医療一般|page:7

腸内での酪酸産生菌の増加は感染症リスクの低下と関連

 腸内で酪酸産生菌が10%増えるごとに、感染症による入院リスクが14〜25%低下することが、オランダとフィンランドの大規模コホートを対象にした研究で明らかになった。アムステルダム大学医療センター(オランダ)のRobert Kullberg氏らによるこの研究結果は、欧州臨床微生物学・感染症学会(ECCMID 2024、4月27〜30日、スペイン・バルセロナ)で発表予定。  酪酸は、ビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉」の腸内細菌が食物繊維を分解・発酵させる際に産生される短鎖脂肪酸の一種である。米クリーブランド・クリニックの説明によると、酪酸は大腸の細胞が必要とするエネルギーの大部分(約70%)を供給しており、消化器系の健康に重要な役割を果たしているという。

妊娠中のナッツ摂取が子どもの「仲間関係の問題」を予防?

 約1,200組の母子を対象としたコホート研究の結果から、妊娠中にナッツを摂取すると、生まれた子どもの「仲間関係の問題」を予防できる可能性が示唆された。これは愛媛大学大学院医学系研究科疫学・公衆衛生学講座の三宅吉博氏らによる研究結果であり、「Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition」に3月7日掲載された。  著者らの研究グループはこれまでに、妊娠中のさまざまな栄養素の摂取が、生まれた子どもの感情・行動の問題と関連することを報告している。食品に着目すると、栄養密度が高いことで知られるナッツは、不飽和脂肪酸、タンパク質、食物繊維、ビタミンやミネラルといった栄養素を豊富に含んでいる。そこで今回の研究では、妊娠中のナッツの摂取と5歳児の行動的問題との関連を調べた。

日本人不眠症患者におけるレンボレキサント切り替えの有効性と安全性

 慢性不眠症患者は、従来の治療法では必ずしも満足のいく有効性および安全性を得られているとはいえない。したがって、代替治療法への切り替えを考慮する必要があるものの、これらの有効性を評価したプロスペクティブ研究は不十分である。久留米大学の小曽根 基裕氏らは、慢性不眠症患者に対するレンボレキサントへの切り替えにより患者の満足度が向上するかを評価した。Advances in Therapy誌2024年4月号の報告。  対象は、現在の治療に満足していない日本人慢性不眠症患者90例。4つのコホート研究から、プロスペクティブ非ランダム化オープンラベル介入的多施設共同研究を実施した。コホート研究には、非ベンゾジアゼピン系鎮痛催眠薬(ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン)単剤療法、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント)単剤療法、スボレキサントとベンゾジアゼピン受容体作動薬の併用療法、スボレキサントとメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)からレンボレキサントへの切り替えの4つを含めた。主要エンドポイントは、2週間(漸増期終了)時点でのレンボレキサント切り替え成功率とした。切り替え成功の定義は、漸増期にレンボレキサントを服薬し、その後の維持期(2~14週目)においてレンボレキサントの継続使用意向を示した患者の割合とした。患者の満足度と安全性(治療中に発現した有害事象[TEAE]の発生率)の評価は、14週目(漸増期および維持期終了時)に実施した。

新年度、あなたの医局は増えたor減った?/医師1,000人アンケート

 新年度がはじまり、新人を迎えた職場も多い。医師の就職を語るうえで欠かせないものに「医局」の存在がある。ケアネット会員医師を対象に、医局への所属状況や選択理由、最近の医局員数の増減などについて、30~50代・200床以上の医療機関の勤務者を対象とし、オンラインのアンケート形式で聞いた。  「Q1. 現在、医局に所属していますか?」の問いに、「はい」と答えたのは73%。200床以上という中規模以上の病院に勤務している医師であっても、3割近くが医局に所属していない現状が明らかになった。年代別にみると30代は8割近くが医局に所属しているが、年代が高くなるにつれ所属者の割合が減り、50代は7割だった。

roflumilast外用薬、慢性尋常性乾癬の長期治療の有用性を確認

 慢性尋常性乾癬患者へのroflumilastクリーム0.3%(1日1回塗布)の長期投与を評価した試験において、忍容性は良好であり、64週までの有効性が確認された。米国・Henry Ford Medical CenterのLinda Stein Gold氏らが、海外第II相多施設共同非盲検シングルアーム長期投与試験の結果を報告した。PDE4阻害薬は慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎など炎症性疾患に対する治療効果が示されており、roflumilastはPDE4の強力かつ選択的な阻害薬である。roflumilastクリーム0.3%は、すでに米国食品医薬品局(FDA)より尋常性乾癬に対する承認を受けており、長期投与の評価が行われていた。

約90%の心血管疾患患者はナトリウムを摂取し過ぎ

 心血管疾患の治療にはナトリウムの摂取を控えることが重要であるが、ほとんどの心血管疾患患者は摂取量を制限できていないようだ。新たな研究で、心血管疾患患者は概して、推奨されている1日当たりのナトリウム摂取量の2倍以上を摂取していることが明らかになった。ナトリウムは、人間の健康に不可欠ではあるが、過剰摂取は血圧を上昇させ、血管にダメージを与え、心臓の働きを悪くする上に、体液の貯留を引き起こして心不全などの症状を悪化させ得ると研究グループは指摘している。米Piedmont Athens Regional病院のElsie Kodjoe氏らによるこの研究結果は、米国心臓病学会(ACC 24、4月6〜8日、米アトランタ)で発表された。

使用済みの油を使った揚げ物は脳に悪影響を及ぼす

 揚げ物はウエストを太くするだけでなく、脳にも悪影響を及ぼす可能性のあることが、ラットを用いた実験で示唆された。使用済みのゴマ油やヒマワリ油とともに餌を与え続けたラットでは肝臓や大腸に問題が生じ、その結果、脳の健康にも影響が及ぶことが明らかになった。タミル・ナードゥ中央大学(インド)のKathiresan Shanmugam氏は、「使用済みの油が脳の健康に及ぼす影響は、油を摂取したラットだけでなく、その子どもにも認められた」と述べている。この研究結果は、米国生化学・分子生物学会議(ASBMB 2024、3月23〜26日、米サンアントニオ)で発表された。

レム睡眠行動障害の男女差が明らかに

 レム睡眠行動障害の臨床的特徴を性別に着目して検討した結果、男性と比べて女性では、睡眠の質が悪く、抑うつ傾向が強いことが明らかとなった。愛知医科大学病院睡眠科の眞野まみこ氏らによる研究結果であり、「Journal of Clinical Medicine」に2月5日掲載された。  レム睡眠中には筋肉の活動が低下しているため、夢を見て、夢の中で行動しても手足や体は動かない。しかし、レム睡眠行動障害では筋肉の活動が抑制されず、夢の中でとっている行動がそのまま現実の行動として現れる。寝ながら殴りかかったり、暴れたりするなどの異常行動を伴い、本人や周囲の人が怪我をする危険もある。

家族内での治療抵抗性うつ病の発生率

 抗うつ薬に対する治療反応と治療抵抗性うつ病のフェノタイプは、遺伝的根拠があると考えられる。治療抵抗性うつ病のフェノタイプと他の精神疾患との遺伝的感受性は、これまでの遺伝的研究でも確立されているが、これらの結果を裏付ける集団ベースのコホート研究は、これまでなかった。台湾・台北栄民総医院のChih-Ming Cheng氏らは、治療抵抗性うつ病の感受性および家族内での治療抵抗性うつ病と他の精神疾患との感受性を推定するため、台湾全国コホート研究を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年4月3日号の報告。

PD-L1高発現NSCLCに対するネシツムマブ+ペムブロリズマブの可能性(K-TAIL-202)/AACR2024

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は進行非小細胞肺がん(NSCLC)の標準治療となっている。KEYNOTE-024試験でみられるように、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)はPD-L1発現≧50%の進行NSCLCにおいてPFS(無増悪生存期間)とOS(全生存期間)を有意に延長している。しかし、PD-L1陽性であってもICIが奏効しない症例は依然として存在する。  EGFRの発現はPD-L1のグリコシル化を介しPD-L1の発現を安定化させ、PD-1とPD-L1の結合を強化することが報告されており、抗EGFR抗体ネシツムマブと抗PD-1抗体ペムブロリズマブの併用療法は新しい治療コンセプトとして期待されている。

コロナ禍以降、自宅での脳卒中・心血管死が急増/日本内科学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期において、自宅や介護施設での脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患による死亡が増加し、2023年末時点でも循環器疾患による死亡のトレンドが減少していないことが、白十字会白十字病院 脳血管内科の入江 克実氏らの研究グループによる解析で明らかになった。本研究は、4月12~14日に開催された第121回日本内科学会総会・講演会の一般演題プレナリーセッションにて、入江氏が発表した。  入江氏によると、国内での総死亡数の推移データにおいて、2023年末時点でもCOVID-19流行前と比べて超過死亡は増加しているという。

免疫療法+個別化ワクチン、肝細胞がんの新治療法として有望

 標準的な免疫療法にオーダーメイドの抗腫瘍ワクチン(以下、個別化がんワクチン)を追加することで、肝細胞がんが縮小する患者の割合が、免疫療法のみを受けた場合の約2倍になることが、新たな研究で示された。米ジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターの副所長であるElizabeth Jaffee氏らによるこの研究結果は、米国がん学会年次総会(AACR 2024、4月5〜10日、米サンディエゴ)で発表されるとともに、「Nature Medicine」に4月7日掲載された。研究グループは、肝細胞がんの診断後、5年間生存する患者の割合は10人に1人未満であるため、このワクチンは患者の生存の延長に役立つ可能性があると話している。

膵体積とOGTTで1型糖尿病への進行を予測可能

 糖尿病関連自己抗体陽性の状態から1型糖尿病への進行を、MRIで評価した膵体積と経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)による糖代謝関連指標とによって予測できることが分かった。米テキサス大学オースティン校のJohn Virostko氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に12月27日掲載された。  これまでの研究で、1型糖尿病患者は膵体積が小さいことが明らかになっている。しかし、1型糖尿病発症前段階において、膵体積が小さいことが病態進行の予測因子であるか否かは不明。これを背景としてVirostko氏らは、1型糖尿病進行予防に関する国際共同研究(TrialNet)参加者を対象とする検討を行った。この国際共同研究には、1型糖尿病患者の血縁者で、糖尿病関連自己抗体を有するハイリスク者が参加している。進行ステージは、自己抗体が出現した状態の「ステージ1」、血糖異常が生じ始めた状態の「ステージ2」、および臨床的に1型糖尿病と診断される「ステージ3」という3段階に分類される。

若さを感じたければ良い睡眠を

 良好な睡眠を取った朝は若々しい気分となる半面、質が低い睡眠から目覚めた朝は、何歳も歳を取ったように感じてしまうことが明らかになった。ストックホルム大学(スウェーデン)のLeonie Balter氏とJohn Axelsson氏の研究によるもので、詳細は「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に3月27日掲載された。論文の筆頭著者であるBalter氏は、「驚くことに、覚醒の感覚が最も強い状態と眠気が最も強い状態とでは、自分の年齢に対する評価に10年もの差が生じる」と話している。

BPSDが死亡リスクに及ぼす影響~日本人コホート研究

 認知症の行動・心理症状(BPSD)は、認知症の初期段階から頻繁にみられる症状であり、軽度認知障害(MCI)でも出現することが少なくない。しかし、BPSDが予後にどのような影響を及ぼすかは不明である。国立長寿医療研究センターの野口 泰司氏らは、認知障害を有する人におけるBPSDと死亡率との関連を踏査した。Journal of epidemiology誌オンライン版2024年3月23日号の報告。  2010~18年に国立長寿医療研究センターを受診した、初回外来患者を登録したメモリークリニックベースのコホート研究であるNCGG-STTORIES試験に参加した、MCIまたは認知症と診断された男性1,065例(平均年齢:77.1歳)および女性1,681例(同:78.6歳)を対象に、縦断的研究を実施した。死亡関連の情報は、参加者または近親者から返送された郵送調査より収集し、最長8年間フォローアップ調査を行った。BPSDは、ベースライン時にDementia Behavior Disturbance Scale(DBD)を用いて評価した。

認知症の修正可能な3大リスク因子

 認知症のリスク因子の中で修正可能なものとしては、糖尿病、大気汚染、飲酒という三つの因子の影響が特に大きいとする研究結果が報告された。英オックスフォード大学のGwenaelle Douaud氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に3月27日掲載された。  Douaud氏らは脳画像データを用いて行った以前の研究で、アルツハイマー病やパーキンソン病、および加齢変化などに対して特に脆弱な神経ネットワークを特定している。このネットワークは、脳のほかの部分よりも遅れて思春期に発達し始め、高齢期になると変性が加速するという。今回の研究では、この脆弱な神経ネットワークの変性に関与している因子の特定を試みた。

人間の脳は世代を追うごとに大きくなっている

 人間の脳は、世代を重ねるごとに大きくなっていることが、新たな研究で明らかになった。研究グループは、脳のサイズが大きくなることで脳の予備能が高まり、それが認知症の発症リスクの低下に寄与している可能性があると考察している。米カリフォルニア大学デービス校アルツハイマー病研究センター所長のCharles DeCarli氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に3月25日掲載された。  この研究では、1925年から1968年の間に出生したフラミンガム心臓研究参加者3,226人(女性53%)の脳MRIのデータを用いて、出生年代により頭蓋骨および脳の容積に差が認められるのか否かを検討した。これらの参加者の中に認知症患者や脳卒中の既往歴のある人は含まれていなかった。参加者の脳MRIは、1999年3月18日から2019年11月15日の間に実施され、実施時の対象者の平均年齢は57.4歳(範囲45〜74歳)だった。

1日30分座位時間を減らすと高齢者の血圧が低下

 高齢者に対し、座って過ごす時間を減らすためのシンプルな介入を6カ月間実施したところ、1日当たりの座位時間を30分以上減らすことに成功し、収縮期血圧も低下したとする研究結果が報告された。米カイザーパーマネンテ・ワシントン・ヘルスリサーチ研究所のDori Rosenberg氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に3月27日掲載された。  今回の研究の背景情報によると、高齢者は通常、起きている時間の65〜80%を座位で過ごしている。このような座位中心の生活は、心疾患や糖尿病を招きかねない。

近くにあるAEDが心停止者に使われることはまれ

 この数年で、心停止者の命を救うための自動体外式除細動器(AED)を公共施設に設置する動きが大きく広がっているが、残念ながら、実際にAEDが使用される機会は少ないようだ。米ミズーリ大学カンザスシティ校のMirza Khan氏らによる研究で、病院の外の環境で起こった心停止(院外心停止)約1,800件のうち、AEDが使用されたのは13件のみであったことが示された。この研究結果は、米国心臓病学会(ACC 24、4月6〜8日、米アトランタ)で発表予定。  院外心停止症例の多くで近くにAEDが設置されていたが、バイスタンダー(心停止者の近くに居合わせた人)がそれに気付かなかった可能性がある。Khan氏は、「公共の場でのAEDの普及は、人々が適切なタイミングと方法でそれらを使用できるようにするためには重要だ。ただし、使用可能なAEDが近くにあることを人々が知る必要がある。適切な場所にAEDを設置するだけでは不十分なのだ」と指摘する。

加糖飲料とフルーツジュースは男子の2型糖尿病リスクを高める

 幼少期から10代前半にかけて、加糖飲料や果汁100%ジュースを多く摂取していた男子は、思春期後期に成長した時点でインスリン抵抗性が亢進し、2型糖尿病の発症リスクが高い状態にあることを示すデータが報告された。米ハーバード大学医学大学院のSoren Harnois-Leblanc氏らの研究によるもので、米国心臓協会(AHA)の生活習慣科学セッション(EPI-Lifestyle 2024、3月18~21日、シカゴ)で発表された。  この研究は、1999年から米国マサチューセッツ州東部で実施されている、母親とその子どもを対象とする長期コホート研究(Project Viva)のデータを用いて行われた。Project Vivaの研究期間中に出産した妊婦は2,128人で、子どもが幼児期(年齢中央値3.1歳)、小児期(同7.6歳)、および思春期前期(同12.9歳)という三つの時点で、母親に対して食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた子どもの食習慣の調査を実施。この調査に回答し、かつ糖尿病の家族歴のない子どもは972人で、そのうち思春期後期(年齢中央値17.4歳)に血液検査を受けていた455人(女子240人)を解析対象とした。