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新たな作用機序の緑内障・高眼圧症点眼薬「セタネオ点眼液0.002%」【最新!DI情報】第52回

新たな作用機序の緑内障・高眼圧症点眼薬「セタネオ点眼液0.002%」今回は、緑内障・高眼圧症治療薬「セペタプロスト(商品名:セタネオ点眼液0.002%、製造販売元:参天製薬)」を紹介します。本剤は、FPおよびEP3受容体に結合・刺激することで眼圧を下降させる新たな作用機序の点眼薬であり、新たな緑内障・高眼圧症の治療選択肢として期待されています。<効能・効果>緑内障、高眼圧症の適応で、2025年8月25日に製造販売承認を取得し、2025年10月23日に発売されました。<用法・用量>1回1滴、1日1回点眼します。<安全性>重大な副作用として、虹彩色素沈着(0.3%)があります。その他の副作用として、結膜充血(29.6%)、睫毛の異常(睫毛が長く、太く、多くなるなど)(18.2%)、眼瞼部多毛(5%以上)、眼瞼色素沈着、眼瞼炎、点状角膜炎などの角膜障害、眼乾燥感、眼刺激(いずれも1~5%未満)、眼のそう痒感、結膜浮腫、眼脂(いずれも1%未満)、黄斑浮腫、眼瞼溝深化(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、緑内障や高眼圧症の治療に使用する点眼薬です。眼圧を調節する水分の排出を促進して眼圧を下げます。2.ソフトコンタクトレンズを装着している場合は、必ずレンズを外してから点眼してください。点眼後は5~10分以上間隔を空けてからレンズを再装着してください。3.点眼液が目の周りについたままになると、目の周りが黒ずむ、毛が濃くなる、まつげが長く太くなるなどの副作用が起こることがあります。濡らしたガーゼやティッシュで目の周囲をよくふき取るか、目を閉じて洗顔してください。<ここがポイント!>緑内障は、「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患」と定義されています(緑内障診療ガイドライン)。緑内障は放置すると徐々に視野が狭まり、最終的には失明に至る可能性があり、わが国において中途失明の原因の第1位です。緑内障の視野障害の進行を抑制する唯一確実な治療法は眼圧の下降であり、眼圧下降薬による薬物治療が治療の中心となっています。第一選択薬としては、房水流出を促進するFP受容体作動薬やEP2受容体作動薬、房水産生を抑制するβ遮断薬が用いられます。治療は通常、単薬療法から開始されますが、効果が不十分な場合には多剤併用(配合点眼薬を含む)が行われます。ただし、多剤併用により点眼回数が増加すると、副作用の増加、アドヒアランスやQOLの低下などが懸念されるため、新たな作用機序を有する強力な眼圧下降薬の開発が進められてきました。本剤は、有効成分としてセペタプロストを含有する水性点眼薬です。セペタプロストは、プロドラッグであり、点眼後は主に角膜中で速やかに加水分解され、FPおよびEP3受容体に結合・刺激することで眼圧を下降させます。その眼圧降下作用は、ぶどう膜強膜流出路および線維柱帯流出路を介した房水流出促進によるものです。両眼が原発開放隅角緑内障または高眼圧症の患者を対象とした多施設共同無作為化評価者遮蔽並行群間比較試験(第III相検証試験)において、主要評価項目である点眼後4週におけるベースラインからの平均日中眼圧変化量(最小二乗平均値[LS Mean])は、本剤群で-5.77mmHg、ラタノプロスト点眼液群で-6.10mmHgでした。MMRM解析における投与群間差(本剤群-ラタノプロスト点眼液群)は0.32mmHg(95%信頼区間:-0.120~0.769mmHg)であり、信頼区間の上限値は非劣性マージンとして事前に規定した1.5mmHgを超えず、本剤群のラタノプロスト点眼液群に対する非劣性が検証されました。なお、信頼区間の上限値は0mmHg以上であったことから、本剤群のラタノプロスト点眼液群に対する優越性は検証されませんでした。

2.

心筋梗塞後のβ遮断薬、LVEF保持例の死亡・再発・心不全を抑制せず/NEJM

 左室駆出率(LVEF)が50%以上に保たれ、β遮断薬のほかに適応がない心筋梗塞後の患者において、β遮断薬の投与は非投与の場合と比較して、全死因死亡、心筋梗塞、心不全の複合の発生率を低減しないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のAnna Meta Dyrvig Kristensen氏らBeta-Blocker Trialists’ Collaboration Study Groupが行ったメタ解析の結果で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年11月9日号で発表された。5つの無作為化試験の約1万8,000例を解析 研究グループは、心筋梗塞後のβ遮断薬の有効性の評価を目的とする、5つの研究者主導型非盲検無作為化優越性試験(β遮断薬群と非β遮断薬群を比較)の参加者の個別データを用いたメタ解析を実施した(Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares Carlos IIIなどの助成を受けた)。 5つの試験から、心筋梗塞を発症し、LVEFが50%以上に保持され、β遮断薬以外に適応がない参加者の個別患者データを収集した。 主要エンドポイントは、全死因死亡、心筋梗塞、心不全の複合とした。1段階固定効果Cox比例ハザードモデルを用いてイベント発生率を解析した。 REBOOT(7,459例)、REDUCE-AMI(4,967例)、BETAMI(2,441例)、DANBLOCK(2,277例)、CAPITAL-RCT(657例、日本の試験)の各試験に参加した合計1万7,801例を解析の対象とした。β遮断薬群が8,831例、非β遮断薬群が8,970例であった。主要エンドポイント個々の発生率にも差はない 全体の年齢中央値は62歳(四分位範囲[IQR]:55~71)、女性が20.7%で、8.1%に心筋梗塞の既往歴があり、2.0%が心房細動を有していた。また、45.7%がST上昇型心筋梗塞で、94.4%が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けていた。 追跡期間中央値3.6年(IQR:2.3~4.6)の時点で、主要エンドポイントのイベントは、β遮断薬群で717例(8.1%)、非β遮断薬群で748例(8.3%)に発生し、両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.87~1.07、p=0.54)。 主な副次エンドポイントである主要エンドポイントの3つの構成要素の発生率にも、両群間で有意な差はなかった(全死因死亡:β遮断薬群3.8%vs.非β遮断薬群3.6%[HR:1.04、95%CI:0.89~1.21]、心筋梗塞:4.1%vs.4.5%[0.89、0.77~1.03]、心不全:0.8%vs.1.0%[0.87、0.64~1.19])。安全性エンドポイントも同程度 安全性のエンドポイントである虚血性脳卒中は、β遮断薬群で115例(1.3%、0.37件/100人年)、非β遮断薬群で94例(1.0%、0.30件/100人年)に発生した(3年追跡時の制限付き平均無イベント生存期間の群間差:2.6日、95%CI:-0.73~4.4)。また、高度房室ブロックが、それぞれ69例(0.8%、0.23件/100人年)および68例(0.8%、0.23件/100人年)にみられた(HR:1.03、95%CI:0.73~1.44)。 著者は、「心筋梗塞患者では、LVEF低下例に比べLVEF保持例は、梗塞範囲が小さく、心筋瘢痕も少ない可能性があり、心室性不整脈や突然死に対する脆弱性が低いと考えられるため、この患者集団では、心筋梗塞後のβ遮断薬の薬理学的効果は、重要性が低い可能性がある」「本研究では、β遮断薬の種類による明らかな差異は認めなかったが、非選択的β遮断薬(カルベジロール、プロプラノロールなど)を処方された患者は少なかった。また、5つの試験のすべてで、全般にβ遮断薬の用量は低く、これは現在の実臨床を反映したものと考えられる」としている。

3.

ベルイシグアトはHFrEF治療のファンタスティック・フォーに入れるか?―VICTOR試験(解説:原田和昌氏)

 可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であるベルイシグアトは、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者で、かつ、直近の心不全増悪があった患者に対するVICTORIA試験で、心血管死ならびに心不全入院からなる複合エンドポイントを10%有意に減少させた。しかし、心血管死単独、心不全入院単独では有意差を認めなかった。そのため、心不全のガイドラインでは、十分なガイドライン推奨治療にもかかわらず心不全増悪を来したNYHA心機能分類II~IVのHFrEF患者の心血管死または心不全入院の抑制を目的として、ベルイシグアトの使用が認められている(クラスIIa)。 VICTOR試験は、6ヵ月以内の入院歴や3ヵ月以内の外来での利尿薬静注といった直近の心不全増悪の認められない、NT-proBNP 600~6,000pg/mLのHFrEF患者に対するベルイシグアトの有効性を調べた二重盲検ランダム化比較試験である。ベルイシグアトの適応をより安定した外来患者に広げることを目的としたものであったが、複合エンドポイント(心血管死または心不全入院までの期間)は有意に低下しなかった。 6,105例が無作為化され、2,899例(47.5%)には心不全による入院歴がなかった。β遮断薬(94.5%)、ARNI(56.0%)、SGLT2阻害薬(59.1%)、MRA(77.8%)、CRT(14.8%)が導入されており、追跡期間中央値18.5ヵ月において主要エンドポイントは、ベルイシグアト群549例(18.0%)、プラセボ群584例(19.1%)で、両群間に統計学的有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.83~1.04、p=0.22)。そのため、副次エンドポイントは名目上の値として報告された。心血管死は、ベルイシグアト群292例(9.6%)、プラセボ群346例(11.3%)であった(HR:0.83、95%CI:0.71~0.97)。心不全による入院は、ベルイシグアト群348例(11.4%)、プラセボ群362例(11.9%)であった(HR:0.95、95%CI:0.82~1.10)。全死因死亡は、ベルイシグアト群377例(12.3%)、プラセボ群440例(14.4%)であった(HR:0.84、95%CI:0.74~0.97)。有害事象に差はなかった。 著者らは、これだけファンタスティック・フォーが処方されたうえで、心血管死、全死因死亡などの副次エンドポイントも十分な統計学的パワーと観察期間を有することから、探索的ではあるが有意な結果としてもよいのではないかと述べている。また、VICTOR試験とVICTORIA試験の事前規定された統合解析が報告され、主要エンドポイントの心血管死または心不全入院は、ベルイシグアト群で低く(HR:0.91、95%CI:0.85~0.98)、心血管死・全体および初回心不全入院、全死亡の副次エンドポイントも低かった。ベルイシグアトの臨床的有用性を否定するものではないが、主として心血管死、全死因死亡を減らす「目に見えない治療」という位置付けでは、ガイドラインの推奨レベルは上がらないかもしれない。

4.

経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenは症候性の閉塞性肥大型心筋症患者においてβ遮断薬よりも臨床的に有効である(解説:原田和昌氏)

 Cohen、Braunwaldらの約60年前のエキスパートオピニオンと限定的なエビデンスにより、β遮断薬は症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)の第1選択の治療として使い続けられてきた。一方、経口選択的心筋ミオシン阻害薬であるaficamtenの上乗せは標準治療と比較して左室流出路圧較差を軽減し、運動耐容能を改善してHCMの症状を軽減することが第III相二重盲検比較試験であるSEQUOIA-HCM試験により示された。今回、スペイン・CIBERCVのGarcia-Pavia氏らMAPLE-HCM研究者たちは、HCMの治療においてβ遮断薬単剤投与とaficamtenの単剤投与との臨床的有益性を比較する目的で、国際共同第III相二重盲検ダブルダミー無作為化試験であるMAPLE-HCM試験を実施した。 年齢18~85歳、左室壁厚が15mm以上(疾患の原因となる遺伝子変異またはHCMの家族歴がある場合は13mm以上)のHCMと診断され、LVEFが60%以上、かつ安静時の左室流出路圧較差が30mmHg以上、またはバルサルバ法で誘発時の左室流出路圧較差が50mmHg以上の患者175例を世界71施設で登録した。ダブルダミー法により、被験者をaficamten(漸増)+プラセボ群、またはメトプロロール(漸増)+プラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、24週間投与した。aficamten群は88例、メトプロロール群は87例で、平均年齢58歳、58.3%が男性であった。ベースラインの安静時の平均左室流出路圧較差は47mmHg、誘発時の平均左室流出路圧較差は74mmHgで、平均LVEFは68%、NYHA心機能分類II群が70.3%を占めた。NT-proBNP値中央値は468pg/mLであった。 メトプロロール単剤に比べaficamten単剤は、主要エンドポイントである最高酸素摂取量の改善に関して優越性を示し、副次エンドポイントである症状の軽減や安静時および誘発時の左室流出路圧較差、NT-proBNP値、左房容積係数の改善と関連した。有害事象の発現状況は同程度であった。 現在のガイドラインではHCMに対してマバカムテンが推奨されているが、本試験の結果により、aficamtenはβ遮断薬中心の標準治療に代わって、HCMの第1選択ないしは単剤治療として推奨される可能性がある。逆に、β遮断薬はHCMの安静時および誘発時の左室流出路圧較差、NT-proBNP値、左房容積係数をいずれも改善しないことが明らかになった。もっとも、Braunwald先生らの名誉のために付け加えると、β遮断薬でKCCQ-CSSやNYHA心機能分類がわずかに改善する傾向はみられた。

5.

心不全はないが左室駆出率が軽度低下した急性心筋梗塞患者にβ遮断薬は有効(解説:佐田政隆氏)

 急性心筋梗塞後の患者で、左室駆出率が40%未満の場合にβ遮断薬が有効であることは議論の余地がない。一方、左室駆出率が40%以上で心不全がない急性心筋梗塞にβ遮断薬が有効であるかどうかは、今までほとんどRCTが行われてこなかった。 日本で行われて2018年にPLoS Oneに報告されたCAPITAL-RCT試験ではβ遮断薬の有効性は示されなかった。デンマークとノルウェーで行われたBETAMI-DANBLOCK試験が2025年8月30日のNEJM誌に報告されたが、β遮断薬は総死亡と主要心血管イベントを減少させた。一方、同日、同じNEJM誌にスペインとイタリアで行われたREBOOT試験の結果が報告されたが、総死亡、再梗塞、心不全入院にβ遮断薬は有効性を示さなかった。上記の4試験は、「左室駆出率が40%以上で心不全がない急性心筋梗塞」を対象に行われたが、その中の「左室駆出率が軽度低下した」サブグループの解析は、対象患者数が少なくて、個々の試験では統計的検定を行うに至らなかった。そこで、本研究では4研究のメタ解析を行った。 結果としては、心不全徴候がなく、左室駆出率が軽度低下(40~49%)した急性心筋梗塞患者において、β遮断薬は、総死亡、再梗塞、心不全を減少させることが明らかとなった。急性心筋梗塞後、左室駆出率が40%未満だけでなく、40~49%でもβ遮断薬投与が推奨されることになると思われる。 ただし、急性心筋梗塞後、とくに早期に再灌流療法が成功した場合には、急性期に低下していた左室壁運動が回復期に著明に改善することをしばしば目にする。上記の4試験では、急性心筋梗塞後14日以内に割り付けがなされているが、発症後何日目の左室駆出率をもとにしているかが大きな問題であると思われる。1回の心エコー図検査などで判断するのではなく、個々の症例で心機能の変化や残存狭窄の有無などを参考に、β遮断薬の適応を注意深く検討すべきであると考える。

6.

さまざまなリスクの左室駆出率の低下した心不全へのベルイシグアトの効果―VICTORIA・VICTOR試験統合解析より(解説:加藤貴雄氏)

 VICTORIA試験は、直近の心不全増悪があった左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者に対する試験であり(Armstrong PW, et al. N Engl J Med. 2020;382:1883-1893.)、2025年8月の欧州心臓病学会で発表されたVICTOR試験は、6ヵ月以内の入院歴や3ヵ月以内の外来での利尿薬静注の「最近増悪した症例」を除外し、NT-proBNP 600~6,000pg/mL(心房細動は900~6,000pg/mL)を組み入れ基準とした試験で、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であるベルイシグアトの二重盲検ランダム化比較試験である(Butler J, et al. Lancet. 2025;406:1341-1350.)。 VICTORIA試験では、プラセボ群よりも心血管死または心不全による入院の発生率が低かったが、VICTOR試験では、主要評価項目イベント(心血管死または心不全入院)はハザード比(HR)0.93(95%信頼区間[CI]:0.83~1.04、p=0.22)とプラセボ群との有意差は認めなかった。心血管死と全死亡(および、事後的に解析された突然死)はプラセボ群に比して低下を示したものの、心不全による入院はプラセボ群との差を認めなかった。 今回取り上げた論文(Zannad F, et al. Lancet. 2025;406:1351-1362.)は、そのVICTOR試験とVICTORIA試験の事前規定された統合解析である。アジア人が20%弱含まれ、過去の心不全入院歴のない患者が26%、NYHA心機能分類ではII度70%の背景であった。β遮断薬は94%、RAS系阻害薬も90%超(ARNIを含む)、MRAは74%で、SGLT2阻害薬はVICTORIA試験時代は投与率が低かったため、全体で34%であった。ICDは31%に入っていた。主要評価項目の心血管死または心不全入院は、ベルイシグアト群で低く(HR:0.91、95%CI:0.85~0.98)、心血管死・全体および初回心不全入院・全死亡の副次評価項目もベルイシグアト群でリスクを低下させた。治療効果は、ベースラインのNT-proBNPが低いほど大きく認められた。 この結果から、どのような患者がベルイシグアトの好適例となるかを考察する。心不全増悪や過去の心不全入院歴があってもなくてもGDMTが処方されたうえでも、HFrEFにとどまり、NYHA II度以上の症状があり、NT-proBNPが600pg/mLを超える患者は、心血管死または心不全入院の発生率がプラセボでも0.21/年であり、ベルイシグアトの投与対象となりうる患者と考えられる。したがって、外来通院中でも直近の悪化歴がなかったとしても、外来で入院していない=「安定している」とは考えず、BNP/NT-proBNPや症状の出現や増悪に注意しながら、常にGDMTの最適化や治療の見直しを行いつつ、上に記したようにHFrEFでNYHA II度以上の症状があり、NT-proBNPが600pg/mLを超える事態は、心不全診療において要注意のフェーズと考えられる。

7.

心筋梗塞後にβ遮断薬は今日でも標準治療薬か?正反対の結論を導いた2つのトライアル(解説:桑島巌氏)

 10年ほど前までは、β遮断薬は心筋梗塞発症後の再発予防と生命予後改善薬の標準治療薬の代表格として位置付けられており、その処方が行われていない場合には、その医療機関や担当医師がEvidence Based-Medicineを順守していないとみなされていた時代が長く続いた。しかし近年、急性心筋梗塞後の治療は、PCIによる血行再建術が普及し、アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬処方が必須となり、また高脂血症治療薬による厳格なコレステロール管理がなされるようになるなど、その状況は大きく変わった。 そのような時代の変遷の中で、β遮断薬は心筋梗塞後に必須の治療薬として残存しているのか。その問題に関しては、REDUCE-AMI試験(スウェーデン)では不要、ABYSS試験(フランス)では中止すべきではない、と異なった結論の臨床試験結果が発表されている。今回もまったく正反対の2つの大規模臨床試験結果が、NEJM誌8月30日号に並んで発表された。その2つの試験について対比させながら、コメントを試みる。 スペインとイタリアという南欧を代表する国から発表されたREBOOT-CNIC試験は、左室EFが40%以上の急性心筋梗塞8,438例をβ遮断薬を使用する群と使用しない群にランダム化して、3.7年追跡したオープン臨床試験である。主要エンドポイントである総死亡、心筋梗塞再発、心不全入院の発生率は、β遮断薬使用群22.5件(1,000 patient-years)、非使用群21.7件で、ハザード比(HR)は1.04(95%信頼区間[CI]:0.89~1.22)と両群に有意差は認められなかった。注目すべきは、両群共に対象者の約82%が完全血行再建を受けているということである。 一方、β遮断薬は今でも有効であるという結論を示したノルウェーのBETAMI-DANBLOCK試験を見てみよう。 本試験も、EF40%以上の心筋梗塞5,574例をβ遮断薬使用群と非使用群にランダム化してオープンラベルで3.5年追跡した試験である。 結果は、主要エンドポイントである総死亡、心筋梗塞再発、血行再建、脳梗塞、心不全、致死的心室性期外収縮の総合は、β遮断薬使用群14.2%、非使用群16.3%で、HRが0.85(95%CI:0.75~0.98、p=0.03)であり、β遮断薬使用群で有意に少なかったという結論であった。本試験でも両群共に約92%がPCIによる血行再建術を受けており、抗血小板薬も両群の約90%が処方されていた。 そこで両試験の結果をまとめてみたのが以下の表である。  以上をまとめると、心機能低下例では有効の可能性はあるがが、心不全のない例では血行再建が完全、かつ、脂質や血圧管理などが良好であれば必要はないかもしれない。しかし、すでにβ遮断薬を継続している症例では中止すべきではないであろう。

8.

LVEF保持/軽度低下例へのβ遮断薬、死亡・MACEの複合を抑制/NEJM

 ノルウェー・Drammen HospitalのJohn Munkhaugen氏らBETAMI-DANBLOCK Investigatorsは、左室駆出率(LVEF)が保持または軽度低下していた心筋梗塞後の患者において、β遮断薬の投与は非投与の場合と比較して、死亡または主要心血管イベント(MACE)のリスク低下に結びついたことを報告した。心筋梗塞後のβ遮断薬療法を支持するエビデンスは、現代の再灌流療法や2次予防戦略が導入される以前に確立されたものであり、研究グループは、「加えて、β遮断薬療法は狭心症症状の緩和、および心室性不整脈ならびに心不全の発症率の低下と関連している」として、類似するプロトコールが用いられていた心筋梗塞後のβ遮断薬療法に関する2つの試験(ノルウェー[BETAMI試験]とデンマーク[DANBLOCK試験])を統合評価した。NEJM誌オンライン版2025年8月30日号掲載の報告。β遮断薬療法適応あり患者を除外、長期β遮断薬療法vs.非β遮断薬療法を評価 2つの試験はいずれも非盲検無作為化エンドポイント評価者盲検にて行われ、被験者は、type 1心筋梗塞でLVEF≧40%、7日以内にインフォームド・コンセント(IC)を受けた患者(BETAMI試験)またはtype 1または2心筋梗塞でLVEF 40%超、14日以内にICを受けた患者(DANBLOCK試験)であった。両試験における主な除外基準は、心不全またはその他のβ遮断薬療法適応の診断を受けていたこと、ならびにβ遮断薬療法が禁忌であったこと。心筋梗塞前のβ遮断薬の投与は問われていなかった。 適格被験者は、1対1の割合で、イベント14日以内に長期β遮断薬療法群または非β遮断薬療法群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、全死因死亡またはMACE(再梗塞、予定外の冠動脈血行再建術、虚血性脳卒中、心不全、または悪性心室性不整脈)発生の複合であった。追跡期間中央値3.5年後、主要エンドポイント発生は14.2%vs.16.3%で有意差 計5,574例が無作為化を受け主要解析に含まれた(β遮断薬療法群2,783例、非β遮断薬療法群2,791例)。 追跡期間中央値3.5年(四分位範囲:2.2~4.6)後、主要エンドポイントのイベント発生は、β遮断薬療法群394例(14.2%)、非β遮断薬療法群454例(16.3%)であった(ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.75~0.98、p=0.03)。 エンドポイントを個別にみると、全死因死亡はそれぞれ4.2%と4.4%であり、再梗塞は5.0%と6.7%であった(HR:0.73、95%CI:0.59~0.92)。また、予定外の冠動脈血行再建術は3.9%と3.9%、虚血性脳卒中は1.6%と1.3%、心不全は1.5%と1.9%、悪性心室性不整脈は0.5%と0.6%であった。 安全性アウトカムに関する明らかな差は、両群間でみられなかった。 著者は、「本試験は、副次エンドポイントを統計学的に評価するようデザインされていなかったが、β遮断薬群に割り付けられた患者において再梗塞の発生率が低かったようであった」と考察している。

9.

LVEF軽度低下の心筋梗塞、β遮断薬の有用性は?/Lancet

 左室駆出率(LVEF)が低下した(<40%)心筋梗塞患者では、β遮断薬の有効性を強く支持するエビデンスがあるが、LVEFが低下していない(≧40%)心筋梗塞患者へのβ遮断薬療法に関しては、最近の4つの無作為化試験の結果は一致せず(有益性を認めたのは1試験のみ)、LVEFが軽度低下した(40~49%)サブグループにおける治療効果についてはどの試験も検出力不足であった。スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares Carlos III(CNIC)のXavier Rossello氏らは、LVEF軽度低下の心筋梗塞入院患者におけるβ遮断薬の有効性の評価を目的に行った個別の患者データを用いたメタ解析を実施。心不全の既往歴や臨床徴候がないLVEF軽度低下を伴う急性心筋梗塞患者において、β遮断薬療法は全死因死亡、新規心筋梗塞、心不全の複合エンドポイントの発生を減少させたことを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年9月13日号で発表された。LVEFが40~49%の患者、4試験・1,885例を解析 研究チームは、心不全の既往歴や臨床徴候がなく、LVEFが軽度低下した(40~49%)心筋梗塞患者を対象に含め、発症後14日以内に無作為化を行い、経口β遮断薬療法の長期効果(追跡期間中央値1年超)を検討した無作為化対照比較試験の論文(2000年1月1日以降に発表)を調査した(本研究はCNICなどの助成を受けた)。 LVEF≧40%の心筋梗塞患者を対象とした4つの試験(REBOOT、BETAMI、DANBLOCK、CAPITAL-RCT[日本の67施設の試験、801例])に参加したLVEFが40~49%の患者1,885例(全体1万4,418例の13%)を解析に含めた。 主要エンドポイントは、全死因死亡、新規心筋梗塞、心不全の複合とした。 β遮断薬群が991例(年齢中央値63歳[四分位範囲[IQR]:55~71]、男性791例[80%]、LVEF中央値45.0%、PCI 95%)、非β遮断薬群が894例(同62歳[55~71]、735例[82%]、45.0%、96%)であった。追跡期間中央値は3.5年(IQR:2.3~4.5)。主要複合エンドポイントが有意に優れる 主要複合エンドポイントの発生率は、非β遮断薬群が14%(129/894例、43.0/1,000人年)であったのに対し、β遮断薬群は11%(106/991例、32.6/1,000人年)と有意に低かった(ハザード比[HR]:0.75[95%信頼区間[CI]:0.58~0.97]、p=0.031)。4つの試験間(交互作用のp=0.95)、および患者を登録した5ヵ国間(スペイン、イタリア、デンマーク、ノルウェー、日本)(p=0.98)で、治療効果の異質性は認めなかった。 5つの主な副次エンドポイントはいずれも、両群間に有意差はみられなかった。(1)全死因死亡(β遮断薬群6%[58例]vs.非β遮断薬群8%[69例]、HR:0.78[95%CI:0.55~1.11])、(2)新規心筋梗塞(4%[39例]vs.5%[46例]、0.77[0.50~1.18])、(3)心不全(3%[30例]vs.4%[39例]、0.71[0.44~1.14])、(4)心臓死(2%[14例]vs.3%[23例]、0.55[0.28~1.06])、(5)予期せぬ冠動脈血行再建術(4%[35例]vs.4%[38例]、0.83[0.52~1.31])。2つの安全性エンドポイントに差はない 2つの安全性のエンドポイントにも両群間で差はなかった。(1)脳卒中による入院(β遮断薬群1%[13例]vs.非β遮断薬群1%[7例]、HR:1.70[95%CI:0.68~4.25])。(2)症候性進行性(第2度または3度)房室ブロック(1%[12例]vs.1%[11例]、1.00[0.44~2.27])。 著者は、「これらの結果は、LVEFが低下した心筋梗塞患者におけるβ遮断薬療法の既知の有益性を、軽度に低下した患者サブグループにまで拡張するものである」「今後の研究は、LVEFが保持された(LVEF≧50%)患者に焦点を当てるべきである」としている。

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低リスク急性心筋梗塞、PCI後1ヵ月でアスピリンは中止可能か/NEJM

 低リスクの急性心筋梗塞で、血行再建術を受けた後、合併症の発現なく1ヵ月間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を完了した患者では、1年後(無作為化から11ヵ月後)の心血管・脳血管イベントの発生に関して、P2Y12阻害薬単剤療法はDAPTに対し非劣性であり、出血イベントの発生率は低減したことが示された。イタリア・University of Padua Medical SchoolのGiuseppe Tarantini氏らTARGET-FIRST Investigatorsが、多施設共同非盲検無作為化対照比較試験「TARGET-FIRST試験」の結果を報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年8月31日号で発表された。欧州40施設で1,942例を登録 TARGET-FIRST試験は、最新の薬剤溶出性ステント(DES)を用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受け、虚血イベントや出血イベントのリスクが低い急性心筋梗塞患者の抗血小板療法において、DAPTを1ヵ月間行った時点でのアスピリン早期中止の、DAPT継続に対する非劣性を検証する目的で、2021年3月~2024年3月に、欧州の40施設で参加者を登録して行われた(フランス・MicroPortの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、急性心筋梗塞発症から7日以内に生体分解性ポリマーを用いたrapamycin(和名:シロリムス)溶出性ステント(MicroPort製)による血行再建術が成功し、その後1ヵ月間、虚血イベントや大出血イベントの発現なしにDAPT(P2Y12阻害薬[プラスグレル、チカグレロル、クロピドグレルから選択]+アスピリン)を完了した患者であった。 被験者を、アスピリンの投与を中止してP2Y12阻害薬単剤に移行する群、またはDAPTを継続する群に、1対1の割合で無作為に割り付け、11ヵ月間投与した。 1,942例を登録し、P2Y12阻害薬単剤群に961例、DAPT継続群に981例が無作為化された。PCI施行から無作為化までの期間中央値は37日であった。全体の平均(±SD)年齢は61.0(±10.6)歳、78.4%が男性で、14.5%が糖尿病、38.7%が高血圧、27.8%が高コレステロール血症を有していた。 無作為化の時点で、P2Y12阻害薬は74.0%でチカグレロル、20.9%でプラスグレル、5.1%でクロピドグレルが処方されていた。また、97.0%がスタチン、79.1%がβ遮断薬、76.7%がACE阻害薬またはARBの投与を受けていた。主要複合アウトカムは非劣性 主要アウトカムは、無作為化から11ヵ月の時点での全死因死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、大出血(BARC出血基準タイプ3または5)の複合とした。非劣性マージンは1.25%ポイントと定義した。 11ヵ月後の主要アウトカムのイベントは、P2Y12阻害薬単剤群で20例(2.1%)、DAPT継続群で21例(2.2%)に発現し(群間差:-0.09%ポイント、95%信頼区間[CI]:-1.39~1.20、非劣性のp=0.02)、P2Y12阻害薬単剤群のDAPT継続群に対する非劣性が示された。 主要アウトカムの個別の構成要素のイベント発生状況は次のとおりだった。(1)全死因死亡(P2Y12阻害薬単剤群0.4%vs.DAPT継続群0.2%、ハザード比[HR]:2.04[95%CI:0.37~11.14])、(2)心筋梗塞(0.7%vs.1.1%、0.72[0.27~1.88])、(3)ステント血栓症(definiteまたはprobable)(0.1%vs.0%)、(4)脳卒中(0.3%vs.0.2%、1.53[0.26~9.18])、(5)大出血(0.7%vs.0.7%、1.02[0.36~2.91])。BARCタイプ2、3、5の出血イベントが有意に改善 主な副次アウトカムであるBARC出血基準タイプ2、3、5の出血イベントは、DAPT継続群で54例(5.6%)に発生したのに対し、P2Y12阻害薬単剤群では25例(2.6%)と有意に少なく(HR:0.46、95%CI:0.29~0.75、優越性のp=0.002)、P2Y12阻害薬単剤群の優越性を確認した。 重篤な有害事象の頻度は両群で同程度であり、P2Y12阻害薬単剤群で108例(11.2%)に144件、DAPT継続群で122例(12.4%)に157件が報告された。 著者は、「今回得られた知見は、虚血イベントや出血イベントのリスクが低い患者を慎重に選択した集団における、早期の解剖学的に完成度の高い血行再建術という特定の条件下で解釈すべきであり、広範で異質性の高い患者集団に直接的に一般化できるものではない」としている。

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閉塞性肥大型心筋症、aficamtenが有効/NEJM

 β遮断薬は、有効性に関するエビデンスが限定的であるにもかかわらず、症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)の初期治療に用いられてきた。心筋ミオシン阻害薬であるaficamtenは、標準治療への追加投与で左室流出路圧較差を軽減し、運動耐容能を改善してHCMの症状を軽減することが示されている。スペイン・Centro de Investigacion Biomedica en Red Enfermedades Cardiovaculares(CIBERCV)のPablo Garcia-Pavia氏らMAPLE-HCM Investigatorsは、HCMの治療におけるこれら2つの薬剤の単剤投与の臨床的有益性を直接比較する目的で、国際的な第III相二重盲検ダブルダミー無作為化試験「MAPLE-HCM試験」を実施。メトプロロール単剤に比べaficamten単剤は、最高酸素摂取量の改善に関して優越性を示し、症状の軽減や左室流出路圧較差、NT-proBNP値、左房容積係数の改善と関連したことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年9月11日号で報告された。世界71施設で参加者を登録 MAPLE-HCM試験は2023年6月~2024年8月に、北米、欧州、ブラジル、イスラエル、中国の71施設で参加者のスクリーニングを募り行われた(Cytokineticsの助成を受けた)。 対象は、年齢18~85歳、左室壁厚が15mm以上(疾患の原因となる遺伝子変異またはHCMの家族歴がある場合は13mm以上)のHCMと診断され、スクリーニングにおいて左室駆出率(LVEF)が60%以上、かつ安静時の左室流出路圧較差が30mmHg以上、またはバルサルバ法で誘発時の左室流出路圧較差が50mmHg以上の患者であった。 被験者を、aficamten(5mg/日で開始し、2週ごとに5mgずつ増量して6週目に20mg/日とする)+プラセボを投与する群、またはメトプロロール(50mg/日で開始し、2週ごとに50mgずつ増量して6週目に200mgとする)+プラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、24週間投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから24週目までの最高酸素摂取量の変化とした。主要エンドポイントが有意に良好 175例を登録し、aficamten群に88例、メトプロロール群に87例を割り付けた。全体の平均年齢は58歳で、58.3%が男性であった。ベースラインの安静時の平均左室流出路圧較差は47mmHg、バルサルバ法で誘発時の平均左室流出路圧較差は74mmHgであり、平均LVEFは68%で、NYHA心機能分類IIの心不全が70.3%を占めた。NT-proBNP値中央値は468pg/mL(四分位範囲:198~968)だった。 主要エンドポイントは、メトプロロール群が-1.2mL/kg/分(95%信頼区間[CI]:-1.7~-0.8)であったのに対し、aficamten群は1.1mL/kg/分(0.5~1.7)と有意に良好であった(最小二乗平均群間差:2.3mL/kg/分、95%CI:1.5~3.1、p<0.001)。6つの副次エンドポイント、5つが有意に優れる 次の5つの副次エンドポイントは、aficamten群で有意に優れた。(1)24週時のNYHA心機能分類が1分類以上改善の達成率(51%vs.26%、最小二乗平均群間差:25%[95%CI:11~39]、p<0.001)、(2)ベースラインから24週目までのカンザスシティ心筋症質問票-臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)の変化量(15.8点vs.8.7点、6.9点[2.6~11.3]、p=0.002)、(3)24週目までのバルサルバ法で誘発時の左室流出路圧較差の変化量(-40.7mmHg vs.-3.8mmHg、-34.9mmHg[-43.4~-26.4]、p<0.001)、(4)NT-proBNPのベースライン値に対する24週時の値の相対的な変化(0.3 vs.1.4、0.19[0.15~0.24]、p<0.001)、(5)24週目までの左房容積係数の変化量(-3.8mL/m2 vs.2.8mL/m2、-7.0mL/m2[-9.1~-4.9]、p<0.001)。 一方、24週目までの左室心筋重量係数の変化量(-6.9g/m2 vs.-3.8g/m2、-4.9g/m2[-11.7~2.0]、p=0.16)は両群間に有意な差を認めなかった。有害事象の発現状況は同程度 投与開始後に、aficamten群の65例(74%)、メトプロロール群の66例(76%)で1件以上の有害事象が発現した。重篤な有害事象はそれぞれ7例(8%)および6例(7%)に、早期の投与中止に至った有害事象は1例(1%、短期間のウイルス性疾患を発症後に突然死)および3例(3%)に、減量に至った有害事象は1例(1%、めまい)および4例(5%、立ちくらみ2例、徐脈1例、疲労感1例)に認めた。 著者は、「本試験で認めたメトプロロールに対するaficamtenの臨床的有益性は、心筋ミオシンの阻害による左室流出路閉塞の軽減に起因する可能性が高い」「本試験はaficamten単剤療法だけでなく、閉塞性HCM患者におけるメトプロロール単剤の投与量、治療効果、副作用に関する独自の知見をも提供する」としている。

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主要5クラスの降圧薬、単剤・併用の降圧効果を定量化/Lancet

 オーストラリア・University of New South WalesのNelson Wang氏らは、主要5クラスの降圧薬の降圧効果およびそれらの組み合わせによる降圧効果の定量化を目的に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験のシステマティックレビューとメタ解析を行った。降圧薬のあらゆる組み合わせについて、期待される降圧効果の強固な推定値を提示し、その降圧効果の程度を低強度・中強度・高強度に分類可能であることを示した。著者は、「得られた知見は、世界中の高血圧治療を受ける人々の、不良な血圧コントロールを改善するための処方決定に役立つ情報となるだろう」と述べている。Lancet誌2025年8月30日号掲載の報告。診察室SBPの低下を定量化、各療法の降圧効果の強度を低・中・高に分類 研究グループは、成人参加者がアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、Ca拮抗薬、利尿薬のいずれかまたは組み合わせの投与を受けた無作為化二重盲検プラセボ対照試験を対象に、システマティックレビューとメタ解析を行った。適格基準は、追跡期間は4~26週、降圧薬治療(投与量と種類)が血圧のフォローアップ前4週間以上にわたり固定していること、治療群間の収縮期血圧(SBP)の平均群間差を算出するために診察室血圧が利用できることとした。クロスオーバー期間のウォッシュアウト期間が2週間未満のクロスオーバー試験は除外した。 データベースの公開~2022年12月31日に発表された適格試験を、Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、Epistemonikosを検索して特定した。さらに検索の更新を行い、2023年1月1日~2025年2月28日に発表された試験を含めた。 主要アウトカムは、プラセボと比較した実薬治療の診察室SBPの低下(ベースラインから最長追跡時点[最短4週]までの平均SBP変化量の差)とした。 降圧効果は、ベースライン血圧(包含試験全体の平均ベースライン血圧154/100mmHg)により標準化し、固定効果メタ解析を用いて平均差と95%信頼区間(CI)を推算した。また、単剤・併用それぞれの薬物療法を、SBPのベースライン値154mmHgからの低下の程度で、低強度(<10mmHg低下)、中強度(10~19mmHg低下)、高強度(≧20mmHg低下)に分類した。あらゆる降圧薬の併用療法の有効性を計算するモデルを開発し、2剤併用または3剤併用の外部試験で検証した。標準用量単剤療法、SBP低下8.7mmHg、79%が低強度 解析には、484試験の10万4,176例が含まれた。平均年齢は54歳(SD 8)、男性5万7,422例(55%)、女性4万6,754例(45%)であり、平均追跡期間は8.6週(SD 5.2)であった。 平均して、標準用量での単剤療法によるSBP低下は8.7mmHg(95%CI:8.2~9.2)であった。クラス別では、ACE阻害薬6.8mmHg、ARB 8.5mmHg、β遮断薬8.9mmHg、Ca拮抗薬9.5mmHg、利尿薬10.8mmHg。複数のメタ解析で薬剤クラスによってかなりの異質性が認められ(I2>50%)、同一クラスでも薬剤間の有効性は異なることが示唆された。 また、単剤療法では用量倍増で、SBPは追加で1.5mmHg(1.2~1.7)低下した。用量反応性はβ遮断薬が最も小さく0.5mmHg、Ca拮抗薬が最も大きく2.6mmHgだった。 さらに、単剤療法ではベースラインSBPが10mmHg低下するごとに、降圧効果は1.3mmHg(95%CI:1.0~1.5)低下したが、薬剤クラス間で差がみられた。 降圧の程度は、標準用量での単剤療法57種のうち45種(79%)が低強度に分類された。標準用量2剤併用療法、SBP低下14.9mmHg、58%が中強度、11%が高強度 平均して、標準用量での2剤併用療法によるSBP低下は14.9mmHg(95%CI:13.1~16.8)であった。併用する両剤の用量倍増で、SBPは追加で2.5mmHg(1.4~3.7)低下した。 降圧の程度は、2剤併用療法の異なる薬剤・用量の組み合わせ189種のうち、110種(58%)が中強度に分類され、21種(11%)が高強度に分類された。 あらゆる併用療法の有効性モデルを外部試験で検証した結果、SBPの予測値と測定値の間に高い相関関係があることが示された(r=0.76、p<0.0001)。

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心筋梗塞後のβ遮断薬、LVEF>40%なら不要?/NEJM

 心筋梗塞で侵襲的治療を受け退院した左室駆出率(LVEF)40%超の患者において、β遮断薬の投与は全死因死亡、再梗塞、または心不全による入院の発生に影響を与えないことが示された。スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares Carlos IIIのBorja Ibanez氏らREBOOT-CNIC Investigatorsが、研究者主導の「Treatment with Beta-Blockers after Myocardial Infarction without Reduced Ejection Fraction trial:REBOOT試験」の結果を報告した。駆出率が保持された心筋梗塞後のβ遮断薬の使用に関する現行ガイドラインの推奨事項は、再灌流療法、侵襲的治療、完全血行再建術、および現代的な薬物療法が標準治療となる前に実施された試験に基づいている。研究グループは、β遮断薬の役割について再検討する必要があるとして本検討を行った。NEJM誌オンライン版2025年8月30日号掲載の報告。退院前LVEF>40%の患者をβ遮断薬投与vs.非投与に無作為化 REBOOT試験は、スペインとイタリアの109施設で実施された、PROBE(Prospective Randomized Open Blinded End-Point)デザインの試験である。 研究グループは、急性心筋梗塞(ST上昇の有無を問わず)で入院中に侵襲的治療(最終的な治療戦略にかかわらず冠動脈造影により定義)を受け、かつ退院前のLVEFが40%超の患者を、退院時または退院後14日以内にβ遮断薬投与群または非投与群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 β遮断薬投与群では担当医師がβ遮断薬の種類と用量を決定し、また、すべての患者が標準治療を受けた。 主要アウトカムは、全死因死亡、再梗塞、または心不全による入院の複合であった。副次アウトカムは主要アウトカムの個別のイベント、心臓死など。ITT解析で評価した。 2018年10月~2024年4月に計8,505例が無作為化され(β遮断薬投与群4,243例、非投与群4,262例)、同意撤回などを除く8,438例(それぞれ4,207例、4,231例)がITT解析対象集団に組み込まれた。β遮断薬投与は、全死因死亡、再梗塞または心不全による入院の発生に影響を与えず 追跡期間中央値3.7年において、主要アウトカムのイベントはβ遮断薬投与群で316例(1,000患者年当たり22.5件)、非投与群で307例(21.7件)に発生した(ハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.89~1.22、p=0.63)。 全死因死亡は、β遮断薬投与群161例、非投与群153例(1,000患者年当たり11.2件vs.10.5件、HR:1.06[95%CI:0.85~1.33])、再梗塞はそれぞれ143例、143例(10.2件vs.10.1件、1.01[0.80~1.27])で、心不全による入院はそれぞれ39例、44例(2.7件vs.3.0件、0.89[0.58~1.38])であった。 事前に規定したサブグループ解析の結果、女性ならびにST上昇型心筋梗塞では非投与群のほうが予後良好であることが示唆された。 安全性アウトカムについては、群間差は認められなかった。

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全年齢で130/80mmHg未満を目標に、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』発刊/日本高血圧学会

 日本高血圧学会は『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(以下、JSH2025)を8月29日に発刊した。6年ぶりとなる今回の改訂にあたり、大屋 祐輔氏(琉球大学名誉教授/高血圧管理・治療ガイドライン2025作成委員長)と苅尾 七臣氏(自治医科大学循環器内科学部門 教授/日本高血圧学会 理事長)が降圧目標や治療薬の位置付けと選択方法などについて、7月25日に開催されたプレスセミナーで解説した。 本書は高血圧患者(140/90mmHg以上)のほか、高値血圧(130~139/80~90mmHg)、血圧上昇に伴い脳心血管リスクが高まる正常高値血圧以上(120/80mmHg以上)のすべての人を対象に作成され、Clinical Question(CQ)全19項目が設けられた。主な改訂点は(1)降圧目標を合併症などを考慮し全年齢「130/80mmHg」*へ、(2)降圧薬選択におけるβ遮断薬の復活、(3)治療の早期介入と治療ステップ、(4)治療アプリの活用など。各パラグラフで詳細に触れていく。*診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満個別性に配慮し、全年齢で130/80mmHg未満を目指す 日本高血圧学会は2000年から四半世紀にわたってガイドラインを作成し、高血圧の是正問題に力を入れてきた。しかし、高所得国における日本人の高血圧有病率は最も不良であり、昨今の罹患率は2017年の推計値とほぼ同等の4,300万例に上る1)。そこで、今回の改訂では、国民の血圧を下げるために、“理論でなく行動のためのもの、シンプルでわかりやすい、エビデンスに基づくもの”という理念を基に、正常血圧の基準(120/80mmHg未満)や、高血圧の基準(140/90mmHg以上)などの数値は欧米のガイドラインを踏まえて据え置くも、JSH2025作成のために実施されたシステマティック・レビューならびにメタ解析の結果から脳心血管病発症リスクを考慮し、「原則的に収縮期血圧130mmHg未満を降圧目標とする」とした(第2部 5.降圧目標[p.67~69]、CQ4、8、9、12、14参照)。 これについて大屋氏は「降圧目標130/80mmHg。これが本改訂で押さえておくべき値である。前版の『高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)』では75歳以上の高齢者、脳血管障害や慢性腎臓病(蛋白尿陰性)を有する患者などは有害事象の発現を考慮して140/90未満と区別していた。しかし、これまでの国内外の研究からも高値血圧(130~139/80~89mmHg)でも心血管疾患の発症や死亡リスクが高いことから、高血圧患者であれば、120/80mmHg以上の血圧を呈するすべての者を血圧管理の対象とする。また、降圧目標も75歳以上の高齢者も含めて、診察室血圧130/80mmHg未満に定めることとした。ただし、大屋氏は「一律に下げるのではなく、副作用や有害事象に注意しながら個別性を考慮しつつ下げる」と注意点も強調している。 JSH2019発刊後も高血圧の定義が140/90mmHg以上であるためか、降圧目標をこの値に設定して治療にあたっている医師が少なくない。「130/80mmHg未満を目標に、血圧レベルや脳心血管病発症の危険因子などのリスクを総合的に評価し、個々に応じた治療計画を設定することが重要」と同氏は繰り返し強調した。苅尾氏も「とくに朝の血圧上昇がさまざまなリスク上昇に影響を及ぼしているにもかかわらず、一番コントロールがついていない。ガイドライン改訂と血圧朝活キャンペーンを掛け合わせ、朝の血圧130未満の達成につなげていく」と言及した。β遮断薬の処方減に危機感 高血圧に対する治療介入は患者を診断した時点が鍵となる。まず治療を行うにあたり、脳心血管病に対する予後規定因子(p.65、表6-1)を基に血圧分類とリスク層別化(同、表6-2)を行い、そのリスク判定を踏まえて、初診時血圧レベル別の高血圧管理計画(p.67、図6-1)から患者個々の血圧コントロールを進めていく。実際の処方薬を決定付けるには、主要降圧薬の積極的適応と禁忌・重要な注意を要する病態(p.95、表8-1)、降圧薬の併用STEPにおけるグループ分類(p.95、表8-2)を参考とする。今回の改訂では積極的適応がより具体的になり、脳血管障害はもちろん、体液貯留や大動脈乖離、胸部大動脈瘤の既往にも注意を払いたい。 そしてもう1つの変更点は、降圧薬のグループ分類が新設されたことである。「治療薬の選択については、β遮断薬を除外した前回の反省点を踏まえ、単剤でも脳心血管病抑制効果が示されている5種類(長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬、β遮断薬)を主要降圧薬(グループ1、以下G1降圧薬)に位置付けた(表8-2)」と大屋氏は説明。とくにβ遮断薬の考え方について、「JSH2019では糖尿病惹起作用や高齢者への適応に関してネガティブであったが、それらの懸念は一部の薬剤に限るものであり、有用性と安全性が確立しているビソプロロールとカルベジロールの使用は推奨される。また、耐糖能異常を来す患者への投与について、前版では慎重投与となっていたが重要な注意の下で使用可能な病態とした」とし、「各薬剤の積極的適応、禁忌や注意すべき病態を考慮するために表8-1を参照して処方してほしい。もし積極的適応が表8-1にない場合には、コラム8-1(p.96)のアドバイスを参考にG1降圧薬を選択してもらいたい」ともコメントした。 また、治療を進めていく上では図8-1の降圧薬治療STEPの利用も重要となる。G1降圧薬の単剤投与でも効果不十分であれば2剤併用やG2降圧薬(ARNI、MR拮抗薬)の処方を検討する。さらに降圧目標を達成できない場合にはG1・G2降圧薬から3剤併用を行う必要がある。ただし、それでも効果がみられない場合には、専門医への紹介が考慮される。 なおMR拮抗薬は、治療抵抗性高血圧での追加薬として有用であることから、実地医家の臨床上の疑問に応える形でクエスチョンとしても記されている(p.181、Q10)。薬物療法は診断から1ヵ月以内に 続いて、大屋氏は治療介入のスピードも重要だとし、「今改訂では目標血圧への到達スピード(薬物投与の時期)も押さえてほしい」と話す。たとえば、低・中等リスクなら生活習慣の改善を実施して1ヵ月以内に再評価を行い、改善がなければ改善の強化とともに薬物治療を開始する。一方、高リスクであれば生活習慣の改善とともにただちに薬物療法を開始するなど、降圧のスピードも考慮しながらの管理が必要だという。 ただし、急性腎障害や症候性低血圧、過降圧によるふらつき、高カリウム血症などの電解質異常といった有害事象の出現に注意が必要であること、高齢者のなかでもフレイルや要介護などに該当する患者の対応については、特殊事例として表10-4に降圧指針(p.151)が示されていることには留意したい。利用者や対象者を明確に、血圧管理にアプリの活用も 本書の利用対象者は多岐にわたるため、各利用対象を考慮して3部構成になっている。第1部(国民の血圧管理)は自治体や企業団体や一般市民など、第2部(高血圧患者の管理・治療)は実地医家向け、第3部(特殊な病態および二次性高血圧の管理・治療)は高血圧、循環器、腎臓、内分泌、老年の専門医療に従事する者やその患者・家族など。 新たな追加項目として、第7章 生活習慣の改善に「デジタル技術の活用」が盛り込まれた点も大きい。高血圧治療補助アプリは成人の本態性高血圧症の治療補助として2022年9月1日に保険適用されている。苅尾氏が降圧目標達成に向けた血圧管理アプリの利用について、「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針が発刊されているが、その内容が本ガイドラインに組み込まれた(CQ7)。その影響は大きい」ともコメントしている。現在、日本高血圧学会において、製品概要や使用上の注意点を明記した『高血圧治療補助アプリ適正使用指針(第1版)』を公開している。 同学会は一般市民への普及にも努めており、7月25日からはYouTubeなどを利用した動画配信を行い、血圧目標値130/80mmHgの1本化についての啓発を進めている。あわせてフェイク情報の拡散問題の解決にも乗り出しており、大屋氏は「フェイク情報を放置せず、正確な情報提供が必要だ。本学会からの提言として、『高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~』を学会ホームページならびに本書の付録(p.302)として盛り込んでいるので、ぜひご覧いただきたい」と締めくくった。

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「高齢者の安全な薬物療法GL」が10年ぶり改訂、実臨床でどう生かす?

 高齢者の薬物療法に関するエビデンスは乏しく、薬物動態と薬力学の加齢変化のため標準的な治療法が最適ではないこともある。こうした背景を踏まえ、高齢者の薬物療法の安全性を高めることを目的に作成された『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン』が2025年7月に10年ぶりに改訂された。今回、ガイドライン作成委員会のメンバーである小島 太郎氏(国際医療福祉大学医学部 老年病学)に、改訂のポイントや実臨床での活用法について話を聞いた。11領域のリストを改訂 前版である2015年版では、高齢者の処方適正化を目的に「特に慎重な投与を要する薬物」「開始を考慮するべき薬物」のリストが掲載され、大きな反響を呼んだ。2025年版では対象領域を、1.精神疾患(BPSD、不眠、うつ)、2.神経疾患(認知症、パーキンソン病)、3.呼吸器疾患(肺炎、COPD)、4.循環器疾患(冠動脈疾患、不整脈、心不全)、5.高血圧、6.腎疾患、7.消化器疾患(GERD、便秘)、8.糖尿病、9.泌尿器疾患(前立腺肥大症、過活動膀胱)、10.骨粗鬆症、11.薬剤師の役割 に絞った。評価は2014~23年発表の論文のレビューに基づくが、最新のエビデンスやガイドラインの内容も反映している。新薬の発売が少なかった関節リウマチと漢方薬、研究数が少なかった在宅医療と介護施設の医療は削除となった。 小島氏は「当初はリストの改訂のみを行う予定で2020年1月にキックオフしたが、新型コロナウイルス感染症の対応で作業の中断を余儀なくされ、期間が空いたことからガイドラインそのものの改訂に至った。その間にも多くの薬剤が発売され、高齢者にはとくに慎重に使わなければならない薬剤も増えた。また、薬の使い方だけではなく、この10年間でポリファーマシー対策(処方の見直し)の重要性がより高まった。ポリファーマシーという言葉は広く知れ渡ったが、実践が難しいという声があったので、本ガイドラインでは処方の見直しの方法も示したいと考えた」と改訂の背景を説明した。「特に慎重な投与を要する薬物」にGLP-1薬が追加【削除】・心房細動:抗血小板薬・血栓症:複数の抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)の併用療法・すべてのH2受容体拮抗薬【追加】・糖尿病:GLP-1(GIP/GLP-1)受容体作動薬・正常腎機能~中等度腎機能障害の心房細動:ワルファリン 小島氏は、「抗血小板薬は、心房細動には直接経口抗凝固薬(DOAC)などの新しい薬剤が広く使われるようになったため削除となり、複数の抗血栓薬の併用療法は抗凝固療法単剤で置き換えられるようになったため必要最小限の使用となっており削除。またH2受容体拮抗薬は認知機能低下が懸念されていたものの報告数は少なく、海外のガイドラインでも見直されたことから削除となった。ワルファリンはDOACの有効性や安全性が高いことから、またGLP-1(GIP/GLP-1)受容体作動薬は低体重やサルコペニア、フレイルを悪化させる恐れがあることから、高齢者における第一選択としては使わないほうがよいと評価して新たにリストに加えた」と意図を話した。 なお、「特に慎重な投与を要する薬物」をすでに処方している場合は、2015年版と同様に、推奨される使用法の範囲内かどうかを確認し、範囲内かつ有効である場合のみ慎重に継続し、それ以外の場合は基本的に減量・中止または代替薬の検討が推奨されている。新規処方を考慮する際は、非薬物療法による対応で困難・効果不十分で代替薬がないことを確認したうえで、有効性・安全性や禁忌などを考慮し、患者への説明と同意を得てから開始することが求められている。「開始を考慮するべき薬物」にβ3受容体作動薬が追加【削除】・関節リウマチ:DMARDs・心不全:ACE阻害薬、ARB【追加】・COPD:吸入LAMA、吸入LABA・過活動膀胱:β3受容体作動薬・前立腺肥大症:PDE5阻害薬 「開始を考慮するべき薬物」とは、特定の疾患があった場合に積極的に処方を検討すべき薬剤を指す。小島氏は「DMARDsは、今回の改訂では関節リウマチ自体を評価しなかったことから削除となった。非常に有用な薬剤なので、DMARDsを削除してしまったことは今後の改訂を進めるうえでの課題だと思っている」と率直に感想を語った。そのうえで、「ACE阻害薬とARBに関しては、現在では心不全治療薬としてアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、SGLT2阻害薬が登場し、それらを差し置いて考慮しなくてもよいと評価して削除した。過活動膀胱治療薬のβ3受容体作動薬は、海外では心疾患を増大させるという報告があるが、国内では報告が少なく、安全性も高いため追加となった。同様にLAMAとLABA、PDE5阻害薬もそれぞれ安全かつ有用と評価した」と語った。漠然とした症状がある場合はポリファーマシーを疑う 高齢者は複数の医療機関を利用していることが多く、個別の医療機関での処方数は少なくても、結果的にポリファーマシーとなることがある。高齢者は若年者に比べて薬物有害事象のリスクが高いため、処方の見直しが非常に重要である。そこで2025年版では、厚生労働省より2018年に発表された「高齢者の医薬品適正使用の指針」に基づき、高齢者の処方見直しのプロセスが盛り込まれた。・病状だけでなく、認知機能、日常生活活動(ADL)、栄養状態、生活環境、内服薬などを高齢者総合機能評価(CGA)なども利用して総合的に評価し、ポリファーマシーに関連する問題点を把握する。・ポリファーマシーに関連する問題点があった場合や他の医療者から報告があった場合は、多職種で協働して薬物療法の変更や継続を検討し、経過観察を行う。新たな問題点が出現した場合は再度の最適化を検討する。 小島氏らの報告1,2)では、5剤以上の服用で転倒リスクが有意に増大し、6剤以上の服用で薬物有害事象のリスクが有意に増大することが示されている。そこで、小島氏は「処方の見直しを行う場合は10剤以上の患者を優先しているが、5剤以上服用している場合はポリファーマシーの可能性がある。ふらつく、眠れない、便秘があるなどの漠然とした症状がある場合にポリファーマシーの状態になっていないか考えてほしい」と呼びかけた。本ガイドラインの実臨床での生かし方 最後に小島氏は、「高齢者診療では、薬や病気だけではなくADLや認知機能の低下も考慮する必要があるため、処方の見直しを医師単独で行うのは難しい。多職種で協働して実施することが望ましく、チームの共通認識を作る際にこのガイドラインをぜひ活用してほしい。巻末には老年薬学会で昨年作成された日本版抗コリン薬リスクスケールも掲載している。抗コリン作用を有する158薬剤が3段階でリスク分類されているため、こちらも日常診療での判断に役立つはず」とまとめた。

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降圧薬の種類と心血管リスク、ARB vs.CCB vs.利尿薬vs.β遮断薬

 血圧が良好にコントロールされている高齢高血圧患者において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)およびカルシウム拮抗薬(CCB)の長期使用は、サイアザイド系利尿薬やβ遮断薬と比較して、心血管イベントの複合アウトカムに対してより大きなベネフィットをもたらす可能性が示唆された。中国・北京協和医学院のXinyi Peng氏らは、STEP試験の事後解析として、ARB、CCB、サイアザイド系利尿薬、β遮断薬という4つの降圧薬クラスに焦点を当て、それらの長期投与と心血管リスクの関連について評価した。BMC Medicine誌2025年7月1日号掲載の報告より。 本研究は、脳卒中の既往のない60~80歳の中国人高血圧患者を対象としたSTEP試験のデータを用いて実施された。追跡不能となった234例および無作為化後に血圧記録が得られなかった20例を除外し、最終的に8,257例が解析対象となった。各降圧薬クラスについて、相対的曝露期間(薬剤投与期間/イベント発生までの期間)を算出した。 主要アウトカムは、脳卒中の初回発症、急性冠症候群(ACS)、急性非代償性心不全、冠動脈血行再建術、心房細動、心血管死の複合とされた。副次アウトカムは、これら主要アウトカムの各構成要素であった。各アウトカムに対するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、Cox回帰分析により算出した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値3.34年において、主要アウトカム解析の結果、ARBまたはCCBへの相対的曝露期間が長いほど、心血管複合リスクが有意に低下することが明らかになった。・ARBへの相対的曝露期間が1単位増加するごとに、主要アウトカムのリスクは45%低下した(HR:0.55、95%CI:0.43~0.70)。CCBへの曝露においてはリスクが30%低下した(HR:0.70、95%CI:0.54~0.92)。・利尿薬は中間的な結果を示した(HR:1.02、95%CI:0.66~1.56)。・一方で、β遮断薬の相対的曝露期間が長いほど、主要アウトカムのリスクは有意に上昇した(HR:2.20、95%CI:1.81~2.68)。・副次アウトカムに関しては、ARBおよびCCBの相対的曝露期間が長いほど、全死亡および心血管死のリスクが有意に低下していた。さらにARBの相対的曝露期間の長さは、脳卒中、ACS、主要心血管イベント(MACE)のリスク低下と関連していた。・相対的曝露期間の1単位増加当たりのHRは、主要アウトカム、MACE、脳卒中のいずれにおいても、ARBがCCBより一貫して低く(いずれもp<0.05)、より大きなベネフィットを示した。 著者らは、「本事後解析の結果は、ARBおよびCCBの長期投与が、利尿薬およびβ遮断薬と比較して、高齢の高血圧患者における複数の心血管イベントについて良好な予後と関連する可能性を示唆した。さらに、ARBはCCBよりも大きな心血管ベネフィットをもたらすことが推察された」とまとめている。一方、β遮断薬の長期投与が心血管リスクの上昇と関連を示したことについては、医学的適応による選択バイアスを反映している可能性があるとしている。

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肥大型心筋症治療のパラダイムシフト【心不全診療Up to Date 2】第3回

肥大型心筋症治療のパラダイムシフトKey Point肥大型心筋症(HCM)の病態理解は、サルコメア蛋白遺伝子異常による「心筋の過収縮とエネルギー非効率性」を根源とする疾患へと深化している診断には心エコーやMRI、遺伝子検査が有用で、AI解析も注目されているサルコメアを直接制御する初の病態修飾薬、心筋ミオシン阻害薬を深掘りはじめに肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)は、高血圧症や弁膜症などほかの心疾患では説明できない“左室ないし右室心筋の肥厚を呈する最も頻度の高い遺伝性心疾患”である(図1)。(図1)肥大型心筋症の定義画像を拡大する左室流出路閉塞(LVOTO)の有無、心不全症状、致死性不整脈リスクなど、その臨床像は極めて多様性に富む。これまでの治療は対症療法が中心であったが、近年、疾患の根源的病態であるサルコメアの機能異常に直接作用する心筋ミオシン阻害薬(Cardiac Myosin Inhibitor:CMI)が登場し、治療は大きな転換期を迎えている。「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」においてもHCMは独立した項目として扱われ、とくに治療アルゴリズムが大きく更新された。本稿では、この最新ガイドラインの知見を基に、HCMの病態、診断、そしてCMIを中心とした最新治療について概説する。最新治療を理解するための病態生理HCMの病態理解は、単なる「心筋の肥厚」から「サルコメアの機能異常」へと深化している。HCMの多くは、心筋収縮の基本単位であるサルコメアを構成する蛋白(βミオシン重鎖、ミオシン結合蛋白Cなど)の遺伝子変異に起因する1)。これらの変異は、心筋ミオシンのATPase活性を亢進させ、アクチンとミオシンが過剰に架橋(クロスブリッジ)を形成する「心筋の過収縮」状態を引き起こす。この過収縮はATPの過剰消費を招き、心筋のエネルギー効率を著しく低下させる。結果として、心筋は相対的なエネルギー欠乏と弛緩障害に陥り、心筋虚血、線維化、そして代償的な心筋肥厚が進行する。この一連の病態カスケードが、LVOTO、拡張障害、不整脈といった多彩な臨床像の根源となっている。CMIをはじめとする最新治療は、この上流にある「サルコメアの過収縮」を是正することに主眼を置いている。最新の診断方法HCMの診断は、画像検査、バイオマーカー、遺伝学的検査を組み合わせた包括的アプローチで行われる。画像診断:心エコー図検査が基本であり、15mm以上の最大左室壁厚(家族歴があれば13mm以上)が診断の契機となる。LVOTO(安静時・バルサルバ法や運動など生理的誘発時圧較差)、僧帽弁収縮期前方運動(systolic anterior movement:SAM)、拡張機能、左房容積などの評価が必須である。心臓MRI(CMR)は、心エコーで評価困難な心尖部等の形態評価に加え、ガドリニウム遅延造影(LGE)による心筋線維化の検出・定量評価に優れる。LGEの存在とその広がりは突然死リスクの重要な修飾因子であり、リスク層別化に不可欠である2)。バイオマーカー:最新のガイドラインでは、BNP/NT-proBNPが全死亡予測や治療モニタリングに有用(推奨クラスIIa)、高感度トロポニンも予後の推測に有用(推奨クラスIIa)とされている。また、肥大型心筋症の鑑別として、血清・尿中のM蛋白(ALアミロイドーシス診断のため)やα-ガラクトシダーゼ活性(α-GAL、ファブリー病診断のため)の測定も推奨されている(推奨クラスI)。遺伝学的検査:2022年に保険収載され、その重要性は増している。原因遺伝子の同定による確定診断、血縁者に対するカスケードスクリーニング(発症前診断)、そして予後予測への応用が期待される。サルコメア遺伝子変異陽性例は陰性例に比して予後不良であることが報告されており、精密医療の実現に向けた重要な情報となる。AI技術の応用:人工知能(AI)は、HCM診断の各側面でその応用が進んでいる。たとえば心電図解析では、AIが人間の目では捉えきれない微細な波形パターンからHCMを極めて高い精度で検出し、専門医が「正常」と判断した心電図からでもHCMを見つけ出す可能性が指摘されている3,4)。また、AIが心エコー図画像から心筋線維化(LGE)の存在を予測したり、CMR画像からLGEを専門家と同等の精度で自動的に定量化したりすることで、リスク評価を支援することが報告されている5-7)。遺伝子検査の分野では、病的意義が不明な遺伝子バリアント(VUS)の病原性を予測するAIモデルにより、HCMの診断率が向上し、家族スクリーニングや治療判断の補助としての有用性が示されつつある8)。治療治療戦略は、LVOTOの有無と左室駆出率(LVEF)に基づき選択される。(図2)(図2)肥大型心筋症の治療フローチャート画像を拡大する1. 閉塞性肥大型心筋症(HOCM)に対する治療LVOTO(安静時または負荷で30mmHg以上)を認める症候性HOCMが薬物治療の主対象となる。薬物療法:LVOTO(安静時または負荷で30mmHg以上)を認める症候性HOCMが薬物治療の主対象となる。第一選択薬として非血管拡張性のβ遮断薬、忍容性がなければ非ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬が推奨される(いずれもClass I)。効果不十分な場合、従来Naチャネル遮断薬であるシベンゾリン(保険適用外使用)などが使用されてきた。これに対し、ガイドラインでは新たにマバカムテンがClass Iで推奨された。心筋ミオシン阻害薬心筋ミオシン阻害薬(Cardiac Myosin Inhibitor:CMI)は、心筋収縮の中心的役割を担うサルコメアを標的とした新規治療薬として注目されている。代表的な薬剤には、初の経口選択的CMIであるマバカムテン(商品名:カムザイオス)および次世代CMIとして米国で承認審査中のaficamtenがある9)。CMIは心筋ミオシン重鎖のATPase活性を抑制し、アクチン-ミオシン間の架橋形成を減少させることで濃度依存的に心筋収縮力を低下させる。これにより、心筋過収縮状態のエネルギー効率を改善し、拡張機能の正常化が期待される10,11)。この薬理作用を基盤として、CMIはHCMや、左室駆出率(LVEF)が正常~亢進した心不全(HF with supranormal EF:HFsnEF)など、心筋の過収縮や拡張障害が病態の中核をなす疾患に対する治療薬として注目され、複数のRCTで検証されてきた(表1)。(表1)心筋ミオシン阻害薬を用いた代表的なRCTs画像を拡大するHCMを対象としたRCTでは、CMIが左室流出路圧較差の有意な改善、NT-proBNPの低下、運動耐容能(peak VO2)や症状(NYHAクラス)の改善など、多面的な臨床効果を示している。また近年では、CMI治療中の病態変化を非侵襲的かつ連続的に評価する手法として、AI技術を応用した心電図解析(AI-ECG)の有用性が報告されている。とくに、標準的な12誘導心電図に対して機械学習を用いてHCMの検出や重症度を定量化するAI-ECGスコアは、新たなバイオマーカーとして注目されており、CMI治療のモニタリングツールとしての活用が期待されている12)。さらに、HCMと同様に心筋の過収縮等が関与するHFsnEFにおいても、CMIの応用可能性が検討されている。HFsnEF患者に対して行われたEMBARK-HFpEF試験においては、マバカムテンがNT-proBNP値や心筋トロポニン値の減少と関連し、治療中にLVEFが持続的に低下することは確認されず、安全性に関する一定の知見が得られたと報告されている(表1)。また、NYHAクラスや拡張機能の改善も報告され、次世代CMIであるMYK-224を用いた現在進行中の第II相AURORA-HFpEF試験(NCT06122779)などの結果が待たれている。なお、マバカムテンの使用にあたっては本連載(第2回)でも触れた通り、 日本循環器学会(JCS)からはマバカムテンの適正使用に関するステートメントも発表されており、その導入には厳格な管理体制が求められる。<マバカムテンの適正使用>本剤は心収縮力を低下させるため、適正使用が極めて重要である。対象はNYHA II/III度の症候性HOCM患者で、投与前にLVEFが55%以上であることの確認が必要である。過度のLVEF低下が重大な副作用であり、心エコーでの頻回なモニタリング下で慎重な用量調節が必須とされる。CYP2C19およびCYP3A4で代謝されるため、併用薬にも注意を要する。本剤の管理には、心不全診療ガイドラインのほか、専門医や施設要件を定めた適正使用ステートメントの遵守が求められる。2. 非閉塞性肥大型心筋症(nHCM)に対する治療LVOTOを認めないnHCMの治療はLVEFによって層別化される。LVEF≧50%の場合: β遮断薬やベラパミルなどによる対症療法が中心となる。LVEF<50%(拡張相HCM)の場合: HFrEFの標準治療(ACE阻害薬/ARB/ARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬)が推奨される。3. 非薬物治療薬物治療抵抗性の症候性HOCMに対しては、外科的中隔心筋切除術(Myectomy)や経カテーテル的中隔アブレーション(ASA)といった中隔縮小術がClass Iで推奨されている。このようにCMIの登場は、HCM治療を対症療法から病態そのものを標的とする新たな時代へと導いた。最新の知見とガイドラインに基づいた適正使用により、個々の患者の予後を最大限に改善していくことが、今後のHCM診療における重要なテーマである。 1) Arbelo E, et al. Eur Heart J. 2023;44:3503-3626. 2) Green JJ, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2021;5:370-377. 3) Ko WY, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;75:722-733. 4) Desai MY, et al. JACC Clin Electrophysiol. 2025;11:1324-1333. 5) Akita K, et al. Echo Res Pract. 2024;11:23. 6) Fahmy AS, et al. Radiology. 2020;294:52-60. 7) Navidi Z, et al. PLOS Digit Health. 2023;2:e0000159. 8) Ramaker ME, et al. Circ Genom Precis Med. 2024;17:e004464. 9) Chuang C, et al. J Med Chem. 2021;64:14142-14152. 10) Braunwald E, et al. Eur Heart j. 2023;44:4622-4633 11) Hartman JJ, et al. Nat Cardiovasc Res. 2024;3:1003-1016. 12) Siontis KC, et al. JACC Adv. 2023;2:100582.

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降圧薬で腎臓がんリスク上昇、薬剤による違いは?

 降圧薬が腎臓がんのリスク上昇と関連するというエビデンスが出てきている。さらに降圧薬の降圧作用とは関係なく腎臓がんリスクを上昇させる可能性が示唆されているが、腎臓がんの危険因子である高血圧と降圧薬の腎臓がんへの影響を切り離して評価したエビデンスは限られている。今回、米国・スタンフォード大学医療センターのMinji Jung氏らのメタ解析で、降圧薬と腎臓がんリスクが高血圧とは関係なく関連を示し、そのリスクはCa拮抗薬において最も高いことが示唆された。BMC Cancer誌2025年6月6日号に掲載。 本研究では、2025年1月までの降圧薬使用と腎臓がんとの関連を調査した観察研究を検索した。高血圧とは独立した降圧薬の影響を明らかにするため、高血圧を考慮した群と考慮しない群で層別解析を実施した。ロバスト分散推定を用いたランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施し、統合相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・39研究が適格研究とされた。・高血圧を考慮した推定値に基づいた場合、降圧薬は腎臓がんリスク上昇と関連していた。・高血圧を考慮した場合の降圧薬のクラス別のRR(95%CI)は、ARBが1.15(1.00~1.31)、β遮断薬が1.09(1.03~1.16)、Ca拮抗薬が1.40(1.12~1.75)、利尿薬が1.36(1.20~1.55)と、腎臓がんリスク上昇と関連し、Ca拮抗薬が最もリスクが高かった。ACE阻害薬は1.19(0.93~1.52)と有意な関連は認められなかった。

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2025年版 心不全診療ガイドライン改訂のポイント(後編)【心不全診療Up to Date 2】第2回

2025年版 心不全診療ガイドライン改訂のポイント(後編)Key Point予防と早期介入の重視:心不全リスク段階(ステージA)に慢性腎臓病(CKD)を追加し、発症前の予防的アプローチを強化薬物療法の進展:SGLT2阻害薬が左室駆出率を問わず基盤治療薬となり、HFpEF/HFmrEFや肥満合併例への新薬(フィネレノン、インクレチン関連薬など)推奨を追加包括的・患者中心ケアへの転換:地域連携・多職種連携、急性期からのリハビリテーション、患者報告アウトカム評価、併存症管理を強化し、より統合的なケアモデルを推進前回は、改訂の背景、心不全の定義の変更、薬物治療について解説した。今回は、新規疾患概念とその治療や評価法にフォーカスして改訂ポイントを紹介する。4. 原疾患(心筋症)に対する新たな治療心不全の原因となる特定の心筋症に対して、近年の治療の進歩を反映した新たな推奨が追加された。とくに、肥大型心筋症(Hypertrophic Cardiomyopathy:HCM)、心アミロイドーシス、心臓サルコイドーシスに関する記載が更新されている1)。肥大型心筋症(HCM)症候性(NYHAクラスII/III)の閉塞性HCM(HOCM)に対して、心筋ミオシン阻害薬であるマバカムテンが新たな治療選択肢として推奨された。日本循環器学会(JCS)からはマバカムテンの適正使用に関するステートメントも発表されており、投与対象(LVEF≥55~60%、有意な左室流出路圧較差)、注意事項(二次性心筋症除外など)、投与中のモニタリング(LVEF低下時の休薬基準など)、併用薬(β遮断薬またはCa拮抗薬との併用が原則)、処方医・施設の要件が詳細に規定されている。マバカムテンはHCMの病態生理に直接作用する薬剤であり、その導入には厳格な管理体制が求められる。トランスサイレチン型心アミロイドーシス (ATTR-CM)ATTR-CMに対する新たな治療薬として、ブトリシラン(RNA干渉薬)およびアコラミジス(TTR安定化薬)の推奨が追加された。これらの推奨は、HELIOS-B試験(ブトリシラン)2)やATTRibute-CM試験(アコラミジス)3)などの臨床試験結果に基づいたものである。これらの新しい治療法の登場は、特定の心筋症に対して、その根底にある分子病理に直接介入する標的療法の時代の到来を告げるものである。マバカムテンはHCMにおけるサルコメアの過収縮を、ブトリシランはTTR蛋白の産生を抑制し、アコラミジスはTTR蛋白を安定化させる。これらは、従来の対症療法的な心不全管理を超え、疾患修飾効果が期待される治療法であり、精密医療(Precision Medicine)の進展を象徴している。この進展は、心不全の原因精査(特定の心筋症の鑑別診断)の重要性を高めるとともに、これらの新規治療薬の適正使用とモニタリングに関する専門知識を有する医師や施設の役割を増大させる。遺伝学的検査の役割も今後増す可能性がある。表2:特定の心筋症に対する新規標的治療薬(2025年版ガイドライン追記)画像を拡大する5. 特殊病態・新規疾患概念心不全の多様な側面に対応するため、特定の病態や新しい疾患概念に関する記述が新たに追加、または拡充された1)。心房心筋症心房自体の構造的、機能的、電気的リモデリングが心不全(とくにHFpEF)や脳卒中のリスクとなる病態概念であるため追加中性脂肪蓄積心筋血管症細胞内の中性脂肪分解異常により心筋や血管に中性脂肪が蓄積する稀な疾患概念であり、診断基準を含めて新たに記載高齢者/フレイル高齢心不全患者、とくにフレイルを合併する患者の評価や管理に関する配慮が追加腫瘍循環器学がん治療(化学療法、放射線療法など)に伴う心血管合併症や、がんサバイバーにおける心不全管理に関する記述が追加これらの項目の追加は、心不全が単一の疾患ではなく、多様な原因や背景因子、そして特定の患者集団における固有の課題を持つことを反映している。6. 診断・評価法の強化心不全の診断精度向上と、より包括的な患者評価を目指し、新たな診断・評価法に関する推奨が追加された。遺伝学的検査特定の遺伝性心筋症や不整脈が疑われる場合など、適切な状況下での遺伝学的検査の実施に関する推奨とフローチャートが追加ADL/QOL/PRO評価日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)、生活の質(QOL)、患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcomes:PROs)の評価が、単なる生活支援の指標としてだけでなく、予後予測因子としても重要であることが位置付けられた。Barthel Index、Katz Index(ADL評価)、Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire(KCCQ)、Minnesota Living with Heart Failure Questionnaire(MLHFQ[PRO評価の1つ])などの具体的な評価ツールの活用を推奨リスクスコア予後予測のためのリスクスコアの活用に関する項目が追加BNP/NT-proBNPスクリーニングステージAからステージBへの進展リスク評価のためのBNP/NT-proBNP測定を推奨これらの診断・評価法の強化は、従来の心機能評価(LVEF、バイオマーカーなど)に加え、遺伝的背景、実際の生活機能、そして患者自身の主観的な評価を取り入れた、より多面的で患者中心の評価へと向かう流れを示している。とくにADL、QOL、PROの重視は、心不全治療の目標が単なる生命予後の改善だけでなく、患者がより良い生活を送れるように支援することにある、という考え方を反映している。臨床医は、これらの評価法を日常診療に組み込み、より個別化された治療計画の立案や予後予測に役立てることが求められる。7. 社会的側面への対応:地域連携・包括ケアの新設心不全患者の療養生活を社会全体で支える視点の重要性が増していることを受け、「地域連携・地域包括ケア」に関する章が新たに設けられた。これは今回の改訂における大きな特徴の1つである。この章では、病院完結型医療から地域完結型医療への移行を促すため、以下のような多岐にわたる内容が盛り込まれている。多職種連携医師、看護師(とくに心不全療養指導士1))、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士、ソーシャルワーカーなど、多様な専門職が連携し、患者中心のケアを提供する体制の重要性を強調4)。地域連携病院、診療所(かかりつけ医)、訪問看護ステーション、薬局、介護施設、行政などが緊密に連携し、情報共有や役割分担を通じて、切れ目のないケアを提供するネットワーク構築の必要性を明示4)。デジタルヘルス・遠隔モニタリングスマートフォンアプリ、ウェアラブルデバイス、植込み型デバイスなどを活用した遠隔モニタリングやオンライン診療が、患者の状態のリアルタイム把握、早期介入、再入院予防、治療の最適化、医療アクセス向上に貢献する可能性のあるツールとして正式に位置付け1)社会復帰・就労支援患者の社会生活への復帰や就労継続を支援するための情報提供や体制整備の必要性についても言及この新設された章は、心不全管理が単なる医学的治療に留まらず、患者の生活全体を地域社会の中で包括的に支えるシステムを構築する必要があるという、パラダイムシフトを明確に示している。これは、心不全を慢性疾患として捉え、急性期治療後の長期的な安定維持とQOL向上には、医療、介護、福祉、そしてテクノロジーが一体となった支援体制が不可欠であるとの認識に基づいている。8. 急性非代償性心不全の管理急性非代償性心不全(Acute Decompensated Heart Failure:ADHF)の病態評価と治療に関して、より精緻な管理を目指すための改訂が行われた。WHFとDHFの定義追加心不全の悪化に関する用語として、心不全増悪(Worsening Heart Failure:WHF)と非代償状態(Decompensation:DHF)の定義が明確化。WHF既知の心不全患者において、症状や徴候が悪化する状態。LVEF低下やBNP上昇などの客観的所見を伴う場合もある。慢性心不全の進行や治療反応性の低下を示唆する。DHF慢性的に代償が保たれていた心不全が、何らかの誘因により急激に代償不全に陥り、体液貯留や低心拍出症状が顕在化する状態。緊急治療を要することが多い。ADHFは、このDHFの中でもとくに緊急性の高い重症病態(呼吸不全、ショックなど)を指す。移行期管理の推奨追加ADHFによる入院治療後、安定した代償状態へと移行する期間(移行期)の管理に関する知見と推奨が新たに追加。とくに、退院後90日間は再入院リスクが非常に高い「脆弱期(vulnerable phase)」と定義され、この期間における多職種による集中的な介入(心臓リハビリテーション、服薬指導、栄養指導、訪問看護、ICT活用など)の重要性を強調する。これらの改訂は、急性増悪時の病態をより正確に把握し(WHF/DHF/ADHFの区別)、とくに退院後の不安定な時期(脆弱期)における管理を強化することで、再入院を防ぎ、長期的な予後改善を目指す戦略を明確にしている。これは、急性期治療の成功を入院中だけでなく、退院後のシームレスなケアへと繋げることの重要性を示唆しており、後述する急性期リハビリテーションや前述の地域連携・多職種連携の強化と密接に関連している。臨床現場では、標準化された定義に基づいた病態評価と、脆弱期に焦点を当てた構造化された退院後支援プログラムの導入が求められる。9. 急性期リハビリテーションの推奨強化心不全診療におけるリハビリテーションの重要性が再認識され、とくに急性期からの早期介入に関する包括的な記述と推奨が大幅に強化された。早期介入の意義入院早期からの運動療法を含む心臓リハビリテーションが、「切れ目のないケア」の中核として位置付けられた。ACTIVE-ADHF試験などの国内エビデンスも引用され4)、早期介入が運動耐容能、ADL、認知機能、QOLの改善に寄与し、予後を改善する可能性が示されている。この改訂は、リハビリテーションを、従来の外来での安定期患者向けサービスという位置付けから、急性期入院時から開始されるべき心不全治療の不可欠な構成要素へと転換させるものである。心不全による身体機能低下やフレイルの進行を早期から抑制し、円滑な在宅復帰と地域での活動性維持を支援する上で、リハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の役割が極めて重要であることを示している。今後は、急性期医療チームへのリハビリテーション専門職の積極的な参画、早期離床・運動療法プロトコルの標準化、そして退院後の継続的なリハビリテーション提供体制(遠隔リハビリ含む)の整備が課題となる。10. 併存症管理の重点化心不全患者においては多くの併存疾患が存在し、それらが予後やQOLに大きな影響を与えることから、主要な併存症の管理に関する記載と推奨が強化された。とくに重要視される併存症として、以下のものが挙げられ、それぞれの管理戦略に関する最新の知見が盛り込まれている。慢性腎臓病(CKD)・心腎症候群心不全とCKDは密接に関連し、相互に悪影響を及ぼす。腎機能に応じた薬物療法(用量調節)の必要性とともに、SGLT2阻害薬やフィネレノンなど心腎保護効果を有する薬剤の積極的な活用を推奨。肥満とくにHFpEFにおいて、肥満は重要な治療ターゲットであり、GLP-1受容体作動薬などの抗肥満薬が症状改善に寄与する可能性が示唆。糖尿病SGLT2阻害薬は心不全と糖尿病の両方に有効な治療選択肢である。GLP-1受容体作動薬も考慮される。血糖管理だけでなく、心血管リスク低減を考慮した薬剤選択が重要となる。高カリウム血症RAS阻害薬やMRA使用時に問題となりうるため、モニタリングと管理(食事指導、カリウム吸着薬など)に関する注意喚起がなされている。貧血・鉄欠乏鉄欠乏は心不全症状や運動耐容能低下に関与し、診断と治療(経静脈的鉄補充療法など)が推奨される。抑うつ・認知機能障害・精神心理的問題これらの精神神経系の併存症はQOL低下やアドヒアランス不良につながるため、スクリーニングと適切な介入(精神科医との連携含む)の重要性が指摘されている。おわりに2025年版心不全診療ガイドラインは、近年のエビデンスに基づき、多岐にわたる重要な改訂が行われた。とくに、心不全発症前のリスク段階(ステージA/B)からの予防的介入、CKDの重要性の強調、LVEFによらずSGLT2阻害薬が基盤治療薬となったこと、特定の心筋症に対する分子標的治療の導入、急性期から慢性期、在宅までを見据えたシームレスなケア体制(急性期リハビリテーション、移行期管理、地域連携、多職種連携、デジタルヘルス活用)の重視、そして併存症や患者報告アウトカム(PRO)を含めた包括的・患者中心の管理へのシフトは、本ガイドラインの根幹をなす変化点と言える。全体として、本ガイドラインは、心不全診療を、より早期からの予防に重点を置き、エビデンスに基づいた薬物療法を最適化しつつ、リハビリテーション、併存症管理、患者のQOLや社会的側面にも配慮した、包括的かつ統合的なモデルへと導くものである。本邦の高齢化社会という背景を踏まえ、実臨床に即した指針を提供することを目指している。心不全管理は日進月歩であり、今後も新たなエビデンスの創出が期待される。臨床現場の医療従事者各位におかれては、本ガイドラインの詳細を熟読・理解し、日々の診療にこれらの新たな知見を効果的に取り入れることで、本邦における心不全患者の予後とQOLのさらなる向上に貢献されることを期待したい。 1) Kitai T, et al. Circ J. 2025 Mar 28. [Epub ahead of print] 2) Fontana M, et al. N Engl J Med. 2025;392:33-44. 3) Gillmore JD, et al. N Engl J Med. 2024;390:132-142. 4) Kamiya K, et al. JACC Heart Fail. 2025;13:912-922.

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第270回 首や顔のマッサージで脳の老廃物除去?

首や顔のマッサージで脳の老廃物除去?脳脊髄液(CSF)排出を促す顔や首のマッサージが、やがてはアルツハイマー病などの神経疾患の治療の助けになるかもしれません。脳を浸すCSFは衝撃から脳を守ることに加えて神経伝達物質、代謝物、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経疾患と関連するアミロイドタンパク質やその他の老廃物を中枢神経系(CNS)の外へ排出する役割を担います。CSFの流れが滞ることは老化や神経変性疾患に寄与しうるとの考えを受けて、CSF排出の仕組みの研究が盛んになっています。CSFがどういう経路を経て排出されるかは関心の的の1つで、脳の周りのくも膜下腔のCSFが頭蓋の底の髄膜リンパ管から鼻咽頭リンパ網(nasopharyngeal lymphatic plexus)を経由して首の奥まったところのリンパ節に流れていくことが韓国のGou Young Koh氏らのチームが昨年報告した研究で発見されています1)。髄膜リンパ管を増やしたり減らしたりすることでCSF排出を調節することが可能となり、CSF排出を標的とする疾患の治療の可能性が見出されつつあります。たとえば、CGRP伝達が髄膜リンパ管を害することがマウスに片頭痛様の痛みを引き起こすことが示唆されており2)、CSF排出の促進が片頭痛の治療の助けになるかもしれません。別の研究ではα/β遮断薬3剤(プラゾシン、atipamezole、プロプラノロール)の併用でCSFの排出を促して外傷性脳損傷マウスの脳浮腫を減らして身のこなしを改善しうることが示されています3)。これらの降圧薬は安全性が確立していて、どうやら神経に良い働きがあるらしいことも示唆されており、なかなか使い勝手がよさそうです。Koh氏らは上述の研究の後のマウスやサルの検討でより皮膚に近い新たなCSF排出路を発見し、さらには顔や首を軽くマッサージするという何とも簡単な方法でCSF排出を促しうることを示しました4-6)。皮膚から5mmばかり下を通るそのCSF排出経路は、眼鼻口のあたりのリンパ管とそれに続く首の表在性リンパ管(superficial cervical lymphatic、scLV)を介して顎下リンパ節(submandibular lymph node、smLN)へと通じています。scLVを介してsmLNへと通じる経路を、綿棒のような器具で顔や首の皮膚を軽く叩いていわばマッサージすることでCSFの排出を促しうることが示されました。老化マウスにも有効で、マッサージした老化マウスのCSFの流れはより若いマウスと同じぐらいになりました。未発表ですがサルでも同様の結果が得られています6)。さらには死者の皮下のリンパ管の配置の検討からヒトのCSFの流れもどうやらマッサージで促せそうです。とはいえマウスやサルとヒトの体の構造は違っており、さらなる検討が必要です。それに、CSF排出促進で脳の老化を遅らせたり、神経変性疾患を予防したりできるかどうかは不明です。Koh氏はアルツハイマー病の特徴を示すマウスでCSF排出促進の効果を調べるつもりです6)。 参考 1) Yoon JH, et al. Nature. 2024;625:768-777. 2) Nelson-Maney NP, et al. J Clin Invest. 2024;134:e175616. 3) Hussain R, et al. Nature. 2023;623:992-1000. 4) Jin H, et al. Nature. 2025 Jun 4. [Epub ahead of print] 5) New non-invasive method discovered to enhance brain waste clearance / Eurekalert 6) Massaging the neck and face may help flush waste out of the brain / NewScientist

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