仕事上でストレスを感じていると、冠動脈疾患を発症しやすいのか?

提供元:ケアネット

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公開日:2012/10/31

 

 「仕事上でストレスを感じていると、冠動脈疾患を発症しやすいのでしょうか?」
このような患者さんからの質問にどのように回答するか?
 これまで職場でのストレスが冠動脈疾患の発症リスクを高めるかについては、出版バイアスや因果の逆転等によって異なる結果が発表されてきた。英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのKivimäki氏らはメタアナリシスの結果、仕事上のストレスを感じている人では冠動脈疾患の発症率が高くなることを明らかにした。Lancet誌2012年10月27日号の掲載報告。

 厚生労働省の2010年度国民生活基礎調査によると、12歳以上の日本人では46.5%が「悩みやストレスがある」と回答している。その割合は男女とも40代が最も高く、その原因として男性30−40代の7割が「自分の仕事」を挙げている。仕事上のストレスが冠動脈疾患発症に関係があることは想像できるが、これを科学的に証明した研究はそれほど多くない。論文発表されていない研究も含めると、証明できなかったものの方が多いくらいである。

仕事上のストレスを感じている人では冠動脈疾患の発症率が有意に上昇

 メタアナリシスには欧州における13のコホート研究(1985~2006年)が用いられ、これらのコホートには登録時に雇用者であり、かつ冠動脈疾患の既往がない男女が含まれていた。仕事上のストレスは、職業性ストレスの調査票(job-content questionnaire)と、要求度-コントロール調査票(demand-control questionnaire)を用いて測定した。冠動脈疾患は初回の心筋梗塞発症または冠動脈疾患死と定義した。

主な結果は下記のとおり。

・197,473名中30,214名(15%)が仕事上のストレスを報告した。
・149万人・年(平均7.5年)の追跡において2,358名が冠動脈疾患を発症した。
・仕事上のストレスがあった人では、冠動脈疾患の発症リスクはストレスがなかった人の1.23倍であった(ハザード比 1.23、95%信頼区間:1.10~1.37)であった(性・年齢調整後)。
・初回3年間および初回5年間の発症を除外した場合も、同様に職場ストレスがあった人で、冠動脈疾患の発症率が有意に高かった。
 ―初回3年間の発症を除外した場合のハザード比 1.31(95%信頼区間:1.15~1.48)
 ―初回5年間の発症を除外した場合のハザード比 1.30(95%信頼区間:1.13~1.50)
・性別、年齢層、社会経済的階層によって群を分けた場合でも同様の結果が認められた。
・仕事上のストレスの絶対リスクは3.4%であった。

 著者らは職場ストレスの予防は疾患発症を減少させるかもしれないとしながらも、この戦略は喫煙などの標準的な危険因子の管理に比べるとその効果ははるかに小さいと結論づけている。

 昨今は若年者の生活習慣病が増えてきており、このような患者さんでは通院や服薬が不規則なケースが多い。そして半数以上は職場でのストレスを抱えており、これは冠動脈疾患の有意な危険因子である。しかし、高血圧、高LDLコレステロール血症、喫煙など従来の危険因子の方がはるかに危険度は高く、治療によるリスク減少も証明されている。患者さんには現在の治療を続けることの重要性を再認識いただく機会に成りうるのではないだろうか。

(ケアネット 藤原 健次)