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合格直結!テスレクDigest

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テスレクのお申し込み

先週のテスレクDigest本ページからテスレクのお申し込みを行うことができます。サービス内容をお読みになられた上でページ下部のフォームからお申し込みください。ご不明な点はigakusei-prj@carenet.co.jpまでお問い合わせください。演習→テスト→レクチャー、自然と学習リズムが生まれます2026年2月28日まで利用可能なE-ラーニング形式の国試対策教材です。テスレクさえやっていれば合格に必要な過去問演習を確実に十分となる質と量を提供します。受講者の方には(1)1週間の演習課題問題集(2)演習内容からのテスト(3)テストと週次テーマに沿ったレクチャー動画これら3つの教材がE-ラーニングシステム上で毎週配信されます。学習効率最大化の秘訣は、過去問2,000問の文字通り徹底分析直近5年分の過去問演習は医師国家試験突破に欠かせない学習ですが、ただ闇雲にこなすだけでは時間効率や学ぶべきポイントの消化の観点で思わぬ落とし穴に遭遇しかねません。テスレクはまず5年分の過去問全問を漏らさず分析し、重点的に反復すべき問題や流して良い問題などに分類。これをもとに半年分の本当に意味のある演習スケジュールを構築しました。一番効果が出るのに、一番無理なく進むペース配分テスレクはRound制で進みます。まずは“やらなくていい”を明確にすることで、重点的に演習する問題とその根拠を学びます。その後は本当に重要な問題の演習を重ね、更には独自のリメイク/リバイバル問題の演習をおこなうことで未知の問題に臆することなく答えることのできる実力を養成します。テスレク受講お申し込みについてテスレクはケアネットが提供する医師国家試験対策のための学習サービスです。CareNet. comに会員登録された医学生の方を対象としております。提供内容受講者は2025年8月から2026年1月まで毎週金曜日配信の厳選20問のテストを受けることができますテストを解いた方は、テスト問題を題材に学びを定着させるレクチャー動画 を視聴することができます各週のテスト内容に沿った自学自習の為の演習用過去問リストを半年カリキュラムで提供します演習用過去問リストとテスト、レクチャーを進めると、自然と5年分の過去問の反復演習が終わりますテスレクはe-ラーニングシステム上で提供されます申し込みとお支払いが済んだ方にe-ラーニングシステムのアカウントを発行します遅れて受講を始めても、配信済みのテストとレクチャーを各自のペースで利用することができますお支払いテスレクの受講料は¥66,000(税込)ですお支払い方法はクレジットカード決済ですお支払い確認後、2026年2月末日までテスレクにアクセス可能なアカウントを発行します先週のテスレクDigest

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HR+/HER2-乳がんで術後S-1が本当に必要な再発リスク群は?/日本乳癌学会

 経口フッ化ピリミジン系薬剤S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)は、POTENT試験によって、HR+/HER2-乳がんに対する標準的な術後内分泌療法に1年間併用することで再発抑制効果が高まることが示され、2022年11月に適応が拡大した。しかし、POTENT試験の適格基準はStageI~IIIBと幅広く、再発リスク群によっては追加利益が得られないという報告もあるため、S-1の追加投与が本当に必要な患者に関する検討が求められていた。名古屋大学医学部附属病院の豊田 千裕氏らの研究グループは、S-1適応拡大以前の症例によるPOTENT試験に準じた適格基準別の予後を比較してS-1追加投与の意義について検討し、その結果を第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。 まず、名古屋大学医学部附属病院における、HR+/HER2-乳がんの術後補助療法としてのS-1併用の現状を報告した。S-1併用の現状・2022年9月~2024年9月に根治術を施行した原発性乳がんのうち、ER+/HER2-浸潤性乳がんのPOTENT適格(かつmonarchE不適格)で、術後補助療法として実際にS-1を併用したのは54例であった。・年齢中央値は56歳、観察期間中央値は17ヵ月、周術期化学療法施行が22.2%であった。POTENT試験の適格が79.6%、一部適格(2)が11.1%、一部適格(1)が5.6%、その他3.7%であった。・現在もS-1内服中が48.1%、減量なく完遂が24.1%、一段階減量で完遂が16.7%、中止が11.1%であった。中止理由は薬剤性肺炎または放射線肺臓炎疑い、肝機能異常(Grade2)、皮疹(Grade2)、悪心(Grade1/2)であり、Grade3以上の重篤な有害事象は認めなかった。・現時点で再発症例は認めていない。 小括として、S-1併用療法においてGrade3以上の重篤な副作用は認められなかったことや完遂率の高さについて触れたうえで、後半では名古屋大学医学部附属病院におけるS-1適応拡大前のHR+/HER2-乳がん症例(=S-1非併用症例)のPOTENT試験に準じた適格基準別の予後について報告した。S-1適応拡大前の症例における予後比較・2017年11月~2022年11月に根治術を施行したStageI~IIIBのHR+/HER2-浸潤性乳がんのうち、術後補助療法を施行して追跡可能であったのは520例であった。年齢中央値は54歳、観察期間中央値は53ヵ月であった。・POTENT試験の適格基準に準じて分類した結果、適格群42.3%、一部適格(2)群7.1%、一部適格(1)群3.7%、適格なし群46.7%であった。そのうち周術期に経静脈的化学療法を施行した患者はそれぞれ45.5%、24.3%、0%、0.4%であった。・5年全生存(OS)率は、適格群96.8%、一部適格群92.6%、適格なし群98.1%で有意差は認めなかった。一方、5年無病生存(DFS)率はそれぞれ90.2%、98.2%、98.9%と適格群では適格なし群よりも有意に不良であり(p<0.001)、適格群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。・全体集団をPOTENT試験の追加解析の複合リスク評価に応じてgroup1(低リスク群)、group2(中間リスク群)、group3(高リスク群)の3群に分類したサブグループ解析では、5年OS率はgroup1が97.8%、group2が96.9%、group3が97.9%で有意差は認めなかった。一方、5年DFS率はそれぞれ98.5%、89.2%、83.8%とgroup3では有意に不良であり、高リスク群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。・POTENT適格患者からmonarchE適格患者(腋窩リンパ節転移数が多いハイリスク患者)を除いたnon-monarchE群の5年OS率は、group1が97.7%、group2が87.8%、group3が78.8%であり、non-monarchE群でも中間および高リスク群で不良であった。・non-monarchE群を複合リスク別に分類し、術後の点滴静注化学療法の有無で比較した場合のDFS率は、group1では化学療法ありのグループのほうが不良な傾向にあったが(p=0.07)、group2および3では差を認めなかった(p=0.349およびp=0.618)。・non-monarchE群で術後の点滴静注化学療法を行わなかった場合は、group1のDFSが良好であった。 これらの結果より、豊田氏は「本研究は観察期間が短く他病死も多かったことから、今後も長期フォローアップが望まれる」としたうえで、「HR+/HER2-乳がんにおける再発高リスク群では、術後補助療法にS-1を併用することで再発率を有意に低下させる可能性がある。患者背景やリスク評価を踏まえた適応選択が、S-1補助療法の最大の効果を引き出すために重要」とまとめた。※POTENT試験の適格基準:以下の条件を満たすStageI~IIIBの症例

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HIV・結核・マラリア対策、1ドル投資で19ドルの健康の利得可能/Lancet

 HIV、結核、マラリア対策への継続的な投資は、健康上の大きな成果と高い投資効果をもたらす可能性があり、これらを実現するには各国の支出の増加を継続し、2025年に予定されている世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の増資を含めた幅広い外部資金の維持が不可欠であると、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのTimothy B. Hallett氏らが、世界規模のモデリング研究の結果を報告した。持続可能な開発目標(SDGs)には、2030年までにHIV、結核、マラリアの流行を終息させることが含まれている。この目標達成まで残り5年となり、グローバルファンドが2027~29年のプログラムへの資金調達を行う予定であることから、継続的な投資によって何が達成できるかを明確にすることが求められていた。Lancet誌オンライン版2025年7月3日号掲載の報告。グローバルファンド支援国のHIV、結核、マラリア対策に必要な財源を推計 研究グループは、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、ストップ結核パートナーシップ(Stop TB Partnership)、および世界保健機関(WHO)によって策定された世界計画に基づき、グローバルファンド支援国におけるHIV、結核、マラリア対策に必要な財源を推定した。 今後数年間に利用可能な財源の推計では、これら3疾患に対する各国の支出が一般的な政府支出の伸びに沿って増加し、グローバルファンドが追加で180億ドルを拠出し、その他の開発援助が2020~22年の平均と実質ベースで同水準になると仮定した。 グローバルファンド支援対象国における影響(総死亡率および罹患率への影響を含む)を定量化するため、3疾患それぞれの疫学モデルと費用モデルを用いて定量化。投資収益率(ROI)は、健康の本質的価値と、罹患および早期死亡のリスク低減による直接的な経済便益の両面を考慮して算出した。 分析は、2023年までの入手可能な最新のデータを使用し2024年末に完了した。予測期間の中心は2027~29年。この期間の具体的な拡大計画や資金調達はまだ確保されておらず、グローバルファンド第8次増資によって調達される資金の大半が使用される期間であった。2030年までに3疾患の死亡率削減の目標は、ほぼ達成可能 2027~29年における3疾患に対する総資源需要は、1,406億ドル(米ドル)と推定された。このうち、79%に当たる1,113億ドルは、国内財源(697億ドル)、グローバルファンド(180億ドル)、その他の外部援助(236億ドル)から賄えると試算された。これらの利用可能な資源を最適に活用することで、2027~29年に2,300万人の命を救い、4億件の症例と新規感染を回避できる可能性がある。 3疾患の合計死亡率の推移は、2030年のSDGs達成目標に近づくと予測された(2030年の目標と2029年末の予測との差は、正規化された総死亡率の1.5~15.5%の間)。各国の平均寿命の格差は2029年までに7%縮小し、2027~29年における入院日数は1億8,900万日、外来受診回数は5億7,200万回減少し、11億ドルの節約となることが示され、1ドルの投資に対して、最大19ドルの健康の本質的価値または3.5ドルの直接的な経済利益が得られる可能性がある。

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フィジシャン・アシスタントによるケアの質への影響は?/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のNicola Cooper氏らは、フィジシャン・アシスタント(Physician Assistant:PA)のケアの質への影響を明らかにする目的で、PAによるケアと医師によるケアを定量的に比較した研究についてシステマティックレビューを行い、エビデンスは限られており、診断前の状況でPAが間接的な指導の下で業務を行うことは、安全性または有効性の点で支持されるものではないことを報告した。PAは、特定の専門分野や地域における医療不足に対応するため、米国で導入された。英国では、最初のPAが2007年にパイロットプログラムを卒業したが、とくに「医師の代理」としての役割を果たすことに関してPA制度の導入に懸念が示されていた。著者は、「PAの監督体制と業務範囲に関する国のガイドラインを設けることで、PAの安全かつ効果的な業務を行えるようにすることができる」とまとめている。BMJ誌2025年7月3日号掲載の報告。PAによるケアvs.医師によるケア、定量的に比較した研究をレビュー 研究グループは、主要な医学電子データベースであるMedlineおよびEmbaseを包括的に検索するとともに、Google Scholarを用い検索語を「impact of physician assistants」として最初の200件に限定して検索を行った。 適格基準は、言語が英語で、2005年1月~2025年1月に発表され、先進国においてPAによるケアと研修医を含む医師によるケアを定量的に比較した実証研究であった。アウトカムは、Institute of Medicineによる質の定義に基づくケアの成果(安全性、有効性、患者中心性、適時性、効率性、公平性)とした。 適格基準を満たした研究は、プライマリケア、セカンダリケア、病院におけるPAと研修医の比較、診断/パフォーマンス、費用対効果に分類された。 2人の評価者が独立して、研究デザイン、サンプル、方法および結果に関するデータを抽出するとともに、各研究についてバイアスリスク評価ツールを用いた。 解析対象となった研究には異質性があるため、メタ解析は行わず主要な結果についてナラティブに統合した。各アウトカムに関するエビデンスの信頼性は、関連研究の数と質、および類似する研究間の結果の一貫性に基づいて評価された。PAのケア、直接監督下で診断後の場合は安全かつ効果的 検索により3,636報が特定され、タイトルと抄録による最初のスクリーニングで167件が候補となり、全文スクリーニングの結果、最終的に40件の研究が解析に組み込まれた。 これらの研究の多くは、質の低い後ろ向き観察研究であった。40件中31件が米国、4件がオランダ、4件が英国、1件がアイルランドで実施されたもので、新型コロナウイルス感染症流行以後のデータはなかった。 多くの研究で最も一貫性のある結果が得られたのは、PAが直接の監督の下で診断後のケアに従事している場合に安全かつ効果的に業務を行っているという研究であった。患者満足度については、PAと医師の間に差は認められなかった。 医療チームにPAを加えることはケアへのアクセス向上につながるが、これはPAという職種が持つ役割の固有の貢献というより、医療スタッフ数増加のメリットを反映している可能性が示唆された。 費用対効果に関するエビデンスは限られていた。英国では、社会経済的に恵まれない地域に住んでいる患者ほどPAによる診察を受ける傾向があった。

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第19回 最新研究が警鐘!「いつものあの食べ物」に潜む健康リスクとは

普段、私たちが何気なく口にしているハムやソーセージ、甘いジュースや菓子パン。手軽で美味しいこれらの食品が、実は私たちの健康に静かな影響を及ぼし続けている…。2025年6月に医学雑誌Nature Medicine誌に発表された論文1)は、加工肉、砂糖入り飲料、トランス脂肪酸といった「超加工食品」の成分が、さまざまな病気のリスクを高めることを改めて浮き彫りにしています。今回は、この研究の結果を、私たちの生活に身近な例を交えながら解説していきます。「少しだけ」でも危ない? 加工肉・甘い飲み物・トランス脂肪酸の新常識この研究がとくに注目されるのは、非常に慎重な分析手法を用いている点です。多くの研究結果を統合し、あえて控えめに見積もってもなお、健康への悪影響が確認された点に大きな意義があります。ここからは、この研究で分析された、加工肉、甘い飲み物、トランス脂肪酸、それぞれのリスクについてみていきましょう。(1)加工肉のリスクまず研究では、ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉を日常的に食べることが、2型糖尿病や大腸がんのリスクを高めると結論付けています。具体的には、毎日わずかな量(0.6〜57g)を食べるだけでも、2型糖尿病のリスクが平均で11%以上、大腸がんのリスクが平均で7%以上高まることが示されました。さらに衝撃的なのは、そのリスクの増え方かもしれません。摂取量が増えるほどリスクは上がり続けますが、とくに「0から1のところ」でリスクが最も急激に上昇することがわかりました。これは、「少しなら安全」という考えが通用しない可能性を示唆しています。たとえば、平均的に約50gの加工肉を毎日食べる人は、2型糖尿病のリスクは約30%、大腸がんのリスクは約26%増加すると試算されています。これは、標準的なサイズのホットドッグ1本、ソーセージ2〜3本、ベーコン(スライス)2枚程度に当たります。アメリカに住む私には耳の痛い話で、日本でもこのぐらいの量はさまざまな食事を通して登場しているかもしれません。(2)砂糖入り飲料のリスク炭酸飲料やスポーツドリンク、甘い缶コーヒーやジュースといった砂糖入り飲料も同様です。これらの飲料を日常的に飲むことで、2型糖尿病や心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクが高まるという結果が報告されています。こちらも比較的少量の摂取からリスクは上昇し、1日当たり250g(大きめのコップ1杯強)の摂取で、2型糖尿病のリスクは約20%増加すると報告されています。喉が渇いたときに、水やお茶の代わりに甘い飲み物を選ぶ習慣がある方は、注意が必要かもしれません。(3)トランス脂肪酸のリスクまた、今回の研究では、「食べるプラスチック」とも呼ばれるトランス脂肪酸についても分析されました。マーガリンやショートニング、それらを使ったパン、ケーキ、ドーナツ、揚げ物などに含まれることのある成分です。結果は、トランス脂肪酸の摂取が虚血性心疾患のリスクを明確に高めることを裏付けています。摂取エネルギーのわずか0.25〜2.56%をトランス脂肪酸から摂るだけで、リスクは平均3%以上高まりました。現在はWHOもそのリスクを訴え、世界中で使用を制限する動きが広がっています。この研究結果は、その動きの正しさを改めて後押しするものといえるでしょう。なぜ体に悪いのか、その仕組みとは?では、なぜこれらの食品は体に良くないのでしょうか。論文では、いくつかのメカニズムが指摘されています。たとえば加工肉は、塩分や飽和脂肪酸が多いだけでなく、保存のために使われる亜硝酸ナトリウムなどの添加物が、体内で有害物質に変化する可能性が指摘されています。また、砂糖入り飲料の過剰な糖分は、体内の炎症を引き起こしたり、内臓脂肪を増やしたりします。さらに、これらの超加工食品は、共通して腸内環境のバランスを崩し、悪玉菌を増やしてしまう可能性なども指摘されています。少しの気配りで未来の健康を守る今回の研究結果は、加工肉、砂糖入り飲料、トランス脂肪酸の摂取を控えるべきだという、これまでの食事ガイドラインを科学的に強く支持するものとなっています。これらの食品が広く消費され、関連する病気が多いことを考えると、決して軽視はできません。もちろん、この研究にも限界はあります。食生活の自己申告に基づく観察研究であること、他の生活習慣の影響を完全に排除できないことなどです。しかし、私たちの健康を守るための重要なヒントを与えてくれているとも思います。日々の食事の選択が、10年後、20年後の自分の健康がどうあるかを左右します。普段の買い物や食事の際に、砂糖入り飲料を水やお茶に変えてみたり、加工食品を新鮮な食材に置き換えてみたりと、日々の食生活を少し見直してみてもいいかもしれません。その小さな一歩が、未来の健康への大きな投資となるのかもしれません。参考文献・参考サイト1)Haile D, et al. Health effects associated with consumption of processed meat, sugar-sweetened beverages and trans fatty acids: a Burden of Proof study. Nat Med. 2025 Jun 30. [Epub ahead of print]

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看護師の不眠に解決策!? シフト勤務に特化したデジタル認知行動療法の効果【論文から学ぶ看護の新常識】第23回

看護師の不眠に解決策!? シフト勤務に特化したデジタル認知行動療法の効果交代勤務の看護師が抱える不眠に対し、デジタル認知行動療法(CBT-I)「SleepCare」が有効であることが、Hanna A. Bruckner氏らの研究結果から示された。International Journal of Nursing Studies誌オンライン版2025年5月7日号に掲載された。交代勤務睡眠障害のある看護師の不眠症に対するデジタル認知行動療法の有効性:ランダム化比較試験研究チームは、交代勤務睡眠障害に罹患している看護師に対し、不眠症を軽減するためのデジタル認知行動療法プログラム「SleepCare」の有効性を調査することを目的にランダム化比較試験を行った。交代勤務睡眠障害に罹患している看護師74名を、「SleepCare」介入群と、ドイツ睡眠学会が公開している交代勤務に特化した心理教育群に割り当て、効果を比較した。主要評価項目は、ランダム化前のベースライン時、8週間後、および3ヵ月後の不眠症の重症度(不眠症重症度指数[Insomnia Severity Index]で測定)とした。副次評価項目として、メンタルヘルス指標、および長期的な毛髪中コルチゾール濃度を評価した。主な結果は以下の通り。Intention to treat(治療意図)に基づく共分散分析により、介入群は心理教育群と比較して、介入直後(d=1.11、95%信頼区間[CI]:0.7~1.6)および追跡調査時(d=0.97、95%CI:0.5~1.4)の両方で、より大きな不眠症重症度の軽減を示した。この結果は、不眠症重症度指数において、それぞれ5.0ポイントおよび5.3ポイントの群間差に相当する。参加者の56%が、6セッションのうち5セッション以上を完了し、これらの介入完了者においては、それぞれd=1.49およびd=1.28と、より大きな効果が示された。統計的に有意な効果は、睡眠関連の指標では認められたが、ストレスや抑うつといった他のメンタルヘルス指標では認められなかった。「SleepCare」群では、介入後に毛髪中コルチゾール濃度の低下が認められた(V=82、p=0.008、Δ=−1.8 pg/mg、ベースラインから44%減少)。「SleepCare」は、不眠症の症状を臨床的に意味のあるレベルまで軽減する上で有効であった。また、看護師の交代勤務に対するニーズに応えるための特定のエクササイズを取り入れ、不眠症のための認知行動療法を応用した、最初のデジタル配信プログラムの一つでもある。介入完了者においては、大幅に大きな効果が認められたことから、治療アドヒアランス(治療の継続・遵守)を促進するための効果的な戦略の開発が必要である。交代勤務に従事する看護師の方々にとって、交代勤務睡眠障害は深刻な問題ですが、多忙かつ不規則なスケジュールから従来の対面式の認知行動療法(CBT-I)は利用しにくいという課題がありました。本研究で検証されたデジタルCBT-I「SleepCare」は、この状況に対する画期的なアプローチと言えます。交代勤務特有のニーズに合わせて調整され、時間や場所を選ばずに利用できるこのプログラムは、実際に不眠重症度を臨床的に有意に改善しました。とくに、介入完了者でより高い効果が認められたこと、そして客観的なストレス指標である毛髪コルチゾール濃度が改善したことは注目に値します。一方で、ストレスや抑うつといった睡眠関連以外の精神的健康課題への直接的な効果は認められず、治療アドヒアランスの向上が重要であるという点は、今後の課題です。これらは近年のデジタル系の研究全体でよく述べられている限界点です。この研究で示されたアプローチは、私たちの日常にもヒントを与えてくれます。例えば、夜勤明けはサングラスをかけて帰宅する、夜勤の勤務後半にはカフェインなどの刺激物を避ける、といった工夫が睡眠障害の予防につながるでしょう。本研究は困難な勤務環境にある私たち看護師の睡眠問題に対し、実用的かつ効果的なデジタルヘルスソリューションの可能性を力強く示した点で、非常に価値が高いと言えます。論文はこちらBruckner HA, et al. Int J Nurs Stud. 2025 May 7. [Epub ahead of print]

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経鼻投与のてんかん発作レスキュー薬「スピジア点鼻液5mg/7.5mg/10mg」【最新!DI情報】第43回

経鼻投与のてんかん発作レスキュー薬「スピジア点鼻液5mg/7.5mg/10mg」今回は、抗けいれん薬「ジアゼパム(商品名:スピジア点鼻液5mg/7.5mg/10mg、製造販売元:アキュリスファーマ)」を紹介します。本剤は、介護者による投与も可能な国内初のジアゼパム鼻腔内投与製剤であり、院外での速やかな治療が可能になると期待されています。<効能・効果>てんかん重積状態の適応で、2025年6月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人および2歳以上の小児にはジアゼパムとして、患者の年齢および体重を考慮し、5~20mgを1回鼻腔内に投与します。効果不十分な場合には4時間以上空けて2回目の投与ができます。ただし、6歳未満の小児の1回量は15mgを超えないようにします。●2歳以上6歳未満6kg以上12kg未満:5mg(5mg製剤を片方の鼻腔1回)12kg以上23kg未満:10mg(10mg製剤を片方の鼻腔1回)23kg以上:15mg(7.5mg製剤を両方の鼻腔1回ずつ)●6歳以上12歳未満10kg以上19kg未満:5mg(5mg製剤を片方の鼻腔1回)19kg以上38kg未満:10mg(10mg製剤を片方の鼻腔1回)38kg以上56kg未満:15mg(7.5mg製剤を両方の鼻腔1回ずつ)56kg以上:20mg(10mg製剤を両方の鼻腔1回ずつ)●12歳以上14kg以上28kg未満:5mg(5mg製剤を片方の鼻腔1回)28kg以上51kg未満:10mg(10mg製剤を片方の鼻腔1回)51kg以上76kg未満:15mg(7.5mg製剤を両方の鼻腔1回ずつ)76kg以上:20mg(10mg製剤を両方の鼻腔1回ずつ)<安全性>重大な副作用として、依存性、離脱症状、刺激興奮、錯乱など、呼吸抑制(いずれも頻度不明)があります。その他の副作用として、傾眠(10%以上)、意識レベルの低下、貧血、口腔咽頭不快感(いずれも5~10%未満)、眠気、ふらつき、眩暈、頭痛、言語障害、振戦、複視、霧視、眼振、失神、失禁、歩行失調、多幸症、黄疸、顆粒球減少、白血球減少、血圧低下、頻脈、徐脈、悪心、嘔吐、便秘、口渇、食欲不振、発疹、倦怠感、脱力感、浮腫(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、抗けいれん作用がある点鼻薬です。鼻腔内に使用します。2.脳内の神経の過剰な興奮を鎮めて、てんかん発作を抑える働きがあります。3.この薬は適切な指導を受けた保護者(家族)またはそれに代わる適切な人が使用できますが、2歳以上6歳未満のお子さんの場合は、医師のもとで使用する必要があります。4.噴霧器には1回(1噴霧)分の薬が入っています。噴霧テスト(空打ち)や再使用はしないでください。5.症状が現れたときに、1回1噴霧(どちらか片方の鼻のみ)もしくは2噴霧(両方の鼻に1回ずつ)してください。6.原則として、この薬の使用後は救急搬送を手配してください。<ここがポイント!>てんかん重積状態は、「臨床的あるいは電気的てんかん活動が少なくとも5分以上続く場合、またはてんかん活動が回復なく反復し5分以上続く場合」と定義されています。この定義は、脳へのダメージや長期的な後遺症が懸念される時間の閾値に基づいています。とくにけいれん発作が30分以上持続すると、脳損傷のリスクが高まり、生命予後にも重大な影響を及ぼす可能性があるため、速やかな治療介入が極めて重要になります。治療の第一選択薬の1つとしてジアゼパム静注が挙げられますが、院外では静脈注射や筋肉注射が困難な場合が多く、急性対応の選択肢は限られています。てんかん重積状態の治療には病院到着前の治療(プレホスピタルケア)が重要であるため、簡便に使用できる製剤が必要と考えられていました。本剤は、医療者または介護者による投与が可能な国内初のジアゼパム鼻腔内投与製剤です。ジアゼパムは1960年代から広く用いられている抗けいれん薬であり、本剤は院外での「てんかん重積状態に対するレスキュー薬」の新たな選択肢となります。本剤は、簡単かつ迅速に投与できる点鼻スプレーであり、2歳から成人まで使用可能です。また、室温保存が可能で携帯性に優れた製剤で、自宅での使用にも適しています。てんかん重積状態またはてんかん重積状態に移行する恐れのある発作を有する6歳以上18歳未満の日本人小児患者を対象とした国内第III相試験(NRL-1J02試験)において、主要評価項目である臨床的にけいれん発作と判断される状態が本剤を単回鼻腔内に投与後10分以内に消失し、かつ投与後30分間認められなかった患者の割合は62.5%(95%信頼区間:35.4~84.8)でした。

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AIが皮膚疾患に対する医師の診断精度を向上させる

 実験的なAIツールが、メラノーマ(悪性黒色腫)やその他の皮膚疾患の検出を迅速化するのに役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。この「PanDerm」と呼ばれるツールを医師が使用した場合、皮膚がんの診断精度が11%向上したことが示されたという。モナシュ大学(オーストラリア)情報技術学部AIM for Health研究室のZongyuan Ge氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に6月6日掲載された。 皮膚疾患の診断と治療には、領域横断的な高度な視覚的能力と、複数の画像診断法(モダリティ)からの情報を統合する能力を要する。しかし、現在の深層学習モデルは、ダーモスコピー画像からの皮膚がんの診断など特定のタスクでは優れているものの、臨床現場の複雑でマルチモーダルな情報の処理は得意ではない。こうした弱点を克服するために国際的な研究者チームによって開発されたPanDermは、11の医療機関から集められた4種類の画像モダリティにまたがる200万枚以上の皮膚画像でトレーニングされた、皮膚科領域のAIモデルである。 Ge氏らは、PanDermの性能を、皮膚がんのスクリーニング、リスク層別化、一般的/まれな皮膚疾患の鑑別診断、皮膚病変の抽出(皮膚病変セグメンテーション)など28種類のタスクで評価した。その結果、このモデルは、全てのタスクで最先端レベルの性能を達成し、診断に必要なラベル付きデータがわずか5~10%であっても、既存のモデルと同等以上のパフォーマンスを発揮することが示された。 さらに、PanDermの臨床的有用性を検討するために3件の読影比較試験を実施し、医師の診断精度と比較した。その結果、PanDermは、経時的な画像解析による初期段階のメラノーマの検出では医師の診断精度を10.2%上回り、ダーモスコピー画像を用いた皮膚がんの診断では医師の診断精度を11%向上させた。さらに、臨床写真を用いた128種類の皮膚疾患の鑑別診断においても、皮膚科以外の医師の診断精度を16.5%向上させることが示された。 こうした結果を受けてGe氏は、「PanDermは臨床医と連携して動作するように設計されたツールであり、複雑な画像データを解釈し、より自信を持って情報に基づいた意思決定を行うのに役立つ」とモナシュ大学のニュースリリースで述べている。 論文の共著者であるクイーンズランド大学(オーストラリア)皮膚科研究センター所長のPeter Soyer氏は、「このAIモデルは、皮膚科医へのアクセスが限られている地域で特に重要な役割を果たす可能性がある」と述べている。ただし研究グループは、PanDermが承認され現場で使用されるまでには、まだ評価が必要だとしている。 研究グループは、リアルワールドの、特に多様なタイプの患者を治療するさまざまな医療環境において、PanDermのパフォーマンスを検証する予定だと話している。

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遺伝子治療市場の縮小を超えて:長期成績が示す血友病B治療の未来(解説:長尾梓氏)

 NEJM誌6月12日号に掲載された“Sustained Clinical Benefit of AAV Gene Therapy in Severe Hemophilia B”は、AAVベースの遺伝子治療治験薬scAAV2/8-LP1-hFIXcoを投与した血友病B 10例を13年間追跡し、FIX活性と出血抑制が初期報告からほぼ減衰せず、安全性上の深刻なシグナルも認めなかったことを示した。AAVベクターによる遺伝子治療が「十年以上効く」ことを実証した初の報告であり、臨床現場にとって画期的である。 一方、市場環境には逆風が続く。Pfizerは今年2月、FDA承認済みだった血友病B遺伝子治療薬Beqvez(fidanacogene elaparvovec-dzkt)の世界的な販売・開発を突然打ち切った。理由は「患者・医師の需要の低さ」とされる。さらにBioMarinは血友病A遺伝子治療薬Roctavian(valoctocogene roxaparvovec)の商業展開を米国、ドイツ、イタリアの3ヵ国に限定し、その他地域への投資を凍結すると発表した。こうした撤退・縮小の動きを受け、ISTH、WFH、EAHADなどの国際学会は本年5月に「遺伝子治療開発を止めないでほしい」とする緊急声明を共同発出し、産学官・患者団体に継続的な投資とアクセス確保を要請している。 今回のNEJM論文は、日本では未承認のプラットフォームではあるものの、13年という長期データが“Gene Therapy Fatigue”に漂う空気を一変させる可能性がある。国内でも血友病B遺伝子治療の導入は2〜3年以内に本格化すると予想され、長期フォロー体制や医療経済評価を整えたうえで「いつ誰に投与するか」を再考する好機となるだろう。 留意すべきは、本論文のデータをそのまま血友病A遺伝子治療に当てはめることは適切でない点である。Roctavianを含むAAV-FVIII製品では発現低下や免疫応答といった独自の課題が依然残り、経過は大きく異なる。疾患別にエビデンスとリスクを慎重に見極める必要がある。 「十年以上持続する臨床効果」という朗報と「市場縮小」という逆風。相反する2つの現実をどうバランスさせ、日本の患者に最適な形で遺伝子治療を届けるか――今後数年間は、われわれ日本の医療者にとって、きわめて重要な時期になるのは間違いない。

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「日本版敗血症診療ガイドライン2024」改訂のポイント、適切な抗菌薬選択の重要性

 2024年12月、日本集中治療医学会と日本救急医学会は合同で『日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG 2024)』1)を公開した。今回の改訂では、前版の2020年版から重要臨床課題(CQ)の数が118個から78個に絞り込まれ、より臨床現場での活用を意識した構成となっている。5月8~10日に開催された第99回日本感染症学会総会・学術講演会/第73回日本化学療法学会総会 合同学会にて、本ガイドライン特別委員会委員長を務めた志馬 伸朗氏(広島大学大学院 救急集中治療医学 教授)が、とくに感染症診療領域で臨床上重要と考えられる変更点および主要なポイントを解説した。 本ガイドラインは、日本語版は約150ページで構成され、前版と比較してページ数が約3分の2に削減され、内容がより集約された。迅速に必要な情報へアクセスできるよう配慮されている。英語版はJournal of Intensive Care誌2025年3月14日号に掲載された2)。作成手法にはGRADEシステムが採用され、エビデンスの確実性に基づいた推奨が提示されている。また、内容の普及と理解促進のため、スマートフォン用アプリケーションも提供されている3)。CQ1-1:敗血症の定義 敗血症の定義は、国際的なコンセンサスであるSepsis-3に基づき、「感染症に対する生体反応が調節不能な状態となり、重篤な臓器障害が引き起こされる状態」とされている。CQ1-2:敗血症の診断と重症度 敗血症は、(1)感染症もしくは感染症の疑いがあり、かつ(2)SOFAスコアの合計2点以上の急上昇をもって診断する。敗血症性ショックは、上記の敗血症の基準に加え、適切な初期輸液療法にもかかわらず平均動脈圧65mmHg以上を維持するために血管収縮薬を必要とし、かつ血清乳酸値が2mmol/L(18mg/dL)を超える状態とされている。敗血症性ショックの致死率が30%を超える重篤な病態であり、志馬氏は「敗血症とは診断名ではなく、感染症患者の救命のための迅速な重症度評価指標であり、何よりも大事なのは、評価して認識するだけでなく、早期の介入に直ちにつながらなければならない」と述べた。CQ1-3:一般病棟、ERで敗血症を早期発見する方法は? ICU以外の一般病棟や救急外来(ER)においては、quick SOFA(qSOFA:意識変容、呼吸数≧22/min、収縮期血圧≦100mmHg)を用いたスクリーニングツールが提唱されている。qSOFAは、敗血症そのものを診断する基準ではなく、2項目以上が該当する場合に敗血症の可能性を考慮し、SOFAスコアを用いた評価につなげる。初期治療バンドル:迅速かつ系統的な介入の指針 敗血症が疑われる場合、直ちに実施すべき一連の検査・治療が「初期治療ケアバンドル」(p.S1171)にまとめられている。主要な構成要素は以下のとおり。これらの介入を、敗血症の認識から数時間以内に完了させることが目標とされている。―――――・微生物検査:血液培養を2セット。感染巣(疑い)からの検体採取。・抗菌薬:適切な経験的抗菌薬投与。・初期蘇生:初期輸液(調整晶質液を推奨)。低血圧を伴う場合は、初期輸液と並行して早期にノルアドレナリン投与。乳酸値と心エコーを繰り返し測定。・感染巣対策:感染巣の探索と、同定後のコントロール。・ショックに対する追加投与薬剤:バソプレシン、ヒドロコルチゾン。―――――抗菌薬治療戦略に関する重要な変更点と推奨事項 敗血症における抗菌薬治療のポイントは、「迅速性と適切性が強く要求される」という点が他の感染症と異なる。本ガイドラインにおける抗菌薬治療の項では、いくつかの重要な変更点と推奨が提示されている。CQ2-2:敗血症に対する経験的抗菌薬は、敗血症認知後1時間以内を目標に投与開始するか? 本ガイドラインでは、「敗血症または敗血症性ショックと認知した後、抗菌薬は可及的早期に開始するが、必ずしも1時間以内という目標は用いないことを弱く推奨する (GRADE 2C)」とされている。志馬氏は、投与の迅速性のみを追求することで不適切な広域抗菌薬の使用が増加するリスクや、1時間以内投与の有効性に関するエビデンスの限界を指摘した。メタ解析からは、1~3時間程度のタイミングでの投与が良好な予後と関連する可能性も示唆された4)。CQ2-3:経験的抗菌薬はどのようにして選択するか? 本ガイドラインでは「疑わしい感染巣ごとに、患者背景、疫学や迅速微生物診断法に基づいて原因微生物を推定し、臓器移行性と耐性菌の可能性も考慮して選択する方法がある(background question:BQに対する情報提示)」とされている。志馬氏は「経験的治療では、かつては広域抗菌薬から始めるという傾向があったが、薬剤耐性(AMR)対策の観点からも、広域抗菌薬を漫然と使用するのではなく、標的への適切な抗菌薬選択を行うことで死亡率が低下する」と適切な抗菌薬投与の重要性を強調した5)。 経験的治療の選択には、「臓器を絞る、微生物疫学を考慮する、耐性菌リスクを考慮する、迅速検査を活用する」ことによって、より適切な治療につなげられるという。敗血症の原因感染臓器は、多い順に、呼吸器31%、腹腔内26%、尿路18%、骨軟部組織13%、心血管3%、その他8%となっている6)。耐性菌リスクとして、直近の抗菌薬暴露、耐性菌保菌、免疫抑制を考慮し、迅速診断ではグラム染色を活用する。ガイドラインのCQ2-1では「経験的抗菌薬を選択するうえで、グラム染色検査を利用することを弱く推奨する(GRADE 2C)」とされている。グラム染色により不要な抗MRSA薬や抗緑膿菌薬の使用を削減できる可能性が示された7)。これらのデータを基に、本ガイドラインでは「原因微生物別の標的治療薬」が一覧表で示されている(p.S1201-S1206)。腎機能低下時、初期の安易な抗菌薬減量を避ける 講演では、敗血症の急性期、とくに初回投与や投与開始初日においては、腎機能(eGFRなど)の数値のみに基づいて安易に抗菌薬を減量すべきではない、という考え方も示された。志馬氏は、抗菌薬(βラクタム系)の用量調整は少なくとも24時間以後でよいと述べ、初期の不適切な減量による治療効果減弱のリスクを指摘した8)。これは、敗血症初期における体液量の変動や腎機能評価の困難性を考慮したものだ(CQ2-6 BQ関連)。βラクタム系薬の持続投与または投与時間の延長 CQ2-7(SR1)では、βラクタム系抗菌薬に関して「持続投与もしくは投与時間の延長を行うことを弱く推奨する(GRADE 2B)」とされている。これにより、死亡率低下や臨床的治癒率の向上が期待されると解説された9)。一方でCQ2-7(SR2)では、「グリコペプチド系抗菌薬治療において、持続投与または投与時間の延長を行わないことを弱く推奨する」とされている(GRADE 2C)。また、デエスカレーションは弱く推奨されている(GRADE 2C)(CQ2-9)。ただし、志馬氏は臨床でのデエスカレーションの達成率が約4割と低い現状に触れ、そもそも途中でデエスカレーションをしなくていいように、初期に適切な狭域の抗菌薬選択をすることも重要であることを再度強調した。治療期間の短縮化:7日間以内を原則とし、プロカルシトニンも活用 CQ2-12では、「比較的短期間(7日間以内)の抗菌薬治療を行うことを弱く推奨する(GRADE 2C)」としている。RCTによると、敗血症においても多くの場合1週間以内の治療で生命予後は同等であり、耐性菌出現リスクを低減できることが示されている10~12)。 抗菌薬中止の判断材料として「プロカルシトニン(PCT)を指標とした抗菌薬治療の中止を行うことを弱く推奨する(GRADE 2A)」とし(CQ2-11)、PCT値の経時的変化(day5~7に0.5μg/L未満またはピーク値から80%減少した場合など)を指標にすることが提案されている13)。 本講演では、近年の国内および世界の敗血症の定義の変化を反映し、敗血症を診断名としてだけでなく、感染症の重症度を評価するための指標として捉えることの重要性が強調され、主に抗菌薬にフォーカスして解説された。志馬氏は「本ガイドラインのアプリも各施設で活用いただきたい」と述べ講演を終えた。■参考文献・参考サイト1)志馬 伸朗, ほか. 日本版敗血症診療ガイドライン2024. 日本集中治療医学会雑誌. 2024;31:S1165-S1313.2)Shime N, et al. J Intensive Care. 2025;13:15.3)日本集中治療学会. 「日本版敗血症診療ガイドライン2024 アプリ版」公開のお知らせ4)Rothrock SG, et al. Ann Emerg Med. 2020;76:427-441.5)Rhee C, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e202899.6)Umemura Y, et al. Int J Infect Dis. 2021;103:343-351.7)Yoshimura J, et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e226136.8)Aldardeer NF, et al. Open Forum Infect Dis. 2024;11:ofae059.9)Dulhunty JM, et al. JAMA. 2024;332:629-637.10)Kubo K, et al. Infect Dis (Lond). 2022;54:213-223.11)Takahashi N, et al. J Intensive Care. 2022;10:49.12)The BALANCE Investigators, et al. N Engl J Med. 2025;392:1065-1078.13)Ito A, et al. Clin Chem Lab Med. 2022;61:407-411.

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日本人アルツハイマー病の早期発見に有効な血漿バイオマーカー

 血漿バイオマーカーは、アルツハイマー病(AD)の診断において、アミロイドPETや脳脊髄液(CSF)バイオマーカーに代わる有望な選択肢となる可能性がある。慶應義塾大学の窪田 真人氏らは、ADの診断および病期分類における複数の血漿バイオマーカーの有用性について、日本人コホートを用いた横断研究により評価した。Alzheimer's Research & Therapy誌2025年6月7日号の報告。 評価対象とした血漿バイオマーカーは、Aβ42/40、リン酸化タウ(p-tau181/p-tau217)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)であり、それぞれ単独または併用により評価した。Aβ42/40の測定にはHISCLプラットフォーム、その他のバイオマーカーの測定にはSimoaプラットフォームを用いた。参加対象者は、アミロイドPET画像および神経心理学的検査に基づき、健康対照群、AD群(AD発症前段階、軽度認知障害[MCI]、軽度認知症)、非AD群に分類した。ROC解析により、AβPETの状態、センチロイド値(CL)と認知スコア、ADの各ステージにおけるバイオマーカーの比較を予測した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、健康対照群69例、AD発症前段階群13例、MCI群38例、軽度認知症群44例、非AD群79例。・AβPETの状態を予測するAUCは、Aβ42/40で0.937、p-tau217で0.926、p-tau217/Aβ42で0.946であり、DeLong検定の結果、これら3つの指標の間に有意な差は認められなかった(各々、p>0.05)。・認知機能正常群のAUCは、Aβ42/40で0.968、p-tau217で0.958、p-tau217/Aβ42で0.979であり、認知機能障害群のAUCは、Aβ42/40で0.919、p-tau217で0.893、p-tau217/Aβ42で0.923であった。・健康対照群およびAD群におけるCLとの相関は、Aβ42/40で−0.74、p-tau217で0.81、p-tau217/Aβ42で0.83であった。・健康対照群およびAD群において、Aβ42/40レベルは2峰性の分布を示し(カットオフ値:0.096)、PET陽性閾値32.9CLに対して19.3CLで高値から低値への変化が認められた。・p-tau217は、疾患進行とともに直線的な増加が認められた。・すべてのバイオマーカーは、論理記憶スコアとの強い相関が示された。 著者らは「血漿バイオマーカーであるAβ42/40とp-tau217、とくにこれらの比であるp-tau217/Aβ42は、AD診断におけるアミロイドPETの代替手法として大きな可能性を秘めていることが示唆された。HISCLプラットフォームベースの血漿Aβ42/40は、アミロイドPET画像診断よりも、より早期にAβ沈着を検出可能であり、早期診断マーカーとして有用であると考えられる」と結論付けている。

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たこつぼ型心筋症の患者では再入院リスクが高い

 たこつぼ型心筋症は、精神的・肉体的なストレスに起因する新しい概念の心筋症である。今回、たこつぼ型心筋症の患者は一般集団と比較して再入院のリスクが高いとする研究結果が、「Annals of Internal Medicine」に3月25日掲載された。 たこつぼ型心筋症は、精神的・肉体的なストレスに起因する一過性の左室機能不全が特徴で、発作時の左室造影所見が「たこつぼ」に見えることから、1990年に日本で提唱された疾患概念である。この疾患では急性期を過ぎると、左室の駆出率は完全に回復するものの、発症後の長期生存率が低下することが報告されている。スコットランドのたこつぼレジストリ研究から、この長期生存率の低下は心血管疾患による死因に起因するという報告がなされた。しかし、たこつぼ型心筋症の回復後に生じる詳しい疾患とその重症度に関しては十分な調査が行われていない。このような背景から、英アバディーン大学およびNHSグランピアンのAmelia E. Rudd氏らは、コホート研究により、たこつぼ型心筋症患者の再入院率とその原因について調査を行った。 たこつぼ型心筋症の620人は、スコットランドのたこつぼレジストリより、2010年以降に診断された患者を無作為に抽出した。対照群は、最近傍マッチング法に基づき年齢・性別・地理的条件が一致するスコットランドの一般集団2,480人と、2013~2017年に実施されたHigh-STEACS Studyに含まれる急性心筋梗塞患者620人で構成された。再入院のハザード比(HR)と95%信頼区間(95%CI)はCoxの比例ハザードモデルより推定された。 入院総数1万2,873件のうち、再入院の発生率は、たこつぼ型心筋症患者で1,000人年あたり743件、スコットランドの一般集団で365件、心筋梗塞患者で750件だった。 次に、各群における再入院の原因を比較した。その結果、たこつぼ型心筋症の患者は一般集団と比較して、全原因による再入院リスクが約2倍高かった(HR 1.96〔95%CI 1.78~2.17〕、P<0.001)。特に、心筋梗塞(HR 3.11〔95%CI 2.11~4.57〕、P<0.001)、心不全(HR 4.92〔95%CI 3.06~7.93〕、P<0.001)、不整脈(HR 3.56〔95%CI 2.55~4.98〕、P<0.001)といった心血管疾患での再入院リスクが有意に高くなっていた。また、精神疾患、脳卒中、肺疾患、神経疾患、感染症、胃腸疾患、末梢血管疾患による再入院リスクも高かった。 一方で、たこつぼ型心筋症の患者を心筋梗塞の患者と比較すると、心筋梗塞(HR 0.27〔95%CI 0.19~0.38〕、P<0.001)、心不全(HR 0.55〔95%CI 0.37~0.83〕、P=0.004)、不整脈(HR 0.65〔95%CI 0.47~0.91〕、P=0.011)の再入院リスクは低くなっていたものの、脳卒中や心血管系以外の原因(精神疾患、肺疾患、がんなど)で再入院するリスクは同程度だった。 著者らは、「今回の結果により、たこつぼ型心筋症の患者では脆弱性が高まっていることから、退院時の適切なアドバイス、退院後の経過観察、そしてこの疾患特有の治療戦略を組み立てることの必要性が浮き彫りにされた。たこつぼ型心筋症とその他の心血管系疾患との共通点や違いを理解するには、さらなる研究が必要だ」と述べた。

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看護師の貢献が病院経営を救う?【論文から学ぶ看護の新常識】第22回

看護師の貢献が病院経営を救う?看護師の経済的価値を検証した最新研究で、看護業務において最も大きな経済的インパクトを与える領域は、「健康教育」と「医療安全」であることが示された。Daniel Barcenas-Villegas氏らの研究結果であり、Journal of Nursing Management誌2025年3月19日号に掲載された。臨床看護師による病院の効率性と経済的持続可能性への貢献:システマティックレビュー研究チームは、看護専門職による病院の効率性と医療の持続可能性への貢献に関するエビデンスを分析することを目的に、システマティックレビューを行った。4つのデータベース(CINAHL、PubMed、Scopus、WOS)で2013年から現在までの英語およびスペイン語の研究を検索し、経済評価に関する一次研究およびシステマティックレビューを対象とした。質の評価にはCASPツール、CHEERSチェックリスト、STROBE声明を用いた。主な結果は以下の通り。3,058件の記録のうち、9件の研究(333,597例)が適格と判断された。病院が提供する健康教育は費用対効果が高く、1 QALY(質調整生存年)あたり10万ドル未満の費用に収まる可能性がある。看護の専門性、高度実践看護師、および医療安全への投資は、入院や病状悪化の数を減少させる。看護業務の中で最も大きな経済的インパクトを与える領域は、健康教育と医療安全であることが示された。看護の専門性と高度実践看護師の導入は、より経済的に持続可能なモデルを推進するために、医療システムが注力すべき分野であることも示された。近年の研究では、医療現場での看護師の貢献が、病院の効率性や経済的持続可能性の鍵を握ると示唆しています。これは、従来の「Evidence Based Medicine(EBM;根拠に基づく医療)」が重視する臨床的効果に加え、医療が患者にもたらす「価値」を費用対効果で測る「Value Based Medicine(VBM;価値に基づく医療)」の考え方に合致します。(EBM、VBMという用語自体は本論文中に直接記されていませんが、その概念は本研究の議論の基盤です。)その「価値」を定量化する主要指標が、QALY(質調整生存年)です。前回の記事でも解説がありましたが、今回はその具体的な考え方と、海外での評価基準について触れておきます。QALYは、生存期間だけでなく生活の質も加味して費用対効果を評価する指標であり、1QALYあたりにかかるコストが低いほど「費用対効果が高い」とされます。例えばオーストラリアでは、1QALYあたり3万~6万豪ドルが許容目安とされています。本研究では、「健康教育」や「医療安全」、「専門看護師および高度実践看護師(Advanced Practice Nurse:APN)」への投資が、入院や病状悪化の減少、ひいては医療経済への肯定的な影響、費用削減につながる可能性を強く示唆しました。APNは、特定領域でリーダーシップを発揮し、再発・再入院を減らすことでコスト改善に貢献しています。ただし、各国の医療制度や経済状況は大きく異なります。そのため、評価基準も多様であり、引用論文の一部には「結果を私たちの環境に適用できない」との指摘もあります。このため、結果をそのまま日本に適応することはできません。日本においても、看護師の専門性が医療経済に与える影響を、国内のシステムに即した形で具体的に評価し、その真の価値を引き出す戦略が必要不可欠だと考えます。論文はこちらBarcenas-Villegas D, et al. J Nurs Manag. 2025:3332688.

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高齢者の皮膚外用薬、「機械的な後発品への変更」はどう避ける?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第155回

日本老年薬学会より、高齢者における皮膚外用薬の調剤に対して、薬剤師の貢献すべき役割について声明が出されました。<高齢者における皮膚外用剤の調剤に対する日本老年薬学会からの声明>長期収載品の選定療養制度下、とりわけ高齢者に対する調剤時には、これまで以上に患者や介助者・介護者から患者背景や薬剤の効果、安全性および品質に関する情報を聴取した上で、適宜、調剤時に「医療上の必要性」を薬剤師自ら判断する必要がある。先発医薬品と後発医薬品間の治療学的差異が否定できない場合があることを踏まえると、効果と安全性を確保するためには機械的な後発品への変更は避けるべきであると考えられる。(2025年6月24日 日本老年薬学会)いわゆる「長期収載品の選定療養」が2024年10月から始まり、10ヵ月が経ちました。特段必要性が認められない場合に後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)を選ぶと、後発医薬品との差額の4分の1相当を徴収するという仕組みは、多くの人が後発医薬品を選択する事態につながり、ここにきて各所に波紋を広げています。とくに高齢者において、この制度自体や先発医薬品から後発医薬品への変更、また後発医薬品間での変更などについて、説明内容を理解・認識しにくいことが課題となっているとのことです。この声明では、具体的に、以下についても述べられています。1.効果、安全性および品質に関わる患者からの情報が「医療上の必要性2(副作用、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、治療効果に差があったと医師が判断する場合)」や「医療上の必要性4(剤形上の違いにより必要と判断する場合)」に該当する可能性があり、先発医薬品から後発医薬品への初回切り替え時だけではなく、切り替え後の調剤時においても患者から十分な情報を聴取する必要がある。2.適宜、医療機関への疑義照会を行い、医師や他の医療従事者と連携して患者にとって最適な治療を提供する必要がある。また、配合変化結果などを基に薬剤師自らが「医療上の必要性4(剤形上の違いにより必要と判断する場合)」を判断する必要がある。3.介助者や介護者など患者のキーパーソンを通じた服薬指導や患者フォローアップが必要な高齢者への調剤では、キーパーソンからの幅広い情報聴取を踏まえた「医療上の必要性2副作用、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、治療効果に差があったと医師が判断する場合)」の判断が必要である。4.皮膚外用剤において、臨床試験などで効果や安全性が評価されていない後発医薬品への切り替えは慎重にならざるを得ないと考える。4つ目にようやく皮膚外用薬についての文言が出てきましたが、これは2025年3月に「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」が一部改正され、異なる剤形区分または同じ剤形区分で基剤の性状が異なる製剤間の生物学的同等性評価において、皮膚薬物動態学的試験ではなく患者を対象に、薬理効果または臨床効果を指標とした臨床試験の実施を検討する必要があることが示されました。しかしながら、後発医薬品において、開発段階でそのような試験を行う品目は少なく、実際この声明を受けたところでそのような後発医薬品を採用する難しさも感じます。この声明の中で言われていることは重要なことである気はするものの、残念ながらこの声明には具体的な事例がなく、「高齢者の製剤変更にもうちょっと配慮して」というふわっとした感じしか伝わってこないのは私だけでしょうか。ただ、「機械的な後発品への変更」と言われてしまうとよい気持ちはしないですし、目の前の患者さんが製剤の変更に耐えうる能力および生活を確保しているかどうか、少し変更の手順を見直してみたり、立ち止まって考えてみたりしてもよいかもしれません。この声明について、今後、何らかの形で具体的な事例が発表されていくことを望みます。

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がん治療に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント 第2版

がん治療の完遂と患者さんのQOL向上に役立つ皮膚障害アトラス近年のがん治療ではさまざまな作用機序の薬剤を使用するため、その副作用として生じる皮膚障害も多様化している。皮膚障害への対応の遅れは薬物療法の完遂率低下や患者さんのQOL低下につながる可能性もあり早期の対応が求められる。本書では各治療で生じる皮膚障害を初版と同様にアトラスを用いてわかりやすくまとめるとともに、新たに放射線皮膚炎、感染症、支持療法の副作用についても記載した。予定通りのがん治療の完遂と患者さんのQOL維持・向上のために、臨床現場で役立つ1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するがん治療に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント 第2版定価4,180円(税込)判型B5判頁数256頁(図数:10枚、カラー図数:325枚)発行2025年5月編集日本がんサポーティブケア学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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サルコペニア・フレイル、十分なエビデンスのある栄養療法とは?初の栄養管理ガイドライン刊行

 サルコペニア・フレイルに対し有効性が示された薬物療法はいまだなく、さまざまな栄養療法の有効性についての報告があるが、十分なエビデンスがあるかどうかは明確になっていない。現時点でのエビデンスを整理することを目的に包括的なシステマティックレビューを実施し、栄養管理に特化したガイドラインとしては初の「サルコペニア・フレイルに関する栄養管理ガイドライン2025」が2025年4月に刊行された。ガイドライン作成組織代表を務めた葛谷 雅文氏(名鉄病院)に、ガイドラインで推奨された栄養療法と、実臨床での活用について話を聞いた。「推奨の強さ:強、エビデンスの確実性:A」とされた栄養素は 本ガイドラインでは、4つのエネルギー産生栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質、アミノ酸)、2つの微量栄養素(ビタミン、ミネラル)、およびプロ・プレバイオティクスについて、サルコペニア・フレイルの治療に対する介入の有効性が検討された。その中で、エビデンスが十分にあり強い推奨(推奨の強さ:強、エビデンスの確実性:A)とされたのは、以下の2つのステートメントである:サルコペニアならびにフレイルへのたんぱく質の栄養介入は、特に運動療法との併用において筋肉量と筋力を改善することが示されており、行うことを推奨する(CQ4a) 葛谷氏は、「今までの観察研究で十分なたんぱく質の摂取がサルコペニアやフレイルの予防に重要であるという報告は蓄積されている。一方、すでにサルコぺニアやフレイルに陥っている対象者へのたんぱく質の栄養介入のみによる確実性の高いエビデンスは十分ではなく、運動との併用による明確な効果が、システマティックレビューの結果示された」と説明。実臨床でのたんぱく質摂取の指導に関しては、1食当たり25g(=75g/日)または1.2 g/kg体重/日を目安として「肉や魚100g当たりたんぱく質は1~2割程度」と説明することが多いとし、1日トータルで必要量をとることも大切だが、朝昼晩の各食事でまんべんなく摂取することが重要とした。また、とにかく肉を食べなければいけないというイメージが根強いが、魚や大豆製品・チーズなどの乳製品からも摂取は可能であり、日本人の食生活として取り入れることが難しいものではないと話した。サルコペニアへのロイシンおよびその代謝産物であるHMB(β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸)を主としたアミノ酸を含む栄養介入は、筋肉量、筋力、身体機能を改善するため、行うことを推奨する(CQ5a) ロイシンはたんぱく質を構成する必須アミノ酸の1つで、とくにサプリメントからの摂取について多くのエビデンスが蓄積されている。ただし実臨床では、サプリメントの活用も1つの選択肢ではあるものの、まずは食品からの摂取が推奨されると葛谷氏は話し、その際の目安として「アミノ酸スコア」が参考になるとした。「アミノ酸スコア」は各食品に含まれる必須アミノ酸の含有バランスを評価した指標。スコアの最大値は100で、100に近いほど質の高いたんぱく質源とされる。スコア100の食品の例としては、牛肉・豚肉・鶏肉、魚類、牛乳、卵、豆腐などがある。 その他の栄養素については、「サルコペニアへのビタミンDの単独介入の効果は明らかでないが、ビタミンD不足状態にあるときの運動やたんぱく質との複合介入は筋力や身体機能の改善への効果が期待できるため、行うことを推奨する(CQ6a)」が、「推奨の強さ:強、エビデンスの確実性:B」とした。葛谷氏は、疫学的にはビタミンD欠乏がサルコペニアと関連するという報告はあるが、ビタミンDを強化することによる筋力に対する効果についてのエビデンスはまだ十分ではないとし、ステートメントにあるように、不足状態にあるときに運動やたんぱく質と組み合わせた複合介入をすることが望ましいと話した。CKD、肝硬変、心不全など併存疾患がある場合の栄養療法 本ガイドラインでは、慢性腎臓病(CKD)、肝硬変、慢性心不全、慢性呼吸不全(COPDなど)、糖尿病の5つの疾患を取り上げ、これらを伴うサルコペニアとフレイルの予防・治療に対する栄養療法についてもCQを設定してシステマティックレビューを実施している。この中で「推奨の強さ:強」とされたのは、肝硬変患者および糖尿病患者に対する以下の4つのステートメントであった。[肝硬変]・合併するサルコペニア・フレイルに対する就寝前補食や分岐鎖アミノ酸の介入[CQ14b、推奨の強さ:強、エビデンスの確実性:A]・合併するサルコペニア・フレイルに対するHMB(β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸)の介入[CQ14b、推奨の強さ:強、エビデンスの確実性:B]・サルコペニア・フレイルを合併した肝硬変患者の転帰(入院期間や感染症、およびADL)改善を目的としたHMB(β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸)の介入[CQ14c、推奨の強さ:強、エビデンスの確実性:B][糖尿病]・サルコペニア・フレイルを合併した2型糖尿病患者に対し、身体機能の改善を目的とした栄養指導とレジスタンス運動の併用[CQ17b、推奨の強さ:強、エビデンスの確実性:B] 葛谷氏は、「領域によってエビデンスが十分ではない部分があることが明らかになった」と話し、今後のエビデンス蓄積に期待を寄せた。サルコペニア・フレイルの診断時点ではまだ引き返せる、早めの介入を 高齢患者の中にはまだメタボを過度に気にする人がいると葛谷氏は話し、「メタボの概念は非常に重要なものではあるが、75歳以上の高齢者では頭を切り替える必要がある」とした。高齢になって体重が減少し始めた時点およびフレイル・サルコペニアの診断がついた時点ではまだ可逆的な状況である可能性が高いので、食事・運動療法および社会性を保つための介入が重要となると指摘した。 また同領域の研究の進捗に関して、今回のシステマティックレビューの結果、各栄養素単体の摂取の有効性についてのエビデンスはまだまだ不足していることが明らかになったと話し、前向き研究・介入研究が不足しているとした。さらに栄養療法の実施による、身体機能障害や入院・死亡といった転帰不良に対する効果を検証する介入研究が、今後必要となるだろうと展望を述べた。

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ICU入室患者に対する強化タンパク栄養の効果(解説:名郷直樹氏)

 オーストラリアとニュージーランドの8つのICUを対象にした、経腸栄養を受けた患者に対する強化タンパク栄養(100g/L)と通常タンパク栄養(63g/L)を比較し、90日以内の死亡と入院していない日数を1次アウトカムとして評価した、クラスターランダム化、クロスオーバー、オープン試験である。クラスターランダム化は、8つの施設のうち4つずつを強化群、通常群に割り付け、さらに3ヵ月以上の間隔を空け、4つの時期においてそれぞれの施設で強化群と通常群に割り付けるデザインになっている。参加施設が少ないデメリットを、クロスオーバーにより両群に2回ずつ割り付けることでカバーするデザインといえる。両群の患者背景を見るとよくそろっており、8施設の研究でありながら大きな問題はなさそうである。 1次アウトカムについての結果であるが、入院していない日数では、強化群で62日、通常群で64日、その差は-1.97、95%信頼区間(Confidence Interval:CI)は-7.24~3.30、生存率については、強化群72.6%、通常群74.0%、リスク比0.99(95%CI:0.95~1.03)と報告されている。入院していない日数の95%CIの上限・下限が一桁の日数の範囲に収まり、生存に対するリスク比の信頼区間が1を挟んで±0.1の範囲にあるように、統計学的に差がないというだけでなく、臨床的にも大きな差はないと言ってよい結果である。 2次アウトカムの解析では、ICUの入室期間について、強化群で6.6日、通常群で6.2日、ハザード比0.93(95%CI:0.88~1.00)と通常群で短い傾向が示されているが、これは検定の多重性を考えれば、偶然の結果と解釈するのが妥当であるし、通常群のほうが良いという結果で、強化群を新たに導入する結果にはなりえない。 テレビなどで、糖や脂肪が悪で、タンパク質が善であるというような情報が垂れ流される中、タンパク質の強化は集中治療を必要とする患者でもはっきりした効果はなく、ましてや健康人での効果はさらに微妙であることが予想される。重要なのは、単一の栄養素やタンパク質ではなく総カロリーであり、糖質、脂質、タンパク質、その他のバランスであろう。

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2日目のカレーは食中毒のリスク

翌日のカレーで多い食中毒はウエルシュ菌食中毒●原因と感染経路原因菌は、ヒトなどの大腸内常在菌で下水、耕地などに広く分布するウエルシュ菌(図)。ウエルシュ菌食中毒は、エンテロトキシンにより発症する感染型食中毒であり、年20~40件(平均28件)程度あるが、1事件当たりの平均患者数は83.7人で、他の細菌性食中毒に比べ、圧倒的に多く、大規模事例が多い。食中毒の発生場所は、給食施設などで、主な原因食品は、カレー、スープ、肉団子などがある。●主な症状潜伏時間は通常6~18時間(平均10時間)で、喫食後24時間以降に発病することはほぼない。主要症状は腹痛と下痢。下痢の回数は1~3回/日程度のものが多く、主に水様便と軟便。腹部膨満感が生じることもあるが、嘔吐や発熱などの症状はきわめて少なく、症状は一般的に軽く1~2日で回復する。●治療や予防法特別な治療方法はなく、治療は対症療法が主体。予防は食品中の菌の増殖防止であり、加熱調理食品は小分けするなどして急速冷却し、低温で保存する。保存後に喫食する場合は充分な再加熱を行う。また、前日調理、室温放置は避けるべきである。●その他注意する点ウエルシュ菌が産生する溶血毒のために急死する敗血症例もある。国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト ウエルシュ菌感染症より引用(2025年7月4日閲覧)https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ta/5th-disease/010/5th-disease.htmlCopyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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左右の肺がんで死亡リスクに差~日本のがん登録データ

 肺がん罹患率は、解剖学的、遺伝的、環境的要因の影響により右肺と左肺で異なる可能性がこれまでの研究で示唆されている。今回、千葉県がんセンターの道端 伸明氏らが日本のがん登録データで調べたところ、右側肺がんが左側肺がんより多く、死亡リスクは男性では右側肺がんが高かったが、女性では差がなかったという。Cancer Epidemiology誌オンライン版2025年6月24日号に掲載。 本コホート研究では、千葉県がん登録(2013~20年)のデータを用いて、原発性肺がん3万6,502例を対象とし、患者特性を右側肺がんと左側肺がんで比較した。年齢、性別、病期、組織型、その他の共変量で調整した死亡率の左右差を、カプランマイヤー生存曲線、ログランク検定、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。  主な結果は以下のとおり。・右側肺がん(60%)は左側肺がん(40%)よりも多かった。・右側肺がんの死亡率は左側肺がんよりわずかに高かった(ハザード比[HR]:1.05、95%信頼区間[CI]:1.02~1.08、p=0.003)。・男女別に分析すると、男性では右側肺がんの死亡リスクが高かったが(HR:1.08、95%CI:1.04~1.12、p<0.001)、女性では左右差は有意ではなかった。 著者らは「右側肺がんの有病率が高いのは、解剖学的な違いやL858R変異の割合が高いなどの遺伝的要因によるのかもしれない」と考察し、「左右差による臨床的な影響は小さいものの、これらの結果は肺がんの病態に関する見識を提供し、個別化医療の進展に寄与する可能性がある」としている。

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