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教授 向井秀樹先生の答え

アトピー性皮膚炎30年間悩まされています。昨年近医にてネオーラル処方され、症状改善し漸減中止しました。が、症状悪化しネオーラル再開(一回50mg一日2回)しました。この量でないと有効でないようで…飲み続けてもいいのでしょうか?皮膚の良い状態がこんなに楽なのもかと思い知り、ステロイドだろうが免疫抑制剤だろうが(副作用が多少あっても)なんでも使いたい!という思いです。 シクロスポリンは使用ガイドラインが出来ており、体重当たり3mg換算とされています。効果があれば12週間を1クールにして、最低2週間以上の休薬とあります。スタンダードな治療法として有用だと思います。但し、極めて重症度の高い方には中止が出来ない、再度内服するという方も少なくありません。さらに高価なお薬のため経済的にも再燃時のショックは大きいのは理解できます。文章からは十分に理解しているとは言えないかも知れませんが、ダラダラと服用しているより、2クール目&3クール目と繰り返すうちに症状が安定する場合も経験します。焦らず頑張って下さい。そして併用している外用剤ですが、内服していると痒くないからといって使用していない、使用量が大幅に減っていないことはありませんか? こんな高級品を使っているのです、今こそ徹底的に改善して寛解状態を得て元を取るぞ!という覚悟で頑張って下さい。そして、悪化時の原因を考え悪化要因の対処法などの工夫、アドバイスを貰うなどの積極性を出すこと!綺麗な肌を取り戻して下さい!発汗異常について手汗がひどく悩んでいる方がいます。来年4月から社会人になりますが事務関係で書類を触るのに用紙がくしゃくしゃになってしまい、仕事に支障がでてしまうのではないかと・・手術以外になにか方法がありませんか?漢方 刑芥蓮ぎょう湯を服用して様子を見ています。程度は個人差がありますが、お悩みのことと推察いたします。大学時代の友人がひどい汗かきで、いつもタオル持参で授業内容を記載していました。現在会って話をすると昔より良くなっているそうですが完治はしていないとのことです。一般的に自律神経を安定させる内服薬を飲み続け、汗を抑える塩化アルミニウム溶液を外用します。漢方薬を試されているようですが、防己黄耆湯や補中益気湯はお飲みになりましたでしょうか?漢方薬は一般的にすぐに効果がでる訳ではありません、最低1~2ヶ月間は内服してみて下さい。手術に関しては現在しない方向です。脇の下の交感神経を切断するは一時流行りました。確かに手の効果はありますが、背中や胸などが代償性に発汗するようになり患者さんの生活の質が低下するので行わない方が良いようと思います。専門に手術する施設が増えましたが、医療問題にまで発展し陰が薄くなりました。発汗を専門とする施設は少ないですが、東京医科歯科大学皮膚科には専門外来があります。塩化アルミニウム溶液を器械で皮膚に導入するイオントフォレーシス法を行っており、それなりの有用性を報告しています。機会があれば受診してみて下さい。まずは、一般初診を受診して専門外来にまわしてくれるそうです。研究分野について東邦大学大橋病院での研究分野について教えてください。どのような研究をされているのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、「研究について」のページを見ても、「爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討」しかなかったので、もう少し情報を頂きたく思います。(後期研修先を探している研修医です)大橋皮膚科はアトピー性皮膚炎の治療を専門にしております。1~2週間の入院療法は、短期間で急速&確実に改善する方法を言えます。しかし、入院期間に多量に使用する極めて強いステロイド外用剤の副腎機能に関する影響に関して、明らかな文献は見当たりません。そこで、入院前後の血中コルチゾール値を測定してみました。その結果は予想に反して、重症例では入院前のステロイド外用量と関係がなく血中コルチゾール値は大幅に低下。この変化は不可逆性で退院時には上昇して正常値に戻るという結果が得られました。そこで次に、血中ACTHや1日尿中コルチゾール値を測定しました。両者とも同様の推移を呈することより、皮疹の重症度に相関して不可逆性の副腎機能抑制状態が生じていることを昨年11月の日本皮膚科学会誌に報告いたしました。これから入院する患者さんにもその結果をお話して、入院で使用するステロイドの安全性を強調する共に検査し確認を取る旨を了承して頂いております。なお、このデータは昨年の第26回日本臨床皮膚科学会で金賞そして学内の柴田奨学助成金をめでたく選考授賞&授与することが出来ました。次に、この入院期間の前後で治療効果を判定できる"短期的な治療マーカー検査"を検討し、昨年日本アレルギー学会で発表しました。皮膚の改善やかゆみの程度で患者さんは退院を希望されます。明らかな検査データを示し改善度を示すことは疾患の理解を更に深めると思います。大橋皮膚科で行っている入院療法の有用性を評価するために、患者さんを対象にしたアンケート調査を行いこの2月に行なわれる東京支部学術大会で発表します。今年度からは重症例に多くみられる睡眠障害に関して研究を始めます。激しい痒みに伴うものと基礎にある心因反応に伴うものに大別できます。そこで、入院前後の睡眠障害を詳細に分析しその違いを見つけ、後者の人に関しては早期に入眠剤や心療内科的アプローチを検討します。さらに、外来患者にも行い重症度の違い、罹患率など調査していく予定です。ホームページにある"爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討"は、日本真菌学会および国際学会で報告したので掲載したものです。動物モデルを使って、爪に感染後の経過を臨床面と爪の病理組織像を同時に立体的に観察した興味あるデータです。近く真菌専門の英文誌に掲載されますので、機会があればご一読下さい。この他に、帯状疱疹後の神経痛に関する薬剤間の比較、各種皮膚良性腫瘍におけるダーモスコープ所見の検討、炭酸ガスレーザーを用いた難治性皮膚疾患の治療の試みなどいろいろと考えて行っています。化粧品会社や製薬会社の研究所とも連携して研究し、その成果を順次発表しております。大橋皮膚科では目の前にいる患者さんの疾患をみて、その病態を考えどのようなアプローチをすべきか、解明のための臨床研究を積極的に行っています。珍しい疾患の解明ばかりでなく、ありふれた疾患の新しい考え方や治療法なども発信できればと思っています。やる気のある方は大歓迎です、是非とも来て下さい。アトピー性皮膚炎、診断のコツ研修中なので基本的な質問ですみません。アトピー性皮膚炎の診断について、治療ガイドラインの診断基準を見ながら勉強しているのですが、確信を持って診断を下すことができません。診断間違ってステロイドを処方すると悪化する症例もあるので、少し怖くなっています。今は当然ながら自分一人で診察をして診断を下すわけではないのですが、皮膚科を目指しているので、どうにかしたいです。診断のコツや、先生がどのように勉強されてきたか?などアドバイスいただけると幸いです。難しい問題だと思います。でも専門とする私でも治療&診断ガイドラインは講演のときに使う程度で診療の際に見ることはありません。患者さんを見れば検査をしなくとも100%診断が付きます。皮膚科の醍醐味とはそういうもので、見たことがある、本で読んだ、学会で聞いたなどで診断が出来るのです。要するに、長年たくさんの患者さんを見ることで感じ覚えていくのだと思います。とくにアトピーの難しさは年齢によって皮膚症状の好発部位や臨床像も変化します。時期ごとに出やすい部位、臨床像を整理して覚え、鑑別疾患を挙げその違いを頭の中で除外していく必要性があります。アトピー素因の有無は必要です、そして皮膚所見が有用で湿疹病変と分かってもかぶれもありますし,自家感作性皮膚炎や皮脂減少性皮膚炎もあります。年齢や部位などが役立ちます。血清IgEや各種アレルゲン特異抗体価も診断に有用です。症例をたくさん見て、いろいろな鑑別疾患を整理して頭の中に入れることが重要です。疑問があれば上級医を呼んで,診断の決め手や考え方を教えてもらうのも良いと思います。重症のアトピーとして治療していたら皮膚リンフォーマという事例もあります、皮膚生検も時として有用です。よく見てよく考え疾患の特性を理解して下さい。患者さんを診て、患者さんから教えられる、学ぶものです。民間療法との戦いについて皮膚の疾患、特にアトピーなどは民間療法が多くて困っています。全てを否定するわけではないですが、処方した薬を使わなくなったり、通院しなくなったりするので(大体症状が悪化して戻ってきますが…)かなり厄介です。先生も当然同じような状況かと思います。先生のこれまでのご経験から「このように民間療法と戦っている!」「こんな説明をすると有効だ!」というものがあれば是非ご伝授いただきたく思っております。宜しくお願いします。日本皮膚科学会の努力もあり民間療法は20年前に比べるとかなり淘汰された感はあります。随分日常診療でその対策と説明に苦労させられて来ましたし、重症で入院を要する患者さんの半数以上が民間療法経験者でした。皮膚科医以外の医師や医療関係者が行っている場合が多いようです。患者自身が現在の治療法に不満を抱いているのは事実だと思います。頭ごなしに否定することなく、ゆっくり時間を掛けて話をする・聞くことを心掛けています。どうしてもしたいと言ってくるものに関しては、現在の治療を中止せず併用することや部分使用を認めています。専門家の私が冷静に判断してその効果を認めるなら、継続すべきだし、効果が見えない場合にこだわって皮膚が悪化することは避けたいと話します。ただ、使用しているステロイド剤の副作用を強調して中止を強要し高額な治療費を請求するものは絶対的に反対します。ステロイド治療に不満や不安が強い人が多いので、ステロイドの使用法や安全性を十分説明する必要はあると思います。いずれにせよ、本人は悩んでの事ですから、頭ごなしに叱らない、救済方法を残すやり方で指導しております。 電子付加治療は効きますか?患者より、アトピー性疾患治療として電子付加治療というものがあると聞きました。私も調べてみたのですが、日本アトピー治療学会という聞きなれない学会が推奨しているようです。一見理にかなっているようには見えるのですが、実際のところ如何なものでしょうか?もし電子付加治療について何かご存知でしたらご教示お願いします。残念ながら実態は良く分かりません。私の外来では慢性かつ難治性の重症例が多く受診されますが、受診前の治療法としても電子付加治療は初耳です。アトピー性皮膚炎の治療&診断ガイドラインにも電子付加治療などは記載されていません。日本アトピー治療学会と実にもっともそうなネーミングですが、所属会員がどれほどいるのか?我々のような皮膚科専門医、アレルギー専門医や指導医がいるのか疑問です。これでは質問のお返事とはなりません。丁度インフルエンザAに罹患して自宅待機の身ですので、ホームページをしっかりと拝見しました。基本的におかしいのがアトピーの原因を酸化アレルゲンとして一つに括っていることだと思います。この論理はアトピー性皮膚炎診療&治療ガイドラインをご一読されればすぐ分かります。どこにも記載されている言葉ではありません。アトピーの発生機序は、最近北大皮膚科が皮膚の角層に日本特有のフィラグリン遺伝子多型を30%の症例に発見以来、バリア機能の破綻が発症の第一要因とされました。これに伴い、環境にいるダニやハウスダストが経皮的に侵入してアレルギー炎症が生じるのです。但し乳児は卵など食事の関与が強い時期ですし、年齢的&季節的にアレルゲンや増悪因子は変化します。また最近ではフィラグリン遺伝子多型がなく血清IgE値が正常&主に金属アレルギー関与が示唆される内因性という概念も出ていますし、現代人が抱える心理的なストレスも大きな要因の一つです。またいくつかの要因が複雑に絡み合い病態を複雑にしています。酸化が皮膚の老化以外に種々の炎症を起こすことは知られています。同じ論理で四国の方では活性酸素の除去を目的とした外用剤や内服を行っています。理論は同じで酸素の毒を取り除くというもので、当初大した効果はありませんでした。そこでステロイドを外用剤に混ぜるようになりました。アトピーの機序はすでにお話したように実に複雑で、単に酸素の毒を抑えられても寛解できるか疑問です。理論とシェーマと治療前後の臨床写真だけで基礎的な実験データがありません。ところで、以前中国で何にもよく効く漢方薬がネット上で評判になり日本のアトピー患者も購入者が続発しました。とにかくステロイド張りのすごい臨床効果なのです。そこで成分を調査したところ、何と最強のステロイドが入っていたのです。われわれ専門家でも滅多に使用しない最強のステロイド入りとは驚きです。本当に良い薬は正式に承認され薬価が付きます、新薬の欲しい薬品会社がほっとくわけはありません。入院療法の期間アトピー性皮膚炎に対する治療として「入院療法」が紹介されていましたが、入院期間はどの程度必要なのでしょうか?全国で少数ですが入院療法を当科のように展開しているところはあります。ばらばらで決まり残念ながらありません。治療ガイドラインをみても、マニュアル通りの治療で効果のない場合は入院とありますが期間に関する記載はありません。以前私のいた横浜労災病院では徹底的に良くなるまで入院させました。全国から多数の患者さんが来られたので皮膚症状や検査所見の改善、試験外泊で悪化症状のなしを目安にしたところ平均26.5日という入院期間でした。入院後のアンケート結果をみると、退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は93.3%で極めて高く、不変や悪化例はいません。また、調査時の皮膚症状に関しても88.1%と高率に症状が改善維持できていることが判明しました。一方で10%の患者さんが入院期間の長さを指摘、33.3%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。確かに仕事を持つ社会人が1ヶ月近く休むということは問題ですし、家庭を任された主婦そして通学、受験や試験などの問題を抱えた学生にとって長すぎます。そこで、東邦大学に来てからは2週間を原則に致しました。1週間で徹底的に皮膚症状を抑え、残りの1週間で安定化を図る。退院後しばらく頑張ればコントロールできると考えたからです。その結果は2月の東京支部学術大会で発表します。退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は92%で極めて高く、調査時の皮膚症状に関しても76%の方が改善維持できていました。一方で9%の患者さんが入院期間の長さを指摘、43%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。重症度や対象患者の遠距離度が異なるかも知れませんが、平均年齢は30歳代と同様でした。やはり2週間でも患者さんにとって長すぎるのかもしれません。そこで次の裏付けデータをもとに1週間に減らしています。そのデータとは、質問3でお答えした入院前後で血中のコルチゾール値を測定した結果を参考にしました。重症度と血中コルチゾール値が相関するなら、入院時に正常値以下まで低下したものが何日入院すると正常値に戻るのか?入院期間と血中のコルチゾール値の推移で計算すると4.8日という値が出ました。そこで、約1週間の入院期間で一過性の副腎機能低下状態は改善できると判断しました。現在、極めて治しにくい重症度の極めて高い皮膚症状を有する例を除き、1週間の入院を基本として初診患者に説明しております。TNF-α阻害薬について乾癬の患者さんがTNF-α阻害薬での治療に興味をもっております。乾癬であれば全て有効なのでしょうか?また、感染症の発現が危惧されると聞きましたが、大橋病院さんではどのような体制で望んでいるのでしょうか?差し支えなければ、これまでの成績も含めて教えていただけると大変参考になります。この治療はどこの施設でも自由に行える訳ではありません。副作用として重要な感染症に対して、診療体制のとれる呼吸器内科医や放射線医の常勤が必要で、皮膚科学会に正式に申請してTNF-α阻害薬使用施設として認定される必要があります。TNF-α阻害薬は2種類あり、多少適応疾患が異なります。詳細は大橋病院皮膚科のホームページを参考にして頂くと役立ちます。本剤の副作用の最も多いのが感染症です。潜在的に持っている、感染しやすいものを発症させます。日本は結核が多く、治験段階で最も危惧されたところです。ところが、しっかりとした体制が奏功したのか肺結核はおらず、細菌性肺炎が見られています。致死的な副作用は今のところありません。勿論、私どもの症例も毎回診察していますが副作用はありません。対象は、重症、難治性&治療抵抗性の乾癬および関節症性乾癬の患者さんです。罹患部位が全身で外用剤のみでコントロール不良な症例、ネオーラルやチガソンの内服でも不安定ないしその薬剤の副作用で中止した例、関節症状のコントロール不良例、さらにステロイド外用剤による局所の副作用が生じている例などです。今後あちこちの施設から有用性のデータが報告されると思いますが、有用率90%は全国の諸施設で行った治験結果の驚異的な数字です。私の経験でとくに驚いたのが、関節症性乾癬の患者さん達です。その効果は患者さんのQOL向上に素晴らしいものです。但し、最大の難点が支払い額の高さです。高額療養費制度を用いて医療費が還付されますが、それでも負担金は極めて高く、投与前に概算を示し了解を得ないと継続した治療が受けられなくなります。また、今後判明してくると思いますが予後が問題です。投与中は良いのですが、中止できるのか再燃しやすいのか、検討課題だと思います。また新薬も開発中で楽しみです。ステロイドの安全塗布量、参考文献先生の記事を拝見して「ステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。」ということを初めて知りました。大変びっくりしています。ステロイドの安全塗布量について他に参考になる文献等がありましたらご教示お願いします。本においてステロイド(ス)外用剤は1953年から登場し、現在までに30種類以上の外用剤が開発。薬効の強さから上位からI~V群の5つに分類され使用されています。幅広い皮膚疾患に有効で、従来まで治療法のなかった疾病の治療薬として大いに役立ったことは事実です。全身皮膚が障害し多量の外用を必要とする症例の中で、Cushing様症状、骨粗しょう症や小児の発育遅延など極めて少ない確率ですが起こることが判明。多量にス外用剤を使用例が突然中止すると、皮疹悪化以外に発熱、悪寒、悪心、嘔吐などの全身症状を呈するものを離脱反応、これは一種の副腎クリーゼの状態です。質問5でお答えした民間療法が横行した時期に、ス外用剤を中止してこの反応を起こしQOLが大幅に悪化、私どもの病院に入院した症例を数多く経験しました。外用を再開し症状を改善させました。全身的な副作用を知るには、主に視床下部-下垂体-副腎皮質機能がどの程度抑制されるのかをチェックします。日常で処方される外用量、成人で10~30g/週程度では抑制は起こりません。この全身的な副作用に関しては1960~1970年代に精力的に研究されたのですが、それ以降はほとんど行われていません。薬効ランクⅢ群(リンデロン)を成人入院に1日30g、幼小児に1日13gと大量塗布した結果。1.副腎皮疹機能は一過性に生じるが、中止後1~2日で回復。2.症例によっては継続中でも抑制が回復。その理由は、皮膚が改善して経皮吸収率が低下する。3.密封療法を行うと経皮吸収率が高まり、臨床効果も上がるが抑制は顕著となる。4.小児では成人より抑制は起こりやすいので強い薬効ランクのものは控える。また、外用方法として1日5~10gで開始し、症状に合わせて漸減し3ヶ月間使用しても、一過性&可逆性の抑制は生じても不可逆性の抑制は生じないとされています。私どもの入院を要する重症例では1日12gも投与しましたが、抑制例は2例と少なくしかも正常範囲内で何ら身体的にも問題は起きませんでした。それどころが、正常値以下に抑制された症例の多くが逆に正常に復したという事実は大きな驚きでした。十分な診察もせず漫然と使い続けるのではなく、メリとハリの要領で使用量や部位別に上手に使うことが大切です。最近外来で勧めているのがプロアクティブ治療です。適切な薬剤で十分量の使用で寛解状態を作り、その後すぐに休薬するのではなく、週2回は外用することで再燃効果を大幅に減少することが出来ます。何も全身同時に開始することはありません。顔からでも、腕からでも良くなった場所はスタートO.K !眼に見えない副作用に怯えることなく、上手に使うことが重要なのです。尋常性ざ瘡(にきび)の食事療法について最近、20~30代の女性の患者様から肌に関するちょっとした質問を受けます。医者なので、ある程度はアドバイスしてあげたいのですが、尋常性ざ瘡の方の食事に気をつけることや最近の新しい治療の動向を、他科医師として知っておくべき事はありますでしょうか?御教示よろしくお願いします。一般的によく言われていることですが、甘いものや脂っこいものは避けるべきです。スナック菓子も同様です。ただ、肌に良くないからといって全部やめようと話しても難しいと思います。食べる回数や量を減らすことが大切です。また女性には生理があります。ホルモンバランスの変化する生理前に悪化する例が多く、イライラする精神的なストレス以外にヤケ食いや飲酒など食生活が悪化要因の場合があります。ディフェリンと言う新しいにきび用の外用薬が発売されています。効果は従来品のアクアチムクリームやダラシンゲルより期待出来ます。但し、皮膚のカサツキがでる場合がありますので注意して下さい。基本的なこととして、入浴時の洗顔が大切です。オイリー肌用の石鹸で十分に洗うこと、とくにベタツク&症状の強い部位は2度洗いを勧めます。入浴後、ご自身の肌にあった化粧水を塗るとかさつきは予防できますが、べたつくクリームやローションは毛穴をつぶしてしまうので禁止です。難治性の症例には、このほかピーリングが行なわれています。毛穴が詰まって角質の溜まった白ニキビや炎症の強い赤ニキビに有効です。自費診療になりますが、皮膚科専門医で行なっている施設は少なくありません。総括いろいろとご質問を頂き感謝しております。話すのは自信が多少あるのですが、文章では相手の理解度が伝わりません。また質問があれば聞いて下さい。実は私が大橋病院ホームページ委員会の責任者なのですが、機械音痴と雑用が多く皮膚科ホームページの更新が遅れ気味なのです。時間があるときに更新いたしますので、時々見て下さい。研修希望者に:どんどん大橋皮膚科を見学に来て下さい。大橋病院は歴史的な作りで驚くかもしれませんが、アットホームな環境で仲良く頑張っています。教える体制はしっかりしています。何をしたいのかをはっきり明示してそれが努力に値する仕事なら全面的にサポートします。ただ、まず皮膚科医としての基本を覚えなければいけません。皮膚科は奥が深く、自己完結型の科と言えます。ある程度オールラウンドの皮膚科医を目指し、その上で疑問、難問の解決を同時進行で行うと臨床が100倍楽しくなります。教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

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准教授 高橋 寛先生の答え

クリニックレベルでできる診察のポイントや紹介時の注意点など先生の記事大変勉強になりました。特に「主訴だけで判断すると危険です。他院で診断を受け、紹介状を持って来院する患者に関しては、その診断結果を鵜呑みにしないよう心掛けています。「単に腰痛 だから整形外科」と安易な診断を受けている方も多いのですが、よく診察してみると、婦人科、循環器系の病気であることが結構あります。」というくだりはハットしました。私の病院も腰痛患者を大きな病院へ紹介することが多々あります。精密な検査はできないまでも、クリニックレベルでできる診察のポイントや紹介時の注意点などがあれば是非教えて頂きたいと思います。宜しくお願いします。とにかく触診することです。60歳以上の方で、糖尿病、高血圧の方は多数おられます。下肢痛がひどい方の場合、血流障害があれば、下肢の皮膚温が低下しています。また必ず足背動脈の拍動はチェックすべきです。下肢の疼痛、しびれに関して、血流障害と腰椎病変が両方関与していることもままあります。手術をしたのち、残存した症状が血流障害の可能性もあります。私は何度も痛い目に遭っています。例えば76歳男性,糖尿病、高血圧の治療中の方でした。ABI正常値、足背動脈も蝕知可能、MRIではL5/Sの狭窄あり、S1神経根ブロックは有効でしたので内視鏡下手術を行いました。術後短期間は症状改善したようですが、下肢のしびれが再燃し、下肢の造影CTを行った所、立派なASOでした。術前に糖尿病科の医師に血流障害について質問したところ大丈夫と言われて鵜呑みにした結果です。最近では糖尿病、透析患者にはABIに加えTBIも検査しています。超音波骨折治療法について貴院は超音波骨折治療法の実施施設とのことですが、症例数と成績を教えていただけないでしょうか?また、この治療法は使える範囲が決まっていますが、仮にその範囲制限を考えなかった場合、範囲外の症例にも活用できそうなのでしょうか?症例数は把握しておりませんが多数行っております。成績は明らかに有効だと思います。制限が無ければ、新鮮骨折、骨切り手術、骨移植術などに対しての適応があれば良いと思います。(ヤンキース時代、松井選手が橈骨遠位端骨折に対してやってましたよね?)東邦での研修の改善ポイントについて東邦大学での研修についてお聞きします。当然良いところばかりではなく、改善する必要があることも多いと思います。高橋先生が感じる、ここは改善しなければ、と思っていらっしゃることがありましたら教えてもらいたいです。あくまで整形外科の事ですが、もっとじっくりと研修医相手に系統立てた講義をする時間を作るべきだと思います。これは研修医の先生へのお願いです。我々も人間です。興味を持ってぶつかってきてくれる人には、何でも見せるし、頑張ってお付き合いします。後期研修について現在、市中病院で研修している卒後1年目の者です。後期研修は大学でと思っております。東邦大学さんの雰囲気のよさが大変分かり参考になりました。ただ、よその大学出身でも、東邦大出身の先生と同じように扱っていただけるのでしょうか?また、現在東邦さんにいる後期研修医の中に他大学出身の先生は何割くらいいらっしゃるのでしょうか?差し支えなければ教えていただけると幸いです。正確な数は把握していないのでお答えできません。しかしながら東邦大学は、他大学の出身だからといって差別はしておりません。同等に扱っているはずです。私の部下にも他大学出身の医師がおりますが、脊椎外科の研修中であり、近日中に指導医を取得する予定です。他科にも他大学から入局し、講師以上になられている先生も多々おります。ストレスが腰痛につながるケースについて研修医なので質問が拙いかも知れませんが許して下さい。先生の記事の中にストレスが腰痛につながるケースがあるとありましたが、その症例を見分けるポイントはあるのでしょうか?ご教示宜しくお願いします。例えば、腰椎椎間板ヘルニア疑いの患者の場合です。通常はSLRテストをベッド上で行うはずです。これを疑わしい場合には、患者が座った状態で、膝関節を徐々に何気なく持ち上げます。すると本当にヘルニアの患者であれば体をのけぞらせます。これをflip testと言います。心理テストを行う事もあります。診察所見をとり、患者と話をし、画像所見と一致すれば問題ありませんが、違和感を感じた場合には医者同士で相談するのも1つの手でしょう。奇形性脱臼について出生時にすでに完全に脱臼している、奇形性脱臼についてうかがいます。治療が困難な症例だと思いますが、先端の臨床研究では何かしら研究は進んでいるのでしょうか?またこのような患者の場合、人工関節を入れることが可能なのでしょうか?身近に聞ける医師がいないため、お聞きしたいと考えました。宜しくお願いします。ごめんなさい、先天性脱臼の研究については門外漢です。しかしながら、股関節脱臼、膝蓋骨脱臼、膝関節脱臼例の経験は当科でありますが、人工関節を入れていますよ。カイロプラクティックについて腰痛は専門外なので、素人質問になって恐縮です。小さな医院で内科をやっている町医者です。腰痛持ちの患者さんから、病院で診てもらうのが良いのか?カイロプラクティックに通うのが良いのか?と質問を受けることが多々あります。もちろん病院で診察してもらうことを進めるのですが、近所に、米政府の公認の「Doctor of Chiropractic」という資格を持っているカイロプラクティック師がいるらしく、整形外科医よりもそちらの方が専門的なのでは?と聞かれ、答えに困っています。何か明確に説得する方法はないものでしょうか?ご教示お願いします。私が留学した12年前にも、アメリカでも民間療法については問題視されておりました。単なる腰痛であれば、マッサージによって局所の血流が改善したり、筋緊張が緩和されて良いこともあります。しかしながら高齢者で骨粗鬆症がある場合、外傷が無くても脊椎圧迫骨折を来すことはままあります。脊柱の変形を力任せに引っ張っても矯正できるものではありません。よく骨盤牽引をすると、椎間板腔が拡がったり、脊柱の側弯が矯正されると勘違いされている患者さんもおられます。あくまで牽引は、筋緊張を和らげるために行っているものです。整形外科をやっておりますと、民間療法に行った後、症状がかえって悪くなり、受診される方を見受けます。私たち、整形外科で完全に痛みが取れないため民間療法に行く方もおられるでしょうが、少なくとも一度は整形外科を受診し、病態、骨質等を診察、評価されることをすすめます。やさしい手術について記事拝見しました。常に新しいものを取り入れようとしているお姿感服いたします。先生が駆け出しのころと、今とで一番変わった手術、術式を挙げるとしたら何があるでしょうか?できれば患者にとって最もやさしくなった手術を知りたいです。小生、とある田舎で老人相手にクリニックやっております。腰痛患者は総合病院におくりますが、高齢の方は大きい病院に行きなさいと言うと、怖がってなかなか行きません。「●●手術は、昔はこんなに大変だったけど、今は●●することで簡単になったんだよ。だからあなたの場合もよくなるよ、安心して大きい病院で診てもらいなさい。」と言って元気付けて不安を取り除きたいと考えております。宜しくお願いします。腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症に対する手術だと思います。内視鏡を用いた方法ですと通常、翌日には離床できます。また最近、全国的に普及している棘突起縦割式の除圧術も術後疼痛が少なく、術後2,3日で離床が可能です。とにかく私が医師になった20年以上前には術後2週間の安静は普通でした。高齢の方は臥床期間が長いと、誤嚥性肺炎、褥瘡、認知症、筋力低下など様々な合併症を生じます。なるべく痛みの少ない手術を高齢者にはする事が肝心です。また最近固定術もMIS(Minimally invasive surgery)といってなるべく侵襲の少ない方法を様々検討しております。早ければこれも翌日離床可能です。私どもも、どの方法が優れているか、現在検証中です。先天的?な脊柱管の形態画像診断をしている放射線科医です。「腰痛精査」といった依頼で、腰椎 MRI を読影することが多いです。画像所見そのものにはあまり意味はないと考え、依頼内容に関連する所見を中心にレポートに列挙し、「症状に合うものを選んでください」とという気持ちでいます。ところで質問なのですが、脊柱管の狭さ、という観点から見ると、椎間板や黄色靭帯などと並んで、 先天的?な脊柱管の形態も重要に思えます。椎弓根が短いというだけでなく、左右椎弓板のなす角度が狭いこともよく経験されます。自分なりに調べたのですが、あまり系統立てて検討した報告やコンセンサスのようなものを見つけることができませんでした。何か良い資料などがありましたら教えていただけないでしょうか。よろしくお願い申し上げます。(あまり重要なことでない、普通の教科書に載っている常識である、かもしれません。そうでしたらすいません。)先生のおっしゃる通りです。脊柱管が狭くても症状がない場合は治療の対象外であり、あくまで画像所見に見合った症状、症状に見合った画像所見があるかどうか整形外科医は判断すべきです。脊柱管狭窄症の分類には先天性(発育性脊柱管狭窄症)があります。古くはVerbiestの文献が有名です。J Bone Joint Surg36B 230-2371954,Orthop 、Clin North Am 6 : 177-196 1975などでしょうか?欧米人と、東洋人の我々ではかなり脊柱のアライメント、形態は異なります。そもそも脊柱管狭窄症自体が少ないと思います。日本人の正常例を報告した文献はあると思います。アメリカでは日本と異なりなかなか画像検査にも制限があります。今後先生が多数の症例から日本人の年代毎の形態評価など行い、発表されれば高く評価されるはずです。腰椎の形成術についてお世話になります。腰椎が潰れて歩行障害を生じている人に、椎体部分にプラスチックのようなものを入れ椎体を形成し、腰痛を緩和する手術があると聞きました。聖路加病院でやっているようですが、私は熊本ですが、地方でも一般的に普及してきている手術でしょうか?治療を希望している患者がいますのでお教えいただければ幸いです。経皮的椎体形成術は1984年にフランスで血管腫に対して初めて行われた術式ですが、近年、脊椎圧迫骨折に対しても行われています。椎体形成術には、骨セメント(PMMA),リン酸カルシウム骨セメント(CPC),自家骨、ハイドロキシアパタイトを用いた方法があります。骨セメントを用いた方法は、短時間で固まり、即効性があるため普及していますが、その一方、骨セメントの脊柱管内への漏出、固まる際に発生する熱、静脈塞栓等様々な問題点も抱えております。したがってもし放射線科医が行うのであれば、脊椎外科医と緊密な連携をとっている施設で行うべきでしょう。私どもの施設に、骨セメントを用いた椎体形成術後に馬尾障害を生じた患者が緊急搬送されてきた事もあります。どんな方法も、利点、欠点はあります。患者が納得できるように説明できる医師がぃる施設をお探しになるのが良いと思います。総括若い人には未来があります。是非、高い所を目指して頑張って下さい。頑張れば必ず周りが評価します。評価されれば余計に頑張りたくなります。また整形外科に興味のある方、是非、当科も選択肢の1つとして下さい。准教授 高橋 寛先生「人と交わり、先端を目指せ!-ある整形外科医の挑戦-」

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鳥谷部俊一先生の答え

ラップ療法の患者家族への説明方法患者さんを自宅で介護している家族の方へ、ラップがガーゼよりも有効である旨を説明するときに上手く伝える方法はあるのでしょうか?また先生のご経験で、このように伝えると上手くいく。というノウハウがございましたら是非教えて頂きたいと考えております。宜しくお願いします。このような場合は、モイスキンパッドをお勧めします。「ガーゼの替わりにバンドエイド、キズパワーパッドを貼るのが時代の先端。治りも早く、痛くない。モイスキンパッドをよく見てください、巨大なバンドエイドですよ」。こんなふうに説明してください。モイスキンパッドで良くなってきたら、床ずれパッドを見せて、「そっくりでしょ。しかも安いんです」とお話しましょう。アトピー性皮膚炎のラップ療法アトピー性皮膚炎でもラップ療法が有効であるとか有効でないとか、賛否両論のようですが、先生はどのようにお考えでしょうか?また、有効である場合に、どのような点に気をつければ宜しいでしょうか?ご教示宜しくお願いします。ラップ療法は、床ずれの治療法です。「アトピー性皮膚炎にドレッシング療法が有効か」という質問にお答えできる立場ではありません。アトピー性皮膚炎に対するドレッシング療法の可能性の問題は興味深く、論議が深まることを期待します。モイスキンパッドはじめまして。日々、「皮膚・排泄ケア認定看護師」とともに床ずれの診療をさせていただいている一皮膚科医です。以前、形成外科の先生が手作りで、「モイスキンパッド」と同様なものを使用されていました。「皮膚・排泄ケア認定看護師」は、あまりいい顔をしていませんでした。実際、ある程度褥瘡は改善するものの、その周囲にかぶれを起こしたり、体部白癬に罹患する患者さんが後を立ちませんでした。結局、ラップ療法を中止することとなりました。これについて、先生はどのようにお考えになりますか?どのようにすれば、こうした皮膚トラブルを避けられますか?改善点はありますでしょうか?ご教示いただけるとありがたいと思います。ご質問ありがとうございます。いろいろ工夫してラップ療法を試みたことに敬服します。ラップ療法や、モイスキンパッド処置では、抗真菌剤を塗布して真菌症を簡単に治療することができます。2000年の医師会雑誌に書いたラップ療法の論文では、合併した「カンジダ症2例を抗真菌剤で治療した」と明記しております。夏など暑い季節には、予防的に抗真菌剤を塗ります。クリーム類がお勧めです。ラップ療法や、モイスキンパッド処置ではドレッシングを絆創膏で固定しないで毎日交換するので、外用薬を毎日塗るのが容易です。真菌は湿潤環境で増殖しますので、吸水力の高いモイスキンパッドを使って皮膚を乾燥させることをお勧めします。手作り「モイスキンパッド」の吸水力についてはデータがありませんのでコメントできません。既成のドレッシングや軟膏ガーゼの治療の場合も真菌感染を生ずるのですが、なぜか話題になることが少ないようです。高齢者の足をみると、ほとんどの方の爪が白く濁って変形しております。白癬症です。爪白癬がある人をよく観察すると、全身に角化した皮疹が見られます。掻痒感があれば、爪で引っかいた痕跡や、体を捩って背中を擦り付ける動作があるでしょう。足ユビ、足底、足背、下腿、膝、臀部、背部、後頭部、手、上肢などをよく調べれば、白癬菌が検出されます。皮膚を湿潤環境にすると、真菌類(カンジダ、白癬)が増殖しやすくなります。抗真菌外用薬(クリーム)を積極的に使用して治療します。基礎疾患が重篤な場合は?現場の知恵を洗練していく先生に敬意を持っております。通常の免疫能がある患者さんにおいては、水道水による洗浄と湿潤環境で軽快するというのはわかりますが、がん治療に伴い免疫不全状態にある患者さん、糖尿病のコントロールがうまくなくこれも免疫不全のある患者さん等、表在の細菌、真菌に弱いと考えられる患者さんにも同様に適応し、効果を期待できるのでしょうか。こうした患者さんにはある程度の消毒なり軟膏治療が必要になるのではないでしょうか。困難な症例に取り組むご様子に敬服します。基礎疾患が重篤な症例に対するラップ療法の有効性は確立しておりません。よって、このような症例には、「ガイドライン」に従った治療をするのが安全であると考えます。ただし、「こうした患者さんに消毒・軟膏治療が有効である」というエビデンスが無いのが現状です。また、「基礎疾患が重篤な患者にこそ、消毒や軟膏による有害事象が生じ易いのではないか」という観点からの検討も必要です。床ずれに対するラップ療法の治癒の機序床ずれはもともと血流障害ですが、これがラップ療法で治癒する機序は何でしょうか。創傷治療の本質に迫るご質問、ありがとうございます。既存の軟膏ガーゼ処置は、「厚い小さなドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を床ずれに加えるため、血流障害をおこして治癒を遷延させます。ラップ療法は、「薄い大きななドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を打ち消すことにより、血流を改善して治癒を促進する湿潤療法です。床ずれの原因は、「外力による血流障害」です。一方、下腿潰瘍などの末梢動脈疾患(PAD)は、「外力によらない血流障害」です。床ずれは、外力(圧力/ずれ力)を取り去ることにより血流が改善して治癒に向かいます。例えば、仙骨部の床ずれは、「腹臥位」で圧迫を防ぐことにより治癒した、という報告があります。要するに、「圧迫さえ無ければ床ずれは普通の切り傷と同じような治り方をする」ということです。圧迫を減らすための工夫が、体圧分散マットレス、体位変換、ポジショニングなどです。ラップ療法は、外力を分散するドレッシング療法・湿潤療法です。感染がある 虚血がある感染症があれば、抗菌作用のパスタ剤や、感受性のある抗菌軟膏やソフラチュールなどは一定期間必要じゃないでしょうか。血流を高めるPG剤も必要では。また、化学的デブリードメントにあたるプロメラインなども必要ではないでしょうか。ラップ療法を実践している医療者の多くは、感染症は抗生剤全身投与で、血流改善は(必要に応じて)PG剤全身投与で治療しております。デブリードメントは、外科的デブリードメントと湿潤療法による自己融解を行なっており、化学的デブリードメント剤は使っておりません。「学会ガイドライン」を参照したところ、ご指摘の外用剤はガーゼとの組み合わせでエビデンスが証明されているようですが、ラップ療法やモイスキンパッドとの組み合わせによるエビデンスはございません。今後、エビデンスが集積されてから併用されることをお勧めします。ラップで治療困難な症例の判別皮膚所見をみた当初から、外科治療、皮弁手術が必要かどうかは、判別可能でしょうか。ある程度ラップしたあとで、考慮するのでしょうか。もちろん他の疾患の管理をし栄養、感染など評価をした場合として。ラップ療法は床ずれの保存療法です。外科治療、皮弁手術を考慮される場合は、「学会ガイドライン」に従った治療をお勧めします。2010年の日本褥瘡学会での議論を拝見した限りでは、外科治療、皮弁手術の適応症例は減っているようでした。感染症に対して抗生剤と抗真菌薬の外用と全身投与について感染症には抗生剤の全身投与は理解できるのですが、表在真菌感染症に抗真菌薬の外用が効くのはどうしてでしょうか?抗生剤の外用はなぜ不適切なのでしょうか?ご教授よろしくお願いします。一部の領域(皮膚科、耳鼻科、歯科など)を除き、細菌感染症の治療は抗生剤全身投与が標準治療です。創感染に対する抗生剤外用は、耐性菌誘発リスクなどの理由から、CDCガイドラインなどは推奨しておりません、「学会ガイドライン」にも推奨の記載が見当たりません。表在真菌感染症は、表皮が感染の舞台なので、抗真菌外用剤がよく効きます。抗生剤の外用は無効です。細菌感染の舞台は真皮や皮下組織、あるいはさらに深部の組織です。閉鎖療法の場合は、創を閉鎖して組織間液が深部組織に逆流する結果抗菌薬が感染部位に到達すると想像されますが、ラップ療法・開放性湿潤療法では、創を開放するので組織間液の逆流は起きず、抗菌剤は感染部位に到達しないと考えます。全身投与された抗生物質は、血流を通じて感染部位に到達します。糖尿病性神経症、ASO合併の下肢壊疽80歳、女性、糖尿病で血液透析の患者です。3年前 右足趾を壊疽で切断。今回は左下足に足趾を中心に踵まで、壊疽、深い、汚染の褥瘡様潰瘍があります、悪臭がします。切断は拒否しています。ラップ療法は有効でしょうか?ラップ療法は、床ずれの治療法です。よって、この症例はラップ療法の適応外です。PADのガイドラインに従った治療をお勧めします。血管治療、デブリドマン後のドレッシング材としてモイスキンパッドが有効であったとの報告があります。このような処置は、ラップ療法とではなく、ドレッシング療法、湿潤療法と呼称すべきです。病院皮膚科形成外科との調整病院内科勤務医です。当院では褥瘡ケアは皮膚科の褥瘡ケアチームが回診しています。形成外科は陰圧吸引療法の高価な機械を使いますが患者の一部費用負担はあるものの病院としては赤字になるようです。どのようにして病院全体の褥瘡ケアを統一改善していったらよいでしょうか。アドバイスをお願い申し上げます。かつて同様の立場にあった内科医として、同情申し上げます。1999年に日本褥瘡学会でラップ療法の発表をして12年になりますが、2009年の学会シンポジウムで「ラップ療法と学会ガイドラインは並立する」と(私が)宣言したことが、「在宅のラップ療法を条件付で容認する」という2010年の学会理事会見解につながったようです。「褥瘡ケアの統一」は、学会ガイドラインで統一するか、ラップ療法で統一するかの選択問題ですが、未だ結論が出ておりません。より多くの方がラップ療法を支持するようになれば、学会がラップ療法を受容する日がいずれ来るでしょう。皆様のお働きを期待申し上げます。総括医学の歴史を紐解くと、新しい考え方が「専門領域の侵害」と受け止められ、いろいろな形で抵抗を受けてきたことが分かります。ゼンメルヴァイスの「消毒法」が医学界で受け入れられたのは、ゼンメルワイスの死後のことです。ラップ療法はインターネットの時代に遭遇して、学会よりも一般社会で先に普及しました。情報化社会では、権威者よりも一般社会が先に一次情報を入手することができます。そうした中にあって、情報の真贋を見抜く力(情報リテラシー)が必要であり、そうした能力が専門家と呼ばれる人々に求められております。MediTalkingという場でラップ療法の議論が深められたのはこうした時代の反映であり、有意義なものと考えます。顧問 鳥谷部俊一先生「床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!」

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鳥谷部俊一先生 [追加記事] 床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!

1979年東北大学医学部卒業。東北大学医学部第二内科、鹿島台町国民健康保険病院内科、慈泉会相澤病院 統括医長、至高会たかせクリニック 顧問を経て、現職に至る。床ずれ治療「ラップ療法」の創案者。追加記事掲載について形成外科専門医の方から「ラップ療法」の危険性について指摘いただきました。<指摘内容>閉鎖療法は簡便なので、医療従事者が取り掛かりやすい。しかし創傷に精通したものでないと症状を悪化させる場合がある。傷の中には感染を伴っている状態のものがあり、これにラップ療法を行ったため、細菌が中で繁殖し、敗血症に陥った例がある。この点に関して、鳥谷部先生からのコメントを追加記事として掲載いたします。鳥谷部先生からのコメント「2010年に、『いわゆる「ラップ療法」に関する日本褥瘡学会理事会見解』が発表されました。http://www.jspu.org/jpn/info/pdf/20100303.pdf『褥瘡の治療にあたっては医療用として認可された創傷被覆材の使用が望ましい。非医療用材料を用いた、いわゆる「ラップ療法」は、医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な在宅などの療養環境において使用することを考慮してもよい。ただし、褥瘡の治療について十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである。』2011年、ラップ療法(食品用ラップまたは穴あきプラスチックフィルムを貼付する処置と標準治療(学会ガイドラインに準拠した処置)を比較したランダム化比較研究が行われ、両群の治療成績が同等であるとの結果が学会誌に発表されました*1。この結果をうけ、近く改訂される日本褥瘡学会ガイドラインでは、「"いわゆる"ラップ療法(食品用ラップや穴あきプラスチックフィルムを貼付する処置)」が推奨度C1の処置法として掲載される見通しです。学会ガイドライン検討委員会は、ラップ療法のリスクが高いことを考慮して「十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである」との文言を付け加えたようですが、それならばむしろ「医師の目の届きにくい在宅などではなく、病院に入院している患者に限定して行い、入院患者の治療に習熟した医師が在宅患者を治療すべきである」とするべきでしょう。そもそもラップ療法のランダム化試験は大部分が入院患者を対象にした臨床研究です。そのエビデンスを入院患者ではなくあえて在宅患者に限定適用しガイドラインに書き込んだのは、諸般の事情があったのでしょうか。筆者が日本医師会雑誌(2000年)に発表したラップ療法を追試した方々の多くは、それまでの外用剤とガーゼによる処置法で苦労を重ね、創感染治療に習熟した医師たちでした。最初の何例かは慎重を期して入院管理下で行い、医師自ら毎日処置を行いました。創感染など合併症の管理は当然のことでしたが、それでも従来の治療法よりは比較的容易に対処できたと伝え聞いています。ラップ療法が普及するに従い、従来の治療経験なくして最初からラップ療法を行う医師あるいは非医師があらわれたのでしょうか。ラップ療法(ラップや穴あきポリエチレンを貼付)は、素人目には「簡単な治療」に見えるため、ややもすると安易に行われ、医師の目の届かないところで行われているうちに重症感染を併発し、対応が遅れて敗血症のため亡くなった事例があったのではないかと危惧しております。ラップ療法の臨床研究によると、ラップ療法が他の治療法に比べて特別に創感染を起こしやすいという傾向は認められなかったそうです*1。創感染については筆者は以下のように対応していますので参考にしてください。『褥瘡周囲の熱感,浮腫,滲出液増加,疼痛,発熱,白血球増多,CRP上昇を認めた場合は,感染あるいは持続感染と考え,第一,第二世代のセフェム系あるいは合成ペニシリン系抗生剤,マクロライド,アミノグリコシドなどを全身投与する.創面を細菌培養すると,創感染の有無にかかわらず,大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌が検出される.創面より培養された菌の多くは耐性菌で前述の抗生剤は無効と思われるのだが,実際のところ感染兆候は消失し創所見は改善する.感染終息後に細菌培養をすると,これらの耐性菌が検出される.すなわち,創の表面にいる菌は創感染とは無関係であり,起炎菌は創の深部に存在し,その多くは耐性菌ではないのだろう.褥瘡を有する患者が肺炎や尿路感染を起こすと,創感染がなくても創の状態が悪化(浮腫,滲出液の増加,肉芽壊死)することが多い.発熱時は全身状態を評価し,感染を疑った場合は積極的に抗生剤を全身投与して治療してほしい.』褥瘡の治療は、ラップ療法であれ、学会標準治療であれ、いずれの場合でも創傷治療に経験のある医師が十分な注意を払って行うべきものです。褥瘡治療の経験に乏しい医師は、入院患者を対象に、感染のない浅い褥瘡を医療用ドレッシング(モイスキンパッド・白十字)で治療し、経験を積んでください。3度の褥瘡に対しては早期のデブリードマンを行って創感染を未然に防いでください。感染の兆候(発熱、熱感、腫脹、疼痛、膿性浸出液)を認めたら、早期に抗生物質を全身投与して感染の進展を防ぎましょう。感染が深部に及ぶ症例、骨壊死を伴う症例、閉塞性動脈症を伴う足病変は、しかるべき専門医のいる病院に入院させて治療してください。以上の事例に習熟してから、ラップや穴あきポリエチレンを貼付する「"いわゆる"ラップ療法」に挑戦したり、在宅患者の治療をしていただきたい。褥瘡を発症するような患者はもともと重篤な基礎疾患を合併しており、一旦感染が重症化すると敗血症のため亡くなる可能性が高いのはご承知のことと存じます。患者・家族には、褥瘡がしばしば致死的な疾患であることを十分に説明し、同意を得たうえで治療してください。筆者は2002年以来同意書書式例を公開しておりますので、ぜひ活用してください。*1 文献:水原章浩,尾藤誠司,大西山大 ほか:ラップ療法の治療効果~ガイドラインによる標準法との比較検討.褥瘡会誌, 13:134-141,2011. 褥瘡の予防・治療に関する説明書(例)褥瘡(じょくそう)・床ずれとは、ふとんに接触している皮膚が、すれや圧迫によって血のめぐりが悪くなってできる傷です。自力で寝返りを打てない状態になると、一定の部位に力が加わり続け、皮膚には血液が流れなくなり壊死が生じます。これが褥瘡です。○○○病院では褥瘡対策委員会をつくり、病院内のみならず地域での褥瘡の予防と治療および研究に取り組んでいます。最近褥瘡の研究が進み、次のようなことがわかってきました。圧力を分散させるエアマットレスや体位変換などによって褥瘡の発生を減らすことができるが、最大限の努力をしても患者の全身状態が悪ければ発生を免れない。病院を受診する前にできかかっていた褥瘡が受診または入院後に完成して、あたかも受診後(入院後)にできたように見える経過をたどる例がある。褥瘡の治療法はこの数年間で大きく進歩したが、患者の全身状態が悪ければ必ずしも治らない。褥瘡の治療法はいまだ発展途上である。○○○病院では褥瘡の患者さまにラップ療法を実施しております。(鳥谷部俊一,末丸修三:食品包装用フィルムを用いるⅢ-Ⅳ度褥瘡治療の試み,日本医師会雑誌2000;123(10):1605-1611.水原章浩,尾藤誠司,大西山大 ほか:ラップ療法の治療効果~ガイドラインによる標準法との比較検討.褥瘡会誌, 13:134-141,2011.)ラップ療法は、日本褥瘡学会ガイドライン(次回改訂)に掲載が予定されており、すでに多くの施設で実施されておりますが、非医療材料(食品用ラップや穴あきプラスチックフィルム)を用いますので患者さま(ご家族)の同意が必要です。同意をいただけない場合は厚生労働省の承認をうけた医療材料を用いた方法で治療します。また安全性と有効性を確認するための検査、記録をしております。許可いただければ結果を外部に発表させていただきます。発表に際して、個人のプライバシーは十分に保護されるよう配慮されます。どのようなかたちで発表されるかについては、担当医または院長にお尋ねください。発表にご協力いただけるかどうかは全く自由です。同意いただいた後の撤回もいつでも可能です。また、ご協力いただけなくてもあなたの診療に不利益を生ずることはありません。日付   年   月   日○○○病院 院長私は、褥瘡の予防治療に関し口頭及び文書を用いて説明を受け、その内容を十分理解いたしました。本人  氏  名生年月日代理人 氏名 続柄説明者 職名 氏名ラップ療法を実施することについての同意書検査結果、記録などの学術発表についての同意書私は、褥瘡の治療にラップ療法を実施することについて、および○○○病院における診療で得られた検査結果、記録(写真を含む)の学術発表への利用について、口頭及び文書を用いて説明を受け、その内容を十分理解いたしました。私は、次のように判断いたします。私の褥瘡の治療においてラップ療法をおこなうことに、1 同意します。2 同意しません。診療後、検査結果、記録(写真を含む)の学術発表への利用について、1 同意します。2 同意しません。日付   年   月   日○○○病院 院長-------------------------------------※本記事は、追加記事です。ページ下部にある[質問と回答を見る]をクリックすると、前回と同じ「質問と回答ページ」が表示されます。予めご了承ください。質問と回答を公開中!

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麻酔による合併症リスクが高い患児をいかに同定するか?

手術時の麻酔施行前に、International Study Group for Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)の改訂質問票で評価を行えば、周術期の呼吸器合併症のリスクが高い患児を同定可能なことが、オーストラリア、プリンセス・マーガレット小児病院(パース)麻酔科のBritta S von Ungern-Sternberg氏らが行ったコホート研究で示された。小児における麻酔に起因する疾患や死亡の主要な原因として、周術期の呼吸器系の合併症が挙げられる。これまでに合併症のリスク因子の報告はあるが、臨床における高リスク患児の同定法は確立されていないという。Lancet誌2010年9月4日号掲載の報告。単一施設における前向きコホート研究研究グループは、家族歴、麻酔法と周術期呼吸器合併症の関連を評価するプロスペクティブなコホート研究を実施した。2007年2月1日~2008年1月31日までにプリンセス・マーガレット小児病院で外科的あるいは内科的介入、待機的あるいは緊急処置として全身麻酔を施行された全患児を前向きに登録した。手術当日に、担当麻酔医がISAACの改訂質問票を用いて喘息、アトピー、上気道感染症、受動喫煙などの既往について調査した。麻酔法および周術期にみられたすべての呼吸器合併症が記録された。呼吸器疾患の既往歴、上気道感染症などがあると合併症リスクが増大12ヵ月後までに1万496人の患児から得られた9,297の質問票が解析の対象となった。患児の平均年齢は6.21(SD 4.8)歳であった。周術期の呼吸器合併症として気管支攣縮、喉頭痙攣、咳嗽/酸素飽和度低下/気道閉塞について解析した。呼吸器疾患の既往歴(夜間乾性咳嗽、運動時喘鳴、過去12ヵ月で3回以上の喘鳴、現在あるいは過去の湿疹の病歴)は、気管支攣縮(相対リスク:8.46、95%信頼区間:6.18~11.59、p<0.0001)、喉頭痙攣(同:4.13、同:3.37~5.08、p<0.0001)、周術期の咳嗽、酸素飽和度低下、気道閉塞(同:3.05、同:2.76~3.37、p<0.0001)の発現と有意な関連が認められた。上気道感染症は、症状がみられる場合には周術期の呼吸器合併症のリスクを増大させた(相対リスク:2.05、95%信頼区間:1.82~2.31、p<0.0001)。上気道感染症が手術前の2週間以内にみられた場合は周術期呼吸器合併症のリスクが有意に増大した(同:2.34、同:2.07~2.66、p<0.0001)のに対し、感染が手術前2~4週の場合は有意に低下していた(同:0.66、同:0.53~0.81、p<0.0001)。家族の2人以上に喘息、アトピー、喫煙の既往歴があると、周術期の呼吸器合併症のリスクが増大した(いずれも、p<0.0001)。麻酔の導入は吸入薬よりも静注薬の方が合併症のリスクが低く(いずれも、p<0.0001)、麻酔の維持は静注薬に比べ吸入薬が低リスクであった(いずれも、p<0.0001)。気道の確保は、研修医に比べ小児麻酔専門医が行う方が合併症リスクは低く(いずれもp<0.0001)、気管内挿管よりもマスクを使用する方が低リスクであった(いずれもp<0.0001)。著者は、「手術時の麻酔施行前の評価により、周術期の呼吸器合併症のリスクが高い患児を系統的に同定することが可能であり、それゆえターゲットを定めた特異的な麻酔法がベネフィットをもたらす可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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准教授 小早川信一郎先生の答え

アトピー性白内障手術時の注意点まだまだ駆け出しの眼科医なので、初歩的な質問で失礼します。アドピー性白内障手術の場合、網膜剥離を併発している可能性も念頭に入れて手術を行うことを指導されました。このような場合、小早川先生が特に意識していることや注意していること等がありましたら教えて頂きたく存じます。(1)術前に眼底が全く観察できない程度に白内障が進行していた場合、術前の超音波検査はもちろんですが、術中に網膜剥離の有無を直接観察することになると思います。私は術中に発見したことはありませんが、術後すぐに(1週間以内)剥離を起こされたことが出張中にありました。(2)手術においては、極力大きめのCCC(5.5-6ミリ程度)を狙います。レンズ選択は以前、PMMAでしたが、今はアクリルを入れています。1P、3Pは問いません。(3)若い方が当然多いので縫合します。私はすべての症例で基本的に上方強角膜切開、輪部後方からトンネルを1.5ミリ程度作成していますので、縫合は容易です。結膜は縫合したりしなかったりですが、終了時にうまく元に戻らなければ縫合します。(4)術前ムンテラはRDの話もします。(5)硝子体脱出は極力避けてください。脱出したらたぶん剥がれます。(6)予想外に炎症が強い時があります。そういう時はステロイドを点滴します(リンデロン4ミリ相当を2-3日間)。基本、入院して頂いています。眼内炎を疑うほどの炎症は経験ありません。加齢黄斑変性の研究動向加齢黄斑変性の治療方法についての最近の動向など、御存知でしたら教えて下さい。滲出型の場合は、第一選択ルセンティス、第二選択マクジェンを月一で3回投与し、経過を見て追加、維持療法が基本ではないでしょうか。蛍光眼底造影(必要ならICG造影)は必須と思います。OCTは治療効果判定に有用ですが、なくても視力やアムスラーチャートなどで大体把握できます。ドライタイプにアバスチンを試しましたが、効果はありませんでした。ドライタイプの方には、希望があればルセンティスをやっていますが、効果がない場合がほとんどなので、その時点でムンテラして止めています。レーザーは最近やっていません。レーザーはアーケード内ですと、暗点が出たり自覚的な見え方の質の低下を経験しています。硝子体手術は出血がなければしません。高齢者に手術を勧めるべきか在宅をやっている開業医です。白内障と思われる高齢者の方を見かけますが、90歳や100歳になる高齢者の方の場合、ご家族の心配もあり、白内障の手術を勧めるべきかどうか、よく悩みます。その辺の考え方を教えていただければと思います。3年ほど前までは、85歳以上の方の時は手術については積極的に勧めませんでした。もちろん過熟白内障の時はします。緑内障になるからです。最近は85歳以上の元気な方が増えてきて、本人の希望があり、家族も希望していればします。ただし、ムンテラとして、破嚢や核落下のリスクが上がること、感染リスクも高いこと、は必ず言います。それほど黄ばみの強くない核白内障であれば、たぶん勧めませんし、家族がやってくれと言っても最初は乗り気でない姿勢をみせます。90歳代は経験ありますが、100歳の方は手術の経験がありません。チン小体脆弱、前部硝子体膜剥離がある、は予測して手術に入ります。中には60-70代と変わらない方もいますが、弱い方がやはり多いと思います。また、きちんと手術が終了しても、0.7程度にとどまる方が多く、1.0はあまりいない印象です。レンズを選ぶ眼内レンズの種類が増えるにつれ治療後にピントが合わずに再手術をすることになる例が出ております。大森病院さんでは、レンズを選ぶ際の注意点、できれば個人の感覚に頼るのものではなく、科としてのガイドラインの様なものがあれば教えて頂きたいと思います。(1)-3.0D以上の近視がある方を除いて、基本的には-0.5から0Dを狙っています。乱視が強い場合、最近はトーリックです。以前は乱視の分を考慮して、少しプラス気味に球面を狙ったりして、等価球面ができるだけ-0.5から0程度になるようにしています。(2)中等度から高度近視の方の場合、コンタクトをしていて老眼鏡を使用という方は(1)と同じく狙います。(3)中等度から高度近視の方で術前眼鏡使用の場合、患者さんとお話をして、-2.5から3程度に等価球面がいくように選択します。必ずピントが合う距離が今よりも遠くなることをお話します。(4)(2)や(3)のような近視の方はメガネの必要性をお話しています。(5)一般の患者さんに多焦点の話はしていますが、自費で36万円ということを話すとその時点であきらめる方が多いです。ただ、考えてくると言った方の場合、一度手術の予約のみ取って、日を変えて多焦点IOLのお話を再度しています。乱視適応は原則1D以内です。80歳以上の方には積極的に勧めていません。(6)トーリックは、乱視が強いのでそれも少し治るようなIOLを入れますとだけ言い、過剰な期待は抱かせないようにしています。適応は積極的にしており、1D以上角膜乱視があればトーリックです。術後感染症差し支えなければ、眼科手術の術後感染症を防ぐために行っている貴院ならではの取組、工夫をご教授下さい。(1)術前に結膜嚢培養(2)(1)で腸球菌、MRSAが出たら告知して術前に抗菌薬点眼処方(3)全例、極力、術3日前からの抗菌薬点眼(クラビッド)(4)皮膚消毒したあと1分間放置(5)穴あきドレープをかけて洗眼したあともう一度露出した皮膚を消毒。(6)30秒間放置して、テガタームなどを皮膚に貼り付け、開瞼器をかける術後は極力(主治医が診察できない場合もあるので)、当日より眼帯を外して抗菌薬点眼を開始する。こんな感じです。糖尿病専門医との連携について眼科をやっている者です。糖尿病専門医との連携で気をつけているポイントがあれば教えて下さい。どこも同じ状況だとは思いますが、糖尿病白内障や糖尿病網膜症の患者さんが増えてきたため血糖コントロールなど、糖尿病専門医と連携をとる機会が増えてきました。宜しくお願いします。白内障は急ぎませんが、網膜症の場合、特に硝子体手術が必要な程度まで進行している場合は連携が必要と思います。急ぎでオペの時は、コントロールしながら、というスタイルとなります。どのぐらい急ぎなのか、をはっきり伝え、手術までの時間にレーザーは1週間に2回程度、同じ眼でもかけています。血糖コントロールを高めに、とか低めにとかそのような指示はしません。こちらの状況をはっきり伝えるのみです。コントロールは程ほどで手術に入るか、コントロール後手術なのかは一度話し合いを持たれた方がよいとおもいます。白内障手術前に行うリスク説明時に、何か工夫をされていることあればお教え下さい。実は最近、テレビや雑誌の影響なのか、「白内障手術は気軽で簡単!」「術後は、メガネなしで若い頃の視力が手に入る(レーシックと勘違いしているのでしょうか?)」とのイメージを持つ患者さんが増えてきたと感じます。このような場合、手術前にいくらリスクを説明しても、この先入観が邪魔しリスク内容を安易に捉えられてしまっているように感じます。実際、昔と比べて、術後に「こんなはずでは!」とのクレームが多くなったと感じます。小早川先生が術前のリスク説明時に何か工夫されていることがあれば是非教えて下さい。過度な期待は抱かせない、ということに留意はしています。ただし、眼内炎や核落下について必要以上にムンテラすることは避けています。手術ですからやってみるまでは分からない、という話もします。術者の技量、土地柄も影響していると思います。また特別な症例、水晶体揺れている、90歳以上、mature、ぶどう膜炎、などは自分でムンテラしています。通常の症例は主治医にお願いしています(白内障は入院ですので主治医が付きますので)。CCCのコツを伝授下さい先生も書いておられるように、手術時は局所麻酔で行うことが多く、こちらの動きが患者さんに伝わってしまいます。特に、CCCが上手く行かなかった時には大変焦ってしまい、「絶対患者さんが不安に思っているな。」と感じることがあります。上級医から、学会時に小早川先生からCCCでトラぶった時の対処方法を教えて頂いたと聞きました。もし宜しければそれを伝授願えないでしょうか。宜しくお願いします。(1)道具にこだわる セッシの積極的使用、いろいろなセッシを試してみる、針にこだわらない、(2)顕微鏡にこだわる ツァイスの一番新しいモデル、ルメラは見えます。視野の中心で見ることも忘れない(3)ビスコにこだわる ヒーロンVをすすめています。(4)染色 僕自身はめったにしませんが、見えなければ積極的に染めてもらっています。第一に前嚢が見えているかの確認です。次にヒーロンVを使用して確実に前房深度を保ちます。道具を厳選し、確実に前嚢を把持することに努めます。後は豚眼の練習通り、進めていきます。もし流れたらですが、下方で流れたら観音開きになるように逆回しでつなげるか、針を細かく動かしてカンオープナーにするか、を考えます。手前で流れたら、余分な前嚢を切除した後、前房虚脱に注意してオペを進めます。切開創の構築についてもセッシ使用の場合など考慮すべきでしょう。基本的には流さないように万全の準備をしてオペに臨み、流れたら、成書のごとく対処していくという指導をしています。糖尿病患者を診て頂く場合の注意点内科医です。糖尿病患者を眼科の先生に受診させる場合、どのような点に注意すべきでしょうか。また、東邦大学で内科・眼科の連携の際には、網膜症の分類をどのように使い分けていらっしゃいますか。白内障に関する質問でなくて恐縮ですが、よろしくお願いいたします。(1)血糖値、A1Cあたりがあれば十分と思います。通院歴がまじめ、ふまじめといった情報はさらにありがたいと思います。(2)網膜症は福田分類を使っています。AとBで大別し、レーザー治療は済でもう枯れてきた網膜症である、といった情報は内科に提供しています。逆に手術を急ぐべき、といったときはその旨明記します。コントロールについては原則お任せしています。海外留学について先生の記事、興味深く読ませて頂きました。現在初期研修中ですが、私も是非先生の様に研究発表もできる眼科医を目指したいと思っております。先生のプロフィールにも海外留学されたとありますが、やはり、基礎を習得するためには海外留学が必要なのでしょうか?症例の質問ではなくて恐縮ですが、実際に眼科の第一線で活躍されていて論文や発表も数多く出されている先生に伺う機会がないので教えて頂ければと願っています。また、大森病院のホームページには「積極的に海外留学も行えるようにしています。」とありましたが、具体的にどの様な支援をされていて、どの程度の方々が支援を受けているのでしょうか?色々と質問して申し訳ありませんがよろしくお願いします。海外留学で一番学んだことは問題解決能力でした。自分で解決する、その選択肢を多く持ったことです。基礎を習得するのは国内でも十分と思います。私は、知り合いの先生がいる微生物の教室で、実験をさせて頂いておりました。その後、眼内炎がやりたくなって、留学いたしました。日本でも実験はできますが、教室の垣根や動物センターの規約など、面倒くさいことが多いです。その点、システムがすでに出来上がったラボではそういった根回しにあまり力を入れなくて済みますので楽と思います。自分のやりたい研究ができる環境がアメリカだったとそのように考えてます。研究には臨床のような研修プログラムがなく、やりたい人間ができるようになればよい、というスタンスが多いと思います。もし、本気で考えていらっしゃるなら大学院という選択がよいと思います。眼内レンズの解析、微量検体の測定など、実験系を組むと費用がかかるものは企業のものも積極的に使用しています。SRL等、結構やってくれますし、仲良くなると研究員の方とお話しできることもあります。眼内レンズの解析は、旧メニコンにお願いすることも多いです。最近では電顕写真を外にお願いしたりもしています。わたくしたちの医局では、例えば大阪大学のように常に誰かがどこかに留学している状況ではないですから、留学希望者が順番待ちしているといったことはありません。研究が好きな人間や大学院生を中心に海外学会に連れて行って、雰囲気を味合わせ、少しやる気がある人に対しては、僕がもといたラボに連れて行って、ボスと話をさせたりします。で、行きたいとの希望が出れば、医局長に話をして人事面で考慮をしていくという状況です。僕は微生物でしたので、感染症のテーマでよいという人間を連れて出ています。東邦大学には給費留学制度(留学中助教の給料が保証)がありますので、教授とも話をしながら進めます。僕がもといたラボに行った人間はうちの医局からはまだいませんが、来年あたりに一人出せるかもしれない状況に来ています。海外留学は医局の責任者と十分に話し合い、穏便に行ける環境を作り、経済的な問題を解決してからが一番と思います。教室によっては定期的に人を出すシステムが作られているところもあるでしょうが、我々はまだまだです。なかなか、帝大クラスのようなシステムには到達できません。准教授 小早川信一郎先生「白内障手術の光と影」

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インフルエンザだけじゃない!―赤ちゃんを脅かす秋冬の感染症

 8月27日、大手町ファーストスクエアにて開催された「周産期医療最前線 ―インフルエンザより早く来る!ママの知らないRSウイルス感染症」セミナーの第2報をお届けする。福島県立医科大学の細矢光亮氏は、RSウイルス(RSV)感染症の特徴や疫学、治療について述べ、罹患しやすい2歳未満の乳幼児の状況に加え、後年に及ぼす影響に関しても言及した。 RSVは、チンパンジーの鼻炎例から初めて分離され、その後呼吸器疾患の患児からも同様のウイルスとして分離された。細胞変性効果としてsyncytiumが特徴的に見られることから、Respiratory Syncytial Virusと命名されている。 感染経路は接触および飛沫であり、生体外でも長時間感染力を保つ(カウンターで6時間後でもウイルス分離可能)。通常は鼻炎などの上気道炎の原因となるが、乳児や高齢者では、細気管支や肺胞で増殖して下気道炎を起こすことが問題となっている。 2歳までにほぼ100%が初感染するRSVであるが、およそ30%が下気道炎を起こし、3%が重症化して入院加療を要する。細矢氏によれば、1歳までの患児の月齢別分布は、3~6ヵ月齢が比較的多いものの大きな差はなく、母親からの移行抗体で完全には防御できないとのことである。さらに、在胎32週未満の早産児では移行抗体が少ないため、重症化のリスクが高い。 また、3ヵ月齢未満と3ヵ月齢以上を比較すると、主な症状の出現率はほぼ同等であったが、陥没呼吸や喘鳴などの持続期間は3ヵ月齢未満で有意に延長しており、呼吸管理や入院加療を必要とした例も有意に多かった。 ワクチンや有効な治療法がないRSV感染症の重篤化を抑制する唯一の薬剤として、RSVのF蛋白特異的な中和抗体であるパリビズマブ(商品名:シナジス)がある。第1報でも触れたように、早産児など高リスクのRSV感染症における入院率が、パリビズマブによって非投与群の半分以下に減少したと報告されている。 ここで、RSV感染による細気管支炎と、後年の喘鳴・喘息の発症の有意な関連性がこれまでの複数の調査結果で示された。細矢氏は、免疫学的な見地から、その機序について述べた。 まず、新生児~乳幼児では相対的にTh-2優位である。その上で、細矢氏は、RSV感染児におけるTh-2/Th-1バランスを非感染群と比較すると、有意にTh-2優位となっているデータを示した。さらに、RSV感染症の回復期には、他のインフルエンザ感染症などと異なり、好酸球数が有意に増加し、アレルギー性炎症に関与するケモカインであるRANTESも有意に濃度上昇するとのことである。すなわち、もともとアレルギーリスクの高い新生児期にRSV感染すると、リスクはさらに増大すると考えられる。 一方、乳児期のRSV感染と、81ヵ月後までの喘鳴および91ヵ月後の喘息の有意な関連が報告されている。細矢氏は、RSV感染によってTh-2優位となり、気道過敏状態が持続することで、反復性喘鳴を呈すると述べた。 そこで、パリビズマブによる喘息発症予防を検討した、WOO-353 Studyが紹介された。その結果であるが、パリビズマブ投与群における反復性喘鳴の発症率は、非投与群の半分程度と有意に減少した。 細矢氏は、パリビズマブによって、3歳までの早期喘鳴の罹患率を減らせるだけでなく、5歳ごろをピークとする後年の非アトピー性反復性喘鳴の罹患率も減ずることができるであろうとし、講演を締めくくった。

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尋常性乾癬に対する「NF-κBデコイオリゴ」の医薬特許成立

 アンジェス MG株式会社は29日、日本において尋常性乾癬に対するNF-κBデコイオリゴの医薬特許が成立し、特許公報(特許第4305857号)が発行されたことを発表した。 同特許は「尋常性乾癬を治療するための薬学的組成物であって、少なくとも1つのNF-κBのデコイ、および薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物であって、該デコイは2本鎖オリゴヌクレオチドまたはそのS-オリゴである組成物」を対象とするもの。 なお同社は、NF-κBデコイオリゴのアトピー性皮膚炎に対する第II相臨床試験を終了し、現在、第III相臨床試験に向けて実施計画の詳細を検討中とのこと。

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就学前小児の上気道ウイルス感染による喘鳴:吸入薬(高用量)による予防的治療

上気道ウイルス感染による喘鳴発作は、就学前児童においてはよく見られるが、至適管理方法は確認されていない。モントリオール大学(カナダ)小児科部門臨床調査部門Francine M. Ducharme氏らは、特に至適管理のエビデンスがあいまいな中等症~重度の、反復性の上気道ウイルス感染による喘鳴に対し、予防的治療としての高用量フルチカゾン(商品名:フルタイド)の有効性と安全性を検討した。結果、有効性は確認できたが成長抑制が確認され、臨床に取り入れるべきではないとの結論を報告している。NEJM誌2009年1月22日号掲載より。中等症から重度の患児の2次予防戦略の調査を目的にDucharme氏は本試験について、「喘息の緊急治療で来院するこの年代の患児数は、住民1,000人につき30人以上、学齢期児童や成人の3倍以上に上る。喘鳴を呈し非アトピー性で、症状は6歳時まで増悪していくため大きな悩みで、また多大な医療サービスも要する」とし、至適管理の重要性、特にエビデンスに乏しい中等症から重度の患児の2次予防戦略の調査を目的としたとしている。高用量フルチカゾンによる重症度減少への期待は、「学齢期児童および喘息小児を対象とする試験で経口コルチコステロイドの高用量の予防的使用が、統計学的には有意ではないものの臨床的に有望であった(20%~50%)」からだと述べている。試験は、カナダ・ケベック州の5つの病院で、上気道感染による喘鳴発作を3回経験したことがある者、過去半年で最低1回経口コルチコステロイドの緊急治療を受けた者、両親が仏語と英語を話せる1~6歳児129例を対象に行われた。入院の有無は不問。無作為化プラセボ対照試験は、プロピオン酸フルチカゾン750μg吸入(投与回数は1日2回)を、上気道発症時から最長10日間を限度とし行われ、4ヵ月ごとに受診と検査を義務づけ、6~12ヵ月間追跡された。主要評価項目は、経口コルチコステロイドの緊急使用。副次評価項目は、症状、作動薬使用、救急受診、入院、試験薬中止、成長と骨密度の変化、コルチゾール基礎値、有害事象など。有効性は認められたが、身長・体重増がプラセボに比べ小さい中央値40週までに、経口コルチコステロイド緊急使用は、フルチカゾン群8%に対し、プラセボ群は18%と、オッズ比0.49倍(95%信頼区間:0.30~0.83)だった。一方で、フルチカゾン群の小児の成長(身長、体重)の基線値からの増加の平均値が、プラセボ群に比べて小さく、身長の増加(非補正値)は6.23±2.62cm対6.56±2.90cm。体重の増加(非補正値)は1.53±1.17kg対2.17±1.79kgだった。コルチゾール基礎値、骨密度、有害事象についての有意差は認められていない。(武藤まき:医療ライター)

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アメリカ医療研究品質機構のノウハウを活用して患者安全指標はつくれそうだ

患者安全は国際的な問題だが、その指標づくりは容易ではない。アメリカには、医療研究品質機構(AHRQ:Agency for Healthcare Research and Quality:http://www.ahrq.gov/)が病院診療データを基に開発した患者安全の指標があり、数ヵ国がその指標を自国の患者安全指標づくりに活用しているがイギリスでも活用できないか。Healthcare Commission(ロンドン)のVeena S Raleigh氏らが、29あるAHRQの指標のうち9つについて症例対照試験を行い有用性を検証した。BMJ誌2008年11月22日号(オンライン版2008年10月17日号)掲載より。「病院エピソード統計」から症例群、対照群を引き出し入院期間、死亡率を比較試験はAHRQの9つの指標で、イギリスの全NHS(国民医療保健サービス)トラストを対象とする「病院エピソード統計」(2003-2004、2004-2005、2005-2006)から患者安全の指標、有害転帰の指標を引き出せるか検証された。9つの指針は、「死亡率が低い疾患医療での死亡数」「医原性気胸」「褥瘡」「医療処置が必要となった待機感染症」「術後股関節骨折」「術後敗血症」、および産科的外傷についての3指針(後産期分娩時器具あり・なし、帝王切開時)。指標を経験していると判定された患者症例群と、対照照合症例群(2005-2006データから、年齢、性、同一医療サービス受療群、主要専門科目、NHSトラストで照合)との入院期間、死亡率を比較し、アメリカのデータ(2000年版)との比較も行われた。コーディング、制度、サービス供給パターンの違いはなお考慮すべき入院期間は、1指標(帝王切開時の外傷)を除き、対照群よりも症例群のほうが長かった(各指標値:0.2~17.1日、P

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アトピー性皮膚炎の重症度の指標となるTARCの新しい測定方法を開発!

常磐薬品工業は、島根大学医学部 森田 栄伸教授との共同研究によって、アトピー性皮膚炎の重症度評価を行うための新しい測定方法を開発したと発表した。粘着テープで皮膚の角質を採取する「テープストリッピング」を利用するもので、皮膚局所の測定が可能になるという。これまでの血清を用いたELISA法によるTARC値は全身症状としてのアトピー性皮膚炎の病態の指標となるが、新測定法を用いることにより、皮膚局所TARC値を測定することが可能となり、外用薬や保湿剤の評価に用いることが可能という。詳細はプレスリリースへhttp://www.tokiwa-blog.jp/news/2008/11/tarc_1.html

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ネオーラルにアトピー性皮膚炎への効能が追加承認

ノバルティス ファーマ株式会社は10月16日、免疫抑制剤「ネオーラル(一般名:シクロスポリン)」の10mgカプセル、25mgカプセル、50mgカプセル、内用液についてアトピー性皮膚炎の治療薬として、新たな効能追加の承認を取得したと発表した。ネオーラルは、海外においてアトピー性皮膚炎に対する有用性が臨床試験成績で示されており、既存治療で十分な効果が得られない成人の重症アトピー性皮膚炎に対する効能・効果をすでに60ヵ国以上で取得し、臨床現場で使用されている。また、日本においてもアトピー性皮膚炎治療における免疫学的アプローチの必要性から、ネオーラルの開発を進めてられてきた。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2008/pr20081016.html

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鼻炎の成人は喘息発症リスクが高い

鼻炎は、アトピー素因の有無にかかわらず成人期発症の喘息の強力な予測因子であることが、地域住民ベースのプロスペクティブな縦断的研究で明らかとなった。喘息とアレルギー性鼻炎の密接な相関がいくつかの疫学および臨床研究で示されているが、その関連の本質はいまだ解明されていないという。フランス・国立保健医療研究所(INSERM)疫学部のRafea Shaaban氏が、Lancet誌2008年9月20日号で報告した。4群に分けて8.8年間の喘息発症状況を解析研究グループは、ヨーロッパの14ヵ国29施設が参加したEuropean Community Respiratory Health Survey(ECRHS)の8.8年にわたるフォローアップデータを用い、アレルギー性および非アレルギー性の鼻炎患者における喘息の発症状況について解析した。ベースライン時に喘息のない20~44歳の6,461人を対象に、喘息の発症頻度を評価した。2度の調査を行い、その間に医師によって喘息と確定診断されたと報告した場合に「喘息発症」とした。「アトピー」は、皮膚プリック検査でダニ、ネコ、カビ(アルテルナリア、クラドスポリウム)、イネ科植物、カバノキ、ヒカゲミズ属、オリーブ、ブタクサが陽性の場合とした。参加者はベースライン時に、対照群(非アトピー/鼻炎なし、3,163人)、アトピー単独群(アトピー/鼻炎なし、704人)、非アレルギー性鼻炎群(非アトピー/鼻炎あり、1,377人)、アレルギー性鼻炎群(アトピー/鼻炎あり、1,217人)の4群に分けられた。4群の喘息発症についてCox比例ハザードモデルによる解析を行った。鼻炎は成人喘息を強く予測、鼻炎治療の喘息予防効果を示すには介入試験が必要8.8年間の喘息の累積発症率は2.2%(140イベント)であった。その内訳は、対照群1.1%、アトピー単独群1.9%、非アレルギー性鼻炎群3.1%、アレルギー性鼻炎群4.0%であり、有意差が認められた(p<0.0001)。国別、性別、ベースライン時の年齢、BMI、1秒量(FEV1)、総IgE値対数、喘息の家族歴、喫煙で補正後の対照群との比較におけるアトピー単独群の喘息発症の相対リスクは1.63(95%信頼区間:0.82~3.24)と有意差を認めなかったが、非アレルギー性鼻炎群は2.71(1.64~4.46)、アレルギー性鼻炎群では3.53(2.11~5.91)といずれも有意な差が見られた。アレルギー性鼻炎群のうちダニに対する感受性を有する患者のみが、他のアレルゲンとは独立に喘息リスクの増大と有意な相関を示した(相対リスク:2.79、95%信頼区間:1.57~4.96)。著者は、「アトピー素因がない場合でも、鼻炎は成人期発症の喘息の強い予測因子である」と結論し、「この結果は、鼻炎と喘息の因果関係を強く示唆するものだが、アレルギー性鼻炎の治療が喘息の発症を抑制すると結論するには介入試験で確証する必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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喘鳴が見られる幼児が将来、喘息を発症する予測因子が明らかに

喘鳴の見られる就学前の幼児が、将来、喘息をきたす可能性は、運動で誘発される喘鳴およびアトピー性疾患の既往という2つの因子で予測可能なことが、イギリスWythenshawe病院北西肺研究センター一般診療研究部のPeter I Frank氏らが実施した縦断的研究で明らかとなった。就学前の幼児の25~38%に喘鳴が見られるが、これらの幼児が将来、なんらかの肺疾患をきたす症候は明確でなかった。BMJ誌2008年6月21日号(オンライン版2008年6月16日号)掲載の報告。5歳未満の幼児を6年以上追跡した縦断的研究研究グループは、両親が喘鳴の有無を報告した就学前の児童を6~11年間追跡し、予後およびその重要な予測因子について検討した。本研究は、5つの縦断的な郵送質問票調査であり、1993~2004年に実施された喘息およびアレルギー疾患に関する国際研究に基づいている。Manchester市南部の2つのGP施設から登録された5歳未満の628人の幼児を、6年後以降にフォローアップした。主要評価項目は、親が質問票に記入した呼吸器症状のデータと、その随伴所見とした。「運動誘発性の喘鳴」「アトピー性疾患の既往」のみが有意な予測因子628人の幼児のうち、ベースライン時に両親から喘鳴の報告があったのは201人(32%)であり、そのうち27%が2回目の調査で症状(持続性喘息)を報告した。ベースライン時における持続性喘息の有力な予測因子は、運動によって誘発される喘鳴(オッズ比:3.94、95%信頼区間:1.72~9.00、p=0.001)およびアトピー性疾患の既往(4.44、1.94~10.13、p<0.001)のみであった。両予測因子の発現が見られる場合は、その53.2%が喘息を発症していた。一方の所見のみが見られる場合の喘息発症率は17.2%に低下したが、いずれの所見も認めない場合でも10.9%が喘息を発症していた。「男児」「喘息の家族歴」は、持続性喘息の予測因子ではなかった。Frank氏は、「ベースライン時の両親の報告による運動誘発性喘鳴およびアトピー性疾患の既往という2つの簡便な予測因子により、喘鳴が見られる就学前幼児が将来喘息をきたす確率を予測しうる」と結論し、「これらの知見は、医師、両親の双方にとって、将来の管理計画を立てるにあたり重要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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