皮膚科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:35

透析皮膚掻痒症は解決に向かうのか?(解説:浦信行氏)-1147

透析皮膚掻痒症は50~90%の例に認められると報告され、程度が強いものは睡眠障害などで患者のADLを著しく低下させる。従来の対処法には皮膚の保湿や抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬などがあるが、効果は限定的で満足な治療効果は得られていないのが現状である。また、腎不全そのものの病態、すなわち尿毒症物質やCa、Pの沈着などの機序も加味することから重症で難治性の症例が多い。掻痒の機序の一部は内因性オピオイドのβ-エンドルフィンによるμ受容体の活性化であるが、κ受容体がこの作用に拮抗し掻痒を抑制する。このたび報告されたdifelikefalinは選択的κ受容体作動薬である。有効性や有害事象は11月21日配信のジャーナル四天王の記事のとおりである。ただし、週3回透析終了後の回路からの静注で使用するので、腹膜透析患者や保存期腎不全患者には適応しにくい。保存期腎不全でも15~49%に難治性の掻痒症が見られると報告されている。difelikefalinの経口薬が保存期腎不全を対象に、現在第II相で試験が行われているようだ。末梢のκ受容体への選択性が高く、中枢性の幻覚や身体違和感などは見られていないとのことで安全性も高い。

全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019、本邦で初めて発刊

 2019年10月、日本初の『全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019』が発刊された。全身性エリテマトーデス(SLE)はさまざまな全身性疾患を伴うため、治療の標準化が困難であったことからガイドラインの作成着手までに時間を要してきた。全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019は専門医を対象とし、SLEの臨床的多様性に対応する総合的なガイドラインとして作成されている。  サノフィ株式会社は2019年10月30日、メディアラウンドテーブル「本邦初の全身性エリテマトーデス(SLE)診療ガイドライン発行~SLE診療の現在 医師と患者の立場から~」を開催。全身性エリテマトーデス診療ガイドライン統括委員会の委員長を務めた渥美 達也氏(北海道大学大学院医学研究院免疫・代謝内科学教室 教授)が「SLE診療の標準化~全身性エリテマトーデス(SLE)診療ガイドライン~」について講演した。会の後半では患者代表の後藤 眞理子氏(全国膠原病友の会神奈川県支部 支部長)を交えてトークセッションが行われた。

difelikefalin、透析患者のかゆみとQOLを改善/NEJM

 中等度~重度のかゆみを呈する透析患者において、κオピオイド選択的受容体作動薬difelikefalin投与を受けた患者は、プラセボ投与を受けた患者と比べて、12週後のかゆみの強度は有意に軽減し、かゆみに関連したQOLは有意に改善したことが示された。米国・Donald and Barbara Zucker School of Medicine at Hofstra/NorthwellのSteven Fishbane氏らによる、第III相の多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検試験「KALM-1」試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年11月8日号で発表された。

アトピー児の皮膚生検にテープストリッピング法が有用

 早発性アトピー性皮膚炎(AD)児の皮膚生検を低侵襲で行える再現性ある手法として、テープストリッピング法が有用であることが示された。米国・マウントサイナイ医科大学のEmma Guttman-Yassky氏らによる検討で、小児ADの病変もしくは非病変の皮膚バイオマーカーとなり、治療反応の追跡や将来的な経過、並存疾患の予測に有用である可能性が示された。AD表現型の評価には皮膚生検の分子プロファイリングが標準であるが、皮膚生検は小児にとって常に適しているとは限らない。縦断研究や臨床試験で皮膚疾患を追跡評価できる、再現性ある低侵襲のアプローチが不足していた。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年10月9日号掲載の報告。

乾癬患者、全がんリスクが高い

 乾癬患者の発がんリスクおよびがん死リスクが明らかになった。英国・マンチェスター大学のAlex M. Trafford氏らによるメタ解析の結果、乾癬患者はいずれのリスクとも高く、さまざまな部位のがんと関連していることが認められたという。著者は、「さらなる研究を行い、特定の生活様式の因子や治療、乾癬の炎症プロセスを調べ、がんリスク増大のメカニズムを明らかにする必要がある」と述べている。乾癬患者の発がんリスクについては、重症度によるリスクの違いも不明であり、少なからぬ懸念が生じていた。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年10月16日号掲載の報告。

メラノーマ・腎がん・肺がんに対するニボルマブの5年生存率/JAMA Oncol

 進行メラノーマ、腎細胞がん(RCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)に対する抗PD-1抗体ニボルマブ治療の5年生存率が報告された。米国・Johns Hopkins Bloomberg-Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのSuzanne L. Topalian氏らが米国内13施設270例の患者を包含して行った第I相の「CA209-003試験」の2次解析の結果で、著者は「長期生存と関連する因子を明らかにすることが、治療アプローチおよびさらなる臨床試験開発の戦略に役立つだろう」と述べている。ニボルマブは進行メラノーマ、RCC、NSCLCおよびその他の悪性腫瘍に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)によって承認されているが、これまで長期生存に関するデータは限定的であった。JAMA Oncology誌2019年10月号(オンライン版2019年7月25日号)掲載の報告。

新たなJAK阻害薬、中等症~重症の成人アトピー性皮膚炎に有効

 アトピー性皮膚炎(AD)に対するJAK阻害薬の開発が進んでいる。開発中の経口JAK1選択的阻害薬abrocitinib(PF-04965842)について、中等症~重症の成人ADに対する短期使用の有効性および忍容性が、第IIb相プラセボ対照無作為化試験で確認された。カナダ・SKiN Centre for DermatologyのMelinda J. Gooderham氏らが報告した。abrocitinibは、ADの病理生理学的特性に重要な役割を担うサイトカイン(IL-4、IL-13、IL-31、インターフェロンγなど)のシグナル伝達を阻害する。今回の第II相試験では、200mg、100mg、30mg、10mgの各用量を1日1回投与し、プラセボとの比較検証を行った。なお、本試験の結果を受けてabrocitinibの200mgと100mgの有効性と安全性を評価する第III相試験が行われている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年10月2日号掲載の報告。

ピロリ除菌療法は慢性蕁麻疹患者に有益?

 ヘリコバクター・ピロリ菌(H. pylori:HP)が慢性特発性蕁麻疹(CSU)の発生および症状の持続と関連する可能性を示唆する知見が、韓国・高麗大学校医科大学のHyun Jung Kim氏らによるメタ解析の結果、示された。CSU症状を抑制するうえでHP除菌療法の影響が重要な意味を持つ一方、CSU寛解は除菌の成功とは関連しないことなどが明らかになったという。結果を踏まえて著者は「HPとCSUの関連メカニズムを評価するためには、さらなる研究が推奨される」とまとめている。これまでHP感染症がCSUの病因に関与していると考えられてはいたが、CSU症状改善に関するHP除菌療法の効果は明らかにされていなかった。Helicobacter誌オンライン版2019年9月15日号掲載の報告。

免疫チェックポイント阻害薬の効果、抗菌薬投与で減弱?

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果を左右する興味深い知見が発表された。広域抗菌薬(ATB)療法によって引き起こされるディスバイオシスが、ICIの効果を減弱する可能性があるという。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドン、ハマースミス病院のDavid J. Pinato氏らが、実臨床でICI治療を受ける患者を対象に前向き多施設コホート研究を行い、ICI投与前のATB投与により、全生存期間(OS)および奏効率が悪化したことを示した。著者は「ICI治療予後不良の決定要因として、ATBを介した腸内細菌叢の変化の解明が喫緊の課題である」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月12日号掲載の報告。

AI技術で非黒色腫皮膚がんリスクモデルの精度が向上

皮膚科におけるディープラーニング技術の活用報告が相次いでいる。今回発表されたのは、非黒色腫皮膚がんの予測モデル開発に関する研究報告で、台湾・台北医学大学のHsiao-Han Wang氏らがディープラーニング技術を活用し、高リスク集団を捉えることが可能な精度の高い予測モデルを開発した。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年9月4日号掲載の報告。  研究グループは、アジア人集団において、UV曝露または特異的病変に関する情報なしで、大規模で多次元的な非画像医学情報をベースとした非黒色腫皮膚がんのリスク予測モデルを、ディープラーニングを活用して開発する研究を行った。