循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:97

大腸がん術後の低分子ヘパリン、投与期間延長は有効か?/BMJ

 低分子量ヘパリンtinzaparinによる大腸がん切除術の周術期抗凝固療法は、投与期間を延長しても入院中のみの投与と比較して、静脈血栓塞栓症と術後大出血の発現率は両群で類似していたが、無病生存および全生存を改善しなかった。カナダ・オタワ大学のRebecca C. Auer氏らが、カナダ・ケベック州とオンタリオ州の12病院で実施した無作為化非盲検比較試験「PERIOP-01」の結果を報告した。低分子量ヘパリンは、前臨床モデルにおいてがん転移を抑制することが示されているが、がん患者の全生存期間延長は報告されていない。周術期は、低分子量ヘパリンの転移抑制効果を検証するのに適していると考えられることから、約35%の患者が術後に再発するとされる大腸がん患者を対象に臨床試験が行われた。BMJ誌2022年9月13日号掲載の報告。

日本人の脂質値の推移とコントロールの重要性(解説:三浦 伸一郎 氏)

 2022年8月23・30日号のJAMA誌に米国成人の脂質値の推移の研究が報告された。総コレステロール値は年齢調整後、2018年までの10年間で有意に改善していたが、注目されることはアジア人では改善を認めなかったことである。  日本人の脂質値の推移は、「健康日本21(第二次)」の計画の途中経過を見ると、2019年で血清総コレステロール値が240mg/dL以上の割合は男性12.9%、女性22.4%であった(「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」厚生労働省)。この10年間でみると、その割合は、男性で有意な変化はなかったが、女性では有意に増加していた。「健康日本21(第二次)」の脂質異常症(40~79歳)の減少目標は、総コレステロール240mg/dL以上の割合が男性10%、女性17%であり、かなり乖離があるのが現状である。

冠動脈造影/PCI時、コンピュータ支援で急性腎障害軽減/JAMA

 非緊急冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行する心臓専門医に対し、教育プログラムや造影剤投与量などに関するコンピュータによる監査とフィードバックを伴う臨床意思決定支援の介入を行うことで、これら介入のない場合と比べて施術を受けた患者が急性腎障害(AKI)を発症する可能性は低く、時間調整後絶対リスクは2.3%低下した。また、造影剤の過剰投与について同リスクの低下は12.0%だった。カナダ・カルガリー大学のMatthew T. James氏らが、心臓専門医34人とその患者を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果で、JAMA誌2022年9月6日号で発表した。AKIは、冠動脈造影やPCIでは一般的な合併症で、高コストおよび有害長期アウトカムと関連する。今回の結果について著者は、「こうした介入が今回の試験以外の環境下でも有効性を示すかどうか、さらなる検討が必要である」と述べている。

心不全のうっ血解除、アセタゾラミド追加で改善/NEJM

 体液過剰を伴う急性非代償性心不全患者の治療において、標準化されたループ利尿薬療法に炭酸脱水酵素阻害薬アセタゾラミドを追加すると、3日以内のうっ血解除(decongestion)の成功率が改善され、尿量やナトリウム利尿が増加して利尿効率が高くなり、有害事象の増加は認められないことが、ベルギー・Ziekenhuis Oost-LimburgのWilfried Mullens氏らが実施した「ADVOR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月27日号に掲載された。  ADVOR試験は、ベルギーの27施設が参加した医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年11月~2022年1月の期間に患者のスクリーニングが行われた(Belgian Health Care Knowledge Centerの助成を受けた)。

心血管疾患2次予防、ポリピルvs.通常ケア/NEJM

 心筋梗塞後6ヵ月以内の、アスピリン、ramipril、アトルバスタチンを含むポリピル治療は通常ケアと比べて、主要有害心血管イベント(MACE)リスクの有意な低下に結び付いたことが、スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares(CNIC)のJose M. Castellano氏らによる第III相無作為化試験「SECURE試験」で示された。転帰を改善する主要な薬剤(アスピリン、ACE阻害薬およびスタチン)を含むポリピルは、心筋梗塞後の2次予防(心血管死や合併症の予防)のための、簡易な手法として提案されている。結果を踏まえて著者は、「ポリピルは、治療を簡素化し入手可能性を改善するもので、治療のアクセシビリティとアドヒアランスを改善するために広く適用可能な戦略であり、結果として心血管疾患の再発および死亡リスクを低下するものである」とまとめている。NEJM誌2022年9月15日号掲載の報告。

収縮機能の良しあしにかかわらず心不全へのSGLT2阻害薬の有効性を確認、しかし副作用に対する注意は不可欠(解説:桑島巌氏)

糖尿病治療薬として開発されたSGLT2阻害薬がいまや心不全治療薬として大ブレークしている。心不全でも収縮機能が低下しているHFrEF(heart failure with reduced EF)に対する有効性は多くの大規模臨床試験で証明されていたが、収縮機能が良好な心不全(HFpEF)に対する有用性は明らかではなかった。しかしDELIVER試験(2021年)とEMPEROR-Preserved試験(2022年)という2つの大規模臨床試験によってHFpEFに対する有効性も確認され、心不全治療薬としての適応範囲は大きく広がる可能性が示された。

ハイリスク患者のPCI後のフォローアップ、定期心機能検査vs.標準ケア/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた高リスク患者において、PCI後1年時点で定期心機能検査を行うフォローアップ戦略は、標準ケアのみの場合と比較して、2年時点の臨床アウトカム改善に結び付かなかったことが、韓国・ソウルアサン病院のDuk-Woo Park氏らが1,706例を対象に行った無作為化試験の結果、示された。冠血行再建後のフォローアップ方法を特定するための無作為化試験のデータは限定的であり、今回検討したフォローアップ戦略については、明らかになっていなかった。NEJM誌2022年9月8日号掲載の報告。

ROSCした患者の血圧管理目標値はどのくらいがよいか?(解説:江口和男氏)

本研究は、院外心停止で蘇生され生存した昏睡状態の患者さんについて、平均血圧目標を63mmHgで保つ群と、77mmHgで保つ群にランダム化し予後を比較するという研究であった。主要アウトカムはあらゆる原因による死亡または神経学的予後不良状態での90日以内の退院の複合、2次アウトカムは血清神経特異エノラーゼ(NSE)レベル(高いと予後不良)、あらゆる原因による死亡、Montreal Cognitive Assessmentの点数(0~30の範囲で高いと認知機能良好)、そして、3ヵ月におけるmodified Rankin scaleおよびCerebral Performance Category(CPC)であった。

院外心停止蘇生昏睡患者の目標血圧値は?/NEJM

 院外心停止から蘇生した昏睡患者において、平均動脈圧目標値77mmHg(高値)群vs.63mmHg(低値)群で、全死因死亡、重篤な障害、または昏睡の割合に関して有意差は確認されなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学のJesper Kjaergaard氏らが、2×2要因デザインの無作為化二重盲検比較試験「Blood Pressure and Oxygenation Targets in Post Resuscitation Care trial:BOX試験」の結果を報告した。集中治療を受けている院外心停止昏睡生存者において、血圧目標値の選択に関するエビデンスは限定的だった。NEJM誌オンライン版2022年8月27日号掲載の報告。

観察研究でRCT模倣可能な“target trial emulation”/BMJ

 観察研究は研究デザインにかかわらず交絡の影響を受けやすいが、目標となる無作為化比較試験(RCT)の模倣が成功すれば、観察研究でRCTと同じ効果推定値が得られる。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnthony A. Matthews氏らは、観察研究にRCTの研究デザイン原則を適用した“target trial emulation”のプロセスを概説した。BMJ誌2022年8月30日号掲載の報告。  観察研究は、費用、倫理的観点あるいは迅速性などの理由でRCTを実施できない場合に、介入の有効性に関するエビデンスを提供することができる。しかし、観察研究は、無作為化されていないため交絡バイアスが存在するだけでなく、誤った研究デザインの選択(追跡調査開始時期の指定など)が自らバイアスを引き起こす可能性もあり、因果推論には課題がある。