BMI最適値が判明、90万人の解析から

提供元:ケアネット

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公開日:2009/04/09

 



BMIは単独で死亡の強力な予測因子であり、死亡率は22.5~25.0kg/m2で最も低く、この範囲以上でも以下でも死亡率が上昇することが、Prospective Studies Collaboration(PSC)の研究グループが実施した共同解析で明らかとなった。BMIは肥満の優れた指標であり、虚血性心疾患、脳卒中、大腸癌、腎臓病、子宮内膜症、閉経後乳癌による死亡のリスク因子として確立されている。Lancet誌2009年3月28日号(オンライン版2009年3月18日号)掲載の報告。なお、PSCは心血管リスク因子と死亡の関連をプロスペクティブに検討している61の試験のメタ解析を目的とした研究グループであり、対象は世界で100万人に及ぶという。今回の研究を含めその成果はウェブサイト上に公開されている
(http://www.ctsu.ox.ac.uk/projects/psc)

BMIデータを含む57試験のメタ解析




PSCの研究グループは、61の試験のうちBMIデータを含む57のプロスペクティブ試験に登録された894,576人を対象にベースライン時のBMIと死亡の関連について解析した。登録時の平均年齢は46(SD 11)歳、登録年の中央値は1979年(IQR 1975~85年)、平均BMIは25(SD 4)kg/m2であった。

因果関係の逆転を回避するためにフォローアップ期間の最初の5年間のデータは除外し、平均8(SD 6)年のフォローアップ期間中に死因が特定された66,552例(血管疾患:30,416例、糖尿病:2,070例、腎・肝疾患:22,592例、新生物:3,770例、その他:7,704例)について解析した。

BMI高値の場合の死亡には血管疾患が、低値では喫煙の影響が大きい




男女ともに、死亡率はBMI 22.5~25.0kg/m2で最も低かった。この範囲を上回るといくつかの特定の死因と正相関を示したが、負の相関を示す因子は認めなかった。

BMIが5 kg/m2増加するごとに全死亡率が平均で約30%ずつ上昇した(5 kg/m2増加ごとのハザード比:1.29)。原因別には、BMIが5 kg/m2増加すると、血管死が約40%、糖尿病死が約120%、腎臓病死が約60%、肝臓病死が約80%、新生物死が約10%、呼吸器病死が約20%、その他の疾患による死亡が約20%上昇した。

BMIが22.5~25.0kg/m2を下回る場合も全死亡が上昇しており、これはおもに呼吸器疾患や肺癌との関連が大きく影響していた。喫煙者ごとのたばこ消費量は各BMI群でほとんど変わらないにもかかわらず、非喫煙者に比べ喫煙者は死亡率が高かった。

これらの結果をふまえ、著者は「ウエスト周囲長やウエスト/ヒップ比などの指標にBMIを加味したり、逆にBMIにこれらの因子を加えて判断することもできるが、BMIは単独で死亡の強力な予測因子であり、死亡率から見た生存の最適値は22.5~25.0kg/m2である」と結論している。

また、「BMIがこの範囲以上でも以下でも死亡率は上昇していた。上回る場合の主要な原因は血管疾患であり、生存期間中央値はBMI 30~35 kg/m2(中等度肥満)で2~4年、40~45 kg/m2(高度肥満)で8~10年(喫煙の影響に匹敵)短縮した。下回る場合の死亡率の増分には喫煙の関与が大きいものの、喫煙だけで十分に説明できるわけではない」としている。

(菅野守:医学ライター)