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2041.

性別で異なる、睡眠障害とうつ病発症の関連:東京医大

 不眠症状、日中の眠気、短い睡眠時間、あるいは睡眠覚醒スケジュール後退などの睡眠関連障害は、うつ病のリスクファクターとなることが知られている。一般的に、うつ病は男性より女性に多いが、睡眠関連障害については必ずしも同様の性差が示されるわけではない。うつ病の発症過程における睡眠関連障害の影響には性差があると考えられるが、この問題に注目した研究はこれまでほとんどなかった。東京医科大学の守田 優子氏らは、睡眠関連障害を有する日本人若年成人のうつ病発症に及ぼす性差について検討を行った。その結果、睡眠関連障害がうつ病発症に及ぼす影響には性差が認められ、女性では睡眠覚醒スケジュール後退の影響が大きいことを報告した。結果を踏まえて著者らは「睡眠関連障害に起因するうつ症状の軽減・予防には性別に基づくアプローチが必要である」と指摘している。Chronobiology International誌2015年8月号の掲載報告。 研究グループは、上記の睡眠関連障害を有する日本人若年成人のうつ病発症率の性差を明らかにし、うつ病関連因子における性差について検討した。被験者2,502例(男女比は1,144対1,358、年齢範囲:19~25歳)を対象に、人口統計学的変数、睡眠関連変数(就寝時間、起床時間、睡眠潜時、入眠困難・睡眠維持困難頻度など不眠の諸症状、日中の眠気)、うつ病自己評価尺度(CES-D: Center for Epidemiologic Studies Depression)の12項目バージョンからなるwebアンケート調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病発症率における女性の優位性は、睡眠覚醒スケジュール後退という項目でのみ示された(χ2(1) : 15.44、p<0.001)。・男性においては、日中の眠気(オッズ比[OR] :2.39、95%信頼区間[CI]: 1.69~3.39、p<0.001)および入眠困難(同3.50、2.29~5.35、p<0.001)がうつ病と有意に関連していた。・女性においては、睡眠覚醒スケジュール後退(OR: 1.75、95%CI:1.28~2.39、p<0.001)、日中の眠気(同:2.13、1.60~2.85、p<0.001)、入眠困難(同:4.37、3.17~6.03、p<0.001)がうつ病と有意に関連していた。・以上の結果は、若い世代では睡眠覚醒スケジュール後退がうつ病発症に与える影響は女性で大きく、とくに夜型の生活スタイルである場合にうつ病になりやすいこと、そして、このことは女性特有の速く短い内因性のサーカディアンリズムに起因する可能性があることを示唆するものであった。・以上より、若年成人におけるうつ症状の軽減あるいは予防には、性別に基づいた睡眠関連障害治療アプローチが必要であることが示唆された。関連医療ニュース 2つの新規不眠症治療薬、効果の違いは 注意が必要な高齢者の昼寝 睡眠薬使用は自動車事故を増加させているのか

2042.

統合失調症再発予防、遠隔医療に改善の余地あり

 チェコ共和国・国立精神保健研究所のF. Spaniel氏らは、統合失調症患者に対する遠隔医療プログラムが入院回数を減らすかについて検討を行い、有効性は認められなかったことを報告した。著者らは「先行研究で、この予防的戦略の失敗は、精神科医と患者両者のアドヒアランス不良にあることが示唆されている。統合失調症の3次予防は大きな課題であり、患者と治療に当たる精神科医の両者のより積極的な参加の下、戦略を実施する必要がある」と指摘している。Journal of Psychiatric and Mental Health Nursing誌オンライン版2015年7月14日号の掲載報告。 研究グループが検討した遠隔医療プログラムは、統合失調症再発予防支援情報技術(ITAREPS:Information Technology Aided Relapse Prevention Programme in Schizophrenia)で、遠隔医療により統合失調症の週単位のモニタリングと治療を可能とするものである。同プログラムが入院回数を減らす効果があるのか、18ヵ月間にわたる多施設非盲検無作為化並行群間試験を行った。対象は、統合失調症または統合失調感情障害の外来患者で、プログラム介入群(74例)と対照群(72例)に無作為に割り付けて追跡した。介入群では、システムによって再発の前駆症状が通知された場合、治験責任医師が抗精神病薬の用量を増大した。 主な結果は以下のとおり。・intention to treat解析の結果、介入群と対照群間の無入院生存率の有意差はみられなかった(Kaplan-Meier法によるハザード比[HR]:1.21、95%信頼区間[CI]:0.56~2.61、p=0.6)。・多変量Cox比例ハザードモデルによる事後解析において、13の潜在的予測因子を除けば、ITAREPS関連変数のみが入院リスクを増大していることが示された(薬理学的介入のないアラート数のHR:1.38、p=0.042/ 患者のITAREPSアドヒアランス不良のHR:1.08、p=0.009)。・本研究では、精神科医のアドヒアランス不良が示されており、前駆症状の初期段階で薬理学的介入が欠如していたことが、再発リスクに影響したと考えられる。・今回および先行の遠隔医療プログラムITAREPS無作為化対照試験においても、統合失調症の再発予防における実質的な改善は、現状の臨床設定では困難であることが示唆された。・将来的な統合失調症の予防戦略には、従来の外来診療では検出不可能である潜在的な前駆症状の発生を捉えて、迅速に薬理学的介入を行うことが求められる。・ITAREPS試験では、再発予防遠隔医療システムと訪問看護サービスによるソリューションが、それらの要求に応えられる可能性が示唆された。関連医療ニュース 統合失調症の再発予防プログラムを日本人で検証:千葉大学 統合失調症患者の再発を予測することは可能か? 統合失調症の再発、コスト増加はどの程度  担当者へのご意見箱はこちら

2043.

双極性障害の自殺、どの程度わかっているのか

 双極性障害患者の自殺企図や自殺死には多くの要因が影響を及ぼしている。国際双極性障害学会(ISBD)では、こうした要因の存在やその影響度に関する文献をまとめた自殺に関するタスクフォース報告書を発表した。筆頭著者であるカナダ・トロント大学のAyal Schaffer氏らは、「研究の対象やデザインが不均一性であるため、これら要因の影響度を再検討し確定するさらなる研究が必要である。このことが最終的には、双極性障害患者のリスク層別化の改善につながる」と述べている。Australian & New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年7月14日号の掲載報告。 ISBDは、「双極性障害」と「自殺企図または自殺」をキーワードに1980年1月1日から2014年5月30日までに発表された論文を対象として、システマティックレビューを行った。双極性障害患者の自殺企図や自殺死に関連すると思われる要因について、すべての報告を調査した。要因を、(1)社会人口統計学的、(2)双極性障害の臨床的特徴、(3)併存疾患、(4)その他の臨床変数、の4つに分類し分析した。 主な結果は以下のとおり。・20の特異的要因が自殺企図や自殺死にどのように影響するかを調査した141件の研究を特定した。・要因については、それぞれのエビデンスのレベルや一致の程度にばらつきがあった。・その中で少なくとも1件の研究で、以下の要因について影響があることが認められた。性別、年齢、人種、婚姻状況、宗教、発症年齢、罹患期間、双極性障害のサブタイプ、初回エピソードの極性、現在/最近のエピソードの極性、優位極性、気分エピソードの特徴、精神病、精神疾患の併存、パーソナリティ特性、性的機能不全、自殺や気分障害の一親等家族歴、自殺企図歴、若年期のトラウマ、心理社会的要因。関連医療ニュース 双極性障害、退院後の自殺リスクが高いタイプは 双極性障害とうつ病で自殺リスクにどの程度の差があるか うつ病と双極性障害を見分けるポイントは  担当者へのご意見箱はこちら

2044.

統合失調症患者の家庭での暴力行為に関する調査:東京大学

 精神疾患患者の脱施設化を目指す日本において、家庭内暴力は重要な問題である。東京大学の蔭山 正子氏らは、統合失調症患者を対象に、家庭内暴力の割合や患者の性別、患者との関係性における違いを明らかにすべく、検討を行った。Asia-Pacific journal of public health誌オンライン版2015年7月16日号の報告。 研究グループは、精神障害者家族の世帯に質問状を配布し、回答を募った。 主な結果は以下のとおり。・350世帯から回答が得られ、302件のデータを分析した。・いずれかの家族に対し暴力行為が認められた割合は、生涯で60.9%、過去1年間で27.2%であった。・生涯で暴力を受けた対象を血縁関係ごとにみたところ、母親が51.0%と最も高く、続いて父親(47.0%)、妹(30.7%)、配偶者(23.8%)、弟(19.5%)、姉(18.2%)、兄(17.1%)の順であり、子供に対しては認められなかった。・妹は他の兄弟姉妹と比較し、被害に遭う傾向が高かった。・患者が男性の場合、父親や兄が被害に遭いやすい傾向が認められた。関連医療ニュース 日本人統合失調症、暴力行為の危険因子は:千葉大 統合失調症の社会参加に影響する症状は何か 統合失調症患者の自殺企図、家族でも気づかない:東邦大学  担当者へのご意見箱はこちら

2045.

抗認知症薬の脳萎縮予防効果を確認:藤田保健衛生大

 これまで抗認知症薬が軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー病患者の脳萎縮を予防するという決定的なエビデンスはなかったが、藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らによる無作為化プラセボ対照試験のメタ解析の結果、抗認知症薬はプラセボに比べ優れた脳萎縮予防効果を発揮することが示唆された。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年7月19日号の掲載報告。 研究グループは、PubMed、Cochrane LibraryおよびPsycINFOを用い、2015年5月16日までに発表されたMCIまたはアルツハイマー病患者を対象とする抗認知症薬の二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験の論文を検索した。主要評価項目はMRI測定による年換算された全脳容積変化率(%TBV/年)、海馬容積変化率(%HV/年)および脳室容積変化率(%VV/年)で、標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出した。 結果は以下のとおり。・メタ解析に組み込まれたのは、MCI を対象とした試験4件(1,327例)、アルツハイマー病3件(381例)の、計7件(1,708例)の無作為化プラセボ対照臨床試験であった。・抗認知症薬の内訳は、ドネペジル3件(MCI 2件、アルツハイマー病1件)、ガランタミン1件(MCI)、メマンチン2件(アルツハイマー病)、リバスチグミン1件(MCI)であった。・統合解析の結果、抗認知症薬はプラセボと比較して、有意に全脳容積の減少が少なく(%TBV/年のSMD=-0.21、95%CI:-0.37~-0.04、p=0.01、4試験、624例)、脳室容積の増加が少なかったが(%VV/年のSMD=-0.79、95%CI:-1.40~-0.19、p=0.01、3試験、851例)、海馬容積の変化(%HV/年)について有意差は認められなかった。・個々の抗認知症薬については、プラセボと比較してドネペジルで有意な脳萎縮予防効果が認められた(全脳容積変化率 %TBV/年のSMD=-0.43、95%CI:-0.74~-0.12、p=0.007、1試験、164例;脳室容積 %VV/年のSMD=-0.51、95%CI:-0.73~-0.29、p<0.00001、2試験、338例)。・リバスチグミンも脳室容積の変化に関してはプラセボより優れていた(%VV/年のSMD=-1.33、95%CI:-1.52~-1.14、p<0.00001)。関連医療ニュース レビー小体型認知症、認知機能と脳萎縮の関連:大阪市立大学 抗認知症薬の神経新生促進メカニズムに迫る:大阪大学 統合失調症、脳容積とIQの関連  担当者へのご意見箱はこちら

2046.

統合失調症治療、洞察力向上へのサポートが重要

 統合失調症患者は、将来の出来事の現象学的特徴を思い描いたり(エピソード洞察の構成要素)、予定した行動を実行する(展望記憶の構成要素)というような、特定の未来に向けた思考や行動への関与が困難である。しかし、エピソード洞察を用いて未来に向けた行動を適切に導くことに障害があるのかどうかについても不明なままであった。オーストラリア・クイーンズランド大学のAmanda D. Lyons氏らは、統合失調症とエピソード洞察について検討を行った。British Journal of Clinical Psychology誌オンライン版2015年7月14日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症患者群と非臨床群(対照)の行動評価を行い、エピソード洞察を評価する厳密な基準を満たしているかを調べた。評価では、研究者らの洞察力の機能的応用への着目に合わせて、被験者に対して問題を同定し、自己解決して、将来に向けた意図を適切に実行することを要求した。 主な結果は以下のとおり。・対照と比較して統合失調症患者は、問題を後で解決させられることができるアイテムを自発的に得る傾向が低かった。また、これらのアイテムを用いて問題を解決する傾向もまた低かった。・群間およびタスク間で相互作用はみられず、これら2つの洞察力の構成要素が同程度に混乱を来していることが示された。・対照群ではみられなかったが、臨床群において、アイテム取得とアイテム使用は全般的な認知機能の能力と相関していた。・臨床的変数との有意な関連は認められなかった。・エピソード洞察を機能的な方法で適用する能力は、統合失調症では損なわれており、幅広い認知機能障害の少なくとも一部分を反映するものと思われた。今後の検討において、これらの問題をどのように修正するかだけでなく、日常生活におけるこれらの問題の関連についても明らかにする必要である。 本検討における医療者にとってのポイントは以下が挙げられる。・統合失調症患者はエピソード洞察が困難であり、その問題は、行動に先立って洞察する能力に及んでいるように思われる。・未来の予定行動は、ルーチンおよび適応計画の中心を成すため、エピソード洞察における問題は、機能的困難に関連し、結果として統合失調症患者が経験するさまざまな機能的困難につながると思われる。・今後の研究において、エピソード洞察が低下した人への介入が可能かどうかを明らかにする必要である。・介入は、治療的ツールを含むことが考えられる。たとえば、洞察力を伴う行動の実行を支援したり促すようなサポート、あるいは認知訓練プログラムを用いて洞察力を働かせる能力や傾向の改善を働きかけるものなどである。関連医療ニュース 統合失調症への支持療法と標準的ケア、その差は 第1世代と第2世代抗精神病薬、認知機能への影響の違いは 統合失調症へのアリピプラゾール+リハビリ、認知機能に相乗効果:奈良県立医大  担当者へのご意見箱はこちら

2047.

日本人治療抵抗性うつ病患者へのCBT併用試験とは:FLATT Project

 うつ病は、QOLへの影響が最も大きい消耗性疾患の1つであるが、うつ病患者のうち、適切な抗うつ薬治療により寛解を達成できるのは半分以下である。うつ病治療における、その他の有望な治療オプションに認知行動療法(CBT)がある。しかし、CBTの実施には、経験豊富なセラピストや多くの施行時間を要するため、普及は容易ではない。国立精神・神経医療センターの渡辺 範雄氏らは、薬物療法のみで反応不十分なうつ病患者に対し、抗うつ薬切り替えと同時にスマートフォンを用いたCBTプログラムを併用した際の有効性を検討するための研究(FLATT Project)を開始した。Trials誌2015年7月7日号の報告。 主な研究デザインは以下のとおり。・2014年9月より、多施設無作為化試験を実施。・スマートフォンを用いたCBTプログラムは、うつ病のための「こころアプリ」という名で開発され、その実行可能性は、先行のオープン試験で確認されている。・プログラムは、イントロダクション、6つのセッション、エピローグから構成され、患者が自身で9週間以内に完了できるよう設計されている。・対象患者は、DSM-5でうつ病と診断され、4週間以上の適切な抗うつ薬治療を行ったが無反応または部分反応であった164例。「こころアプリ」を抗うつ薬切り替えに併用した群(アプリ併用群)と切り替えのみを行った群(切り替え群)に割り付ける。・切り替え群では、9週間後に「こころアプリ」の全コンポーネントを受け取る。・主要評価項目は、評価者盲検にて電話評価で行う、9週間(第0、1、5、9週)を通じたPatient Health Questinnaire-9 (PHQ-9)の合計スコアの変化とした。・副次評価項目は、Beck Depression Inventory-IIの合計スコアの変化、Frequency, Intensity, and Burden of Side Effects Ratings (FIBSER)で評価した副作用の変化、および治療満足度とした。関連医療ニュース うつ病治療、行動療法の意義はどの程度か:京都大学 抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始 これからのうつ病治療はWebベース介入で変わるのか  担当者へのご意見箱はこちら

2048.

統合失調症患者の脳ゲノムを解析:新潟大学

 細胞ゲノム変異と染色体異常は脳疾患の神経病理と関係している。新潟大学の坂井 美和子氏らは、統合失調症患者の脳ゲノムDNAを用いて遺伝子量変化を分析し、細胞ゲノム不安定性と統合失調症との関連について検討した。その結果、疾患に関連する遺伝子コピー数多型(CNV)の候補領域を同定したことを報告した。Molecular Cytogenetics誌オンライン版2015年7月1日号の掲載報告。 統合失調症患者死後脳48例および非精神疾患罹患者死後脳48例の線条体からDNAを抽出し、2色法マイクロアレイ分析を用いて相対的DNA量の変化を認めるCNV候補領域を検索した。さらに、シグナル強度や変化の大きなCNV候補領域を選択しPCRで検証した。 主な結果は以下のとおり。・100万個のプローブで、CNV候補領域を85領域検出した。・このうち26領域は、アジア人集団でみられる一般的なCNVと一致しておらず、統合失調症もしくは他の精神疾患と関連がある遺伝子(ANTXRL、CHST9、DNM3、NDST3、SDK1、STRC、SKYなど)が含まれていた。・このCNV候補領域の大部分は、統計学的にリスク因子である可能性が高いことが示されたが、遺伝子量のシグナル強度の差は1.5倍未満であった。・CNV候補領域10領域を選択し定量的PCR法にて解析した結果、2つの遺伝子座(1p36.21、1p13.3)で遺伝子量の消失、他の2つの遺伝子座(11p15.4、13p21.1)でコピー数配列の全体的な変化が確認された。・しかし、これらの遺伝子座は、他の脳領域においても同じ体細胞CNVパターンを示した。関連医療ニュース 統合失調症の病因に関連する新たな候補遺伝子を示唆:名古屋大学 統合失調症の慢性化に関連する遺伝子か 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定  担当者へのご意見箱はこちら

2049.

抗うつ薬とNSAIDs併用、頭蓋内出血リスク1.6倍/BMJ

 抗うつ薬と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の併用開始30日間において、頭蓋内出血リスクの増大が認められることを、韓国・医薬品安全・リスクマネジメント研究所(Institute of Drug Safety and Risk Management)のJu-Young Shin氏らが、2009~2013年の韓国健康保険データを後ろ向きに分析し報告した。NSAIDs非併用群と比較して1.6倍高かったという。BMJ誌オンライン版2015年7月14日号掲載の報告。5年間の韓国健康保険データを後ろ向きに分析 検討は、傾向スコア適合コホート研究にて行われた。2009年1月1日~2013年12月31日の韓国健康保険データベースから、前年に抗うつ薬処方歴がなく、同じく前年に脳血管障害の診断歴のない初回抗うつ薬投与患者を対象とし、NSADs併用開始後30日以内の頭蓋内出血による入院を調べた。 適合Cox回帰モデルを用いて、傾向スコアで1対1に適合後、抗うつ薬治療患者の頭蓋内出血リスクについて、NSAIDs併用 vs.非併用を比較した。抗うつ薬のクラスによる有意なリスクの差はみられず 傾向スコア評価・適合後、分析コホートには414万5,226例が組み込まれた。 結果、全試験期間中の30日頭蓋内出血リスクは、NSAIDs非併用群よりも併用群が有意に高率であった(補正後ハザード比:1.6、95%信頼区間:1.32~1.85、p<0.001)。 同リスクについて、各クラスの抗うつ薬についてそれ以外の抗うつ薬群と比較し検討したが、統計的に有意な差はみられなかった。

2050.

抗精神病薬の治療域、若年者と高齢者の差はどの程度か

 高齢統合失調症(LLS)患者は抗精神病薬による有害反応の影響を受けやすく、治療ガイドラインでは抗精神病薬の低用量を推奨している。しかし、LLS患者における最適な投与量、それに関連するD2/3R占有率については研究がほとんど進んでいなかった。カナダ・Centre for Addiction and Mental HealthのGraff-Guerrero A氏らは、LLS患者における抗精神病薬減量後のドパミンD2/3受容体(D2/3R)占有率の変化と臨床効果、血中プロラクチンおよび抗精神病薬濃度などを評価した。その結果、臨床的安定と関連するD2/3R占有率の最低値は50%で、D2/3R占有率が60%を超えると錐体外路症状(EPS)が起こりやすいことを明らかにした。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年7月1日号の掲載報告。 研究グループは、LLS患者において抗精神病薬を減量した際の線条体ドパミンD2/3受容体占有率への影響、臨床的特徴、血中薬物動態の評価を目的に、非盲検単群前向き試験を行った。対象は大学附属の3次医療センターの外来診療患者で、追跡期間は3~6ヵ月(2007年1月10日~2013年10月21日)とした。被験者は臨床的安定が保たれているLLSの外来患者35例(年齢50歳以上で、オランザピンあるいはリスペリドンの単剤療法を6~12ヵ月間同量投与)で、追跡は2013年10月21日に完了し、2014年10月22日~2015年2月2日に解析を行った。 ベースライン時から最大40%漸減し、減量前後(減量後は最低3ヵ月経過)にC11標識ラクロプライドを用いたPET画像診断、臨床効果の測定、血中薬物動態測定を実施した。主要評価項目は、抗精神病薬による線条体ドパミンD2/3Rの占有率、臨床効果(陽性・陰性症状評価尺度、簡易精神症状評価尺度、Targeted Inventory on Problems in Schizophrenia、Simpson-Angus Scale、Barnesの薬原性アカシジア評価尺度、Udvalg for Kliniske Undersogelser Side Effect Rating Scale)、血中薬物動態(プロラクチンおよび抗精神病薬の血中濃度)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・減量後、全サンプルのドパミンD2/3R占有率は、平均6.2(SD 8.2)%減少した(70[12]%から64 [12]%へ、p<0.001)。・臨床的安定と関連するD2/3R占有率の最低値は50%であった。・D2/3R占有率が60%を超えるとEPSが起こりやすかった。・ベースライン時にEPSを認めた例の90.5%(21例中19例)、減量後にEPSを認めた例の76.9%(13例中10例)で、線条D2/3R占有率が60%を超えていた。・臨床的悪化を認める患者(5例)は臨床的安定を維持している患者( 29例)に比べ、ベースライン時のD2/3R占有率が低かった(58[15]% vs.72[10]%、p=0 .03)。・減量後、Targeted Inventory on Problems in Schizophreniaのスコアが上昇し(p=0.046)、陽性・陰性症状評価尺度(p=0.02)、簡易精神症状評価尺度(p=0.03)、Simpson-Angus Scale(p<0.001)、Barnesの薬原性アカシジア評価尺度(p=0.03)、Udvalg for Kliniske Undersogelser Side Effect Rating Scale(p<0.001)のスコア、プロラクチン(p<0.001)、抗精神病薬の血中濃度(オランザピン:p<0 .001、リスペリドン+metabolite 9-hydroxyrisperidone:p=0.02)のすべてにおいて低下を認めた。  結果を踏まえて、著者らは「LLS患者の抗精神病薬の治療域は50~60%であり、これまでに報告されていた若年者の65~80%よりも低いことが示された」と述べている。関連医療ニュース 抗精神病薬の単剤化は望ましいが、難しい 高齢統合失調症、遅発性ジスキネジアのリスク低 統合失調症のD2/3占有率治療域、高齢者は若年者よりも低値:慶應義塾大学  担当者へのご意見箱はこちら

2051.

抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症、乳がんリスクとの関連は

 最近のメタ解析で、統合失調症女性患者では一般集団と比べ乳がんが多いことが示され(エフェクトサイズ=1.25、p<0.05)、実験および疫学データの蓄積により、乳がん発症におけるプロラクチン(PRL)の影響について、研究者らに注意が促されていた。ベルギーのルーヴェン・カトリック大学精神科医療センターのM. De Hert氏らは、統合失調症女性患者における抗精神病薬誘発性の高プロラクチン血症(HPRL)と、乳がんリスクとの関連について批判的レビューを行った。その結果、プロラクチンが乳がんの発症に関連するという明確なエビデンスは示されなかったことを報告した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2015年6月26日号の掲載報告。プロラクチン以外の乳がんリスクファクターが個々の症例により大きく関連している可能性 検討は、MEDLINE データベースを用い、英語で公表された臨床試験について文献検索(1950年から2015年1月まで)を行い、統合失調症女性における乳がんリスク(ファクター)と、HPRLおよび抗精神病薬治療との関連に関わる現在の認識に関するデータを特定、統合した。 高プロラクチン血症と乳がんリスクとの関連についてレビューした主な結果は以下のとおり。・乳がん発症におけるプロラクチンの関与を支持するエビデンスが増えているが、ヒトにおけるプロスペクティブ研究の結果は限定的、あいまい、そして相関的(リスク比の範囲、閉経前女性:0.70~1.9、閉経後女性:0.76~2.03)なデータが混在していた。・さらに、局所のオートクリン/パラクリンPRL loopの増幅または過剰発現が腫瘍形成においてより重要なメカニズムであるにもかかわらず、これらの研究では乳房上皮におけるプロラクチンの局所産生が考慮されていなかった。・今のところ、抗精神病薬が乳房悪性腫瘍および死亡リスクを増加させうるという決定的なエビデンスについても得られていない。・未経産、肥満、糖尿病および不健康な生活習慣(アルコール依存、喫煙、低い身体活動性)といったプロラクチン以外の乳がんリスクファクターが、統合失調症女性における個々の乳がん症例により大きく関連している可能性があった。関連医療ニュース プロラクチン上昇リスクの低い第二世代抗精神病薬はどれか 抗精神病薬による高プロラクチン血症に関するレビュー 統合失調症の自殺にプロラクチンは関連するのか

2052.

抗精神病薬の単剤化は望ましいが、難しい

 統合失調症治療において、抗精神病薬の多剤併用を支持するエビデンスはほとんどなく、また診療ガイドラインでこれを推奨していないにもかかわらず、広く普及したままである。米国・サウスフロリダ大学のRobert J Constantine氏らは、2種類の抗精神病薬による治療で安定している患者を対象に、1種類の抗精神病薬への切り替え効果を検討するため、無作為化比較試験を行った。Schizophrenia research誌2015年8月号の報告。 7つの地域精神保健センターからエントリーした、2種類の抗精神病薬での併用治療により安定している成人統合失調症外来患者104例を対象に、多剤併用療法を継続する群(多剤継続群)と抗精神病薬の単剤療法に切り替える群(単剤切り替え群)に無作為に割り付けた。60日ごとに症状と副作用の評価を行い、1年間追跡した(合計7回評価)。評価項目は、症状(PANSS、CGI)と副作用(EPS、代謝関連、その他)の時間経過における違いとし、各群への割り当てと時間を関数として、ITT分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・単剤切り替え群は、多剤継続群と比較し、症状の増加がより大きかった。・これらの違いは、試験開始6ヵ月目に出現した。・試験期間1年間における全原因中止率は、単剤切り替え群(42%)のほうが、多剤継続群(13%)と比較して高かった(p<0.01)。・副作用に関しては、多剤継続群においてSimpson Angus合計スコアが単剤切り替え群と比べて大幅に減少した以外では、いずれの時点においても単剤切り替え群と比較して差は認められなかった。 結果を踏まえ、著者らは「2種類の抗精神病薬で安定している慢性期統合失調症患者に対する単剤療法への切り替えには、注意が必要である。多剤併用の中止にあたっては、多剤併用療法に移行する前に単剤療法で効果不十分な患者を対象とした、エビデンスに基づく治療(たとえばクロザピンや持効性注射剤など)の適切な試験が行われるべきである」とまとめている。関連医療ニュース 難治例へのクロザピン vs 多剤併用 急性期統合失調症、2剤目は併用か 切り換えか:順天堂大学 抗精神病薬の変更は何週目が適切か  担当者へのご意見箱はこちら

2053.

経口抗精神病薬とLAI併用の実態調査

 統合失調症患者における持効性注射剤(LAI)と経口薬の同時処方の頻度および期間について、米国・ペンシルベニア大学のJalpa A Doshi氏らが調査を行った。診療ガイドライン推奨のLAI治療は、一般的にはアドヒアランス不良の患者に対するモノセラピー選択肢と見なされている。LAI治療を受けている患者の、経口抗精神病薬の同時処方の割合や経過に関するデータは限定的であった。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2015年8月号の掲載報告。 研究グループは、医療費請求データベースに基づく観察的研究により、LAI治療を受けているメディケイド受給患者340例について、経口薬の同時処方の頻度および期間を調べた。具体的には、統合失調症患者で、直近にアドヒアランス不良および入院の既往がある患者について調べた。調査には、第1世代の抗精神病薬デポ製剤(フルフェナジンデカン酸エステル、ハロペリドールデカン酸エステル)と、最新の使用可能な注射剤(LAIリスペリドン、パリペリドンパルミチン酸エステル)の両方を含んだ。 主な結果は以下のとおり。・LAI治療を開始した全患者のうち、75.9%が退院後6ヵ月の間に経口抗精神病薬の同時処方を受けていた。・同時処方を受けていた患者は、LAI薬と同一の経口薬を処方されている頻度が高かった。一方で、第1世代のLAI使用者の多くが、第2世代の経口薬を同時処方されていた。・同時処方率が最も低かったのは、パリペリドンパルミチン酸エステルの処方群であった(58.8%)。一方で最も高かったのは、LAIリスペリドンの処方群であった(88.9%)。・経口薬とLAI処方の重複は、概して期間が長期(30日超など)になると発生しており、またLAIにより重複が生じている日の割合が顕著(50%超)であった。 これらの結果を受けて著者らは、「さらなる研究でそのような処方がなされた理由を調べ、また日常診療におけるさまざまな抗精神病薬治療の至適な役割を、明らかにする必要があることが強調された」とまとめている。関連医療ニュース 初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る 統合失調症、デポ剤と抗精神病薬併用による効果はどの程度 アリピプラゾール持続性注射剤の評価は:東京女子医大  担当者へのご意見箱はこちら

2054.

難治性うつ病、抗うつ薬変更とアリピプラゾール追加、どちらが有用か

 うつ病患者において、アリピプラゾール増強療法と他の抗うつ薬への切り替えについて有効性や忍容性を直接比較した研究はない。韓国・高麗大学校のChangsu Han氏らは、外来うつ病患者を対象に、アリピプラゾール増強療法と他の抗うつ薬への切り替えの治療効果を比較するため、6週間の評価者盲検無作為化直接比較試験を行った。Journal of psychiatric research誌2015年7-8月号の報告。 抗うつ薬不応な外来うつ病患者を対象とし、アリピプラゾール増強療法(AA)群、他の抗うつ薬への切り替え(SW)群のいずれかに無作為に割り付けた。抗うつ薬不応の定義は、現在のうつ病エピソードで少なくとも6週間の適切な抗うつ薬治療を行ったにもかかわらず、ハミルトンうつ病評価尺度17項目版(HDRS-17)の合計スコアが14以上とした。主要評価項目は、モンゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)の合計スコアのベースラインから治療終了までの変化量とした。副次評価項目は、事前に定義された治療終了時の反応率と寛解率、HDRS-17合計スコア、Iowa Fatigue Scale(IFS)、Sheehan Disability Scale(SDS)のベースラインから治療終了までの変化量、治療終了時に臨床全般印象-改善度(CGI-I)が1または2であった患者の割合とした。忍容性は、Barnes Akathisia Rating Scale(BARS)、Arizona Sexual dysfunction scale(ASEX)を用い評価し、有害事象数を両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者101例は、AA群52例、SW群49例に無作為に割り付けられた。・ベースラインからのMADRSスコアの平均変化量は、AA群で有意に高く、-8.7の違いがあった(p<0.0001)。両群間の差は、2週間目で認められた。・治療反応者および寛解者の割合は、AA群(60%、54%)のほうがSW群(32.6%、19.6%)と比較して、有意に高かった(各々p=0.0086、p=0.0005)。・ほとんどの副次的評価項目において、AA群はSW群と比較し、より良好な臨床転帰を示した。・忍容性は、両群間で同等であった。 通常の抗うつ薬治療で不応なうつ病患者に対して、アリピプラゾール増強療法は、他の抗うつ薬への切り替え投与と比較して、全体的に有益な臨床転帰を示した。この結果を踏まえ、著者らは「本研究の方法論における欠点を考慮し、適切な検出力のある、より厳密な対照を置いた臨床試験の実施が必要である」とまとめている。関連医療ニュース 治療抵抗性うつ病患者が望む、次の治療選択はどれ 難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用か 日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法:名古屋大学  担当者へのご意見箱はこちら

2055.

妊娠前後のSSRIは出生異常と関連するか/BMJ

 妊娠前後のパロキセチンおよびfluoxetineの使用により新生児の右室流出路狭窄のリスクが高まるが、他の選択的セロトニン再取り込み薬(SSRI)ではこのような関連はみられないことが、米国疾病管理予防センター(CDC)のJennita Reefhuis氏らの調査で明らかとなった。再生産年齢(reproductive age)および妊娠中の女性のSSRI使用が増加しているが、SSRIと出生異常の関連については相反する報告があり、妊娠中のSSRI使用のリスクとベネフィットの評価は十分ではないという。BMJ誌オンライン版2015年7月8日号掲載の報告。文献と症例対照研究のデータをベイズ法で解析 研究グループは、妊娠前後のSSRIの使用と出生異常の関連を評価した文献をレビューし、症例対照研究であるNational Birth Defects Prevention Study(NBDPS)のデータと合わせて解析を行った。 1997~2009年の出産予定者の出生証明書および出産した病院の記録を調査し、出生異常児の母親1万7,952例と出生異常のない児の母親9,857例を同定した。 このうち妊娠前の1ヵ月以内および妊娠3ヵ月までにSSRI[シタロプラム、エスシタロプラム、fluoxetine(国内未承認)、パロキセチン、セルトラリン]の使用歴がある女性について解析を行った。 情報をより強固なものにするために、ベイズ法を用いて文献から得られた個々の知見を集約し、NBDPSのデータを用いてこれらの知見をアップデートした。これまでに報告されているSSRIによる出生異常との関連を評価した。関連のある出生異常も絶対リスクは低い 最も使用頻度の高いSSRIはセルトラリンであった。セルトラリンとの関連が報告されている5つの出生異常は、この調査ではいずれも関連はなかった。また、シタロプラム、エスシタロプラムについても、特定の出生異常との関連は認めなかった。 パロキセチンは次の5つの出生異常との関連が示された。無脳症(事後オッズ比[OR]:3.2、95%信用区間[CrI]:1.6~6.2)、心房中隔欠損症(1.8、1.1~3.0)、右室流出路狭窄(2.4、1.4~3.9)、腹壁破裂(2.5、1.2~4.8)、臍帯ヘルニア(3.5、1.3~8.0)。 また、fluoxetineは、右室流出路狭窄(事後OR:2.0、95%CrI:1.4~3.1)および頭蓋縫合早期癒合症(1.9、1.1~3.0)と有意な関連が認められた。 これまでにSSRIとの関連が報告されている他の9つの出生異常については、この調査では関連を認めなかった。また、この調査で関連が確認された出生異常の絶対リスクの上昇は小さく、パロキセチンによる無脳症および右室流出路狭窄の絶対リスクは依然として低かった。 著者は、「SSRIと出生異常の関連については、今後も精密な調査を継続する必要がある。今回の解析は、現時点で出生異常のリスクを最小化する最も安全な妊娠中の治療選択肢とともに、母親の適切なうつ病治療を提示するのに役立つであろう」と指摘している。

2056.

MRIが役に立たないという論文が出てしまいましたが…(解説:岡村 毅 氏)-386

 地域住民のコホート研究が明らかにしたところでは、MRI検査が一般人口における認知症の発症の予測において、あまり役に立たないという結果である。そうだろうなとしかいいようがない。 はじめに声を大にして述べておくが、放射線医学はすべての医学の基盤たる重要な領域であり、認知症学においても形態画像・機能画像ともに、必須のデバイスである。物忘れ外来(専門外来)に認知機能低下が疑われる患者さんが紹介されてきたが、非定型的な症状を呈しているために診断が困難である場合、画像検査の一環としてMRIを撮ることは絶対に必要である。 しかし、まだ健康な人の認知症発症予測には役に立たないということである。当たり前にも思えるが、臨床においては一般の方のテクノロジー信仰は絶大であると実感することも多いので、以下気楽に読んでください。 こんなケースはどうだろうか? 物忘れの不安を訴えて一般外来を受診された中年の方がいたとして、家族からみて心配はないのに本人はいたく気にしている。とりあえずは、いわゆるスクリーニング検査をしていただいたところ、カットオフ値のはるか上で、記憶力(遅延再生など)は問題がなく、注意の障害が軽度みられ(逆唱など)、詳しく聞くと心気症と睡眠障害が軽度出現している場合……、精神科医としてはうつ病を考えて、そっちの詳しい評価に移りたくなる。 が、認知症が心配なのでMRIを撮ってくださいと主張される。「何かわかるかもしれないじゃないですか、うつ病のこともわかるでしょ」というわけである。そもそも、精神機能そのものは形あるものではなく、また認知症が形態画像でわかるのは一定の進行がみられてからだし、現在の症状では少なくともCTで十分ではと伝えてもなかなか納得していただけない。 OECD(経済協力開発機構)によれば、日本は人口当たりのMRI装置数が最大の国だ1)。私見であるが、これはわが国の豊かさと同時に、資源配分の戦略性の欠如を示しているような気もする。暴論と思われたらお許しいただきたい。テクノロジーに対する信頼が高いのは悪いことではないし、繰り返しになるが専門外来に紹介されてきた人における鑑別においては、きわめて有力なツールである。また、研究の一環として将来の患者さんのために体系的に撮ることは生産的である。しかし、一般外来で戦略なく撮ることにはあまり意味はないだろう。それよりは、プライマリケアでは時間をかけて、生活歴や健康関連要因や心理社会的要因をきちんと問診できるような制度設計にしたほうが良い。 「認知症になる前に撮っても、その人にはあまり利益はない」、専門家なら皆そう思っていると信じるが、このような当たり前のことにエビデンスを付与した味わい深い論文である。 なお、筆者は自費で検診としてMRI検査を受ける場合は、まったく議論の土台が異なるのであり、これを否定しているのではないことを申し添えておく。【参考】1)Health equipment. Magnetic resonance imaging (MRI) units. OECD Data. (参照 2015.7.18).

2057.

双極性障害と心血管疾患の関係性

 米国・メイヨークリニックうつ病センター(Mayo Clinic Depression Center)のMiguel L Prieto氏らは、精神病の既往や心血管疾患(CVD)リスク因子といった双極性障害の臨床的特徴が、双極性障害患者におけるCVDリスクに関与するかどうかを調査する目的で横断研究を実施した。その結果、精神病性双極性障害の表現型が心疾患の合併ならびにその重症度と関連している可能性があることが明らかにされた。Bipolar Disorder誌オンライン版2015年6月9日号の掲載報告。 対象は、DSM-IV-TR構造化面接(SCID)によって確認された双極I型/II型障害、または統合失調感情障害双極型の患者988例であった。心疾患の重症度判定も含む13項目からなるCumulative Illness Severity Rating Scale(CIRS)を使用し、合併症についてカルテに基づき評価した。スコア1(現在は軽度または過去に重大の問題があった)または心臓に関する項目で点数の高い患者と、スコア0(障害なし)の患者とを比較するロジスティック回帰分析を行った。 結果は以下のとおり。・多変量モデルにおいて、年齢(オッズ比[OR]:3.03、95%信頼区間[CI]:1.66~5.54、p<0.0001)、高血圧(同:2.43、1.69~3.55、p<0.001)、精神病の既往(同:1.48、1.03~2.13、p=0.03)はCVDと有意な関連がみられた。・文献から得られたCVD危険因子を分析に加えた場合、CVDとの関連は年齢(OR:3.19、95%CI:1.67~6.10、p=0.0005)および高血圧(同:2.46、1.61~3.76、p<0.01)は有意なままであったが、精神病(同:1.43、0.96~2.13、p=0.08)は有意傾向であった。 結果を踏まえ、著者らは「精神病性双極性障害の表現型が、心疾患の合併ならびにその重症度と関連している可能性がある。今後は、この関連にうつ病の疾病負荷やライフスタイル、非定型抗精神病薬による治療がどう影響しているかを検討する必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大 認知症への抗精神病薬使用は心臓突然死リスクに影響するか 双極性障害への非定型抗精神病薬、選択基準は  担当者へのご意見箱はこちら

2058.

統合失調症、脳容積とIQの関連

 統合失調症では知能低下と脳容積の減少がみられることが知られている。オランダ・ユトレヒト大学医療センターの久保田 学氏らは、統合失調症患者のIQと脳容積との関連について調査し、統合失調症における進行性の脳組織減少が、発症初期における相対的な認知機能低下と関連している可能性があることを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年6月17日号の掲載報告。統合失調症患者ではIQスコアが皮質容積および皮質厚の変化と正の相関 本研究は、ユトレヒト大学医療センター精神科において2004年9月22日~2008年4月17日に、縦断的症例対照研究として行われた。対象は、統合失調症患者84例(平均罹患期間4.35年)、および年齢で適合した健常者116例(対照群)で、3年間追跡した。脳のMRI撮像とIQ測定を試験開始時および終了時に行い、脳全体、大脳灰白質、大脳白質、側脳室、第3脳室、皮質および皮質下の容積、皮質厚ならびに皮質表面積とIQスコアの変化との関連を調べた。 統合失調症患者のIQと脳容積との関連について調査した主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者群では対照群と比較して、大脳灰白質容積(p=0.006)、皮質容積(p=0.03)および皮質厚(p=0.02)が減少した。・統合失調症患者群は、右縁上、後部上側頭、左縁上、左中心後回および後頭部の皮質容積および皮質厚の減少も認められた(clusterwise補正後のp<0.03~0.001)。・統合失調症患者群では、IQスコアの変化が側脳室容積の変化と負の相関(p=0.05)を、皮質容積および皮質厚の変化と正の相関(それぞれp=0.007、p=0.004)を示した。・統合失調症患者のIQスコアと皮質容積ならびに皮質厚の変化との正の相関は、全体的かつ前頭部、側頭部、頭頂部にわたり広範囲に認められた(clusterwise補正後のp<0.03~0.001)。・これらの統合失調症患者のIQと脳容積との関連についての知見は、3年間の追跡期間中の各評価時の症状重症度、大麻の使用および非定型抗精神病薬の累積使用量とは独立していた。関連医療ニュース 抗精神病薬が脳容積の減少に関与か 遅発型統合失調症、脳の変化に違い:産業医大 若年発症統合失調症、脳の発達障害が明らかに  担当者へのご意見箱はこちら

2059.

レビー小体型認知症、認知機能と脳萎縮の関連:大阪市立大学

 レビー小体型認知症(DLB)患者における側頭葉内側萎縮(MTA)と認知機能障害との関係はいまだ明らかにされていない。大阪市立大学の田川 亮氏らは、これらの関係について、MRIを用いて検討した。その結果、MTAは記憶や言語に関する認知機能障害と関連している可能性を報告した。Geriatr Psychiatry Neurology誌オンライン版2015年6月11日号の掲載報告。 対象は、DLBと診断された37例で、1.5 Tesla MRIスキャナーにより検査した。すべてのMRIデータは、MRIスキャンで得られる画像上でMTAの程度を定量化できるvoxel-based specific regional analysis system for Alzheimer disease(VSRAD)の新型ソフトウエアを用いて分析した。関心体積(VOI)の標的は嗅内皮質、海馬、扁桃体の全領域とした。MTAの程度は標的VOI上の平均positive Zスコア(数値が高いほどMTAが重度)により評価した。認知機能障害の有無について、Mini-Mental State Examination(MMSE)および改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R:MMSEと比べ記憶と言語の評価に有効である)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・ZスコアとMMSE総スコアあるいはHDS-R総スコアの間に負の相関が認められた。・ステップワイズ法による重回帰分析により性別、年齢、発症年齢、DLB罹患期間、就学年数およびドネペジル治療などの共変数を調整して検討した結果、HDS-R総スコアはZスコアと独立した関係にあること、その一方、MMSE総スコアはそうではないことが示された。 以上のことから、MTAがDLB患者の認知機能障害、とくに見当識、即時再生、遅延再生、言語流暢性と関連があることが示唆された。関連医療ニュース レビー小体病変を伴うアルツハイマー病、その特徴は 若年発症統合失調症、脳の発達障害が明らかに EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

2060.

初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る

 第2世代抗精神病薬の持効性注射剤(LAI)は、統合失調症患者の臨床的安定に高い効果をもたらす。しかし、これまで統合失調症初回エピソード後に用いられることはあまり多くはなかった。米国・カルフォルニア大学ロサンゼルス校のSubotnik KL氏らは、統合失調症初回エピソードにおけるリスペリドンの有効性を、剤形の違い(LAIと経口剤)で比較検討した。その結果、LAIは経口剤に比べ、精神症状の増悪や再発率が低く、その背景にLAIの良好なアドヒアランスが関連していることを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年6月24日号の掲載報告。 研究グループは、2005~2012年に、大学ベースのリサーチクリニックにおいて無作為化臨床試験を実施した。最近統合失調症を発症した86例を、リスペリドンLAI群または経口リスペリドン群に無作為に割り付けた。同時に各グループの半数を、認知機能改善を目的とした認知機能改善療法群または生活習慣と健康状態改善を目的とした健康行動トレーニング群に無作為に割り付けた。すなわち本研究は、リスペリドンLAIと経口リスペリドンの比較、そして認知機能改善療法と健康行動トレーニングの比較を行った12ヵ月間の臨床試験であった。解析はintent-to-treatにて、2012年10月4日~2014年11月12日に実施された。主要アウトカムは、精神疾患再発およびブレークスルー精神症状のコントロールとした。 主な結果は以下のとおり。・86例が無作為化を受けた。そのうちLAI群の3例が治療を拒否した。・リスペリドンLAI群は経口剤群と比較して、精神症状の増悪や再発率(またはその両方)が低かった(5% vs.33%、χ21=11.1、p<0.001、相対リスク減少 84.7%)。・追跡期間にわたり、LAI群は幻覚および妄想の平均レベルを、より良好にコントロールした(β=-0.30、t 68=-2.6、p=0.01)。・認知機能改善療法群と健康行動トレーニング群の間で、精神疾患再発、精神症状のコントロール、入院率において有意差は認められなかった。・2種類の薬物療法と2種類の心理社会的治療の間にも、有意な相互作用は認められなかった。・臨床効果不十分による治療中止は、LAI群よりも経口剤群でより多かった(χ21=6.1、p=0.01)。・経口リスペリドンのアドヒアランスは、無作為化前と変わらないようであったが、リスペリドンLAIのアドヒアランスは、経口リスペリドンと比べて良好であった(t 80=5.3、p<0.001)。・薬剤アドヒアランスは、症状悪化または再発の予防(χ21=11.1、p=0.003)、そしてブレークスルー精神症状のコントロールと関連していた(β=0.2、t 79=2.1、p=0.04)。 今回の結果を踏まえて、著者らは「統合失調症初回エピソード後のリスペリドンLAI使用は、臨床的アウトカムに対して顕著なアドバンテージがあった。疾患のより早期から、本剤形の使用が勧められる」とまとめている。関連医療ニュース 月1回の持効性抗精神病薬、安全に使用できるのか 統合失調症へのアリピプラゾール持効性注射剤、経口剤との差は 非定型抗精神病薬のLAIを臨床使用するためには  担当者へのご意見箱はこちら

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