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日本の統合失調症治療における向精神薬の併用~EGUIDEプロジェクト

 統合失調症のガイドラインでは、抗精神病薬の単剤療法が推奨されているが、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬で治療中の患者では、経口抗精神病薬が併用されることが少なくない。九州大学の鬼塚 俊明氏らは、LAIまたは経口の抗精神病薬で治療を行った日本の統合失調症患者を対象に、向精神薬の使用状況を詳細に調査した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2023年5月23日号の報告。 全国94施設が参加する「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」のデータを用いて、分析を行った。対象は、2016~20年に入院治療を行った後、退院した統合失調症患者2,518例。LAI群(263例)には、いずれかのLAI抗精神病薬で治療を行った患者を含み、非LAI群(2,255例)には、退院時に経口抗精神病薬を使用していた患者を含めた。 主な結果は以下のとおり。・LAI群は、非LAI群と比較し、抗精神病薬の多剤併用率、抗精神病薬の数、クロルプロマジン等価換算量が有意に高かった。・対照的に、LAI群は、非LAI群よりも睡眠薬および/または抗不安薬の併用率が低かった。 著者らは、「これらのリアルワールドの臨床結果を提示することで、とくにLAI群では抗精神病薬の併用を減らし、非LAI群では睡眠薬や抗不安薬の併用を減らすことにより、統合失調症治療において単剤療法を念頭に置くことを臨床医に対して奨励したい」としている。

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急速に進行する認知症(後編)【外来で役立つ!認知症Topics】第6回

急速に進行する認知症(後編)「うちの家族の認知症は進行が速いのでは?」と問われる付き添い家族の対応には、とくに注意して臨む。筆者が働く認知症専門のクリニックでよくある急速進行性認知症(RPD:Rapid Progressive Dementia)は、やはり基本的にアルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症(DLB)が多いようだ。こうした質問に対する説明では、次のようにお答えする。まず変わった治療や指導法をしているわけではないこと。また一言でADやDLBと言っても、進行速度などの臨床経過は多彩であること。そのうえで、処方薬の変更などの提案をする。しかし、時に難渋する例がある。それは、aducanumabやlecanemabなど新規薬の治験を行っている症例が、たまたまRPDだったと考えざるを得ないケースである。こちらが何を言おうと、ご家族としては治験薬に非があるという確固とした思いがある。筆者は経験的に、ADでは個人ごとにほぼ一定の進行速度があり、肺炎や大腿骨頸部骨折などの合併症がない限りは、速度はそうそう変わらないと思ってきた。つまり、固有の速さでほぼ直線的に落ちると考えていた。今回、RPDを論じるうえで、改めてADの臨床経過を確認してみた。まずあるレビュー論文によれば、認知機能の低下具合は、病初期はゆっくりと立ち上がり、その後ほぼ直線的に経過し終末期には水平に近づくことが示されていた1)。次に神経心理学所見のみならず、バイオマーカーの観点からも、ADの経過の多彩性を扱った論文があった。ここでは、「代償的なメカニズムも働くが、進行具合は遺伝子が強く規定している」と述べられていた2)。とすると、筆者の経験則は「当たらずとも遠からず」であろう。単純にADもしくはDLBで急速悪化する例では、その速度はプリオン病ほど速くはないが、半年ごとの神経心理学テストで、「えーっ、こんなに低下した?」と感じる。こういうケースは一定数あるし、そんな例にはこれという臨床的な特徴がないことが多いと思ってきた。それだけに低下速度は遺伝子により強く規定されているという報告には、なるほどと思う。そうはいっても、RPDのADには中等度から強度のアミロイドアンギオパチーが多いと述べられていた。このことは、血管障害が発生する危険性が高いと解釈される。なお有名なAPOE4遺伝子の保有との関りも述べられていたが、非RPDのものと変わらないとする報告が多く、なかには有意に少ないとする研究もあるとのことであった。ADに別の疾患を併発することで急速悪化することもADなどの変性疾患に別の疾患が加わることもある。上に述べた脳血管障害や硬膜下血腫の場合には、かなり急性(秒から週単位)に悪化する。麻痺や言語障害など目立った神経学的徴候があればわかりやすいが、必ずしもそうではない。また、せん妄など意識障害が前景に立つ場合も少なくない。こうした例では、せん妄の特徴である急性増悪と意識障害の変動への注目が重要である。次に、正常圧水頭症は、潜行性に失禁、歩行障害が現れてくる。その「いつの間にか」の進行ゆえに、ある程度長期に診ていると、逆に合併の出現には気付きにくくなることに要注意である。一方であまり有名でないが、よく経験するのが夏場の熱中症、あるいは脱水である。7月の梅雨明け頃から9月下旬にかけて、「このごろ急に認知症が悪化した」とご家族が申告される例は多い。主因は、当事者が暑いと感じにくくなっていて窓開けやエアコン使用など環境調整ができないこと、また高齢化とともに進行しがちな喉の渇きを感知しにくくなることによる水分摂取の低下である。典型的な熱中症ではない、比較的軽度な例が多いので、家族からは「認知症が最近になって悪化した」と訴えられやすい。なお初歩的かもしれないが、若い時からうつ病があった人では、老年期に至って新たなうつ病相が加わることがある。これが半年から1年も続くとRPDと思われるかもしれない。ごくまれながら、認知症に躁病が加重されることもあって、周囲はびっくりする。なお誤嚥性肺炎、複雑部分発作のようなてんかんもRPDに関与しうる。どのように悪化したかを聞き出すことが第一歩さて、これまでADやDLBとして加療してきた人が、RPDではないかと感じたり、家族から訴えられたりした時の対応が問題である。多くの家族は「悪化した、進んだ」という言い方をされるので、何がどのように悪いのかを聞き出すことが第一歩だろう。普通は記憶や理解力などの低下だろうが、たとえば正常圧水頭症が加わった場合なら、失禁や歩行障害という外から見て取れる変化なのかもしれない。次に治療法の変更は、本人や家族が安心されるという意味からもやってみる価値があるだろう。まずは薬物の変更、あるいは未使用ならデイサービス、デイケアも有効かもしれない。さらに大学病院の医師等への紹介という選択肢もある。それには、まずプリオン病など希少疾患の検索依頼の意味がある。またADのRPDかと思われるケースでは、認知症臨床に経験豊かな先生に診てもらうことは、患者・家族のみならず、非専門医の先生にとっても良いアドバイスが得られるだろう。参考1)Hermann P, et al. Rapidly progressive dementias - aetiologies, diagnosis and management. Nat Rev Neurol. 2022;18:363-376.2)Koval I, et al. AD Course Map charts Alzheimer’s disease progression. Sci Rep. 2021 13;11:8020.

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自殺念慮の検出に有用な兆候は

 自殺の兆候を有するうつ病患者は、プライマリケアの臨床現場で見逃されることが少なくない。久留米大学の藤枝 恵氏らは、初診から6ヵ月間の中年期プライマリケア患者における自殺念慮を伴ううつ病の予測因子を調査した。その結果、起床時の疲労感、睡眠状態不良、職場の人間関係の問題は、プライマリケアにおける自殺念慮を伴ううつ病の予測因子である可能性が示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年4月17日号の報告。 対象は、日本の内科クリニックを受診した35~64歳の新規患者。自己記入式アンケートと医師のアンケートを用いて、ベースライン特性を収集した。自殺念慮を伴ううつ病は、登録時および6ヵ月後にZungうつ病自己評価尺度(SDS)、気分プロフィール検査(POMS)を用いて評価した。自殺念慮を伴ううつ病の調整オッズ比(aOR)を算出するため、多重ロジスティック回帰分析を用いた。関連因子の感度、特異性、尤度比も算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者387例中13例(3.4%)が6ヵ月時点で自殺念慮を伴ううつ病であると評価された。・性別、年齢、関連因子で調整した後、統計学的に有意な自殺念慮を伴ううつ病のaORが認められた因子は以下のとおりであった。 ●1回/月以上の起床時の疲労感(aOR:7.90、95%CI:1.06~58.7) ●1回/週以上の起床時の疲労感(aOR:6.79、95%CI:1.02~45.1) ●睡眠状態の悪さ(aOR:8.19、95%CI:1.05~63.8) ●職場における人間関係の問題(aOR:4.24、95%CI:1.00~17.9)・本調査は、サンプルサイズが小さかったため、本結果を確認するためには、より多くのサンプルサイズを用いた研究が必要とされる。

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20年間で同じ統合失調症患者に対する薬物治療はどう変化したか

 最近の薬理学的疫学データによると、第2世代抗精神病薬(SGA)単剤療法で治療されている患者の割合が増加していると報告されているが、同じ患者を長期間にわたって分析した研究は、これまでほとんどなかった。獨協医科大学の古郡 規雄氏らは、同じ統合失調症患者に対する薬物療法が20年間でどう変化したかを検討するため、20年間のデータが入手可能な患者を対象とし、レトロスペクティブに評価を行った。その結果、同じ統合失調症患者であっても、20年間でゆっくりではあるが確実に第1世代抗精神病薬(FGA)からSGAへ切り替わっていることが明らかとなった。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年4月17日号の報告。 本研究は、2021年4月に日本の精神科病院15施設で実施された。同じ病院で20年以上治療を行った統合失調症患者を対象に、2001、06、11、16年(5年ごと)の処方データをレトロスペクティブに解析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は716例、2021年時点での平均年齢は61.7歳、女性の割合は49.0%であった。・抗精神病薬単剤療法率は、過去20年間でわずかな増加を認めた。・SGA使用率は、過去20年間で28.9%から70.3%へ顕著な増加がみられたが、SGA単剤療法率は緩やかな増加傾向を示すにとどまった。・過去20年間で抗コリン薬併用率は減少傾向を示したが、抗うつ薬、抗不安薬/睡眠薬、気分安定薬の併用率に変化は認められなかった。

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眼球運動と認知機能を用いた統合失調症診断の有用性

 統合失調症患者では、眼球運動異常や認知機能低下がみられる。奈良県立医科大学の岡崎 康輔氏らは、統合失調症患者と健康対照者における眼球運動および認知機能に関するデータを用いて、精神科医療における実践的なデジタルヘルスアプリケーションに流用可能な臨床診断マーカーの開発を目指して、本研究を実施した。その結果、眼球運動と認知機能データの7つのペアは、統合失調症患者を鑑別するうえで、臨床診断に支援につながり、統合失調症の診断の一貫性、早期介入、共通意思決定を促進するために、これらを利用したポータブルディバイスでも機能する客観的な補助診断方法の開発に役立つ可能性があることを報告した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年4月8日号の報告。 対象は、統合失調症患者336例および健康対照者1,254例。ウェクスラー成人知能検査第3版(WAIS-III)およびウェクスラー記憶検査改訂版(WMS-R)を用いて眼球運動と認知機能のパフォーマンスを確認し、ロジスティック回帰を用いた多変量解析を実施した。眼球運動と認知機能尺度を含む鑑別精度を測定し、診断基準に従って臨床上有用なペアを特定するためペア判別分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・多変量解析では、眼球運動と認知機能は、統合失調症患者と健康対照者を鑑別するうえで、有用であることが確認された。・ペア判別分析では、7つの眼球運動測定値と認知機能テストの7つのスコアに他の要素を1つ組み合わせることにより、高い鑑別精度が検出された。・7ペアのdigit-symbol codingまたはsymbol-searchおよび眼球運動測定による鑑別精度は、高く堅牢であった。

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向精神薬の頓服使用が統合失調症入院患者の転帰に及ぼす影響

 統合失調症治療では、興奮、急性精神症状、不眠、不安などの症状に対し、一般的に頓服薬が用いられる。しかし、頓服薬使用を裏付ける質の高いエビデンスは不足しており、これら薬剤の使用は、臨床経験や習慣に基づいて行われている。北里大学の姜 善貴氏らは、向精神薬の頓服使用の実態および患者の転帰に対する影響を評価するため、本研究を行った。その結果、向精神薬の頓服使用は、統合失調症入院患者の入院期間の延長、抗精神病薬の多剤併用、再入院率の増加と関連しており、精神症状のコントロールには、大量の向精神薬の頓服使用を避け、ルーチン処方で安定を目指す必要があることを報告した。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2023年5月30日号の報告。 入院での治療を受けた統合失調症患者205例を対象に、入院前および退院時の向精神薬使用状況、入院中の頓服薬の使用頻度を調査した。また、向精神薬の頓服使用が入院日数、抗精神病薬の多剤併用、再入院率に及ぼす影響も検討した。 主な結果は以下のとおり。・入院中に向精神薬の頓服使用を行った患者は、使用しなかった患者と比較し、入院日数が有意に長く(p=0.00075)、退院時の抗精神病薬の多剤併用率が有意に高かった(p=0.00024)。・1日当たりの向精神薬の頓服使用数が多いほど、退院3ヵ月以内の再入院率の増加が認められた(p=0.0044)。・頓服薬の使用をモニタリングし、再検討を促すシステムを構築する必要性が示唆された。

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治療抵抗性うつ病に対するベンゾジアゼピン長期使用~FACE-TRDコホート研究

 ベンゾジアゼピン(BZD)の長期使用は、公衆衛生上の問題の1つである。しかし、治療抵抗性うつ病(TRD)に対するBZD長期使用の影響に関するデータは、十分とはいえない。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、選択していないTRD患者におけるBZD長期使用および1年間でBZD中止に成功した患者の割合を調査し、継続的なBZD長期使用がメンタルヘルスのアウトカムに及ぼす影響を評価した。その結果、TRD患者の約半数は、BZDが過剰に使用されており、BZD中止を推奨しているにもかかわらず、1年間の中止率は5%未満であることを報告した。著者らは、TRD患者に対するBZD長期使用は、臨床症状、認知機能、日常生活に悪影響を及ぼす可能性があり、計画的なBZD中止が強く推奨されると考えられることから、薬理学的および非薬理学な代替介入を促進する必要があるとしている。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2023年8月30日号の報告。 2014~21年にTRDの専門医療機関13施設より募集されたTRD患者を対象に、1年間のフォローアップを行ったFACE-TRDコホート研究を実施した。トレーニングされた医師および患者からの報告を含む標準化された包括的バッテリーが実施され、1年後に患者の再評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時、BZD長期使用群に分類された患者は、45.2%であった。・多変量解析では、BZD長期使用群は、非BZD長期使用群と比較し、年齢、性別、抗精神病薬の投与量とは無関係に、身体活動の低さ(調整オッズ比[aOR]:1.885、p=0.036)、プライマリケアの利用率の高さ(B=0.158、p=0.031)と関連が認められた。・性格特性、自殺念慮、衝動性、幼少期のトラウマへの暴露、初発大うつ病エピソード年齢の低さ、不安、睡眠障害については、有意な差は認められなかった(それぞれp>0.05)。・BZD中止を推奨しているにもかかわらず、1年間のフォローアップ期間中にBZDを中止した患者は5%未満であった。・1年後の継続的なBZD長期使用と関連していた因子は、以下のとおりであった。 ●うつ病重症度の高さ(B=0.189、p=0.029) ●臨床全般重症度の高さ(B=0.210、p=0.016) ●不安状態の高さ(B=0.266、p=0.003) ●睡眠の質の低下(B=0.249、p=0.008) ●末梢炎症性の増加(B=0.241、p=0.027) ●機能レベルの低下(B=-0.240、p=0.006) ●処理速度の低下(B=-0.195、p=0.020) ●言語エピソード記憶の低下(B=-0.178、p=0.048) ●欠勤および生産性の低下(B=0.595、p=0.016) ●主観的な健康状態の低さ(B=-0.198、p=0.028)

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抗うつ薬、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン使用の世界的な傾向~64ヵ国横断的分析

 米国・ピッツバーグ大学のOrges Alabaku氏らは、高所得国、中所得国、低所得国における抗うつ薬、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン(BZD)使用の世界的な傾向を調査した。その結果、高所得国は中・低所得国と比較し向精神薬の治療利用率が高いことを報告した。PLOS ONE誌2023年4月26日号の報告。 IQVIAのMIDASデータベースを用いて、2014年7月~2019年12月までの国別横断的時系列分析を行った。人口で調整された使用率は、人口規模ごとに、薬剤クラス別の薬剤標準単位数で算出した。高所得国、中所得国、低所得国の分類には、国連の「2020年世界経済状況・予測」を用いた。薬剤クラス別の使用率の変化は、2014年7月~2019年7月の期間で算出した。経済状況を予測変数として用い、各国の薬剤クラス別の使用率について、ベースラインからの変化の予測可能性を評価するため線形回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析には64ヵ国(高所得国:33ヵ国、中所得国:6ヵ国、低所得国:25ヵ国)を含めた。・ベースラインにおける人口規模ごとの薬剤クラス別平均使用率(標準単位)は、以下のとおりであった。【抗うつ薬】高所得国:2.15、中所得国:0.35、低所得国:0.38【抗精神病薬】高所得国:0.69、中所得国:0.15、低所得国:0.13【BZD】高所得国:1.66、中所得国:1.46、低所得国:0.33・経済状況でみた薬剤クラス別の使用の平均変化率は、以下のとおりであった。【抗うつ薬】高所得国:20%、中所得国:69%、低所得国:42%【抗精神病薬】高所得国:27%、中所得国:78%、低所得国:69%【BZD】高所得国:-13%、中所得国:4%、低所得国:-5%・経済状況が向上するほど、抗うつ薬(p=0.916)、非定型抗精神病薬(p=0.23)、BZD(p=0.027)使用の変化率が減少することが示唆された。・同様に、抗うつ薬と非定型抗精神病薬のベースラインにおける使用率が高いほど、変化率の低下は小さかった(各々、p=0.026、p=0.054)。・BZDでは、ベースラインの使用率が高いほど、使用率の変化が大きかった(p=0.038)。

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統合失調症患者におけるLAI抗精神病薬の導入成功パターンは

 統合失調症の再発予防に長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬による治療は効果的であるが、いまだ十分に利用されているとはいえない。米国・ザッカーヒルサイド病院のJohn M. Kane氏らは、米国の民間保険加入患者を含む大規模データセットを用いて、統合失調症診断後のLAI抗精神病薬治療の成功パターンを特定するため、本検討を行った。その結果、主に民間保険加入患者である本データセットでは、初期段階でのLAI抗精神病薬の使用率は非常に低かったが、正常に同薬剤が導入された患者の多くは、最初の導入で90日以上の治療を達成していた。しかし、初期段階でLAI抗精神病薬が使用された場合でも、多くの患者は過去に経口抗精神病薬治療を受けており、統合失調症の初回治療としてLAI抗精神病薬はいまだ一般的ではないことが示された。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年4月19日号の報告。 ICD-9またはICD-10基準で新たに統合失調症と診断された18~40歳の患者のうち、第2世代のLAI抗精神病薬の導入成功(90日以上の使用と定義)、1つ以上の第2世代の経口抗精神病薬使用のデータを、2012~19年のIBM MarketScan CommercialおよびMedicare Supplementalのデータベースより特定した。アウトカムは、記述的に測定した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした患者は、新規に統合失調症と診断された患者4万1,391例のうち、LAI抗精神病薬を1回以上使用した患者1,836例(4%)、1回以上の第2世代経口抗精神病薬治療後にLAI抗精神病薬の導入に成功した患者202例(1%未満)。・診断から最初のLAI抗精神病薬開始までの期間(中央値)は289.5日(範囲:0~2,171日)、LAI抗精神病薬開始から導入成功までの期間は90.0日(同:90~1,061日)、導入成功後のLAI抗精神病薬中止までの期間は166.5日(同:91~799日)であった。・LAI抗精神病薬開始前、2つ以上の経口抗精神病薬による治療を行っていた患者は58%であった。・LAI抗精神病薬の導入が成功した患者の86%は、最初のLAI抗精神病薬で達成が得られていた。

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睡眠時間のばらつきが双極性障害の再発リスクと関連~APPLEコホート研究

 双極性障害でみられる睡眠障害は、気分症状と密接に関連しているといわれている。愛知・桶狭間病院の江崎 悠一氏らは、双極性障害患者のアクチグラフによる睡眠パラメータと気分エピソードの再発との関連を調査した。その結果、双極性障害患者の気分エピソードの再発または再燃を予防するための補助療法として、睡眠時間を一定に保つ治療が有用である可能性が示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年4月24日号の報告。 日常生活における光曝露と双極性障害の病状との関連を調査したコホート研究「APPLEコホートスタディ」に参加した双極性障害外来患者193例を対象に、分析を行った。対象患者の睡眠状態は、連続7日間にわたりアクチグラフを用いて客観的に評価し、その後2年間にわたり気分エピソードの再発をフォローアップした。睡眠パラメータは、7日間の各睡眠パラメータの平均値と変動性(標準偏差)により評価した。 主な結果は以下のとおり。・193例中110例(57%)においてフォローアップ期間中に気分エピソードが確認された。・総睡眠時間の変動が大きかった患者は、変動が小さかった患者と比較し、気分エピソードの再発までの平均推定期間が有意に短かった(12.5ヵ月vs.16.8ヵ月、p<0.001)。・Cox比例ハザードモデルでは、潜在的な交絡因子で調整した後、総睡眠時間の変動性が気分エピソードの再発率の増加と有意に関連していることが明らかとなった(1時間当たりのハザード比[HR]:1.407、95%信頼区間[CI]:1.057~1.873)。再発した主な気分エピソードはうつ病エピソードであった(1時間当たりのHR:1.477、95%CI:1.088~2.006)。

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うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法

 うつ病患者から報告されたアウトカムは、患者の人生の充足、ウェルビーイング、価値ある活動などを反映している。カナダ・トロント大学のRoger S. McIntyre氏らは、うつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法による治療がライフ・エンゲージメントに及ぼす短期的および長期的な影響を検討するため、10項目の自己記入式うつ症状尺度(IDS-SR10)を用いて本研究を実施した。その結果、ブレクスピプラゾール補助療法は、抑うつ症状に対する効果だけでなく、患者のライフ・エンゲージメントの改善が期待でき、うつ病患者自身にとって意味のある機能的アウトカムを改善する可能性が示唆された。Journal of Psychiatric Research誌2023年6月号の報告。 抗うつ薬治療で効果不十分な成人うつ病外来患者(DSM-IV-TR 基準)を対象に、抗うつ薬+ブレクスピプラゾール(2~3mg/日)補助療法(579例)と抗うつ薬+プラセボ(583例)を比較した3つの6週間ランダム化二重盲検試験より短期データをプールした。長期データは、抗うつ薬+ブレクスピプラゾール(0.5~3mg/日)補助療法の26(2,047例)~52(768例)週間非盲検延長試験よりプールした。 主な結果は以下のとおり。・短期治療では、ブレクスピプラゾール補助療法群は、プラセボ群と比較し、IDS-SR10ライフ・エンゲージメントサブスケールスコアの大幅な改善を示した(最小二乗平均差:-1.19、95%信頼区間:-1.78~-0.59、p=0.0001、エフェクトサイズCohen's d:0.23)。・8つのライフ・エンゲージメント項目においても、プラセボ群と比較し、ブレクスピプラゾール補助療法群で大幅な改善が認められた(p<0.05、エフェクトサイズの範囲:0.12~0.24)。・長期治療では、IDS-SR10ライフ・エンゲージメントサブスケールスコアの変化の平均(標準偏差)は、26週目(2,047例)で-2.4(4.9)、52週目(768例)で-3.7(5.3)であり、10項目すべてにおいて平均スコアの改善が認められた。

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統合失調症における抗精神病薬の多剤併用と単剤療法の安全性比較

 東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、抗精神病薬の単剤療法と比較した多剤併用療法の安全性を検討した。その結果、抗精神病薬の単剤療法は、多剤併用療法と比較し、重度の身体的併存症による入院リスクの低下と関連していないことが示唆された。著者らは、安全性の問題に関する既存のエビデンスがない以上は、ガイドラインで抗精神病薬の多剤併用療法の代わりに単剤療法を推奨するべきではないとしている。The American Journal of Psychiatry誌2023年5月1日号の報告。 フィンランドの全国入院患者レジストリより統合失調症患者6万1,889例を特定し、1996~2017年にわたりフォローアップ調査を行った(フォローアップ期間中央値:14.8年[IQR=7.4~22.0])。非精神疾患および心血管系による入院など、重度の身体的併存症リスク(調整ハザード比:aHR)を、抗精神病薬の単剤療法と多剤併用療法における7つの用量カテゴリで比較した。7つの用量カテゴリは、1日当たりの服用量(DDD:defined daily doses)0.4未満、0.4~0.6未満、0.6~0.9未満、0.9~1.1未満、1.1~1.4未満、1.4~1.6未満、1.6以上であった。選択バイアスを除外するため、個別分析(Within-individual analysis)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は46.7±16.0歳、男性の割合は50.3%(3万1,104例)であった。・単剤療法と多剤併用療法の両方を実施した患者における非精神疾患による入院リスクは、1.1以上DDD/日の3つの用量カテゴリの多剤併用療法で、同用量カテゴリの単剤療法と比較し、最大13%の有意な低下が観察された。【1.1~1.4未満 DDD/日】aHR:0.91(95%CI:0.87~0.95)【1.4~1.6未満DDD/日】aHR:0.91(95%CI:0.86~0.96)【1.6以上DDD/日】aHR:0.87(95%CI:0.84~0.89)・心血管系による入院リスクは、1.6以上DDD/日の用量カテゴリで、多剤併用療法のほうが有意に低かった(-18%)。【1.6以上DDD/日】aHR:0.82(95%CI:0.72~0.94)・抗精神病薬の未使用と単剤療法、または同未使用と多剤併用療法の比較の結果は、同一の個人での多剤併用療法と単剤療法の比較と同様であった。・多剤併用療法と単剤療法の比較で、非精神疾患または心血管系による入院に有意な差は認められなかった。

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第164回 麻酔下の患者へのケタミン投与試験でプラセボに勝る抗うつ効果示せず

手術を控えた麻酔下の大うつ病患者にケタミンを投与するという一風変わった無作為化試験でプラセボに勝る抗うつ効果は残念ながら認められませんでした1)。試験で麻酔に使われたプロポフォールやイソフルランと同様にケタミンも麻酔薬で、自分の体を抜け出してしまうような感覚を生じさせる解離作用を有することが知られています。また、そばにいないはずの友人や家族の声が聞こえてしまうなどの幻聴や見えないはずのものが見える幻視を同剤はもたらすこともあります。ケタミンはそのようないわば「飛ぶ(trip)」感覚を求める人に不正使用されることがある一方で、精神疾患治療での応用も期待されており、治療抵抗性のうつ病を含む大うつ病患者へのケタミン投与と抗うつ効果の関連がいくつかの試験で示されています。それらの試験結果によるとケタミン静注は治療抵抗性うつ病患者の約5人に2人(41%)に有効で、約5人に1人(19%)は投与24時間で寛解に至っています。1回きりのケタミン静注を調べた無作為化試験での効果は投与後2時間以内に認められ、1週間後も持続していました。しかしケタミンの抗うつ効果がプラセボとどれだけ違うかを無作為化試験で調べることは困難を極めます。投与後にすぐに自覚しうる解離作用や幻覚などの精神作用のせいで被験者はケタミンとプラセボのどちらが投与されたかを知らされておらずともわかってしまい、完全な盲検がおよそ不可能だったからです。盲検が不完全だと被験者の期待に端を発する効果に偏りが生じる恐れがあります。その偏りのせいでケタミンの抗うつ効果が水増しされているかもしれません。そこでスタンフォード大学の研究チームは手術を受ける大うつ病患者を募り、被験者にケタミンをそうとは感づかれないように麻酔中に投与する無作為化試験を実施しました。試験には心臓や頭蓋内以外の手術を予定している40例が参加し、麻酔開始から手術開始までにケタミンかプラセボのいずれかが投与されました。被験者にどちらが投与されたかを後で推測してもらったところ正解率は50%に満たない40%足らずであり、試験のもくろみどおりケタミンはそうとは被験者に気づかれなかったことが示されました。肝心の効果はというとケタミン投与後3日間のうつ症状指標MADRSは改善しましたが、同様に改善したプラセボとの有意差は認められませんでした。寛解(MADRS点数12点以下)を達成した被験者の割合も両群とも40%で差がありませんでした。ではその抗うつ効果は果たして何に由来するのでしょうか? もしかしたら麻酔薬のおかげかもしれません。麻酔薬であるプロポフォールやイソフルランの抗うつ効果が先立つ試験で示されているからです。しかしそれらの試験では脳波を抑制するほどの量が複数回投与されており、脳波抑制が生じない範囲での標準的な麻酔が用いられた今回の試験とはだいぶ趣が異なっています。今回の試験報告の著者の1人Theresa Lii氏はケタミンも麻酔薬もうつ病緩和に大して貢献しなかったと考えています。医師とやり取りを繰り返し、気配りをしてもらいながら試験の手順を踏んでいったことが有益だったのであり、きっと良くなるという期待がケタミン投与群とプラセボ投与群のどちらでも醸成されて実際良くなったのだろうと同氏は述べています2)。ケタミンで「飛ぶ」ことができない環境での今回の試験結果によると大うつ病をすぐに改善する効果はケタミン自体にはないのかもしれません。次の課題としてLii氏は「飛ぶ」経験こそより有意義なのかどうかを調べたいと思っています。参考1)Lii TR, et al. medRxiv. 2023 May 01. [Epub ahead of print]2)Ketamine no better than placebo at alleviating depression, unusual trial finds / Science

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中高年の睡眠時間とうつ病リスクとの関係~用量反応メタ解析

 中国・北京中医薬大学のXin-Lin Li氏らは、中年および高齢者における夜間の睡眠時間とうつ病リスクとの用量反応関係を調査するため、本研究を実施した。その結果、中高年のうつ病リスクが最も低い夜間の睡眠時間は7時間であり、睡眠時間がそれより長くても短くても、うつ病リスクが高まる可能性が示唆された。Frontiers in Physiology誌2023年3月2日号の報告。 2022年7月31日までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Science、CNKI、VIP、Wanfangデータナレッジサービスプラットフォームより検索した。対象には、夜間の睡眠時間とうつ病との関連を評価したコホート研究およびケースコントロール研究を含めた。研究の質の評価には、Newcastle-Ottawa scaleを用いた。2人の研究者により、データ抽出と品質評価を行った。睡眠時間とうつ病リスクとの用量反応関係を評価するため、制限付き3次スプライン(RCS)および一般化最小二乗法(GLS)を用いた。推定エフェクトサイズを分析するため、Stata 12.0を用いて、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、6件のコホート研究より3万3,595例を含めた。・睡眠時間とうつ病リスクとの間にU字型の関連が認められた。・夜間の7時間睡眠と比較し、それよりも短時間および長時間睡眠のいずれにおいても、うつ病リスク増加との関連が認められた(非線形検定 p<0.05)。【5時間】RR:1.09(95%CI:1.07~1.12)【6時間】RR:1.03(同:1.02~1.04)【8時間】RR:1.10(同:1.05~1.15)【9時間】RR:1.31(同:1.17~1.47)【10時間】RR:1.59(同:1.31~1.92)・非アジア人では、短時間睡眠によりうつ病リスクが高まり、アジア人では短時間および長時間睡眠のいずれにおいてもうつ病リスクが高まる可能性が示唆された。 ●非アジア人【5時間】RR:1.09(同:1.02~1.17) ●アジア人【5時間】RR:1.10(同:1.07~1.13)【6時間】RR:1.04(同:1.02~1.05)【8時間】RR:1.09(同:1.05~1.14)【9時間】RR:1.35(同:1.18~1.53)【10時間】RR:1.70(同:1.36~2.12)

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アリピプラゾール2ヵ月持続性注射剤の安全性~ピボタル試験

 アリピプラゾール2ヵ月持続性注射剤960mg(Ari 2MRTU 960)は、2ヵ月ごとに臀部筋投与を行う新たな長時間作用型注射剤の抗精神病薬であり、現在、統合失調症および双極I型障害の治療に対する研究が実施されている。米国・大塚ファーマシューティカル D&CのMatthew Harlin氏らは、統合失調症または双極I型障害の成人患者に対するAri 2MRTU 960の安全性および忍容性を評価し、同薬剤とアリピプラゾール月1回製剤400mg(AOM 400)の血中濃度の類似性を調査した。その結果、統合失調症または双極I型障害の成人患者において、Ari 2MRTU 960は良好な忍容性が認められ、AOM 400と同等の安全性プロファイルを有していることが確認された。CNS Drugs誌2023年4月号の報告。 32週間のオープンラベル試験を実施した。対象患者は、56±2日ごとのAri 2MRTU 960投与(4回実施予定)または28±2日ごとのAOM 400投与(8回実施予定)のいずれかに1:1でランダムに割り付けられた。初回投与時に、AOM 400で安定していた患者を除き、重複した経口抗精神病薬で治療を行った。安全性、忍容性、薬物動態の評価は、研究期間を通して実施した。主要安全性評価項目には、報告された有害事象、注射部位反応、錐体外路症状を含めた。主要薬物動態評価項目は、Ari 2MRTU 960の4回目投与から56日後およびAOM 400の8回目投与から28日後のアリピプラゾールの血中濃度、Ari 2MRTU 960の4回目投与後0~56日目のAUCまたはAOM 400の7回目および8回目投与後0~28日目のAUCとした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者266例(統合失調症:185例、双極I型障害:81例)は、Ari 2MRTU 960群132例、AOM 400群134例にランダムに割り付けられた。・男性の割合は66.2%、黒人またはアフリカ系米国人の割合は72.9%、平均年齢は47.3歳であり、人口統計学的特性およびベースライン時の疾患特性に両群間で差は認められなかった。・試験完了率は、Ari 2MRTU 960群77.3%、AOM 400群68.7%であった。・試験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)の発現率は、Ari 2MRTU 960群71.2%、AOM 400群70.9%と同程度であった。・頻度の高かったTEAEは、体重増加(Ari 2MRTU 960群:22.7%、AOM 400群:20.9%)、注射部位の痛み(Ari 2MRTU 960群:18.2%、AOM 400群:9.0%)であった。・Ari 2MRTU 960の4回目投与から56日後とAOM 400の8回目投与から28日後のアリピプラゾール血中濃度の幾何平均の比(GMR)は、1.011(90%信頼区間[CI]:0.893~1.145)であった。・Ari 2MRTU 960の4回目投与後0~56日目のAUCとAOM 400の7回目および8回目投与後0~28日目のAUCのGMRは、1.006(90%CI:0.851~1.190)であった。

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FDA、AD型認知症に伴う行動障害へのブレクスピプラゾールを承認/大塚

 大塚製薬とH.ルンドベックA/Sは5月11日、同社の抗精神病薬ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ)のアルツハイマー(AD)型認知症に伴う行動障害(アジテーション)の治療における効能追加の承認を米国食品医薬品局(FDA)より取得したことを発表した。今回の承認により、本剤は米国において本適応を有する初めての抗精神病薬となる。なお本剤について、処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)による優先審査が認められていた。 ブレクスピプラゾールは、2015年にFDAが「成人の大うつ病補助療法」および「成人の統合失調症」の2つの効能で承認し、現在、統合失調症治療薬として約60の国と地域で使用されている。 AD型認知症を有する患者の約半数で、介護者に対する暴言、暴力、錯乱などの行動障害が認められている。行動障害を含む認知症に関連する症状は、介護者の負担を重くし、患者自身や家族、介護者の生活の質を低下させるとともに、患者が家族と同居できず介護施設へ入居せざるを得ない要因となっている。 今回の承認は、AD型認知症の可能性があると診断され、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが5~22点であり、薬物療法を必要とする行動障害のある51~90歳の患者が対象となった「331-12-283試験」と「331-14-213試験」の2つの第III相臨床試験において、良好な結果が得られたことに基づいている。 331-12-283試験では、主要評価項目であるCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)総スコアのベースラインから12週目までの平均変化量において、ブレクスピプラゾール2mg/日投与群は、プラセボ投与群に対して統計学的に有意な改善を示した(p<0.05)。 331-14-213試験では、本剤2mg/日および3mg/日投与群は、主要評価項目であるCMAI総スコアのベースラインから12週目までの平均変化量において、プラセボ投与群と比較して統計学的に有意な改善を示した(p<0.05)。 本剤の忍容性は全般的に良好であり、投与中止の発生率は低く、ほかの適応症でみられた既知の安全性プロファイルと同様であった。 AD型認知症に伴う行動障害の治療における本剤の開始用量は、1日1回0.5mgを1~7日目に服用することが推奨される。8~14日目までは1日1回1mg、15日目では1日1回2mgに増量する。推奨される目標用量は1日1回2mgである。臨床効果および忍容性に基づいて、少なくとも14日後に1日1回3mgの最大推奨用量まで増量することができる。 本剤の最も一般的な副作用は、頭痛、めまい、尿路感染、鼻咽頭炎、睡眠障害(傾眠・不眠)である。本剤は、同クラスの抗精神病薬と同様に、抗精神病薬による治療を受けた認知症関連の精神症を有する高齢患者の死亡リスクが高いことについて黒枠警告される。

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COVID-19パンデミックは日本人のうつ病リスクにどの程度の影響を及ぼしたのか

 北里大学の深瀬 裕子氏らは、長期にわたるCOVID-19パンデミックが日本の一般集団におけるうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の変化にどのような影響を及ぼしたかを評価し、そのリスク因子や適応/非適応戦略についても調査を行った。その結果、うつ病レベルは、パンデミックの初期段階で増大し、2022年1月には軽減したと考えられた。男性では、抑うつ症状を軽減するためには、経済的な状態を改善する必要があることが示唆された。パンデミックが長期間に及んだため、男女ともに適応戦略を特定することは困難であった。一方、PTSDについては、日本の一般集団において顕著な変化は認められなかった。BMC Psychiatry誌2023年3月20日号の報告。 2020~22年の間に5回のWebベースの縦断調査を実施した。抑うつ症状は「こころとからだの質問票(PHQ-9)」、PTSDは「出来事インパクト尺度(IES-R)」、対処戦略は「Brief Coping Orientation to Problems Experienced(Brief COPE)」を用いて評価した。なお、PHQ-9やIES-Rのスコアが高いほどより多くの症状を有していること、Brief COPEのスコアが高いほど、これらの対処方法の使用頻度が多くなることを示している。 主な結果は以下のとおり。・分析対象者は1,366人(平均年齢52.76±15.57歳)。・うつ病のレベルに関しては、2022年のPHQ-9スコアは、2020年および2021年よりも低かった(各々、p<0.01)。・PTSDのレベルに関しては、女性において2022年のIES-Rスコアは、2021年よりも低かった(p<0.001)。・男女ともにPHQ-9スコアの増加に影響を及ぼす因子として、若年(男性:β=-0.08、p<0.01、女性:β=-0.13、p<0.01)、自責思考(男性:β=0.12、p<0.01、女性:β=0.18、p<0.01)が特定された。・男性では、抑うつ症状のリスク因子として、仕事がないこと(β=0.09、p=0.004)、経済的影響(β=0.07、p=0.003)が挙げられ、積極的な対処(β=-0.10、p=0.005)は抑うつ症状の軽減に寄与することが示唆された。・女性では、物質(アルコールや薬物など)の使用(β=0.07、p=0.032)、行動の放棄(β=0.10、p=0.006)が抑うつ症状を増大させており、抑うつ症状の軽減に有効な対処方法は認められなかった。

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ADHD患者の不安症やうつ病の併発、その影響はどの程度か

 注意欠如多動症(ADHD)患者では精神医学的疾患の併発が多く、診断に難渋したり、治療のアウトカムおよびコストに影響を及ぼしたりする可能性がある。米国・大塚ファーマシューティカルD&CのJeff Schein氏らは、同国におけるADHDおよび不安症やうつ病を併発した患者の治療パターンとコストを調査した。その結果、不安症やうつ病を併発したADHD患者では、これらの併存疾患がない患者と比較し、治療変更が行われる可能性が有意に高く、治療変更の追加によるコスト増加が発生することが明らかとなった。Advances in Therapy誌オンライン版2023年3月13日号の報告。 薬理学的治療を開始したADHD患者の特定には、IBM MarketScan Data(2014~18年)を用いた。最初に観察されたADHD治療の日付をインデックス日とした。併存疾患(不安症および/またはうつ病)のプロファイルは、ベースライン前6ヵ月間評価した。治療変更(中止、切り替え、併用、併用中止)は、治療開始後12ヵ月間調査した。治療変更に至るオッズ比(OR)を推定した。治療を変更した患者と変更しなかった患者において、調整された年間医療コストの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は17万2,010例(小児[6~12歳]:4万9,756例、青少年[13~17歳]:2万9,093例、成人[18歳以上]:9万3,161例)。・不安症および/またはうつ病の有病率は、年代別に以下のとおりであり、小児期から成人期にかけて増加していた。 【不安症】  小児期:11.0%、青少年期:17.7%、成人期:23.0% 【うつ病】  小児期:3.4%、青少年期:15.7%、成人期:19.0% 【不安症および/またはうつ病】  小児期:12.9%、青少年期:25.4%、成人期:32.2%・併存疾患がある患者は、併存疾患がない患者と比較し、治療変更の確率が有意に高かった。 【不安症】  小児期OR:1.37、青少年期OR:1.19、成人期OR:1.19 【うつ病】  小児期OR:1.37、青少年期OR:1.30、成人期OR:1.29 【不安症および/またはうつ病】  小児期OR:1.39、青少年期OR:1.25、成人期OR:1.21・医療コストは、一般的に治療変更の回数が増えるほど高額であった。・治療変更を3回以上行った場合の患者1人当たりの年間超過コストは以下のとおりであった。 【不安症】  小児期:2,234ドル、青少年期:6,557ドル、成人期:3,891ドル 【うつ病】  小児期:4,595ドル、青少年期:3,966ドル、成人期:4,997ドル 【不安症および/またはうつ病】  小児期:2,733ドル、青少年期:5,082ドル、成人期:3,483ドル

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ブレクスピプラゾールの治療継続に影響を及ぼす8つの因子

 治療中止に関連する未知の因子の特定は、自然言語処理(NLP)のテクノロジーを用いて精神科電子カルテのテキスト情報を分析および整理することにより可能であると考えられる。千葉大学の伊豫 雅臣氏らは、NLPのテクノロジーを用いたMENTATによるデータベースを使用し、ブレクスピプラゾールの治療継続率および治療中断に影響を及ぼす因子の評価を試みた。その結果、ブレクスピプラゾールの治療中止と関連する可能性のある、8つの潜在的な新たな因子が特定された。著者らは、今後の統合失調症患者に対する治療戦略や治療継続率の改善につながるとまとめている。Schizophrenia Research誌オンライン版2023年3月27日号の報告。 2018年4月18日~2020年5月15日に新たにブレクスピプラゾール治療を開始した統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブ観察研究を実施した。ブレクスピプラゾール初回投与から180日間フォローアップを行った。ブレクスピプラゾールの治療中止に関連する因子は、構造化および非構造化された患者データを用いて評価した(2017年4月18日~2020年12月31日)。 主な結果は以下のとおり。・分析対象患者は515例(平均年齢:48.0±15.3歳、男性の割合:47.8%)。・カプランマイヤー分析では、ブレクスピプラゾールの180日間の累積継続率は、29%(推定値:0.29、95%信頼区間[CI]:0.25~0.33)であった。・単変量Cox比例ハザード分析では、ブレクスピプラゾールの治療中止に関連する16の独立した因子を特定し、多変量Cox比例ハザード分析を実施した。・多変量解析で特定されたブレクスピプラゾールの治療中止に関連する8つの因子は以下のとおりであった。 ●身体合併症を有する(ハザード比[HR]:0.592、95%CI:0.46~0.76、p<0.001) ●入院期間が長い(HR:0.998、95%CI:0.997~0.999、p<0.001) ●過去1年間の抗精神病薬の投与量がクロルプロマジン等価換算量で200~400mg/日(vs.200mg/日以下、HR:0.626、95%CI:0.42~0.93、p=0.020) ●電気けいれん療法の治療歴(HR:1.655、95%CI:1.01~2.70、p=0.044) ●主な連絡先情報の入手が可能(HR:1.523、95%CI:1.14~2.03、p=0.004) ●犯罪歴(HR:1.367、95%CI:1.10~1.70、p=0.005) ●ブレクスピプラゾール用量2mgまでの増量期間が28日超(HR:1.600、95%CI:1.26~2.03、p<0.001) ●陽性症状以外の症状の出現・悪化(HR:2.120、95%CI:1.52~2.96、p<0.001)

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