循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:84

RNA干渉が切り開く、画期的な高血圧治療薬―zilebesiranの挑戦―(解説:石上友章氏)

核酸・DNAを鋳型にして、メッセンジャーRNAが転写される。4種類の塩基の組み合わせを暗号にして、20種類のアミノ酸に翻訳されることで、タンパク質の合成が行われる。人体は、さまざまなタンパク質から構成されており、染色体DNAは、人体の設計図である。RNA干渉(RNA interference)とは、2本鎖RNAが、いくつかのタンパク質と複合体を作り、相同な塩基配列を持つメッセンジャーRNAと特異的に対合し、切断することによって、遺伝子の発現を抑制する現象である。RNA干渉は、遺伝子の機能を人為的に抑制することに応用できるので、遺伝子機能解析のツールとして、実験室ではおなじみの技術であった。

がん患者の血栓症再発、エドキサバン12ヵ月投与が有効(ONCO DVT)/ESC2023

 京都大学の山下 侑吾氏らは、下腿限局型静脈血栓症(DVT)を有するがん患者に対してエドキサバンによる治療を行った場合、症候性の静脈血栓塞栓症(VTE)の再発またはVTE関連死の複合エンドポイントに関して、12ヵ月投与のほうが3ヵ月投与よりも優れていたことを明らかにした。本結果はオランダ・アムステルダムで8月25~28日に開催されたEuropean Society of Cardiology(ESC、欧州心臓学会)のHot Line Sessionで報告され、Circulation誌オンライン版2023年8月28日号に同時掲載された。

セファゾリンやダビガトラン、重大な副作用追加などで添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は8月29日、セファゾリンやダビガトランなど6つの医薬品の添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。  セファゾリンNa水和物(商品名:セファメジンα筋注用0.25g ほか)とセファゾリンNa(同:セファゾリンNa点滴静注用1gバッグ「オーツカ」 ほか)において、アレルギー反応に伴う急性冠症候群の国内症例(7例[死亡0例])を評価した結果、本剤とアレルギー反応に伴う急性冠症候群との因果関係の否定できない国内症例が集積したことから、副作用の項に『重大な副作用』を新設した。

PCI後のステント血栓症、P2Y12阻害薬+コルヒチンで減少~MACT Pilot Study

 PCI後の急性冠症候群(ACS)患者において、PCI翌日からアスピリンを中止、P2Y12阻害薬(チカグレロルまたはプラスグレル)に低用量コルヒチン(0.6mg/日)の併用が有効であることがMACT (Mono Antiplatelet and Colchicine Therapy) Pilot Studyより明らかになった。Journal of the American College of Cardiology Cardiovascular Interventions誌2023年8月14日号掲載の報告。  韓国・高麗大学九老病院のSeung-Yul Lee氏らは、ACS患者に対しPCI直後のチカグレロルまたはプラスグレルP2Y12阻害薬単独療法へのコルヒチン併用は実行可能性があるものなのかを調査するために本研究を行った。対象者は薬剤溶出性ステントで治療されたACS患者を含む200例。

静脈血栓塞栓症での長期投与の安全性、DOAC vs.ワルファリン

 静脈血栓塞栓症(VTE)に対する経口抗凝固薬の投与期間は、海外では初回3~6ヵ月の治療期間からの延長が推奨される場合があるが、直接経口抗凝固薬(DOAC)またはワルファリンの臨床アウトカムの違いは明らかにされていない。そこで、米国・カルフォルニア大学のMargaret C. Fang氏らが急性VTE患者を対象にDOACまたはワルファリンの抗凝固療法の6ヵ月以上の延長による「VTEの再発」「出血による入院」および「全死因死亡の割合」への影響を比較した。その結果、DOAC治療はVTEの再発リスク低下と関連し、臨床アウトカムの観点からVTEの長期治療にDOACの使用を支持すると報告した。JAMA Network Open誌2023年8月1日号掲載の報告。

高血圧への第1選択としての利尿薬vs.他の降圧薬~コクランレビュー

高血圧患者における死亡率、心血管イベントの発生率、有害事象による中止率などについて、第1選択薬としてのサイアザイド系利尿薬と他のクラスの降圧薬を比較したシステマティックレビューの結果を、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のMarcia Reinhart氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2023年7月13日号に報告した。  2021年3月までのCochrane Hypertension Specialized Register、CENTRAL、MEDLINE、Embase、および臨床試験登録が検索された。対象は1年以上の無作為化比較試験で、第1選択薬としての利尿薬と他の降圧薬の比較、および死亡率とその他のアウトカム(重篤な有害事象、総心血管系イベント、脳卒中、冠動脈性心疾患[CHD]、うっ血性心不全、有害作用による中止)が明確に定義されているものとした。

悪性リンパ腫のアントラサイクリンによる心機能障害、アトルバスタチンが抑制/JAMA

 アントラサイクリン系薬剤による治療が予定されているリンパ腫患者において、アトルバスタチンの投与はプラセボと比較して、アントラサイクリン系薬剤関連の心機能障害を有意に抑制し、心不全の発生には有意な差がないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のTomas G. Neilan氏らが実施した「STOP-CA試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年8月8日号で報告された。  STOP-CA試験は、米国とカナダの9つの施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験であり、2017年1月~2021年9月の期間に患者を登録し、2022年10月に追跡調査を終了した(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。

HIV感染者の心血管イベント、ピタバスタチンで35%減/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者において、ピタバスタチンはプラセボと比較し、追跡期間中央値5.1年で主要有害心血管イベントのリスクを低下することが示された。米国・マサチューセッツ総合病院のSteven K. Grinspoon氏らが12ヵ国145施設で実施した無作為化二重盲検第III相試験「Randomized Trial to Prevent Vascular Events in HIV:REPRIEVE試験」の結果を報告した。HIV感染者は、一般集団と比較して心血管疾患のリスクが最大2倍高いことが知られており、HIV感染者における1次予防戦略に関するデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2023年7月23日号掲載の報告。

NSCLCに対するICI+化学療法、日本人の血栓リスクは?

 がん患者は血栓塞栓症のリスクが高く、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やプラチナ製剤などの抗がん剤が、血栓塞栓症のリスクを高めるとされている。そこで、祝 千佳子氏(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)らの研究グループは、日本の非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるプラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法の血栓塞栓症リスクについて、プラチナ製剤を含む化学療法と比較した。その結果、プラチナ製剤を含む化学療法とICIの併用療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを上昇させたが、動脈血栓塞栓症(ATE)のリスクは上昇させなかった。本研究結果は、Cancer Immunology, Immunotherapy誌オンライン版2023年8月4日号で報告された。

成人の胸腺摘出、全死亡・がんリスクが増加/NEJM

 胸腺摘出を受けた患者は摘出を受けなかった対照群よりも、全死因死亡およびがんリスクが高いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のKameron A. Kooshesh氏らによる検討で示された。また、術前感染症、がん、自己免疫疾患を有する患者を除外した解析では、胸腺摘出は自己免疫疾患のリスクを増大すると思われる関連性もみられたという。成人における胸腺の機能は明らかになっていないが、さまざまな外科手術でルーチンに摘出が行われている。研究グループは、成人の胸腺は、免疫機能と全般的な健康の維持に必要であるとの仮説を立て、疫学的・臨床的・免疫学的解析評価で検証した。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。