サイト内検索|page:3

検索結果 合計:4981件 表示位置:41 - 60

41.

東北大学医学部 臨床腫瘍学分野【大学医局紹介~がん診療編】

川上 尚人 氏(教授)西條 憲 氏(講師)石川 史織 氏(大学院生)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴東北大学は、国際卓越研究大学として創薬を重点戦略に掲げており、腫瘍内科はその出口となる治療開発の最前線を担います。当科では「患者さんから教わり、学び、患者さんに還元する」をモットーに、がん診療に根ざした臨床的疑問を起点として、新たな治療法やエビデンスを創出できる腫瘍内科医の育成を目指しています。こうした目標のもと、当科では診療に加えて治験や特定臨床研究への関与を通じた実践的な学びを重視しています。とくに、専攻医の段階から症例報告や原著論文の執筆に取り組み、学会参加や発表を積極的に支援することで、将来の専門性・研究力へとつなげます。地域のがん診療における医局の役割宮城県内のすべてのがん診療連携拠点病院が当科の関連施設であり、診療と教育の両面で地域医療の中核的役割を果たしています。腫瘍救急、緩和ケア、ゲノム医療まで幅広い領域に対応できる環境が整っており、多様な臨床力を実地で身につけることができます。今後医局をどのように発展させていきたいか今後は、キャリア支援やメンター制度をさらに充実させていきます。一人ひとりの挑戦を後押しし、それぞれの強みが活かされる組織をつくることで、地域に根ざしながらも世界と勝負できる腫瘍内科医を輩出してまいります。同医局でのがん診療・研究のやりがいと魅力腫瘍内科医には、2つの重要な側面が求められます。進行がんの患者さんとそのご家族に寄り添う人間味あふれる臨床医としての側面と、病態や治療法について客観的かつ論理的に考察する科学者としての側面です。がん薬物療法の分野では、臨床と基礎研究が密接に連携しており、日々の診療で感じる課題や疑問が、研究の出発点となり、新たなシーズとなります。われわれは臨床と基礎の双方の視点から得られたデータをもとに、こうした課題の解決に取り組んでいます。このように、臨床医と科学者としての両側面が融合することが、腫瘍内科の大きな魅力です。そして、その視点を養うことは、医師としての視野を広げ、より高いレベルへと成長するための原動力となります。当科では、腫瘍内科医としての診療スキルはもちろんのこと、この多角的な視点を磨くことを重視しています。ともに世界に向けて、新たなエビデンスを発信していきましょう!力を入れている治療/研究テーマ当科では、多くの治験を含む臨床試験に参加しているほか、独自の特定臨床研究も展開しております。それだけでなく、新規バイオマーカー開発などのトランスレーショナル研究、そしてアンメットメディカルニーズに基づいたまったく新しい作用機序を持った新規抗がん薬開発の前臨床研究にも取り組んでいます。カンファレンスの様子これまでの経歴2020年に東北大学医学部を卒業後、宮城県の大崎市民病院で初期研修を2年間行いました。初期研修修了後に当科に入局し、大崎市民病院で1年半専攻医として診療に携わったのちに東北大学病院に戻ってきました。現在は内科専門研修プログラムを修了し、大学院生として研究を行っています。同医局を選んだ理由元々がんに興味があり医学部を志したこともあり、がん診療に携わることのできる科を希望していました。初期研修で腫瘍内科をローテートした際、積極的な化学療法のみならず、病棟での全身管理や緩和医療の大切さを学びました。そして双方が必要とされる腫瘍内科にやりがいを感じ、腫瘍内科を志望しました。私は岩手県出身であり、東北地方のがん診療を支えたいと思い、母校である東北大学の腫瘍内科への入局を決意しました。現在学んでいること大学院生として研究室に所属し、大腸がんの研究を行っています。データを用いた後方視的な臨床研究から細胞やマウスを用いた基礎研究まで、自分の興味に沿った幅広い研究ができるため非常に取り組み甲斐があります。学会発表や論文作成についても上級医の手厚い指導のおかげで多くの機会をいただきました。ぜひ「BedsideからBenchへ、BenchからBedsideへ」を掲げる腫瘍内科で、一緒にがん治療を発展させていきましょう!東北大学大学院医学系研究科・医学部 臨床腫瘍学分野住所〒980-8575 仙台市青葉区星陵町4-1問い合わせ先dco@grp.tohoku.ac.jp医局ホームページ東北大学大学院医学系研究科 臨床腫瘍学分野専門医取得実績のある学会日本内科学会(内科専門医、総合内科専門医)日本臨床腫瘍学会(がん薬物療法専門医)日本がん治療認定医機構(がん治療認定医)研修プログラムの特徴(1)患者さん一人ひとりと向き合う、実践的な腫瘍内科研修固形がんを中心に、主治医グループの一員として実際の診療を担当し、知識・技術だけでなく「寄り添う力」を育てます。(2)臨床と研究を両立し、世界と戦える医師へ「BedsideからBenchへ、BenchからBedsideへ」の理念のもと、臨床経験を積みながら大学院での研究活動にも取り組み、医学の発展に貢献できる力を養います。(3)国内外で学びを深める、充実の学会支援制度若手医師の学会発表・国際交流を積極的に支援し、新たな知見を取り入れながら成長できる環境を整えています。詳細はこちら(初期研修/後期研修)

42.

β遮断薬やスタチンなど、頻用薬がパーキンソン病発症を抑制?

 痛みや高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療薬として、アスピリン、イブプロフェン、スタチン系薬剤、β遮断薬などを使用している人では、パーキンソン病(PD)の発症が遅くなる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。特に、PDの症状が現れる以前からβ遮断薬を使用していた人では、使用していなかった人に比べてPDの発症年齢(age at onset;AAO)が平均で10年遅かったという。米シダーズ・サイナイ医療センターで神経学副部長兼運動障害部門長を務めるMichele Tagliati氏らによるこの研究結果は、「Journal of Neurology」に3月6日掲載された。 PDは進行性の運動障害であり、ドパミンという神経伝達物質を作る脳の神経細胞が減ることで発症する。主な症状は、静止時の手足の震え(静止時振戦)、筋強剛、バランス障害(姿勢反射障害)、動作緩慢などである。 この研究では、PD患者の初診時の医療記録を後ろ向きにレビューし、降圧薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、スタチン系薬剤、糖尿病治療薬、β2刺激薬による治療歴、喫煙歴、およびPDの家族歴とPDのAAOとの関連を検討した。対象は、2010年10月から2021年12月の間にシダーズ・サイナイ医療センターで初めて診察を受けた1,201人(初診時の平均年齢69.8歳、男性63.5%、PDの平均AAO 63.7歳)の患者とした。 アテノロールやビスプロロールなどのβ遮断薬使用者のうち、PDの発症前からβ遮断薬を使用していた人でのAAOは72.3歳であったのに対し、β遮断薬非使用者でのAAOは62.7歳であり、発症前からのβ遮断薬使用者ではAAOが平均9.6年有意に遅いことが明らかになった。同様に、その他の薬剤でもPDの発症前からの使用者ではAAOが、スタチン系薬剤で平均9.3年、NSAIDsで平均8.6年、カルシウムチャネル拮抗薬で平均8.4年、ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)で平均6.9年、利尿薬で平均7.2年、β刺激薬で平均5.3年、糖尿病治療薬で平均5.2年遅かった。一方で、喫煙者やPDの家族歴を持つ人は、PDの症状が早く現れる傾向があることも示された。例えば、喫煙者は非喫煙者に比べてAAOが平均4.8年早かった。 Tagliati氏は、「われわれが検討した薬剤には、炎症抑制効果などの共通する特徴があり、それによりPDに対する効果も説明できる可能性がある」とシダーズ・サイナイのニュースリリースで話している。 さらにTagliati氏は、「さらなる研究で患者をより長期にわたり観察する必要はあるが、今回の研究結果は、対象とした薬剤が細胞のストレス反応や脳の炎症を抑制することで、PDの発症遅延に重要な役割を果たしている可能性が示唆された」と述べている。

43.

気管内吸引前の生理食塩水注入は非推奨【論文から学ぶ看護の新常識】第14回

気管内吸引前の生理食塩水注入は非推奨Sun Ju Chang氏らの研究により、人工呼吸器装着患者への気管内吸引前の生理食塩水注入は、利点よりも有害な影響が上回る可能性が示唆された。Intensive and Critical Care Nursing誌2023年10月号に掲載された。集中治療室の人工呼吸器装着成人患者における気管吸引前の生理食塩水注入の利点と有害性:システマティックレビューとメタアナリシス研究チームは、人工呼吸器装着患者において、気管吸引前の生理食塩水注入が臨床的アウトカムに及ぼす影響を明らかにすることを目的として、システマティックレビューとメタアナリシスを実施した。関連文献の検索には6つの主要な論文データベースに加え、特定された研究の参考文献リストや過去のシステマティックレビューなども対象とし、最終的に16件の研究(ランダム化比較試験13件、準実験研究3件)が分析対象となった。データ分析には、ナラティブ・シンセシスとメタアナリシスの手法が用いられた。主な結果は以下の通り。ナラティブ・シンセシスの結果:気管内吸引前に生理食塩水を注入することは、酸素飽和度の低下、酸素飽和度が基準値(ベースライン)に回復するまでの時間の延長、動脈血pHの低下、分泌物量の増加、人工呼吸器関連肺炎の発生率の減少、心拍数の増加、および収縮期血圧の上昇と関連していた。メタアナリシスの結果:吸引後5分時点の心拍数に有意な差が認められたが、吸引後2分および5分の酸素飽和度、および吸引後2分の心拍数については有意差は認められなかった。本研究の結果から、気管内吸引前に生理食塩水を注入することは、利点よりも有害な影響が上回る可能性が示唆された。人工呼吸器管理中の成人患者に対する気管内吸引前の生理食塩水注入に関する最新のシステマティックレビューが発表されました。この研究では、生理食塩水注入の利点と害について包括的に検討しています。生理食塩水注入は、分泌物の粘性を下げ、咳嗽反射を刺激し、吸引量を増やすといった効果を期待して行われる手技です。海外では日常的に行われている施設もあるようです。しかし、今回の研究では、生理食塩水注入により酸素飽和度の低下、回復時間の延長、動脈血pHの低下、心拍数や収縮期血圧の上昇といった有害な影響が示唆されました。これらのエビデンスを踏まえて、臨床現場では生理食塩水注入の適応をより慎重に判断する必要があります。ルーチン手技として行うのではなく、個々の患者の状態に応じて必要性を評価し、選択的に実施することが望ましいでしょう。特に循環動態が不安定な患者や、酸素化が悪化しやすい患者には注意が必要です。気管内吸引の目的は、気道の開存性を維持し、肺コンプライアンスや酸素化を改善することです。しかし、同時に侵襲的な手技であり、合併症のリスクも伴うため理論や根拠をしっかり把握した上で実施する必要があります。日本では生理食塩水注入はあまり行われていませんが、海外ではローカルルールとして実施されている現状があるようです。しかし、ローカルルールに基づく医療行為は、最新エビデンスとの間に乖離が生じ、リスクが伴う可能性があります。今回の研究結果は、そうしたローカルルールの危険性を再考するきっかけにもなるでしょう。論文はこちらChang SJ, et al. Intensive Crit Care Nurs.2023;78:103477.

44.

急がば回れ。実習では手を抜かない【研修医ケンスケのM6カレンダー】第2回

急がば回れ。実習では手を抜かないさて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。この原稿を書いているただいまは2025年4月28日夜の21時、GWの休みに福岡へ帰省して、明日の日直に向けて名古屋へ戻る新幹線車内でカタカタしています。今年は飛び石連休のGW、皆さまいかがお過ごしでしょうか。私は前回の皆さんのご感想、評価が気になってソワソワしています。5月にやるべきこと(イチゴ狩りの季節到来。先端が甘いので、ヘタの方から食べるのがマイルール)さて、5月ですが、4月に続いて講義や実習がある大学が多いと聞いています。この連載では国家試験対策を想定していますが、それまでの間に控えるマッチング、OSCE、卒業試験と、医学部6年生は忙しない毎日ですよね。私の出身大学も5月は臨床実習が普通に毎日ありましたが、よく「実習なんかやっている場合じゃない」「病院見学に行きたい」「国家試験対策に思うように身が入らない」といった声を耳にしたものです。先月は"走り出す準備"として"勉強会のすゝめ"をテーマに記しましたが、今月、5月にぜひ準備してほしいことは2つです。1.どうせやるなら実習はしっかりやる2.志望病院のマッチングに必要なものを揃え始める実習は国試対策に大いに役に立つおそらくこのタイトルを見た時に多くの方が「そりゃないでしょ」と感じると思います。しかし私はこの時期の実習こそ、しっかり臨むべきだと今日お伝えしたいです。そのワケとして強調したいのは「臨床現場の勘を養うことができるから」です。医師国家試験自体が、ペーパー試験なので、試験対策となるとデスクワーク中心になるのは当然です。実習だと机に向き合う時間がないから、試験対策が進まないと感じるのも無理ありません。しかし、ここ数年での医師国家試験、とくに臨床問題では判断力を問われる問題や臨床現場では常識と考えられている問題の出題が増えており、そのような問題こそ得点差がつく傾向にあります。「器具を問われる問題が出たから、実習をしっかり」と感じている教育担当の先生方のお心もお察ししますが、せいぜい出ても2問=2点ほどで、かなり運の要素が強いので、失ったとしても割り切ることができる内容だと私は思います。一方で、判断力や現場の常識を問うような問題は各ブロックで出題され得るため、総合力が合否を分ける医師国家試験では、その対策に時間をかけることに意義を見出すことができます。何より国家試験以上に、卒業試験での多くの学生が苦しむのがこのような問題ではないでしょうか。これらはただ過去問を演習しているだけでは十分な対策になりません。現場での判断力や現場の常識はやはり現場で学ぶのが自然で、最もコスパが良いです。(救急ローテにて。間近で見るドクターヘリってカッコいい!)各検査や治療の温度感を体感するでは具体的に実習では何に注目すべきなのか、が次に気になることと思います。それはズバリ「各検査や治療の温度感を体感する」です。よく試験の総評で「こんなの、いきなりやらないのにな」と耳にするのは、まさに受験生と現場の間での温度感のズレがあるからだと思います。私自身は5月に大学の救命救急センター(=3次救急)、7月に市中病院の救急外来(=2次救急)を実習させていただきました。1つの例だと私は実習を通して「気管挿管」に対する温度感がまるで変わりました。大学の救急に来るような症例は重症であることがほとんどで、挿管されている症例をたくさん学びました。ところが市中病院の2次救急のERでは挿管した症例には出合うことがありませんでした。医療圏ごとの事情はもちろんありますが、当時救命救急センターの実習では日課のように見ていた、あるいは選択肢の1つとしてよく見かけていた「気管挿管」が決して当たり前でないと気づいたのです。研修医や先生方からすると、上記の私のエピソードなんて鼻で笑うほどのことですが、本質的には同じような経験をされた学生は少なくはないはず。しっかり実習に取り組むことが一番の対策になります。実習で手を抜かないことはマッチングにも有利さて、国家試験対策の話をしてきましたが、実習での頑張りはマッチング、とくに人気市中病院での競争にも関わることがあります。6年生で実習に行く各病院には、皆さんが研修医になった時に一緒に働く未来の2年目の先輩方が揃っています。大学病院内はもちろん、関連の市中病院に実習に行く場合にも、そこには1つ上の先輩方がすでに働いています。実習は毎日病院見学をしているようなもので、1つ上の先輩方はどうしても「一緒に働きたいか」という目線で見てしまうものです。さらに不思議なもので、実習先で出会った先生が、実は志望する病院の研修医の同期や先輩後輩関係だった、なんてことがあるんです。「毎日、病院見学のような緊張感をもって」とまでは言いませんが、決して手抜きせず、そこで得られた信用がマッチングで有利に働くと信じて取り組みましょう!マッチングに必要な書類を整える(大学を出て見えた景色はとても新鮮でした!)マッチングの話題に触れましたが、6月にはマッチング登録が始まります。5月にもなれば志望病院もなんとなく定まっている方が多いはずですが、どの病院を受験するにしても採用に必要な書類があります。履歴書や小論文では、志望理由や自身の医療観を必ず書くことでしょう。病院ごとに表現を変える、視点を変えることは必要なことですが、自分の持つ軸があるはずです。「こんな研修生活を送りたい」「現状の医療に対してはこんなことを感じているから、将来的には…」など。これらは実際の書面に落とさずとも、何かに書き出して言語化することは始めておきましょう。必ず書く、あるいは発表することですし、取り組み始めることでマッチング対策の助走になります。何より自分の医療に対する価値観を見つめようという気持ちになります。そしてマッチングで一番初めにふるいにかけられるのは書類です。書類を提出して初めて採用試験の受験資格を得ることができます。つまり、律速段階、というわけです。早目に取り掛かることで「あー、やらなきゃな」というストレスから解放され、試験対策にもプライベートにも注力できます。今月のまとめいかがだったでしょうか。今月は実習では手を抜かず、マッチングの書類は早目に取り組むべし、というお話でした。5月の現在、2月の国家試験までは意外と時間があります。試験対策に焦りを感じること自体は悪いとは思いませんが、それ以上に注力することがあります。「急がば回れ」、まずは今だからこそ取り組むべきことをしっかりやれば大丈夫ですし、なんだかんだで早いです。次回もまたお楽しみに!

45.

青年期統合失調症に対するブレクスピプラゾールの短期的有用性〜第III相試験

 青年期の統合失調症に対する現在の治療は、不十分であり、新たな治療オプションが求められている。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのCaroline Ward氏らは、青年期統合失調症に対するブレクスピプラゾール治療の短期的有効性および安全性を評価するため、10ヵ国、62施設の外来診療における国際共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験を実施した。The Lancet Psychiatry誌2025年5月号の報告。 同試験の対象は、DSM-5で統合失調症と診断され、スクリーニング時およびベースライン時に陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコア80以上であった13〜17歳の患者。ブレクスピプラゾール群(2〜4mg/日)、プラセボ群、アリピプラゾール群(10〜20mg/日)のいずれかに1:1:1でランダムに割り付けられた。主要有効性エンドポイントは、PANSS合計スコアのベースラインから6週目までの変化とした。安全性は無作為に割り付けられ、試験薬を1回以上投与された患者について評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・2017年6月29日〜2023年2月23日にスクリーニングされた376例のうち、316例がランダム化された。内訳は、ブレクスピプラゾール群110例、プラセボ群104例、アリピプラゾール群102例。・対象患者の平均年齢は、15.3±1.5歳。女性は166例(53%)、男性は150例(47%)。・米国国勢調査局分類による人種別では、白人204例(65%)、黒人またはアフリカ系米国人21例(7%)、アメリカ先住民またはアラスカ先住民7例(2%)、アジア人2例(1%)、その他81例(26%)。・最終診察時の平均投与量は、ブレクスピプラゾールで3.0±0.9mg、アリピプラゾールで13.9±4.7mgであった。・PANSS合計スコアのベースラインから6週目までの最小二乗平均値変化は、ブレクスピプラゾール群で−22.8±1.5、プラセボ群で−17.4±1.6(プラセボ群との最小二乗平均値差:−5.33、95%信頼区間[CI]:−9.55〜−1.10、p=0.014)であった。アリピプラゾール群は−24.0±1.6であり、プラセボ群との最小二乗平均値差は−6.53(95%CI:−10.8〜−2.21、p=0.0032、多重検定調整なし)であった。・治療中に発生した有害事象は、ブレクスピプラゾール群で44例(40%)、プラセボ群で42例(40%)、アリピプラゾール群で53例(52%)発現した。・発生率5%以上の有害事象は、ブレクスピプラゾール群では頭痛(7例)、悪心(7例)、アリピプラゾール群で傾眠(11例)、疲労(8例)、アカシジア(7例)。・重篤な有害事象は、ブレクスピプラゾール群で1例(1%)、プラセボ群で3例(3%)、アリピプラゾール群で1例(1%)報告された。・死亡例の報告はなかった。 著者らは「青年期統合失調症において、ブレクスピプラゾール2〜4mg/日は、プラセボと比較し、6週間にわたる症状重症度の大幅な改善に寄与することが示唆された。また、安全性プロファイルは、成人の場合と一致していた。これらの結果は、青年期統合失調症におけるブレクスピプラゾールに関するエビデンスのさらなる充実につながり、臨床現場における治療選択の参考となるであろう」と結論付けている。

46.

気候変動はアレルギー性鼻炎を悪化させる?

 アレルギー性鼻炎を持つ人にとって、春は、涙目、鼻づまり、絶え間ないくしゃみなどの症状に悩まされる季節だが、近年の地球温暖化はこのようなアレルギー性鼻炎を悪化させる可能性があるようだ。新たな研究で、気候変動が進むにつれ、花粉アレルギーのシーズンはいっそう長くなり、アレルギー性鼻炎の症状もより重症化することが予想された。米ジョージ・ワシントン大学医学部のAlisha Pershad氏らによるこの研究結果は、「The Laryngoscope」に4月9日掲載された。 気候変動が健康にもたらす悪影響は、世界的な問題として深刻化している。地球温暖化は炎症性上気道疾患、中でもアレルギー性鼻炎に影響を与えることが示されており、耳鼻咽喉科領域での影響は特に顕著である。このことを踏まえてPershad氏らは、データベースから選出した30件の研究結果のレビューを実施し、気候変動が世界の成人および小児におけるアレルギー性鼻炎にどのような影響を与え得るかを調査した。 30件の研究のうち16件では、気候変動に関連する花粉シーズンの延長と花粉濃度の上昇のいずれか、またはその両方について報告されていた。このうち、米国で実施された研究では、花粉シーズンが最大19日間長くなり、花粉の年間飛散量は16〜40%増加すると予測されていた。 本研究で判明したその他の主な結果は以下の通りである。・ブタクサは、二酸化炭素などの温室効果ガスの影響が大きい都市部では成長と開花が速く、より多くの花粉を生産する傾向にある。・花粉の飛散量の増加に伴い、アレルギー性鼻炎の症例も増加する。・花粉の飛散量の増加に伴い、アレルギー性鼻炎の症状も重くなる。・医師は花粉シーズンに変化が生じていることと、それがアレルギー性鼻炎の増加につながっていることに気付いている。 Pershad氏らは、「アレルギー性鼻炎は不快で煩わしい症状に過ぎないと思われがちだが、実際には医療資源に深刻な負担をかけており、気候変動が進むにつれてその負担は大きくなるばかりだ」と指摘する。同氏らは、具体的な負担額は年間34億ドル(1ドル140円換算で4340億円)に上り、そのほとんどは、処方薬と外来診療にかかる費用だと説明した上で、「医療専門家には十分に理解されていないかもしれないが、この増加傾向にある疾患の経済的負担は過小評価できるものではない」と述べている。 Pershad氏は、「医師は、アレルギー性鼻炎が患者の転帰に与える影響を直接目にする立場にあり、気候変動の激化に合わせて診療を適応させることができる。地域住民から信頼される立場にある者として、医師は最前線での経験を活かし、気候危機への取り組みにおいて意義ある変化を訴えるべきだ」と述べている。

47.

医療現場でのコミュニケーションの問題はインシデントの主因

 医療現場でのコミュニケーションの問題は、患者の安全に関わるインシデント(以下、インシデント)の主因であることが、新たな研究で明らかになった。インシデントとは、ニアミスなど患者に実害がなかったものも実害があったものも含めた、標準的な医療から逸脱した行為や事態のことを指す。本研究では、コミュニケーションの問題のみを原因として生じたインシデントは13.2%に上ることが示されたという。英レスター大学医学部のJeremy Howick氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に4月15日掲載された。 Howick氏らは、論文データベースからコミュニケーションの問題が患者の安全に与える影響を定量的に評価した46件の研究を抽出して結果を統合し、医療従事者間(臨床スタッフ間および臨床スタッフと非臨床スタッフ間)、または医療従事者と患者・介護者間のコミュニケーションの問題が患者の安全に与える影響を検討した。これらの研究には総計6万7,826人の患者が含まれていた。 46件中4件の研究では、医療におけるコミュニケーションの問題がインシデントの唯一の原因として認められた割合を検討しており、その中央値は13.2%(四分位範囲6.1〜24.4%)だったことが示されていた。残る42件の研究では、コミュニケーションの問題がインシデントの一因であったかが、他の因子とともに検討されていた。それらの研究からは、中央値で24.0%(同12.0〜46.8%)のインシデントにコミュニケーションの問題が関与していることが明らかになった。 ある症例では、医師がビープ音を発しているポンプを止めるところを誤って心臓病の薬の点滴を止めてしまっていた。医師が看護師にそのことを伝えなかったため、その後、患者に危険な頻脈が生じたという。別の症例では、手術後の患者に腹痛が生じ、内出血の兆候である赤血球数の減少が認められたにもかかわらず、看護師から外科医にそのことが伝達されなかったため、患者が死亡していた。研究グループは、患者の死因となったこの内出血は予防できた可能性があると述べている。 Howick氏らは、「本研究結果は、医療従事者が同僚や患者などとの強い関係を築くために効果的なコミュニケーションスキルを身に付け維持することが、極めて重要であることを浮き彫りにしている」と述べている。 さらにHowick氏らは、このようなコミュニケーションの問題が発生する理由や患者を守るための改善策を解明するには、さらなる研究が必要だとしている。同氏らは、「コミュニケーションスキルの向上を目指す医療従事者は、患者の安全向上を目的としたコミュニケーション介入に関する公開報告書を読むと参考になるだろう。これらの報告書では、医療従事者間、そして医療従事者と患者間の言語コミュニケーションに対する標準化された介入アプローチが紹介されている。しかし、このような介入をさらに最適化・発展させ、患者安全の向上に最も効果的な介入を特定するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。

48.

高齢の心不全患者が感染症で再入院にいたる因子とは

 心不全(HF)患者の再入院は、患者の死亡率上昇だけでなく、医療機関に大きな経済的負担をもたらす。高齢HF患者では、しばしば感染症による再入院がみられるが、この度、高齢のHF患者における感染症関連の再入院にフレイルと腎機能の低下が関連しているという研究結果が報告された。徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床薬学実務実習教育分野の川田敬氏らの研究によるもので、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に3月11日掲載された。 世界でも有数の高齢化社会を擁する日本では、高齢のHF患者が大幅に増加している。高齢者では免疫力が低下することから、高齢HF患者の感染症による再入院率も増加していくと考えられる。これまでの研究では60代や70代のHF患者に焦点が当てられてきたが、実臨床で増加している80代以上の高齢HF患者、特に感染症による再入院に関連する因子については調べられてこなかった。このような背景から、川田氏らは、高齢化が特に進む日本の高知県の急性肥大症性心不全レジストリ(Kochi YOSACOI Study)のデータを使用して、高齢HF患者の感染症による再入院に関連するリスク因子を特定した。 研究には、2017年5月から2019年12月の間に急性非代償性心不全(ADHF)でレジストリに登録された1,061名を含めた。この中から死亡した患者30名、左室駆出率、日本版フレイル基準(J-CHS)スコア、その他の検査結果などが欠落していた302名を除外し、729名を最終的な解析対象に含めた。 解析対象729名のHF患者の平均年齢は81歳(四分位範囲72.0~86.0)であった。患者は退院後2年間の追跡期間中に感染症関連の再入院を経験した121名(17%)と、感染症関連の再入院を経験しなかった患者608名に分けられた。 HF患者の感染症関連再入院に関連する因子はロジスティック回帰分析により決定した。その結果、独立した予測因子として、J-CHSスコア≧3(調整オッズ比1.83〔95%信頼区間1.18~2.83〕、P=0.007)が特定された。 次に感染症関連再入院の確率を予測するために、各患者について勾配ブースティング決定木(GBDT)モデルを構築した。GBDTモデルでは、J-CHSスコアの高さと推算糸球体濾過量(eGFR)の低下が、感染症関連再入院の増加を予測する最も重要な因子であり、それぞれ「スコア≧3」、「eGFR<35mL/min/1.73m2」の場合にリスクの増加が観察された。また、決定木分析より、感染症関連再入院のリスクは高(J-CHSスコア≧3)、中(J-CHSスコア<3、eGFR≦35.0)、低(J-CHSスコア<3、eGFR>35.0)に分類された。 本研究について著者らは、「本解析より、高齢のHF患者に発生する感染症関連の再入院は、フレイルの程度とeGFR値に関連することが示された。これらの知見は、医療提供者が高齢のHF患者の再入院リスクを適切に管理し、患者の転帰を改善するための貴重なインサイトを提供するものである」と述べた。 本研究の限界点については、観察研究でありワクチン接種などの交絡変数が考慮されていないこと、Kochi YOSACOI Studyには平均年齢81歳という高齢の患者集団が含まれており、HF患者全体に一般化することができないことなどを挙げた。

49.

第262回 “撤退戦”本格化へ 1床削減で410万円補助の「病床数適正化支援事業」、計7,000床程度の想定に全国で計5万4,000床の申請、倍率は7.7倍!

2024年度厚労省補正予算による「病床数適正化支援事業」が第1次内示こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。皆さん、ゴールデンウィークはどのように過ごされましたか。私は前半は大学時代の先輩が営む茨城県の農園に、夏野菜の定植の支援に行ってきました。びっくりしたのは農園で飼っていた犬のジロー(17歳、中型犬、雑種)がついに寝たきりとなり、家のリビングに敷かれた布団の中にいたことです。生まれてから17年間、寒い冬も含めずっと屋外で飼われてきて、最期の最期に家の中に上げてもらったわけで、それはそれで幸せな人(犬?)生だったのだろうと思った次第です。それにしても、歩けず、水晶体も脱臼して目も見えず、おむつをしている身なのに、まだまだ食欲は旺盛で、ドッグフードをばくばく食べているのには驚きました。犬は屋外より室内で飼った方が長生きすると言われていますが、ジローのタフぶりに敬服した次第です。さて今回は、「第256回  “撤退戦”が始まっていることに気付かない人々(後編)長崎大病院全病床の1割以上に当たる98床削減、国も『病床1床減らせば410万円』の補助金用意、“撤退戦”本格化の兆し」で書いた、2024年度厚生労働省補正予算による「医療施設等経営強化緊急支援事業」の中の「病床数適正化支援事業」の第1次内示が公表されたので、それについて書いてみたいと思います。第256回では「知人の医療コンサルタントは『各都道府県ともかなりの申し込みが来ているようだ』と話していました」と書きましたが、実際、相当な申請数になったようです。まさに“撤退戦”本格化と言えるでしょう。第1次内示の配分額は約294億円で、対象病床数は7,170床厚労省は4月11日、病床数適正化支援事業(予算額約428億円)の第1次内示の配分額を都道府県に通知しました。第1次内示の配分額は約294億円で、対象病床数は7,170床です。表に示したように各都道府県に100床分以上配分されています。病床数適正化支援事業(第1次内示額)/厚生労働省資料より画像を拡大する多いのは東京都539床、神奈川県411床、北海道352床、千葉県276床、茨城県260床、新潟県260床、鹿児島県253床です。各地域の病院経営者の切迫度合い、行政動向に対する敏感さ、都道府県担当者の熱心さなどさまざまな要素が影響した結果と言えそうです。なお、経営支援の緊急性が高い医療機関を対象とするため、一般会計からの繰入金のある公立病院などは支給対象から除外し、対象病床の上限数は1医療機関当たり50床とするなどの対応が取られています。約200の公立病院などから8,000床、約1,800の民間病院などから4万6,000床の申請病床数適正化支援事業は「効率的な医療提供体制の確保を図るため、医療需要の急激な変化を受けて病床数の適正化を進める医療機関に対し、診療体制の変更等による職員の雇用等の様々な課題に際して生じる負担について支援を行う」もので、期日内に病床数(一般病床、療養病床及び精神病床)の削減を行う病院又は診療所に対し、削減した病床1床につき410万4,000円が交付される、というものです。同種の補助金としては、すでに地域医療介護総合確保基金の中の病床機能再編支援事業(単独支援給付金支給事業)があります。こちらは制度区分にもよりますが1床当たり200万円程度なので、410万円は実にその倍額です。4月23日付の日本経済新聞の報道などによれば、福岡 資麿厚生労働相は22日の閣議後の記者会見で、過剰な入院用のベッドを減らした場合に支給する補助金への申請が全国で計5万4,000床に上ったことを明らかにしました。当初は計7,000床程度の削減を見込んでおり、想定の7.7倍ほどに達したとしています。また、申請数は約200の公立病院などから8,000床、約1,800の民間病院などから4万6,000床だったとのことです。次期内示は医療施設等経営強化緊急支援事業の他の事業で生じた残余も活用して6月中旬を目処に厚労省は第1次内示の配分額の算定方法について、1)一般会計の繰入等がない医療機関であって、令和4年度から3年連続経常赤字の医療機関又は令和5年度から2年連続経常赤字かつ令和6年度に病床削減済みの医療機関2)給付額(4,104千円×給付対象とする病床数)の上限は、1)の赤字額の平均の半分を目安とする3)1医療機関あたりの給付は50床を上限(次期内示以降の配分額の算定方法については、変更があり得る。との説明をしています。2)3)はより多くの病院が活用できるための配慮と考えられます。なお、期内示以降の配分額の算定方法については変更があり得るとしています。地域医療介護総合確保基金の病床機能再編支援事業(単独支援給付金支給事業)の支給を受けていた場合は、差額のみが支給されます。今回の給付額は294億円であり、約134億円がまだ残っています。次期内示は医療施設等経営強化緊急支援事業の他事業で生じた残余も活用して、6月中旬を目処に実施するとしています。公立病院を対象外としたことについて北海道などから不満も病院の病床削減意欲がこれほど高かったとは驚きですが、「一般会計の繰入等がない医療機関」という条件を付けて第1次内示では公立病院を対象外としたことは、一部で物議を醸したようです。北海道テレビは4月22日に「病床を減らす病院への国の支援事業で自治体病院が適用外になる可能性が高まり現場で困惑拡大」と題するニュースを配信しています。それによれば、「江別市立病院では、この支援事業で病床70床を削減し、およそ2億8,000万円の補助金を見込んでいました」が、第1次内示では一般会計からの繰入金のある公立病院などは支給対象から除外する方針が示されたことで、病院の事業管理者は、「ただちに納得しかねるという点があります。全国の自治体病院8割以上は赤字なのですが、そういった中で私どもも例外ではなく、これを何とかしなければならない」と語ったとのことです。北海道では病床数適正化支援事業の補助金に大きな期待をしていた公立病院が多かった模様で、4月24日付の北海道新聞によれば、鈴木 直道知事は24日の記者会見で、国が病床を削減する医療機関を支援する病床数適正化支援事業で自治体病院を実質的に対象外としたことについて、「希望する全医療機関に確実に支援が行き届くよう、全国知事会や関係団体とも連携して国に要請する」と述べたとのことです。福岡厚労相は22日の閣議後記者会見で、この点について「他の補正予算の事業や融資の拡充と合わせ、必要な支援が行き届くよう取り組む」と述べています。せっかく公立・公的含め全国の病院が「病床を減らす」ことに相当前向きになっているのです。赤字で病床削減やリストラが必要な病院は公立・公的病院が多いだけに、第2次内示や来年度以降の予算化においては、相応の対応が求められるところです。

50.

AIチャットボットに看護師と同等の効果?不安・抑うつの軽減効果を検証【論文から学ぶ看護の新常識】第13回

AIチャットボットに看護師と同等の効果?不安・抑うつの軽減効果を検証Chen Chen氏らの研究で、香港市民向けに開発したAIチャットボットと従来の看護師ホットライン(電話相談)の効果が比較され、不安や抑うつの軽減において両者が同等の効果を持つ可能性が示された。JMIR Human Factors誌2025年3月号に掲載された。AIチャットボットと看護師ホットラインの不安・抑うつ軽減効果の比較:パイロットランダム化比較試験研究チームは、地域住民向けのAIチャットボットを開発し、香港市民の不安および抑うつの軽減において、AIチャットボットと従来の看護師ホットラインの効果を比較することを目的に、パイロットランダム化比較試験(RCT)を実施した。試験の実施期間は2022年10月から2023年3月であった。対象は香港市民124名で、AIチャットボット群と看護師ホットライン群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。最終的に、AIチャットボット群では62名、看護師ホットライン群では41名が介入前後の調査に参加した。参加者は、介入前後にGAD-7(全般性不安障害尺度)、PHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)、および満足度アンケートを含む質問票に回答した。分析には、独立標本および対応のあるt検定(両側検定)ならびにカイ2乗検定を用いて、不安と抑うつレベルの変化を評価した。主な結果は以下の通り。AIチャットボット群:介入前の抑うつスコアは平均5.13(標準偏差[SD]:4.623)であったのに対し、介入後は平均3.68(SD:4.397)と統計的に有意な低下が認められた(p=0.008)。同様に、不安スコアも介入前は平均4.74(SD:4.742)、介入後は平均3.40(SD:3.748)となり、こちらも統計的に有意な低下が認められた(p=0.005)。看護師ホットライン群:抑うつ(p=0.28)および不安(p=0.63)スコアにおいて、介入前後のスコア差に有意差は認められなかった。両群の比較:介入前における両群間の抑うつ(p=0.76)および不安スコア(p=0.71)にも統計的に有意差はなかった。介入後のスコアは、AIチャットボット群の方がわずかに低かったものの、有意な差は認められなかった(すべてのp値>0.05)。抑うつ(p=0.38)および不安(p=0.19)における介入前後スコアの変化量(差分)を両群間で比較した結果においても、有意な差は認められなかった。両群間におけるサービス満足度にも有意差は認められなかった(p=0.32)。AIチャットボットは、従来の看護師ホットラインと同等に不安や抑うつを軽減する効果があることが示された。さらに、AIチャットボットは短期的な不安や抑うつの軽減に有効である可能性が示された。今回の研究では、AIチャットボットが従来の看護師ホットラインと同程度の効果を持つ可能性を示唆しており、とくに短期的な不安軽減においてはAIチャットボットが優れている可能性も示唆されました。これは、メンタルヘルスサポートの選択肢を広げる上で興味深い結果と言えるでしょう。一方で、看護師による電話相談には、AIでは対応が難しい個別の状況に応じたきめ細やかな対応や、より複雑な相談への対応力が期待されます。本文中でも触れられていますが、AIチャットボットは診断や長期的な治療戦略を提供するものではなく、あくまで初期的な情報提供や一時的な感情のサポートを目的としたツールと考えられます。この点から、将来、看護師の専門性はより複雑なメンタルサポートを行うことにシフトしていく可能性があります。今回の研究はパイロット試験(本格的なRCTを行う前に実施する小規模なRCT)であり、対象者も限られています。今後より大規模な研究によって、AIチャットボットと看護師によるサポートが、それぞれどのような場面で最も有効なのか、また、両者をどのように連携させていくのが望ましいのかが、さらに明らかになることが期待されます。論文はこちらChen C, et al. JMIR Hum Factors. 2025;12:e65785.

51.

尋常性ざ瘡の短時間接触療法薬「ベピオウォッシュゲル5%」【最新!DI情報】第38回

尋常性ざ瘡の短時間接触療法薬「ベピオウォッシュゲル5%」今回は、尋常性ざ瘡治療薬「過酸化ベンゾイル(商品名:ベピオウォッシュゲル5%、製造販売元:マルホ)」を紹介します。本剤は、わが国初の尋常性ざ瘡の短時間接触療法薬であり、外用薬の患部への接触を短時間にすることで、副作用を軽減しながら治療効果を発揮することが期待されています。<効能・効果>尋常性ざ瘡の適応で、2025年3月27日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>1日1回、洗顔後、患部に適量を塗布し、5~10分後に洗い流します。<安全性>副作用として、紅斑(5%以上)、皮膚剥脱(鱗屑・落屑)、刺激感、そう痒、皮膚炎、接触皮膚炎(アレルギー性接触皮膚炎を含む)、びらん、皮脂欠乏性湿疹、AST増加(いずれも5%未満)、乾燥、湿疹、蕁麻疹、間擦疹、乾皮症、脂腺機能亢進、腫脹、ピリピリ感、灼熱感、汗疹、違和感、皮脂欠乏症、ほてり、浮腫、丘疹、疼痛、水疱、口角炎、眼瞼炎、白血球数減少、白血球数増加、血小板数増加、血中ビリルビン増加、ALT増加、血中コレステロール減少、血中尿素減少、呼吸困難感(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、にきび(尋常性ざ瘡)を治療する塗り薬です。2.にきびの原因菌(アクネ菌など)が増えるのを抑え、にきびの原因となる毛穴のつまりを改善します。3.1日1回、洗顔後、患部に塗布し、5~10分後に洗い流してください。眼、口唇、その他の粘膜や傷口は避けてください。4.この薬には漂白作用があるので、髪や衣料などに付着しないように注意してください。5.この薬を使用中は、強い日光に当たるのをなるべく避けるようにしてください。6.過敏反応や強い皮膚刺激症状が現れたときは使用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。<ここがポイント!>尋常性ざ瘡は、一般的に「にきび」として知られる炎症性疾患です。好発部位は顔面や胸背部などの脂漏部位で、思春期以降に発生しやすく、病因にはホルモンバランスの乱れ、皮脂の過剰産生、角化異常、Cutibacterium acnes(C. acnes)などの細菌の増殖が複雑に関与しています。過酸化ベンゾイルは強力な酸化作用を持ち、尋常性ざ瘡の原因菌であるC. acnesなどの細菌に対する抗菌作用と、閉塞した毛漏斗部での角層剥離作用を有しています。国内では2.5%のゲルおよびローション製剤が販売されていますが、1日1回洗顔後に患部に塗布する必要があり、刺激やかぶれなどの副作用に加え、衣類に対する脱色作用に注意が必要です。本剤は、国内初の短時間接触療法(Short contact therapy)用ゲル製剤であり、既承認医薬品のゲル製剤(商品名:ベピオゲル2.5%)の新用量医薬品として開発されました。本剤は過酸化ベンゾイルを5%含有しており、外用薬の患部への接触を短時間にすることで副作用を軽減しながら治療効果を発揮します。商品名に「ウォッシュ」とあるように、1日1回、洗顔後に患部に塗布したのち、5~10分後に洗い流すという用法が特徴です。本剤は、高濃度の主薬成分を含む製剤を塗布部位から手早く除去できるように、洗浄力の高いアニオン性界面活性剤2種類を配合しています。顔面に尋常性ざ瘡を有する患者を対象とした第III相プラセボ対照試験(M605110-05試験)において、主要評価項目である治療開始12週後のベースラインからの総皮疹数の減少率(最小二乗平均値)は、本剤群55.90%(両側95%信頼区間:49.89~61.90)であり、プラセボ群の43.85%(38.06~49.64)と比較して統計学的に有意な差が認められました。この結果により、プラセボ群に対する本剤群の優越性が検証されました。

52.

マリバビルの重要なポイント【1分間で学べる感染症】第25回

画像を拡大するTake home messageマリバビルは難治性サイトメガロウイルス(CMV)感染症に対する新規抗ウイルス薬。使用に関する重要なポイントを押さえよう。マリバビル(maribavir)は、これまでの治療で反応しない難治性サイトメガロウイルス(CMV)感染症に対して登場した新しい経口抗ウイルス薬です。臓器移植や造血幹細胞移植後の免疫抑制下の患者において、マリバビルはその治療選択肢の1つとして注目されています。1)適応造血幹細胞移植を含む臓器移植を受けた患者において、既存の抗CMV療法に難治性を示すCMV感染症が適応となります。具体的には、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネットなどに効果が乏しい、あるいは副作用により継続困難な状態を指します。2)作用機序UL97遺伝子は、CMVがコードするウイルス特有のプロテインキナーゼ(タンパク質リン酸化酵素)を産生します。マリバビルはこのUL97プロテインキナーゼを特異的に阻害することで抗ウイルス効果を発揮します。これまでの抗ウイルス薬(DNAポリメラーゼ阻害)とは異なる作用点を持ちます。また、重要な点としては、ガンシクロビル、バルガンシクロビルとは拮抗関係にあるため、併用は避ける必要があります。3)用量通常400mgを1日2回経口投与します。4)腎機能調整腎機能による用量調整は原則不要です。ただし、透析患者における有効性や安全性は十分に検証されていないことには留意が必要です。5)副作用味覚異常(37%)が最も多く報告されており、患者への十分な説明が必要です。その他、嘔気(21%)、下痢(19%)などの消化器症状がみられることがあります。一方、ガンシクロビル、バルガンシクロビルにおいて問題となる骨髄抑制、ホスカルネットで問題となる腎機能障害がいずれも少ないのは、マリバビルの優れた点だといえます。6)注意点マリバビルはCYP3A4を介した薬物相互作用に注意が必要です。とくにタクロリムス(タクロリムスの血中濃度上昇)や、リファンピシン(マリバビルの血中濃度低下)などとの併用時はモニタリングを行うことが推奨されます。また、マリバビルの耐性獲得にも注意が必要です。7)ほかのウイルスに対する活性マリバビルは、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネットとは異なり、単純ヘルペスウイルス(HSV)や水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)には効果がありません。したがって、マリバビルに切り替える際には、HSV、VZVに対する予防的抗ウイルス薬の内服を追加する必要があるかどうかを、ケースごとに検討しなければなりません。まとめマリバビルは、難治性CMV感染症に対する新しい選択肢として、作用機序、副作用の面で従来の抗CMV薬剤と異なる特徴を有します。薬物相互作用や耐性獲得の懸念はあるものの、これまでのCMV治療の追加の一手として今後期待されていることから、皆さんもマリバビルに関する知識を深めましょう。1)Avery RK, et al. Clin Infect Dis. 2022;75:690-701.

53.

撤回論文がメタ解析やガイドラインに及ぼす影響/BMJ

 撤回された臨床試験論文は、エビデンスの統合、臨床診療ガイドライン、エビデンスに基づく臨床診療を含むエビデンスエコシステムに大きな影響を与えることを、中国・Second Military Medical UniversityのChang Xu氏らが、前方引用検索に基づく後ろ向きコホート研究「VITALITY Study I」の結果で示した。エビデンスに基づく医療において、信頼できる意思決定は、信頼できるエビデンスエコシステムの確立に依存し、エビデンスの生成と統合はこのようなエコシステムの確立に重要な要素である。過去10年間で問題のある研究や撤回された研究の数が増加しており、科学研究のデータや結論の信頼性に対し深刻な懸念が高まっている。著者は、「エビデンスを生成、統合および利用する者はこの問題に注意する必要があり、このような潜在的な汚染(contamination)を容易に特定し是正できる実現可能なアプローチが必要である」とまとめている。BMJ誌2025年4月23日号掲載報告。Retraction Watchで撤回論文を特定、医療のエビデンスエコシステムに与える影響を検証 研究グループは、2024年11月5日にRetraction Watchデータベースを用いて何らかの理由で撤回されたヒトを対象とした無作為化比較試験を検索した。その後、Google ScholarおよびScopusを用いて前方引用検索を行い、撤回された臨床試験論文を定量的に組み込んだエビデンス統合研究(2024年11月21日時点)を特定した。 2つの研究者グループが独立してデータを抽出し、撤回された論文を除外した後にメタ解析の結果を更新した。 統合効果の方向性および/またはp値の有意性が変化したメタ解析の割合を推定するとともに、一般化線形混合モデルを用い組み入れられた研究数と影響との関連をオッズ比および95%信頼区間(CI)で示した。また、歪められたエビデンスが臨床診療ガイドラインに与える影響についても、引用文献検索に基づいて調査した。撤回論文で結論が歪められたエビデンスをガイドラインで利用 検索の結果、撤回された臨床試験論文1,330件と、それらを定量的に統合していたシステマティックレビュー847件が特定され、再現可能なメタ解析は合計3,902件であった。 クラスタリング効果を考慮した後、撤回された臨床試験論文を除外すると、統合効果の方向性の変化が8.4%(95%CI:6.8~10.1)、統計学的有意性の変化が16.0%(14.2~17.9)、方向性と有意性の両方の変化が3.9%(2.5~5.2)、効果量の50%以上の変化が15.7%(13.5~17.9)認められた。 組み入れられた研究数と結果への影響の間には明らかな非線形の相関が認められ、研究数が少ないほど影響が大きいことが示された(例:研究数が10件vs.20件以上で、方向性の変化のオッズ比は2.63[95%CI:1.29~5.38]、p<0.001)。 撤回された臨床試験論文によって結論が歪められていた68件のシステマティックレビューのエビデンスが、157のガイドラインで用いられていた。

54.

アラート付き血糖モニタリングにより糖尿病患者の交通事故が軽減か

 インスリン治療を受けている糖尿病患者では、治療に起因する低血糖症が起こることがある。低血糖症が車の運転時に起こった場合、意識障害などから交通事故につながりかねない。この度、インスリン治療を受けている糖尿病患者で、アラート付きの持続血糖モニタリングシステム(CGM)の装着により、運転中の低血糖の発生率が低下するという研究結果が報告された。名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の前田龍太郎氏らが行った研究によるもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」に2月28日掲載された。 2014年の実態調査では、糖尿病治療中の患者の52%が日常生活で低血糖を経験し、そのうちの10%で運転中に低血糖エピソードを生じ、結果としてその2%が交通事故にあった、と報告されている。無自覚の低血糖を加味すれば、運転中の低血糖エピソードの頻度はさらに高い可能性があり、切迫した低血糖を予測してドライバーに警告できる信頼性の高いシステムが必要とされていた。このような背景から、研究グループは、インスリン治療を受けているドライバーを対象に、低血糖アラート機能付きのCGMの有用性を評価する単施設の非盲検ランダム化クロスオーバー試験を実施した。 対象には、2021年7月6日から2023年2月27日の間に名古屋大学医学部附属病院でインスリン治療を受け、週3回以上車を運転する成人の糖尿病患者30名が含まれた。30名の参加者は、アラート機能付きCGM群(アラート群)、アラート機能なしCGM群(非アラート群)に1対1で割り付けられた。参加者は、4週の試験期間の後、8週間おいて、群を入れ替えて再度4週間の試験期間に組み入れられた。CGMは皮膚に貼り付けるパッチ式を採用し、期間中の低血糖警告の閾値は80mg/dL(4.4mmol/L)と設定された。主要評価項目は血糖値が基準値(70mg/dL〔3.9mmol/L〕)を下回っていた時間(TBR)の割合とした。 最終的にCGMの解析に含まれた参加者は27名(平均年齢;61.9±12.6歳、女性;8名)だった。27名には、1型糖尿病8名(30%)、2型糖尿病13名(50%)、その他6名(20%)が含まれた。 2つの試験期間を統合して解析した結果、試験全体でのTBRはアラート群(中央値2.0%〔四分位範囲1.0~7.0〕)と非アラート群(同2.0%〔1.0~6.5〕)で有意な差はみられなかった(P=0.169)。しかし、事前に規定された1型糖尿病のサブグループ解析では、非アラート群と比較したアラート群のTBRは有意に減少していた(群間差-4.4%〔95%信頼区間-8.7~-0.1〕、P=0.047)。また、車を運転するときの低血糖エピソードの発生率は、非アラート群(33%)と比較し、アラート群(19%)で有意な減少が認められた(P=0.041)。 本研究の結果について、研究グループは、「今回のCGMはアラートの閾値が80mg/dL(4.4mmol/L)に設定されており、参加者は血糖が基準値以下(<70mg/dL〔<3.9mmol/L〕)になる前にブドウ糖摂取などの予防的措置をとることができた。今回示された結果は、低血糖アラート機能を備えたCGMが、インスリン治療を受けているドライバーの安全性をさらに高め、糖尿病患者の運転制限の緩和に役立つ可能性があることを示唆している」と述べた。 なお、本研究の限界については、CGMで測定した皮下組織中のグルコース濃度は、近似しているが血糖値と同一のものでないこと、CGMの使用により意識が変わり、血糖管理がより慎重になった可能性があったことなどを挙げている。

55.

2026年度改定で「処方箋料」「後発品調剤加算」は終焉か【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第151回

2025年4月は診療報酬・調剤報酬の改定がなく、比較的穏やかな新年度の幕開けでした。とはいえ、長期収載品の選定療養化が始まったのに医薬品の供給がいまだに安定していないということなどもあり、相変わらず大変な状況の薬局も多いと思います。もしここに改定が重なっていたら大変だったでしょう。原則的に診療報酬・調剤報酬の改定は2年に一度行われるため、次回の改定は2026年4月に予定されています。あと1年を切った今、議論が開始されました。財務省が51年目を迎える「医薬分業」のインセンティブに斬り込んでいる。23日の財政制度等審議会財政制度分科会で“医薬分業元年”と呼ばれる74年から実施してきた、医療機関側の処方箋料に対する手厚い評価には「政策的意義を含め、再考の余地がある」と主張。医薬分業率はすでに80%に達しており「相当な進捗を見せている」との認識を示した。そもそも財務省は、すでに数量シェアで80%を達成している後発品の使用促進に関しても「後発品調剤体制加算」のようなインセンティブは役割を終えているとの立場。今回、後発品と同じく政策的に強力な後押しをしてきた医薬分業の根幹のひとつとも言える処方箋料に目を付けた格好だ。(2025年4月24日付 RISFAX)個人的には、「ついにこの議論をするときが来たか」という感想をもっています。医薬分業をめぐっては、1974年にそれまで6点だった医療機関の処方箋料を10点、さらには50点に引き上げることで、医師側へ強力なインセンティブを付加し、処方箋を発行して薬局で調剤するという政策誘導を図ってきました。その経緯から、1974年を医薬分業元年と呼んだりもします。財務省はこうした経緯を示したうえで、医薬分業推進の背景にあった薬価差はすでに縮減傾向が続いており、医療機関が薬価差益を追及するという問題は改善したという認識を示しました。また、薬局の役割についても「広く認識されるに至っている」とし、現在の医薬分業の進捗を踏まえて「院外の処方箋料の適正な水準を検討すべき」と要求したと報じられています。また、後発品使用促進のインセンティブにも言及し、数量シェアが9割に迫る状況を踏まえ、後発品調剤体制加算をはじめとする調剤報酬体系の見直しを行うべきとも提案したとのことです。一方で、薬局の対人業務に対する評価の重点化を進めるべき、という意見も出されました。全体的に、過去を踏襲するのではなく未来に向けて新たに見直すという姿勢が見受けられます。このRISFAXの記事は、2026年度改定が医薬分業のインセンティブを考え直す場になるという内容で書かれていますが、実際はもっと広く議論されており、2026年度改定は「病院と診療所では経営状況や費用構造などが異なる」「高齢化による伸びに抑える」といった過去を踏襲するのではなく、未来に向けたメリハリある改定の実施を目指しているようです。薬局で処方箋を受ければ点数がもらえる時代が本当に終わろうとしています。対人業務が評価されることは間違いなさそうですが、薬局そのものの価値がどの程度評価されるのか。また、この議論の中で薬剤師会などが過去にとらわれず未来に向けた主張をどのように展開するのか、よくよく見ていきたいと思います。

56.

入院時の呼吸管理、裁判で争点になりやすいのは?【医療訴訟の争点】第11回

症例入院中の患者は時に容体が急変することがある。今回は、入院中の呼吸管理を適切に行うべき注意義務違反の有無が争われた神戸地裁令和5年8月4日判決を紹介する。<登場人物>患者44歳・男性(肥満体型)10代に統合失調症を発症し、以後、悪性症候群での入退院を繰り返していた。原告患者の母被告総合病院(大学病院)事案の概要は以下の通りである。平成29年(2017年)2月15日定期受診で被告病院を受診。視線が定まらず、会話は疎通不良、動作が緩慢で四肢の固縮があり、自力歩行が不可能。体温は37.7℃で、採血の結果、クレアチンキナーゼ(CK)値は1,880IU/L。悪性症候群として、被告病院に入院。抗精神病薬を継続し、輸液で治療が開始された。2月16日体温は36℃台に下がり、採血の結果、CK値は1,557IU/Lまで低下した。自力歩行、意思疎通が可能となった。2月17日精神症状は改善し、CK値は1,102IU/Lまで下がり、輸液終了。3月6日院内での単独行動が可能とされ、院外もスタッフまたは家族付き添いのもとで外出可能とされた。5月16日入院から3ヵ月経過。体のこわばり、動きにくさの訴えあり。呂律が回らず、話が聞き取りにくい状態であったが、表情は穏やかで、会話は可能。5月21日硬い表情でスタッフステーションに来所して発言するものの、呂律が回らず発言が支離滅裂で理解不能となり、精神症状が不安定な状態。5月22日発言はまったく要領を得ず、突然敬礼をする、女性の浴室に入ろうとする、ほかの患者の病室に入って扉やベッドを蹴る、布団をかぶったまま病棟内を歩くなどの不穏行動。隔離処置のため、保護室に入室。5月29日朝から表情は固く、身体の緊張は強く、呼吸は促迫気味であり、多量の発汗がみられた。血液検査の結果、CK値は1万9,565IU/Lであった。亜昏迷の持続、四肢の固縮、発汗を認めたため、医師は患者の隔離を終了して個室病室に移動させたうえ、行動の予測が困難で、点滴の自己抜去のリスクが高いことを考慮し、体幹部および両上肢を拘束、生体モニター装着の上、輸液による治療を開始した。5月30日体温は37.8℃、採血の結果、CK値は1万1,763IU/Lであった。午後8時15分頃、頬の筋緊張や舌根沈下がみられた。5月31日朝看護師の声かけに対し、眼球が上転しかかったまま反応せず、ベッドをギャッチアップして飲水を促すと、「あ、あぁ…」と声を出した。吸い飲みを使用しても、嚥下できずに吐き出してしまう状態であった。誤嚥の可能性が高いことから、朝食は不食となった。午前10時体温が38.4℃まで上昇。経鼻胃管チューブが留置され、弾性ストッキングを装着。午後2時5分清拭を行うため、看護師が訪室。看護師は清拭を開始する前に、患者の全身状態を目視で観察し、清拭を行う旨を告げた。看護師が患者の身体に触れると、患者は両下肢を挙上したため、看護師は、身体の力を抜くように声をかけ、両下肢を押して降ろさせた。その後の清拭中は、患者の身体の緊張は取れていた。下半身の清拭の途中、原告(患者の母)が、患者の顔色が悪いのではないか、息をしていないのではないか、などと看護師らに声をかけた。看護師は、原告(患者の母)の発言に対して応答はせずに、前日の申し送りに舌根沈下があったという記載があったことを想起し、呼吸を楽にする下顎挙上の姿勢をとらせるべく、枕を背中側に挿し入れるとともに、ベッドを操作して腰部および膝部に当たるところをそれぞれギャッチアップした。胸郭の挙上を確認したため、清拭の作業を再開した。その後、看護師が患者の着衣を整えるなどの作業をした後、患者の顔を見ると、顔色が土気色に変わっていたため、ベッド脇のテレメーターのボタンを押して作動させたところ、心拍数40台/分(午後2時15分~17分)であった。抑制帯を外し、橈骨動脈を確認したところ、脈拍が確認されたが、呼吸は確認できなかった。午後4時20分患者に救命処置を行うも改善せず、死亡。実際の裁判結果裁判では投薬する薬剤の選択の判断の合理性なども争われたが、本稿では入院中の呼吸管理に関する部分を取り上げることとする。患者の入院中の呼吸管理につき、裁判所は以下のとおり判示し、注意義務違反があると判断した。裁判所は、被告病院スタッフの義務につき、以下のことを指摘し、「被告病院スタッフには、舌根沈下が確認された5月30日午後8時15分以降、そうでなくとも遅くとも5月31日に入った時点で、訪室時に呼吸数やSpO2値を観察する、あるいは、生体モニターの数値を頻繁に確認するなどして、呼吸状態を含む本件患者の全身状態をより厳格に監視し、異常が確認された場合には、直ちに処置を行うべき義務があった」とした。5月29日時点で、被告病院の医師は、患者の亜昏迷、発汗を認めており、血液検査の結果、CK値が高値の1万9,565IU/Lであったことを確認し、統合失調症のカタトニア(緊張病)で「悪性症候群のリスクが高い状態であった」と診断していたこと患者に輸液が開始され、両上肢及び体幹部を拘束した上、生体モニターが装着されるなどの厳重な処置が開始されていた状態であったため、全身状態が悪化して、重篤な症状に至る危険性が高まっていたといえること患者は、輸液が開始された後も全身状態が快方へ向かっておらず、5月31日には経口摂取不能となり、経鼻胃管チューブが挿入されたこと5月30日の夜には、気道狭窄の原因となり得る舌根沈下が確認されていたこと本件患者が肥満体型であるため、舌根沈下が生じた場合、呼吸不全に陥る可能性があることその上で裁判所は、被告病院の看護師が当日の看護に当たって、呼吸状態については息苦しそうではないかに注意を払う程度のものに止まっていたことを指摘し、「客観的には、患者の全身状態を厳格に観察、管理するという意識を欠くものであった」とした上で、「看護師らは、清拭開始時及び清拭の途中で原告から患者の呼吸状態について指摘された際に、本件患者の呼吸数、SpO2を測定して呼吸状態を確認すべきであったにもかかわらず、ギャッチアップ後に胸郭挙上を確認したのみで異常がないものと速断し、本件患者の全身状態の異常に気付くことなく作業を継続したものであり、被告主張の、医療制度上の制約、被告における診療体制等の事情を考慮しても、この点で、被告病院スタッフには、過失があった」として注意義務違反を認めた。なお、被告病院は、患者の体型からして、睡眠時無呼吸症候群に類するものとして、一時的に呼吸が停止することも考えられ、下顎挙上の姿勢をとった後に胸郭挙上を確認しているとして、一般的な医療水準に照らして十分な対応をしている旨を主張した。しかし、裁判所は「患者の全身状態が相当悪化していた点を前提とする限り、不規則な呼吸が主に体型によるもので、身体状況の異常を示す徴表には当たらないと安易に扱うべきではないといえるのであり、本件患者の体型を考慮しても、被告病院スタッフのこの点に関する注意義務を免れさせ得るものではない」として被告病院の主張を排斥した。注意ポイント解説本件は、患者の呼吸管理の過失(注意義務違反)の有無が争われた事案である。裁判所は、上記のとおり、訪室時に呼吸数やSpO2を観察する、あるいは、生体モニターの数値を頻繁に確認するなどして、呼吸状態を含む本件患者の全身状態をより厳格に監視する義務を認めた。これは、生体モニターが装着されるなどしているような全身状態が悪化する恐れがある状況において、さらに舌根沈下という呼吸停止を来たしうる状態が確認されていること、要するに一般的に見て危険な状態であるからこその処置がされている状況下において、さらに生死に直結し得る状態が確認されたということで、呼吸状態を含む全身状態を監視する義務を認めたものと考えられる。本判決の事案は、統合失調症のカタトニアで悪性症候群のリスクが高い状態であったという特殊性があるものの、ICUに入っている場合や生体モニター装着で管理がなされている場合のような一般に症状悪化の危険性が高い状況下において、呼吸停止・心不全・その他臓器不全などの死に直結し得るような個別の危険症状が別途確認された場合には、同様に当てはまるものと考えられる。また、上記のとおり、本判決は、「本件患者の全身状態が相当悪化していた点を前提とする限り、不規則な呼吸が、主に体型によるもので、身体状況の異常を示す徴表には当たらないと安易に扱うべきではない」としている。このことからすると、患者の体型などの個性ないし素因が原因で危険が生じうるとしても、危険性がある以上は、状態確認を行う義務が軽減されないことが示されている点も留意する必要がある。医療者の視点昨今の医療訴訟を鑑みると、日々の診療において常に訴訟リスクを意識せざるを得ない状況にあります。とくに入院患者の管理では、生体モニターを装着するような重症例において、呼吸状態や全身状態の厳密な観察と適切な対応が求められます。本症例のように、患者の体型や基礎疾患に起因する特性があったとしても、それを根拠に観察義務が軽減されるわけではありません。私たち医療者は、悪化の徴候を早期に捉え、適時適切に対応できるよう、常に注意深く患者を観察する責任があります。そのためには、バイタルサインの確認や生体モニターの数値を頻回にチェックし、異常を見逃さない姿勢が不可欠です。Take home message生体モニター装着で管理がなされるような、状態悪化の危険性が高い状況下において、呼吸停止・心不全・その他臓器不全などの死に直結し得るような個別の危険症状が別途確認された場合には、状態の変化に適時適切に対応できるよう、患者の状態変化について注意深く観察する必要がある。キーワード呼吸管理、状態観察義務、悪性症候群、カタトニア

57.

患者・市民参画(PPI)の詳細情報、4医学誌でも不足/BMJ

 「患者・市民参画(patient and public involvement:PPI)」は、無作為化比較試験(RCT)の効率と妥当性を向上させ、研究が患者の真のニーズと嗜好に合致するようにするためにきわめて重要とされる。ベルギー・KU LeuvenのAlice Vanneste氏らは、主要な医学雑誌に掲載されたRCT論文やそのプロトコールのうち、PPIの記載があるのは20%未満にすぎず、PPIの役割と貢献度に関する詳細な情報は不足しており、プロトコールで計画されたPPI活動と発表された論文で報告された内容の間には矛盾が存在することを明らかにした。研究の成果は、BMJ誌2025年4月10日号に掲載された。主要4誌のメタ疫学研究 研究グループは、主要な医学雑誌に掲載されたRCTの論文およびその試験プロトコールに記載されたPPIの報告とその進展の状況を経時的に調査する目的でメタ疫学研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 4つの主要医学雑誌(BMJ、JAMA、NEJM、Lancet)で2015~23年に発表されたRCT論文と、これに関連する査読付きのプロトコールをPubMedで検索した。各雑誌でこの期間に発表されたその年の最初の10件のRCTを対象とした(論文360報)。 本研究では、PPIを「患者、介護者、一般市民が、試験の計画・立案から実施、結果報告に至るまで、研究の全過程に積極的に関与することであり、試験参加者としての役割とは異なるもの」と定義した。試験委員会への参加が最も多い 360報の論文のうち、対応するプロトコールに言及していたのは299報(83%)であった。PPIを報告していたのは、64報(18%)の論文と56報(19%)のプロトコールだけであった。36件のRCTでは、論文とプロトコールの両方でPPIを報告していたが、両者のPPI報告には顕著な矛盾が存在した。全体として、360の試験のうち84試験(23%)が、論文とプロトコールのいずれか、または両方でPPIを報告していた。 PPIを報告した論文64報とプロトコール56報では、PPI活動に関与していたのは主に患者とその代理人で、最も一般的なPPI活動は試験委員会(たとえば、運営、管理、データ監視の委員会)への参加であった(論文:44報[69%]、プロトコール:39報[70%])。 PPIは、主にRCTの開発段階で行われ、試験デザインに関するフィードバック、試験資料(参加者情報、同意書など)のレビュー、試験の実行可能性(パイロット試験中の試験参加負担、受診頻度、介入の受容性など)の評価などの情報が得られた。PPI報告は増加傾向に プロトコールには論文よりも詳細な情報が記載されていることもあったが、いずれにおいてもほとんどの場合、PPIの貢献度については曖昧なことが多く、特定のアウトカムやRCT内での意思決定への影響に関する詳細な情報の記載はなかった。また、PPIの寄与に関する正式な評価の記載は、プロトコール(18報[32%])よりも論文(37報[58%])で多く、主に謝辞の部分でPPIの貢献度を評価していた。 PPI報告は、全体的に経時的に増加する傾向を認め、過去2年間に最高水準に達していたが、まだ30%を超えていなかった。また、2014年にPPI報告を義務付けたBMJ誌は、論文中のPPI報告の多くを占めた(49報[77%])。PPI報告を義務付けていない他誌では、論文よりもプロトコールでPPIが報告されることが多かった。 著者は、「これらの知見は、一貫性があり詳細で構造化された記述を可能にし、最終的に臨床研究におけるPPIの透明性と影響力を増強するためには、標準化されたPPI報告の方法が必要であること示すものである」としている。

58.

第264回 線維筋痛症女性の痛みが健康な腸内細菌の投与で緩和、生活の質も向上

線維筋痛症女性の痛みが健康な腸内細菌の投与で緩和、生活の質も向上腸内細菌入れ替えの線維筋痛症治療の効果が、イスラエルでの少人数の臨床試験で示されました1)。どこかを傷めていたり害していたりするわけでもないのに、体のほうぼうが痛くなる掴みどころのない慢性痛疾患である線維筋痛症の少なくともいくらかは、健康なヒトからの腸内細菌のお裾分けで改善するようです。線維筋痛症は多ければ25人に1人の割合で認められ、主に女性が被ります。線維筋痛症の根本原因や仕組みは不明瞭で、的を絞った効果的な治療手段はありません。線維筋痛症で生じる神経症状は痛みに限らず、疲労、睡眠障害、認知障害をもたらします。それに過敏性腸症候群(IBS)などの胃腸障害を生じることも多いです。腸内微生物が慢性痛のいくつかに携わりうることが示されるようになっており、IBSなどの腸疾患と関連する内臓痛への関与を示す結果がいくつも報告されています。線維筋痛症の痛みやその他の不調にも腸内微生物の異常が寄与しているのかもしれません。実際、線維筋痛症の女性の腸内微生物叢が健康なヒトと違っていることが最近の試験で示されています。そこでイスラエル工科大学(通称テクニオン)の痛み研究者Amir Minerbi氏らは、健康なヒトの腸内細菌を投与することで線維筋痛症の痛みや疲労が緩和しうるのではないかと考えました。まずMinerbi氏らは、線維筋痛症の女性とそうではない健康な女性の腸内微生物を無菌マウスに移植して様子をみました。すると、線維筋痛症の女性の腸内微生物を受け取ったマウスは、健康な女性の腸内微生物を受け取ったマウスに比べて機械刺激、熱刺激、冷刺激に対してより痛がり、自発痛の増加も示しました。続く実験で腸内細菌の入れ替えの効果が裏付けられました。最初に線維筋痛症の女性の微生物をマウスに投与して痛み過敏を完全に発現させます。その後に抗菌薬を投与して腸内微生物を一掃した後に健康な女性の微生物を移植したところ、細菌の組成が変化して痛み症状が緩和しました。一方、抗菌薬投与なしで健康な女性の微生物を投与した場合の細菌組成の変化は乏しく、痛みの緩和は認められませんでした。線維筋痛と関連する細菌を健康なヒトからの細菌と入れ替えることは、痛み過敏を解消する働きがあることをそれら結果は裏付けています。その裏付けを頼りに、細菌の入れ替えがヒトでも同様の効果があるかどうかが線維筋痛症の女性を募った試験で調べられました。試験には通常の治療のかいがなく、とても痛く、ひどく疲れていて症状が重くのしかかる重度の線維筋痛症の女性14例が参加しました。それら14例はまず抗菌薬と腸管洗浄で先住の腸内微生物を除去し、続いて健康な女性3人から集めた糞中微生物入りカプセルを2週間ごとに5回経口服用しました。最後の投与から1週間後の評価で14例のうち12例の痛みが有意に緩和していました。不安、うつ、睡眠、身体的な生活の質(physical quality-of-life)の改善も認められ、症状の負担がおおむね減少しました。投与後の患者の便検体を調べたところ、健康な女性の細菌と一致する特徴が示唆されました。健康な女性の微生物投与の前と後では糞中や血中のアミノ酸、脂質、短鎖脂肪酸の濃度に違いがありました。また、コルチゾンやプロゲスチンなどのホルモンのいくつかの血漿濃度が有意に低下する一方で、アンドロステロンなどのホルモンのいくつかの糞中濃度の上昇が認められました。「14例ばかりの試験結果を鵜呑みにすることはできないが、さらなる検討に値する有望な結果ではある」とMinerbi氏は言っています2)。 参考 1) Cai W, et al. Neuron. 2025 Apr 24. [Epub ahead of print] 2) Baffling chronic pain eases after doses of gut microbes / Nature

59.

ゾルピデムとBZDの使用が認知症リスク増加と関連〜メタ解析

 ガンマアミノ酪酸(GABA)系は、認知機能や記憶プロセスに関連していることが知られている。そして、GABAA受容体およびその他の関連経路の活動は、βアミロイドペプチド(Aβ)の蓄積に影響を及ぼす。そのため、GABAA受容体に影響を及ぼす薬剤の使用とアルツハイマー病および認知症の発症リスクとの関連を調査する研究が進められてきた。イラン・Shahid Beheshti University of Medical SciencesのKimia Vakili氏らは、ベンゾジアゼピン(BZD)、ゾルピデム、トリアゾラム、麻酔薬に焦点を当て、GABAA受容体に影響を及ぼす薬剤とアルツハイマー病および認知症リスクとの関連を明らかにするため、文献レビューおよびメタ解析を実施した。Molecular Neurobiology誌オンライン版2025年3月20日号の報告。 2024年5月までに公表されたアルツハイマー病、認知症、GABAA受容体作動薬に関するすべての英語文献をメタ解析に含めた。対象文献は、PubMed、Scopusデータベースより検索した。抽出されたデータの分析には、Stata 14.2を用いた。異質性の評価には、Q統計およびI2指数を用いた。出版バイアスの検出には、Egger検定とファンネルプロットを用いた。 主な内容は以下のとおり。・19文献(ケースコントロール研究10件、コホート研究9件)、295万3,980例をメタ解析に含めた。・GABA受容体作動薬の使用と認知症(リスク比[RR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.02〜1.29、I2=87.6%)およびアルツハイマー病(RR:1.21、95%CI:1.04〜1.40、I2=97.6%)の発症との間に、統計学的に有意な関係が認められた。・薬物ベースのサブグループでは、ゾルピデム使用とアルツハイマー病および認知症発症率の増加との関連が認められた(RR:1.28、95%CI:1.08〜1.52、I2=24.3%)。これは、BZD使用と同様であった(RR:1.11、95%CI:1.04〜1.18、I2=87.2%)。・メタ回帰分析では、フォローアップ期間の範囲は研究全体で5〜11年であり、異質性と有意に関連していることが示唆された(p=0.036)。 著者らは「ゾルピデムおよびBZDの使用は、認知症およびアルツハイマー病のリスク増加と関連していることが示唆された」としている。

検索結果 合計:4981件 表示位置:41 - 60