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資産形成、最初の一歩はタネ銭から【医師のためのお金の話】第1回

資産形成、最初の一歩はタネ銭からはじめまして、「自由気ままな整形外科医」と申します。本稿を担当させていただきます。私は40代半ばの整形外科医で、某病院の人工関節センターに勤務しています。整形外科医として充実した医師ライフを送る一方で、なぜCareNet.comで「医師のためのお金の話」を連載することになったか? それは、勤務医にもかかわらず、金融資産投資、不動産投資、そしてスモールビジネス経営を通じて、資産形成を行っているからです。このあたりの顛末は、私のブログである「整形外科医のブログ」において週末限定で公開しています。想定している読者は、医師を中心とした、資産形成に興味のある医療関係者です。世の中には株式投資や不動産投資のハウツー本があふれていますが、現役医師によって執筆されたものはほとんどありません。資産形成には興味があるけれど、怖くて第一歩を踏み出すことができない…。そんな皆さまが少しでも興味を持って、健全な資産形成を始めることができるようなお金の話題を取り上げたいと思います。皆さまのお金に関する疑問が、1つでも解決されれば幸いです。CareNet.comで連載を始めるに当たって、読者である会員医師の皆さまにアンケートをとってもらいました。アンケートの結果は3回にわたり公開されています。その中で「収入(手取り)のうち、おおよそ何%を貯蓄していますか?」という質問に対する回答に驚きました。なんと、収入の20%未満の貯蓄しかしていない方が、全体の67%も占めていたのです! 手取り月給が60万円の場合、毎月50万円近く消費していることになります。う~ん、これではお金が貯まらないのも納得できます。本多 静六 博士に学ぶ、貯蓄の極意資産形成の第一歩は、タネ銭を貯めることです。明治から昭和にかけて林学博士・投資家として活躍した本多 静六 博士は、貧農に生まれながら苦学して東京帝国大学教授となり、「給与4分の1の天引き貯金」を元手に投資を行い、巨万の富を築きました。本田博士は、給与の少ない時代から「給与4分の1の天引き貯金」を実践して、投資のタネ銭を貯めたのです。資産形成を行うためには、元手になるタネ銭が必要です。このタネ銭を作るためには、本田博士のように地道に給与を貯めていくことが王道だと思います。ライフステージを予想して、まずは「貯蓄」医師の年収カーブは特殊で、早い人では20代後半に1,000万円の大台に乗ることも珍しくありません。逆に年齢を重ねても、それほど年収が増えるわけではないことにも、注意する必要があります。とくに40代になると、ライフステージの変化で子供の教育費など、出費が増加する人の割合が増えていきます。収入が頭打ちの中で支出が増えるのですから、家計の状況は厳しくならざるを得ません。このような事態を避けるためにも、できるだけ早い時点から貯蓄を意識的に開始する必要があります。そして、貯蓄を始めるのが遅過ぎるということはありません。貯蓄の必要性に気付いた時から、とにかく始めることが重要なのです。貯蓄の基本は「天引き貯金」幸い、医師として収入を得るために、華美な消費は必要ありません。医師としての技量と、高級車や高価なスーツを購入することには何の関係もないからです。会社経営者や弁護士とは異なり、病院・クリニックでは白衣やスクラブという「制服」があるため、医師は外見にそれほど気を遣う必要がないからです。そして、貯蓄については「給与天引き貯金」は有効です。本田博士の貯蓄法は4分の1ですが、年収の高い医師では給与の2分の1以上の貯蓄を目指すべきだと思います。あなたが若くて配偶者や子供がいないのであれば、給与4分の3天引き貯金も夢ではありません。先人の知恵に学んで賢くタネ銭を貯めることが、資産形成を始めるコツだと思います。金融資産投資や不動産投資を学ぶよりも、まずはタネ銭を貯める方法を考えてみましょう。

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スタージ・ウェーバー症候群〔SWS:Sturge-Weber syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義スタージ・ウェーバー症候群(Sturge-Weber syndrome:SWS)は、顔面におけるポートワイン母斑(2014年、国際的に共通認識となっているISSVA分類において、「ポートワイン母斑」は「毛細血管奇形」へと名称変更された)、頭蓋内の軟膜血管腫、眼の脈絡膜血管腫これを起因とした緑内障を3主徴とする疾患である。本症は、神経皮膚症候群の範疇とされている。■ 疫学23万人に1人の発症といわれる。遺伝性はない。ほとんどの症状が出生時から認められる。■病因顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)と頭蓋内軟膜血管腫の病理組織標本の検討から、Gタンパク質のαサブユニットをコードするGNAQ遺伝子の異常が証明された。GNAQ遺伝子異常は、一塩基変異体(p.Arg183Glnをコードするc.548G→A)である。すなわち、GNAQ遺伝子の体細胞モザイク変異が原因と同定された。脳、皮膚、眼での特定の血管領域が障害される。脳では頭蓋内血流が障害され、脳機能低下や脳萎縮に陥り、精神運動や発達遅滞を発症する。皮膚では真皮毛細血管が障害され、皮膚に血管腫を思わせる赤い“ポートワイン”色の母斑(毛細血管奇形)を発症する。眼では脈絡膜血管が障害され、血流うっ滞から緑内障を発症する。■ 症状1)脳(頭蓋内)頭蓋内軟膜に血管奇形が生じ、うっ滞から軟膜血管虚血となり、局所の石灰化や壊死に至る。さまざまな障害となるので、臨床経過も多様である。痙攣、精神運動発達遅滞、運動片麻痺、片頭痛などが知られる。障害される脳の部位では、頭頂葉、後頭葉、前頭葉の頻度となっている。病変範囲が広いほど、てんかん発症年齢も早く難治化する。運動麻痺は、顔面皮疹と反対側の半身麻痺が多い。2)皮膚顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)は、その名のとおりポートワインのような色をした“赤あざ”と呼ばれる斑点である。時に薄ピンク色から深紫色まで個人差がある。部位は、三叉神経第1枝、第2枝領域が多い。3)眼脈絡膜血管腫は、顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)と同側である。そして緑内障を発症する。当然、視力・視野障害が発症してしまう。■ 分類定義で示した顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)、頭蓋内の軟膜血管腫、眼の脈絡膜血管腫の3主徴が必ずしも、すべてでみられるわけではない。1型:顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)と頭蓋内の軟膜血管腫の両方が認められるタイプ2型:顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)は認められるが、頭蓋内の軟膜血管腫がないタイプ3型:頭蓋内の軟膜血管腫は認められるが、顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)がないタイプに分類される。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)厚生労働省では、スタージ・ウェーバー症候群関連研究班が3つ存在することに着目し、その統一を図っている。以下に、改正された診断基準・重症度分類を表に示す。脳症状に関する検査には、脳MRIでガドリニウム増強において明瞭となる頭蓋内軟膜血管腫、罹患部位の脳萎縮、患側脈絡叢の腫大、白質内横断静脈の拡張がある。脳CTで頭蓋内石灰化、Single photon emission computed tomography(SPECT:単一光子放射断層撮影)で頭蓋内軟膜血管腫部位の低血流域、Positron emission tomography(FDG-PET:陽電子放出断層撮影)で頭蓋内軟膜血管腫部位の糖低代謝がある。また、脳波は患側の低電位徐波、発作時の律動性棘波または鋭波が知られている。表 スタージ・ウェーバー症候群の新規診断基準・重症度分類<診断基準>A 基本所見1頭蓋内軟膜血管腫2顔面ポートワイン斑(毛細血管奇形)3脈絡膜血管腫または緑内障B 症状1てんかん2精神運動発達遅滞3運動麻痺4視力・視野障害5片頭痛C 検査所見1 画像検査所見MRI:ガドリニウム増強において明瞭となる頭蓋内軟膜血管腫、罹患部位の脳萎縮、患側脈絡叢の腫大、白質内横断静脈の拡張CT:頭蓋内石灰化を認めるSPECT:頭蓋内軟膜血管腫部位の低血流域FDG-PET:頭蓋内軟膜血管腫部位の糖低代謝2 生理学的所見脳波:患側の低電位徐波、発作時の律動性棘波または鋭波D 鑑別診断その他の神経皮膚症候群E 遺伝学的検査GNAQ遺伝子の変異頭蓋内軟膜血管腫と顔面ポートワイン斑(毛細血管奇形)に関して<診断のカテゴリー>以下の場合に確定診断される。Aの1項目以上を満たし、かつBの2項目以上を有するもの<臨床所見(該当する項目の□にレ印を記入する)>てんかん発作型(複数選択可)□全般発作 □単純部分発作 □複雑部分発作 □二次性全般化発作 □てんかん重積状態頭蓋内軟膜血管腫の脳内局在□前頭葉 □側頭葉 □頭頂葉 □後頭葉 □その他 □両側てんかん外科治療□焦点切除術 □脳梁離断術 □多脳葉手術 □半球離断術 □迷走神経刺激療法顔面ポートワイン斑(毛細血管奇形)□顔面の5%以下 □顔面の5~30% □顔面の30%以上運動麻痺□なし □あり視力・視野障害□なし □あり片頭痛□なし □あり<重症度分類>●てんかんおよび精神運動発達遅滞精神保健福祉手帳診断書における「G40てんかん」の障害等級判定区分、障害者総合支援法における障害支援区分、精神症状・能力障害二軸評価を用いて、以下のいずれかに該当する患者を対象とする。「G40てんかん」の障害等級の能力評価区分「G40てんかん」の障害等級判定区分*「てんかん発作のタイプ」イ 意識障害はないが、随意運動が失われる発作ロ 意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作ハ 意識障害の有無を問わず、転倒する発作ニ 意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作●能力障害評価判定に当たっては、以下のことを考慮する。1)日常生活あるいは社会生活において必要な「支援」とは、助言、指導、介助などをいう。2)保護的な環境(たとえば入院・施設入所しているような状態)ではなく、たとえばアパートなどで単身生活を行った場合を想定して、その場合の生活能力の障害の状態を判定する。(1)精神障害や知的障害を認めないか、または、精神障害、知的障害を認めるが、日常生活および社会生活は普通にできる。適切な食事摂取、身辺の清潔保持、金銭管理や買い物、通院や服薬、適切な対人交流、身辺の安全保持や危機対応、社会的手続きや公共施設の利用、趣味や娯楽あるいは文化的・社会的活動への参加などが自発的にできる、あるいは適切にできる。精神障害を持たない人と同じように、日常生活および社会生活を送ることができる。(2)精神障害、知的障害を認め、日常生活または社会生活に一定の制限を受ける。(1)に記載のことが自発的あるいはおおむねできるが、一部支援を必要とする場合がある。たとえば、1人で外出できるが、過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難である。デイケアや就労継続支援事業などに参加するもの、あるいは保護的配慮のある事業所で、雇用契約による一般就労をしている者も含まれる。日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難が生じることがある。清潔保持は困難が少ない。対人交流は乏しくない。引きこもりがちではない。自発的な行動や、社会生活の中で発言が適切にできないことがある。行動のテンポはほぼ他の人に合わせることができる。普通のストレスでは症状の再燃や悪化が起きにくい。金銭管理はおおむねできる。社会生活の中で不適切な行動をとってしまうことは少ない。(3)精神障害、知的障害を認め、日常生活または社会生活に著しい制限を受けており、時に応じて支援を必要とする。(1)に記載のことがおおむねできるが、支援を必要とする場合が多い。たとえば、付き添われなくても自ら外出できるものの、ストレスがかかる状況が生じた場合に対処することが困難である。医療機関などに行くなどの習慣化された外出はできる。また、デイケアや就労継続支援事業などに参加することができる。食事をバランスよく用意するなどの家事をこなすために、助言などの支援を必要とする。清潔保持が自発的かつ適切にはできない。社会的な対人交流は乏しいが、引きこもりは顕著ではない。自発的な行動に困難がある。日常生活の中での発言が適切にできないことがある。行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。ストレスが大きいと症状の再燃や悪化を来しやすい。金銭管理ができない場合がある。社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。(4)精神障害、知的障害を認め、日常生活または社会生活に著しい制限を受けており、常時支援を要する。(1)に記載のことは常時支援がなければできない。たとえば、親しい人との交流も乏しく引きこもりがちである、自発性が著しく乏しい。自発的な発言が少なく発言内容が不適切であったり、不明瞭であったりする。日常生活において行動のテンポが他の人のペースと大きく隔たってしまう。些細な出来事で、病状の再燃や悪化を来しやすい。金銭管理は困難である。日常生活の中でその場に適さない行動をとってしまいがちである。(5)精神障害、知的障害を認め、身の回りのことはほとんどできない。(1)に記載のことは支援があってもほとんどできない。入院・入所施設などの患者においては、院内・施設内などの生活に常時支援を必要とする。在宅患者においては、医療機関などへの外出も自発的にできず、付き添いが必要である。家庭生活においても、適切な食事を用意したり、後片付けなどの家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず、常時支援を必要とする。●運動麻痺下記の“Modified Rankin Scale”を用いて、中等症以上に該当する患者を対象とする。軽症 :0~2中等症:3~4重症 :5Modified Rankin Scale0まったく症候がない。1症候があっても明らかな障害はない。日常の勤めや活動は行える。2軽度の障害:発症以前の活動がすべて行えるわけではないが、自分の身の回りのことは介助なしに行える。3中等度の障害:何らかの介助を必要とするが、歩行は介助なしに行える。4中等度から重度の障害:歩行や身体的要求には介助が必要である。5寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする。参考0自覚症状および他覚徴候がともにない状態である。1自覚症状および他覚徴候はあるが、発症以前から行っていた仕事や活動に制限はない状態である。2発症以前から行っていた仕事や活動に制限はあるが、日常生活は自立している状態である。3買い物や公共交通機関を利用した外出などには介助を必要とするが、通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要としない状態である。4通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要とするが、持続的な介護は必要としない状態である。5常に誰かの介助を必要とする状態である。●視力・視野障害下記の尺度を用いて、中等症以上に該当する患者を対象とする。軽症 :1中等症:2重症 :3~4判定に当たっては、矯正視力、視野ともに良好な眼の測定値を用いる。1矯正視力0.7以上かつ視野狭窄なし2矯正視力0.7以上、視野狭窄あり3矯正視力0.2~0.74矯正視力0.2未満3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■脳(頭蓋内)症状てんかん発作を抑制し、精神運動発達障害を未然に防ぐ必要がある。まず、抗てんかん薬による治療が行われ、約50%の症例で効果が認められる。しかし、残りの約50%は、抗てんかん薬でコントロール不良であり、外科的治療が考慮される。広範囲に病変がある症例、すなわち半球性および両側性の軟膜血管腫を持つ症例は、内科的治療でのてんかん発作とそれによる精神運動発達障害が回避できないので、早期の脳梁離断術、多脳葉切除(離断)術、迷走神経刺激療法などが考慮される。しかし、術後には運動麻痺、視野欠損、言語障害といった副作用が十分起こりうる。患児の脳可塑性に期待しなければならないことも多い。部分的な軟膜血管腫を持つ症例は、手術適応の判断が困難であるが、早期手術のほうが術後の発達改善効果は高いので、判断を先延ばしにしてはならない。1歳までが手術治療の適応を決める最初のポイントになる。■皮膚症状顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)に伴う外見上の問題は、内面的な苦痛を生み出しQOLの著しい低下を招いている。1980年代からPDL(flashlamp pumped-pulsed dye laser)が使用されてきた。しかし、施術後の浮腫や色調の残存から、患者のニーズに十分応えられていない。1990年代後半、皮膚冷却を装備したパルス可変式のレーザー機器が開発され、深部の血管および血管径が大きい血管への治療が可能になった。■眼症状眼圧を下げるために点眼薬をまず使用する。効果が乏しいときは、隅角切開術や線維柱帯切開術が行われる。4 今後の展望皮膚と脳組織からGNAQ遺伝子の異常が証明されたので、血液検査のみでGNAQ遺伝子異常を検出可能か否かが、今後の検討課題となる。すなわち、血液で診断ができれば、早期発見・早期介入さらに出生前診断へと展望が開けてくる。この点を踏まえて厚生労働省関係3班を中心に多施設共同の臨床研究が開始された。また、脳(頭蓋内)症状に対する外科的治療をどう選択するか、顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)に対するレーザー治療をいかに有効に施術していくのかなど、治療にはまだまだ難渋している。5 主たる診療科皮膚科、小児科、脳外科、形成外科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究に関する情報難病情報センター スタージ・ウェーバー症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)希少疾患患者情報登録システム(J-RARE)※現在、「J-RARE」という希少疾患患者情報登録システムが開設され、本症の登録に向けて準備が進んでいる(2017年10月現在未登録)。患者会情報スタージ・ウェーバー家族会(患者とその家族の会)1)Shirley MD, et al. New Engl J Med. 2013;368:1971-1979.公開履歴初回2017年10月10日

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問17

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問17 符号の逆転現象とは?前回は、重回帰分析は変数相互の影響を除去した真の関係について見いだすことができる、とても便利なツールであるとご説明しました。今回は、重回帰分析を行うときにしばしば発生する、符号の逆転現象についてご説明いたします。■回帰係数の符号の逆転現象表1に前回の事例で用いた健康診断の結果データを再掲します。表1 成人男性20例の生活嗜好に関する諸データ(再掲)表2のデータは、表1のデータのギャンブル嗜好を別のデータに置き換えたものです。表2 成人男性20例のギャンブル嗜好に関する諸データを改訂)このデータから図のように変数相互の相関関係を調べました。図 変数相互の相関関係ギャンブル嗜好の回帰係数、標準回帰係数の符号がマイナスになりました。つまり、ギャンブル嗜好とγ-GTPの相関はプラスなので、「符号逆転現象」が起こりました。ギャンブル嗜好を別のデータに置き換える前のもともとのデータでは、標準回帰係数は0.243、このデータの場合は-0.026です。ギャンブル嗜好について喫煙の有無との相関を見ると、もともとのデータでは0.68、このデータの場合は0.90です。喫煙の有無との相関が高くなるほど、標準回帰係数は小さくなって0に近づき、さらにはマイナスの値になります。ギャンブル嗜好から喫煙の有無の影響を除去する度合いが増して、標準回帰係数の値が小さくなったということです。標準回帰係数が「小さく、0に近い場合はギャンブル嗜好とγ-GTPとは無関係」、「マイナスの場合はギャンブルが好きな人は嫌いな人に比べγ-GTPが低くなる」と解釈できます。ギャンブル嗜好とγ-GTPとの関係を相関係数(0.62)で見ると、「ギャンブル好きであるほどγ-GTPが高くなる」となります。標準回帰係数(-0.026)で見ると、傾向は弱いが「ギャンブル好きであるほどγ-GTPが低くなる」となります。このように導く結論が逆転しています。標準回帰係数は、統計解析の手法が算出した結果なので正しいことなのかもしれませんが、さすがに逆転現象の結論の採用には勇気がいります。相関係数の符号と標準回帰係数の符号が一致しない場合、導く結論が逆転しています。逆転した現象が説明できれば、この結論を受け入れられますが、説明できない場合は説明変数を減らして重回帰分析をやり直します。次に符号逆転現象を解消する2つの方法を説明します。方法1 総当たり法を適用する方法方法2 相関マトリックスを適用する方法■方法1 総当たり法を適用する方法説明変数の個数がq個のとき、q個の変数を用いて作られる重回帰式の個数は(2q-1)個です。たとえば説明変数が3個の場合、23-1=7 です。説明変数がx1、x2、x3であるときの重回帰式を示します。符号逆転の起こらない関係式をピックアップします。複数個ある場合、モデル選択基準(AIC※など)で最良の関係式を見いだします。表3で例題のデータの総当たり法を行いました。符号逆転のない組み合わせはモデルNo.1~6です。この中でモデル選択基準AICが最小なのはモデルNo.4です。表3 例題データの総当たり法のまとめγ-GTPを予測する最良のモデルは次式となります。γ-GTP=2.135×飲酒量+26.604×喫煙の有無+26.5※総当たり法(AIC)は、こちらを参照ください。■方法2 相関マトリックスを適用する方法説明変数相互の単相関係数(相関マトリックスという)を算出します。表4 説明変数相互の単相関係数説明変数間で相関の高いセルをピックアップします。いくつ以上という基準はありませんが、0.65ぐらいが目安です。説明変数相互の相関が基準以上のときは、どちらかを落とすのが一般的です。落とし方は、落とす候補になった変数と目的変数との相関をそれぞれ調べて、相関の低いほうを落とします。下記の例では、x1とx2の相関が高いので、どちらかを落とすことになります。「yとx1」、「yとx2」の相関を見ると、「yとx2」のほうが低いのでx2を落とします。例題のデータは、ギャンブル嗜好の相関が0.90と高いのでどちらかを落とします。両者のγ-GTPとの相関は、ギャンブル嗜好が0.62、喫煙の有無が0.67なので、ギャンブル嗜好を落とします。総当たり法は、通常、統計専門のアプリケーションで行いますが、パソコンのスペックが低かった時代は処理時間が遅く、実践的ではありませんでした。そのため、方法2を適用していましたが、パソコンのスペックが向上した今日では、方法1で行うのがよいといえます。次回は、重回帰分析と同様に医学統計で用いられることの多い、ロジスティック回帰分析についてご説明いたします。今回のポイント1)目的変数と説明変数との相関係数の符号がプラスであるにもかかわらず、重回帰分析での回帰係数、標準回帰係数の符号がマイナスになってしまう場合を「符号の逆転現象」という!2)符号の逆転現象を解消する手段の1つは、総当たり法を適用すること!3)符号の逆転現象を解消するもう1つの手段は、相関マトリックスを適用すること!インデックスページへ戻る

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第9回 意識がないように見えても聞こえていた【患者コミュニケーション塾】

意識がないように見えても聞こえていた私は27年前、25歳のときに卵巣がんを発症しました。手術の後、約1年半にわたって入退院を繰り返しながら抗がん剤治療を受けました。現在のように強力な制吐剤がなかった時代ですから、治療に伴う嘔吐の副作用は激しく、1度治療を受けると1週間で5kgも体重が減少したほどです。嘔吐以外にも、倦怠感や血尿、腎機能の低下など、さまざまな副作用に見舞われました。ある時、抗がん剤を投与された5日後に、激しい下痢が起こりました。するとすぐに視界が真っ暗になり、手足には電流が走ったような痺れを感じ、触覚がなくなりました。もちろん声を発することもできませんでした。それまでの5日間、まったく食事が摂れておらず、衰弱しきっていた状態で一気に大量の水様便が出たため、血圧がストンと下がってしまったようです。直前に異常を感じてトイレ内のナースコールだけは辛うじて押していたので、看護師が駆けつけ、何とか私を車椅子に乗せて病室に運んでくれました。看護師は私が意識を消失したと思ったようで、「山口さん、意識ありません!!」と叫んでいました。そして、病室に到着すると、「血圧測定不能です!!」とますます焦る看護師の声が聞こえました。一方で、私は妙に冷静に「血圧が下がってしまったのか…。測れないのか…」と受け止めていたことを記憶しています。しばらくすると「あ、ようやく上が60!」と看護師が言いました。そして、視界にうっすらと光が戻り、手足の感覚も戻ったのです。この時の経験から、周りの人には意識がないように見える状態でも、本人には聞こえていることがあるのだと確信しました。COML創始者の辻本好子が、がんの末期状態で、誤嚥性肺炎から昏睡状態になった時、その2日後は、約20年ぶりに発症した私の2回目の卵巣がんの手術日でした。手術をするのは別の病院でしたが、その時も、きっと聴覚は維持されていると信じていたので、手術までの2日間、辻本に寄り添い、語りかけ続けました。私の問いかけに対し、息を吐くタイミングで応えてくれたので、「会話が成り立っている」と感じました。いよいよ私の手術当日になり、電話で辻本に「今から手術室に向かいます。きっと元気に戻ってくるので、待っていてくださいね」と声をかけました。そばにいた辻本の息子さんが「スピーカー状態にしていたけど、しっかりと聞こえましたよ」と言ってくれたので安心して電話を切り、手術室に向かおうとしたところ、息子さんからメールが届きました。そこには辻本が指で「ピース」をしている写真が添付されていました。息子さんによると、電話の後、昏睡状態のはずの辻本の手が動き始めたので何だろうと見ていると、指が「ピース」になったというのです。私への最大のエールなのだと思い、涙が止まらなくなったのを覚えています。これらの経験から、「聴覚は最後まで維持されている」というのは事実だと思っています。しかし、患者の意識がないと、平気で枕元で、患者の死後のことや本人に失礼なことを話してしまう人が医療者の中にもいます。たとえ直接会話ができなくなった状態であっても、そこに存在する人間として接することを忘れないでいただきたいと思います。

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第10回 査定・返戻を日々の診療に活かす2つのポイント【医師が知っておきたいレセプトの話】

これまでは、レセプトの概要やルールについて一緒に確認してきました。今回は査定、返戻を日々の診療に活かす2つのポイントについて確認していきましょう。自身の診療を見つめ直すチャンス第4回で確認したとおり、レセプトは標準的なルールに基づいた、コンピュータによるチェックに続いて、同業者である医師が担当する審査員による審査が行われます。都道府県別の特色はあるものの、その審査は標準的な診療基準に基づいて実施されています。患者さんによっては病状が重かったり、複雑であったりと標準的でない診療が必要になることもあり、査定や返戻の対象となることはある程度仕方のないことかもしれません。しかし、定期的に対象となっている場合は、先生方が現在の標準的な診療基準と異なった診察を行っている可能性を否定できません。査定や返戻は心情的には不本意だと思いますが、一度この機会をご自身の診療作法をアップデートする良いチャンスと考えてみてはいかがでしょうか? 先生方はお忙しく、日常の中で「学ぶ」機会が少なくなっている方も、少なからずおられると思います。だからこそ、査定や返戻の機会を通じて、検査の回数や処方内容などをガイドラインで見直したり、薬の処方回数や禁忌などは添付文書で確認したりするなど、そのときにご自身で振り返る機会を設けて、効率的にアップデートされることをお勧めします。多職種とのコミュニケーションのチャンス査定、返戻に関しては、医事部門の職員から先生方に情報がもたらされることが多いと思います。彼らは日常的にレセプトに関わり、査定や返戻に関しても多くの情報を握っているといっても過言ではありません。普段、先生方から医事部門の職員に対してコミュニケーションを取りにいくことは、そう多くないと思います。実は、医事部門だけでなく、多くの事務職員は、先生方から話しかけられたり、頼りにされていると感じたりすることで非常にモチベーションが上がるものです。査定や返戻が発生した際には、これを良い機会と捉え、彼らとコミュニケーションを取り、情報を共有し、レセプトの対策を一緒に立ててみてはいかがでしょうか? 事務職員のモチベーションがグッと上がること間違いなしです。また、薬剤の情報であれば薬剤師、検査の情報であれば臨床検査技師、医療機器や診療材料の情報は購買部門やME(臨床工学技士)の方々のほうが、最新かつ詳細な情報を持っているはずです。査定や返戻で感じた疑問が解消できるだけでなく、院内のさまざまな職種の方とコミュニケーションを取ることができる良い機会ともいえます。医師から積極的に他職種と接する時間をつくることで、院内コミュニケーションはどんどんと活発になっていくのです。来年、平成30年は2年に1度行われる診療報酬の改定が控えており、今改定は医療計画、介護報酬改定の同時改定となっています。今回の改定では、非常に大きな荒波がやってくるといわれています。定期的に他職種の方々とコミュニケーションを取ることで、チームの力を結集し、来るべき大きな荒波を乗り切っていきましょう。

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閉経後ホルモン補充療法、長期死亡への影響は?/JAMA

 閉経後女性に対するホルモン補充療法の、長期死亡への影響は認められないことが報告された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoAnn E. Manson氏らが、1990年代に行われた2つの閉経後ホルモン補充療法に関する無作為化試験(Women's Health Initiative Estrogen Plus Progestin and Estrogen-Alone Trials)の参加者を18年間追跡した結果で、全死因死亡、心血管疾患死、がん死いずれにおいても関連性は認められなかった。これまでに同試験から健康アウトカムの解析は報告されているが、概して全死因および疾患特異的死亡に注視した論文はなかったという。JAMA誌2017年9月12日号掲載の報告。CEE+MPA vs.プラセボ、CEE単独 vs.プラセボを解析 研究グループは、ホルモン補充療法試験の介入中および介入後の長期フォローアップ中における、全死亡および原因別死亡の累積発生率を調べた。 1993~1998年に、米国居住の民族的に多様な50~79歳の閉経後女性2万7,347例が2つの無作為化試験に登録され、2014年12月31日まで観察フォローアップを受けた。被験者は、結合型エストロゲン製剤(CEE)0.625mg/日+酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)2.5mg/日 vs.プラセボを受ける介入を、またはCEE単独 vs.プラセボを受ける介入を受けた。前者のCEE+MPA vs.プラセボ試験(8,506例 vs.8,102例)の介入期間は中央値5.6年、後者のCEE単独 vs.プラセボ試験(5,310例 vs.5,429例)は同7.2年であった。 研究グループは、2つの試験のプールデータおよび各試験データにおける、全死因死亡(主要アウトカム)、原因別死亡(心血管疾患死、がん死、その他主要な死因によるもの)を調べ、事前に規定した、無作為時の年齢をベースにした10歳階級群別で解析を行った。介入中および18年累積の全死因および原因別死亡ともプラセボ群と有意差なし 無作為化を受けた2万7,347例のベースライン時の平均年齢(SD)は63.4歳(7.2)、白人80.6%であった。死亡に関するフォローアップデータは、98%超で入手できた。 累積18年のフォローアップ中における死亡は7,489例であった(介入試験中1,088例、介入後フォローアップ中6,401例)。 全プールコホートの解析で、全死因死亡率はホルモン補充療法群27.1%、プラセボ群27.6%であった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.94~1.03)。CEE+MPAのプラセボに対するHRは1.02(95%CI:0.96~1.08)、CEE単独の同HRは0.94 (同:0.88~1.01)であった。 心血管疾患死のプール解析では、ホルモン補充療法群(8.9%) vs.プラセボ群(9.0%)のHRは1.00(95%CI:0.92~1.08)、また全がん死のプール解析では、ホルモン補充療法群(8.2%) vs.プラセボ群(8.0%)のHRは1.03(95%CI:0.95~1.12)、その他の主要な死因による死亡のプール解析では、ホルモン補充療法群(10.0%) vs.プラセボ群(10.7%)のHRは0.95(95%CI:0.88~1.02)であった。 全プールコホートにおいて、10歳階級群別の分析に基づき若い年齢(50~59歳)群と高齢(70~79歳)群を比較した結果、全死因死亡の名目HR比は、介入期間中が0.61(95%CI:0.43~0.87)、累積18年のフォローアップ中は0.87(95%CI:0.76~1.00)であった(試験間の有意な不均一性なし)。

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化学療法抵抗性膀胱がんへのラムシルマブは有用か?/Lancet

 プラチナ製剤化学療法で病勢進行が認められた、進行性・転移性尿路上皮がん患者に対し、抗VEGF-R2抗体ラムシルマブ(商品名:サイラムザ)+ドセタキセルの併用療法は、ドセタキセル単独に比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが示された。米国・イェール大学のDaniel P. Petrylak氏らが、530例を対象に行った第III相無作為化二重盲検試験「RANGE」の結果で、Lancet誌オンライン版2017年9月12日号で発表された。結果を踏まえて著者は「ラムシルマブ+ドセタキセルレジメンは、われわれが知る限り、プラチナ療法抵抗性の進行性尿路上皮がん患者において化学療法よりも優れたPFSを示した、第III相試験では初となるレジメンである」と述べ、「今回のデータにより、抗VEGF-R2抗体は、尿路上皮がん患者の新たな治療選択肢となりうることが確認された」と、まとめている。 ラムシルマブ(10mg/kg)をドセタキセルと併用投与 研究グループは2015年7月~2017年4月にかけて、23ヵ国124ヵ所の医療機関を通じて、プラチナ製剤化学療法で治療中または治療後に病勢進行が認められた、進行性・転移性尿路上皮がん患者530例を対象に試験を行った。以前の治療で、1種類の免疫チェックポイント阻害薬を投与していた患者も対象に含まれた。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはドセタキセル(75mg/m2)とラムシルマブ(10mg/kg)を(併用群:263例)、もう一方にはドセタキセルとプラセボを(対照群:267例)、いずれも1日1回静脈投与した。1サイクル21日間とし、病勢進行やその他の治療中止の基準が認められるまで継続した。 主要エンドポイントは、437例が無作為化された時点で評価したPFSだった。PFS中央値、併用群4.07ヵ月 vs.対照群2.76ヵ月 PFSの中央値は、対照群2.76ヵ月(95%信頼区間[CI]:2.60~2.96)に対し、併用群は4.07ヵ月(同:2.96~4.47)と有意に延長した(ハザード比:0.757、95%CI:0.607~0.943、p=0.0118)。盲検化独立中央解析においても同様の結果が示された。 奏効率も、対照群14.0%(95%CI:9.4~18.6、221例中31例)に対し、併用群は24.5%(同:18.8~30.3、216例中53例)と高率だった。 なお、Grade 3以上の有害事象の発現率は、併用群60%(156/258例)、対照群62%(163/265例)と同程度であり、予期していない毒性は認められなかった。治療に関連すると研究者が判断した重篤有害事象は、併用群24%(63/258例)、対照群20%(54/265例)で認められた。 治療中または治療中止後30日以内に死亡した患者の割合は、併用群15%(38/258例)、対照群16%(43/265例)で、そのうち治療が原因と研究者が判断したのはそれぞれ3%(8例)と2%(5例)だった。敗血症は、治療中の死亡で最も共通してみられた有害事象であった(2%[4例] vs.0%[発生なし])。また、併用群で致死的な好中球減少性敗血症1例が報告された。

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医療機関向け連続セミナー「臨床現場で役立つ法律のエッセンス~法的ケーススタディ~」のお知らせ

 医療を提供するうえで、いかに安全を心掛けていても、有害事象が起きることは避けられない。その際、初期対応を誤ると患者さんとの信頼関係が崩れ、重大な民事紛争に発展するのみならず、警察や検察による捜査を受け、一方的なメディア報道にさらされることになれば、患者さん側と医療従事者側の双方に大きなダメージが生じる。 このたび、大阪と東京で開催される医療機関向け連続セミナー「臨床現場で役立つ法律のエッセンス~法的ケーススタディ~」では、このような事態に備え、医療機関幹部(院長・副院長・事務長など)や紛争対応担当者、医療安全管理者を対象に、臨床現場での判断に役立つ法的知識や考え方の基礎を学ぶことができる。 セミナーは全6回の構成で、医師・弁護士の山崎 祥光氏(本サイトで「臨床に役立つ法的ケーススタディ」連載)が講師を務める。詳細は以下の通り。<臨床現場で役立つ法律のエッセンス~法的ケーススタディ~> 日時:2017年10月~18年3月 18:30~20:00 会場:東京会場(弁護士法人御堂筋法律事務所 東京事務所内)    東京都千代田区霞が関3丁目2番5号 霞が関ビル20階)    大阪会場(弁護士法人御堂筋法律事務所 大会議室内)    大阪市中央区南船場4丁目3番11号 大阪豊田ビル3階 各会場の開催日程や申し込み方法、受講料など、詳細はこちらから。 締め切り日:両会場とも、第1回申し込み締め切り日は2017年10月5日(木)お問い合わせ:    【東京事務所】    弁護士法人御堂筋法律事務所 東京事務所(担当:廣田)    TEL:03-3539-6070    E-mail: tokyoseminar@midosujilaw.gr.jp   (件名に「医療機関向け連続セミナーの件」とご記載ください)    【大阪事務所】    弁護士法人御堂筋法律事務所(担当:山本麻美・増田るみ)    TEL:06-6251-7266    E-mail: osakaseminar@midosujilaw.gr.jp   (件名に「医療機関向け連続セミナーの件」とご記載ください)

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GLP-1受容体作動薬は心イベントのみならず、腎イベントも抑制する(解説:吉岡成人 氏)-735

 2017年に公表された米国糖尿病学会のガイドラインでは、心血管疾患のハイリスク患者に対するGLP-1受容体作動薬の使用が推奨されている。その根拠となっている臨床試験がLEADER試験(Liraglutide Effect and Action in Diabetes: Evaluation of Cardiovascular Outcome Results)であり、リラグルチドによって2型糖尿病患者の心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死的脳卒中)がわずかではあるが、統計学的に有意差をもって抑制される(ハザード比:0.87、95%信頼区間:0.87~0.97)ことが示されている。今回の報告は、LEADER試験の副次評価項目としての腎アウトカムについて分析したものである。 持続性顕性アルブミン尿の新規発症、血清クレアチニン値の持続的倍化、末期腎不全、腎疾患による死亡の4項目を腎アウトカムとして評価し、推定糸球体濾過量(eGFR)、アルブミン尿の推移についても検討を加えている。 9,340例の2型糖尿病を対象とした二重盲検プラセボ対照比較試験で、追跡期間の中央値は3.84年である。腎アウトカムの発生はプラセボ群7.2%(4,672例中337例、19.0/1,000人年)、リラグルチド群5.7%(4,668例中268例、15.0/1,000人年)であり、リラグルチド群で有意な減少を認めた(ハザード比:0.78、95%信頼区間:0.67~0.92、p=0.003)。腎アウトカムの4項目の中で有意に減少しているのは持続性顕性アルブミン尿の新規発症であり(4.6% vs.3.4%、ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.60~0.91、p=0.004)、その他のアウトカムでは差がなかった。さらに層別解析ではeGFRが60mL/min/1.73m2以上の群、すでに微量アルブミン尿、顕性アルブミン尿が認められる群でのハザード比の有意な低下が確認されている。 一方で、SGLT2阻害薬による大規模臨床試験であるEMPA-REGアウトカム試験やCANVAS試験で認められたeGFRの低下を防ぐことを示すことはできなかった。おそらく、SGLT2阻害薬の腎保護効果が腎血行動態やケトン体などによる複合的なものであるのに対し、リラグルチドの腎保護効果はアルブミン尿の排泄減少が主体であり、酸化ストレスや、糸球体における炎症の軽減によるものなのかもしれない。 日本において広く使用されているDPP-4阻害薬ではアルブミン尿の減少などの腎保護作用は臨床的に確認されておらず、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の差異を示す1つの臨床データとも受け止めることができる。

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問16

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問16 重回帰分析はなぜ変数相互の影響を除去した真の関係を見いだせるか?前回は、重回帰式で求められた回帰係数をどのように解釈すればよいのかについて、ご説明しました。今回は、重回帰分析は、変数相互の影響を除去した真の関係について見いだすことができる、とても便利なツールであることをご説明いたします。■変数相互の影響を除去した真の関係健康診断の検査値の1つにγ-GTPがあります。γ-GTPの値が100を超えると、肝硬変、肝がん、脂肪肝、胆道疾患の可能性があるといわれています。表1は成人男性20例について、γ-GTP、飲酒量、喫煙の有無、ギャンブル嗜好を調べたものです。γ-GTPを目的変数、飲酒量、喫煙の有無、ギャンブル嗜好を説明変数として重回帰分析を行い、γ-GTPを予測する関係式を作成します。表1 成人男性20例の生活嗜好に関する諸データ重回帰分析を行う前に、γ-GTPと飲酒量、喫煙の有無、ギャンブル嗜好との相関図の作成(図1)、相関係数の算出(図2)をしました。図1 諸データの相関図と相関係数γ-GTPとの相関係数は、ギャンブル嗜好で最も高くなっています。では、ギャンブル嗜好はγ-GTPの影響要因といってよいのでしょうか?図2に変数間相互の相関を調べてみました。図2 変数間相互の相関関係ギャンブル好きには喫煙者が多いので相関係数が高くなっています。ギャンブル好きだからγ-GTPが高いのでなく、ギャンブル好きは喫煙するからγ-GTPが高くなっているといえます。ギャンブル嗜好とγ-GTPの相関0.74は真の相関でなく、見かけの相関だと思われます。そこで、この事例のデータに重回帰分析を行ってみました。標準回帰係数は、説明変数の重要度を把握できる指標であることを前回述べました。標準回帰係数から、γ-GTPの影響要因の1位は飲酒量、2位は喫煙の有無で、ギャンブル嗜好は3位であることがわかりました。重回帰分析は、変数相互の影響を除去して重回帰式、標準回帰係数を算出します。この事例ではギャンブル嗜好とγ-GTPとの関係を見るとき、喫煙の有無の影響を除去しているということです。表2で示すように真の関係を見いだすことは至難の業ですが、標準回帰係数は、変数相互の影響を除去した真の関係を見いだすツールといえます。表2 標準回帰係数でみたγ-GTPの影響要因次回は、重回帰分析を行うときにしばしば発生する符号の逆転現象について、ご説明いたします。今回のポイント1)目的変数と説明変数相互間の相関係数は、見かけの相関であり真の相関ではない!2)基準化したデータに重回帰分析を行い求められた回帰係数である標準回帰係数は、説明変数の重要度を把握できる指標である!3)標準回帰係数は変数相互の影響を除去した真の関係を見いだすツール!インデックスページへ戻る

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新たな血管内デバイス、治療抵抗性高血圧を著明に改善?/Lancet

 治療抵抗性高血圧の新たな治療デバイスとして開発された血管内圧受容器増幅デバイス「MobiusHD」(米国Vascular Dynamics社製)について、持続的な降圧効果と安全性が確認されたことを、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのWilko Spiering氏らが、ヒトでは初となる前向き非盲検臨床試験「CALM-FIM_EUR試験」の結果、発表した。MobiusHDは、頸動脈洞を再構築(reshape)する血管内インプラントで、頸動脈の圧反射活性が血圧を低下するという原理を応用して開発された。Lancet誌オンライン版2017年9月1日号掲載の報告。片側頸動脈内に留置し6ヵ月時点で安全性と有効性を評価 CALM-FIM_EURはproof-of-principle試験で、欧州の6施設(オランダ5、ドイツ1)にて治療抵抗性高血圧の成人患者(18~80歳)を集めて行われた。 患者の適格要件は、利尿薬を含む3剤以上の降圧薬併用治療にもかかわらず診察室血圧が≧160mmHg、平均24時間ABPが130/80mmHg以上であった。主な除外基準は、高血圧が睡眠時無呼吸症候群以外に起因している患者、頸動脈または大動脈弓のプラークまたは潰瘍の形成あり、頸動脈の内径が5.00mm未満または11.75mm超、BMIが40以上、慢性心房細動、2剤併用抗血小板療法の禁忌あり、長期に経口抗凝固薬を服用中、過去3ヵ月に心筋梗塞または不安定狭心症、前年に脳血管系の発作、推定糸球体濾過量45mL/分/1.73m2以下、イミダゾリン受容体薬やその他の中枢性に作用する降圧薬の服用者などであった。 MobiusHDデバイスを片側の頸動脈内に留置。主要エンドポイントは6ヵ月時点の重篤有害事象の発現率とした。副次エンドポイントは、診察室血圧および24時間ABPの変化などであった。留置後半年で、診察室血圧24/12mmHg、24時間ABPは21/12mmHg降圧 2013年12月~2016年2月に、患者30例が登録されデバイスを成功裏に留置した。被験者の平均年齢は52歳(SD 12)、15例(50%)が男性、降圧薬の平均服用数は4.4剤(SD 1.4)であった。 ベースラインの平均診察室血圧は184/109mmHg(SD 18/14)であったが、6ヵ月時点で24/12mmHg(SD 13~34/6~18)の降圧が認められた(収縮期p=0.0003、拡張期p=0.0001)。 また、ベースラインの24時間ABPは166/100mmHg(SD 17/14)であったが、6ヵ月時点で21/12mmHg(SD 14~29/7~16)の降圧が認められた(収縮期、拡張期ともp<0.0001)。 6ヵ月間で重篤有害事象の発生は、患者4例(13%)において5件が報告された。低血圧症が2例、高血圧症の悪化が1例、間欠性跛行1例、創感染1例であった。

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第1回 No Car, No Life【ドクター クルマ専科】

No Car, No Life皆さま、はじめまして、私は糖尿病・内分泌内科が専門の内科医で、千葉県の船橋市立医療センターという病院に勤務しております。私たち医師は、夜間や休日の緊急呼び出しもありますので他の職種の方よりもクルマに乗る機会が多いですし、また気分転換・ストレス発散としてドライブに行く方もおられるでしょう、したがって、クルマ好きの医師が多いと思います。このエッセイでは、私の愛車遍歴と現在の愛車をご紹介させていただきます。画像を拡大する私と愛車のポルシェ911ターボ私もクルマが大好きで、現在までに通算31台のクルマに乗ってきました。現在の愛車は、991型と呼ばれている最新のポルシェ911ターボ、ライトウェイト・オープンカーのアバルト124スパイダー、そして5人乗りのBMW 430iグランクーペの3台です。現在のラインアップ、つまりスポーツカー、オープンカー、実用的なスポーティセダン(またはSUV)という3台が、私としては理想的な組み合わせです。私の愛車遍歴初めての愛車は、大学生時代の1976年に手に入れた日産スカイライン2000GT(いわゆる「ケンメリ」)でした。その後は、マツダ・サバンナRX-7に乗り、1984年に結婚してからはホンダ・アコードに乗っていました。私の愛車遍歴の大きな転機は、1990年ごろでした。当時、買ったばかりの新車スカイラインGTS-4に乗っていた時、信号待ちで停車中、運転手がてんかん発作を起こしてしまったクルマにノーブレーキで追突されてしまいました。あとから警察官に伺った話では、推定速度は50〜60km/hくらいとのことでした。当時の日本車はガソリンタンクがトランクの下にある構造でしたので、追突された衝撃でガソリンが漏れて引火してしまい、クルマはあっという間に全焼してしまいました。ガソリンに引火すると、クルマはほんの数分で全焼してしまいます。幸い、私にほとんど怪我はありませんでしたが、もっと安全なクルマに乗り換えよう(国産車はやめよう)と思った瞬間でした。そして、より安全なドイツ車として、初めての外車がBMW 525iです。元々ドイツ車は好きでしたから、当時は無理して手に入れたとはいえ、うれしかったですね。その後は、メルセデス・ベンツE320に2世代乗り継ぎました。この2台で通算12年くらい乗りましたね。大人4人がゆったり乗れて、安心、まさに「安全で安心なメルセデス」ですね。このまま、4人家族でずっとメルセデスEクラスという人生なら、ごく普通のカーライフでしたが…。気付けば私も50歳になっていました。そんなある時、友人から「先生もずっとメルセデス・ベンツですね、上がりですかねぇ」と言われたのですね。メルセデスは、「上がりのクルマ」と言われていました。『冗談じゃない! このまま終わってたまるものか!』と、私の反骨精神がメラメラと目覚めたのです。2人の息子たちも成長しましたし、これまで仕事も頑張ってきたという思いもありました。私は中学生時代から、The WhoというRock Bandが大好きなのですが、50歳になったし、そろそろ「ロックなクルマ」を選んでもいいのではないかと思い立ち、2006年当時としてはセダンでは圧倒的なパワーを誇った5Lで500psというV10エンジンが搭載されたBMW M5に乗り替えたのです。「50歳、5L、500ps」と5が3つそろいました、これも何かの「ご縁」でしょうね(笑)。私のクルマ道楽は、このM5で一気に弾けました。M5はV10エンジンが奏でる音も最高でしたし、アクセルを踏み込めばものすごい加速! 同じドイツ車ですが、今まで乗ってきた通常のモデルでは味わえない世界を知ることができました。BMWでも、やはり「M」はまったく違いました。ページTOPへいよいよポルシェ911へそして、いよいよ長年の憧れだったポルシェ911に乗り替える決意を固めたのです。ポルシェ911への憧れは大学生のころからありました。当時は、六本木で通い詰めていたライブハウス(ピット・イン)がありました。今はアウディのディーラーになってしまいましたが、当時、そのライブハウスのすぐ近く、飯倉片町(港区六本木)の交差点にポルシェ(ミツワ自動車)のショールームがありました。この店の前を通るたびに「いつかは私もポルシェを手に入れたいな」と思ったものです。1970年代末ですからポルシェといえば、もちろん911だけですね。私は、空冷か水冷かという点にはこだわりはなかったのですが、ATのティプトロニックはどうも抵抗があったのですね。かといって、再びMTに戻るのも面倒だな、という意識がありました。そのころ、ちょうど良いタイミングでATが、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション、ポルシェではPDKと呼びます)に置き換わりました。セールスマンの勧めもあり、最初に乗る911は、より安定している4WDがいいということでカレラ4を、そして、どうせならばよりパワーがあるカレラ4Sを手に入れることにしたのです。画像を拡大する愛車のBMW 430iグランクーペそのまま、ずっとポルシェ911に乗り続けてもよかったのですが、経済的にとても大変ですので、もう一度BMWの世界に戻りました。同じくやはり憧れの存在だったアルピナB5を手に入れ、その後はBMW M6クーペと乗り継ぎました。どちらも素晴らしいクルマでした、しかしやはり、911の存在が気になってしまうのです。ちょうど、997型から991型へモデルチェンジしたタイミングだったこともあり、BMW M6クーペからポルシェ911カレラSに乗り替えました。991後期モデルではカレラ系のエンジンにもターボが積まれました。911の伝統的なRR(リアエンジン・リアドライブ)で、かつ最後のNA(自然吸気)エンジンを搭載したカレラSを所有できてよかったと、今でも思っています。ページTOPへ911は最高です!2014年の春、年上のドクターと食事する機会があり、お互いクルマ好きということで会話も弾みました。その方が、「最近、911ターボ・カブリオレを手に入れました」とおっしゃったのですね。ここでまたもや私のロック魂に火がついてしまいました。「よし! 俺も、長年の憧れ911ターボに乗ろう!」そう思って、カレラSからターボに乗り替える決心をしました。カレラSからターボでは、とても価格差が大きく、経済的にはかなり大変でしたが…。911ターボはすべてオーダーメードになります。7ヵ月ほど待ちましたが、2015年4月に現在の911ターボが納車された時は、とてもうれしかったですね! 今は、すべてが最高です。学生時代から憧れていたポルシェ911、それもターボを手に入れることができたのですから…。911ターボは、日常の足としても申し分ないですし、いざアクセルを踏み込めば0-100km/h 3.2秒という異次元の加速が味わえます。それでいてロングツアラーとしての快適性も兼ね備えています。燃費は、街乗りで6km/L台、高速で10km/L以上というところでしょうか。まさに究極のオールラウンダーでしょう。私のように公道のみでしたら、911ターボが最高の911だと思います。通勤にも買い物にも普通に使えますし、大雨でも安心です。またリアシートがあり、荷物がかなり載せられる点も大きいですね。プロの映像作家に依頼して、私と911ターボのプロモーションビデオまで作成してしまいました。どうぞご笑覧ください。サーキットも走る方には、GT3やGT2というスーパーマシンもありますが、超ハイパワーでかつRR(リアエンジン・リアドライブ)ですからプロ級の腕がないとコントロールするのが難しいと思います。911はバリエーションもとても豊富ですから、さまざまなニーズに応えられますね。ボディタイプだけで、クーペ、カブリオレ、タルガと3種類もあります。駆動方式は、伝統的なRR(リアエンジン・リアドライブ)と4WDから選べます。エンジンはほとんどがターボ化されましたが、あえてGT3というスパルタンなモデルだけはNA(自然吸気)エンジンを残しています。これだけ種類が多いスポーツカーは、世界でも911だけです。1964年の初代911登場以来、すでに53年が経過しています、2017年夏には、通算100万台を突破しました。そして、全生産台数の70%が現在でも稼働しているという驚くべき数字が、ポルシェ社から発表されています。画像を拡大する愛車のアバルト124スパイダー実際、1973年型の911S(通称「ナナサンS」と呼ばれる名車です)を、最新の911カレラ4Sを新車で買えるくらいの高価な価格で購入して、大切に乗っている親しい友人もおります。7月の猛暑日に助手席に乗せてもらいましたが、2.4L空冷エンジン、5速マニュアルシフト、エアコンなし、という現在44歳の高齢なクルマですが、まさに「低速官能性」を感じました。わずか190psですが、車重が1,075kgしかありませんので、すごく軽快です。ちなみに、私の911ターボは1,600kgもありますし、ライトウェイト・オープンカーのアバルト124スパイダーでも1,150kgです。40km/hくらいで走行していてもとても楽しいクルマでした!「最新の911が、最良の911」とはよくいわれる言葉ですが、同時にまた「俺の911が、最高の911」でもあるのです。そして、このどちらも真実ですね。最新の991ターボと、かつてサーキット漫画で有名になった930ターボ(初代の911ターボ)という2台を所有している方もおられます。最新の水冷911と空冷911の2台を所有されている方は、911オーナーの中でも憧れの的です。フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンなど世の中にはスーパーカーもたくさんありますが、通勤でも買い物でも毎日気軽に乗れて、かつリアシートには荷物も積めるエブリディ・スポーツカーとしては、私は911が昔も今も世界最高のクルマだと思います。たゆまぬ努力と技術革新で、デビューから50年以上、常に世界のトップ、他車の目標であり続けていることは、本当に稀有で素晴らしいことだと思います。カイエンやマカンやパナメーラで初めてポルシェに乗られた方々には、ぜひ素晴らしい「911の世界」も知っていただきたいと思います。※今年8月、アバルトの公式サイトに私のアバルト124スパイダーのオーナー・インタビューが掲載されました。こちらは、気軽にオープン・エアを楽しめる爽快な車です。どうぞお読みください。 バックナンバー

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durvalumabとオシメルチニブは新たな標準治療となりうるか:PACIFIC/FLAURA試験

 欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)では、抗PD-L1抗体durvalumabの第III相PACIFIC試験ならびに第3世代EGFR-TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の第III相FLAURA試験という、肺がん領域の2つの大きな臨床試験結果が発表された。発表後、PACIFIC試験の主任研究者であるスペイン・Hospital Universitario de OctubreのLuis Paz-Ares氏、FLAURA試験の主任研究者である米国・Winship Cancer Institute of Emory UniversityのSuresh Ramalingam氏がプレスに対して試験結果について解説した。本稿では、開発企業であるアストラゼネカ株式会社メディカル本部オンコロジー領域部部門長の橋上 聖氏および同社Global Medicines Development、Head of Oncology、Senior Vice PresidentのKlaus Edvadsen氏へのインタビュー内容を交え、今回の結果からみえてきた点や今後の展望について紹介する。放射線療法と免疫療法の間に相乗効果か:PACIFIC試験 切除不能局所進行(ステージIII)非小細胞肺がん(NSCLC)は本邦では年間約2万人が新たに罹患する。標準治療である同時化学放射線療法(CCRT)後、約9割の患者が長期的には何らかの形で進行するが、その治療法は定まっていない。「メディカルニーズの高い患者群であること、皮膚がん領域での近年の研究で、放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬の間に相乗効果の可能性が示唆されていたことが、今回の試験につながった」と橋上氏は説明した。 ESMO2017で発表されたPACIFIC試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS、追跡期間14.5ヵ月の中間解析結果)はdurvalumab群16.8ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月で、durvalumab群で有意な延長が認められた(HR:0.52、95%CI:0.42~0.65、p<0.0001)。橋上氏は「3倍近いPFSの延長という結果は予想を上回るもので、抗PD-L1抗体による付加的な効果というよりは、やはり何らかの相乗効果があるのではないかと考えている」と語った。 Paz-Ares氏は、安全性プロファイルについて「全体的にdurvalumab群で有害事象がわずかに増加しているが、重度の事象については両群で同程度といえる」と述べ、「CCRT後のdurvalumabによる治療は、管理可能な安全性プロファイルを持ち、約11ヵ月PFSを延長したことで、ステージIIIのNSCLC 患者に対する治療の新たな選択肢といえる。長期フォローアップにより、全生存率(OS)への影響を見ることが重要だ」と結論付けている。 今後について橋上氏は、「免疫療法を行う時期や期間については、本試験での条件に限らず、検討の余地がある。実臨床で患者にとってのベネフィットが最も大きな組合せ、条件を明らかにしていきたい」と語った。脳転移に対する効果が大きな収穫:FLAURA試験 ESMO2017で発表されたFLAURA試験の主要評価項目であるPFS中央値は、オシメルチニブ群が18.9ヵ月、標準治療群が10.2ヵ月であり、オシメルチニブ群で有意な延長が示された(HR:0.46、95%CI: 0.37~0.57、p<0.0001)。これらの改善効果は、脳転移の有無にかかわらず確認されている。また副次評価項目のうちOSについては、中間解析のハザード比が0.63(95%CI: 0.45~0.88)とオシメルチニブ群における延長傾向がみられたが、現時点では統計学的な有意差は得られていない。Ramalingam氏は、「標準治療と比較して、オシメルチニブの安全性プロファイルはより良好であり、PFS中央値を約11ヵ月延長した。オシメルチニブはEGFR変異陽性の進行NSCLC患者の新たな標準治療となるだろう」と結論付けている。 一方、ESMO2017でディスカッサントを務めた香港・香港中文大学のTony Mok氏は、脳転移例に対する有効性は支持したものの、第1/第2世代TKIとの最適な治療の順番・組合せについては、AURA3試験ならびにFLAURA試験の最終的なOSにより判断すべきと指摘していた。Edvadsen氏は、「もちろん最終的なOSが明らかになるまで確定的なことは言えない。しかし、少なくとも第1世代TKI投与後のオシメルチニブ投与との比較については、ゲフィチニブを1次治療に使った場合に20%以上の患者で脳転移が起こること、20~30%の患者が2次治療前に亡くなってしまうことを考えれば、私は1次治療からオシメルチニブを使っていくべきだと考えている」と述べ、10月に横浜で開催される世界肺がん学会で、FLAURA試験の解析結果について続報を発表予定とした。 また、オシメルチニブを1次治療で使った場合の耐性の獲得についてEdvadsen氏は、「オシメルチニブ耐性となった患者の20~25%に、MET遺伝子変異があることが明らかになっている。この変異に対しては、savolitinibという阻害薬の開発を進めており、将来的にはその他の変異についても阻害薬の開発を進めていく」と語った。 最後に橋上氏は、今後発表されるOSの最終データと、日本人を含むアジア人サブグループ解析の結果を踏まえ、本邦におけるオシメルチニブの1次治療での承認申請に向けて進めていきたいとの考えを示した。■関連記事durvalumab維持療法、Stage III肺がんのPFSを有意に改善(PACIFIC)/ESMO2017肺がんMYSTIC試験、durvalumab・tremelimumab併用の一部結果を発表HR0.46、オシメルチニブが1次治療で標準治療を上回る(FLAURA)/ESMO2017ステージ3切除不能肺がん、durvalumab維持療法が良好な結果:PACIFIC試験durvalumab、切除不能StageIII肺がんのブレークスルー・セラピーに指定オシメルチニブ、肺がんFLAURA試験の主要評価項目を達成オシメルチニブ、CNS転移例にも有効性示す:AURA3試験/ASCO2017

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第3回 医師が乗っているクルマ、乗りたいクルマ

緊急の呼び出し、外勤への移動など医師はクルマを使う機会が多いこともあり、クルマへの思い入れが強い方も少なくない。CareNet.comでは、会員医師にクルマ(四輪車)に関するアンケートを実施。回答者総数は307名であった。その結果を3回に分けて報告する。最終回は「医師が乗っているクルマ乗りたいクルマ」。結果概要(医師が乗っているクルマ)現在乗っているクルマ上位3車はトヨタ、ホンダ、メルセデス・ベンツ1位はトヨタで、クルマ所有医師の30%以上という圧倒的シェアを占める。ホンダ、メルセデス・ベンツがほぼ同割合で2位、3位。以降スバル、フォルクスワーゲン、レクサス、BMWと続く。■設問 現在乗っているクルマは下記のうちいずれですか? 往診専用車を除き教えてください。(回答はいくつでも)

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第9回 医師を悩ますローカルルール ~地域が違うと査定が増える?【医師が知っておきたいレセプトの話】

「これまでに査定されなかった診療行為が、新しい転勤先でなぜか査定された…」先生方のこのような悩みを耳にします。実は、これは都道府県をまたいだ転勤の場合に起こりうることなのです。今回は、転勤・転職後に起こりうる「地域査定ギャップ」について、お話します。都道府県支部による審査まずは、第4回で説明した「レセプトの流れ」を簡単におさらいします。「審査支払機関」は、国民健康保険加入者のレセプトを取り扱う国民健康保険団体連合会(以下「国保連」と言います)と、その他のレセプトを取り扱う社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」と言います)の2つに分かれます。さらに「国保連」、「支払基金」がそれぞれに47都道府県に支部を持っており、皆さんの所属する医療機関は、所在する都道府県支部にレセプトを提出し、そのレセプトはそれぞれの支部で審査されます。レセプトの審査は、「各都道府県支部で行われている!」ということがポイントです。A県はB県の4倍査定されやすい?そのポイントを押さえながら、都道府県支部別に査定のデータを見てみると驚愕の事実が見えてきます。図1は、平成28年度の1年間に支払基金に提出のあったレセプトデータ件数です。画像を拡大するレセプト申請件数に対して、最も査定件数の割合が高かったのは2,567万件の申請件数に対して60万件の査定があった北海道で、査定割合は2.37%でした。逆に最も査定件数の割合が低かったのは秋田県で、569万件の請求件数に対して2万8,000件の査定があり、査定割合は0.50%でした。なんと両道県の査定割合の地域差は、4.7倍にもなっているのです。次に図2で、査定となった金額について支部間の比較データを見てみましょう。画像を拡大する申請金額に対して最も査定金額が高かったのは大阪府で、平均すると10万円の請求当たり490円の査定減額となっています。一方、最も査定金額が低かったのは秋田県で、10万円の請求当たり110円の査定減額でした。ここでもその差は4.5倍となっています。どうしてこのように、都道府県で査定割合に差が出てくるのでしょうか?都道府県で査定割合に差が出る理由先述の第4回で確認したとおり、コンピュータによるチェックが行われているので、本来であれば、それほど差は生じないと考えがちです。しかし現実にはそうではないようです。その理由は、コンピューターチェックのルールが、支部ごとに設定されているからです。コンピューターチェックを経て、疑義のあるレセプトが審査委員のチェックに回りますが、そのスクリーニング基準に甘辛が存在しているということになります。また、審査委員の審査の時にも処方回数や検査回数の上限など支部ごとに取り決め事項(ローカルルール)が存在していて、都道府県格差につながっていると言われています。ちなみにコンピューターチェックのルールに関しては、現在のところ残念ながら非公開となっています。異動して予期せぬ査定を防ぐために地域を越えても、基本的には今まで確認してきたとおり、診療記録をしっかりと残し、適切な病名を記載する、必要な場合は症状詳記を添付するなど、審査員が納得するレセプトを作成することが王道です。また、審査結果に納得がいかない場合は再審査請求を行うといった流れも変わりません。ただ、所在する医療機関の都道府県の傾向は、押さえておくことが望ましいです。その地域で長く勤務している先生方やレセプトを日々担当している事務職員の方々の中には、地域の査定傾向をよく知っている方も多くおられます。地域交流や多職種協働の機会を通じて彼らと情報交換し、その地域の査定傾向やその対策を共有してもらうと、思わぬ査定の割合を減らすことにつながっていくかもしれません。

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AF患者の経口抗凝固療法、教育的介入で増加/Lancet

 心房細動患者への経口抗凝固療法に関して、多角・多面的な教育介入により同療法を受ける患者の割合が有意に増加したことが、ルーマニア・キャロルダビラ医科大学のDragos Vinereanu氏らが5ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、中国、インド、ルーマニア)を対象に行った国際クラスター無作為化試験「IMPACT-AF試験」の結果、示された。心房細動患者は脳卒中を発症するリスクが高いが、経口抗凝固療法で予防は可能であり、現行ガイドラインでも推奨されている。しかし、適応患者への同療法が十分に行われていない状況が報告されており、とくに中所得国において過少で、任意抽出集団を対象に調べた投与患者の割合は、東ヨーロッパ・南米・インドでは40%未満、中国では11%にとどまるという。研究グループはこれらの国々における教育介入のインパクトを評価した。Lancet誌オンライン版2017年8月25日号掲載の報告。医療提供者と患者に啓発、Webやeメール、SNSを活用 IMPACT-AF試験では、心房細動を有し経口抗凝固療法が適応(CHA2DS2-VAScスコア2以上、またはリウマチ性心臓弁膜症)の18歳以上の患者を包含したクラスターを、質的改善の教育介入を受ける群(介入群)または通常治療群(対照群)に、無作為に1対1の割合で割り付けた。無作為化は、eClinicalOS電子データ収集システムを用いて中央コーディングセンターで行われた。 介入は、医療提供者および患者の両者に対して行われ、定期的なモニタリングとフィードバックを伴った。患者・家族に対しては小冊子やウェブベースのビデオ教材を用いた啓発を行い、医療提供者には定期的なeメール送付で系統的レビューや関連論文、ウェブカンファレンスやオンラインセミナー、コーディングセンターとの質疑応答ができる掲示板の案内などを行った。介入は経口抗凝固療法の導入と継続を奨励することに焦点が置かれていた。 主要アウトカムは、ベースラインから教育介入1年時点までの、経口抗凝固療法を受けた患者の割合の変化であった。1年間で介入群12%増に対し対照群3%増、オッズ比は3.28 2014年6月11日~2016年11月13日の間に、5ヵ国の48クラスター(ブラジル8、その他各国10クラスター)、患者計2,281例(アルゼンチン343例、ブラジル360例、中国586例、インド493例、ルーマニア499例)が登録された。追跡期間は中央値12.0ヵ月(IQR:11.8~12.2)。 介入群において、経口抗凝固療法を受けた患者の割合は、ベースライン時68%(804/1,184例)から1年時点80%(943/1,184例)へ増大した(変化:12%)。一方、対照群は64%(703/1,092例)から67%(732/1,092例)への増大であった(同3%)。両群の変化の絶対差は9.1%(95%信頼区間[CI]:3.8~14.4)であり、オッズ比(OR)は3.28(95%CI:1.67~6.44、補正後p=0.0002)であった。 抗凝固療法に関する主な副次アウトカムをみると、ベースラインと1年時点いずれにおいても同療法を受けていた患者の割合は介入群と対照群で有意差はなかったが(補正後OR:1.68、p=0.10)、介入群においてわずかだがビタミンK拮抗薬の使用率が低下した変化がみられた(87%から78%、対照群は78%で推移)。また、同療法をベースラインでは受けていなかったが1年時点では受けていた患者の割合は、介入群48%、対照群18%であった(補正後OR:4.60、95%CI:2.20~9.63、p<0.0001)。 副次臨床的アウトカムのうち、Kaplan-Meier法で推定した脳卒中の発生は、対照群と比べて介入群で減少したことが示された(HR:0.48、95%CI:0.23~0.99、log-rank検定p=0.0434)。同値は補正後Coxモデルの評価でも変わらなかったが、CI値の上下限値幅が大きかった(HR:0.49、95%CI:0.21~1.13、p=0.09)。なお、全死因死亡、複合アウトカム(脳卒中・全身性塞栓症・大出血)、大出血の発生は、両群で差はなかった。

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第2世代ALK-TKI既治療のNSCLCにおけるlorlatinibの成績/ESMO2017

 ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)では、クリゾチニブによる1次治療で耐性獲得後、セリチニブ、アレクチニブ、brigatinibといった第2世代ALK-TKIが用いられる。この間、患者は臨床的恩恵を受けることができるが、ほとんどの場合、耐性を発症してしまう。lorlatinibは、脳への移行性を示す、次世代ALK-TKIであり、第1世代、第2世代TKIの耐性変異に対して活性がある。スペイン・マドリードにおける欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)では、第2世代TKIの治療歴を有するALK陽性NSCLCおけるlorlatinibの抗腫瘍活性および安全性について、スペイン Vall d’Hebron Institute of OncologyのE. Felip Fon氏らが発表した。 この第II相試験は、6つの拡大コホート(EXP1~6)で行われ、ALK陽性NSCLCはEXP1~5で評価された(EXP6はROS1陽性)。今回の発表は、EXP3B(クリゾチニブ以外のALK-TKI治療歴が1ライン)、EXP4(ALK-TKI治療歴が2ライン)、EXP4(ALK-TKI治療歴が3ライン)の3コホートの解析である。主要評価項目は、独立評価委員会(IRC)による客観的奏効率(ORR)と頭蓋内ORR(IC ORR)であった。 データカットオフ時点で、138例が第2世代TKI(アレクチニブ、セリニチブ、brigatinibまたはその他)による治療を1回以上受けていた。これらのうち95例はベースライン時に中枢神経転移を有していた。 第2世代TKI治療を1回以上受けた患者のORRは37.7%、IC ORRは47.4%であった。第2世代薬剤別にみたORR、IC ORRは、アレクチニブ既治療患者ではそれぞれ、35.1%と44.4%、セリチニブ既治療患者では34.2%と45.0%、brigatinib既治療患者では46.2%と46.4%であった。 EXP3、EXP4およびEXP5コホートにおける一般的な治療関連有害事象(TRAE)は、高コレステロール血症(EXP3、EXP4、EXP5でそれぞれ83.3%、78.5%、80.4%)および高トリグリセライド血症(同48.3%、69.2%、65.2%)。その多くはGrade1~2で、標準的な治療で管理可能であった。治療関連死は認められていない。■関連記事第3世代ALK阻害薬lorlatinibの成績発表/ASCO2017次世代ALK/ROS1阻害剤lorlatinib、ALK肺がんでFDAのブレークスルー・セラピー指定

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第2回 医師がクルマを選ぶ基準

緊急の呼び出し、外勤への移動など医師はクルマを使う機会が多いこともあり、クルマへの思い入れが強い方も少なくない。CareNet.comでは、会員医師にクルマ(四輪車)に関するアンケートを実施。回答者総数は307名であった。その結果を3回に分けて報告する。第2回は「医師がクルマを選ぶ基準」。結果概要クルマを選ぶ基準の第1位は使い勝手クルマを選ぶ基準、全体の第1位は、「使い勝手」(乗降性、サイズ、取り回しなど)で30%、第2位が「性能」の25%、次いで「価格」の14%。これらが上位3要素となっている。「リセールバリュー」と答えた医師はいなかった。■往診専用車を除き、クルマ(四輪車)を選ぶ基準について、下記の選択肢からもっとも当てはまるものを一つお選びください。(回答は1つ)1) 価格2) 性能3) 居住性4) 使い勝手(乗降性、サイズ取り回しなど)5) ボディタイプ6) デザイン7) ブランド8) リセールバリュー9) その他勤務医と開業医で異なる基準勤務医では「使い勝手」28%、「性能」25%、「価格」が16%。開業医(経営者)では「使い勝手」が36%、「性能」22%、次いで「ブランド」の11%が上位3項目。全体3位の「価格」は4%にとどまり、「デザイン」(9%)に続く、第5位に下がる。画像を拡大する画像を拡大する性別によって異なる基準男性に比べ、女性は「使い勝手」を選ぶ率が高く、「価格」を選ぶ率が低かった。画像を拡大する画像を拡大する年代によって異なる基準特徴のある2つの集団を示す。20代・30代では「使い勝手」34%、「性能」21%、「価格」19%が上位3項目。全体に比べ「使い勝手」、「価格」の要素が高い。一方、50代では、「性能」が30%で第1位、次いで「使い勝手」26%、「デザイン」の14%が上位3項目。全体3位の「価格」は10%にとどまり、11%の「ブランド」に続く第5位に下がる。50代の上位項目は、全体および他世代と異なる傾向にあった。画像を拡大する画像を拡大する

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がんリスクが低い血液型は?

 ABO式血液型は遺伝的な特性である。今回、ABO式血液型と、がん全体および各がんにおける発症リスクの関連について、米国・ピッツバーグ大学のJoyce Yongxu Huang氏らが上海コホート研究で調査し、PLOS ONE誌2017年9月7日号に報告した。 本研究は、1986年に登録された中国人男性1万8,244人の前向きコホート研究である。25年のフォローアップ期間中に3,973人ががんを発症した(肺がん964人、大腸がん624人、胃がん560人、肝臓がん353人、膀胱がん172人など)。Cox比例ハザードモデルを使用して、ABO式血液型によるがん全体および各がんのハザード比(HR)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・B型はA型と比べてがん全体のリスクが有意に低かった(HR:0.91、95%CI:0.84~0.99)。・B型とAB型はそれぞれ、消化器がんと大腸がんのリスクが有意に低かった。・B型はまた、胃がんリスクと膀胱がんリスクも有意に低かった。・AB型は、肝臓がんリスクが有意に高かった。・組織型別にみると、B型とAB型は、扁平上皮がんと腺がんのリスクが低かったが、肉腫、リンパ腫、白血病またはその他の細胞型のがんリスクとは関連していなかった。

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