ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:331

前立腺癌肥満者の血液希釈とPSA濃度との関係

肥満者の血清前立腺特異抗原(PSA)濃度が非肥満者より低いことが、最近の研究で示唆されている。デューク大学メディカルセンター(アメリカ)のLionel L. Banez氏らのグループは、ボディマス指数(BMI)の高い男性のほうが循環血漿量も多いので、肥満者の低PSAは血液希釈が原因かもしれないと仮定。検証結果をJAMA誌2007年11月21日号に報告した。

病棟の迅速対応チーム(RRT)は小児患者でも有効

迅速対応チーム(rapid response team:RRT、別名メディカル対応チームまたはメディカル緊急チーム)は、ICU以外の入院病棟でのコード(呼吸停止、心肺停止等)による患者死亡を減少させるために導入されたもので、これまで成人患者に関する成果は報告されているが、小児患者については死亡率、コード率の有意な減少を示すデータは公表されていない。そこでスタンフォード大学医学部小児部門のPaul J. Sharek氏らが、小児病院でRRT導入前後の検証を行った。JAMA誌11月21日号掲載より。

潰瘍性大腸炎、クローン病に対する待機的結腸切除術の症例選定基準は高すぎる

イングランドでは、炎症性腸疾患[潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)]対し年間約2,000件の結腸切除術が実施されている。結腸切除術や緊急結腸切除術を要する重篤な炎症性腸疾患患者には、手術によって重大なリスクがもたらされる。これに対し、待機的結腸切除術後の死亡率は短期的には低いことが示されているが、長期的なフォローアップデータはない。 Stephen E. Roberts氏(イギリス、スウォンジ大学医学部)らは、現行の待機的結腸切除術の症例選定基準の適否について評価するために、広範な地域集団において炎症性腸疾患入院患者の手術施行状況別の3年後の死亡率を比較した。BMJ誌10月30日付オンライン版、11月17日付本誌掲載の報告。

一般医への1日集中トレーニングで患者の服薬コンプライアンス改善

一般医を対象に高血圧治療に関する集中トレーニングを1日行うだけで、患者の服薬コンプライアンスが有意に改善することが初めて、地域住民を対象とした無作為化試験により確認された。Aga Khan University(パキスタン)のNudrat Noor Qureshi氏らによる報告として、BMJ誌オンライン版11月8日付け早期公開、本誌11月17日号で掲載された。

抗肥満薬rimonabantによりうつ症状が増加の可能性

米国食品医薬品局(FDA)に対し、同局の諮問委員会委員13名の全員一致で「非承認」を採択・答申した食欲抑制剤rimonabantの安全性に関し、Lancet誌11月17日号にメタ解析が掲載された。rimonabant服用例では抑うつ・不安による服薬中止がプラセボ群よりも有意に多いため「慎重な観察が必要である」と著者であるFrederiksberg Hospital(デンマーク)のRobin Christensen氏らは結論している。

フェノフィブラート長期投与で糖尿病性網膜症の進行が遅延:FIELD試験サブ解析

FIELD試験は、2型糖尿病に対するフェノフィブラートを用いた長期的な脂質低下療法の、大血管障害および細小血管障害に対する抑制効果を検討する国際的な大規模無作為化臨床試験である。2005年にLancet誌に掲載された観察期間5年の報告では、レーザー治療を要する糖尿病性網膜症の発症率が有意に低下していた。レーザー治療は視野狭窄などの副作用を伴うことが知られている。 そこで、A. C. Keech氏(オーストラリア、シドニー大学NHMRC臨床試験センター)らFIELD試験の研究グループは、フェノフィブラートの糖尿病性網膜症に対する進行遅延効果およびそのメカニズムを検討するサブ解析を実施。今回その結果がLancet誌上(11月7日付オンライン版、11月17日付本誌)で報告された。

ヒト喘息でも認められたキチナーゼ様蛋白質YKL-40との関連性

自然界に大量に存在するキチン質を分解する作用能力を持つキチナーゼに関して、エール大学医学部のGeoffrey L. Chupp氏らは2004年に、動物モデル研究で、喘息と真のキチナーゼ(哺乳類酸性キチナーゼ)との関連性を報告した。同研究ではまた、血清中で容易に測定が可能な、YKL-40と呼ばれる酵素活性を有さないキチナーゼ様蛋白質[ヒト軟骨糖蛋白39(HCgp-39)、chitinase 3-like 1とも呼ばれる]に関しても関連を報告している。Chupp氏らは今回、このYKL-40レベルとヒト喘息における関連性について検討した。NEJM誌11月15日号掲載より。

急性冠症候群患者における新規抗血小板剤prasugrelのフェイズ3報告

本論文は11月4日の米国心臓協会・学術集会での発表と同時にNEJM誌オンライン版にて掲載されたもので、イーライリリー社と第一三共とが共同開発している新しいチエノピリジン系の抗血小板剤prasugrelとクロピドグレルとを比較する、国際的な二重盲検試験のフェイズ3であるTRITON TIMI-38からの報告。本誌では11月15日号に掲載された。

ワクチン接種は疾患発現減少に功を奏したか?

アメリカにおける全国的なワクチン接種プログラムの勧告は、対象疾患発現の減少、排除または根絶を目標に行われている。その目標は果たされているのか。CDC(疾病予防管理センター)のSandra W. Roush氏らワクチン予防接種専門調査委員会(Vaccine-Preventable Disease Table Working Group)は、2005年までに行われてきた13疾患対象の予防的なワクチン接種について、勧告・実行前後の罹患率および死亡率の比較を行った。JAMA誌11月14日号掲載の報告から。

イラク帰還兵の精神保健問題の評価は適切か?

退役軍人の精神保健問題を早期に発見するため米国国防総省は、大規模集団を対象に、前線配備から戻った直後と3~6ヵ月後の2回にわたるスクリーニングを推進している。W・リード軍事研究所のCharles S. Milliken氏らは、そのうち戻った直後のスクリーニングだけに焦点をあてた過去の論文は、「精神保健上の負荷を過小評価しているのではないか」と提言。あらためてイラク帰還兵の精神保健の必要性、そしてスクリーニングと精神保健サービス利用との関連を評価した。JAMA誌11月14日号掲載報告より。

上気道感染症、咽頭炎、中耳炎に対する抗生物質投与は正当か

プライマリケア医は、一般的な気道感染症に対して、それに続発する重篤な合併症への配慮から予防的に抗生物質を処方しがちだ。イギリスのガイドラインでは、耐性菌の発現を考慮して上気道感染症、咽頭炎、中耳炎には抗生物質をルーチンに使用すべきでないとされる。また、肺感染症は急性気管支炎に分類され抗生物質は推奨されないが、肺炎には推奨されている。 I. Petersen氏(ロンドン大学ユニバーシティーカレッジ感染症疫学センター)らは、抗生物質の使用により一般的な気道感染症に続発する重篤な合併症のリスクをどの程度低下させられるかについて検討した。BMJ誌10月18日付オンライン版、11月11日付本誌掲載の報告。

心血管系リスクは「妊娠中毒症」のリスク

Pre-eclampsia(妊娠高血圧症候群:PIH、旧「妊娠中毒症」)患者における心血管系リスク増悪はこれまでも報告されてきたが、このたび、妊娠前・妊娠時の心血管系リスクがPIHのリスクであるとの報告がなされた。Norwegian University of Science and Technology(ノルウェー)のElisabeth Balstad Magnussen氏らが明らかにしたもので、11月1日付けBMJホームページにて早期公開、同誌11月10日号に掲載された。

急性腰痛では第一選択治療に第二選択治療を併用しても回復は早まらない

国際的な急性腰痛治療ガイドラインでは、プライマリケア医(GP)は第一選択の治療法として患者へのアドバイス(活動性を維持、ベッド安静を避ける、予後は良好と話して安心させる)およびパラセタモール(アセトアミノフェン)の投与が推奨されている。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)および脊椎手技療法(spinal manipulative therapy; SMT)は回復が遅い場合の第二選択治療とされる。 Mark J. Hancock氏(オーストラリア・シドニー大学背部痛研究グループ)らは、推奨される第一選択治療を受けた急性腰痛患者において、NSAID、SMTもしくはその両方の追加治療により回復が迅速化するかを検討する無作為化対照比較試験を行った。11月10日付Lancet誌掲載の報告から。

経口避妊薬の長期使用により子宮頸癌のリスクが倍増、中止後は漸減

混合型経口避妊薬は、国際がん研究機関(IARC)により子宮頸癌の原因とされている。この関連性の公衆衛生学的な意義は、子宮頸癌は加齢とともに増加することから、経口避妊薬使用中止後における作用の持続性の影響を強く受ける。 「子宮頸癌の疫学に関する国際共同研究」の研究グループは、世界各国で実施された試験のデータをプールし、子宮頸癌と経口避妊薬の使用パターンの関連について検討した。11月10日付Lancet誌掲載の報告から。

先天性心疾患を有する新生児の脳発達異常は生まれつき?

先天性心疾患を有する新生児には発育上の全般的な機能障害がみられる。カリフォルニア大学神経学学部のSteven P. Miller氏らのグループは、先天性心疾患のある新生児について、脳の成熟度を示す尺度となる脳代謝とミクロ構造の特徴に関して、心臓手術前の時点で対照新生児との検討を行った。NEJM誌2007年11月8日号より。

未熟児無呼吸発作に対するカフェイン療法の長期的影響は?

メチルキサンチン等カフェインは、新生児集中治療で頻繁に使用される薬剤の1つで、未熟児無呼吸発作に対して一般的に用いられているが、その有効性と安全性に関する十分なデータはない。ハミルトン大学(カナダ)Barbara Schmidt氏ら未熟児無呼吸発作カフェイン療法研究グループ(Caffeine for Apnea of Prematurity Trial Group)は、神経発達と成長の長期的影響に関する知見を報告した。NEJM誌11月8日号掲載。

BMI値と死因死亡率との関連について

本報告を行った米国保健統計センター/疾病予防管理センターのKatherine M. Flegal氏らは2000年時点の検討報告として以前に、低体重、過体重、肥満それぞれの全死因死亡率との関連について報告を行っている。すなわち正常体重群と比べて、低体重群と肥満群では全死因死亡率の有意な増加との関連が認められたが、過体重群では有意な減少が認められたとするものだった。 本報告では、BMI値と全原因死亡率との関連(2004年時点における)を調査。JAMA誌11月7日号で掲載された。

肥満者の健康リスクは改善されてはいない

近年の研究報告は、肥満者は1960年代以降死亡率および心血管系のリスク因子が減少しており健康が高まっている、という示唆を与えるものとなっている。それに対しペンシルベニア大学(アメリカ)のDawn E. Alley氏らは、肥満者は以前と比べ長期にわたって危険因子に耐えているだけで、健康どころか、むしろ半面で能力機能障害が増大しているのではないかと提言。肥満症と能力機能障害との経時変化に着目した関連性を検討した。JAMA誌11月7日号掲載より。

ADL集中型作業療法は脳卒中発症後の活動性低下を防止する

リハビリテーションは脳卒中発症後の日常生活動作(ADL)を改善することが示されているが、作業療法の有用性は明らかでない。また、これまでの脳卒中後の作業療法に関するレビューは、個々の患者の活動性の評価が十分ではなかった。 そこで、Lynn Legg氏(イギリス・グラスゴー大学王立病院NHSトラスト老年医学)らは、脳卒中発症後のADLに重点を置いた作業療法による機能回復の改善効果について検討した研究の系統的レビューとメタ解析を行った。BMJ誌9月27日付オンライン版、11月3日付本誌掲載の報告。

救急医療隊員による病院到着前の治療介入が軽症高齢患者のアウトカムを改善

救急医療隊員は、訓練によって病院外で創傷、低血糖、転倒、鼻出血など広範な病態をトリアージして、治療あるいは照会できるようになる。また、地域社会において広範な保健医療やプライマリケアによるアウトリーチの役割を実現するには、特に地方などでは病院前救護活動(pre-hospital practitioner working)が有益なことが指摘されている。一方、救急部受診者の12~21%を高齢者が占め、そのほとんどが偶発事故や転倒である。 そこで、Suzanne Mason氏(イギリス・シェフィールド大学保健サービス研究科)らは、軽症疾患の高齢患者の評価および治療における、訓練を受けて技術が向上した救急医療隊員の役割を評価するための検討を行った。BMJ誌10月4日付オンライン版、11月3日付本誌掲載の報告。