呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:316

喘息小児へのアセトアミノフェンは回避すべきなのか/NEJM

 軽症持続型喘息の小児に対し、発熱や痛みなどの際に、必要に応じてアセトアミノフェンを投与しても、イブプロフェン投与と比較して、喘息急性増悪の頻度や、喘息コントロール日数の割合などは、同等であることが明らかにされた。米国・ハーバード大学医学部のW.J. Sheehan氏らが行った、前向き多施設共同の無作為化二重盲検並行群間試験の結果で、NEJM誌2016年8月18日号で発表した。小児へのアセトアミノフェンの頻繁な投与と、喘息合併症との関連を示唆する先行試験の結果から、喘息小児へのアセトアミノフェン投与の回避を推奨する医師もいるが、この関連性について適切なデザインで評価した試験はなかったという。

受動喫煙で肺がんリスクが1.3倍~わが国のメタ解析

 これまで、わが国での受動喫煙と肺がんとの関連についてはシステマティックに評価されていなかった。今回、国立がん研究センターの堀 芽久美氏らが実施した、非喫煙者の受動喫煙と肺がんとの関係についてのシステマティックレビューとメタ解析で、成人期における家庭内受動喫煙で肺がんリスクが有意に増加することが示唆された。Japanese journal of clinical oncology誌オンライン版2016年8月10日号に掲載。

ラムシルマブは肺がん治療に新たな可能性をもたらすか?

 2016年8月4日、イーライリリー主催のプレスセミナー「肺がんに新たな治療選択肢『サイラムザ』登場」が開催された。そのなかで、神奈川県立がんセンター 呼吸器内科医長の加藤 晃史氏は「進行・再発非小細胞肺がん治療におけるサイラムザの位置づけ」と題し、ラムシルマブ(商品名:サイラムザ)の肺がんに対する新たな知見を紹介した。

アーミッシュの生活環境が喘息リスクの低下に関与/NEJM

 アーミッシュとフッタライト(いずれもキリスト教の一派で、伝統的な生活様式で農業を営むコミュニティ集団)の子供たちは、生活様式や遺伝的系統が類似しているにもかかわらず喘息有病率が大きく異なっていた。その背景には自然免疫反応の形成や誘導の違いがあり、アーミッシュの生活環境は喘息に対して予防的に働くことが示唆されたという。米国・シカゴ大学のMichelle M. Stein氏らが、ヒトとマウスの研究から明らかにした。アーミッシュは畑仕事や移動に馬を使用するなど伝統的な農業を行っており、フッタライトは工業化された農業技術を用いるという点で、とくに違いがみられる。以前の研究でこの両集団の喘息発症率に顕著な違いがあることが示唆されていたが、その違いに関与する免疫反応については不明であった。NEJM誌2016年8月4日号掲載の報告。

気道感染症に対する抗菌薬処方の減少と感染症合併リスクの関係(解説:小金丸 博 氏)-573

プライマリケアでみられる気道感染症の多くは自然寛解が期待できる疾患であるが、実際は多くの気道感染症例に対して抗菌薬の投与が行われている。臨床医は、気道感染症に対して抗菌薬を投与しないと細菌合併症が増加する懸念を抱いているが、抗菌薬処方の減少と細菌感染症合併リスクの関係を示すデータは不足していた。

高齢者肺がんの長期生存、放射線治療 vs.低侵襲手術/BMJ

 高齢者肺がんに対する、体幹部定位放射線治療(stereotactic ablative radiotherapy:SABR)後および胸腔鏡下肺葉切除後のがん特異的生存率でみた長期生存を比較した結果、とくに腫瘍径が大きい症例では胸腔鏡下肺葉切除のほうが、有意に改善する可能性が示唆された。米国・RWJ Barnabas Health SystemのSubroto Paul氏らによる、全米集団ベース傾向適合比較解析を行った結果で、著者は、「交絡因子が排除しきれず結果は限定的だが、手術可能な早期肺がんでSABRの治療選択が浸透する前に、さらなる詳細な評価を行う必要があるだろう」とまとめている。SABRは手術可否を問わず、早期非小細胞肺がんに有用とされている。SABR後の生存率について、低侵襲手術による切除後に疾患リスクが改善した場合と比べた場合に、同等であるかどうかは明らかになっていなかった。BMJ誌オンライン版2016年7月8日号掲載の報告。

急性呼吸不全のICU入院患者に標準化した多面的リハビリテーションの早期介入を行うと入院期間を短縮できるのか?(解説:山本 寛 氏)-572

急性呼吸不全の患者の予後は不良であり、もし生存しても身体機能の低下が待っている。こうした患者の身体機能を維持するためには、患者ごとに異なるアプローチが必要なことも多い。これまでにも、ICU入院患者に対する身体リハが入院期間を短縮したり、身体機能を改善させたりといった効果が報告されてはいるが、異論もあるところである。標準化された多面的なリハビリテーションによる早期介入が、ICUに入室した急性呼吸不全の患者の転帰を改善させるかもしれないと考えた著者らは、急性呼吸不全患者に対して、標準化された多面的なリハビリテーション(Standardized rehabilitation therapy;SRT)で早期介入を行った場合と、通常のICUケアを行った場合とを比較検討した。

がん脊椎転移、手術が不適な患者とは

 治療の進歩により転移性がん患者の生存期間が延長したことから、症候性脊椎転移が増加している。脊椎の病的骨折や脊髄圧迫を有する患者には、手術で痛みを軽減しQOLを改善することができるが、通常、生存期間が3ヵ月未満と推測される場合には手術は不適と考えられている。今回、手術が不適な患者への手術回避を目的として、日本を含む国際多施設共同研究により、術後3ヵ月または2年以内に死亡した患者のデータを分析し、生存期間に関連する術前因子を検討した。その結果、生存期間は全身の術前状態に依存し、とくに術前に「Karnofsky performance score(KPS)が低い」ことが3ヵ月未満の死亡に有意に関連し、「転移脊椎数が少ない」「原発腫瘍が予後良好な組織型」ことが長期生存に有意に関連していたことを、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJorrit-Jan Verlaan氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2016年7月11日号に掲載。

喫煙が日本人HTLV-1キャリアのATLL発症に関連

 ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)キャリアにおいて、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)の発症を予防する有効な方法はまだ同定されていない。今回、長崎大学原爆後障害医療研究所 近藤 久義氏らの研究により、わが国のHTLV-1キャリアにおいて、喫煙がATLL発症に影響を与える可能性が示唆された。Cancer causes & control誌オンライン版2016年7月13日号に掲載。

韓国のMERSアウトブレイクから得た教訓/Lancet

 2015年に韓国で中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染症の大規模なアウトブレイクが発生した。韓国・成均館大学校医学部/サムスン医療センターのSun Young Cho氏らはアウトブレイク疫学調査の結果、過密な緊急救命室(ER)に入室した1人の感染患者からの大規模伝播である可能性が大きいことが示されたと報告した。著者は、「調査の結果は、医療施設は世界的視野の下で、新興感染症への備えをする必要があるという確たる証拠を提示するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年7月8日号掲載の報告。