49.
2024年度厚労省補正予算による「病床数適正化支援事業」が第1次内示こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。皆さん、ゴールデンウィークはどのように過ごされましたか。私は前半は大学時代の先輩が営む茨城県の農園に、夏野菜の定植の支援に行ってきました。びっくりしたのは農園で飼っていた犬のジロー(17歳、中型犬、雑種)がついに寝たきりとなり、家のリビングに敷かれた布団の中にいたことです。生まれてから17年間、寒い冬も含めずっと屋外で飼われてきて、最期の最期に家の中に上げてもらったわけで、それはそれで幸せな人(犬?)生だったのだろうと思った次第です。それにしても、歩けず、水晶体も脱臼して目も見えず、おむつをしている身なのに、まだまだ食欲は旺盛で、ドッグフードをばくばく食べているのには驚きました。犬は屋外より室内で飼った方が長生きすると言われていますが、ジローのタフぶりに敬服した次第です。さて今回は、「第256回 “撤退戦”が始まっていることに気付かない人々(後編)長崎大病院全病床の1割以上に当たる98床削減、国も『病床1床減らせば410万円』の補助金用意、“撤退戦”本格化の兆し」で書いた、2024年度厚生労働省補正予算による「医療施設等経営強化緊急支援事業」の中の「病床数適正化支援事業」の第1次内示が公表されたので、それについて書いてみたいと思います。第256回では「知人の医療コンサルタントは『各都道府県ともかなりの申し込みが来ているようだ』と話していました」と書きましたが、実際、相当な申請数になったようです。まさに“撤退戦”本格化と言えるでしょう。第1次内示の配分額は約294億円で、対象病床数は7,170床厚労省は4月11日、病床数適正化支援事業(予算額約428億円)の第1次内示の配分額を都道府県に通知しました。第1次内示の配分額は約294億円で、対象病床数は7,170床です。表に示したように各都道府県に100床分以上配分されています。病床数適正化支援事業(第1次内示額)/厚生労働省資料より画像を拡大する多いのは東京都539床、神奈川県411床、北海道352床、千葉県276床、茨城県260床、新潟県260床、鹿児島県253床です。各地域の病院経営者の切迫度合い、行政動向に対する敏感さ、都道府県担当者の熱心さなどさまざまな要素が影響した結果と言えそうです。なお、経営支援の緊急性が高い医療機関を対象とするため、一般会計からの繰入金のある公立病院などは支給対象から除外し、対象病床の上限数は1医療機関当たり50床とするなどの対応が取られています。約200の公立病院などから8,000床、約1,800の民間病院などから4万6,000床の申請病床数適正化支援事業は「効率的な医療提供体制の確保を図るため、医療需要の急激な変化を受けて病床数の適正化を進める医療機関に対し、診療体制の変更等による職員の雇用等の様々な課題に際して生じる負担について支援を行う」もので、期日内に病床数(一般病床、療養病床及び精神病床)の削減を行う病院又は診療所に対し、削減した病床1床につき410万4,000円が交付される、というものです。同種の補助金としては、すでに地域医療介護総合確保基金の中の病床機能再編支援事業(単独支援給付金支給事業)があります。こちらは制度区分にもよりますが1床当たり200万円程度なので、410万円は実にその倍額です。4月23日付の日本経済新聞の報道などによれば、福岡 資麿厚生労働相は22日の閣議後の記者会見で、過剰な入院用のベッドを減らした場合に支給する補助金への申請が全国で計5万4,000床に上ったことを明らかにしました。当初は計7,000床程度の削減を見込んでおり、想定の7.7倍ほどに達したとしています。また、申請数は約200の公立病院などから8,000床、約1,800の民間病院などから4万6,000床だったとのことです。次期内示は医療施設等経営強化緊急支援事業の他の事業で生じた残余も活用して6月中旬を目処に厚労省は第1次内示の配分額の算定方法について、1)一般会計の繰入等がない医療機関であって、令和4年度から3年連続経常赤字の医療機関又は令和5年度から2年連続経常赤字かつ令和6年度に病床削減済みの医療機関2)給付額(4,104千円×給付対象とする病床数)の上限は、1)の赤字額の平均の半分を目安とする3)1医療機関あたりの給付は50床を上限(次期内示以降の配分額の算定方法については、変更があり得る。との説明をしています。2)3)はより多くの病院が活用できるための配慮と考えられます。なお、期内示以降の配分額の算定方法については変更があり得るとしています。地域医療介護総合確保基金の病床機能再編支援事業(単独支援給付金支給事業)の支給を受けていた場合は、差額のみが支給されます。今回の給付額は294億円であり、約134億円がまだ残っています。次期内示は医療施設等経営強化緊急支援事業の他事業で生じた残余も活用して、6月中旬を目処に実施するとしています。公立病院を対象外としたことについて北海道などから不満も病院の病床削減意欲がこれほど高かったとは驚きですが、「一般会計の繰入等がない医療機関」という条件を付けて第1次内示では公立病院を対象外としたことは、一部で物議を醸したようです。北海道テレビは4月22日に「病床を減らす病院への国の支援事業で自治体病院が適用外になる可能性が高まり現場で困惑拡大」と題するニュースを配信しています。それによれば、「江別市立病院では、この支援事業で病床70床を削減し、およそ2億8,000万円の補助金を見込んでいました」が、第1次内示では一般会計からの繰入金のある公立病院などは支給対象から除外する方針が示されたことで、病院の事業管理者は、「ただちに納得しかねるという点があります。全国の自治体病院8割以上は赤字なのですが、そういった中で私どもも例外ではなく、これを何とかしなければならない」と語ったとのことです。北海道では病床数適正化支援事業の補助金に大きな期待をしていた公立病院が多かった模様で、4月24日付の北海道新聞によれば、鈴木 直道知事は24日の記者会見で、国が病床を削減する医療機関を支援する病床数適正化支援事業で自治体病院を実質的に対象外としたことについて、「希望する全医療機関に確実に支援が行き届くよう、全国知事会や関係団体とも連携して国に要請する」と述べたとのことです。福岡厚労相は22日の閣議後記者会見で、この点について「他の補正予算の事業や融資の拡充と合わせ、必要な支援が行き届くよう取り組む」と述べています。せっかく公立・公的含め全国の病院が「病床を減らす」ことに相当前向きになっているのです。赤字で病床削減やリストラが必要な病院は公立・公的病院が多いだけに、第2次内示や来年度以降の予算化においては、相応の対応が求められるところです。