ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:252

週3回血液透析における2日間隔は、死亡・入院リスクを高める

 週3回行われる血液維持透析は、1日間隔と2日間隔のインターバルが存在するが、2日という間隔が血液透析を受けている患者の死亡率を高める時間的要因であることが明らかにされた。本研究は、米国NIHの資金提供を受けたUnited States Renal Data SystemのRobert N. Foley氏らがnational studyとして行った結果で、20年来の懸念となっていた血液透析患者の生存率の低さ、および末期腎不全患者の大半は循環器疾患を有した状態で血液透析を始めるが、長期インターバルがそれら患者の死亡リスクを高めているのではないかとの仮説に対して言及することを目的に行われた。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。

在胎週数が短いと、早期小児期と若年成人期で死亡率が増加

在胎週数の短さは、5歳以下の早期小児期と、18~36歳の若年成人期の死亡増大の独立した因子であることが明らかにされた。米国・スタンフォード大学のCasey Crump氏らが、スウェーデンの単生児約2万8,000人を対象に行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月21日号で発表した。これまで先進国において、早産は乳児死亡の大きな原因であることは知られていたが、成人期の死亡リスクとの関連については明らかにされていなかった。

小児・青年期の強迫性障害、SRI+認知行動療法で治療効果が有意に向上

小児や青年期の強迫性障害(OCD)の治療には、セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)の服薬指導と徹底した認知行動療法(CBT)の介入を併用することで、服薬指導のみや、服薬指導と簡単なCBT指示のみの介入に比べ、治療効果が有意に向上することが明らかにされた。米国・ペンシルベニア大学のMartin E. Franklin氏らが、7~17歳のOCD患者124人について行った、無作為化比較試験の結果報告したもので、JAMA誌2011年9月21日号で発表した。

慢性腰椎神経根症へのステロイドまたは生理食塩水注射は推奨できない

慢性の腰椎神経根症に対する仙骨部硬膜外ステロイドまたは生理食塩水注射は「推奨されない」と結論する多施設盲検無作為化試験の結果が報告された。ノルウェー・北ノルウェー大学病院リハビリテーション部門のTrond Iversen氏らによる。腰椎神経根症への硬膜外ステロイド注射は1953年来の治療法だが、長期有効性のエビデンスは乏しかった。それにもかかわらず、例えば米国では1994年から2001年に10万患者当たり553例から2,055例へと使用が増加、英国では2002~2003年の最も頻度の高い脊椎注射処置の1つとなっていた。本試験では、同注射の有効性について、短期(6週)、中期(12週)、長期(52週)の評価が行われた。BMJ誌2011年9月17日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載報告より。

マンモグラフィ検診導入後、手術例が顕著に増大:ノルウェー調査

ノルウェーでは1996年から2004年にかけて順次、50~69歳女性の乳がん検診としてマンモグラフィ・スクリーニングを導入した。その手術治療への影響について、オスロ大学病院病理学部門のPal Suhrke氏らが検証した結果、手術例が導入前と比べて1.7倍と顕著に増えており、乳房切除術の割合も、マンモグラフィ検診非対象群では減少していたが、50~69歳群では増大し、若年群との比較で約1.3倍の格差があったという。ただし増大は一時的で、時代が下がるにつれ上昇は鈍り、2002年以降は減少に転じていた。Suhrke氏は、「初期の頃の増大要因は過剰診断によるものと思われた。後年に起きた変化は、手術方針の変化によるもののようだ」と分析している。BMJ誌2011年9月17日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載報告より。

大腸菌集団感染発生時の血漿交換療法は有用:デンマークO-104発生時の観察研究結果

成人の下痢関連溶血性尿毒症症候群(HUS)に対して、早期段階での血漿交換療法が、経過の改善に有用である可能性が示された。デンマーク・オーデンセ大学病院のEdin Coli氏らが報告したもので、Lancet誌2011年9月17日号(オンライン版2011年8月25日号)にて発表された。成人の下痢関連HUSは、急性の溶血性貧血、血小板減少症、腎不全によって特徴づけられ、稀な疾患であるが死亡率は高い。血漿交換療法は死亡率を低下する可能性は示唆されていたが、その有用性については議論の的となっていた。今回示された知見は、南デンマークで2011年5月に発生したO-104集団感染患者への同手技に関する所見をまとめた観察研究の結果である。

70歳以上の非小細胞肺がん患者への併用化学療法は生存ベネフィットあり

非高齢の進行型非小細胞肺がん患者に対して推奨されるプラチナ製剤ベースの併用化学療法カルボプラチン(同:パラプラチンなど)+パクリタキセル(同:タキソールなど)は、従来推奨されていなかった70歳以上の高齢患者においても、ビノレルビン(商品名:ナベルビンなど)やゲムシタビン(同:ジェムザールなど)の単剤療法との比較で、毒性作用の増大はあるものの生存ベネフィットが認められることが示された。フランス・ストラスブール大学Elisabeth Quoix氏らが、第3相無作為化試験「IFCT-0501」の結果、報告したもので、「現在の高齢患者への治療パラダイムを再考すべきと考える」と結論している。がんの疾患リスクは先進諸国では、長寿社会の進展とともに増大しており、肺がんの診断時の年齢中央値は現在63~70歳と、高齢患者の顕著な増加が認められているという。Lancet誌2011年9月17日号(オンライン版2011年8月9日号)掲載報告より。

頭蓋内動脈狭窄症に対するPTAS vs. 積極的薬物治療

頭蓋内動脈狭窄症患者に対するステント治療と積極的薬物治療とを比較検討した試験「SAMMPRIS」の結果、積極的薬物治療単独のほうが予後が優れることが明らかになった。検討されたのはWingspanステントシステム(米国ボストンサイエンス社製)を用いた経皮的血管形成術・ステント留置術(PTAS)であったが、その施術後の早期脳梗塞リスクが高かったこと、さらに積極的薬物治療単独の場合の脳梗塞リスクが予測されていたより低かったためであったという。PTASは、脳梗塞の主要な原因であるアテローム硬化性頭蓋内動脈狭窄症の治療として施術が増えているが、これまで薬物療法との無作為化試験による比較検討はされていなかった。米国・南カリフォルニア大学のMarc I. Chimowitz氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年9月7日号)掲載報告より。

心房細動患者に対するapixaban vs. ワルファリン

心房細動患者の脳卒中または全身性塞栓症のイベント抑制効果について検討された「ARISTOTLE」試験の結果、新規経口直接Xa阻害薬apixabanはワルファリンと比較して、同イベント発生を約2割低下し、予防に優れることが明らかにされた。大出血発生については約3割低く、全死因死亡率は約1割低かった。ワルファリンに代表されるビタミン拮抗薬は、心房細動患者の脳卒中の予防に高い効果を示すが、一方でいくつかの限界もあることが知られる。apixabanについては、これまでにアスピリンとの比較で、同等の集団において脳卒中リスクを抑制したことが示されていた。米国・デューク大学医療センターのChristopher B. Granger氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年8月28日号)掲載報告より。

大動脈二尖弁患者の大動脈解離発生率は、一般住民に比べて有意に高率

先天性心疾患で多くみられる大動脈二尖弁(BAV)を有する人の長期大動脈解離発生率は、1万患者・年当たり3.1例と低かったものの、一般住民の8.4倍と有意に高率であることが明らかにされた。未診断だった人も含めた発生率は同1.5例であった。報告は、米国・メイヨークリニックのHector I. Michelena氏らによる後ろ向きコホート研究の結果による。これまで、BAVを有する人は重度の大動脈解離が起きやすいとされていたが、長期にわたる住民ベースのデータはなかったという。JAMA誌2011年9月14日号掲載より。

米国18歳未満対象の段階的運転免許制度、死亡事故抑制には機能しておらず

米国の18歳未満を対象とする段階的運転免許(graduated driver licensing:GDL)制度の効果について検証したCalifornia Department of Motor VehiclesのScott V. Masten氏らは、16歳ドライバーの死亡事故はかなり低かったが、18歳ドライバーの死亡事故がやや高くなっており、「18歳ドライバー死亡事故の原因解明とGDL制度を改善すべきかを検証する必要がある」とまとめた報告を、JAMA誌2011年9月14日号で発表した。米国では自動車事故死が10代若者の主要な死因となっており、2000~2008年の16~19歳自動車死亡事故者は、ドライバー2万3,000人、同乗者1万4,000人以上に上った。また、事故発生は18~19歳で最も多かったが、走行距離補正後の死亡事故発生はより若い年齢で高く、18~19歳と比べて16歳は150%増、17歳は90%増であったという。

アデノイド切除、小児の反復性上気道感染症にベネフィットを認めず

小児の反復性上気道感染症に対する治療戦略について、即時のアデノイド切除が、経過観察群を上回る臨床的ベネフィットを示さなかったことが報告された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのM T A van den Aardweg氏らが行った、非盲検無作為化試験の結果による。アデノイド切除は、小児中耳炎ではいくつかの臨床的ベネフィットをもたらしており、反復性上気道感染症も一般的に適応となるが、そのエビデンスは不足していた。BMJ誌2011年9月10日号(オンライン版2011年9月6日号)掲載報告より。

30年の長期追跡研究で明らかになった頭痛持ちの実態

タイプ別にみた頭痛症候群と長期転帰との関連について調べるため、一般住民を長期追跡した結果、各頭痛タイプが重複して発生していることが明らかになった。米国NIHのKathleen R Merikangas氏らが、スイス・チューリッヒ州の住民を若年成人の段階から30年間追跡した、国際頭痛分類第2版(ICHD-2)の初の長期前向き研究の結果による。国際研究の多くが、片頭痛の高い有病率と重大な機能障害との関連について報告しているが、Merikangas氏は「本研究は、頭痛持ちの人を前向きに追跡することは重要であることを際立たせるものとなった」と述べるとともに「一般住民における頭痛の本質は、タイプ別差異に基づく頭痛の診断名適用では正確には捉えられないだろう」と結論している。BMJ誌2011年9月10日号(オンライン版2011年8月25日号)掲載報告より。

重度肺気腫への気管支バイパス術、持続的ベネフィットは確認されず

重度肺気腫患者に対する気管支バイパス術は、安全であり一過性の改善は認められたが、持続的なベネフィットは認められなかったことが報告された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのP L Shah氏らが有効性と安全性を検討したEASE(Exhale airway stents for emphysema)試験の結果による。気管支バイパスは、気管支鏡下肺容量減少療法で、パクリタキセル・コート・ステントで肺への通気性を確保し呼吸を容易にする手術療法である。Lancet誌2011年9月10日号掲載報告より。

妊婦の喘息コントロール、FeNO濃度ベースのアルゴリズムが増悪を有意に減少

妊娠中の喘息コントロールについて、呼気一酸化窒素(FeNO)濃度ベースの治療アルゴリズムが、増悪を有意に減少する可能性があることが示された。オーストラリア・ニューカッスル大学喘息・呼吸器疾患センターのHeather Powell氏らが行った二重盲検無作為化試験の結果による。妊娠中は喘息増悪が起きやすく、母体や胎児の重大疾患と関連する可能性が高い。これまでの研究で、妊娠していない女性での、喀痰中好酸球に基づく治療決定が喘息増悪を減らすことは知られるが、FeNO濃度に基づく治療アルゴリズムの成果については不確かであった。Lancet誌2011年9月10日号掲載報告より。

黒人女性によくみられる腹部肥満と死亡リスク

米国・ボストン大学Slone疫学センターのDeborah A. Boggs氏らはBMI値と腹囲、死亡リスクとの関連について、これまで入手データが限られていた黒人女性5万人超を対象とする大規模な前向き調査を行った。結果、白人でみられる傾向と同じように、BMI 25.0以上で、死亡リスクが数値増大とともに上昇することが認められたという。また、黒人女性では腹囲肥満がよくみられ、非肥満(BMI 30.0未満)でのみ腹囲が死亡リスク上昇と関連している特性も明らかになった。NEJM誌2011年9月8日号掲載報告より。

心房細動患者の脳卒中、全身性塞栓症予防に、rivaroxabanはワルファリンに対して非劣性

心房細動患者の脳卒中または全身性塞栓症予防に関して、経口第Xa因子阻害薬rivaroxabanはワルファリンに対して非劣性であることが明らかにされた。重大出血のリスクについては両者間に有意差はなく、頭蓋内および致死的出血の頻度はrivaroxabanのほうが少なかった。米国・Duke Clinical Research InstituteのManesh R. Patel氏らROCKET AF治験グループによる二重盲検無作為化試験の結果、報告した。NEJM誌2011年9月8日号(オンライン版2011年8月10日号)掲載報告より。

1997~2000年卒業の医学生、87.3%が専門医資格を取得:全米調査

米国専門医認定機構(ABMS)の専門医資格取得について、1997~2000年に医学校を卒業した医師の取得状況と、その背景因子について調査した結果、取得率は87.3%に上り、人種による取得率の違いや、抱えている負債と取得領域との関連などの実態が明らかになった。ABMS取得は米国で医師のクオリティ尺度となっている。調査は、ワシントン大学医学校のDonna B. Jeffe氏らにより行われ、JAMA誌2011年9月7日号で発表された。

内科レジデント、精神的・肉体的疲弊が強い実態が明らかに:全米調査

内科レジデントに関する全米調査の結果、そのQOLは最適状態にはほど遠く、燃え尽き症候群が一般的にみられることが明らかになった。メイヨークリニックのColin P. West氏らの調査結果による。燃え尽き症候群は、高額な負債と関連しており、海外医学部卒業生ほどその頻度が高く、また、低QOL、情緒的疲弊、学費の負債は、内科知識に関する自己評価「IM-ITE」が低スコアであることも認められたという。これまでの医師の精神的・肉体的疲弊は、患者の治療にネガティブな影響をもたらすことが明らかになっているが、全米レベルでの実態調査は行われていなかった。JAMA誌2011年9月7日号掲載報告より。

うつ病スクリーニングツールの精度研究に潜む患者バイアスの危険性

うつ病スクリーニングの潜在的ベネフィットを判定するために行われる診断精度研究には、被験者として、すでにうつ病と診断された患者やうつ病治療中の患者がほとんど除外されずに含まれており、それら被験者バイアスが診断精度研究に与える影響が、システマティックレビューやメタ解析では評価されていないことが明らかにされた。カナダ・マックギル大学Jewish総合病院のBrett D Thombs氏らによる研究報告で、BMJ誌2011年9月3日号(オンライン版2011年8月18日号)にて発表された。