救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

重症小児の全身酸素化、SpO2目標低めがアウトカム良好/Lancet

 小児集中治療室(PICU)に緊急入室し侵襲的換気療法を受ける小児において、制限的目標酸素投与(conservative oxygenation target)は、非制限的目標酸素投与(liberal oxygenation target)と比較して、30日時点の臓器支持期間または死亡について、良好なアウトカムを得られる可能性が、わずかではあるが有意に高いことが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMark J. Peters氏らが、2,040例の小児を対象に行った多施設共同非盲検並行群間比較無作為化試験「Oxy-PICU試験」の結果を報告した。重症小児患者における最適な目標酸素投与量は明らかになっていない。非制限的酸素投与は広く行われているが、小児患者では害を与えるとされていた。結果を踏まえて著者は、「制限的な酸素飽和度目標値(SpO2:88~92%)を広く取り入れることは、PICUに入室する重症小児患者のアウトカム改善およびコスト削減に役立つだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。

MRI検査室への強磁性体の持ち込み、いかに危険か/BMJ

 硬貨やカトラリー、ビスケット缶などの医療現場で一般的にみられる物品が、意図せずに磁気共鳴画像診断装置(MRI)のある部屋に持ち込まれた場合、重大な人体組織損傷や骨折といった危害が生じる可能性があり、患者および医療従事者はMRI環境への強磁性体の持ち込みに伴う危険性を十分に認識する必要があることが、シンガポール・国立大学病院(NUH)のShao J. Ong氏らが実施した「CHRISTMAS研究」で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年12月21日号クリスマス特集号「MARGINAL GAINS」で報告された。

米国の包括的プライマリケア+、手挙げ診療所は増収/JAMA

 包括的プライマリケアプラス(Comprehensive Primary Care Plus:CPC+)は、サービス利用率の低下および急性期入院医療費の減少と関連していたが、5年間の総支出額の減少とは関連していなかったことが、米国・MathematicaのPragya Singh氏らによる検討で示された。CPC+は米国の18地域で導入された最大の検証済みプライマリケア提供モデル。その健康アウトカムとの関連を明らかにすることは、将来の転換モデルを設計するうえで重要とされていた。JAMA誌オンライン版2023年12月15日号掲載の報告。

パンデミック中の自損行為による救急搬送の実態

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中の自損行為による大阪府での救急搬送の実態が報告された。年齢別の解析で、20歳代では2020年の自損行為による搬送数がパンデミック前よりも有意に増加していたという。大阪大学医学部附属病院高度救命救急センターの中尾俊一郎氏らの研究結果であり、詳細は「BMJ Open」に9月12日掲載された。  パンデミック下で行われた外出自粛や会食の制限などは、感染拡大抑止には一定の効果があったと考えられるが、一方で人々のメンタルヘルスに負の影響を与えた可能性が指摘されている。また、パンデミック中に発生した非正規雇用者の解雇なども、同じような影響を及ぼしたと考えられる。加えて海外からは、パンデミック中に自損行為の発生率が上昇したとする研究結果が報告されている。これらを背景として中尾氏らは、国内でもパンデミックの発生後に自損行為による救急搬送件数が増加していた可能性を想定し、大阪府全域の救急搬送に関する情報を集約している「大阪府救急搬送支援・情報収集・集計分析システム(ORION)」のデータを用いた検討を行った。

食塊による食道完全閉塞、コーラで改善するか/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学医療センターのE G Tiebie氏らは、多施設共同無作為化非盲検比較試験において、コーラの摂取は食塊による完全な食道閉塞の改善率を高めないことを報告した。食塊による完全な食道閉塞に対しては、現在、侵襲的で高額な医療費を伴う緊急内視鏡治療が望ましいとされ、ガイドラインでは内視鏡の施行が遅れないとの前提で内視鏡前の内科的治療が認められている。一方で、コホート研究や症例シリーズで、コーラの摂取により59~100%の患者で食塊による食道閉塞が改善したことが報告されていた。BMJ誌2023年12月11日クリスマス特集号「FOOD AND DRINK」掲載の報告

日本人コロナ患者で見られる肥満パラドックス

 日本人では、肥満は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスク因子ではない可能性を示唆するデータが報告された。肥満ではなく、むしろ低体重の場合に、COVID-19関連死のリスク上昇が認められるという。下関市立市民病院感染管理室の吉田順一氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Medical Sciences」に9月11日掲載された。  古くから「肥満は健康の敵」とされてきたが近年、高齢者や心血管疾患患者などでは、むしろ太っている人の方が予後は良いという、「肥満パラドックス」と呼ばれる関連の存在が知られるようになってきた。COVID-19についても同様の関連が認められるとする報告がある。ただし、それを否定する報告もあり、このトピックに関する結論は得られていない。吉田氏らは2020年3月3日~2022年12月31日までの同院の入院COVID-19患者のデータを用いて、この点について検討した。

重症ARDS、ECMO中の腹臥位は無益/JAMA

 重症急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で静脈脱血・静脈送血の体外式膜型人工肺(VV-ECMO)による治療を受けている患者において、腹臥位療法は仰臥位療法と比較し、ECMO離脱成功までの期間を短縮しなかった。フランス・ソルボンヌ大学のMatthieu Schmidt氏らが、同国14施設の集中治療室(ICU)で実施した医師主導の無作為化並行群間比較試験「PRONECMO試験」の結果を報告した。腹臥位療法は重症ARDS患者の転帰を改善する可能性が示唆されているが、VV-ECMOを受けているARDS患者に対して、仰臥位療法と比較し臨床転帰を改善するかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。

外傷患者への人工呼吸器の深呼吸機能は有効か/JAMA

 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のリスク因子を有し、人工呼吸器による管理を受けている外傷患者では、通常ケア単独と比較して、通常ケアに人工呼吸器による深呼吸を追加しても、28日目まで人工呼吸器不要日数は増加しないが、死亡率は改善したとの結果が、米国・コロラド大学のRichard K. Albert氏らが実施した「SiVent試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年11月28日号で報告された。  SiVent試験は、米国の15の外傷治療施設が参加した実践的な無作為化試験であり、2016年4月~2022年9月の期間に患者の無作為化を行った(Department of Defense Peer-Reviewed Medical Research Program Clinical Trial Awardの助成を受けた)。  年齢18歳以上、人工呼吸器の使用時間が24時間未満の外傷患者で、ARDS発症の5つのリスク因子のうち1つ以上を有し、今後の人工呼吸器の使用時間が24時間以上、生存期間が48時間以上と予測される患者524例(平均年齢43.9[SD 19.2]歳、男性75.2%)を登録し、通常ケア+人工呼吸器による深呼吸を行う群(深呼吸群)に261例、通常ケアのみを行う群(通常ケア群)に263例を無作為に割り付けた。

急性中毒疑いの昏睡患者、非侵襲的気道管理は有効か/JAMA

 急性中毒が疑われる昏睡状態の患者では、気管挿管を行わない保存的な治療は通常治療と比較して、院内死亡、集中治療室(ICU)入室期間、入院期間の複合エンドポイントに関してより大きな臨床的有益性をもたらし、挿管に伴う有害事象や肺炎も少ないことが、フランス・ソルボンヌ大学のYonathan Freund氏らが実施した「NICO試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年11月29日号に掲載された。  NICO試験は、フランスの20の救急診療部と1つのICUが参加した非盲検無作為化臨床試験であり、2021年5月~2023年4月に患者の無作為化を行った(フランス保健省の助成を受けた)。

パンデミックで急性アルコール中毒による救急搬送が有意に減少

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの最中に、急性アルコール中毒による救急搬送件数が有意に減少していたことが明らかになった。住民の飲酒量が多いことで知られる高知県のデータを解析した結果であり、高知大学医学部環境医学の南まりな氏、災害・救急医療学の宮内雅人氏らによる論文が、「Alcohol」に9月20日掲載された。  COVID-19パンデミックにより人々の生活が一変し、それにより救急搬送される患者の傾向にも変化が生じている。例えば交通事故による外傷が減り、ストレスが発症に関与しているたこつぼ心筋症が増えたことなどが報告されている。一方、飲酒行動に関しては、飲食店の時短営業や入店制限などによる飲酒機会の減少と、ストレス負荷による自宅での飲酒量の増大という相反する影響が考えられるが、南氏らが2020年春というパンデミック初期に高知県で行った研究では、急性アルコール中毒による救急搬送が減少していたことが明らかになっている。今回の研究では、パンデミックが長期化した以降もそのような傾向が継続しているのか否かを検証した。