STEMIにおける非責任病変のPCI、即時vs.遅延/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2025/11/10

 

 冠動脈の責任病変に対する初回経皮的冠動脈形成術(primary PCI)に成功した多枝病変を有するST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の非責任病変への対処として、瞬時拡張期冠内圧比(iFR)ガイド下の即時PCIは、心臓負荷MRIガイド下の遅延PCIと比較して3年後の全死因死亡、心筋梗塞の再発、心不全による入院の複合エンドポイントに関して優越性がないことが、オランダ・Radboud University Medical CenterのRobin Nijveldt氏らiMODERN Investigatorsによる国際的な臨床試験「iMODERN試験」の結果で示された。NEJM誌オンライン版2025年10月28日号掲載の報告。

41施設で実施、心臓負荷MRIガイド下の遅延PCIと比較

 iMODERN試験は、41施設で実施した国際的な研究者主導型の非盲検無作為化対照比較優越性試験であり、2017年12月~2022年2月に参加者を募集した(Philips Volcanoなどの助成を受けた)。

 年齢18歳以上、STEMIと診断され、発症から12時間以内の梗塞責任病変へのprimary PCIに成功し、非梗塞関連動脈に狭窄度>50%でPCI適応の非責任病変を1つ以上有する患者1,146例(平均年齢63[SD 11]歳、男性78%)を登録した。

 被験者を、非責任病変に対しiFRガイド下に即時PCIを行う群(558例)、または心臓負荷MRIガイド下に遅延PCIを行う群(588例)に無作為に割り付けた。iFR群では、虚血を示すiFR≦0.89のすべての非責任病変に即時PCIを行った。MRI群では、primary PCIから6週間以内に非責任病変に対しPCIを施行した。

 主要エンドポイントは、3年の時点での全死因死亡、心筋梗塞の再発、心不全による入院の複合とした。

主要複合エンドポイントの発生、iFR群9.3%vs.MRI群9.8%で有意差は認められず

 iFR群は、556例中237例(42.6%)(739病変中281病変[38.0%])に非責任病変への即時PCIを行った。MRI群は、primary PCIから中央値27日(四分位範囲:15~37)の時点で、587例中110例(18.7%)に遅延PCIを施行した。

 追跡期間3年の時点で、主要エンドポイントのイベントはiFR群で536例中50例(9.3%)、MRI群で562例中55例(9.8%)に発生し、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.65~1.40、p=0.81)。

 3年時の全死因死亡は、iFR群で4.1%、MRI群で3.9%(HR:1.04、95%CI:0.58~1.88)、心筋梗塞の再発はそれぞれ5.4%および5.5%(0.99、0.59~1.64)、心不全による入院は0.6%および2.3%(0.24、0.07~0.84)に発生した。

心臓死、標的病変不全、大出血の頻度は同程度

 3年時の心臓死(iFR群1.9%vs.MRI群2.0%、HR:0.95、95%CI:0.40~2.23)、標的病変不全(心臓死、心筋梗塞、標的血管の再血行再建のいずれかの発生と定義、10.2%vs.10.5%、0.98、0.68~1.42)、大出血(1.9%vs.1.1%、1.73、0.63~4.76)、不安定狭心症(3.3%vs.3.9%、0.84、0.44~1.59)の発生率は両群で同程度であった。

 また、3年時の脳卒中または一過性脳虚血発作は、iFR群で1.3%、MRI群で3.7%(HR:0.36、95%CI:0.15~0.86)に、総ステント血栓症(責任病変+非責任病変)は、それぞれ1.7%および0.6%(3.12、0.84~11.51)に発生した。

 重篤な有害事象は、iFR群で145例、MRI群で181例に発現した。

 著者は、「2025年版ACC/AHA/ACEP/NAEMSP/SCAIガイドラインは、STEMI患者における非責任冠動脈病変へのPCIをクラス1Aの適応としているが、完全な再灌流PCIを行う至適なタイミングは不明である」「2021年版ACC/AHA/SCAIガイドラインは、staged PCIをクラス1A適応、初回イベント時のPCIをクラス2B適応としていたが、2025年版ACC/AHA/ACEP/NAEMSP/SCAIガイドラインではこれを更新し、staged PCIよりもprimary PCI時の非責任病変PCIが好ましい可能性を示唆する」としている。

(医学ライター 菅野 守)