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STEMIの再入院リスク、米国は他の国のおよそ1.5倍

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)による再入院率は米国が最も高く、血行再建術実施のための再入院を除いても、オーストラリアや欧州などに比べ、およそ1.5倍に上ることが明らかにされた。退院30日以内の再入院のリスク因子としては、多枝病変であることが2倍と最も高かった。米国・デューク大学医療センター臨床研究所のRobb D. Kociol氏らが、約5,700人のSTEMI患者について行った事後比較の結果で、JAMA誌2012年1月4日号で発表した。入院日数中央値は米国が最短で3日、ドイツが最長で8日研究グループは、2004年7月13日~2006年5月11日にかけて、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドと欧州13ヵ国の計296ヵ所の医療機関を通じて行われた、STEMI患者5,745人が参加した試験「Assessment of Pexelizumab in Acute Myocardial Infarction」のデータについて事後解析を行った。主要アウトカムは、退院後30日以内の再入院に関する予測因子だった。その結果、被験者のうちSTEMIによる院内死亡を除く5,571人のうち631人(11.3%)が、退院後30日以内に再入院していた。国別に再入院率をみると、米国は14.5%と、その他の国の9.9%に比べ有意に高率だった(p<0.001)。一方で、入院日数の中央値は米国が3日(四分位範囲:2~4)と最短で、最長はドイツの8日(同:6~11)だった。米国の院内死亡率や入院後30日死亡率は同等多変量回帰分析の結果、30日再入院に関する予測因子は、多枝病変(オッズ比:1.97、95%信頼区間:1.65~2.35)、米国で入院(同:1.68、1.37~2.07)だった。米国で入院という再入院予測因子は、血行再建術実施のための再入院を除いた後もオッズ比は1.53(同:1.20~1.96)だった。しかし各国の入院日数で補正後は、30日全死因死亡や緊急再入院の独立した予測因子ではなかった。また米国での入院は、院内死亡(オッズ比:0.88、同:0.60~1.30)や入院後30日死亡(オッズ比:1.0、同:0.72~1.39)のリスク因子ではなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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死産の原因、人種間差異が明らかに:米国SCRN調査

米国で、妊娠20週以降の死産の原因について調べたところ、産科的合併症が最も多く約29%、次いで胎盤異常が約24%に上ることなどが明らかにされた。米国立小児保健発育研究所(NICHD)が死産という重大な公衆衛生問題に取り組むため組織した「The Stillbirth Collaborative Research Network」(SCRN)が、死産を経験した女性約600人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年12月14日号で発表した。米国では、死産が妊娠160件につき1件の割合で発生しており、その総数は1年間の乳児死亡数にほぼ匹敵し、死産率は先進諸国と比べると高率で、過去10年間ほぼ横ばいで推移しているという。産科的合併症が最も多く29%、次いで胎盤異常24%米国での死産の傾向として、有意な人種間差異が認められていたが未解明だった。そこでSCRNは、人種・民族性および地理的ベースが多様な集団での、死産の原因を明らかとするため、2006年3月~2008年9月の間に全米59の3次救急を担う地域中核病院で登録された妊娠20週以降に死産した女性663人について、病歴調査や胎児の検死、胎盤の病理学的検査などを行い、その原因について調査した。検死は、同意の得られた被験者500人(胎児数512児)について可能だった。結果、60.9%にあたる312児で推定死因が判明し、可能性まで含めると76.2%の390児の死因が判明した。死産の原因で最も多かったのは、産科的合併症で150児(29.3%)、次いで胎盤異常が121児(23.6%)、胎児の遺伝的・構造的異常が70児(13.7%)、感染症が66児(12.9%)、臍帯異常が53児(10.4%)、高血圧性疾患が47児(9.2%)、その他の母体の健康状態によるものが40児(7.8%)だった。黒人の母親で産科的合併症、感染症の割合が高率死産の原因を人種別にみたところ、白人やヒスパニック系と比べて黒人の母親で、産科的合併症(43.5%対23.7%、絶対格差:19.8ポイント、p<0.001)、感染症(25.2%対7.8%、絶対格差:17.4ポイント、p<0.001)が有意に高率だった。また黒人の母親では、分娩時死産、より早い時期での死産発生もより多く認められた。死産の原因解明に役立ちそうな情報ソースとしては、胎盤の病理学的検査(268児、52.3%)、胎児の検死(161児、31.4%)、核型情報(限定的結果で357児中32児、9%)が挙げられた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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動脈硬化性疾患の主な症状と危険因子は? 家族の「動脈硬化」に関する意識調査より

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーは12月27日、全国の20代から50代の男女800名を対象に行った「動脈硬化に関する意識」調査を2011年12月上旬に実施し、調査結果を発表した。調査は、国内に居住する男女800名(20~50代、各セグメント100名)を対象に、インターネット上で行われた。同社はこの調査結果から、動脈硬化についての認知度や理解度、また、家族の健康への関心度についてをまとめた。概要は以下の通り。狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化性の心臓病がある場合、その他の血管にも動脈硬化が起こっている可能性があることを知っていると回答した人は約5割(55.4%)であった。また、全身の動脈硬化が重症化した場合の主な症状について調査したところ、サンプルにあげた「心筋梗塞」「脳梗塞」「足切断」「失明」「腎不全」「麻痺」「言語障害」に対する認知度は、「心筋梗塞」が92%と最も高く、続いて「脳梗塞」91%、「言語障害」65.6%となり、最も低い「足切断」でも42.9%の人が知っていると回答した。その一方で、代表的な動脈硬化性疾患について、その症状などについて調査したところ、どの疾患についても約8割が知らないと回答した。また、家族の動脈硬化性疾患の危険因子について調査したところ、父母、祖父母ともにあてはまるリスクの1位に「高血圧」が、3位に「糖尿病」があげられた。あてはまるリスクの2位は、父・祖父では「喫煙習慣があること」で、母では「肥満」であった。さらに祖母においては「過去に狭心症・心筋梗塞や脳卒中を起こしたこと」が2位となり、これは父母・祖父にあてはまるリスクの4位にもあがっていた。詳細はプレスリリースへhttp://www.jnj.co.jp/jjmkk/press/2011/1227/index.html

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静脈血栓塞栓症予防に対するapixaban対エノキサパリン

うっ血性心不全、急性呼吸不全、急性関節リウマチなど内科疾患で入院した患者に対し、退院後も静脈血栓塞栓症の予防を目的にapixaban投与を延長して行っても、入院中のみに行うエノキサパリン(商品名:クレキサン)投与と比べて優位性は示されなかったことが報告された。apixaban投与群では、重大出血イベントがエノキサパリン投与群よりも有意に認められたという。米国・ブリガム&ウイメンズ病院のSamuel Z. Goldhaber氏らADOPT試験グループが行った二重盲検ダブルダミープラセボ対照試験の結果で、NEJM誌2011年12月8日号(オンライン版2011年11月13日号)で発表された。apixabanの30日間経口投与群と、入院中エノキサパリン皮下注投与群とを比較本試験は、急性内科疾患で入院した患者について、退院後も静脈血栓症予防のための治療を行うことの有効性と安全性について、apixabanを退院後も延長して投与する長期投与コース群が、エノキサパリンを入院中のみ投与する短期投与コース群と比べて優れていると仮定して行われた。被験者適格は、うっ血性心不全や呼吸不全、その他の内科疾患で緊急入院となった患者で、3日以上の入院が予定され、静脈血栓塞栓症リスク因子(75歳以上、静脈血栓症で6週間以上の抗凝固療法の既往、がん、BMI 30以上など)を1つ以上有した6,528例だった。被験者は無作為に、apixaban 2.5mgを1日2回30日間(入院期間含む)経口投与する群と、入院6~14日にエノキサパリン40mgを1日1回皮下注投与する群に割り付けられた。apixaban長期投与コースの優位性示されず主要有効性アウトカム(30日時点の以下の発生複合:静脈血栓塞栓症関連死、肺塞栓症、症候性の深部静脈血栓症、30日目に計画的に実施された両側圧迫超音波検査で無症候性の近位下肢深部静脈血栓症を検出)は、4,495例(apixaban群2,211例、エノキサパリン群2,284例)について評価された。そのうち、apixaban群での発生は2.71%(60例)、エノキサパリン群では3.06%(70例)で、apixaban群の相対リスクは0.87(95%信頼区間:0.62~1.23、P=0.44)だった。一方、主要安全性アウトカム(出血イベント発生)について、30日までの重大出血イベント発生は、apixaban群0.47%(15/3,184例)、エノキサパリン群0.19%(6/3,217例)で、apixaban群の相対リスクは2.58(同:1.02~7.24、P=0.04)だった。(武藤まき:医療ライター)

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JIA患者に対するエタネルセプト、より早期使用ほど治療反応良好

若年性特発性関節炎(JIA)患児に対するエタネルセプト(商品名:エンブレル)の治療反応が良好なのは、治療開始時点での障害スコアが低く、抗リウマチ薬(DMARD)の使用量が少なく、発症年齢が若い傾向があることが明らかになった。一方で反応不良は、全身性JIAや女児に認められたという。オランダ・エラスムスメディカルセンター・ソフィア小児病院のMarieke H. Otten氏らが、JIA患者262人について行った前向き観察研究の結果、報告したもので、JAMA誌2011年12月7日号(オンライン版2011年11月6日号)で発表した。服用後15ヵ月の治療反応性を3段階評価研究グループは、生物学的製剤による治療が可能となって以降、JIAに対する薬学的アプローチが大きく変化したことを踏まえ、エタネルセプトの治療反応性について、基線因子との関連を明らかとすることを目的に試験を行った。対象は、オランダに住むJIA患者で、2009年10月以前にエタネルセプトの服用を開始した262人について2011年1月まで追跡を行った。被験児は、エタネルセプト服用前には生物学的製剤は服用していなかった。被験児のうち185人(71%)は女児、46人(18%)が全身型JIAで、エタネルセプト服用開始時の年齢中央値は12.4歳(範囲:9.3~14.9)だった。主評評価項目は、服用開始後15ヵ月時点におけるエタネルセプトへの治療反応性で、良好な反応(疾患非活動期、寛解により早期に服用中止となった)、中等度の反応(服用開始時点よりの症状改善50%超、だが疾患非活性は認められず)、反応不良(服用開始時点よりの症状改善50%未満か、無効もしくは不耐性により早期に服用中止)の3段階で評価した。治療開始後15ヵ月で3分の1が良好な反応その結果、治療開始15ヵ月時点で、反応が良好と評価されたのは85人(32%)、中等度は92人(36%)、反応不良は85人(32%)と、それぞれ3分の1ずつに評価が分かれた。良好群では、それ以外の群に比べ、治療開始時点での障害スコア(スコア0~3で0がベストスコア)が低く[補正後オッズ比(OR):0.49、95%信頼区間:0.33~0.74]、服用前のDMARD(メトトレキサート含む)の使用量が少なく(OR:0.64、0.43~0.95)、発症時の年齢が低かった(OR:0.92、0.84~0.99)。一方で、反応不良群では、その他の群に比べ、全身性JIA(vs. 非全身性のOR:2.92、1.26~6.80)や女児(vs. 男児のOR:2.16、1.12~4.18)が多かった。追跡平均35.6ヵ月で37~49%が疾患非活動期を達成15ヵ月の治療期間中、119人が1つ以上の感染・非感染あるいは重大な有害事象を有した(内訳は反応良好群37人、中等度群36人、反応不良群46人)。また、治療中止となったのは61例だった(同4人、0人、57人)。被験者262人を対象にした、エタネルセプト服用後期間の中央値35.6ヵ月における2次解析では、37~49%が疾患非活動期を達した。エタネルセプトに対するアドヒアランス(平均値)は、反応良好群49.2ヵ月(95%信頼区間:46.4~52.0)、中等度群47.5ヵ月(同:44.9~50.1)、反応不良群17.4ヵ月(同:13.6~21.2)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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食物繊維の豊富な摂取は、大腸がんのリスクを減少する

食物繊維の摂取量が多いこと、特にシリアル線維と全粒粉の摂取が多いことは、大腸がんのリスクを減少することが明らかにされた。英国・ロンドン大学公衆衛生校のDagfinn Aune氏らが行った前向き試験のシステマティックレビューと用量反応試験のメタ解析の結果、報告された。BMJ誌2011年11月26日号(オンライン版2011年11月10日号)掲載報告より。メタ解析で、食物繊維、全粒粉の摂取と大腸がんリスクとの関連を評価研究グループは、食物繊維、全粒粉の摂取と大腸がんリスクとの関連を評価することを目的に、前向き観察研究のシステマティックレビューとメタ解析を行った。2010年12月までにアップされたPubMedとその他データベースと、試験の参照リストをデータソースとした。またこれまでに公表されたメタ解析の参照リストも同様に対象とし、食物繊維や全粒粉の摂取、大腸がんの発生率についての前向きコホート研究およびネスティッドケースコントロール試験を行っていた論文25件を選定した。特にシリアル線維と全粒粉の摂取は、大腸がん発生リスクを低下解析の結果、食物繊維の総摂取量が1日10gであることの大腸がん発生の相対リスク(16試験)は、おおよそ0.90(95%信頼区間:0.86~0.94、I2=0%)であった。果物線維(9試験)では同0.93(0.82~1.05、I2=23%)、植物性繊維(9試験)は同0.98(0.91~1.06、I2=0%)、マメ科植物線維(4試験)は同0.62(0.27~1.42、I2=58%)、シリアル線維(8試験)では同0.90(0.83~0.97、I2=0%)だった。1日3食とも全粒粉にした人の大腸がん発生の相対リスク(6試験)は、おおよそ0.83(同:0.78~0.89、I2=18%)だった。著者は「食物繊維の高い摂取は、特にシリアル線維と全粒粉の摂取は、大腸がんのリスク減少と関連していた」と結論。「さらなる試験で、より詳細な結果を報告しなければならない。たとえば、線維のサブタイプに対する結果や、残余交絡因子を除外するために他のリスク因子によって層別化するなどである。また、推定リスクの測定誤差の影響についても、さらなる検証が必要である」とまとめている。

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喘息リスク幼児へのグルココルチコイド、低用量連日 vs. 高用量間欠

前年に修正版喘息予測指標(API)陽性または喘息増悪を示した喘息リスクを有する幼児には、グルココルチコイドの連日吸入が推奨されている。米国・カイザーパーマネント南カリフォルニアのRobert S. Zeiger氏ら全米心臓・肺・血液治療ネットワークは、連日吸入に対して懸念される発育への影響について検討するため、12~53ヵ月児278例を対象に、低用量連日投与と高用量間欠投与とを比較する、1年間の無作為化二重盲検パラレル比較試験を行った。結果、増悪に関して、低用量連日投与の高用量間欠投与に対する優位性は示されず、低用量連日投与のほうが1年時点の薬剤曝露量が多かったことが報告された。NEJM誌2011年11月24日号掲載報告より。278例を対象に1年間の無作為化二重盲検パラレル比較試験試験は2008年8月~2009年7月に、全米7施設から278例の12~53ヵ月児を登録して行われた。被検児は前年に、修正版API陽性、喘鳴エピソードを有し(4回以上、あるいは3回以上で3ヵ月以上吸入薬を服用)、1回以上の増悪を呈した、障害の程度は低い幼児だった。被検児は無作為に、ブデソニド吸入用懸濁液(商品名:パルミコート)を1年間、高用量間欠レジメン(1mgを1日2回7日間投与を事前定義の気道疾患時に早期開始で行う)か、低用量連日レジメン(毎晩0.5mg投与)にて投与する群に割り付け検討した。両群投与はプラセボを用いて調整され、高用量間欠レジメン群は、疾患発症時以外はプラセボを毎晩投与され、低用量連日レジメン群は、疾患発症時の1日2回投与をプラセボ1回と0.5mg投与1回で受けた。主要アウトカムは、経口グルココルチコイド投与を要する増悪の頻度とされた。両レジメン群の増悪頻度に有意差認められず、低用量レジメンのほうが平均曝露量大結果、両レジメン群の増悪頻度に関して有意な差は認められなかった。低用量連日レジメン群の患者・年当たりの増悪発生率は0.97(95%信頼区間:0.76~1.22)、高用量間欠レジメン群は同0.95(同0.75~1.20)で、間欠レジメン群の相対発生比率は0.99(95%信頼区間:0.71~1.35、p=0.60)だった。初回重症度までの時間など喘息重症度やや有害事象など、その他の指標についても有意差は認められなかった。ブデソニド曝露については、連日レジメン群よりも間欠レジメン群のほうが平均値で104mg少なかった。(武藤まき:医療ライター)

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腹壁破裂児の1年アウトカム予測のベンチマーク

出生時に腹壁破裂を伴った新生児について、患児を単純群(腸が無傷、無損傷、連続している)と複雑群(腸に穿孔・壊死または閉塞が起きている)に階層化することで、1年アウトカムを確実に予測できることが明らかにされた。Bradnock氏英国・グラスゴー王立小児病院のTimothy J Bradnock氏らが、英国およびアイルランドで行った全国住民ベースのコホート研究からの報告による。Bradnock氏は、同方法が、各治療施設のアウトカムやパフォーマンスを評価するベンチマークになり得、次なるステップとして、同法を用いて、懸念されている腹壁破裂児の初期治療戦略や治療アルゴリズム開発のための無作為化試験を行うことも提言した。BMJ誌2011年11月19日号(オンライン版2011年11月15日号)掲載報告より。英国とアイルランドの28施設301例を対象に調査Bradnock氏らは、2006年10月~2008年3月までに、英国およびアイルランドで腹壁破裂を伴い出生した新生児の1年アウトカムを評価する人口ベースコホート研究を行った。被験児は、英国およびアイルランド国内28の小児外科センターで登録された393例で、そのうち301例(77%)が解析対象となった。主要評価項目は、非経口栄養摂取期間、入院期間、経腸栄養摂取が完全となったまでの期間、腸管障害率、腸管障害関連の肝疾患率、非計画的再手術率、致命率であった。評価は、事前特定したサブグループ(単純性腹壁破裂群、複雑性腹壁破裂群)で行われた。単純群と複雑群に階層化することで1年アウトカムを確実に予測できる結果、単純性腹壁破裂群の患児と比べて、複雑性腹壁破裂群の患児のほうが、完全経腸栄養摂取までの時間が長くかかり(平均差:21日、95%信頼区間:9~39)、非経口栄養摂取の期間が長く(同:25日、9~46)、入院期間も長かった(同:57日、29~95)。また、腸管障害率も高く(81%対41%、相対比:1.96、95%信頼区間:1.56~2.46)、腸管障害関連の肝疾患(23%対4%、同:5.13、2.15~12.3)、非計画的再手術(42%対10%、同:4.39、2.50~7.70)の割合も高かった。一方で初回手術で腹壁閉鎖した患児と比べて、サイロ作製術で腹壁閉鎖をした患児は、完全経腸栄養摂取までの時間が長くかかり(平均差:5日、95%信頼区間:1~9)、腸管障害のリスクが高かった(52%対32%、相対比:1.61、95%信頼区間:1.17~2.24)。その他のイベント発生率は低く、両群間で有意差はなかった。死亡は12例(4%)だった。これらを踏まえてBradnock氏は、「腹壁破裂児を単純群もしくは複雑群に階層化することは1年アウトカムを確実に予測する。それは、懸念されている初期管理戦略について、プライマリ腹壁閉鎖かサイロ作製腹壁閉鎖かを比較する多施設共同無作為化試験を行うのに十分な臨床的均衡を有している。すなわち、どちらの治療が初期管理戦略として至適であるかを判定するため、あるいは治療アルゴリズムを定めるのにも十分な臨床的均衡を有している」と結論している。

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ADHD薬と重篤な心血管イベントリスク上昇との証拠示されず

注意欠陥・多動性障害(ADHD)薬について、北米で持ち上がっている、重篤な心血管イベントリスクを増大するのではないかとの懸念に対し、米国・ヴァンダービルト大学小児科部門のWilliam O. Cooper氏らは、2~24歳約120万人を対象とする大規模な後ろ向きコホート試験を行った。結果、両者の因果関係は認められなかったことを報告した。95%信頼区間の上限値がリスク倍増の可能性を無視できない値ではあったが、「しかしながら、リスク増大の絶対値は低い」と結論している。NEJM誌2011年11月17日号(オンライン版2011年11月1日号)掲載報告より。2~24歳の、ADHD薬服用中の37万3,667人・年を含む257万9,104人・年について検討Cooper氏らは、ADHD服用と重篤な心血管イベントとの関連を調べるため、4つの健康保険組織(テネシーメディケイド、ワシントン州メディケイド、カイザーパーマネント・カリフォルニア、オプタムインサイト・エピデミオロジー)から自動抽出したデータを用いて後ろ向きコホート研究を行った。対象は、2~24歳120万438例で、ADHD薬を服用中の37万3,667人・年を含む257万9,104人・年について検討した。健康保険データと人口動態データから重篤な心血管イベント例(突然死、急性心筋梗塞、脳卒中)を同定し、診療録と突き合わせエンドポイントを同定。ADHD薬現在服用者と非服用者とのエンドポイント発生の推定相対リスクをCox回帰モデルによるハザード比で比較した。ADHD薬現在服用者にリスク増大は認められずコホートにおける重篤な心血管イベント例は81件であった(3.1件/10万人・年)。ADHD薬現在服用者の重篤な心血管イベントのリスクは増大していなかった(補正後ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.31~1.85)。リスク増大は、個別エンドポイントすべてで認められなかった。また以前の服用者と現在服用者との比較でも認められなかった(同:0.70、0.29~1.72)。その他いくつかの試験推測について言及した解析の結果も、ADHD薬服用と試験のエンドポイントのリスクとの関連は有意ではなかった。(武藤まき:医療ライター)

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初発の心筋梗塞後の院内死亡率、冠動脈心疾患リスクが少ないほど増大

 心筋梗塞を初めて発症し、それ以前に心血管疾患歴のない人の院内死亡リスクについて、5つの主要な冠動脈心疾患リスクの数との関連を調べた結果、リスクが少ないほど高くなる逆相関の関連がみられることが大規模試験の結果、示された。米国フロリダ州にあるWatson ClinicのJohn G. Canto氏らが、約54万人を対象とした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月16日号で発表した。これまで地域ベースでの急性心筋梗塞の冠動脈心疾患リスク因子数とアウトカムとの関連について、調査されたことはほとんどなかった。全米心筋梗塞レジストリ54万2,008人について調査 研究グループは、1994~2006年の全米心筋梗塞レジストリから、心筋梗塞を初めて発症し、それ以前に心血管疾患歴のない54万2,008人について調査を行った。 冠動脈心疾患の主要リスク因子である、高血圧、喫煙、脂質異常症、糖尿病、冠動脈心疾患の家族歴の5つと、院内総死亡リスクの関連について分析を行った。 被験者の平均年齢は66.3歳、うち女性は41.4%だった。そのうち、来院時に冠動脈心疾患のリスク因子が全く認められなかったのは14.4%、1~3個のリスク因子があったのは81%、4~5個のリスク因子があったのは4.5%だった。リスク因子0の人は、5つを有する人に比べ院内死亡リスクが1.54倍 リスク因子の数は、年齢が増すほど増加し、リスクがまったく認められなかった群の平均年齢は56.7歳だったのに対し、5つすべてが認められた群の平均年齢は71.5歳だった(傾向に関するp<0.001)。 被験者のうち、院内総死亡数は5万788人だった。補正前の院内死亡率は、同リスク因子が少ないほど高率で、リスク因子総数0群14.9%、同1群10.9%、同2群7.9%、同3群5.3%、同4群4.2%、同5群3.6%だった。 年齢とその他臨床的リスク因子を補正後、主要な冠動脈心疾患リスク因子の数と、院内総死亡率との間には逆相関の関連が認められた。同リスク因子総数0群の、同5群に対する同死亡に関するオッズ比は1.54(95%信頼区間:1.23~1.94)だった。

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重症型急性アルコール性肝炎に対するプレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法

 死亡率が高い重症型急性アルコール性肝炎について、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法が生存率を改善するかについて検討した試験が行われた。結果、1ヵ月生存率は上昇したが、主要転帰とした6ヵ月生存率は改善されなかったという。フランス・Picardy大学のEric Nguyen-Khac氏らが、174例を対象とした無作為化試験の結果、報告した。同疾患患者の死亡率は、グルココルチコイド治療を行っても6ヵ月以内の死亡率が35%と高い。NEJM誌2011年11月10日号掲載報告より。プレドニゾロン単独療法と、+N-アセチルシステイン併用療法とを比較 Nguyen-Khac氏らAAH-NAC(Acute Alcoholic Hepatitis–N-Acetylcysteine)研究グループは、2004~2009年にフランスの11大学病院に重症型急性アルコール性肝炎で入院した患者174例を対象に試験を行った。 被験者は無作為に、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法を受ける群(85例)とプレドニゾロン単独療法を受ける群(89例)に無作為に割り付けられた。被験者は全員4週間にわたってプレドニゾロン40mg/日の経口投与を受け、そのうち併用群は最初の5日間にN-アセチルシステイン静注を受けた。同投与量は、1日目は150mg/kg体重を5%ブドウ糖液250mLに溶解したものを30分間、50mg/kgを同500mLに溶解したものを4時間、100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを16時間かけて投与。2~5日目は、1日当たり100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを投与した。 単独群はその間、5%ブドウ糖液1,000mLのみが投与された。試験中、腹水治療のための利尿薬投与などや門脈圧亢進症のためのβ遮断薬の使用は認められた。飲酒癖は本人任せであった。アセトアミノフェン、ペントキシフィリン、抗TNF-αの使用は禁止された。全患者は標準病院食(1日1,800~2,000kcal)を受けた。主要転帰6ヵ月生存、併用群のほうが低かったが有意差は認められず 主要転帰は6ヵ月での生存とした。結果、併用群(27%)のほうが単独群(38%)よりも低かったが有意ではなかった(P=0.07)。 副次転帰は、1ヵ月、3ヵ月の生存、肝炎の合併症、N-アセチルシステイン使用による有害事象、7~14日のビリルビン値の変化などであった。結果、1ヵ月時点の死亡率は併用群(8%)のほうが単独群(24%)よりも有意に低かったが(P=0.006)、3ヵ月時点では有意差は認められなくなっていた(22%対34%、P=0.06)。6ヵ月時点の肝腎症候群による死亡は、併用群(9%)のほうが単独群(22%)よりも低かった(P=0.02)。 多変量解析の結果、6ヵ月生存に関連する因子は、「年齢がより若いこと」「プロトロンビン時間がより短いこと」「基線のビリルビン値がより低いこと」「14日時点でのビリルビン値低下」であった(いずれもP<0.001)。 感染症は、単独群よりも併用群で頻度が高かった(P=0.001)。その他副作用は両群で同等であった。

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第VIII因子インヒビター重症血友病A患者に対するAICCの予防的投与戦略

第VIII因子インヒビターを有する重症血友病A患者に対し、乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体(AICC、商品名:ファイバ)を予防的に投与することで、関節内出血およびその他の部位での出血頻度が有意に低下することが明らかになった。予防的投与の安全性も確認された。米国・チュレーン大学ルイジアナセンターのCindy Leissinger氏らによる前向き無作為化クロスオーバー試験「Pro-FEIBA」からの報告による。同患者は、重篤な出血性合併症リスク、末期関節症への進行リスクが高いことが知られる。AICCがそうした患者に対し出血を予防する可能性についてはこれまで散発的な報告はなされていたが、最適な投与方法については確立されていなかった。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。34例を対象に予防的投与期間中とオンデマンド治療期間中の出血回数を比較研究グループは、欧米16ヵ所の血友病治療センターで2003年11月~2008年9月に、2歳以上のインヒビター高値の血友病A患者で、出血に対しバイパス製剤による治療を始めていた(試験前6ヵ月間で6回以上出血エピソードがあった)患者34例を登録した。被験者は無作為に、AICCの予防的静注[目標用量85U/kg体重(±15%)を週3回(連続しない日に投与)]を6ヵ月間行う治療と、オンデマンド治療[出血に対し目標用量85U/kg体重(±15%)のAICCを投与]を6ヵ月間行う治療をクロスオーバーで受け、それぞれの治療期間における出血回数を主要エンドポイントとして比較された。両治療の間には、3ヵ月間の休薬期間が設けられ、その間の出血についてはオンデマンド治療が行われた。予防的投与は全出血エピソードを62%減少試験を完了しper-protocol解析で有効性評価がされたのは、34例中26例であった。結果、オンデマンド治療期間と比較して予防的投与期間は、全出血エピソードが62%減少(P<0.001)、関節血症は61%減少(P<0.001)、標的関節出血(6ヵ月間の治療期間中片方の関節血症が3回以上)は72%減少(P<0.001)した。被験者の33例が1回以上試験薬を受けており、それら被験者について安全性の評価が行われた。結果、1例が試験薬に対するアレルギー反応を有した。(武藤まき:医療ライター)

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英国電子カルテ・NHS医療記録サービス、臨床家の利益は限定的、患者の利益は不明

英国で国家的IT戦略の一つとして2002年により導入が開始された2次急性期病院への電子カルテシステム「NHS医療記録サービス」について、エジンバラ大学集団保健センターeHealth研究グループのAziz Sheikh氏らが、早期導入した12病院の状況の長期質的評価を行った。結果、サービス実行には時間がかかり骨が折れるものであること、臨床家にとって利益は限定的で、患者にとっては明確な利益が不明であったという。英国の全377病院は2010年末までに同システムを導入しなければならなかったが、稼働は5つに1つの病院にとどまっており、今後の進め方について見直しの議論が進められているという。BMJ誌2011年10月29日号(オンライン版2011年10月17日号)掲載報告より。2年半にわたる関係者への面接、観察、文書データ解析でシステム導入を質的評価本報告は2年半にわたって行われた評価の最終評価であった。評価は、深層面接、観察、ケーススタディあるいは導入戦略について広範な国家的成果に影響があると認められた文書からデータが集められ、導入初期から全体にわたる解析が行われた。集められたデータは次の通りであった。病院スタッフ、デベロッパー、政府のステークホルダーなどキーとなるステークホルダー431人の準組織的な面接記録。590時間にわたる戦略会議とソフトウェア活用に関する記録。334セットの観察ノートと分析者のフィールド調査ノートおよび国の会議ノート。809のNHS文書と、58の地方および国の文書。ソリューション全体の目標を見失ってはならない結果、当初計画したよりも、システム導入には非常に時間がかかっており、導入は限定的で、実質的に臨床的には機能してないことが認められた。国家戦略の成果は限定的で、より広範な開発が導入への重荷となっていた。特に、遅れは想定外のシステム能力や、ソフトウェアの構築・設定・カスタマイズに時間を要したこと、システムが医療の供給をサポートしたことを証明する作業が必要なこと、エンドユーザーへの訓練とサポートが必要なことなどが関係していた。その他導入進展を妨げた要因として、NHSの政策方針と優先事項の変化、契約再交渉が繰り返されたこと、NHS医療記録サービスシステム開発ステージの多様性、異なるステークホルダー間の複雑なコミュニケーションプロセス、NHS提供者を除外して進められた契約協定などだった。早期のシステム稼働が組織内・組織間の重大な学びに結びつくこと、NHS病院内の適切な権限開発に結びつくことが認められた。研究グループは、「この結果が後発病院にもあてはまるとは限らないが、われわれの評価は大規模な新しいシステム実行のプロセスで起きたことを明らかにした」と述べ、「われわれの中間解析に基づき提唱した局所的意思決定増大への移行がNHSによって推進され歓迎されているが、政策担当者は、ソリューション全体の目標を見失ってはならない」と結論している。

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戸田克広 先生の答え

麻薬の使用法治療としていわゆる麻薬はどのような状況、症状の時に使うべきなのでしょうか。また、投与中止はどのようにおこなうべきでしょうか。非癌性慢性痛に麻薬を使用することは依存を引き起こすのではないかと危惧する意見があります。しかし、痛みがある患者さんに適切に使用する限りは、依存は起こらないと考えられています。後者の仮説には明確なデータはないため麻薬の使用は慎重におこなうべきです。しかし、適切な治療を1年以上おこなっても鎮痛効果が不十分な場合や、初診時に激烈な痛みがあり、自殺の恐れがある場合には麻薬を使用してもよいと思います。喫煙者などの物質依存者や約束を守らない人格と判断される場合には麻薬を使用しないことが望ましいと思います。モルヒネには「天井効果がないため上限量はない」という考えもありますが、「200mg / 日を超える場合にはさらに十分な評価が必要」という意見もあります。ペインクリニック専門医ではない場合には200mg / 日を超えるモルヒネは査定される可能性が高いという非公式の制度があるため注意が必要です。ブプレノルフィン、ペンタゾシンは使用すべきではありません。トラマドール塩酸塩〔トラムセット〕またはコデイン、モルヒネ、フェンタニル〔デュロテップパッチ〕の順で使用することが一般的です。モルヒネは薬価が高いため、1回量が20mgになれば薬価の安い散剤にした方が良いと思います。麻薬が有効な場合、その他に有効な薬を見つけて麻薬を減量または中止する努力が必要です。減量とは1回量の減量であって、投与間隔を延長してはいけません。モルヒネであれば1回量を2-4週間ごとに10mgずつ減量し、痛みが悪化すれば再び増量することが望ましいと思います。※〔 〕内の名称は商品名です 中枢性過敏についてこの概念と定義はどなたが提唱したものなのでしょう。概念をもう少し詳しくお聞かせください。御多忙中とは存じますが、どうぞ宜しくお願いいたします。Woolfが中枢性過敏(central sensitization: CS)を提唱しました。CSにはさまざまな定義があります。Woolfは「侵害受容刺激により中枢の侵害受容経路のシナプス効果と興奮性が長期間ではあるが可逆的に増加すること」と定義していますが、国際疼痛学会は「正常あるいは閾値下の求心性入力に対する中枢神経系内の侵害受容ニューロンの反応性の増加」と定義しています。私は次のように考えています。侵害受容性疼痛や末梢性神経障害性疼痛という痛み刺激のみならず、精神的ストレスなどの刺激が繰り返し脳に送られ続けると、中枢神経に機能障害が起こってしまいます。機能障害ではなく器質的障害なのかもしれませんが、現時点の医学レベルではよくわかっていません。中枢神経に機能障害が起こるとさまざまな刺激に対して過敏になり、痛みを感じない程度の刺激が中枢神経に入っても痛みを感じさせてしまいます。また、中枢神経に起こった機能障害の部位そのものが痛みなどの症状の原因になる、つまり機能障害の部位から痛みなどの情報が流れてしまうと推測しています。一方、Yunusが中枢性過敏症候群(central sensitivity syndrome: CSS)を提唱しました。CSSの主な原因はCSと推測されています。CSは主に痛みに関する理論ですが、CSSには痛みを主訴とするFM以外にも、慢性疲労症候群、異常感覚を主訴とするむずむず脚症候群、化学物質過敏症、うつ病、外傷後ストレス障害なども含まれます。CSSの代表疾患の一つがFMなのです。CSは日本でも知られていますが、CSSはFM以上に日本では知られていません。CSSに含まれる疾患は定まっていません。不安障害、皮膚掻痒症、機能性胃腸障害、更年期障害、慢性広範痛症、慢性局所痛症などもCSSに含まれると私は考えています。(日本医事新報No4553, 84-88, 2011)FMの症状について口の中が痛くて、硬いものがかめない症状や、下肢痛があり車や電車に乗ると悪化するような症状はFMに該当するでしょうか?口の症状はFMの症状です。FMでは身体のどこにでもアロジニア(通常痛みを引き起こさない程度の刺激により痛みが起こること)が起こります。口腔内にそれが起これば、硬いものをかめない症状が生じます。口の症状のみがある場合には舌痛症と診断すべきかもしれませんが、舌痛症はFMの部分症状と考えることも可能です。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化すると訴えるFM患者を私は知りませんが、FMの症状と考えても矛盾はありません。FMでは、歩行時より下肢を動かさない状態の時に痛みが強い場合が多いからです。自動車や電車に乗ると下肢痛が悪化する場合には、むずむず脚症候群の可能性もあります。むずむず脚症候群では歩行時よりも安静時に下肢のむずむず感が強くなるため、自動車や電車に乗るとそれが強くなる場合があります。むずむず感などの違和感を痛みと表現する患者さんもいます。FMとむずむず脚症候群はしばしば合併するため注意が必要です。者の性差について患者で女性が8割を占める理由について病態の解明は進んでおりますでしょうか。現在わかっている範囲でお教えください。FMの原因は脳の機能障害という説が定説ですが、厳密にはわかっていません。そのため、女性が8割を占める理由も当然わかっていません。FMの原因解明が進めば、その理由もわかるのではないかと期待しています。FMを含むFMよりも広い概念の慢性広範痛症においては双子を用いた研究により半分が遺伝要因、半分が環境要因と報告されています。性ホルモンはFMに影響を及ぼす要因の一つと考えられています。ただし、性ホルモンは遺伝子により大きな影響を受けるため、性ホルモンの差と遺伝子の差を厳密に区別することは困難です。なお、FM患者の中で女性と男性でどちらの症状が強いかに関しては、男女差はないという報告、女性の症状が強いという報告、男性の症状が強いという報告があり、何ともいえません。治療選択について非薬物療法を患者さんが選択し、希望する場合、一番効果的なものはどれでしょうか。先生の私見でも結構ですのでご教示願えますか。非薬物療法の中では禁煙、有酸素運動、認知行動療法、温熱療法、減量、患者教育が有用です。激しい受動喫煙を含めた喫煙者では、禁煙が一番有効と考えていますが、非喫煙者では有酸素運動が一番有効と考えています。患者本人の喫煙継続は論外ですが、間接受動喫煙防止のため配偶者には禁煙、その他の家族には屋外喫煙が必要です。有酸素運動は、技術や人手が不要、安価で、誰でもできるという長所があるため、非喫煙者では最も有効と考えています。散歩や水中歩行のみならずヨガ、太極拳も有効です。歩行すると痛みが悪化する人では、深呼吸で代用も可能です。安静が有効な場合もありますが、これは痛みが起こらない程度の安静を保つことを意味するのであって、過度な安静は逆に有害です。痛みに対する認知行動療法は、論文上有効なのですが、実際に何をすれば良いのかよくわからないこと、適切な治療を行う施設が少ないこと、費用が高いことが欠点です。欧米を中心にしたインターネットによる調査では約8%の人しか認知行動療法を受けておらず、患者さんが自己評価した有効性もあまりよくありませんでした。温熱療法には、温泉療法、温水中の訓練、遠赤外線サウナ、近赤外線の照射などが含まれます。FMは心因性疼痛ではなく、恐らく脳の機能障害が原因であろうことの説明や痛いときには無理をしないことの説明などが患者教育です。星状神経節ブロックを含む交感神経ブロックが有効という根拠はありません。対照群のない研究では鍼は有効なのですが、適切な対照群のある研究では鍼の有効性が証明されていません。交感神経ブロックも鍼も、5回行って一時的な鎮痛効果しかなければ、それ以上継続しても一時的な効果しかないと私は考えています。トリガーポイントブロックの長期成績は不明です。非薬物治療は組み合わせて行うことが望ましく、さらに言えば、非薬物治療は薬物治療と併用することが望ましいと報告されています。線維筋痛症の患者とうつ病同症の患者では精神疾患(特にうつ病)を併発されている方も多いと聞きます。その場合のケアと薬剤の処方のポイントについてご教示ください。抑うつ症状あるいはうつ病に痛みが合併した場合、痛みはうつ病の一症状であるという理論は捨てる必要があります。痛みと、抑うつや不安症状は対等の症状と見なすことが重要です。FMとうつ病(または不安障害)が合併した場合、当初はより重症な症状のみを治療することをお勧めします。一方の症状がある程度軽減した後に、他方の症状を治療した方が治療は容易です。抗うつ作用がまったくない薬で痛みが軽減しても、抑うつ症状が軽減することはありふれたことです。しかし、両症状とも強い場合には、両方を同時に治療せざるを得ないこともあります。その場合には抑うつ症状に対する治療と、痛みに対する治療は分けた方がよいと思います。SSRIと短期間の抗不安薬を抑うつ症状に対する治療と考え、その他の薬は痛みに対する治療と考えた方がよいと思います。三環系抗うつ薬とSNRIは抑うつにも痛みにも有効ですが、痛みのみに有効と見なし、抑うつがついでに軽減すれば「儲け物」という程度に考えた方がよいと思います。なお、三環系抗うつ薬では鎮痛効果を発揮する投与量より抗うつ効果を発揮する投与量の方が多いのですが、SNRIでは両効果を発揮する投与量は同程度です。SSRIも痛みに対する薬も通常漸増する必要があります。それらを同日投与や同日増量すると副作用が生じた場合に、原因薬物の特定が困難になる場合があります。そのため、投与開始や増量は少なくとも中2日は空けたほうがよいと思います。抗不安薬は、SSRIが抗うつ効果や抗不安効果を発揮するまでの一時しのぎとして抗不安薬を使用すべきです。抗不安薬を半年以上投薬する場合には、転倒や骨折の増加、運動機能の低下、理解力の低下、認知機能の低下、抑うつ症状の悪化、新たな骨粗鬆症の発症、女性での死亡率の増加を説明する必要があります。抗不安薬を半年以上使用すると常用量依存が起こりやすく、その場合中止が困難になります。薬物療法とガイドライン解説の中で薬物療法について「ガイドラインでは科学的根拠がない」と記されていますが、近々に発表される、または欧米のものが翻訳される見込みはございますか。教えていただける範囲でお願いします。「線維筋痛症のガイドライン」は、アメリカ、ドイツ、ヨーロッパ、カナダ、スペインから発表されています。日本語に翻訳されて発表される見込みは現在不明です。日本のガイドラインの改訂版は今後発表される予定ですが、いつになるのか未定です。アメリカ、ドイツ、ヨーロッパのガイドラインは各治療方法の有効性のエビデンスを記載しています。カナダのガイドラインはエッセイ様式です。スペインと日本のガイドラインはサブグループに分けています。スペインのガイドラインは修正デルフィ法(参加者の匿名のアンケートとそれに対する評価を繰り返し一つの結論を出す方法)によりGieseckeらの分類方法を採用しています。日本のガイドラインの最大の特徴はFMをサブグループに分けて、サブグループごとに治療方法を変える点です。世界では、FMのサブグループ分けは多くの研究者により行われています。痛み、抑うつ状態などのさまざまな指標により得られたデータによりサブグループ分けが行われていますが、報告により異なるサブグループに分けられています。ただし、日本のガイドラインに含まれる「筋付着部炎型」は私が知る限り、報告された分類方法のどのサブグループにも存在しません。また、前回と今回の日本のガイドラインでは同じサブグループの推奨薬物が異なっていますが、その変更の根拠が記載されていません。「分類の根拠、およびサブグループごとに推奨する薬物が異なる根拠は論文化されていない」由が、今回のガイドラインに記載されています。日本のガイドラインでは各執筆者は自分自身の執筆した部分のみに責任を持つことも特徴の一つです。睡眠薬との関連痛みがひどくて眠れない患者さんに睡眠薬を処方することもあるかと思います。その場合、注意する点などご教示ください。FMに限らず、痛みのために不眠の患者さんの睡眠改善目的にまず処方する薬は、睡眠薬ではなく鎮痛薬です。もちろん非ステロイド性抗炎症薬ではなく神経障害性疼痛に対する鎮痛薬です。鎮痛薬が主で、睡眠薬は従の関係です。当初は睡眠薬を処方せず、鎮痛薬を私は処方しています。三環系抗うつ薬、ガバペンチン〔ガバペン〕、プレガバリン〔リリカ〕は鎮痛効果が強い上に、眠気の副作用が強いのでその副作用を睡眠改善に使用することも可能です。しかし、眠気の副作用がほとんどないワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液〔ノイロトロピン〕やデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物〔メジコン〕により痛みが改善すれば、結果的に睡眠が改善することもあります。FMの不眠に有効な睡眠薬はゾピクロン〔アモバン〕、ゾルピデム酒石酸塩〔マイスリー〕ですが、副作用報告の少ないゾピクロンを私は優先使用しています。FMの睡眠障害に対して抗不安薬を使用することは避けるべきです。常用量依存を作りやすいからです。特に、作用時間が短く抗不安作用が強いため常用量依存を作りやすいエチゾラム〔デパス〕を睡眠薬として使用することは避けるべきです。※〔 〕内の名称は商品名です。日本での患者数わが国における患者の推定数はどのくらい見積もられておりますでしょうか、また、欧米の患者数、人種差、性差なども合わせてお教え下さい。日本における地域住民の有病率は約1.7%と報告されていますが、その報告には調査人数や具体的な調査方法が記載されていません。今後、科学的根拠の高い日本人の有病率が世界に知られることを期待しています。日本の病院敷地内での女性就労者の2.0%、男性就労者の0.5%がFMと報告されています。アジア、欧米を中心とした報告によるとFMの有病率は約2%、そのグレーゾーンの有病率は約20%と推測されます。圧痛点の数は経時的に変動することや論文上の有病率は一時点の有病率であることを考えると、真の有病率は約2%、日本では250万人程度のFM患者がいると推測しています。中国での有病率は0.05%という報告がありますが、調査方法や診断能力に原因があるのかもしれません。同一の研究チームが異人種を調べた研究は3つあり、ブラジル(非白人2.65%と白人2.26%)とイラン(Caucasians0.6%とトルコ人0.7%)では人種差がなく、マレーシア(マレー系1.19%、インド系2.58%、中国系0.33%)では人種差がありました。そのため有病率に人種差があるのかどうかは不明です。FM患者の約8割は女性であり、性比には大きな人種差はないようです。医師以外の関与線維筋痛症について、ナースやコメディカルが介入できる余地はありますでしょうか。例えば理学療法士がストレッチを指導する、ナースが話を聞くなどで患者の日常生活から改善していくなどです。その際の保険点数など参考になるものがございましたらご教示お願いします。薬物治療以外では、コメディカルが介入できる余地がたくさんあります。ただし、FMという病名では保険点数はつきません。理学療法士や作業療法士は、有酸素運動、筋力増強訓練、ストレッチ、水中訓練などを指導できます。しかし、FMなどの痛みを引き起こす疾患では保険点数は取れません。関節の変性疾患、関節の炎症性疾患、運動器不安定症などが合併していれば運動器リハビリテーション料を請求することができます。ナースが患者の話を聞いたり、患者の痛みや生活の質を評価するアンケートの記載方法の説明を行うことができます。ただし、ナースが患者の話を聞いても保険点数を請求できません。うつ病に対する認知行動療法に対して、厳しい条件はあるものの2010年から保険点数が取れるようになりました。しかし、FMなどの痛みに対する認知行動療法では保険点数を請求できません。総括FMが知られていない日本医学は世界の標準医学から大きく乖離しています。FM以上に中枢性過敏症候群は、日本では知られていません。FMのみならず中枢性過敏症候群を認めて世界の標準医学に追いつく必要があります。FMの治療はFMのみならずそのグレーゾーン、つまり人口の約20%に有効です。グレーゾーンにもFMの治療を行うのですから、臨床の観点ではFMの診断は厳密に行う必要はありません。心因性疼痛、仮面うつ病、身体表現性障害(疼痛性障害、身体化障害)と診断するより、FMやそのグレーゾーンと診断する方が、有効な治療方法が多いためほぼ間違いなく治療成績が向上します。異なる医学理論が衝突した場合には、「脚気論争」と同様に治療成績がよい医学理論を採用すべきです。自分が長年信じていた医学理論を捨てることは困難ですが、臨床医は自分が信じる医学理論を守ることより、よりよい治療成績を求めるべきです。戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」

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米国18歳未満対象の段階的運転免許制度、死亡事故抑制には機能しておらず

米国の18歳未満を対象とする段階的運転免許(graduated driver licensing:GDL)制度の効果について検証したCalifornia Department of Motor VehiclesのScott V. Masten氏らは、16歳ドライバーの死亡事故はかなり低かったが、18歳ドライバーの死亡事故がやや高くなっており、「18歳ドライバー死亡事故の原因解明とGDL制度を改善すべきかを検証する必要がある」とまとめた報告を、JAMA誌2011年9月14日号で発表した。米国では自動車事故死が10代若者の主要な死因となっており、2000~2008年の16~19歳自動車死亡事故者は、ドライバー2万3,000人、同乗者1万4,000人以上に上った。また、事故発生は18~19歳で最も多かったが、走行距離補正後の死亡事故発生はより若い年齢で高く、18~19歳と比べて16歳は150%増、17歳は90%増であったという。GDL制度と1986~2007年の16~19歳自動車死亡事故との関連を調査現在全米50州とワシントンD.C.で導入されているGDL制度は、18歳未満を対象とした、無制限の運転免許を与える前に低リスク下での運転経験を十分に積んでもらうことを目的としたもので、最初の段階では3ヵ月以上の成人運転熟達者の同乗が必要とされ、続く段階として運転熟達者の同乗は不要だが夜間運転の禁止もしくは10代同乗者の禁止(またはいずれも禁止)が特徴となっている。Masten氏らは、GDL制度と16~19歳自動車死亡事故との関連を調べるため、1986~2007年の四半期ごとの自動車死亡事故についてプール横断時系列解析を行った。主要評価項目は、年齢ごとの対人口でみた死亡事故発生率と、GDL制度を取り入れていない州-地域と比較した、規制が強い州-地域(夜間運転と10代同乗者のいずれも禁止されている)、規制が緩い州-地域(どちらか一方のみが禁止されている)それぞれの割合および95%信頼区間とした。解析は、22年間で4地域・51州の4,488州-地域を対象に含んだ。規制が強い州-地域とGDL制度なし州-地域との、全年齢複合死亡事故発生率比は0.97結果、死亡事故発生率はおおよそ年齢とともに増加する傾向にあり、人口10万人当たり、16歳ドライバー28.2、17歳ドライバー36.9、18歳ドライバー46.2、19歳ドライバー44.0だった。16歳が最も低く、18歳が高かった。潜在的交絡因子で補正後、16歳ドライバー死亡事故発生率の低さと、GDL制度の特徴である規制との関連が認められた。規制のない州-地域との比較でみた、規制が強い州-地域の発生割合(RR)は0.74(95%信頼区間:0.65~0.84)だった。しかしながら一方で、18歳ドライバーの死亡事故発生率の高さと、GDL制度規制の強さとの関連も認められ、規制のない州-地域との比較でみた、規制が強い州-地域のRRは1.12(同:1.01~1.23)だった。また、その他の年齢および全年齢複合の規制との関連については、統計的な格差が認められなかった。RRはそれぞれ、17歳ドライバー0.91(95%信頼区間:0.83~1.01)、19歳ドライバー1.05(同:0.98~1.13)、16~19歳ドライバー複合0.97(同:0.92~1.03)だった。(武藤まき:医療ライター)

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1997~2000年卒業の医学生、87.3%が専門医資格を取得:全米調査

米国専門医認定機構(ABMS)の専門医資格取得について、1997~2000年に医学校を卒業した医師の取得状況と、その背景因子について調査した結果、取得率は87.3%に上り、人種による取得率の違いや、抱えている負債と取得領域との関連などの実態が明らかになった。ABMS取得は米国で医師のクオリティ尺度となっている。調査は、ワシントン大学医学校のDonna B. Jeffe氏らにより行われ、JAMA誌2011年9月7日号で発表された。4万2,440人のABMS専門医資格の取得について後ろ向きに調査Jeffe氏らは、1997~2000年に米国の医学校を卒業した4万2,440人の、卒業時の専門領域選択によってグループ化し、2009年3月2日現在までのABMS専門医資格の取得について後ろ向きに調査した。また専門分野ごとの多変量ロジスティック回帰モデルにて、取得に関連する因子を調べた。結果、調査対象4万2,440人のうち、3万7,054人(87.3%)がABMS専門医資格を取得していた。取得背景は、専門分野ごとに異なる専門医取得率は、すべての専門分野で、米国医師国家試験(USMLE)のSTEP 2臨床医学試験を最高位の三分位得点で、1回で合格した人で高い傾向(1回目は不合格だった人と比べて)が認められた。同取得格差(最高位得点1回で合格vs. 1回目不合格)の補正後オッズ比(AOR)は、専門領域で異なっており、救急専門医取得の格差は最も小さく(87.4%対73.6%、AOR:1.82、95%信頼区間:1.03~3.20)、一方、最も大きかったのは放射線専門医の取得だった(98.1%対74.9%、同:13.19、5.55~31.32)だった。家庭医を除き、マイノリティと自認している卒業生の専門医取得は低率だった(白人との比較で)。同取得格差(マイノリティvs. 白人)が最も小さかったのは小児科専門医でAORは0.44(95%信頼区間:0.33~0.58)、最も大きかったのはその他非一般専門医で同0.79(0.64~0.96)だった。負債額5万ドル単位区分別にみた、最高位群(≧15万ドル)と負債なし群との取得格差が小さかったのは、卒業時に産婦人科/婦人科を選択した群だった(AOR:0.89、95%信頼区間:0.83~0.96)。一方で格差が大きかったのは家庭医を選択した群だった(同:1.13、1.01~1.26)。(武藤まき:医療ライター)

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作りました、「時間がない人」専用のPubMed

ケアネットは2011年8月、世界初のクラウド型論文検索サービス「PubMed CLOUD」をWEB サイト上および App Store にて提供を開始した。開始後iPadアプリはiTunesメディカル(無料)部門でダウンロード第1位を獲得し、好評を得ている同サービスについて開発担当の同社藤原健次氏に話を伺った。PubMed CLOUDとは?PubMed CLOUD(パブメド クラウド)は、気になった論文を世界最大級の医学文献データベース「PubMed」(※1)を検索して、その論文のアブストラクトを保存・管理できるツールです。2011年8月より、医師・医療従事者専門サイト「CareNet.com」会員に向けて、無料でサービスを提供しています。このサービスにはクラウドで連動している、iPhone、iPadに対応したiOSアプリも用意しましたのでApp Store にてアプリをダウンロードしていただければ、保存したアブストラクトをいつでもどこでも、好きな時間にアクセス、閲覧することができます。ケアネット会員であれば、医師でなくても誰でも利用できますので、多くの会員の皆さんに活用していただきたいです。※1「PubMed」は米国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)により提供されている世界最大級の医学・生物文献データベース「MEDLINE」を、インターネットで検索できるサービス。PubMed CLOUDで時間を有効活用私も仕事で「PubMed」はよく利用していたのですが、「PubMed」は、検索結果とアブストラクトが別の画面に表示されるので、画面を行ったり来たりと手間がかかり、目的のアブストラクトにたどり着くまで、時間がかかっていました。しかし、「PubMed CLOUD」では検索結果とアブストラクトを同じ画面に表示させるレイアウトを採用しているので、これにより検索結果をさくさくと閲覧でき、目的のアブストラクトに素早く到達することができます。また、過去に「PubMed」で検索して見つけた論文が再度必要となり、その時に入力した検索式をどこかにメモを残していたりしていないので、またもう一度同じ論文を求めて検索し直すという煩わしい経験を何度もしたことがありました。でも「PubMed CLOUD」では、気になった論文をその場でボタン一つで保存できるので、簡単に自分専用の論文ライブラリーができあがります。さらに、保存されたデータはインターネット上に記録されるので、勤務先でも自宅でも、またiPhoneやiPadにアプリを入れておけばいつでも、どこでも自分専用論文ライブラリーにアクセスできます。時間がない先生方にとって論文検索時間の短縮、閲覧時間の確保・拡張となり、時間の有効活用になると考えています。WEB サイトとモバイル間で同期ができる「PubMed」がほしい!これまでにも「PubMed」を検索できるiPhone、iPad向けアプリは存在していましたが、iPadとiPhone間との同期の機能がなかったため、例えばiPad上に検索・保存したものがiPhoneでは見ることができず、残念な思いをしていました。また「PubMed」はパソコンでの利用が多いため、WEB サイトとiPhone、iPadで同期ができる「PubMed」の開発を始めました。7割超のユーザーから保存機能がよいと好評価8月にリリースする前に、7月21~23日に開催された第9回日本臨床腫瘍学会(JSMO)のブースにて「PubMed CLOUD」のβ版を先行して公開いたしました。「PubMed」というキーワードで足を止めた学会参加者の方も多く、多くの先生方に興味を持っていただき3700名の学会参加者のうち300名もの方々からβ版のご利用の申し込みをいただくことができました。また、サービスを開始してから「CareNet.com」会員の方に「PubMed CLOUD」についてアンケートをしたところ、「非常に興味あり」「興味あり」と答えた方が7割強と会員の方々からの関心の高さを伺い知ることができました。7割くらいの方が気に入った点として「保存機能」を挙げており、私と同じように、従来の「PubMed」をもっと快適に利用したい会員の方々が多いのかもしれませんが、早々に「PubMed CLOUD」が支持され始めているのだと実感いたしました。役立つ論文を自分専用ライブラリーにどんどん保存できるのが醍醐味1ユーザーとして、私はインターネットでお気に入りのホームページ等をブックマークするように、「PubMed CLOUD」で論文を検索して、役立つ論文を自分専用ライブラリーにどんどん保存できるのがこのサービスの醍醐味だと感じています。これまでは購入した原著論文はパソコンのフォルダで管理していましたので、外出先でとっさに閲覧した場合も確認することはできませんでした。現在では原著を「PubMed CLOUD」で保存・管理していますのでiPadで見たい時に見られるようになり、論文の利用機会が一変しました。これまで文献検索結果や原著の管理方法にゴールデンスタンダードはなかったので、会員の方々のゴールデンスタンダードになれば嬉しいですね。「PubMed CLOUD」を通して、会員の方々の臨床力向上のお手伝いができればと思っています。

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米国でピーナッツバターが原因の集団食中毒を契機に、国内外に強制力を持つ食品安全システムが始動

米国CDC人畜共通感染症センターのElizabeth Cavallaro氏らは、2008年11月以降に全米各地で報告されたサルモネラ菌食中毒について、調査の結果、1ブランドのピーナッツバターとそれを原料としたピーナッツ製品の摂取が原因であり、3,918製品が回収されたことを報告した。報告によると、米国ではこの食中毒発生を契機に食品安全システムへの議論が再浮上、2009年3月に食品汚染事案を24時間以内に報告するFDA’s Reportable Food Registryが始動し、2011年1月4日のFood Safety Modernization Act制定により、FDAが国内外の食品供給元に対し、回収および安全計画提出を命じることができるようになったという。NEJM誌2011年8月18日号より。トレースバック調査と摂取環境調査にて、1企業のピーナッツバターが特定研究グループは、2008年9月1日から2009年4月20日の間にネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)集団発生株への感染が検査で確認された食中毒報告例を症例と定義。マッチ対照群とによる2つの症例対照研究(研究1:摂取製品のトレースバック調査、研究2:摂取環境調査)を行った。全米46州で同定された症例患者は714例、そのうち入院が166例(23%)、死亡が9例(1%)だった。研究1(症例群65例、対照群174例)の結果、疾患との関連が認められたのは、何らかのピーナッツバターを摂取(一致オッズ比:2.5、95%信頼区間:1.3~5.3)、ピーナッツバターを含んだ製品を摂取(同:2.2、1.1~4.7)だった。冷凍チキン製品の摂取も関連が認められたが(同:4.6、1.7~14.7)特定製品を食べたわけではなかった。一方でピーナッツバターについては、9企業に関連した限局的集団発生と単発症例の調査から、これら企業に供給していたピーナッツバター1企業のブランド製品(ここではブランドXと呼ぶ)が特定された。研究2(症例群95例、対照群362例)では、外出先でのピーナッツバター摂取(一致オッズ比:3.9、95%信頼区間:1.6~10.0)、2つのブランドのピーナッツバター・クラッカーを摂取(ブランドAの一致オッズ比:17.2、95%信頼区間:6.9~51.5、ブランドB:3.6、1.3~9.8)と疾患との関連が明らかになった。そして2つのブランドのクラッカーはいずれもブランドXのピーナッツペーストから作られていた。食品安全システムの今後は、予算確保と関係当事者の継続的な協力次第結果として集団発生株は、ブランドXのピーナッツバター、ブランドAのクラッカー、その他15の製品から分離され、2009年1月10日から4月29日までの間に合計3,918のピーナッツバター含有製品がリコールされた。研究グループは、「汚染されたピーナッツバターとそのピーナッツ製品が全国規模のサルモネラ症集団発生を引き起こした。成分由来の集団発生は検出が難しく、多数の食品を広範にわたって汚染する可能性がある」と警告。この事案を契機に食品安全システムが強化されたことを報告したうえで、最後に「システム成功のカギは十分な予算確保と、規制当局と州、保健担当者、企業担当者との継続的な協力による」とまとめている。(朝田哲明:医療ライター)

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国民への心血管疾患予防プログラム、適度の達成で年間医療費3,000万ポンド削減可能

英国・バーミンガム大学医療経済学教室のPelham Barton氏らは、「国民への心血管疾患予防を目的としたリスク因子低減の各種プログラムは、適度でも達成さえすれば国民の健康増進とともに、医療制度財源の正味のコスト削減にも結びつく」ことを、イングランドとウェールズ全住民を対象としたモデル研究の結果、報告した。英国での心血管疾患死亡は年間15万人以上、罹患者は500万人以上、医療コストは年間300億ポンド以上に上るという。BMJ誌2011年8月13日号(オンライン版2011年7月28日号)掲載報告より。モデル分析で、降圧、減塩など各種プログラムの10年効果を試算Barton氏らは経済モデル分析法にて、心血管疾患リスク因子を減らす各種国民啓発・介入プログラムの疾患予防効果および費用対効果を評価した。10年間にわたる心血管疾患低下のためのプログラム効果を測定する表計算式を作成し、ベネフィットが男女、全年齢、全リスク群に適用され続けた場合と仮定したモデルを作成。同モデルを、血圧と総コレステロールを少しでも減らすことを目的とした2つの一般向け啓発プログラムと、塩分とトランス脂肪酸の摂取減を定めた2つの法的介入プログラムに適用して試算した。主要評価項目は、介入効果によって回避された心血管イベント数、獲得されたQALYs(質調整生存年)、削減された医療コストとした。目標アウトカム達成のために費やされた対価についても推定された。コレステロール、血圧の平均値5%低下で8,000万~1億ポンド以上の医療費削減結果、プログラム1つの介入で、何も介入がされなかった場合と比較して、心血管イベントは年間、イングランドとウェールズ全住民(約5,000万人)の1%までに減少し、医療コストは3,000万ポンド以上削減されると試算された。また、コレステロールと収縮期血圧の平均値低下5%が達成となれば(5%は他国ではすでに達成されている)、医療コスト削減は8,000万~1億ポンド以上と試算された。塩分摂取を3g/日とする(現状では約8.5g/日)法的およびその他の対策による効果は、年間で約3万例の心血管イベント回避と、4,000万ポンド以上の医療コスト削減をもたらすと試算された。トランス脂肪酸については、摂取量を総エネルギー量の約0.5%までに減らし続ければ、約57万生存・年の獲得と、英国の国民健康保険制度であるNHSに年間2億3,000万ポンドのコスト削減効果をもたらす可能性が試算されたという。

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多発性骨髄腫の治療戦略-日欧における現状と展望

 多発性骨髄腫の治療においては、近年、ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)、サリドマイド(商品名:サレド)、レナリドミド(商品名:レブラミド)といった新規薬剤が開発・発売され、わが国では、現在、再発・難治性症例に対して承認されている。一方、欧米では、これらの薬剤が、再発・難治性症例だけでなく、他のステージでも使用され、次々と臨床研究結果が報告されている。 ここでは、2011年8月8日に都内で開催された多発性骨髄腫治療に関するセミナー(主催:セルジーン株式会社)における、トリノ大学血液学科骨髄腫ユニットチーフ Antonio Palumbo氏、がん研有明病院化学療法科・血液腫瘍科部長 畠清彦氏の講演から、欧米とわが国における多発性骨髄腫治療の現状と展望についてレポートする。欧米における治療戦略とレナリドミドの成績 Palumbo氏によると、多発性骨髄腫の治療には、まず完全寛解(CR)を達成すること、さらにCR期間を延長させるために治療を継続することが重要である。また、CRのなかでも、より深い寛解である分子生物学的寛解、すなわちDNAレベルでの効果が重要である。 今回の講演で、Palumbo氏は、主にレナリドミドによる維持療法の成績について取り上げ、移植適応の若年者に対する移植後の維持療法については、フランスIFMの試験では無増悪期間(PFS)が、また米国CALGBの試験ではPFS、全生存期間(OS)が、レナリドミド投与群において有意に延長したことを紹介した。 また、移植非適応の65歳以上の高齢者におけるレナリドミド維持療法については、MPR(メルファラン、プロドニゾン、レナリドミド)による寛解導入療法後にレナリドミド(10mg/日、3週間投与)で維持療法を行うMPR-R群を、維持療法を行わないMPR群、MP群と比較した海外多施設臨床試験を紹介した。この試験では、MPR-R群ではMPR群に比べ増悪リスクが約70%減少し、また、年齢、寛解の程度、病期(ISS)にかかわらずPFSが有意に延長したことが示されている。 Palumbo氏は、欧米における多発性骨髄腫患者に対する治療アルゴリズムを、多発性骨髄腫に関する最新のレビューにまとめている(N Engl J Med. 2011;364:1046)。それによると、移植適応症例では、新規薬剤を含む併用レジメン(主に欧州では3剤、米国では2剤併用)で寛解導入後に移植を実施し、サリドマイドもしくはレナリドミドによる維持療法を実施、また、移植非適応例では、新規薬剤を含む併用レジメンを実施し、そのうちレナリドミドを含むレジメンの場合は、増悪もしくは不耐容となるまで継続するとしている。日本における現状と展望 畠氏は、わが国における課題と展望について、レナリドミドの特徴やがん研有明病院における使用状況を交えて紹介した。 レナリドミドの特徴については、経口剤のため外来治療が可能で、頻回通院の必要がなく遠方の患者さんでも通院しやすい、2011年8月から長期投与可能となり使いやすくなった、と畠氏は評価している。その他の特徴として、高リスク例に対して有効である、細胞性免疫の増強作用がある、腎障害例における減量が必要、末梢血幹細胞は早期採取が必要であることを挙げた。また主な副作用として、好中球減少、疲労、筋痙攣などが報告されている。 がん研有明病院においては、7月28日時点のレナリドミド使用経験は14例で、投与症例は、経口剤が適している、遠方から来院、肺障害がある、高齢といった症例という。投与方法は、レナリドミド25mg(21日間投与、7日間休薬)+デキサメタゾン40mg(週1回投与)であり、血栓予防としてアスピリンを、またアスピリンによる消化器障害に対してプロトンポンプ阻害薬を併用しているとのことである。また、がん研有明病院の取り組みとして、レナリドミドの承認前から医師、病棟看護師、外来看護師、病棟薬剤師によってチームを立ち上げ、院内マニュアルの作成や投与すべき症例の選択などの準備を進めていたことを紹介した。 わが国における課題として畠氏は、海外とのドラッグラグはもちろん、臨床現場への普及の遅れを指摘している。多発性骨髄腫においては、日本で長い間標準治療であったMP療法、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)療法から、新規薬剤による治療に移行しつつあり、現時点ではこれらの薬剤を年齢、病態、合併症に応じて選択し、日本での長期の成績により評価していく必要があると述べた。 最後に、畠氏は、今後はわが国では承認されていない初発例に対する治療や新規薬剤どうしの併用やアルキル化剤との併用、さらに維持療法など、より有効な治療法の確立が望まれると締めくくった。

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