CLEAR!ジャーナル四天王|page:15

オミクロン株とデルタ株の流行時期における、COVID-19に伴う症状の違いや入院リスク、症状持続時間について(解説:寺田教彦氏)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、流行株の種類により感染力や重症化率、ワクチンの効果が変化していることはニュースでも取り上げられている。これらのほかに、流行株により臨床症状が変わってきたことも医療現場では感じることがあるのではないだろうか?例えば、2020年にイタリアから報告されたCOVID-19に伴う症状では、味覚・嗅覚障害が新型コロナウイルス感染症の50%以上に認められ、特徴的な症状の1つと考えられていたが、それに比して咽頭痛や鼻汁などの上気道症状は少なかった(Carfi A, et.al. JAMA 2020;324:603-605.)。ところが、2022年4月現在の臨床現場の感覚としては、COVID-19に伴う症状は咽頭痛や声の変化を訴える患者が増えてきており、味覚・嗅覚障害を理由に検査を新型コロナウイルスのPCR検査を受ける人はほとんどいなくなったように思われる。

心不全患者における減塩は効果があるのか?(解説:石川讓治氏)

食塩の摂取過剰が体液貯留を招き、心不全の症状悪化や再入院の原因となると広く信じられている。われわれは、心不全治療ガイドラインに準じて、食塩摂取量を1日6g以下にするように患者指導することを日常的に行ってきたが、減塩は患者にとっては非常につらいことで、食べ物がおいしくないと不平を漏らす患者も多い。食塩の過剰摂取が心血管イベントの発症リスク増加と関連し、代用塩の使用がリスクを低下させたことが近年の地域一般住民における疫学調査で示されているものの、心不全患者に対する減塩の効果を評価した既存のエビデンスは症例数も少なく生活の質に対する効果を評価したものが多かった。本研究は大きな症例数で、総死亡、心不全再入院、心不全増悪による外来受診も評価項目に含まれており有意義な研究であると思われた。しかし、残念ながら結果として1日ナトリウム摂取量1,500mg未満(食塩3.81g)を目指した食事指導で、わずかに生活の質が改善したものの、1年間の総死亡、心不全再入院、心不全増悪による外来受診回数も有意には減少しなかった。

妊娠中の新型コロナウイルス感染症へのワクチン接種は出産時合併症リスクに影響せず(解説:前田裕斗氏)

新型コロナウイルス感染症は妊婦で重症化しやすいことが知られており、罹患によって母体死亡や帝王切開となるリスクが上昇することがすでに報告されている。一方、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が母体・胎児・出産にもたらす影響については大規模な研究報告がこれまでなかった。本研究はカナダ・オンタリオ州で行われた9万7,590人を対象とし、妊娠中にワクチン接種を行った群、産後にワクチン接種を行った群、ワクチン接種を行った記録のない群で出産時合併症の有無を比較した報告である。結果として、産後大出血、絨毛膜羊膜炎(子宮内感染と考えてよい)、帝王切開、緊急帝王切開、NICU入院、新生児仮死いずれもワクチン接種群とその他の群の間で差は認められなかった。また、ワクチンを受けた回数、1回目に受けたワクチンの種類、ワクチン接種を受けた時期で層別化したいずれの解析でもやはり各群で合併症に差は認められなかった。

妊娠中の新型コロナウイルス感染症へのワクチン接種は妊娠中合併症リスクに影響せず(解説:前田裕斗氏)

新型コロナウイルス感染症に妊娠中感染することで早産や妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症のリスクが上昇することが報告されている。一方、妊娠中のワクチン接種には根強い抵抗があり、臨床現場でもその安全性について質問される機会も多い。これまでも妊娠中ワクチン接種と妊娠合併症の関係を調査した論文は多かったが、病院ベースや高リスク群を対象としたものが多かった。そこで本研究ではノルウェー、スウェーデンのある期間中における全妊娠を対象としている。早産(37週未満、32週未満)、死産、SGA(週数に比して低体重)、新生児仮死、NICU入院のリスクについて解析が行われ、いずれの項目についてもワクチン接種群、非接種群で発生率に差は認めなかった。むしろ、ノルウェーにおけるNICU入院はワクチン接種群でわずかに減少した。

時間限定カロリー制限食は単純カロリー制限食の体重減少効果を越える効果を持つか否かはなはだ疑問である!―(解説:島田俊夫氏)

現代社会は食生活に関して利便性を重視し、食事の内容(質・量)に関しては無関心になっているのでは? このため外食産業が繁栄し、私たちは食事の質よりも利便性をますます重視する傾向が強くなっている。本質に立ち返り、私たちが生きていくためにはエネルギーが必要でそのソースを食物に依存していることを忘れてはいけない。NEJM誌2022年4月21日号掲載の中国の南方医科大学のDeying Liu氏等の論文は139人中118人(84.9%)が受診ノルマを達成した肥満者をランダムに2群に分け、単純カロリー制限食群と(食事時間限定+カロリー制限)食群の2群に分類し、12ヵ月の経過から腹囲、BMI、体脂肪、除脂肪体重、血圧、代謝危険因子等についてベースラインデータと12ヵ月後の各データとの群内差および群間差を比較した結果を報告した。研究の狙いは単純食事カロリー制限食群と(食事時間限定+カロリー制限)食群との間で介入方法に基づく差があるか否かを標的とした研究である。結果は概ね同等で両群間に有意差を認めなかった。もちろん食事制限による減量効果は両群でほぼ同等に認められた。また、副作用についても両群間に差は認められなかった。

ファイザー製COVID-19ワクチンのオミクロン株に対する4回目接種の有効性(解説:小金丸博氏)

ファイザー製COVID-19ワクチン(BNT162b2、商品名:コミナティ筋注)の4回目接種の有効性を検討したイスラエルの研究がNEJM誌オンライン版2022年4月5日号に報告された。本研究は新型コロナウイルスのオミクロン変異株が流行していた2022年1月~3月にかけて行われた試験であり、オミクロン変異株に対する予防効果を評価したものとなっている。イスラエルでは60歳以上の方、ハイリスク患者、医療従事者に対して4回目接種が認可されており、3回目の接種から4ヵ月以上の間隔を空けて接種する。本試験では60歳以上の方を対象として、ワクチンの感染予防効果、重症化予防効果が評価された。

経口カルバペネム系抗菌薬テビペネム 重症尿路感染症でも有効(解説:宮嶋哲氏)

多剤耐性グラム陰性桿菌に効果的な経口抗菌薬が必要とされているなか、テビペネムピボキシルハイドロブロミドは、βラクタマーゼ産生のフルオロキノロン耐性株など尿路病原性エンテロバクターに対して抗菌力を発揮する経口カルバペネム系抗菌薬である。本研究は、テビペネム経口薬の非劣性に関する、欧米アフリカ諸国95ヵ所における国際多施設無作為化二重盲検比較の第III相試験である。試験デザインは、急性腎盂腎炎と複雑性尿路感染症を含む重症尿路感染症患者を対象に、テビペネム経口投与群(8時間ごと600mg投与)とertapenem静注投与群(24時間ごと1g投与)に1:1でランダムに割り付けている。主要評価項目はITT populationにおける投与19日目での全奏効率(臨床的治癒と良好な微生物学的奏効)、非劣性マージンは12.5%としている。

食道扁平上皮がんに対する1次治療における新たな抗PD-L1阻害薬sintilimabの有用性(解説:上村直実氏)

 切除不能進行・再発食道扁平上皮がんに対するファーストライン治療は、シスプラチンを中心とした白金製剤と5-FUないしはパクリタキセルの2剤併用化学療法であったが、最近、1次治療から化学療法に免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1阻害薬)を加えたレジメンの有用性が次々と報告され、日常診療における治療方針が急激に変化している。すなわち、最近のランダム化比較試験の結果、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、camrelizumab、toripalimabと化学療法の併用群が化学療法単独群と比較して安全性に差を認めない一方、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に延長することが示されている。今回は、すでに報告されている4剤と同様の試験デザインによって、5番目の抗PD-L1阻害薬であるsintilimabの切除不能食道扁平上皮がんに対する同様の有効性がBMJ誌に報告されている。

人種差別と認知症(解説:岡村毅氏)

 米国の退役軍人の膨大なデータから、人種(白人、黒人、ヒスパニック、アジア系、先住民)や、住まい(米国を10地方に分けている)で認知症の発症率に差があるかを調べた研究である。  現代の日本で医療をしていると、幸か不幸か人種について思いを巡らせることはほとんどないだろう。しかし20年後はどうだろうか? たまにはこのような論文を読んで頭に衝撃を与えると、それこそ認知刺激になって良い効果があるかもしれない。  まず、言うまでもなく人種を扱う研究は、知らないうちに誰かを傷つけたり、大きな損害を与えたりする可能性があり大変危険である。さらに、地理情報を扱う研究も大変危険になりえる。たとえ研究者にそのような意図は一切なかったとしても偏見を助長してしまうのみならず、ある地域では保険料が上がったりする可能性もあるからである。

高血圧合併妊娠において、非重症域の高血圧症の妊婦、目標<140/90mmHgの積極的治療が有用(解説:三戸麻子氏)

これまで、母体死亡等の重篤な合併症を防ぐ目的から、160/110(105)mmHg以上の重症域の高血圧に対しては、降圧加療を行うことは共通の認識があった。しかし、140/90mmHg以上160/110(105)mmHg未満の非重症域の高血圧に対する治療方針は、一定していなかった。その理由は、妊娠中の降圧は母体の重症高血圧への移行を防ぐものの、他の母児合併症を改善させられるのかどうか、また児への血流不全による胎児発育遅延の懸念や、降圧薬を使用すること自体による児への悪影響が懸念されていたからである。2015年にMageeらによるControl of Hypertension in Pregnancy Study(CHIPS)の結果が報告され、妊娠中の拡張期血圧85mmHgを目標に降圧した群(tight control群)では、拡張期血圧100mmHgを目標に降圧した群(less tight control群)と比較して、児への悪影響を認めることなく、母体の重症高血圧への移行を有意に防げたことが示された。また、その後の追加解析で、重症高血圧を認めること自体が、母体だけではなくpregnancy lossや児の48時間以上のNICU入室といった複合アウトカムと関連していることが示された。しかし米国は、非重症域の高血圧に対し降圧加療を行うことが、母児両方にメリットがあることを示すには、CHIPStrialではパワー不足であるとし、降圧開始基準を重症高血圧に据え置いていた。

長生きをしたい人、とりわけ認知症がない状態で長生きをしたい人へ(解説:岡村毅氏)

老若男女が知りたいことにはっきりと答えてくれる優等生的な論文である。遺伝子は変えようがないが生活習慣は変えられる。どう変えると、認知症がない状態で長生きができるかを調べ、驚きの結果を報告している。変えうる生活習慣とは、(1)食べ物、(2)知的活動、(3)身体活動、(4)喫煙、(5)飲酒である。単純化して見てみよう。食べ物は当然マインド食である。MIND(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)食とは、この論文のラストオーサーのラッシュ大学の博士らがシカゴで開発した有名な食事法であるからここでも使われている。野菜や果実や豆腐が推奨される。上位40%が○(丸)となる。知的活動は読書、美術館、カードゲーム、ボードゲーム、クロスワード、パズル等のことである。こちらも上位40%が○となる。身体活動はウォーキング、ガーデニング、体操、自転車、水泳である。週150分以上で○となる。1日30分弱でよいのである。喫煙については、今吸っていなければ○だ。飲酒は、1日当たり男性は30g以下、女性は15g以下が○だ。缶ビールなら2本あるいは1本である。

日本からもこういう情報が欲しい!(解説:後藤信哉氏)

新型コロナウイルス感染禍は2年以上持続している。テレビのニュースでは各県の新規感染者数が発表される。日本のような小さな国で、各県、揺らぎの大きい毎日の感染報告者数を発表されても正直何もわからない。科学の世界では数値情報が必須である。世界の誰とも共有できるように、科学的方法に基づいて数値をまとめてほしい。北欧諸国は日本と同様に比較的サイズの小さい国である。社会主義的傾向があるのでNational Databaseが充実している。本研究は新型コロナウイルス発症日を起点として、発症前の時期と静脈血栓症、肺塞栓症、重篤出血イベントの発症リスクを示している。ウイルス感染であるため、感染後ウイルスは増殖するが、免疫により駆逐される。新型コロナウイルスは血管内皮にも感染して血栓リスクを増加させるとされているが、リスクの増加はいつまでも持続するわけではない。血栓イベント予防を目指してヘパリンなどの抗血栓薬を使用するのが一般的なので重篤な出血合併症も増えると想定される。

HER2+進行乳がん2次治療におけるトラスツズマブ・デルクステカン(解説:下村昭彦氏)

 HER2+進行乳がんの標準治療が変わる。  3月24日のNEJM誌にDESTINY-Breast03試験の中間解析結果が掲載された。DESTINY-Breast03試験は、HER2+乳がん2次治療におけるトラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)とトラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)を直接比較した第III相試験である。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は未到達 vs.6.8ヵ月(ハザード比[HR]:0.28、95%信頼区間[CI]:0.22~0.37、p<0.001)と、驚異的なハザード比でT-DXd群で有意に良好であった。また、副次評価項目の全生存期間(OS)はいずれの群も未到達であったが、12ヵ月時点の点推定値は94.1% vs.85.9%(HR:0.55、95%CI:0.36~0.86、p=0.007)であり、中間解析の有意水準である0.000265を上回っていたため統計学的有意差は付かなかったが、イベントが十分に起きた際には有意差が期待されるような結果であった(もちろん、主解析の結果を待って判断するべきである)。奏効率(ORR)も79.7% vs.34.2%であり、T-DXdで圧倒的に良かった。サブグループ解析も近年見ないような結果であり、全てのサブグループにおいてT-DXd群で良好であり、また信頼区間の幅も狭く1をまたいでいない。サブグループ解析の結果からは、T-DM1の方が良いかもしれない、という患者群の想定は難しい。

小児期および青年期におけるオミクロン株に対するファイザー製ワクチン(BNT162b2ワクチン)の予防効果(解説:寺田教彦氏)

本研究は、小児におけるファイザー製ワクチン(BNT162b2ワクチン)のオミクロン株に対する有効性を評価した論文である。まず、本邦と海外での現況を確認する。本邦における5~11歳の新型コロナウイルスワクチン接種は、2022年(令和4年)1月21日より薬事承認されている。これは、オミクロン株が流行する前のデルタ株でのデータで、5~11歳でも、16~25歳と同程度に抗体価が上昇し、有効性が評価できたことを根拠としている。ただし、小児におけるオミクロン株の感染状況が確定的ではなかったことと、オミクロン株の小児における発症予防効果・重症化予防効果に関するエビデンスも十分ではなかったため、小児については努力義務の規定は適用せず、今後の最新の科学的知見を踏まえて引き続き議論することが適当とされていた。また、本コメント執筆時点での海外情勢としては米国やカナダ、フランスでは小児に対して接種を推奨、英国やドイツは重症化リスクが高い小児や重症化リスクのある者と同居や接触がある場合などで接種を推奨している。

2ヵ月1回の注射が女性をHIV感染から守る(解説:岡慎一氏)

性交渉によるHIV感染に対するリスクグループは、不特定多数を相手にする男性同性愛者(men who have sex with men:MSM)およびcommercial sex worker(CSW)を中心とした女性である。性交渉によるHIV感染予防には、コンドームの使用などsafer sexの実施が推奨されてきたが、それだけでは不十分であることが、多くの疫学データから示されていた。一方、MSMにおいては、10年以上前よりHIVウイルスに曝露する前に予防的にTDF-FTC(今回のコントロール薬)を服用する曝露前予防(Pre-Exposure Prophylaxis:PrEP)の有効性が証明されており、すでに90ヵ国以上の国でPrEPが実施されている。WHOも2015年にPrEPを強く推奨するガイドラインを出しているが、残念ながら日本では2022年5月現在まだ承認されていない。

COVID-19に対する中和抗体薬「ソトロビマブ」の有効性(解説:小金丸博氏)

ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ点滴静注液)はSARS-CoV-2に対して抗ウイルス作用を発揮することが期待されている中和抗体薬である。Fc領域にLS改変と呼ばれる修飾が入ることで長い半減期を達成する。今回、重症化リスク因子を1つ以上有する軽症~中等症のCOVID-19患者に対するソトロビマブの有効性と安全性を検討した第III相多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検試験の最終結果がJAMA誌オンライン版に報告された。被験者1,057例を対象とした解析では、無作為化後29日目までに入院または死亡した患者の割合は、プラセボ投与群(529例)が6%(30例)だったのに対し、ソトロビマブ投与群(528例)では1%(6例)であった(相対リスク減少率:79%)。副次評価項目である救急外来受診の割合や致死的な呼吸状態悪化の割合などでもソトロビマブ投与群で有意に減少しており、軽症~中等症のCOVID-19に対して重症化予防効果を示した。

デルタ株、オミクロン株感染に対するBNT162b2の3回目接種の感染/発症、入院予防効果(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

今回取り上げたMoreiraらの論文はBNT162b2(商品名:コミナティ筋注)の3回目接種の効果を検証した第III相試験の結果を提示したものである。この論文の解釈において注意しなければならない点は、試験が施行された時期の背景ウイルスが現在の問題ウイルスであるオミクロン株ではなく、それ以前のVOC(Variants of concern)であるという事実である。すなわち、Moreiraらの論文に示された内容は、現在、あるいは近未来において、“Real-world”で深刻な問題を提起するであろうオミクロン株に対する抑制効果を示すものではない。それ故、本論評ではMoreiraの論文に基づき一世代前の変異株であるデルタ株に対するBNT162b2の3回目接種による予防効果とAndrewsらが発表したオミクロン株に対する3回目接種の予防効果を比較し、両者の差を説明する液性免疫、細胞性免疫の動態について考察する。

閉経後HR+HER2-進行乳がんの1次治療におけるCDK4/6阻害剤のOSに対する意義(解説:下村昭彦氏)

3月10日のNew England Journal of Medicine誌に、閉経後ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がんに対するレトロゾールへのribociclibの上乗せを検証したMONALEESA-2試験の全生存期間(OS)の結果が公表された。OSは63.9ヵ月vs.51.4ヵ月(ハザード比:0.76、95%CI:0.63~0.93、two sided p=0.008)と、ribociclib群で有意に良好という結果であった。ribociclibの1次治療への上乗せでは、MONALEESA-7試験(閉経前HR+HER2-乳がん1次ホルモン療法[TAM/AI + LHRHa +/- ribociclib])に次いで2つ目の試験である。

腎交感神経除神経術の長期降圧効果と安全性(解説:冨山博史氏)

 既報のSPYRAL HTN-ON MED試験は、試験開始前の少なくとも6週間、安定した用量で1~3種類の降圧薬を服用しても診察室収縮期血圧が150~180mmHgであり、かつ24時間平均収縮期血圧が140~170mmHgの範疇の症例を対象に、無作為、単盲検、Shamコントロール試験として実施された。同試験では、術後6ヵ月の腎交感神経除神経術の有意な降圧効果を報告している。今回の試験(ON-MED長期試験)は、その後の追跡研究であり、SPYRAL HTN-ON MED試験対象例の試験開始時、術後24ヵ月、36ヵ月の診察室血圧、24時間平均血圧を評価し、腎交感神経除神経術の長期降圧効果と安全性を検証した。

Xa阻害薬の時代からXI阻害薬の時代に行けるかな?(解説:後藤信哉氏)

商業的に大成功したDOACs(Xa阻害薬)の特許切れが近い。年間1兆円以上売れている薬剤の特許切れは各企業に激しく痛い。主要適応の非弁膜症性心房細動の脳卒中予防において、凝固カスケードにてXaの上流の、いわゆる内因系凝固因子のXI阻害は有効あるいは安全だろうか? これまで複数のXI阻害薬の第II相試験が行われてきた。本研究はバイエル社のXI阻害薬asundexian 20mg/日、50mg/日とアピキサバン5mgx2/日が二重盲検にてランダムに比較された。第III相の仮説検証大規模試験の前にasundexianに至適容量を決めるのが、本第II相試験の主要な目的である。試験期間は3ヵ月と短い。 ISTH基準の大出血と臨床的に意味のある出血はアピキサバンの開発試験のARISTOTLEでは概略年率6%であった。3ヵ月のイベントリスクは2%に満たない予測となる。本研究はARISTOTLEよりもリスクの高い症例が含まれたためか、アピキサバンの出血リスクは2%程度であった。asundexianでは20mgでも50mgでもアピキサバン群より見かけの出血リスクは低く見える。755例のランダム化比較試験と小規模であるため、本研究に基づいて第III相試験の容量を決定できるか否かの判断は難しい。有効性についてはイベント数が少な過ぎるので、さらに容量の決定は困難である。しかし、過去の研究と一致して、心房細動症例では3ヵ月の観察期間内の死亡数が、脳卒中・全身性塞栓症より多いことを示している。抗凝固薬の開発試験であるが、心房細動の未解決課題が血栓イベントではないことを示唆して興味深い。