循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:83

多枝病変の高齢心筋梗塞、完全血行再建術vs.責任病変のみ/NEJM

 心筋梗塞と多枝病変を有する75歳以上の患者の治療において、生理学的評価ガイド下(physiology-guided)完全血行再建術は、責任病変のみへの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と比較して、1年後の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術の複合アウトカムのリスクが低下し、安全性アウトカムの指標の発生は同程度であったことが、イタリア・フェラーラ大学病院のSimone Biscaglia氏らが実施した「FIRE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年9月7日号で報告された。

拡張型心筋症の遺伝子構造はアフリカ系と欧州系患者とで異なっている(解説:原田和昌氏)

次世代シークエンスを用いた網羅的な心筋症遺伝子解析による心筋症の病態解明とそれを用いたプレシジョン・メディシンに期待が集まっている。米国・DCMコンソーシアムのDCM Precision Medicine Studyのこれまでの調査によれば、拡張型心筋症(DCM)患者の約30%が家族性DCMであり、黒人のDCM患者は白人のDCM患者よりも家族性DCMのリスクが高くアウトカムが不良であった。しかし、DCMのゲノムデータの大半は白人患者のものであった。米国・オハイオ州立大学のJordan氏らは、DCMに関係する36の遺伝子について、アフリカ系、欧州系、ネイティブ・アメリカンの患者を対象に、ゲノム祖先ごとに変異遺伝子構造を比較した。アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者は、欧州系のゲノム祖先を持つDCM患者と比較し、病原性/病原性の可能性と判定できる、臨床的に治療標的として介入が期待される変異遺伝子(バリアント)を有する割合が低かった。

心原性ショックを伴う急性心筋梗塞、VA-ECMOの有用性は?/NEJM

 心原性ショックを伴う急性心筋梗塞で早期血行再建を行う患者において、体外式生命維持装置(ECLS)とも呼ばれる静脈動脈-体外式膜型人工肺(VA-ECMO)を用いた治療は、薬物治療のみと比較し30日全死因死亡リスクを低下せず、むしろ中等度または重度の出血や治療を要する虚血性末梢血管疾患のリスクを高めることが示された。ドイツ・ライプチヒ大学のHolger Thiele氏らが、ドイツとスロベニアで行われた医師主導の多施設共同無作為化非盲検試験「ECLS-SHOCK試験」の結果を報告した。死亡に対するECLSの有効性に関するエビデンスはないにもかかわらず、梗塞関連心原性ショックの治療におけるECLSの使用が増加していた。NEJM誌オンライン版2023年8月26日号掲載の報告。

LBBB+正常房室伝導の心不全、adaptive CRT vs.従来型CRT/Lancet

 左脚ブロックと正常房室伝導を有する心不全患者において、従来の心臓再同期療法(CRT)と比較し、左心室のみを刺激して自己の正常な右脚伝導と融合させる連続自動最適化(左心室同期刺激)のCRT(adaptive CRT)は、全死因死亡または非代償性心不全への治療介入の発生率を有意に低下させなかった。米国・クリーブランドクリニックのBruce L. Wilkoff氏らが、アジア、オーストラリア、欧州、北米の27ヵ国の227施設で実施された国際共同前向き単盲検無作為化試験「AdaptResponse試験」の結果を報告した。左脚ブロックと正常房室伝導を有する心不全患者において、adaptive CRTは従来の両室CRTより良好な結果をもたらす可能性があり行われた試験であったが、結果について著者は、「死亡率および心不全増悪はいずれのCRTでも低かったことから、本試験の患者集団は先行研究の患者集団よりCRTに対する反応が高いことが示唆される」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年8月24日号掲載の報告。

OCTガイド下PCI、標的血管不全を低減せず/NEJM

 複雑な冠動脈病変などに対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)について、光干渉断層撮影(OCT)ガイド下の施行は血管造影ガイド下の施行と比較し、最小ステント面積は大きかったが、2年時点での標的血管不全が発生した患者の割合については両群間で差はみられなかった。米国・Cardiovascular Research FoundationのZiad A Ali氏らが、国際多施設共同にて2,487例を対象に行った前向き無作為化単盲検試験の結果を報告した。OCTガイド下でPCIを施行した後の臨床アウトカムに関するデータは、血管造影ガイド下のPCIと比べて限定的だった。NEJM誌オンライン版2023年8月27日号の報告。

心筋梗塞による心原性ショック、VA-ECMO vs.薬剤単独/Lancet

 梗塞関連心原性ショックの患者において、静脈動脈-体外式膜型人工肺(Venoarterial extracorporeal membrane oxygenation:VA-ECMO)は薬物療法単独と比較して30日死亡率が低下せず、重大出血および血管合併症を増加することが、ドイツ・Institut fur HerzinfarktforschungのUwe Zeymer氏らによるメタ解析の結果で示された。VA-ECMOをめぐっては、無作為化試験による確たるエビデンスが不足しているにもかかわらず、心原性ショックの患者への使用が増加傾向にある。先行研究の3試験では、生存ベネフィットの検出力が不十分であった。今回示されたメタ解析の結果を踏まえて著者は、「梗塞関連心原性ショックの患者にVA-ECMOを適応するのか、慎重に検討すべきであることが確認された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年8月25日号掲載の報告。

CVD2次予防でのアスピリン、低所得国では不十分/JAMA

 アスピリンは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(CVD)のイベントを減少させ、CVD既往例の死亡率を改善する効果的で安価な選択肢とされる。米国・セントルイス・ワシントン大学のSang Gune K. Yoo氏らは、CVDの2次予防においてアスピリンは世界的に十分に使用されておらず、とくに低所得国での使用が少ないことを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号で報告された。  研究グループは、51の低・中・高所得国で2013~20年に実施された全国的な健康調査から収集した個々の参加者のデータを用いて横断研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。

ASCVDリスク評価、タンパク質リスクスコアが有望/JAMA

 アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスク評価において、プロテオミクスに基づくタンパク質リスクスコア(protein risk score)は、1次および2次予防集団の双方で優れた予測能を示し、1次予防集団で臨床的リスク因子にタンパク質リスクスコアと多遺伝子リスクスコアを加えると、統計学的に有意ではあるもののわずかな改善が得られたことが、アイスランド・deCODE genetics/AmgenのHannes Helgason氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号に掲載された。

病院機能評価「医療安全」への対策強化で「カルテレビュー」導入へ

 最近では紙カルテ(診療録)から電子カルテへの普及が進み、病院のみならずクリニックでの導入も多くみられるようになった。また、国が推進するマイナンバーカードによる健康保険証には、個人のカルテ情報の搭載も予定され、いつでも、どこでも自分のカルテが読める時代が期待されている。そんなカルテは、医療事故などが発生した場合、真っ先に調査が行われる患者や患者遺族、医療機関などにとって事故と結果の因果関係を証明する大切な資料となるが、カルテの中身の記載については個々の医師の判断に任されている。

DOAC内服AF患者の出血リスク、DOACスコアで回避可能か/ESC2023

 心房細動患者における出血リスクの評価には、HAS-BLEDスコアが多く用いられているが、このスコアはワルファリンを用いる患者を対象として開発されたものであり、その性能には限界がある。そこで、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul Aggarwal氏らは直接経口抗凝固薬(DOAC)による出血リスクを予測する「DOACスコア」を開発・検証した。その結果、大出血リスクの判別能はDOACスコアがHAS-BLEDスコアよりも優れていた。本研究結果は、オランダ・アムステルダムで2023年8月25日~28日に開催されたEuropean Society of Cardiology 2023(ESC2023、欧州心臓病学会)で発表され、Circulation誌オンライン版2023年8月25日号に同時掲載された。