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日本人片頭痛患者における併存疾患

 大阪・富永病院の菊井 祥二氏らは、日本における片頭痛とさまざまな精神的および身体的な併存疾患との関連を調査した。その結果、片頭痛患者では、そうでない人と比較し、精神的および身体的な併存疾患の有病率が高く、これまで日本では報告されていなかった新たな関連性も確認された。本研究結果は、片頭痛患者のケア、臨床診療、アウトカムを複雑にする可能性のある併存疾患に関する知見として役立つであろうとしている。BMJ Open誌2022年11月30日号の報告。 対象は18歳以上の日本在住者。国民健康調査2017年に回答した日本人サンプルのうち3万1人のデータを用いて、横断的研究を実施した。片頭痛患者378例および非片頭痛患者2万5,209例を特定した。1:4の傾向スコアマッチング後、非片頭痛患者を1,512例に絞り込んだ。片頭痛患者と非片頭痛患者における併存疾患の有病率および傾向スコアをマッチさせた有病率のOR(POR)は、精神的および身体的な併存疾患ごとに評価を行った。1ヵ月当たりの頭痛日数が15日未満の片頭痛患者と15日以上の片頭痛患者についても検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛患者は、女性のほうが多かった。・片頭痛患者は、非片頭痛患者と比較し、精神的および身体的な併存疾患の有病率が有意に高かった。・有病率が5%超の精神的な併存疾患は、うつ病、心的外傷後ストレス障害、不安症であった。・最も一般的な身体的な併存疾患は、胃腸障害であった。・その他の身体的な併存疾患には、アレルギー、不眠症、月経前症候群(PMS)、貧血が含まれた。・1ヵ月当たりの頭痛日数が15日以上の片頭痛患者は、PORの推定値が高い傾向が認められた。

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日本人労働者における社会的サポートとメンタルヘルスとの関連

 うつ病、不安症、不眠症には、社会的サポートの不十分さが影響しているといわれている。大阪医科薬科大学の大道 智恵氏らは、日本人労働者のうつ病、不安症、不眠症に関連する社会的サポートの特定を試みた。その結果、同僚や家族からのサポートは、日本人労働者の抑うつ症状を軽減する可能性があり、家族からのサポートは、不眠症状の軽減にもつながる可能性が示唆された。Frontiers in Public Health誌2022年11月21日号の報告。 コホート研究の一環として、2021年9月~2022年3月に滋賀県甲賀市の市職員を対象にアンケート調査を実施した。抑うつ症状、不安症状、不眠症状の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)、不眠症重症度質問票(ISI)をそれぞれ用いた。仕事のストレスおよび上司、同僚、家族からのサポートは、職業性ストレス簡易調査票(BJSQ)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・日本人労働者1,852人のうち、抑うつ症状(PHQ-9:10以上)は15.5%、不安症状(GAD-7:10以上)は10.8%、不眠症状(ISI:15以上)は8.2%で認められた。・ロジスティック回帰分析では、仕事のストレスが抑うつ症状(p<0.001)、不安症状(p<0.001)、不眠症状(p=0.009)と関連していることが示唆された。・同僚(p=0.016)および家族(p=0.001)からのサポートは、抑うつ症状の軽減と関連していた。・家族からのサポートは、不眠症状の減少とも関連していた(p=0.005)。

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日本人統合失調症入院患者における残存歯数とBMIとの関係

 統合失調症入院患者において、BMIに対する歯の状態の影響に関するエビデンスはほとんどない。新潟大学の大竹 将貴氏らは、日本人統合失調症入院患者の残存歯数とBMIとの関連を調査するため、横断的研究を実施した。その結果、歯の喪失や抗精神病薬の多剤併用が統合失調症入院患者のBMIに影響を及ぼすこと、また、統合失調症入院患者は一般集団よりも歯の喪失が多いことが示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月7日号の報告。 統合失調症入院患者212例を対象に、BMIに対する潜在的な予想因子(年齢、性別、残存歯数、抗精神病薬処方数、クロルプロマジン換算量、抗精神病薬の種類)の影響を評価するため、重回帰分析を行った。次に、統合失調症入院患者と日本人一般集団3,283例(平成28年歯科疾患実態調査[2016年])の残存歯数を比較するため、年齢および性別を共変量として共分散分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・重回帰分析では、残存歯数(標準偏回帰係数:0.201)と抗精神病薬処方数(同:0.235)がBMIと有意に相関していることが示された。・共分散分析では、統合失調症入院患者の平均残存歯数(14.8±10.9)は、日本人一般集団(23.0±8.1)と比較し有意に少なかった。

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うつ病治療ガイドラインの実践状況を把握する客観的指標IFS

 日本うつ病学会の治療ガイドラインでは、うつ病の重症度別に推奨される治療法が定められている。治療ガイドラインは、実臨床で治療決定を促すためのツールとして用いられ、患者や医療従事者を支援するよう設計されている。精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)のメンバーである岩手医科大学の福本 健太郎氏らは、各患者がうつ病ガイドラインの推奨に従って治療を実践しているかを評価するための客観的指標として、個別フィットネススコア(IFS)を開発した。IFSは、個々の患者におけるガイドラインに基づく治療の実践状況を客観的に評価できることから、ガイドラインに準じた治療行動に影響を及ぼし、薬物療法を含めた日本におけるうつ病治療の標準化につながる可能性が期待できるとしている。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2022年11月16日号の報告。 EGUIDEプロジェクトメンバーは、修正Delphi法を用いて、IFSを決定した。本IFSは、EGUIDEプロジェクトメンバーが所属する施設において2016~20年に治療を受け、退院したうつ病患者の治療に基づき開発された。また、入院時と退院時のIFSスコアの比較も行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、うつ病患者428例(57施設)。・その内訳は、軽度うつ病患者22例、中等度/重度うつ病患者331例、精神病性うつ病患者75例であった。・重症度別の平均IFSスコアは、中等度/重度うつ病患者において入院時よりも退院時のほうが統計学的に有意に高かった。 【軽度うつ病】入院時:36.1±34.2 vs.退院時:41.6±36.9(p=0.49) 【中等度/重度うつ病】入院時:50.2±33.6 vs.退院時:55.7±32.6(p=0.0021) 【精神病性うつ病】入院時:47.4±32.9 vs.退院時:52.9±36.0(p=0.23)

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抗精神病薬治療の有効性を予測可能なタイミング

 抗精神病薬の初期の臨床効果が、その後の治療アウトカムにどの程度影響を及ぼすかは、明らかになっていない。中国・West China Hospital of Sichuan UniversityのYiguo Tang氏らは、2週時点での抗精神病薬の有効性が、6週時点の治療反応を予測できるかを評価した。また、治療反応の予測が、抗精神病薬や精神症状の違いにより異なるかも検討した。その結果、抗精神病薬治療2週時点でのPANSS合計スコアの減少率や精神症状の改善は、6週時点の臨床的な治療反応を予測することが示された。Current Neuropharmacology誌オンライン版2022年11月18日号の報告。 統合失調症患者3,010例を対象に、ランダム化比較試験(RCT)を実施した。対象患者を、5種類の非定型抗精神病薬(リスペリドン:2~6mg/日、オランザピン:5~20mg/日、クエチアピン:400~750mg/日、アリピプラゾール:10~30mg/日、ziprasidone:80~160mg/日)および2つの定型抗精神病薬(ペルフェナジン:20~60mg/日、ハロペリドール:6~20mg/日)のいずれかにランダムに割り付け、6週間の治療を行った。初期有効性の定義として、2週時点での陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの減少率を用いた。分析には、50%減少のカットオフ値、ロジスティック回帰、ROC解析、ランダムフォレストを用いた。 主な結果は以下のとおり。・7種類の抗精神病薬治療による2週時点でのPANSS合計スコアの減少率および精神症状の改善は、その後の治療反応を予測可能であった。・とくに、妄想、判断力と洞察力の欠如、思考内容の異常、猜疑心/迫害感が重要な指標である可能性が示唆された。

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治療抵抗性統合失調症に対する新規抗精神病薬および薬理学的戦略の最新情報

 適切な用量および投与期間による2種類以上の抗精神病薬治療で反応が得られない治療抵抗性統合失調症は、精神医学の中で最も治療困難な病状の1つであるといえる。疫学的には、治療抵抗性統合失調症統合失調症患者の3分の1に影響するとされ、全体的な機能の観点からも患者に深刻な結果をもたらす。しかし、50年間で治療抵抗性統合失調症の適応で承認された治療薬はクロザピンのみであり、クロザピンでも反応の得られない耐性患者も少なくない。イタリア・ナポリ大学のAndrea de Bartolomeis氏らは、現在報告されている文献を批判的に評価し、治療抵抗性統合失調症の治療における新旧薬剤の役割についてレビューを行った。Expert Opinion on Pharmacotherapy誌2022年12月号の報告。 主なレビューは以下のとおり。・治療抵抗性統合失調症に対する治療は、クロザピンに匹敵または併用する治療法がいくつか報告されており、主に次の3つの戦略が挙げられる。 1)第2世代抗精神病薬(amisulprideなど)の併用 2)従来の抗精神病薬と異なる受容体プロファイルを有する第2世代抗精神病薬(アリピプラゾール、cariprazineなど)の併用 3)ドパミンD2/D3受容体占有を超える新規アプローチ(xanomeline+trospium、TAAR1アゴニスト、安息香酸ナトリウム、D-アミノ酸など)・代替治療や併用療法の有効性を評価するためには、治療抵抗性統合失調症やクロザピン耐性の現行の基準を適用した、より質の高い臨床試験が求められる。

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M4受容体選択的PAMのemraclidine、統合失調症に有望/Lancet

 新規開発中のemraclidineは、統合失調症に対し漸増レジメンなしで1日1回経口投与が可能な治療薬として有効であり、安全性および副作用プロファイルも良好であることが示された。米国・イェール大学のJohn H. Krystal氏らが、第Ib相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。emraclidineは、統合失調症治療薬として新規開発中の脳浸透性ムスカリンM4受容体選択的ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)である。今回の結果を踏まえて著者は、「統合失調症に対するemraclidineの有効性、安全性および忍容性を確認するため、さらなる研究が必要である」とまとめている。Lancet誌2022年12月17日号掲載の報告。2つのパートでemraclidineの安全性と忍容性を検証 試験は2つのパートで構成され、精神疾患簡易構造化面接法(M.I.N.I.)でDSM-5診断基準により統合失調症と診断され、スクリーニング時に錐体外路症状が正常から軽度と判定された18~50歳(パートA)または18~55歳(パートB)の患者を適格とした。 パートAは、米国の1施設にて症状が安定している統合失調症患者を5つのコホートに分け、emraclidineの5mg、10mg、20mgまたは30mgを1日1回投与、20mgを1日2回投与(40mg/日)、およびプラセボを段階的に投与して、emraclidineの安全性と忍容性を評価した。 パートBは、米国5施設にて無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施し、急性期の患者を、emraclidine 30mgを1日1回投与、または20mgを1日2回投与(パートAにおいて設定された用量)、またはプラセボ投与に1対1対1の割合で無作為に割り付け、6週間経口投与した。 主要評価項目は、安全性解析対象集団(emraclidineまたはプラセボを少なくとも1回投与された患者)における安全性および忍容性であった。30mgの1日1回投与、安全性および副作用プロファイルが良好 パートAでは、2019年9月23日〜2020年9月17日の期間に118例が適格性を評価され、49例が5つのコホートに無作為に割り付けられた。44例が試験を完遂し、36例がemraclidine、8例がプラセボの投与を受けた。emraclidineの投与により収縮期血圧および拡張期血圧がわずかながら上昇したが、いずれも臨床的な意義はなく、有害事象との関連もなかったことから、2つの高用量(30mg 1日1回投与および20mg 1日2回投与)がパートBの用量として選択された。 パートBでは、2020年10月12日〜2021年5月7日の期間に、148例が適格性を評価され、81例がemraclidine 30mg 1日1回群(27例)、20mg 1日2回群(27例)、またはプラセボ群(27例)に無作為化された。有害事象の発現率は、emraclidine 30mg 1日1回群52%(14/27例)、20mg 1日2回群56%(15/27例)、プラセボ群52%(14/27例)であり、臨床評価および体重変化も各群で類似していた。 主な有害事象は頭痛であった(emraclidine群28%[15/54例]、プラセボ群26%[7/27例])。emraclidine群で投与開始初期に、軽度で一過性の血圧および心拍数上昇が認められたが、経時的に低下し、6週時には臨床的に意義はないものと見なされた。

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各抗うつ薬中断後の離脱症候群~WHO自発報告データベース

 各抗うつ薬中断に関連する離脱症候群や重度の副反応の危険因子に関する情報は、不足している。イタリア・ベローナ大学のChiara Gastaldon氏らは、抗うつ薬が他の薬剤と比較し、離脱症候群の報告増加と関連しているかを評価し、重度の副反応の危険因子について調査を行った。その結果、抗うつ薬は、他の薬剤よりも離脱症候群の報告が多かった。著者らは、各抗うつ薬により離脱症候群の傾向が異なることや重篤な離脱症候群を引き起こす可能性のある患者の特徴を理解したうえで、抗うつ薬の使用および中止を検討する必要があるとしている。Drug Safety誌2022年12月号の報告。 個別症例安全性報告を集めたWHOグローバルデータベースであるVigiBaseを用いて、症例/非症例ファーマコビジランス研究を実施した。抗うつ薬に関連する離脱症候群の報告について、不均衡分析(報告オッズ比[ROR]、ベイジアン情報コンポーネント[IC]の算出)を行った。ブプレノルフィンを対照薬とし、抗うつ薬の各クラス内(選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI]、三環系抗うつ薬、その他の抗うつ薬)で相互に比較した。有意な不均衡が報告された抗うつ薬は、臨床的優先度の観点よりランク付けした。重度の副反応と重度でない副反応を比較した。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬関連の離脱症候群の報告は、3万1,688件であった。・23種類の抗うつ薬について、不均衡な報告が検出された。・すべての他の薬剤と比較した抗うつ薬の推定RORは、以下のとおりであった。 ●抗うつ薬全体:14.26(95%信頼区間[CI]:14.08~14.45) ●SSRI:13.65(95%CI:13.41~13.90) ●三環系抗うつ薬:2.8(95%CI:2.59~3.02) ●その他の抗うつ薬:17.01(95%CI:16.73~17.29)・臨床的優先度ランキングに基づくと、パロキセチン、デュロキセチン、ベンラファキシン、desvenlafaxineで最も強い不均衡な報告が認められ、これらはブプレノルフィンと同程度であった。・離脱症候群の頻度および重症度と関連していた因子は、男性、思春期、多剤併用、抗うつ薬治療期間の長さであった(p<0.05)。

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統合失調症患者の味覚障害

 精神疾患患者では、味覚障害が認められることが少なくない。これまでの研究では、統合失調症患者において症状とグルタミン酸ナトリウム(MSG)の味覚障害との間に関連がある可能性が示唆されている。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのMichal Wronski氏らは、MSGの味覚レベルが症状の重症度と関連しているかを検討した。Brain Sciences誌2022年11月9日号の報告。 対象は、妄想型統合失調症と診断(ISD-10)された患者200例。MSGまたは水を含む3つの液体サンプルを舌下投与することにより、MSG検出閾値を評価した。MSGのサンプルには、サンプルごとに異なる濃度を用いた。被験者に、どのサンプルがMSGを含有しているかを示してもらい、味の強さや不快感(快適、不快、どちらでもない)を評価させた。 主な結果は以下のとおり。・味覚の平均強度と症状の数との間に、有意な負の相関が認められた。・統合失調症患者でみられる味覚障害の症状が味覚機能の欠損なのか、精神症状としての味覚に対する幻覚症状なのかを判断するために、臨床医は味覚障害を報告する患者をモニタリングする必要がある。

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統合失調症に対する高用量ルラシドンの有効性

 福島県立医科大学の三浦 至氏らは、急性増悪期の統合失調症患者を対象に、ルラシドン80mg/日の有効性および安全性を検討した。その結果、ルラシドン40mg/日で治療した急性期統合失調症患者において、用量を80mg/日に増量した場合でも忍容性は良好であった。また、ルラシドン80mg/日への増量では、40mg/日を継続した場合と比較し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)サブスケールスコアのより大きな改善が認められた。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月9日号の報告。 ルラシドンの6週間二重盲検試験を完了した統合失調症の成人患者289例を対象に、12週間の非盲検延長試験を実施した。フレキシブルドーズでルラシドン40mg/日または80mg/日で治療を行った。有効性の評価には、PANSSサブスケール、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)、統合失調症に関するカルガリーうつ病尺度(CDSS)のスコアを用い、分析にはLOCF解析を用いた。安全性/忍容性の評価には、有害事象、体重、臨床検査値、有害事象による治療中止を含めた。 主な結果は以下のとおり。・ルラシドン80mg/日群は136例、40mg/日群は153例であった。・有効性評価尺度の平均変化は、以下のとおりであった。 【PANSS陽性尺度】80mg/日群:-3.0、40mg/日群:-2.3 【PANSS陰性尺度】80mg/日群:-1.9、40mg/日群:-1.7 【PANSS総合精神病理尺度】80mg/日群:-5.1、40mg/日群:-3.8 【CGI-S】80mg/日群:-0.5、40mg/日群:-0.4 【CDSS】80mg/日群:-0.7、40mg/日群:-0.1・有害事象による治療中止率は、80mg/日群で4.4%、40mg/日群で7.2%であった。・80mg/日群において高頻度で発現した有害事象は以下のとおりであった。 ●鼻咽頭炎:7.4%(40mg/日群:4.6%) ●便秘:5.9%(40mg/日群:2.0%) ●頭痛:5.9%(40mg/日群:2.0%)

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PDQ-D-5による認知機能評価、日本人うつ病患者での有用性を検証

 国立精神・神経医療研究センターの住吉 太幹氏らは、「日本での大うつ病性障害関連の機能的アウトカムに関する前向き観察研究(PERFORM-J)」のデータを用いて、日本人うつ病患者における主観的認知機能を評価するための簡便な指標であるPDQ-D-5(5項目の評価尺度)の有用性を検証した。その結果、日本人うつ病患者に対するPDQ-D-5による評価は、PDQ-D-20(20項目の評価尺度)による評価を適切に反映していることが確認され、簡易版のPDQ-D-5にも、機能的アウトカム、うつ病重症度、QOLのいくつかの尺度との関連が認められた。このことから著者らは、PDQ-D-5は、認知機能に関する主観的な経験を評価するための実行可能かつ臨床的に信頼性のある尺度であり、時間的制限のある診療・相談に適用可能であるとしている。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月2日号の報告。PDQ-D-5スコアとDSSTスコアとの間には負の相関が認められた PERFORM-Jでは、日本人うつ病外来患者518例を対象に、抗うつ薬治療開始後6ヵ月間の抑うつ症状、認知機能、社会的および就業的機能の重症度、QOLが評価された。本事後分析においては、20項目の評価尺度であるPDQ-D-20とPDQ-D-5との内的整合性および収束的妥当性を評価した。これらの測定値についての相関関係は、各時点および経時的に調査した。また、PDQ-D-5と、こころとからだの質問票(PHQ-9)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、数字符号置換検査(DSST)、EuroQol-5-Dimension-5-Level(EQ-5D-5L)、シーハン障害尺度(SDS)、Work Productivity and Activity Impairment(WPAI)質問票との相関関係の調査も行った。 PDQ-D-5の有用性を検証した主な結果は以下のとおり。・PDQ-D-5スコアは、良好な内的整合性を示した。・PDQ-D-5とPDQ-D-20の間には、各時点(相関係数:ベースライン時0.94、1ヵ月目0.94、2ヵ月目0.96、6ヵ月目0.96)および経時的(相関係数:0.92)に強い正の相関が観察された(すべてp<0.0001)。・PDQ-D-5スコアとPHQ-9、MADRS、SDSスコアとの間には、正の相関が確認された。・PDQ-D-5スコアとEQ-5D-5L、DSSTスコアとの間には負の相関が認められたが、その程度はさまざまであった。・PDQ-D-5スコアと、欠勤に関する項目を除くすべてのWPAIサブスケールスコアとの間には、経時的に中程度の正の相関が認められた。

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維持期うつ病治療の抗うつ薬比較~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、維持期の成人うつ病の治療に対する抗うつ薬の有効性、許容性、忍容性、安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、維持期の成人うつ病に対する抗うつ薬治療において、妥当な有効性、許容性、忍容性が認められた薬剤は、desvenlafaxine、パロキセチン、ベンラファキシン、ボルチオキセチンであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2022年10月17日号の報告。 PubMed、Cochrane Library、Embaseデータベースより、エンリッチメントデザインを用いた二重盲検ランダム化プラセボ対照試験(非盲検期間中に抗うつ薬治療で安定し、その後、同じ抗うつ薬群またはプラセボ群にランダム化)を検索した。アウトカムは、6ヵ月後の再発率(主要アウトカム、有効性)、すべての原因による治療中止(許容性)、有害事象による治療中止(忍容性)、個々の有害事象発生率とした。リスク比および95%信用区間を算出した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、20種類の抗うつ薬およびプラセボに関する34件の研究が含まれた。・対象患者数は9,384例(平均年齢:43.80歳、女性の割合:68.10%)であった。・抗うつ薬には、agomelatine、アミトリプチリン、bupropion、citalopram、desvenlafaxine、デュロキセチン、エスシタロプラム、fluoxetine、フルボキサミン、levomilnacipran、ミルナシプラン、ミルタザピン、nefazodone、パロキセチン、reboxetine、セルトラリン、tianeptine、ベンラファキシン、vilazodone、ボルチオキセチンが含まれた。・6ヵ月後の再発率に関して、プラセボよりも優れていた薬剤は、アミトリプチリン、citalopram、desvenlafaxine、デュロキセチン、fluoxetine、フルボキサミン、ミルタザピン、nefazodone、パロキセチン、reboxetine、セルトラリン、tianeptine、ベンラファキシン、ボルチオキセチンであった。・すべての原因による治療中止率に関して、プラセボよりも優れていた薬剤は、desvenlafaxine、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン、ボルチオキセチンであった。ただし、セルトラリンは有害事象による治療中止率が高かった。・プラセボと比較した個々の有害事象発生率については、ベンラファキシンではめまいの発生率が低く、desvenlafaxine、セルトラリン、ボルチオキセチンでは嘔気/嘔吐の発生率が高かった。

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乾癬とうつ病併存、脳構造と脳内コネクティビティの特徴は?

 先行研究で乾癬患者の最大25%にうつ病の併存が認められるとの報告がある中、英国・マンチェスター大学のGeorgia Lada氏らは、うつ病併存に関連する乾癬の脳構造と脳内コネクティビティ(connectivity)を調べる脳画像研究を行い、乾癬による局所脳容積や構造的なコネクティビティへの影響はみられないこと、乾癬とうつ病併存で右楔前部の肥厚が認められ、自殺傾向に関連している可能性があることなどを明らかにした。 患者に共通する神経生物学的およびうつ病脳画像のパターンなど、併存疾患のドライバについてはほとんど解明されていない。一方で、慢性の全身性炎症皮膚疾患である乾癬について、脳と皮膚間における免疫が介在したクロストークが仮説として示唆されていた。Brain, Behavior, & Immunity - Health誌2022年12月号掲載の報告。 調査は、測定した脳容積値等におけるうつ病と全身性炎症の意味を調べる初となる検討で、研究グループが知りうる限り最大の乾癬患者サンプルデータとしてUK Biobank登録者1,048例の脳MRIデータを用いて行われた。調査では、乾癬における関節の関与と、炎症状態がより高いことを示す乾癬性関節炎(PsA)併存の影響についても探索的評価が行われた。 調査対象の1,048例の内訳は、乾癬とうつ病併存患者が131例、年齢・性別で適合した非うつ病の乾癬患者131例、うつ病対照393例、非うつ病対照393例である。アプリオリに定義された関心領域(ROI)の容積・厚さ・表層、白質トラクトおよび安静時コネクティビティ評価に適切な55×55偏相関マトリックスにおける乾癬とうつ病の相互作用の影響を、一般線形モデルを用いて調べた。また、線形回帰法を用いて、C反応性蛋白質(CRP)値および好中球数と脳測定値の関連性を試験した。 主な結果は以下のとおり。・局所または全体の脳容積や白質統合度における差異は、乾癬患者と非乾癬/非PsA対照との比較において認められなかった。・対照と比較してうつ病が併存している乾癬患者のみにおいて、右楔前部の肥厚が認められた(β=0.26、95%信頼区間[CI]:0.08~0.44、p=0.02)。・さらなる解析で、PsAを有する乾癬患者では、安静時コネクティビティにおける前頭後頭部の非連動(decoupling)が、非PsA対照(β=0.39、95%CI:0.13~0.64、p=0.005)および対照(0.49、0.25~0.74、p<0.001)と比較してそれぞれ有意であることが示された。このことはうつ病併存とは無関係であった。・楔前部の肥厚と前頭後頭部のコネクティビティは、CRP値や好中球数では予測できなかった。・うつ病乾癬患者における楔前部の肥厚は、繰り返される自殺傾向と、わずかだが相関性が示された。 研究グループは、UK Biobankデータを使用した検討では重症疾患を有する集団の結果の一般化を限定する可能性があり、重症疾患およびより大規模なPsA集団で今回の所見が再現されるか、さらなる検討が必要だ、とまとめている。

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第143回 運動意欲を腸内細菌が支える

病気の数々を防ぐ最も効果的な習慣である運動の意欲向上にどうやら腸内細菌が一役買っていることがマウス実験で示されました1)。先立つ研究で腸の微生物が筋肉や心肺機能、さらには脳の生理に関わることが知られています2)。ペンシルバニア大学の微生物学者Christoph Thaiss氏等はそれらの成果を紡ぎ、筋肉・心肺機能・脳を含むより多くの関わりによって生み出されるであろう運動能力への腸内微生物の貢献を調べることを試みました。Thaiss氏等はマウス199匹を用意し、抗生物質いくつかを使ってそれらマウスの腸内細菌を減らすか排除したときの運動性能を2つの手段を使って調べました2)。1つはしばらくの間走ることを強いて持久力を調べるトレッドミルで、もう1つはいつでも好きなだけ走ることができる回し車(wheel)です。どのマウスも飼育カゴの中で同様に自由に動き回ることが可能でしたが、腸内細菌が減ったマウスは腸内細菌がまともなマウスに比べてトレッドミル運動で疲れやすく、運動意欲が乏しくて回し車をあまり使いませんでした。行動を定着させる神経伝達物質・ドーパミンの生成に携わる脳の線条体神経の遺伝子の発現を調べたところ、運動の最中に発現するそれら遺伝子が腸微生物を欠くマウスでは鈍っていました。それらの神経を阻害して運動中のドーパミン生成を妨げたときの運動能力は腸微生物を制限するか完全に除去したときと同じように劣りました。以上の結果は脳でのドーパミン生成が運動意欲に確かに貢献しており、腸の微生物の構成がその調節に何らかの役割を担っていることを意味します。次の疑問は腸内細菌と脳のドーパミンを関連づける仕組みです。その解明のために胃腸と脳をつなぐ神経を阻害してトレッドミルと回し車の実験を再び行いました。その結果、腸-脳連結神経が遮断されていると腸微生物はまっとうでも腸微生物が乏しいマウスと同様の運動低下が生じ、マウスがどれだけ運動するかはその神経の刺激にかかっていると示唆されました。何がその神経を刺激するのかが次に調べられ、2つの細菌・Eubacterium rectale(ユウバクテリウム レクターレ)とCoprococcus eutactus(コプロコッカス ユウタクタス)が生み出す代謝物・脂肪酸アミド(FAA)から作られる神経伝達物質・内在性カンナビノイドが運動中に胃腸神経の受容体を刺激し、脳のドーパミン生成に至ることが判明しました。その腸-脳経路を刺激するとマウスはより走れるようになり、かたや末梢の内在性カンナビノイド受容体の阻害、脊髄の神経除去、ドーパミン阻害は腸微生物排除と同様にマウスをより走れなくしました。運動中の腸の細菌の働きのおかげで運動する意欲がより高まって運動がより身につくことを今回の結果は裏付けました。これまでの研究で運動能力が高いマウスは痛みの感じ難さを示すランナーズハイがより強烈であることが示されており、腸内細菌はよく知られるその高揚感にも携わっているかもしれません。今回のマウス実験で示されたのと同じ腸-脳経路がヒトでも存在するかどうかを研究チームは次に調べる予定です。ヒトでの研究が進めば巷の人に走る習慣を身に付けさせたり一流アスリートの運動能力を最適化する安上がりで安全な食事ベースの手段が実現するかもしれません。また、依存やうつ病で支障を来した気分や意欲の回復手段を生み出せる可能性もあります3)。参考1)Dohnalova L, et al. Nature. 2022 Dec 14. [Epub ahead of print]2)Mice With a Healthy Gut Microbiome Are More Motivated to Exercise / TheScientist3)Gut microbes can boost the motivation to exercise, Penn Medicine study finds / Eurekalert

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小児および思春期の精神疾患に対する薬物治療反応の予測因子

 これまで、小児および思春期の精神疾患患者に対する薬物療法の治療反応の予測に関する研究は、十分に行われていなかった。慶應義塾大学の辻井 崇氏らは、米国国立精神衛生研究所(NIMH)によるサポートで実施された、小児および思春期の精神疾患患者を対象とした4つの二重盲検プラセボ対照試験のデータを分析し、薬物治療反応の予測因子の特定を試みた。その結果、小児および思春期の精神疾患患者に対する薬物療法の治療反応予測因子として、実薬による薬物療法の実施、女性、早期での改善が特定された。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2022年11月3日号の報告。 分析対象データは、不安症に対するセルトラリンおよびフルボキサミン治療、自閉スペクトラム症に対するリスペリドン治療、うつ病に対するfluoxetine治療を評価した4つの二重盲検プラセボ対照試験より抽出した。治療反応の定義は、エンドポイントでの臨床全般印象度の改善度(CGI-I)スコア1または2とした。治療反応と性別、診断、治療の割り付け、ベースライン時の臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアとの関連を評価するため、ロジスティック回帰分析を用いた。さらに、1週目の早期改善(CGI-Iスコア3以下)は、2つの研究データを用いて、追加のバイナリロジスティック回帰分析により評価した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象の患者数は、599例であった。・バイナリロジスティック回帰分析では、治療反応と有意に関連していた因子は、実薬の使用(オッズ比[OR]:8.64、p<0.001)、女性(OR:1.89、p=0.002)であった。・追加のバイナリロジスティック回帰分析では、CGI-Iでの早期改善(OR:3.47、p=0.009)、実薬の使用(OR:15.05、p<0.001)、女性(OR:2.87、p=0.016)が、その後の治療反応と関連していた。

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長時間労働に関連するうつ病リスクに対する身体活動の影響

 長時間労働がうつ病発症率の増加と関連していることを示唆する研究が増加している。しかし、長時間労働に関連するうつ病リスクに対する身体活動(PA)の影響を調査した研究はほとんどなかった。中国・Beijing Institute of Occupational Disease Prevention and TreatmentのTenglong Yan氏らは、PAが長時間労働に関連するうつ病リスクの修正可能な因子であるかを検討した。その結果、長時間労働はうつ病リスクと関連しており、PAはうつ病リスクをある程度修正可能であることが示唆された。Journal of Affective Disorders誌2023年1月15日号の報告。 2015~18年の国民健康栄養調査より得られた横断的データを分析した。国際労働機関(ILO)の基準により、長時間労働は、1週間当たり40時間以上と定義した。うつ病の特定には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。長時間労働とうつ病との関連を推測し、PAとの関連を明らかにするため、バイナリロジスティック回帰および制限付き3次スプライン(RCS)モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析対象5,958人のうち、3,074人(51.6%)が長時間労働に該当していた。・うつ病の有病率は、7.7%であった。・ロジスティック回帰分析では、長時間労働とうつ病リスクとの関連が認められ(オッズ比[OR]:1.738、95%信頼区間[CI]:1.427~2.117)、他の交絡因子で調整した後でも、この関連は維持されていた。・RCSモデルでは、高度なPA群でうつ病リスクが最も低く、次いで低度PA群および非PA群であることが確認された。

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映画「二つの真実、三つの嘘」(前編)【なんで病気になりたがるの? 実はよくある訳は?(同情中毒)】Part 2

病気になりたがることが実はよくある訳は?確かに、嘘をついてまで病気になりたがるのは、かなり度が過ぎています。しかし、嘘をつくほどでなければ、病気になりたがることは、心療内科・精神科や心理カウンセリングの現場で、実はよくあることです。その理由を大きく3つ挙げてみましょう。(1)もっとかまって欲しいから病気になりたがる1つ目の理由は、もっとかまって欲しいからです。そのために、嘘をつかなくても、困っていることや症状を大げさに訴えたり見せつけます。たとえば、毎回の診察で「死にたい」と訴え続けることです。また、急に倒れ込んだり、リストカットの傷痕を隠さずに出していることです。症状を伝えることは、かまってもらうためではなく、良くするためであるはずなのにです。なお、これらは、意識的に嘘をついている訳ではないので、ミュンヒハウゼン症候群ではなく、演技性パーソナリティ障害と診断されます。(2)病気のせいにしたいから病気になりたがる2つ目の理由は、病気のせいにしたいからです。仕事や人間関係でうまく行っていない時、それが自分の能力や性格によるものであれば、自分のせいになります。しかし、「うつ病」「自律神経失調症」などと診断されれば、その問題を病気のせいにすることができます。また、自分の能力の問題であっても、「ADHD(注意欠如・多動症)」「HSP(敏感な人)」などと指摘されれば、やはり病気のせいにできます。さらに、自分の性格の問題であっても、「毒親」「アダルトチルドレン」などと指摘されれば、家庭環境のせいにすることができます。病気になったのは本人の責任ではないかもしれませんが、病気を良くしていくのは本人の責任であるはずなのにです。もはや、自分で自分に嘘をついている状態です。なお、これらは、無意識に責任逃れや責任転嫁をしている点で、自己奉仕バイアスと呼ばれます。婚活でうまく行かない人が、良い相手がいないと嘆く心理に通じます。また、ひきこもりの人が親に謝罪をしつこく求める心理にも通じます。(3)病人として生きたいから病気になりたがる3つ目の理由は、病人として生きたいからです。病人でいる状況が長くなると、病気に立ち向かって頑張って生きている自分というアイデンティティが確立してしまいます。逆に言えば、病人ではなくなると、病気以外で頑張ること(役割)やその居場所を新しく探さなければならず、見つからなければ自分は何者でもなくなってしまうという恐怖が出てきます。よって、彼らにとって、たとえば精神障害者保健福祉手帳の取得はステータスになります。3級が2級になれば、資格試験で頑張った成果であるかのように納得した表情をします。やがて、「病気自慢」「不幸自慢」をするようになります。そもそも、病気や不幸を語ることは、健康や幸福になるための手段であって、目的そのものではないはずなのにです。なお、これは、無意識に治りたいと思っておらず、病人の役割(アイデンティティ)をまっとうしようとする点で、シックロールと呼ばれています。病気になりたがる人を見分けるには?病気になりたがることが実はよくある理由は、もっとかまって欲しい、病気のせいにしたい、そして病人として生きたいからであることが分かりました。それでは、これらの心理を踏まえて、彼らをどうやって見分ければいいでしょうか? 彼らの特徴を大きく3つ挙げてみましょう。(1)症状を語りたがる病気になりたがる人の特徴の1つ目は、症状を語りたがることです。たとえば、症状を次々と列挙して、その症状がどんなふうでどうなってきたかを、辛そうな表情を交えながらもよくしゃべります。また、医療機関での予診票では、症状のチェック欄には、ほぼすべての症状をチェックします。自己記入式の病状のスクリーニング検査では、病状が重く見られるようにチェックします。そして、こちらが、症状を語りたがっている意図を察知して、あえて話を切り上げようとすると、「話を聞いてくれない」「辛さを分かってくれない」と怒り出します。そもそも、本当に病気の人は、症状を伝えるにしても、一番辛い症状を何とか1つか2つあげるだけで、そんなに語れません。そして、治してもらえるなら、話が早くに終わっても気にしません。(2)病名や原因をはっきりさせたがる病気になりたがる人の特徴の2つ目は、病名や原因をはっきりさせたがることです。たとえば、病名や原因をしつこく聞いてきます。自分がネットで調べて見つけた病名が、厳密には違うと聞かされると、がっかりしたり食い下がってきます。わざわざ自分が持ち歩くだけのために、診断書の発行を希望する人もいます。そもそも、精神科医が病名や原因を伝えるのは、薬の処方をはじめとして今後のためになる場合に限られています。逆に言えば、今後のためにならない場合は積極的には伝えません。その理由は、そうすること自体が、決め付け(ラベリング)になってしまい、その病気や原因に本人がとらわれて、逆になかなか良くならないことがあるからです。(3)治療には乗ってこない病気になりたがる人の特徴の3つ目は、治療には乗ってこないことです。たとえば、病気を良くするためのさまざまな提案に対して、すべて「はい、いいんですけど…でもやっぱり私には無理です」と曖昧に返してきます。これは、心理学で「イエス・バット・ゲーム」と呼ばれています。一方で、「いいえ、そうじゃなくて(ノー・バット)」とはっきり返してくる場合は、「ということは何か考えがあるのですね」とその人なりの思いを掘り起こすことができます。また、「この病気さえなければ」と言い続ける人に、「じゃあ、もしもこの病気が良くなったら、どうしていますか?」と聞くと、「そんなこと考えられないです。だって、病気があることには変わりないじゃないですか」「そんなこと考えて、結局良くならなかったら、ますます辛いじゃないですか」と言い返してきます。さらに、ポジティブな面に目を向ける問いかけに対しては、「私のポジティブなところを聞かれても困ります」「前向きに考えてなんて言って欲しくない」「私はそんなんじゃない」「私の病気を軽く見ないでください」「それがうざいんですよ」と言う人もいます。確かに、とても弱っている時は前向きには考えられません。しかし、それがずっと続く場合は、もはやその人の考え方、生き方の問題になってきますので、治療として限界があることを理解する必要があります。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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小児および思春期の抗精神病薬による血清プロラクチンレベルの性差~メタ解析

 血清プロラクチンレベルに及ぼす因子はさまざまあるが、中でも性別、身体的発達、投薬の影響が大きい。抗精神病薬は、成人および若年患者の血清プロラクチンレベルを上昇させることは知られているが、小児・思春期患者における高プロラクチン血症発症に対する性別と脆弱性との潜在的な関連性を検討した研究はほとんどなかった。スペイン・バルセロナ大学のLidia Ilzarbe氏らは、抗精神病薬治療を行っている小児および思春期の精神疾患患者における血清プロラクチンレベルに対する性別の影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、抗精神病薬を投与された小児および思春期患者では、血清プロラクチンレベルの増加が認められ、この増加は男性よりも女性においてわずかに大きいことが示唆された。Current Neuropharmacology誌オンライン版2022年10月27日号の報告。 小児および思春期患者に対する抗精神病薬投与による血清プロラクチンレベルと性別との関係を検討したランダム化比較試験をMEDLINE、PubMed、Web of Science、Cochraneデータベースよりシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・単剤抗精神病薬とプラセボを比較した研究7件(リスペリドン:4件、ルラシドン:1件、オランザピン:1件、クエチアピン:1件)、1,278例をメタ解析に含めた。・抗精神病薬を投与された小児および思春期患者は、プラセボ群と比較し、男女ともにプロラクチンレベルの有意な増加が認められた。 ●男性:16.53、95%信頼区間[CI]:6.15~26.92 ●女性:26.97、95%CI:9.18~44.75・リスペリドンを使用した4つの研究でも同様の結果であった。 ●男性:26.49、95%CI:17.55~35.43 ●女性:37.72、95%CI:9.41~66.03・男女間の直接比較では、女性のプロラクチンレベルの増加がやや大きいことが示唆されたが、統計学的に有意な差は認められなかった。

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慢性期統合失調症の陰性症状に対するpentoxifylline補助療法~RCT

 エジプト・University of Sadat CityのMahmoud S. Abdallah氏らは、慢性期統合失調症患者の陰性症状軽減に対するリスペリドン治療の補助療法としてpentoxifyllineの有効性および安全性を評価するため、ランダム化プラセボ対照試験を実施した。その結果、慢性期統合失調症患者の陰性症状軽減に対する8週間のリスペリドン+pentoxifylline補助療法は、有望な治療選択肢である可能性が示唆された。CNS Neuroscience & Therapeutics誌オンライン版2022年11月7日号の報告。 慢性期統合失調症外来患者80例を対象に、リスペリドンとpentoxifyllineまたはプラセボを併用し、8週間投与した。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて、試験の開始時、2、4、6、8週目に評価を行った。治療開始前後の血清レベル(cAMP、TNF-α、IL-6)を測定した。 主な結果は以下のとおり。・pentoxifylline群において、陽性症状評価尺度以外のPANSSスコアでTTI(time-treatment interaction)の有意な効果が確認された。 ●PANSS陰性症状スコア(p<0.001) ●PANSS総合精神病理スコア(p<0.001) ●PANSS総スコア(p<0.001) ●PANSS陽性症状スコア(p=0.169)・pentoxifylline群は、プラセボ群と比較し、cAMPレベルの有意な増加およびTNF-αとIL-6レベルの有意な減少が認められた。

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治療抵抗性の幻聴に対する低刺激rTMS療法の有用性

 治療抵抗性の幻聴を有する患者に対する治療として、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法が注目されている。しかし、とくにクロザピン耐性症状が認められる患者における最適な刺激パラメータはよくわかっていない。フランス・リヨン大学のJerome Brunelin氏らは、治療抵抗性の幻聴を伴う統合失調症患者に対して、うつ病性障害への刺激パラメータが有用かどうかを調査するため、非盲検レトロスペクティブ研究を実施した。その結果、クロザピン耐性症状が認められる患者を含む治療抵抗性の幻聴に対し、低刺激rTMS療法(3週間で30セッション)は有用なアプローチであることが示唆された。International Journal of Clinical and Health Psychology誌2023年1~4月号の報告。 対象患者14例(クロザピン治療患者9例を含む)に対し、1Hz rTMS療法30セッションを3週間かけて実施した(セッション当たり360パルス、安静時運動閾値110%で60秒オン・30秒オフ、1日2セッション)。刺激は、左側頭頭頂接合部(国際10/20法に基づくT3-P3)をターゲットとして行った。 主な結果は以下のとおり。・rTMS療法後、幻聴評価スケールの有意な減少が認められた(-38.7±31.8%、p=0.003)。・クロザピン治療患者9例においても同様に有意な効果が認められた(-34.9±28.4%、p=0.01)。

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