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PSMA陽性mHSPC、177Lu-PSMA-617追加でrPFS改善(PSMAddition)/ESMO2025

 PSMA陽性の転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)患者において、アンドロゲン除去療法(ADT)+アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)への[177Lu]Lu-PSMA-617(177Lu-PSMA-617)追加が画像上の無増悪生存期間(rPFS)を有意に改善した。米国・Weill Cornell MedicineのScott T. Tagawa氏が、第III相PSMAddition試験の2回目の中間解析結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で報告した。・対象:全身治療歴なしまたは全身治療歴の短い(術前/術後ADTおよび/または転移疾患に対する最大45日までのADT/ARPIは許容)PSMA陽性mHSPC患者(ECOG PS 0~2、ADT+ARPIに対する適格性あり)・試験群(177Lu-PSMA-617群):177Lu-PSMA-617(7.4GBq±10%を6週ごとに6サイクル)+標準治療(ADT+ARPI) 572例・対照群:標準治療(ADT+ARPI) 572例※盲検下独立評価委員会(BIRC)の評価により画像上の進行(rPD)が認められた患者は試験群にクロスオーバー可能・評価項目:[主要評価項目]PCWG3/RECIST v1.1に基づくBIRC判定によるrPFS[重要な副次評価項目]OS[その他の副次評価項目]RECIST v1.1に基づくBIRC判定による奏効率(ORR)、転移去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)/PSA progression/症候性骨関連事象発生までの期間、安全性、QOLなど・層別化因子:CHAARTED基準に基づく腫瘍量(高vs.低)、年齢(≧70歳vs.<70歳)、原発巣に対する照射あるいは手術歴(ありvs.なし)・観察期間中央値23.6ヵ月(データカットオフ:2025年1月13日) 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はともに68.0歳、PSA中央値は177Lu-PSMA-617群12.06ng/mL vs.対照群11.64ng/mL、高腫瘍量の患者が68.0%vs.68.2%、ECOG PS 0の患者が69.4%vs.71.2%を占めた。・対照群の15.9%が177Lu-PSMA-617群にクロスオーバーした。・BIRC判定によるrPFS中央値は177Lu-PSMA-617群NR(95%信頼区間[CI]:NE~NE)vs.対照群NR(95%CI:29.7~NE)で、177Lu-PSMA-617群で統計学的有意に改善した(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.58~0.90、p=0.002)。・177Lu-PSMA-617群におけるrPFSベネフィットはすべてのサブグループで一貫していた。・OS中央値は、未成熟なデータではあるがともにNR(95%CI:NE~NE)で、177Lu-PSMA-617群で良好な傾向がみられた(HR:0.84、95%CI:0.63~1.13、p=0.125)。・BIRC判定によるORRは177Lu-PSMA-617群85.3%(95%CI:79.9~89.6)vs.対照群80.8%(95%CI:74.8~85.8)、完全奏功(CR)は57.1%vs.42.3%であった。・PSA progressionまでの期間(HR:0.42、95%CI:0.30~0.59)、症候性骨関連事象発生までの期間(HR:0.89、95%CI:0.62~1.26)、mCRPCまでの期間(HR:0.70、95%CI:0.58~0.84)はいずれも177Lu-PSMA-617群で良好な傾向がみられた。・Grade3以上の重篤な有害事象は177Lu-PSMA-617群26.6%vs.対照群22.8%で発現し、177Lu-PSMA-617群におけるGrade3以上の177Lu-PSMA-617関連有害事象は13.8%であった。Grade3以上の血球減少症が、177Lu-PSMA-617群でより多く認められた(14.4%vs.5.0%)。・患者報告評価(FACT-P、BPI-SF)における、健康関連QOLと痛みの悪化までの期間に両群間で臨床的に意味のある差は認められなかった。 Tagawa氏は「これらの結果は、177Lu-PSMA-617とADT+ARPIの併用が、PSMA陽性mHSPC患者において臨床的に意義のあるベネフィットをもたらすことを示しているとし、安全性についても177Lu-PSMA-617の既知のプロファイルと一致しており、ADT+ARPIとの併用に関する新たな懸念は認められていない」とまとめた。OS解析は進行中となっている。

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第286回 連立に向けた与野党の最低パフォーマンスのあげく、高市早苗総理大臣の誕生へ 連立参加で維新の社会保障政策案はどこまで実現できる?

「野球史上最高のパフォーマンス」と日本政治史上最低レベルのパフォーマンスこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ロサンゼルス・ドジャースが本拠地でミルウォーキー・ブルワーズを破りワールドシリーズ進出を決めたナショナル・リーグ優勝決定シリーズ第4戦、すごかったですね。大谷 翔平選手は投打の二刀流で先発出場、投げては6回0/3を2安打無失点、10奪三振の快投。打っては先頭弾、場外弾を含む3本塁打を放ちました。漫画や映画でもありえないような異次元の大活躍に、米国CBSスポーツ電子版は「野球史上最高のパフォーマンス(the greatest single-game performance in baseball history)」と称賛しました。さて、日本政治の歴史の中でも与野党含め多くの党が最低レベルのパフォーマンスを見せ、心底うんざりした連立協議、政界再編劇ですが、10月20日、自民党と日本維新の会が連立政権合意書を取り交わし、高市 早苗総理大臣が誕生することになりました(10月20日現在)。公明党が自民党との連立政権離脱を表明してから10日あまり、この間、「大義」「大義」と叫びながら、結局、国民は二の次で自分たちの選挙のことしか考えていない国会議員の言動を見て、維新の吉村 洋文代表が自民党に突きつけた「国会議員定数の1割削減」はぜひとも実現してもらいたいと思った国民は少なくないでしょう。「比例区だけ削減」という案には問題もありそうですが、ひょっとしたらこれで、日本維新の会の党勢は一気に強まるかもしれません。維新、連立政権合意書で「3党合意」を確実に履⾏することを自民党に求める10月20日に交わされた自民党との連立政権合意書には、社会保障政策について、「25年通常国会で締結したいわゆる『医療法に関する3党合意書』および『骨太方針に関する3党合意書』に記載されている医療制度改革の具体的な制度設計を25年度中に実現しつつ、社会保障全体の改革を推進することで、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指す」と書かれています。そして、2025年度中に具体的な骨子について合意し、2026年度中に具体的な制度設計を行い順次実行するという項目が13項目列挙されています。13項目は、保険者の権限・機能の強化、都道府県の役割強化、病院機能の強化、大学病院機能の強化、高度機能医療を担う病院の経営安定化など、まあ誰もが考えそうな政策がほとんどですが、中には保険財政健全化策推進(インフレ下での医療給付費の在り方と、現役世代の保険料負担抑制との整合性を図るための制度的対応)、患者の声の反映およびデータに基づく制度設計を実現するための中央社会保険医療協議会の改革、医療費窓口負担に関する年齢によらない真に公平な応能負担の実現など、いわゆる「現役世代」を重視したエッジの効いた政策も並んでいます。維新はかねてより、現役世代の社会保険料の負担を軽減するための社会保障改⾰として、「⼀般病床・療養病床・精神病床の余剰な約11万床の削減」「OTC類似薬への保険給付の⾒直し」「地域フォーミュラリの全国展開」などの政策を掲げてきました。今年6⽉13⽇に公表された「⾻太⽅針2025」の策定に当たっては、6⽉6⽇に⾃⺠・公明・維新による「3党合意」が行われ、現在、3党で協議が進んでいることになっています(「270回 『骨太の方針2025 』の注目ポイント(後編) 『 OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し』に強い反対の声上がるも、『セルフメディケーション=危険』と医療者が決めつけること自体パターナリズムでは?」参照」。連立政権合意書にある「骨太方針に関する3党合意書」がそれに当たります。その具体的な内容を今一度おさらいしておきましょう。●自民党、公明党、日本維新の会の3党が6月11日に合意した社会保障改革案1.OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し2.新たな地域医療構想に向けた病床削減3.医療DXを通じた効率的で質の高い医療の実現4.地域フォーミュラリの全国展開5.現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底6.生活習慣病の重症化予防とデータヘルスの推進※以上6項目のうち、「OTC類似薬」「病床削減」「電子カルテ(医療DX)」の3項目には検討の期限と数値目標が明記された。「現役世代」を重視する維新に対し、高齢者の支持率が比較的高く日本医師会という強力な支持団体も有する自民党との間で、この3党合意の社会保障制度改革がどこまで進むかは依然未知数です。しかし、連立政権が誕生したことでその圧力は相当強まるに違いありません。10月17日付のメディファクスは、「維新は社会保障について、これまでの3党協議(自民、維新、公明党)に 続く形で、自民と『第2ステージ』の協議に入りたい構えだ。 協議後の会見で、維新の藤田 文武共同代表は『第2ステージの本丸は構造改革』と説明。 構造改革は『既得権の抵抗が非常に大きい』と述べ、真正面から取り組むべきだとした」と書いています。「既得権の抵抗」とは日本医師会などのことだと思われます。日医にとっては、今まで考えられなかったような厳しい政権が誕生することになるわけです。維新が大臣を出さず「閣外協力」とする理由ところで、高市総裁はこれまでの協議で、維新に「閣内協力」を求め、複数の閣僚ポストを用意する意向を示したそうですが、維新側の結論としては、閣僚を出さない「閣外協力」になりました。入閣すると内閣の政策失敗や不祥事に対して閣僚として責任を負うことになるため、連帯責任やイメージ悪化などのリスクを避けたい狙いがあるためとみられます。そもそも閣議決定には大臣の全員一致が必要です。仮に維新の大臣が誕生すれば、維新の基本政策に合致しない政策でも「賛成」しないと罷免されてしまいます。自民党の政策に対して是々非々の対応を行うために閣外協力という形にして、「支持はするが一体化はしない」という立ち位置を確保するのでしょう。その意味では、大臣ポストが欲しかった公明党とは異なる連立の仕方ということになります。OTC類似薬の公的医療保険の適用見直しについての議論スタートそんな連立協議に向けての調整があちこちで行われていた10月16日、厚生労働省は社会保障審議会医療保険部会を開催、3党協議で一番目の項目に挙がったOTC類似薬の公的医療保険の適用見直しについての議論を本格的にスタートさせました。エムスリーなどの報道によれば、この日の議論では健康保険組合連合会からの委員が「やはり保険給付のあり方を見直すべき。(中略)子どもや慢性疾患、低所得者の方については配慮し、広い範囲を対象として追加の自己負担を求める方法や、保険適用の対象から除外する方法などについて具体的な検討を」と発言した一方で、日本医師会からの委員は「保険適用を外すのは時期尚早で反対」として、患者がOTC類似薬を自己判断で服用する危険性、患者や家族の経済的負担の増大、へき地で薬局がない場合に薬が入手できないなどの問題点を挙げたとのことです。「第277回  いよいよ本格化するOTC類似薬の保険外し議論、日本医師会の主張と現場医師の意向に微妙なズレ?(前編)」でも書いた、いつもの日本医師会のロジックですが、相変わらずの頑なさを感じます。OTC類似薬の公的医療保険の適用見直しについては、さらに医療保険部会で議論を継続していくとのことですが、どんな決着を見せるのでしょうか。連立政権合意書に記載された他の社会保障政策も含めて、高市政権での今後の議論の行方が気になるところです。

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AI勤務表は看護の「質」と「満足度」をどう変える?【論文から学ぶ看護の新常識】第36回

AI勤務表は看護の「質」と「満足度」をどう変える?AIが作成した勤務表は、従来の手動作成より優れているのか。Hye Won Kang氏らが行った比較研究により、AIで作成した勤務表に、仕事の質を維持し、職務満足度を向上する効果がある可能性が示された。BMC Nursing誌2025年7月1日号に掲載の報告。仁荷大学病院看護AIスケジューリングシステム(IH-NASS)導入後のシフト看護師の仕事の質と職務満足度研究チームは、仁荷大学病院看護AIスケジューリングシステム(IH-NASS)の導入後の仕事の質を組織・個人の両方の視点から比較し、IH-NASSに対する看護師の認識と仕事の質に焦点を当てて看護師の職務満足度に影響を与える要因を分析した。韓国の三次大学病院でIH-NASSが導入された14病棟のシフト勤務看護師253名が対象となった。従来の手動スケジュール(2022年12月、後ろ向き研究)と、IH-NASSによって作成されたスケジュール(2023年12月、前向き研究)のデータを比較し、看護師の一般特性、IH-NASSに対する認識(利便性、満足度、公平性)や職務満足度を調査・分析した。主な結果は以下の通り。組織の視点:IH-NASSで作成したスケジュールは、従来の手動スケジュールと比較して、日勤勤務の経験1年未満の看護師数が有意に減少した(t=2.70、p=0.018)。個人別の視点:深夜勤-休み-準夜勤(NOE)シフトの数が有意に少なかった(t=2.64、p=0.009)。さらに、2日以上の連続休日(t=-3.78、p<0.001)、2回以上の夜勤後の2日以上の休日(t=-2.13、p=0.034)、土日休み(t=-2.24、p=0.026)、および日曜休み(t=-3.50、p<0.001)が有意に多かった一方、平日の非社交的な時間帯(深夜勤や早朝勤務など)のシフトは少なかった(t=2.74、p=0.007)。職務満足度への影響:シフト勤務看護師の職務満足度に影響を与える要因には、IH-NASSへの満足度、IH-NASSの利便性に対する認識、および不健康な勤務スケジュール下でのNOEシフト回数、過度の眠気、学歴、睡眠時間があげられ、これらが合わさって職務満足度のばらつきの約27%を説明した。AIベースのスケジューリングは、仕事の質を維持しながら、人員配置を最適化し、看護師のポジティブな認識を高め、職務満足度を向上させることができる。今回は、韓国の大学病院で導入されたAI勤務表作成システム(IH-NASS)の導入効果に関する最新論文を紹介します。このAIシステムは、従来、看護師長などが手作業で作成してきた勤務表の限界を克服するために、17年以上の臨床経験を持つ看護師7名とIT専門家2名のチームによって開発されたものです。このシステムの目的は、単なる自動化ではなく、勤務の最適化です。看護師の希望勤務はもちろん、シフトごとの必要人数、次の勤務まで最低14時間の間隔を確保、5日連続勤務後の2日間休日といった健康に配慮した条件がアルゴリズムに組み込まれています。また人員の経験値に偏りが出ないよう、「1年未満」「1~3年」「3年以上」と経験年数ごとにスタッフを分類しています。IH-NASS導入前後の勤務表を比較した結果、日勤における経験1年未満の看護師配置の有意な減少、2日以上の連続休日や、連続夜勤後の2日以上の休日数、土日休みが増加しました。これは、限られた人員数の中でも勤務を最適化することで看護師の生活の質を向上させたと考えられます。また導入後の調査では、「IH-NASSに対する満足度」「利便性」、そして「NOEシフトの少なさ」が看護師の仕事満足度を向上させる要因であることが示されました。手作業での勤務表作成は、多大な時間的コストに加え、公平性の担保が難しいという課題があります。IH-NASSのように個人の希望を反映しつつ、組織として必要な熟練度バランスを客観的に確保するAIは、看護師の業務負担を軽減するだけでなく、不満の矛先がAIに向けられることで、管理者の精神的負担が軽減でき、スタッフ間の無用な軋轢も防げるかもしれません。さらに経験の浅い看護師が日勤に過度に配置されるリスクをAIが管理することで、主要な治療が行われる日勤帯の熟練度バランスが保たれ、部門全体の看護の質や患者の安全性が担保される可能性もあります(もちろん夜間の人員バランスも重要です)。日本でも、看護師向けの勤務表作成サービスいくつかリリースされています。看護師がより良い環境で働き続けるためにも、こうしたテクノロジーが普及することを期待しています。論文はこちらKang HW, et al. BMC Nurs. 2025;24(1):792.

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2型糖尿病の全死亡、亜鉛欠乏で増加

 亜鉛不足が心不全の予後に関連することはいくつかの研究より報告されているが、今回、台湾・Chi Mei Medical CenterのYu-Min Lin氏らは、2型糖尿病患者における亜鉛欠乏が全死亡および心血管系合併症リスクを有意に高めることを明らかにした。 本研究はTriNetXが保有するデータベースを用いて、後ろ向きコホート研究を実施。亜鉛測定が行われていた18歳以上の2型糖尿病患者を亜鉛欠乏群(血清亜鉛<70μg/dL)と対照群(70~120μg/dL)に分類し、傾向スコアマッチング(PSM)を行った。主要評価項目は全死亡および心血管疾患の複合アウトカム(脳血管合併症、不整脈、炎症性心疾患、虚血性心疾患、その他の心疾患[心不全、非虚血性心筋症、心停止、心原性ショック]、血栓性疾患)で、各ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・適格患者2万3,041例のうち亜鉛欠乏患者は9,503例、亜鉛正常値患者は1万3,538例で、PSM後、各群に7,886例が割り付けられた。・対照群と比較した場合、亜鉛欠乏群での全死亡はHR:2.08(95%CI:1.72~2.51、p<0.001)、心血管アウトカムの複合はHR:1.15(95%CI:1.08~1.24、p<0.001)といずれの発生率も高かった。・亜鉛欠乏群では、不整脈(HR:1.20、95%CI:1.10~1.32、p<0.001)、炎症性心疾患(HR:1.54、95%CI:1.07~2.21、p<0.001)、そのほかの心機能障害(HR:1.23、95%CI:1.08~1.40、p<0.001)の発生率も上昇した。 本結果を踏まえ研究者らは、「2型糖尿病患者の管理において、血清亜鉛値をモニタリングし、対処することの潜在的な臨床的重要性を強調する」としている。

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どう診る? 小児感染症-抗菌薬・抗ウイルス薬の使い方

小児感染症の抗菌薬・抗ウイルス薬の使い方に自信がつく! 臨床現場に必携の1冊「小児診療 Knowledge & Skill」第2巻小児科診療において、感染症治療は抗菌薬や抗ウイルス薬の基礎的知識が不可欠である。一方で、感染症には多様なバリエーションがある。エビデンスやガイドラインに忠実に従うだけでは対応が困難な場面に遭遇したときに、どう対応するか?本書は病院で診療する医師がよく遭遇する感染症、とりわけ抗微生物薬による治療が考慮されるものを中心にとりあげた総論にて感染症の診断と治療の基本的なアプローチ、細菌感染症に対する抗菌薬の使い方、新しい診断法や治療をふまえた抗ウイルス薬の使い方を解説各論にて個別の感染症の診断と治療を解説という特色で、各疾患に造詣の深い医師が執筆。トピックスや臨床的な疑問を含め通常の成書よりも一歩踏み込んだ内容とした。単なる知識の羅列ではなく、読者が明日の診療で「どう考え、どう動くか」の手がかりとなるような情報となっている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するどう診る? 小児感染症-抗菌薬・抗ウイルス薬の使い方定価8,800円(税込)判型B5判(並製)頁数368頁発行2025年10月総編集加藤 元博(東京大学)専門編集宮入 烈(浜松医科大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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片頭痛発作の急性期治療と発症抑制の両方に有効な経口薬「ナルティークOD錠75mg」【最新!DI情報】第49回

片頭痛発作の急性期治療と発症抑制の両方に有効な経口薬「ナルティークOD錠75mg」今回は、経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬「リメゲパント(商品名:ナルティークOD錠75mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、わが国で初めての片頭痛の急性期治療および発症抑制の両方を適応とする治療薬です。<効能・効果>片頭痛発作の急性期治療および発症抑制の適応で、2025年9月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>片頭痛発作の急性期治療:通常、成人にはリメゲパントとして1回75mgを片頭痛発作時に経口投与します。片頭痛発作の発症抑制:通常、成人にはリメゲパントとして75mgを隔日経口投与します。<安全性>重大な副作用として、過敏症(頻度不明)があります。その他の副作用として、便秘(1%以上)、浮動性めまい、悪心、下痢、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加(いずれも0.5~1%未満)、上気道感染、尿路感染、単純ヘルペス、前庭神経炎、白血球減少症、好中球減少症、鉄欠乏性貧血、貧血、食欲亢進、うつ病、不眠症、易刺激性、異常な夢、錯乱状態、不安、傾眠、片頭痛、頭痛、錯感覚、頭部不快感、味覚不全、ドライアイ、回転性めまい、動悸、高血圧、潮紅、呼吸困難、腹痛、嘔吐、腹部不快感、胃食道逆流性疾患、肝機能異常、脂肪肝、発疹、そう痒症、ざ瘡、多汗症、蕁麻疹、頚部痛、背部痛、頻尿、疲労、倦怠感、口渇、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、体重増加、肝酵素上昇、血中クレアチニン増加、糸球体濾過率減少、肝機能検査値上昇、血圧上昇、心電図QT延長、サンバーン(いずれも0.5%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、片頭痛発作の急性期治療および発症抑制に用いられます。「前兆のない片頭痛」および「前兆のある片頭痛」のどちらにも使用できます。2.発作時には、頓用で服用します。ただし、1日に1錠を超えての服用はできません。3.発症を予防するには、隔日(2日に1回)、決まった時間に服用します。この薬を服用した日は、急性期治療として追加服用はできません。服用前であれば、急性期治療のために頓用で服用できますが、同日中に発症予防のための追加服用はできません。服用日以外の日に発作が生じた場合は、1日1錠まで服用ができます。<ここがポイント!>片頭痛は代表的な一次性頭痛の1つで、本邦における年間有病率は約8%(前兆のない片頭痛が5.8%、前兆のある片頭痛が2.6%)と報告されています。片頭痛は、日常生活に大きな支障を来す疾患であり、多くの患者が家事や仕事の生産性低下に悩まされています。片頭痛の主な誘因としてはストレスが最も多く、その他に女性ホルモンの変動、空腹、天候の変化、睡眠不足または過眠、特定の香水やにおいなどが挙げられます。片頭痛の発症機序は完全には解明されていませんが、「三叉神経血管説」が広く受け入れられています。この説では、何らかの原因で三叉神経を構成する無髄線維(C線維)からカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が放出され、脳血管の拡張や神経の炎症を引き起こすことで痛みが生じると考えられています。リメゲパントは、CGRP受容体拮抗薬であり、CGRPによる血管拡張や神経原性炎症の誘導を阻害することで、片頭痛に伴う痛みや諸症状を軽減します。本剤の特徴は、わが国で初めて片頭痛発作の急性期治療および発症抑制の両方に適応を有する点です。急性期治療には片頭痛発作時に頓服で服用し、発症抑制には隔日で服用します。また、本剤は薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛:MOH)を誘発する可能性が低いと考えられているため、MOHの発症リスクを有する患者、またはMOHの既往のある患者について、添付文書上で特別な注意喚起をしていません。急性期治療に関しては、中等度または重度の片頭痛を有する日本人患者を対象とした国内第II/III相試験(BHV3000-313/C4951022試験)において、主要評価項目である投与2時間後の疼痛消失割合は、本剤75mg群で32.4%、プラセボ群で13.0%でした。群間差(本剤群-プラセボ群)は、19.4%(95%信頼区間[CI]:12.0~26.8)で本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました(p<0.0001、Mantel-Haenszel検定)。一方、発症抑制に関しては、日本人患者を対象に片頭痛の予防療法を評価した国内第III相試験(BHV3000-309/4951021試験)において、主要評価項目である二重盲検期の最後の4週間(Week 9~12)での1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化量は、本剤群で-2.4日(95%CI:-2.93~-1.96)、プラセボ群で-1.4日(95%CI:-1.87~-0.91)でした。両群間の差は-1.1日(95%CI:-1.73~-0.38)であり、本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました(p=0.0021、反復測定線形混合効果モデル)。

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産後出血の転帰を予測する臨床マーカーは?/Lancet

 従来閾値よりも低値の失血量と血行動態異常の兆候の組み合わせで、産後出血による死亡または生命を脅かす合併症のリスクがある女性を正確に予測でき、産後出血の早期診断と治療のサポートが可能であることを、WHOのIoannis Gallos氏らWHO Consortium on Postpartum Haemorrhage Definitionが、被験者個人データを用いたメタ解析の結果で示した。産後出血(産後の過多出血)は、世界中で母体死亡・合併症の要因になっている。しかしながら、過度の出血の最適な定義や母体の有害アウトカムを確実に予測する臨床マーカーについて、世界的なコンセンサスはなかった。Lancet誌オンライン版2025年10月4日号掲載の報告。5つの臨床マーカーの予後予測精度を評価 研究グループは、母体の死亡や重篤な合併症に関する産後出血の臨床マーカーの予後予測精度を評価した。適格としたデータセットは、WHOの呼び掛けによる募集データと、PubMed、MEDLINE、Embase、Cochrane LibraryおよびWHO trial registriesのシステマティックな検索(データベース開始から2024年11月6日まで)を通じて特定した。 客観的測定に基づく失血量または血行動態不安定性に関するその他の臨床マーカーを有する被験者が200例以上含まれ、対象の臨床アウトカムが少なくとも1つ以上報告されている研究を適格とした。 すべての適格研究について被験者の個人データ(IPD)を求め、各データセットについて、母体死亡または重篤な合併症(輸血、外科的介入またはICU入室)の複合アウトカムに関する5つの臨床マーカー(失血量、脈拍数、収縮期血圧、拡張期血圧、ショック指数)の予後予測精度を算出した。 2レベル混合効果ロジスティック回帰モデルを用いてメタ解析を行い、2変量ノーマルモデルを用いて要約精度を推定した。 臨床マーカーと閾値の選択は、WHO専門家コンセンサスプロセスに基づき、予後の特異度(50%以上が望ましい)よりも予後の感度(80%超が望ましい)の最大化に重点を置いて評価が行われた。失血量と血行動態異常の兆候の組み合わせで予測能は改善 33データセットが適格の可能性があり、18データセットのIPDデータの入手に成功した。このうち12データセットの全データ(女性31万2,151例)を解析した。 従来閾値の500mLは失血量の要約予後予測感度が75.7%(95%信頼区間[CI]:60.3~86.4)であり、複合アウトカムの予後予測特異度は81.4%(95%CI:70.7~88.8)であった。 望ましい予後の感度(80%超)の閾値は300mLで達成されたが(83.9%、95%CI:72.8~91.1)、特異度は低かった(54.8%、38.0~70.5)。 予測能は、失血量の閾値500mL未満(≧300mL~≧450mL)と血行動態異常の兆候(脈拍数>100回/分、収縮期血圧<100mmHg、拡張期血圧<60mmHg、ショック指数>1.0のいずれか)の組み合わせ、または失血量500mL以上のいずれかを用いた決定ルール(複合ポイントスコアリングシステム)で、感度(範囲:86.9~87.9%)と特異度(66.6~76.1%)の精度およびバランスがより改善された。すなわち、失血量閾値450mLのルール3(複合ポイントスコアリングシステムで2点以上[失血量450~499mLは1点、その他血行動態異常の兆候は1点、失血量500mL以上は2点])において感度86.9%、特異度76.1%、失血量閾値300mLのルール3(同2点以上[失血量300~499mLは1点、その他血行動態異常の兆候は1点、失血量500mL以上は2点])において感度87.9%、特異度66.6%であった。

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「オピオイド減量」が推進?当事者の“声”が示したこれからの疼痛ケア【論文から学ぶ看護の新常識】第35回

「オピオイド減量」が推進?当事者の“声”が示したこれからの疼痛ケア重症患者の疼痛・鎮静に中心的に使用されているオピオイドには、多くの副作用や退院後の慢性的な使用、依存症のリスクが指摘されている。Lize-Mari Du Toit氏らの研究結果から、「オピオイド曝露の低減」と「補助的な疼痛管理戦略の活用」が患者や家族、ならびに医療者にとって共通の重要なアウトカムであることが示された。Intensive and Critical Care Nursing誌オンライン版2025年6月10日号に掲載の報告。ICUにおけるオピオイド曝露低減に関するステークホルダーの視点:修正デルファイ法による調査研究チームは、重症成人患者におけるオピオイド減量および鎮痛補助薬の使用に関して、患者にとって重要な主要アウトカムを特定することを目的に、修正デルファイ法を用いた調査を行った。ステークホルダー(利害関係者)である患者、家族、医療提供者を対象に、2回のアンケート調査と1回のディスカッションを行い、今後のランダム化比較試験に向けて、患者にとって重要な主要アウトカム、評価時点、および適切な評価ツール/定義を特定、評価した。主な結果は以下の通り。「オピオイドの減量」は、2回のアンケート調査を通じて、参加者の82%により患者にとって重要な主要アウトカムであると特定された。2回のアンケート調査から、患者にとって最も重要と評価されたアウトカムは「死亡率」と「疼痛管理」であった。アンケート調査およびディスカッションからさまざまなテーマが浮上し、ICUの疼痛管理に対して、薬理学的および非薬理学的な補助療法の両方が好まれることが示された。研究全体を通して特定された10個の主要なテーマは、「非薬理学的な疼痛管理戦略」「地域ケア提供者の関与」「家族/介護者の関与」「患者教育」「コミュニケーションの障壁」「メンタルヘルスの評価」「オピオイド曝露歴」「オピオイド依存/中毒」「不適切なQOLの評価」「オピオイドの有害反応/副作用」であった。意見は、臨床的または非臨床的な背景によって多様であった。参加者は、「オピオイド曝露の低減」と「補助的な疼痛管理戦略の活用」が、患者にとって極めて重要なアウトカムであることに合意した。オピオイド代替療法と、薬理学的および非薬理学的介入の有効性と安全性を検討するためには、さらなる研究が求められる。本研究の最も重要な点は、ICUという専門性の高い領域において、患者さんやご家族の「声」を可視化したことにあります。特に、多様なステークホルダーを巻き込むアプローチでありながら、インタビューなどの質的研究特有の解釈の主観性に依存せず、修正デルファイ法によって意見を体系的に集約し、科学的な客観性を与えている点に、研究デザインとしての秀逸さを感じます。その結果、医療者が「死亡率」や「疼痛管理」といった臨床指標を最優先する一方で、患者さんやご家族の個別回答の中では、「オピオイド曝露低減」に関して、自らの体験からネガティブな体験が語られています。これは、ICUでの治療が単に「命を救う」だけでなく、退院後の生活の質や依存リスクといった、その後の人生全体を見据えたものであるべきだという、当事者ならではの切実な視点を浮き彫りにした非常に示唆に富んだ結果です。この医療者と患者・家族との間の視点の違いを埋めるのが、本研究でも示唆されている「コミュニケーション」と「教育」です。「なぜ今オピオイドを使うのか」、「代替案にはどのような選択肢があるのか」、そして「退院後に注意するべきことは何か」。こうした情報を医療者が丁寧に言語化し、患者・家族と共有する姿勢とプロセスが、彼らの不安を和らげ、治療への信頼を築く上で不可欠と言えるでしょう。「命を救う」ことと「その後の人生の質を守る」こと。この二つの目標を高いレベルで両立させるために、私たちはステークホルダー全員の視点を尊重した対話を続ける必要があります。本研究はその重要な第一歩を示してくれました。論文はこちらDu Toit LM, et al. Intensive Crit Care Nurs. 2025 Jun 10. [Epub ahead of print]

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国が進める医療DX、診療や臨床研究の何を変える?~日本語医療特化型AI開発へ

 内閣府主導の国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」では、分散したリアルワールドデータの統合とデータに基づく医療システムの制御を目指し、日本語医療LLM(大規模言語モデル)や臨床情報プラットフォームの構築、患者・医療機関支援ソリューションの開発などを行っており、一部はすでに社会実装が始まっている。2025年9月3日、メディア勉強会が開催され、同プログラム全体のディレクターを務める永井 良三氏(自治医科大学)のほか、疾患リスク予測サービスの開発および受診支援・電子カルテ機能補助システムの開発を目指すグループの代表を務める鈴木 亨氏(東京大学医科学研究所)・佐藤 寿彦氏(株式会社プレシジョン)が講演した。厚労省主導の医療DXとの関係、プログラムの全体像 厚生労働省主導の医療DXが、診療行為に必要最低限の3文書(健康診断結果報告書、診療情報提供書、退院時サマリー)6情報(傷病名、感染症、薬剤アレルギーなど、その他アレルギーなど、検査、処方)に絞って広く全国規模で収集・利活用(全国医療情報プラットフォームの創設、電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX)を目指すものであるのに対し、本プログラムではデータ取得対象は限定されるものの電子カルテデータに加えPHR、介護データ、医療レセプトや予後データなど含めたデータを収集し、臨床情報プラットフォーム構築や医療機関支援ソリューションの開発などを行うことを目的としている。2つのプロジェクトは、将来的には相互に連携していくことが期待される。 具体的には、SIPでは大きく以下の5つの課題が設定されており、医療機関・大学・関連企業からそれぞれ研究開発責任者が選任されている1)。課題A:研究開発支援・知識発見ソリューションの開発(臨床情報プラットフォーム構築と拠点形成、PHRによる突然死防止・見守りサービス開発など)課題B:患者・医療機関支援ソリューションの開発(受診支援・電子カルテ機能補助システムの開発、症例報告・病歴要約支援システム開発を通じた臨床現場支援など)課題C:地方自治体・医療介護政策支援ソリューションの開発課題D:先進的医療情報システム基盤の開発(ベンダーやシステムの垣根を超えた医療情報収集、僻地診療支援のためのクラウド型標準電子カルテサービスの開発など)課題E:大容量リアルタイム医療データ解析基盤技術の開発(大規模医療文書・画像の高精度解析基盤技術の開発) 同プログラムは2023年からの5年計画で進められており、可能なものから随時社会実装を進めつつ、今後は医療データプラットフォームの中核的病院への導入などを目指している。医療テキスト800億トークンを学習させた日本語医療LLMを構築 さらに令和5年度補正予算により生成AIの活用プロジェクトが開始され、日本語医療LLMの開発が進み、上記の各プロジェクトにおける応用が始まっている。現在世界中で使われている主なLLMでは、たとえばOpenAIのGPT-3の学習に使われた言語として日本語は0.11%に過ぎず、これらのLLMをベースに医療LLMを構築・利用した場合、・診断を行うLLMにおいて、日本人の症例や日本の疫学ではなく、英語圏の症例や疫学がベースに出力される・治療法を推奨するLLMにおいて、日本の医療/保険制度や法律に合わない出力がされるといった問題が生じうる。また、データ主権の観点からも、現在各国で政府主導の自国語LLM開発が進んでいる背景がある。 国立情報学研究所の相澤 彰子氏らは、さまざまな実臨床での利用に展開するためのベースモデルとして、医療テキスト800億トークンを学習させた日本語医療LLMのプレビュー版をすでに構築、医師国家試験で77~78%のスコア(注釈:尤度ベースと呼ばれる正解の算出方法に基づく)を達成した。開発したモデルは、推論時に利用するパラメータ数が220億と比較的軽量であるにも関わらず、700億クラスの海外モデルに匹敵する性能を示した。 この医療LLMはSIPの各プロジェクトへの組み入れが始まっており、診療現場の会話からカルテを下書きし鑑別疾患を提示するシステムや、感染症発生届の下書き支援システムなどの開発が行われている。また、計算機科学者と医師がタッグを組む形で、循環器用医療LLM、がん病変CT画像用医療LLM、健診支援医療LLMの開発がそれぞれ進められているという。電子カルテを活用した臨床情報プラットフォームや診断困難例サーチシステムがすでに始動 電子カルテには、診療録、検査データ、手術レポートなどの多くの情報が集積しているが、それらを匿名化・統合した状態で臨床研究に活用するには人的・時間的に大きな負担がかかっていた。SIPの課題A1として取り組まれている「臨床情報プラットフォーム構築による知識発見拠点形成」では、CLIDAS研究2)と称して多施設から複数のモダリティの診療データを標準化・収集するシステムを構築。国内11大学・2ナショナルセンターの電子カルテはすでに統一・連携されている。循環器領域では、PCI後のスタチン強度と予後の関係について3)など、CLIDASデータを用いた研究成果がすでに発表、論文化されているものもあり、今後も本データの臨床研究への活発な活用が期待される。 鈴木氏が責任者を務める課題A-3「臨床情報プラットフォームと連携したPHRによるライフレコードデジタルツイン開発」グループでは、NTTグループ約10万人の健診データ・約15年の追跡データを活用し、東京大学医科学研究所のスーパーコンピュータで疾患リスク予測モデルのアルゴリズム構築に着手。健診データを元に将来の疾患リスク(糖尿病・高血圧症・脂質異常症・心房細動)、検査や予防法の推奨などを提示する疾患リスク予測サービスの開発を行っている。将来的には、AIを用いた保健指導への展開も視野に開発中という。 佐藤氏が責任者を務める課題B-2「電子問診票とPHRを用いた受診支援・電子カルテ機能補助システムの開発」グループでは、日本内科学会地方会のデータ化された症例報告(約2万5千例)を基に、鑑別診断の際に参考となる疾患や病態を検索できるシステム(診断困難例ケースサーチ J-CaseMap)をすでに社会実装済で、日本内科学会会員は無料で利用できる。そのほか、電子カルテと連携した知識支援チャットボット(富士通と連携)や、再診時電子問診票、医療特化AI音声認識システムが開発中となっている。

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複数種類のがんを調べる血液検査、有用性を判断するには時期尚早

 血液サンプルを用いて複数種類のがんの有無を検査する多がん検出(multicancer early detection;MCD)検査(以下、MCD検査)は、目に見えない腫瘍を発見できる可能性があるため、大きな注目を集めている。しかし、MCD検査によるスクリーニングのベネフィットを評価した、完了した対照試験は存在せず、この検査法の有効性を判断するには時期尚早であるとする研究結果が発表された。米RTI-ノースカロライナ大学Evidence-based Practice Centerの最高医療責任者代理であるLeila Kahwati氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に9月16日掲載された。 MCD検査は、未検出の腫瘍から血液中に放出されたDNAやタンパク質、その他の生化学物質を検出することで、がんの有無を判定する。MCD検査のいくつかは、医師の診断書があれば製造元からオンラインで注文できる。ただし、いずれも米食品医薬品局(FDA)の承認を受けていない。 研究グループは、がんによる死亡の最大70%は、スクリーニング検査が存在しない悪性腫瘍によって引き起こされていることを考慮すると、このような検査が注目を集めるのは不思議ではないと話す。本研究の付随論評を執筆した、米フォックス・チェイスがんセンターの医学部長であるDavid Weinberg氏によると、検査費用は通常、保険ではカバーされず、約950ドル(1ドル148円換算で約14万円)かかるという。 Kahwati氏らは今回、無症状の人を対象にMCD検査の有効性を調べた20件の対照研究(対象者の総計10万9,177人)を基に、MCD検査の有益性、正確性、有害性について評価した。これらの研究では、19種類のMCD検査の正確性について報告されていた。20件のうち7件の研究(バイアスリスク:高5件、不明2件)は、無症状者を1年間追跡して将来のがん発症に対する予測精度を評価していた。残りの研究は、臨床的に確定したがん患者と健康な対照者を比較する症例対照研究でMCD検査の診断精度を評価したもので、いずれもバイアスリスクは高かった。 解析の結果、検査の正確性はがんの種類や参加者、研究デザインにより大きく異なり、感度は0.095〜0.998、特異度は0.657〜1.0、総合的な診断精度の指標であるROC曲線下面積(AUC)は0.52〜1.0の幅があった。有害性について報告していた研究は1件のみであり、その情報も限定的であった。 Kahwati氏らは、「このシステマティックレビューでは、MCD検査によるスクリーニングががんの検出、死亡率、生活の質(QOL)に与える影響を検討した、完了した対照研究は確認されなかった。研究の限界と不明確または矛盾した結果が主な原因で、MCD検査の正確性と有害性に関するエビデンスは不十分であることが分かった」と述べている。 さらにKahwati氏らは、「最も重大な限界点は、MCD検査の直接的なベネフィットを評価する、完了した対照研究がないことだ」と指摘している。これは、検査によるベネフィットが、偽陽性の結果によりもたらされる潜在的な有害性を上回るかどうかが明らかではないことを意味する。例えば、健康な人に偽陽性の結果が出た場合、がんではないとの確認が取れるまで、誤った検査結果によって引き起こされた恐怖や不安に耐えながら、より侵襲的な検査を受ける必要が生じる。同氏らは、「MCD検査によりがんの種類を正確に特定できる可能性はあるが、正確性のエビデンスだけでは、この検査が現在推奨されているスクリーニング検査よりも大きなメリットがあることを示したことにはならない」と記している。 研究グループとWeinberg氏は、MCD検査が広く推奨される前にその有用性を確認するさらなる研究が必要だとの見解を示している。またWeinberg氏は、「疾患による死亡率は着実に減少しているにもかかわらず、がんは依然として、米国成人の死因として2番目に多い。MCD検査のがん予防効果には期待を持てるが、真の臨床的有用性を示すデータは不十分であり、その有用性と潜在的な有害性のバランスをどのように評価すべきかが課題となっている。迅速な対応を求める市場からの圧力はあるが、最善の判断を下すにはそのようなデータが必要であり、それが得られるまでは研究環境以外での試験を正当化することは困難だ」と述べている。

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第31回 【米政府閉鎖】トランプ氏が狙う科学界の破壊、大量解雇。日本への影響は?

アメリカで、連邦政府の一部機関が閉鎖(シャットダウン)するという、日本では考えられない事態が再び起きています。これは、議会での与野党対立によって新年度の予算が成立せず、政府機関の活動資金が枯渇するために起きる現象です。しかし、今回、トランプ政権下で発生した政府閉鎖は、これまでの単なる政治的駆け引きとは一線を画します。「戦いを楽しむ」大統領の下、科学技術分野において「異次元の危機」が迫っていると、専門家たちは深刻な警鐘を鳴らしています。今回の記事では、なぜこの政府閉鎖が起き、そしてそれが世界の科学界や日本にもどのような影響を及ぼすのかを、考えていきます。なぜ異例の事態に?「戦いを楽しむ」トランプ氏の政治的思惑そもそも政府閉鎖は、大統領府と議会の間で予算案が合意に至らないことで発生します。しかし、過去の閉鎖が政治的妥協点を探るプロセスの一部であったのに対し、今回の事態はトランプ氏自身の政治的意図が色濃く反映されているようです。複数の報道分析によると、トランプ氏は政府閉鎖という混乱状態を、自身の政治的利益のために積極的に「武器化」していると指摘されています1,2)。彼にとってこの事態は、単なる不都合な出来事ではなく、むしろ好機なのです。その狙いは大きく3つあるとみられています。第一に、敵対者である民主党への攻撃です。トランプ氏は、政府閉鎖を利用してニューヨークやカリフォルニアといった民主党の支持基盤が強い州(ブルーステート)のプロジェクト資金を意図的に削減するなど、政敵を罰するための手段として活用しています。SNSで民主党幹部を揶揄する動画を投稿するなど、政治闘争そのものを楽しんでいる側面さえあります。第二に、「行政国家の破壊」という公約の実行です。トランプ氏はかねてより、「小さな政府」を掲げ、連邦政府の規模縮小を訴えてきました。今回の閉鎖は、単なる業務の一時停止にとどまらず、連邦職員を恒久的に「大量解雇」する絶好の機会と捉えています。大統領自身が「閉鎖するなら解雇をしなければならない」と公言しており、これは過去のどの政府閉鎖にもみられなかった異例の脅威です。そして第三に、自身の支持基盤へのアピールです。既存の政治や行政システムに対する不満を持つ支持者に対し、断固たる態度で「既得権益と戦う強いリーダー」というイメージを植え付けています。2019年の閉鎖時には職員を「偉大な愛国者」と称賛した彼が、今回は冷徹に解雇を口にする姿は、その政治姿勢がさらに先鋭化したことを物語っています。停止する世界の頭脳――科学界を襲う脅威このトランプ氏の政治的思惑の最大の犠牲者の一つが、科学界です。政府閉鎖により、米国の科学技術の中枢を担う機関が軒並み機能不全に陥っています3)。研究の停止アメリカ国立衛生研究所(NIH)では職員の約78%が一時帰休となり、基礎研究や新たな患者の受け入れが停止。NASAでは83%の職員が対象となり、人工衛星の維持など最低限の業務しか行えません。これにより、進行中の重要な研究が中断され、新たな研究助成金の承認も完全にストップしています。PubMedの更新停止と世界の混乱とくに深刻なのが、NIHが運営する世界最大の医学・生物学文献データベース「PubMed」の更新が停止していることです。世界中の研究者や医師が、最新の論文や治療法を調べるために毎日利用するこの巨大な「知のインフラ」が機能しなくなることは、医療の進歩そのものを遅らせるに等しい行為です。この事態はSNS上でも瞬く間に広がり、「科学の営みを根底から揺るがす暴挙だ」「最新の知見にアクセスできなければ、研究も臨床も成り立たない」といった、世界中の研究者からの悲鳴や怒りの声が上がっています。知的資産の永久喪失そして何より恐れられているのが、前述の「大量解雇」の脅威です。もしこれが科学機関で実行されれば、各機関が何十年もかけて蓄積してきた専門知識や技術、データといった「組織知」が永久に失われることになります。これは、単なる予算削減とは次元の違う、アメリカの科学技術力に対する壊滅的な打撃となりかねません。対岸の火事ではない――日本に及ぶシャットダウンの深刻な影響これらのアメリカ国内の混乱は、決して対岸の火事ではありません。グローバルに連携する現代の科学技術分野において、日本も間接的な影響を受ける可能性があります。日本は、JAXAとNASAによる宇宙開発や、大学・研究機関とNIHによる生命科学研究など、米国の政府機関と多くの共同研究プロジェクトを進めています。米国の担当機関の機能が停止すれば、これらのプロジェクトは遅延、あるいは中断を余儀なくされるでしょう。データの共有が滞り、予定されていた会議が中止になることで、研究全体のスケジュールに大きな狂いが生じます。さらに、米国の科学機関は世界の基礎研究で中心的な役割を担っているため、その活動停滞は世界の科学全体の進歩を遅らせ、長期的に見れば日本の研究開発戦略にも影を落とします。加えて、政府閉鎖が長引けば米国の経済成長が鈍化し、世界経済を通じて日本の経済や株価にも悪影響が及ぶ可能性も否定できません4)。今回の米政府閉鎖は、単なる国内の政治対立にとどまらず、世界の科学技術の未来と国際協力体制、そして日本にも影響を及ぼしかねない重大な問題なのです。 参考文献・参考サイト 1) BBC. Why has the US government shut down and what does it mean? 2025 Oct 3. 2) Chris Hayes: Trump is using the shutdown to govern like a king. MSNBC.com. 2025 Oct 2. 3) Garisto D. This US government shutdown is different: what it means for science. Nature. 2025 Oct 1. [Epub ahead of print] 4) Tollefson J. How a US government shutdown could disrupt science. Nature. 2023 Sep 28.

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喫煙は2型糖尿病のリスクを高める

 喫煙者は2型糖尿病のリスクが高く、特に糖尿病になりやすい遺伝的背景がある場合には、喫煙のためにリスクがより高くなることを示すデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のEmmy Keysendal氏らが、欧州糖尿病学会年次総会(EASD2025、9月15~19日、オーストリア・ウィーン)で発表した。Keysendal氏は、「インスリン作用不足の主因がインスリン抵抗性の場合と分泌不全の場合、および、肥満や加齢が関与している場合のいずれにおいても、喫煙が2型糖尿病のリスクを高めることは明らかだ」と語っている。 この研究では、ノルウェーとスウェーデンで実施された2件の研究のデータを統合して解析が行われた。対象は2型糖尿病群3,325人と糖尿病でない対照群3,897人であり、前者は、インスリン分泌不全型糖尿病(495人)、インスリン抵抗性型糖尿病(477人)、肥満に伴う軽度の糖尿病(肥満関連糖尿病〔693人〕)、加齢に伴う軽度の糖尿病(高齢者糖尿病〔1,660人〕)という4タイプに分類された。 解析の結果、喫煙歴のある人(現喫煙者および元喫煙者)は、喫煙歴のない人よりも前記4種類のタイプ全ての糖尿病リスクが高く、特にインスリン抵抗性型糖尿病との関連が強固だった。具体的には、インスリン分泌不全型糖尿病は喫煙によりリスクが20%上昇し、肥満関連糖尿病は29%、高齢者糖尿病は27%のリスク上昇であったのに対して、インスリン抵抗性型糖尿病に関しては2倍以上(2.15倍)のリスク上昇が認められた。また、インスリン抵抗性型糖尿病の3分の1以上は、喫煙が発症に関与していると考えられた。その他の3タイプでは、発症に喫煙の関与が考えられる割合は15%未満だった。 さらに、ヘビースモーカー(タバコを1日20本以上、15年間以上吸っていることで定義)ではより関連が顕著であり、インスリン抵抗性型糖尿病は喫煙によって2.35倍にリスクが高まり、インスリン分泌不全型糖尿病は52%、肥満関連糖尿病は57%、高齢者糖尿病は45%のリスク上昇が認められた。このほかに、遺伝的にインスリン分泌が低下しやすい体質の人でヘビースモーカーの場合は、喫煙によりインスリン抵抗性型糖尿病のリスクが3.52倍に高まることも示された。 これらの結果についてKeysendal氏は、「われわれの研究結果は2型糖尿病の予防における禁煙の重要性を強調するものである。喫煙と最も強い関連性が認められた糖尿病のタイプは、インスリン抵抗性を特徴とするタイプだった。これは、喫煙がインスリンに対する体の反応を低下させることで、糖尿病の一因となり得ることを示唆している」と述べている。また、「禁煙によって糖尿病リスクをより大きく抑制することのできる個人を特定する際に、遺伝的背景に関する情報が役立つと考えられる」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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英語論文のさらなる探索サポートツール【タイパ時代のAI英語革命】第9回

英語論文のさらなる探索サポートツールこれまで、リサーチクエスチョンや論文検索の方法について説明してきましたが、今回はさらに一歩進んだ「医学英語論文に関連するAIツール」をご紹介します。とくに、先週までのさまざまな方法を使って選定した論文を「さらにどう活用するか?」「その関連文献をどう深掘りしていくか?」という課題に対して、視覚的・直感的なアプローチを可能にしてくれるのが、以下で紹介するAIツールです。これらのツールを使えば、「英語を読む」より先に「見る」ことでハードルがぐっと下がり、英語論文への理解もよりスムーズに進められるようになるはずです。1. ResearchRabbit:論文の関連性を視覚的に評価する概要と特徴英語論文の検索は「タイトルを見てもよくわからない」「アブストラクトを読むのが大変」など、最初の一歩のハードルが高いと感じる方も多いかもしれません。また、「楽しく論文検索をしたい」という方にも、ResearchRabbit(リサーチ・ラビット)は良いツールです。ResearchRabbitは、英語論文を探索するうえで、とくに「次に何を読むべきか」を考えるときに大きな助けとなるツールです。従来の論文検索では、キーワードを入力して一覧表示された文献を一つひとつクリックしていく必要がありましたが、ResearchRabbitでは論文同士のつながりを視覚的に「見える化」してくれる点が最大の特徴です。類似の機能を持つAIツールは他にも存在しますが、現時点ではResearchRabbitが最も高機能なツールといえるでしょう。しかも、現在(2025年9月時点)は、すべての機能が無料で利用可能です。使い方このツールの魅力は、視覚的に研究の流れを把握できる点にあります。ウェブサイトや論文情報は英語対応のみですが、操作自体はそこまで複雑ではありません。まず、サイト(https://www.researchrabbit.ai/)から、アカウントを作成します。ログイン後、「New Collection」を選択して、好きな名前のフォルダー(collection)を作成します。下の画像では、一例で「1」というフォルダーを作ってみました。そしてAdd Papersをクリックします。画像を拡大するまずは、気になる1本の論文を入力します(タイトル、DOI、PubMed IDなどが検索利用可能です)。すると、その論文を中心として、関連文献が下のネットワーク図のように視覚的に表示されます。画像を拡大するこの図では、各論文が「点」として示され、点と点を結ぶ「線」が論文間の関係性を表します。その論文がどの文献を引用しているか、またはどの文献に引用されているかといった情報が一目でわかります。このネットワーク図の優れている点は、マウスとクリック操作で自由に動かし、特定の論文をクリックすると、アブストラクトの表示や原文へのリンクにすぐアクセスできることです。さらに、同じ著者の他の論文著者間の関係性(共同研究など)といった情報まで直感的に探索できます。たとえば、ある論文の周囲にたくさんの線でつながっている文献があれば、それはその分野で注目されている中核的な論文である可能性があります。また、最近の論文が急に増えている場合には、「この研究分野は今、盛り上がっているのだな」といった研究トレンドを感じ取ることも可能です。唯一気になる点としては、使える機能が非常に多く自由度が高い分、操作に迷うこともあるかもしれません。また、クリックを繰り返していくと次々と新しい情報が表示されるため、慣れるまで時間がかかる可能性があります。2. Connected Papers:とにかく簡単! ログインなしで論文マップが見えるツール概要と特徴ResearchRabbitほどの多機能さは求めないけれど、「もっと気軽に」「もっとシンプルに」英語論文を探索したい。そんな方にぴったりなのが、Connected Papersというツールです。このツール最大の魅力は、ログイン不要ですぐに使えること、そして操作が非常にシンプルなことです。試しに使ってみる際には個人情報の入力も不要です。使い方サイト(https://www.connectedpapers.com/)からページに飛ぶと、下のような検索窓のあるページが表示されます。ここに、気になる論文のタイトル、またはDOIを入力して、「Build a graph」というボタンをクリックすれば完了です。すると、その論文のネットワーク図が即座に表示されます。画像を拡大する思い立ったらすぐに使えるというのは、忙しい医療従事者や、英語に苦手意識のある方にとって非常に大きなメリットです。表示されるのは、その論文と「内容的に近い論文たち」のネットワークです。ResearchRabbitと同様に、それぞれの論文が「点」としてマップ上に配置され、距離が近いほど関係性が強いことを示しています。他にも、引用数が多いほど点が大きく表示色が濃いほど最近の論文といった情報も、視覚的に一瞬で把握できます。点をクリックすると、右側にその論文のタイトル、著者、アブストラクトなどが表示され、そのまま元論文のページへのリンクにもアクセスできます。論文タイトルをいちいち読む前に、「このあたりの文献は密につながっていそうだな」とか「この方向には新しい研究が多そうだ」といった感覚的な情報が図として目に飛び込んできます。英語に苦手意識がある方でも、研究の流れをつかむことができます。Connected Papersのもう1つの特徴として、検索結果画面の上部にある「Prior works(先行研究)」および「Derivative works(派生研究)」をクリックすることで、基礎研究から臨床応用への研究の時間的流れを視覚的に追うことができます。ただし、Connected Papersには無料版と有料版があり、無料版では一定時間内の使用回数に制限がある点にご注意ください。まとめ3週にわたり、英語論文や医学情報の検索に苦手意識がある方でも、効率よく調べ物ができるようになるためのAIツールを紹介してきました。これらは、単に英語の検索を簡単にしてくれるだけでなく、情報の質や信頼性のチェック関連文献の広がりの把握といった、「調べる力」そのものを強化するための支援ツールでもあります。以下に、過去3回で紹介した各ツールの要点をまとめました。【第7回で紹介】ChatGPT内のGPT機能(PubMed Buddy):PubMedと連携し、論文を検索・要約できるChatGPT内の特化型チャットボックス。ChatGPTを使った検索式作成:自然言語からPubMed用の精密な検索式を自動生成できるプロンプト活用法。【第8回で紹介】Elicit:自然言語の質問文から関連論文を抽出し、それぞれの要約や研究デザインを自動で整理してくれるリサーチツール。OpenEvidence:医療系の信頼性あるエビデンスを検索・比較できるヘルスケア特化型のチャットボックス。【今回紹介】ResearchRabbit:関連論文をネットワーク図化し、研究分野の詳細から全体の構造まで立体的に把握できるリサーチツール。Connected Papers:簡単操作で1つの論文から関連研究をネットワーク図化し、研究の展開も視覚的にたどることができるリサーチツール。これらのツールを活用すれば、英語に不安がある方でも、質の高い情報に効率よくアクセスできるようになります。次回からは、こうして得られた情報をどのように読み解き(reading)、どのように書き表すのか(writing)、そのAI活用方法を紹介していく予定です。

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抜管直後の「少量飲水」の効果と安全性【論文から学ぶ看護の新常識】第34回

抜管直後の「少量飲水」の効果と安全性抜管直後から「少量ずつ飲水」することの効果と安全性を検証したランダム化比較試験が行われ、「抜管直後の少量飲水は口渇と咽頭不快感を和らげる効果があり、有害事象は増加しない」ことが示唆された。Sarka Sedlackova氏らの研究で、Journal of Critical Care誌オンライン版2025年8月7日号に掲載の報告。抜管直後の「少量飲水」vs.経口水分摂取の遅延:ランダム化比較試験研究チームは、抜管後すぐに経口で水分を「少量ずつ摂取」することが、口渇と不快感を軽減し、集中治療の現場において安全であるかどうかを評価することを目的に、単施設ランダム化比較試験を行った。抜管基準を満たしたICU患者160例を、水分摂取遅延群(抜管2時間後から水分摂取を開始)と、即時少量飲水群(2時間かけて最大3mL/kgを摂取)のいずれかに1:1でランダムに割り付けた。口渇、不快感、および有害事象(吐き気、嘔吐、誤嚥)を、0分、5分、30分、60分、90分、120分後に評価した。主な結果は以下の通り。120分時点では、両群ともに80例中64例(80%、95%信頼区間[CI]:70~88%)が口渇を訴え、群間差は0.0%であった(95%CI:-12%~12%、p=1.000)。120分後までの口渇の緩和は、少量飲水群の11.3%(95%CI:5~20%)に対し、水分摂取遅延群では1.3%(95%CI:0~7%)であり、10%の有意な差が認められた(95%CI:1~19%、p=0.0338)。90分時点での咽頭の不快感は、少量飲水群の23.8%(95%CI:15~35%)に対し、水分摂取遅延群では42.5%(95%CI:32~54%)であり、-18.7%の有意な差が認められた(95%CI:-34%~-3%、p=0.0118)。有害事象(吐き気、嘔吐)はまれであり、両群で同等であった;誤嚥はどちらの群でも観察されなかった。抜管直後からの少量飲水は、安全であり、喉の渇きを和らげ、ICU患者の不快感を軽減し、有害事象を増加させることなく行えると考えられる。皆さんの施設では抜管後いつから飲水が可能になりますか?施設によっては厳密な基準はなく、「翌日から飲水可能」といった大まかなスケジュールで運用されているかもしれません。でもこれって実はエビデンスが乏しく、慣習的に決められていることが多いです。「患者さんは喉が渇いてないかな?」と気にかかりながらも、「でも吐かないかな?誤嚥して肺炎になったらどうしよう」と思う葛藤を、皆さん一度は抱いたことがあるのではないでしょうか?今回は、「抜管2時間後から飲水可能」vs.「抜管直後からの少量飲水(ちょびちょび飲み:シッピング)」を比較した研究を紹介します。研究の結果、2時間後の口渇感の有無自体には両群で差はありませんでした。しかし、口渇感と咽頭不快感の軽減については、「抜管直後からの少量飲水」群が有意に優れていました。さらに、吐き気、嘔吐、誤嚥などの有害事象の発生率は両群で同等であり、少量飲水によりリスクは増加しないことが示されました。これらの知見は、従来の画一的な2時間の絶飲食に疑問を投げかけ、より患者中心に不快感を低減するケアを考えるきっかけとなります。ただし、患者さんの不快感をとるために、無制限に飲水をしていいわけではありません。まず、この研究では一度の摂取量は5~10mL程度とごく少量で、2時間かけて最大3mL/kg(合計約200mL)を上限にする制限も設けられています。またリスクがある、上部消化管手術(食道、胃、十二指腸)、頭蓋外傷、または嚥下や意識に影響を与える神経学的障害がある患者は、事前に除外しています。あくまでも誤嚥や創部に水が入るリスクが低いと想定される患者さんに限定していることは覚えておきましょう。また実臨床で取り入れる場合には、飲水により胃内容物が溜まることでPONV(Postoperative Nausea And Vomiting:術後悪心・嘔吐)のリスクが増すため、女性、オピオイド使用、非喫煙者、乗り物酔いの既往がある患者さんでは注意が必要です。適切なリスク評価を行った上で、実施可能であれば、患者さんの不快感を減らす新たなアプローチの導入を検討してみてはいかがでしょうか。論文はこちらSedlackova S, et al. J Crit Care. 2025 Aug 7. [Epub ahead of print]

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新規作用機序の高コレステロール薬「ネクセトール錠180mg」【最新!DI情報】第48回

新規作用機序の高コレステロール薬「ネクセトール錠180mg」今回は、ATPクエン酸リアーゼ阻害薬「ベムペド酸(商品名:ネクセトール錠180mg、製造販売元:大塚製薬)」を紹介します。本剤は新規作用機序を有する高コレステロール血症治療薬であり、スタチンの効果が不十分な患者やスタチン不耐となった患者の治療選択肢として期待されています。<効能・効果>高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症の適応で、2025年9月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはベムペド酸として180mgを1日1回経口投与します。なお、HMG-CoA還元酵素阻害薬による治療が適さない場合を除き、HMG-CoA還元酵素阻害薬と併用します。<安全性>副作用として、高尿酸血症(5%以上)、痛風、肝機能異常、肝機能検査値上昇(いずれも1~5%未満)、AST上昇、ALT上昇、四肢痛(いずれも1%未満)、貧血、ヘモグロビン減少、血中クレアチニン増加、血中尿素増加、糸球体濾過率減少(いずれも頻度不明)があります。なお、本剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用すると、HMG-CoA還元酵素阻害薬の血中濃度が上昇するので、横紋筋融解症などの副作用が現れる恐れがあります。定期的にクレアチンキナーゼを測定するなど患者の状態の十分な観察が必要です。また、これらの副作用の症状または徴候が現れた場合には、速やかに医師に相談するよう患者に指導します。<患者さんへの指導例>1.この薬は、高コレステロール血症または家族性高コレステロール血症の患者さんに処方されます。肝臓でコレステロールの生合成に関わるアデノシン三リン酸クエン酸リアーゼという酵素を阻害することにより、血液中のコレステロールを低下させます。2.HMG-CoA還元酵素阻害薬による治療が適さない場合を除き、HMG-CoA還元酵素阻害薬と併用されます。3.自己判断での使用の中止や量の加減はしないでください。指示どおり飲み続けることが重要です。<ここがポイント!>脂質異常症とは、血中のLDLコレステロール(LDL-C)、HDLコレステロール(HDL-C)、トリグリセリド(TG)が基準値から逸脱した状態を指し、動脈硬化の進行と密接に関連しています。とくにLDL-Cは、動脈硬化予防の中心的な管理指標とされており、高コレステロール血症の治療にはHMG-CoA還元酵素阻害薬であるスタチン系薬剤が広く用いられています。しかしながら、スタチンを使用しても十分な効果を得られない症例や有害事象により継続が困難になるスタチン不耐となる症例があります。本剤は、クエン酸をアセチルCoAに変換するアデノシン三リン酸クエン酸リアーゼ(ACL)を阻害することで、肝臓におけるアセチルCoAの新規合成を抑制し、スタチンの作用点よりも上流でコレステロールの生合成経路を阻害します。さらに、ベムペド酸は肝臓に高発現するACSVL1によって活性化されるプロドラッグです。骨格筋を含むその他の臓器にはACSVL1の発現がほとんどないため、骨格筋の機能維持に必要なコレステロール合成への影響は少ないと考えられています。本剤は、HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分、またはHMG-CoA還元酵素阻害薬を許容できない患者に対し、1日1回の経口投与によりLDL-C低下作用をもたらします。現在、スタチン効果不十分/不耐には注射薬である抗PCSK9抗体薬が使用されていますが、本剤は新規作用機序の経口薬であるので、新たな治療選択肢として期待できます。LDL-Cのコントロールが不十分な高LDLコレステロール血症患者を対象とした国内第III相試験(CLEAR-J試験)において、主要評価項目である投与12週時におけるLDL-Cのベースラインからの変化率は-25.25%であり、プラセボ群の-3.46%と比較して、LDL-Cの有意な低下が認められました(群間差:-21.78%、95%信頼区間:-26.71~-16.85、p<0.001、MMRM解析)。

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家事をしない人は認知症リスクが高い?米国65歳以上の10年間調査

 身体活動レベルは、アルツハイマー病およびその他の認知症発症リスクに影響を及ぼす。米国・カリフォルニア大学のNan Wang氏らは、65歳以上の米国人を対象に、家事頻度の変化が認知機能に及ぼす影響を評価するため、10年間にわたる家事頻度の変化と認知機能との相関を調査した。The Permanente Journal誌オンライン版2025年9月10日号の報告。 Health and Retirement Studyに参加した65歳以上の米国人8,141例のデータを分析した。2008~10年の家事頻度の変化を「一貫して高い」「低から高へ変化」「高から低へ変化」「一貫して低い」の4つに分類し、評価した。認知機能は、2010~18年に複合スコア(範囲:0~35)を用いて測定し、混合効果線形回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の年齢中央値は75±6.6歳、女性の割合は59.3%であった。・家事頻度が「高から低へ変化」「一貫して低い」と回答した人は、「一貫して高い」と回答した人と比較し、認知機能低下との関連が認められた(各々、0.079[95%信頼区間[CI]:-0.117~−0.042]、0.090[95%CI:-0.126~-0.054])。・家事頻度が「低から高へ変化」と回答した人と「一貫して高い」と回答した人との認知機能低下は、統計的に有意な差が認められなかった(β=-0.027[95%CI:−0.074~0.019]、p=0.252)。・この関連性は、女性と男性で同様であり(Pinteraction=0.765)、80歳以上と65~79歳でも同様であった(Pinteraction=0.069)。 著者らは「高齢期に家事への関与が低い状態から高い状態に移行するか、一貫して高い状態を維持することは、性別や年齢にかかわらず、認知機能の低下を遅らせる可能性が示唆された」としている。

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生存時間分析 その4【「実践的」臨床研究入門】第58回

Cox比例ハザード回帰モデルによる交絡因子調整の実際前回まで、筆者らが出版した臨床研究の事例論文をもとに、Cox比例ハザード回帰モデルによる交絡因子の調整の考え方を解説しました。今回からは、われわれのResearch Question(RQ)をCox比例ハザード回帰モデルの数式(連載第57回参照)に当てはめて考えてみます。アウトカムは「末期腎不全(透析導入)」であり(連載第49回参照)、生存時間分析においては、打ち切りの概念を含んだイベント発生の有無のデータに加え、at riskな観察期間のデータが必要でした(連載第37回、第41回参照)。Censor:イベント発生の有無(イベント発生=1、打ち切り=0)Year:at riskな観察期間(連続変数)検証したい要因は、推定たんぱく質摂取量0.5g/kg標準体重/日未満(連載第49回参照)、すなわち「厳格低たんぱく食の遵守」です。交絡因子は以下の要因を挙げています(連載第49回参照)。年齢、性別、糖尿病の有無、血圧、ベースラインeGFR、蛋白尿定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値これらの要因をCox比例ハザード回帰モデルの数式に当てはめると、次のようになります。h(t|treat、age、sex、dm、sbp、eGFR、Loge_UP、albumin、hemoglobin)=h(t)×exp(β1treat)×exp(β2age)×exp(β3sex)×exp(β4dm)×exp(β5sbp)×exp(β6eGFR)×exp(β7Loge_UP)×exp(β8albumin)×exp(β9hemoglobin)=h(t)×exp(β1treat+β2age+β3sex+β4dm+β5sbp+β6eGFR+β7Loge_UP+β8albumin+β9hemoglobin)treat:厳格低たんぱく食の遵守の有無(あり=1、なし=0)age:年齢(連続変数)sex:性別(男性=1、女性=0)dm:糖尿病の有無(あり=1、なし=0)sbp:収縮期血圧(連続変数)eGFR :ベースラインeGFR(連続変数)Loge_UP:蛋白尿定量_対数変換(連続変数)(連載第48回参照)albumin:血清アルブミン値(連続変数)hemoglobin:ヘモグロビン値(連続変数)βn:各説明変数に対応する回帰係数ここで求めたいのは、検証したい要因である厳格低たんぱく食の遵守の有無を示す変数treatに対応する回帰係数β1の指数変換値exp(β1)です。exp(β1)は、上述のようにモデルに投入したすべての説明変数(交絡因子)の影響を多変量解析で調整したハザード比(adjusted hazard ratio:aHR)を表します。すなわち、交絡因子を調整した後の厳格低たんぱく食遵守群と非遵守群のHRを示します。実際には、これらの回帰係数やaHRはEZR(Eazy R)などの統計解析ソフトを用いて、データ・セットから点推定値と95%信頼区間を推定します。さて、Cox比例ハザード回帰モデルを適用するためには「比例ハザード性」の仮定が必要であることはすでに説明しました(連載第55回参照)。まずはKaplan-Meier曲線を描いて、生存曲線が交差していないことを確認することも解説しました。しかし、「比例ハザード性」の検証には、二重対数プロット(log-log plot)を評価することが必須とされています。それでは、仮想データ・セットからEZRを使用して二重対数プロットを描いてみます。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。まず、仮想データ・セットをダウンロードし、下記のデータが格納されていることを確認してください。A列:IDB列:Treat(1;厳格低たんぱく食遵守群、0;厳格低たんぱく食非遵守群)C列:Censor(1;アウトカム発生、0;打ち切り)D列:Year(at riskな観察期間)次に、以下の手順でEZRに仮想データ・セットを取り込みましょう。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」仮想データ・セットがインポートできたら、下記の手順で二重対数プロットを描画します。「統計解析」→「生存期間の解析」→「生存曲線の記述と群間の比較(Logrank検定)」を選択下記のウィンドウが開いたら、以下のとおりにそれぞれの変数を選択してください。観察期間の変数:Yearイベント(1)、打ち切り(0)の変数:Censor群別する変数を選択:Treat層別化変数は選択なし、その他の設定はとりあえずデフォルトのままで、「OK」ボタンをクリックします。画像を拡大するここまでのEZRのGraphic User Interface(GUI)操作ではKaplan-Meier曲線だけが出力されますが、その際に自動生成されるRスクリプトに少し手を加えて、二重対数プロットを出力するという手順になります。Rスクリプトのウィンドウに表示されたコードから、以下の行を探してください。plot(km, bty="l", col=1:32, lty=1, lwd=1, conf.int=FALSE, mark.time=TRUE, xlab="Year", ylab="Probability")このコードの末尾に、二重対数プロットを描画するオプションのコード(fun="cloglog")を加え、またY軸ラベル(ylab)も、わかりやすいようにlog(-log(Probability)に変更します。plot(km, bty="l", col=1:32, lty=1, lwd=1, conf.int=FALSE, mark.time=TRUE, xlab="Year", ylab=" log(-log(Probability))", fun="cloglog")修正したコードをRスクリプトのウィンドウにコピペし、下図のようにカーソルを合わせた状態で「実行ボタン」をクリックします。画像を拡大する下図のような二重対数プロットが描けましたか。各群の曲線を視覚的に確認し、この図のようにおおむね平行であれば「比例ハザード性」の仮定は成立すると判断でき、Cox比例ハザード回帰モデルの適用の妥当性が担保されます。

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製薬会社も破産する時代に…【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第159回

製薬会社のいわゆるM&A(合併と買収)は多く聞かれますが、破産というのはあまりなかったかと思います。9月5日付で輸液をはじめとする各種注射剤(ガラスアンプル製剤、ソフトバッグ製剤など)の製造を得意とするネオクリティケア製薬が破産手続きを開始しました。医薬品の供給についてはすでに限定出荷などが始まっています。同社は1941年に創業者の小林 清秀氏が有理医薬研究所を設立し、1947年に小林製薬を設立しました。資本元の変遷により会社名を「アイロム製薬」「共和クリティケア」と変え、2019年にアラブ首長国連邦国籍のネオファーマグループに所属したことから「ネオクリティケア製薬」となりました。前身の共和クリティケア時代である2020年7月の社内調査において、ソフトバッグ製剤の製造工程における環境モニタリングに不備が確認され、製品の自主回収と3ヵ月間の製造ラインの停止をしました。その後、製剤ラインの稼働を再開し、品質体制の再構築と経営体制の刷新による信頼回復を目指していたものの、ソフトバッグの代替品対応などで業績が大きく悪化したと報じられています。株主の変更による経営方針の変更や品質問題による回収など、この5年ほどは綱渡りの経営だったのかもしれません。ネオクリティケア製薬が破産手続きに入ったことを受け、9月22日に厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課は、仲介的ではありますが製薬各社に対して同社の製品を承継するための手続きなどの案内を出しました。薬価制度上の基礎的医薬品18品目、安定確保医薬品13製品(重複あり)を含む同社の製品一覧を添付したうえで、承継を希望する企業に「ご活用いただければ」と呼びかけています。しかしながら、「そもそも承継に耐えうる製造ラインがないのでは」など業界では懐疑的な意見があるようです。また、安定確保医薬品や感染症薬などの増産を支援する「医薬品安定供給支援補助金」の第4次公募を開始しました。今回はネオクリティケア破産の影響で供給不安に陥ったケースも「補助対象とする」としています。このような場合、ネオクリティケア製薬自身が製造販売元となっている製品については明らかになりやすいですが、同社は受託製造を得意としてきた会社ですので、ネオクリティケア製薬に製造委託していた他社製造販売品にも徐々に影響が及ぶと考えられます。医療用医薬品は薬価で販売されます。販売価格が保証されているので安定的でよいというのは一昔前の話かもしれません。材料費や人件費の高騰、円安などさまざまな環境の変化によって、自社で販売価格を決められないことが経営を圧迫する世の中になってしまいました。今回の件、「一社の破産の話」で済まない気がするのは私だけでしょうか。

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