CLEAR!ジャーナル四天王|page:21

ワクチン突破新規感染(Breakthrough infection)の原因ウイルスは病原性の高い変異ウイルスが中心?(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

新型コロナ感染症に対する主たるワクチン(Pfizer社のBNT162b2、Moderna社のmRNA-1273、AstraZeneca社のChAdOx1、Johnson & Johnson/Janssen社のAd26.COV2.S、Novavax社のNVX-CoV2373)の予防効果は、播種する主たるウイルスが野生株(武漢原株とそれから派生したウイルスの機能に影響を与えない株を含む:第1世代)からD614G変異株(従来株:第2世代)に置換されつつあった2020年の夏から秋にかけて施行された第III相試験の結果を基に報告された(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.; Baden LR, et al. N Engl J Med. 2021;384:403-416.; Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:99-111.; Sadoff J, et al. N Engl J Med. 2021;384:2187-2201.; Heath PT, et al. N Engl J Med. 2021 Jun 30. [Epub ahead of print] PMID:)。

認知症による幻覚妄想に何を処方するべきか(解説:岡村毅氏)

認知症がある方のサイコーシス(幻覚・妄想)は、本人や介護者にとっては過酷な状況である。本研究は、海外ではパーキンソン病認知症によるサイコーシスに使われているpimavanserinを、アルツハイマー型、前頭側頭型、血管性の認知症によるサイコーシスにも広げる試みだ。この第III相試験で良好な結果が得られたので、将来われわれが手にする可能性も高いと思われる。認知症がある方のサイコーシスに対する医学的な対応はここ数十年で大きく変貌した。かつては抗精神病薬が安易に処方されることが多かった。これらは、強弱はあるがドパミン遮断薬でもあるのだから、パーキンソン症状のリスクが大きく、誤嚥や転倒につながる。さらにレビー小体病やパーキンソン病認知症といった新たなカテゴリーが出現し、このカテゴリーでは当然ながらドパミン遮断薬は禁忌である。

新薬GIP/GLP-1受容体ダブルアゴニストは糖尿病診療に新たなインパクトを与えるか?(解説:栗山哲氏)

本論文は、2型糖尿病治療薬として開発された新規薬剤GIP/GLP-1のダブルアゴニストtirzepatideを臨床評価したものである。同剤は、グルコース依存性インスリン刺激性ポリペプチド(GIP)に類似した39個のアミノ酸残基に長鎖脂肪酸を結合させた週1回注射製剤である。本剤の特徴は、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)とGIPの両受容体を刺激するダブルアゴニスト製剤として開発されたことである(GIP受容体の単独作動薬はない)。GLP-1受容体作動薬のエビデンスは、多くの臨床研究でその有用性が肯定されている。すなわち、LEADER、SUSTAIN-6、REWINDなどでは心血管イベント(MACE)の改善効果が、さらにLEADER、SUSTAIN-6、AWARD-7などで2型糖尿病腎症の腎エンドポイントにも改善効果が報告されている。

CGMはリアルタイムか間歇スキャン式のいずれが優れているか?(解説:住谷哲氏)

持続グルコース測定器(continuous glucose monitoring:CGM)は皮下間質液中のグルコース濃度を持続的に測定する機器で糖尿病治療に活用されている。CGMには大きく分けて3種類あり、現在わが国で使用できる機器も併せて記載すると、(1)リアルタイムCGM (real-time CGM[rtCGM]):その時の血糖値が常に測定表示されるもの(Dexcom G4 PLATINUM、ガーディアン コネクト)、(2)間歇スキャンCGM(intermittently scanned CGM[isCGM]、flush glucose monitoring[FGM]とも呼ばれる):患者がセンサーをスキャンした時にのみグルコース値が表示されるもの(FreeStyleリブレ)、(3)professional CGM(pCGM):患者はグルコース値を装着中に見ることができず検査終了後に解析するもの(FreeStyleリブレPro)、になる。グルコース値の読み取りも当初は専用のリーダーが必要であったが、現在ではBluetoothを用いてスマートフォンや腕時計型デバイスで読み取り可能のものも登場している。

基礎インスリンで治療中の2型糖尿病患者の血糖コントロールに対するCGMの効果(解説:小川大輔氏)

糖尿病の診療において、血糖コントロール状況を把握する検査として血糖値とヘモグロビンA1cが通常用いられる。血糖値は採血時点の、ヘモグロビンA1cは過去1~2ヵ月間の血糖の状況を表す検査であり、外来診療ではこの2つの検査を同時に測定することが多い。さらにインスリンあるいはGLP-1受容体作動薬などの注射製剤を使用している患者は、日常生活において血糖を把握するために自己血糖測定を行うことが一般的である。 通常の自己血糖測定によるモニタリング(BGM)は測定のたびに指先を穿刺する必要があり、また連続した血糖の変動を捉えることができないという欠点がある。一方、近年使用されている持続血糖モニタリング(CGM)は一度装着すると血糖の変動を連続して把握することができるというメリットがある。CGMは毎食後や睡眠中の血糖コントロール状況がわかるため、糖尿病専門外来では糖尿病治療薬の変更や選択に活用されている。 2018年7月から2019年10月までに米国のプライマリケア施設で基礎インスリンを使用している2型糖尿病患者に対し、CGMの有効性の評価を目的とする無作為化臨床試験の結果がJAMA誌に報告された1)。対象は1日1回あるいは2回の基礎インスリンを用いて治療中の2型糖尿病患者であり、CGMまたはBGMでのモニタリングを行う群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。インスリン以外の糖尿病治療薬の有無は問わないが、食前のインスリンは使用していないことが条件である。主要評価項目は8ヵ月後の平均HbA1c値、副次評価項目は血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)の時間の割合、血糖値が250mg/dL以上の時間の割合、8ヵ月後の平均血糖値である。

脳梗塞の再発を予防するために:老刑事のように心房細動を追う(解説:香坂俊氏)

この原稿を読んでいる方の「4人に1人」は今後の人生のどこかで脳梗塞を経験することになる。上記はAmerican Heart Association(AHA)をはじめとする世界の主要学会が脳梗塞予防の啓蒙活動でしばしば用いる文言であるが、確かに「4人に1人」と言われるとずっしりと重みを感じられる方も多いのではないだろうか。が、残念ながら脳梗塞予防のために行動に移せることはそれほど多くはない。血圧やコレステロールを下げ、健全なライフスタイルを実施し、禁煙や減塩食を心掛ける、といったところだろうか。このあたりの危険因子は過去四半世紀の公衆衛生分野の先生方の献身的な努力により危険因子として浮き彫りにされ、すでに医療の現場でもそのコントロールに向けての努力が広く実践されるに至っている。

化学療法・ニボルマブ(オプジーボ)併用が胃がんと食道がんに対する標準治療となるか(解説:上村直実氏)

今年5月のコメント1382で抗PD-L1阻害薬ニボルマブ(商品名:オプジーボ)が進行食道がんに対する1次治療に使用される可能性を記述したが、今回、HER2陰性の進行胃がんと食道胃接合部がんに対する1次治療の有用性がLancet誌にて報告された。日本を含む国際共同CheckMate試験の結果、1次治療として化学療法単独群と比較してオプジーボ・化学療法併用群が生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが示されている。通常、外科的切除不能な胃がんや食道腺がんに対する化学療法において抗PD-L1阻害薬は複数の化学療法が無効であった場合の3次治療として使用されている。すなわち、国内においてオプジーボは9つのがん種で承認されているが、胃がんや食道がんなどに対する適応は「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行がん」に限定されているのが現状である。

JAK阻害薬フィルゴチニブ、潰瘍性大腸炎の寛解導入・維持に有効(解説:上村直実氏)

潰瘍性大腸炎(UC)は特定疾患に指定されている原因不明の炎症性腸疾患(IBD)であり、最近の全国調査によると18万人以上の患者が存在している。UCに対する薬物治療については、寛解導入および寛解維持を目的として5-ASA製剤、ステロイド製剤、免疫調節薬、生物学的製剤が使用されている。なかでも生物学的製剤については、抗TNF阻害薬、インターロイキン阻害薬ウステキヌマブ、インテグリン拮抗薬ベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬など、異なる作用機序を有する分子標的薬が次々と開発され、それぞれの臨床試験結果が報告されている。なお、本邦のIBD診療ガイドライン2020において、血球成分除去療法や生物学的製剤の適応はステロイド依存例で免疫調節薬も効果のない患者やステロイド抵抗性の患者に限定されている。さらにJAK阻害薬と免疫調節薬チオプリン製剤との併用が原則禁忌となっている。

COVID-19ワクチンの血栓性合併症にIgGは有効なのか?(解説:後藤信哉氏)

COVID-19 pandemicは持続している。ワクチンは切り札と理解されているが、ウイルスベクターのワクチンでは血栓イベントの合併がまれとはいえ発症する。血栓性合併症に対して抗凝固療法とIgGbの併用が推奨されている。カナダではウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19を、ワクチンによる血栓症が少ないとされた55歳以上に使用した。それでも63~72歳の症例に血栓イベントが発症した。血栓イベントは2例が下肢動脈血栓症、1例が脳静脈洞血栓症であった。3例ともヘパリンと血小板第4因子に対する抗体(いわゆるHIT抗体)を認めた。IgG投与によりHIT抗体は減少した。

COVID-19に関連した血栓症の発症メカニズムは従来の血栓症とは異なる?(解説:後藤信哉氏)

心筋梗塞のような動脈系の血栓症でも、深部静脈血栓症のような静脈系の血栓症でも、ヘパリンは血栓イベント発症予防効果を示してきた。従来、医師が治療に貢献してきた血栓症のうち、出血イベントリスクの欠点はあっても、ヘパリンの増量により制圧できない血栓症はなかったと言っていい。COVID-19の感染に起因する血栓症は従来の血栓症とは様子が異なる。まず、ICUへの入院例として予防的なヘパリン投与を全例受けているのに、高率に症候性の静脈血栓症が起きてしまう。本研究が初めてではないが、予防量より多い治療量のヘパリンを用いても血栓イベントを防げないことが示唆されている。本研究の治療量抗凝固薬としてはヘパリンのみでなく、安定している症例では選択的Xa阻害薬リバーロキサバンも用いられた。ヘパリンに限らず、選択的Xa阻害薬を静脈血栓症の治療量で用いても有効性のエンドポイントには差がなく、出血リスクは増えた。

治療抵抗性高血圧に対する超音波腎デナベーションの効果(解説:石川讓治氏)

腎デナベーションによる降圧効果を評価する臨床試験が行われてきた。ラジオ波(radiofrequency)を用いた焼灼法を用いた過去の研究においては、外来血圧を用いて評価されていたため、血圧低下度が過大評価されていたことが問題であったとされ、治療抵抗性高血圧患者を対象にラジオ波を用いた腎デナベーション群とShamコントロール群とを比較した大規模臨床試験(SYMPLICITY HTN-3)では、外来血圧や自由行動下血圧に有意な血圧低下は認められなかった。その原因として、降圧薬の服薬アドヒアランス、降圧薬の投与方法、手技の精度、エンドポイントの確認法などの問題点が指摘されていた。

低リスク集団における卵巣がん検診は死亡率を低下させるか〜無作為割り付け後20年目の報告〜(解説:前田裕斗氏)

卵巣がんの死亡率を検診で減らせるかどうかについては長らく議論が行われてきた。卵巣がんは発生率がそこまで高くない(2017年、日本では人口10万人対20.5人)が、一方でII期やIII期など進んだ状態で見つかることが多く、検診での早期発見、早期治療に結び付けにくいとされてきた。そんな中2016年に発表されたUKCTOCS試験では血液検査の値を経時的に評価する方法と超音波検査を組み合わせる検診を行うことで最終的に15%の相対的な死亡率低下を認め、これは有意ではなかったものの、試験後半で検診を行う群と行わない群で死亡率の差が開いてきていたことから追跡調査を行うことで有意な死亡率低下を見込めるのではないかと考えられた。今回の研究はこのUKCTOCS試験の追跡調査である。

心筋梗塞非責任病変治療においてFFRは有用なガイドか?(解説:上田恭敬氏)

責任病変のPCIに成功したSTEMI症例で、狭窄度50%以上の非責任病変を有する症例を対象として、非責任病変に対するPCIをアンジオガイドで行うかFFRガイドで行うかの2群に無作為に割り付け、1年間の全死亡、心筋梗塞、入院を伴う緊急血行再建術施行の複合エンドポイントを主要評価項目として、フランスの41病院で実施された多施設研究であるFLOWER-MI試験の結果が報告された。アンジオガイド群に581症例、FFRガイド群に590症例が割り付けられた。主要評価項目の発生は、アンジオガイド群で4.2%、FFRガイド群で5.5%に認められ、群間に差を認めなかった。全死亡は、アンジオガイド群で1.7%、FFRガイド群で1.5%に認めた。心筋梗塞は、アンジオガイド群で1.7%、FFRガイド群で3.1%に認めた。入院を伴う緊急血行再建術施行は、アンジオガイド群で1.9%、FFRガイド群で2.6%に認めた。

まれだが致死的な血栓症への対応・事前説明はきわめて難しい(AZワクチン)(解説:後藤信哉氏)-1407

新型コロナウイルス対策としてワクチンの普及は切り札になれると期待している。ワクチンに限らず、すべての医療介入にはメリットとデメリットがある。新型コロナウイルスワクチンの場合には、ワクチン接種によりウイルス感染の広がりを阻止できるとの社会的期待がある。しかし、個別症例にはデメリットもある。本研究は医療従事者における13万例の接種に合併した5例の血栓症の報告である。対象となった医療従事者は32~54歳で特段の疾病の既往はなかった。いずれの症例も接種後7~10日にイベントが起こっている。アナフィラキシーは接種現場で起こる。対応の準備もできる。接種後7~10日に頭痛、背部痛、腹痛などにて救急搬送されている。いずれの症例も静脈血栓が確認されている。血栓の形成部位は脳静脈洞など普通遭遇しない部位である。本研究では臨床イベントのみでなく血液検査を詳細に施行している。いずれの症例もHIT抗体と呼ばれる血小板第4因子・ポリアニオンの高い抗体価を呈した。著者は、これらの症例をワクチンによる免疫性の血小板減少・血栓症としての自発的な(ヘパリンを使用していないとの意味)ヘパリン惹起血小板減少・血栓症(HITT:heparin-induced thrombocytopenia・thrombosis)としている。HITは時に致死的な病態である。ワクチンにまったくの健常者に、ワクチン接種の1~2週に発症する。

これから「プラグマティックトライアル」が増える?(解説:後藤信哉氏)-1408

臨床的仮説の検証にはランダム化比較試験による有効性、安全性の検証が必須というのが現在のルールである。巨額の利潤を期待できる新薬の認可承認、適応拡大が目的であれば日常臨床とは若干異なる条件におけるランダム化比較試験も可能である。しかし、循環器領域では標準治療が進歩して革新的新薬の認可承認、適応拡大を目指したランダム化比較試験の数は減少している。科学雑誌の発刊とはいえビジネスである。ランダム化比較試験が減少した時代でも臨床論文を発表して、多く引用されなければ雑誌の未来はなくなってしまう。臨床試験のコストを下げつつ、質を担保する工夫が必要となる。

アタマにやさしい冠動脈血行再建法は?(解説:今中和人氏)-1406

心原性ショックなどの一部を除き、冠動脈血行再建法は長期成績に基づいて選択されるべき時代に入って久しい。医療者側は生命と心臓アウトカムを重視しがちな一方、当事者たちの最大の関心事の1つは認知機能低下である。患者さんの家族に「心臓を治してもらってからボケが進んじゃって…」という意味のことを言われて複雑な気持ちになった経験が、循環器系の医師なら誰しも一度や二度、いや、何度もあるのではないだろうか。本論文は、2年ごとに米国の50歳以上の成人の健康状態を聞き取り調査する、Health and Retirement Study(HRS)という前向きプロジェクトに参加したメディケア加入者2万3,860例のうち、医療費支払い記録を基に65歳以上で冠血行再建を受けた患者1,680例(CABG 665例[うちオフポンプ168例]、PCI 1,015例。両方受けた患者は、初回の血行再建法で分類)を抽出し、治療前後にわたる記銘力の推移を検討している。諸因子を補正して両群とも約75歳、男性6割、白人85%強、糖尿病28%台、脳梗塞既往13%台で、治療前に平均2.3回、治療後に平均3.2回、合計5.5回の聞き取り調査を実施した。ただ実際は、CABG群もPCI群も14%強と、約7人に1人は血行再建後の評価が行われなかった(うち9割前後は死亡か辞退のため)。

降圧薬のイベント防止効果は1次および2次予防や心血管疾患既往の有無で異なるか?(解説:江口和男氏)-1405

血圧は下げれば下げるほど将来の脳心血管発症リスクが減少する。わが国およびその他の国際的な高血圧ガイドラインでは、降圧薬による降圧治療の適応は、生活習慣修正により十分な降圧効果が得られない場合や、血圧レベルが高くない場合でもリスク表により高リスクと判断される場合である。一般的に降圧薬開始の基準となるのは、外来血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上の場合であり、それ以下の血圧の場合、降圧薬治療開始の適応とはならない。高血圧のリスク表(JSH2019ガイドライン表3-2)については、糖尿病や尿蛋白の有無、心血管疾患の既往のありなしで血圧目標が異なり、日常診療で応用するにはやや複雑である。たとえば、心血管疾患既往があれば、高値血圧(130~139/80~89mmHg)の範囲であっても、リスク第三層「高リスク」に分類される。しかし、心血管疾患既往の有無やベースラインの血圧レベルで、どの程度イベント抑制効果が異なるかということについて結論が出ていなかった。

スクリーニング普及前後の2型糖尿病における心血管リスクの予測:リスクモデル作成(derivation study)と検証(validation study)による評価(解説:栗山哲氏)-1404

2型糖尿病の心血管リスクを、予知因子を用いてリスクモデルを作成(derivation study)し、さらにその検証(validation study)を行うことで評価した。ニュージーランド(NZ)からの本研究は、国のデータベースにリンクして大規模であること、データの適切性、対象者の95%がプライマリケアに参加していること、新・旧コホートの2者の検証を比較して後者での過大評価を明らかにしたこと、などの点で世界に先駆けた研究である。本研究のような最新の2型糖尿病スクリーニング普及は、低リスク患者のリスク評価にとっても重要である。

限界はあるが必要だった研究(解説:野間重孝氏)-1403

アスピリンは世界で初めて人工合成された医薬品で、ドイツ・バイエル社がこの開発に成功したのは1897年にさかのぼる。ところが、低用量アスピリンに血小板凝集抑制作用があることが発見されたのは1967年のことだった。Gruentzigが経皮的冠動脈形成術(PTCA)を初めて行ったのが1977年であることを考えると、不思議な暗合を感じてしまうのは評者だけではないと思う。PTCAは確かに画期的な技術ではあったが、バルーンによる拡張のみでは血管壁の解離、リコイルを防ぐことができず、高頻度に発生する急性冠動脈閉塞や慢性期再狭窄率の高さが問題となっていた。これに解決策を与えるべく開発されたのが冠動脈ステントだった。慢性期に対する効果はSTRESS、BENESTENT両試験により証明されたが、亜急性期ステント血栓症(SAT)にはなかなか解決策が見いだされなかった。当初アスピリンとワルファリンの併用による効果が期待されたが、十分な効果は得られなかった。90年代初めに開発されたチエノピリジン系薬剤であるチクロピジンとアスピリンの併用、つまり抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)が初めてこの問題に解決策を与えたのである。