CLEAR!ジャーナル四天王|page:71

LIFE試験:運動をしても認知機能にほとんど影響なし(そろそろ視点を変えよう)(解説:岡村 毅 氏)-406

ネガティブなデータの報告であるが、きわめて価値の高い論文である。その内容は、運動介入が高齢者(70代、80代)の方の縦断的な認知機能に影響を与えなかったというものである。本研究は強い説得力を持っている。なぜなら、818例対817例という大規模な研究であり、2年という長期にわたって介入をしており、さらに基本属性に加え健康関連要因(疾患や、アポリポ蛋白まで含めて)の調整をしているからだ。

胃の前がん病変における胃がんの発症リスク:欧米の低危険群を対象としたコホート研究(解説:上村 直実 氏)-405

胃前がん病変の胃がんリスクに関する研究は、胃がんの最多国である日本のお家芸と思われているが、世界的にみると1992年に報告されたCorreaの仮説に基づく研究が主たるものである。今回、胃粘膜から内視鏡的に採取された生検組織像により分類された、グループ別の胃がん発症リスクに関する大規模なコホート研究の結果が、スウェーデンより報告された。

医療機器では市販後臨床試験が重要になりつつある(解説:折笠 秀樹 氏)-404

薬剤溶出性ステントなどのハイリスクな医療機器で、米国FDAが2010年と2011年に承認した28品目について、機器の一生(Total product life cycle)を調査した。クラス分類で言うとクラスIIIあるいはIVに相当すると思われる。米国ではPMA(Premarket approval)により機器は承認され、その後PAS(Post approval studies)が実施される。機器の一生とは、このPMAとPASで実施される臨床試験として定義する。

早期乳がんにおける術後補助療法としてのビスホスホネート:無作為化試験からの個々のデータのメタ分析(解説:矢形 寛 氏)-402

ビスホスホネートは、転移抑制、とくに骨転移の予防に効果を示す可能性が指摘されているが、臨床試験によって結果が一定していない。しかし、サブセット解析では、閉経後または高齢女性に対してはベネフィットが示唆されている。そこで、術後補助療法としてのビスホスホネートのリスクとベネフィットを明らかにするため、Early Breast Cancer Trialists’Collaborative Group(EBCTCG)のグループによってメタ分析が行われた。主要評価項目は、再発、遠隔再発と乳がん死である。主要サブグループ調査項目は、遠隔転移部位(骨とそれ以外)、閉経状態(閉経後[自然および人工]とそれ以外)、ビスホスホネートのクラス(アミノ基を含有するもの[ゾレドロン酸、イバンドロン酸、パミドロン酸]とそれ以外[クロドロン酸])である。

ASPECT-cUTI試験:複雑性尿路感染症におけるセフトロザン/タゾバクタムの治療効果~レボフロキサシンとの第III相比較試験(解説:吉田 敦 氏)-401

腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症の治療は、薬剤耐性菌の増加と蔓延によって選択できる薬剤が限られ、困難な状況に直面している。セファロスポリン系の注射薬であるセフトロザンとタゾバクタムの合剤である、セフトロザン/タゾバクタムは、βラクタマーゼを産生するグラム陰性桿菌に効果を有するとされ、これまで腹腔内感染症や院内肺炎で評価が行われてきた。今回、複雑性尿路感染症例を対象とした第III相試験が行われ、その効果と副作用が検証され、Lancet誌に発表された。

病院での手指衛生を向上させる介入とは? ―システマティックレビューとネットワークメタアナリシスによる解析―(解説:吉田 敦 氏)-400

医療関連感染を少なくする最も有効な手段は、スタッフの手指衛生を向上させることである。しかしながら、それが遵守されていない病院は多い。WHOは2005年に、病院での手指衛生の向上を目的とした一連のキャンペーン「Clean Care is Safer Care 清潔なケアがより安全なケア」(WHO-5)を開始した。これは以下の5点、(1)組織変革、(2)トレーニング/教育、(3)評価とフィードバック、(4)作業場でのリマインダー、(5)組織的な安全風土、を骨子とし、それらを組み合わせたものである。今回、WHO-5が実際の手指衛生行動を変容させたかについて、システマティックレビューとメタアナリシスによる解析が行われ、BMJ誌に発表された。

PADIS-PE試験:ワルファリンをいつ中止するのが良いのか?~特発性肺血栓塞栓症の初発患者の場合(解説:西垣 和彦 氏)-398

ワルファリンは、いわば“両刃の剣”である。深部静脈血栓症(DVT)を含めた静脈血栓塞栓症(VTE)による肺血栓塞栓症(PE)予防の有効性は顕著であるが、抗血栓薬自体の宿命でもある出血も、しばしば致命的となる症例も少なくない。したがって、メリットとデメリットを十分に勘案し、最大限の効果が得られる抗凝固療法継続期間を求めることには必然性がある。

ピオグリタゾンとがん(解説:吉岡 成人 氏)-397

日本における糖尿病患者の死因の第1位は「がん」であり、糖尿病患者の高齢化と相まって、糖尿病患者の2人に1人はがんになり、3人に1人ががんで死亡する時代となっている。日本人の2型糖尿病患者におけるがん罹患のハザード比は1.20前後であり、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが増加することが、疫学調査によって確認されている。糖尿病によってがんの罹患リスクが上昇するメカニズムとしては、インスリン抵抗性、高インスリン血症の影響が大きいと考えられている。インスリンはインスリン受容体のみならず、インスリン様成長因子(IGF-1)の受容体とも結合することで細胞増殖を促し、がんの発生、増殖にも関連する。

ADVICE試験:心房細動アブレーションにおいてアデノシンによるdormant conductionの確認は必要か?(解説:高月 誠司 氏)-395

 心房細動のトリガーの多くは肺静脈に存在し、肺静脈入口部周囲を焼灼し、肺静脈と左心房との電気伝導をブロックすることで心房細動を予防するというのが、発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションである。これを肺静脈隔離と呼ぶが、肺静脈隔離後にアデノシンを急速静注すると、一時的に肺静脈と左房との伝導が再開することがある。これをdormant conduction (DoC)と呼んでいる。dormantとは休んでいるという意味である。

優れた抗血栓性を目指し、ポンプ本体の内面をすべて生体材料で構成したCARMAT完全植込み完全置換型の開発と世界最初の臨床応用(解説:許 俊鋭 氏)-394

 2008年に、僧帽弁形成手術で世界的に著名な心臓外科医Alain Carpentier氏が、真に心臓移植の代替治療となりうる完全植込み完全置換型(fully implantable artificial heart)の臨床治験を、2011年までに実施する準備ができたと発表した。

急速な経年的1秒量低下はCOPD発症の必須要素か?(解説:小林 英夫 氏)-393

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、1秒量の経年的低下が正常者より急速であるという見解が従来の定説だった。1977年にFletcher氏によって報告され、その後、改変図がさまざまに引用されてきた。筆者もFletcher説を学び、厚労省サイトにも掲載されている。今回のLange論文は定説であったFletcher論文に一石を投じたもので、強い印象を与える。COPD発症には、当初からの1秒量(FEV1)低値も重要であって、急速なFEV1減少だけが必須の特性とは限らないと、コペンハーゲン大学 Peter Lange氏らは結論している。

ピロリ菌に対する経口組み換え型ワクチンに関する第III相試験(解説:上村 直実 氏)-392

 胃潰瘍や十二指腸潰瘍および胃がんの最大要因であることが判明したピロリ菌に対する、経口組換え型ワクチンに関する大規模な第III相試験の結果が、中国から報告された。6~15歳の健康児童4,464例を対象とした、無作為化二重盲検プラセボ対照試験が行われた結果、接種後1年以内における新たなピロリ菌感染は、ワクチン摂取群2,199例中14例(0.63%)がプラセボ群2,204例中50例(2.24%)に比べて有意に低率であった。さらに、接種後3年間のワクチン摂取群の累積感染率(1.36%)もプラセボ群(3.86%)に比べて有意に低率であった。なお、獲得免疫評価に関する検討では、特異的な抗ウレアーゼBサブユニットの血清IgGと唾液中IgAの平均抗体価は、ベースラインでは両群で同等だったが、ワクチン接種後の3年時点までワクチン群が有意に高値であった。

脳卒中は認知症を誘発するのみならず、認知症の進行を促進する(解説:内山 真一郎 氏)-391

 REGARDSに登録された米国住民から、認知障害のない45歳以上の2万3,572例を抽出し、平均6年間追跡調査したところ、515例が脳卒中を発症した。各種認知機能検査の変化を脳卒中発症群と非発症群で比較したところ、脳卒中発症群では非発症群と比較して、急性の認知機能低下と6年間の認知機能低下の促進と持続的低下が生じていた。

マイクロシミュレーションモデルを用いた大腸腺腫検出率と大腸がん検診の解析(解説:上村 直実 氏)-389

 住民検診や企業検診および人間ドックにおいて、使用される検査自体の精度管理は非常に重要である。今回、地域における大腸内視鏡を用いた大腸がん検診では、腺腫検出率(adenoma detection rate:ADR)が高いほど、生涯にわたる大腸がんの発症や大腸がん死亡のリスクが抑制されるとともに、費用対効果にも優れていることがオランダから報告された。

STAR AF II:持続性心房細動に対する左房内アブレーションは善か?悪か?(解説:矢崎 義直 氏)-388

 STAR AF IIは持続性心房細動に対し、肺静脈隔離のみ施行した群と、肺静脈隔離に加え左房の線状焼灼またはCFAEアブレーションを追加した群との治療効果を比較したtrialである。持続性心房細動のみを対象とし、無作為割り付けでアブレーション方法を比較した大規模臨床試験はまだ少なく注目を集めていたが、予想外の結果となった。