストームが主因だったのではと推測されている9)。2)天然痘ワクチンの歴史とワクシニア vaccinia ウイルスオルソポックスウイルス属には牛痘ウイルスも含まれる。牛痘ウイルスはその名の通り牛に感染して水疱性疾患を生ずる病原体だが、牛を扱う農夫など濃厚接触するヒトにも感染することが古くから知られていた。ヒトに限局される天然痘とは異なり、牛痘は人獣共通感染症である。そして、牛痘感染歴のある者は天然痘に感染しないことも経験的に知られており、西暦1000年ごろにはすでにインドや中国で天然痘予防目的にヒトに牛痘を感染させる手法が行われていたとされる。これを世界で初めて科学的に確立し19世紀初頭に論文として世に報告したのが、英国のエドワード・ジェンナーであった10)。ラテン語で牛を意味する vacca を語源として、接種に用いる牛痘製剤を vaccine、牛痘接種(種痘)を vaccination とジェンナーが名付けたことは広く知られている。後に種痘に限らず、病原体予防薬全般について vaccine/vaccination の語が使われるようになった。そして、ジェンナーによる論文出版後の19世紀に種痘は世界へ急速に拡大した。種痘製剤を量産するために、牛の皮膚に人為的に牛痘ウイルスを植え付けて感染させ、病変から次の原料を採取するという手法が広く行われた。驚くことに、牛以外にも羊、水牛、兎、馬なども利用され、時には牛痘ではなく馬痘ウイルスすら使われた。20世紀に近代的なワクチン製法が確立される過程で、種痘製剤に含まれるウイルスはワクシニア vaccinia と名付けられた。その時点でワクシニアウイルスは、自然界の牛痘ウイルスからは遺伝的に大きく異なっていた。ジェンナー当時の牛痘ウイルスが100年以上にわたり生体動物を用いて継代培養される過程で、変異を繰り返した上に、他のオルソポックスウイルス属との交雑も起きたと推測されている。したがって現代の種痘製剤(天然痘ワクチン)の原料は、自然界の牛痘ウイルスではなく、実験室にのみ存在するワクシニアウイルスである。3)天然痘ワクチンの世代と種類これまで実用化されてきた天然痘ワクチンは表1のように3世代に分類される。表1 天然痘ワクチンの世代と特徴画像を拡大する天然痘の根絶に向けて接種キャンペーンが実施されていた当時の天然痘ワクチンを第1世代と呼ぶ。19世紀のままの生体動物による製法で生産され、無菌処理を施して凍結乾燥されていた。この間に免疫原性が高い優良株がいくつか確立された。しかし、キャンペーン進行による自然罹患者の減少と引き換えに、ワクチンの重篤な副反応が目立つようになった。種痘性湿疹 eczema vaccinatum、進行性ワクシニア progressive vaccinia、全身性ワクシニア generalized vaccinia といった致死性の極めて高い重篤皮膚病変や、高い致死率と神経学的後遺症に至る種痘後脳炎・脳症などが報告された。いずれも数10万接種~100万接種に1件程度と低頻度ではあったが、わが国を含む各国で問題視された11)。やがて1980年に根絶が宣言されると種痘は中止され、生産済みの第1世代ワクチンは凍結保存された。その後の1987年旧ソ連崩壊に伴う天然痘ウイルス拡散懸念や、2001年の米国同時多発テロ後の炭疽菌テロなどがきっかけで、天然痘ウイルスを利用した生物テロを想定してワクチンを常備する気運が米国を中心に高まった。この時期に生産された製剤を第2世代と呼ぶ。第2世代は、第1世代で確立されたワクチン株を生体動物ではなく細胞培養やニワトリ胚培養など現代的製法で生産したものである。天然痘はすでに根絶されていたため、ワクチンの効果は被験者の免疫応答(すなわち代理エンドポイント)を第1世代ワクチン当時と比較する形で測定された。しかし、第1世代と同じウイルス株を使っていたため、安全性の懸念は払拭されなかった。米国軍人などに第2世代製剤を接種した際の複数の2000年代の研究で、接種後心筋炎が背景リスクよりも有意に高いことが示されている12-15)。第1世代で問題視された安全性問題をクリアするために、免疫原性を保ったまま副反応を減らすよう、弱毒化ワクシニアウイルス株も順次開発された(第2世代までは非弱毒株)。弱毒化ワクシニアウイルス株由来の製剤を、第3世代と呼んでいる。遡ること1950~60年代にはアンカラ株(modified vaccinia Ankara:MVA)と呼ばれる弱毒株が開発されている。トルコのアンカラで数100世代継代培養されて遺伝子の15%が変異したこの株は、既存製剤よりも免疫原性は劣るが副反応も避けられるため、根絶前のキャンペーンでは既存製剤接種に先立つ接種に用いられた。また、1970年代には、わが国の橋爪 壮氏がヒト体内での増殖能を不活性化した LC16m8株を開発している16)。現在わが国でテロ対策に備蓄されている天然痘ワクチン(痘そうワクチン LC16「KMB」)は LC16m8株由来であり、自衛隊での小規模な研究であるが免疫原性と安全性は確認されている17)。一方、欧米ではMVA由来の新たな製剤が2010年代に開発されて同じく備蓄されている(Bavarian Nordic社による開発で通称 MVA-BN、商品名は国・地域ごとに異なる)18)。ワクシニアウイルスによるワクチンとオルソポックスウイルス属の交叉抗原性上記の歴史からわかる通り、天然痘ワクチンは天然痘ウイルス自体が原料ではなく、同じオルソポックスウイルス属である牛痘ウイルス(誕生当時)またはワクシニアウイルス(現代)が原料である。同じウイルス属とはいえ異なる種のウイルスを用いたにもかかわらず、このワクチンは天然痘ウイルスを根絶するほどの効果を示した。他のワクチン予防可能疾患において、異なる種の病原体を原料としたワクチンが充分な効果を示した例はない。すなわち、オルソポックスウイルス属は種同士の交叉抗原性が非常に強いと言える。属内での交叉抗原性の強さから、天然痘ワクチンを同じくオルソポックスウイルス属であるサル痘ウイルスの予防にも応用する発想につながる。サル痘予防としての天然痘ワクチン今回の世界的流行以前にも、サル痘はアフリカでアウトブレイクを繰り返し、時に非常在国での小規模アウトブレイクも起こしてきた19)。繰り返すが、サル痘ウイルスは天然痘ウイルスや牛痘ウイルス/ワクシニアウイルスと同じオルソポックスウイルス属である。属内の交叉抗原性が強いことの証左として、アフリカでのサル痘アウトブレイクで天然痘ワクチン(種痘)が結果的に奏効した実績がある。1980年代の古い観察研究ではあるが、当時のザイール(現コンゴ民主共和国)でのサル痘アウトブレイク時に、濃厚接触者の種痘歴の有無と発症の関連を調査したものがある。これによると、種痘歴がある場合の濃厚接触後発症は、種痘歴なしでの濃厚接触後発症に比べて、相対リスク減少が85.9~87.1%であった(※データから著者算出)20)。すなわち、種痘歴があることでサル痘発症リスクが80%以上低減された可能性がある。こうした知見からサル痘コントロール目的に天然痘ワクチンの接種が検討され、各国でのアウトブレイク時には適応外使用として接触者に曝露後接種されることもあった19)。しかし、天然痘ワクチンによるサル痘ヒト感染の予防効果を直接検証した質の高い介入研究はいまだ発表されてない。また、天然痘根絶後の天然痘ワクチンに関する研究のほとんどは、接種後(種痘後)の中和抗体上昇などの免疫学的指標および安全性評価に留まる。根絶前のかなり限定的な観察から、中和抗体価と天然痘の感染阻止にはある程度の相関があることが示唆されてはいるが21)、絶対的な感染阻止指標と証明されたわけではない。ましてや、種痘後の中和抗体価がサル痘の感染阻止とどの程度関連するかも不明である。天然痘ワクチンのサル痘予防効果は、真のエンドポイントでの評価がなされていない点に留意が必要である。こうした状況ではあるが、急激な世界的拡大を踏まえてWHOをはじめ世界の各機関は複数の間接的研究結果を根拠に天然痘ワクチンをサル痘予防に用いるよう承認し、推奨接種対象者を公表している。WHOは2022年8月発表の暫定ガイダンスにおいて、第2世代および第3世代ワクチン双方を表2の対象者に、十分な意思決定の共有(shared decision-making)の下に接種するよう推奨している22)。安全性の観点では第3世代が有利といえるが、第3世代はいまだ生産量および備蓄量が少ないため、世界全体のバランスを重視するWHOの立場としては第2世代も同程度に推奨していると考えられる。表2  WHOによる天然痘ワクチンのサル痘予防使用の推奨対象者画像を拡大する米国は天然痘予防に承認済みの第2世代 ACAM2000 および第3世代 MVA-BN(商品名:JYNNEOS)の計2種をサル痘予防に緊急承認し、欧州も同じく第3世代 MVA-BN(同:IMVANEX)をサル痘予防に承認し、それぞれにWHOと類似の対象者向けに接種を推奨している23)。なお米国では第2世代 ACAM2000 は第3世代 MVA-BN(JYNNEOS)の代替品substituteの位置付けである。わが国でも2022年8月に、天然痘に承認済みの第3世代 LC16m8株「痘そうワクチンLC16『KMB』」の適応にサル痘予防が追加された24)。接種対象者の選定について同9月現在で厚生労働省からは公式な発表はないが、厚生科学審議会で議論が行われている。また、治療薬 tecovirimat の特定臨床研究と並んで、国立国際医療研究センターにおいて同ワクチンの曝露前接種および曝露後接種が共に特定臨床研究として実施されている(同ワクチンの適応追加前に計画されたため、通常の臨床研究ではなく特定臨床研究が選択された)。わが国もサル痘侵入に対して迅速に対応していると言えよう。おわりに2022年9月時点ではわが国へのサル痘侵入例は数えるほどであり、諸外国のような国内感染拡大には至っていない。一般医療機関でサル痘患者に対応したり、天然痘ワクチンを接種する状況からは、現時点では程遠い。よって現状ではワクチンの接種手技や副反応などに通暁する必要は乏しく、本稿では天然痘ワクチンの歴史とサル痘流行における現状を整理するに留めた。しかし、新型コロナウイルス同様、国内感染例がある閾値を超えれば急速に拡大する可能性が常にある。読者には最新情報を収集していただくと共に、天然痘ワクチン接種が広範囲の医療機関で実施される状況が訪れるならば筆者も情報更新に努めたい。参考となるサイト厚生労働省 サル痘について1)WHO Disease Outbreak News. Monkeypox-United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland.; 2022.(2022年8月8日閲覧)2)WHO. Second Meeting of the International Health Regulations (2005) (IHR) Emergency Committee Regarding the Multi-Country Outbreak of Monkeypox.; 2022.(2022年8月8日閲覧)3)WHO. Multi-Country Outbreak of Monkeypox --- External Situation Report 6, Published 21 September 2022.2022.(2022年9月22日閲覧)4)厚生労働省. サル痘について. Published 2022.(2022年9月21日閲覧)5)Parker S, et al. Future Virol. 2013;8:129-157.6)WHO. Monkeypox: Experts Give Virus Variants New Names.2022.(2022年8月21日閲覧)7)Benites-Zapata VA, et l. Ann Clin Microbiol Antimicrob. 2022;21:36.8)厚生労働省. サル痘 感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について.(2022年9月9日閲覧)9)Martin DB. Mil Med. 2002;167:546-551.10)Jenner E. An Inquiry into the Causes and Effects of the Variolae Vaccinae.; 1802.(2022年9月9日閲覧)11)平山宗宏. 小児感染免疫. 2008;20:65-71.12)Arness MK, et al. Am J Epidemiol. 2004;160:642-651.13)Eckart RE, et al. J Am Coll Cardiol. 2004;44:201-205. 14)Lin AH, et al. Mil Med. 2013;178:18-20.15)Engler RJM, et al. PLoS One. 2015;10:e0118283.16)橋爪 壮. 小児感染免疫. 2011;23:181-186.17)Saito T, et al. JAMA. 2009;301:1025-1033.18)Volz A, et al. Adv Virus Res. 2017;97:187-243.19)Simpson K, et al. Vaccine. 2020;38:5077-5081.20)Jezek Z, et al. Bull World Health Organ. 1988;66:465-470.21)Sarkar JK, et al. Bull World Heal Organ. 1975;52:307-311.22)WHO. Vaccines and Immunization for Monkeypox - Interim Guidance 24 August 2022.2022.(2022年9月9日閲覧)23)UKHSA. Recommendations for the Use of Pre-and Post-Exposure Vaccination during a Monkeypox Incident - Updated 26 August 2022.2022.(2022年8月26日閲覧)24)医薬・生活衛生局医薬品審査管理課. 審議結果報告書 乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」.2022.(2022年10月6日閲覧)講師紹介

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英語で「代わりに診てくれませんか?」は?【1分★医療英語】第51回

第51回 英語で「代わりに診てくれませんか?」は?Could you please cover my patients this weekend?(今週末、私の患者さんを代わりに診てくれませんか?)Sure, I can deal with it.(もちろん、引き受けますよ)《例文1》I’m going to explain the test result on behalf of Dr. Green.(グリーン先生の代わりに検査結果を説明します)《例文2》You can take paracetamol instead of ibuprofen.(イブプロフェンの代わりにパラセタモールを内服しても構いません)《解説》日本語の「代わりに~する」に当たる表現は英語では複数あり、それぞれ少しずつニュアンスが異なります。日本語でも仕事などを「カバーする」という言い方はよく使われますが、英語でも同様に、“cover”は「代わりに」引き受けるといった意味があります。「何かの代わりに」もしくは「自分の代わりに」という意味をより強めたい場合には、“instead of〜”または“on behalf of”や“on one’s behalf”といった表現が使われます。また、“instead of〜”では、痛み止めとしてのパラセタモールかイブプロフェンかといった「代わったものも同等である」という印象をもたらすのに対し、“on behalf of”または“on one’s behalf”では、「元の何かに代わって“代表して”対応する」といったニュアンスが加わります。たとえば、“I cannot attend the conference, so my colleague will give a presentation on my behalf”(私は学会に参加できないので、私の同僚が代わりにプレゼンを行います)といった使い方をします。講師紹介

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コロナ治療薬モルヌピラビル、早期投与で回復までの期間短縮に期待/MSD

 MSDは10月19日、一般流通を9月16日に開始した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)について、承認後の最新情報として特定使用成績調査の中間報告などをメディアセミナーにて発表した。調査の結果、添付文書の改訂が必要になるような大きな安全性事象は認められなかったことや、外来患者に使用した際の転帰として死亡はなく、人工呼吸器の使用も低く抑えることができたとして、本剤の有効性が提示された。 同社代表取締役社長のKyle Tattle氏によると、本剤は国内にて2021年12月24日に特例承認を取得し、これまでに60万人以上に使用されたという。本剤は、承認当初は供給量が限られていたため、厚生労働省が所有したうえで、重症化リスクのある患者に、決められた流通網を通して医療機関や薬局に配分が行われていたが、供給量が増加したことで、2022年8月18日に薬価基準収載となり、9月16日には一般流通を開始した。 白沢 博満氏(同社代表取締役上級副社長兼グローバル研究開発本部長)は、リアルワールドデータを中心に、承認後の最新情報について解説した。2021年12月24日~2022年6月23日に、同剤の販売開始から6ヵ月間行った市販直後調査では、約20万1,710例に本剤が使用され、症例から安全性情報を収集した結果、添付文書の改訂が必要になるような大きな安全性事象は認められなかった。また、調査予定症例数を3,000例として、より詳細な安全性と有効性を評価する特定使用成績調査(2021年12月27日~2024年12月末日予定)において、2022年6月15日までの中間解析結果も公開された。 主な結果は以下のとおり。・安全性解析対象となった1,061例は、年齢中央値68歳、投与開始時点で外来患者696例(65.60%)、入院患者317例(29.88%)、その他(介護保健施設など)4.52%。本剤投与開始前のCOVID-19重症度では、軽症が931例(87.75%)、中等症Iは104例(9.80%)、中等症IIは23例(2.17%)であった。・主な重症化リスク因子は、65歳以上の高齢者が603例(56.83%)で最も多く、次いで高血圧が459例(43.26%)、喫煙が262例(24.69%)であった。・新型コロナワクチンの接種歴がある人は883例(83.22%)で、2回接種は668例(62.96%)であった。・安全性集計の結果、副作用が発現したのは72例(6.79%)であり、4例以上発現した副作用として、下痢(26例)、発疹(6例)、浮動性めまい(5例)、軟便(4例)が報告された。重篤な副作用の発現は4例で、発疹、肝機能異常、COVID-19増悪、間質性肺炎増悪であった。・有効性解析対象となった1,021例は、外来患者658例(うち最終アウトカム不明29例)、入院患者315例、その他(介護保健施設など)48例。・外来患者における本剤投与開始日から29日までの入院(隔離入院・検査入院などの投与前から予定していた入院を除く)は17例(2.70%)、死亡は0例であった。・入院患者における本剤投与開始日から29日までの死亡は2/254例(0.79%)、酸素投与開始あり13/247例(5.26%)、酸素投与または機械的人工換気(ECMO含む)開始あり13/247例(5.26%)であった。複合エンドポイントでは発現率は5.49%であった。 本結果に加え、白沢氏はモルヌピラビルについて海外で実施された臨床試験についても言及した。査読前論文ではあるが、英国・オックスフォード大学で実施されたPANORMIC試験の結果によると、約2万6,000例(平均年齢56.6歳、ワクチン接種済約99%)において、最初の完全回復までの期間(中央値)が、モヌルピラビル群は9日間、非モヌルピラビル群が15日となり、本剤投与によって6日間短縮されたことが認められた。 続いて登壇した相良 博典氏(昭和大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門 主任教授)は、COVID-19の治療の現状と経口治療薬への期待について講演した。昭和大学病院における新型コロナ治療薬の使用状況について、モルヌピラビルは、軽症患者75例に対して重症化予防のために使用された結果、人工呼吸器の使用症例が0%となり、本剤は効果のある薬剤として位置付けていると述べた。また、新型コロナ感染による後遺症についても、今後はより早期に治療介入することで後遺症の症状も抑えられる可能性があるという。本剤の一般流通開始への期待として、発症早期(5日以内など)に使用できるようになるため重症化防止を促進することや、入院リスクの高い高齢者へ早期に使用することで、負担する医療費や、入院による合併症、ADLの低下といった入院に伴うリスクを低減できることを挙げた。若年者でもサイトカインストームで重症肺炎の死亡率が高くなるため、抗インフルエンザウイルス薬のように軽症者から早期に使える薬剤としても期待できると述べた。

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かかりつけ医も知っておきたい、コロナ罹患後症状診療の手引き第2版/厚労省

 厚生労働省は、2022年6月に公開した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1.1版)」を改訂し、第2版を10月14日に発表し、全国の自治体や関係機関などに周知を行った。 主な改訂箇所としては、・第1章の「3.罹患後症状の特徴」について国内外の最新知見を追加・第3~11章の「2.科学的知見」について国内外の最新知見を追加・代表的な症状やキーワードの索引、参考文献全般の見直しなどが行われた。 同手引きの編集委員会では、「はじめに」で「現在、罹患後症状に悩む患者さんの診療や相談にあたる、かかりつけ医などやその他医療従事者、行政機関の方々に、本書を活用いただき、罹患後症状に悩む患者さんの症状の改善に役立ててほしい」と抱負を述べている。1年後に多い残存症状は、疲労感・倦怠感、呼吸困難、筋力低下/集中力低下 主な改訂内容を抜粋して以下に示す。【1章 罹患後症状】「3 罹患後症状の特徴」について、タイトルを「罹患後症状の頻度、持続時間」から変更し、(罹患者における研究)で国内外の知見を追加。・海外の知見 18報告(計8,591例)の系統的レビューによると、倦怠感(28%)、息切れ(18%)、関節痛(26%)、抑うつ(23%)、不安(22%)、記憶障害(19%)、集中力低下(18%)、不眠(12%)が12ヵ月時点で多くみられた罹患後症状であった。中国、デンマークなどからの研究報告を記載。・国内の知見 COVID-19と診断され入院歴のある患者1,066例の追跡調査について、急性期(診断後~退院まで)、診断後3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月で検討されている。男性679例(63.7%)、女性387例(36.3%)。 診断12ヵ月後でも罹患者全体の30%程度に1つ以上の罹患後症状が認められたものの、いずれの症状に関しても経時的に有症状者の頻度が低下する傾向を認めた(12ヵ月後に5%以上残存していた症状は、疲労感・倦怠感(13%)、呼吸困難(9%)、筋力低下/集中力低下(8%)など。 入院中に酸素需要のあった重症度の高い患者は、酸素需要のなかった患者と比べ3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。 入院中に気管内挿管、人工呼吸器管理を要した患者は、挿管が不要であった患者と比べて3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。 罹患後症状に関する男女別の検討では、診断後3ヵ月時点で男性に43.5%、女性に51.2%、診断後6ヵ月時点で男性に38.0%、女性に44.8%、診断後12ヵ月時点で男性に32.1%、女性に34.5%と、いずれの時点でも罹患後症状を1つでも有する割合は女性に多かった。(非罹患者と比較した研究) COVID-19非罹患者との比較をした2つの大規模コホート研究の報告。英国の後ろ向きマッチングコホート研究。合計62の症状が12週間後のSARS-CoV-2感染と有意に関連していて、修正ハザード比で大きい順に嗅覚障害(6.49)、脱毛(3.99)、くしゃみ(2.77)、射精障害(2.63)、性欲低下(2.36)のほか、オランダの大規模マッチングコホート研究を記載。(罹患後症状とCOVID-19ワクチン接種に関する研究)(A)COVID-19ワクチン接種がCOVID-19感染時の罹患後症状のリスクを減らすかどうか(B)すでに罹患後症状を認める被験者にCOVID-19ワクチン接種を行うことでどのような影響が出るのか、の2点に分け論じられている。(A)低レベルのエビデンス(ケースコントロール研究、コホート研究のみでの結果)では、SARS-CoV-2感染前のCOVID-19ワクチン接種が、その後の罹患後症状のリスクを減少させる可能性が示唆されている。(B)罹患後症状がすでにある人へのCOVID-19ワクチン接種の影響については、症状の変化を示すデータと示さないデータがあり、一定した見解が得られていない。「5 今後の課題」 オミクロン株症例では4.5%が罹患後症状を経験し、デルタ株流行時の症例では10.8%が罹患後症状を経験したと報告されており、オミクロン株流行時の症例では罹患後症状の頻度は低下していることが示唆されている。揃いつつある各診療領域の知見 以下に各章の「2.科学的知見」の改訂点を抜粋して示す。【3章 呼吸器症状へのアプローチ】 罹患後症状として、呼吸困難は20〜30%に認め、呼吸器系では最も頻度の高い症状であった。年齢、性別、罹患時期などをマッチさせた未感染の対照群と比較しても、呼吸困難は胸痛や全身倦怠感などとともに、両者を区別しうる中核的な症状だった。【4章 循環器症状へのアプローチ】 イタリアからの研究報告では、わずか13%しか症状の完全回復を認めておらず、全身倦怠感が53%、呼吸困難が43.4%、胸痛が21.7%。このほか、イギリス、ドイツの報告を記載。【5章 嗅覚・味覚症状へのアプローチ】 フランス公衆衛生局の報告によると、BA.1系統流行期と比較し、BA.5系統流行期では再び嗅覚・味覚障害の発生頻度が増加し、嗅覚障害、味覚障害がそれぞれ8%、9%から17%に倍増した。【6章 神経症状へのアプローチ】 中国武漢の研究では、発症から6ヵ月経過しても、63%に疲労感・倦怠感や筋力低下を認めた。また、発症から6週間以上持続する神経症状を有していた自宅療養者では、疲労感・倦怠感(85%)、brain fog(81%)、頭痛(68%)、しびれ感や感覚障害(60%)、味覚障害(59%)、嗅覚障害(55%)、筋痛(55%)を認めたと報告されている。【7章 精神症状へのアプローチ】 罹患後症状が長期間(約1年以上)にわたり持続することにより、二次的に不安障害やうつ病を発症するリスクが高まるという報告も出始めている。【8章 “痛み”へのアプローチ】 下記の2つの図を追加。 「図8-1 COVID-19罹患後疼痛(筋痛、関節痛、胸痛)の経時的変化」 「図8-2 COVID-19罹患後疼痛の発生部位」 COVID-19罹患後に身体の痛みを有していたものは75%で、そのうち罹患前に痛みがなかったにも関わらず新規発症したケースは約50%と報告されている。罹患後、新規発症した痛みの部位は、広範性(20.8%)、頸部(14.3%)、頭痛、腰部、肩周辺(各11.7%)などが報告され、全身に及ぶ広範性の痛みが最も多い。 【9章 皮膚症状へのアプローチ】「参考 COVID-19と帯状疱疹[HZ]の関連について」を追加。ブラジルでは2017〜19年のCOVID-19流行前の同じ間隔と比較して、COVID-19流行時(2020年3〜8月)のHZ患者数は35.4%増加した。一方、宮崎での帯状疱疹大規模疫学研究では、2020年のCOVID-19の拡大はHZ発症率に影響を与えなかったと報告。    【10章 小児へのアプローチ】 研究結果をまとめると、(1)小児でも罹患後症状を有する確率は対照群と比べるとやや高く、特に複数の症状を有する場合が多い、(2)年少児は年長児と比べて少ない、(3)症状の内訳は、嗅覚障害を除くと対照群との間に大きな違いはない、(4)対照群においてもメンタルヘルスに関わる症状を含め、多くの訴えが認められる、(5)症例群と対照群との間に罹患後症状の有病率の有意差を認めない、(6)小児においてもまれに成人にみられるような循環器系・呼吸器系などの重篤な病態を起こす可能性があるといえる。【11章 罹患後症状に対するリハビリテーション】 2022年9月にWHOより公表された"COVID-19の臨床管理のためのガイドライン"の最新版(第5版)では、罹患後症状に対するリハビリテーションの項が新たに追加され、関連する疾患におけるエビデンスやエキスパートオピニオンに基づいて、呼吸障害や疲労感・倦怠感をはじめとするさまざまな症状別に推奨されるリハビリテーションアプローチが紹介されている。 なお、本手引きは2022年9月の情報を基に作成されており、最新の情報については、厚生労働省などのホームページなどから情報を得るように注意を喚起している。

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学会スライド、適切な配色とデザインとは?【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第2回

学会スライド、適切な配色とデザインとは?1)デザインの指定があるか確認しよう2)学会発表スライドはシンプルなデザインに3)見やすい配色を意識しよう学会発表のスライドづくりに取り組む際、つくり始める前に決めておくとよいのが、「スライドのデザイン」です。全体のデザインを後から修正しようとすると相当な労力がかかってしまうため、事前の準備が肝心です。まず、自分でデザインを考える前に、発表する学会からの指定・指示がないかどうかを確認しましょう。パワーポイントのスライドのサイズは4:3と16:9の2種類があり、サイズが指定されていることも多いため、学会のサイトなどで念入りなチェックが必要です。また、共同演者の上司・教授の好みのデザインがある可能性もあるため、事前に確認をしておくことをお勧めします。なお、すべてのスライドに病院や医局のロゴを入れたい場合には、第1回で紹介した「スライドマスター」の機能を活用することで、一括で挿入できます〈図1〉。ただ、これを行うと各スライドで使用できるスペースが狭くなり、スライド全体の邪魔になってしまうため、私としてはロゴを入れるのはタイトルスライドに留めておくのがよいと思います。〈図1〉では、学会からの指定がない場合には、どのようなデザインを選べばよいでしょうか。「自分の個性を出したい」という気持ちにもなりますが、原則として、学会発表のスライドは、シンプルで見やすいデザインにすることをお勧めします。派手なデザインや配色のスライドではデザインに注目が集まってしまい、発表内容に集中してもらいにくくなるためです。なお、パワーポイントにはさまざまなデザインテンプレートがデフォルトで用意されていますが、カラフルで派手なものが多いため、初心者にはあまりお勧めできません。見やすいスライドのパターンには大きく2つあります。1)白や薄い灰色を背景色に黒色のテキストを用いる〈図2〉2)黒や紺を背景色に白や黄色のテキストを用いる〈図3〉あとは好みで選べばよいのですが、画像やグラフとの相性が良いことから、こだわりがなければ白背景をお勧めします。〈図2〉〈図3〉スライドのその他の配色もなるべく統一したほうがよく、プレゼンを通して、スライドで使う色は全体で3色以内に抑えるのがポイントです。具体的には、1)基本の文字色2)スライドのメイン色3)強調色を決め、基本の文字色が70%、メイン色が25%、強調色が5%というバランスでスライドを作成すると見やすくなります。この時に、強調色はメイン色と色相が逆のものを選ぶことがコツです。例を〈図4〉に示しています。メイン色にえんじ色を選び、タイトルやその下の横線、箇条書きのブロックに使用する強調色を青色にしています。このように、白背景、黒文字をベースにし、さらに2色を追加することでバランスの良いスライドをつくることができます。なお、このデザインの設定も「スライドマスター」を使うことで、すべてのスライドに反映することができます。〈図4〉講師紹介

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066)皮膚科とフェイスシールドって【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第66回 皮膚科とフェイスシールドってゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆新型コロナ対策で導入されたフェイスシールド。皮膚科外来でも診察時は着用する旨、お達しがきております。フェイスシールドもメガネタイプの比較的シールドがクリアーなものはよいのですが、ゴムバンド形式の簡易的なものは視界が悪く、皮疹を診る皮膚科とは相性があまりよろしくないようです。結局は患部の診察のため、シールドを上げて直接診ることも少なくありません。顕微鏡を覗くにも障害となるフェイスシールド。「皮膚科とは相性がよくないわ~」などと思っていたのですが、爪切り処置だけは違いました。高齢患者さんの分厚い爪。まわりに飛び散らないよう、手でガードしながら切ってはいるのですが(掃除のことを考え)、集中しているうち、やはり飛び散ってしまうことも…。顔に向かって飛んでくることも多々あるのですが、そんなとき、フェイスシールドが飛来する爪からばっちりガードしてくれました。このときばかりは効果がバツグン!新型コロナが落ち着いてシールド不要となっても「爪切りのときだけは使おうかな~」などと思ってしまいました。顔が守られている安心感!ささいな診療小ネタですが、「フェイスシールド便利だな~」と思った皮膚科の処置のお話でした~。それでは、また〜!

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英語で「~する気分です」は?【1分★医療英語】第50回

第50回 英語で「~する気分です」は?Do you want to walk in the hallway?(廊下を歩いてみますか?)No, I don’t feel up to it today.(いいえ、今日はそんな気分ではありません)《例文1》医師I think you can go home today if you feel up to it.(もし良ければ、今日退院でも良いと思います)患者Sure I do! (はい、そうします!)《例文2》医師What is bothering you?(何が気になりますか?)患者Breathing feels heavy. I do not feel up to going out today.(息苦しい感じがします。今日は外に出たくないです)《解説》“feel up to it”は「~をやれそうに思う」といった意味の表現で、一般的には否定形やifを伴う条件文の中で使われます。“want to”(~したい)に似ていますが、「~をする気分だ」という、より感情に寄り添った希望を表す表現です。臨床の場面では、医学的にはどちらでもよい選択肢を提示する時や、何かを提案する時に“if you feel up to it”(~したければ)と付けることで患者さん側に決めてもらうことができます。強制力が弱いので、さまざまな場面で使いやすい表現です。友人同士の会話でも、何かを控えめに誘うときなどにも使えますので、ぜひ使ってみてください。講師紹介

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10月18日 統計の日【今日は何の日?】

【10月18日 統計の日】〔由来〕わが国最初の近代的統計である「府県物産表」に関する太政官布告が公布された日にちなみ、統計の重要性に対する国民の関心と理解を深め、統計調査に対する国民のより一層の協力を求めることを目的に、1973年に閣議了解で定められた記念日。関連コンテンツ統計のそこが知りたい!わかる統計教室臨床研究で役立つ統計解析 ~生存分析を中心に~【お役立ち】感度、特異度、的中率(検査精度の指標)【患者説明用スライド】新型コロナワクチンの有効率とは【患者説明スライド】

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第134回 コロナ感染から1年後も続く症状は1年半後もおよそ解消せず/オミクロン株ワクチンは無駄ではない

コロナ感染から1年後も続く症状は1年半時点でもおよそ解消せずそのまま新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状、いわゆるコロナ後遺症(コロナ罹患後症状)はジャニーズ事務所のアイドルも自身のその病状を今や公言するなど1)、世間に広く知られるようになりました。COVID-19流行は2019年の後半から始まっておよそ3年が経ち、コロナ罹患後症状の長期追跡の結果も報告されるようになりました。英国でのそのような長期追跡の新たな報告によると、コロナ罹患後症状が感染から1年後もあるようならその半年後までの解消はおよそ期待できず1年半時点でもそのまま持ち越されるようです2-4)。試験では英国・スコットランドの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者3万3,281人とそうでない6万2,957人が18ヵ月間追跡されました。発症した感染者3万1,486人のうち1,856人(6%)は最後の観察時点(most recent follow-up)で症状がまったく回復しておらず(非回復)、半数近い1万3,350人(42%)はある程度ましになったものの完全回復には至っていませんでした(部分回復)。感染後6ヵ月と12ヵ月時点での記録がある3,744人に限った解析での非回復、部分回復、完全回復は6ヵ月時点ではそれぞれ295人(8%)、1,766人(47%)、1,683人(45%)、12ヵ月時点でもほぼ変化なしのそれぞれ303人(8%)、 1705(46%)、1736人(46%)でした。また、感染後12ヵ月(1年)時点と18ヵ月(1年半)時点での記録がある197人に限った解析での非回復、部分回復、完全回復は1年時点ではそれぞれ21人(11%)、100人(51%)、76人(39%)、1年半時点ではそれぞれ21人(11%)、101人(51%)、75人(38%)でした。今回の結果によると感染から1年後に不調の人のほとんどはその半年後の1年半時点でも回復しないままのようです。無症状の感染と罹患後症状やその他の有害転帰(生活の支障、入院、救急受診、死亡)の関連は認められず、罹患後症状は感染症が重度だった人により生じていました。感染前のワクチン接種で罹患後症状を予防しうるとの一文で報告は締めくくられています2)。オミクロン株ワクチンは無駄ではないModerna社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株BA.1対応ワクチンmRNA-1273.529を追加接種した人の抗体を解析した試験報告5)によると、どうやらオミクロン株対応ワクチンは将来の新参株と戦う準備をも免疫系に備えさせる働きがあるようです6)。試験では26人のリンパ節検体と15人の骨髄検体が解析され、使いまわしのB細胞ではなく新品のB細胞をおそらく起源とするBA.1認識抗体が検出されました。その結果によると、BA.1のような変異株へのワクチン接種は先立つワクチン接種で備わったいわば使い古しのB細胞に免疫が固執(imprinting)してしまうのを乗り越え、新品のB細胞を手配して変異株に順応できるようにする働きがあるようです。また、元祖ワクチン接種を済ませたもののオミクロン株に感染した6人を調べた別の研究7)ではそういう順応が時を経るにつれて成熟していくことが示されています。オミクロン株感染から1ヵ月時点でのそれら6人の抗体はオミクロン株BA.1より元祖株にもっぱらより結合しましたが、感染から半年経つと6人のおよそ半数のB細胞は元祖株よりオミクロン株BA.1により結合する抗体を作るようになっていました6)。つまり感染後の免疫は時とともに成熟しました。新たな流行を引き起こす新参の次世代ウイルス株はその直前に流行った先代株やその先代株へのワクチンの抗原に元祖株より似通い、新参株に直面した免疫はその新参株に最も近い抗原に応じる既存のB細胞をまずは活性化します。よって、目下流行中のウイルス株へのワクチンを用意することは、その上手を行く新参株がやがて出現するにせよ価値があるでしょう6)。参考1)藤ヶ谷太輔、コロナ後遺症に悩むリスナーにメッセージ「僕も不安になりました」/マイナビニュース2)Hastie CE, et al. Nat Commun.2022;13:5663. 3)Long COVID at 12 months persists at 18 months, study shows / Reuters4)Long COVID Features Many Lasting Effects, Study Says / WebMed5)SARS-CoV-2 Omicron boosting induces de novo B cell response in humans. bioRxiv. September 22, 2022. 6)Omicron boosters could arm you against variants that don’t yet exist / Nature7)Evolution of antibody immunity following Omicron BA.1 breakthrough infection. bioRxiv. September 22, 2022.

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診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回

第43回 診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント医業承継とは、後継者不在の開業医が、診療所を第三者に承継・譲渡する取り組みです。最近、医業承継が注目されている背景には、国内で急速に進む少子高齢化があります。開業医の平均年齢は60歳を超えて上がり続けており、子供が医師でない、医師ではあっても診療所を引き継ぐ予定はない、という開業医にとって、第三者への承継は大きな選択肢です。ケアネットのグループ会社、ケアネットワークスデザインは、2020年に医業承継サービスを開始しました。医業承継は売り手、買い手、患者、スタッフそれぞれにメリットがある「四方良し」の取り組みです。売り手:譲渡対価が得られる。患者やスタッフが継続して通院、継続して勤務できる環境を残すことができる。買い手:患者を引き継ぐことができ、開業資金を抑えられるためリスクの少ない開業ができる。患者:通い慣れた診療所に継続して通院できる。診療記録も引き継がれる。スタッフ:慣れた職場に継続して勤務できる。今回、CareNet.com上で連載した医業承継の実際がわかるマンガコラム「ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソ」が冊子にまとまりました。マンガと解説で、売り手・買い手の医師双方の立場から、陥りやすい失敗や注意すべきポイントをわかりやすくまとめています。医業承継を詳しく知りたい医師の方に無償でお配りしておりますので、ご希望の方は下記のフォームより、必要事項を記入のうえ、お申し込みください(先着30名様)。▼申込みURLはこちらhttps://career.carenet.com/lp/221012/※締め切り:2022年10月21日(金)※結果は発送をもって替えさせていただきます。

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片頭痛患者のスマホ使用が痛みの強さや治療に及ぼす影響~多施設横断比較研究

 スマートフォンユーザーは、世界中で飛躍的に増加している。スマートフォン使用中または使用後にみられる症状として、頭痛、睡眠障害、物忘れ、めまい、その他の疾患などが挙げられる。また、片頭痛は身体的衰弱を伴う疾患であり、身体障害の原因として世界で2番目に多い疾患といわれている。パキスタン・Jinnah Medical and Dental CollegeのMehwish Butt氏らは、スマートフォンの使い過ぎが片頭痛患者の障害レベル、痛みの強さ、睡眠の質、全体的なQOLにどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、スマートフォンの使い過ぎは、片頭痛患者の痛みを増強させ、薬物治療効果を減弱させる可能性が確認された。このことから著者らは、片頭痛患者は症状悪化を避けるために、スマートフォンの使用を制御することが推奨されるとしている。Brain and Behavior誌オンライン版2022年9月20日号の報告。 スマートフォン依存傾向尺度(Mobile Phone Problematic Use Scale)を用いて、片頭痛患者をスマートフォン使用率の高い群(HMPUG)と低い群(LMPUG)に分類した。各尺度等を用いて、両群における患者の障害レベル(片頭痛評価尺度[MIDAS])、痛みの強さ(VAS)、睡眠の質(ピッツバーグ睡眠質問票[PSQI])、日中の眠気(エプワース眠気尺度)、QOL(24時間片頭痛QOLアンケート)の評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象者数は400例(女性:263例[65.8%]、男性:137例[34.3%])。・回答者の平均年齢は、27.59±9.79歳であった。・家族の平均人数は、5.98±2.3251人であった。・HMPUGは、LMPUGと比較し、痛みの強さ、睡眠の質の低下、薬物治療効果の減弱が認められた(p<0.05)。・しかし、LMPUGでは、片頭痛の持続時間および治療薬の投与量の増加が報告された(p<0.05)。

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簡易懸濁法による服薬介助のため、細粒からOD錠への変更を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第51回

 今回は、簡易懸濁法で服薬管理している患者さんの処方提案です。そのまま継続でも問題ない処方内容ですが、服薬介助の負担や薬局の作業効率の向上などの理由から薬剤を変更することを提案しました。患者情報90歳、女性(施設入居)基礎疾患認知症、高血圧、心房細動服薬管理施設看護師処方内容1.エドキサバン口腔内崩壊錠30mg 1錠 分1 朝食後2.オルメサルタン口腔内崩壊錠10mg 1錠 分1 朝食後3.メマンチン口腔内崩壊錠20mg 1錠 分1 朝食後4.ニフェジピン腸溶細粒2% 2包 分2 朝夕食後5.ビソプロロールフマル酸塩錠2.5mg 1錠 分1 朝食後6.経腸成分栄養剤(9-2)液 1,200mL 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは、経口摂取が困難で長期的に回復が見込めないことから、施設入居前に胃瘻を造設して経口投与から経管投与への切り替えを行っていました。施設入居後に当薬局が介入することになりましたが、1日1回服用の薬が多いのに、ニフェジピン腸溶細粒のみ1日2回であったことから、現場の負担が大きいのではないか気になりました。また、薬局側としても、ニフェジピン腸溶細粒だけ別包のため、ホチキスでまとめるという作業が発生し、その一手間が積み重なると作業効率の妨げとなる恐れがありました。医師の初診に立ち会う前に看護師に確認したところ、やはり朝食後の服用だけにまとめられないかという相談がありました。そこで、1日1回服用かつ口腔内崩壊錠でまとめると簡易懸濁による服薬介助が楽になるのではないかと考えました。なお、血圧は120〜140/60〜80台で安定していました。処方提案と経過ニフェジピン腸溶細粒をアムロジピン口腔内崩壊錠2.5mg 1錠 朝食後へ変更できないか相談することにしました。アムロジピン口腔内崩壊錠であれば作用時間が長く1日1回の服用のため、朝食後の服用薬とタイミングを合わせることが可能です。また、口腔内崩壊錠ですので、簡易懸濁法で容易に崩壊することができます。これらのことから現場の介護負担が減り、薬局の作業効率も改善するのではないかと考えました。医師の診察に立ち会って上記の提案をしたところ「やってみましょう」ということになり、翌日から変更となりました。看護師に変更内容と、今後は血圧推移に注意しながらモニタリングすることを伝えました。処方変更後の血圧は120~130/70~80台で、その後もとくに変動することなく施設生活を続けています。

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まだまだ続く後発品の供給不安、加算の臨時的取り扱いが延長へ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第98回

後発医薬品の入手が困難になってから、1年半が経ちました。医薬品卸会社や医師、患者さんの協力を得てなんとか後発医薬品の調剤割合が維持できているという薬局も少なくないのではないでしょうか。その後発医薬品の供給不安に対して、以下のような対応が発表されました。後発医薬品の供給不安が続いていることを踏まえ、厚生労働省は9月末までの臨時的な措置としていた後発品調剤体制加算や後発品使用体制加算などに関する臨時的な取り扱いを半年間、延長する。仕組みはこれまでと変わらないが、後発品使用割合の実績を算出する際に対象から除外してもよい品目リストは更新。7月1日時点の供給状況を踏まえて87成分1457品目の新たなリストを示した。10月診療分から適用し、2023年3月末まで。29日付で事務連絡を出した。(2022年9月30日付 日刊薬業Web)小林化工のGMP違反が発覚したのが2020年末で、後発医薬品の欠品や出荷調整などの供給不安が薬局運営に影を落とし始めたのが2021年春ごろでした。そのような状況を受け、2021年9月21日より後発医薬品に係る施設基準の臨時的な取り扱いが発表され、一部の供給停止品目と同一成分・同一投与形態の医薬品は、後発医薬品の調剤(使用)割合を算出する際に除外してもよいとされました。しかし、その後も供給不安は継続し、2022年3月4日に追加の通知が出され、臨時的な取り扱いが2022年9月30日まで延長されました。今回の対応により引き続き10月以降も適用となり、2023年3月末まで継続されることになりました。目的と内容に変更はありませんが、今回の通知の発出と併せて除外する品目リストが更新されていますので要チェックです。後発医薬品調剤割合の維持が大きな負担56.2%さて、この後発医薬品の供給状況や措置に関して、他の薬局はどのような状況なのでしょうか。2022年9月8日に保険薬局協会(NPhA)が公表したアンケート結果では、「後発医薬品調剤割合を維持するための負担はあるか」という問いに対し、「大きな負担である」という回答が2020年7月は8.5%でしたが、2021年8月は60.8%に爆上がりしています。その後も2022年1月は66.1%、2022年8月は56.2%と高い割合が続き、使用割合を維持するための負担がまだまだ大きいようです。また、「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱い」の通知による後発医薬品調剤体制加算への影響については、「加算ランクへの影響がなかった」が1位で77.7%、「加算ランクのダウンが回避された」が2位で16.4%、「加算ランクがアップした」が3位で5.9%でした。臨時的な取り扱いによって加算ランクをキープやアップできた薬局があってよかったと思います。加算ランクがギリギリという薬局は、更新された除外する品目リストを確認してみてはいかがでしょうか。個人的には、小林化工に端を発した五月雨的な供給不安はまだ続くと考えています。後発品調剤体制加算や後発品使用体制加算などに関する臨時的な取り扱いが半年間延長となりましたが、また次も延長になる予感もするため、まだ苦労の日々は続きそうです。

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