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第31回 聖マリアンナ医大はなぜ、文科大臣を怒らせ続けるのか?

ワールドシリーズでコロナ騒動こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。米メジャーリーグのワールドシリーズは、ロサンゼルス・ドジャースの32年ぶりの優勝で終わりました。優勝を決めた10月27日の第6戦では、野球ファン以外もあっと驚く出来事がありました。ドジャースの内野手、ジャスティン・ターナー選手が新型コロナウイルス陽性であること試合途中で判明し、8回の守備から退きました。ターナー選手は第3戦と第4戦の初回に本塁打を放つなど、攻守で大活躍していました。コロナによる途中退場だけでもちょっとしたニュースですが、なんとターナー選手、別室に隔離されたにもかかわらず、試合後、優勝セレモニーが始まると米メジャーリーグ機構(MLB)の要請に従わずに参加、グラウンド上で他の選手とハグをし合ったり、記念撮影をしたりしたのです。しかも、マスクをずらして口元を出したままで…。ドジャース関係者はターナー選手を擁護したのですが、 MLBは28日に声明を出し「隔離状態を解き、フィールドに出た行為は誤りで、接触者を危険にさらした」と強く避難、調査を進める考えを明らかにしています。USA TODAY紙(電子版)は29日付でドジャースとレイズの選手、関係者らが自宅に戻り、自主隔離に入ったと報じています。同紙はロサンゼルス郡公衆衛生局が、「(ターナー選手のように)症状が出ていない場合でも、他人と接触するには10日間隔離した上で、症状と熱がない状態を24時間以上キープする必要がある。また、陽性反応を示した人と24時間以内に15分以上接触のあった者は14日間の隔離が必要である」というガイドラインのもと、ドジャースナインらに14日間の隔離を要求したことも報じています。とんだ優勝になったものです。しかし、前回書いたように、今回のワールドシリーズ、試合以外は選手全員がホテルに缶詰めとなって全試合を戦うバブル方式(まとまった泡の中で開催する、という意味)で行われたはずなのに、ターナー選手はどこから新型コロナに感染したのでしょうか?缶詰になったホテルの従業員からの感染説などがあるようですが、現時点では謎のままです。「合理的な説明をきちんと世の中にもするべきだ」と非難さて、今回は萩生田 光一文部科学大臣に“叱られた”聖マリアンナ医科大学(川崎市)の話題です。こちらも謎だらけです。各紙報道によると、萩生田文科大臣は10月30日の閣議後会見で、医学部入試で性別や浪人回数などによる差別があった問題で、不正を頑なに否定し続けている聖マリアンナ医大について、「合理的な説明をきちんと世の中にもするべきだ」と非難したとのことです。「毎年、毎年、偶然、偶然、偶然、偶然、偶然、合格者がそういう比率だったっていうのは、ちょっと理解できない」とも語っています。きっかけは東京医科大の不正入試聖マリアンナ医大の入試については、2018年から約2年間、さまざまな報道がされてきました。きっかけは、2018年7月に発覚した東京医科大の不正入試でした。文科省は同様の不正事例を調べるため、医学部医学科がある全国81大学の2013年度から2018年度までの6年間の入学者選抜を緊急調査しました。2018年12月に発表された調査結果では、聖マリアンナ医大を含む私立9校、国立1校の名を挙げ、男性に一律に加点する女性差別や浪人生差別などの問題があったと指摘しました。このとき、同大だけが差別の存在を否定しました。当時の柴山 昌彦文科大臣の強い要請もあり、同大は第三者委員会を組織。その調査結果(2020年1月公表)等を踏まえ、文科省は今年10月1日、同大幹部を同省に呼んで、「不適切な入試があったと見なさざるを得ない」と口頭で通告しました。私学助成金50%減額へこれを受け、日本私立学校振興・共済事業団は10月28日までに、2015~2018年度の医学部入試で女子や浪人生の差別的扱いが第三者委員会に認定された聖マリアンナ医科大について、2020年度の私学助成金を50%減額すると決定しています。冒頭の萩生田文科大臣の発言は、この決定後のものです。医学部入試が不適切だったとされた私立大は他に8校(東京医科大、岩手医科大学、昭和大学、順天堂大学、北里大学、金沢医科大学、福岡大学、日本大学)あり、いずれも不正を認め、助成金が不交付もしくは減額となっています。「そのような事実はなかったものと判断」聖マリアンナ医大が“すごい”のは、一貫して「差別的扱いの事実はない」との立場を貫き続けていることです。同大のホームページの「ニュース」コーナーには、「平成27年度~平成30年度の本学一般入学試験第2次試験についての本学の見解」として、文科省に今年9月28日に提出した文書が掲示されています。この文書は、9月3日に文科省が同大に送った「聖マリアンナ医科大学第2次受験者点数分布の性差の統計的有意性」と題する文書への回答です。それによると、第三者委員会の「大学の組織的関与によるものではないが一律の差別的取扱いが認められる」との結論に対しては「男女間に点数差が存するとの客観的事実については、これを否定するものではない」としています。また、文科省からの「別々の与えられた得点に男女が作為的に割り付けられたと判断せざるを得ない」といった指摘に対しても、「当該数値ないしデータを分析する際に用いた統計学的な分析手法自体の信頼性及び妥当性についても、 異論を述べるものではない」と反論していません。しかし、肝心の「見解」の部分では、「これまでも本学の見解としてお伝えしてきたとおり、 当該年度において実施された本学入学試験第2次試験において、 男女の別といった、 受験者の属性に応じた『一律の差別的取扱い』が行なわれたとの事実は確認できておらず、 本学としては、そのような事実はなかっ たものと判断しております。(中略)『別々の与えられた得点に男女が作為的に割り付けられた』といった事実についても同様になかったものと判断しております」と差別の存在を改めて完全否定しています。もっとも、「意図的ではないが、属性による評価の差異が生じ、一部受験者の入試結果に影響を及ぼした可能性がある」として、2次試験の不合格者に入学検定料を返還しています。文科大臣が2代続けて不快感聖マリアンナ医科大は、この2年間、文科大臣から叱られ続けてきました。文科省が2018年12月に不正入試の調査結果を発表した際も、柴山文科大臣は記者会見で、差別の存在を否定する同大の対応について「率直に言って何をしているのだろうと思う」と不快感を示し、第三者委員会を設けて事実関係を調査するよう強く求めています。今年1月に第三者委員会が「差別的取扱いが認められる」旨の報告書を公表した際には、萩生田文科大臣は、「大学の見解について丁寧な説明が必要」と注文を付けています。そして今回、再び萩生田文科大臣が“説明をきちんとしろ!“と怒ったわけです。認めると学内外でマズいことが起こる?ここまで、文科大臣の発言に正対せず、“説明しない”態度を貫く、というのはよほどの理由があるに違いありません。私学助成金ばかりでなく、文科省の各種補助金ですらもらえなくなる可能性があるのに、そのリスクを承知で歯向かうわけですから。ここからはまったくの想像ですが、考えられる理由は、1)本当に不正(差別)を行っていない、2)不正はあったがそれを正式に認めると学内外でマズいことが起こる、のいずれかででしょう。マズいことの有無や存在にについて、マスコミはとくに報道していません。1971年に神奈川県川崎市宮前区に開学した聖マリアンナ医大は、今では神奈川県にはなくてはならない存在となっています。現在、本院の聖マリアンナ医科大学病院のほかに、横浜市西部病院(横浜市旭区)、東横病院(川崎市中原区)、川崎市立多摩病院(川崎市多摩区、指定管理者として聖マリアンナ医大が管理)を経営しています。総病床数は計約2200床、神奈川県における急性期医療の重要拠点と言えるでしょう。これだけ急性期機能中心の附属病院が多くなると、医師確保の面でも相当な苦労があることは想像できます。それが医学部入試にも微妙に影響していたのかもしれませんが、それもあくまでも私の想像です。さて、ここまで文科省と仲が悪いと、自民党や厚労省とも仲が悪いと考えがちですが、どうやらそうでもないようです。聖マリアンナ医大の大学のホームページのトピック面、「Life at Marianna」には、今年10月1日(文科省が同大幹部を呼んだ日です)、三原 じゅん子・厚生労働副大臣が、同大産婦人科学の鈴木 直教授と小児がん・AYA世代がん患者の生殖医療の実情と課題について対談を行った、とのニュースが掲載されています。2010年代の新設医学部の議論の時も感じましたが、医学部教育と政治の関係は、相変わらず微妙かつ繊細だと感じる今日この頃です。

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2つの心保護作用で心不全の悪化を防ぐ「エンレスト錠50mg/100mg/200mg」【下平博士のDIノート】第61回

2つの心保護作用で心不全の悪化を防ぐ「エンレスト錠50mg/100mg/200mg」今回は、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)「サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト錠50mg/100mg/200mg、製造販売元:ノバルティスファーマ)」を紹介します。本剤は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA系)の抑制作用と、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)系の増強作用を併せ持つことで、心不全の進行を抑えます。<効能・効果>本剤は、慢性心不全(慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。※また、2021年9月、100mg・200mg錠に「高血圧症」の適応が追加されました。<用法・用量>《慢性心不全》通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として、1日2回経口投与します。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量します。忍容性に応じて適宜減量しますが、1回投与量は50mg、100mg、200mgとし、いずれにおいても1日2回投与です。なお、本剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)から切り替えて投与します。※《高血圧症》通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与します。年齢、症状により適宜増減しますが、最大投与量は1日1回400mgです。なお、本剤の投与により過度な血圧低下の恐れなどがあり、原則、高血圧治療の第一選択薬としては使えません。<安全性>慢性心不全患者を対象とした国内および海外の第III相臨床試験において、調査症例4,314例中966例(22.4%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、低血圧448例(10.4%)、高カリウム血症201例(4.7%)、腎機能障害124例(2.9%)、咳嗽67例(1.6%)、浮動性めまい63例(1.5%)、腎不全34例(0.8%)、心不全31例(0.7%)、起立性低血圧31例(0.7%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、血管浮腫(0.2%)、腎機能障害(2.9%)、腎不全(0.8%)、低血圧(10.4%)、高カリウム血症(4.7%)、ショック(0.1%未満)、失神(0.2%)、意識消失(0.1%未満)、間質性肺炎(0.1%未満)、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少、低血糖、横紋筋融解症、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、Stevens-Johnson症候群、多形紅斑、天疱瘡、類天疱瘡、肝炎(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、心臓の負担を減らし血圧を下げる作用によって、心不全の悪化を抑えます。2.血圧が下がることで、めまいやふらつきが現れることがあるので、高所での作業、自動車の運転などの危険を伴う機械を操作する場合には注意してください。3.唇・まぶた・舌・口の中・顔・首が急に腫れる、喉がつまる感じ、息苦しい、声が出にくいなどの症状が現れた場合は、すぐに連絡してください。4.体のしびれ、脱力感、吐き気、嘔吐などの症状が現れた場合、体内のカリウム値が高くなっている可能性があるので、すぐにご相談ください。<Shimo's eyes>心不全が進行すると、心臓のポンプ機能が低下して循環血液量が減少し、これを補うためにレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系と心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)系の働きが亢進します。そして、その状態が続くと心臓に負担がかかり、心不全がさらに悪化するという悪循環に陥ります。本剤の有効成分はサクビトリルおよびバルサルタンですが、いわゆる配合薬ではなく、サクビトリルとバルサルタンを1対1のモル比で含む医薬品であり、経口投与後に速やかにサクビトリルとバルサルタンに解離します。サクビトリルは、ANPを不活化するネプリライシン(NEP)を阻害してANP系を増強し、心室肥大の抑制や抗線維化などの心保護作用をもたらします。しかし、NEPはアンジオテンシンII(AII)の不活化作用も有するため、阻害されるとRAA系の働きを強めてしまいます。そこで、本剤はサクビトリルとバルサルタン(ARB)を組み合わせることでRAA系を抑え、心保護作用と降圧作用を得ることができる薬剤となり、すでに欧米を含む世界100ヵ国以上で承認されています。初回投与時は、ACE阻害薬またはARBから切り替えて使用します。ただし、ACE阻害薬との併用は血管浮腫が現れる恐れがあるため禁忌であり、ACE阻害薬から切り替える、もしくは本剤からACE阻害薬に切り替える場合は、少なくとも36時間空ける必要があります。初期投与量は50mgから開始して、忍容性を確認しながら維持量まで増量します。増量時の注意点として、50mg錠は100mg錠・200mg錠との生物学的同等性が確認されていないため、100mg以上の投与量の場合では50mg錠を使用することはできません。また、1回50mgから100mgへ増量時の基準として、(1)症候性低血圧がなく、収縮期血圧が95mmHg以上、(2)血清カリウム値5.4mEq/L以下、(3)eGFR 30mL/min/1.73m2以上かつeGFR低下率35%以下が示されています。注意すべき副作用として、本剤のブラジキニン分解阻害作用による血管浮腫、脱水(ナトリウム利尿)などがあります。臨床試験での発現頻度は低いものの、重症化すると生命を脅かす可能性がありますので、十分に注意して経過を観察しましょう。※2021年9月、添付文書改訂に伴い一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 エンレスト錠50mg/エンレスト錠100mg/エンレスト錠200mg

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第29回 厚労白書、今後20年間の見通しにつきまとう新型コロナの影響

<先週の動き>1.厚労白書、今後20年間の見通しにつきまとう新型コロナの影響2.オンライン診療、初診は「かかりつけ医」限定に3.医療計画の中間見直し、病院の入院機能だけでなく外来機能も再編へ4.特定行為看護師、外国人患者のサポート体制も広告可能に5.今年5月以降、介護事業所の経営状況は依然として悪いまま1.厚労白書、今後20年間の見通しにつきまとう新型コロナの影響10月23日の閣議において、田村厚労大臣は、令和2年度の厚生労働白書を報告した。第1部のテーマは「令和時代の社会保障と働き方を考える」と題され、平成の30年間を振り返りつつ、高齢化がピークを迎える2040年頃を見据えて、「人生100年時代」「担い手不足・人口減少」「新たなつながり・支え合い」「生活を支える社会保障制度の維持・発展」という4つの方向性に沿った対応の必要性を提示した内容となっている。2019年現在の人口1億2,617万人は、今後2040年には1億1,092万人へと減少し、働き手や支え手が不足する中、85才以上の高齢者が592万人から1,024万人に急増する見通しのため、社会保障費の増大は避けられない。今後の対応について、医療介護分野ではイノベーションの推進や、国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現などが求められる。(参考)令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-〔概要〕(厚労省)令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-〔本文〕(同)2.オンライン診療、初診は「かかりつけ医」限定に政府が進めているオンライン診療の恒久化について、10月30日の閣議後記者会見で、かかりつけ医については、初診のオンライン診療を認める方針が明らかになった。これまで、菅内閣発足直後から田村厚労相、河野太郎規制改革担当相、平井卓也デジタル改革担当相で協議を重ね、オンライン診療の初診解禁について合意がなされていた一方で、日本医師会はこれまで診療履歴のない新規の患者の診察についてはオンライン診療を認めないよう求めていた。今後、かかりつけ医の具体的な要件や対象疾患などを有識者会議で議論し、年内には一定の方向性を示すとしている。(参考)オンライン初診「かかりつけ医」限定 田村厚労相、恒久化へ向け方針(毎日新聞)田村厚生労働大臣記者会見概要 令和2年10月30日(厚労省)3.医療計画の中間見直し、病院の入院機能だけでなく外来機能も再編へ厚労省は、10月30日に「第22回医療計画の見直し等に関する検討会」をオンライン開催し、外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等について討議を行った。地域医療計画は従来5年ごとに策定だったが、2014年の地域医療介護総合確保法(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律)により6年おきに策定となり、2018年の診療報酬・介護報酬のダブル改定に合わせて、第7次医療計画がスタートした。2020年は中間見直しの年であり、現在のコロナウイルス感染拡大により局所的な病床不足の発生や感染症対応も含めた医療機関の役割分担・連携体制の構築が必要になるなど、地域医療計画の見直しを求める声が上がっている。各地で人口減少や高齢化等により「担い手の減少」と「需要の変化」が進み、外来医療の高度化等も進んでいく中で、入院医療だけでなく、外来医療についても再編の議論が必要となっている。今後、「医療資源を重点的に活用する外来」の定義をした上で、「外来機能報告」(仮称)の対象となる医療機関の範囲についてさらに議論を進め、年内には医療部会に取りまとめた検討結果を報告する見込み。地域によってはコロナウイルス感染により医療機関への受診抑制もあり、医療機関の再編が来年度以降大きく動き出す可能性がある。(参考)第22回 医療計画の見直し等に関する検討会(オンライン会議)(厚労省)4.特定行為看護師、外国人患者のサポート体制も広告可能に厚労省は「第16回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」を10月29日に開催し、医療機関が広告可能な事項として、特定行為研修を修了した看護師に医師の業務を移管していることも広告可能とする方針が了承された。また、2021年のオリンピック開催に合わせて、外国人患者についても対応できる外国語の種類や翻訳器など、サポート体制も医療機能情報提供制度を通して告示可能となる。(参考)第16回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会資料(厚労省)5.今年5月以降、介護事業所の経営状況は依然として悪いまま10月30日に厚労省が公開した「経営実態調査」で、コロナウイルス感染拡大により、介護事業者の経営状態が依然として悪いことが明らかとなった。新型コロナウイルス感染症の流行前と比較して「悪くなった」と回答した事業所の割合は5月で47.5%、感染が落ち着いた10月で32.7%となり改善したものの、通所リハビリテーションなど通所系のサービス事業者がとくに影響を受けていた。元々、介護事業者にとって人材確保が課題であり、人件費が増加(平成30年度から+0.4%)したが、コロナの影響で保健衛生費(マスク、手袋などの購入費)が増えるなど、経費が増加しており、さらにサービス利用者の減少なども影響していると見られる。(参考)介護事業所 経営悪化5割に 通所系で顕著 厚労省調査(日本農業新聞)第190回 社会保障審議会介護給付費分科会資料(厚労省)第31回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会(同)

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事例013 腰部または胸部固定帯固定の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説「C109 在宅寝たきり患者処置指導料」(以下「同指導料」)を算定している寝たきり患者の肋骨骨折疑いに対して、胸部固定帯を使用して保存的な治療が行われました。非観血整復術ではないため、「J119-2 腰部または胸部固定帯固定」(以下「同固定」)にて算定したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)として査定となりました。査定理由を調べてみました。同指導料を算定している同月に、同固定の算定があるため、D事由にて査定となったものでした。同指導料の留意事項には、算定している患者には同固定は算定できないとあります。同一日との記載はありません。「算定している」との解釈は、同じ月内を示します。同固定帯の2回目の算定は同月内のため、算定要件に合致していないことがわかります。原因は、同指導料を算定した同一日における同固定は算定不可と医事会計画面に表示されたため入力されなかったものの、翌週2回目の訪問診療算定時には、同日でなければ同固定を算定できると強制入力されていたのでした。さらにレセプトチェックシステムのエラーを見落として、そのまま提出してしまったようです。防止策として、請求ルールの共有とエラーを見落さないように勉強会開催を提言しました。なお、事例では、使用した固定帯の費用は、「J200腰部、胸部または頸部固定帯加算」として算定できます。体内留置を原則とする医療材料ではないとの理由からの加算設定です。同固定の算定ができる期間内に、破損や機能が合わないなどの医学的理由により固定帯を給付する都度に算定できます。ただし、短期間に複数回の給付が行われる場合には、レセプトにその医学的理由の記載がないと査定の対象となります。

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043)外来コールの静かな戦い【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第43回 外来コールの静かな戦いゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆今回は、外来での診察コールのお話。私の勤務先では、手元のマイクを使って、次の患者さんを診察室へ呼び入れるシステムになっています。ボタンを押すとまず、「ポーン♪」と予報音が鳴り、それから名前を呼びます。おそらく似た仕組みの病院が多いと思いますが、この外来コール、たびたび近隣の診察室とかぶりませんか!? ほかの部屋の「ポーン♪」が鳴ったら、私はとっさに譲ってしまうのですが、いろんな考え方の先生がいらっしゃるらしく…。偶然よくかぶってしまう先生がいて、かぶるたびに(ひそかに)苦笑いをしています。逆に、阿吽の呼吸で譲り合える先生もいて、静かな連携プレー(?)にひとりにんまりすることもあります(笑)。こんなささいなことを気に掛けているのは、私だけかもしれませんが…。外来コールは早い者勝ちですね。今回は、忙しい外来診療の合間に行われる、静かなコール合戦のお話でした。それでは、また~!

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離島に代診で行ってみた その2【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第20回

前回から引き続き、代診のお手伝いに行ってきた甑(こしき)島のお話をしたいと思います。心臓外科も空手も関係ない世界のお話ではありますが…。2020年も大きな台風がたくさん発生しましたが、幸い本州を直撃したものはありませんでした。しかし、中でも最大級だった台風10号は、狙いすました様に九州西側に位置する甑島を直撃しました。ちょうど甑島へ行く1週間前のことだったので、「まさか診療所、吹っ飛んだりしていないよな…?」と不安になったりもしました。実際に島に着いて散策をしていると、写真のように痛々しい傷跡があちこちに認められ、台風の威力を物語っていました。直接的な人的被害はほとんどなかったそうですが…何ぶん高齢化の進んでいる地域ですので、住民たちが自力で補修作業に当たらなければならないことも多くあります。その結果、腰痛が発生したり、屋根から落っこちたり…副次的な影響が沢山出てきていました。では、すっかり島は落ち込んだ空気かと言うと、そういうことはなかったです。台風直後のとある土曜日に、集落にある小学校で運動会が開かれました。小学生だけだと人数が少ないので、中学生と合同で行われていました。と言いますか、それでも人数が足りていないので、何かしらのチームを作って、大人も参加したりします。お婆さんが大漁旗を振って応援していたり、予想外の盛り上がりをみせていました。診療所からも、地域研修で島に来ていた研修医を中心としたチームで出場しました。平均年齢は若かったのですが、4チームで走って2位と、残念な結果に終わりました。その後、夜は(一人で)焼肉屋に行ったのですが、周りは運動会後の反省会をしている家族ばかりでした。「何で、あそこで諦めたんだ!」とか、「お前、勉強もできないのに運動でも負けてどうすんだ!」とか、あちらこちらから辛辣な言葉が飛び交っていましたが、まあ子供たちは適当に親の言うことを聞き流している様子だったので、問題ないんだろうな~と思いました。台風の傷痕が完全に癒えるには、まだまだ時間が必要だと思うのですが、悲観的な空気を感じることはほとんどありませんでした。今後も大きな事故が起きることなく、元の状態に戻っていけるように祈っております。

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尿失禁への骨盤底筋トレーニング、筋電図バイオフィードバック併用は?/BMJ

 緊張性・混合性尿失禁の女性に対する、骨盤底筋トレーニング(PFMT)への筋電図バイオフィードバックの併用は、24ヵ月後の尿失禁重症度の改善に対し効果が認められるというエビデンスはないことが示された。英国・Glasgow Caledonian UniversityのSuzanne Hagen氏らが、600例を対象に行った並行群間比較無作為化試験の結果明らかにしたもので、BMJ誌2020年10月14日号で発表した。これまでにコクランレビューでは併用の有益性が示される一方、メタ解析では有益性は認められないとの結果が示され、その後の2件の小規模単施設試験では治療直後の評価では有益性が認められるなどの報告が寄せられていた。今回の大規模試験の結果を踏まえて著者は、「PFMTへの筋電図バイオフィードバックのルーチンの実施は推奨すべきではない。PFMTの効果を最大化する他の方法を検討すべきだ」とまとめている。自宅でもPFMTと筋電図バイオフィードバックを使用 研究グループは2014年2月~2016年7月に、緊張性または混合性尿失禁を新たに発症した、18歳以上の女性600例を対象に試験を行った。 被験者を2群(各群300例)に分け、一方にはPFMT+筋電図バイオフィードバックを(筋電図バイオフィードバック群)、もう一方にはPFMTのみ(対照群)を行った。 両群ともに、16週間で6回の失禁療法士(continence therapist)との対面療法を行った。筋電図バイオフィードバック群には、指導管理を伴うPFMTと自宅で行うPFMTに加え、筋電図バイオフィードバックを診察時と自宅で行った。対照群では、指導管理PFMTと自宅PFMTのみを行った。PFMTプログラムは、診察を重ねながら進行した。 主要アウトカムは、24ヵ月後の自己申告による尿失禁重症度で、国際尿失禁評価質問票簡易版「ICIQ-UI SF」(0~21)で評価した。副次アウトカムは、完治または改善、その他の骨盤底筋症状、質調整生存年などだった。24ヵ月後の重症度、両群で同等 24ヵ月後のICIQ-UI SFスコア平均値は、筋電図バイオフィードバック群8.2、対照群8.5で有意差はみられなかった(平均群間差:-0.09、95%信頼区間[CI]:-0.92~0.75、p=0.84)。 筋電図バイオフィードバック群は、介入費用(平均群間差:121ポンド[154ドル、133ユーロ]、95%CI:-409~651、p=0.64)、質調整生存年(-0.04、-0.12~0.04、p=0.28)のいずれも両群で同等だった。 48例が有害事象を報告。そのうち23例が治療に関連したもしくは関連していた可能性があるものだった。(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)専門家はこう見る:CLEAR!ジャーナル四天王筋電図バイオフィードバックは女性尿失禁に対する骨盤底筋訓練に有効なのか?:多施設共同研究(解説:宮嶋 哲 氏)-1313 コメンテーター : 宮嶋 哲( みやじま あきら ) 氏東海大学医学部外科学系泌尿器科学 主任教授

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COVID-19拡大下、2型糖尿病血糖コントロールの実態/日本糖尿病学会

 10月5日(月)~16日(金)、Web開催された第63回日本糖尿病学会年次学術集会の緊急特別シンポジウム 「COVID-19~我が国の現状と糖尿病診療との関わり~」において、山﨑 真裕氏(京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学)が「COVID-19感染拡大下における糖尿病診療」と題して、外来における糖尿病患者の行動の変化、入院における糖尿病を持つCOVID-19患者の治療について講演した。COVID-19による2型糖尿病患者のストレス、生活習慣への影響を明らかに 糖尿病患者のストレスや血糖コントロールの悪化は、これまでの台風や地震などの災害時にも報告されてきた。同様にCOVID-19蔓延も糖尿病患者のストレスの要因であり、血糖コントロールや行動への影響が報告されている。 今回、山﨑氏らは2型糖尿病患者の生活習慣の変化を調査するため、自施設にてアンケート調査を実施。対象者は2020年4月16日~5月1日に来院予定であった564例で、電話診療を行った患者や来院しなかった患者などを除外し、最終的に203例(平均年齢67.4歳[男性:126例、女性:77例]、平均糖尿病歴は14.4年、経口薬の使用は170例、インスリンの使用は135例、運動習慣ありは133例)へ聞き取りを行った。調査項目は、ストレス、睡眠時間、運動量、食事量、間食、野菜摂取量、惣菜摂取量などで、 その変化をVASスコアで自己評価してもらった。 主な結果は以下のとおり。・ストレスが増加した方は41.2%、運動量が減った方は53.7%だった。・ストレスの増加と運動量の減少、食事摂取量・惣菜摂取量の増加が関連した。・運動量の減少と間食、惣菜摂取量の増加が関連した。・体重変化をストレスや睡眠時間などで分析したところ、運動量の減少と関連がみられた。・HbA1cの変化については睡眠時間の減少と間食の増加が関連し悪化していた。 これらの結果について同氏は「コロナ禍の下で外出回数の減少、外出への不安があり、自宅にいる時間が長くなった結果」とし、またサブ解析では「65歳未満と運動習慣のない患者において、運動量の減少での体重増加、間食や惣菜の増加で体重やHbA1cが増加した」と結論付けたが、「病院に来られなかった患者はもっと不安を感じていたのではないか。“全体として悪くなっている”という評価ではなく、悪くなっている人と良くなっている人がいることを踏まえ、個々の対応が必要。そして、コロナ禍後にどのようにつなげていくかが課題である」とコメントした。コロナ禍の入院患者の血糖コントロール、real-time CGMが有用 COVID-19の糖尿病合併例では、その他感染症と同様、厳密な血糖コントロール、低血糖リスクの回避が求められる。そのため血糖測定の頻度は通常より多くなり、それが医療者側の不安につながる。そこで同氏は改善策として遠隔で血糖値が確認できるよう自施設でreal-time CGMを導入した。その結果、持続インスリン静脈内投与をこまめに調節することで重症患者の血糖値を安定化させ、低血糖を起こさないようにコントロールすることができた。海外文献*でも「血糖値を140~180mg/dlに保ちやすい、低血糖を予防できる、限られたpersonal protective equipment(PPE)の節約、Health care workerの接触の機会を減らす」可能性が示されており、糖尿病専門医としての責務を果たすため、今後もコロナ禍が続き入院患者増を予測される中で対応の検討が必要と話した。

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「抗菌薬はウイルスをやっつける」5割が依然として誤解【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第56回

感染症への関心がかつてないほど高まっていますが、一般の方の感染対策や抗菌薬に対する意識は昨年から変化したのでしょうか。抗菌薬に対する知識や理解について調査した「抗菌薬意識調査レポート2020」が公表されましたので紹介します。国立国際医療研究センターは10月8日、抗菌薬意識調査レポート2020を発表した。調査結果によると、普段処方された抗菌薬・抗生物質を飲みきらない人は34.6%。そのうち「途中で忘れてしまい飲みきっていない」人は8.9%、「治ったら途中で飲むのをやめる」人は25.7%だった。同センターは、飲み残しを取っておく人も多いことも指摘した上で、「抗菌薬の正しい使用法を積極的に広めていく必要がある」とした。(2020年10月12日付 日刊薬業)この調査は、2020年8月に10代以上の方を対象として行われたインターネット調査で、700人が回答しました。同様の調査は昨年も行われているため、昨年と今年の変化もみていきたいと思います。まず、「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」と回答した人は、昨年の調査では64.0%、今年は49.7%でした。また、「抗菌薬・抗生物質はかぜに効果がある」と回答した人は、昨年は45.6%、今年は34.3%でした。まだまだ間違った知識の人が多いじゃん…と思いますが、どちらも昨年よりは減っています。風邪の原因の多くはウイルスで、多くの場合は抗菌薬が効かないということが普及してきたのでしょう。次に、耐性菌で悩ましい抗菌薬飲み切り問題についてですが、昨年の調査において、「処方された抗菌薬・抗生物質はすべて飲み切る必要がある」と回答した人は63.4%でした。今年の調査は多少質問や選択肢が異なっているのですが、「普段、処方された抗菌薬・抗生物質を飲み切っていますか」という実際の行動を尋ねる質問に対し、「普段からできるだけ飲まない」と回答した人が20.3%、「最後まで飲み切っている」が45.1%、「治ったら途中で飲むのをやめる」が25.7%、「途中で忘れてしまい飲み切っていない」が8.9%で、結果的に飲み切っていないと回答した人は34.6%でした。抗菌薬の飲み切りについて誤った行動をとっている人もまだ多くいるため、服薬指導の重要性を感じます。ただ、「普段からできるだけ飲まない」と回答した人のスタンスはわからなくもないのですが、医師から処方されても飲まないというニュアンスが含まれているのだとしたら、それはちょっと別の問題かなと思います。コロナで感染対策への意識高まる今年は新型コロナウイルス感染症が流行したこともあって、コロナ関連の項目もありました。「新型コロナウイルス感染症が流行し始めてから、感染症や感染対策に関する情報を以前よりも気にするようになりましたか」という質問では、30.7%が「大変気にするようになった」、36.7%が「少し気にするようになった」と答えており、67.4%が以前よりも気にしていました。また、「現在感染症予防として取っている感染対策は、今後も日常生活で続けていけそうですか」という質問に対して、「このまま続ける」と答えた人は65.6%で、「新しい生活様式」がすっかりなじんだことがわかります。対策を続けていくことで、そもそも風邪にかかる人が少なくなるのではないでしょうか。今年はなかったのですが、昨年は「朝起きたら、だるくて鼻水、咳、のどの痛みがあり、熱を測ったら37℃でした。あなたは学校や職場を休みますか?」という興味深い質問があり、「休む」と答えた人が37.1%、「休みたいが休めない」「休まない」のように結局休まないと答えた人が60%以上となりました。今思うとこの“頑張り”はとても怖いですよね。新型コロナや働き方改革などを考慮して、これまで風邪をひいても「働くために」症状を抑制することを促していた風邪薬のCMが、「かぜの時は、お家で休もう!」「大切ですよ、無理しない勇気」などと、無理をせずに家で休もうというメッセージに変更されました。今年こそこの休むかどうかの質問を実施してほしかった!と思うのですが、今年の質問にはなく比較できませんでした。間もなく新型コロナ・風邪・インフルエンザのトリプルパンチになる恐れがあります。感染予防や感染後の対応、抗菌薬の使用について正しい知識を伝えて、これまでとは異なる冬を乗り切りましょう。

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外傷性脳損傷への入院前トラネキサム酸投与に有益性なし(解説:中川原譲二氏)-1306

 中等度~重度の外傷性脳損傷(TBI)は、外傷性死亡および障害の最重要の原因であるが、早期のトラネキサム酸投与がベネフィットをもたらす可能性が示唆されていた。そこで、米国・オレゴン健康科学大学のSusan E. Rowell氏らが、多施設共同二重盲検無作為化試験の結果を報告した(JAMA誌2020年9月8日号掲載の報告)。入院前トラネキサム酸投与の有益性を対プラセボで評価 試験は2015年5月~2017年11月に、米国およびカナダの外傷センター20ヵ所と救急医療機関39ヵ所で実施された。適格患者は、Glasgow Coma Scaleスコア12以下および収縮期血圧90mmHg以上である15歳以上のTBI入院前患者(1,280例)で、受傷2時間以内に治療を開始する以下の3つの介入が評価された。(1)入院前にトラネキサム酸(1g)をボーラス投与し、入院後に同薬(1g)を8時間点滴投与(ボーラス継続群、312例)、(2)入院前にトラネキサム酸(2g)をボーラス投与し、入院後にプラセボを8時間点滴投与(ボーラスのみ群、345例)、(3)入院前にプラセボをボーラス投与し、入院後にプラセボを8時間点滴投与(プラセボ群、309例)。 主要アウトカムは、複合投与群とプラセボ群での6ヵ月時点の良好な神経学的アウトカム(Glasgow Outcome Scale-Extendedスコア4超[中等度障害または良好な回復])とされた。非対称有意性の閾値は、有益性が0.1、有害性は0.025とされた。副次エンドポイントは18項目で、本論文ではそのうち5つ(28日死亡率、6ヵ月時のDisability Rating Scaleスコア[0:障害なし~30:死亡]、頭蓋内出血の進行、発作の発生、血栓塞栓症イベントの発生)が報告された。6ヵ月時の良好なアウトカム、投与群65% vs.プラセボ群62% 参加1,063例のうち、割り付け治療が行われなかった96例とその他1例(登録時に収監)が除外され、解析集団は966例(平均年齢42歳、男性255例[74%]、平均Glasgow Coma Scaleスコア:8)となった。このうち819例(84.8%)について、6ヵ月フォローアップ時の主要アウトカムが解析できた。 主要アウトカムの発生は、投与群65%、プラセボ群62%であった(群間差:3.5%、有益性に関する90%片側信頼区間[CI]:-0.9%[p=0.16]、有害性の97.5%片側CI:10.2%[p=0.84])。副次エンドポイントの28日死亡率(投与群14% vs.プラセボ群17%、群間差:-2.9%[95%CI:-7.9~2.1]、p=0.26)、6ヵ月時のDisability Rating Scaleスコア(6.8 vs.7.6、-0.9[-2.5~0.7]、p=0.29)、頭蓋内出血の進行(16% vs.20%、-5.4%[-12.8~2.1]、p=0.16)については、有意差はみられなかった。トラネキサム酸の有効性に関する詳細な分析が必要 本研究では、中等度~重度のTBIに対する受傷2時間以内の入院前トラネキサム酸の投与は、Glasgow Outcome Scale-Extendedスコアで評価された6ヵ月時点の良好な神経学的アウトカムを有意に改善しなかったと結論された。一般に、中等度~重度のTBIでは、発症早期に頭蓋内出血(硬膜上出血、硬膜下出血、クモ膜下出血、出血性脳挫傷)の増大やびまん性軸索損傷に伴う微小出血などの出血性の頭蓋内病態を軽減することが、転帰の改善につながると想定され、本研究では、発症早期(入院前)に抗線維素溶解薬であるトラネキサム酸を投与することの有効性が検証されたと思われる。しかしながら、中等度~重度のTBIでは、頭蓋内圧亢進や低酸素症、低血圧症など虚血性の頭蓋内病態を引き起こす要因が転帰に大きく影響することが知られており、トラネキサム酸(2g)の入院前投与で、出血性の頭蓋内病態がどの程度軽減されたのか、虚血性の頭蓋内病態が増悪する(長期投与で指摘されている)ことはなかったのか、など詳細について分析する必要があると思われる。 

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引き継げると思っていた患者が来ない!?「特殊診療」のワナに注意せよ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第3回

第3回 引き継げると思っていた患者が来ない!?「特殊診療」のワナに注意せよ漫画・イラスト:かたぎりもとこ買い手側からすると、引き継ぐ診療所の患者数は多ければ多いほどありがたいものです。診療所を引き継いだ当初から黒字経営でき、集患対策などの間接業務に手を取られず、診療に集中できるからです。しかし、ここにも落とし穴が…。都心エリアのように、周囲に診療所(競合)が多いのにもかかわらず、際立って外来患者数の多い診療所は注意が必要です。こうしたケースには大きく分けて2つの要因が考えられます。(1)標榜科目が複数あり、幅広い患者を診ているケース(2)専門性が高く、一般的な診療圏を超えて患者が来院しているケース(1)のケースは、とくに外科出身の院長が運営している診療所でよく見られます。内科の慢性疾患の患者が多いことに加え、小児や皮膚科も診ており、かつ外科として手術などにも対応している、というケースです。このような場合、買い手側は、現在の患者のすべてを引き継げるのか、引き継げない場合はどのくらいの患者が離反してしまうのか、科目別で患者層を確認することが必要です。(2)のケースは、通常は診療所の患者は近隣住民であることがほとんどですが、例外もあります。たとえば「整形外科の中でも手のひらを専門で診ている(とくに専門性が高い)」、「美容外科の分野でよくメディアに出ている(とくに知名度が高い)」などの理由で、「どうしてもこの医師に診てほしい」というニーズが強い場合、一般的な診療圏を超えて、遠方から患者が来院しているのです。一般的な診療圏の定義は科目や都心or地方などで異なりますが、都心部の内科系診療所であれば半径500m~1kmとするのが一般的です。旧院長と面談で会話する際などに、遠方からの外来数の割合を確認し、それらが2割を超える場合は一度専門など、その理由を確認することをお薦めします。

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第40回 降圧薬は就寝時服用でより心血管イベントリスクを低減の報告【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 痒みなどのアレルギー症状や喘息発作、片頭痛発作など、特定の時間に症状が出やすい疾患では、日内リズムや薬物の時間薬理学的特徴に応じて薬剤の服用タイミングが設定されることがあります。血圧にも日内変動がありますが、こうした時間治療(chronotherapy)は高血圧に対しても有用なのでしょうか。今回は、降圧薬の服用タイミングと心血管イベントについて検討したHygia Chronotherapy Trial1)を紹介します。対象は、スペイン在住の18歳以上の白人で、普段は日中に活動して夜間は就寝し、1剤以上の降圧薬を服用している高血圧患者1万9,084例(男性1万614例、女性約8,470例、平均年齢60.5歳)です。夜勤のある人やほかの人種では結果が変わるかもしれない点には注意が必要です。降圧薬を就寝時に服用する群9,552例、起床時に服用する群9,532例に分け、中央値6.3年追跡しています。ランダム化の方法は厳密には本文からは読み取れませんが、結果的に振り分けられたベースラインでの群間の特徴は似通っているため、おおむね平等な比較とみてよいかと思います。試験期間を通して定期的な血圧測定を行い、さらに年に1回は2日間にわたり携帯型の自動血圧計を装着して、自由行動下の24時間血圧も測定しています。服用薬の内訳は、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、β遮断薬、利尿薬で、評価者のみを盲検化するPROBE(Prospective Randomised Open Blinded-Endpoint)法を用いて評価しています。アウトカムは、主要なCVDイベント(CVDによる死亡、心筋梗塞、冠動脈再建術、心不全、脳卒中)の発生でした。医師と患者のいずれも治療内容を知っているためバイアスは避けられませんが、実臨床に近いセッティングともいえるでしょう。判断に揺らぎが出やすいアウトカムだと評価者の判断が影響を受けかねませんが、心筋梗塞や死亡など明確な場合は問題になりづらいと思われます。結果としては、追跡調査期間中に、1,752例で主要なCVDイベントがあり、就寝時服薬群の起床時服薬群と比較してのハザード比は次のとおりでした。 心血管イベントの複合エンドポイント 0.55(95%信頼区間[CI]: 0.50-0.61) 心血管死亡 0.44(95%CI:0.34~0.56) 心筋梗塞 0.66(95%CI:0.52~0.84) 冠動脈再建術 0.60(95%CI:0.47~0.75) 心不全 0.58(95%CI:0.49~0.70) 脳卒中 0.51(95%CI:0.41~0.63)降圧薬を起床時に服用した群と比べて、就寝時に服用した群では、心血管死亡リスクは56%、心筋梗塞リスクは34%、血行再建術の施行リスクは40%、心不全リスクは42%、脳卒中リスクは49%、これらのイベントを併せた複合アウトカムの発症リスクは45%と、それぞれ有意に低いという結果でした。これらの結果は、性別や年齢、糖尿病や腎臓病といったリスク因子の有無にかかわらず一貫しています。就寝時服薬群は24時間血圧で夜間の血圧が低下本文では著者らは相対ハザード比のみを報告し、絶対リスク減少率(ARR)や必要治療数(NNT)を報告していませんでしたが、批判を受けたためコメント欄に補足する形で各アウトカムのARRとNNTを追記しています。それによると、全CVDイベントは起床時服用群で1,566、就寝時服用群で888、ARRは 7.08(95%CI:6.13~8.02)、NNTは14.13(95%CI:12.46~16.30)でした。24時間血圧の測定値からも、就寝時服用群では睡眠中の血圧値が有意に低いこともわかっており、心筋梗塞や脳卒中のリスク因子である夜間高血圧の改善が結果に寄与したのではないかと仮説が述べられています。現時点では高血圧症診療ガイドラインに服用タイミングについて明確な言及はありませんが、就寝時の処方が増えてもおかしくない結果ではないでしょうか。もちろん、夜間の血圧が昼間に比べ20%以上低くなるようなextreme-dipper型などでは注意が必要です。利尿薬を夜に服用することを避けたいという患者さんもいれば、一部のCa拮抗薬は朝食後服用となっているものもあります。そうした個別の事情を踏まえつつ、用法提案の1つの選択肢として覚えておいて損はないかと思います。1)Hermida RC, et al. Eur Heart J. 2019; ehz754.

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Pfizer社のCOVID-19ワクチン候補、第I相試験結果/NEJM

 BioNTechとPfizerが共同で開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する2つのmRNAワクチン候補「BNT162b1」「BNT162b2」について、米国・ロチェスター大学のEdward E. Walsh氏らによる第I相プラセボ対照試験の結果が発表された。米国の若年成人(18~55歳)群と高齢者(65~85歳)群を対象とした評価者盲検用量漸増評価試験で、BNT162b2がBNT162b1に比べ安全性・免疫原性について優れる結果が得られたという。若年成人へのBNT162b1についてはすでに、ドイツと米国での試験結果が報告されており、同試験および今回の試験結果を踏まえて著者は、「BNT162b2を第IIおよび第III相の安全性・有効性評価試験を検討するワクチン候補として支持される結果が得られた」とまとめている。NEJM誌オンライン版2020年10月14日号掲載の報告。BNT162b1の100μgのみ1回投与、その他は21日間隔で2回投与 研究グループは、脂質ナノ粒子製剤・修飾ヌクレオシドmRNAワクチン候補「BNT162b1」「BNT162b2」について米国で行われている、第I相のプラセボ対照用量漸増評価者盲検試験において、健康な若年成人(18~55歳)と高齢者(65~85歳)を対象に評価を行った。BNT162b1は、分泌された三重体SARS-CoV-2受容体結合ドメインをエンコードし、BNT162b2は膜結合型のSARS-CoV-2のスパイク糖蛋白全長をエンコードする作用がある。 被験者は、BNT162b1群とBNT162b2群、年齢(若年成人と高齢者)、投与量(10μg、20μg、30μg、100μg)別に13のグループ(100μgはBNT162b1の若年成人のみ投与)に分けられ、BNT162b1の100μg群には1回投与、それ以外の群には21日間隔で2回の投与が行われた。 主要アウトカムは、局所または全身性反応や有害事象などの安全性だった。副次アウトカムは免疫原性だった。両ワクチン候補群ともに回復患者より同等以上の幾何平均抗体価を誘発 合計195例が無作為化を受けた。13グループに各15例が割り付けられ、15例中12例に実薬が投与、残り3例にプラセボを投与した。 BNT162b2はBNT162b1に比べ、全身性反応の発生率と重症度が低かった。その傾向は、とくに高齢者で顕著だった。 両年齢グループにおいて、BNT162b2およびBNT162b1ともに、投与量依存性のSARS-CoV-2中和抗体の幾何平均抗体価が誘発された。同値は、SARS-CoV-2感染回復期の患者の血清パネル幾何平均抗体価と、同等かより高かった。

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喘息治療で初のLABA/LAMA/ICS配合吸入薬「エナジア吸入用カプセル中用量/高用量」【下平博士のDIノート】第60回

喘息治療で初のLABA/LAMA/ICS配合吸入薬「エナジア吸入用カプセル中用量/高用量」今回は、喘息治療薬「インダカテロール酢酸塩/グリコピロニウム臭化物/モメタゾンフランカルボン酸エステル(商品名:エナジア吸入用カプセル中用量/高用量、製造販売元:ノバルティス ファーマ)」を紹介します。本剤は1カプセル中にLABA/LAMA/ICSの3成分を配合しており、1日1回1吸入で良好な喘息コントロールが得られることが期待されています。<効能・効果>本剤は、気管支喘息(吸入ステロイド剤[ICS]と長時間作用性吸入β2刺激薬[LABA]、長時間作用性吸入抗コリン薬[LAMA]の併用が必要な場合)の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。<用法・用量>通常、成人には中用量(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μg、モメタゾンフランカルボン酸エステルとして80μg)を1日1回1カプセル、本剤専用の吸入用器具(ブリーズヘラー)を用いて吸入します。なお、症状に応じて高用量(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μg、モメタゾンフランカルボン酸エステルとして160μg)を1日1回1カプセル吸入することもできます。<安全性>国際共同QVM149B2302試験および国内B1304試験で本剤が投与された日本人被験者において、主な副作用として発声障害(8.7%)が認められました(承認時)。なお、重大な副作用として、アナフィラキシー、重篤な血清カリウム値の低下、心房細動(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、長時間作用する気管支拡張薬を2種類と、ステロイド薬を1種類含んだ吸入薬です。毎日同じ時間帯に規則正しく吸入することで、喘息の症状を改善します。2.専用の吸入用器具にカプセルを1つセットし、両脇の緑色のボタンを押してカプセルに穴を開けてから吸入します。うまく吸入できていたら、カラカラというカプセルの回転音が鳴ります。3.吸入が終わった後は、カプセルや粉末に触れないように気を付けて捨ててください。カプセル内に粉末が残っている場合は、再度吸入を行ってください。4.声枯れや感染症を予防するため、吸入後は必ず上を向いてうがいをして、うがいが困難な場合は口腔内をすすいでください。その際、口に含んだ水を飲み込まないように気を付けてください。5.吸入開始後に、動悸、手足の震え、尿が出にくいなどの症状が現れた場合は、すぐに受診してください。<Shimo's eyes>本剤は、喘息治療吸入薬として世界で初めてのLABA/LAMA/ICS配合製剤です。『喘息予防・管理ガイドライン2018』において、治療ステップ3~4に該当する中用量または高用量ICS/LABAによる治療でも喘息コントロールが不十分な場合は、LAMAを追加することが治療選択肢の1つとして推奨されています。しかし、これまで喘息の適応を有するLABA/LAMA/ICS配合薬は販売されていませんでした。LABA/ICS配合薬の多くが1日2回吸入ですが、本剤は1日1回でLABA/LAMA/ICSの3成分を一度に吸入できるため、服薬アドヒアランスの向上が期待できます。また、複数の製剤を組み合わせて使用するよりも1日薬価が下がり、経済的負担が軽減できるというメリットもあります。専用の吸入器である「ブリーズヘラー」は、喘息治療薬として初めて適用されました。本吸入器は最大吸気流量が低下している患者でも比較的使用しやすいデバイスです。しかし、カプセルをセットする手間がかかり、カプセルの誤飲に注意する必要があります。主な副作用は発声障害なので、使用後のうがいを徹底することも大切です。本剤は、同時に発売された喘息治療配合薬「インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル(商品名:アテキュラ)」にLAMA(グリコピロニウム)を加えたものです。本剤とはモメタゾンの用量が不一致ですが、効果発現が期待できるモメタゾンの粒子量としては同程度です。薬剤師にとっても、多種多様の吸入薬のデバイス操作と指導法を覚えるのは大変なことですが、2020年度の調剤報酬改定で「吸入薬指導加算」が導入されたように、薬剤師の活躍が期待されている分野です。治療方針の決定とデバイス選択は医師が行い、吸入指導は薬剤師が重要な担い手となるという密な病薬連携が吸入指導の成功の鍵になると考えられます。薬局では、処方医に指導・経過のフィードバックを細やかに行い、しっかりと情報共有することで、患者さんのよりよい治療継続を目指しましょう。参考1)PMDA 添付文書 エナジア吸入用カプセル中用量/エナジア吸入用カプセル高用量

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第30回 経口液剤AMX0035でALS患者の生存も改善

世界保健機関(WHO)主催の世界30ヵ国以上での無作為化試験(Solidarity)の査読前報告が先週木曜日15日にmedRxivに掲載され1,2)、残念ながらギリアド社のベクルリー(Remdesivir、レムデシビル)やその他3つの抗ウイルス薬・ヒドロキシクロロキン、カレトラ(lopinavir/ritonavir)、インターフェロン(Interferon-β1a)はどれもCOVID-19入院患者の死亡を減らしませんでした。たとえばレムデシビル投与群の28日間の死亡率は非投与対照群の11.2%(303/2,708人)とほとんど同じ11%(301/2,743人)であり1,3)、その差は有意ではありませんでした(p=0.50)。そんなSolidarity試験とは対照的に、その発表の翌16日、脳や脊髄の運動神経が死ぬことで生じる難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬候補の良いニュースがありました4-6)。先月9月初めにNEJM誌に掲載されたプラセボ対照第II相試験(CENTAUR)でALS進行を有意に抑制した神経死抑制剤AMX0035がその試験と一続きの非盲検継続(OLE)試験で今度は有意な生存延長をもたらしたのです。米国マサチューセッツ州ケンブリッジ拠点のAmylyx社が開発しているAMX0035は昔からある成分2つが溶けた経口の液剤です。成分の1つはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬・フェニル酪酸ナトリウム(sodium phenylbutyrate)、もう1つは胆汁酸・タウルソジオール(Taurursodiol)です7)。今回発表されたOLE試験に先立つCENTAUR試験にはALS患者137人が参加し、それらのうち3人に1人はプラセボ、あとの3人に2人はAMX0035を6ヵ月間服用しました。NEJM誌報告によると6ヵ月間のAMX0035服用群の体の不自由さの進行はプラセボに比べてよりゆっくりでした7)。また、AMX0035服用は腕の筋力低下も抑制しました。今回のOLE試験にはCENTAUR試験から継続して90人が参加し、全員がAMX0035を服用し、CENTAUR試験の始まりから数えて最大約3年間(35ヵ月間)追跡されました。その結果、生存期間中央値はAMX0035を最初から服用し続けた患者(56人)では25ヵ月、当初プラセボを服用した患者では18.5ヵ月であり(p=0.023)、最初からのAMX0035服用患者は当初プラセボを服用した患者に比べて有意に半年以上(6.5ヵ月)生存が延長されました8)。細胞内小器官・小胞体(ER)へのストレスや機能障害、それにミトコンドリアの機能や構造の欠損がALSの発病要因と目されており、AMX0035に含まれるフェニル酪酸ナトリウムはERがストレスを受けて誘発する毒性を緩和し、もう1つの成分タウルソジオールはミトコンドリアを助けて細胞を死に難くします7)。米国ワシントン D.C.の隣街アーリントンを本拠とするALS患者の会・ALS Association等はAMX0035をALS患者ができるだけ早く使えるようにする請願活動を先月初めに開始しており、16日のニュースによると5万人近く(4万7,000人以上)が請願に署名しています4)。参考1)Repurposed antiviral drugs for COVID-19; interim WHO SOLIDARITY trial results. medRxiv. October 15, 2020.2)Solidarity Therapeutics Trial produces conclusive evidence on the effectiveness of repurposed drugs for COVID-19 in record time / WHO 3)Remdesivir and interferon fall flat in WHO’s megastudy of COVID-19 treatments / Science4)AMX0035 Survivability Data Adds to Urgency to Make Drug Available / ALS Association5)Amylyx Pharmaceuticals Announces Publication of CENTAUR Survival Data Demonstrating Statistically Significant Survival Benefit of AMX0035 for People with ALS / BUSINESS WIRE6)Investigational ALS drug prolongs patient survival in clinical trial / Eurekalert7)Paganoni S,et al. N Engl J Med. 2020 Sep 3;383:919-930.8)Paganoni S,et al. Muscle & Nerve. 16 October 2020. [Epub ahead of print]

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ストレスに対するSNS利用の影響~日本理学療法士協会の学生調査

 藍野大学の本田 寛人氏らは、理学療法を学んでいる日本の大学生におけるインターネット依存と心理的ストレスに対するスマートフォンを用いたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の影響を調査した。Journal of Physical Therapy Science誌2020年9月号の報告。 2~4年生の理学療法を学ぶ学生247人(19~22歳)を対象に、単一大学横断的研究を実施した。毎日のスマートフォン利用時間、スマートフォンを用いたSNS利用時間、授業以外での自己学習時間に関する情報を、自己記入式アンケートにより収集した。インターネット依存と心理的ストレスの評価には、インターネット依存度テスト(IAT)と心理的ストレス反応尺度(SRS-18)を用いた。12人を除外した235人のデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・重回帰分析では、IATスコアと性別(男性)および毎日のスマートフォン利用時間との関連が示唆された。・SNS利用目的の一つである「目的のないネットサーフィン」およびIATスコアとSRS-18スコアとの関連が認められた。・その他の変数とIATスコアまたはSRS-18スコアとの関連は認められなかった。 著者らは「大学生のインターネット依存または心理的ストレスに対し、男性、毎日のスマートフォン利用時間または受動的なSNS利用が関連している可能性が示唆された」としている。

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レムデシビル、COVID-19入院患者の回復期間を5日以上短縮/NEJM

 米国・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のJohn H. Beigel氏らは、「ACTT-1試験」において、レムデシビルはプラセボに比べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の回復までの期間を有意に短縮することを示し、NEJM誌オンライン版2020年10月8日号で報告した(10月9日に更新)。COVID-19の治療では、いくつかの既存の薬剤の評価が行われているが、有効性が確認された抗ウイルス薬はないという。10ヵ国1,062例のプラセボ対照無作為化試験 研究グループは、COVID-19入院患者の治療におけるレムデシビルの臨床的な安全性と有効性を評価する目的で、日本を含む10ヵ国が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を行った(米国NIAIDなどの助成による)。 2020年2月21~4月19日の期間に、COVID-19感染が確定され、下気道感染症の証拠がある成人の入院患者1,062例が登録され、レムデシビル(541例)またはプラセボ(521例)を投与する群に無作為に割り付けられた。レムデシビルは、1日目に負荷投与量200mgを静脈内投与され、2日目から10日目または退院か死亡まで維持投与量として100mgを1日1回投与された。 主要アウトカムは、登録から28日以内における回復までの期間とした。回復は、退院または入院の理由が感染管理のみ、あるいはその他の非医学的事由の場合と定義された。回復までの期間中央値:10日vs.15日 全体の患者の平均年齢は58.9±15.0歳で、64.4%が男性であった。79.8%が北米、15.3%が欧州、4.9%がアジアの患者であった。登録時に、ほとんどの患者が1つ(25.9%)または2つ以上(54.5%)の併存疾患を有しており、高血圧が50.2%と最も多く、肥満が44.8%、2型糖尿病が30.3%であった。症状発現から無作為割り付けまでの期間中央値は9日(IQR:6~12)で、957例(90.1%)が重症COVID-19感染患者だった。 回復までの期間中央値は、レムデシビル群が10日(95%信頼区間[CI]:9~11)、プラセボ群は15日(13~18)であり、レムデシビル群で有意に短かった(回復の率比:1.29、1.12~1.49、log-rank検定のp<0.001)。重症例における回復までの期間中央値は、レムデシビル群が11日、プラセボ群は18日であった(1.31、1.12~1.52)。また、ベースライン時に機械的換気または体外式膜型人工肺(ECMO)を導入されていた患者の回復の率比は0.98(0.70~1.36)だった。 8つのカテゴリーから成る順序尺度による比例オッズモデルを用いた解析では、15日の時点で臨床的改善が達成される確率は、レムデシビル群がプラセボ群よりも高かった(実際の疾患重症度で補正後のオッズ比[OR]:1.5、95%CI:1.2~1.9)。 Kaplan-Meier法による推定死亡率は、15日時がレムデシビル群6.7%、プラセボ群11.9%(ハザード比[HR]:0.55、95%CI:0.36~0.83)、29日時はそれぞれ11.4%および15.2%(0.73、0.52~1.03)であった。 重篤な有害事象は、レムデシビル群が532例中131例(24.6%)、プラセボ群は516例中163例(31.6%)で報告された。治療関連死は認められなかった。全体で頻度の高い非重篤な有害事象として、糸球体濾過量低下、ヘモグロビン低下、リンパ球数低下、呼吸不全、貧血などがみられ、発生率は両群でほぼ同等であった。 著者は、「米国食品医薬品局(FDA)は、レムデシビルの初期結果を考慮して、2020年5月1日、COVID-19感染が疑われる、または確定した成人および小児の入院患者において、レムデシビルの緊急時使用許可(EUA)を発出(8月28日に修正)したが、レムデシビルを使用しても死亡率は高いことから、抗ウイルス薬単独では十分な効果は得られないと考えられる」と指摘し、「患者アウトカムを改善するには、さまざまな薬剤との併用療法が必要であり、現在、レムデシビルと免疫調節薬(例:JAK阻害薬バリシチニブ[ACTT-2試験]、インターフェロンβ-1a[ACTT-3試験])との併用が検討されている」としている。

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