泌尿器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

手術ロボットが動画で手術手順を学習

 ロボットが初めて、経験豊富な外科医による手術動画を見て学習し、その手術手技を人間の医師と同じくらい巧みに実行できたとする研究結果が、米ジョンズ・ホプキンス大学のAxel Krieger氏らにより報告された。研究グループは、「このような模倣学習を利用して手術ロボットをトレーニングすることにより、手術中に必要な手技を逐一プログラムする必要がなくなり、ロボットが人間の手助けなしで複雑な手術を行えるようになることが期待される」と述べている。この研究結果は、ロボット学習学会(CoRL 2024、11月6〜9日、ドイツ・ミュンヘン)で発表された。

患者はどう考えている?前立腺がんの治療選択/AZ

 新たな薬剤が登場し、個別化医療が進む前立腺がん。その治療選択を考えるうえで、共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)の重要性が増している。  アストラゼネカは2024年10月、「いま知っておきたい!前立腺がん~西川 貴教さんと学ぶ、前立腺がんと向き合うための医師とのコミュニケーションのポイント~」と題したメディアセミナーを開催。上村 博司氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科 診療教授)、前立腺がん体験者の武内 務氏(NPO法人 腺友倶楽部 理事長)、アーティストの西川 貴教氏らが登壇した。

オメガ3・6脂肪酸の摂取はがん予防に有効か

 多価不飽和脂肪酸(PUFA)のオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の血中濃度は、がんの発症リスクと関連していることが、新たな研究で示唆された。オメガ3脂肪酸の血中濃度が高いことは、結腸がん、胃がん、肺がん、肝胆道がんの4種類のがんリスクの低下と関連し、オメガ6脂肪酸の血中濃度が高いことは、結腸がん、脳、メラノーマ、膀胱がんなど13種類のがんリスクの低下と関連することが明らかになったという。米ジョージア大学公衆衛生学部のYuchen Zhang氏らによるこの研究の詳細は、「International Journal of Cancer」に10月17日掲載された。Zhang氏は、「これらの結果は、平均的な人が食事からこれらのPUFAの摂取量を増やすことに重点を置くべきことを示唆している」と述べている。

手術目的の入院患者の有害事象、多くは予防可能/BMJ

 米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のAntoine Duclos氏らは、多施設共同後ろ向きコホート研究の結果、手術目的で入院した患者の3分の1以上で有害事象が確認され、そのうちの約半数が重大な有害事象であり、また多くが予防できた可能性があることを明らかにした。これまでの研究では、2018年のすべての入院医療で入院患者の約4人に1人に有害事象が認められたことが報告されているが、外科手術(周術期を含む)における有害事象の発生と主な特徴について、最新の評価が必要とされていた。著者は、「今回の結果は、周術期医療全体で、すべての医療従事者が関与し患者の安全性向上を進めていく必要性がきわめて高いことを強調している」とまとめている。BMJ誌2024年11月13日号掲載の報告。

CAVI高値のCAD患者は発がんリスクが高い

 冠動脈疾患(CAD)の治療を受けた患者の中で、心臓足首血管指数(CAVI)が高く動脈硬化がより進行していると考えられる患者は、その後の発がんリスクが高いことを示すデータが報告された。福島県立医科大学循環器内科の清水竹史氏らによる研究の結果であり、詳細が「Circulation Reports」9月号に掲載された。  近年、がん患者は心血管疾患(CVD)リスクが高く、CVD患者はがんリスクが高いという相関の存在が明らかになり、両者に関与するメカニズムとして慢性炎症などを想定した研究も進められている。しかし、動脈硬化のマーカーと発がんリスクとの関連についてはまだ知見が少ない。清水氏らは、同大学附属病院の患者データを用いた前向き研究により、この点を検討した。

尿路上皮がん1次治療の更新は30年ぶり、ペムブロリズマブ+EV併用療法とは/MSD

 2024年9月24日、根治切除不能な尿路上皮がんに対する1次治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)とネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)エンホルツマブ ベドチン(商品名:パドセブ、以下EV)の併用療法および、ペムブロリズマブ単独療法(プラチナ製剤を含む化学療法が選択できない場合のみ)が、本邦で適応追加に関する承認を取得した。尿路上皮がんの標準1次治療の更新としては30年ぶりとなる。10月31日、MSD主催のメディアセミナーが開催され、菊地 栄次氏(聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科学)が「転移性尿路上皮癌治療“ペムブロリズマブ+エンホルツマブ ベドチンへの期待”」と題した講演を行った。

固形がんにMRD検査は有用か?学会がガイダンスを作成/日本癌治療学会

 日本癌治療学会は、固形がんを対象に、がん種横断的にMRD検査の最新エビデンスを集め、検査の適正利用・研究を目指すことを目的としたガイダンス「分子的残存病変(molecular residual disease:MRD)検査の適正臨床利用に関する見解書 第1版」(日本癌治療学会:編、日本臨床腫瘍学会・日本外科学会:協力)を作成し、2024年10月に学会サイト上で公開した。  MRDは、抗がん剤の投与などにより一定の治療効果が確認された後も患者の体内に残る微小なレベルのがん病変を指す。もともとは造血器腫瘍における研究が先行しており、2024年4月には米国食品医薬品局(FDA)の委員会がMRDを多発性骨髄腫の臨床開発のエンドポイントとすることを認めるなど、研究・臨床への応用が進む。固形がんにおいても、血液を用いたリキッドバイオプシー検査の臨床導入を契機に、大腸がんなどを中心にMRD評価による再発リスク層別化を検証する臨床試験が多数行われ、臨床応用や保険承認を目指す流れができつつある。今回のガイダンスもこのような背景から作成されたものだ。

心臓以外の大手術前のレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬使用継続は少なくとも予後や合併症に悪影響は与えない(解説:浦信行氏)

生体の血圧維持には主に交感神経系やRAS系の関与が大きな役割を担う。大手術では麻酔による影響で交感神経系が抑制されるが、その状況でRASを抑制すると血圧維持に支障を来たして重症低血圧を引き起こし、生命予後悪化や臓器障害の原因になりかねない。一方ではRAS阻害薬は降圧作用に加えて心血管系や腎臓を中心とした臓器保護作用を有し、継続したほうが良いとの考えもある。これまでの各国のガイドラインでも、継続を推奨するものと中止を推奨するものが相半ばし、明確な結論は出ていなかった。最近の比較的大規模の臨床試験でも継続群の合併症が有意に多く、また術中低血圧発症も有意に多かったとの報告を見る一方で、術中低血圧発症は有意に多かったが合併症に差がなかったとの報告も見られる。

高リスクmHSPCに対するアビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドの比較~日本のリアルワールドデータ

 転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対する、アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドという3剤のアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)の有効性と安全性を比較した多施設共同研究の結果、全生存期間(OS)、がん特異的生存期間(CSS)、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)までの期間について、3剤の差はみられなかった。東京慈恵会医科大学の柳澤 孝文氏らによるProstate誌オンライン版2024年10月17日号掲載の報告。  本研究では、2015年9月~2023年12月にARPI+アンドロゲン除去療法を受けたmHSPC患者668例の記録を後ろ向きに解析した。LATITUDE基準に基づき、アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドの比較は高リスク患者のみで行われ、前立腺特異抗原(PSA)低下率95%および99%達成などのPSA反応、OS、CSS、CRPCまでの期間、有害事象(AE)の発生率が比較された。すべての2群間比較において、交絡因子の影響を最小化するために傾向スコアマッチングが用いられた。

低~中リスク限局性前立腺がん、体幹部定位放射線治療は有効か/NEJM

 低~中リスクの限局性前立腺がん患者の放射線治療において、従来の分割照射法または中程度の寡分割照射法と比較して、5分割の体幹部定位放射線治療(SBRT)は、生化学的再発または臨床的再発に関して非劣性であり、有効な治療選択肢となる可能性があることが、英国・Royal Marsden HospitalのNicholas van As氏らが実施した「PACE-B試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年10月17日号に掲載された。  PACE-B試験は、限局性前立腺がん患者において、生化学的再発または臨床的再発に関して、従来の分割照射法または中程度の寡分割照射法に対するSBRTの非劣性の検証を目的とする第III相非盲検無作為化対照比較非劣性試験であり、2012年8月~2018年1月に3ヵ国(英国、アイルランド、カナダ)の38施設で患者を登録した(Accurayの助成を受けた)。