CLEAR!ジャーナル四天王|page:54

流行性耳下腺炎アウトブレイク時のMMRワクチン追加接種の有効性(解説:小金丸博氏)-744

流行性耳下腺炎(ムンプス)は、ワクチンで予防可能なウイルス疾患である。米国では麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン(MMRワクチン)の2回接種がワクチンプログラムに組み込まれており、ムンプス症例は2005年までに99%減少したが、近年も数千人規模のアウトブレイク事例が報告されている。ムンプスのアウトブレイクは、90%以上がきちんとワクチンの2回接種を済ましている大学生の間でも、たびたび報告されている。アウトブレイクを制御するための手段の1つにMMRワクチン3回目の追加接種が挙げられるが、この方法の有効性は明確になっていなかった。

エキセナチドの週1回製剤とリラグルチドの週1回製剤は異なる作用を持つのだろうか…?(解説:吉岡成人 氏)-743

GLP-1受容体作動薬であるリラグルチドとリラグルチドの週1回製剤であるセマグルチドは、LEADER(Liraglutide Effect and Action in Diabetes: Evaluation of Cardiovascular Outcome Results)、SUSTAIN-6(Trial to Evaluate Cardiovascular and other Long-Term Outcomes with Semaglutide in Subjects with Type2 Diabetes)の2つの臨床試験により、心血管イベントに対して一定の抑制効果があることが示されている。「GLP-1受容体作動薬」そのものにGLP-1を介した心血管イベント抑制の効果があるのではないかと考えられていたのだが、エキセナチド徐放剤(商品名:ビデュリオン、エキセナチドをマイクロスフェアに包埋し持続的に放出する製剤)の週1回投与では心血管死、心筋梗塞、脳卒中を抑止する効果が認められなかったとする報告がなされた。

エイズ治療薬:横綱同士の優勝決定戦(解説:岡慎一氏)-742

先に報告したGS-US-380-1489試験は、ともに1日1回1錠で治療できる合剤同士(bictegravir/エムトリシタビン/テノホビル・アラフェナミド vs.ドルテグラビル/アバカビル/ラミブジン)のRCTであったが、今回の試験は、bictegravirの合剤とドルテグラビル+エムトリシタビン/テノホビル・アラフェナミドの2剤の治療を比較するRCTである。

エイズ治療薬:横綱同士のQD本割り決戦(解説:岡慎一氏)-741

2000年以降のエイズ治療薬の進歩は著しく、いまや1日1回1錠を飲めば、HIV感染者の余命は、一般人とほぼ同じである。先進国で、この10年間の治療薬の変遷をみると、当時はプロテアーゼ阻害薬(PI)が治療の中心であった。しかし、PIは他剤との相互作用が問題になることや、副作用として脂質や糖代謝異常が起こり、それが原因での心筋梗塞が増加することが明らかになり、この数年は今回の試験薬であるインテグラーゼ阻害薬(INSTI)がよく用いられている。

炭水化物過剰摂取は全死亡を増やすが心血管病発症に影響せず(解説:島田俊夫氏)-740

生活習慣病は文字通り生活の悪習が原因で発症する病気で、発症を抑えるためには生活習慣の改善が必要不可欠である。生活習慣の基本は食および運動習慣の改善に尽きる。その中でも、食習慣は健康維持に最も重要である。食に関しては多くの論文報告があるが、その多くが欧米のデータに基づいており、食習慣の異なる国・地域に対して、これまでの成果を短絡的に敷衍できるか不明な点も多い。とくに、欧米に比べて全食事カロリーに占める炭水化物の比率が高いアジア諸国の人々に対して、これまでの成果を適用しうるか否かは疑問の多いところである。Lancet誌の2017年8月29日号で、カナダ・マックマスター大学のMahshid Dehghan氏らが、5大陸18ヵ国の全死亡・心血管疾患への食の影響を検討した大規模前向きコホート研究(PURE)の成果を報告した。本論文は幅広い国・地域集団をカバーするデータ解析に基づく興味深い論文であり、私見をコメントする。

米国で経鼻弱毒生インフルエンザワクチンが非推奨へ変更された理由(解説:小金丸博氏)-739

米国では2003年より、経鼻タイプの弱毒生インフルエンザワクチンが導入された。経鼻弱毒生ワクチンは一般的な不活化ワクチンと比べて予防効果が高いとされ、とくに小児領域で高い評価を受けてきた。日本でも2016年に承認申請が出され、国内での流通開始が待ち望まれていたワクチンだったが、米国予防接種諮問委員会(ACIP)は一転「2016-17年シーズンの弱毒生インフルエンザワクチンの接種を推奨しない」と勧告した。本論文を読むことで、経鼻弱毒生ワクチンが非推奨へ変わった理由を知ることができる。

高血圧治療法の新たな展開?(解説:冨山博史 氏/椎名一紀 氏)-738

腎除神経の有意な降圧効果が確認され、高血圧発症・進展における交感神経の重要性が再注目されている。生体における循環動態は一定でなく体位や環境要因などで変動するが、恒常性を維持するために圧受容体反射が重要な役割を有する。圧受容体反射は、血圧上昇に伴う頸動脈伸展刺激が求心刺激となり、延髄循環調節中枢を介して徐脈・降圧に作用するオープンループシステムである。基礎実験にて、デバイスによる頸動脈伸展刺激は降圧効果を示すことが報告されている。

GLP-1受容体作動薬は心イベントのみならず、腎イベントも抑制する(解説:吉岡成人 氏)-735

2017年に公表された米国糖尿病学会のガイドラインでは、心血管疾患のハイリスク患者に対するGLP-1受容体作動薬の使用が推奨されている。その根拠となっている臨床試験がLEADER試験(Liraglutide Effect and Action in Diabetes: Evaluation of Cardiovascular Outcome Results)であり、リラグルチドによって2型糖尿病患者の心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死的脳卒中)がわずかではあるが、統計学的に有意差をもって抑制される(ハザード比:0.87、95%信頼区間:0.87~0.97)ことが示されている。今回の報告は、LEADER試験の副次評価項目としての腎アウトカムについて分析したものである。

パーキンソン病におけるエキセナチド週1回投与の効果(解説:山本康正 氏)-736

2型糖尿病に使用されているglucagon-like peptide-1(GLP-1)の受容体作動薬であるエキセナチドには、げっ歯類において神経毒により作成されたパーキンソン病モデルで神経保護作用・神経修復作用があることが示されている。著者らは以前に、少数例のオープンラベル試験でエキセナチドがパーキンソン病患者の運動・認知機能障害を改善した結果を得ており、今回パーキンソン病患者に対するエキセナチドの効果を、single-centre, randomized, double-blind, placebo-controlled trialによって確認する試験を行った。

目がテン! 最新DESのストラットは髪より細い! 進化する金属製DESを科学する(中川義久 氏)-734

金属製薬物溶出ステント(DES)の進化は著しいものがあり、完成度は高い。先日、バルセロナで開催された欧州心臓病学会2017において、新規DESであるOrsiro stent(オシロ・ステント)について最新の知見が発表された。Orsiroは超薄型ストラット生体吸収性ポリマー・シロリムス溶出ステントである。これと非生体吸収性ポリマー・エベロリムス溶出ステントであるXienceとを比較したものが「BIOFLOW V試験」であり、Lancet誌オンライン版2017年8月26日号に結果が掲載されている。本研究の主要エンドポイントは、12ヵ月時点の標的病変不全(TLF:心血管死、標的血管に関連するMI、虚血由来のTLR)の発生である。OrsiroとXienceの両ステントに無作為に2:1に割り付けている。その結果、12ヵ月時点のTLFの発生は、Orsiro群は52/883例(6%)、Xience群では41/427例(10%)であった(95%信頼区間[CI]:-6.84~-0.29、p=0.0399)。このようにOrsiroが有意に優れる結果であった。本発表の真の目的は、他の2つの無作為化試験の結果と統合して解析し、非劣性を示すことにあった。その検討でも、OrsiroはXienceに対して非劣性を示すことに成功した。

SPYRAL HTN-OFF MED研究:腎除神経は降圧効果を有するか?(解説:冨山博史 氏)-733

SPYRAL HTN-OFF MEDは、軽症・中等症高血圧症例80例を対象に腎除神経の降圧効果の有意性を検証した研究である。結果は、腎除神経群では治療3ヵ月後の外来収縮期血圧が10mmHg、24時間収縮期血圧が5.5mmHg低下した。一方、対照群(Sham手技)では外来収縮期血圧2.3mmHg、24時間収縮期血圧0.5mmHgの低下であり、両群間に有意差を確認した。ゆえに、本研究では腎除神経が有意な降圧作用を有すると結論している。

利尿ペプチドNT-proBNPガイドによる心不全診療は通常診療に勝るか?(解説:今井 靖 氏)-732

本邦において心不全患者が増加の途にあるが、その診療は病歴、身体所見および胸部X線写真などの臨床所見を基に行うが、最近ではBNPまたはNT-proBNPといった利尿ペプチドを診療ガイドに使用することが多い。それら利尿ペプチドが心不全診断や予後予測に有用であることには多くのエビデンスがあるが、しかしながら、そのようなバイオマーカーガイドによる心不全診療の有効性については小規模集団での検討はあるものの結果は一定せず、それを検証する意義は大きいと考えられる。

乳房部分照射単独の有効性を明らかにした重要な報告(解説:矢形 寛 氏)-731

本報告では、閉経後女性で、比較的低リスクの乳がん、2mm以上の断端陰性を確保した場合に、部分照射の適応となっている。実際、大部分が腫瘍グレード2以下、リンパ節転移陰性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性である。そのため、化学療法はほとんどの例で行われておらず、内分泌療法のみである。

患者さんにとって福音である迅速審査の実態が好ましくなさそうだ(解説:折笠 秀樹 氏)-730

米国FDAが迅速審査で承認された薬剤を対象として、承認前と承認後の臨床研究について調査がなされた。迅速審査は悪性腫瘍や難病などの重篤な疾患に対して適用される制度であり、代替エンドポイントの結果に基づいて承認がなされる。その代わり、承認後に真のエンドポイントで科学的に立証することが求められている。2009~13年に迅速承認された22剤(24適応)が、今回の調査対象となった。そのうちの79%(=19/24)は悪性腫瘍領域であった。承認前に実施された臨床研究は30件、承認後に実施された臨床研究は18件であった。

医療機器の適応追加・設計変更に用いた臨床データは不十分なのか(解説:折笠 秀樹 氏)-729

医療機器の場合、しばしば適応追加(対象拡大)や設計変更がなされる。承認済みの医療機器の変更申請に際して、米国FDAでは大別してTraditional PMAとPanel-track PMA supplementという方法がある(Guidance for Industry and FDA Staff: Modifications to Devices Subject to PMA)。後者のほうが厳しくない方法のようだが、それにも6つのパスウェイがある。そのうち、今回はPanel-track supplementパスウェイに焦点を当てた。これは、医療機器の設計・性能上の重大な変更、および新たな適応追加に適用されるパスウェイである。ここでは、必ず臨床研究データの提出が要求される。本調査では、要求された臨床研究データの特徴について調査した。対象となったのは、米国FDAで2006~15年の約10年間に承認された、ハイリスク医療機器78件である。

扱っている題材は大変真面目なものであるが(解説:野間 重孝 氏)-726

多くの先進国においては、ガイドライン上に今でも記載はされているものの、実臨床の場で急性心筋梗塞に対する経静脈的血栓溶解療法は、何らかの理由で救急センターへの搬送が容易でないような例外例を除いては、すでに行われなくなっているといってよいと思われる。しかしながら一方で、医療資源の乏しい環境下での機械的再灌流の代替え療法として、発展途上国などではいまだに重要な役割を担っていることも事実であるといえる。

急性期脳梗塞患者の血流再開、吸引型 vs.ステント型(ASTER Trial)(中川原譲二氏)-725

急性期脳梗塞患者に対する吸引型デバイスによる血流再開(contact aspirationまたはa direct aspiration first pass technique[ADAPT])と、ステントリトリーバーによる血流再開の優劣は、両者の無作為化比較試験の欠如からいまだに不明である。そこで、主幹動脈閉塞を有する急性期脳梗塞患者において、良好な再開通のための第1選択となる血管内治療法として、吸引型デバイスまたはステントリトリーバーを用いた場合の有効性と有害事象を比較する目的で、ASTER試験(The Contact Aspiration vs Stent Retriever for Successful Revascularization study)が行われた。