循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:98

重度虚血性左室収縮障害、薬物療法へのPCI上乗せ効果はあるか/NEJM

 重度虚血性左室収縮障害患者において、至適薬物療法に加え経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の実施は、全死因死亡または心不全による入院の低減には結び付かなかった。半年、1年後の左室駆出分画率(LVEF)は同等で、2年後のQOLスコアについても有意差はなかった。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのDivaka Perera氏らが、700例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2022年8月27日号で発表された。重度虚血性左室収縮障害患者においてPCIによる血行再建は、無イベント生存および左室機能を改善するが、至適薬物療法単独(心不全について個別に調整した薬物療法およびデバイス療法など)との比較検討は行われていなかった。

院外心停止昏睡への酸素補給療法、制限的vs.非制限的/NEJM

 院外心停止蘇生後昏睡の成人生存者に対する酸素補給療法について、動脈血酸素分圧(Pao2)の目標値を制限した場合と制限しない場合の死亡や重度障害、昏睡の発生率は、同等であることが示された。デンマーク・オーデンセ大学病院のHenrik Schmidt氏らが、789例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。これまで、院外心停止昏睡の生存者における人工呼吸器の適切な酸素目標値は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年8月27日号掲載の報告。  試験は院外心停止昏睡の成人生存者を対象に、2×2要因デザイン法を用いて行われた。

NSTE-ACS患者の死亡リスク評価、GRACE 2.0には限界が/Lancet

 非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)の患者における、Global Registry of Acute Coronary Events(GRACE)2.0スコアによる死亡リスクの評価では、女性患者の院内死亡を過小評価するという限界があるが、新たに開発されたGRACE 3.0スコアの性能は性別を問わず良好で、リスク層別化における男女間の差を削減することが、スイス・チューリヒ大学のFlorian A. Wenzl氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年9月3日号で報告された。  研究グループは、NSTE-ACS患者におけるGRACE 2.0スコアの性特異的な性能を評価し、疾患特性における性別を考慮した新たなスコア(GRACE 3.0と呼ぶ)の開発を目的に検討を行った(スイス国立科学財団などの助成を受けた)。

アトピー性皮膚炎、JAK阻害薬はVTE発生と関連するか?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者、とくにJAK阻害薬による治療を受ける患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高くなるなのか。これまで明らかになっていなかったこの懸念について、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らがシステマティック・レビューとメタ解析を行い、現状で入手可能なエビデンスで、ADあるいはJAK阻害薬とVTEリスク増大の関連を示すものはないことを明らかにした。著者は、「今回の解析結果は、臨床医がAD患者にJAK阻害薬を処方する際の参考となるだろう」としている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。  研究グループは、ADとVTE発生の関連を調べ、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発生リスクを評価した。

血管外ICD、誘発された心室性不整脈で高い除細動成功率/NEJM

 血管外植込み型除細動器(ICD)は、主に従来の経静脈ICDの血管リスクを回避するために開発が進められている。米国・メイヨークリニックのPaul Friedman氏らは、Extravascular ICD Pivotal Studyにおいて、血管外ICD(Medtronic製)は安全に植込みが可能で、植込み時に誘発された心室性不整脈を検出してこれを高率に停止でき、重大な合併症の頻度は高くないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月28日号に掲載された。  本研究は、血管外ICDの長期的な安全性と有効性の評価を目的とする前向きの非無作為化単群市販前試験であり、2019年9月~2021年10月の期間に、17ヵ国46施設で参加者の登録が行われた(Medtronicの助成による)。

スタチンによる筋肉痛・筋肉障害は本当?(解説:後藤信哉氏)

循環器医として、しばしばスタチンを処方している。心筋梗塞発症予防効果は臨床エビデンスから明確だが頭蓋内出血などの重篤な出血イベントが起こることも事実であるアスピリンと比較して、スタチンは心筋梗塞予防効果が確実でありながら、薬効と直結する重篤な副作用は明確ではない。すなわち、心筋梗塞の再発予防にも、多分初発予防にもスタチンは有用と思われる(筆者もLDLは高くないが時々飲んでいる)。スタチンの使用を始めたころ、「横紋筋融解症」のリスクが徹底教育された。幸いにして長年循環器医をしてスタチンを多用している筆者は、本物の「横紋筋融解症」を経験したことはない。スタチン開始直後に筋肉痛の症状を訴える症例に出合うことはまれではない。副作用の説明が重視される時代に、「筋痛があればすぐ受診してください」と教育されるために筋痛が多いのか、本当に薬の副作用として筋痛が多いのか、本当のところはわからなかった。

薬剤誘発性QT延長とトルサードドポアント~日本のリアルワールドデータ分析

 新規作用機序を有する薬剤が次々と開発されているが、前臨床および承認前の臨床試験において、該当医薬品がQT延長やトルサードドポアント(TdP)を誘発するかどうかを把握することは困難である。東京慈恵会医科大学のMayu Uchikawa氏らは、日本のリアルワールドデータベースを用いて、各薬剤の薬剤誘発性QT延長/TdPを評価した。その結果、抗不整脈薬、カルシウム感知受容体アゴニスト、低分子標的薬、中枢神経系用薬が、QT延長やTdPと関連する薬剤群であることが示唆された。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2022年8月22日号の報告。

左室駆出率の軽度低下または保持心不全、ダパグリフロジンが有効/NEJM

 左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)または保持された心不全(HFpEF)患者の治療において、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬であるダパグリフロジンはプラセボと比較して、心不全の悪化または死亡のリスクを有意に低減させるとともに、症状の負担を軽減し、有害事象の発現状況は同程度であることが、米国・ハーバード大学医学大学院のScott D. Solomon氏らが実施した「DELIVER試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月27日号で報告された。  DELIVER試験は、左室駆出率が軽度低下または保持された心不全患者の治療における、ダパグリフロジンの有効性と安全性の評価を目的とするイベント主導型の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2018年8月~2020年12月の期間に、日本を含む20ヵ国353施設で参加者のスクリーニングが行われた(AstraZenecaの助成による)。

スタチン投与時の筋症状、9割以上が関連なし/Lancet

 スタチンは動脈硬化性心血管疾患の予防に有効で、広く処方されているが、筋肉痛や筋力低下を引き起こす可能性が高いとの懸念が消えない。英国・オックスフォード大学のChristina Reith氏らCholesterol Treatment Trialists’(CTT)Collaborationは、大規模臨床試験の有害事象データを用いてスタチンの筋肉への影響について検討し、スタチン治療はプラセボと比較して、ほとんどが軽度の筋症状がわずかに増加したものの、スタチン治療を受けた患者で報告された筋症状の90%以上はスタチンに起因するものではなく、スタチンによる筋症状のリスクは心血管に対する既知の利益に比べればはるかに小さいことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年8月26日号に掲載された。

冠動脈の中等度狭窄、FFRガイド下PCI vs IVUSガイド下PCI/NEJM

 虚血性心疾患が疑われる中等度狭窄患者において、冠血流予備量比(FFR)ガイド下での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は血管内超音波法(IVUS)ガイド下と比較し、24ヵ月時点での死亡・心筋梗塞・再血行再建術の複合イベントの発生に関して非劣性であることが示された。韓国・ソウル大学病院のBon-Kwon Koo氏らが、韓国および中国の18施設で実施した無作為化非盲検試験「Fractional Flow Reserve and Intravascular Ultrasound-Guided Intervention Strategy for Clinical Outcomes in Patients with Intermediate Stenosis trial:FLAVOUR試験」の結果を報告した。冠動脈疾患患者のPCI評価において、血行再建術およびステント留置の決定にFFRまたはIVUSによるガイドを用いることができるが、両目的のためにどちらか一方のガイドを用いた場合の臨床アウトカムの差異は不明であった。NEJM誌2022年9月1日号掲載の報告。