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統合失調症の正確な早期診断のためには

 統合失調症では早期の正確な診断と治療が、患者に長期的な利益をもたらすとされている。英国・Enhance Reviews社のKarla Soares-Weiser氏らは、診断ツールとしてFirst Rank Symptoms(FRS)が有用であるかどうか、その診断精度についてレビューした。その結果、FRSの統合失調症の識別能は75~95%であること、トリアージでの使用においては100例につきおよそ5~19例に誤った診断が下る可能性があることや診断感度は60%であることなどを報告した。結果を踏まえて著者は、「FRSに依存すると治療の遅れや中断などが生じる可能性があるが、現状では、臨床症状のばらつきが大きな疾患に対する簡便、迅速かつ有用なツールである」と述べている。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2015年1月25日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症におけるFRSの診断精度を調べるため、非器質性精神症状を有すると思われる成人および青少年についての専門家(精神科医、看護師、ソーシャルワーカーなど)による診断歴や検査結果を照合した。ICDやDSMといった診断基準やチェックリスト使用の有無は問わなかった。MEDLINE、EMBASE、PsycInfo using OvidSPを介して、2011年4、6、7月と2012年12月に該当文献を検索、2013年12月にMEDIONの検索も行った。QUADAS-2を用いて、バイアスリスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・21試験、被験者6,253例(うち解析に包含したのは5,515例)を解析に組み込んだ。試験は1974~2011年に行われたもので、うち80%は1970年代、80年代または90年代に行われた試験であった。・大半の試験で、試験方法の報告が不十分であった。また多くに、適用可能性に関する強い懸念があった。・FRSが統合失調症とその他疾患を識別した感度は57%(50.4~63.3%)、特異度は81.4%(74%~87.1%)であった(20試験)。・また、FRSが統合失調症と非精神病性精神障害とを識別した感度は61.8%(51.7~71%)、特異度は94.1%(88~97.2%)であった(7試験)。・FRSが統合失調症とその他タイプの精神疾患を識別した感度は58%(50.3~65.3%)、特異度は74.7%(65.2~82.3%)であった(16試験)。・以上、分析に組み込んだ試験は過去のものが多く質的に限定的であるが、当時の時点で、FRSが統合失調症の人を正しく特定した割合は75~95%であった。・トリアージにおけるFRSの使用は、100例につき5~19例については統合失調症を有すると誤った診断をする(専門家はその診断に同意しない)可能性が示された。それでもなお、これらの人々は、専門家の評価を受けることが適当であったり、行動や精神状態の重度の障害により援助の対象となる可能性があった。・また、FRSの診断感度は60%であった。すなわちトリアージでFRSを参照することで、約40%の人(専門家は統合失調症であるとみなしているが)については誤った診断が下る可能性があった。トリアージでFRSに依存して統合失調症の診断を行った場合、適切な治療を受けることが遅れたり、早期に治療が中断される人が出る可能性があった。・そうしたエラーを回避するためには、FRSの限界を知ったうえで使用する必要がある。・今後のコクランレビューで、新たな試験のより良い結果が示されることが望まれる。しかし、新たな試験がない場合でも、FRSは統合失調症が疑われる人の初回スクリーニングでは、なお有用と考えられる。・現状ではFRSは、ばらつきの大きな疾患における簡便、迅速かつ有用な臨床指標である。関連医療ニュース 統合失調症患者を発症前に特定できるか:国立精神・神経医療研究センター 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか 抗精神病薬の種類や剤形はアドヒアランスに影響するのか  担当者へのご意見箱はこちら

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抗精神病薬の種類や剤形はアドヒアランスに影響するのか

 抗精神病薬のアドヒアランスは統合失調症の治療成績向上に寄与するが、アドヒアランス行動に最も影響している要因についてのコンセンサスはない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのKyra-Verena Sendt氏らは、その要因を特定すべくシステマティックレビューを行った。対象論文の選定は方法論的に難しく、多くの研究が小規模であり、アドヒアランス率も大きく異なっていたが、いくつかの要因について知見が得られた。著者らは、「この分野の研究では横断的デザインが広く用いられているが、臨床的に意義のある枠組みを提示するためには自然主義的で長期にわたる大規模な前向き研究を優先的に行うべきである」とまとめている。Psychiatry Research誌2015年1月号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症スペクトラム障害の薬物療法に対するアドヒアランスに関与する要因を特定する目的でアドヒアランス、抗精神病薬、統合失調症に関する論文を検索し、方法論的に厳密な研究を適格とした。計13件(6,235例)の観察研究データがレビューに組み込まれた。 主な結果は以下のとおり。・報告されたアドヒアランス率は、47.2~95%と大きく異なっていた。・薬物療法に積極的に取り組む姿勢および病識が、より良好なアドヒアランスと一貫して関連する唯一の要因であった。・社会人口統計学的特性、症状の重症度、副作用とアドヒアランスとの関連については、矛盾した結果が得られた。・個別の治療関係、若年者における社会的支援は、良好なアドヒアランスと関連していた。・抗精神病薬の種類や剤形、神経認知機能はアドヒアランスに影響しないことが示唆された。関連医療ニュース 調査:統合失調症患者における抗精神病薬の服薬状況 持効性注射剤のメリットは?アドヒアランスだけではなかった アリピプラゾール持効性注射薬の安全性は  担当者へのご意見箱はこちら

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うつ病患者の疲労感を評価する新ツール

 疲労は、大うつ病性障害(MDD)における最も顕著な症状の1つである。米国・Evidera社のLouis S. Matza氏らは、MDD患者の疲労とその影響を評価する質問票「Fatigue Associated with Depression Questionnaire(FAsD)」およびその改訂版(FAsD-V2)の内容の妥当性を評価するため、検討を行った。その結果、概念を引き出すためのフォーカスグループ法、認知インタビューなどから、FAsDおよび FAsD-V2の内容の妥当性を支持する結果が得られたことを報告した。The Patient誌オンライン版2015年1月23日号の掲載報告。 研究グループは、MDD患者における疲労とその影響を評価するために開発されたFAsDおよびFAsDバージョン2(FAsD-V2)の妥当性について、質的研究を実施した。米国全土のクリニックから登録された患者を対象とした。質的研究は、3期で構成され、第I期では概念を引き出すためフォーカスグループ法を行い、続いて認知インタビューを実施。第II期では、より的を絞った対象で第I期と同様の方法で調査を行った。第III期では、第II期以降に加えられた細かい修正が質問票の包括性に変化をもたらすか否かを調査するため、認知インタビューを行った。概念抽出に際しては、患者の疲労とその影響に対する認識に焦点を当て、認知インタビューでは質問票における理解、明確性、妥当性、包括性に焦点を当てた。データは半構造的ディスカッションガイドを用いて収集。テーマ分析を行い、浸透度を検討した。 主な結果は以下のとおり。・MDD患者98例を対象とした。・第I期、第II期の概念抽出における患者の発言は、作成された項目とその内容を支持するものであった。・認知インタビューでは、的を絞った集団における質問票の妥当性が支持され、指示、項目、回答の選択肢、想起期間に対する患者の理解が良好であることが示された。・FAsD-V2に対する細かい指示の変更は質問票の解釈に影響しなかった。 ・今回の質的研究では、FAsDおよび FAsD-V2の内容の妥当性を支持する結果が示された。これまでの量的精神測定分析の結果を、さらに強めるものであった。関連医療ニュース うつ寛解のポイントは疲労感 うつ病治療、概念や診断方法の相違が課題 うつ病診断は、DSM-5+リスク因子で精度向上  担当者へのご意見箱はこちら

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抗精神病薬の有害事象との関連因子は

 抗精神病薬は統合失調症およびその他の精神障害に広く処方されているが、一方で有害事象およびアドヒアランスへのネガティブな影響が共通して認められる。しかしこれまで、有害事象の発現率やマネジメントに注目した検討はほとんど行われていなかった。英国・エディンバラ大学のSu Ling Young氏らは、抗精神病薬の有害事象の発現率およびマネジメントについて系統的レビューを行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2014年12月16日号の掲載報告。 研究グループは本検討で、抗精神病薬の9種の臨床的に重要な有害事象の発現率とマネジメントについてレビューした。9種は、錐体外路症状、鎮静作用、体重増加、2型糖尿病、高プロラクチン血症、メタボリックシンドローム、脂質異常症、性機能障害、心血管への影響であった。事前に検索基準を特定し、3つのデータベースの検索と引用・参考文献の手動検索でシステマティックレビューを行った。2人の研究者が要約または全文をレビュー後、包含基準について合意を得た。包含した論文の質的評価は、事前に同意確認した基準を用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・合計53試験が、包含基準を満たした。・有害事象の発現頻度の増大は、抗精神病薬の多剤投与と関連していた。・投与期間の長さは、有害事象の重症化(例:BMI値が高値)と関連していた。・クロザピンは、3試験におけるその他抗精神病薬との比較において、代謝障害との関連がより強かった。・オランザピンは、3試験で体重増加と最も関連していた。・高プロラクチン血症は、男性よりも女性で一般的であった。・性機能障害は男性が50%に対し女性は25~50%であった。・臨床ガイドラインの推奨にもかかわらず、脂質および血糖値のベースラインでの検査率は低率であった。・7試験で有害事象のマネジメント戦略が述べられていたが、その有効性について調べていたのは2試験のみであった。そのうち1試験は、非投薬の集団療法により体重の有意な減少を、もう1試験はスタチン療法により脂質異常の有意な減少を認めた。・総括すると、抗精神病薬の有害事象は多様でしばしばみられる。しかし、系統的評価は多くない。・有害事象マネジメントに関する科学的研究を、さらに行う必要性がある。関連医療ニュース 最新、抗精神病薬の体重増加リスクランキング 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか  担当者へのご意見箱はこちら

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温泉療法でうつや睡眠も改善

 12日間の温泉治療プログラムにより、健康な高齢者の疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態が有意に改善したことが示された。スペイン・ハエン大学のPedro Angel Latorre-Roman氏らが、52例の高齢者を対象に試験を行った結果、報告した。Psychogeriatrics誌オンライン版2014年12月16日号の掲載報告。 検討は、スペイン国内の複数の地域から高齢者52例を集め、政府機関Elderly and Social Services(IMSERSOとして知られる)が作成した水治療(hydrotherapy)プログラムに参加してもらい評価を行った。参加者に、12日間の温泉治療プログラムを提供し、疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態について評価した。疼痛は視覚的アナログスケールを用いて、気分状態はProfile of Mood Statusを用いて、睡眠はOviedo Sleep Questionnaire、抑うつ状態はGeriatric Depression Scaleを用いて評価した。 温泉治療プログラムは、スペイン・ハエンにある温泉付きホテルBalneario San Andresで行われた。同温泉は、スペインミネラル水ハンドブックによると、低温(20℃以上)に分類され、重炭酸塩、硫酸塩、ナトリウム、マグネシウムを豊富に含む中硬水のアルカリイオン水であった。 主な結果は以下のとおり。・参加者52例の内訳は、男性23例(年齢69.74±5.19歳)、女性29例(同:70.31±6.76歳)であった。・温泉療法は、全被験者のすべての変数(疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態)を有意に改善した(p<0.05)。・疼痛の改善については性差がみられた。治療後、男性では有意な改善(p<0.01)がみられたが、女性ではみられなかった。・気分状態の改善についても性差がみられた。女性では抑うつ症状と疲労感の両者で有意な改善(p<0.05)がみられたが男性ではみられなかった。・12日間の温泉治療プログラムは、健康高齢者の疼痛、気分、睡眠の質、抑うつ状態にポジティブな効果をもたらすことが示唆された。関連医療ニュース うつ病患者で重要な食事指導のポイント うつになったら、休むべきか働き続けるべきか ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか  担当者へのご意見箱はこちら

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いま一度、ハロペリドールを評価する

 ハロペリドールは世界中で最も高頻度に使用されている抗精神病薬の1つである。過去の解説的(narrative)非システマティックレビューにより、さまざまな第一世代(従来型、定型)抗精神病薬との間に有効性の差がないと報告され、それに基づき「各種第一世代抗精神病薬の有効性は同等である」という根拠のない精神薬理学的な仮説が確立され、テキストや治療ガイドラインに組み込まれている。しかし一方で、仮説は臨床で受ける印象と相反する面があり、質の高いシステマティックレビューの実施が強く求められていた。ドイツ・ミュンヘン工科大学のMarkus Dold氏らは、ハロペリドールの有効性、受容性、忍容性を他の第一世代抗精神病薬と比較するため、メタ解析を実施した。その結果、ハロペリドールにおいてアカシジアの発現が少なかったことを除き、統計学的な有意差は確認されなかった。ただし、「解析対象となった臨床試験はサンプルサイズが小さく、方法論的に質が低いものであった。明確な結論を得るには質の高い臨床試験が必要である」と指摘している。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2015年1月16日号の掲載報告。 本検討では、2011年10月、2012年7月に、CINAHL、BIOSIS、AMED、EMBASE、PubMed、MEDLINE、PsycINFOなどの標準的なデータベースに基づいてCochrane Schizophrenia Group's Trials Registerおよび臨床試験登録を検索。より関連の深い出版物を特定するため、該当する全試験の参考文献を選別し、ハロペリドールを販売している製薬会社に問い合わせ、より関連の深い試験や特定された研究における欠測データに関する情報を取得した。さらに、欠測データを調べるため全対象試験の筆頭著者に連絡を取った。検索対象は、統合失調症および統合失調症様精神病に対し、経口ハロペリドールと他の経口第一世代抗精神病薬(低力価の抗精神病薬、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、レボメプロマジン、メソリダジン、ペラジン、プロクロルプロマジン、チオリダジンを除く)を比較したすべての無作為化対照試験(RCT)とした。主要アウトカムは、治療に対する臨床的に重要な反応とした。副次的アウトカムは全身状態、精神状態、行動、全体的受容性(理由を問わず、早期に試験を脱落した被験者の人数により判定)、全体的有効性(治療無効による症例減少で判定)、全体的忍容性(有害事象による症例減少で判定)、特異的な有害事象とした。 主な結果は以下の通り。・63件のRCT、被験者3,675例がシステマティックレビューに組み込まれた。・ハロペリドールの比較薬として多かったのは、ブロムペリドール(9例)、ロキサピン(7例)、トリフロペラジン(6例)であった。・対象となった試験は1962~1993年に公表されたもので、サンプルサイズが小さく(平均被験者数58例、範囲:18~206例)、事前に規定されたアウトカムの報告が不完全なものが多数あった。・主要アウトカムの結果はすべて、質が非常に低い、あるいは質の低いデータに基づくものであった。・多くの試験において、ランダム化、割り付け、盲検化の手順が報告されていなかった。・短期試験(12週以内)において、ハロペリドールと他の第一世代抗精神病薬群との間に、主要アウトカム(治療に対する臨床的に重要な反応)に関する差は認められなかった(40件、2,132例、RR:0.93、CI:0.87~1.00)。・中期試験において、ハロペリドールの有効性は他の第一世代抗精神病薬群に比べ小さいものであったが、このエビデンスは1件の試験に基づくものであった(1件、80例、RR:0.51、CI:0.37~0.69)。・エビデンスは限られていたが、ハロペリドールは他の抗精神病薬に比べ陽性症状を軽減した。・全身状態、他の精神状態アウトカム、行動、理由を問わない試験からの早期脱落、無効による早期脱落、有害事象による早期脱落において群間差は認められなかった。・唯一認められた統計学的有意差は特異的な副作用で、ハロペリドールは中期試験においてアカシジアの発現が少なかった。・メタ解析による結果は、第一世代抗精神病薬と同等の有効性を示唆してきた過去の解説的な非システマティックレビューの見解を支持するものであった。・有効性関連のアウトカムにおいて、ハロペリドールと他の効果の高い第一世代抗精神病薬との間の差異を示す明らかなエビデンスはなかった。・ハロペリドールのリスクプロファイルは他の第一世代抗精神病薬と同様であった。関連医療ニュース 鎮静目的のハロペリドール単独使用のエビデンスは蓄積されたのか 急性期統合失調症、ハロペリドールの最適用量は ブロナンセリンの薬理学的メカニズムを再考する  担当者へのご意見箱はこちら

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アリピプラゾール持効性注射薬の安全性は

 米国・大塚製薬のArash Raoufinia氏らは、統合失調症患者に対するアリピプラゾール月1回投与(アリピプラゾール持効性注射薬400mg:AOM400)の導入について、薬物動態学的(PK)データ、PKシミュレーションおよび臨床試験を概説し発表した。すべてのデータ所見は、統合失調症患者へのAOM導入時の投与量は400mgとすることを支持するものであり、すでに経口アリピプラゾールを服用し症状が安定している患者への導入の有効性、安全性、忍容性が確認されていることなどを報告した。Current Medical Research & Opinion誌オンライン版2015年1月14日号の掲載報告。 概説は、薬物動態学的(PK)試験データ、PKシミュレーションデータ、対照臨床試験および自然主義的研究のデータを対象としたものであった。 主な結果は以下の通り。・PKデータは、AOMの開始および維持用量について400mgを支持するものであった。・AOM400開始後のアリピプラゾールの血中濃度プロファイルは、経口アリピプラゾール10~30mg/日投与と一致していた。・PKシミュレーションおよび単剤投与臨床試験は、AOM400導入後7日間でアリピプラゾールの血中濃度が治療域に達することを示した。・患者間にばらつきがあったが、経口アリピプラゾールまたはその他抗精神病薬を服用時は、確実に治療域に達するのに必要と思われた重複期間は14日間であった。・臨床試験において、AOM400導入患者が経口アリピプラゾール(10~15mg/日で安定)を併用している場合、またはその他の抗精神病薬の継続服用が14日以内の場合は、4週間後に(平均血中濃度93~112ng/mL)、規定されているアリピプラゾールの治療濃度域(94.0~534.0ng/mL)に達した。・同じく臨床試験において、AOMの開始用量は400mgが有効であり忍容性が良好であった。・期間やデザインが異なる試験を包含して分析した結果、1,296/1,439例(90.1%)の患者がAOM400で開始し、用量の変更を必要としていなかった。・また同分析で、効果が認められず試験を中断したAOM400治療患者の割合は低かった(範囲:2.3~10.0%)。・自然主義的研究の事後解析では、AOM400開始前にその他経口抗精神病薬から経口アリピプラゾールに切り替える(cross-titration)場合、1週間超~4週間の期間が、1週間以内よりも忍容性が良好であった。このことは、切り替え期間中の有害事象発生による中断率の割合が低い(2.7%[7/239例] vs. 10.4%[5/48例])というエビデンスで支持されるものであった。・主要な維持療法試験におけるAOM400開始月の有効性および安全性は、経口アリピプラゾール10または30mg服用の患者集団と類似したものであった。・以上のように、PKデータ、PKシミュレーション、臨床試験からの所見はすべて、統合失調症患者への適切なAOM導入用量は400mgであることを示していた。・AOM導入前に経口アリピプラゾールに切り替える際、経口アリピプラゾール用量を漸増(目標用量10~30mg/日)する一方でそれまでの経口抗精神病薬を漸減するにあたっては、期間を1週間超~4週間とするのが有効な戦略と思われた。・AOM400の有効性、安全性、忍容性は、患者がすでに経口アリピプラゾール10または30mg/日服用もしくはその他の抗精神病治療で安定していたか否かにかかわらず、また同一の経口抗精神病薬をAOM400導入後14日間継続していた場合でも、類似したものであった。関連医療ニュース アリピプラゾール注射剤、維持療法の効果は アリピプラゾール経口剤⇒注射剤への切り替え、その安全性は 統合失調症患者の突然死、その主な原因は  担当者へのご意見箱はこちら

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重症うつ病と双極性障害の関係:徳島大

 重症うつ病は、双極性障害(BD)へと診断が変わるリスク因子の可能性がある。また精神病性うつ病(PD)は、BDと一貫した関連が認められる。徳島大学の中村 公哉氏らは、重症うつ病を有し初回入院した患者の、BDのリスクと精神病性特徴を調べ、重症うつ病診断の安定性、およびPDと非PDとの違い、さらに電気痙攣療法(ECT)の効果について検討した。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2014年12月22日号の掲載報告。 2001~2010年に、重症うつ病(ICD-10に基づく)で入院した、精神病症状あり/なしの患者について、後ろ向き評価で検討した。被験者は89例で、平均年齢は55.6(SD 13.9)歳であった。 主な結果は以下の通り。・フォローアップ評価75ヵ月の間に、患者11例(12.4%)がBDを発症した。そのうち9例は、入院後1年以内の発症であった。・BD発症と有意に関連していたのは、閾値下の軽躁症状のみであった。・うつ病エピソード数や身体疾患歴は、PD患者との比較において非PD患者で有意に多かった。一方でECTの実施は、非PD患者よりもPD患者で有意に多かった。・入院期間の長さと、入院からECT実施までの日数には、有意な関連が認められた。・閾値下の軽躁症状は、とくに抗うつ薬の服用に慎重な高齢患者において、BDの前駆症状や顕性フェノタイプの指標となりうる可能性があった。・重症うつ病において、しばしば非PDは身体疾患が続いて起こり、PDを有する患者よりも再発が多く、それが“プライマリな”障害となり、ECTを要する頻度が高いと思われた。・ECTは、精神病性特徴を問わず重症うつ病には有効であった。ECTは早期であればあるほど、治療アウトカムが良好となることが予想された。関連医療ニュース うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける? 双極性障害とうつ病で自殺リスクにどの程度の差があるか  担当者へのご意見箱はこちら

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抗精神病薬は脳に委縮などのダメージを与えるのか

 最近のデータで、抗精神病薬治療と統合失調症患者における皮質灰白質減少との関連が示され、抗精神病薬の脳の構造・機能へのダメージに関する懸念が生じている。しかし、統合失調症患者個人の皮質機能を直接測定し、抗精神病薬に関連する灰白質の減少を示した研究はこれまで行われていなかった。米国・カリフォルニア大学のTyler A. Lesh氏らは、初回エピソード統合失調症患者を対象としたケースコントロール横断研究を実施し、抗精神病薬が脳の構造と機能に及ぼす影響を検討した。その結果、抗精神病薬による治療を行った患者は、行わなかった患者に比べ前頭葉皮質の有意な菲薄化が認められたが、前頭葉機能の活性亢進ならびに行動パフォーマンスの上昇がみられたことを報告。有害な影響ばかりではなく認知機能の改善に働く可能性を示唆した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年1月14日号の掲載報告。抗精神病薬は脳委縮などのダメージと関連したが脳機能の活性とも関連した 研究グループは、初回エピソード統合失調症患者における抗精神薬の脳構造および脳機能に及ぼす影響について、皮質厚測定ならびに事象関連機能的MRIによるAXバージョンContinuous Performance Task(AX-CPT)を用いて検討した。2004年11月から2012年7月までに、カリフォルニア大学デービス校のImaging Research Centerにてケースコントロールによる横断的調査を実施。被験者は、初回エピソード統合失調症に特化した外来診療部Early Diagnosis and Preventive Treatment Clinicより収集した。 抗精神病薬を投与している初回エピソード統合失調症患者(抗精神病薬群)(23例)、抗精神病薬を投与していない患者(非抗精神病薬群)(22例)、健常対照群(37例)に対し、1.5-Tスキャナーを使用した機能的MRIを実施した。行動パフォーマンスを測定し(タスク実施の正確性、反応時間、d'-contextスコアによる)、またVoxelwise統計的パラメトリックマップによりAX-CPT実施中の脳機能活性の差異を検査し、皮質厚のvertexwiseマップにより全脳域にわたる皮質厚の差異を検査した。 抗精神薬の脳に及ぼすダメージについて検討した主な結果は以下の通り。・抗精神病薬群では、前頭葉(平均減少値[MR]:0.27mm、p<0.001)、側頭葉(同:0.34mm、p=0.02)、頭頂部(同:0.21mm、p=0.001)、後頭部(同:0.24mm、p=0.001)の大脳皮質各部において、対照群に比べ有意な皮質の菲薄化が確認された。・非抗精神病薬群と対照群の間で、クラスタ補正後の皮質厚に有意差は認められなかった。・抗精神病薬群は非抗精神病薬群と比べ、背外側前頭前皮質(DLPFC)(MR:0.26mm、p=0.001)、側頭皮質(同:0.33mm、p=0.047)において皮質の菲薄化が認められた。・抗精神病薬群、非抗精神病薬群とも、対照群と比べAX-CPT実施中DLPFC活性の減少が認められた(対抗精神病薬群p=0.02、対非抗精神病薬群p<0.001)。・ただし、抗精神病薬群は非抗精神病薬群と比べDLPFCの活性が高く(p=0.02)、行動パフォーマンスも高かった(p=0.02)。・抗精神病薬治療と脳の構造面、機能面、そして統合失調症に繰り返し認められる行動面での欠陥との関係が明らかになった。・抗精神病薬による短期治療は前頭葉の菲薄化と関連していたが、認知機能の改善および前頭葉の機能活性との関連も認められた。・本知見は、抗精神病薬の脳に及ぼす影響に関して増えている研究論文に重要な流れを与え、脳の神経解剖学的変化が脳機能に対し有害な影響を与える可能性があるという解釈への警告を示唆するものであった。関連医療ニュース 若年発症統合失調症、脳の発達障害が明らかに 抗精神病薬が脳容積の減少に関与か 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか  担当者へのご意見箱はこちら

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抗コリン薬は高齢者の認知機能に悪影響

 高齢者、とくに認知症を有している場合は抗コリン薬の有害な影響を受けやすい。オーストラリア・ニューカッスル大学のKaren E. Mate氏らは、高齢者における抗コリン薬処方の実態とそれに関連する患者背景因子を調査した。その結果、認知症を有する例は、認知症を有していない例に比べて薬剤数が有意に多く、抗コリン薬負荷が有意に高いことを報告した。そのうえで著者は、「抗コリン薬の有害な影響を考慮すると、認知症患者に対する抗コリン薬処方について改善の余地がある」と示唆した。Drugs & Aging誌オンライン版2015年1月8日号の掲載報告。 本研究では、オーストラリアの地域在住高齢患者(75歳以上)を対象に抗コリン薬の処方頻度、ならびに抗コリン薬負荷状況とその予測因子を調査した。リサーチナースが被験者1,044例それぞれの自宅を訪問し、服用中の薬剤リストを作成し、改訂版Cambridge Examination for Mental Disorders of the Elderly(CAMCOG-R)を用いて認知機能を評価した。各患者の抗コリン薬負荷状況はAnticholinergic Drug Scale(ADS)により判定した。主な結果は以下の通り。・多変量解析により、抗コリン薬高負荷に関連する患者背景因子として、多剤併用(5種類以上の薬剤服用)(p<0.001)、加齢(p=0.018)、CAMCOG-Rによる認知症の判定(p=0.003)、うつ病(p=0.003)、身体的QOL低下(p<0.001)などが特定された。・認知症グループ(86例)は、認知症を有していないグループ(958例)に比べ薬剤数が有意に多く(4.6 vs. 3.9、p=0.04)、抗コリン薬負荷が有意に高かった(1.5 vs. 0.8、p=0.002)。 ・認知症グループの約60%、認知症を有していないグループの約40%が、少なくとも1種類の抗コリン薬の投与を受けていた。この差は認知症を有するグループが、抗コリン薬の作用強度がレベル1(潜在的抗コリン作用)(p=0.002)とレベル3(著しい抗コリン作用)(p=0.005)の薬剤を服用していた割合が高かったことによるものであった。・高齢者、とくに認知症を有する例では、薬剤処方に際し改善の余地が大きいことが判明した。・著者は、「重要なことは、レベル1の抗コリン薬が認知症患者の抗コリン薬負荷に寄与する重大な因子であることが判明したことである。認知症患者における抗コリン薬負荷の増減が認知機能、および他の臨床的アウトカムに与える影響を明らかにするため長期的な調査が必要である」とまとめている。関連医療ニュース認知症高齢者5人に1人が抗コリン薬を使用統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は適切な認知症薬物療法を行うために

2091.

SSRIの薬物治療モニタリング、実施率は

 SSRIの薬物治療モニタリング(TDM)の実施について、高齢患者を対象とするものが若年患者を対象としたものと比べて非常に少ないことが、ノルウェー・オスロ大学のM. Hermann氏らによる調査の結果、明らかにされた。結果について著者は、「TDMは高齢患者になるほど重要だとするガイドラインと対照的な状況である」と指摘している。Therapeutic Drug Monitoring誌オンライン版2015年1月6日号の掲載報告。 高齢患者では、SSRI治療薬の血清濃度が上昇するリスクが知られている。研究グループは、高齢患者(60歳以上)のSSRIのTDM実施状況を若年患者(60歳未満)との比較において調べた。対象は、2011年に著者らのラボで測定されたSSRI(エスシタロプラム、シタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン)の全血清濃度であった。ノルウェー処方データベースを用いて、同一地域および同一期間の処方でSSRI投与を受けた患者数を参照値とした。また、60歳以上患者と60歳未満患者で推奨参照上限値以上であった患者を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1つのSSRIのTDMが行われていた患者は6,333例であった。・すべてのSSRIのTDMの実施率は、60歳未満の患者と比較して60歳以上の患者で有意に低かった(p<0.001)。シタロプラムは8.2% vs. 10.6%、エスシタロプラム10.0% vs. 13.8%、フルオキセチン8.6% vs. 17.0%、パロキセチン5.6% vs. 10.3%、セルトラリン8.1% vs. 15.0%であった。・TDMの実施は、高齢になるほど徐々に低下し、最も若い(10~19歳)患者群と最も高齢(90歳以上)の患者群では、3倍の差があった(p<0.0001)。・推奨参照上限値以上であった患者の割合は、60歳以上(6.7%)が60歳未満(3.4%)と比べて2倍高かった。関連医療ニュース 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 SSRI依存による悪影響を検証 認知症への新規抗精神病薬、有害事象のモニタリングが不十分  担当者へのご意見箱はこちら

2092.

統合失調症の慢性化に関連する遺伝子か

 米国・ピッツバーグ大学のD Arion氏らは、統合失調症患者では背外側前頭前皮質 (DLPFC)に存在する錐体細胞の活性に依存する作業記憶(ワーキングメモリー)の異常が生じていることに着目し、錐体細胞特異的な遺伝子発現の状況について検討を行った。その結果、統合失調症患者ではDLPFCの第3層および/または第5層に存在する錐体細胞に特異的な遺伝子の発現が低下していること、これらは統合失調感情障害ではみられないことを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2015年1月6日号の掲載報告。 統合失調症はDLPFC回路の不全を反映する作業記憶の異常と関連する。作業記憶はDLPFCの第3層および第5層に存在する興奮性錐体細胞(第5層中には第3層よりも少なく分布)の活性に依存する。統合失調症患者のDLPFC灰白質の遺伝子発現プロファイルは複数の研究で示されているが、第3層および第5層に錐体細胞を認める2つのポピュレーションにおける細胞タイプ特異的なDNAからの転写産物発現に関してはほとんど知られていない。 そこで研究グループは、とくにDLPFCの第3層および第5層における遺伝子発現の情報は、統合失調症とそれに関連する疾患との相違について新しい、かつ明確な知見を提供するであろうと仮説を立てた。また、錐体細胞機能不全の自然史に関する新たな情報になるのではないかと考え、統合失調感情障害の診断、あるいは死亡時の薬物使用など、その他の因子が錐体ニューロンにおける遺伝子発現パターンに及ぼす影響の解明を試みた。検討は、統合失調症または統合失調感情障害を有する36例、および比較対照としてマッチさせた健常人を対象とし、各被験者のDLPFCの第3層または第5層における錐体細胞をレーザーマイクロダイセクション法により採取。同細胞のmRNAについて、マイクロアレイおよび定量PCRによりトランスクリプトーム解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・患者群では、ミトコンドリア(MT)内またはユビキチン-プロテアソーム系(UPS)機能における遺伝子発現が著しくダウンレギュレートされていた(MT関連経路およびUPS関連経路に対するp値はそれぞれ<10-7、<10-5)。・MT関連の遺伝子変異は第3層の錐体細胞で顕著に認められ、UPS関連の遺伝子変異は第5層の錐体細胞で顕著にみられた。・同じ被験者のDLPFC灰白質サンプルでは、これら変異の多くは発現が認められない、または発現程度が小さく、変異は錐体細胞特異的な所見であることが示唆された。・さらに、統合失調症患者における変異を反映する所見は、統合失調感情障害を有する被験者では発現がみられない、または発現程度が小さく(最も有意な共変数、p<10-6)、頻繁な統合失調症併存に寄与する因子ではなかった。・所見を踏まえて著者は「統合失調症患者ではDLPFCの第3層および/または第5層に存在する錐体細胞に特異的なMTおよびUPS関連遺伝子の発現が低下していることが明らかとなった。これら細胞タイプ特異的なトランスクリプトームシグネチャーは、統合失調感情障害を特徴付けるものではないことから、分子細胞学を基盤とした臨床表現型の相違が生ずる可能性がある」と述べている。関連医療ニュース 統合失調症の病因に関連する新たな候補遺伝子を示唆:名古屋大学 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定 うつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大  担当者へのご意見箱はこちら

2093.

ハワイの認知症入院患者、日系人高齢者が多い

 ハワイで認知症と診断され入院している患者を調べたところ、ネイティブ・ハワイアンと日系人の高齢者が多いことが、米国・ハワイ大学のTetine L. Sentell氏らによる調査の結果、明らかにされた。結果について著者は、「ネイティブ・ハワイアンと日系人高齢者集団に対する公衆衛生および臨床ケアにおいて、重要な意味がある」と指摘している。認知症入院患者はそうではない入院患者と比べて、コスト、入院期間、また死亡率が高いが、米国においてこれまでネイティブ・ハワイアンおよびアジア系サブグループの認知症に関するデータは限定的であった。Journal of the American Geriatrics Society誌2015年1月号(オンライン版2014年12月23日号)の掲載報告。 研究グループは、2006年12月~2010年12月にハワイで入院した全成人を対象に、認知症と診断された入院患者について、年齢階層別(18~59歳、60~69歳、70~79歳、80~89歳、90歳以上)にアジア系住民および太平洋諸島系の原住民(ネイティブ・ハワイアン、中国系、日系、フィリピン系)の割合を調べ、白人の割合と比較した。認知症診断はICD-9コードを用いて特定した。集団分母は、米国国勢調査を利用した。 主な結果は以下のとおり。・認知症診断歴のある入院患者1万3,465例を特定し分析した。・全年齢階層群で、ネイティブ・ハワイアンの認知症入院患者の割合(未補正)が最も高く、その他の人種よりも年齢は若い傾向がみられた。・補正後モデル(性別、居住地、加入保険)において、白人と比べてネイティブ・ハワイアンの認知症入院患者は90歳以上群を除き有意に高率であった。18~59歳群(aRR:1.50、95%信頼区間[CI]:0.84~2.69)、60~69歳群(同2.53、1.74~3.68)、70~79歳群(同2.19、1.78~2.69)、80~89歳群(同2.53、1.24~1.71)。・日系人では高齢者群で有意に高率であった。70~79歳群(aRR:1.30、95%CI:1.01~1.67)、80~89歳群(同1.29、1.05~1.57)、90歳以上群(同1.51、1.24~1.85)。・日系人の若い年齢群(18~59歳)は、白人よりも認知症患者は有意に少ないと思われた(aRR:0.40、95%CI:0.17~0.94)。関連医療ニュース アルツハイマー病への薬物治療は平均余命の延長に寄与しているのか:東北大学 低緯度地域では発揚気質が増強される可能性あり:大分大学 冬季うつ病、注意が必要な地域は  担当者へのご意見箱はこちら

2094.

なぜSSRIの投与量は増えてしまうのか

 抗うつ薬の処方は上昇の一途をたどっており、その原因として長期投与や高用量投与の増加が挙げられる。しかし、高用量処方に関連する患者背景因子については不明のままである。英国・NHS Greater Glasgow and ClydeのChris F Johnson氏らは、うつ病に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の1日投与量と関連する患者背景因子を明らかにするため、プライマリケアにおける横断的研究を行った。その結果、SSRI高用量処方と関連する因子の1つとして、同一抗うつ薬の2年以上の処方が明らかとなったことを報告した。結果を踏まえて著者は、「抗うつ薬の長期使用の増加に伴い、高用量処方の使用はさらに処方の増大に寄与する可能性がある」とまとめている。BMC Family Practice誌オンライン版2014年12月15日号の掲載報告。 本研究の目的は、一般診療でうつ病治療に処方されるSSRIの1日投与量と関連する患者背景因子について調査することであった。調査は、低~高用量処方の層別化サンプルを用いて行った。2009年9月~2011年1月の間の、1診療における各患者のデータを抽出。SSRIが処方された18歳以上のうつ病患者を解析に組み込んだ。SSRIはうつ病治療においてフラットな用量反応曲線を示すが、本研究ではロジスティック回帰分析により、標準治療による1日投与量と高用量投与との比較からSSRIの1日投与量の予測変数を評価した。予測変数は、年齢、性別、貧困、併存疾患、喫煙状況、同じSSRIの2年以上の処方、患者の一般診療であった。ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(もしくはその両方)の長期投与(B&Z)を、患者サブグループに対する第2サブグループ分析の予測変数として加えた。 主な結果は以下のとおり。・診療間でSSRI処方に有意な相違が認められた。18歳以上患者集団の診療時点有病率(practice point prevalence)は、2.5%(94/3,697例)から11.9%(359/3,007例)にわたった。中央値は7.3%(250/3,421)(χ2=2277.2、df=10、p<0.001)であった。・全点有病率(overall point prevalence)は6.3%(3,518/5万2,575例)であり、うつ病に対してSSRIが処方された患者は5.8%(3,066/5万2,575例)、うち84.7%(2,596/3,066例)から回帰分析のデータが得られた。・SSRIの高用量処方と有意に関連していたのは、影響の大きかった順に、患者が受けた診療、同一SSRIの2年以上処方(オッズ比[OR]:1.80、95%信頼区間[CI]:1.49~2.17、p<0.001)、貧しい地域に居住(同:1.55、1.11~2.16、p=0.009)であった。・B&ZサブグループにおけるSSRI高用量と有意に関連していたのは、患者が受けた診療、長期のB&Z処方(OR:2.05、95%CI:1.47~2.86、p<0.001)、同一SSRIの2年以上処方(同:1.94、1.53~2.47、p<0.001)であった。関連医療ニュース SSRI/SNRIへの増強療法、コストパフォーマンスが良いのは 抗うつ薬が奏効しないうつ病患者への抗精神病薬追加投与は本当に有効か SSRI依存による悪影響を検証  担当者へのご意見箱はこちら

2095.

抗うつ薬の新たな可能性、あけび主要成分

 中国・南方医科大学のBao-Fang Liang氏らは、ヘデラゲニン(hederagenin)の抗うつ様効果におけるノルエピネフリンとセロトニンシステムの関与を、予測不可慢性軽度ストレス誘発性(UCMS)うつ病のラットモデルで調べた。その結果、同モデルでの抗うつ効果を確認し、モノアミン神経伝達物質とセロトニン・トランスポーター(5-HTT)mRNA発現を伴う可能性がみられたことを報告した。Pharmaceutical Biology誌オンライン版2014年12月4日号の掲載報告。 研究グループは先行研究のラボ試験にて、あけび(Fructus Akebiae)エキスの急性および亜慢性投与が、動物実験で抗うつ様効果を示すことを報告していた。あけびは、主要化学成分としてヘデラゲニンを約70%含む。 本検討では、マウス試験にて、あけびとヘデラゲニンの抗うつ効果を比較し、UCMSうつ病ラットモデルでヘデラゲニンの抗うつ様効果と潜在的機序を調べた。マウスに、胃内投与(i.g.)であけび(50mg/kg)またはヘデラゲニン(20mg/kg)を1日1回3週間投与した。抗不安および抗うつ活性を、高架式十字迷路検査や、尾懸垂試験法、強制水泳試験などを行い比較した。また、ヘデラゲニン(5mg/kg)の抗うつ効果を、UCMSうつラットモデルを用いて評価。さらに、UCMSラットの海馬におけるモノアミン神経伝達物質レベルと遺伝子発現を、高性能リキッドクロマトグラフィとリアルタイムPCR法を用いて確認した。 主な結果は以下のとおり。・尾懸垂試験法および強制水泳試験のいずれにおいても、ヘデラゲニン(20mg/kg)は有意に不動性を減じたが、あけび(50mg/kg)はそうではなかった。・しかし、ヘデラゲニン群とあけび群で有意差は示されなかった。・ヘデラゲニンの慢性投与は、高架式十字迷路検査における移所行動量や立ち上がり行動、open armにおける滞在時間やclosed armへの進入回数について、増大傾向はみられたものの有意に改善しなかった。しかし、ヘデラゲニンはショ糖嗜好検査で嗜好行動を有意に増大し、強制水泳試験の不動性を有意に減じた。・ヘデラゲニン群では、ノルエピネフリンとセロトニン値の有意な増大が示された。5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)1A受容体mRNAの発現が増加し、5-HTTのmRNA発現が有意に減少する傾向が示された。・しかしながら、脳由来神経栄養因子の発現における有意差はみられなかった。関連医療ニュース うつ病治療の新展開、ミトコンドリア生体エネルギー 新たなアルツハイマー病薬へ、天然アルカロイドに脚光 過食性障害薬物治療の新たな可能性とは  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症患者のEPSと認知機能の関連は

 カナダ・トロント大学のGagan Fervaha氏らは、統合失調症患者における錐体外路症状(EPS)と、認知障害との関連を調べた。結果、EPSの重症度と認知テストの低スコアとが強く結び付いていることを実証した。EPSは統合失調症における最も一般的な運動障害である。同患者の運動障害は、抗精神病薬を服用していない患者でも認められるが、認知といった疾患のその他の特性との関連については十分に解明されていなかった。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年12月1日号の掲載報告。 検討は、統合失調症患者で、あらゆる抗精神病薬または抗コリン薬の投与を受けていない325例を対象に行われた。被験者は、Clinical Antipsychotic Treatment of Intervention Effectiveness試験のベースライン訪問に関与していた患者であった。EPSの評価には、Simpson-Angus尺度が用いられ、認知の評価は、総合的な神経心理学的テストにて行われた。EPSと認知テスト結果との関連性について、数的および分類学的両面から評価した。 主な結果は以下のとおり。・EPSの重症度がより大きいと、複合スコア評価による認知テストの結果は、より悪化するという有意な関連が認められた。・86例の患者はパーキンソン症候群を有していることが特定された。これらの患者は非パーキンソン症候群患者と比べて認知テストの結果は悪かった。・同所見は、精神病理、鎮静、アカシジア、ジスキネジアなどの重症度といった変数で補正後も有意なままであった。・これらの結果は、神経筋および神経認知の障害の基礎を成す病態生理が共通していることを示す。ただし、パーキンソン症候群がテストを受ける能力を障害している可能性もある。・いずれにせよ機序に関係なく、認知障害に関する推論は、EPSの存在を考慮すべきであることを示唆するものであり、認知試験の所見を媒介するその他の変数と同様の示唆を与えるものと思われた。関連医療ニュース 統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は 統合失調症患者の認知機能低下への関連因子は 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学  担当者へのご意見箱はこちら

2097.

重度アルツハイマー病に心理社会的介入は有効か:東北大

 重度アルツハイマー病に対する心理社会的介入は有効なのか。東北大学の目黒 謙一氏らは、重度アルツハイマー病患者に対する薬物療法に心理社会的介入を併用した際の効果を明らかにするため、介護老人保健施設入所患者を対象に前向き介入試験を実施した。その結果、意欲改善やリハビリテーションのスムーズな導入、および転倒事故の減少がみられたという。著者は、「心理社会的介入の併用治療アプローチは、重度の患者に対しても有用な効果を示した。ただし、より大規模なコホートを用いて再検証する必要がある」と述べている。BMC Neurology誌オンライン版2014年12月17日号の掲載報告。 コリンエステラーゼ阻害薬は、アルツハイマー病(AD)の進行を遅らせることができ、中等度~重度ADに対する臨床的効果が、複数の臨床試験により首尾一貫して報告されている。また、軽度~中等度AD患者においては、心理社会的介入との併用による効果が報告されているが、重度AD患者に対する同薬と他の治療アプローチもしくはリハビリテーションを併用した際の効果については議論の余地が残っている。そこで研究グループは、介護老人保健施設入所患者を対象に、前向き介入試験を実施した。 2ヵ所の介護老人保健施設(N1、N2)を対象とした。N1は126床の施設で、ドネペジルでの治療は行わずに心理社会的介入のみ(現実見当識訓練[リアリティオリエンテーション]および回想法)を実施した。N2は認知症特別室50床を含む150床の施設で、ドネペジルを処方し、心理社会的介入に加えてリハビリテーションが実施された。N1およびN2の重度AD患者(MMSE<6)32例(16 vs. 16)を対象として、心理介入療法の有無別(各施設8 vs. 8)に、ドネペジル(10mg/日、3ヵ月間投与)の効果を比較した。意欲の指標としてVitality Indexを用いて日常生活行動とリハビリの導入について評価した。 主な結果は以下のとおり。・N2におけるドネペジルの奏効率(MMSEが3+)は37.5%であった。・ドネペジル+心理社会的介入は、Vitality Indexの総スコア(Wilcoxon検定のp=0.016)、およびサブスコアのコミュニケーション(p=0.038)、食事(p=0.023)、リハビリテーション(p=0.011)を改善した。・大半のリハビリテーションはスムーズに導入され、転倒事故の頻度が減少した。・薬剤を使用していないN1での心理社会的介入では、総スコアの改善のみ認められた(Wilcoxon検定、p=0.046)。関連医療ニュース 認知症患者への精神療法、必要性はどの程度か 認知機能トレーニング/リハビリテーションはどの程度有効なのか 統合失調症へのアリピプラゾール+リハビリ、認知機能に相乗効果:奈良県立医大  担当者へのご意見箱はこちら

2098.

うつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大

 藤田保健衛生大学の島崎 愛夕氏らは、大うつ病性障害(MDD)のリスク遺伝子を明らかにするため、遺伝子と外的環境との相互作用を考慮に入れた解析を実施した。その結果、双極性障害(BD)に関連する一塩基多型(rs7296288、DHH下流の12q13.1領域)とMDDのうつ症状との間の有意な関連を報告した。PLoS One誌2014年12月17日号の掲載報告。 これまで複数のゲノムワイド関連解析(GWAS)により、統合失調症(SCZ)やBDに関連する多数の感受性遺伝子が同定されてきた。しかし、MDDのリスク遺伝子については、MDDの発症が環境要因により強く影響されることから、その同定は順調に進んでいない。そこで、遺伝子と、ストレスを与えるライフイベント(SLEs)のような外的環境との相互作用(G×E)を考慮した解析が必要となる。本研究では、ケースコントロールデザインを用い、G×E相互作用と、主要な症状であるうつ症状の誘因となる遺伝子について評価した。 病院スタッフ922例を対象とし、ベックうつ病尺度(BDI;10点以上を「うつ症状群」、10点未満を「対照群」に分類)によるうつ症状、SLEs、性格を評価した。すでに実施されているMDD、SCZ、BDのGWASおよび候補遺伝子(SLC6A4、BDNF、DBH、FKBP5)の研究から、合計63の遺伝的変異体を選択した。 主な結果は以下のとおり。・ロジスティック回帰分析の結果、rs4523957とうつ症状との間に、わずかに有意な相互作用(遺伝的変異体×SLE)が示された(Puncorrected = 0.0034)。・BD GWASにより同定された一塩基多型(rs7296288、DHH下流の12q13.1領域)と、主な症状としてのうつ症状との間に有意な関連が示された(Puncorrected = 9.4×10-4、Pcorrected = 0.0424)。・以前より報告されていたように、SLEsがうつ症状に大きく影響することも確認した(オッズ比:~3)。・本研究から、DHHがうつ症状の発症原因の一端を担っている可能性が示唆された。しかしMDD、SCZのGWASにより明らかとなった遺伝子変異や候補遺伝子とSLEsとの間に、うつ症状に関しての有意な関連性あるいは相互作用による影響は認められなかった。関連医療ニュース 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定 うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は 日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大

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統合失調症、ビタミンD補充で寛解は期待できるか

 ビタミンD欠乏症は、統合失調症の発症に関与する病因の1つである。多くの統合失調症研究において、血清ビタミンD値が低い症例が報告されているが、疾患活動性と血清ビタミンD値との関連性は明らかになっていなかった。トルコ・Ankara Numune Egitim ve Arastirma HastanesiのRabia Nazik Yuksel氏らは、統合失調症とビタミンD欠乏症との関連を明らかにするため、寛解期および急性期の統合失調症患者の血清ビタミンDレベルを健常対照と比較検討した。その結果、急性期統合失調症患者の血清ビタミンD値は、寛解期の患者および健常対照に比べ有意に低いことを報告し、急性期統合失調症とビタミンD欠乏との関連を示唆した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2014年12月号の掲載報告。 研究グループは、疾患活動性の異なる2つの統合失調症グループの総ビタミンD量を比較し、血清総ビタミンD値と疾患活動性の関係を調べた。検討は、寛解期、急性期の統合失調症患者、および年齢と性別でマッチした重大な精神症状を認めない対照例を対象に行われた。疾患活動性は、PANSS(陽性・陰性症状評価尺度)およびCGI-S(臨床全般印象・重症度尺度)を用いて評価し、年齢、性別、民族、体重、肌の色、日光曝露時間、栄養評価が網羅された人口統計データを使用した。すべての患者および対照者から血液標本を採取し、総ビタミンD(D2+D3)、カルシウム(Ca)、リン(P)、副甲状腺ホルモン(PTH)値を測定した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、寛解期統合失調症患者41例、急性期統合失調症患者40例、健常対照40例であった。・急性期患者のビタミンD値(中央値7.18)は、寛解期患者(同15.03)および健常対照(同15.02)に比べ、有意に低かった(p<0.001)。・ビタミンD値とCGIスコア(r=-0.624、p<0.001)、ビタミンD値とPANNSスコア(r=-0.508、p<0.001)の間に中等度の逆相関が認められた。・各群間で、血清P値、Ca値、PTH値について有意な差は認められなかった(それぞれp=0.099、p=0.943、p=0.762) 。・1週間当たりの日光曝露時間、肌の色、民族、栄養状態による、総ビタミンD値への有意な影響はみられなかった。・ビタミンD合成に関連する重要な因子に相違は認められなかったが、寛解期の患者と比べて急性期の患者では深刻なビタミンD欠乏症が認められ、寛解期の患者と有意な違いを認めた。・ビタミンD欠乏症は急性期エピソードの結果なのか、あるいは原因なのか? 本研究結果から、経路は不明ながら、ビタミンD欠乏症と統合失調症が相互に影響を及ぼし合っている可能性が示唆された。・現時点のデータでは、ゲノムレベルでの影響の可能性を指摘するにとどまった。・今後、臨床試験による長期フォローアップにより、これらの関係を調べることができると思われた。とくに、長期に治療を継続している統合失調症患者の血清ビタミンD値の状況が期待される。・ビタミンDを豊富に含むサプリメントおよび食事を加味した、適切な治療を考慮すべきと思われた。関連医療ニュース ビタミンD欠乏で統合失調症発症リスクが2倍に 統合失調症の治療目標、急性期と維持期で変更を:京都大学 ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか

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抗うつ薬は有用か、てんかん患者のうつ

 てんかん患者のうつ病に対する治療として、抗うつ薬の有効性と安全性、けいれん発作再発に対する有効性を明らかにするため、英国・Leeds General InfirmaryのMelissa J Maguire氏らは8件の臨床試験をレビューした。その結果、抗うつ薬の有効性に対するエビデンスは非常に少なく、また質の高いエビデンスも存在しないことを明らかにし、同領域において大規模な比較臨床試験の必要性を指摘した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2014年12月3日号の掲載報告。 うつ病性障害は、てんかん患者の約3分の1に発症する一般的な精神的合併症であり、QOLに多大な悪影響をもたらす。しかし、いずれの抗うつ薬(あるいは種類)最良であるのか、また、けいれん発作を悪化させるリスクなどに関する情報が不確実なため、これらの患者がうつ病に対し適切な治療を受けていないことが懸念される。 研究グループは、これらの課題に取り組み、実臨床および今後の研究に向け情報を提供することを目的とし、てんかん患者のうつ病治療として、抗うつ薬に関する無作為化対照試験および前向き非無作為化試験から得られたエビデンスを統合し、レビューした。主要目的は、うつ症状の治療における抗うつ薬の有効性と安全性、けいれん発作再発に対する有効性の評価とした。 論文検索は、2014年5月31日までに発表された試験を含む、Cochrane Epilepsy Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL 2014, Issue 5)、MEDLINE(Ovid)、SCOPUS、PsycINFO、www.clinicaltrials.gov、その他国際会議議事録にて行い、言語による制限を設けなかった。 うつ症状に対し抗うつ薬治療を実施したてんかん小児および成人患者を対象とした、無作為化対照試験(RCT)および非無作為化コホート対照試験、非対照試験を検索した。介入群は、現行の抗てんかん薬レジメンに抗うつ薬を追加した患者とした。一方、対照群は現行のてんかん薬レジメンに、プラセボ、比較対照の抗うつ薬、心理療法のいずれかを追加、あるいは治療の追加なしの患者とした。 試験デザイン要素、患者背景、各試験のアウトカムを基にデータを抽出。主要アウトカムはうつ病スコアの変化(50%以上の改善を示した人数あるいは平均差)およびけいれん発作頻度の変化(発作の再発あるいはてんかん重積症の発作のどちらか、または両方を発症した患者の平均差あるいは人数)とした。副次アウトカムは有害事象、試験中止例数および中止理由とした。データ抽出は対象試験ごとに2人の執筆者がそれぞれ実施、これによりデータ抽出のクロスチェックとした。無作為化試験および非無作為化試験におけるバイアスの危険性を、コクラン共同計画の拡張バイアスリスク評価ツール(extended Cochrane Collaboration tool for assessing risk of bias)を使用して評価した。バイナリアウトカムは95%信頼区間(CI)を有するリスク比として示した。連続アウトカムは95%CIを伴う標準化平均差、そして95%信頼Clを伴う平均差として示した。可能であればメタ回帰法を用い、想定される不均一性の原因を調査する予定であったが、データ不足により断念した。 主な結果は以下のとおり。・8件の試験(RCTが3件と前向きコホート研究5件)、抗うつ薬治療中のてんかん患者471例を対象にレビューを行った。・RCTはすべて、抗うつ薬と実薬、プラセボまたは無治療との比較を行った単施設での試験であった。・5件の非無作為化前向きコホート研究は、主に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によりうつ病治療中の部分てんかん患者におけるアウトカムを報告するものであった。・すべてのRCTおよび1件の前向きコホート研究については、バイアスのリスクが不明確と評価された。他の4件の前向きコホート研究については、バイアスのリスクが高いと評価された。・うつ病スコアが50%以上改善した割合に対するメタ解析は、比較した治療が異なっていたため実施できなかった。・記述的分析の結果、レスポンダー率は、投与された抗うつ薬の種類によって24%~97%の幅が認められた。・うつ病スコアの平均差に関しては、シタロプラムを用いた2件の前向きコホート研究(計88例)の限定的なメタ解析が実施可能であった。同分析では、うつ病スコアにおける効果予測1.17 (95%CI:0.96~1.38)であり、エビデンスの質は低かった。・てんかん発作頻度に関するRCTのデータがなく、また前向きコホート研究においても、比較対照となる治療が異なるためメタ解析は実施できなかった。記述的分析の結果、SSRIを用いた3件の試験において、発作頻度の有意な上昇は認められなかった。・抗うつ薬の中止理由として、無効よりも有害事象によるものが多かった。・SSRIに関する有害事象として嘔気、めまい、鎮静、胃腸障害、性機能障害が報告された。・3件の比較研究を通し、解析に使用した試験の規模が小さく、比較のために参照した試験が各1件のみであるという理由から、エビデンスの質は中程度と評価した。・最後の比較研究に関しては、2件の参照試験における試験方法に問題があるという点でエビデンスの質が低いと評価した。・てんかん関連うつ症状に対する、抗うつ薬の有効性に関するエビデンスは非常に少なく、ベンラファキシンがうつ症状に対し統計学的に有意な効果を示した小規模なRCTが1件あるのみであった。・てんかん患者のうつ症状治療に際し、抗うつ薬またはその種類の選択に関し情報を提供する質の高いエビデンスはなかった。・今回のレビューでは、SSRIによる発作悪化という観点から、安全性に関するエビデンスの質は低く、また発作に使用できる抗うつ薬の種類や安全性の判定に使用可能な比較対照データはなかった。心理療法は、患者が抗うつ薬の服用を好まない場合や許容できない有害事象のある場合に対して考慮されるが、現在のところ、てんかん患者のうつ病治療として抗うつ薬と心理療法を比較しているデータはなかった。うつ病を有するてんかん患者を対象とした、さらに踏み込んだ抗うつ薬および心理療法に関する大規模コホート比較臨床試験が将来のよりよい治療計画のために必要である。関連医療ニュース どの尺度が最適か、てんかん患者のうつ病検出 てんかん患者のうつ病有病率は高い パロキセチンは他の抗うつ薬よりも優れているのか  担当者へのご意見箱はこちら

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