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第94回 システマティックレビュー? メタアナリシス?【統計のそこが知りたい!】

第94回 システマティックレビュー? メタアナリシス?臨床試験や医学研究を読む際に「システマティックレビュー」と「メタアナリシス」という用語を目にすることがよくあります。しかし、これらの言葉はしばしば同じ意味で使われることが多いものの、本来は異なる意味を持っています。今回は、その違いを正確に説明するとともに、論文を読む際の注意点について解説します。■システマティックレビューとは?システマティックレビューは、「ある特定の研究課題に対する既存のエビデンスをあらかじめ定めた基準にしたがって、体系的かつ包括的に論文を収集、評価する研究」を指します。その主な目的は、研究結果の全体像を把握することで、最後に結果を統合して、効果ありや効果なしとかの結論は出さなくてもシステマティックレビューは成り立ちます。【システマティックレビューの手順】明確な研究課題や目的を設定する。定義された基準に従って、関連するすべての研究を検索する。収集した研究を厳密に評価し、有用性や信頼性を判断する。各研究の結果をまとめ、全体的な総括を提示する。【特徴】定性的(質的)な分析が中心。データの統計的統合を必ずしも含まない。システマティックレビューは、質の高いエビデンスを提供するために不可欠であり、特定の治療や介入の有効性を評価する際に重要な基盤を提供します。■メタアナリシスとは?メタアナリシスは、システマティックレビューの一部または拡張として行われる場合が多く、これは「統計的手法を用いて複数の研究結果を統合し、定量的な結論を導き出すプロセス」です。【メタアナリシスの手順】システマティックレビューによって収集されたデータを使用する。各研究の効果サイズ(例:リスク比や平均差)を計算する。効果サイズを統合して、全体の効果を推定する。【特徴】定量的(数値的)な分析が中心。統合された結果を視覚化するためのフォレストプロット*が一般的。*フォレストプロット同じ問題を扱った多数の科学的研究から得られた推定結果を、全体の結果とともにグラフ化したもの。■論文を読む際の注意点1)研究の質を確認するシステマティックレビューやメタアナリシスの信頼性は、元となる研究の質に依存します。バイアスの有無や研究デザインの適切性を確認します。2)異質性の検定複数の研究を統合するメタアナリシスなどでは,研究間の結果にばらつきがあるかどうかを異質性の検定を用いて確認します。3)結果の解釈に注意メタアナリシスの統合結果が有意であっても、実際の臨床的意義を慎重に判断する必要があります。システマティックレビューとメタアナリシスは、医学研究のエビデンスレベルを評価する上で非常に重要です。ただし、それぞれの役割や特徴を理解し、適切に解釈することが求められます。とくにメタアナリシスの結果を過信せず、研究の質や臨床的意義を考慮することが大切です。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第83回 「中間解析」のメリット、デメリットは第84回 臨床研究で用いられる“PICO”と“PECO”とは?第85回 健康寿命はどうやって算出する?

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タンジール病〔Tangier disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義タンジール病は、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール(HDL-C)、アポリポ蛋白(アポ)A-I濃度が著しく低下し、オレンジ色の咽頭扁桃腫大、肝脾腫、角膜混濁、末梢神経障害などの種々の臓器にコレステロールエステルが蓄積することに伴う臨床症状を特徴とする常染色体潜性(劣性)遺伝疾患である。なお、血清脂質値は常染色体共優性遺伝。1961年に米国バージニア州タンジール島の5歳の少年から摘出されたオレンジ色の異常扁桃の病理所見で、多数の泡沫細胞が存在し、この少年と姉の血清HDL-Cが極端な低値を示すことが、Fredricksonらによって報告され「タンジール病」と命名された1)。アポA-Iによる細胞からのコレステロール引き抜きに関与するATP-binding cassette transporter A1(ABCA1)の遺伝子異常に起因する極めてまれな疾患で、早発性冠動脈疾患を来すため早期診断が重要である。■ 疫学極めてまれな難病で、世界全体でこれまで約130例程度しか報告がなく2)、有病率はおよそ100万分の1と推定されている。わが国でも報告例は十数家系程度であるが、未診断例も存在する可能性がある。HDL-C値の下位1%未満の集団の10%にABCA1変異が同定されている。■ 病因ABCA1遺伝子は染色体9q31に位置し、その機能喪失型変異によりタンジール病が生じる3)。ABCA1は細胞膜上のコレステロール輸送体で、血中の遊離アポA-IがABCA1に結合し、ABCA1は細胞内から余剰のコレステロールとリン脂質を細胞外へ排出し、アポA-Iに受け渡し、原始HDLである円盤状のpreβ-HDL粒子を形成する役割を担う。本症では、ABCA1の機能喪失によりpreβ-HDL粒子が形成されず、HDL産生が著しく低下する。また、細胞内からのコレステロール搬出が障害された結果、コレステロールエステルが網内系、皮膚、粘膜、末梢神経のシュワン細胞などの細胞内に異常蓄積し、多臓器で泡沫細胞が出現して機能障害や細胞死を引き起こす。骨髄、肝、脾、リンパ節、皮膚、大腸粘膜、平滑筋などに泡沫細胞が認められ、その結果種々の症状を来す。■ 症状1)臓器腫大と機能障害コレステロールエステルの異常沈着は全身の網内系臓器や粘膜に及ぶため、多彩な臓器腫大・障害が生じる。主な所見は以下のとおりである。(1)オレンジ色扁桃腫大:扁桃は分葉・腫大し、明らかなオレンジ色または黄~灰色の表面を持つ。再発性扁桃炎や扁桃摘出の病歴がしばしば認められる(図1)。(2)肝脾腫:肝腫大は約3分の1に認めるが、肝機能障害は通常軽微である。脾腫は約半数で認められ、軽度の血小板低下症と網状赤血球増加を伴う。脾臓・肝臓への脂質沈着により腹部膨満や肝脾腫が身体診察で認められる。(3)その他臓器へのコレステロールエステル蓄積:リンパ節、胸腺、腸管粘膜、皮膚などで、組織学的には泡沫細胞浸潤として確認される。大腸粘膜沈着に起因する難治性の慢性下痢を呈したまれな症例もある。(4)眼病変:角膜へのコレステロール沈着により角膜混濁(角膜の乳白色の濁り)を来す。多くは軽度で視力障害は生じないが、進行すると視力低下を来す可能性がある。網膜にも色素変性様所見(斑点状の色素沈着)が報告されている。(5)血液・骨髄:血中HDL欠損に伴い赤血球形態異常(棘状赤血球や口裂赤血球など)が報告されており、軽度の溶血性貧血を伴う例もある。骨髄生検では泡沫化マクロファージの貯留像を認める。図1 タンジール病患者のオレンジ色扁桃A:舌扁桃 B:咽頭扁桃(文献2より引用)画像を拡大する2)末梢神経障害軽度から重症までさまざまな末梢神経障害が報告されている。知覚障害、運動障害または混合障害が、一過性または持続性に出現する。小児~若年期から発症し、シュワン細胞内へのコレステロール沈着により髄鞘脱落を起こし、多彩な神経症候を呈する。深部知覚や腱反射の低下はまれで、脳神経を含む末梢神経の再発性非対称性障害や下肢に強い対称性の末梢神経障害や脊髄空洞症様の末梢神経障害として出現する。3)早発性の動脈硬化性疾患タンジール病(ABCA1遺伝子変異ホモ接合体)中の20%で狭心症・心筋梗塞などの動脈硬化性心血管病変の症状が認められる。さらに35~65歳の本症患者では約44%と対照群(男性6.5%、女性3.2%)と比較すると著しく高頻度である。ただ、ABCA1のミスセンス変異の機能障害の違いにより、動脈硬化の程度は個々の症例により異なる。したがって、各患者での動脈硬化のリスク評価と画像診断が必要である。血管内超音波法(IVUS:intravascular ultrasound)による冠動脈の観察で、強度のびまん性の石灰化病変を認めた報告4)や、全身性の重症の動脈硬化病変を合併した症例の報告2)がある。4)耐糖能異常・2型糖尿病膵β細胞におけるABCA1欠損はインスリン分泌障害を引き起こすことが示されており、本症の患者で耐糖能異常や2型糖尿病を合併しやすい一因と考えられる。ABCA1欠損により、膵島(とくにβ細胞)へのコレステロール蓄積によるインスリン初期分泌能低下が機序と考えられる5)。耐糖能異常や2型糖尿病の管理は心血管リスク低減のためにも重要である。■ 予後タンジール病そのものは先天的代謝異常であり、生涯にわたりHDL欠損状態が続くため、長期療養と経過観察が必要である。適切な管理により小児~成人期まで比較的良好に経過する症例もあるが、若年~中年期での冠動脈疾患発症や脳卒中により生命予後が短縮するケースもある。予後改善には動脈硬化性合併症の予防と早期介入が最も重要であり、患者のQOL維持のためには症状コントロールと包括的なリスク管理を続ける必要がある。とくに、狭心症、心筋梗塞などの早発性冠動脈疾患の発症に留意し、定期的な動脈硬化性疾患のチェックが重要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 一般検査血液検査で脾機能亢進による血小板減少症(巨大血小板性血小板低下症)や溶血性貧血(間接ビリルビンや網状赤血球増加)が見られることがある。空腹時血糖上昇、経口糖負荷試験(OGTT)で耐糖能異常やインスリン初期分泌能の指標であるinsulinogenic index を評価し、インスリン初期分泌低下が認められることがある。■ 特殊検査1)脂質検査タンジール病(変異ABCA1遺伝子ホモ接合体または複合ヘテロ接合体)患者では、血中HDL-Cは通常5mg/dL以下(同定された症例の平均3±3mg/dL)と正常の約6%に低下しており、アポA-I値も10mg/dL以下に低下する。LDLコレステロール(LDL-C)も平均正常値の約37%に低下している。これはABCA1欠損により末梢から肝へのコレステロール逆転送が低下し、肝細胞のコレステロール不足からLDL受容体発現が亢進してLDL-Cが低下するためと考えられる。軽度の高TG血症を認めることが多く、TGに富むレムナントリポ蛋白の増加を認める。近年の研究で、ABCA1欠損が肝臓由来のangiopoietin-like protein 3(ANGPTL3)の分泌増加を招き、これが本症患者でみられる高TG血症に関与する可能性が報告されている。一方、変異ABCA1遺伝子ヘテロ接合体(キャリア)では血中HDL-CおよびアポA-I値は正常者の約50%程度に低下する。2)眼科検査コレステロール蓄積による角膜混濁を認めることがあり、眼科で角膜検査が必須である。3)耳鼻科検査本症に特徴的なオレンジ色の扁桃腫大を認めることがあり、耳鼻科での目視検査が必要となる。幼少~青年期に扁桃の著明な腫大と黄色~橙色調への変色がしばしば最初の兆候として現れる。扁桃は分葉状に肥大し、独特のオレンジ~黄灰色を呈するため「オレンジ色扁桃」と呼ばれる。小児期に反復する扁桃炎や扁桃摘出術の既往を有する患者も少なくない。4)画像・生検所見腹部超音波検査で肝脾腫を検査する。オレンジ色扁桃や肝脾腫、角膜混濁などの身体所見から本症を疑った場合、組織生検で泡沫細胞沈着を確認する。とくに直腸粘膜生検は侵襲が比較的低く有用とされ、粘膜固有層にコレステロールエステルを蓄積して泡沫化したマクロファージの集積像が認められれば支持所見となる。同様の所見は骨髄、生検可能な皮膚、肝・脾、生検可能なリンパ節などでも検出される。5)神経内科的検査末梢神経障害精査のため神経伝導速度や筋電図検査で神経障害の分布・程度を評価する。6)早発性動脈硬化性疾患の有無の評価早発性動脈硬化性疾患の有無の精査のため、運動負荷心電図、経胸壁心臓超音波検査、頸動脈エコーや冠動脈CTスキャン検査などで、動脈硬化病変のスクリーニングを行う。無症状でも思春期以降は定期的に心血管評価を実施し、動脈硬化性疾患の発症防止と早期発見に努める。家族内発症が疑われる場合は保因者(ヘテロ接合体)に対する脂質検査によるスクリーニングも重要である。■ 確定診断遺伝子診断でABCA1(ATP-binding cassette transporter A1)遺伝子変異(ホモ接合または複合ヘテロ接合体)を認める。常染色体優性遺伝でHDL-Cが著減するfamilial HDL deficiency(ABCA1遺伝子変異のヘテロ接合体やアポA-I遺伝子変異で起こり、早発冠動脈疾患を合併し、タンジール病のような全身性のコレステロール沈着[オレンジ扁桃・肝脾腫・神経障害]は伴わない)との鑑別が必要である。以下に、厚生労働省難治性疾患政策研究事業「原発性脂質異常症に関する調査研究班」による本症の診断基準を示す。難病情報センターのホームページ「タンジール病」より引用した(2026年1月20日)。最新の情報については、当該ホームページまたは厚生労働省「原発性脂質異常症に関する調査研究班」のホームページで確認いただきたい。【タンジール病の診断基準】Definite、Probableを対象とする。A.必須項目1)血清HDLコレステロールが25mg/dL未満2)血中アポA-I濃度20mg/dL未満B.症状1.オレンジ色の特徴的な扁桃腫大2.肝腫大または脾腫3.角膜混濁4.末梢神経障害5.動脈硬化性心血管病変C.鑑別診断以下の疾患を鑑別する。レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症、アポリポタンパクA-I欠損症、二次性低HDLコレステロール血症*1*1:外科手術後、肝障害(とくに肝硬変や重症肝炎、回復期を含む)、全身性炎症疾患の急性期、がんなどの消耗性疾患など、過去6ヵ月のプロブコールの内服歴、プロブコールとフィブラートの併用(プロブコール服用中止後の処方も含む)HDL-C<25mg/dLの場合、低HDL-C血症の診断フローチャート(図2)6)に従って、二次性低HDL血症を除外し、他の原発性低HDL血症である、古典的LCAT欠損症、魚眼病、アポA-I欠損症を鑑別して診断する(表)6)。遊離コレステロールは増加しておらず、アポA-Iが20mg/dL未満であるが検出限界以下ではない場合、タンジール病が強く疑われる。D.遺伝子検査ABCA1遺伝子変異の同定。ABCA1遺伝子解析が2021年4月に保険収載されている。<診断のカテゴリー>Definite必須項目の2項目をすべて満たす例のうち、Bの1項目以上を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外し、Dを満たすもの。Probable必須項目の2項目をすべて満たす例のうち、Bの2項目以上を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したもの。図2 遺伝性HDL欠損症の診断フローチャート(文献6より引用)表 遺伝性HDL欠損症の臨床所見の比較(文献6より引用)画像を拡大する3 治療HDL-C低値そのものを直接是正する薬剤は存在しない。また、現在のところ、遺伝子治療によるABCA1の補充などの根本的な治療はなく、臨床で利用可能な特異的治療薬は存在しない。過去にナイアシン(ニコチン酸)薬やフィブラート系薬がHDL-C上昇の目的で試みられたが、タンジール病ではABCA1欠損が根本原因のため薬物でのHDL-C正常化は困難であり、有効性を支持する明確なエビデンスはない。粥状動脈硬化性疾患の著しい増加が問題となるので、心血管リスクを下げる目的でHDL-Cを可能な範囲で増加させるための生活習慣の改善が推奨される。具体的には、有酸素運動、適正体重の維持、禁煙に加え、食事では飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換える(地中海食的なアプローチ)ことなどが推奨される。これらによりHDL-Cが僅かに上昇し得るほか、末梢神経症状の改善が報告されている。高TG血症を伴う場合にはフィブラート系薬、選択的PPARαモジュレーターのペマフィブラート(商品名:パルモディア)や魚油製剤の使用を検討する。本症の血清LDL-C値は一般に低いが、もしそうでない場合はスタチンあるいはそのほかの薬でLDL-C値を低下させる。治療目標は症状軽減と動脈硬化危険因子の管理に置かれ、高血圧があれば厳格な降圧、喫煙者には禁煙指導を行い、すべての心血管リスク因子を包括的に管理する。血糖コントロールのための食事・運動療法(必要に応じ経口血糖降下薬やインスリンなど)も糖尿病合併例では重要となる。さらに、合併する早発性動脈硬化性疾患の早期発見と治療も行う。一方、タンジール病に伴う各臓器・組織の症状には、必要に応じて対症的・外科的介入を行う場合がある。扁桃肥大による呼吸・嚥下障害や反復炎症がある場合、扁桃摘出術を検討する。オレンジ色扁桃そのものは病的ではないが、大きさにより気道狭窄や感染温床となる場合がある。角膜混濁が進行し、視力障害を来した場合には角膜移植が考慮されるが、タンジール病の角膜混濁は軽度で視機能に問題はない例が多く、定期フォローに留めることもある。末梢神経障害に対してはリハビリテーションと支持療法を行う。筋力低下や足下垂に対しては装具装着(足関節装具など)や理学療法による歩行補助を行う。痛みやしびれが強い場合は、プレガバリンやデュロキセチンといった神経障害性疼痛の薬物療法を用いることもあるが、エビデンスは症例報告レベルである。なお、本症は2015年から「指定難病 261」として、医療費給付の対象となっている。4 今後の展望(治験中・研究中の診断法や治療薬剤など)将来的な治療法として遺伝子治療が期待されている。たとえば、肝臓におけるABCA1発現をウイルスベクターなどで補充し、HDL産生を回復させる試みが提案されている。ただし、HDL代謝は全身の細胞で営まれるため、肝細胞への遺伝子導入だけでどこまで臨床効果が得られるかは不明である。また、アポA-Iや合成HDLの補充療法、肝X受容体(LXR)作動薬による残存ABCA1の発現誘導なども理論上考えられるが、いずれも現時点では成功していない。総じて現時点では対症療法と合併症予防が中心であり、新規治療法の実現には今後の研究の進歩が必要である。5 主たる診療科(紹介すべき診療科) 患者の予後は主に動脈硬化性疾患の発症に左右されるため、長期的には主に循環器内科で心血管イベント予防に重点を置きつつ、管理を行う。神経障害やその他臓器合併症への対策を継続するために多職種チーム医療が重要であり、循環器内科医、脳神経内科医、眼科医、消化器科医、遺伝カウンセラーなどが連携して患者を包括的にケアする。また、定期フォローアップでは以下の点に留意する。1)早発性動脈硬化性疾患のモニタリング若年期より定期的な循環器内科的評価を行う。具体的には詳細な問診・診察に加え、必要に応じて心電図や心エコー、運動負荷試験、頸動脈エコー、冠動脈CTなどで無症候性の動脈硬化病変のスクリーニングを行う。血清脂質、血糖、血圧、喫煙の有無のチェックも継続し、LDL-C、TGや血圧が管理目標を逸脱していれば治療を行う。2)末梢神経障害の管理神経症状は進行したり寛解したりするため、脳神経内科医による神経学的評価を定期的に行い、筋力低下や感覚障害の変化をモニタリングする。必要に応じてリハビリ計画を見直し、装具の調整や痛みのコントロールを図る。重度の神経障害に対しては日常生活動作のサポート(理学療法士・作業療法士の介入、補助具導入など)も検討する。3)眼合併症の管理眼科検査を定期施行し、角膜混濁の進展や視力変化を評価する。角膜混濁による視力障害が生じれば眼科的介入のタイミングを検討する。4)脾腫・感染症対策脾摘を施行した場合は感染症予防を徹底する。脾腫を温存している場合も、脾臓破裂を防ぐため、激しいスポーツ時のプロテクター装着や事故防止策について指導する。5)家族検査とカウンセリング患者の血縁者に対しては遺伝カウンセリングを提供し、希望があれば保因者検査(ABCA1遺伝子検査や脂質検査)を実施する。ヘテロ接合体では動脈硬化リスクがやや高い可能性もあるため、生活習慣指導を行う。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報、主要な研究グループ、その他参考となるサイト)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患政策研究事業「原発性脂質異常症に関する調査研究」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター タンジール病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本動脈硬化学会(編):動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド 2023年版 「低脂血症の診断と治療」 日本動脈硬化学会(2023年6月30日発行)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)大阪大学医学部附属病院循環器内科(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)りんくう総合医療センター循環器内科  (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報) 1) Fredrickson DS, et al. Ann Intern Med. 1961;55:1016-1031. 2) Muratsu J, et al. J Atheroscler Thromb. 2018;25:1076-1085. 3) Brooks-Wilson A, et al. Nat Genet. 1999;22:336-345. 4) Komuro R, et al. Circulation. 2000;101:2446-2448. 5) Koseki M, et al. J Atheroscler Thromb. 2009;16:292-296. 6) 日本動脈硬化学会(編). 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド 2023年版. 低脂血症の診断と治療. 日本動脈硬化学会. 2023. 公開履歴初回2026年2月16日

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ミノサイクリンは急性期脳梗塞に有益か/Lancet

 急性期虚血性脳卒中に対する発症後72時間以内に開始したミノサイクリン療法は、プラセボとの比較において、安全性への懸念なく90日時点で有意な機能的アウトカムの改善をもたらしたことが示された。中国・首都医科大学のYao Lu氏らEMPHASIS Investigatorsが、同国58病院で行った多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「EMPHASIS試験」の結果を報告した。ミノサイクリンは、広く使用されている忍容性が良好で安価なテトラサイクリン系の抗菌薬で、さまざまな神経疾患に対する有望な薬剤として注目されており、前臨床モデルおよび小規模臨床試験で虚血性脳卒中に対する潜在的なベネフィットが示されていた。著者は、「さらなる研究を行い、今回示された知見を確認し、より重症または軽症の脳卒中患者にも同様のベネフィットが及ぶかどうかを明らかにする必要がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年1月30日号掲載の報告。発症後72時間以内に投与開始、90日時点の優れた機能的アウトカムを評価 EMPHASIS試験の対象は、18~80歳、脳CTまたはMRIで虚血性脳卒中が確認された、発症から72時間以内、National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコア範囲4~25、意識レベルスコア(NIHSSのサブスケール1a)≦1の患者であった。 被験者は、ルーチンに行われていた治療に加えてミノサイクリンの経口投与を受ける群(初回投与量200mg、その後12時間ごとに100mgを4日間)またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。コンピュータ生成無作為化シークエンス法によるブロック無作為化(試験施設により層別化された固定4ブロックサイズ)が用いられた。 主要アウトカムは、90日時点の優れた機能的アウトカム(修正Rankinスケール[mRS]スコア:0~1)であり、無作為化され試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者を対象に、欠損データの補完を行うことなく解析した。 安全性のアウトカムは、試験薬を少なくとも1回投与され、少なくとも1回安全性の評価を受けた患者を対象とし、24時間時点および6日時点の症候性頭蓋内出血などを評価した。主要アウトカム、ミノサイクリン群52.6%、プラセボ群47.4% 2023年5月19日~2024年5月20日に、1,724例がミノサイクリン群(862例)またはプラセボ群(862例)に無作為化された。年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:57~71)、男性が1,151例(66.8%)、女性が573例(33.2%)であり、ベースラインのNIHSSスコア中央値は5(IQR:4~7)であった。 4例(ミノサイクリン群3例、プラセボ群1例)が同意を取り下げ、19例(9例、10例)が追跡不能であった。 90日時点でmRSスコアが0~1の被験者は、ミノサイクリン群で447/850例(52.6%)、プラセボ群で403/851例(47.4%)であった(補正後リスク比:1.11、95%信頼区間[CI]:1.03~1.20、p=0.0061)。 mRSスコアの全範囲にわたる順序解析でもミノサイクリン群が優れ、補正後共通オッズ比は1.19(95%CI:1.03~1.38、p=0.018)であった。 症候性頭蓋内出血の発生はミノサイクリン群とプラセボ群で、24時間時点(1/860例[0.1%]vs.0/861例[0%])、6日時点(3/859例[0.3%]vs.0/861例[0%])でいずれも同程度であった。重篤な有害事象(ミノサイクリン群40/862例[4.6%]vs.プラセボ群51/862例[5.9%]、p=0.24)を含むその他の安全性アウトカムについて有意差は認められなかった。

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うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法、不安レベルにより有効性に違いはあるか

 うつ病患者でよくみられる不安症状は、治療反応の低下と関連している。ブレクスピプラゾールの8週間第IV相オープンラベル試験「ENGAGE試験」において、抗うつ薬への治療反応が不十分なうつ病患者に対するブレクスピプラゾール0.5~2mg/日補助療法により、ライフ・エンゲージメント、抑うつ症状、不安症状の改善が認められた。大塚カナダファーマシューティカルのFrancois Therrien氏らは、臨床的に関連するサブグループにおけるブレクスピプラゾール補助療法の有用性を、ベースライン不安レベル別に明らかにするため、ENGAGE試験の事後解析を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2025年12月29日号の報告。 ベースラインの不安に関するサブグループは、7項目の全般性不安障害評価尺度(GAD-7)の総スコアに基づき、なし/軽度(10未満)、中等度(10~14)、重度(14超)に分類した。各サブグループにおいて、10項目の自己記入式うつ症状尺度(IDS-SR10)のライフ・エンゲージメントサブスケールスコア、IDS-SR総スコア、その他の有効性アウトカムの変化を評価した。安全性についても解析した。 主な結果は以下のとおり。・ブレクスピプラゾール補助療法を受けた患者120例のうち、ベースライン時点での不安症状が、なし/軽度は30例(25.0%)、中等度は43例(35.8%)、重度は47例(39.2%)であった。・IDS-SR10ライフ・エンゲージメントサブスケールスコアおよびIDS-SR総スコアは、ベースラインから8週目までの全サブグループにおいて改善が認められた(nominal p<0.001)。・その他の有効性エンドポイントについても改善が認められた(全サブグループでnominal p<0.05)。・治療下での有害事象の発現率は、76.7%(なし/軽度)、72.1%(中等度)、57.4%(重度)であった。・新たな安全性シグナルは認められなかった。 著者らは「ブレクスピプラゾール補助療法は、ベースラインの不安レベルにかかわらず、患者のライフ・エンゲージメントおよび抑うつ症状の8週間にわたる改善と関連していた。この観察結果は、不安症状の有無にかかわらず、うつ病患者の治療におけるブレクスピプラゾール補助療法の臨床的意思決定を支持している」としている。

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第302回 衆院選で自民党が歴史的勝利、消費税減税で世の中と医療・介護はどうなる?

過激派、左翼も衰退し、ノンポリの若者、国民が増えつつあった時代の映画こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。1月31日、映画監督の長谷川 和彦氏が亡くなりました。いくつかの報道では、1970年代にわずか2本の長編映画しか撮っていなかったにもかかわらず、生涯「映画監督」と呼ばれ続けたことが話題になっていました。私もデビュー作『青春の殺人者』、第2作『太陽を盗んだ男』を封切りの映画館で観て、大きな衝撃を受けた1人です。親殺しがテーマの『青春の殺人者』(1976年度・キネマ旬報邦画1位)は、水谷豊と原田 美枝子の迫真の演技と真っ赤ではないリアルな血の色に映画館で震えた記憶があります。中学の理科教師が原発から液体プルトニウムを盗み出し、原爆を自宅で作って政府を脅迫するという『太陽を盗んだ男』(1979年度・キネマ旬報邦画2位)は、その現実離れしたストーリー展開に加え、お金をかけたアクションシーンや教師役の沢田 研二のスターらしからぬ軽妙な演技に引き込まれました。というわけで、日曜日の夜は開票速報をテレビで観るのは止めにして、長谷川監督追悼の意味も込めて、『太陽を盗んだ男』を鑑賞しました(Amazonプライム・ビデオにありました)。久しぶりに観て感じたのは、1979年という時代の曖昧さです。過激派、左翼も衰退し、ノンポリの若者、国民が増えつつあった時代です。原爆を作った教師は政府に「プロ野球の中継時間を伸ばせ」「ローリング・ストーンズを来日させろ」という、どうでもいいような要求を突きつけるだけです。右でも左でもなく、西でも東でもないその政治性のなさに、当時の時代の空気が感じられて興味深かったです。それにしても、「一市民が原爆を作る」という内容の映画、今なら企画会議で即NGになっていたでしょうね。医療、介護にも影響大きい消費税減税さて、『太陽を盗んだ男』の公開から約半世紀、左翼どころか中道すら完全に衰退モードに入ったようです。日曜日の衆議院選挙は、自民党の圧勝に終わりました。高市 早苗首相は解散前に与党過半数(233議席)を割り込めば「退陣する」と明言していましたので、その目標を大きくクリアしたことになります。一方、中道改革連合は惨敗しました。「中道」という言葉自体に加え、代表2人が写ったポスターもなにやら古臭く、若者に訴求しなかったのかもしれません。選挙の翌日、2月9日に開かれた記者会見で、共同代表の1人、野田 佳彦氏は「われわれ2人の共同代表には時代遅れ感が付きまとっていた」と語っていましたが、その「時代遅れ感」に選挙前に気が付いていなかったこと自体が、大きな敗因と言えそうです。高市首相は「飲食料品については2年間に限り消費税の対象としない」公約を掲げ、選挙後は減税「実現に向けた検討を加速する」としていましたので、消費税減税がいよいよ現実味を帯びてきました。それにしても、今回の衆院選での与野党含めての減税公約にはほとほと呆れました(「チームみらい」以外)。本当に消費税減税が実現した場合、日本はどうなるのでしょうか。医療、介護にも影響大きい消費税減税について、考えてみます。日本経済新聞コラム「大機小機」、消費税減税後の未来を予測2月3日付の日本経済新聞に掲載された経済コラム「大機小機」が、消費税減税後の世界について興味深い予測を行っていたので、その内容を簡単に紹介します。この日の「大機小機」は、「自分が10年後の日本にいると仮定して、現在の消費税減税の提案を評価してみよう」という前提で、「今後10年間のことが過去形」で語られるというSFのようなユニークな内容でした。それによれば、「2026年2月の衆議院選挙の結果を受けて、食料品にかかる消費税が2年間限定で、27年4月からゼロになった。実際にやってみると次のようなことがわかった」として、10年間に起きたことを3点挙げています。「第1に経済活動に不規則な変動が起きた。(減税直前に)買い控えが起き、(減税終了前に)買い急ぎが起き、(中略)(GDPの前期比は)マイナスになったり、プラスになったりし、そのたびに経済論議が混乱した」「第2に、期待されていた消費の活性化と成長率の底上げはほとんど起きなかった」「第3に、減税に伴う5兆円の税収減を埋め合わせるほどの財源は確保できず、財源赤字が拡大した。減税で経済が活性化して税収が増えるという効果も小さかった。よく考えると、そんな手品のようなことが実現するはずなかったのだ」。以上の3点を指摘した上で、同コラムは「日本経済低迷の救世主であるかのごとく祭りあげられていた消費税減税は、(中略)実施に際しての混乱と将来への負の遺産を残しただけに終わった。その後、消費税減税を主張する議論はほとんどみられなくなった」と結んでいます。消費税を下げ、社会保険料も下げれば、医療・介護サービスの給付削減、質の低下が進むあくまでも「10年後から振り返る」というSF的予測記事なので、この通りにこれから進むかはわかりませんが、各党の消費税減税の目的やその財源策などを聞いていると、「大機小機」の予想する未来は、相当程度の確度で当たるような気がします。消費税は年金・医療・介護・子育て支援などの社会保障4分野の「基礎的財源」と位置付けられています。単純に消費税を減税し、その穴を埋めない場合、社会保障費全体の伸び抑制や給付水準の見直しが必要になります。それは、診療報酬や介護報酬にも影響が及ぶことを意味します。今回の衆院選、多くの党は社会保険料の削減も主張していました。消費税を下げ、社会保険料(健康保険料、介護保険料等)も下げれば、ますます社会保障の財源は逼迫し、医療・介護サービスの給付削減、質の低下が進むことになります。それは自明の理と言えますが、今回、給付削減や医療や介護のサービスの質低下の可能性について言及する党がまったくなかったのがとても心配です。ちなみに、「減税による減収は赤字国債で賄う」という公約の党もありましたが、その分だけ政府の債務が増え、将来世代が所得税などで負担することになります。「国債で」という時点で、その政治家は将来の日本は二の次で、今の自分のこと(=当落)しか考えていないことになります。2月9日に開かれた記者会見で、高市首相は消費税減税について実施時期は明言しなかったものの、「給付付き税額控除」の導入までの経過措置として2年間に限定して減税すると発言、財源について「特例公債には頼らない」と付け加えました。2年限定で、しかも「特例公債には頼らない」なんてことができるのでしょうか。「第300回 東大皮膚科教授、高級クラブやソープランドで約30回、約180万円の接待受け収賄で逮捕、国際卓越研究大学の認定に黄信号」の冒頭でも書いたように、自民党内にも消費税減税反対を唱える議員は少なくありません。前途は相当多難と言えます。「高負担で高福祉」の国を目指すのか、「低負担・低福祉」の国を目指すのかところで、欧米を見渡せば、「高負担・高福祉(フランス、デンマークなど)」、「低負担で低福祉(米国など)」と、国によってそのタイプはさまざまです。日本は税負担と福祉支出の両方でOECD平均に近く、高負担高福祉モデルと低負担低福祉モデルの中間に位置するとされています。つまり、「中負担・中(あるいは高)福祉」が今の日本です。今回の衆院選の各党の主張を聞いていると、「低負担・高福祉」という現実にはあり得ないモデルを提案しているように見えます。「低負担」を目指せば、当然、「低福祉」「低医療」になってしまうのに、なんと無責任な政治家たちでしょう。高市首相は、超党派の国民会議を開き、社会保障と税の一体改革や給付付き税額控除、消費税減税を議論する、としています。国民会議は「超党派」かつ「有識者も交えた」形で設置するとのことですが、「消費税減税ありき」のイエスマンばかりで構成することなく、日本が今後「高負担・高福祉」を目指すのか、「低負担・低福祉」を目指すのかという、国の方向性についてもしっかり議論してもらいたいと思います。

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ALT・AST上昇例へのスタチン【日常診療アップグレード】第49回

ALT・AST上昇例へのスタチン問題75歳男性。現在、症状はない。狭心症と2型糖尿病、高血圧、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease:MASLD)による代償性肝硬変の既往がある。処方薬はアスピリン、クロピドグレル、カルベジロール、リシノプリル、デュラグルチド、ピタバスタチンである。過去1年間に薬剤の変更はない。身体診察では、バイタルサインおよびその他の所見は正常である。1年前と同様の軽度の肝トランスアミナーゼ上昇がある(AST 55U/L、ALT 65U/L)。肝トランスアミナーゼ値が上昇しているが、ピタバスタチンを継続した。

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6月から薬剤師による投薬量の削減判断が可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第165回

「薬剤師」という文字が、日本経済新聞の一面を飾りました! しかも良い意味で!薬の過剰処方に歯止め、薬剤師が削減判断 6月運用変更薬の過剰処方にメスが入る。厚生労働省は6月から、飲み忘れや飲み残しがある患者への投薬量を薬剤師の判断で減らしやすくする。薬剤費は日本の医療費の2割ほどを占め、国の社会保障費が膨らむ一因となっている。無駄を減らして患者の負担を抑えるとともに公的医療保険制度の持続性を高める。(2026年2月3日付 日本経済新聞)先日、1年後には電子カルテ共有サービスによって、薬局にも傷病名が共有される時代が来る! と小躍りしたばかりですが、6月から薬の飲み残しなどの残薬がある場合の日数変更が薬剤師の判断でできるようになります。私、感激しております!クリニックからの処方箋については日数変更の疑義照会はスムーズかと思いますが、大きめの病院になると、薬剤部に連絡し、その連絡を受けた薬剤部の方が処方医を探して日数変更を確認する…という流れになることが多いでしょう。せっかく残薬を申告してくれた患者さんを待たせてしまうだけでなく、処方医がつかまらないなどのまさかの理由で「次回の受診時に患者さんから医師に残薬数を報告してもらってください」と言われてしまうことも…。薬局の薬剤師に言っても意味がないと思われるリスクもあり、正直「日数変更、しかも減薬だけなのに…」と思うこともたびたびありました。しかし、処方箋に記載されている事項はある種“絶対”です。医療の中には既存の規制による非効率な作業というのは山ほどあります。とはいえ、その中には他の立場になって考えると残しておいたほうがよいものから、サクッとシステムに置き換わるものまでさまざまですが、この日数変更に関しては、医師がその経緯を確認できるのであれば三方良しの改定ではないでしょうか。事前に話題になっていなかったような気がしますが(私だけ…?)、これほどまでに迅速にルールが変わるとは思っていませんでした。すごい!では、少し落ち着いて具体的にどのようになるのか見ていきましょう。次の診療報酬改定から、処方箋に「薬を減らしたうえで医療機関に情報提供」という欄が新設されます。この欄に医師がチェックしていて、薬剤師が残薬を確認した場合は薬剤師の判断で薬の量が減らせるようになります。減薬をした場合に、事後的に医師や医療機関へ減薬について連絡すればよいので双方の負担は軽減されますが、欲を言えばチェック欄にチェックする医師の手間もなくしてほしかったなと思います。まぁここは仕方ないでしょうか。今回の急展開には驚きましたが、国民医療費の削減は待ったなしの状況なのだなと改めて痛感します。そして、医師が薬を処方したら、そのあとは薬局薬剤師も責任を持つという大きな流れも感じ、身の引き締まる思いもします。医師や行政、そして一番大事な患者さんがこの変更にメリットを感じてほしいなと思います。

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泌尿器科ロボット支援手術、遠隔手術が現地手術に非劣性/BMJ

 泌尿器科領域のロボット支援手術(根治的前立腺全摘除術、腎部分切除術)では、遠隔手術は現地手術に対し成功率に関して非劣性であり、遠隔手術システムは1,000~2,800kmの距離で安定して稼働し、合併症や早期回復、腫瘍学的アウトカム、医療チームの作業負担などにも有意差を認めないことが、中国・Chinese PLA General HospitalのYe Wang氏らTeleS Research Groupが実施した「TeleS研究」で示された。研究の成果は、BMJ誌2026年1月28日号で報告された。中国の無作為化対照比較非劣性試験 TeleS研究は、2023年12月~2024年6月に、中国の5施設で実施した単盲検無作為化対照比較非劣性試験(中国・国家自然科学基金などの助成を受けた)。北京と他の4つの地域(ウルムチ[北京とのおおよその距離2,800km]、杭州[1,300km]、ハルビン[1,250km]、合肥[1,000km])の施設の間に遠隔手術システムを構築した。 ロボット手術による根治的前立腺全摘除術および腎部分切除術を予定している患者72例(ITT集団)を対象とした。これらの患者を、北京からの遠隔手術を受ける群(36例、年齢中央値61.0歳[四分位範囲[IQR]:57.5~68.0])または各地域で現地手術を受ける群(36例、65.0歳[IQR:56.5~70.0])に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、手術成功率(医療チームが事前に設定した基準で判定)。手術および早期回復に関連した13の臨床的副次アウトカム、医療チームの作業負担に関連した1つの副次アウトカムなどを評価した。また、手術システムに関する4つの技術的副次アウトカム(ネットワーク通信の遅延、表示の遅延、遠隔手術中のフレームロス、システム故障)も探索的に評価した。副次アウトカムの回復と合併症について、被験者は術後4週間および6週間に追跡評価された。ITT、PP集団とも高確率で非劣性を示す 遠隔手術群の32例(根治的前立腺全摘除術17例、腎部分切除術15例)および現地手術群の31例(16例、15例)が実際に手術を受け(per protocol[PP]集団)、それぞれ31例および28例が6週間の追跡調査を完了した。 ITT集団における手術成功率は、遠隔手術群が100%(36/36例)、現地手術群は94.44%(34/36例)であり、PP集団ではそれぞれ100%(32/32例)および96.77%(30/31例)であった。 ベイズの混合効果ロジスティック回帰分析では、ITT集団の手術成功率の推定群間差は0.02(95%信用区間[CrI]:-0.03~0.15、非劣性の事後確率:0.99)であり、PP集団は0.003(95%CrI:-0.001~0.03、非劣性の事後確率:>0.99)であった。 いずれの集団でも、95%CrIの下限値が事前に規定された非劣性マージン(-0.1)を上回り、非劣性の事後確率が0.98を超えていることから、高い確率で遠隔手術の現地手術に対する非劣性が示された。さまざまな問題の実現可能な解決策となる可能性 遠隔手術システムは、北京と4地域の1,000~2,800kmの距離で安定しており、ネットワークの平均往復遅延時間は20.1~47.5ミリ秒、フレーム損失は1回の遠隔手術当たり0~1.5フレームであった。その他の副次アウトカム(手術基本データ、合併症、早期回復、腫瘍学的アウトカム、医療チームの作業負担など)は、両群間で有意差を認めなかった。 著者は、「本研究は、遠隔手術分野における初の無作為化対照比較試験として、その信頼性が従来の現地手術に劣らないことを立証した」「この知見は、今後の大規模臨床試験のデザインや実施に向けた基本的なエビデンスの基盤を提供する」「中国では、質の高い医療資源が大都市に集中するため、病床待ち時間の長期化、長距離移動、地方の総医療費の増加などの問題が生じ、同時に国際社会は高齢化とがんの早期発症傾向という二重の圧力に直面している。遠隔手術は、これらの問題に対する実現可能な解決策となるだろう」としている。

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LH-RHアゴニスト5年後も閉経前のリンパ節陽性早期乳がん、ET延長は再発抑制と関連するか?/JCO

 5年間のLH-RHアゴニストベースの術後内分泌療法(ET)を完了後も閉経前であったリンパ節転移陽性のHR陽性早期乳がん患者に対するETの延長は、浸潤性乳がん再発および遠隔再発のいずれにおいても臨床的に意義のある減少と関連していたことが、米国・ハーバード大学のCarmine Valenza氏らによって示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年1月15日号掲載の報告。 閉経前および閉経後のER陽性早期乳がん患者では、タモキシフェンによる術後療法を10年に延長すると、乳がん死亡率が低下することが報告されている(ATLAS試験)。LH-RHアゴニストによる5年間の術後療法を完了した後も閉経前である患者に対するETの延長を支持するエビデンスはないが、実臨床では多くの患者でタモキシフェン単独療法への切り替えまたはLH-RHアゴニスト(+タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬)によるETの延長が実施されている。そこで研究グループは、2つの前向きに収集されたデータセット(Young Women's Breast Cancer StudyおよびEuropean Institute of Oncology Breast Cancer Cohort)を用いたコホート研究の解析を実施して、ET延長のベネフィットを調査した。 対象は、2005~16年に40歳以下で早期乳がんと診断され、リンパ節転移陽性かつHR陽性で、LH-RHアゴニストベースの術後療法を開始して5年経過後も再発を認めない閉経前の女性であった。なお、閉経前の定義は、45歳未満、LH-RHアゴニスト中止後のエストラジオール値が閉経前の範囲内または月経再開のいずれかとした。主要評価項目は浸潤性乳がんのない生存期間(IBCFS)、その他の評価項目は無遠隔再発生存期間(DRFS)、骨折や主要な心血管イベントなどで、傾向スコア重み付け法を用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は合計501例で、延長のETを受けたのは287例(57%)、受けなかったのは214例(43%)であった。年齢中央値は両群ともに37歳であった。延長群では、非延長群と比較して、pT3/4(14%vs.7%)、pN2/3(36%vs.26%)、組織学的グレード3(49%vs.42%)の患者が多かった。・延長群における延長後のET期間中央値は3.7年(四分位範囲[IQR]:2.3~5.0)であった。延長後のETとしてタモキシフェン単独療法を受けた患者が48%、LH-RHアゴニストとタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬の併用療法を受けた患者が52%であった。・追跡期間中央値7.3年(IQR:4.8~10.3)で、IBCFSイベントは延長群で53件(19%)、非延長群で74件(34%)発生した。5年IBCFS率はそれぞれ85%および78%であり、ET延長と再発リスク低下との関連が示唆された(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.44~0.89、p=0.0135)。この傾向はpT1症例を除くほとんどのサブグループで一貫していた。・DRFSイベントは延長群で28件(10%)、非延長群で44件(21%)発生した。5年DRFS率はそれぞれ91%および83%であった(HR:0.49、95%CI:0.31~0.79)。・両群において、骨折および主要な心血管イベントは患者の1%に発現した。

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最新科学が覆す 体にいいのはどっち?

ニューヨークの専門医×最新論文で解き明かす本書では、ニューヨークの老年医療の最高峰であるマウントサイナイ医科大学に勤める山田 悠史氏が、「白湯は体にいい?」「バリウム検査は受けたほうがいい?」「グルテンフリーは健康にいいの?」など、多くの人が気になる健康神話を、食事・健康・運動・睡眠・民間療法などといったジャンルごとに分類し、最新の論文をもとに「本当に正しいのはどちらか」を解説します。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する最新科学が覆す 体にいいのはどっち?定価1,870円(税込)判型四六判頁数272頁発行2025年12月著者山田 悠史ご購入はこちらご購入はこちら

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AIで脂肪吸引手術の安全性が向上する可能性

 人工知能(AI)が脂肪吸引手術の安全性向上に役立つのではないかとする論文が、「Plastic and Reconstructive Surgery」1月号に掲載された。米メイヨー・クリニックのMauricio Perez Pachon氏らの研究によるもので、AIを活用することで脂肪吸引手術に伴う出血量を正確に予測でき、その精度は94%に及ぶという。 脂肪吸引手術は世界で毎年230万人以上が受けており、手術件数として美容外科手術全体の15~20%を占める。この手術は一般的に安全とされているが、脂肪吸引量が多い場合などに、大量出血という深刻な合併症が起きることがある。大量出血が発生すると輸血が必要になることや、時に患者が死亡に至ることもある。このようなリスクに対して近年、AIを用いて出血量を術前に予測する試みが行われている。Pachon氏は、「脂肪吸引手術における出血量を予測するAIモデルの開発と実装は、患者の安全と手術アウトカムの改善につながる画期的な進歩だ」と述べている。また、研究チームでは、「AIは常に進化しているという特徴を生かすことで、手術がよりスマートで安全になっていき、患者ごとのニーズに合わせてカスタマイズされた未来に近づけるのではないか」としている。 この研究では、コロンビアとエクアドルのクリニック2施設で大容量の脂肪吸引手術を受けた、721人(年齢中央値37歳、女性79.2%)の患者データが用いられた。このうち621人をAIのトレーニング用データとして用い、他の100人を構築されたモデルの検証用データとして用いた。AIのトレーニングには「教師あり学習」と呼ばれる手法を利用し、出血量を予測するためのパラメーターとして、年齢、性別、BMI、脂肪吸引量、ヘモグロビン値などを使用した。 構築されたモデルを検証用に割り当てられた100人に適用した結果、AIが予測した出血量は実際の出血量とよく一致していた。具体的には、平均絶対誤差が22.09mLであり、予測精度は94.1%と算出された。 研究者らによると、「美容外科手術では、患者の安全と最適な手術計画の立案のために、手術中の出血量をできるだけ正確に予測することが重要。本研究で示された予測精度は、術前の意思決定支援ツールとしての高い潜在的能力を示している」とのことだ。また、「高精度の予測がなされることによって、外科医は、輸血の必要性、体液管理、その他の集中治療措置などの周術期管理について、データに基づいた決定を下すことができる」としている。 研究チームでは現在、世界各地の外科医から提供されたデータを使ってトレーニングを行うなど、このAIモデルをさらに改良するための研究を進めていくことを予定している。Pachon氏は、「AIテクノロジーの発展は患者の安全性を高める無限の可能性があると、われわれは信じている。この分野での継続的な発展を期待している」と語っている。

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CQ & 図解で学ぶ 生殖医療の基礎講座

いまさら聞けない生殖・内分泌の基本を学び直す「産婦人科の実際」74巻12号(2025年11月臨時増刊号)生殖医療は、産婦人科の4分野のなかで最も理解が難しい分野とも言われています。ホルモン療法の複雑さ、卵胞のダイナミックな変化、受精後の胚の発達過程の理解など多岐にわたる知識が求められるためです。本誌では、一般的な教科書では網羅しきれない生殖医療の基本から実践的な治療戦略まで、実臨床で“本当に役に立つ”知識を凝縮しました。排卵や胚着床に関する初学者向けの入門的な解説コラム「Mini Tutorial」も収載。臨床現場で迷ったとき、困ったときにすぐに手に取りたくなる1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するCQ & 図解で学ぶ 生殖医療の基礎講座定価9,350円(税込)判型B5判頁数336頁発行2025年12月企画堀江 昭史、村上 幸祐、松村 謙臣ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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開胸手術は不要に? 世界初の低侵襲冠動脈バイパス術が登場

 動脈の詰まりによって起こる心疾患に苦しむ人に対する開胸手術は、近い将来、過去のものになるかもしれない。心疾患の長い既往歴を持つ67歳の男性に対して、胸壁を切開せずに行う世界初の低侵襲冠動脈バイパス術のVECTOR法(Ventriculo-coronary transcatheter outward navigation and reentry)が実施され、成功裡に終えたことが明らかにされた。手術から6カ月が経過しても、男性には動脈の詰まりに起因する心臓の問題は一切認められなかったという。米エモリー大学医学部のAdam Greenbaum氏らによるこの症例報告は、「Circulation: Cardiovascular Interventions」に1月6日掲載された。 Greenbaum氏は、「この患者は多くの治療歴があり、血管疾患やその他の複雑な要因を抱えていたため、開胸手術は選択肢になかった。このような症例において低侵襲な代替手段があることは、極めて重要だ」とニュースリリースで述べている。 冠動脈バイパス術とは、血流が著しく阻害された動脈を迂回し、心臓に血液と酸素を届ける新たな通路を作る手術である。これまで、最も低侵襲とされる冠動脈バイパス術でさえ、肋骨の間から胸部を切開し、筋肉を押し分け、骨を切除して手術部位に到達する必要がある。 これに対し、VECTOR法は、脚の血管(大腿動脈)からガイドカテーテルを挿入し、大動脈を経由して左冠動脈主幹部まで到達させる。また、大腿静脈からもガイドカテーテルを挿入して右心室に到達させ、スネア(ワイヤーなどを引っ掛けて回収する輪状のワイヤー)を配置する。その後、大腿動脈側のガイドカテーテルを介してガイドワイヤーを挿入し、左冠動脈主幹部から心筋中隔へ導き、中隔枝を介して右心室にワイヤーを貫通させる。次いで、右心室内に配置したスネアを操作してガイドワイヤーの先端を捕捉し、そのままワイヤーを大腿静脈側から体外へ引き出す。こうして大動脈から静脈までの連続したガイドワイヤーレールが形成され、これを足場として、治療用ガイドワイヤーやデバイスを、逆行性に左冠動脈主幹部内へ送達することが可能になる。 VECTOR法は、人に使用される以前は動物を用いた一連の前臨床試験で実証されていた。今回、VECTOR法が実施された男性は、カルシウムの蓄積により人工心臓弁の交換が必要な状態だった。しかし、左冠動脈の開口部が弁に非常に近接していたため、通常の経カテーテル大動脈弁置換術を行うと血流が遮断される可能性が高かった。Greenbaum氏は、「そこでわれわれは、冠動脈の開口部を危険域の外に移動させてしまえばよいのではないかと考えた」と振り返る。 研究グループは、VECTOR法が広く臨床で使われるようになるには、今後さらに多くのヒトを対象とした試験が必要だと述べている。報告書の筆頭著者である米エモリー大学心臓病学分野のChristopher Bruce氏は、「この成果を得るには、従来の枠にとらわれない発想が必要だったが、われわれは、非常に実用的な解決策を開発したと考えている」と話している。同氏は、「構想から動物実験、そして臨床応用へと、このプロジェクトが比較的短期間で実現したのを見るのは、極めて感慨深いことだった」と付け加えている。 なお、VECTOR法に関する研究は、米国国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute)の支援を受けて実施された。

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保険薬局の倒産が過去最多を記録【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第164回

保険薬局に求められるサービスの内容はこの20年で大きく変化しました。処方箋をさばいて調剤すればよいという時代から、在宅や地域医療、お薬を渡した後のケアまで行う時代になっています。薬局や薬剤師には変化し続けることが求められており、薬局を取り巻く環境は年々厳しくなっていると感じます。中小企業にとってはその変化に対応することは簡単ではなく、その厳しさの結果でしょうか、2025年の保険薬局の倒産が過去最多を記録したようです。2025年に倒産した「調剤薬局」は、38件(前年比35.7%増)と大幅に増加し、過去最多を更新した。これまで最多だった前年の28件をさらに10件上回り、2年連続で過去最多を更新した。 負債総額は44億8,400万円(同68.3%減)で、前年から約7割減少した。これは、負債10億円以上が1件(前年3件)にとどまる一方で、負債1億円未満の小規模倒産が29件(前年比81.2%増)と大幅に増加、全体の8割近く(76.3%)を占めたため。(2026年1月11日付 東京商工リサーチ)昨年から倒産が10件増えたとのことです。保険薬局は6万件を超えたといわれていますので、過去最多といっても誤差の範囲とも思えますが、昨年より多かったというのは事実で、また2年連続で最多を更新しているという流れは気になるところです。どんな薬局が? と思うのは当然のことで、以下の原因別と資本金別の説明を見てみると、原因としては「販売不振」が最多なので、単純に利益が出なかったということでしょう。また資本金別では、大きな企業というよりは小規模の法人が多かったということが推測できます。原因別:「販売不振」が最多の25件(前年比127.2%増、構成比65.7%)で、前年(11件)の2倍以上に増加。次いで、他社倒産の余波が7件発生した。資本金別:「1百万円以上5百万円未満」が21件(前年比40.0%増、構成比55.2%)で最多。以下、「1百万円未満」と「個人企業他」が各5件、「5百万円以上1千万円未満」が4件の順。「では大手企業の薬局のほうが安全なのね」と思いがちですが、大手は大手なりに大変で、大手企業を中心に再編の動きが活発化しているのはご存じのとおりかと思います。2025年8月にアインホールディングスがさくら薬局の経営会社を買収したことは記憶に新しいでしょう。また、大手が中小を買収するという流れも顕在化しています。薬剤師不足も重なって、保険薬局を取り巻く事業環境は大きな転換点を迎えているのかもしれません。現在議論されている2026年度の調剤報酬改定では、人材不足や材料費の高騰など、社会全体を取り巻く状況についても議論されています。薬局特有の問題に関してはいわゆる「門前薬局」のあり方や地域偏在の解消が大きなテーマとなっており、今後は小規模の保険薬局の乱立が抑制される可能性もあるともいわれています。薬局が何をもって選ばれていくのか、そして薬局の数はやはり多いのかなど、調剤報酬改定の議論も併せて様子を見ていきたいと思います。

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アルコールは認知症を予防するのか?~メタ解析

 アルコール摂取と認知症リスクとの関連を明らかにするため、中国・黒龍江中医薬大学附属第一医院のRen Zhang氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Internal Medicine Journal誌オンライン版2025年12月10日号の報告。 2024年7月22日までに公表された研究をPubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceのデータベースより網羅的に検索した。対象研究は、アルコール摂取と認知症リスクとの関連を評価した研究とした。研究の質の評価には、ニューカッスル・オタワ尺度(NOS)を用いた。アルコール摂取と認知症リスクの関連性は、相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を用いて評価した。アルコール摂取量、地域、年齢に基づいてサブグループ解析を実施した。すべての統計解析は、Stata 15.0を用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析では、アルコール摂取とすべての原因による認知症(ACD)リスク、アルツハイマー病(AD)リスク、血管性認知症(VD)リスク、その他の認知症リスクとの間に有意な関連は認められなかった。【ACD】RR:1.03、95%CI:0.84~1.27【AD】RR:0.97、95%CI:0.86~1.08【VD】RR:1.09、95%CI:0.95~1.26【その他の認知症】RR:0.62、95%CI:0.33~1.15・飲酒量別のサブグループ解析では、軽度から中程度の飲酒は、ACD(RR:0.88、95%CI:0.81~0.96)およびAD(RR:0.88、95%CI:0.79~0.97)のリスク低下と関連していた。・しかし、多量の飲酒は、すべての認知症タイプのリスク増加と有意な関連が認められた。【ACD】RR:1.18、95%CI:1.02~1.36【AD】RR:1.29、95%CI:1.21~1.36【VD】RR:1.25、95%CI:1.11~1.40・さらにサブグループ解析を行った結果、軽度から中程度の飲酒による認知症予防効果は、欧州および60~69歳の年齢層でより強いことが示唆された。 著者らは「軽度から中程度の飲酒は認知症を予防することが示唆された。しかし、大量飲酒やアルコール使用障害は認知症のリスクを高める可能性がある」と結論付けている。

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併存疾患を有する関節リウマチ患者の疼痛・ADLを処方提案で改善【うまくいく!処方提案プラクティス】第71回

 今回は、関節リウマチの疼痛増悪により日常生活動作(ADL)に支障を来していた慢性骨髄性白血病も併存する患者について、病態と治療を評価して処方提案を行うことで疼痛とADLの顕著な改善を達成した症例を紹介します。慢性骨髄性白血病治療中の患者では、免疫抑制薬の追加・増量は慎重に検討する必要があり、薬剤の特性を理解した処方提案が重要となります。患者情報80歳、女性(外来)、身長147cm、体重46kg基礎疾患関節リウマチ、慢性骨髄性白血病、脂質異常症、不安神経症、高血圧症、腰部脊柱管狭窄症、睡眠障害生活状況独居(近くに娘が居住)ADL障害高齢者の日常生活自立度J1、認知症高齢者の日常生活自立度I検査値Scr 0.71mg/dL(推定CCr>60)、AST 23U/L、ALT 27U/L、Hb 10.9g/dL薬学的管理開始時の処方内容1.プレドニゾロン錠1mg 1錠 分1 朝食後2.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 朝食後3.ロスバスタチン錠2.5mg 1錠 分1 朝食後4.アムロジピンOD錠2.5mg 1錠 分1 朝食後5.デュロキセチンOD錠20mg 2錠 分1 朝食後6アセトアミノフェン錠500mg 疼痛時頓用 1回1錠他科受診・併用薬大学病院にて慢性骨髄性白血病をフォロー中アシミニブ錠40mg 2錠 分1 朝食後本症例のポイント患者は関節リウマチによる疼痛増悪(Numerical Rating Scale[NRS]:9)により、服の着脱も困難な状態でADLが著しく低下していました。施設入居を計画していましたが、疼痛のため外出もできず、このままでは生活の質がさらに低下します。この状況では疼痛管理の強化が急務であり、通常であればMTXなどの免疫抑制薬の追加や服薬中のプレドニゾロンの増量を検討します。しかし、本患者は慢性骨髄性白血病を併存しておりアシミニブを内服中です。免疫抑制薬やプレドニゾロンを追加・増量すると、感染リスクの増大や慢性骨髄性白血病治療に影響する恐れがあるため慎重に検討すべきです。そこで、NSAIDsの導入を提案することにしました。NSAIDsは中等度の活動性を持つ関節リウマチ患者において、痛みや全体的な健康状態を効果的に管理できることが報告されています1)。適切なNSAIDsを選択すれば安全に導入でき、患者のADL制限を解除することができると考えました。医師への提案と経過まず、医師に現状の課題として、患者の疼痛が高度でADLが著しく低下していること、そしてアセトアミノフェン頓用では疼痛コントロールが不十分であることを伝えました。懸念事項として、慢性骨髄性白血病治療中であることから免疫抑制の恐れのある薬剤の追加・増量は慎重に検討すべきであること、そして疼痛管理が不十分なままではADLのさらなる低下や施設入居計画にも支障を来す可能性があることを伝えました。その上で、メロキシカムの追加を提案しました。幸い、患者の腎機能(推定CCr>60)は保たれており、NSAIDsの使用に大きな障壁はありません。すでにボノプラザンが併用されているため胃粘膜保護が図られており、消化性潰瘍の既往もとくにありません。メロキシカムは選択的COX-2阻害薬であり、非選択的NSAIDsと比較して消化管障害のリスクが相対的に低く、1日1回投与のため服用時点を朝食後に統一できることから服薬アドヒアランスの維持も期待できます。医師に提案を採用いただき、翌日からメロキシカム5mg 1錠 分1 朝食後が開始となりました。開始1週間後のフォローアップの電話では、患者から「だいぶ痛みがすっきりしてきた。手先も動くので服の着脱がしやすくなった」とのうれしい報告がありました。NRSは9から4まで改善し、可動範囲が広がり行動制限が解除されました。さらに、入居を希望していた施設の見学にも行けるようになるなど、ADLの顕著な改善を認めました。考察とまとめ本症例では、慢性骨髄性白血病を併存する関節リウマチ患者に対してNSAIDsを適切に選択することで、免疫抑制薬を追加・増量させずに疼痛とADLの改善を達成できました。また、患者の腎機能や消化管リスクなどを総合的に評価し、NSAIDsの中でも消化管リスクが相対的に低いメロキシカムを選択したことで、高齢者でも安全に治療をすることができました。特殊な背景を有する患者では、リスク・ベネフィットバランスを慎重に検討することがとくに重要です。参考文献1)Karateev AE, et al. Mod Rheumatol. 2021;15:57-63.

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逆流性食道炎へのボノプラザン、5年間の安全性は?(VISION研究)

 逆流性食道炎は再発や再燃を繰り返しやすく、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)やプロトンポンプ阻害薬(PPI)による維持療法が長期に及ぶことがある。P-CABのボノプラザンは、PPIより強力かつ持続的な酸分泌抑制を示すが、長期使用による高ガストリン血症を介した胃粘膜の変化や、腫瘍性変化のリスクが懸念されていた。 CareNet.comでは、P-CABとPPIの安全性に関するシステマティックレビューおよびメタ解析結果を報告した論文(Jang Y, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2026;41:28-40.)について、記事「P-CABとPPI、ガストリン値への影響の違いは?」を公開している。本論文では、P-CAB群はPPI群と比較して血清ガストリン値が高かったものの、有害事象プロファイルはPPI群と同様であることが示唆された。しかし、メタ解析に含まれた研究は観察期間が短く、本邦で実施されたボノプラザンとランソプラゾールの比較試験「VISION研究」は含まれていない。 そこで本稿では、逆流性食道炎患者を対象に、5年間の維持療法としてボノプラザンとランソプラゾールを比較した国内第IV相試験「VISION研究」について紹介する。本試験では、維持療法を実施した5年間において、ボノプラザン群とランソプラゾール群のいずれでも、腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化が1例も認められず、逆流性食道炎の累積再発率はボノプラザン群で低かった。本試験の結果は、上村 直実氏(国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長/東京医科大学内視鏡センター 客員教授)らによって、Clinical Gastroenterology and Hepatology誌2025年4月号で報告された。【VISION研究の概要】・試験デザイン:国内多施設共同非盲検無作為化並行群間比較第IV相試験・対象:Helicobacter pylori(H. pylori)陰性で、ロサンゼルス分類A~Dの逆流性食道炎患者(H. pylori除菌歴のある患者は除外)・試験群(ボノプラザン群):ボノプラザン(20mg、1日1回)を最大8週間→ボノプラザン(10mgまたは20mg、1日1回)を最大260週間 139例対照群(ランソプラゾール群):ランソプラゾール(30mg、1日1回)を最大8週間→ランソプラゾール(15mgまたは30mg、1日1回)を最大260週間 69例・評価項目:[主要評価項目]胃粘膜病理組織学的検査で臨床的に問題となる症例の割合(腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化など)[副次評価項目]内視鏡所見での逆流性食道炎再発割合、治療期終了時における逆流性食道炎の治癒割合、安全性[その他の評価項目]血清ガストリン値、血清クロモグラニンA値など 主な結果は以下のとおり。・本試験において、最大8週間の治療期から最大260週間の維持療法期へ移行したのは、ボノプラザン群135例、ランソプラゾール群67例であった。・維持療法期へ移行した患者の平均年齢は、ボノプラザン群60.4歳、ランソプラゾール群61.5歳であった。男性の割合はそれぞれ71.9%、61.2%であり、治療開始時の血清ガストリン値(平均値)はそれぞれ130.2pg/mL、155.4pg/mLで、血清クロモグラニンA値の中央値は両群ともに0ng/mLであった。・260週時における血清ガストリン値の中央値は、ボノプラザン群625pg/mL、ランソプラゾール群200pg/mL、血清クロモグラニンA値の中央値はそれぞれ250ng/mL、100ng/mLであり、ボノプラザン群が高かった(p<0.0001)。血清ガストリン値と血清クロモグラニンA値は、両群で投与期間を通じて安定して推移し、4~260週時のいずれの測定時点においてもボノプラザン群が高値であった(p<0.001)。・260週時点までに、腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化が認められた症例は、ボノプラザン群、ランソプラゾール群のいずれも0例であった。260週時点の病理組織学的所見の発現割合の詳細は以下のとおり(ボノプラザン群vs.ランソプラゾール群)。 腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化:0%vs.0% 壁細胞隆起/過形成:97.1%vs.86.5%(p=0.01) 腺窩上皮細胞過形成:14.7%vs.1.9%(p=0.01) G細胞過形成:85.3%vs.76.9%(p=0.29) ECL細胞過形成:4.9%vs.7.7%(p=0.49)・維持療法期に胃底腺ポリープ(260週時の発現割合:ボノプラザン群72.1%、ランソプラゾール群84.9%)および胃過形成性ポリープ(同:23.1%、11.3%)の発現が増加したが、いずれも両群に有意な差はみられなかった。・神経内分泌腫瘍は、いずれの群にも認められなかった。・有害事象の発現割合は、ボノプラザン群93.3%(126/135例)、ランソプラゾール群95.5%(64/67例)であり、治療関連有害事象は、それぞれ45.9%(62/135例)、53.7%(36/67例)に発現した。204週時までに、ボノプラザン群で腺窩上皮型腺腫が1例、ランソプラゾール群で胃底腺型胃腺腫が1例認められた。・260週時点までの逆流性食道炎の累積再発率は、ボノプラザン群10.8%、ランソプラゾール群38.0%であった(p=0.001、log-rank検定)。 本結果について、本論文の筆頭著者である上村氏にコメントを求めたところ、以下の回答が得られた。【上村氏のコメント】日本人の胃酸分泌はH. pylori感染率の低下とともに増えてきた 日本人の胃酸分泌はH. pyloriの感染率の低下に伴い次第に増加してきた。すなわち50年前の1970年代には陽性者が80%以上であり、加齢とともに胃酸分泌が低下していた。その後、感染率が低下するとともに、高齢になっても胃粘膜の老化現象を認めず胃酸分泌の低下を認めないH. pylori未感染者が多数を占めるようになり、2020年代の30歳未満の感染率は5%台まで低下し、除菌治療の影響も加わって高酸分泌を呈する高齢者も多くなり、逆流性食道炎を含む胃食道逆流症(GERD)の患者が増加している。胃酸分泌の増加と酸関連疾患の変化とともに新たな胃酸分泌抑制薬が開発された 1980年に登場したヒスタミン受容体拮抗薬(H2ブロッカー)により外科的治療が必要であった胃潰瘍や十二指腸潰瘍に対して、H2ブロッカーを用いた内科的な治療が主体となった。さらに強力な胃酸分泌抑制が必要となった1990年にPPIが登場して、難治性潰瘍やGERDの治療および低用量アスピリン(LDA)や非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)による潰瘍の予防に大きな役割を果たしている。2000年に保険適用となったH. pylori除菌治療により消化性潰瘍の再発がほぼ消失して、コントロールが必要な主な酸関連疾患は逆流性食道炎・GERDとなってきた。2015年には、PPIよりさらに強力な酸分泌抑制薬のボノプラザン(VPZ)が日本において開発されて、PPIから置き変わりつつあるのが現状である。VISION研究はボノプラザン長期投与の安全性を検証する試験 H2ブロッカーが出現した当初から酸分泌抑制に対するフィードバックとして出現する高ガストリン血症によるEnterochromaffin-like(ECL)細胞の過形成に続く神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine cell neoplasm:NEN[カルチノイド])の発生が危惧されていた。しかし、より強力な酸分泌抑制を有するPPIの長期投与による高ガストリン血症が、胃カルチノイドの発生リスクを著明に上昇させる明確なエビデンスも得られていない。 筆者らが本研究を企画したのは、VPZの承認を目的とした臨床治験の結果において、血清ガストリン値がPPIに比べてもさらなる高値を示し、3,000pg/mL以上の高値を示す症例が存在したことから、一般診療現場における長期投与が胃内微小環境に与える影響、とくに腫瘍性変化のリスクを危惧したためである。 VPZを含むP-CABとPPIの安全性に関するYewon Jang氏らによるメタ解析には、日本の臨床治験3試験と米国の1試験を含む11の研究結果が解析されているが、CareNet.comの記事に指摘されているように、観察期間が1年以下と短く、腫瘍の発生や組織学的変化のリスクを評価するには短期間にすぎるものである。さらに一般臨床の現場では数年間使用されることもあり、長期間の胃酸分泌抑制に伴う副事象の解明が必要と考えて5年間の経過観察とした次第である。 VISION研究では、VPZ群とPPI群に無作為に分類して、5年間毎年、生検を含む内視鏡検査により胃内微小環境の変化を観察した結果、内視鏡的に胃底腺ポリープや過形成ポリープの新たな発生や数の増加を認めた。一方、PPIに比べてVPZは有意な高ガストリン血症および高クロモグラニンA血症を呈したものの、カルチノイドなどの組織学的腫瘍性変化を認めなかった。内分泌腫瘍の腫瘍マーカーとして知られている血清クロモグラニンA値が高値を示した点から、ECL細胞が胃底腺粘膜全体に増加している可能性も推測され、カルチノイドの発生には5年よりさらに長期間の慎重な観察が必要と思われた。 VISION研究の結果から、著明な肝機能異常や骨折および重篤な腸管感染症のリスクはPPIと同様の安全性を示すことが確認された。しかし、本研究はH. pylori陽性や除菌後を除く陰性の逆流性食道炎患者としている点は非常に重要であり、一般の診療現場では、本試験の結果をそのまま充当できないH. pylori現感染者や除菌後の患者に対する診療では胃がんやカルチノイドのリスクにも注意することが必要である。

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小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩

発達段階に応じた診療の決定版「眼科」67巻10号(2025年10月臨時増刊号)雑誌『眼科』本年の臨時増刊号のテーマは「小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩」です。迅速で正確な診断と個々の発達段階に応じた治療選択がきわめて重要である小児に対する眼科診療について、前眼部から後眼部までの基本事項はもちろん、近視、斜視、弱視、病診連携やロービジョンケアといった分野まで、忙しい日常臨床の場で役に立つ基礎知識と最新の知見を第一線で活躍されている専門家の先生方にご執筆いただきました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩定価9,350円(税込)判型B5判頁数272頁発行2025年10月編集後藤 浩/飯田 知弘/雑賀司 珠也/門之園 一明/石川 均/根岸 一乃/福地 健郎ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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英国NHSの改革プラン、DXなど現場の需要と一致しない?/BMJ

 英国における国民保健サービス(NHS)の改革プランでは、一般診療へのアクセス改善が優先課題とされているが、「NHS 10年プラン」に掲げられている3つの改革提案(デジタル化、地域医療への移行、予防医療の提供)は、患者が求めていることや診療所の業務を支えるために必要なものとは一致しない可能性があることを、英国・ケンブリッジ大学のCarol Sinnott氏らが、患者、介護者、総合診療医(GP)、および一般診療所のその他のスタッフを対象とした半構造化インタビューによる質的研究の結果で報告した。著者は、「3つの改革提案が、ケアの継続性を損なったり既存サービスを断片化したりしないよう、主要な関係者と連携した慎重な設計・実施・評価が求められる」とまとめている。BMJ誌2026年1月14日号掲載の報告。患者・介護者、GP・スタッフに半構造化インタビューを実施 2023年7~10月に、5人の研究者(保健医療研究者3人、臨床研究者2人)が、英国の地理的に分散した5地域(デボン、メドウェイ、ブラックプール、ルートン、ランカシャー)に居住する患者・介護者、および東部のNHS一般診療所のスタッフ(GP・看護師などの医療専門職、診療所の管理者、事務職員などすべての職種、1診療所当たり4人まで)を募集し、半構造化インタビューガイドを用いて、一般診療所へのアクセスに関してインタビューを実施した。 分析は、継続的比較法(constant comparative method)に基づき、NHS 10年プランで提唱された3つの改革提案(デジタル化、地域医療への移行、予防医療の提供)に沿ってテーマを整理した。3つの改革提案(デジタル化、地域医療への移行、予防医療の提供)は一長一短 患者・介護者41人、一般診療所13施設からスタッフ29人(GP 10人、看護師5人、薬剤師1人、ウェルビーイングコーチ1人、診療所の管理者7人、事務職員5人)の計70人が半構造化インタビューを受けた。患者・介護者は、12の民族で構成され、学習障害、視覚障害、移民など多様な個人特性・医療特性を有していた。一般診療所は、9施設が裕福な地域、4施設が貧困地域に位置していた。 NHS 10年プランの3つの改革提案は、参加者にある程度の利益をもたらすが、新たなリスクや不利益も生み出すことが示された。 診療所におけるデジタル化の推進(主にオンライン予約システムや医療情報へのアクセス)は、一部の患者にとっては利便性を高め効率の改善をもたらすが、一方で、GPが対応できる診察予約のキャパシティが根本的に不足しているという問題の解決には寄与せず、新たなかたちの不利益や排除を生み出し、患者が求めている「顔なじみのGPとの人間的なつながりや共感」に対処するものではなかった。 病院から地域で支える医療サービスへの移行(一般診療所がより広い地理的範囲を担当する新たな医療サービスのモデル)は、診察予約の受け入れキャパシティの向上につながるものと参加者は捉えていたが、調整や組織化に関する実務的な課題などの制約に直面した。より広域を網羅する新たなサービス下では、患者がかかりつけの診療所であるにもかかわらず「認識されていない」「知られていない」と感じるなど、患者が重視するGPとの長期的な関係性を損なうリスクがあった。 予防医療の重要性は認識されていたものの、ケアが断片化する傾向や、単一疾患に焦点を当てた過度に単純化されたモデルになりがちで、患者の能動的受診に充てられるべき診療所のキャパシティを浪費してしまう課題があることが指摘された。一般診療所スタッフの業務負担が増大することへの懸念も一貫して示された。

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