腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:89

HER2陽性の転移のある大腸がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの有用性(DESTINY-CRC02)/ASCO2023

 HER2陽性大腸がんに対するトラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)の2つの用量による治療成績が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、米国・MDアンダーゾンがんセンターのKanwal Raghav氏より発表された。日本も参加した国際共同盲検化第II相試験のDESTINY-CRC02試験の初回解析結果報告である。

がん患者の遠隔診療に対する満足度は対面診療よりも高い

 ビデオや電話による遠隔診療の利用は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの間に飛躍的に拡大した。特にがんの治療では、免疫力が低下している患者の感染を極力抑える必要があることから、利用の伸び幅は大きかった。こうした中、がん患者の遠隔診療の経験に関する大規模調査データを分析した結果、患者の満足度は対面診療よりも高いことが明らかになった。米モフィットがんセンターのKrupal Patel氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Comprehensive Cancer Network」5月号に掲載された。  米政府は5月11日、新型コロナウイルスに関する公衆衛生上の緊急事態宣言を解除した。これを受けて、COVID-19パンデミック中に認められた、遠隔診療を広範に利用するための柔軟な措置も撤廃される可能性がある。この点についてPatel氏は、「もしそうなれば残念なことだ。遠隔診療は、適正な実施条件のもとで適切な患者に提供されれば、対面診療に代わる貴重な選択肢となり得る」と話す。同氏によると、遠隔診療では、スケジュールのより柔軟な設定、診察室や病院への交通費削減や移動時間の短縮が可能になるため、がん患者にとってのベネフィットは非常に大きいのだという。

既治療・転移乳がんへのHER3-DXd、幅広いHER3発現状況で有用/ASCO2023

 複数治療歴のあるER+およびトリプルネガティブ(TN)の局所進行または転移を有する乳がん(MBC)患者を対象とした第II相試験の結果、HER3を標的としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)の有効性は、幅広いHER3発現状況で認められたことを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が発表した。  MBC患者はHER3が高値であることが多いが、HER3過剰発現はがんの進行や生存率の低下と関連することが報告されている。また、HER3-DXdの有効性は乳がんのサブタイプやHER3発現状況にあまり依存しない可能性が示唆されている。本試験は、HER3-DXd投与で最大の効果が得られる患者群を特定するために、パートA、パートB、パートZの3パートで実施されている。今回はパートAとして、特定のバイオマーカー(ER/PR/HER2/HER3)が発現した患者における有効性と安全性が検討された(データカットオフ:2022年9月6日)。

DLL陽性SCLC・神経内分泌がん、DLL3/CD3 BiTE抗体のFirst in Human試験/ASCO2023

 Notchリガンドの1つであるDLL3はNotchを阻害する働きを有する。DLL3は、小細胞肺がん(SCLC)や神経内分泌がん(NEC)の細胞表面に高発現しており、薬剤ターゲットとして有望視されている。DLL3とCD3を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体のBI 764532は、DLL3陽性細胞および異種移植モデルマウスで強力な前臨床抗腫瘍活性を示したことが報告された。そこで、DLL3陽性SCLC、NEC患者を対象としたBI 764532のファースト・イン・ヒューマン試験(NCT04429087)が実施されている。現在進行中の本試験において、BI 764532は管理可能な安全性プロファイルを示し、有効性についても有望な結果が得られていることが示された。ドイツ・ドレスデン工科大学のMartin Wermke氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

HER2+胆道がんに対するtucatinibとトラスツズマブの併用療法の有用性/ASCO2023

 数ラインの治療歴のあるHER2陽性の転移のある胆道がんに対し、チロシンキナーゼ阻害薬のtucatinibとトラスツズマブの併用療法が有効であるという報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において国立がん研究センター東病院の中村能章氏よりなされた。  これは、泌尿器がんなどのHER2陽性固形がんを含む9つのコホートからなるオープンラベル第II相バスケット試験であるSGNTUC-019試験の中の、胆道がんコホートの結果である。

完全切除EGFR陽性NSCLC、術後補助療法の効果不良因子(IMPACT-TR)/ASCO2023

 完全切除を達成したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による術後補助療法の効果や、再発を予測するバイオマーカーは、十分に検討されていないのが現状である。そこで、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の完全切除後の術後補助療法として、ゲフィチニブとシスプラチン+ビノレルビン(cis/vin)を比較した、国内第III相試験「IMPACT試験」の対象患者においてバイオマーカーが検討された。その結果、ゲフィチニブに対してはNOTCH1遺伝子変異が、cis/vinに対してはCREBBP遺伝子変異が効果不良を予測する因子となることが示唆された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、池田 慧氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が本結果について発表した。

HR+/HER2-進行乳がん、CDK4/6阻害薬は1次治療か2次治療か(SONIA)/ASCO2023

 HR+/HER2-進行乳がんに対する1次治療でのCDK4/6阻害薬使用は、2次治療での使用と比較して、無増悪生存期間(PFS)の有意な減少や臨床的に意味のある有用性が認められなかったことが、オランダで全国的に実施された医師主導の第III相SONIA試験で示された。また、CDK4/6阻害薬を1次治療で使用すると使用期間が16.5ヵ月長くなり、毒性および治療費用が増加したという。オランダ・The Netherlands Cancer InstituteのGabe S. Sonke氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

HR+進行乳がん、capivasertib+フルベストラントが有効/NEJM

 サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬併用の有無にかかわらず、アロマターゼ阻害薬の治療中または治療後に病勢進行したホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)進行乳がん患者において、AKT阻害薬capivasertibとフルベストラントの併用療法は、フルベストラント単独療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが、英国・Royal Marsden HospitalのNicholas C. Turner氏らによる第III相無作為化二重盲検比較試験「CAPItello-291試験」で示された。AKT経路の活性化は内分泌療法の抵抗性に関与することが知られているが、HR+進行乳がんに対するフルベストラントへのcapivasertib上乗せの有効性と安全性に関するデータは限られていた。NEJM誌2023年6月1日号掲載の報告。

薬物療法抵抗性ではないStageIV乳がんの原発巣切除、OS改善せず(JCOG1017)/ASCO2023

 薬物療法抵抗性ではないde novo stageIV乳がんに対して、薬物療法単独に比べて、原発巣切除により全生存期間(OS)を改善するかどうかを検討したわが国の第III相試験(JCOG1017)の結果、OSに有意差が認められなかった。一方、原発巣切除群は、局所コントロールが良好であり、また閉経前や単臓器転移ではOSが改善される可能性が示された。岡山大学の枝園 忠彦氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。  原発巣切除がde novo StageIV乳がんの生存期間を改善する可能性については、Tata Memorial Hospital、MF07-01試験、ABCSG28試験、ECOG2108試験といった前向き研究で検討されているが、いまだ議論の余地がある。JCOG1017試験では、de novo StageIV乳がんにおいて臨床的サブタイプに基づき、初期薬物療法後の原発巣切除の有無による予後を比較した。

切除不能肝細胞がんの1次治療、STRIDEレジメンでOS延長/AZ

 2023年4月4日(木)にアストラゼネカ株式会社主催のプレスセミナーが開催され、肝細胞がん治療における免疫チェックポイント阻害薬のさらなる可能性について、千葉大学大学院医学研究院消化器内科学 教授の加藤 直也氏が語った。加藤氏は、「肝細胞がんは肝予備能を維持し、悪化させないことが大切。デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と2023年3月に薬価基準収載されたトレメリムマブ(製品名:イジュド)を併用するSTRIDEレジメンは肝臓に負担をかけにくく、理にかなっているのではないか」と述べた。外科的な治療が不可能なケースの多い肝細胞がんだが、薬物治療の新たな局面を迎え、長期生存率の向上が期待できそうだ。