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性暴力を受けた女性、精神的・身体的障害の発症リスク増大

親密なパートナーなどからによる性暴力を経験した人は、精神的障害や身体的障害の発症リスクが増大することが明らかにされた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学精神医学校のSusan Rees氏らが、オーストラリア在住の女性4,500人弱を対象にした横断研究の結果を分析し明らかにしたもので、JAMA誌2011年8月3日号で発表した。回答者の27%が、性暴力を経験研究グループは、2007年時点でオーストラリア国内に居住する16~85歳の女性を対象に行われた「Australian National Mental Health and Well-being Survey」に回答した、4,451人の結果を分析した。調査の回答率は65%だった。調査では、親密なパートナーによる暴力、強姦、その他の性的暴行、ストーキングの4種の性暴力経験の有無と、不安障害、気分障害、薬物使用障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症との関係について分析を行った。その結果、いずれかの性暴力を1つでも受けたことがあると答えたのは、回答者の27.4%にあたる1,218人だった。性暴力経験女性の精神的障害発症リスクは7倍、身体的障害発症リスクは4倍なかでも、4種のうち3種以上の性暴力を経験した139人は、不安障害の発症率が77.3%(オッズ比:10.06、95%信頼区間:5.85~17.30)、気分障害が52.5%(オッズ比:3.59、同:2.31~5.60)、薬物使用障害が47.1%(オッズ比:5.61、同:3.46~9.10)、PTSDが56.2%(オッズ比:15.90、同:8.32~30.20)にみられた。また同139人の、いずれかの精神障害の発症率は89.4%(オッズ比:11.00、同:5.46~22.17)、自殺企図が34.7%(オッズ比:14.80、同:6.89~31.60)だった。性暴力を経験した人はそうでない人に比べ、精神的障害の発症リスクは7.14倍、身体的障害の発症リスクは4.00倍だった。特に重度の精神的障害の発症リスクは4.60倍に、また3種以上の精神的障害を有するリスクは7.79倍であることが認められた。その他にも、生活の質の低下(2.96倍)、障害を伴う日の増大(3.14倍)など格差が認められ、全体的障害発症リスクは2.73倍だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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糖尿病性腎症に対するbardoxolone methyl、52週時点でも腎機能改善確認

糖尿病性腎症の治療薬として新規開発中のbardoxolone methylについて、長期効果と用量反応が検証された第2相二重盲検無作為プラセボ対照試験の結果、検討されたいずれの用量群でも、主要アウトカムである24週時点の腎機能の有意な改善が認められ、副次アウトカムである52週時点でも有意な改善が持続していたことが報告された。米国・Renal Associates(テキサス州、サンアントニオ)のPablo E. Pergola氏ら治験研究グループが、NEJM誌2011年7月28日号(オンライン版2011年6月24日号)で発表した。bardoxolone methylは、糖尿病性腎症の慢性炎症および酸化ストレスに着目し開発された経口抗酸化炎症調節薬。試験の結果を踏まえ研究グループは「bardoxolone methylは治療薬として有望である可能性が示された」と結論している。227例をプラセボ群と25mg、75mg、150mg各群に無作為化し52週治療bardoxolone methylの長期有効性を検討する第2相二重盲検無作為プラセボ対照試験は、中等度~重症のCKD(eGFRが20~45mL/分/1.73m2体表面積)を伴う2型糖尿病患者を適格患者として行われた。米国内43施設から集められた573例がスクリーニングを受け、227例が無作為に(1)プラセボ投与群(57例)、(2)bardoxolone methyl 1日1回25mg投与群(57例)、(3)同75mg投与群(57例)、(4)同150mg投与群(56例)に割り付けられ、52週にわたり治療が行われた。4群の基線プロフィールは同等で、平均年齢は67歳、98%がACE阻害薬かARBまたは両方を服薬していた。主要アウトカムは、各治療群の24週時点のeGFRの基線からの変化値で、プラセボ群と比較された。副次アウトカムは、同52週時点の変化値とされた。24週時点で有意な改善、52週時点でも有意な改善持続試験の結果、eGFRの基線からの変化は12週でピーク値を示し、その後、試験期間終了の52週まで比較的安定的に推移していた。24週時点のeGFRの基線からの変化は、bardoxolone methyl各投与群ともプラセボ群との比較で有意な上昇が認められた。eGFR変化の平均値(±SD)は、25mg投与群8.2±1.5mL、75mg投与群11.4±1.5mL、150mg投与群10.4±1.5mLであった(すべての比較のP<0.001)。また、25mg投与群と75mg投与群との変化値の差は有意だったが(P=0.04)、75mg投与群と150mg投与群との差は有意ではなかった(P=0.54)。各投与群のプラセボ群と比較した有意なeGFR上昇は、52週時点でも持続していた[変化値はそれぞれ5.8±1.8mL(P=0.002)、10.5±1.8mL(P<0.001)、9.3±1.9mL(P<0.001)]。bardoxolone methyl各投与群で最も頻度が多かった有害事象は筋痙縮だったが、総じて軽度であり、また用量依存に認められた。その他、よくみられたのが、低マグネシウム血症、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値の軽度上昇、胃腸への影響であった。(武藤まき:医療ライター)

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インドでのロタウイルス自然感染防御効果の研究からわかったこと

ロタウイルス自然感染の防御効果について、ロタウイルス感染死者数が世界で最も多いと報告されているインドでコホート研究を行ったインド・キリスト教医科大学のBeryl P. Gladstone氏ら研究グループは、「アジアやアフリカで、ロタウイルスのワクチン効果が、なぜ予想よりも低いかを説明し得るか」について知見を得られたことを、NEJM誌2011年7月28日号で発表した。「インドでは早期感染、再発頻度が高く、ウイルスが多様であり、結果として、その他地域で報告されているよりも防御効果を低くしている」という。ロタウイルスの防御効果については、メキシコの出生コホート研究で、2度の連続自然感染により、その後に感染しても中等度~重度の下痢症状を完全に防御できるという報告が寄せられていた。Gladstone氏らは、その報告を踏まえて、インド(経口ワクチン効果が一般的に期待されるより低い)の出生コホートについて調査を行った。インドの都市部スラム街の小児373例を3年間追跡研究グループが対象としたのは、インド・Velloreの都市部のスラム街で生まれた小児で、出生後3年間、週2回往診して追跡した。追跡調査期間は2002年3月~2003年8月で、当初452例が登録され、追跡が完了したのは373例だった。調査は、便検体を2週間ごとに集め、酵素免疫測定(ELISA)法およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法でロタウイルス抗原を同定する検査が行われた。なお、下痢症状が認められる期間は2日ごとに便検体を集め検査が行われた。また、血清検体を6ヵ月ごとに採取し、セロコンバージョンの評価(IgG抗体価4倍上昇またはIgA抗体価3倍上昇と定義)が行われた。全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%結果、インドの都市部スラム街では、概して生まれて間もなくロタウイルスに感染している実態が明らかになった。生後6ヵ月までの感染率は56%だった。再感染率は高く、調査期間中の全感染者に占める初感染者の割合はわずか30%だった。中等度~重度疾患に対する防御効果は、感染回数が増すごとに高まってはいたが、感染3回後も防御率は79%にとどまっていた。最もよくみられたウイルス株の遺伝子型はG1P[8](15.9%)で、G2P[4](13.6%)、G10P[11](8.7%)、G9P[8](7.2%)、G1P[4](4.4%)、G10P[4](1.7%)、G9P[4](1.5%)、G12P[6](1.1%)、G1P[6](0.6%)と続いた。同一タイプのウイルス株への初回、再感染リスクについて評価した結果、遺伝子型に基づく明らかな防御効果は認められなかった。これら結果を踏まえGladstone氏は最後に、「インドや同等の地域では、ロタウイルスワクチン戦略を見直すべきことを示す結果であった。投与量や回数を増加したり、ワクチン接種を早期に行う(たとえば新生児のうちの接種、あるいは母親への接種など)ことも考慮していく必要があるだろう」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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中東からの帰還兵に多い呼吸器障害の原因とは

1990年代に配備され最近帰国したイラク、アフガニスタンからの帰還兵では、呼吸器症状の報告が一般的になっているという。米国、英国、オーストラリアで行われた疫学的研究では、他地域配備と比べて中東配備兵での呼吸器障害の発生率増大が報告され、2009年の報告ではイラク内陸部への配備との関連が示されたが、配備中に吸入性傷害を負ったことは明らかになったものの病理学的な検証はなされていない。そこで米国・Meharry医科大学のMatthew S. King氏らは、帰還後に労作時呼吸困難で運動耐容能が低下した80例について症例記述研究を行った。NEJM誌2011年7月21日号掲載報告より。労作時呼吸困難で運動耐容能が低下した80例を評価King氏らが研究対象としたのは、フォート・キャンベル(ケンタッキー)の陸軍病院から運動耐容能評価のため、2004年2月~2009年12月の間に大学病院に紹介されてきた80例の帰還兵であった(配備先:イラクのみ62例、イラクとアフガニスタン17例、アフガニスタンのみ1例)。いずれも配備前は健康であったが、帰還後は呼吸困難のため2マイルランテストの米陸軍基準を達成することができなくなってしまっていた。帰還兵に対し、病歴、曝露歴、身体検査、肺機能検査、CT検査が行われ、非侵襲性評価では症状について説明がつかなかった49例には、さらにバイオプシー検査が行われ、心肺運動負荷検査および肺機能検査データについて、これまで集積されてきた陸軍データ(対照群)との比較が行われた。説明のつかなかった49例はびまん性狭窄性細気管支炎バイオプシー検査が行われたのは49例で、全例に異常が認められ、うち38例は狭窄性細気管支炎であった。残る11例は、その他の診断で呼吸困難の説明がついた。被験者が配備期間中、イラクのモスルで2003年夏に大規模な硫黄鉱山火災があった。その曝露歴は被験者に一般的で、全例には及ばなかったものの、狭窄性細気管支炎と診断された38例では28例に曝露歴が確認された。検査所見については、38例全例が胸部X線所見は正常であったが、胸部CTでは約4分の1に、モザイク状のエアートラッピングまたは小葉中心性結節が確認された。肺機能検査および心肺運動負荷検査の結果は、概して正常範囲内であったが、対照群データよりも劣っていた。King氏は、「説明のつかなかった49例は、バイオプシー検査によりびまん性狭窄性細気管支炎であることが判明した。38例については、おそらく吸入性曝露によるものと思われる」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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座長:岩田健太郎先生「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる:CareNet+Style連携特別企画」

【CareNet+Style連携特別企画】6月12日(日)神戸にて、震災の復興支援活動として災害発生時のリスク・コミュニケーションを考える機会を得ることを目的に、チャリティー・シンポジウムが開催されました。 これは、災害時の記者会見、メディア報道、言葉、コミュニケーションはどうあるべきなのか。当代きっての論客が登場し、東日本大震災時のコミュニケーションのあり方を総括し、あるべき姿を模索したものです。なお、収益は全額寄付し被災地の支援に役立てられます。ケアネットでは、チャリティー・シンポジウムの趣旨に賛同し、映像の撮影、配信、告知をサポートします。※「DocFun」はリニューアルし「CareNet+Style」に生まれ変わりました。1.シンポジウムPR用映像本編はCareNet+Style「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる」をご覧ください視聴者の皆様から義援金を募集しております。振込み先情報は上記ページに記載されております。ご協力賜れますようお願い申し上げます。 2.出演者プロフェール(敬称略、五十音順)※1岩田健太郎 神戸大学都市安全研究センター、大学院医学研究科教授島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、セントルークス・ルーズベルト病院、亀田総合病院などを経て現職。専門は感染症学。著書に『バイオテロと医師たち』『悪魔の味方 米国医療の現場から』『予防接種は「効く」のか?『「患者様」が医療を壊す』『感染症は実在しない』など。上杉隆 ジャーナリスト 都留文科大学卒業。テレビ局・衆議院公設秘書・「ニューヨークタイムズ」東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。政治・メディア・ゴルフなどをテーマに活躍中。自由報道協会(仮) 暫定代表。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『ジャーナリズム崩壊』『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』など多数。内田樹 武道家、思想家。神戸女学院大学名誉教授東京大学卒業。東京都立大学人文科学研究科博士課程中退。同大学助手を経て神戸女学院大学へ異動。2010年3月に同学教授職を退職。神戸女学院合気道会主宰(合気道6段)。著書に『他者と死者 ――ラカンによるレヴィナス』『現代思想のパフォーマンス』『先生はえらい』『私家版・ユダヤ文化論』(第6回小林秀雄賞)『下流志向』『日本辺境論』(2010年新書大賞)『街場のメディア論』ほか多数。2011年 伊丹十三賞受賞。蔵本一也 神戸大学大学院経営学研究科准教授関西学院大学卒業後、ミズノ株式会社などを経て現職。33年間のサラリーマン経験を活かし、企業活動における社会的責任のあり方に関心を寄せる。コンプライアンス、消費者対応、消費者問題にも詳しい。消費者問題に関する論文多数。2009年 内閣府消費者担当大臣賞受賞。鷲田清一 哲学者 大阪大学総長京都大学大学院文学研究科博士課程修了。関西大学教授、大阪大学大学院文学研究科教授、同理事・副学長を経て、2007年8月大阪大学総長に就任。著書に『モードの迷宮』(サントリー学芸賞受賞)、『じぶん-この不思議な存在』『「聴く」ことの力』 (桑原武夫学芸賞受賞)、『「待つ」ということ』、『てつがくを着て、まちを歩こう―ファッション考現学』、『死なないでいる理由』、『新編 普通をだれも教えてくれない』、『臨床とことば』(河合隼雄氏との共著)、『わかりやすいはわかりにくい?-臨床哲学講座』 など多数。2004年紫綬褒章。※1岩田健太郎氏ブログ『楽園はこちら側から http://georgebest1969.typepad.jp/blog/ 』「災害時のリスクとコミュニケーションを考えるチャリティー・シンポジウム開催について(ご案内)」より転載。写真はシンポジウム時のもの。本編はCareNet+Style「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる」をご覧ください質問と回答を公開中!

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岩田健太郎先生の回答

PTSD日本人はPTSDの頻度は低いと聞きますがその理由は何が考えられますか?そういう話は初耳でした。僕は専門家ではないのであまりうまいコメントはできませんが、PTSDってシチュエーションによって発症頻度にものすごい差があるのですね(1-80%以上まで)。日本ではPTSDという概念の認知そのものが遅いみたいですし、その頻度が本当に低いかは僕にはよく分かりません。阪神淡路大震災後16ヶ月のフォローでは被害の程度にもよりますがだいたい3%くらいの有病率だったそうです(窪田 予防時報2005)。新しいメディアの形内田先生のお話の中で、巨大メディアが崩壊したときに情報難民が生まれる、この層に向けた対処が必要とのお話があったかと思います。岩田先生が考える情報難民を救う新しいメディアの形とは?もしアイデアがありましたらご教示願います。多分、ある特定の新しいメディアというより、いろいろなメディアのミックスをあちこちつまみ食いする、、、というのが新しい形だと思います。新聞とテレビだけ、という定型から脱却するところからスタートではないかと。健康被害が懸念されたタイミングについて医師の目からみて、今回どのあたりの段階から放射性物質による健康被害が懸念されたのでしょうか?医師の中には震災直後から疎開された方がいると聞きました。医師のネットワークの中で何か特別な情報等が流れていたのでしょうか?「懸念」は震災直後からありました。その懸念がどれくらいのものかを見積もるのは、とても困難だと思いましたが(今でも困難を感じています)。医師のネットワークだけで「特別な」情報が流れていたとは思いません。ただ、ネット上にも公開されているチェルノブイリ関係の論文とかの多くは英語ですし、そういう論文へのアクセスや読み方には医師は慣れている傾向があります。メディア今回の論客は皆さん素晴らしい方だと思います。皆さんとは、普段からメディアのあり方について議論するようなお知り合いだったのでしょうか?上杉さん、藏本さん、鷲田さんとは初対面。内田さんとはよくメディアの話をする機会がありました。「街場のメディア論」も愛読しましたし。内田さんと鷲田さんはお知り合いですが、それ以外はみな初対面だったと思います。メディア崩壊について利益相反のお話、大変興味深く拝聴しました。巨大メディアがスポンサーに逆らえない。とはいえ、昔から収益の構造は同じはず。ここまで廃れた原因はなんでしょうか?昔から同じだと思います。露呈しただけで。潔癖症の方へのケア被災された方の中には潔癖症の方もいらっしゃったかと思います。避難所ではどのような行動を取っていたのでしょうか?また、そんな方へのケア方法などございましたら教えてください。避難所で潔癖症の方がどうされていたかは寡聞にして存じません。清潔の維持やプライバシーについては皆さん、大分お悩みだったと思います。避難所での簡易住宅を提供している建築家もいたとききました(段ボールだけだとさすがに、と僕も思います)。アルコールの手指消毒薬はわりとふんだんに提供されていたようですが、お風呂とかはたいへんでしょうね。仮設住宅入居者へのケア避難所と仮設住宅では、ケアの方法も変わってくるかと思います。仮設住宅にいる方々のQOLを考えた場合、必要なケアは何ですか?また、仮設住宅地で懸念される感染症についてもご教示いただければ幸いです。僕の意見では、やはりコミュニケーションだと思います。阪神淡路大震災でも仮設住宅で孤独になってしまった人は多かったとききます。仮設住宅に特化して増える感染症は特にないと思います。高齢者とのコミュニケーション仮設住宅地をボランティアで回っている医学生です。高齢者とうまくコミュニケーションがとれる秘訣があればご教示下さい。一般のコミュニケーションと同じです。相手の話を聞くこと。岩田先生の情報ソースを教えて下さい。岩田先生は、基本テレビは見ない(サッカーしか見ない)、ニュースも最低限だけとおっしゃっていましたが、そんな中で、岩田先生の一番重要な情報ソースは何でしょうか?一番、というのを作らないようにしています。いろいろな情報ソースからトライアンギュレーションをかけています。上杉さんもそんなことおっしゃってましたよね。総括みなさんするどい質問ばかりですね。緊張しました。座長:岩田健太郎先生「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる:CareNet+Style連携特別企画」

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暴力事件防止のため匿名情報を医療機関、警察、自治体で共有・活用することは有効

世界保健機構(WHO)では、個人間の暴力による死者は世界中で60万人、重傷者は1,720万人に上り、15~29歳の死因の第5位、30~44歳では第6位という実情を踏まえ、「個人間の暴力は世界的な保健問題」と位置付けている。個人間の暴力事件には地域レベルでの防止戦略が有効な可能性はあるが、そうした取り組みについてこれまで科学的に検証はされていなかった。そこで、米国疾病管理予防センター暴力事件部門のCurtis Florence氏らは、イギリス・ウェールズの首都カーディフで2001年に導入された地域暴力事件防止プログラムの評価を行った。BMJ誌2011年6月25日号(オンライン版2011年6月16日号)掲載より。プログラムを開発・導入したカーディフと、その他14都市との変化を比較各種調査により世界的に、医師が治療にあたった相当数の暴力事件が警察に知られていないことが明らかになっているなかで、また警察情報は被害者の申告に頼っているのが実態のなかで、カーディフの防止プログラムは、警察情報に医療機関のERからの情報を加味することで防止効果を高めることを狙いとした点が斬新なものであったという。開発には3年がかけられていた。なおイギリスでは1998年に、警察、自治体、NHS機関が協力して地域暴力防止戦略を開発し取り組むことが法的義務として課せられているという。Florence氏らは、カーディフで策定された地域協力体制に基づくプログラムの有効性を、実験的研究・時系列解析にて評価した。比較対象として、イギリスおよびウェールズから内務省データに基づきカーディフと最もよく似た14都市を選び、暴力事件に関連する入院記録と、暴力事件および軽度な暴力事件の警察記録データを主要評価項目として検証した。カーディフでは、33ヵ月を開発期間として、市内ER受診患者または重傷例の報告から、暴力事件防止に重要とみなされ匿名化された情報(事件発生場所、時間、月日、武器の詳細)を集積し、その後51ヵ月間にわたり警察と自治体で共有し、事件防止のリソースとして活用された。カーディフ vs. その他都市発生率比、入院0.58、傷害事件0.68、軽度暴力事件1.38結果、情報共有と活用は、暴力事件による入院件数を相当数、有意に減少したことが認められた。カーディフでは、人口10万あたり月7件から5件へと減少していた。一方でその他の都市では、5件から8件に増えていた(補正後発生率比:0.58、95%信頼区間:0.49~0.69)。警察の暴力事件記録は、カーディフでは人口10万あたり月54件から82件への変化であったが、その他の都市では54件から114件に増えていた(同:0.68、0.61~0.75)。軽度な暴力事件は、カーディフの警察では記録例が15件から20件に増えていたが、その他の都市では42件から33件に減っていた(同:1.38、1.13~1.70)。Florence氏は、「カーディフでの医療機関、警察、自治体間の情報共有の取り組みは、その他の取り組みを行っていない都市と比べて、暴力事件負傷者の有意な減少に結びつき、軽度な暴力事件の検挙数を増やした」とまとめている。

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アロマターゼ阻害薬エキセメスタン、閉経後女性の浸潤性乳がん発症を有意に減少

 閉経後女性の乳がん予防に関して、アロマターゼ阻害薬のエキセメスタン(商品名:アロマシン)が、浸潤性乳がん発症を有意に減少することが示された。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのPaul E. Goss氏ら「NCIC CTG MAP.3」試験グループが行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果による。これまで乳がん一次予防の化学療法としては、選択的エストロゲン受容体調節薬であるタモキシフェン(抗がん薬、商品名:ノルバデックスなど)やラロキシフェン(骨粗鬆症薬、同:エビスタ)が注目されてきたが、毒性効果がもたらすリスクに対する懸念からこれらの使用は広がっていないという。一方、エキセメスタンは、閉経後女性のエストロゲン抑制に優れ、実験モデルにおいて乳がん発症を減少することが認められ、また早期乳がん対象の試験において、対側原発性乳がんを、タモキシフェンよりも減少し副作用も少ないことが報告されていた。NEJM誌2011年6月23日号(オンライン版2011年6月4日号)掲載より。4ヵ国から4,560例を登録し、無作為化プラセボ対照二重盲検試験 NCIC CTG MAP.3試験は、カナダ、米国、スペイン、フランスで被験者を募り、35歳以上で適格条件[60歳以上、Gail 5年リスクスコア>1.66%(5年以内の浸潤性乳がん発症が100である可能性)、異型乳管過形成、異型小葉過形成、非浸潤性小葉がん、乳房切除を伴う非浸潤性乳管がん]を1つ以上有する閉経後女性を対象とし行われた。 本試験は、浸潤性乳がんの65%の相対的減少を検知するようデザインされた。主要アウトカムは浸潤性乳がん発生率で、毒性効果、健康関連QOL、閉経期特異的QOLについても測定が行われた。2004年11月~2010年3月の間に、4,560例が登録。被験者の年齢中央値は62.5歳、Gailリスクスコアは2.3%で、無作為にエキセメスタン群(2,285例)とプラセボ群(2,275例)に割り付けられ追跡された。追跡期間中央値35ヵ月時点で、エキセメスタン群の65%の相対的減少を検知 結果、浸潤性乳がんの65%の相対的減少は、追跡期間中央値35ヵ月時点で検知された。同時点の浸潤性乳がん発生は、エキセメスタン群11例(0.19%)、プラセボ群32例(0.55%)で、ハザード比0.35(95%信頼区間:0.18~0.70、P=0.002)だった。 副次エンドポイントの侵襲性+非侵襲性(非浸潤性乳管がん)乳がんの年間発生率は、エキセメスタン群0.35%、プラセボ群0.77%(ハザード比:0.47、95%信頼区間:0.27~0.79、P=0.004)であった。 有害事象は、エキセメスタン群88%、プラセボ群85%で発生した(P=0.003)。毒性効果の評価指標である骨折、心血管イベント、その他のがん、治療関連の死亡に関して両群間で有意差は認められなかった。 QOLの差はわずかだった。健康関連QOLはSF-36質問票にて悪化、不変、改善の区分でスコア化されたが、両群間で有意な差は認められなかった。閉経期特異的QOLについてはエキセメスタン群の悪化(全体的に7%多く)が認められた。Goss氏は、「乳がんリスクが中程度に上昇した閉経後女性に対して、エキセメスタンは侵襲性乳がんを有意に減少した。また追跡期間中央値3年の間、エキセメスタンは重篤な毒性効果との関連は認められず、健康関連QOLについての変化はわずかだった」と結論している。

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長期的ダイエットを成功または失敗させる食事、生活習慣とは?

体重安定には摂取カロリーと消費カロリーのバランスを要することから、長期的な体重増加を予防するには、「食事量を減らし、運動量を増やす」というアドバイスが単純明快な戦略にみえる。これに対して、米国・ブリガム&ウィメンズ病院循環器部門のDariush Mozaffarian氏らは、「特定の食事や生活習慣が成功の可否に影響する可能性がある」として、食事や生活習慣の詳細と体重増加との関係を調査した。NEJM誌2011年6月23日号掲載より。異なる3つのコホートで前向き研究研究グループは、12万877例の米国人男女(ベースラインで慢性疾患も肥満もない)が参加した3つの独立したコホート集団を対象に前向き研究を実施した。追跡調査期間はそれぞれ、1986~2006年、1991~2003年、1986~2006年だった。生活習慣の各因子と体重変化との関係は、年齢、各調査期間のベースラインBMI、すべての生活習慣を同時に多変量補正して、4年間隔で評価を行った。コホート特異的、性特異的な結果は類似しており、分散逆数重み付けメタ解析を用いて統合した。「カウチポテト」はやはり体重増加をもたらす?4年の間に、参加者の体重は平均3.35 lb*(5~95パーセンタイル:-4.1~12.4)増加した。食品ごとの1日の摂取量増加と4年間の体重変化をみてみると、ポテトチップス(1.69 lb)、ジャガイモ(1.28 lb)、加糖飲料(1.00 lb)、未加工の赤肉(0.95 lb)、加工肉(0.93 lb)については正の相関が最も強く認められ、野菜(-0.22 lb)、全粒穀物(-0.37 lb)、果物(-0.49 lb)、ナッツ(-0.57 lb)、ヨーグルト(-0.82 lb)では逆相関が認められた(それぞれの比較のP<0.005)。食事変化の集積は、体重変化の差と大きく関係していた(食事変化の五分位範囲にわたる体重変化は3.93 lb)。その他、身体活動(五分位範囲で-1.76 lb)、アルコール摂取(1日1杯につき0.41 lb)、喫煙(新規禁煙者5.17 lb、過去の喫煙者0.14 lb)、睡眠(6時間未満と8時間超で体重増加)、テレビ視聴(1日1時間につき0.31lb)などの生活習慣の各因子にも、体重変化と独立した関連が認められた(P

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英国がん生存率の低さは、レジストリの問題ではない

がんレジストリ・データから推定するがん生存率が、英国のデータは他のヨーロッパ諸国よりも低いデータが示されることに関して、London School of Hygiene and Tropical medicineのLaura M Woods氏らは、最近のBMJエディトリアルで指摘された、登録プロセスにおける2つの特異的なエラーがミスリードの原因なのかどうかを検証した。英国の低過ぎるがん生存率をめぐっては、10年以上の間、それが治療によりもたらされる違いなのかどうかが議論されているという。BMJ誌2011年6月18日号(オンライン版2011年6月9日号)掲載より。診断日ではなく再発日の記録、5年以上生存者未登録が問題なのかをシミュレーションWoods氏らはシミュレーション研究にて、仮定されている2つのエラーのエビデンスについて検証した。すなわち、(1)死亡診断書からの登録者について診断日の代わりに再発日を記録していること、(2)レジストリに登録されていない5年以上の長期生存者がいること、についてシミュレーションし、それらの相対生存率への影響の可能性を推定し、英国の低い生存率はいずれか一方のエラーまたは両方によるものかを確認した。対象としたのは、イングランドとウェールズの全国がんレジストリ。具体的には、1995~2007年の間にイングランドとウェールズで登録され、2007年12月31日まで追跡された、乳がん(女性のみ)、肺がん、大腸がんと診断された患者だった。主要評価項目は、各シミュレーションとの関連でみた、1年相対生存率、5年相対生存率の平均絶対パーセントの変化とした。たとえエラー要因のレベルが極端に大きくても説明がつかない結果、英国とスウェーデンとの間にみられる乳がん1年生存率の格差は、(1)の仮定によっては説明することができた。診断日が死亡に至った女性の70%以上で、平均1年以上の誤差を有し記録されていた。一方で、(2)の仮定については、長期生存者が40%であったとしても、1年生存率の格差を説明する半分にも満たなかった。肺がんと大腸がんについても、同様の結果だった。Woods氏は、「がん登録データについて仮定されたエラー要因のレベルが極端に大きくても、英国とその他のヨーロッパ各国とにみられる生存率の国際間格差は説明することが不可能だった」と結論。最後に、英国のがん患者の生存率は実際のところ低いと言え、診断の遅れ、ヘルスケアへの投資の低さ、最適とは言えないケアに関連していそうだと述べ、「問題とすべきは、根底にある原因は何か、何をすれば英国のがん患者のアウトカムが改善されるかである」とまとめている。

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脳卒中の2次予防におけるterutroban、アスピリンとの非劣性確認できず

虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴のある患者に対する抗血小板薬治療として、terutrobanはアスピリンと同等の有効性を示しながらも、非劣性基準は満たさないことが、フランス・パリ-ディドロ大学のMarie-Germaine Bousser氏らが行ったPERFORM試験で示され、Lancet誌2011年6月11日号(オンライン版2011年5月25日号)で報告された。同氏は、「現在でもアスピリンがgold standard」としている。脳卒中は世界的に身体障害、認知症、死亡の主要原因であり、虚血性脳卒中やTIAの既往歴のある患者は脳卒中の再発や他の心血管イベントのリスクが高い。terutrobanは、血小板や血管壁に存在するトロンボキサン-プロスタグランジン受容体の選択的な拮抗薬で経口投与が可能であり、動物やヒトでアスピリンと同等の抗血小板活性が確認されているという。世界46ヵ国802施設が参加、勧告により早期中止PERFORM(Prevention of cerebrovascular and cardiovascular Events of ischaemic origin with teRutroban in patients with a history oF ischaemic strOke or tRansient ischaeMic attack)試験は、非心原性脳虚血イベントの既往歴のある患者を対象に、terutrobanとアスピリンの脳および心血管の虚血性イベントの予防効果を比較する無作為化並行群間比較試験。2006年2月22日~2008年4月7日までに、46ヵ国802施設から過去3ヵ月以内に虚血性脳卒中を発症した患者、あるいは8日以内にTIAをきたした患者が登録され、terutroban(30mg/日)あるいはアスピリン(100mg/日)を投与する群に無作為に割り付けられた。患者と主治医には治療割り付け情報は知らされなかった。有効性に関する主要評価項目は、致死的/非致死的な虚血性脳卒中、致死的/非致死的な心筋梗塞、他の血管死(出血死を除く)の複合エンドポイントとした。非劣性の解析を行ったのち、優越性について解析することとし、intention-to-treat解析を実施した。なお、本試験はデータ監視委員会の勧告に基づき早期中止となっている。主要評価項目は同等だが、非劣性基準満たさず、安全性の改善も得られず1万9,120例が登録され、terutroban群に9,562例が、アスピリン群には9,558例が割り付けられた。それぞれ9,556例(男性63%、平均年齢67.2歳)、9,544例(同:62%、67.3歳)が解析可能であった。平均フォローアップ期間は28.3ヵ月(SD 7.7)であった。主要評価項目の発現率は、terutroban群が11%(1,091/9,556例)、アスピリン群も11%(1,062/9,544例)で、非劣性の判定基準(ハザード比>1.05)は満たされなかった(ハザード比:1.02、95%信頼区間:0.94~1.12)。2次評価項目(14項目)、3次評価項目(6項目)にも有意な差は認めなかった。小出血の頻度がterutroban群で有意に上昇した[12%(1,147/9,556例) vs. 11%(1,045/9,544例)、ハザード比:1.11、95%信頼区間:1.02~1.21]が、その他の安全性に関する評価項目に有意な差はみられなかった。著者は、「事前に規定された判定基準により、terutrobanのアスピリンに対する非劣性は確証されなかった。主要評価項目の発現率は両群で同等であったが、terutrobanは安全性についても改善効果をもたらさなかった」と結論し、「世界的にみて、有効性、耐用性、医療コストの観点から、現在もアスピリンは脳卒中の2次予防における抗血小板薬治療のgold standardである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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卵巣がん検診、卵巣がん死亡を低下せず、偽陽性による過剰検査を誘導

卵巣がん検診は、卵巣がんによる死亡の低下に結びついておらず、むしろ偽陽性による過剰検査やそれによる有害事象の発生につながっていることが報告された。米国・ユタ大学健康科学センターのSaundra S. Buys氏らが行った無作為化比較対照試験の結果で、JAMA誌2011年6月8日号で発表した。本報告は、前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がんの検診有効性について行った試験「Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian(PLCO)Cancer Screening Trial」の一環。これまで、腫瘍マーカーCA-125測定と経膣的超音波により行われる卵巣がん検診の、死亡リスクに対する効果は明らかになっていなかった。8万人弱を2群に分けCA-125・経膣的超音波で検診、中央値12年追跡Buys氏らは、1993年11月~2001年7月にかけて、55~74歳の女性7万8,216人を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方の3万9,105人(検診群)は、年1回の腫瘍マーカーCA-125によるスクリーニングが6年間と、経膣的超音波による検査が4年間行われた。もう一方の3万9,111人(対照群)には、スクリーニングは実施されず、通常の医療的ケアが行われた。被験者は2010年2月末まで追跡された。追跡期間は最大で13年、中央値は12.4年だった。検診群の死亡リスク1.18倍、偽陽性で外科的フォローアップ受けた人の15%に重篤な有害事象結果、卵巣がんと診断を受けたのは、検診群が212人(1万人・年当たり5.7人)、対照群が176人(同4.7人)だった(リスク比:1.21、95%信頼区間:0.99~1.48)。卵巣がんによる死亡は、検診群が118人(同3.1人)で、対照群が100人(同2.6人)だった(死亡リスク比:1.18、95%信頼区間:0.82~1.71)。検診群における偽陽性は3,285人にみられた。そのうち1,080人が外科的フォローアップを受け、1つ以上の重篤な有害事象が163人(15%)に発生していた。なおその他の原因(卵巣がん、大腸がん、肺がんを除く)による死亡は、検診群が2,924人(1万人・年当たり76.6人)、対照群2,914人(同76.2人)だった(リスク比:1.01、95%信頼区間:0.96~1.06)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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小児の特発性膜性腎症にウシ血清アルブミン関与の可能性示唆

ネフローゼ症候群の原因疾患として最も多い膜性腎症のうち、自己免疫疾患が原因と考えられている特発性膜性腎症について、フランス・パリ公立Tennon病院のHanna Debiec氏らにより新たな知見が報告された。膜性腎症は、免疫複合体が糸球体基底膜の上皮下に沈着することにより腎臓の濾過機能が障害されると考えられている。ウイルスや細菌、腫瘍など外因性抗原が特定される症例は二次性膜性腎症と分類されるが、いずれも抗原の特定や性質、病院や発症機序など不明な部分が多い。特発性膜性腎症についても最近、2つの抗原候補が同定され、そのうちのM型ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)は同症例の70%に認められたが、その他の抗原については明らかではない。その抗原候補として、Debiec氏らは、疫学調査で示された自己免疫疾患発現リスク因子としての栄養学的要因に着目、牛乳や牛肉蛋白質の一種で腸管吸収され抗体誘導の可能性があり得るウシ血清アルブミンの関与を探った。結果、小児例の一部でその病態への関与が示唆される知見が得られたという。NEJM誌2011年6月2日号掲載より。小児9例、成人41例についてウシ血清アルブミンの関与を探る研究グループは、2004~2009年に生検を受け二次性膜性腎症を否定された特発性膜性腎症の50例(小児9例、成人41例)と、対照群172例について調査した。血清検体を採取し、ELISA法とウエスタンブロット法で抗ウシ血清アルブミン抗体と血中アルブミン血清について調べた。また、二次元ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動で、血清検体から免疫精製したウシ血清アルブミンの性質を解析した。さらに糸球体沈着物中のウシ血清アルブミンを検出し、IgGを抽出し反応性を解析した。小児例でのみ上皮下の免疫沈着物中にウシ血清アルブミンが検出結果、小児4例、成人7例の計11例に、高濃度な血中抗ウシ血清アルブミン抗体が認められた。いずれもIgG1とIgG4のサブクラスだった。またこれら患者は、血中ウシ血清アルブミン値の上昇も認められた。しかし、血中免疫複合体の濃度は上昇が認められなかった。ウシ血清アルブミンの性質についての解析では、小児4例ではpHの基本域に属することを示したが、成人例は天然のウシ血清アルブミンと同様に中性域に属することを示した。また小児例でのみ、上皮下の免疫沈着物中にウシ血清アルブミン(陽イオン性血中ウシ血清アルブミンとウシ血清アルブミン特異抗体の両方)が検出された。それはPLA2R非存在下でIgGと共存しており、IgGはウシ血清アルブミンに特異的だった。Debiec氏は、このように小児膜性腎症患者の一部で、血中陽イオン性ウシ血清アルブミンと抗ウシ血清アルブミン抗体の両方が認められたこと、また上皮下の免疫沈着物中にそれらが存在することを踏まえ、「実験モデルで示されているように、陽イオン性ウシ血清アルブミンが陰イオン性の糸球体係蹄壁に結合し、免疫複合物のin situ形成をすることが病原となっていることが示唆される」と結論。最後に「さらなる疫学調査は必要だが、小児例の可能性として食事由来のウシ血清アルブミンやウシ血清アルブミンの免疫処置が考えられ調査を促す必要がある。もしウシ血清アルブミンが検出されたら、食生活からそれを除去することは有益であろう。我々の研究は、ほかにも食物抗原が膜性腎症の発現に関係している可能性を高めるものとなった」と報告をまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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細菌性髄膜炎、ワクチン導入で乳幼児リスクは減少、疾病負荷は高齢者に:米国CDC

1998~2007年の細菌性髄膜炎に関する疫学調査を行った米国疾病管理予防センター(CDC)は、発生率は減少しているが、同疾病による死亡率はなお高いこと、また1990年代初期以降の各対策導入によって乳幼児のリスクの減少には成功したが、相対的に現在、高齢者が疾病負荷を負うようになっているとの報告を発表した。米国では1990年代初期に乳幼児へのインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンを導入した結果、細菌性髄膜炎の発生率が55%減少。2000年に導入した肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)では、侵襲性肺炎球菌感染症が5歳未満児75%減少、65歳以上31%減少したと報告されている。このほかにも全妊婦を対象にB群レンサ球菌(GBS)スクリーニングなど予防策が講じられるようになっており、今回の調査は、今後の予防戦略の基礎資料とするため1998~2007年の細菌性髄膜炎の発生率の動向、2003~2007年の髄膜炎の疫学を評価することを目的に行われた。NEJM誌2011年5月26日号掲載より。1998年から2007年の間に発生率31%減少調査は、Emerging Infections Programs Network(新興感染症プログラムネットワーク:EIPネットワーク)の8つのサーベイラインス地域(1,740万人居住)から報告された細菌性髄膜炎の症例を分析して行われた。細菌性髄膜炎については、髄膜炎の臨床診断と合わせて、脳脊髄液その他通常無菌部位に、インフルエンザ菌、肺炎レンサ球菌、GBS、リステリア菌、髄膜炎菌のいずれかが確認された場合と定義した。対象地域・期間中、細菌性髄膜炎と特定された患者は3,188人だった。転帰データが入手できたのは3,155人、うち死亡は466人(14.8%)だった。髄膜炎の発生率は、31%減少(95%信頼区間:-33~-29)していた。1998~1999年には人口10万当たり2.00例(同:1.85~2.15)だったが、2006~2007年には同1.38(同:1.27~1.50)となっていた。患者年齢30.3歳から41.9歳に上昇患者の年齢中央値は、30.3歳(1998~1999年)から41.9歳(2006~2007年)へと上昇していた(Wilcoxon順位和検定によるP<0.001)。致命率は、1998~1999年15.7%、2006~2007年14.3%で、有意な変化がみられなかった(P=0.50)。2003~2007年報告症例(1,670例)では、最も優勢を占めたのは肺炎レンサ球菌で58.0%に上っていた。次いでGBS(18.1%)、髄膜炎菌(13.9%)、インフルエンザ菌(6.7%)、リステリア菌(3.4%)だった。2003~2007年の米国における細菌性髄膜炎の年間症例数は約4,100例、死亡500例と推定された。(武藤まき:医療ライター)

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インクレチン関連薬は、次のステップへ~ケアネット女性記者による第54回糖尿病学会レポート~

2011年5月19日(木)から3日間、札幌市にて、第54回日本糖尿病学会年次学術集会「糖尿病と合併症:克服へのProspects」が開催された。会長の羽田勝計氏(旭川医科大学)は、会長講演にて、「糖尿病治療における細小血管および大血管障害の発症・進展が阻止されれば、健常人と変わらないQOLの維持、寿命の確保が可能になる」と述べ、合併症の克服により本学会のテーマである「克服へのProspects」が10年後には「克服可能」となることを期待したい、とのメッセージを伝えた。また、今年3月に発生した東日本大震災を受けて、緊急シンポジウム「災害時の糖尿病医療」も開かれた。被災地での糖尿病医療や被災地外からの支援活動、阪神・淡路大震災などの過去の災害における経験が報告され、今後の災害時における糖尿病医療のあり方について討議された。その他、「IDFの新しい2型糖尿病の治療アルゴリズム アジアへの適応は」、「J-DOIT1,2,3,JDCPからのメッセージ」、「インクレチン関連薬の臨床」といった数多くのシンポジウムが開催された。多くのセッションが目白押しではあったが、今回、ケアネットでは特に「インクレチン関連薬」に注目した。昨年度のインクレチン関連薬発売ラッシュ以降、初の学会を迎えたことから、「インクレチン関連薬」にフォーカスしてレポートする。【注目を集めたインクレチン関連薬】昨年度は、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬の発売が相次ぎ、糖尿病治療の歴史にとっても大きな変革の年となった。DPP-4阻害薬では、2009年12月のシタグリプチン(商品名:ジャヌビア/グラクティブ)を皮切りに、2010年にビルダグリプチン(商品名:エクア)、アログリプチン(商品名:ネシーナ)が発売、GLP-1受容体作動薬は、リラグルチド(商品名:ビクトーザ)とエキセナチド(商品名:バイエッタ)が医療現場に登場した。2011年には各薬剤の14日間の投薬期間制限が順次解除されるため、長期投与が可能となり、普及の勢いはさらに増すだろう。本学会でも、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬を総称する「インクレチン関連薬」が注目を集め、シンポジウム、一般講演、ポスターなどで多くの臨床成績が発表された。【効果と安全性、薬剤間の明確な差は?】発表されたデータは、ほとんどが各薬剤の「有効性」と「安全性」に関するものであった。「既存薬からインクレチン関連薬への切り替えで、どの程度血糖値が低下するのか?本当に低血糖は起こさないのか?」という臨床現場の疑問が浮き彫りになった形だ。その結果、多くのデータで各薬剤の有効性と安全性が明らかになった。しかし、これはすべての薬剤で同様の結果が報告されており、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬との間での差はあるものの、同効薬群間での差は大きくはない。どの薬剤を使用しても一定の効果は得られそうだ。【DPP-4阻害薬市場の激化は必至】DPP-4阻害薬に関する各薬剤別の発表データについてみてみると、やはり先行して発売されたシタグリプチンを用いた報告症例が多い印象であった。ビルダグリプチン、アログリプチンについては適応上、透析を行うような重症腎機能障害例にも投与が可能(※ただし慎重投与)ということで、透析患者や腎機能低下症例への投与例の報告があった。ただし、これらはあくまで一部のデータであり、実際の臨床現場において薬剤の使い分けに関する明確な指針や投与患者像を確立することは難しいだろう。DPP-4阻害薬は期待が高いだけに、数多くの種類が市場に出回ることになる。どれを選択するかは現場の医師の手に委ねられることになるだろう。【今後必要となるのは、効果不応例を早期に見分ける指標】とはいえ、すべての患者にインクレチン関連薬が効果を示すというわけではなく、著効例と不応例に分かれる傾向が多くの報告で挙げられた。当然、どのような患者に効果があるのか(最適患者像の探索)、そして不応例を早期に見分けるにはどうすべきか(検査指標とそのカットオフ値)にも注目が集まった。その点に着目した解析結果も発表されたものの、サンプル数が少なく、発表により結果のばらつきがあり、多くの演題で「今後の長期的検討が必要」、「多くの症例蓄積が必要」というまとめに終わった。来年以降、各薬剤の著効例、不応例のそれぞれの臨床的特徴を検討したデータが増え、投与患者像の明確化も進むのではないかと期待される。【インスリンからの切り替え例の報告も】演題の中には、既存経口薬以外にも、BOTやインスリン療法など、すでにインスリン注射を導入している患者からインクレチン関連薬へ切り替える例も報告された。当然、インスリン単位数の少ない症例がメインではあるが、インスリン療法で糖毒性をいったん解除することで内因性の基礎インスリン分泌能の回復が期待でき、その後のインクレチン関連薬の切り替えも奏功する可能性が示唆された。切り替えが奏功した例の特徴としては、糖尿病の罹病期間が短く、合併症が少なく、食後のインスリン追加分泌が保たれたインスリン単位の少ない症例、などが挙げられた。インスリン療法からの切り替えがうまくいけば、患者にとっても朗報である。また、インクレチン関連薬による治療の可能性も広がるだろう。切り替え時の高血糖などに留意は必要だが、安全性に配慮しながら、今後、治療が確立されることを期待したい。【まとめ】今回、多くのインクレチン関連薬の臨床データが発表された。今後さらにDPP-4阻害薬の種類が増える(※アナグリプチン、テネリグリプチン、リナグリプチン、サクサグリプチンが現在フェーズⅢの段階にある)ことを考えると、医師側は各患者にあった薬剤を医師自身の基準で選択していくことが求められそうだ。インクレチン関連薬の発売を契機に、糖尿病治療は大きく変わり始めた。糖尿病治療の目標が、細小血管および大血管障害の発症・進展の阻止とその後の患者のQOLや寿命の確保にある以上、インクレチン関連薬をベースとした早期のエビデンス構築にも期待がかかる。10年後の「克服可能」な糖尿病治療に向け、インクレチン関連薬の今後の動きに注目したい。(ケアネット 佐藤寿美)

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浸潤性乳がん患者へのタキサン系+アントラサイクリン系ベース化学療法後の生存率の予測モデルを開発

米国Nuvera Biosciences社のChristos Hatzis氏らは、浸潤性乳がん患者へのタキサン系+アントラサイクリン系ベース化学療法に対する反応性を、遺伝子発現様式で予測するモデルを開発した。同モデルとエストロゲン受容体(ER)の陽性・陰性を組み合わせることで、生存率について8~9割の確率で予測することができたという。JAMA誌2011年5月11日号で発表した。浸潤性乳がん310人を基にモデル開発、198人を対象に検証研究グループは、2000年6月~2010年3月にかけて、多施設共同前向き試験を行った。被験者は、新たに浸潤性乳がんの診断を受けたERBB2(HER2またはHER2/neu)陰性の患者で、タキサン系+アントラサイクリン系ベースの化学療法の治療を受けた310人だった。ER陽性の場合には、化学療法と併せて内分泌療法を行った。被験者グループを基に、遺伝子発現様式によるタキサン系+アントラサイクリン系ベース化学療法感受性の予測モデルを作り、独立評価群(198人)で生存率や病理学的反応などについての予測能を検証した。なお、独立評価群の99%が臨床ステージ2または3だった。治療感受性群の遠隔無再発生存率は92%結果、独立評価群のうち、同モデルで治療感受性と予測された人は28%で、そのうち病理学的反応が非常に良好である確率は56%(95%信頼区間:31~78)、遠隔無再発生存率は92%(同:85~100)、絶対リスク減少は18%(同:6~28)だった。被験者でER陽性のうち同モデルで治療感受性と予測されたのは30%で、遠隔無再発生存率は97%(同:91~100)、絶対リスク減少は11%(同:0.1~21)だった。一方ER陰性のうち治療感受性と予測されたのは26%で、遠隔無再発生存率は83%(同:68~100)、絶対リスク減少は26%(同:4~48)だった。また、化学療法への反応性が予測された患者は、その他の遺伝子予測因子によって逆説的に生存率が悪いことが示された。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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ICUにおける耐性菌伝播を減らすには?

 MRSAとバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、医療施設における感染症の主要な要因であり、これら細菌に起因する感染症は通常、患者の粘膜や皮膚などへの保菌(colonization)後に発症がみられ、保菌は医療従事者の手指や汚染媒介物などを介した患者から患者への間接的な伝播や、保菌医療従事者からのダイレクトな伝播によって発生することが知られる。米国・メイヨークリニックのW. Charles Huskins氏らICUにおける耐性菌伝播を減らす戦略研究グループは、MRSA、VREの伝播リスクが最も大きいICUにおいては、積極的監視培養やバリア・プリコーション(ガウン、手袋着用による)の徹底により、ICUにおけるMRSA、VREの保菌・感染発生率を低下すると仮定し、それら介入効果を検討する無作為化試験を実施した。NEJM誌2011年4月14日号掲載より。MRSA、VREの保菌および感染発生率を介入群と対照群で比較 研究グループは、MRSAやVREの保菌に対する監視培養とバリア・プリコーション徹底(介入)の効果について、ICU成人患者におけるMRSA、VREの保菌・感染発生率を通常実践(対照)との比較で検討することで評価するクラスター無作為化試験を行った。 介入群に割り付けられたのは10ヵ所のICUで、対照群には8ヵ所のICUが割り付けられた。 監視培養(MRSAは鼻腔内検査、VREは便・肛囲スワブ)は、被験者全員に行った。ただしその結果報告は、介入ICU群にのみ行われた。 また介入ICU群で、MRSAやVREの保菌または感染が認められた患者は、コンタクト・プリコーション(接触感染に注意する)・ケア群に割り付け、その他すべての患者は、退院もしくは入院時に獲得した監視培養の結果が陰性と報告されるまで、ユニバーサル・グロービング(手袋着用の徹底)群に割り付けた。 介入による伝播減少の効果は認められず、医療従事者のプリコーション実行が低い 介入は6ヵ月間行われた。その間に、介入ICU群には5,434例が、対照ICU群には3,705例が入院した。 ICU入室患者にMRSA、VREの保菌または感染を認めバリア・プリコーションに割り付けた頻度は、対照ICU群(中央値38%)よりも介入ICU群(中央値92%)のほうが高かった(P<0.001)。しかし、介入ICU群の保菌または感染患者が、コンタクト・プリコーションに割り付けられた頻度は51%、ユニバーサル・グロービングに割り付けられた頻度は43%だった。 また介入ICU群における医療従事者の、滅菌手袋・ガウンテクニック・手指衛生の実行頻度は、要求レベルよりも低いものだった。コンタクト・プリコーション群に割り付けられた患者への滅菌手袋の実行頻度は中央値82%、ガウンテクニックは同77%、手指衛生は同69%で、またユニバーサル・グロービング群患者への滅菌手袋実行は同72%、手指衛生は同62%だった。 介入ICU群と対照ICU群で、MRSAまたはVREの保菌または感染イベント発生リスクに有意差は認められなかった。基線補正後の、MRSAまたはVREの保菌・感染イベントの平均(±SE)発生率は、1,000患者・日当たり、介入ICU群40.4±3.3、対照ICU群35.6±3.7だった(P=0.35)。 Huskins氏は、「介入による伝播減少の効果は認められなかった。そもそも医療従事者によるバリア・プリコーションの実行が要求されたものよりも低かった」と結論。医療施設における伝播減少を確実のものとするには、隔離プリコーションの徹底が重要であり、身体部位の保菌密度を減らしたり環境汚染を減らす追加介入が必要かもしれないとまとめている。

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急性期病院におけるMRSA伝播・感染の減少に「MRSA bundle」プログラムが寄与

米国・ピッツバーグ退役軍人病院は2001年より、同地方当局およびCDCとともに、米国の退役軍人病院およびその他で懸念が高まっていたMRSA施設感染を排除するため「MRSA bundle」プログラムに取り組み始めた。パイロット試験としての本取り組みは、4年間で外科病棟のMRSA感染を60%に、ICUは同75%に減少させた。その成功を踏まえ、2007年10月より全米の急性期退役軍人病院にプログラムは順次導入された。本論は、導入が完遂した2010年6月までの間の導入効果をまとめたもので、ピッツバーグ退役軍人病院MRSAプログラム事務局のRajiv Jain氏らが報告した。NEJM誌2011年4月14日号掲載より。「MRSA bundle」プログラムの導入効果を評価「MRSA bundle」は、鼻腔内検査によるユニバーサル・サーベイランス、MRSA保菌・感染患者に対するコンタクト・プリコーション、手指衛生、対応する全患者に対し感染管理を責務とする組織的文化の醸成から構成され、毎月、各施設の担当者により、中央データベースに、サーベイランス実行の厳守状況、MRSA保菌・感染の有病率、施設内伝播・感染率のデータが集積されていった。研究グループは、そのデータを基に、「MRSA bundle」プログラムのMRSA施設関連感染に関する導入効果を評価した。ICUにおける感染は62%減少、非ICUでは45%減少2007年10月~2010年6月に報告された入院・転院・退院は193万4,598件(ICU:36万5,139件、非ICU:156万9,459件)、患者総数は831万8,675人・日(ICU:131万2,840人・日、非ICU:700万5,835人・日)だった。期間中、入院時にスクリーニングが実施された患者の割合は82%から96%に上昇した。転院・退院時の実施は72%から93%へと上昇した。入院時MRSAの保菌・感染の平均(±SD)有病率は13.6±3.7%だった。ICUにおけるMRSA施設関連感染は、2007年10月より以前の2年間に変化はみられなかったが(傾向P=0.50)、プログラムの実施後は減少し、1,000人・日当たりの感染率は1.64(2007年10月)から同0.62(2010年6月)、62%減少した(傾向P<0.001)。非ICUにおいては、同0.47から0.26、45%の減少であった(傾向P<0.001)。Jain氏は、「退役軍人省が先導し全米の関連急性期病院に導入した『MRSA bundle』プログラムは医療施設関連のMRSA伝播や感染の減少に関連していた」と結論。本研究では費用対効果の評価は行われなかったが、他の研究者により積極的監視の費用対効果の有効性は示されていることに触れ、プログラムの長期にわたる実行、さらに外来導入の必要性についても言及している。(武藤まき:医療ライター)

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急性呼吸促迫症候群(ARDS)生存患者の長期5年アウトカム

急性呼吸促迫症候群(ARDS)生存患者の長期5年アウトカムの追跡調査結果が、カナダ・トロント大学のMargaret S. Herridge氏らにより報告された。これまでの長期追跡調査は2年が最長で、患者本人へのインタビューや評価に基づく総合的・長期データ(肺機能、身体機能、健康関連のQOL、医療・介護サービス利用、費用)は集約されていなかった。報告は1998~2001年の間に登録された「TORONTO ARDS」追跡調査からの結果で、被験者は重度の肺障害を有するものの合併症はほとんどない比較的若い患者であった。NEJM誌2011年4月7日号掲載より。ARDS後の障害状況、医療・介護サービス利用増大の関連因子などを調査5年追跡調査は、ARDS後の身体的、精神的、QOLの障害状況を分類、定量化、描出し、不良アウトカムや医療・介護サービス利用増大と関連する因子を調べることを主要な目的に行われた。追跡された被験者はトロントの4つの大学病院のICUで登録された109例のARDS生存患者(ARDS発症時年齢中央値44歳)で、ICU退室後から3、6、12ヵ月時点および2、3、4、5年時点の外来受診時に、インタビューと検査を受け評価された。インタビューおよび検査の内容は、肺機能検査、6分間歩行テスト、安静時および運動時の酸素飽和度測定、胸部画像診断、QOL評価(SF-36;スコア0~100、よりスコアが高いほど良好)であった。若く合併症のない患者でも完全な回復は望めない5年時点の評価の結果、6分間歩行テストの結果は436m(年齢・性でマッチさせた対照群から算出した予測値の76%)で、QOL評価(特に身体的評価)スコアは41(年齢・性でマッチさせた対照群からの平均標準スコアは50)であった。これらスコアに関して、若い患者のほうが高齢の患者よりも回復の度合いが大きかったが、いずれも5年時点の身体機能レベルは標準予測値には達していなかった。一方で5年の間に、その他身体的、精神的な一連の問題が患者または家族介護者に発生したり、持続していた。また合併症が多い患者ほど5年間の費用負担が大きかった。Herridge氏は、「重度の肺障害後には、運動制限や身体的・精神的後遺症、身体的QOL低下、医療サービスの利用・費用の増大が重大な“遺産”として存在する」と結論し、若く合併症のない患者でも完全な回復は望めないことなどから、ICUで入手した虚弱状況を理解し、個別に家族にも目を向けた評価を行い、長期視点でのリハビリプログラムの調査を優先すべきとまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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准教授 長谷部光泉 先生「すべては病気という敵と闘うために 医師としての強い気持ちを育みたい」

1969年9月14日生まれ。博士(医学)、博士(工学)。1994年3月慶應義塾大学医学部医学科卒業後、同大学病院にて研修94年4月同大学大学院医学研究科博士課程。96年11月ハーバード大学医学部放射線科心臓血管造影およびIVR部門留学(~99年)。98年4月同大学医学部助手。04年4月同大学理工学部機械工学科・鈴木哲也研究室共同研究員および医療班チームリーダー。05年4月国家公務員共済組合連合会立川病院放射線科医長。08年4月東邦大学医療センター佐倉病院放射線科講師。09年8月同病院放射線科准教授。日本血管内治療学会評議員。日本IVR学会代議員、他。10年日本学術振興会 榊奨励賞受賞、第96回北米放射線学会Certificate of Merit受賞、他多数。低侵襲治療としてIVRカテーテル治療に大きな魅力を感じた放射線科領域を大別すると、X線検査、CT、MRI、核医学検査などに代表される放射線診断学とがん治療に代表される放射線治療学があります。CT、MRIなどが登場する前から存在した「血管造影法」は、私が専門とする放射線診断学の根幹です。血管のない臓器は存在しないため、古くから重要な診断法として発展してきました。しかしながら、CT、MRIなどの医療機器の技術革新によって血管造影の役割も変わってきました。皮膚に局所麻酔をしてほんの2㎜だけの傷をつけるだけで血管内に「カテーテル」と呼ばれる管を挿入し、臓器に直接アプローチできるので、たとえば循環器領域であれば心臓にアプローチして狭心症や心筋梗塞を治す。消化器領域では、肝臓がんであれば肝動脈塞栓術のように大腿動脈から患部のすぐそばまで細いカテーテルを挿入して抗がん剤を流して腫瘍を兵糧攻めにする。脳神経領域では、急性期の脳梗塞の血栓溶解療法や動脈瘤を詰めることもできます。また、下肢の動脈硬化の場合、風船付きカテーテルを挿入し直接狭くなった血管を広げ、歩けなかった患者さんが歩いて帰えれるようになる。CTやエコー、MRIなどの画像支援の下に血管内だけでなく臓器を直接穿刺して治療する。画像を使った血管内治療および血管以外の臓器などに対する、画像支援下の低侵襲治療、これが私の専門領域です。医学の世界に入った当初から、IVR(インターベンショナルラジオロジー)に興味があり魅力を感じていました。これからの治療は、身体に大きくメスを入れて手術するだけではなく、患者さんに優しい治療でありながら効果的な治療が求められています。カテーテルの技術にせよ、医療器具にせよ、どんどん進歩してくるであろうと考えました。その進歩と共に、カテーテル治療が今後の医療現場において主流になってくるのではないかとも考えていました。それは現実になってきていると確信しています。IVR治療で劇的に変わる患者さんのQOLIVRでできることは血管を開く、詰める、溶かす、生検のための組織を切除して取り出す、直接腫瘍を穿刺して治療する、簡単にいうとこれらが主な分野です。具体的には、動脈硬化で詰まった血管を開き、血栓で詰まった血管を溶かすことができる。体を大きく切開することなく組織を取り出し診断を確定する、ドレナージといって体内の深い部分の膿をCT・エコー・MRIで見ながら吸い取る。詰めるは塞栓術といって、肝臓がん治療の他、体の中で緊急出血した場合、血圧が低下し、身体を大きく開くことはできないので、救急治療として金属のコイルを詰めて止血し、一命を救うこともできます。今までは大きく開腹、開胸しなくてはならなかった手術が、IVR治療によって足の付け根や腕の部分を局所麻酔で2から3mm切開し、動脈や静脈にカテーテルを挿入して治すことができるようになっています。これにより患者さんの入院日数は劇的に短縮されました。局所麻酔のため危険性も減りますし、入院期間も短くなり、痛みが少ないなど多くのメリットがあります。心臓疾患の場合、以前ならば最低でも1から3ヵ月の入院を余儀なくされましたが、IVR治療では、長くて10日、われわれは3日から1週間入院を目安にしています。ただし、入院期間が短縮されたからといって、簡単な病気だったと勘違いはしないでほしい。血管内で手術は行われていますから、それなりのリスクがあることも十分知っておいてほしいと思います。患者さんにとって簡単そうに思えるIVR治療ですが、医師としては熟練した手技と全身疾患に対して知識や経験がないとできない分野です。実際に治療を行えるようになるまでには、綿密なトレーニングが必要です。東邦大学では後期研修医あるいは大学院生の1年目から血管内治療のトレーニングを本格的に重ねてもらいます。われわれの科では、画像診断もやりながら低侵襲の治療をする、研究にも取り組み積極的に国内外の学会で発表するという3本の柱を忘れることなく、必死で若手の医師が毎日を過ごしています。臨床医としての経験を活かした研究開発私がこの世界に入った時にはすでに、血管内治療のデバイスであるステントやバルーンの8割が輸入品でした。許認可の問題もあって、欧米の製品を平均2年遅れで買わなければいけない現状があります。その上、必ずしも日本人に適しているデバイスではありません。日本人にとって使いにくくて直してもらうにしても、製品ができあがってくるまでに1年、2年、3年かかる場合もあります。目の前の患者さんを治せるツールがあるのに、サイズが合わないだけで使えないという現実にジレンマを感じていました。私が慶應の研修医だった当時、恩師で、放射線医の第一人者であり、日本のIVRの父ともいえる平松京一教授(当時)の計らいで、医師になってから2年半後にハーバード大学で研鑚(けんさん)を積むようにと言われました。そこで約3年半、留学することになってしまいました。研修医が終わったばかりで、何の実力もないし、研究歴もなかった。渡米前には、多くの上司にも心配されました。ハーバード大学で最初の数ヵ月はお客さん扱いでしたし、もう帰国しようかとどまろうかと考えながら細々と実験を始めました。その実験データを基に数ヵ月後に書きあげたプロトコールが運良く認められて潤沢な公的研究費が与えられて、それをきっかけに状況が変わりました。そこのチームのチーフに任命され、血管の中の遺伝子治療研究が始まりました。詰まった心臓血管の中にステント(金属のメッシュ状の筒)を入れると、再狭窄が起こります。ステントは血流を劇的に改善しますが、血管を無理に開くため血管の内皮細胞や血管平滑筋細胞に傷がつきます。血管には破れると修復する作用があって、傷を修復する過程で、金属の周囲に血栓が付き、その刺激が過剰平滑筋細胞の増殖を促し、血管がまた詰まってしまうのです。それを治すために特殊なバルーンカテーテルというのを用いてそこから薬剤を出す。当時は、ステント留置後、20%から40%は半年後には詰まるといわれていました。確かに、血管内の遺伝子治療は実験的に成功し、米国IVR学会やNIHなどで受賞しました。けれども、やはり金属ステントそのものの留置が「諸刃の剣」だということに気づき、帰国後、材料工学の研究を独学で始めました。体になじみにくい金属が、長期的によい成績をだせるわけがないと考えたからです。しかしながら、金属の特性としてしなやかさや耐腐食性などを上回る素材はなかなかありません。それならば、既存のものにコーティングを施したらどうか、と考えました。ただし、コーティングするにしても体に害を及ぼすものでは当然使えません。行き着いたのがダイヤモンド系のコーティングでした。ダイヤモンドは、「物質の王様」といわれるだけあって、非常につるつるしているばかりではなく、耐摩耗性という特性があり、さらに炭素は身体を構成する成分の一つなので、人体に悪影響を及ぼしません。現在、主流となっている薬剤溶出性ステントから出てくる薬剤は薬効が強く正常の血管内皮細胞にダメージを与えるものが主流ですが、ダイヤモンドというのは化学的に安定しているばかりでなく、細胞に毒性を与えない特性を持っています。われわれは、さらにダイヤモンド系コーティングにフッ素を混在させることによって、血液の付着も防げることを初めて発見しました。つまり、フッ素を添加したDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)というコーティングは、血液をはじき付着を防ぐので、血栓ができにくい。さらに、血管内に残るのは炭素を主流とするダイヤモンド系素材なので、身体に悪いものではありません。これらの研究開発には、医学の知識だけではなく工学知識の力が不可欠でした。そこで、臨床医の立場で工学との通訳をしなければいけないと痛感しました。なぜならば、工学の思考と医学の研究者の思考回路はまったく違うからです。ですが、工学者も研究の応用の幅を広げたいと考えているし、医学者もテクノロジーを利用する考えが必要です。互いの歩み寄りを円滑にするために、私は医学部の栗林幸夫教授のご指導の下、医学博士を取得し、その後、工学部の鈴木哲也教授の下で工学博士を取得しました。これからも研究開発において、医工連携のための通訳になれたらと思いますし、私に続く若い医師や研究者を育成することに力を注いでいます。ゼロからのスタートに惹かれ挑戦慶應からこちらへ来たのは、ここはほぼゼロからということに興味を持ちました。現在の教室の寺田一志教授の誘いもあり、今までやってきたことをここで一度リセットして挑戦してみるのもいいだろうと考えました。慶應もいい環境ではありましたが、東邦大学の伝統と自由な気風、研究に対しても「自由にやれ」というムードがありました。特に、東邦佐倉病院では、他の臨床医の方々も、慶應から来た新参者にすごく親切にしてくれて、雰囲気もよかったし、全体的にやる気の気運が高まっている瞬間でした。今では県内でもトップクラスのIVR症例数を誇る施設になりつつありますが、こちらに来た当時はIVR治療もあまり積極的に行われていませんでした。それでも、循環器センターや消化器センターなど各診療科の多くの先生のご協力があって、現在にいたっています。これは、東邦大学の気風とセンター単位で行われるチーム医療にうまく融合した結果だと思います。前病院長の白井教授が臨床・研究に対する基礎を構築し、現在の田上病院長を中心にした執行部の積極的な支援の賜物だと思います。当院循環器センターの専門外来である「血管内治療・IVR外来」は、循環器内科医、心臓血管外科医、臨床検査医、放射線科医、心臓リハビリ医、形成外科医、糖尿病代謝内科医など本当の意味でのチーム医療ができるように構築してきました。カンファレンスの意思が医師同士の間で一貫しているというのは、患者さんにとっても安心できることだと思います。臨床としては主に肝臓がんや救急出血や動脈瘤などの塞栓術と下肢の閉塞性動脈硬化症(ASO: arteriosclerosis obliterans)に伴い、詰まってしまった血管の血管形成術がメインです。糖尿病や動脈硬化で足が壊死してしまうのを治療するのがメインです。私にとって医療器具の研究はライフワークですが、実は臨床が9割。この臨床の経験があるからこそ研究のテーマが明確に打ち出せるのだと思います。これからは教育にも力を注ぐ私がこれから望むものは、若い人の教育です。まだ私も若いですけど……(笑)。若い人を教育するということは、自分が教育されることでもあります。教えるというのは、教えられることでもあります。先入観のない眼で若い人と日本から何かを発信したい。座右の銘は「感謝して今日もニコニコ働きましょう」。決して一人で仕事をしているのではなく、周りのスタッフ、上司、親、自分の周りの人すべてが笑顔でいられる医療をやりたい。そのために臨床はもちろん、研究や医療器具の開発もしたい。若い医師には、どんどん広い世界を見て、自分のアイデンティティ、日本人であるとか医師になるという明確な自覚を持ってほしい。勇気を持って新しいことにもチャレンジしてほしい。それらを一緒にやっていきたい。だからうちの科では工学部との交流や留学なども積極的にプログラミングしています。若いうちから何でも経験させ、国際学会発表も全員が入局2年以内に経験するように指導しています。敵は病気なので、最高の技術、最高の人間性、患者さんを治したいという気持ちを強く身につけてほしいと考えています。是非、そんなピュアな高い志を持った若い先生と学閥や分野を越えて一緒に働きたいという希望を持っています。質問と回答を公開中!

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