循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:169

serelaxin、急性心不全の予後改善せず/NEJM

 急性心不全で入院した患者の治療において、serelaxinの静注はプラセボに比べ、180日時の心血管系の原因による死亡および5日時の心不全の悪化の発生率を改善しないことが、イタリア・ブレシア大学のMarco Metra氏らが行ったRELAX-AHF-2試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年8月22日号に掲載された。リラキシンは、妊娠中に観察される心血管や腎臓の機能の変化に寄与するホルモンであり、末端器官では血管拡張、抗線維化、抗炎症作用を示す。serelaxinは、ヒトリラキシン-2の遺伝子組み換え製剤であり、血管拡張作用(うっ血を軽減)と直接的な臓器保護作用の双方により効果を発揮する。先行研究のRELAX-AHF試験では、プラセボに比べ入院中の心不全の悪化の発生率が低く、探索的解析により180日時の心血管死の発生率が低い可能性が示唆されていた。

TAVI周術期の脳卒中は減少していない(解説:上妻謙氏)-1109

経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は高齢者心不全の原因の1つとなっている大動脈弁狭窄症(AS)に対する根本的介入を行うもので、手術ハイリスク、超高齢者に対する治療として早くから第1選択となっていたが、すでに無作為化試験のエビデンスがそろって、米国FDAは手術低リスクの症例にまで適応を拡大した。本論文は米国の胸部外科学会(STS)と米国心臓病学会(ACC)の合同で行われている経カテーテル弁膜症治療に関するTranscatheter Valve Therapy(STS/ACC TVT)Registryデータを用いた、大規模データベース研究の結果である。

がんサバイバーの多くが中長期のCVDリスク増加/Lancet

 がんサバイバーのほとんどで、がん部位別でかなり違いはあるものの、一般集団と比較して心血管疾患の中~長期リスクの増加が確認された。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のHelen Strongman氏らが、がんサバイバーにおける心血管リスクの定量化を目的とする電子医療記録データベースを用いたコホート研究の結果を報告した。過去数十年で、がんの生存率は顕著に改善してきたが、サバイバーの長期的な心血管リスクについては懸念が指摘されている。しかし、さまざまながんサバイバーにおける心血管疾患の予防や管理に関するエビデンスが不足していた。Lancet誌オンライン版2019年8月20日号掲載の報告。

QRISK2スコアを用いた心血管リスク管理(解説:石川讓治氏)-1108

英国においては、心血管リスク予測指標としてQRISK2スコアが使用されており、Framinghamリスクスコアよりも心血管イベントの予測率が高かったことが報告されている。本研究においては、Herrettらは、英国のプライマリーケアにおける122万2,670名の患者の医療情報の後ろ向きコホート研究において、QRISK2スコア、英国の高血圧治療ガイドライン、血圧閾値単独の4つの手法を用いて、10年後の心血管リスクを推定した。その結果、10年間における1心血管イベント抑制のためのNNTは、QRISK2スコア27名、NICE2011 28名、NICE2019 29名、血圧閾値38名であり、QRISK2を用いた心血管リスク評価および管理が最も効果的であると報告した。

悪性黒色腫におけるBRAF阻害薬・MEK阻害薬併用の心血管リスク

 悪性黒色腫患者の治療におけるBRAF阻害薬・MEK阻害薬併用療法による心血管有害事象の特徴が明らかになった。ドイツ・エッセン大学病院のRaluca I. Mincu氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、BRAF阻害薬・MEK阻害薬併用療法はBRAF阻害薬単独療法と比較し心血管有害事象のリスクが高いことが示された。著者は「今回の結果は、悪性黒色腫治療の有益性と、心血管疾患の発症および死亡とのバランスをとるのに役立つと思われる」とまとめている。JAMA Network Open誌2019年8月2日号掲載の報告。

心血管リスク、禁煙後何年で低下するのか/JAMA

 ヘビースモーカー(20パック年以上喫煙)の心血管疾患(CVD)リスクは、禁煙後5年未満で、現喫煙者と比較して約4割減少するが、非喫煙者との比較では禁煙から5年以上を経過しても有意に高いままであることが示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのMeredith S. Duncan氏らが、フラミンガム心臓研究の被験者のデータを解析し明らかにしたもので、JAMA誌2019年8月20日号で発表した。禁煙後のCVDリスクの時間的経過は明らかになっていない。試算では元喫煙者のリスクは5年のみと考えられていた。

強化降圧治療、脳白質病変容積の増加が少ない/JAMA

 成人高血圧患者では、収縮期血圧(SBP)の降圧目標値を120mmHg未満とする強化降圧治療は140mmHg未満とする標準降圧治療に比べ、脳白質病変の容積の増加が少ないものの、その差は大きくないことが、米国・ペンシルベニア大学のIlya M. Nasrallah氏らが行ったSPRINT MIND試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年8月13日号に掲載された。強化降圧治療は、心血管疾患による合併症や死亡を抑制することが証明されているが、脳の健康への影響は明確でないという。疫学データでは、高血圧は脳白質病変の主要なリスク因子とされる。

高血圧スクリーニングの脳心血管病予防効果から学ぶべきこと(解説:有馬久富氏)-1107

中国全土の高齢者を対象としたChinese Longitudinal Healthy Longevity Surveyの成績から、高血圧と診断されたことのない高齢者における血圧測定および発見された高血圧者に対する生活指導・受診勧奨が2~3年後の収縮期血圧を平均で8mmHgも低下させることが明らかとなり、BMJに報告された1)。一般住民における血圧がこれほど劇的に低下した場合、脳心血管病は20~30%減少するものと期待される2)。本研究で有効性の示された高血圧スクリーニングおよび指導は、健診が一般的に行われていない低・中所得国において、有効かつ費用対効果の高い脳心血管病予防戦略となると考えられる。

ダパグリフロジンがHFrEF患者で主要評価項目達成、同クラスで初/AstraZeneca

 AstraZeneca(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者:パスカル・ソリオ)は2019年8月26日までに、ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の心不全に対する有効性を検討した第III相DAPA-HF試験において、主要評価項目を達成したことを発表した。2型糖尿病合併の有無を問わず、心不全患者の標準治療への追加治療として、SGLT2阻害薬の有効性および安全性が実証されたのは初となる。  第III相DAPA-HF試験は、2型糖尿病合併および非合併の成人HFrEF(左室駆出率が低下した心不全)患者を対象に、心不全の標準治療(アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬[MRA]およびネプライシン阻害薬を含む薬剤)への追加療法としてのダパグリフロジンの有効性を検討した、国際多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験。

ビタミンD補給、がん死リスクを低下/BMJ

 成人におけるビタミンD補給は、プラセボまたは非補給と比較して、全死因死亡の低下とは関連しないが、がん死リスクを16%低下することが示された。中国・Affiliated Hospital of Chengdu UniversityのYu Zhang氏らが、無作為化試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。これまでの観察研究で、低用量のビタミンDはがんや心血管疾患といった命に関わる疾患による死亡の増大と関連することが示されていた。一方で、ビタミンD補給による死亡の減少効果に関する臨床データには一貫性がなかった。BMJ誌2019年8月12日号掲載の報告。