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メンタルヘルスケアアプリ利用で産後うつリスクが低下する可能性

 メンタルヘルスケアのために開発された、スマートフォンなどで利用可能なアプリケーションが、産後うつのリスクを抑制する可能性のあることが報告された。浜松佐藤町診療所(静岡県)の三浦弓佳氏らが行った、システマティックレビューとメタ解析の結果であり、詳細は「BMC Pregnancy and Childbirth」に6月14日掲載された。 国内の妊産婦の死亡原因のトップは自殺であり、これには産後うつの影響が少なくないと考えられている。産後うつによる自殺を防ぐためには、産後うつ状態の早期診断と適切なケアが重要だが、産後には育児などのために時間的な制約が生じることや、偏見などのために、うつリスクがあるにもかかわらず受療行動を起こさない女性が少なくない。このような状況に対応して、モバイルテクノロジーを用いたメンタルヘルスケアアプリが開発されてきた。ただ、それらのアプリの有用性の検証がまだ十分でなく、特に産後うつの「治療」ではなく「予防」という視点でのエビデンスはより不足している。そこで三浦氏らは、システマティックレビューとメタ解析による検討を行った。 主要アウトカムを産後うつの発症、副次的アウトカムをうつ状態の評価スケール〔エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)など〕のスコアとして、システマティックレビューとメタ解析のための優先的報告項目(PRISMA)に基づき、MEDLINE、Scopus、PsycINFO、CINAHLなどの文献データベースや国際臨床試験登録プラットフォーム(ICTRP)を用いて、無作為化比較試験の報告やレビュー論文の参考文献を2020年3月26日に検索。2023年3月17日に新たに追加された文献の有無を確認した。解析対象は、用いられたアプリ自体に自動化された心理社会的介入が含まれている研究報告とし、通話やチャットなどの通信のみを提供するアプリによる研究は除外した。また、研究参加者に精神疾患の既往者が含まれている研究も除外した。 計2,515件がヒットし、タイトルと要約に基づくスクリーニング、全文精査を経て、最終的に16件を解析対象として抽出した。メタ解析に必要なデータが不足している場合は、論文の著者に連絡を取り提供を依頼した。 16件の研究は全て2015年以降に報告されたもので、中国、ポルトガル、シンガポールから各3件、米国から2件、そのほかに日本を含む数カ国から1件ずつ報告されていた。8件は出産前から介入が開始され、ほかの8件は出産後の介入だった。介入の内容は、認知行動療法に基づくものが6件、マインドフルネスに基づくものが3件であり、そのほかには心理教育的手法によるもの、愛着理論に基づくものなどが含まれていた。 産後うつの発症への影響を検討していた研究は3件で、そのうち1件はデータが不十分であったため、2件をメタ解析の対象とした。それら2件ともに有意な影響を報告しておらず、メタ解析の結果もリスク比(RR)0.80(95%信頼区間0.62~1.04)であって非有意だった(P=0.570)。 一方、EPDSスコアへの影響は14件の研究で検討されており、それらの中でカップルを対象とした2件の研究を除外し、母親のみに介入が行われた12件をメタ解析の対象とした。12件中4件は介入によるEPDSスコアの有意な低下を報告し、ほかの8件は非有意という結果を報告していた。メタ解析の結果は、標準化平均差(SMD)-0.96(-1.44~-0.48)であり、有意な効果が示された(P<0.001)。なお、データの不均一性が高かった(I2=82%)。 以上の結果に基づき著者らは、「心理社会的介入が可能なアプリによる産後うつ発症リスクの有意な低下は認められなかったが、EPDSスコアは有意に抑制されることが確認された。アプリによる介入が産後うつの発症を予防する可能性もあると言えるのではないか」と述べている。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、産後うつの増加が報告されていること、および、妊娠中から産褥期の感染リスク抑制のために介入可能な機会が減っていることから、「スマホやタブレットを用いた介入が今後、より注目されるようになると考えられる」と付け加えている。

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第178回 「令和の米騒動」と神戸・甲南医療センター専攻医過労自殺・労災認定で感じた共通の”病根”(後編)多くの業務が自己研鑽扱いの同病院指針の中身

中日ドラゴンズ、39イニング無得点、依然低迷続くこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。今週も前回に引き続き、「令和の米騒動」と神戸・甲南医療センター専攻医自殺・労災認定について書いてみたいと思います。専攻医自殺については、日本医師会の松本 吉郎会長がコメントを発表するなど、新しい動きもありました。一方、「米騒動」が勃発している中日ドラゴンズですが、相変わらず歴史的低迷が続いています。9月10日の対巨人戦では40イニングぶりに得点をしたもののゲームには破れ、3年連続Bクラスが確定しました。9月11日現在、勝率は3割8分、借金は今季最多の29です。立浪 和義監督は3年契約の2年目ですが、スポーツ紙はその去就に注目し始めています。男性医師の死亡直前1ヵ月の時間外労働は207時間50分さて、神戸市東灘区の公益財団法人甲南会・甲南医療センターにおける男性専攻医の過労自殺・労災認定について簡単におさらいしておきましょう。労災認定が判明したのは8月17日で、読売新聞をはじめ全国紙、NHKなどが一斉に報じました。各紙報道によれば、労災が認められたのは、神戸大医学部卒業後2020年4月からセンターで研修医として勤務し、2022年4月から消化器内科の専攻医として働いていた男性医師です。同年5月17日の退勤後、神戸市の自宅で亡くなっているのを訪ねた家族が見つけ、兵庫県警が自殺と断定したとのことです。西宮労働基準監督署(兵庫県)による労災認定は2023年6月5日付で、認定によると、男性医師の死亡直前1ヵ月の時間外労働は207時間50分で、3ヵ月平均でも月185時間を超えており、いずれも国が定める精神障害の労災認定基準(月160時間以上、3ヵ月平均100時間以上)を大幅に上回っていたとのことです。労基署は「専攻医になったばかりで先輩医師と同等の業務量を割り当てられ、指示された学会発表の準備も重なり、長時間労働となった」と判断、長時間労働で精神障害を発症したことが自殺の原因と結論付けています。「過重な労働をさせた認識はまったくない」と病院長労災認定が明らかになった8月17日、甲南医療センターの具 英成(ぐ・えいせい)院長は記者会見し、「病院として過重な労働をさせた認識はまったくない」と長時間労働の指示を全面否定しました。労基署が認定した労働時間は207時間に対し、男性医師が甲南医療センターに申告した死亡前月の時間外労働は30.5時間でした。しかし、具院長は記者会見で、労基署の認定には労働に当たらない自主的な「自己研鑽」の時間が含まれているとの見方を示し、「見解に相違がある」と述べたとのことです。文春が甲南医療センターの「自己研鑽についての指針」の内容をすっぱ抜く自己研鑽の時間は労働時間には含まれないことになっています。自己研鑽と労働の区別については、厚生労働省が2019年7月に通知1)でその考え方を示しています。この通知に則って、各医療機関が自己研鑽の基準を定めているわけですが、その解釈・運用は病院によってまちまちです。各紙報道によれば、男性医師が勤務していた当時、甲南医療センターは自己研鑽の基準を明文化した文書はなく、男性医師が亡くなった約5ヵ月後の2022年10月に初めて「医師の時間外労働と自己研鑽についての指針」が作られたそうです。この指針はその後アップデートされ、今年4月に「Ver.2.0」が職員に配布されています。8月21日付の文春オンラインが「『院外持出厳禁』文書入手 病院が職員に配った『あれも業務外、これも自己研鑽』マニュアル」と題する記事で、その詳しい内容を報じています。「Q&A形式」で構成されたその内容は、初期研修医や専攻医にはなかなか厳しいものとなっています。「自らが術者である手術や処置等の予習や振り返りは自己研鑽」文春オンラインの記事から「指針」の一部を紹介します。Q新しい治療法や新薬についての勉強*新しい治療法や新薬について保険適応になっているのであれば(もしくはもうすぐ承認)医療業務、未承認であれば患者さんに還元されないので自己研鑽の範囲では?A新しい治療法や新薬の保険適応に関係なく、自己学習は自己研鑽になります。Q自分が主治医である患者の手術、検査、処置等についての予習や振り返り*就業開始前の朝のカルテチェック、予習は医療業務に入らない?*朝の始業前の時間の回診なども医療業務では?*術前・後、検討会の発表のための予習・振り返りは?A時間によらず、カルテチェック、予習、復習、回診等は医療業務にあたります。これを、できるだけ勤務時間内に行う努力が必要です。就業開始前ではなく、可能な限り、就業開始時間(8:30)と外来、検査開始時間(9:00)の間に行うよう各科で工夫が必要です。(中略)自らが術者である手術や処置等の予習や振り返り、検討会の発表のための準備としての予習・振り返りは自己研鑽になります。本人が「自己研鑽」として行っていないことについては最終的には上司が判断Q本人が「自己研鑽」として行っていないことを、上司が「自己研鑽」だと決めつけたり評価することはおかしい。A一般企業と同じく、病院に勤務する医師の労務管理には一定のルールが必要であり、各勤務医の勤務状況を医療業務とするか自己研鑽とするかは、労働基準局通達を基にしたこの指針に記載した当院の規則に則って、最終的には上司が判断します。同記事によれば、「2022年10月版」と、実際に職員に配られた「2023年4月版」を比較すると、「2023年4月版」では「当院における自己研鑽と時間外医療業務の区別の具体的な例」の一覧として、自己研鑽の例の最後に「初期研修医、専攻医プログラムに沿った学会発表、症例登録、サマリー作成、事務作業等」といった文言が追加されていたとのことです。これに関連して同記事では、関西地方の別病院の勤務医による「専門医になる上で学会発表は免れない。これを業務時間外とするのはさすがにブラック過ぎます。うちの病院では間違いなく『業務』として扱いますよ」というコメントを紹介しています。かつてのスター外科医と若手医師の間には働き方を巡って大きな認識のズレ?多くの“業務”が「自己研鑽」扱いとなり、本人が「自己研鑽」と認識していない“業務”も、最終的に上司の判断次第で「自己研鑽」とされてしまう状況は、まさにブラック企業と言えるでしょう。その経営方針は、公益財団法人甲南会のものだと言えそうです。甲南会は、甲南医療センターのほかに、六甲アイランド病院、甲南加古川病院も経営しており、これらの病院でも自己研鑽の解釈は同じ指針に則って運用されると考えられます。ちなみに、甲南会の経営トップである代表理事は、記者会見にも出席した甲南医療センター院長の具院長です。週刊文春8月31日号に掲載された「神戸市26歳医師自殺」の記事にはその具院長について次のような興味深い証言が紹介されています。「かつてバリバリの外科医でした。24時間ぶっ通しで執刀するような移植手術をいくつも成功させ、『ゴッドハンド』と賞賛されてきた。だから、『こんな程度の残業時間で自殺するか?』という考えが根底にあるように映ります」。実際、具院長は神戸大学で肝胆膵外科学教授や同大学附属病院移植医療部長を務めるなど、華々しい経歴を持つ、スター外科医だったようです。かつてのスター外科医と若手医師の間には自己研鑽の解釈や働き方を巡って、大きな認識のズレがあったのかもしれません。なにやら中日ドラゴンズの「令和の米騒動」に似てませんか?遺族が厚生労働省を訪れ甲南医療センターへの調査などを求め嘆願書提出8月25日、専攻医の過労死自殺について加藤 勝信厚生労働大臣は閣議後の記者会見で言及、「医師の自己研鑽については各医療機関に手続きを明確化するよう通達を出している」と説明、「医師の健康が、国民への医療提供の基盤。医師の適切な労働時間管理がされるよう、必要な支援を含めた対応を図る」と述べたとのことです。そして、8月31日には、自殺した専攻医の遺族(母親ら)が厚生労働省を訪れ、甲南医療センターへの調査や医師の働き方改革の実現などを求める嘆願書を提出しました。各紙報道によれば、嘆願書は「甲南医療センター自体が研修医や専攻医を単なる労働力としか捉えておらず、病院内に長時間労働を許容する土壌があったのではないかと懸念している」などとして、「労働基準法違反の調査と是正」「甲南医療センターでの医師の労働環境の改善」「西宮労基署による刑事告訴の適切な捜査と情報提供」「医師の働き方改革の実現」「日本専門医機構への指導」「労働時間の適切な把握と管理」の6点を要望したとのことです。なお嘆願書提出後の記者会見には、24年前に医師である夫を過労自殺で亡くした中原 のり子氏も出席、8月31日付で「医師の過労死遺族の会」(仮称)を結成したことも報告されています。兵庫県で医療関連の事件報道が連続する謎こうした動きに日本医師会も反応しました。日本医師会の松本会長は9月6日の定例記者会見で甲南医療センターの専攻医が過労自殺した件に触れ、「この不幸な事象は、医師の団体である日本医師会としても大変重く受け止めている。このような事態に陥った原因は、様々なことが考えられるが、若手医師、そして勤務医の就労環境が背景にあったことは紛れもない事実」と述べるとともに、「日本医師会としては、今後も医療の質・安全を保ちつつ、医療DXや医師の健康を守り、医師の働き方改革の趣旨、目的に向けての取り組みを強力に進めながら、今後このような不幸なことが起こらぬよう、最優先で取り組んでいく」と再発防止に力を入れる考えを示しました。今後、甲南医療センターに労基署等の調査が入り、何らかの処分が下されるかどうかが注目されますが、そんな中、再び研修医自殺のニュースが入ってきました。兵庫県伊丹市立伊丹病院の男性研修医(当時25)が2018年、長時間労働などで精神障害を発症し自殺したとして、両親が病院側に約1億3,000万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴していたことがわかったのです。9月4日付の朝日新聞などの報道によれば、伊丹労働基準監督署は今年3月、死亡する直前の1ヵ月間で約80時間の時間外労働があったことなどを踏まえ、「亡くなるまでにうつ病のような症状があったと考えられる」として男性研修医の労災を認定、遺族側は病院側に責任があるとして損害賠償を求め、神戸地裁に提訴したとのことです。医師の働き方改革の本格実施を直前にして、医師の過労死や過労自殺の報道が今後も増えそうな気配です。それにしても、「第173回 兵庫で起こった2つの“事件”を考察する(前編) 神戸徳洲会病院カテーテル事故と『脳外科医 竹田くん』」以来、ここのところ兵庫県の医療関連の事件報道が多い印象です。何かの偶然でしょうか、それとも兵庫、神戸の医療界で何かが起こっているのでしょうか?少し調べてみたいと思います。参考1)「医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について」令和元年7月1日基発0701第9号/労働基準局長通知

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米FDAが多発性硬化症治療薬のバイオシミラーを初承認

 米食品医薬品局(FDA)は8月24日、再発型の多発性硬化症(MS)に対する点滴静注薬であるタイサブリ(一般名ナタリズマブ)の初のバイオシミラー(バイオ後続品)であるTyruko(一般名natalizumab-sztn)を承認したことを発表した。バイオシミラーとは、FDAがすでに承認済みの生物学的製剤と類似性が極めて高く、臨床的効果に大きな差のない生物学的製剤のことを指す。 Tyrukoの使用は、1)臨床的に孤立した症候群(初めて単一のMS症状が出現した状態)、2)再発寛解型MS(症状が現れる再発と症状が治る寛解を交互に繰り返す)、3)二次性進行型MS(再発寛解型MSを経て、徐々に再発がなくても症状が進行していく状態)の3つのタイプのMSに対して承認された。なお、Tyrukoはタイサブリと同様に、従来のクローン病治療薬やTNF(腫瘍壊死因子)-α阻害薬が奏効しない、あるいは忍容性のない中等度から重度の活動性のクローン病患者において、臨床的な応答と寛解の誘導を目的に使用することも可能である。 FDA医薬品評価研究センター(CDER)のPaul R. Lee氏は、「バイオシミラーは新たな治療選択肢を提供するものであり、Tyrukoの承認は再発型MS患者における治療アクセスを増やす可能性がある。今回の承認は、MS患者が自分の症状をコントロールする上で有意義なものとなるだろう」と述べている。 Tyrukoの承認は、同薬剤とタイサブリとの間に、安全性、純度、力価(すなわち、安全性と有効性)において意味のある差がないことを示すエビデンスに基づいている。Tyrukoやタイサブリを含めたナタリズマブ製剤の添付文書の枠組み警告には、脳のウイルス感染症である進行性多巣性白質脳症(PML)のリスク増加に関して記載されている。FDAは、ナタリズマブ製剤を処方する際には、PML発症のリスク因子である、抗JCウイルス(JCV)抗体の有無、治療期間の長期化、免疫抑制剤の使用歴などを考慮すべきであると指摘している。 このようなPML発症リスクの存在から、ナタリズマブ製品は、特定の制限付き薬物流通プログラムの下で、リスク評価および緩和戦略(REMS)に従って提供される。REMSは、ナタリズマブ製剤を処方する医療専門家とその調剤を担う薬局に対して特定の認定資格を求め、また患者もREMSに登録される必要がある。REMSの要件の一部を挙げると、処方者は初回注入の3カ月後と6カ月後、その後は6カ月ごとに、また治療を中止する場合は中止直後とその6カ月後に、患者を評価する必要がある。 添付文書には、ヘルペス感染、血小板減少、免疫抑制、アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応、肝毒性などのリスクに関する警告が追加されている。副作用として最も頻繁に生じるのは、関節痛、尿路感染症、下気道感染症、胃腸炎、膣炎、うつ病、四肢痛、腹部不快感、下痢、発疹である。 Tyrukoの承認はSandoz社に対して付与された。

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モーニングコーヒーでうつ病リスクが低下

 最近の研究では、カフェイン摂取がうつ病リスク低下と関連していることが示唆されている。しかし、どの時間帯でのカフェイン摂取がうつ病リスクと関連しているかは、よくわかっていない。中国・山東中医薬大学のJiahui Yin氏らは、さまざまな時間帯におけるカフェイン摂取とうつ病リスクとの関連を調査した。その結果、早朝にカフェインを摂取した人は、うつ病有病率が低く、早朝以外の時間帯にカフェインを摂取する人は、うつ病有病率が高いことを報告した。Journal of Affective Disorders誌11月号の報告。 米国の成人2億1,800万人を重みづけした米国健康栄養調査より抽出した施設に入居していない成人を対象に、横断的研究を実施した。さまざまな時間帯におけるカフェイン摂取とうつ病リスクとの関連を調査するため、共変量調整サンプル加重回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・早朝(5:00~8:00)以外の時間帯でのカフェイン摂取は、うつ病有病率の高さとの関連が認められた(未調整オッズ比[OR]:1.08、95%信頼区間[CI]:1.05~1.11、調整後OR:1.03、95%CI:1.00~1.06)。・早朝にカフェインを摂取した人は、そうでなかった人と比較し、うつ病有病率が低かった(未調整OR:0.75、95%CI:0.67~0.85、調整後OR:0.86、95%CI:0.75~0.99)。

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米FDAが産後うつ病の経口治療薬Zurzuvaeを承認

 米食品医薬品局(FDA)は8月4日、産後うつ病(PPD)に対する初めての経口治療薬としてZurzuvae(一般名zuranolone)を承認した。Zurzuvaeの1日当たりの推奨用量は50mgで、毎夕14日間、脂肪の多い食事とともに摂取する。産後うつに対する治療薬としては、2019年にZulresso(一般名ブレキサノロン)がFDAにより承認されている。この承認は画期的ではあったが、Zulressoは、医療機関で医療従事者による点滴投与が必要な上に、点滴には60時間もの時間を要する。 PPDは他のタイプのうつと同様、悲しみ、かつて楽しんでいた物事への関心の喪失や楽しみの減少などを特徴とする。また、認知機能の障害、悲嘆や無力感、活力の喪失、自殺念慮を伴うこともある。米国では、8人に1人の女性が出産の直前、あるいは出産後に抑うつ症状を発症している。 ZulressoとZurzuvaeは両方とも、プロゲステロンの副産物である神経ステロイドのアロプレグナノロンを有効成分とする薬剤である。アロプレグナノロンの濃度は、妊娠中に劇的に上昇し、出産後に急降下することがあり、産後抑うつ症状の一因となる可能性が指摘されている。 Zurzuvaeの有効性は、PPD患者を対象にした2件の多施設共同ランダム化比較試験において確認された。対象者は、1件目の研究では、Zurzuvae 50mgを毎夕14日間摂取する群とプラセボを摂取する群に、2件目の研究では、毎日1回、zuranolone 30mg(Zurzuvae 40mgに相当)、またはプラセボを14日間摂取する群にランダムに割り付けられた。その結果、いずれの研究でも、介入群では15日目にハミルトンうつ病評価尺度17項目で評価した抑うつ症状が、プラセボ群よりも有意に改善したことが示された。この治療効果は、介入終了から42日目でも維持されていた。 安全性に関しては、Zurzuvaeの服用で最も頻繁に生じた副作用は、眠気、めまい、下痢、倦怠感、鼻咽頭炎、尿路感染症などであった。また、Zurzuvaeの服用は、自殺念慮や自殺行動を引き起こす可能性があるほか、胎児に害を及ぼす可能性もある。さらにFDAは添付文書の枠組み警告において、Zurzuvaeの服用が運転などのリスクを伴う活動を行う能力に影響を与える可能性があるとし、服用後12時間は運転や重機の操作をしないように注意を促している。 2件の論文の筆頭著者である、米ザッカー・ヒルサイド病院のKristina M. Deligiannidis氏は、「zuranoloneが迅速に抗うつ効果を発揮する機序は、現状では正確には分かっていない。しかし、zuranoloneのような神経ステロイドは、ストレスを迅速に軽減し、健全な脳内ネットワークのつながりを回復させることで、脳の健康をサポートする働きをすることが研究で示唆されている」と説明する。同氏はさらに、Zulresso投与で報告されている意識消失がZurzuvaeでは報告されていないことを指摘し、Zurzuvaeの方が安全性の高い可能性があるとの見方を示している。 なお、Zurzuvaeの承認は、Sage Therapeutics社に対して付与された。

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日本発祥の疾患「Hikikomori」が国際的に認知【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第241回

【第241回】日本発祥の疾患「Hikikomori」が国際的に認知Unsplashより使用2022年に米国精神医学会が発行した『DSM-5-TR』に「Hikikomori」が掲載されました。日本語の「ひきこもり」が国際的に認知されつつあるということを意味しています1)。私は一介の呼吸器内科医なので、これを知らず、結構衝撃的でした。さて、九州大学病院における「ひきこもり」に関する研究を紹介したいと思います。Kyuragi S, et al.High-sensitivity C-reactive protein and bilirubin as possible biomarkers for hikikomori in depression: A case-control study.Psychiatry Clin Neurosci. 2023 Aug;77(8):458-460.九州大学における気分障害ひきこもり外来、および関連精神科医療機関を通じて行われたパイロット研究です。被験者は、現在大うつ病エピソードを有する患者121例で、ひきこもり群である「6ヵ月以上」「ほとんど自宅で過ごす」患者45例、非ひきこもり群である「週に4日以上外出する」患者76例で構成されています。血中バイオマーカーとして、過去に精神症状と関連が示されている血清FDP、フィブリノゲン、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、ビリルビン、尿酸、高感度CRPを測定しました。結果、高感度CRP値はひきこもり群で有意に高く、ビリルビン値は有意に低いことが示されました。ただし、高感度CRPの平均(±標準偏差)は、非ひきこもり群2.4±0.5μg/mL、ひきこもり群2.6±0.6μg/mLと、一見それほどの差はないように思われます(統計学的には有意差あり、p<0.05)。とはいえ、高感度CRPは、複数の研究グループによって、自殺企図のバイオマーカーである可能性が示唆されています2,3)。とくに直近で自殺企図を持っている人においてCRPが高くなるとされており、厳密な機序は不明ですが、何らかの炎症性機序が作用している可能性が考えられています。1)American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders: DSM-5-TR. American Psychiatric Association Publishing, Washington, DC, 2022.2)Courtet P, et al. Increased CRP levels may be a trait marker of suicidal attempt. Eur Neuropsychopharmacol. 2015 Oct;25(10):1824-1831.3)Loas G, et al. Relationships between anhedonia, alexithymia, impulsivity, suicidal ideation, recent suicide attempt, C-reactive protein and serum lipid levels among 122 inpatients with mood or anxious disorders. Psychiatry Res. 2016 Dec 30;246:296-302.

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リアルワールドにおける統合失調症ケアの実際と改善ポイント

 統合失調症患者の臨床転帰を改善するためには、日常診療における治療パターンを理解することが重要なステップとなる。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、リアルワールドにおける抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の長期マネジメントを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者に対するケアにおいて、今後優先すべき事項が浮き彫りとなった。とくに、50歳以上の患者に対する代謝系疾患の予防や18~34歳の患者に対する自殺予防など、特定の集団にさらに焦点を当てる必要がある。また、抗精神病薬の治療継続率は依然として低く、精神科入院率も高いままであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。 2012~17年に3回以上の抗精神病薬処方を行った成人統合失調症患者を国民健康データシステムより抽出した。主要評価項目は、実際の処方パターン、患者の特徴、医療利用、併存疾患、死亡率とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者45万6,003例のうち、経口抗精神病薬が96%、第1世代抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)が17.5%、第2世代抗精神病薬LAIが16.1%に処方されていた。・治療開始24ヵ月後の治療継続率は、経口抗精神病薬で23.9%、第1世代抗精神病薬LAIで11.5%、第2世代抗精神病薬LAIで20.8%であった。・治療継続期間の中央値は、経口抗精神病薬で5.0ヵ月、第1世代抗精神病薬LAIで3.3ヵ月、第2世代抗精神病薬LAIで6.1ヵ月であった。・全体として、抗不安薬併用が62.1%、抗うつ薬併用が45.7%、抗けいれん薬併用が28.5%でみられ、これらの薬剤の併用は、女性および50歳以上の患者でより多かった。・脂質異常症は最も頻度の高い代謝系併存疾患であったが(16.2%)、脂質モニタリングは不十分であった。・代謝系併存疾患は、女性でより頻繁に認められた。・標準化患者死亡率は、2013~15年の間は高いままであり(フランス一般集団の3.3~3.7倍)、平均余命は、男性で17年、女性で8年短縮されていた。・主な死亡原因は、がん(20.2%)と心血管疾患(17.2%)であり、18~34歳の死亡の25.4%は自殺であった。

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記憶力に不安がある高齢者の運転はいかに危険か/長寿研ほか

 日本の高齢ドライバーを対象とした横断研究の結果、客観的認知障害の有無にかかわらず、主観的な記憶力の心配(subjective memory concerns、以下「SMC」)や、SMCに加えて歩行速度低下を有する運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome、以下「MCR」)を有する人では自動車衝突事故やヒヤリハットを経験する確率が有意に高かったことを、国立長寿医療研究センターの栗田 智史氏らの研究グループが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。 先行研究によって、MCRは処理速度や実行機能の低下などとの関連が報告されているが、MCRと自動車衝突事故との関連性に関する検討は十分ではない。簡便に実施できるMCR評価を行うことで衝突事故リスクに早期に気付くことができる可能性があるため、研究グループはMCR評価と衝突事故やヒヤリハットとの関連を検討した。 研究グループは、2015~18年に実施された同センターの大規模コホート研究(NCGG-SGS)のデータを用い、愛知県在住の65歳以上の高齢者の衝突事故やヒヤリハットの経験を調査した。運転しない人、認知障害がある人(ミニメンタルステート検査21点未満)、認知症の病歴のある人などは除外した。SMCは、老年期うつ病評価尺度(GDS)などを数種類の方法を用いて評価し、歩行速度低下は年齢や性別の平均値より-1.0SD以下とした。 参加者は、過去2年間の衝突事故と前年のヒヤリハットを対面で聴取され、(1)SMCも歩行速度低下も有さない群(対照群)、(2)SMCのみを有する群(SMC群)、(3)歩行速度低下のみを有する群(歩行速度低下群)、(4)MCRを有する群(MCR群)の4群に分けられた。ロジスティック回帰モデルを用いて、衝突事故またはヒヤリハットのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を求めた。データは2023年2~3月に解析された。 主な結果は以下のとおり。・参加者1万2,475人の平均年齢は72.6(SD 5.2)歳で、56.9%が男性であった。・対照群は3,856人(30.9%)、SMC群は6,889人(55.2%)、歩行速度低下群は557人(4.5%)、MCR群は1,173人(9.4%)であった。・SMC群とMCR群では、衝突事故およびヒヤリハットの割合が他の群よりも多かった(調整標準化残差>1.96、p<0.001)。・ロジスティック回帰分析の結果、対照群と比べて、SMC群とMCR群では衝突事故が有意に多かった(【SMC群】補正後OR:1.48、95%CI:1.27~1.72、p<0.001、【MCR群】補正後OR:1.73、95%CI:1.39~2.16、p<0.001)。・同様に、SMC群とMCR群ではヒヤリハットも有意に多かった(【SMC群】補正後OR:2.07、95%CI:1.91~2.25、p<0.001、【MCR群】補正後OR:2.13、95%CI:1.85~2.45、p<0.001)。・MCR評価を客観的認知障害で層別化した結果、客観的認知障害の有無に関係なくSMC群とMCR群で有意に衝突事故とヒヤリハットが増加していた。・これらの結果は、高齢ドライバーの過失割合が半分以下の衝突事故を除外しても同様であった。 これらの結果より、研究グループは「これらの知見の一般化可能性を高め、外的妥当性を検証するためには、異なる環境におけるさらなる研究が必要である。これらの関連性のメカニズムも今後の研究の課題となる」とまとめた。

169.

統合失調症患者の抗精神病薬治療反応を予測する最適な期間は

 治療開始後、早い段階で治療反応が不十分な統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期的な治療反応を予測することは難しい。中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのYujun Long氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期的な治療反応を適切に予測するための、治療初期段階におけるノンレスポンダーのカットオフ予測値を明らかにするため、多施設共同オープンラベルランダム化比較試験を実施した。その結果、治療開始2週間後の症状改善効果は、統合失調症患者に対する抗精神病薬のノンレスポンダーを予測可能であり、さらに正確に予測するには、ベースライン時の重症度や治療薬剤の違いを考慮する必要性があるとし、最初の2週間の後、さらに2週間の治療反応を評価することで抗精神病薬の変更が必要であるかを判断可能であるとしている。BMC Medicine誌2023年7月19日号の報告。 本研究は、中国の精神科センター19施設による8週間の多施設共同オープンラベルランダム化比較試験である。本研究に参加した統合失調症患者は、オランザピン、リスペリドン、amisulpride、アリピプラゾールのいずれかによる8週間の単剤治療にランダムに割り付けられた。ベースラインおよび2、4、8週目に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)による評価を行った。主要アウトカムは、ノンレスポンダーの予測とした。ノンレスポンダーの定義は、ベースラインからエンドポイントまでのPANSS合計スコア減少率が20%未満とした。重症度は、ベースライン時のPANSS合計スコアで次のように定義した。軽度(PANSS合計スコア:58)、中等度(同:75)、重度(同:95)。 主な結果は以下のとおり。・2週目時点でのPANSS合計スコア5%未満の改善は、重度(総精度:75.0%)および軽度(同:80.8%)の統合失調症患者およびリスペリドン群(同:82.4%)、amisulpride群(同:78.2%)で、最も高精度でその後のノンレスポンダーを予測した。・中等度(同:84.0%)の統合失調症患者およびオランザピン群(同:79.2%)、アリピプラゾール群(同:77.4%)では、2週目でのPANSS合計スコア10%の減少が、ノンレスポンダーの最も高精度な予測因子であった。・4週目では、抗精神病薬の種類や疾患重症度とは無関係に、最良のノンレスポンダーのカットオフ予測値は、PANSS合計スコア20%未満の改善であった(同:89.8~92.1%)。

170.

退院後の統合失調症患者における経口剤と持効性注射剤の治療継続率

 退院後の統合失調症患者におけるその後の治療継続は、患者および医療関係者、医療システムにとって問題である。これまでの報告では、第2世代抗精神病薬(SGA)の長時間作用型注射剤(LAI)は、経口非定型抗精神病薬(OAA)と比較し、治療アドヒアランスの改善や再入院リスクの軽減に有効である可能性が示唆されている。米国・Janssen Scientific AffairsのCharmi Patel氏らは、米国におけるSGA-LAIとOAAで治療を開始した統合失調症患者における、アドヒアランスと再入院リスクの比較検討を行った。その結果、統合失調症患者は、入院中に開始した抗精神病薬を退院後も継続する可能性が低かったが、SGA-LAI治療患者では、抗精神病薬の順守や外来通院を継続する可能性が高く、OAA治療患者よりも退院後ケアの継続性が向上する可能性が示唆された。Current Medical Research and Opinion誌8月号の報告。 統合失調症関連で入院中に、新たにSGA-LAIまたはOAAによる治療を開始した成人統合失調症患者を、HealthVerityデータベースより抽出した。期間は2015~20年、インデックス日は退院日とした。対象は、入院前および入院時から退院後6ヵ月間、健康保険に継続加入しており、入院前の6ヵ月間でSGA-LAIまたはOAA以外の抗精神病薬の処方データが1件以上の患者。抗精神病薬の使用とアドヒアランス、統合失調症関連の再入院と外来通院について、退院後6ヵ月間の比較を行った。コホート間の特性は、逆確率重み付けを用いて調整した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、SGA-LAI群は466例、OAA群は517例であった。・入院中に開始した抗精神病薬について、退院後に薬局または医療請求があった患者は、SGA-LAI群で36.9%、OAA群で40.7%であった。そのうち、SGA-LAI群は、OAA群と比較し、抗精神病薬を順守する可能性が4.4倍高かった(20.0% vs.5.4%、p<0.001)。・SGA-LAI群は、OAA群と比較し、薬局または医療請求を行う可能性が2.3倍高く(82.7% vs.67.9%、p<0.001)、いずれかの抗精神病薬を順守する可能性が3.0倍高かった(41.5% vs.19.1%、p<0.001)。・SGA-LAI群とOAA群の再入院率は、退院7日後で1.7% vs.4.1%、退院30日以内で13.0% vs.12.6%であった。・SGA-LAI群は、OAA群と比較し、外来受診する可能性が51%高かった(36.3% vs.27.4%、p=0.044)。

171.

統合失調症患者の認知機能を含む症状に対するメトホルミンの影響~メタ解析

 統合失調症または統合失調感情障害患者の抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム(MetS)のマネジメントに対し、メトホルミンは優れた有効性を示す薬剤である。メトホルミンによる抗うつ効果や認知機能改善への影響も検討されているものの、これらの情報はシステマティックに評価されていなかった。イタリア・ミラノ大学のVera Battini氏らは、抗精神病薬治療中の統合失調症患者における認知機能およびその他の症状に対するメトホルミンの影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、統合失調症の認知機能やその他の症状に対し、メトホルミンのある程度の効果が確認された。メトホルミンの潜在的な薬理学的効果を明らかにするためには、適切な尺度を用いた長期にわたる研究が必要であるとしている。Frontiers in Psychiatry誌2023年7月12日号の報告。 2022年2月までに公表された、統合失調症および統合失調感情障害と診断された後、体重増加の治療のために抗精神病薬の追加療法としてメトホルミン治療を実施した患者を対象に、精神症状および認知機能の変化を評価したランダム化比較試験(RCT)をPubMed、ClinicalTrials.gov、Embase、PsycINFO、WHO ICTRPのデータベースより検索した。 主な結果は以下のとおり。・該当したRCT19件のうち、適格基準を満たした12件をメタ解析に含めた。・安定期統合失調症患者において、24週間のメトホルミン治療により、良好な傾向が認められた(標準化平均差:-0.40[95%信頼区間[CI]:-0.82~0.01]、オッズ比:0.5[-2.4~3.4])。・統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)および陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)による評価は、研究間の不均一性が低く、より良い影響が確認された。・1つの研究では、プラセボにおいてBACSの言語記憶サブドメインの好ましい変化が報告されていた(平均差:-16.3[95%CI:-23.65~8.42])。・最も報告された副作用は、胃腸障害、口腔乾燥症、錐体外路症状であった。・精神医学的有害事象、とくに統合失調症の再発に起因する症状も報告されていた。

172.

セファゾリンやダビガトラン、重大な副作用追加などで添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は8月29日、セファゾリンやダビガトランなど6つの医薬品の添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。セファゾリンでアレルギー反応に伴う急性冠症候群 セファゾリンNa水和物(商品名:セファメジンα筋注用0.25g ほか)とセファゾリンNa(同:セファゾリンNa点滴静注用1gバッグ「オーツカ」 ほか)において、アレルギー反応に伴う急性冠症候群の国内症例(7例[死亡0例])を評価した結果、本剤とアレルギー反応に伴う急性冠症候群との因果関係の否定できない国内症例が集積したことから、副作用の項に『重大な副作用』を新設した。ダビガトランの食道潰瘍や食道炎の発症、『重要な基本的注意』へ 非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制に使用されるダビガトラン(同:プラザキサ)において、重度(CTCAE v5.0でGrade3以上)の食道潰瘍および食道炎の国内症例を評価した結果、現在、『適用上の注意』の項に記載されている「速やかに胃に到達させるため、十分量(コップ1杯程度)の水とともに服用する」旨を、『重要な基本的注意』の項に記載することが適切と判断された。〇食道潰瘍 17例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例14例であるが、14例中1例は禁忌に該当する症例)【死亡0例】〇食道炎 32例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例11例であるが、11例中1例は禁忌に該当する症例)【死亡0例】リバスチグミン、ペフィシチニブ、フィナステリドの添付文書も改訂 そのほか、リバスチグミン(同:イクセロンパッチ ほか)では「QT延長」が、ペフィシチニブ(同:スマイラフ)では「静脈血栓塞栓症」が重大な副作用に追加され、フィナステリド(同:プロペシア ほか)では慎重投与の項に「うつ病、うつ状態又はその既往歴、自殺念慮又は自殺企図の既往歴を有する患者」が追加された。

173.

日本人成人強迫症患者におけるADHD併発の影響

 これまでの研究において、小児および青年における強迫症と注意欠如多動症(ADHD)との関連が報告されている。しかし、成人における強迫症とADHDとの生涯併発率との関連を調査した研究は、ほとんどなかった。兵庫医科大学の宮内 雅弘氏らは、日本人成人強迫症患者におけるADHDの併発に関連する臨床的および精神病理学的特徴を調査した。Comprehensive Psychiatry誌2023年8月号の報告。 日本人成人強迫症患者93例を対象に、ADHDの生涯併発率を評価した。ADHDの特徴および重症度の評価には、コナーズ成人ADHD 評価スケール(CAARS)日本語版を用いた。ADHDではないがADHD特性レベルが上昇した患者は、調査結果から除外した。ADHDを伴う強迫症患者(ADHD+群)とADHD特性が認められない強迫症患者(ADHD-群)における背景プロファイルおよび強迫症状や心理学的検査結果などの臨床的特徴を比較した。さらに、6ヵ月間の治療結果を、両群間でプロスペクティブに比較した。 主な結果は以下のとおり。・強迫症患者93例のADHD生涯併発率は、16.1%と推定された。・ADHD+群は、ADHD-群と比較し、以下の特徴が確認された。 ●強迫症の発症年齢が低い ●ためこみ症(hoarding symptom)の頻度が高い ●抑うつ症状や不安症状レベルが高い ●QOL低下 ●衝動性レベルが高い ●物質依存症や行動依存症の割合が高い ●うつ病の割合が高い・ADHD+群は、ADHD-群よりも、強迫症に対する標準的治療6ヵ月後の Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale(Y-BOCS)平均改善率が有意に低かった(16.1% vs. 44.6%)。 著者らはこの結果から、「ADHDの併発は、成人強迫症患者の臨床的特徴や治療アウトカムに重大な影響を及ぼす可能性が示唆された。強迫症患者の全体的な臨床症状の重症化や治療抵抗性を引き起こす因子として、ADHDの根底にある病理学的特徴が関与している可能性があることを考慮することが重要である。このような患者の治療戦略を検討するには、さらなる研究が必要である」と述べている。

174.

主要な精神疾患に伴う抑うつ症状に主観的な不眠が関与

 精神疾患の患者に高頻度で見られる抑うつ症状に、不眠が影響を及ぼしていることを表すデータが報告された。大うつ病性障害だけでなく、統合失調症や不安症などの主要な精神疾患の抑うつ症状が不眠と関連しており、そのことが疾患の重症度に影響を及ぼしている可能性も考えられるという。日本大学医学部精神医学系の中島英氏、金子宜之氏、鈴木正泰氏らの研究によるもので、「Frontiers in Psychiatry」に4月24日掲載された。 精神疾患で現れやすい抑うつ症状は、生活の質(QOL)や服薬アドヒアランスの低下、飲酒行動などにつながるだけでなく、自殺リスクの上昇との関連も示唆されている。一方、精神疾患に不眠が併存することが多く、大うつ病性障害(MDD)患者では不眠への介入によって抑うつ症状も改善することが報告されている。ただし、MDD以外の精神疾患での抑うつ症状と不眠の関連はよく分かっていない。MDDと同様にほかの精神疾患でも抑うつ症状と不眠が関連しているのであれば、不眠への介入によって抑うつ症状が改善し、予後に良好な影響が生じる可能性も考えられる。鈴木氏らはこの仮説に基づき、以下の検討を行った。 この研究は、うつ病の客観的評価法を確立するために行われた研究の患者データを用いて行われた。解析対象は、日本大学医学部附属板橋病院と滋賀医科大学医学部附属病院の2017年度の精神科外来・入院患者のうち、研究参加に同意し解析に必要なデータがそろっている144人。疾患の内訳は、MDDが71人、統合失調症25人、双極性障害22人、不安症26人。 不眠は、アテネ不眠尺度(AISスコア)を用いた主観的な評価(24点中6点以上を臨床的に有意な不眠と定義)、および睡眠脳波検査による客観的な評価によって判定した。抑うつ症状の評価には、ベック抑うつ質問票を用い、研究目的から睡眠に関する項目を除外したスコア(mBDIスコア)で評価した。mBDIスコアは高値であるほど抑うつ症状が強いと判定される。このほか、各疾患の症状評価に一般的に用いられているスケールによって重症度を評価した。 AISスコアで評価した臨床的に有意な主観的不眠は全体の66.4%であり、疾患別に見るとMDDでは77.1%、統合失調症で36.0%、双極性障害で63.6%、不安症で69.2%だった。不眠の有無でmBDIスコアを比較すると、以下のように4疾患のいずれも、不眠のある群の方が有意に高値だった。MDDでは25.6±10.7対12.1±6.9(P<0.001)、統合失調症では22.8±8.6対11.1±7.0(P=0.001)、双極性障害では28.6±9.5対14.5±7.4(P=0.009)、不安症では23.9±10.4対12.5±8.8(P=0.012)。 一方、睡眠脳波検査から客観的に不眠と判定された割合は78.0%だった。疾患別に客観的不眠の有無でmBDIスコアを比較した結果、統合失調症でのみ有意差が認められた(18.1±9.3対9.9±7.1、P=0.047)。 次に、抑うつ症状と各精神疾患の重症度の関連を検討した。すると、mBDIスコアと統合失調症の重症度(PANSSスコア)との間に、正の相関が認められた(r=0.52、P=0.011)。これは、抑うつ症状が重度であるほど、統合失調症の症状も重いことを意味する。同様に、mBDIスコアと不安症の状態不安(一過性の不安を評価するSTAI-Iスコア)との関係はr=0.63(P=0.001)、特性不安(不安を抱きやすい傾向を評価するSTAI-IIスコア)との関係はr=0.81(P=<0.001)であり、いずれも有意な正の相関が認められた。 著者らは以上の結果を、「MDDだけでなく主要な精神疾患の全てで、主観的な不眠と抑うつ症状との関連が認められた」とまとめるとともに、「不眠に焦点を当てた介入によって、精神疾患の予後を改善できる可能性があり、今後の研究が求められる。例えば、各精神疾患の治療において、鎮静作用を有する薬剤を選択することが予後改善につながるかもしれない」と述べている。 なお、不眠の客観的な評価よりも主観的な評価の方が、より多くの精神疾患の抑うつ症状に有意差が観察されたことに関連し、「病状に対する悲観的な認識が睡眠状態の過小評価につながった可能性が考えられるが、抑うつ症状に関連した睡眠障害を検出するという目的では、主観的評価の方が適しているのではないか」との考察を加えている。

175.

頻繁な入浴で長期的な抑うつリスク低減

 湯に浸かる入浴(浴槽入浴)の頻度と長期的な抑うつ発症との関連を調査した6年にわたるコホート研究の結果、冬に浴槽入浴を頻繁に行う高齢者では新たな抑うつの発症が有意に少ないことを、東京都市大学の早坂 信哉氏らの研究グループが明らかにした。日本温泉気候物理医学会雑誌2023年オンライン版7月24日号掲載の報告。 これまでの研究において、頻繁な浴槽入浴が高い自己評価と関連していることや、介護保険が必要になる可能性が低いことなどが報告されているが、生活習慣としての浴槽入浴が健康にどのような影響を及ぼすかについてはまだ十分に解明されていない。 そこで、研究グループは、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)の2010年および2016年調査の対象となった65歳以上の1万1,882人のうち、夏の入浴頻度の記録がある6,452人と冬の入浴頻度の記録がある6,465人をそれぞれ解析した。すべての解析対象者は要介護認定を受けておらず、老年期うつ病評価尺度スコアが4点以下でうつ病ではなかった。 浴槽入浴が0~6回/週のグループと、7回以上/週のグループの6年後のGDSによる抑うつの発症割合を求めた。浴槽入浴と抑うつの関連をロジスティック回帰分析によって年齢、性別、治療中の病気の有無、飲酒の有無、喫煙の有無、婚姻状況、教育年数、所得を調整して多変量解析を行い、オッズ比(OR)を求めた。 主な結果は以下のとおり。・夏の浴槽入浴が0~6回/週のグループの抑うつ新規発症率は12.9%、7回以上/週のグループは11.2%であった(p=0.192)。・冬の浴槽入浴が0~6回/週のグループの抑うつ新規発症率は13.9%、7回以上/週のグループは10.6%で有意差が認められた(p=0.007)。・共変量で調整した多変量解析において、夏の浴槽入浴が0~6回/週のグループを基準とした場合、7回以上/週のグループの抑うつ新規発症のORは0.84(95%信頼区間[CI]:0.64~1.10)で、浴槽入浴の頻度が高いほど抑うつの新規発症が少ない傾向にあった(p=0.213)。・冬の浴槽入浴では、7回以上/週のグループの抑うつ新規発症のORは0.76(95%CI:0.59~0.98)で、統計学的に有意に少なかった(p=0.033)。 これらの結果より、研究グループは「習慣的な浴槽入浴の温熱作用を介した自律神経のバランス調整などによる抑うつ予防作用による結果の可能性があり、健康維持のため高齢者へ浴槽入浴が勧められることが示唆された」とまとめた。

176.

治療前の統合失調症患者におけるメタボリックシンドローム有病率

 メタボリックシンドローム(MetS)は、性別により臨床パターンの異なるさまざまな病理学的状態を伴う臨床症候群である。統合失調症患者では、MetS有病率が有意に高いことが知られている。中国・Wuhan Mental Health CenterのKuan Zeng氏らは、初回治療および未治療の統合失調症患者におけるMetS有病率とそれに関連する要因、重症度に影響を及ぼす要因についての性差を調査した。その結果、統合失調症患者のMetS有病率とその要因には、男女間で違いが認められた。女性のほうがMetS有病率は高く、影響を及ぼす要因もより広範であることを報告した。Annals of General Psychiatry誌2023年6月28日号の報告。 対象は、初回治療および未治療の統合失調症患者668例。社会人口統計学的情報および一般的な臨床情報を収集し、代謝パラメータおよび生化学的指標を測定・評価した。精神症状の重症度評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者のMetS有病率は、男性で6.56%(244例中16例)、女性で13.44%(424例中57例)であり、男性よりも女性において有意に高かった。・MetsSのリスク因子は、男性では腹囲、空腹時血糖、拡張期血圧、トリグリセライド、女性では、収縮期血圧、トリグリセライド、総コレステロール、LDLコレステロール、血小板数であった。・女性では、年齢、LDLコレステロール、PANSSスコア、血清クレアチニン値がMetSスコア上昇のリスク因子であり、発症年齢、ヘモグロビン値が防御因子であることが発見された。

177.

日本人の双極性障害および統合失調症に関連するミトコンドリアの遺伝的変異

 双極性障害や統合失調症は、複雑な精神疾患であり、環境的要因と遺伝的要因(母性遺伝を含む)の両方が影響している可能性がある。これまで、いくつかの研究において、ミトコンドリア染色体の遺伝子変異と双極性障害および統合失調症との関連が調査されているが、研究結果は同一ではなく、参加者は欧州の患者に限定されていた。岐阜大学のRyobu Tachi氏らは、日本人集団におけるミトコンドリア染色体のゲノムワイドな遺伝的変異と双極性障害、統合失調症、精神疾患との関連を調査した。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年7月21日号の報告。 患者および遺伝子変異の品質管理を行ったうえで、日本人420例を対象にミトコンドリア遺伝子変異(マイナーアレル頻度[MAF]>0.01、変異例:45例)と双極性障害、統合失調症、精神疾患との関連を調査した。対象の内訳は、双極性障害(BD群)51例、統合失調症(SZ群)172例、健康対照者(HC群)197例。 主な結果は以下のとおり。・ミトコンドリアの遺伝的変異のうち、多重比較で補正した後、双極性障害では3つ(rs200478835、rs200044200、rs28359178 のNADHデヒドロゲナーゼ上または近位)、精神疾患では1つ(rs200478835)の遺伝子変異との有意な関連が認められた(PGC=0.045-4.9×10-3)。・とくに、ミスセンス変異体であるrs200044200のマイナーGアレル遺伝子を有する人は、BD群(MAF=0.059)のみでみられ、HC群(MAF=0)ではみられなかった(オッズ比:∞)。・3例の患者は、精神医学的疾患の家族歴を有していた。 著者らは「NADHデヒドロゲナーゼ関連遺伝子のミトコンドリア遺伝的変異が、エネルギー産生のメカニズムを介して日本人の双極性障害や精神疾患発症に関与している可能性が示唆された」とまとめている。

178.

若者のうつ病・不安症、未治療での1年後の回復率~メタ解析

 抑うつ症状や不安症状を有する若者に対し、特別なメンタルヘルス介入を行わなかった場合の1年後の回復率は、どの程度か。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のAnna Roach氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施し、これを明らかにしようと試みた。その結果、不安や抑うつ症状を有する若者の約54%は、特別なメンタルヘルス介入を行わなくても回復することが示唆された。BMJ Open誌2023年7月21日号の報告。 1980年~2022年8月に公表された論文をMEDLINE、Embase、PsycINFO、Web of Science、Global Healthよりシステマティックに検索した。特別な介入を行わなかった10~24歳の若者を対象に、ベースラインおよびフォローアップ1年後の抑うつ症状および不安症状を評価した査読済みの英語論文を対象とした。3人のレビュアーにより関連データを抽出した。メタ解析を実施し、1年後の回復率を算出した。エビデンスの質は、Newcastle-Ottawa Scaleを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた参考論文1万7,250件のうち5件(1,011例)をメタ解析に含めた。・1年間の回復率は、47~64%の範囲であった。・メタ解析では、全体をプールした若者の回復率は0.54(0.45~0.63)であった。・今後の研究において、回復の予測因子や回復に寄与するリソース、活動を調査する必要がある。

179.

統合失調症に対する長時間作用型注射剤抗精神病薬の実際の有効性

 フランス・エクス=マルセイユ大学のLaurent Boyer氏らは、統合失調症に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の実臨床における有効性を評価するため、ミラーイメージ研究を実施した。その結果、LAI抗精神病薬は、経口抗精神病薬よりも投与頻度が少ないため、コンプライアンス向上や再発リスク軽減が期待できるため、コンプライアンス不良患者では女性や35歳以上の患者であってもLAI抗精神病薬治療が推奨されることを報告した。また、アリピプラゾールLAIは、コンプライアンス良好患者にとって有用な薬剤である可能性があり、さらなる調査が求められるとしている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。 2015年1月~2016年12月にLAI抗精神病薬を開始した統合失調症患者を、フランス国民健康データシステム(SNDS)に登録した。LAI抗精神病薬開始1年前(経口抗精神病薬治療中)と開始1年後、精神科医療リソース利用指標について評価し、標準化平均差(SMD>0.1で臨床的有意とみなす)を算出した。LAI抗精神病薬の有効性は、全体および年齢、性別、経口抗精神病薬に対するコンプライアンス(年間80%以上の抗精神病薬服用を良好と定義)で層別化し、分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、1万2,373例。・LAI抗精神病薬の使用は、男性(58.1%)、若年(18~34歳:42.0%)、コンプライアンス不良(63.7%)患者でより多かった。・LAI抗精神病薬治療により、コンプライアンス不良患者の精神科入院の回数(SMD:-0.19)、期間(SMD:-0.26)、精神科救急受診(SMD:-0.12)の減少効果が確認されたが、コンプライアンス良好患者では、その効果は認められなかった。・第1世代LAI、パリペリドンLAI、アリピプラゾールLAIによる治療により、精神科入院(各々、SMD=-0.20、-0.24、-0.21)および精神科救急受診(各々、SMD=-0.15、-0.13、-0.15)を減少させました。・年齢、性別による有意な差は認められなかった。・コンプライアンス良好患者では、アリピプラゾールLAIのみが、精神科入院数の減少に寄与していた(SMD=-0.13)。・リスペリドンLAI(SMD=0.15)、パリペリドンLAI(SMD=0.18)では、入院期間の延長が認められた。

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鼻腔内インスリン投与で認知機能改善?

 鼻腔内へのインスリン投与が、アルツハイマー病(AD)や軽度認知障害(MCI)患者の認知機能に対して保護的に働くことが、メタ解析の結果として示された。一方、認知機能低下の見られない対象では、有意な影響は認められないという。トロント大学(カナダ)のSally Wu氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に6月28日掲載された。 鼻腔内へのインスリン投与(intranasal Insulin;INI)は、末梢でのインスリン作用発現に伴う副作用リスクを抑制しつつ、脳内のインスリンシグナル伝達を改善し、認知機能に対して保護的に働くと考えられている。これまでに、INIによる認知機能への影響を調べた研究結果が複数報告されてきている。ただしそれらの結果に一貫性が見られない。Wu氏らは、このトピックに関するシステマティックレビューとメタ解析により、この点を検討した。 MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、およびCochrane CENTRALに2000年から2021年7月までに収載された論文を対象として、認知機能に対するINIの影響を研究した無作為化比較試験の報告を検索。2,654件の報告がヒットし、重複削除、タイトルと要約に基づくスクリーニングにより52件に絞り込み、これを全文精査の対象とした。最終的に32件が包括基準を満たした。 それら32件の研究は2004~2021年に発表されており、介入対象として研究ごとに、ADやMCIのほか、健康成人、大うつ病性障害、双極性障害、統合失調症、肥満、2型糖尿病などが設定されていた。INIの投与量は中央値40IU(範囲40~160)であり、研究参加者の平均年齢は53.4歳だった。10件の研究は単回投与による急性効果を検討し、他の研究は慢性効果を検討していた。慢性効果を検討していた研究の介入期間は中央値8週(範囲1~52)だった。 ADやMCIの患者を対象とした研究を統合した解析からは、INI介入による認知機能への有意な保護的作用が確認された〔標準化平均差(SMD)=0.22(95%信頼区間0.05~0.38)〕。一方、その他の集団を対象とした研究の解析からは、INI介入による認知機能への有意な影響は確認されなかった。例えば健康な集団ではSMD=0.02(同-0.05~0.09)、メンタルヘルス疾患患者ではSMD=0.07(-0.09~0.24)、代謝性疾患患者ではSMD=0.18(-0.11~0.48)であり、いずれも非有意だった。 著者らは、「このシステマティックレビューとメタ解析の結果は、認知機能が低下している対象ではINIによる介入が有効である可能性を示唆している。INIはまだ新しい研究分野であるため、対象者の生活全体の質を向上させるという最終的な目標に向けて、今後の研究ではさまざまな背景を持つ患者集団での有用性を探り、治療反応の不均一性を理解する必要がある」と述べている。 なお、数人の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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