精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:88

日本の双極性障害外来患者に対する向精神薬コスト~MUSUBI研究

 双極性障害の治療コストは、地域的要因および普遍的要因と関連しているが、西欧諸国以外からのデータは、限られている。また、臨床的特徴と外来薬物療法のコストとの関連性は、十分にわかっていない。札幌・足立医院の足立 直人氏らは、日本人の統合失調症外来患者における治療コストとその後の臨床症状との関連性の推定を試みた。とくに、医療費の大部分を占め、近年増加傾向にある医薬品コストに焦点を当てて調査を行った。その結果、日本における双極性障害患者の1日当たりの平均治療コストは約350円であり、患者特性および精神病理学的状態と関連していることを報告した。Annals of Medicine誌2023年12月号の報告。

コロナ罹患後症状における精神症状の国内レジストリ構築、主なリスク因子は?/日本精神神経学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行はすでに3年以上経過しているが、流行が長期化するほど既感染者が増加し、コロナ後遺症(コロナ罹患後症状、Long COVID)のリスクも上がる。コロナ後遺症は、倦怠感や認知機能障害といった精神神経障害が年単位で持続する場合もある。  国立精神・神経医療研究センターの高松 直岐氏らの研究チームは、こうしたコロナ後遺症の病態解明と新規治療法開発につなげるため、COVID-19感染後の精神症状を有する患者レジストリの構築を実施している。中間解析の結果、コロナ後遺症による有意な心理社会的機能障害の予測因子は、退職経験、主婦層、COVID-19罹患への心配や抑うつが中等度以上、ワクチン接種2回以下であることが示された。6月22~24日に横浜にて開催された第119回日本精神神経学会学術総会にて、高松氏が発表した。

コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連

 これまで、コーヒー摂取と身体状態や死亡リスクとの関連性に関するエビデンスは蓄積されているが、精神疾患との関連性を評価した報告は限られていた。中国・杭州師範大学のJiahao Min氏らは、コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連を調査し、さらにコーヒーの種類や添加物による影響を検討した。その結果、コーヒーを1日当たり2~3杯摂取することは、メンタルヘルス改善のための健康的なライフスタイルの一環として、重要である可能性が示唆された。Psychiatry Research誌8月号の報告。  英国バイオバンクのデータを用いて、2006~10年のベースラインタッチスクリーンアンケートに回答した参加者14万6,566人のデータを分析した。フォローアップ期間中、2016年にこころとからだの質問票(PHQ-9)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)を用いて、うつ病および不安症の発症を確認した。コーヒーのサブタイプは、インスタントコーヒー、ひいたコーヒー、カフェインレスコーヒーとし、添加物にはミルク、砂糖、人工甘味料を含めた。関連性の評価には、多変数調整ロジスティック回帰モデルおよび制限付き3次スプラインを用いた。

統合失調症治療の専門家、早期の長時間作用型注射剤使用を支持

 統合失調症は、精神症状、陰性症状、認知機能低下などを来す慢性疾患である。統合失調症患者は、一般的にアドヒアランスが不良であり、これに伴う再発によりアウトカム不良に至る可能性がある。抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)は、治療アドヒアランスを改善し、再発・再入院リスクを低下させることが期待される。初発や発症初期の統合失調症患者にLAIを使用することで、その後のベネフィットが得られる可能性があるものの、歴史的にLAIの使用は慢性期患者を中心に行われてきた。スペイン・マドリード・コンプルテンセ大学のCelso Arango氏らは、初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスを報告した。その結果、疾患の重症度、再発回数、社会的支援の有無にかかわらず、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療が支持された。しかし、この結果は臨床医の認識とギャップがあるため、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療に関するエビデンスを作成していくことが求められる。BMC Psychiatry誌2023年6月21日号の報告。

lecanemab、アルツハイマー病治療薬として米国FDAよりフル承認を取得/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとBiogen(米国)は2023年7月7日、米国商品名「LEQEMBI」注射100mg/mL溶液(一般名:lecanemab)について、アルツハイマー病治療薬としてフル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請を米国食品医薬品局(FDA)が承認したことを発表した。今回の「LEQEMBI」のフル承認は、エーザイの大規模グローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータに基づいている。  「LEQEMBI」は、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、継続的に蓄積される最も神経毒性の高いAβ(Aβプロトフィブリル)をターゲットとして除去し、既存のプラークを除去するとされる。2023年1月6日にFDAより迅速承認を取得しており、さらに6月には臨床第III相Clarity AD検証試験の結果が本剤の臨床上のベネフィットを示すエビデンスであることを、FDAの末梢・中枢神経系薬物諮問委員会(PCNS)が全会一致で支持していた。今回の承認により、「LEQEMBI」は、アルツハイマー病の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることを示し、フル承認を取得した世界初かつ唯一の治療薬となる。

高齢者の片頭痛患者に対する抗CGRP抗体の安全性・有効性

 抗CGRPモノクローナル抗体は、片頭痛治療において顕著な有効性および忍容性が認められているが、高齢者に対する使用データについては、臨床試験では暗黙の年齢制限があり、リアルワールドのエビデンスも限られていることから、十分であるとは言えない。スペイン・バルセロナ大学のAlbert Munoz-Vendrell氏らは、65歳以上の片頭痛患者を対象に抗CGRPモノクローナル抗体であるエレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブの安全性および有効を評価するため、検討を行った。その結果、リアルワールドにおける65歳以上の片頭痛患者に対する抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、安全かつ効果的な治療法であることを報告した。The Journal of Headache and Pain誌2023年6月2日号の報告。

COVID-19罹患前の睡眠状態が長期的な罹患後症状に影響

 多くのCOVID-19生存者が長期にわたる罹患後症状を経験しており、公衆衛生上の深刻な問題となっている。これまでのところ、COVID-19罹患後症状の状態に影響を及ぼすリスク因子の特定はあまり進んでいない。イタリア・ラクイラ大学のFederico Salfi氏らは、COVID-19の長期的な罹患後症状の発生に対する感染前の睡眠の質や時間、不眠症の重症度の影響について評価を行った。その結果、感染前の睡眠の質/量および不眠症重症度には、罹患後症状の発生数と用量依存的な関連性があることが示唆された。著者らは、「睡眠の健康状態の予防的な改善がCOVID-19の罹患後症状を軽減できるかを判断するためには、さらなる研究が必要である」としている。Brain, Behavior, and Immunity誌8月号の報告。

COVID-19罹患後症状の追跡調査(解説:小金丸博氏)

COVID-19に罹患した一部の患者にさまざまな罹患後症状(いわゆる後遺症)を認めることがわかってきたが、その原因やメカニズムはまだ解明されておらず、効果的な介入方法も確立していない。罹患後症状はpost COVID-19 condition、long COVID、post-acute sequelae of SARS-CoV-2 infection(PASC)などと呼ばれ、WHOは「新型コロナウイルスに感染した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、他の疾患による症状として説明できないもの」と定義している。罹患後症状の種類や有病率、長期経過の把握は、治療方法や介入方法を検討するための臨床試験の設計につながる有益な情報となる。

COPD患者への抗うつ薬、増悪や肺炎のリスクに

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に多い併存疾患として、うつ病や不安症などの精神疾患が挙げられる。抑うつの併存率は、欧米では80%、日本人では38%という報告もある。しかし、COPD患者における抗うつ薬のリスク・ベネフィットに関するエビデンスは乏しい。そこで英国・ノッティンガム大学の研究グループは、英国のプライマリケアにおける診療記録のデータベースを用いて、COPD患者における抗うつ薬とCOPD増悪、肺炎のリスクの関係を検討した。その結果、抗うつ薬の使用はCOPD増悪や肺炎のリスクを上昇させ、抗うつ薬の使用を中止するとそのリスクは低下したことが示された。本研究結果は、Rayan A. Siraj氏らによって、Thorax誌2023年6月19日号で報告された。

認知症リスクが排便回数と便の硬さに関連~日本人4万人の研究

 中年期以降の排便習慣と認知症との関連について国立がん研究センター中央病院の清水 容子氏らが解析した結果、男女とも少ない排便回数および硬い便が高い認知症リスクと関連することが示された。Public Health氏オンライン版2023年6月29日号に掲載。  本研究は、介護保険の認定記録を用いたコホート研究で、JPHC研究における8地区で排便習慣を報告した50~79歳の参加者を対象に、2006~16年の認知症の発症について調査した。生活習慣因子や病歴を考慮したCox比例ハザードモデルを用いて、男女別にハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。