循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:98

2次観察分析としてこういった観点はいかがなものか?(解説:野間重孝氏)

今回の研究は、著者らのグループが2018年にLancet誌に発表したHigh-STEACS試験の関連観察研究である。正直に言って論点がわかりにくく、論文を誤解して読んだ方が多かったのではないかと心配している。著者らはHigh-STEACS試験において、急性冠症候群(ACS)を疑われた患者に対して、トロポニンIの高感度アナリシスを用いることにより、より多くの心筋障害患者を同定することができたのだが、標準法を用いた場合と1年後の予後に差がなかったことを示した。この論文はジャーナル四天王でも取り上げられたのでお読みになった方も多いと思うが、当時の論調では著者ら自身、そこまで言い切ってよいものか迷いが見られていたのだが、本論文でははっきり「心イベントが有意に減少することはなかった」という表現で断定している。分析法とカットオフ値が確定したことが要因だったのではないかと推察する。

妊娠によって明らかになった将来の健康ハイリスク女性に対する、効果的な産後介入の可能性(解説:三戸麻子氏)

妊娠高血圧症候群に罹患した女性は、将来の生活習慣病や脳心血管病のハイリスクであることが知られている。しかし、現行の診療ガイドラインでは、産後にそのリスクを周知し、健康的なライフスタイル指導を推奨しているのみで、フォローアップの方法は確立していない。本研究では、産後の血圧自己モニタリングと医師による降圧薬調整の遠隔指導を行うことで、通常の産後管理と比較して、産後9ヵ月時の拡張期血圧が低下したことが示され、将来の疾病予防につながる可能性が示唆された。

サイアザイド系利尿薬による低ナトリウム血症、最初の数ヵ月間の発症リスクが高い

 デンマーク国立血清研究所のNiklas Worm Andersson氏らが、サイアザイド系利尿薬による低ナトリウム血症(以下、低Na血症)の累積発生率について、その他薬効クラスの降圧薬と比較・推定を行った。その結果、治療開始から最初の数ヵ月間において、サイアザイド系利尿薬では添付文書等で示されているよりも低Na血症のリスクが高かったことが明らかになった。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2023年12月19日号掲載の報告。

心房細動アブレーション後に抗凝固薬を中止できる患者は?

 心房細動に対するカテーテルアブレーション後に抗凝固薬を継続することの有効性および安全性を評価する臨床試験は実施されておらず、抗凝固薬の継続の意義は明らかになっていない。そこで、金岡 幸嗣朗氏(奈良県立医科大学/国立循環器病研究センター)らの研究グループは、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて、抗凝固薬の継続の有無別に血栓塞栓症と大出血のリスクを検討した。その結果、抗凝固薬の継続はCHADS2スコア2点未満の患者では大出血のリスクを上昇させ、CHADS2スコア3点以上の患者では血栓塞栓症リスクを低下させることが示された。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2023年12月20日号で報告された。

精度の低いAIは臨床医の誤診を増やす?/JAMA

 臨床医の診断精度は、標準的な人口知能(AI)モデルと一般的に用いられている画像ベースのAIモデルを提供された場合は向上するが、系統的に偏ったAIモデルを提供された場合は低下し、その影響は画像ベースのAIモデルで補うことはできなかったことが、米国・ミシガン大学のSarah Jabbour氏らによる検討で示された。AIは入院患者を診断する際に臨床医の助けになる可能性があるが、AIモデルの系統的な偏りは臨床医の診断精度を悪化させる可能性が示唆されており、最近の規制ガイドラインでは、AIモデルに、モデルによる誤りを軽減するための判断根拠の説明(AI explanations)を組み込むことを求めている。しかし、この戦略の有効性は確立されていなかった。JAMA誌2023年12月19日号掲載の報告。

軽度の肥満は健康の印、GLP-1作動薬の効果は高度肥満者で示されているにすぎない(解説:名郷 直樹 氏)-1766

世の中は肥満に厳しくやせに寛容だ。なぜそんなことになっているのか。肥満と死亡の関係について言えば、日本人のコホート研究のメタ分析の結果で、BMIで23から25のあたりで死亡率が最も低くなっていると報告されている。ちょっと太めのほうが健康なのである。それにもかかわらず、ちょっと腹が出ている程度の肥満をメタボと呼び、軽度の肥満をもむしろ不健康と捉えている情報が大部分だ。やせの人を太らせる薬の臨床試験はないが、肥満のリスクばかりを強調する中、やせ薬として話題の薬、GLP-1作動薬の臨床試験が立て続けに報告されている。

食塩摂取量はどこまで減らせばいいのだろうか?(解説:石川讓治氏)

食塩摂取量がきわめて少ない民族においては高血圧の有病率が低いことが報告されてから、食塩摂取量の減少を試みる介入研究が幾つかされてきた。DASH研究において食塩6g/日以下にすることで有意に血圧低下が認められることが示され、現在の各国の高血圧治療ガイドラインにおいては食塩摂取量を1日6g以下にすることを推奨している。しかし、わが国の食塩摂取量は1日12~13g程度で、まだまだ目標レベルに程遠いのが現実である。本研究は、ナトリウム摂取量2,200mg(食塩として5.59g)/日の1週間継続、ナトリウム摂取量500mg(食塩として1.27g)/日の1週間継続をクロスオーバーデザインで行い、24時間平均自由行動下血圧の違いを評価した研究である。結果として、低ナトリウム食によって4mmHgの平均血圧低下が認められた。低ナトリウム食で73.4%の参加者で平均血圧が低下しており、食塩感受性が46%の参加者に認められている。低ナトリウム食の降圧効果は、対象者の年齢、性別、人種、高血圧の有無、ベースラインの血圧値、糖尿病、肥満度には影響を受けなかった。わずか1週間の減塩で血圧低下が起こることは非常に驚きであり、今後の患者指導で有用なデータであると考えられた。

PDE5阻害薬、子供を増やす可能性/BMJ

 勃起不全の薬物治療の標的として確立しているホスホジエステラーゼ5(PDE5)の阻害は、遺伝学的に服用した男性の子供の数を増加させる可能性があることが、英国・ブリストル大学のBenjamin Woolf氏らの検討で示された。PDE5阻害薬は勃起不全の治療としてよく用いられているが、男性患者の生殖能力、性行動、主観的なウェルビーイングに及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2023年12月12日クリスマス特集号「ANNUAL LEAVE」掲載の報告。

18歳未満の家族性高コレステロール血症への診断アプローチは?/Lancet

 世界では毎年約45万例の子供が家族性高コレステロール血症を患って誕生しているが、家族性高コレステロール血症の成人患者のうち、現行の診断アプローチ(成人で観察される臨床的特徴に基づく)により18歳未満で診断されるのは2.1%にすぎないという。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKanika Inamdar Dharmayat氏らの研究グループ「European Atherosclerosis Society Familial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration」らは、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(HeFH)の小児・思春期患者の臨床的特性を明らかにする検討を行い、成人で観察される臨床的特徴が小児・思春期患者ではまれで、検出には低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値測定と遺伝子検査に依存せざるを得ないことを明らかにした。しかし、世界の医療水準は画一ではないことを踏まえて、「遺伝子検査が利用できない場合は、生後数年間のLDL-C値測定の機会とその数値の使用率を高められれば、現在の有病率と検出率のギャップを縮めることができ、脂質低下薬の併用使用を増やして推奨されるLDL-C目標値を早期に達成できるようになるだろう」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年12月12日号掲載の報告。

RNA干渉治療薬パチシランはトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者の12ヵ月時の機能的能力を維持したが全死因死亡や心血管イベントは低下しなかった(解説:原田和昌氏)

ATTR心アミロイドーシスは、トランスサイレチンがアミロイド線維として心臓、神経、消化管、筋骨格組織に沈着することで引き起こされる疾患で、心臓への沈着により心筋症が進行する。パチシランは、脂質ナノ粒子に封入されたsiRNAの静脈注射剤で、RNA干渉により肝臓におけるトランスサイレチンの産生を抑制する。2019年にパチシラン(商品名:オンパットロ)は、APOLLO試験の結果に基づき、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの適応を取得している。