医療一般|page:266

統合失調症の新たな治療標的としてのPPARαの可能性

 統合失調症の病態生理は、いまだによくわかっていない。理化学研究所の和田 唯奈氏らは、統合失調症患者における核内受容体の一つであるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)/レチノイドX受容体(RXR)の役割について分析を行った。EBioMedicine誌2020年11月19日号の報告。  日本人統合失調症患者1,200例のDNAサンプルを用いて、分子反転プローブ(MIP)ベースのターゲット次世代シークエンシング(NGS)により、PPAR/RXR遺伝子のスクリーニングを行った。その結果について、日本のコホートデータ(ToMMo)やgnomADの全ゲノムシークエンスデータベースとの比較を行った。PPAR/RXR遺伝子の機能低下と統合失調症との関係を明らかにするため、Ppara KOマウスとフェノフィブラートを投与したマウスを用いて、行動学的、組織学的およびRNA-seq解析により評価を行った。

COVID-19パンデミックによるメンタルヘルスへの影響~メタ解析

 COVID-19に関連したうつ病、不安神経症、不眠症、PTSD、精神的苦痛(PD)の有病率を推定するため、カナダ・オタワ大学のJude Mary Cenat氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2020年11月26日号の報告。  Medline、Embase、APA PsycInfo、CINAHL、Scopus、Web of Scienceより検索を行った。うつ病、不安神経症、不眠症、PTSD、PDの有病率について性別、医療従事者、調査対象地域におけるグループ間の違いを評価するため、ランダム効果メタ解析を実施した。  主な結果は以下のとおり。

MSI-H大腸がん1次治療、ペムブロリズマブによるPFS延長証明(KEYNOTE-177)/NEJM

 抗PD-1抗体ペムブロリズマブについて、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)/ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の進行大腸がんの1次治療における有効性が示された。化学療法と比較して無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、治療関連有害事象は少ないことを、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らが無作為化非盲検第III相試験「KEYNOTE-177試験」で明らかにした。これまでに、既治療のMSI-H/dMMR腫瘍に対するPD-1阻害の臨床的有効性は示されているが、MSI-H/dMMR陽性の進行・転移を有する大腸がんに対する1次治療として、化学療法と比較した有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌2020年12月3日号掲載の報告。

COVID-19の症状悪化をフルボキサミンが抑制する可能性/JAMA

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬のフルボキサミンが、サイトカイン産生を調節するσ-1受容体を刺激することにより、軽度のCOVID-19患者の臨床的悪化を抑制する可能性が示唆された。米国セントルイス・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らは、症状を有するCOVID-19の成人外来患者を対象とした無作為化二重盲検比較試験において、フルボキサミンで治療された患者がプラセボより臨床的悪化が少なかったことを報告した。ただし、本研究はサンプルサイズが小さく観察期間が短いため、臨床効果を判断するために大規模無作為化試験が必要としている。JAMA誌2020年12月8日号に掲載。

すでに一度補助を受けた医療機関も対象、国による追加支援策/日医

 第3次補正予算案が12月15日に閣議決定され、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、医療機関に対する更なる支援策が講じられている。この中には、第2次補正予算による補助を受けた医療機関が、改めて対象となる支援策も含まれる。12月23日の日本医師会定例記者会見において、松本 吉郎常任理事が支援策の全体像を整理し、有効活用を呼び掛けた。

COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)を公開/日本感染症学会

 欧米では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種が2020年12月初旬に開始され、わが国でも接種開始が期待されている。日本感染症学会では、学会会員および国民に対し、現在海外で接種が開始されているCOVID-19ワクチンの有効性と安全性に関する科学的な情報を提供し、それぞれが接種の必要性を判断する際の参考にしてもらうべく、COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)を作成し、12月28日、学会サイトに公開した。今後、COVID-19ワクチンの国内外における状況の変化に伴い、内容を随時更新する予定という。

コロナ禍で増えた失業・自殺・労災請求、今後の見通しは?/日医

 日本医師会・松本 吉郎常任理事が、コロナ禍における今日の社会経済情報として、失業、自殺、労災認定などのデータを示しながら、日本医師会の見解を述べた。  まず、完全失業率(季節調整値)のデータを示し、本年10月は男3.4%、女2.7%(男女計3.1%)と、コロナ流行以前の1月(男2.4%、女2.2%、平均2.2%)と比較して高い状況にあることを説明。完全失業者のうち、「勤め先や事業の都合による離職」は45万人と、前年同月に比べ22万人増加している。割合としては男性より低い女性も、完全失業者数は「15~24歳」を除くすべての年齢階級で前年同月に比べ増加していることを示した。

国立がん研究センターの遺伝子パネル検査に基づく患者申出療養試験とは?/日本肺癌学会

 2019年6月に遺伝子パネル検査が保険適用になってから1年あまりが過ぎた。11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では、「遺伝子パネル検査によって肺がん診療はどう変わったか?」と題したシンポジウムが行われた。  この中で国立がん研究センター中央病院 臨床検査科の角南 久仁子氏は「がん遺伝子パネル検査に基づく新たな治療選択肢としての患者申出療養試験」と題し、同院が行う試験の概要を紹介した。  現在の遺伝子パネル検査を取り巻く問題点の1つに「パネル検査を受けても、治療への到達性が低い」ことがある。治療に結びつく遺伝子異常が検出されても、承認薬や治験といった薬剤の選択肢が限られているためだ。この問題に対応するため、保険診療もしくは先進医療で遺伝子パネル検査を実施した患者のうち、一定の基準を満たした場合に患者申出療養制度のもと既存承認薬を適応外使用して有効性を見る、というのが今回の試験(通称:受け皿試験)の概要。現状でも患者申出療養制度を用いて適応外薬剤を使用するという選択肢はあるが、申請に時間がかかる、データが蓄積されない、等の問題点があった。

新型コロナワクチン、国産希望が約7割/アイスタット

 世界的に収まる気配のない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、英国、米国、ロシア、中国などではCOVID-19ワクチンの投与が開始された。わが国でも国産ワクチンの開発・研究が進んでいるが、その道のりは険しい。  こうした社会の動きを踏まえ、株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀保夫)は、12月20日に「新型コロナウイルス感染症のワクチンに関するアンケート調査」を行った。  アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”に登録している会員で20歳~79歳の全員に調査を実施したもの。同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。

五十肩は関節内ステロイド注射が短期的に最も有効な治療

 五十肩(肩関節周囲炎)に対するさまざまな治療の有効性について、英国・グラスゴー大学のDimitris Challoumas氏らが65研究のメタ解析を行った結果、関節内ステロイド注射が他の治療(外科的治療を除く)と比べて短期での有用性が高く、その優位性は6ヵ月継続することがわかった。この結果から著者らは、五十肩には最初に関節内ステロイド注射が行われるべきとしている。JAMA Network Open誌2020年12月16日号に掲載。  本研究では、五十肩の治療について他の治療法やプラセボ/無治療と比較した無作為化試験を2020年2月にMedline、EMBASE、Scopus、CINHALで検索し、2名が独立して抽出した。主要評価項目は疼痛と機能、副次評価項目は外旋可動域であった。ペアワイズメタ解析の結果は、疼痛と外旋可動域の平均差および機能の標準化平均差として提示した。追跡期間について、短期(12週以下)、中期(12週超12ヵ月以下)、長期(12ヵ月超)に分けた。

COVID-19の希少疾病患者・家族への影響/特定非営利活動法人ASrid

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、不要不急の外出制限がされたことで、全国的に通常診療の診療控えがみられる事態となった。 こうした社会情勢下でCOVID-19は希少・難治性疾患を持つ患者、その家族にどのような影響を与えたか、希少・難治性疾患分野における全ステイクホルダーに向けたサービスの提供を目的に活動する特定非営利活動法人ASrid(アスリッド)は、全国の患者とその家族、患者団体向けに調査を行い、「COVID-19 が希少・難治性疾患の患者・家族および患者団体に与える影響に関する調査報告書(一次報告)」としてまとめ、結果を発表した(なお、分析は欠損値を除外して実施している)。

軽度から中等度のアルツハイマー病に対する抗Aβ標的薬の有用性~メタ解析

 軽度から中等度のアルツハイマー病に対するAβ標的薬の有効性および安全性を評価するため、中国・広州中医薬大学のLiming Lu氏らが、メタ解析を実施した。Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry誌2020年12月号の報告。  2020年4月までの研究を各電子データベースより検査した。プールされた推定値の算出には、ランダム効果メタ解析を用いた。  主な結果は以下のとおり。

研修医が希望する研修病院の特徴とは?

 わが国では、2004年から2年間のスーパーローテートによる初期臨床研修プログラムが導入された。同時に最も適した研修プログラムを決定するため、全国的にマッチングシステムが確立された。毎年、研修医と研修施設とのマッチングの結果が公表され、双方で一喜一憂する姿が散見されている。マッチングで人気の高い研修施設とは、どのような施設なのだろうか。順天堂大学医学部 医学教育研究室 西崎 祐史氏らはマッチングで人気の高い研修施設の特徴を検討した。   この研究では、2019年度の医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)中間発表データから、各研修プログラムの応募枠数あたりの第1希望の応募者数(マッチング比)を比較した。比較に用いた変数は臨床研修プログラム検索サイト(REIS)などから抽出した、給料、ボーナスの有無、年間の受け入れ救急車件数、都道府県あたりの人口、シニアレジデント(卒後3~5年)受入数、新幹線の駅の有無などの情報であった。同一施設内の研修プログラム間の相関は一般化推定方程式で考慮された。

維持期双極性障害に対する薬物療法~ネットワークメタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、維持期の双極性障害患者に対する薬物療法において、どの抗精神病薬および/または気分安定薬が優れているかを調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2020年11月11日号の報告。  2020年5月22日までに公表された研究を、Embase、PubMed、CENTRALより検索した。2つのカテゴリーにおけるネットワークメタ解析を実施した。カテゴリー1には、単剤療法の研究および2種類の使用薬剤が特定された研究を含めた。カテゴリー2には、リチウム(LIT)またはバルプロ酸(VAL)と第2世代抗精神病薬(SGA:アリピプラゾール、ルラシドン、オランザピン、クエチアピン、ziprasidone)を併用し、プラセボ+LIT/VALと比較した研究を含めた。主要アウトカムは、いずれかの気分エピソードの再発再燃率とした。その他のアウトカムは、うつ病エピソードおよび躁病/軽躁病/混合エピソードの再発再燃率、中止率、死亡率、各有害事象とした。リスク比と95%信頼区間(CI)を算出した。

COVID-19へのシクレソニド、肺炎増悪抑制せず/国立国際医療研究センター

 COVID-19の治療薬候補として期待されているシクレソニドについて、肺炎のない軽症COVID-19患者90例を対象に肺炎の増悪抑制効果および安全性を検討した、全国21施設における多施設共同非盲検ランダム化第II相試験の結果、有効性が示されなかった。2020年12月23日、国立国際医療研究センターが発表した。米国含む海外にて実施されている検証的な臨床試験の結果も踏まえて判断する必要があるが、今回の研究結果からは無症状・軽症のCOVID-19患者に対するシクレソニド吸入剤の投与は推奨できないとしている。

日本人EGFR変異肺がん1次治療、エルロチニブ+ベバシズマブのOS(JO25567)/Lung Cancer

 EGFRとVEGF阻害薬の併用療法は有益なのか。日本人を対象とした無作為化第II相JO25567試験において、化学療法未治療EGFR遺伝子変異陽性非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、エルロチニブ+ベバシズマブ併用療法はエルロチニブ単剤に比べ全生存(OS)期間の有意差は認められなかった。和歌山県立医科大学の山本信之氏らが、追跡期間中央値34.7ヵ月における最終解析の結果で、患者個々の特性による違いもみられなかったという。同試験では無増悪生存(PFS)期間を有意に延長することが示されており、今回のアップデート解析でもPFSについては有意な延長が認められた。著者は今回の結果を踏まえて、「EGFRとVEGF阻害薬の併用療法を評価する進行中の試験の結果が待ち望まれる」と述べている。Lung Cancer誌2020年11月20日号掲載の報告。

インフルエンザは1,000分の1、COVID-19余波でその他感染症が激減

 日本感染症学会と日本環境感染学会を中心に各医学会や企業・団体が連携し、感染症の予防に向けた啓発活動を行う共同プロジェクト「FUSEGU2020」は、2021年に開催が予定されるオリンピックを鑑み、注意すべき感染症と2020年の感染症流行の状況を解説するメディアセミナーを行った。  セミナーにおいて、防衛医科大学校内科学(感染症・呼吸器)教授の川名 明彦氏が「国際的マスギャザリングに向け、注意すべき感染症」と題した発表を行った。川名氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行を受け、その他の感染症の流行状況に大きな変化が生じている状況を紹介した。

大腸がんの術後補助化学療法、CAPOX療法3ヵ月投与の意義(IDEA)/Lancet Oncol

 StageIII大腸がん患者を対象とした術後補助化学療法について、無作為化第III相試験6件を前向きに統合解析した結果が報告された。フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らInternational Duration Evaluation of Adjuvant Therapy(IDEA)collaborationによる検討で、全生存(OS)期間に関して、3ヵ月投与の6ヵ月投与に対する非劣性は示されなかったが、最終解析の結果、5年OSの絶対差は0.4%であった。結果を踏まえて著者は、「StageIII大腸がんに対する術後補助化学療法では、臨床的にほとんどの患者において3ヵ月間のCAPOX療法が支持される」と述べたうえで、「この結論は、投与期間の短縮による毒性や医療費の軽減によってさらに強固なものとなる」とまとめている。Lancet Oncology誌2020年12月号掲載の報告。

統合失調症の心臓突然死リスク、抗精神病薬と年齢との関係

 抗精神病薬を服用している統合失調症患者の心臓突然死リスクに対する年齢の影響について、台湾・台北医科大学のPao-Huan Chen氏らが調査を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌2020年11月号の報告。  対象は、台湾全民健康保険研究データベースおよび死亡診断書システムより抽出した、2000~16年に心臓突然死で死亡した統合失調症患者1,836例。14日間のウインドウ期間を設定したクロスオーバー研究を実施した。サブグループ解析では、患者の年齢で3群(45歳未満、45~65歳、66歳以上)に層別化し、抗精神病薬を服用している患者の心臓突然死リスクに対する年齢の影響を評価した。

血液による乳がん検診法開発へ、初の大規模試験開始/国立がん研究センター

 血液中マイクロRNAがんマーカーの乳がん検診での応用を検証する、3,000人対象の大規模臨床試験が全国 4 道県でスタートする。研究班は国立がん研究センターを中心に、国立国際医療研究センター、東京医科大学、日本対がん協会、東レの研究者らで構成し、北海道と福井県、愛媛県、鹿児島の各日本対がん協会支部、がん専門病院、大学病院などの協力を得て実施される。12月14日、国立がん研究センターがプレスリリースで発表した。  本試験で用いるのは、各検診機関での乳がん検診受診者の血液検体。がん等の疾患にともなって種類や量が変動することが明らかになっている血液中のマイクロRNAを東レの3Dジーンという技術で測定する。この測定には、13 種類のがんを対象にした「体液中マイクロ RNA 測定技術基盤開発」(2014~18 年度)で開発された診断モデルと検出技術が用いられる。本試験は、この基礎研究での成果を実際のがん検診で応用できるかどうかを検証するために計画されたもので、13 種類一つひとつのがんについて精度を検証していく必要があるとの考えから、まずは検出方法の開発が先行している乳がんを対象に初めて実施される。