人工心肺装置(CPB)の使用を伴う心臓手術を受ける患者は、出血に対する血小板輸血を要することが多いという。血小板は通常、室温(20~24℃)で最長5~7日間保存されるが、冷蔵保存(1~6℃)により、止血機能を損なわずに保存期間を延長できる可能性が示唆されている。米国・ピッツバーグ大学のPhilip C. Spinella氏らCHIPS Investigator Groupは「CHIPS試験」において、心臓手術を受ける患者では、手術中の活動性出血の制御に関して、最長21日間保存された冷蔵保存血小板(CSP)は、室温保存血小板(RTP)と同程度の止血効果が期待できることを示した。研究の成果はJAMA誌オンライン版2026年8月17日号で報告された。
2ヵ国の無作為化非劣性試験
CHIPS試験は、米国とオーストラリアの27施設で実施した部分盲検無作為化適応型非劣性試験であり、2021年12月~2025年3月に、生後28日以上85歳未満で、CPBの使用を伴う複雑な心臓手術が予定され、血小板輸血を要する出血が予測される患者を登録した(Defense Health Agency Operational Medical Systemsの助成を受けた)。
被験者1,000例を、最長21日間保存したCSPの投与を受ける群(660例)、または最長7日間保存したRTPの投与を受ける群(340例)に無作為に割り付けた。
主要評価項目は、止血有効性スコア(1~5点、点数が大きいほど出血量が多い)とし、非劣性マージンは1点に設定した。7日以上の冷蔵保存期間が少なくとも1回あり、その際の非劣性の事後確率が97.5%以上の場合に、成功基準を満たしたと判定した。
胸腔ドレナージ排出量も同程度
血小板輸血を受けた1,000例のうち678例(67.8%)が男性で、1歳未満がCSP群で79例(12.0%)、RTP群で54例(15.9%)含まれた。主解析の対象となったのは989例(CSP群650例、RTP群339例)で、年齢中央値は55.5歳(四分位範囲[IQR]:4.8~68.8)であった。CPBの施行時間中央値は164.0分(IQR:114.0~219.0)であった。
主要評価項目に関して、CSP群はRTP群に対し非劣性を示し、すべての冷蔵保存期間(1~21日)においてその確率は99.9%を超えた。保存期間を統合して分析したところ、止血有効性スコアはCSP群が3.08点(95%信用区間[CrI]:2.99~3.17)、RTP群は2.99点(95%CrI:2.88~3.11)であり、平均群間差は0.09(95%CrI:-0.06~0.23)であった。
また、事後解析では、すべての保存期間で非劣性であったためCSP群を単一の群と見なすと、止血有効性スコアの平均値はCSP群が3.08(SD 1.15)点、RTP群は2.99(SD 1.10)点と両群でほぼ同等であった。
副次評価項目である24時間後の胸腔ドレナージ排出量中央値は、CSP群で8.9mL/kg(IQR:5.2~15.4)、RTP群で8.4mL/kg(IQR:5.5~15.9)であり、中央値の群間差は0.4mL/kg(95%CrI:-1.0~1.5)と両群間に統計学的な有意差を認めなかった(p=0.83)。
安全性アウトカムに大きな差はない
安全性アウトカムについては、初回血小板輸血後24時間以内の出血に対する再手術がCSP群で多かった(4.2%vs.1.8%、群間差:2.5%[95%CrI:0.4~4.6])ことを除くと、同7日以内の静脈血栓イベント(2.6%vs.1.8%)、動脈血栓イベント(2.6%vs.3.8%)、輸血関連有害事象(0.2%vs.0%)などに両群間で差はなく、28日死亡率(3.2%vs.1.8%)も同程度であった。
著者は、「この結果は、活動性出血に対する、最長で21日間冷蔵保存された血小板の使用を支持するものである」としている。
また、「これによって、血小板の廃棄を減らし、供給量を増やすことができ、従来の5~7日間室温保存された血小板は投与できなかった患者での使用も可能になると考えられる」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)