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抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学

 うつ病に対し、実臨床でどの抗うつ薬を第一選択薬として処方すべきかを検討した報告はいくつか行われているが、その後の継続的な治療効果などに関する研究はほとんどない。京都大学の古川 壽亮氏らは、日本における抗うつ薬による治療実態について健康保険データベースを用い調査した。Journal of affective disorders誌オンライン版2013年5月27日号の報告。 対象は、2009年~2010年の日本の健康保険データベースより抽出された、新規抗うつ薬で治療を開始した初発の非精神病性うつ病患者1,592例。調査項目は第一選択薬の継続と効果、第二選択薬の時期と種類、抗うつ薬治療の合計期間である。 主な結果は以下のとおり。・第一選択薬の開始用量および最大用量は、おおむねガイドラインで推奨されるとおりであった。しかし最大用量に関しては、推奨範囲の最小値に近い傾向が認められた。・第一選択薬の処方継続性は、ガイドラインの推奨を大きく下回っていた(初回処方での脱落率25%、3ヵ月以内の脱落率55%)。・第一選択薬にほかの向精神薬を追加投与した割合は14%(中央期間3ヵ月)、第一選択薬から他の抗うつ薬へ切り替えた割合は17%(中央期間2ヵ月)であった。・第二選択薬の選択は多岐にわたった。・抗うつ薬治療の合計時間は、中央期間4ヵ月と短かった。また、68%が6ヵ月で治療を中止していた。・健康保険データベースにおける非精神病性単極性うつ病の診断は、おおよそのものであるという点で、本研究には限界がある。・現在のガイドラインは、実臨床とは大いにかけ離れたものとなっている。こうしたなか、ガイドラインは実際の臨床の経験を反映する必要がある。・また、医療者は治療オプションを制限し、より効果的な治療を見極めて実践できるよう、エビデンスに基づいた比較効果研究が許されるべきである。関連医療ニュース SSRI+非定型抗精神病薬の併用、抗うつ作用増強の可能性が示唆 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき 統合失調症患者の服薬状況を検証

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抗精神病薬へのNSAIDs追加投与、ベネフィットはあるのか?

 米国・ザッカーヒルサイド病院精神医学研究部門のMasahiro Nitta氏らは、統合失調症における非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)追加投与の意義を検討するためメタ解析を実施した。その結果、NSAIDs追加によるベネフィットは明確に示されなかったことを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2013年5月29日号の掲載報告。 統合失調症におけるNSAIDsの有効性と忍容性をプラセボと比較評価するため、メタ解析を行った。2012年12月31日までに公表されたPubMed、PsycINFO、ISI Web of Scienceおよび米国国立精神保健研究所(NIMH)の臨床試験登録を検索し、無作為化プラセボ対照試験のシステマティックレビューとメタ解析により、NSAIDs追加の有効性を評価した。主要アウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)総スコアの変化とした。副次アウトカムは、PANSSの陽性および陰性サブスコアの変化、全原因による試験中止、忍容性とした。プールされた標準化平均変化によるランダム効果(Hedges'g)およびリスク比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・未公表の3試験を含む8試験(774例)において、PANSS総スコアの平均効果量(effect size)は、-0.236(95%CI:-0.484~0.012、p=0.063、I2=60.6%)であり、NSAIDsのプラセボに対する優越性は傾向を示すにとどまった。・PANSS陽性スコアの平均効果量は、-0.189(同:-0.373~-0.005、p=0.044)、PANSS陰性スコアの平均効果量は-0.026(同:-0.169~0.117、p=0.72)であった。・全原因による試験中止の相対リスクは1.13(同:0.794~1.599、p=0.503)であった。・PANSS総スコアにおけるNSAIDsのプラセボに対する有意な優越性は、アスピリン投与(2件、p=0.017)、入院(4件、p=0.029)、初回エピソード(2件、p=0.048)およびメタ回帰解析におけるPANSS陰性サブスコア低値(6件、p=0.026)などの状況下で減弱がみられた。・以上のように、抗精神病薬によるファーストライン治療が行われている統合失調症患者において、NSAIDsの追加はPANSS総スコアの変化においてベネフィットをもたらさないことが示された。・また、陽性症状においてはNSAIDsによるベネフィットが得られる可能性があるが、その効果はわずかで小さいものであった。・データベースに限界があるため、とくに初回エピソード患者においてはさらなる対照試験が必要である。関連医療ニュース 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か? 高齢の遅発統合失調症患者に対する漢方薬の効果は? 統合失調症治療にベンゾ併用は有用なのか?

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「抑うつ+過度な飲酒」その影響は?

 多くの若者にとって、過度な飲酒はアルコール乱用の典型であり、とくに抑うつ症状を有する者によく見られる。それにもかかわらず、抑うつと過度な飲酒が合わさった際の神経心理学的アウトカムへの影響はほとんど知られていなかった。オーストラリア・シドニー大学のDaniel F. Hermens氏らは、この影響を検討した結果、抑うつに過度な飲酒が加わると視覚的学習能力、記憶力、精神的な柔軟性が低下することを報告した。Psychiatry Research誌オンライン版2013年5月28日号の掲載報告。  本研究は、抑うつを有する過度な飲酒者(binge-drinkers)が、抑うつ単独あるいは過度な飲酒単独と比べ、神経心理学的機能障害がより顕著であるか否かを検討することを目的とした。18~30歳の支援を求めている若者で、最近抑うつ症状が認められたbinge-drinkers(43例)またはnon-bingers(48例)について、神経心理学的検査を実施した。また、2つの健常対照群(binge-drinkers:24例、non-bingers:21例)を追加登録して、同様の検査を行った。 主な結果は以下のとおり。・抑うつを有するbinge-drinkersは、抑うつ単独または過度な飲酒単独の場合に比べ、一貫して質的コントロールは不良であった。・抑うつを有するbinge drinkersでは視覚的学習能力と記憶力が有意に低下していた一方で、精神的な柔軟性については低下傾向がみられた。・抑うつ単独または過度な飲酒単独は、対照と比べ神経心理学的状態に有意な差はみられなかった。・以上を踏まえて著者は、「抑うつ症状を有する若年者に対しては、過度な飲酒に着目した治療戦略が、不良な長期臨床アウトカムの背景にある神経生物学的変化の予防に寄与しうることが示唆される」と結論している。関連医療ニュース うつ病や不安障害患者は、季節性の症状変化を実感! 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき 仕事のストレスが大きいほど、うつ病発症リスクは高い:獨協医科大学

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地中海食は脳卒中・認知障害・うつ病を予防できるか?

 近年、地中海食と脳卒中や認知症など脳疾患との関連を調査した研究結果がしばしば報告されている。アテネ大学(ギリシャ)のTheodora Psaltopoulou氏らは、地中海食の遵守度と、脳卒中やうつ病、認知障害、パーキンソン病の発症リスクの関連を調査したすべての研究をメタアナリシスによって定量的に評価し、Annals of Neurology誌オンライン版2013年5月30日号に報告した。 メタアナリシスの対象は、2012年10月31日までにPubMedで検索できた論文で、地中海食とこれらの脳疾患リスクとの関連について、相対リスク(RR)の効果推定値を報告している研究論文とし、条件にあった22報を評価した(脳卒中11報、うつ病9報、認知障害8報、パーキンソン病1報)。  なお、地中海食とは、野菜・豆・果物・シリアルを多く摂取し、オリーブオイルからn-3系不飽和脂肪酸を多く摂取し、魚を比較的多く、乳製品は低・中等量、肉や家禽類は少量、食事中に適量の赤ワインを摂取する食事である。 主な結果は以下のとおり。・地中海食の遵守度が高い場合は、脳卒中(RR=0.71、95%CI:0.57~0.89)、うつ病(RR=0.68、95%CI:0.54~0.86)、認知障害(RR=0.60、95%CI:0.43~0.83)のリスク減少に一貫して関連していた。・地中海食の遵守度が中程度の場合でも、うつ病や認知障害のリスク減少と関連していたが、脳卒中を予防する傾向はごくわずかであった。・サブグループ解析では、地中海食の遵守度が高い場合において予防効果が大きくみられたのは、虚血性脳卒中、軽度認知障害、認知症(とくにアルツハイマー病)であった。・メタ回帰分析では、脳卒中予防における地中海食の効果は、男性においてより大きい傾向がみられた。・うつ病に関しては、地中海食の遵守度が高い場合は年齢に関係なく予防効果がみられたが、遵守度が中程度の場合は年齢とともに効果は消滅するようである。

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統合失調症におけるワーキングメモリと視覚認知機能

 オーストラリア・クイーンズランド大学のNatasha L. Matthews氏らは、統合失調症における視覚空間に関するメンタルイメージと、ワーキングメモリとの関連について調べる2つの実験を行った。その結果、統合失調症ではワーキングメモリの維持機能が障害されていても、メンタルイメージは増強しているエビデンスを認めたこと、しかしワーキングメモリ維持の要求が高まるとその増強は消失したことを報告した。著者は、今回みられた所見が新たな治療戦略に適用可能であると結論している。Cognitive Neuropsychiatry誌オンライン版2013年5月24日号の報告。 ワーキングメモリは、過去の知覚的経験の再現であるメンタルイメージと密接に関係している。統合失調症ではワーキングメモリの障害がその中心的特徴として確立されているが、一方でボディワークから、メンタルイメージの亢進が示唆されていた。その関連を明らかにするために研究グループは2つの実験を行った。実験1では、統合失調症患者(15例)と適合コホート(14例)に、メンタルイメージの産生と検査タスク、視覚空間遅延反応ワーキングメモリタスクを完了した。実験2では、統合失調症患者(16例)と適合コホート(16例)に、ワーキングメモリ維持要求を増大するために修正したメンタルイメージタスクの新規バージョンを完了した。 主な結果は以下のとおり。・実験1の結果、統合失調症患者におけるメンタルイメージのパフォーマンス増強が示された。適合コホート群よりも精度を維持しつつ反応速度が速かった。・しかしながら、統合失調症におけるメンタルイメージの増強には、遅延反応タスクによって評価されるワーキングメモリの障害が付随していた。・実験2の結果、ワーキングメモリ維持の負荷が増すにつれ、統合失調症における優れたメンタルイメージのパフォーマンスは示されなくなった。関連医療ニュース 認知機能への影響は抗精神病薬間で差があるか? ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性 早期統合失調症、認知機能にGABA作動性抑制が関連

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統合失調症の急性増悪期、抗精神病薬の使用状況は?:国立精神・神経医療研究センター

 統合失調症患者に対し抗精神病薬は、単剤かつ適切な用量で使用されるべきである。国立精神・神経医療研究センターの藤田 純一氏らは、抗精神病薬を必要に応じて追加すること(p.r.n)で、過量投与(CP換算値1,000mg以上)や多剤併用リスクを増加させるかを検討した。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2013年5月28日号の報告。 対象は、統合失調症患者413例(9病院、17の精神科急性期病棟より抽出)。調査日の24時間にわたる、定期処方の投薬データとp.r.nの使用データを回収した。分析には興奮を呈する患者におけるp.r.nに焦点を当てた。p.r.n前後(定期処方の投薬時 vs 追加投与時)での過量投与、多剤併用の比率の差を検討した。分析には、McNemar's testを用いた。 主な結果は以下のとおり。・興奮症状発現時、312例(75.5%)において、追加投与が行われた。そのうち、281例(90.1%)では、抗精神病薬が併用されていた。・抗精神病薬を追加投与した患者では、しなかった患者と比較し、総投与量が有意に多くまた併用率もより高かった。・興奮症状発現時における、併用薬を含む抗精神病薬の合計投与量は過量投与であり、かつ多剤併用であることが示された。関連医療ニュース 急性期精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用をどう考える 統合失調症、双極性障害の急性期治療に期待! 初回エピソード統合失調症患者に対する薬物治療効果の予測因子は

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検証!抗精神病薬使用に関連する急性高血糖症のリスク

 南オーストラリア大学のNicole Pratt氏らは、AsPEN (Asian Pharmacoepidemiology Network)の一環として、抗精神病薬使用に関連する急性高血糖症のリスクを評価した。本研究では、日本を含む世界各国約2億人のデータを用いた。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌オンライン版2013年5月21日号の掲載報告。 Pratt氏らは、抗精神病薬使用に関連する急性高血糖症のリスクを検討することを目的に多国間研究を行った。一般的かつ小規模のデータセットを用いて、prescription sequence symmetry analysis(PSSA)により、抗精神病薬使用に関連する急性高血糖症のリスクを評価した。緊急のインスリン処方を急性高血糖症の代替指標とした。データセットへの参加国および人数は、オーストラリア(30万人)、日本I(30万人)、日本II(20万人)、韓国(5,300万人)、台湾(100万人)、スウェーデン(900万人)、USA-Public(8,700万人)、USA-Private(4,700万人)であった。 主な結果は以下のとおり。・大半のデータベースで、オランザピンにより急性高血糖症のリスクが高まる傾向がみられた。USA-Public(Adjusted sequence ratio[ASR]: 1.14、95%CI:1.10~1.17)およびスウェーデン(ASR: 1.53、95%CI:1.13~2.06)のデータベースでは有意差が認められた。・ハロペリドール、クエチアピンおよびリスペリドンに関しては、急性高血糖症のリスクと関連なし、あるいは負の関連が認められた。・急性高血糖症はオランザピンの使用と関連していると思われるが、その影響は2つの大きなデータベースで確認されたにとどまった。・各抗精神病薬に関するPSSAの解析結果は、抗精神病薬、インスリンともに使用パターンはさまざまであったが、大半の国で質的には同程度であった。・PSSAと既存の方法との組み合わせは、多国間薬剤安全性モニタリングをさらにサポートする簡便かつタイムリーな方法になりうる可能性がある。関連医療ニュース 第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は・・・ 薬剤誘発性高プロラクチン血症への対処は? 第二世代抗精神病薬、QT延長に及ぼす影響:新潟大学

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うつ病や不安障害患者は、季節性の症状変化を実感!

 うつ病や不安障害患者は健常人に比べて季節性の変化を実感しやすく、とくに冬期に“気分の落ち込み”を感じる割合が多いことが、オランダ・フローニンゲン大学のWim H. Winthorst氏らによる調査の結果、明らかにされた。結果を踏まえて著者は、「医師は、季節が患者の健康 状態に影響を及ぼしうることを考慮に入れるべきである」と結論している。一般集団および精神疾患患者を問わず、気分や行動の季節的な変化は一般的と考えられている。しかしこれまでの研究では、この季節性があまり考慮されていない可能性があることから、Winthorst氏らは、気分や行動の季節性に焦点を絞った検討を行った。Depression and Anxiety誌オンライン版2013年5月21日号の掲載報告。 本研究では、うつ病患者(D)、不安障害患者(A)、うつ病と不安障害を併存している患者(DA)、健常対照(HC)について、本人の訴えによるうつ症状の季節性を検討した。オランダうつ病・不安障害患者研究(Netherlands Study of Depression and Anxiety:NESDA)に参加した2,168例について、国際比較診断用構造化面接(CIDI)によりDSM-IV分類に基づく診断を行った。気分および行動の変化は、Seasonal Pattern Assessment Questionnaire(SPAQ)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・2,168例のうち、53.5%が気分の季節性を報告した。・「気分の落ち込み」の割合が最も高かったのは冬期であった。・このパターンはすべての群でみられたが、D群、A群およびDA群では有意に季節性を実感しやすかった(p<0.001)。・活力、社会活動、睡眠、食欲、体重およびGlobal Seasonality Scoreにおいても、季節性の変化が認められた。・気分と行動の季節性変化はすべての群で認められたが、不安障害やうつ病(両方またはどちらかの)患者は、より季節性変化を実感しやすいことが示された。・なお本研究は、横断研究デザインという点で限界があった。関連医療ニュース ・低緯度地域では発揚気質が増強される可能性あり:大分大学 ・空中浮遊微粒子濃度は自殺企図・統合失調症増悪に影響を及ぼす ・うつ病治療にビタミンD投与は有用か?

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新知見!慢性期統合失調症患者では意志作用感が減退:慶応義塾大学

 意志作用感(sense of agency:SoA)とは、ある動作や思考などを他人ではなく自分の意志によって実行しているという感覚であり、統合失調症患者では、この意志作用感が障害されている。慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室神経心理学研究室の前田貴記氏らは、SoAを評価する統合フレームワークを用いて、陰性症状が残存している慢性統合失調症患者においてSoAが減退していることを初めて明らかにした。Psychiatry Research誌オンライン版2013年5月14日号の掲載報告。 統合失調症における自我障害(self disturbance)は同疾患の根源的な脆弱性のマーカーになると考えられるようになり、認知神経心理学的見地からの異常な意志作用感に関する研究が始まっている。統合失調症のSoA異常の特性を明らかにするためには、さまざまな臨床サブタイプおよびステージにおいて調査を行う必要がある。しかし、これまで陰性症状が残存している慢性統合失調症における調査は行われていなかった。 そこで本研究では、同タイプの統合失調症においてオリジナル作用特性タスクを用いてその特性を調べ、至適な手がかりを得るための統合フレームワークでSoAの予測コンポーネントと後付け(postdictive)コンポーネントとの間の動的相互作用を評価した。評価は、陰性症状が残存している統合失調症患者20例と、対照群として妄想型の統合失調症患者30例および健常ボランティア35例を対象に行われた。 主な結果は以下のとおり。・陰性症状が残存している統合失調症患者では、健常対照者や妄想型統合失調症患者と比較しSoAの顕著な減退が認められた。・陰性症状が残存している統合失調症患者で認められたSoAは、妄想型統合失調症患者でみられた過度のSoAと正反対の作用特性を示した。・SoAの減退は、統合失調症の実験的研究において初めて検出された。・統合フレームワークの適用により、これらの結果は、不十分な予測にもかかわらず、妄想型統合失調症では後付けコンポーネントが過度であったのとは対照的に、後付けプロセスの代償的寄与が増大しなかったことを示すものであった。関連医療ニュース 陰性症状改善に!5-HT3拮抗薬トロピセトロンの効果は? 統合失調症の陰性症状有病率、脳波や睡眠状態が関連か 精神疾患患者は、何を知りたがっているのか

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皮膚がんとの関連研究で判明!アルツハイマー病に特異的な神経保護作用

 米国・アルベルト・アインシュタイン医学校のRobert S. White氏らは、70歳以上住民ベースの縦断的追跡研究の結果、非悪性黒色腫皮膚がんの人は、同皮膚がんを有さない人と比べて、アルツハイマー病(AD)の発症リスクが有意に低いことを明らかにした。同関連は、ADが疑われる例や脳血管性AD、その他あらゆる認知症ではみられなかったことも示され、著者は「アルツハイマー病には特異的な神経保護が存在することが推察された」と報告している。Neurology誌オンライン版2013年5月14日号の掲載報告。 研究グループは、ニューヨーク市民対象のエイジング疫学研究「アインシュタイン・エイジング研究」において、非悪性黒色腫皮膚がん(NMSC)とADとの関連について調べた。対象は、70歳以上のボランティア住民で、年1回の評価と、多領域の医師による診断コンセンサスが続けられた。自己申告に基づき、がんの症状およびタイプの情報を入手し、Cox比例ハザードモデルを用いて、NMSCとその後に発症した認知障害リスクとの関連を調べた。また、ADとNMSCの生物学的特異的関連性を導き出すために、「AD限定群」(見込みあるいは可能性があると診断された症例)、「全AD群」(前記に加えて混合型AD/脳血管性認知症)、「全原因認知症群」の3つのネスティッドアウトカム群を設定して検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡を受けたのは、1,102人(登録時の平均年齢79歳)であった。・人口統計学的および高血圧、糖尿病、冠動脈疾患で補正後の被験者において、NMSC(被験者群で優勢であった)とAD限定群のリスク低下との有意な関連が認められた(ハザード比:0.21、95%CI:0.051~0.87、p=0.031)。・APOE ε4遺伝子型データが入手できた769例について、APOE ε4アレルの数をモデルに組み込んで分析した結果、有意ではなかったが同程度の強さの関連性が認められた。・一方、NMSCと全ADあるいは全原因認知症との有意な関連は認められなかった。・今回の住民ベースの縦断的追跡研究により、70歳以上のNMSC患者は、NMSCではない人と比べて、ADの発症リスクが有意に低いことが示された。・その他のAD(全AD)や全原因認知症と診断された非特異的ADでは、その関連性が減弱あるいは消失したことから、アルツハイマー病に特異的な神経保護が存在することが推察された。関連医療ニュース 日本人の認知症リスクに関連する食習慣とは? “重症にきび”はうつ病のリスク!? 睡眠障害と皮膚疾患、夜間のひっかき行動は睡眠ステージと関連

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アリピプラゾールと気分安定薬の併用、双極性障害患者の体重増加はどの程度?

 双極I型障害(BPD)患者は多くの場合太りすぎか肥満であり、メタボリックシンドロームを合併している可能性が高い。いくつかのBPD治療薬では、体重増加や代謝パラメータの悪化が認められる。米国・ケースウエスタンリザーブ大学のDavid E. Kemp氏らは、アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)と気分安定薬を併用した際のメタボリックシンドロームの発生率および代謝パラメーターの変化を調べた。Journal of affective disorders誌2013年5月15日号の報告。 BPD患者を対象とした52週間の長期試験における、アリピプラゾールと気分安定薬を併用した2つの有効性試験(リチウム/バルプロ酸試験、ラモトリギン試験)より代謝データを分析した。体重の変化、個々の代謝パラメーター、メタボリックシンドロームの発生率を評価した。 主な結果は以下のとおり。・リチウム/バルプロ酸試験では、両群ともに52週後のわずかな体重増加が認められた(リチウム/バルプロ酸単独群:1.7±0.8kg、アリピプラゾール併用群:1.6±0.7kg)。両群間に有意差はみられなかった。・ラモトリギン試験における52週後の体重増加は、ラモトリギン単独群で-2.2±1.0kg、アリピプラゾール併用群で0.4±1.0kgであった(ラモトリギン試験の試験完了率は低かった)。・両試験の結果において、アリピプラゾール併用群はベースラインと比較し、52週後のメタボリックシンドロームの発生率を増加させなかった。・個々の代謝パラメーターのベースラインからの変化量(中央値)においても、アリピプラゾール併用群は気分安定薬単独群と類似していた。・アリピプラゾールと気分安定薬の併用は、主に体重増加や肥満のBPD患者における代謝の変化への影響を最小限に抑えた。両試験の結果から、アリピプラゾールを併用することによるわずかな体重増加が、代謝パラメーターやメタボリックシンドロームの発症に及ぼす影響は小さいと考えられる。関連医療ニュース 統合失調症、双極性障害の急性期治療に期待!アリピプラゾール筋注製剤 双極性障害患者の長期健康状態の独立予測因子は肥満! 非定型抗精神病薬治療、忍容性の差を検証

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統合失調症、デポ剤と抗精神病薬併用による効果はどの程度?

 統合失調症治療の主な目標は、機能の向上である。しかし、第一世代抗精神病薬と第二世代抗精神病薬、あるいはデポ剤/持効性注射薬(D/LAI)とD/LAI+経口抗精神病薬との有効性の相違については明らかとなっていない。スペイン・Canary Health ServiceのFrancisco J. Acosta氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬の種類およびレジメンによる有効性の相違を検討した。その結果、第一世代抗精神病薬と第二世代抗精神病薬の間に相違はなく、D/LAIの抗精神病薬は経口抗精神病薬と併用せずに単独で使用するほうが統合失調症患者の機能向上に好ましいことを報告した。Nordic Journal of Psychiatry誌オンライン版2013年5月15日号の掲載報告。  本研究の目的は、種類の異なる抗精神病薬またはレジメンの、統合失調症患者の機能に対する有効性の相違を評価することである。対象は、前年の治療アドヒアランスが良好であり、経口抗精神病薬を併用または非併用のもとD/LAIの抗精神病薬による治療を受けている、統合失調症の外来患者85例。患者を、抗精神病薬の種類(第一世代vs. 第二世代)または経口抗精神病薬の併用の有無により群別し、社会人口統計学的特性、臨床的特性、治療関連、全体的重症度および機能について評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体的な機能において、第一世代抗精神病薬と第二世代抗精神病薬の間で相違は認められなかった。・リスペリドンLAI単独治療の患者は、リスペリドンLAIに第二世代経口抗精神病薬を併用している患者に比べ、全体機能、日常の社会活動における状態、個人と社会との関係が良好であった。・より良好な機能には、高学歴、統合失調症のパラノイドタイプ、ニコチンの有害な使用(harmful use)、経口薬のアドヒアランス、併用薬の経口抗コリン薬または精神薬理的学治療の欠如も関連していた。・以上から、より良好な機能を得るには、D/LAI抗精神病薬は可能な限り単独で使用すべきことが示唆された。また、これにより治療スケジュールもシンプルになるはずである。関連医療ニュース 統合失調症へのアリピプラゾール持効性注射剤、経口剤との差は? 統合失調症、双極性障害の急性期治療に期待!アリピプラゾール筋注製剤 どのタイミングで使用するのが効果的?統合失調症患者への持効性注射剤投与

2473.

精神疾患患者は、何を知りたがっているのか

 最近の精神疾患患者は、自身の疾患に関して情報過多の状況にある。しかしながら、精神疾患患者が知りたいと思う内容に関する系統的研究はほとんど行われていなかった。英国・ロンドン大学のClaudia Hallett氏らは、統合失調症および気分障害患者が自身の疾患に関して知りたいと思っている内容、情報収集の手段に関するインタビュー調査を行った。その結果、知りたい内容の第1位は「疾患の原因」であり、精神科医と1対1の対話の中で情報を得たいと思っている実態を明らかにした。Psychiatric Services誌オンライン版2013年5月15日号の掲載報告。 本研究は、統合失調症および気分障害の外来患者に、彼らが疾患について知りたいと思っている内容、およびどのようにして情報を得たいのかについて質問を行い、認識のギャップを調べた。2011年4月~2012年6月に、英国のイーストロンドン全域にある外来クリニックの精神疾患患者202例を対象に、探索的サーベイを実施した。対象者の内訳は、統合失調症または関連する障害(ICD-10コード:F20-F29)が106例、気分障害(同:F30-F39)が96例であった。通常の診察の後に、自由回答式と選択回答式の質問によるインタビューを実施し、自由回答式の質問は定性的に、選択回答式の質問は定量的に解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・3分の2を超える精神疾患外来患者(68%)が、疾患についてさらに学びたいと回答した。・学びたい内容は多様であったが、必要とする情報の第1位は「疾患の原因」であった。・大半の患者(統合失調症患者の92%、気分障害患者の84%)が精神科医と1対1の対話の中で情報を得たいと思っていた。・以上の結果を踏まえて著者は、「疾患に関する患者教育に万能なアプローチはない。医療従事者は各患者の学習の嗜好に敏感でいる必要がある。嗜好はさまざまなで、グループによるアプローチが必要になることもある。精神科医にはトレーニングが求められ、とくに患者が抱いている“疾患の原因に関する疑問”に対する回答を準備しておく必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症・双極性障害患者は「痛み」を抱えている 双極性障害の治療アドヒアランスを改善するには? 統合失調症に「サッカー療法」その効果は?

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日本語版・産後うつ病予測尺度「PDPI-R-J」を開発

 産後うつ病(PPD)は世界中でみられ、日本においては出産後1ヵ月間で約20%の母親が経験している。そこで、一次予防のために、妊娠中および出産後早期にリスクを特定するスクリーニング法が必要とされていた。東京大学の池田 真理氏らは、日本語版・産後うつ病予測尺度「Japanese version of the Postpartum Depression Predictors Inventory-Revised(PDPI-R-J)」を開発し、その予測妥当性を検証した。BMC Pregnancy and Childbirth誌オンライン版2013年5月14日号の掲載報告。 PDPI-R-Jの開発と、妥当性の検証(妊娠中と出産後1ヵ月におけるその予測妥当性)は、次のような方法にて行われた。 評価項目を開発するために、2人のバイリンガル翻訳者が、PDPI-Rを日本語に翻訳した。その後、翻訳をフィードバックし、オリジナル開発者とディスカッションを行い、語意の同等性を確認した。そのようにして開発したPDPI-R-Jについて、前向きにデザインしたコホートに適用し妥当性を検証する試験を行った。被験者は妊娠8ヵ月の妊婦84例であった。このうち76例が、出産後1ヵ月のPDPI-R-J評価も完了した。被験者は出産後1ヵ月時点で、軽度あるいは重度のうつ病が認められるか、精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を用いて診断された。この結果をROC曲線に描出し、PDPI-R-Jの予測能を評価した。 主な結果は以下のとおり。・出産後1ヵ月間にPDPI-R-J評価を完了した76例のうち、PPD診断基準に該当したのは16例(21%)であった。・妊娠中に行われたPDPI-R-J出産前版による、PPD予測は62.8%(95%CI:0.48~0.77)であった。出産後1ヵ月間に行われたPDPI-R-J出産後版による、同予測は82.0%(同:0.71~0.93)であった。・カットオフ値は、出産前版は5.5、出産後版は7.5であった。・新生児期に関する項目を含むPDPI-R-J出産後版は、PPDの予測妥当性を増大した(0.67~0.82)。・PDPI-R-Jの利用がある被験者からのコメントとして、「PDPI-R-Jの利用によって、うつ病の病歴やリスクについて研究者とオープンに語り合う機会が増えた」とあった。・以上から、著者は「PDPI-R-JはPPD予測に有用かつ有効なスクリーニングツールであることが明らかとなった。また、PPDには出産と新生児関連の因子が反映している可能性があり、出産前と出産後の両方のバージョンを連続的に適用することが必要である」と結論している。関連医療ニュース ・日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき ・抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮 ・うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける?

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明日の記憶【アルツハイマー型認知症】[改訂版]

「おれがおれじゃなくなっても平気か?」みなさんにとって、認知症の人にかかわるのは、大変なことでしょうか?それでは、認知症になった人自身はどんな気持ちなのでしょうか?私たちは、認知症ではないので、正直なところ、実体験はありません。ただ、想像を膨らませることはできます。そのために、今回、映画「明日の記憶」を取り上げます。主人公は、忘れていくことや分からなくなっていく中で、妻に訊ねます。「おれがおれじゃなくなっても平気か?」と。この映画は、認知症になり自分が自分でなくなってしまう恐怖と受容が、主人公の目線で描かれています。そんな主人公や彼を支える妻の生き様に、私たちは強く共感し、考えさせられます。それでは、認知症が進んでいく主人公の目から見た世界を追いながら、認知症について学んでいきたいと思います。前駆期―認知症の一歩手前主人公の佐伯は、49歳の広告会社のサラリーマン。働き盛りの中年というどこにでもいそうな男性で、そして舞台はどこにでもありそうな会社と家庭です。男として仕事に油が乗ってきているさなか、身の回りで今まで決してなかったことが次々と彼の身に降りかかります。まず、会社でのシーン。「え~名前、何て言ったかな・・・」「丸メガネで、髭生やした、ほら」と、別部署の親しい知人の名前が思い出せません(語健忘)。私たちも、人の名前を度忘れすることがありますが、それはあくまであまり親しくない人が相手の場合であり、親しい人の名前が思い出せないことはあまりありません。また、佐伯は広告会社の営業部長であるにもかかわらず、有名な外国人俳優の名前が出てこなくなります。部下から「(おっしゃりたいのは)ディカプリオ?」と聞かれて、「『デカ』プリオ」と言い間違え(錯語)、周りからからかわれてしまいました。さらに、佐伯は、会社の得意先との仕事の打ち合わせをすっぽかしてしまいます。しかもその約束をしたことすら覚えていない事態が起こったのです。こんなことは今までになく、「年のせいか」「50を迎えるというのはこういうことなのか」と考え、焦りと諦めが入り混じります(病識)。このように、年齢と比べて記憶力が極端に落ちてきている(記憶力低下)、自覚がある(病識)、その他の精神活動(認知機能)や日常生活動作(ADL)に問題がない状態(軽度認知機能障害<MCI>)は、認知症の一歩手前(前駆期)と呼ばれています。初期症状―認知症のなりかけ佐伯は、車のキーを置き忘れたり、通り慣れている高速道路の出口を見過ごしてしまうなど、ぼうっとすることが目立つようになります(抑うつ)。また、頭痛、めまい、だるさなどの体の不調もあり、いら立っています(不安焦燥)。これは、認知症のなりかけの特徴です(初期症状)。もちろん、過労や飲酒の影響もありそうです。また、うつ病と誤診されることもよくあります。そんな彼の異変を身近で見ていた妻は、さらに気付きます。彼は、毎回、シェービングクリームを買ったことを覚えておらず(健忘、記憶障害)、洗面所にいくつも貯め込んでいたのです。そして、心配した妻に連れられ病院に行きます。佐伯はサラリーマンとしてのプライドがあるだけに、診察した医者の前で何の問題もないように振る舞ってしまいます。しかし、認知症のスクリーニング検査(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)で、ついさっき聞いたことや見たことを思い出せないことが判明します(即時記憶障害)。この検査は30点満点で20点未満であれば認知症が疑われますが、主人公は19点でした(表1)。表1 主人公・佐伯の長谷川式の結果質問内容評価項目配点(1)お歳はおいくつですか?(※2歳以内までの誤差は正解)(2)今日は何年何月何日ですか?何曜日ですか?(3)ここはどこですか?家?、病院?、施設?の問いに正解したら1点。 時間見当識場所見当識1/14/42/2(4)次の言葉を言ってください。後でまた聞きますのでよく覚えておいてください。AかBのどちらかとする。A. (a)桜(b)電車(c)猫 / B. (a)梅(b)犬(c)自動車   言語性記銘   3/3(5)100から7を引いてください(100-7=?)。そこから7を引くと? (※最初の問題が不正解→打ち切り) 計算1/11/1(6)これから言う数字を後ろから(逆に)言ってください。2-7-4 ? 8-3-5-9 ? (※最初の問題が不正解→打ち切り)逆唱注意/集中1/11/1(7)先ほどの3つ言葉を言ってください。次のヒントで正解した場合はそれぞれ1点とする。(a)植物(b)乗り物(c)動物  遅延再生1/21/21/2(8)これから5つの品物を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください。例、ハンカチ、コイン、腕時計、ペン、名刺  視覚性記銘  2/5(9)野菜の名前をできるだけ多く言ってください。5つ以下→0点、 6つ→1点、7つ→2点、8つ→3点、9つ→4点、10つ→5点  流暢性  0/5合計点19/30悪い知らせ(告知)の伝え方―間(ま)と共感その後、精密検査が進められます。頭の中の画像写真(MRI)で記憶を司る海馬を中心とした全体的な脳の縮み(全般性脳萎縮)が見られます。さらに、脳血流の検査(SPECT)では、脳のある部分(後部帯状回)が著しく血の巡りが悪くなっていることが確認できました。日常生活上の問題(臨床症状)、スクリーニング検査、精密検査を総合的に判断の上、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)と診断されます。主治医は、「アルツハイマー病で間違いありません」と、裁判官が審判を下すように、険しい表情ではっきりと言います(審判的態度)。そして、矢継ぎ早に今後の方針を早口でまくしたてています。一般的に、患者は、悪い知らせ(告知)を聞いた時、2つのパターンの反応をします。ショックの余りに呆然として人ごとのようにして話を聞いていないパターンと(否認)、「どうしておれが!?」と込み上げた怒りで主治医に八つ当たりするパターンです(怒り)。この主治医の態度は佐伯の怒りを逆なでしているのが生々しく描かれています。佐伯は、主治医に「おまえいくつなんだ?」「医者になって何年になる?」「慣れちゃったんだよな」と絡んでいきます。主治医は、律儀に質問に答え、すかさず「セカンドオピニオンを勧めるのは・・・」と話を続けます。もしかしたら、主治医は緊張していたのかもしれません。その後、佐伯は、「病気のことは分かっても、それを言われる奴の気持ちのことなんて考えたことないだろ!」と吐き捨てます。この告知のシーンから学ぶことができるのは、まずは告知された時の患者の気持ちを受け止めることの大切さです(受容)。そのために、必要なことは、2つです。1つは、間(ま)を置くことです。「とても大切な話があります」「大変残念なのですが」と前置きをして相手に心の準備をさせたり、理解が進んでいるかを相手の表情を見ながら確認することです。もう1つは、共感することです。険しい表情をするのではなく、やや申し訳なさそうな表情をして、相手の心に寄り添うことです。受容と家族の支えアルツハイマー病と告知された後も、佐伯はその現実を受け止められず、あまりのショックで取り乱し、思わず屋上に上がりフェンスを越えて、衝動的に飛び降り自殺しようとします。なぜなら、会社で大きな仕事を任された大事な時期であり、そのギャップに耐えられなかったからです。一般的に、認知症の発病年齢は、70代です。つまり、自分の子どもが巣立ち退職年齢を過ぎてしばらく経ってからというタイミングです。佐伯のように65歳未満で発症した場合(若年性)は、単に年齢が若いというだけでなく、体力的には健康であり、仕事をし、家族の中でまだまだ中心的な役割を担っており、本人にとってまだやり残したことが多すぎるのです。やれると思っていたことが、少しずつやれなくなっていく恐怖や苦しみから絶望的になるのです。追いかけてきた主治医が佐伯に言い諭します。「死ぬということは、人の宿命です」「でもだからと言って何もできないわけではありません」「僕にはできることがある」「自分にできることをしたい」と。それは、同時に佐伯にも当てはまるメッセージでもありました。まさに「できること」が刻々と限られていく佐伯にとって、その瞬間、その瞬間を精一杯生きることが自分らしさであることに気付かせてくれます。「もし今までの自分が消えてしまうのなら、何かを残したい」と。若年性での発病ならではの発想です。生きた証が欲しいのです。佐伯は妻に問いかけます。「ゆっくり死ぬんだよ」「おれがおれじゃなくなっても平気か?」と。妻は「私だって恐い」「家族だもの」「私がずうっとそばにいます」と言い、寄り添います。夫婦など家族の支えの頼もしさを感じます。病気に対して一丸となって向き合うことで、夫婦の愛と絆を確認し合い、夫婦の結束が生まれ、主人公は勇気付けられます。中核症状―中核となる症状(表2)認知症には、まず、中核となる症状(中核症状)があります。これには、主に5つのポイントがあります。佐伯の症状を例にとって、見ていきましょう。1つ目は、もの忘れ(健忘、記憶障害)です。会社のロビーを歩いていた彼は急に立ち止まり、自分が何をしているのか見当がつかなくなります。そして、ポケットの中に入っていた「10月29日(金)退社」のメモで我に返るシーンがあります。今がいつでここがどこなのかという時間や場所の見当がつかなくなってきます(見当識障害)。進行すると、ある出来事の一部分ではなく、丸ごと忘れてしまいます(記憶の抜け落ち)。忘れている自覚(病識)がなく、つまり「忘れていることを忘れている」状態に陥っています。「忘れたことを覚えている」という度忘れやうっかり忘れ(不注意)ではないのです。そして、忘れる内容は、最近の出来事から(近時記憶障害)、徐々に昔へと遡っていくのです(遠隔記憶障害)。2つ目は、言葉がちゃんと出なくなり、うまく話せなくなることです(失語)。主人公は会話の中で、たびたび人やものの名前が出てこなくなり、指示も「あれ」「それ」などの代名詞が多くなっていきます(語健忘)。また、前述の「『デカ』プリオ(ディカプリオ)」に加えて、ラストシーンで登場する陶芸の師匠が発した「『パラ』ライス(パラダイス)」などの言い間違え(錯語)も当てはまります。症状が進めば、やがて無言になっていきます。3つ目は、体の動かし方が分からなくなることです(失行)。彼は、携帯ストラップの先のヒモを携帯電話の本体のヒモ穴に入れられず、不器用になっています(運動失行)。また、歯磨きの仕方が分からなくなり(観念失行)、妻の歯磨きのマネをしています。症状が進めば、やがて、動くことをやめて、寝たきりになります(無動)。4つ目は、人やものごとの認識ができなくなることです(失認)。前半のシーンで、彼が部下と行った食堂で、見慣れた部下たちの顔が一時的に分からなくなっています(相貌失認)。また、通勤で使う駅付近の見慣れた街並みに違和感を抱いて、迷子になります(街並み失認)。ちょうど私たちにとって外国人の顔や外国の街並み、外国語の文字の区別がしづらいように、全てが見慣れない顔や景色として目に映ってしまうのです。症状が進めば、顔、街並み、色彩、文字などのあらゆる違いが分からなくなっていき、人やものごとが全て同じように見えていきます。5つ目は、計画を立ててやり遂げられなくなること(実行機能障害)です。彼は、電車に乗って遠出するなどの計画を立てることが自分だけでは困難になっていました。表2 主人公・佐伯の認知症の経過軽度認知機能障害認知症前駆期初期中期後期年齢49歳~51歳~55歳~病識ありなし中核症状記憶力低下記憶障害(即時記憶→近時記憶→遠隔記憶)失語(語健忘、錯誤)失行(運動失行、観念失行)失認(相貌失認、街並み失認)実行機能障害無言寝たきり(無動)周辺症状なし抑うつ不安焦燥錯覚、幻覚、せん妄、徘徊、妄想、感情失禁、攻撃性、パーソナリティ変化ADL自立部分介助全介助周辺症状―中核症状から広がっていく症状(表2)もう1つの認知症の症状は、中核症状から広がっていく症状です(周辺症状)。これは、認知症が進むことにより、脳の働きが弱まるので、全ての精神症状が起こり得ます。佐伯の症状を例にとって、見ていきましょう。佐伯は、会社の会議でプレゼンをしている、ある部下の顔が白黒で見慣れない顔に歪んで見えてしまい(錯視、錯覚)、戸惑っています。また、会社内を歩いていると、急に、見えている世界が歪んでいきます。これは、脳の働きが弱まっていることで、意識(意識の量)が落ちていき、見ている世界が暗く、曇って、もやもや濁ってしまいやすくなる状態です(意識レベルの低下)。さらに、会社の人たちが全員自分を見て何やらヒソヒソ話しているように見えたり(錯覚)、いるはずのない妻や娘の婚約者が何人も出てきたり、高校生の娘や小学生の娘が現れて話しかけられたり、自分自身が現れ、話しかけられたりします(幻覚)。これは、意識レベルの低下から、意識(意識の質)が揺らいでまどろみ、寝ぼけたように白昼夢を見ているような状態です(せん妄)。主人公の目線で描かれているため、その時の恐怖感が生々しいです。★意識(意識の量)がさらに落ちていけば、意識を失うので、せん妄はなくなります。中期の症状佐伯は、認知症が発病して2年が経った51歳の頃から、さらに様々な症状が出てきます(中期の症状)。ネクタイを締めて「今日、会議あるから」と会社に行こうとして、近所をうろうろするようになります(徘徊)。その後、生活費のために妻が働き出しますが、彼は「お前、誰と会ってるんだ?外で」「誰かいい奴、いるんだろ」と妻に迫ります。これは嫉妬の思い込みです(嫉妬妄想)。そして、「こんな男でゴメンな」と泣きじゃくります(感情失禁)。やがて、彼は、表情も乏しくなり、目つきも変わっていきます。そして、妻の前でぼやきます。「邪魔だったら言ってくれよ」「なあ、オレ、生きてるだけで迷惑なんだろ」「オレの病気が嫌だったら出てけよ」と。それに妻がつい感情的に言い返すと、気が付いた時には、彼は角皿で妻の頭を殴り、流血させてしまっていたのでした(攻撃性)。このように、病状が進むにつれて、人格(パーソナリティ)そのものが変わってしまうのです(パーソナリティ変化)。治療―かかわり方のコツ佐伯は、進行を遅らせる抗認知症薬の内服を始めました(薬物療法)。また、日記をつけたり手先を使う陶芸をしたりするなどして、脳への刺激を高めています(認知症リハビリテーション)。妻が感情的に巻き込まれてしまったために、彼が暴力を振るってしまうシーンでは、彼と妻は家では2人きりで、感情的に巻き込まれるリスクがあることが分かります。このように、感情的に接すること、抱え込むことは、本人の感情を煽って病状を悪くさせるだけでなく、家族を心理的に追い込むことにもなることということがよく分かります。その直後に、妻は彼と自分自身に「あなたのせいじゃない」「あなたの病気がやったことなの」と冷静に言い聞かせようとします(客観化)。逆に言えば、かかわる家族が客観的になれるかで、本人の病状を落ち着かせられるかが変わってきます。本人ができるという自尊心が守られ、自分の居場所があると実感することで、暴力などの周辺病状が落ち着くのです。本人が戸惑わないように、家の至るところに張り紙をして、指示を分かりやすくすることも効果があります。「おれがおれじゃなく」なった瞬間佐伯は、かつて妻にプロポーズした思い出の陶芸の窯の場所に、昔の妻の幻覚に導かれながら彷徨い着きます。昔に過ごした場所は覚えており、思い出の場所まで辿りつくことができるのでした。そこには、若かりし頃の自分や妻の幻覚がいます。そこで再会を果たした陶芸の窯主の師匠も認知症を患っており、佐伯よりも認知症の症状が進んでいました。しかし、山小屋での独り暮らしを続け、陶芸のやり方は覚えています。そして、佐伯は師匠の指導を受け、野焼きで陶器を完成させます。熱せられて醸成された器は、あたかも血流の低下により縮んでしまった主人公の脳に重なり、施設での彼の寝たきりのシーンでは、その器には妻により温かいお茶が注がれているのが象徴的でした。師匠は力強く言い放ちます。「わしはボケてなんかおらんぞ」「そんなことはおれが決める!」「生きてりゃいいんだよ」と。そして、焚き火で焼いた玉ねぎを主人公に振る舞います。主人公が焼けた玉ねぎを丸ごと食べる様子は、自然に帰り素朴に生きる力強さや喜びに溢れています。それは、主人公がかつて勤めていた会社が求めていたようなスピード、効率、生産性が求められる世界とは真反対です。現代の情報化社会で求められている価値観に警鐘を鳴らしているようです。まるで、老いることへの現代の価値観が認知症の患者を作り上げ、彼らを追いやっているような感覚にさえ囚われてしまいます。そして、ついに捜索にやってきた妻を目の前にして、もはや妻が妻であると分からず、25年間連れ添った妻に対して自己紹介します。その姿は、妻にとってまさに彼が「おれがおれじゃなく」なった瞬間でした。さらに認知症が進んだことを物語っています。悲しくもありますが、同時にまた彼が妻を立ち止まって待っている様子からすると、それは、彼の心の中では妻との思い出が丸ごとなくなり、ちょうど妻に出会う若い頃に若返り、また一から好きになり始めているということをほのめかしているようです。経過―赤ちゃん返りこの映画では、月日が経つにつれて、佐伯が、精神的に少しずつ赤ちゃんに帰っていく様子が描かれています(赤ちゃん返り)。孫娘には、すでに遊びの主導権を握られています。庭に植えられた木を見つめているシーンは、まるで彼が植物に変わりゆくのを悟っているようにも見えます。日差しが心地良く、雨が嬉しいようです。アルツハイマー型認知症の原因ははっきりとは分かっていませんが、脳細胞の変性と言われ、一度発病すると脳細胞がどんどん死んでいき、それに従って脳は縮んでいきます。進行には個人差がありますが、生存年数はだいたい5年~10年です。彼の場合は、発病から6年で、55歳にして、ほぼ寝たきりになっていました(後期の症状)。傍らに、孫娘の成長の写真が飾られていますが、孫の成長と彼の病気の進行は、絶妙なコントラストになっています。写真に映る6歳の孫がピアノ発表会で生き生きとしているのに対して、安らかな表情でほとんど動かない彼はもはや眠り続ける赤ちゃんです。もう認知症が進むことに苦悩することもありません。「明日の記憶」というタイトルは逆説的です。私たちも主人公の立場に立ち、いろいろなことを忘れて行き、自分が忘れて行くという運命を受け止めた時に、最後に忘れてはならないものを考えさせられます。記憶とは、自分だけのものではありません。それは、自分と相手とを結び付け、さらには、分かち合い信頼し合うことを通して、自分が相手の中で生き続けるものでもあります。そして、その記憶こそが、「明日の記憶」であると言えるのではないでしょうか?1)「明日の記憶」(光文社文庫) 萩原浩 20072)「標準精神医学」(医学書院) 野村総一郎 2010

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統合失調症に「サッカー療法」その効果は?

 イタリア・パレルモ大学のGiuseppe Battaglia氏らは、精神疾患を有する患者について、QOLとスポーツパフォーマンス(SP)における“サッカープラクティス”の効果を調べる無作為化介入試験を行った。その結果、サッカーで身体を動かす介入プログラムが、統合失調症患者における抗精神病薬関連の体重増加を抑制することや、自己申告の健康関連の生活の質(SRHQL)やSPを改善可能であることが示されたと報告した。身体活動は誰にとっても健康のために重要であるが、とりわけ生活習慣が不健全となりがちな精神疾患を有する患者にとって重要である。研究グループは近年、重度の精神疾患患者の健康面を改善する手段としてサッカーに注目が集まっていることから本検討を行ったという。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2013年5月号(オンライン版2013年5月3日号)の掲載報告。 試験は、統合失調症とした診断された男性患者18例を対象とした。研究グループは被験者を無作為に、12週間にわたる週2回のサーカートレーニングセッションを受けるトレーニング介入群と、試験期間中にとくに定期的なスポーツ活動を行わない対照群に割り付け、試験期間前後に、身体測定、SRHQL、30m走の記録、ドリブルのスラロームテストを行い評価した。SRHQLは、SF-12質問票の身体・精神的スコアにて評価した。 主な結果は以下のとおり。・トレーニング期間終了後、介入群は体重とBMIがベースライン時より4.6%減少した。・一方で、対照群はベースラインから試験終了までに、体重、BMIが1.8%増大した。12週間後に、対照群は介入群と比較して体重が有意に増大したことが認められた(Δ=5.4%、p<0.05)。・トレーニング期間終了後、介入群のSF-12質問票スコアはベースラインと比べて、身体的領域については10.5%、精神的領域は10.8%改善したことが認められた。また、30m走とドリブルスラロームテストの記録も、対照群と比較した場合、ベースラインから介入後に有意な改善が認められた。・“サッカープラクティス”は、統合失調症患者の身体面および精神面の健康を改善することが示唆された。関連医療ニュース ・統合失調症患者とタバコ、どのような影響を及ぼすのか? ・この25年間で統合失調症患者の治療や生活環境はどう変わったのか? ・うつ病治療に「チューインガム」が良い!?

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高齢の遅発統合失調症患者に対する漢方薬の効果は?

 統合失調症の発症年齢には個人差があるが、遅発性および超遅発性の統合失調症に関する研究は不十分であり、治療のさまざまな問題点は未解決のままである。島根大学の宮岡 剛氏らは、認知機能障害のない超遅発性統合失調症様精神障害の高齢患者に対する抑肝散(TJ-54)単独療法の有効性と安全性を評価した。Phytomedicine : international journal of phytotherapy and phytopharmacology誌2013年5月15日号の報告。 本試験は、最近の超遅発性統合失調症様精神病のコンセンサス基準およびDSM-IV-TR診断基準の両方を満たす患者(平均年齢73.1±4.8歳)40例を対象としたオープンラベル試験。簡易精神症状評価尺度、臨床全般印象重症度(CGI-SI)、PANSSについて、ベースライン時と抑肝散(2.5~7.5g/日)投与4週間後のスコアの変化量を評価した。加えて、異常不随意運動は、Scale Simpson-Angus 錐体外路系副作用評価尺度、Barnesアカシジア尺度、異常不随意運動評価尺度(AIMS)にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・すべての患者において、精神症状の有意に高い改善が認められた(p<0.001)。・抑肝散の忍容性は良好であり、臨床的に有意な有害事象は認められなかった。・すべての異常な不随意運動に関するスコアは、抑肝散の投与前後で有意な差は認められなかった。・超遅発性統合失調症様精神病患者に対する抑肝散による治療は、有用かつ安全であることが示された。関連医療ニュース 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か?:藤田保健衛生大学 統合失調症治療にベンゾ併用は有用なのか? 統合失調症患者の社会的認知機能改善に期待「オキシトシン」

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統合失調症・双極性障害患者は「痛み」を抱えている

 統合失調症および双極性障害患者では非がん性疼痛の発生頻度が高いことが、米国・退役軍人ヘルスケアシステムのDenis G. Birgenheir氏らによる断面調査の結果、明らかになった。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究により、重度の精神疾患患者において十分な疼痛治療の障壁となりうる要因を調べる必要がある。同時に、慢性疼痛が精神疾患からの回復に与える影響についても調べる必要がある」と提言している。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2013年4月29日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症および双極性障害の患者における非がん性慢性疼痛の発生状況を評価することを目的に、退役軍人健康管理局(VHA)システム登録者を対象とした断面調査を行った。VHA治療記録から2008年にVHAサービスを受けた個人診療データを抽出し、重度の精神疾患(統合失調症、双極性障害)と慢性疼痛(関節炎、腰痛、慢性疼痛、片頭痛、頭痛、精神・神経性障害)との関連について、ロジスティック回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症および双極性障害を有する退役軍人は、有さない退役軍人と比べて、全体的に慢性疼痛を有する傾向が有意に高かった。オッズ比は、統合失調症を有する退役軍人が1.21、双極性障害を有する退役軍人が2.17であった。・上記の関連は、同一サンプルにおける、うつ病と疼痛の関連(オッズ比:2.61)よりもわずかであるが低かった。・特異的精神疾患との関連が最も強かった疼痛症状は、慢性疼痛、頭痛、心因性疼痛であった。関連医療ニュース ・検証!「痛み」と「うつ」関係は?:山口大学 ・「片頭痛の慢性化」と「うつ」の関係 ・慢性腰痛患者におけるオピオイド療法の効果はうつや不安に影響される

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初回エピソード統合失調症患者に対する薬物治療効果の予測因子は

 抗精神病薬による治療歴のない統合失調症患者において、薬物治療開始後6ヵ月間は臨床反応が一律ではないことが、フランス・INSERM 669(パリ第11大学とパリ第5大学)のC. Nordon氏らにより、明らかにされた。結果を踏まえて著者は、「初回エピソード患者における治療戦略は、回復の機会を逸することのないよう、症状の重症度と治療早期の臨床反応に注意すべきである」と結論している。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2013年4月18日号の掲載報告。 本検討は、抗精神病薬未投与の統合失調症患者の投与開始6ヵ月間の臨床反応の不均一性を調べること、およびアウトカムの予測因子を評価することを目的とした。フランス国内における467例の被験者を対象とし、6ヵ月間にわたって追跡した。臨床反応の軌跡は、臨床上の医師の印象による重症度(CGI-S)スコアを用いて、ベースライン、1、3、6ヵ月時点で測定し、潜在クラス成長分析(LCGA)を行い検討した。また、回帰モデルを用いて軌道の予測因子を特定した。 主な結果は以下のとおり。・被験者467例は、臨床反応によって5群に分類された。内訳は、迅速反応群(45例)、段階的反応群(204例)、症状軽度残存群(133例)、症状重度残存群(23例)、非持続的反応群(62例)であった。・6ヵ月間の臨床反応の予測因子は、ベースラインでのCGI-Sスコア(オッズ比[OR]:3.1、95%CI:2.1~4.4)と、陰性症状(同:1.5、1.2~1.9)であった。・段階的反応との比較における迅速反応の予測因子は、仕事を持っている(OR:2.5、95%CI:1.2~4.9)のみであった。関連医療ニュース ・抗精神病薬投与前に予後予測は可能か? ・統合失調症患者の再発を予測することは可能か? ・第一世代 vs 第二世代抗精神病薬、初回エピソード統合失調症患者に対するメタ解析

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脳卒中およびTIAのリスク評価に有効な新アルゴリズム「Q Strokeスコア」/BMJ

 英国・パーク大学のJulia Hippisley-Cox氏らは、脳卒中やTIA非既往の一般集団の同リスクを推定するための新たなアルゴリズム「Q Strokeスコア」を開発した。同スコアは、プライマリ・ケアで用いることを目的としたもので、従来のCHADS2などと比較検証した結果、より有効であることを報告した。特に抗凝固療法が必要となる可能性がある心房細動を有する患者においてリスクスコアを改善することが示された。今後は、プライマリ・ケアでの使用に値するのか費用対効果の検証が必要であるとまとめている。BMJ誌オンライン版2013年5月2日号掲載の報告より。初発脳卒中を定量化することを目的とした新たなアルゴリズム CHADS2やCHA2DS2VAScなどは統計学的モデルに基づいたものではなく、確立したリスク因子が少なく、脳卒中の絶対推定リスクを提供できるものではないことから、研究グループは、新たなリスクアルゴリズムの開発を試みた。 新たなアルゴリズムは、初発脳卒中を定量化することを目的としたもので、心血管疾患アルゴリズム「QRISK2」を参考にデザインした。 本検討では、新たに開発した「Q Stroke」について、(1)心房細動患者においてCHADS2およびCHA2DS2VAScスコアとの比較を行うこと、(2)脳卒中またはTIAを有さない一般集団においてフラミンガム脳卒中スコアと比較したパフォーマンスを調べることを目的とした。 アルゴリズムの開発は、全英QResearchデータベースにリンクしているイングランドとウェールズの451人の開業医(GP)のデータに基づき行われ、検証は同データベースから異なる225人のデータを用いて行った。 主要評価項目は、フォローアップ中のGPの脳卒中またはTIA発生の診断記録あるいは死亡診断記録とした。Q Strokeアルゴリズムは心房細動患者についても従来スコアよりも識別を改善 開発コホートには、25~84歳の350万人の患者、計2,480万人・年が組み込まれた。脳卒中イベント件数は7万7,578件であった。検証コホートには、25~84歳の190万人の患者、計1,270万人・年が組み込まれた。試験登録時に、脳卒中またはTIAの既往がある患者、経口抗凝固薬の処方記録がある患者は除外した。 リスク因子は、「自己申告の人種」「年齢」「性」「喫煙状態」「収縮期血圧」「血清総コレステロール/HDL比」「BMI」「冠動脈心疾患の家族歴(一親等60歳未満)」「タウンゼンドうつ病スコア」「高血圧症治療歴」「1型糖尿病」「2型糖尿病」「腎疾患」「関節リウマチ」「冠動脈心疾患」「うっ血性心不全」「心臓弁膜症」「心房細動」の有無とした。 結果、Q Strokeアルゴリズムにより、脳卒中非既往の女性では57%、男性では55%の生存データに関する変動が示された。 D統計値は、女性2.4、男性2.3で、識別が改善されたことが明らかになった。 脳卒中非既往患者においてフラミンガムスコアと比較して、QStrokeはすべての識別および検定において改善が示された。 心房細動患者においては、QStrokeの識別能は低かったが、CHADS2およびCHA2DS2VAScよりもすべての識別指標についてパフォーマンスの改善が示された。

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