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<先週の動き> 1.診療報酬26年度改定「本体3.09%引き上げ」で決着へ、医療現場の賃上げ原資に/政府 2.薬価0.8%引き下げで最終調整、新薬維持制度で創薬力強化へ/政府 3.OTC類似薬に「25%追加負担」を自民・維新が合意、2026年度開始へ/自民・維新 4.東京科学大が国際卓越研究大学に認定、東大は継続審査に/文科省 5.赤字の大学病院が譲渡に、市川総合病院が国際医療福祉大学へ/国際医療福祉大 6.生活保護で6,650万円不正、歯科医院名を公表/東京都 1.診療報酬26年度改定「本体3.09%引き上げ」で決着へ、医療現場の賃上げ原資に/政府政府は2026年度診療報酬改定で、医療行為の対価となる「本体」を+3.09%とする方針を固め、週明けの厚労・財務両大臣折衝を経て月内に正式決定する見通しとなった。3%超の引き上げは1996年度の3.4%以来の30年ぶりの高さで、2024年度の+0.88%を大きく上回る。首相官邸で高市 早苗首相、上野 賢一郎厚労相、片山 さつき財務相が協議し、物価高と賃上げ圧力の下で悪化する医療機関経営を支える必要性を優先した。内訳は賃上げ対応1.70%、物価対応(光熱水費・食費などを含む)1.29%、医療の高度化など0.25%で、適正化として0.15%を差し引く。厚生労働省は当初より3%台を主張し、財務省は「適正化・効率化を前提に1%台」としてきたが、最終的に高市首相が厚労省案を選択した。日本医師会は、公定価格ゆえ賃金・物価上昇を転嫁できない点を挙げ、賃上げ・物価対応の「真水」確保に謝意を示した。医療経済実態調査では一般病院の医業・介護損益率がマイナス7.3%とされ、補正予算でも医療・介護等支援パッケージ約1.4兆円が計上されたが、現場はなお厳しい。その一方で、診療報酬の財源は保険料が約5割、公費約4割、患者負担約1割とされ、1%引き上げで約5,000億円、3%での単純計算で約1.5兆円規模の国民負担増になる。政府・与党は現役世代の保険料軽減も掲げるため、今後は中央社会保険医療協議会(中医協)で「病院・診療所・調剤のメリハリ」や、急性期・高度医療、地域医療維持、人材確保へどう配分するかが焦点となる。財務省は、利益率の高い無床診療所や調剤への報酬点検を求めており、病院への傾斜配分を主張している。改定率の決定後は、各点数の算定要件の厳格化が実収入を左右するため、医療機関はDXによる効率化と、地域医療構想に合致した機能分化への対応が不可欠となる。改定率決定後、入院基本料、手術・救急、地域包括ケア、外来・在宅、薬局などへの配分と算定要件について取りまとめることになる。国立大学病院長会議は12月18日、44国立大学病院のうち32病院で現金収支の悪化のために、321億円の赤字を見込む数字を公表し、機器更新の先送りや人事院勧告に沿った賃上げができない例を指摘した。3%台を評価しつつ「危機は脱していない」として、高度医療への傾斜配分や、物価上昇に連動して診療報酬を改定する枠組みの検討を求めた。 参考 1) 診療報酬本体、3.09%上げ 物価高対応で30年ぶり水準-政府(時事通信) 2) 26年度診療報酬改定 本体プラス3.09% 賃上げ対応1.70%、物価対応0.76%、適正化はマイナス0.15%に(ミクスオンライン) 3) 診療報酬30年ぶりの高水準、3%こだわった首相 「不十分」の声も(朝日新聞) 4) 診療報酬改定「本体」30年ぶりに3%超引き上げで最終調整(NHK) 2.薬価0.8%引き下げで最終調整、新薬維持制度で創薬力強化へ/政府政府は12月19日、2026年度の薬価を0.8%程度引き下げる方向で最終調整に入った。今回の改革の柱は、創薬イノベーションの評価と医薬品の安定供給確保の両立にある。中央社会保険医療協議会(中医協)が示した骨子(たたき台)では、特許期間中の薬価を維持する仕組みを「革新的新薬薬価維持制度(PMP)」と改称し、制度の透明性を高める方針が示された。注目すべきは、収載時には加算対象でなかった品目でも、後に国内の診療ガイドラインで「標準的治療法」に位置付けられた場合に、薬価改定時に評価を行う新ルールの導入である。これにより、医療機関には、よりエビデンスに基づいた処方の「標準化」が強く求められることになる。医療現場の経営に直結するのは、医薬品の安定供給対策である。昨今の供給不安定化を受け、不採算品再算定の要件が緩和される。これまで同一組成・規格の「全類似薬」が不採算である必要があったが、一部の類似薬にシェアが集中している場合は、品目単位での再算定が可能となる。これは現場で多用される基礎的医薬品の確保に資する一方、改定のたびに薬価が上下する不安定な状況は、医療機関の「在庫負担」や「購入価格交渉」に複雑な影響を与える。さらに、年間1,500億円を超える巨大市場を形成した高額医薬品への対応も強化される。効能追加の有無に関わらず、NDB(レセプト情報等データベース)を用いて使用量を把握し、年4回の新薬収載の機会に合わせた機動的な再算定が実施される。今回の改定は、単なる引き下げにとどまらず、イノベーション評価と供給不安解消を同時に進める構造改革の側面が強い。医療機関にとっては、新制度による薬剤費の変動を注視しつつ、地域連携やDXを通じた適正な在庫管理と標準ガイドラインに準拠した効率的な薬剤選択が、経営の安定化と質の高い医療提供の鍵となる。 参考 1) 令和8年度薬価制度改革の骨子[たたき台](厚労省) 2) 薬価 0.8%程度引き下げる方向で最終調整(NHK) 3) 2026年度薬価制度改革の骨子たたき台、医薬品業界は「イノベーション評価のメッセージが不十分」と指摘-中医協・薬価専門部会(Gem Med) 3.OTC類似薬に「25%追加負担」を自民・維新が合意、2026年度開始へ/自民・維新自由民主党と日本維新の会は12月19日、市販薬と成分・効能が近い「OTC類似薬」について、保険適用は維持しつつ、対象薬で薬剤費の4分の1(25%)を保険外で追加負担させる新制度を導入することで合意した。対象は77成分・約1,100品目(湿布、胃腸薬、アレルギー薬、外用薬などを想定)で、政府は2026年通常国会に法案提出し、26年度中(来年度末ごろ)の開始を目指す。追加負担は、薬代の25%は全額自己負担、残る75%は従来通り保険給付(窓口1~3割)という整理。子供、がん・難病など長期治療が必要な患者、低所得者、慢性疾患や入院患者などへの配慮(除外)を検討し、具体的な品目選定は厚生労働省が詰める。協議では、維新が当初主張した「保険適用除外(全額自己負担)」は見送り、制度創設で折り合った。あわせて薬剤給付の見直しとして、長期収載品の選定療養は先発品選択時の特別料金を薬価差の1/4から1/2へ引き上げ、長期処方・リフィル処方箋の活用(安定患者で原則化も視野、院内掲示要件拡大)、食品類似薬は「食事で栄養補給可能な患者」への使用を保険給付外とする方針で合意した。これらを通じて、約900~1,880億円規模の医療費抑制を見込み、27年度以降の対象拡大や負担割合見直しも検討事項に入った。狙いは保険料負担の軽減だが、患者負担増と受診行動への影響、対象外の線引きが今後の論点となる。 参考 1) 自民・維新 長期収載品の選定療養 価格差の「2分の1」に引上げへ リフィル処方箋の活用にも合意(ミクスオンライン) 2) OTC類似薬、1,100品目で25%を患者が追加負担へ 自維が合意(朝日新聞) 3) 市販類似薬の追加負担、薬価の4分の1で自維合意…湿布薬や胃腸薬など1,100品目対象(読売新聞) 4.東京科学大が国際卓越研究大学に認定、東大は継続審査に/文科省文部科学省は12月19日、世界最高水準の研究力を持つ大学を重点支援する「国際卓越研究大学」の第2回公募で、東京科学大学を新たに認定し、京都大学を認定候補として選定したと発表した。一方、東京大学は計画の実効性やガバナンス面に課題があるとして、最長1年間の継続審査となった。国際卓越研究大学は、政府が設立した10兆円規模の大学ファンドの運用益を原資に、認定校へ最長25年間にわたり巨額の助成を行う制度。研究力に加え、財務戦略やガバナンス、組織改革の実行力が厳しく問われる。第1号としては2024年に東北大学が認定されている。東京科学大は、東京工業大と東京医科歯科大が統合して2024年に発足した新大学で、理工系と医療系を融合した医工連携を中核に据える全学的改革が評価された。2026年度から百数十億円規模の助成を受ける見通しで、「日本の新しい大学モデル」として期待が集まる。京都大は、従来の小講座制を見直し、研究領域ごとのデパートメント制を導入する大胆な組織改革や若手研究者の活躍促進、スタートアップ創出を掲げた点が高く評価された。ただし計画は策定途上とされ、2026年末までに具体化を確認した上で正式認定される。一方、東京大は「10年で世界トップ10の研究大学」を掲げたものの、大学本部が改革を主導できるか不透明と判断された。加えて、東大病院を巡る贈収賄事件などガバナンス上の不祥事も影を落とし、有識者会議は「新たな不祥事が生じた場合は審査を打ち切る」と厳しい条件を付した。今回の選定は、日本の研究大学に対し、研究実績だけでなく、組織改革と統治能力を含めた「大学経営力」が問われる段階に入ったことを示している。 参考 1) 国際卓越研究大学の認定等に関する有識者会議(文科省) 2) 国際卓越研究大学に東京科学大と京都大を認定へ 東大は継続審査(毎日新聞) 3) 「国際卓越研究大学」 東京科学大学を認定へ 京都大学も候補に(NHK) 4) 「国際卓越大」に東京科学大を認定へ、京大も候補 不祥事続く東大は保留(日経新聞) 5.赤字の大学病院が譲渡に、市川総合病院が国際医療福祉大学へ/国際医療福祉大国際医療福祉大学(栃木県大田原市)は、東京歯科大学市川総合病院(千葉県市川市)を取得し、来年4月に「国際医療福祉大市川総合病院」として開院する。両大学は12月18日、無償での譲渡契約を締結した。大学病院が他大学に経営譲渡されるのは極めて異例なケース。市川総合病院は1946年開院、511床・26診療科を有する地域の中核病院だが、物価高や人件費、医療機器コストの上昇を背景に経営が悪化し、2023年度に約9億円、24年度には約16億5千万円の赤字を計上した。病院閉院は地域医療への影響が大きいとして、東京歯科大は存続を最優先に経営譲渡を決断。今年に入り、歯科医師交流などの実績がある国際医療福祉大に打診していた。国際医療福祉大は全国で6つの付属病院を運営し、千葉県内でも2病院を展開している。取得後も病床数や診療科、職員の雇用は維持し、東京歯科大からの歯科医師派遣や学生・研修医の受け入れを継続する方針。医科と歯科の連携を強化し、臨床実習の場を拡充するとともに、グループ病院間の連携や調達の効率化によるスケールメリットで早期の経営改善を目指す。全国的にも大学病院の赤字は深刻で、全国医学部長病院長会議によれば、81大学病院の収支は2024年度に計508億円の赤字となった。高度医療を担う大学病院ほどコスト増の影響を受けやすく、国の補正予算による支援も講じられているが、構造的な再編や集約化の議論は避けられない。今回の譲渡は、地域医療を守るための経営再編という新たな選択肢を示した事例といえる。 参考 1) 学校法人国際医療福祉大学による東京歯科大学市川総合病院の承継について(国際医療福祉大学) 2) 国際医療福祉大が病院取得=東京歯科大から、来年4月開院へ(時事通信) 3) 国際医療福祉大、市川総合病院を取得…多額の赤字で東京歯科大が譲渡を打診(読売新聞) 6.生活保護で6,650万円不正、歯科医院名を公表/東京都東京都は12月18日、都内で過去最大額となる約6,650万円の診療報酬を不正請求したとして、板橋区前野町の歯科医院「医療法人社団山富会 タカシデンタルクリニック」(廃止済み)の名称を公表した。対象期間は2020年4月~2024年9月で、生活保護受給者89人分の診療報酬を不正・不当に請求した。内訳の多くは、実際に診療していないにもかかわらず請求する架空請求で約5,000万円に上る。不正は、来院していない患者の診療実績を捏造したり、診療内容を水増ししたりする手口で行われた。確認された架空請求の中には、一時帰国中、入院中、さらには死亡していた患者に関する請求も含まれていた。2024年2月、福祉事務所からの情報提供(帰国中の受給者に対する請求)を端緒に、都が生活保護法に基づく検査を2024年11月~2025年6月まで実施し、不正を認定した。同医院は都から検査通知を受けた後の2024年10月に廃止されたが、同一理事長が同一所在地で名称を変えて再開業しているとの情報もある。都は、利用者が適切な医療機関を選択するために必要として、医院名の公表に踏み切った。被害を受けた板橋区は警視庁への告訴を検討している。本件は、生活保護医療におけるレセプト管理・内部統制の不備が巨額不正に直結し得ることを示した。医療機関には、診療実績の実在性確認、レセプト点検の多重化、異常値の早期検知、職員教育の徹底など、ガバナンス強化と日常的なコンプライアンス運用が改めて求められる。 参考 1) 生活保護法に基づく元指定医療機関の不正請求について(東京都) 2) 生活保護受給者の診療報酬6,600万円超を不正・不当請求…板橋区の歯科医院の名称を公表(読売新聞) 3) 診療報酬6,650万円を不正請求の歯科医院名を公表 東京都内では過去最大額(産経新聞)