医療一般|page:148

歯科治療の中断が全身性疾患の悪化と有意に関連

 歯科治療の中断と、糖尿病や高血圧症、脂質異常症、心・脳血管疾患、喘息という全身性慢性疾患の病状の悪化が有意に関連しているとする研究結果が報告された。近畿大学医学部歯科口腔外科の榎本明史氏らの研究によるもので、詳細は「British Dental Journal」に4月11日掲載された。  近年、口腔疾患、特に歯周病が糖尿病と互いに悪影響を及ぼしあうことが注目されている。その対策のために、歯科と内科の診療連携が進められている。また、糖尿病との関連に比べるとエビデンスは少ないながら、心・脳血管疾患や高血圧症なども、歯周病と関連のあることが報告されている。歯周病とそれらの全身性疾患は、どちらも治療の継続が大切な疾患であり、通院治療の中断が状態の悪化(歯周病の進行、血糖値や血圧などのコントロール不良)につながりやすい。榎本氏らは、歯科治療を中断することが全身性疾患の病状に影響を及ぼす可能性を想定して、以下の横断的研究を行った。

睡眠時間のばらつきが双極性障害の再発リスクと関連~APPLEコホート研究

 双極性障害でみられる睡眠障害は、気分症状と密接に関連しているといわれている。愛知・桶狭間病院の江崎 悠一氏らは、双極性障害患者のアクチグラフによる睡眠パラメータと気分エピソードの再発との関連を調査した。その結果、双極性障害患者の気分エピソードの再発または再燃を予防するための補助療法として、睡眠時間を一定に保つ治療が有用である可能性が示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年4月24日号の報告。

青少年トランスジェンダーへの医療ケア、どうあるべき?

 米国を中心に、トランスジェンダー(出生時点の身体と自認の性別が一致していない人)をはじめとした性的マイノリティーに対する社会制度・配慮がどうあるべきかという議論が高まっている。トランスジェンダーを肯定した医療や制度整備を進めることを目的に、医学・法学などの専門家で構成される国際的非営利組織「世界トランスジェンダー保健専門家協会(World Professional Association for Transgender Health:WPATH)は、独自に「トランスジェンダーとジェンダー多様な人々の健康のためのケア基準」を作成している。10年ぶりの更新となる第8版(SOC-8)が2022年9月に発表され、JAMA誌2023年5月18日号にそのサマリーが公開された。

コロナ禍の日本人の自殺念慮に最も影響した要因は?/筑波大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時に孤独感を感じていた日本人では、収入減少や社会的孤立などの他の要因に比べ、自殺念慮のリスクが最も高かったことが、筑波大学 医学医療系災害・地域精神医学の太刀川 弘和氏らの研究により明らかになった。BMJ Open誌2023年5月15日号掲載の報告。  日本における自殺者数は、2020年は2万1,081人、2021年は2万1,007人、2022年は2万1,881人で、COVID-19流行前の2019年の2万169人よりも多いままである。自殺の多くは多様かつ複合的な原因および背景を有しているが、新型コロナウイルスへの感染の恐怖や失業などの経済問題に加え、ソーシャルディスタンスなどによる社会的孤立や孤独感の悪化があるとされている。しかし、自殺念慮にはこれらのどれが、どのように影響するかは不明である。そこで、研究グループは、COVID-19流行時の孤独感が自殺念慮に直接的・間接的にどのような影響を与えるかを明らかにするため調査を行った。

コロナ死の要因はウイルスではなく細菌感染?

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染により集中治療室(ICU)で治療を受ける患者は、ICU入室期間や人工呼吸器装着期間が長いことが報告されている。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のICU入室期間が長い理由の1つとして、サイトカインストームによる多臓器不全が挙げられている。しかし、米国・ノースウェスタン大学のCatherine A. Gao氏らが機械学習アプローチを用いて実施した研究によると、COVID-19患者におけるICU入室期間の長さは、呼吸不全を特徴とする臨床状態に起因していたことが示された。また、二次的な細菌感染による人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生率が高く、VAPが主な死亡の原因となっていることが示唆された。本研究結果は、Journal of Clinical Investigation誌オンライン版2023年4月27日号に掲載された。

2型糖尿病患者の7割は不適切な食習慣が関与して発症

 2018年の1年間で、世界で新たに2010万人が2型糖尿病を発症し、その7割は、不適切な食習慣が関与して発症した患者だとする報告が、「Nature Medicine」に4月17日掲載された。米タフツ大学のDariush Mozaffarian氏らの研究によるもの。不適切な食習慣とは、全粒穀物の不足、精製穀物や加工肉の取りすぎだという。Mozaffarian氏は、「われわれの研究結果によって、糖尿病による疾病負担を抑制するために、国家的あるいは世界的に取り組むべき、栄養上の課題が明らかになった」と述べている。

うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法

 うつ病患者から報告されたアウトカムは、患者の人生の充足、ウェルビーイング、価値ある活動などを反映している。カナダ・トロント大学のRoger S. McIntyre氏らは、うつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法による治療がライフ・エンゲージメントに及ぼす短期的および長期的な影響を検討するため、10項目の自己記入式うつ症状尺度(IDS-SR10)を用いて本研究を実施した。その結果、ブレクスピプラゾール補助療法は、抑うつ症状に対する効果だけでなく、患者のライフ・エンゲージメントの改善が期待でき、うつ病患者自身にとって意味のある機能的アウトカムを達成する可能性が示唆された。Journal of Psychiatric Research誌2023年6月号の報告。

北里大、コロナへのイベルメクチン第III相の論文公表

 北里大学が主導して実施した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象としたイベルメクチンの第III相臨床試験「CORVETTE-01」の結果については、2022年9月に同大学によって、主要評価項目においてプラセボとの統計学的有意差がなく、有効性が認められなかったことが発表されていた。本試験の結果が、Frontiers in Medicine誌2023年5月22日号に掲載された。

TTF-1は肺腺がんにおけるICI+化学療法の効果予測因子となるか/日本呼吸器学会

 肺腺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法の効果予測因子として、TTF‐1(Thyroid transcription factor-1)の可能性が研究されている。  TTF-1は甲状腺・肺・脳で認められる遺伝子調節蛋白である。肺腺がんにおいても、TTF−1との研究が報告されている。  肺腺がんではTTF-1陽性が多く60〜80%を占め、陰性は20〜40%である。TTF-1陽性例に比べ、陰性例は予後不良であるとされる。また、TTF-1の発現の有無は、化学療法薬ペメトレキセドの効果に影響を及ぼすとの報告がある。しかし、肺腺がんにおける、ICIとペメトレキセドを含む化学療法との併用療法とTTF-1発現の関係については十分に研究されていない。第63回日本呼吸器学会学術講演会でも、肺腺がんとTTF-1の関係を検討した研究がいくつか報告された。

大動脈弁狭窄症の死亡率の動向~日本含む高所得国

 カナダ・トロント大学の日尾野 誠氏らが、日本を含む高所得国8ヵ国における2000~20年の大動脈弁狭窄症の死亡率の動向を調査した結果、粗死亡率は8ヵ国とも増加したが、年齢標準化死亡率は3ヵ国(ドイツ、オーストラリア、米国)で減少傾向に転じ、80歳以上では8ヵ国で減少傾向に転じたことがわかった。Heart誌オンライン版2023年5月14日号に掲載。  本研究では、英国、ドイツ、フランス、イタリア、日本、オーストラリア、米国、カナダにおける2000~20年の大動脈弁狭窄症による死亡率の動向を調べるために、WHOのデータベースを用いて10万人当たり粗死亡率および年齢標準化死亡率、3つのグループ(64歳未満、65~79歳、80歳以上)の年齢層別死亡率を算出した。年間変化率は、結合点回帰を用いて分析した。

成人肺炎診療ガイドラインを先取りした肺炎の予防戦略/日本呼吸器学会

 肺炎は日本人の死因の5位に位置する主要な疾患である。高齢になるにつれて発生率、死亡率が高くなり、65歳以上の高齢者が死亡者全体の95%以上を占めている。したがって、高齢者肺炎の予防が重要といえる。本邦において、医療関連肺炎(HCAP)では肺炎球菌に加えて口腔内連鎖球菌、嫌気性菌が多かったという報告もあり、高齢者肺炎の予防戦略は「肺炎球菌ワクチン」と「口腔ケア」が2本柱といえる。改訂中の肺炎診療ガイドラインでは、これに対応して「肺炎の予防に口腔ケアを推奨するか」というCQ(クリニカルクエスチョン)が設定され、システマティックレビュー(SR)が実施された。

統合失調症における抗精神病薬の多剤併用と単剤療法の安全性比較

 東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、抗精神病薬の単剤療法と比較した多剤併用療法の安全性を検討した。その結果、抗精神病薬の単剤療法は、多剤併用療法と比較し、重度の身体的併存症による入院リスクの低下と関連していないことが示唆された。著者らは、安全性の問題に関する既存のエビデンスがない以上は、ガイドラインで抗精神病薬の多剤併用療法の代わりに単剤療法を推奨するべきではないとしている。The American Journal of Psychiatry誌2023年5月1日号の報告。  フィンランドの全国入院患者レジストリより統合失調症患者6万1,889例を特定し、1996~2017年にわたりフォローアップ調査を行った(フォローアップ期間中央値:14.8年[IQR=7.4~22.0])。非精神疾患および心血管系による入院など、重度の身体的併存症リスク(調整ハザード比:aHR)を、抗精神病薬の単剤療法と多剤併用療法における7つの用量カテゴリで比較した。7つの用量カテゴリは、1日当たりの服用量(DDD:defined daily doses)0.4未満、0.4~0.6未満、0.6~0.9未満、0.9~1.1未満、1.1~1.4未満、1.4~1.6未満、1.6以上であった。選択バイアスを除外するため、個別分析(Within-individual analysis)を用いた。

がん死亡率、ファストフード店の多さと関連

 住居地を選ぶ際にスーパーや飲食店へのアクセスの良さを考慮する人は少なくない。今回、米国・オーガスタ大学のMalcolm Seth Bevel氏らは米国における飲食店へのアクセス条件が肥満関連のがん死亡率と関係するのかどうかを調査した。近年、野菜などの生鮮食料品が入手困難な地域はFood Desert(食の砂漠)と呼ばれ、一方でファストフード店が多く集中し生鮮食品を取り扱う店が少ない地域はFood Swamp(食品沼)と呼ばれている。  今回の横断研究では、2012年、2014~15年、2017年、2020年の米国農務省(USDA)のFood Environment Atlasと、2010~20年の米国疾病予防管理センター(CDC)の18歳以上の成人の死亡率データを使用し、Food DesertとFood Swampの両スコアと肥満関連のがん死亡率との関連について調査した。

初夏はとくに注意!熱帯夜で死亡リスク増~47都道府県のデータ解析

 高過ぎる気温は死亡リスク上昇につながることが示唆されているが、ほとんどの研究は最高気温や平均気温を使用している。しかし、気温上昇は最高気温より最低気温のほうが速い。今回、筑波大学のSatbyul Estella Kim氏らは、最低気温が高い熱帯夜と死亡リスクとの関連を検討した。その結果、熱帯夜により死亡リスクが有意に増加し、さらに晩夏より初夏の熱帯夜で死亡リスクが高いことがわかった。Environmental Health Perspective誌2023年5月号に掲載。

脂漏性皮膚炎に1日1回のroflumilast外用薬が有望

 脂漏性皮膚炎による紅斑、鱗屑、そう痒の治療において、1日1回塗布のroflumilastフォーム0.3%(泡[フォーム]を形成する製剤)は、良好な有効性、安全性、および局所忍容性を示した。米国・オハイオ大学のMatthew J. Zirwas氏らが第IIa相二重盲検溶媒対照並行群無作為化試験の結果を報告した。脂漏性皮膚炎に対する局所治療の選択肢は、有効性や安全性の観点から限られている。脂漏性皮膚炎はあらゆる年代にみられ、全世界の有病率は5%以上とされる。roflumilastは選択的ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害薬であり、抗炎症作用を有する。経口薬は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として承認されており(本邦未承認)、外用薬は2022年7月に慢性尋常性乾癬への適応で米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。著者は、「今回の結果は、本剤の非ステロイド系外用薬としてのさらなる研究を支持するものである」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月3日号掲載の報告。

他の抗CGRP抗体への切り替えが有効な片頭痛患者の特徴は

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を介したモノクローナル抗体(mAb)は、片頭痛治療に有効な治療薬として承認されている。特定のmAbで治療反応が得られなかった患者に対し、別のmAbへ切り替えることで、ある程度の有効性が得られることが示唆されている。イタリア・フィレンツェ大学のLuigi Francesco Iannone氏らは、抗CGRP/リガンドmAbで治療反応が得られなかった患者における抗CGRP/受容体mAbへの切り替えによる治療効果、およびその逆における効果を評価した。その結果、特定の抗CGRP mAbで効果が不十分であった場合、他の抗CGRP mAbへの切り替えは臨床上の重要なオプションである可能性が示唆された。Cephalalgia誌2023年4月号の報告。

砂糖代替品に体重減少効果はなく、むしろ疾病リスク高める/WHOガイドライン

 世界保健機関(WHO)は、2023年5月15日付で、非糖質系甘味料(non-sugar sweeteners:NSS)に関するガイドラインを公開し、体重コントロールや非伝染性疾患(NCD)のリスク低減を目的としてNSSを摂取しないよう勧告する、と発表した。  この勧告は、新たな研究のシステマティックレビューの結果に基づいたもので、NSSの使用は、成人および小児の体脂肪を減らすうえで長期的な利益をもたらさないことを示唆している。さらにシステマティックレビューの結果として、成人の2型糖尿病、心血管疾患、死亡率のリスク増加など、NSSの長期使用による望ましくない影響の可能性が示唆されている。

進行乳がんへのHER3-DXd、効果予測因子は?(ICARUS-BREAST01)/ESMO BREAST 2023

 HR+/HER2-の進行乳がん患者に対し、HER3を標的としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)を投与した第II相ICARUS-BREAST01試験において、ベースライン時のHER3+の血中循環腫瘍細胞(CTC)数が多い患者、または1サイクル後にHER3+のCTC数が大きく減少した患者では、治療反応が早期に得られやすい傾向にあったことを、フランス・Gustave RoussyのBarbara Pistilli氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。  これまで、HER3+の再発/転移乳がん患者(HR+/HER2-、HER2+、トリプルネガティブ)に対する第I/II相U31402-A-J101試験において、HER3-DXdの有効性と安全性が示されている。この有用性はすべてのサブタイプで同様であり、HER3-DXdはHER3の発現量にあまり依存しない可能性が示唆されており、HER3-DXdに対する反応性/抵抗性のバイオマーカーは不明である。

認知症のリスク軽減とスクリーニングに対する意識調査

 認知症に対する薬理学的および非薬理学的介入は進歩しており、将来の認知症予防において、対象を絞ったスクリーニングやライフスタイルの改善に組み込まれていくことが期待される。認知症予防を推進していくうえで、コミュニティの関与を妨げる潜在的な問題を解決することは、認知症予防へのアクセスや実現の可能性を最大化するために重要である。オーストラリア・認知症研究連携センター(DCRC)のNikki-Anne Wilson氏らは、認知症のリスク軽減とスクリーニングに対する現在の考えおよび問題点を調査した。その結果、認知症のリスク軽減行動やスクリーニングに対する意欲が社会人口統計学的要因と有意に関連していることが明らかとなった。Alzheimer's Research & Therapy誌2023年4月10日号の報告。

SGLT2阻害薬の高齢者への処方の安全性-EMPA-ELDERLY/糖尿病学会

 5月11~13日、鹿児島で第66回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:西尾 善彦氏[鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「糖尿病学維新-つなぐ医療 拓く未来-」をテーマに開催された。  本稿では、近年、心血管疾患への治療適応も拡大しているSGLT2阻害薬について、口演「日本人高齢2型糖尿病患者を対象としたエンパグリフロジンの製販後試験」(矢部 大介氏[岐阜大学医学系研究科糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学 教授])をお届けする。