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英国の自殺率上昇、景気後退が影響

 最近の英国の自殺率の上昇は、2008年に始まった財政危機に関連することが、英国・リバプール大学のBen Barr氏らの調査でわかった。英国の自殺率は長期的に低下していたが、2008年に上昇に転じた。2008~2010年の景気後退の影響が示唆されていたが、これを検証する研究は行われていなかった。BMJ誌2012年9月8日号(オンライン版2012年8月14日号)掲載の報告。景気後退と自殺の関連を時系列研究で評価研究グループは、2008~2010年の英国の景気後退の影響が最も大きかった地域の自殺率が高いか否かを検証するために時系列研究(time trend analysis)を実施した。実際の自殺者数を、景気後退以前の状況が持続したと仮定した場合の予測値と比較した。多変量回帰モデルを用いて、失業(保険金受給者データに基づく)と自殺(National Clinical Health Outcomes Databaseに基づく)の変化の関連を定量化した。対象は、2000~2010年に、英国の93地域において自殺または原因不明の傷害による死亡の記録のある集団とした。主要評価項目は景気後退期の自殺者の増加数。景気後退で自殺者が毎年約1,000人増加2008年の経済危機以前の2000~2007年の間は、男性の自殺者は毎年57人[95%信頼区間(CI):-56~-58]、女性は毎年26人(95%CI:-24~-27)減少していた。2008~2010年は、景気が後退しなかった場合の自殺者数の予測値に比べ、男性の実際の自殺者数は毎年846人(95%CI:818~877)多く、女性の自殺者数は毎年155人(95%CI:121~189)増えていた。失業率の短期的な年次変動は、男性の場合、自殺率の年次変動と関連したが、女性にはそのような関連はみられなかった。男性の失業率が10%増加するごとに男性自殺率が有意に1.4%(95%CI:0.5~2.3、p

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抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は?

 腸管および血液脳関門に発現する薬物排出系トランスポーター(drug efflux transporters)活性に関する、アリピプラゾールとその活性代謝物デヒドロアリピプラゾールの効果が検討された。MDR1に対しては比較的強い阻害が認められた一方で、MRP4活性に対する阻害効果はほとんどみられなかったなどの知見が得られた。アステラス製薬の長坂氏は、「アリピプラゾールは、薬物トランスポーターについて検討された薬物との同時投与では、血液脳関門で薬物相互作用(DDI)を生じる可能性が低いことが示された」と報告した。Biopharm Drug Dispos誌2012年9月号(オンライン版2012年8月15日号)の報告。 検討された薬物排出系トランスポーターは、ヒト多剤耐性蛋白質1(MDR1/ABCB1;P糖蛋白)、乳がん耐性蛋白(BCRP/ABCG2)、多剤耐性関連蛋白質4(MRP4/ABCC4)であり、アリピプラゾールとデヒドロアリピプラゾールの阻害効力について調べた。主な結果は以下のとおり。・ヒトMDR1(ヒトMDCKII-MDR1細胞における)については、相対的に強い阻害効力が認められた。IC50(50%阻害濃度)は、アリピプラゾール1.2μm、デヒドロアリピプラゾール1.3μmであった。・ヒトMDR1については同様の実験系で、その他の非定型抗精神病薬(リスペリドン、パリペリドン、オランザピン、ジプラシドン)の阻害効力も評価された。IC50は2つを複合した場合の10倍以上であった。・アリピプラゾールとデヒドロアリピプラゾールは、ヒトBCRPについても阻害効力を有していた。IC50はそれぞれ、3.5μmと0.52μmであった。・ヒトMDR1とBCRPに対する、アリピプラゾールとデヒドロアリピプラゾールのIC50についての恒常的非結合型濃度比は0.1未満であった。しかし、アリピプラゾールの腸管系の理論的最大濃度比は、International Transporter Consortium(ITC)およびFDAが提唱するカットオフ値の10よりも大きい。・ヒトMRP4活性に対しては、アリピプラゾールとデヒドロアリピプラゾールの阻害効果はほとんどみられなかった。関連医療ニュース ・難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」 ・日本おける抗精神病薬の用量はまだ多い ・日本人統合失調症患者の認知機能に影響を与える処方パターンとは

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4人中3人が「自分が認知症と診断されたら、認知症であることを知りたい」47都道府県 認知症に関する意識・実態調査より

 エーザイ株式会社 エーザイ・ジャパンでは、65歳以上の親がいる男女9,400人(各都道府県 各200人)を対象に、「認知症に関する意識・実態調査」のインターネットアンケート調査を実施し、その集計結果を発表した(調査期間:2012年8月16日~17日)。 それによると、認知症を知っている、もしくは聞いたことがあると回答した9,385人に、「自分が認知症と診断されたら、自分が認知症であることを知りたいか?」と質問したところ、「はい」が74.3%、「いいえ」が2.5%と、4人中3人が告知を望んでいることがわかった。一方で、約2割が「わからない」(23.2%)と答えている。 また、認知症の対応・治療に関するイメージに最も近いものを単一回答で聞いたところ、81.7%が「早く対応・治療すれば、進行を遅らせることができる」を選択し、認知症の対応に関して正しい認識を持っていることがわかった。その他の回答は、「早く対応・治療したとしても、進行を遅らせることも治すこともできない」(6.5%)、「早く対応・治療すれば治すことができる」(5.3%)、「早く対応・治療したり、医師に診てもらう必要はない」(0.3%)、「わからない」(6.3%)であった。 認知症について最も気になることについては、「症状がどのように進行していくのか」(32.4%)、「医療・介護にかかる費用」(25.1%)、「まず、どこに相談すればよいか」(22.6%)が多く、これらの情報の提供が求められている。 本調査の詳細はこちら http://www.eisai.co.jp/pdf/others/120914_reference.pdf

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東京大学高齢社会総合研究機構 在宅医療推進総合研修プログラム 指導者養成研修

超高齢化社会を目前に在宅医の普及が目下の課題です。開業医が不安なく在宅医療を導入するには、在宅医を指導する在宅医療の指導者を養成し、その指導方法を確立することが必要です。今回は、地域での在宅医療の普及に実績をあげている東京大学と柏市が開催した在宅医療推進総合研修プログラムから2012年5月13日指導者養成研修をお届けします。在宅医療の確立は、いかに地域の医療介護資源を把握し、いかに多職種と顔の見える関係を築けるかにかかっていると言っても過言ではありません。本プログラムでは、指導者や既に在宅導入している医師、これから在宅医療の導入を予定する医師が、ワークショップ形式で熱い議論を交わしていきます。将来、在宅医療を視野に入れておられる開業医の先生必見のプログラムです。講師番組一覧 【全6回】番組1 第1回 ガイダンス:本研修における指導者の役割番組2 第2回 よい指導者とは ~アイスブレイク:自分にとって一番印象的だった指導者~番組3 第3回 ワークショップ・グループワークの進め方とファシリテーターの役割 ~グループ討論:効果的な多職種参加型事例検討会とは~番組4 第4回 在宅実地研修における指導者の役割 ~ロールプレイ:振り返りシートを活用したフィードバックの体験~番組5 第5回 在宅療養を支える医療介護資源マップの作成方法 ~グループ作業:医療介護資源マップの作成~番組6 第6回 まとめ(本プログラムを終えての感想など)

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君も医師として「国際協力師」にならないか?

「医師のキャリアパスを考える医学生の会」主催(代表:秋葉春菜氏〔東京女子医科大学医学部4年〕)の第17回勉強会が、2012年8月19日(日)、東京医科歯科大学・湯島キャンパスにおいて開催された。当日は夏休みの期間中にも関わらず医学生、社会人を中心に約40名超が参加した。今回は医師でNPO法人宇宙船地球号代表の山本敏晴氏を講師に迎え、「海外で、国境を越えて活躍している医療関係者達~宇宙船地球号にご搭乗中の皆様へ~」と題し、講演を行った。国際協力を俯瞰するはじめに山本氏の自己紹介のあと、「国際協力とは何か」と題して、現在の国際協力の種類や体制、これからの展開についてレクチャーが行われた。最も強調されていた内容は、『国際協力』は、無給のボランティアとして行うだけではなく、有給の仕事として行う方法もある、ということだった。その就職場所となる組織は、大きく分けて4つある。〔1〕国際機関(国連(WHO、ユニセフ等)など)、〔2〕政府機関(外務省の国際協力機構(JICA)など)、〔3〕民間のNGO(非政府組織)、〔4〕民間の企業(開発コンサルタント会社など)。以上の、いずれの組織でも、医師などが雇用され、有給の仕事として国際協力を行っている人が多数いるという。〔1〕の国連職員等の場合、アメリカの国家公務員に準じた給与が支払われ、勤務年数と昇進に伴い増額されていく。〔2〕の日本のJICA専門家などの場合、日本の一般的な勤務医と同等か、それ以上の給与が支払われる。〔3〕のNGOの場合、薄給または無給である。例えば、山本氏がかつて所属した「国境なき医師団」の場合は、2012年現在、毎月約13万円程度が支払われる。〔4〕は日本政府の外務省から国際協力事業を受注する「会社」で、医療・公衆衛生分野の事業を実施する場合もある。その場合、医師なども雇用される。〔1〕国連職員等と〔2〕JICA専門家等の場合、国家公務員と同等以上の待遇で途上国等へ派遣されるので、待遇(給与、年金、保険など)は国内並みに安定する。また、国際協力と聞くと、途上国の田舎で、電気も水道もない生活を送ると思っている人が多いが、そのようなことはなく、(〔1〕と〔2〕の場合は)派遣国の首都にいくことが多く、そこにある高級ホテル等に泊まることが多い。業務は派遣先の国の(医療・公衆衛生に関わる)政策立案(及びその政策の実施補助)などが主体であるなどと述べた。一方で、〔3〕のNGOでのボランティアの場合、収入は低いため、仮にそれに参加したとしても、自分や家族の生活費を捻出できないため、持続的な活動を行うことはできず、半年から2年程度で止めてしまう人が多い。このため、継続的に国際協力を行っている人の8割以上は、〔1〕、〔2〕、〔4〕のいずれかの方法で、有給のプロとして国際協力を行っているという。ただし、〔1〕、〔2〕、〔4〕では途上国の保健省(日本の厚生労働省に相当)への政策提言・アドバイスが、主な仕事となるため、医師が自分で患者の診察や治療をすることは、ほぼない。このため、「自分で直接、患者さんを診療するタイプの国際協力」を行いたい場合、お金にはならないが、〔3〕のNGOのボランティアとして行うしかない。中庸案としては、日本赤十字社が日本各地で運営する病院で、普段は勤務をしておき、自然災害が途上国で起きた際に、それに対する(日赤からの)緊急援助として(短期間の間だけ)出動する、という方法もある。いずれにしても、「『なんらかの形で持続的に国際協力に従事している人々』のことを、山本氏は『国際協力師』と呼び、数年前から、その概念を普及しているのだ」と語った。シエラレオネの現実次に「世界で一番いのちが短い国 シエラレオネ」の説明が行われた。銀座・新宿等で多数の写真展を開催している山本氏が、自ら撮影した写真を示しつつ、現地の内戦の様子や「なぜ平均寿命が短いのか?」が語られた。だがまず、山本氏は、同国の「素晴らしさ」について、触れだした。意外なことに、「持続可能な社会」という意味では、日本の方が「途上国」で、シエラレオネの方が「先進国」だと言う。同国の田舎では、日本の江戸時代のような生活をしており、電気などはない。このため、高度な医療はできない。よって、悪く言えば、近代文明から遅れていると言えるが、よく言えば、「(将来枯渇してしまう石油などのエネルギーに依存しないため)持続可能な生活を、ずっと営んでいるのだ」と言う。このためむしろ、「同国に国際協力をしてあげる」というよりも、「日本人が(江戸時代までは行っていたのに)忘れてしまった「持続可能な社会」(未来まで、ずっと続けていける(医療も含めた)生活のスタイル)を思い出させてくれる国であった」と山本氏は言う。次に、山本氏は、シエラレオネが、ボロボロになっていった経緯を説明した。シエラレオネでは、ダイヤモンドが採れる。これを狙って、欧米の営利企業が、その採掘を巡り同国で紛争を起こした。内戦だけでなく、隣国リベリアからの軍事侵攻も発生し、人々の生活は崩壊していった。多くの医療施設が破壊され、多くの医師や看護師が、国外に逃亡してしまった。その結果、乳児死亡率も、5歳までに子どもが死んでしまう割合(5歳未満子ども死亡率)も、ともに「世界最悪」という国になってしまった(2000年頃)。また、5歳まで生き残った子どもたちも、争う軍事組織らのいずれかに「子ども兵」として雇われ、麻薬漬けにされたまま、「戦争の道具」(生きた兵器)として戦場に連れていかれる。こうして、平均寿命34歳(2002年ユニセフの統計で世界最低)という国ができあがってしまった。こうした現状に対し、山本氏は、自らが現地で医療活動を行うだけでなく、自分が日本に帰ってしまった後も、未来永劫、シエラレオネで続けていけるような「医療システム」の構築を目指した。現地で医療機関(病院と診療所、さらにその連携制度など)を創設し、そこで働く医療従事者の人材育成を行った。そして、これからこうした国々へ支援にいこうという聴講者へ「現地の言葉を覚えること」、「現地の文化と伝統医療を尊重すること」、「西洋医学や日本の医療の手法を、一方的に押し付けないこと」など、体験者ならではのアドバイスを送った。アフガニスタンの現実続いてアフガニスタンに赴任した時の話題となり、同地では、(患者を診る医師としてではなく)プロジェクト・リーダー(コーディネーター)として、同国北部領域における母子保健のシステム構築に従事していたことを語った。同国では現在も(政府とタリバーン等の軍閥間での)紛争が続いており、「世界で一番、妊産婦死亡率が高い」ことと、その理由などが述べられた。国際協力師として世界に関わらないか最後に再び、国際協力を行っていく形として、民間NGOの無給のボランティアとして途上国に派遣されるだけでなく、有給のプロとして、例えば、JICAなどの専門家として赴任する選択肢もあることを強調した。また、今後国際協力を行っていこうという聴講生に向けて、(最も医療が遅れているとされる)アフリカ諸国で国際協力をやりたいのであれば、フランス語を習得した方がいいという助言をした。アフリカ諸国は、昔、フランスの植民地だった国が多いためである。さらに、(途上国の病院等の見学ツアーである)「スタディーツアー」や「ワークキャンプ」を一度は体験してみるのもよいと勧めた。その他、公衆衛生分野(予防、水と衛生など)であれば、医師でなくとも参加できるので医師以外の方でも大学院で「公衆衛生学修士」をとって、参加して欲しいと述べた。それに関連して、「世界を見て思ったことは、予防医学こそが究極の医療ではないかと思う」と述べ講演を終えた。質疑応答次のような質問が、山本氏に寄せられ、一つ一つに丁寧に回答されていた。――援助や支援の在り方について国際協力には、(1)地震などの自然災害の直後や、紛争地帯の中に入っていく「緊急援助」と、(2)それらが落ち着き、途上国の政府や地方自治体が、ある程度、正常に機能している時に行う、「開発援助」がある。(1)と(2)では、まったく違うことをする。(1)は、直接的な(狭義の)医療を行うことが多いが、(2)では、途上国政府への政策提言など、医療システムや公衆衛生の構築(広義の医療)をすることが多い。貧しい途上国への開発援助は、昔は、(マラリアや肺炎などに対する)感染症対策と母子保健(乳児死亡率の改善、妊産婦死亡率の改善など)の改善を目的としていた。ところが、(国連が定めたミレニアム開発目標の終わる)2015年以降、WHOは、大きく方針を変える予定だ。今後は、途上国でも、糖尿病、高血圧などの生活習慣病(いわゆる成人病)が増える傾向にあるため、それらに対する対策(治療と予防)が、主流になる可能性が高い。ちなみに、国際協力の世界では、そうした疾患のことを、「非感染性疾患(NCD)」と言う。――現在の山本氏の活動について現在は、直接的な国際協力(狭い意味での国際協力)からは離れ、『国際協力師』を増やすことを主な活動としている。運営しているNPOの活動は3つある。(1)『国際協力師』を直接的に増やすために、本を執筆したり、啓発するためのさまざまなサイト(ホームページ、ブログ、ツイッター等)を制作している。(2)『お絵描きイベント』という、ちょっと変わった活動もしている。世界中の人々に「あなたの大切なものは何ですか?」と質問をし、その絵を描いてもらい、そこから導き出される、その国の『社会背景に眠っている問題点』を洗い出し、各国の問題をわかりやすく説明し、さらにそれに対し各組織が行っている国際協力活動を紹介する事業を行っている。世界の約70ヵ国・地域で実施した。書籍版が4冊(小学館等から)出版されており、またウェブサイトとしても公開している。(3)一般の企業に対して、「企業の社会的責任(CSR)」のランキングを付けている。利益を追求するだけでなく、環境への配慮を行い、社会貢献も実施するような企業を増やしていくためだ。2年に一度、ウェブサイト上で公開している。同様に、「病院の社会的責任(HSR)」に関するランキングも、現在、検討中である。要するに、すべての組織に、「持続可能性」への配慮を行うように啓発をしている。――国連のミレニアム開発目標(MDGs)2015の評価と意義についてMDGsは大体達成できていると思うが、数字的には、妊産婦死亡率の低下と乳児死亡率の低下が達成できていない。これはこれからの課題だと思う。ただ、この目標を定めたことで先進国が巨額のお金を出資し、資金ができ、一定の効果はあったので評価できると思う。――海外の地域医療で役立ったこと、また逆に日本に持ち込んで役立ったことは?アフリカの田舎では、医師がいないか、足りない。このため、看護師(または、普通の村人で、ある程度の研修を受けた人)が、病気を診断したり治療したりしている。看護師や村人では判断できない、難しい症例の場合は、携帯電話のSMS(ショート・メッセージ・サービス)を使って、首都などにいる医師に連絡をする。こうしたことは、途上国で当たり前のように行われている。日本では、医師法があるため、「医師でなければ診断や治療をしてはいけない」ことになっているが、日本の無医村や離島も、アフリカの田舎に近い場合がある。よって、アフリカの真似をして、日本でも、IT機器(携帯電話やパソコン等)を使って、遠隔地医療を「医師でない人が行って、どうしても医師が必要な場合は、医師がIT技術でアドバイスを送る」ということも考えられる。日本では、毎年、医療費が増加しており、国の借金も膨らんでいる。今後、さらに高齢化社会になるため、毎年1兆円ずつ、国の社会保障費(医療・公衆衛生・年金など)が増えていくことがわかっている。その理由の一つが、医者の人件費が高いことである。一般の日本人の平均年収は430万円だが、医師のそれは1,500万円をはるかに超える。このような「高い」人件費を使わずに、今後の日本の医療を実施していく必要がある。「お金をかけないで行う」、あるいは「費用対効果」を考えるということも、これからの医師には必要だ。2000年から導入された介護保険制度は、まさにこれである。高齢化社会を迎え、また国の財政が破綻しかかっている中、医療従事者であっても、「患者さんにその時点で最高の医療を(予算などまったく気にせず)提供する」ことだけを考えるのではなく、なるべく、お金をかけず、環境にも優しく(電気をあまり消費せず、ゴミをあまり出さないように配慮して)医療システムが未来まで続けていけるように配慮することが必要である。最後にスタッフの伊藤大樹氏(東京医科歯科大学医学部4年)が「国際協力の貴重なお話を有難うございました。これからも充実した勉強会を開催していきますのでよろしくお願いします。また、会では協力いただけるスタッフを募集しています。気軽に参加ください」と閉会挨拶をのべ、3時間にわたる勉強会を終了した。■講演者略歴■関連リンクNPO法人「宇宙船地球号」山本敏晴ブログ* * * * * *医師のキャリアパスを考える医学生の会

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高血圧白書2012

株式会社ケアネットでは、このほど「高血圧白書2012」をまとめた。本調査は、高血圧症患者を1ヵ月に10人以上診察している医師を対象に、2012年6月にインターネット調査を実施し、その回答をまとめたものである。以下、(1)調査方法(2)医師背景(3)薬物治療開始血圧/降圧目標の推移(4)降圧薬の選択―などを中心に、「高血圧白書2012」の概要をこれまで9回の一連のトラッキング調査の結果からの推移として紹介する。CONTENTS1.調査目的と方法2.結果1)回答医師の背景2)薬物治療開始血圧/降圧目標の推移3)降圧薬の選択

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高血圧白書2012 CONTENTS

1.調査目的と方法本調査の目的は、高血圧症診療に対する臨床医の意識を調べ、その実態を把握するとともに、主に使用されている降圧薬を評価することである。高血圧症患者を1ヵ月に10人以上診察している全国の医師500人を対象に、CareNet.comにて、アンケート調査への協力を依頼し、2012年6月15日~18日に回答を募った。2.結果1)回答医師の背景回答医師500人の主診療科(第一標榜科)は、一般内科が51.4%で最も多く、次いで循環器科で14.6%、消化器科で8.0%である。それら医師の所属施設は、病院(20床以上)が63.3%、診療所(19床以下)が36.7%となっている(表1)。表1画像を拡大する医師の年齢層は40-49歳が最も多く37.2%、次いで50-59歳以下が36.2%、39歳以下が21.9%と続く。40代から50代の医師が全体の7割以上を占めている。また62.6%もの医師が高血圧症患者を月100例以上診ている(表2)。表2画像を拡大する2)薬物治療開始血圧/降圧目標の推移年齢別薬物治療開始血圧/降圧目標の推移薬物治療開始血圧と降圧目標を年齢別でみると、一部例外はあるもののともに年々低下傾向がみられ、収縮期血圧については、65歳未満では薬物治療開始が平均146.9mmHg、降圧目標が130.5mmHg。65-74歳が同149.1mmHg、同133.5mmHg。75歳以上が同152.2mmHg、同136.8mmHgとなっている。2010年6月の調査で一時的に高くなっている理由として、Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes (ACCORD)試験、Valsartan in Elderly Isolated Systolic Hypertension(VALISH)試験において、積極的降圧群の結果が通常降圧群とエンドポイントの発生率で差が認められなかった無作為化比較試験の結果が、調査直前に発表されたことが影響していると考えられる。このように、高血圧症患者の年齢層が高くなるにしたがって、薬物療法開始血圧、降圧目標も高くなる傾向がみられている。(図1)図1画像を拡大する糖尿病有無別治療開始血圧/降圧目標の推移薬物治療開始血圧と降圧目標を糖尿病合併の有無別でもみると、同様に年々低下傾向がみられ、収縮期血圧については、合併症なしの場合は薬物治療開始が平均148.2mmHg、降圧目標が132.9mmHg。糖尿病を合併している場合には同132.9mmHg、同128.6mmHg。このように、糖尿病を合併している患者では降圧目標値をより低く設定し、早い段階から薬物治療を開始する傾向がみられる。(図2)図2画像を拡大する3)降圧薬の選択合併症がない高血圧症への第一選択薬合併症がない高血圧症に対する第一選択薬として最も多いのが「Ca拮抗薬」で47.3%、次いで多いのが「ARB」で43.3%と続く。以前と比べると低下しつつあるものの、今なお第一選択薬はCa拮抗薬が最も多いという結果となった(図3)。図3画像を拡大する糖尿病を合併した高血圧症への第一選択薬糖尿病を合併した高血圧症に対する第一選択薬として最も多いのが「ARB」で60.8%、次いで多いのが「Ca拮抗薬」で28.4%と続く。2009年に改訂された「高血圧治療ガイドライン」において、糖尿病合併例における第一選択薬はACE阻害薬、ARBが推奨されているが、Ca拮抗薬を第一選択薬として処方されている患者さんが3割弱いる。(図4)。図4画像を拡大するCa拮抗薬で降圧不十分な場合の選択肢Ca拮抗薬で降圧不十分な場合の選択肢として最も多いのが「ARBの追加投与」で50.1%、次いで多いのが「合剤(ARB+CCB)への切り替え」で16.8%と続く。2010年に発売されたARBとCa拮抗薬配合剤の割合が増加傾向にある(図5)。図5画像を拡大するARBで降圧不十分な場合の選択肢ARBで降圧不十分な場合の選択肢として最も多いのが「Ca拮抗薬の追加投与」で43.4%、次いで多いのが「合剤(ARB+CCB)への切り替え」で16.2%と続く。また、2006年12月にARBと利尿薬の配合剤が発売されて以来、配合剤への切り換えも含めたARBに利尿薬を追加する処方が増加し、ARBとCa拮抗薬の配合剤が発売された2010年4月以降、配合剤への切り換えも含めたARBにCa拮抗薬を追加する処方が増加してきているのがわかる(図6)。図6画像を拡大するCa拮抗薬+ARBで降圧不十分な場合の選択肢Ca拮抗薬+ARBで降圧不十分な場合の選択肢として最も多いのが「降圧利尿薬の追加投与」で32.6%、「ARBを合剤(ARB+利尿薬)に切り換え」が8.9%であるから、利尿薬成分を追加する処方が41.5%と3剤併用が普及してきている。(図7)。図7画像を拡大する降圧薬選択における重要視項目の推移降圧薬を選択するために重要視している項目を尋ねた(複数選択可)。図8には2005年時点で30%以上の医師より支持されていた項目の推移を示している。2005年に最も多かった「降圧効果に優れる」が7年間でさらに重要視される傾向にあり、90.2%の医師が重要視していた。次いで多いのが「24時間降圧効果が持続する」61.8%、「腎保護作用が期待できる」58.0%と続く。「腎保護作用が期待できる」については慢性腎臓病(CKD)の概念がわが国でも提唱された2007年以降に重要度が増している。一方、「大規模試験で評価できるエビデンスがある」は、2009年をピークに減少傾向にある。これは降圧薬を用いた大規模試験においてポジティブな結果が少なくなっていることと関係していると考えられる。これら8年にわたる重要視項目の変化は、この期間に発表されたエビデンスの多くが、「降圧薬の種類より、治療期間中の降圧度が重要である」ということを反映しているものではないかと推察している。図8画像を拡大するインデックスページへ戻る

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第6回 過失相殺:患者の過失はどこまで相殺できるか?

■今回のテーマのポイント1.医療従事者に過失があったとしても、患者自身の行為にも問題があり、その結果損害が生じた場合、または損害が拡大した場合には、過失相殺が適用され損害賠償額が減額される2.「法的な」療養指導義務の内容は、明確に示される必要がある3.されど、医療従事者には職業倫理上、「真摯(しんし)かつ丁寧な」説明、指導をする義務がある事件の概要患者(X)(72歳女性)は、2日前から左上下肢に脱力感があったため、平成13年5月7日にA病院を受診し、脳梗塞との診断にて、入院となりました。ただ、Xは、意識清明で、麻痺の程度も、MMT(徒手筋力テスト)上、左上下肢ともに“4”であり、独歩も可能でした。担当看護師は、入院時オリエンテーションを実施した際、転倒等による外傷の危険性があることを話し、トイレに行くときは必ずナースコールで看護師を呼ぶように注意しました。ところが、Xは、トイレに行く際、最初はナースコールを押していたものの、次第にナースコールをせずに一人でトイレに行くようになり、夜勤の担当看護師であるYが一人でトイレから帰るXを何回か目撃しました。Yは、その都度、トイレに行くときにはナースコールを押すよう指導しました。同月8日午前6時ごろ、Yが定時の見回りでXの病室に赴いたところ、Xがトイレに行くというのでトイレまで同行しましたが、トイレの前でXから「一人で帰れる。大丈夫」といわれたので、Yはトイレの前で別れ、別の患者の介護に向かいました。しかし、午前6時半頃、Yが定時の見回りでXの病室に赴いたところ、Xがベッドの脇で意識を消失し、倒れていました。Xは、急性硬膜下血腫にて緊急手術を行うも、意識が回復することなく、同月12日(入院6日目)に死亡しました。原審では、看護師Yに付き添いを怠った過失を認めつつも、当該過失とXの転倒に因果関係が認められないとして、Xの遺族の請求を棄却しました。これに対し、東京高裁は、看護師Yの不法行為の成立を認め、下記の通り判示しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者(X)(72歳女性)は、平成13年5月5日頃より左上下肢に脱力感が出現し、何とか家事はできたものの、体調がすぐれず、同月7日にA病院を受診しました。頭部CTを施行したところ、麻痺と一致する箇所に梗塞巣を認めたため、脳梗塞と診断されました。ただ、Xは、意識清明で、麻痺の程度も、MMT(徒手筋力テスト)上、左上下肢ともに“4”であり、独歩も可能であったことから、リハビリテーション目的にて14日の予定で同日入院となりました。担当看護師は、入院時オリエンテーションを実施した際、転倒等による外傷の危険性があることを話し、トイレに行くときは必ずナースコールで看護師を呼ぶように注意しました。A病院は2交代制を採っており、夜勤では、Xが入院したA病院2階の患者(約24名)を正看護師2名と准看護師2名の計4名で担当していました。同日の夜勤帯でXを担当する看護師Yは、同日午後6時、定時の見回りの際、「Xがトイレに行きたい」というので、病室から約15m離れたトイレに連れて行きました。午後7時、8日午前1時にもXよりナースコールがあったので、同様にYは、トイレまでの付添いをしました。しかし、午前3時にYが定時の見回りを行う際、Xが自力で歩行し、トイレから戻るところを発見しました。Yは、Xに対し、今後トイレに行くときにはナースコールを押すよう指導し、病室まで付き添いました。ところが、午前5時にもXが、トイレの前を自力歩行しているところをYは発見したため、同様の指導をしましたが、Xは「一人で何回か行っているので大丈夫」と答えました。午前6時頃、Yが定時の見回りでXの病室を訪れたところ、Xは起き上がろうとしており、トイレに行きたいといったため、Yは、トイレまで同行(直接介助はしていない)しました。そして、トイレの前でXから「一人で帰れる。大丈夫」といわれたため、Yは、Xとトイレの前で別れ、他の患者の介護に向いました。その後、午前6時半頃、Yが定時の見回りでXの病室を訪れたところ、Xがベッドの脇に倒れ、意識を消失しているのを発見しました。医師の指示で頭部CTを施行したところ、急性硬膜下血腫と診断され、同日緊急手術を行ったものの、同月12日(入院6日目)に死亡しました。事件の判決原審では、午前6時にXがトイレから帰室する際にYが付き添わなかったことに過失があるとしたものの、Xがいつ転倒したかは不明であり、当該帰室時に転倒したと認めることには、なお合理的な疑いがあるとして因果関係を否定しましたが、本判決では、因果関係を肯定し、Yの不法行為の成立を認めたうえで、下記のように判示し、過失相殺を適用して、損害額の8割を控除し、約470万円の損害賠償責任を認めました。「Xは、多発性脳梗塞により左上下肢に麻痺が認められ、医師及び看護師から、転倒等の危険性があるのでトイレに行く時は必ずナースコールで看護師を呼ぶよう再三指導されていたにもかかわらず、遅くとも平成13年5月8日の午前3時以降、その指導に従わずに何回か一人でトイレに行き来していた上、午前6時ころには、同行したY看護師に「一人で帰れる。大丈夫」といって付添いを断り、その後もナースコールはしなかったものであり、その結果、本件の転倒事故が発生して死亡するに至ったものである。Xがナースコールしなかった理由として、看護師への遠慮あるいは歩行能力の過信等も考えられるが、いずれにしてもナースコールをして看護師を呼ばない限り、看護師としては付き添うことはできない。Xは、老齢とはいえ、意識は清明であり、入院直前までは家族の中心ともいえる存在であったのであり、A病院の診断により多発性脳梗塞と診断され、医師らから転倒の危険性があることの説明を受けていたのであるから、自らも看護婦の介助、付添いによってのみ歩行するように心がけることが期待されていたというべきである。高齢者には、特に麻痺がある場合に限らず転倒事故が多いとされているが、こうした危険防止の具体策としては、まず、老人本人への指導・対応があげられている。・・・以上のほか、本件に顕れた一切の事情を勘案すると、被控訴人は損害額の2割の限度で損害賠償責任を負うものとするのが相当である」(東京高判平成15年9月29日判時1843号69頁)ポイント解説前回は、患者の疾病が損害発生(死亡等)に寄与していた場合、法的にどのように扱われるかについて説明しました。今回は、患者が医療従事者の指導に背く等患者の行為が損害の発生に寄与していた場合の法的取り扱いについて解説します。民法722条2項※1は過失相殺を定めております。すなわち、仮に不法行為が成立(加害者に過失が認められる等)した場合であっても、被害者にも結果発生または損害の拡大に対し因果関係を有する過失が存在した場合には、具体的な公平性をはかるために、それを斟酌して紛争の解決をはかることとなります。例えば、交通事故において、加害者にスピード超過の過失があったとしても、被害者にも信号無視という過失があった場合には、過失相殺を行い、被害者に生じた損害額の何割かを減額することとなります(図1)。したがって、医療者に不法行為責任が成立したとしても、患者にも問題行動があった場合には、過失相殺がなされ、損害額が減額されることとなります。人間は聖人君子ではありませんので、「わかってはいるけど」患者が医師の指示に従わないことが時々見られます。また、いわゆる問題患者もいます。しかし、交通事故と異なるのは、医師には患者に対する「療養指導義務」があり、医療機関には入院患者等院内にいる患者に対しては、転倒防止や入浴での事故を防止する等の「安全配慮義務」があることです。つまり、患者がしかるべき行動をとっていなかったとしても、それすなわち患者の過失となるのではなく、医師の療養指導義務や医療機関の安全配慮義務違反となることもあり得るのです。また、その一方で、あまりにも患者の行動に問題が強い場合には、「療養指導義務を尽くした(過失無)」または、「もはや医師が療養指導義務を尽くしても結果が発生していた」すなわち、因果関係がないということで不法行為責任が成立しないこともあります(図2~4)。図1画像を拡大する図2画像を拡大する図3画像を拡大する図4画像を拡大する本判決では、脳梗塞にて入院した日の深夜~早朝に付き添いをしなかった看護師に過失はあるものの、意識が清明な患者に対し、繰り返し指導していたにもかかわらず、独歩したことにも過失があるとして、看護師に不法行為の成立を認めた上で、過失相殺を適用し、2割の限度で看護師に賠償責任を負わせました(8割減額)。本事例以外で過失相殺に関する事例としては、(1)患者が頑なに腰椎穿刺検査の実施を拒絶したため、くも膜下出血の診断ができず死亡した事例においては、医師の検査に対する説明が足りなかったこと等を理由に過失相殺を適用しなかった判例(名古屋高判平成14年10月31日判タ1153号231頁)(2)帯状疱疹の患者に対し、持続硬膜外麻酔を行っていたところ、患者が外出時にカテーテル刺入部の被覆がはがれているにもかかわらず、医師の指示に反し、炎天下の中、肉体労働を行った結果、硬膜外膿瘍となった事例においては、医師の指導が十分ではなかったとして過失を認めつつも、患者にも自己管理に過失があるとして3割の過失相殺を認めた判例(高松地判平成8年4月22日判タ939号217頁)(3)アルコール性肝炎の患者が、医師の指導に従わず、通院も断続的で、飲酒を継続した結果、食道静脈瘤破裂及び肝硬変にて死亡した事例においては、医師の過失を認めつつも、8割の過失相殺を認めた判例(神戸地判平成6年3月24日判タ875号233頁)等があります。かつては、医師と患者の関係は、パターナリスティックな関係として捉えられていたこともあり、裁判所も患者の過失ある行動について、積極的に過失相殺を行ってきませんでした。しかし、インフォームド・コンセントの重要性が高まった現在、その当然の帰結として、医師から療養指導上の説明を受けた以上、その後、それに反する行動をとることは自己責任の問題であり、医師に「更なる(しばしば「真摯な」と表現される)」療養指導義務が課されることはないということになりますし、仮に医師に療養指導上の義務違反があったとしても、患者の行動に問題がある場合には、積極的に過失相殺を行うべきということとなります。医療従事者は、この結論に違和感を覚えるものと思われます。しかし、法的な理論構成だけでなく、法というツールを用いてインフォームド・コンセントや療養指導義務等を取り扱う場合には、誰から見ても明確な基準を持つことが必須となります。この10数年における萎縮医療・医療崩壊に司法が強く関与していることは、皆さんご存知の通りです。萎縮医療の原因は、一つには国際的にも異常なほど刑事責任を追及したことがあり、もう一つには、判例が変遷する上に、医療現場に不可能を強いるような基準で違法と断罪したことがあります。その結果、医療従事者が、目の前の患者に診療を行おうとするときに自らの行為が適法か違法かの判断ができないため、「疑わしきは回避」となり、萎縮医療、医療崩壊が生じたのです。法は万能のツールではありません。そればかりか、誤って使用すれば害悪となることは、歴史的にも、この10年をみれば明らかです。特に、すぐ後ろに刑事司法が控えているわが国においては、自らの行為が適法か違法か予見できることは必須といえます。したがって、あくまで「法的」に取り扱う場合においては、説明義務、療養指導義務の内容は「○○である」と明確に列挙されているべきであり、「そのことさえ患者に説明すれば後になってから違法と誹られることはない」ということが最も重要となるのです。そのうえで、医療従事者の職業倫理上の義務として、患者がしっかり理解できるまで懇切丁寧に、真摯に説明することが求められるのであり、この領域における不足は、あくまで、プロフェッション内における教育や自浄能力によって解決すべき問題であり、司法が介入するべき問題ではないのです。 ※1民法722条2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます(出現順)。なお本件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。リンクのある事件のみご覧いただけます。東京高等裁判所平成15年9月29日判時1843号69頁名古屋高判平成14年10月31日判タ1153号231頁高松地判平成8年4月22日判タ939号217頁神戸地判平成6年3月24日判タ875号233頁

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(14)〕 喫煙率0%の世の中は幸福か?

この論文をざっくり要約すれば、喫煙率は国ごとで大きな差があり、男性では、低い国で20%、高い国では60%。女性では0.5%から24.4%である。 ただ男性で喫煙率が高く、女性の喫煙開始年齢が若い年代ほど早くなっているのは各国に共通した事実である。この結果を次なる活動へつなげるとしたら、男性の禁煙をさらに進め、女性がタバコを吸い始めないように若い世代に介入することが重要、ということだろうか。 そしていつの日かタバコを吸う人がゼロになれば最高だ。 しかし本当にそうか。 私は以前Twitterで喫煙者を擁護するような書き込みをしたところ、タイムラインが炎上した。そのときに思ったのは、タバコよりも、タイムラインに「死ね」とか書く人のほうがよほど怖いということだ。喫煙率0%の世界とは、ひょっとしたらそういう恐ろしい人に支配される世界かもしれない。 そんな世界ならば私は喫煙率50%の世界の方に住みたいと思うのだが、またそんなことをいうと大変なことになるのだろうか。

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『ボストン便り』(第41回)「世界の主流としての当事者参画」

星槎大学共生科学部教授ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー細田 満和子(ほそだ みわこ)2012年8月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。紹介:ボストンはアメリカ東北部マサチューセッツ州の州都で、建国の地としての伝統を感じさせるとともに、革新的でラディカルな側面を持ち合わせている独特な街です。また、近郊も含めると単科・総合大学が100校くらいあり、世界中から研究者が集まってきています。そんなボストンから、保健医療や生活に関する話題をお届けします。(ブログはこちら→http://blog.goo.ne.jp/miwakohosoda/)*「ボストン便り」が本になりました。タイトルは『パブリックヘルス 市民が変える医療社会―アメリカ医療改革の現場から』(明石書店)。再構成し、大幅に加筆修正しましたので、ぜひお読み頂ければと思います。●マサチューセッツ慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎と繊維筋痛症(CFIDS/ME and FM)の会「この夏、ME/CFSの研究は大きく前進するための舵を切った」と、半年ぶりに再会したナンシーは、いつものように低いトーンの落ち着いた声で静かに言いました。彼女は、「マサチューセッツ CFIDS/ME and FMの会」の理事の一人です。この病気に30年以上も罹っていて、病気についての専門知識は深く、医学研究の進捗状況や医師たちの動向、さらにアメリカ内外の他の患者団体の動きにも精通しています。ナンシーは患者のための地域活動もしていて、地区患者会の例会の場所をとったり、会員に連絡したりしています。例会当日の会場設営もしていて、会員に和やかな楽しい時間を過ごしてもらおうと、スーツケース2つにお茶やお菓子を準備し、季節にちなんだ飾りつけもします。私が同行させて頂いた2月のバレンタインの月の例会は、ピンクと赤がテーマで、テーブルクロスは赤、紙皿や紙コップやナプキンはハートの模様で、ハート形の置物も用意されていました。ナンシーから手渡された、最近のアメリカ政府のME/CFS対策についての書類には、次のようなことが書かれていました。2012年6月13日と14日に、HHS(The Health and Human Services)は、慢性疲労症候群諮問委員会(The Chronic Fatigue Syndrome Advisory Committee: CFSAC)を開催しました。委員には10人のメンバーが選ばれましたが、臨床の専門家、FDA(食品医薬品局)代表を含む7人の元HHSメンバーのほかに、患者アドボケイトもメンバーとして入りました。そして、3時間にわたる公聴会が行われました。その他にも7つの患者団体の代表が報告をする機会が設けられました。さらに、このCFSACとは別に、HHSは所属を越えて協働できるために慢性疲労症候群の特別作業班(Ad Hoc Working Group on CFS)も結成しました。そこには、CDC(疾病予防管理センター)、NIH(国立健康研究所)、FDA(食品医薬品局)など各部局の代表も含まれています。こうした委員会や作業班が作られた背景には、オバマ大統領の意向があるといいます。インディアナ・ガジェットというオンライン新聞によると、ネバダ州のリノに住むME/CFS患者の妻は、2011年5月にオバマ大統領に、ME/CFS患者の救済、特にこの病因も分からず治療法もない病気の解明の為に、研究予算を付けて助けて欲しいという手紙を出しました。これに対してオバマ氏は、NIHを中心に研究を進めるための努力をすると回答しました。また、オバマ氏は、偏見を呼ぶCFSという病名にも配慮を示し、MEと併記したとのことでした。新聞記事は「これでオバマは新しい友人を何人か作った」と結ばれています。全米で約100万人いると推計されているこの病気の患者が味方になるなら、目前に大統領選を控えたオバマ氏にとって政治的に大きな力になることでしょう。●スウェーデンにおける自閉症とアスペルガーの会スウェーデンのストックホルム県に住むブルシッタとシュレジンは、ふたりとも「自閉症とアスペルガーの会」の有給職員です。ブルシッタには33歳になる自閉症の息子さんがいて、シュレジンには20歳になる自閉症と発達障害の息子さんがいます。8月に発達障害児・者への施策や医療を視察するためにスウェーデンを訪れたのですが、その際にこの二人にお会いしました。「自閉症とアスペルガーの会」は、患者も患者家族も、医療提供者も社会サービス提供者も学校関係者も、関心がある人がすべて入れる会です。親が中心になって1975年に設立され、ストックホルム県内では会員が3,000人います。全国組織もあって、こちらは会員が12,000人います。活動としては、メンバーのサポートをしたり、子どもたちの合宿を企画したりしています。ホームページがあり、機関誌も出しています。ブルシッタによれば現在の会の中心的な活動は、政治的な動きだといいます。確かに会の活動が様々な施策を実現してきたことは、色々なところで実感しました。今回、ストックホルム県内の、様々な制度を見聞したり施設(発達障害センター)を訪れたりしました。その際に、こうした制度や施設をコミューン(地方自治体)に作らせるように働きかけてきたのは、「自閉症とアスペルガーの会」のような親たちや専門職が加入している自閉症や発達障害の患者会だったということを、何人もの施設の長の方々から聞きました。さらには、自閉症に対する大学の研究にも、こうした患者会は大きな役割を果たしています。カロリンスカ研究所に付属する子ども病院における自閉症研究グループであるKIND(発達障害能力センター)は、企業やEU科学評議会などからの資金援助を受けていますが、その時大きな後押しになったのが、「自閉症とアスペルガーの会」だったといいます。KINDのディレクターのスティーブン・ボルト氏は、会からの大きな支えを強調していました。スウェーデンでは1980年代にハビリテーションのシステムが作られ、生きてゆくうえで支援が必要な人々に対する支援が整えられてきましたが、十分とは言えないままでした。それが1994年に施行されたLLS(特別援護法)によって、支援の制度は大きく前進しました。この法律の制定にも、患者団体などの利益団体の働き掛けが大きな後押しになったそうです。2004年にスタートした自閉症のハビリテーションセンターや、2007年にスタートしたADHD(注意欠陥・多動性障害)センターでも、責任者の方は口々に、患者会が政治家に働きかけることでセンターが誕生したと言っていました。そして、このような支援を受けることは、ニーズのある人々の権利なのだと繰り返していました。●各国での患者会の現状スウェーデンに先立って訪れたアルゼンチンで開かれた国際社会学会でも、各国で患者会が医療政策決定において重要な役割を担っていることが報告されました。私が発表した医療社会学のセッションでは、イギリスからは「当事者会・患者会とイングランドのNHS(National Health Service:筆者挿入)の変化」、イタリアからは「トスカーナ地方における健康保健サービスの向上と社会運動の役割」と題される研究成果が紹介されました。それぞれ、地域におけるヘルスケア改革に、当事者団体や患者団体のアドボカシー活動が大きな役割を果たしたことに関する実証研究でした。最後に私の発表の番となり、「日米における患者と市民の参加」と題した、日本とアメリカの合わせて7つの患者会に対する、アンケート調査とインタビュー調査の結果を報告しました。この調査は、2010年から2011年にかけて行われたもので、患者会の意味と役割について、メンバーに意識を尋ねたものです。アンケートに対しては、日本では132票、アメリカでは109票の有効回答が寄せられ、インタビューの方では23人の方が対象者になってくださいました。患者会は、脳障害、脳卒中、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群、ポストポリオ症候群、卵巣がんなどでした。当初は、アメリカの患者会の方が日本よりも、政治的問題に発言してゆくアドボカシー活動への関心が高く、実際に活動も行っているという仮説を立てましたが、どちらの国も同程度に関心が高く、活動をしているという結果が認められました。ただし日米とも、患者会がアドボカシー活動を積極的に行うようになってきたのは、ここ10年から20年のことだといいます。それまでは、患者や親たちは問題を個人で抱え込むしかなかったといいます。患者や親たちは、病気による身体的あるいは生活上の苦しさを理解されず、ましてや支援など受けることもできませんでした。そして逆に、病気のことをよく知らない一般の人や医療者から、非難するような言葉や態度を浴びせられてきたといいます。30年以上も筋痛性脳脊髄炎の患者であったナンシーの言葉を借りれば、「社会からは理解されず、医療者から虐待されてきた」というのです。それは発達障害を持つ子や親も同様でした。スウェーデンでも80年代くらいまでは、ADHDや自閉症を持つこども達は、さまざまな失敗をしては親や教師から叱られ、親の方も育て方が悪いと周囲から非難されてきたといいます。●日本の患者会昨年9月に、東京で開催されたランセットの医療構造改革に関するシンポジウムでは、タイからの登壇者に「日本では患者会との協働はどのようになっているのですか」と聞かれ、「患者会は、自分たちの半径5メートルしか見ていない」ので意見を聞いても仕方ないというようなことを権威ある立場の日本人医師が答え、椅子から転げ落ちるほどびっくりしました。ランセットの会議に招待されるような方が、そのようなことを国際社会の場で発言するとは、日本の医師をはじめとする医療界の認識の浅さや遅れではないか忸怩たる思いがしたものです。このことは、以前にMRICにも書きましたが、この状況は今後変わってゆくでしょうか。日本でも、いくつかの患者会はアドボカシー活動をしています。例えばNPO法人筋痛性脳脊髄炎の会(通称、ME/CFSの会)は、偏見に満ちた病名を変更させるために患者会の名前を変えました。そして、この病気の研究を推進してもらいように、厚労副大臣や元厚労大臣を始め、何人もの国会議員や厚労省職員に面会し、研究の重要性と必要性を訴えかけました。さらに、ME/CFS患者が適切な社会サービスを受けられるようにするため、いくつもの地方自治体の長や議会に要望書を提出し、複数において採択されてきています。さらにME/CFSの会は、この病気の世界的権威ハーバード大学医学校教授のアンソニー・コマロフ氏に、会が11月4日に開催するシンポジウムに向けてのメッセージも頂きました。ME/CFSは、未だに日本では医療者からも家族からも想像上の病気や精神的なものと誤解され、患者が苦しんでいることをご存知のコマロフ氏は、この病気が器質的なものであることを繰り返し、日本でも研究が進められるように呼びかけました。実際に研究が進んだり、社会サービスが受けられるようになったりといった具体的な成果はなかなか上がって来ていませんが、この様に患者会は、様々な活動を行い、続けていればいつか実現すると信じて続けられています。●当事者参画の可能性アルゼンチンの国際社会学会で同じセッションに参加していらしたシドニー大学教授のステファニー・ショート氏は、「私たち社会学者は、特に私の世代は、マルクス主義の影響が大きかったから、体制批判とか、社会運動とか、っていう視点で見ちゃうのよね。でも、今は時代が変わったわね」、とおっしゃっていました。彼女はまた、私の行った日米調査の調査票を使って、今度はオーストラリアでやろうという共同研究の話を持ちかけてくれました。もちろんぜひ調査を実施してみたいと思っています。次の国際社会学会の大会は横浜で開催されます。ちょうど私の所属する星槎大学も横浜に事務局がありますので、医療社会学の面々のパーティ係を任命されました。会場探しもしますが、その時までに、日本の行政や医療専門職が患者会の役割を重視し、患者のための医療体制ができてきたという報告をこの学会で発表できるようになればいいと思いました。謝辞:スウェーデンの患者会は、セイコーメディカルブレーンの主催する研修で知り合いました。研修を企画して下さった同社会長の平田二郎氏、研修参加を推奨し財政的支援をして下さった星槎グループ会長の宮澤保夫氏に感謝いたします。また、日米患者会調査の実施に当たって、資金の一部を助成して下さった安倍フェローシップ(Social Science Research Councilと日本文化交流基金)に感謝の意を表します。<参考資料>インディアナ・ガジェット オバマ、CFSについて応えるhttp://www.indianagazette.com/b_opinions/article_75b181eb-bd88-5fe4-bc90-f7b09f869ffd.html略歴:細田満和子(ほそだ みわこ)星槎大学教授。ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー。博士(社会学)。1992年東京大学文学部社会学科卒業。同大学大学院修士・博士課程の後、02年から05年まで日本学術振興会特別研究員。コロンビア大学公衆衛生校アソシエイトを経て、ハーバード公衆衛生大学院フェローとなり、2012年10月より星槎大学客員研究員となり現職。主著に『「チーム医療」の理念と現実』(日本看護協会出版会)、『脳卒中を生きる意味―病いと障害の社会学』(青海社)、『パブリックヘルス市民が変える医療社会』(明石書店)。現在の関心は医療ガバナンス、日米の患者会のアドボカシー活動。

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年間37%の認知症高齢者が転倒を経験!:浜松医大

 認知症は転倒原因のひとつである。しかし、認知症高齢者における転倒リスクの研究はまだ十分になされていない。浜松医科大学 鈴木氏らは介護老人保健施設に入所している認知症高齢者における転倒の発現率、リスクファクターの検証を試みた。Am J Alzheimers Dis Other Demen誌9月号(オンライン版8月7日号)の報告。 対象は、認知症高齢者135例。調査期間は、2008年4月から2009年5月までの1年間。調査開始前に、認知機能検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)、日常生活動作能力(PSMS:Physical Self-Maintenance Scale)、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)、その他因子に関して調査した。統計解析は、転倒の有無による比較を行うため、検定、ロジスティック回帰分析を用いた。主な結果は以下のとおり。・調査期間中、50例(37.04%)が転倒を経験した。・多重ロジスティック回帰分析の結果、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)の総スコアは転倒との有意な関連性が示された。・11項目の転倒に関連する行動評価は、認知症高齢者の転倒リスクを予測する有効な指標であると考えられる。関連医療ニュース ・アルツハイマー病患者におけるパッチ剤切替のメリットは? ・「炭水化物」中心の食生活は認知症リスクを高める可能性あり ・アルツハイマーの予防にスタチン!?

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10年後に10万人の“ジェネラリスト”創出を目指す!!

7月16日、東京大学伊藤国際学術研究センター(東京・文京区)において「Generalist Japan 2012」が、一般社団法人 Medical Studio(代表:野崎 英夫 氏)の主催、日本プライマリ・ケア連合学会、日本病院総合診療医学会の後援により開催された。当日は、祝日にも関わらず、全国より総合診療科の医師、研修医、医学生など300名以上が参集した。オープニング・リマーク:医療崩壊を救う“ジェネラリスト”特別に制作・編集された動画「Generalist Japan 2012 Opening Movie」で幕を開け、川島 篤志 氏(市立福知山市民病院 総合内科)の総合司会のもと開会を宣言、「今回の場は、ジェネラリスト(総合診療医)の将来を考え、実践する、その一歩として考え催されるものである。議論への積極的な参加をお願いしたい」と述べ、開始された。はじめに主催者代表として野崎 英夫 氏が「オープニング・リマーク」として自身が医師になった動機を語るともに、喫緊の問題を提起し、「医師不足により救急体制が崩壊しつつある、在宅医療でも現場の医師が不足している状況で、医師が早くこの事態に気づくことが重要。これからの病院はスペシャリスト(専門医)が集うところであり、医師はもっと院外へ出て、地域で共同体を作っていくことが大切だ。そして、未来の医療について大きく絵を描き、問題に気づき、解決するために行動を起こすことが求められている」と今回の開催の趣旨を述べた。オープニング・パネル:ジェネラリストは日本の医療を救うのか「オープニング・パネル」として「ジェネラリストは日本の医療を救うのか」をテーマに有識者4名のパネリストが会場を巻き込み、熱い議論を行った。問題提起として各パネリストから次のような発言がなされた。「現在は医療の知識の格差が顕著である。これからは命の延命の程度(社会、家庭、行政の関係で)が課題となる」や「ジェネラリストが今後の医療を変える突破口となると思う。今後は実態の把握、目指す目標、達成の手段など具体的にアクションを起こすことが大事」との指摘のほか、「沖縄は離島が多いため、自然とジェネラリストになることが求められる。そのノウハウを活かすために東京に来たが、地域医療について東京は遅れている。今後10年で10万人のジェネラリストを育成し、わが国の医療の格差(経済と知識の両方)を何とか解決しなくてはいけない」という目標設定や「日本とヨーロッパでは、医療者の定義が異なる。ヨーロッパでは、医師が医療・福祉・共同体作りを行っていて身近な存在だが、日本ではまだ遠い存在だと感じている。身近な存在には家庭医であるジェネラリストがなるべきだと考える」などのコメントが述べられた。続いてディスカッションとなり、「医療に関して情報公開が不完全であり、透明さがない。患者側も医療への理解力を上げていかないといけない」という意見や「地域での医師分布、専門領域での医師分布、昼夜間での医師分布の異常が起っている。医師全員が守備範囲を広げなくてはいけない。具体例として当院では、病院見学の際は見学者全員が院内PHSをもち医療活動を行う、参加型医療を実践させている。もちろん患者にも協力してもらい、医師の教育をポジティブに見てもらう、医師の育成の現場に参加させる試みを行っている」という事例紹介や「イギリスのGP(家庭医)のように『価値の実現共有』が必要。たとえば100個の医療変革アクションプランの発表が必要ではないか」という提案が行われた。会場からは、「ジェネラリストが活躍する時代だと実感している。これからは具体的な目標(増員人数や増員の方法、啓発方法など)を定め行動することが大事。若手医師には『総合医』という確固としたキャリアパスを示すことが大切」という提案や「専門医とジェネラリストが手を携えて診療にあたり、診療の見落としを無くすことが重要で張り合うものではない」という意見や「今までジェネラリストは、一般社会に存在を広めてこなかったことが反省点。現在の医療は、昔のように単純に診療をして、治療をしておしまいではなく、患者と寄り添い、患者の代弁人(アドボカシー)として関わることも重要な使命と考えている。このことを一般社会に広く周知する必要がある」などの提案がなされた。最後にパネリストが一言ずつコメントを寄せ、「今後の実行への期待」や「これから医療を変えるスタートとしたい」など抱負を述べた。午後からは会場を2ヵ所に分け、10名の識者から成る円卓会議「ジェネラリスト・ラウンドテーブル」と若手医師から構成される「エンパワーメント・セッション」が開催された。ジェネラリスト・ラウンドテーブル:ジェネラリスト大国ニッポンになるためにはジェネラリスト・ラウンドテーブルでは、「ジェネラリスト大国ニッポンになるためには」をテーマに3時間にわたるディスカッションが行われた。ディスカッションでは、次のような内容の問題提起や意見が出され、話し合いが行われた。――ジェネラリストの定義、教育、役割とは?活躍の場で名称は変わり、境界は曖昧である。ER、集中治療室、病院総合医、病院以外であれば家庭医と呼ばれる育てるには後期臨床研修後のキャリアパスが大事。ジェネラリストになるためのトレーニングはある程度必要(例:1次救急の患者を診療できるレベル)。そのため、へき地臨床研修と大病院での研修をバランスよく実施する必要がある専門医で補いきれない部分を補完するのはジェネラリストの役目――ジェネラリストをいかに広げていくか?ジェネラリストがこれから、行政、自治体とどうつながっていくのか、プロモートできる人(ジェネラリストの伝道師)を育てる総合診療部門は収益を生む部門であることを、より強調することと社会へのPRが大事ジェネラリストの横の連携が弱い。横の連携を強化し、診療ノウハウの交換やジェネラリストが語る場、居場所となる場(例:医師会)を作ることが必要――高齢者とジェネラリスト高齢者は疾患の数が多く、身体の恒常性も破たんしている場合もあり、治療して治すことは難しい。そこで、高齢者の患者に寄り添う医師としてジェネラリストが活躍するアメリカのように患者のQOLを重視し、患者とゆるい距離間で家族も巻き込み寄り添う、顧問的な役割にジェネラリストがぴったり合う。その際、もっとチーム力をもって看護師やセラピストを入れることも大切高齢者特有の終末期医療は、在宅医療で多くの経験を積む必要がある。研究がメインの大病院では学ぶことが難しい――ジェネラリストは医療の質を上げるか?わが国では、ジェネラリストになると生活環境が改善される。それを見越してジェネラリストが増えれば、過分な診療から解放された専門医の生活も改善され、医療の質全体が上がる今後、ジェネラリストが増えれば医療費が削減されるかどうかの検証は必要――ジェネラリストとしての研究への取り組みジェネラリストは個別化しているので医局のしがらみなく、コラボレーションをして研究、発表をしたらいい研究費用がなくてもジェネラリストでしかできないフィールド研究もある。今大事なのは、よく行われているリサーチ・クエスチョンではなく、ジェネラリストの素朴な疑問を整理し、研究・発表すること。ジェネラリスト全員の疑問を収集して、流すシステムが必要であり、それを指揮できる旗振り役も必要●自由討論――なぜジェネラリストはメジャーにならなかったのか?従来は精神論が多すぎた。ジェネラリスト自体の考えがバラけていて、一本化されていなかったのが問題。今後はジェネラリストが、医療の担い手として専門医に便利な存在であること、その効果を宣伝することが大事であり、社会に向かってわかりやすいものを作る必要がある一般への啓発は、マスコミを利用しないとうまくいかないジェネラリストとは、医療全体を見ることができる医師であると思う「ジェネラリストは収益が良い」という魅力あるモデルを示すことができれば、後に続く医師がでるエンパワーメント・セッション1:ジェネラリストの魅力を伝える医学教育孫 大輔 氏(東京大学 医学教育国際協力研究センター)の司会のもと、5名のパネリストから自己紹介とともにテーマに関するコメントが寄せられた。「研修医への教育内容の範囲(どこまで教えるか、任せるか)」、「1日の中での教育時間(指導の負担が大きすぎる)」、「医学教育の本質的な内容(医学教育が軽く見られている)」、「大学でのジェネラリストの低い地位について」などをもとに会場の参加者とディスカッションを行った。ディスカッションでは、若手医師をジェネラリストに導くために「大学等で居場所を作り、発表の場を作ることが必要」や「長い医学教育の中で臨床でしか教わらないヒドゥン(隠れた)カリキュラムがジェネラリストには大事。これをうまく活用すれば育成の時間節約になる」、「ジェネラリストを育てるためには臨床の現場を見せて、ベッドサイドで突き放して教えることで伸びる」、「指導医が研修医の診断能力を診断する。この時間を指導医が楽しめるかが教育のカギとなる」などの意見が寄せられた。最後に孫氏が、まとめとして次のポイントを示した。教育者自身が医学教育をとにかく楽しむヒドゥン(隠れた)カリキュラムの活用(背中で楽しさを見せる)大学での水先案内人を増やす(学内でジェネラリストの占めるポストを増やす)ジェネラリストだけでなく専門医とよい連携をする大学だけでなく地域とつながった医学教育が必要国民や市民参加型の医学教育を志向するエンパワーメント・セッション2:越境者たれ!コミュニティを変えるジェネラリストとはセッション2では、草場 鉄周 氏(北海道家庭医療学センター)の司会のもと、「地域とジェネラリストの関係について」ディスカッションが行われた。4名のパネリストが自己紹介とともに、テーマについて次のようにコメントを寄せた。「日本の医療はジェネラリスト待望の方向へ向かっている。地域で診療の格差が顕在化した今、その隙間を埋めることができるのがジェネラリストだと考える」という役割論や「地域医療の視点からジェネラリストは地域をつなげる大事な役目を担っていると思う」という地域との連携や「これから日本の医療で果たすジェネラリストの役割を考えていきたい。原発被災地で働いているが、将来の日本の姿が被災地にあるように思う。いかにチームの中心としてジェネラリストが活躍しなくてはいけないかをディスカッションしたい」という要望、そして「地方でも共同体がまとまっている地域とそうでない地域がある。その差が医療の受益の格差を生む一因ともなっている。どうすれば若手の医師が、ジェネラリストとして地域に残る、または入っていくのかその方法を考えたい」という問題提起が述べられた。以上のコメントに対し、会場からは「普段から地域の住民と医師とのコミュニケーションは大切である。何かのきっかけで急に行おうとしてもうまくいかないことがある」や「患者は医師の前ではかなり萎縮している。この見えない距離を縮めないと医師は、コミュニティのリーダーにはなれない」、「看護師などの他種職種と在宅医療のカンファレンスを行っている。医師はファシリテートをする役目だと思う」、「コミュニケーションの量が、活動の活発化に比例する。これからのコミュニティは、一方的な命令ではなく、対話をして納得してからではないと動いていかない」という意見などがあった。まとめとして草場氏から「ジェネラリストを育てるには、コミュニティを視野に入れた活動が必要。たとえば、地域医師会は限られた予算の中で医療をどうするか真剣に考えている。そうした地域の先輩の中に入り、活動を広げていくことが大切」と感想を述べ、セッションを終了した。ラップ・アップ・セッション:ジェネラリスト宣言「ラップ・アップ・セッション」として、1日の総括が行われた。セッションでは、司会の孫 大輔 氏が、「市民参加型の医療へ向け今日から新しいことが始まる予感がする。今後はジェネラリストの定義と質の保証が必要となるし、General Mindも養成する必要がある」と述べ、もう一人の司会者の坂本 文武 氏は「今回のように集い、考えることが大事。仕組みを変えていく努力が必要で、ディスカッションを通じて解決策を見つける。今後は医師だけでなく、別の立場の人の視点も大切」とコメントを寄せた。続いて当日の参加者全員に配布されたアブストラクト集の「私のジェネラリスト宣言」について説明が行われ、その場で参加者に「今からの気持ちの表明」として、個人の目標を記入してもらい、今後の取り組みへの奮起を促した。次に、事前に投票を行っていた「ジェネラリストが増えた社会のありかた」についての投票結果を発表。第1位には「ジェネラリストが協調・連携することで、スペシャリストの真価が効率的に発揮され、互いに尊厳をもって意見交換・連携できる社会」が選ばれた。最後にジェネラリスト宣言が発表され、次の一文が述べられ、はじめての「Generalist Japan 2012」は終了した。ジェネラリスト宣言「医療者が有機的に連携し、社会とのつながりを再構築することで、生老病死が生活の一部になっている社会」ジェネラリスト Japan 2012 Opening Movie http://www.youtube.com/watch?v=bE75pE66Y2gMedical Studio USTREAM(当日の動画が視聴できます)http://www.ustream.tv/channel/medical-studio-ustream#eventsMedical Studio のFacebookページ http://www.facebook.com/medicalstudio.jp

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小学生の貧血、校長への報奨金で改善

 健康サービスの提供者に、助成金のほかに成果に応じた報奨金を支払うことで、子どもの貧血が改善される可能性があることが、米国スタンフォード大学医学部のGrant Miller氏らが中国の農村地域で行った調査で示された。開発途上国には、健康状態の改善に寄与する安価で優れた効果を持つ技術やサービスはあるものの、それを遂行し普及させる技能が一般に弱いとされる。目標の達成に対して、その方法を問わずに支払われる報奨金は、サービスの提供における創造性や技術革新の促進に向けた動機づけを強化する可能性があるが、開発途上国ではこれまで、健康アウトカムに直接的に準拠した、能力に応じた報奨金の有効性の評価は行われていなかったという。BMJ誌2012年8月18日号(オンライン版2012年7月27日号)掲載の報告。報奨金の効果をクラスター無作為化試験で評価研究グループは、中国農村地域の子どもの貧血の改善における、健康サービス提供者への職能に応じた報奨金の支払いの効果を評価するために、クラスター無作為化試験を実施した。対象は、無作為に選ばれた中国北西部の農村地域の小学校72校(3,553人、4~5年生、9~11歳)。これらの学校が、以下の4つの群に無作為に割り付けられた。1)介入を行わない群、2)校長が貧血に関する情報のみを受け取る群(情報群)、3)校長が貧血の情報と無条件の助成金を受け取る群(助成金群)、4)校長が貧血情報と助成金に加え、生徒の貧血が改善した場合に報奨金を受け取る群(報奨金群)。助成金は、学校運営予算だけでは貧血対策費が賄えない学校に生徒1人当たり1日1.5円(赤身肉55~85gを購入できる)が拠出された。報奨金は、貧血生徒が非貧血と診断されると1人当たり150円が校長に支払われた(貧血生徒が半減した場合、月給の約2ヵ月分に相当)。非介入群に27校(1,623人)、情報群に15校(596人)、助成金群に15校(667人)、報奨金群には15校(667人)が割り付けられた。貧血はヘモグロビン濃度<115g/L(<11.5g/dL)と定義した。報奨金群で貧血が24%低下生徒の平均ヘモグロビン濃度は、非介入群に比べ情報群が1.5g/L(95%信頼区間[CI]:-1.1~4.1、p=0.245)上昇し、助成金群は0.8g/L(同:-1.8~3.3、p=0.548)、報奨金群は2.4g/L(同:0~4.9、p=0.054)上昇した。報奨金群では、平均ヘモグロビン濃度の2.4g/Lの上昇により貧血生徒が24%減少した。約20%の学校が本試験とは別の報奨金の支払い制度に参加していたが、情報群と報奨金群ではこれらの制度との相互作用が認められた。すなわち、既存の報奨金制度に参加していない学校に比べ、参加校の情報群ではヘモグロビン濃度が9.8g/L(95%CI:4.1~15.5、p=0.01)、報奨金群では8.6g/L(同:2.1~15.1、p=0.07)上昇していた。著者は、「報奨金の支払いは、健康アウトカムの改善に中等度の効果を有することが示唆された」と結論しており、「他の動機づけや既存の報奨金との相互作用を把握することが重要であり、これを理解しないとせっかくの増強された効果を見逃すことになる」と指摘している。

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現役CEOが医学生に語るキャリア形成、キャリア構築のコツ!

7月7日(土)慶應義塾大学信濃町キャンパスにおいて山本雄士氏(株式会社ミナケア 代表取締役)主催による「山本雄士ゼミ」の第4回が開催された。今回は、ノバルティス ファーマ株式会社 代表取締役社長である三谷宏幸氏をゲストに迎え、日本と世界のキャリア形成の違いやリーダーシップ論などを中心に話を聞いた。山本雄士ゼミは、ハーバード・ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した山本氏をファシリテーターに迎え、ケーススタディを題材に医療の問題点や今後の取組みをディスカッションによって学んでいく毎月1回開催のゼミである。産業構造の大転換講演では、三谷氏が自身のキャリアを述べた後、国際ビジネスマンとしての視点から現在の日本の産業と世界、そして医療について語った。はじめに日本の産業構造の変化について、以前なら市場は国内だけ見ていればよかったが、今では全世界を見なくてはならなくなったこと、そして、外国からの文化の流入と融合への取り組みが必要となったことなど、三谷氏の分析的視点から語られた。講演では、大手家電メーカーを例に説明し、「日本企業は時代のニーズへの対応が不得意であり、視野狭窄で国内市場しか目が向いていなかった(ガラパゴス化)。その結果、今日のような事態を招いた」と語った。日本的思考法、グローバルの思考法「日本的思考とグローバルの思考」の違いについて説明し、「日本では文化の同質性から『あ・うんの呼吸』で仮説から一気に結論までもっていくが、グローバル思考では文化が異なるため仮説から論証を積み上げて結論までもっていく。論理的な思考というものがきちんとなされている。また、組織構成とキャリアパスの違いから日本企業はなあなあの仲良しクラブになりがちだが、グローバル企業では個々人の責任の所在を明らかにし、リスクを選び、リスクに見合った利益を手にする考え方が主流である」と日本と外資系企業の違いを説明した。そのうえで、外資系企業の強さについて、その要素は3つあり、(1)規模、(2) 開発力、(3) 人材と企業文化であるとした。具体的に、製薬メーカーであれば規模が大きいほど研究・開発力が大きくなる。そして、開発に関して「規模で劣る日本の製薬メーカーが、研究・開発の分野の絞り込みをできていないところが心配だ」とコメントするとともに、(3) 人材と企業文化についてはリーダーシップ論とキャリア形成法を交えて詳しく説明を行った。求められるリーダーとは?三谷氏が以前所属していたGE(ゼネラル・エレクトリック)を例に「リーダーに求められる資質」として「『外部思考、想像力、専門性、明瞭な思考、包容力』の5つの資質が、大人数を納得させ、動かす資質である」と説明。そして、リーダーに求められる能力として「専門知識、ビジネス知識、企業価値にもとづく行動規範、リーダーシップ」が必要だと説明した。次に、混同されがちな「リーダー」と「管理職」の違いを説明し、「リーダーはアクセルであり、ビジョンを重視し、柔軟性をもっている。管理職はブレーキであり、ロジックを重視し、一貫性をもっている」とその差異を説明した。最後に主体的なキャリア構築の勧めとして、「継続的に挑戦し、学んでいくマインドが大切である」と述べ、次の言葉を聴講者に贈り、講演を終えた。“Control your destiny or someone else will”(自分の運命は自分で選べ)                                                                -Jack Welch(GE 元CEO)引き続き、質疑応答となり、多くの参加者が質問を寄せた。――人材教育は日本企業と外国企業のどちらがよいか?決して日本が劣っているわけではない。しかし、外資の戦い方やさまざまなプレゼンテーションの仕方は勉強になるし、ロジカルな思考も強くなれる。――社長になるための資格は?社長になる方程式はないので自分で作るしかない。ただロジカルな思考ができる面で、理系は有利だと思う。また、現場は人間性、リーダー力を養う場になるので現場に出て修行を積むことも大事。現場での人の動かし方や苦労を知り、失敗することで成功への意欲が出てくる。――キャリアを変えるために行うべきことは何か?キャリアの変更については、「自分の強み、将来の予想、過去の成功例」を見出すことだと思う。同じグループだけを見ているのではダメ。自分自身でいえば、自己実現の充足が今のポジションをもたらしている。学ぶことを止めないこと、私は、自分の学びの確認に海外を見ている。――医療業界で若手が元気になるには?日本の研究環境も変わりつつあるが、まだ世界レベルではないように思う。たとえば米国のボストン近郊のケンブリッジは大学、企業の研究所、ベンチャーが集積していて、研究者がお互いに刺激し合っている。日本では、価値を転換して臨床研究の評価を上げるなども必要だと思う。――医療の世界へ来た動機と今後の抱負以前いたGEで医療に関わり、興味があった。機会があれば挑戦したいと思い医療の世界に来た。これからも、さらなる自己実現と周りの人が驚くようなスピードで経営を行っていきたいと思う。『医療イノベーション 5か年戦略』とディスカッション後半のディスカッションでは、資料に『医療イノベーション 5か年戦略(案)』(医療イノベーション会議・発行)と『平成24年度診療報酬改定の概要』(厚生労働省・発行)を使い、前者の立案に参加した山本氏が、内容の要旨と今後の医療施策の動向について説明した。資料から「人口動態変動で今後は高齢者が増加し、死亡率が増加する(少子多死時代の到来)。この社会環境の中で医療をどう位置づけるかが問題。今までの日本は、低コストで効率のよい医療を提供していたが、今では国家財政的に厳しい時代に来ている」と将来への論点を提示した。次に『医療イノベーション5か年戦略』の内容を詳説し、「政府として今までの議論を基に、今後志向することは何か」を説明した。とくに今回「『広い視点から医療技術評価のあり方を検討する』、『予防から終末期に至る包括的なケアを考える』という2つの事柄が入ったことは画期的なこと」と述べた。この後、質疑応答となり、資料の内容やゼミの活動についてさまざまな質問が寄せられた。たとえば「今回の『医療イノベーション』の特色は何か?」という質問に「いままで基本理念がなかったが、健康長寿、産業振興(医薬品の開発)、世界への発信という3つを明記した。また、PDCAサイクルによるチェック機能を入れたところが大きな特色」と回答した。また、「日本の医療に明るさが見えない。さまざまなゼミや研究会で出された提案が、なかなか政策に反映されず、政府の審議会だけで決まってしまうことに、とても歯がゆさを感じている」という感想に対して、「このゼミは、いろいろな世代、立場の人が集まって議論する場であり、なかには中央省庁の方も出席されている。声が届かないことはないと思う。また、ゼミの場は、いわば道場であり、ゼミでの議論を自分のものにして、実現できるようになっていってもらいたい。今後はゼミでの議論も踏まえて、政策提言できる動きもしていきたい」と述べ、ゼミを終了した。なお今後のスケジュールは次の通り(いずれも16:00~19:00の開催予定)。第5回 9月8日(土):ワイス(製薬会社のケーススタディ)第6回 10月13日(土):後期ガイダンス&クリーブランド・クリニック(アメリカの病院のケーススタディ)第7回 11月10日(土):『医療戦略の本質』の読書会&西ドイツ頭痛センター(ドイツの病院のケーススタディ)第8回 12月8日(土):ピッツニーボウズ(アメリカの医療保険者に関するケーススタディ)第9回 1月12日(土)(仮):外部講師による講演会第10回 2月9日(土)(仮):セダケア(地域のヘルスケアシステムのケーススタディ)●ゼミ公式HP http://yamamoto.umin.jp/●ゼミ公式Facebook http://www.facebook.com/#!/groups/226064334073359/●講演者経歴■関連リンク・三谷宏幸氏著作『世界で通用するリーダーシップ』・山本雄士氏著作『医療戦略の本質』『奇跡は起こせる わが子を救うため、新薬開発に挑戦したビジネスマン』

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