逆流性食道炎と非びらん性胃食道逆流症のリスク因子は大きく異なる

提供元:ケアネット

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公開日:2013/08/14

 

 逆流性食道炎(RE)と非びらん性胃食道逆流症(NERD)のリスク因子は、病態生理学的に大きく異なることが、東京大学医学系研究科消化器内科の皆月ちひろ氏らの研究で明らかになった。また、RE有病率はヘリコバクター・ピロリ(HP)感染群よりも除菌群で有意に高かったのに対して、NERD有病率は両群で有意な差を認めなかった。HP除菌療法を行う際には、REの発症および進行につながることを考慮すべきである。PLoS One誌2013年7月26日号の報告。

 胃食道逆流症(GERD)は高い有病率にもかかわらず、そのリスク因子は依然として論争中である。これはおそらく、REとNERDの区別および胃周辺部の評価が不十分であるためと考えられる。本研究の目的は、HP感染と胃の萎縮の評価に基づいて、REとNERDの独立した背景因子を定義することであった。

 対象は、上部消化管内視鏡検査を受けた健常人1万837人(男性6,332人、女性4,505人、20~87歳、日本人)。対象のうち、「食道の粘膜破壊を認める」1,722人(15.9%)がRE、「食道の粘膜破壊を認めず、胸焼けや胃酸逆流を認める」733人(6.8%)がNERDと診断された。REおよびNERDと診断されなかった被験者を対照群とし、RE群とNERD群の背景因子は、ロジスティック回帰分析を用いて標準化係数(SC)、オッズ比(OR)、p値で評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・REと正の相関を認めた因子は、男性(SC=0.557、OR=1.75)、HP非感染(SC=0.552、OR=1.74)、ペプシノーゲンI/II比高値(SC=0.496、OR=1.64)、BMI高値(SC=0.464、OR=1.60)、飲酒(SC=0.161、OR=1.17)、加齢(SC=0.148、OR=1.16)、喫煙(SC=0.129、OR=1.14)であった。
・NERDと正の相関を認めた因子は、HP感染(SC=0.106、OR=1.11)、女性(SC=0.099、OR=1.10)、若年齢(SC=0.099、OR=1.10)、ペプシノーゲンI/II比高値(SC=0.099、 OR=1.10)、喫煙(SC=0.080、OR=1.08)、BMI高値(SC=0.078、OR=1.08)、飲酒(SC=0.076、OR=1.08)であった。
・REの有病率は、HP感染群(2.3%)と比較し、HP除菌成功群(8.8%)で有意に高かった(p<0.0001)。
・NERDの有病率は、HP感染群(18.2%)とHP除菌成功群(20.8%)で有意な差を認めなかった(p= 0.064)。

(ケアネット 武田 真貴子)

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